本発明の塗料組成物は、常温硬化型(室温硬化型と実質的に同義)の塗料組成物であって、常温硬化による硬化物である塗膜を形成する。なお、常温とは、塗料組成物から塗膜を形成するときに、加熱(具体的には、50℃以上の加熱)をしない温度であり、例えば、50℃未満、好ましくは、40℃以下であり、また、例えば、0℃以上、好ましくは、10℃以上である。
塗料組成物は、第1オリゴマーと、第2オリゴマーと、シリコーンオイルと、触媒と、有機溶剤とを含有する。
第1オリゴマーは、塗膜において、第2オリゴマーとともにシロキサンマトリックスを形成するとともに、塗膜が摺擦されても、塗膜におけるシリコーンオイルの非粘着性および撥水性を補助する非粘着補助剤である。これによって、塗膜は、長期間経過後の非粘着性の低下を有効に抑制することができる。
第1オリゴマーは、ジアルキルシロキサンユニットと、アルコキシ基を含有するアルコキシ基含有シロキサンユニットとを含有する。
具体的には、第1オリゴマーは、下記式(1)で示されるシロキサンオリゴマーである。
式(1):
(式中、R1〜R9は、互いに同一または相異なってもよく、1価の飽和炭化水素基および1価の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の炭化水素基を示す。Xは、シロキサンユニットである。aおよびeは、互いに同一または相異なってもよく、1または2である。bは、2以上、20以下の整数であり、cは、2以上、10以下の整数であり、dは、2以上、20以下の整数である。)
R1〜R9で示される1価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどの炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、好ましくは、メチルが挙げられる。
R1〜R9で示される1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、好ましくは、フェニルが挙げられる。
つまり、R1〜R9として、好ましくは、メチルおよび/またはフェニルが挙げられ、より好ましくは、メチルが挙げられる。
第1オリゴマーにおいて、ユニットIは、アルコキシ基含有シロキサンユニットである。つまり、ユニットIは、R2Oで示されるアルコキシ基を含有する。
aは、ユニットIにおいて、ケイ素原子に結合する、R2O−で示されるアルコキシ基の数を意味し、好ましくは、2である。その場合には、ユニットIにおいて、ケイ素原子に結合するR1で示される1価の炭化水素基の数(3−a)は、好ましくは、1(=3−2)である。
ユニットIにおいて、Si−O−における酸素原子は、次に説明するユニットII〜ユニットIVのうち、いずれかのケイ素原子に結合している。これにより、このユニットIのSi−O−は、第1オリゴマーにおいて、シロキサン結合を構成する。
また、ユニットIは、第1オリゴマーにおける分子末端ユニットである。
ユニットIIは、アルコキシ基含有シロキサンユニットである。つまり、ユニットIIは、R4Oで示されるアルコキシ基を含有する。
bは、ユニットIIの数を意味する。bは、好ましくは、3以上、好ましくは、13以下の整数である。
ユニットIIIは、ケイ素原子に結合する2つの酸素原子を有するシロキサンユニットである。また、ユニットIIIは、アルコキシ基を含有してもよい。
Xで示されるシロキサンユニットとしては、例えば、ユニットVI(後述)単独、ユニットIIおよびユニットIの組合せ、ユニットIIおよびユニットVの組合せ、ユニットIIおよびユニットVI(後述)の組合せが挙げられる。
Xとしては、下記式(2)で示される環状シロキサンユニットが挙げられる。
式(2):
(式中、mは、2以上の整数である。Z1は、上記した1価の炭化水素基またはアルコキシ基である。)
Z1で示される1価の炭化水素基としては、好ましくは、メチルが挙げられ、Z1で示される1価のアルコキシ基としては、好ましくは、メトキシが挙げられる。
cは、ユニットIIIの数を意味する。cは、好ましくは、6以下の整数である。
ユニットIVは、ジアルキルシロキサンユニットである。つまり、ユニットIVは、R6およびR7で示されるアルキル基を含有する。
dは、ユニットIVの数を意味する。dは、好ましくは、6以下の整数である。
ユニットVは、アルコキシ基含有シロキサンユニットである。つまり、ユニットVは、R9Oで示されるアルコキシ基を含有する。
ユニットVにおけるケイ素原子は、ユニットII〜ユニットIVのうち、いずれかの酸素原子に結合する。これにより、ユニットVにおけるケイ素原子は、第1オリゴマーにおいて、シロキサン結合を構成する。
また、ユニットVは、第1オリゴマーにおける分子末端ユニットである。
eは、ユニットVにおいて、ケイ素原子に結合する、R9O−で示されるアルコキシ基の数を意味し、好ましくは、2である。その場合には、ユニットVにおいて、ケイ素原子に結合するR8で示される1価の炭化水素基の数(3−e)は、好ましくは、1(=3−2)である。
上記した各ユニットおよびその数は、1H−NMRおよび29Si−NMRによって、特定される。
また、第1オリゴマーを、下記の平均組成式(A)で示すこともできる。
平均組成式(A):
Rp αSi(ORq)βO(4−α−β) (A)
(式中、RpおよびRqは、互いに同一または相異なっていてもよく、1価の炭化水素基を示す。αは、その平均値が0.40〜1.70の範囲内にある値を示す。βは、平均組成式(A)中におけるケイ素原子に結合したORqの比率が5質量%以上40質量%未満になる値を示す。)
1価の炭化水素基は、上記した1価の炭化水素基と同一である。
平均組成式(A)中、Rpとしては、上記した一般式(1)中の、R1、R3、R5、R6、R7、R8と同様の1価の炭化水素基が挙げられ、Rqとしては、上記した一般式(1)中の、R2、R4、R9と同様の1価の炭化水素基が挙げられる。
また、平均組成式(A)中のβは、平均組成式(A)中におけるケイ素原子に結合したORqの比率が、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、また、例えば、35質量%以下、好ましくは、30質量%以下になる値である。
具体的には、第1オリゴマーは、例えば、ジメチルシロキサンユニットとメトキシ基含有シロキサンユニットとを含有するメチル系シリコーンアルコキシオリゴマー、メチルフェニルシロキサンユニットと、メトキシ基およびフェノキシ基を含有するシロキサンユニットとを含有するメチルフェニル系シリコーンアルコキシオリゴマーなどが挙げられ、好ましくは、メチル系シリコーンアルコキシオリゴマーが挙げられる。
メチル系シリコーンアルコキシオリゴマーは、
例えば、下記式(3)で示される。
式(3):
(式中、b〜dおよびXは、式(1)におけるb〜dおよびXと同一である。)
そのようなメチル系シリコーンアルコキシオリゴマーは、例えば、メチルトリメトキシシランおよびジメチルジメトキシシランから生成される。
第1オリゴマーの分子量は、例えば、500以上、好ましくは、1000以上であり、また、例えば、3000以下、好ましくは、2000以下である。
第1オリゴマーは、市販品が用いられ、例えば、X−40−9250(式(3)中、bが8、cが4、dが4であるメチル系シリコーンアルコキシオリゴマー、信越化学工業社製)などが用いられる。
第1オリゴマーの割合は、塗料組成物に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上、より好ましくは、3質量%以上、さらに好ましくは、5質量%以上、とりわけ好ましくは、6質量%以上であり、また、例えば、50質量%未満、好ましくは、45質量%以下、より好ましくは、40質量%以下、さらに好ましくは、30質量%以下、とりわけ好ましくは、20質量%以下、もっとも好ましくは、10質量%以下である。
第2オリゴマーは、塗膜において、第1オリゴマーとともにシロキサンマトリックスを形成する。
第2オリゴマーは、ジアルキルシロキサンユニットを含有せず、アルコキシ基含有シロキサンユニットを含有する。
具体的には、第2オリゴマーは、下記式(4)で示されるシロキサンオリゴマーである。
式(4):
(式中、R11〜R17は、互いに同一または相異なってもよく、1価の飽和炭化水素基および1価の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の炭化水素基を示す。Yは、シロキサンユニットである。fおよびiは、互いに同一または相異なってもよく、1または2である。gは、2以上、20以下の整数であり、hは、2以上、18以下の整数である。)
R11〜R17で示される1価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどの炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、好ましくは、メチルが挙げられる。
R11〜R17で示される1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、好ましくは、フェニルが挙げられる。
つまり、R11〜R17として、好ましくは、メチルおよび/またはフェニルが挙げられ、より好ましくは、メチルが挙げられる。
第2オリゴマーにおいて、ユニットXIは、アルコキシ基含有シロキサンユニットである。つまり、ユニットXIは、R12Oで示されるアルコキシ基を含有する。
fは、ユニットXIにおいて、ケイ素原子に結合する、R12O−で示されるアルコキシ基の数を意味し、好ましくは、2である。その場合には、ユニットXIにおいて、ケイ素原子に結合するR11で示される1価の炭化水素基の数(3−f)は、好ましくは、1(=3−2)である。
ユニットXIにおける酸素原子は、次に説明するユニットXIIまたはユニットXIIIのケイ素原子に結合している。これにより、このユニットXIのSi−O−は、第2オリゴマーにおいて、シロキサン結合を構成する。
また、ユニットXIは、第2オリゴマーにおける分子末端ユニットである。
ユニットXIIは、アルコキシ基含有シロキサンユニットである。つまり、ユニットXIIは、R14Oで示されるアルコキシ基を含有する。
gは、ユニットXIIの数を意味する。gは、好ましくは、3以上、好ましくは、17以下の整数である。
ユニットXIIIは、ケイ素原子に結合する2つの酸素原子を有するシロキサンユニットである。また、ユニットXIIIは、アルコキシ基を含有してもよい。
Yで示されるシロキサンユニットとしては、例えば、ユニットXVI(後述)単独、ユニットXIIおよびユニットXIの組合せ、ユニットXIIおよびユニットXIVの組合せ、ユニットXIIおよびユニットXVI(後述)の組合せが挙げられる。
Yとしては、下記式(5)で示される環状シロキサンユニットが挙げられる。
式(5):
(式中、jは、2以上の整数である。Z2は、上記した1価の炭化水素基またはアルコキシ基である。)
Z2で示される1価の炭化水素基としては、好ましくは、メチルが挙げられ、Z2で示される1価のアルコキシ基としては、好ましくは、メトキシが挙げられる。
hは、ユニットXIIIの数を意味する。hは、好ましくは、3以上、好ましくは、15以下の整数である。
ユニットXIVにおけるケイ素原子は、ユニットXIIまたはユニットXIIIにおける酸素原子に結合する。これにより、ユニットXIVにおけるケイ素原子は、第2オリゴマーにおいて、シロキサン結合を構成する。
また、ユニットXIVは、第2オリゴマーにおける分子末端ユニットである。
iは、ユニットXIVにおいて、ケイ素原子に結合する、R17O−で示されるアルコキシ基の数を意味し、好ましくは、2である。その場合には、ユニットXIVにおいて、ケイ素原子に結合するR16で示される1価の炭化水素基の数(3−i)は、好ましくは、1(=3−2)である。
上記した各ユニットおよびその数は、1H−NMRおよび29Si−NMRによって、特定される。
また、第2オリゴマーを、下記の平均組成式(B)で示すこともできる。
平均組成式(B):
Rt γSi(ORs)δO(4−γ−δ) (B)
(式中、RtおよびRsは、互いに同一または相異なっていてもよく、1価の炭化水素基を示す。γは、その平均値が0.40〜1.70の範囲内にある値を示す。δは、平均組成式(B)中におけるケイ素原子に結合したORsの比率が5質量%以上40質量%未満になる値を示す。)
平均組成式(B)中、Rtとしては、上記した一般式(4)中の、R11、R13、R15、R16と同一の1価の炭化水素基が挙げられ、Rsとしては、上記した一般式(4)中の、R12、R14、R17と同一の1価の炭化水素基が挙げられる。
また、平均組成式(B)中のδは、平均組成式(B)中におけるケイ素原子に結合したORsの比率が、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、また、例えば、35質量%以下になる値である。
具体的には、第2オリゴマーは、例えば、メチル系シリコーンアルコキシオリゴマー、メチルフェニル系シリコーンアルコキシオリゴマーなどが挙げられ、好ましくは、メチル系シリコーンアルコキシオリゴマーが挙げられる。
メチル系シリコーンアルコキシオリゴマーとして、例えば、メチルトリメトキシシランから生成されるメチル系シリコーンメトキシオリゴマーが挙げられる。
メチル系シリコーンメトキシオリゴマーは、例えば、下記式(6)で示される。
式(6):
(式中、g、hおよびYは、式(5)におけるg、hおよびYと同一である。)
そのようなメチル系シリコーンアルコキシオリゴマーは、例えば、メチルトリメトキシシランから生成される。
第2オリゴマーの分子量は、例えば、500以上、好ましくは、1000以上であり、また、例えば、4000以下、好ましくは、3000以下である。
第2オリゴマーは、市販品が用いられ、例えば、KC−89(信越化学工業社製)、KR−515(信越化学工業社製)、KR−500(式(6)中、gが10、hが4であるメチル系シリコーンアルコキシオリゴマー、信越化学工業社製)、X−40−9225(式(6)中、gが12、hが10であるメチル系シリコーンアルコキシオリゴマー、信越化学工業社製)、US−SG2403(東レ・ダウコーニング社製)などが用いられる。
第2オリゴマーの割合は、塗料組成物に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、25質量%以上であり、また、例えば、50質量%未満、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、35質量%以下、さらに好ましくは、30質量%以下である。
第1オリゴマーの、第2オリゴマーに対する割合(第1オリゴマー/第2オリゴマー)は、0.15以上、好ましくは、0.16以上、より好ましくは、0.18以上、さらに好ましくは、0.20以上、より好ましくは、0.22以上である。また、第1オリゴマーの、第2オリゴマーに対する割合は、10以下、好ましくは、9以下、より好ましくは、7以下、さらに好ましくは、5以下、とりわけ好ましくは、2以下、さらには、1.0以下、さらには、0.5以下である。
上記した割合が上記した下限を下回れば、または、上記した上限を上回れば、塗膜が摺擦されれば、摺擦後の塗膜におけるシリコーンオイルの非粘着性を確実に補助することができず、摺擦後の塗膜の非粘着性が低下する。換言すれば、上記した割合が上記した下限以上であり、上記した上限以下であれば、摺擦後の塗膜におけるシリコーンオイルの非粘着性を確実に補助することができ、摺擦後の塗膜の非粘着性の低下を抑制できる。
第1オリゴマーおよび第2オリゴマー(硬化成分)の総量の、塗料組成物に対する割合は、20質量%以上、好ましくは、25質量%以上、より好ましくは、30質量%以上、さらに好ましくは、35質量%以上である。
上記した総量の割合が上記した下限に満たなければ、第1オリゴマーおよび第2オリゴマー(硬化成分)の割合が過度に少ないため、硬化成分を常温硬化させるときに、塗膜を確実に形成できない。換言すれば、上記した総量の割合が上記した下限以上であれば、硬化成分の割合が過度に少なくなることを防止して、硬化成分を常温硬化させて、塗膜を確実に形成することができる。
第1オリゴマーおよび第2オリゴマー(硬化成分)の総量の、塗料組成物に対する割合は、50質量%以下、好ましくは、45質量%以下、より好ましくは、40質量%である。上記した総量の割合が上記した上限を超えれば、塗料組成物を塗布するときの作業性(塗布性)が低下し、そのため、塗膜の外観が低下する。換言すれば、上記した総量の割合が上記した上限以下であれば、塗布性の低下を抑制して、そのため、塗膜の外観が優れる。
シリコーンオイルは、塗膜に非粘着性および撥水性を付与する成分である。シリコーンオイルは、直鎖状の主鎖を有し、例えば、ポリシロキサンの繰り返し構造(−(SiO)n−)を有する。シリコーンオイルとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサンなどのストレートシリコーンオイル(未変性シリコーンオイル)などが挙げられる。また、シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイル以外に、主鎖の末端および/または側鎖がアルキル基、アルケニル基(ビニル基を含む)、アルキニル基、フェニル基、イオン性基などで変性された変性シリコーンオイルも挙げられる。イオン性基としては、例えば、メルカプト基などのアニオン性基、例えば、アミノ基などのカチオン性基などが挙げられる。
これらシリコーンオイルは、単独使用または2種以上併用することができる。
シリコーンオイルとして、好ましくは、ストレートシリコーンオイル、より好ましくは、ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
シリコーンオイルとしては、市販品が用いられ、例えば、KF−96シリーズ(信越化学工業社製)、KF−965シリーズ(信越化学工業社製)、SH200シリーズ(東レ・ダウコーニング社製)、TSF451シリーズ(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル・ジャパン社製)、YF−33シリーズ(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル・ジャパン社製)などが用いられる。
シリコーンオイルの25℃における動粘度は、100mm2/s以上、好ましくは、200mm2/s以上、より好ましくは、500mm2/s以上、最も好ましくは、1000mm2/s以上である。また、シリコーンオイルの25℃における動粘度は、例えば、100万mm2/s以下、好ましくは、50万mm2/s以下、より好ましくは、10万mm2/s以下、さらに好ましくは、1万mm2/s以下である。
シリコーンオイルの動粘度が上記した下限を下回れば、塗膜が摺擦される前後において、優れた非粘着性を維持することができない。換言すれば、シリコーンオイルの動粘度が上記した下限以上であれば、塗膜の摺擦前後において、優れた非粘着性を維持することができる。
一方、シリコーンオイルの動粘度が上記した上限以下であれば、シリコーンオイルを簡便に取り扱って、塗料組成物を簡便に調製することができる。
シリコーンオイルの割合は、塗料組成物に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上、さらに好ましくは、1.5質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、2.5質量%以下である。
シリコーンオイルの、第1オリゴマーおよび第2オリゴマーの総量100質量部に対する質量部数は、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上、より好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、7質量部以下である。
第1オリゴマーと第2オリゴマーとシリコーンオイルとの総量の、塗料組成物に対する割合は、例えば、21質量%以上、好ましくは、26質量%以上、より好ましくは、31質量%以上、さらに好ましくは、36質量%以上である。上記した総量の割合が上記した下限以上であれば、硬化成分の割合が過度に少なくなることを防止して、硬化成分を常温硬化させて、塗膜を確実に形成することができる。
第1オリゴマーと第2オリゴマーとシリコーンオイルとの総量の、塗料組成物に対する割合は、例えば、51質量%以下、好ましくは、46質量%以下、より好ましくは、41質量%である。上記した総量の割合が上記した上限以下であれば、塗布性の低下を抑制して、そのため、塗膜の外観が優れる。
触媒は、塗料組成物を常温硬化するときに、空気中の水分と反応して加水分解し、活性な[金属原子−OH]を生成し、[金属原子−OH]と、第1オリゴマーおよび第2オリゴマーとを縮合反応させる硬化触媒である。
触媒は、金属アルコキシド、金属キレート化合物および金属カルボン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つである。
金属アルコキシドとしては、例えば、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド(例えば、ジルコニウムテトラn−ブトキシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド)、ゲルマニウムアルコキシド(例えば、ゲルマニウムテトラエトキシド)、スズアルコキシド(例えば、スズテトラn−ブトキシド、スズテトラtert−ブトキシド)、ハフニウムアルコキシド(例えば、ハフニウムテトラ2−プロポキシド、ハフニウムテトラtert−ブトキシド)、ニオブアルコキシド(例えば、ニオブペンタエトキシド)、タンタルアルコキシド(例えば、タンタルペンタn−ブトキシド、タンタルペンタエトキシド)などが挙げられる。好ましくは、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシドが挙げられる。
チタンアルコキシドとしては、例えば、チタントリアルコキシド、チタンテトラアルコキシドなどが挙げられ、好ましくは、チタンテトラアルコキシドが挙げられる。チタンテトラアルコキシドとしては、例えば、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド(例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−プロポキシドなど)、チタンテトラブトキシド(例えば、チタンテトライソブトキシド、チタンテトラn−ブトキシドなど)、チタンテトラペントキシド、チタンテトラヘキソキシド、チタンテトラ(2−エチルヘキソキシド)などが挙げられる。
アルミニウムアルコキシドとしては、例えば、アルミニウムトリアルコキシドが挙げられる。アルミニウムトリアルコキシドとしては、例えば、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリプロポキシド(例えば、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリn−プロポキシド)、アルミニウムトリブトキシド(例えば、アルミニウムトリsec−ブトキシド、アルミニウムトリn−ブトキシド)などが挙げられる。
なお、金属アルコキシドにおける3つまたは4つのアルコキシ基のそれぞれは、その炭素数や分岐の有無により反応性が異なる。一方、加水分解が過度に早く進行すると、取扱性(安定性)が低下することがある。そのため、反応性および安定性を考慮すれば、チタンアルコキシドのうち、好ましくは、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンテトラn−ブトキシドが挙げられる。また、アルミニウムアルコキシドのうち、好ましくは、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリsec−ブトキシドが挙げられる。
金属アルコキシドは、市販品が用いられ、例えば、D−25(チタンテトラn−ブトキシド、信越化学工業社製)などが用いられる。
金属キレート化合物は、例えば、β−ジケトン、リン酸エステル、アルカノールアミンなどを配位子として有する金属キレート化合物が挙げられる。
β−ジケトンとしては、例えば、2,4−ペンタンジオン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸フェニル、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、2,4−デカンジオン、2,4−トリデカンジオン、5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2−ジメチル−3,5−ノナンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,3−シクロペンタンジオン、1,3−シクロヘキサンジオンなどが挙げられる。好ましくは、2,4−ペンタンジオンが挙げられる。
オクチレングリコールとしては、例えば、2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシドなどが挙げられる。
リン酸エステルとしては、例えば、リン酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
配位子として、好ましくは、β−ジケトンが挙げられる。
金属キレート化合物を形成する中心金属(金属原子)としては、特に限定されず、例えば、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、マグネシウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、パラジウム、インジウム、スズなどが挙げられる。好ましくは、アルミニウム、チタン、ジルコニウムが挙げられる。
具体的には、金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、マグネシウムキレート化合物(例えば、ジアクアビス(2,4−ペンタンジオナト)マグネシウムなど)、カルシウムキレート化合物(例えば、ジアクアビス(2,4−ペンタンジオナト)カルシウムなど)、クロムキレート化合物(例えば、トリス(2,4−ペンタンジオナト)クロムなど)、マンガンキレート化合物(例えば、ジアクアビス(2,4−ペンタンジオナト)マンガンなど)、鉄キレート化合物(例えば、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄など)、コバルトキレート化合物(例えば、トリス(2,4−ペンタンジオナト)コバルトなど)、ニッケルキレート化合物(例えば、ビス(2,4−ペンタンジオナト)ニッケルなど)、銅キレート化合物(例えば、ビス(2,4−ペンタンジオナト)銅など)、亜鉛キレート化合物(例えば、ビス(2,4−ペンタンジオナト)亜鉛など)、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ガリウムなど)、ニオブキレート化合物(例えば、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナトニオブ(IV)など)パラジウムキレート化合物(例えば、ビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウムなど)、インジウムキレート化合物(例えば、トリス(2,4−ペンタンジオナト)インジウムなど)、スズキレート化合物(例えば、ビス(2,4−ペンタンジオナト)スズなど)などが挙げられる。
金属キレート化合物として、好ましくは、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物が挙げられる。金属キレート化合物として、より好ましくは、塗膜における優れた堅牢性(強度)を維持する観点から、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物が挙げられる。
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ビス(エチルアセトアセテート)(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウムなどが挙げられる。好ましくは、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウムが挙げられる。
チタンキレート化合物としては、例えば、テトラキス(2,4−ペンタンジオナト)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタンなどが挙げられる。好ましくは、テトラキス(2,4−ペンタンジオナト)チタンが挙げられる。
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、テトラキス(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどが挙げられる。好ましくは、テトラキス(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウムが挙げられる。
また、金属キレート化合物は、上記した配位子に加え、アルコキシ基をさらに含有するアルコキシ基含有金属キレート化合物を含む。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、2−プロポキシ、n−ブトキシ、2−ブトキシなどが挙げられる。アルコキシ基として、好ましくは、2−プロポキシが挙げられる。具体的には、アルコキシ基含有金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートなどのアルコキシ基含有アルミニウムキレート化合物、例えば、ビス(2,4−ペンタンジオナト)ビス(2−プロパノラト)チタンなどのアルコキシ基含有チタンキレート化合物などが挙げられる。
金属カルボン酸塩は、カルボン酸の金属塩である。
カルボン酸としては、例えば、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸などの直鎖状カルボン酸、例えば、2−メチルブタン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、4−メチルオクタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸などの分枝状カルボン酸、例えば、ナフテン酸などの環状カルボン酸などが挙げられる。好ましくは、分枝状カルボン酸が挙げられ、より好ましくは、2−エチルヘキサン酸が挙げられる。
金属塩を形成する金属としては、特に限定されず、例えば、上記した中心金属(金属キレート化合物を形成する中心金属)と同様の金属が挙げられ、好ましくは、亜鉛、鉄、コバルト、マンガンが挙げられる。
金属カルボン酸塩として、例えば、アルミニウムカルボン酸塩、チタンカルボン酸塩、ジルコニウムカルボン酸塩、ニオブカルボン酸塩、マグネシウムカルボン酸塩、カルシウムカルボン酸塩、クロムカルボン酸塩、マンガンカルボン酸塩、鉄カルボン酸塩、コバルトカルボン酸塩、ニッケルカルボン酸塩、銅カルボン酸塩、亜鉛カルボン酸塩、ガリウムカルボン酸塩、パラジウムカルボン酸塩、インジウムカルボン酸塩、スズカルボン酸塩、タンタルカルボン酸塩などが挙げられる。金属カルボン酸塩として、好ましくは、亜鉛カルボン酸塩、鉄カルボン酸塩、コバルトカルボン酸塩、マンガンカルボン酸塩が挙げられる。
亜鉛カルボン酸塩としては、例えば、ビス(2−エチルヘキサン酸)亜鉛、酢酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛などが挙げられる。好ましくは、ビス(2−エチルヘキサン酸)亜鉛が挙げられる。
鉄カルボン酸塩としては、例えば、ビス(2−エチルヘキサン酸)鉄、酢酸鉄、ナフテン酸鉄などが挙げられる。好ましくは、ビス(2−エチルヘキサン酸)鉄が挙げられる。
コバルトカルボン酸塩としては、例えば、ビス(2−エチルヘキサン酸)コバルト、酢酸コバルト、ナフテン酸コバルトなどが挙げられる。好ましくは、ビス(2−エチルヘキサン酸)コバルトが挙げられる。
マンガンカルボン酸塩としては、例えば、ビス(2−エチルヘキサン酸)マンガン、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガンなどが挙げられる。好ましくは、ビス(2−エチルヘキサン酸)マンガンが挙げられる。
なお、触媒として、リン酸、酢酸などの酸は、金属原子−OHを生成せず、そのため、第1オリゴマーおよび第2オリゴマーのアルコキシ基に基づくOH基を脱水縮合させることができない。その結果、第1オリゴマーおよび第2オリゴマーの硬化反応を常温で迅速に進行させることができず、上記した酸は、触媒として不適である。
触媒としては、単独使用または併用することができる。触媒として、好ましくは、金属アルコキシド、金属キレート化合物および金属カルボン酸塩のそれぞれの単独使用が挙げられる。
なお、触媒は、後述する有機溶剤に溶解した触媒溶液として調製されていてもよい。
触媒の割合は、塗料組成物に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、25質量%以下、好ましくは、15質量%以下である。
触媒の割合は、第1オリゴマーおよび第2オリゴマーの総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上、より好ましくは、5質量部以上、さらに好ましくは、10質量部以上、とりわけ好ましくは、20質量部以上であり、また、例えば、55質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、40質量部以下である。
触媒の割合が上記した下限以上、上記した上限以下であれば、第1オリゴマーおよび第2オリゴマーが常温で迅速に硬化して、塗膜を常温で形成することができる。
有機溶剤は、後述する蒸気圧の下限値以上である高蒸気圧溶剤である。具体的には、高蒸気圧溶剤は、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(2−プロパノール)などのアルコール系溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、エチルグリコールアセテート、酢酸アミルなどのエステル系溶剤、例えば、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤(高蒸気圧グリコールエーテル系溶剤)、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン系溶剤、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタンなどのパラフィン系溶剤(高蒸気圧パラフィン系溶剤)、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサンなどのナフテン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなどの芳香族系溶剤、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤などから選択される。
有機溶剤は、単独が選択され、あるいは、2種以上が選択されて、使用される。
有機溶剤として、好ましくは、アルコール系溶剤が選択される。
有機溶剤がアルコール系溶剤であれば、使用(塗布)前の塗料組成物(つまり、保管(貯蔵)中の塗料組成物)において、第1オリゴマーおよび第2オリゴマーにおけるアルコキシ基が加水分解してアルコールを生成する反応が平衡反応であることから、上記したアルコールの生成を抑制することができ、そのため、塗料組成物の貯蔵安定性に優れる。
有機溶剤の20℃における蒸気圧は、1kPa(7.5mmHg)以上、好ましくは、2kPa(15mmHg)以上、より好ましくは、3kPa(22.5mmHg)以上である。また、有機溶剤の20℃における蒸気圧は、100kPa(750mmHg)以下、好ましくは、25kPa(187mmHg)以下、より好ましくは、10kPa(75mmHg)以下、さらに好ましくは、7kPa(52mmHg)以下、とりわけ好ましくは、5kPa(38mmHg)以下である。
有機溶剤の蒸気圧が上記した下限に満たなければ、塗料組成物を常温硬化するときに、有機溶剤を迅速に除去(留去)できず、そのため、塗膜を形成することができない。換言すれば、有機溶剤の蒸気圧が上記した下限以上であれば、塗料組成物を常温硬化するときに、有機溶剤を迅速に除去(留去)でき、そのため、塗膜を形成することができる。
一方、有機溶剤の蒸気圧が上記した上限以下であれば、塗料組成物を塗布するときに、有機溶剤が迅速に除去(留去)されることを抑制し、そのため、塗膜に厚みムラが生成することを抑制し、外観に優れる塗膜を形成することができる。
他方、有機溶剤は、高蒸気圧溶剤であるが、上記した蒸気圧の下限値を下回る低蒸気圧溶剤を、本発明の効果を阻害しない程度の微量の混入を許容することができる。例えば、上記した触媒溶液に含有される低蒸気圧溶剤の混入を許容する。
低蒸気圧溶剤の20℃における蒸気圧は、例えば、1kPa未満である。低蒸気圧溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどの低蒸気圧グリコールエーテル系溶剤、例えば、ミネラルターペンなどの低蒸気圧パラフィン系溶剤、例えば、ミネラルスピリットなどの石油系溶剤などが挙げられる。
蒸気圧溶剤の混入割合は、高蒸気圧溶剤100質量部に対して、例えば、15質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、5質量部以下、さらに好ましくは、3質量部以下、とりわけ好ましくは、1質量部以下である。また、低蒸気圧溶剤の混入割合は、塗料組成物に対して、例えば、10質量%未満、5質量%以下、好ましくは、3質量%以下、より好ましくは、1.0質量%以下、さらに好ましくは、0.5質量%以下、とりわけ好ましくは、0.1質量%以下である。
なお、水は、有機溶剤ではないが、第1オリゴマーおよび第2オリゴマーの硬化反応が速すぎることから、本発明に塗料組成物には不適な水性溶媒である。
有機溶剤(高蒸気圧溶剤)の塗料組成物に対する割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より30質量%以上、さらに好ましくは、40質量%以上、とりわけ好ましくは、50質量%以上であり、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、60質量%以下である。
有機溶剤の、第1オリゴマーと第2オリゴマーとシリコーンオイルとの総量100質量部に対する割合は、例えば、40質量部以上、好ましくは、80質量部以上、より好ましくは、120質量部以上、さらに好ましくは、140質量部以上、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下、より好ましくは、160質量部以下である。
有機溶剤の割合が上記した下限以上であれば、塗料組成物の取扱性に優れるとともに、塗布後に過度に急速に乾燥が進行することに起因する塗膜の厚みムラが生成することを抑制することができる。一方、有機溶剤の割合が上記した上限以下であれば、歩留まりの過度の低下を抑制することができる。
また、塗料組成物は、その用途および目的に応じて、顔料などの添加剤を適宜の割合で配合することができる。
顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料が挙げられ、好ましくは、無機顔料、より好ましくは、酸化物顔料が挙げられる。
酸化物顔料としては、例えば、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化チタン(TiO2)、酸化鉄(オキシ水酸化鉄(FeOOH)など)の金属酸化物が挙げられる。また、金属酸化物として、例えば、CuCr2O4、Cu(Cr,Mn)2O4、Cu(Fe,Mn)2O4、Co(Fe,Cr)2O4、CoAl2O4、Co2TiO4など金属複合酸化物が挙げられる。
顔料として、例えば、パールマイカ(天然マイカまたは合成マイカに、酸化チタンや酸化スズなどの金属酸化物を被覆した顔料)、アルミニウム粒子、アルミニウム片、銀粒子、銀片なども挙げられる。
顔料は、単独使用または併用することができる。顔料として、例えば、市販品を用いてよい。
顔料の平均粒子径は、例えば、0.01μm以上、好ましくは、0.1μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下、より好ましくは、100μm以下、さらに好ましくは、10μm以下である。
顔料の配合量は、塗膜の発色性、隠蔽性などにより適宜決められる。
次に、塗料組成物の調製、それの塗布、および、塗膜の製造について順に説明する。
塗料組成物を調製するには、まず、第1オリゴマーと、第2オリゴマーと、シリコーンオイルと、有機溶剤と、必要により添加剤とを、上記した割合で配合して混合して、シリコーン組成物を調製する。なお、顔料を配合する場合は、予め顔料を有機溶剤で分散しておき、上記を配合する際に混合する。
一方、触媒を別途準備する。
これによって、シリコーン組成物と、触媒とを2液型硬化性組成物として準備する。
続いて、塗布現場において、シリコーン組成物と、触媒とを上記した割合で配合して、それらを混合して、塗料組成物を調製する。なお、この塗料組成物の調製において、触媒は、その加水分解によって金属−OH基を生成する。
続いて、塗布現場において、塗料組成物を、対象物に塗布する。
塗布現場としては、例えば、対象物および塗料組成物に対して加熱することが制限される現場、具体的には、火気の使用が制限される工場内などが挙げられる。
対象物としては、非粘着性および撥水性が必要とされる製品が挙げられる。そのような対象物としては、例えば、ローラー、金型、樹脂型、プレート(板部材)、シュート、ホッパー、調理器具などが挙げられる。
ローラーとしては、例えば、乾燥ローラー、塗布ローラー、転写ローラー、貼り合わせローラー、圧着ローラー、ガイドローラー、サイディング材(外壁材)に模様を付すためのローラー、製紙ローラー、印刷ローラーなどが挙げられる。
金型としては、例えば、衛材製造金型、ゴム製品(タイヤ、グローブなど)製造型、靴成形型、自動車部品製造金型、ウレタン成形金型、ホットメルト接着剤成形金型、固体状ホットメルト接着剤押出金型などが挙げられる。
プレートとしては、例えば、不織布と吸水性高分子材料とを貼り合わせる工程で使用され、ホットメルト接着剤が付着され得るプレート、樹脂ペレット摺動プレートなどが挙げられる。
ホッパーとしては、食品計量器ホッパー、粉体投入ホッパーなどが挙げられる。
調理器具としては、例えば、焼き網、鍋、フライパン、グリル皿などが挙げられる。
塗料を対象物に塗布する方法としては、例えば、スプレーコート法、バーコート法、ディスペンサ法、刷毛塗り、へら塗りなどが挙げられる。好ましくは、スプレーコート法が挙げられる。
続いて、塗料組成物を対象物とともに、塗布現場において、常温で放置する。
放置する時間は、特に限定されず、有機溶剤が留去(除去)されるとともに、第1オリゴマーおよび第2オリゴマーが触媒の存在下で硬化できる時間であって、具体的には、例えば、30分以上、好ましくは、1時間以上、より好ましくは、10時間以上、さらに好ましくは、20時間以上であり、また、50時間以下である。
これによって、第1オリゴマーおよび第2オリゴマーにおけるアルコキシ基からOH基が生成され、それが、触媒に基づく[金属原子−OH]と脱水反応して、硬化反応が進行する。
続いて、第1オリゴマーおよび第2オリゴマーのアルコキシ基からOH基を生じる際の副生成物であるアルコールは、有機溶剤とともに除去(留去)される。
これにより、塗料組成物の硬化物である塗膜が得られる。
塗膜の鉛筆硬度は、例えば、2H以上、好ましくは、4H以上である。鉛筆硬度は、例えば、JIS K 5600−5−4(1999)年に記載に従って測定される。
塗膜の厚みは、例えば、20μm以上、好ましくは、30μm以上であり、また、例えば、80μm以下、好ましくは、60μm以下である。
そして、この塗料組成物は、第1オリゴマー、第2オリゴマー、触媒および有機溶剤含有し、第1オリゴマーと第2オリゴマーとの総量の割合が20質量%以上であり、触媒が、金属アルコキシド、金属キレート化合物および金属カルボン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つであり、有機溶剤の20℃における蒸気圧が、1kPa以上である。そのため、塗料組成物は、常温硬化することができる。その結果、この塗料組成物は、熱処理が不要な用途に好適に用いられる。
また、塗料組成物は、シリコーンオイルを含有し、かかるシリコーンオイルの25℃における動粘度が、100mm2/s以上である。そのため、塗料組成物の硬化物である塗膜は、摺擦前後の非粘着性に優れる。
さらに、塗料組成物では、第1オリゴマーの、第2オリゴマーに対する割合が、0.15以上、10以下であるので、塗膜の摺擦後の非粘着性に優れる。
また、塗料組成物では、第1オリゴマーと第2オリゴマーとの総量の割合が50質量%以下である。そのため、塗料組成物は、塗布の作業性に優れる。その結果、塗料組成物の硬化物である塗膜は、外観に優れる。
また、有機溶剤が、アルコール系溶剤であれば、第1オリゴマーおよび第2オリゴマーが縮合反応してアルコールを生成することを抑制することができる。つまり、塗料組成物(とりわけ、2液型硬化性組成物におけるシリコーン組成物)の貯蔵時における第1オリゴマーおよび第2オリゴマーの反応を抑制することができる。そのため、この塗料組成物(具体的には、シリコーン組成物)は、貯蔵安定性に優れる。
また、この塗料組成物では、有機溶剤の、第1オリゴマーと第2オリゴマーとシリコーンオイルとの総量100質量部に対する割合が、40質量部以上、300質量部以下であれば、塗料組成物の取扱性に優れるとともに、塗布後に過度に急速に乾燥が進行することに起因する塗膜の厚みムラが生成することを抑制することができつつ、歩留まりの過度の低下を抑制することができる。
また、この塗料組成物では、触媒の、第1オリゴマーと第2オリゴマーとの総量100質量部に対する割合が、2質量部以上、55質量部以下であれば、第1オリゴマーおよび第2オリゴマーが常温で迅速に硬化して、塗膜を常温で形成することができる。
[変形例]
変形例によっても、上記した塗料組成物と同様の作用効果を奏することができる。
上記した説明では、塗料組成物を2液型硬化性組成物として準備しているが、例えば、塗料組成物を1液型硬化性組成物として準備することもできる。
具体的には、第1オリゴマー、第2オリゴマー、シリコーンオイル、触媒および有機溶剤を、空気中の水分(湿気)がない状態で、配合する。具体的には、上記した各成分を、窒素などの不活性ガス雰囲気状態で、配合して混合し、それらを容器に密封する。そして、使用の直前の塗布現場において、容器を開栓して、塗料組成物を対象物に塗布する。この1液型硬化性組成物によっても、2液型硬化性組成物と同様の効果を奏することができる。
また、この塗料組成物は、常温硬化型であるが、必要により、常温硬化後に加熱(さらなる熱硬化)、または、常温硬化に代えて熱硬化することもできる。
加熱では、例えば、50℃以上の加熱など、公知の温度条件が採用される。上記した加熱によって、塗膜の硬度をより一層向上させることができる。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる割合(配合割合、含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する割合(配合割合、含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
まず、各実施例および各比較例で用いた各成分を以下に記載する。
・X−40−9250:式(3)中、bが8、cが4、dが4であるメチル系シリコーンアルコキシオリゴマー(第1オリゴマー)、信越化学工業社製
・KR−500:式(6)中、gが10、hが4であるメチル系シリコーンアルコキシオリゴマー(第2オリゴマー)、信越化学工業社製
・KF−96−10cs:ポリジメチルシロキサン、動粘度(25℃):10mm2/s、信越化学工業社製
・KF−96−50cs:ポリジメチルシロキサン、動粘度(25℃):50mm2/s、信越化学工業社製
・KF−96−100cs:ポリジメチルシロキサン、動粘度(25℃):100mm2/s、信越化学工業社製
・KF−96−1000cs:ポリジメチルシロキサン、動粘度(25℃):1,000mm2/s、信越化学工業社製
・KF−96−1万cs:ポリジメチルシロキサン、動粘度(25℃):10,000mm2/s、信越化学工業社製
・KF−96−10万cs:ポリジメチルシロキサン、動粘度(25℃):100,000mm2/s、信越化学工業社製
・KF−96−50万cs:ポリジメチルシロキサン、動粘度(25℃):500,000mm2/s、信越化学工業社製
・KF−96−100万cs:ポリジメチルシロキサン、動粘度(25℃):1,000,000mm2/s、信越化学工業社製
・D−25:チタン(IV)テトラn−ブトキシド、信越化学工業社製
・チタン(IV)テトライソプロポキシド、東京化成工業社製
・チタン(IV)テトラエトキシド、東京化成工業社製
・アルミニウム(III)トリsec−ブトキシド、東京化成工業社製
・アルミニウム(III)トリイソプロポキシド、東京化成工業社製
・アルミニウム(III)トリエトキシド、東京化成工業社製
・ジルコニウム(IV)テトラn−ブトキシド(約80%1−ブタノール溶液)、東京化成工業社製
・トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム(III)、東京化成工業社製
・テトラキス(2,4−ペンタンジオナト)チタン(IV)(63%イソプロピルアルコール溶液)、東京化成工業社製
・ビス(2,4−ペンタンジオナト)ビス(2−プロパノラト)チタン(IV)(75%イソプロピルアルコール溶液)、東京化成工業社製
・テトラキス(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム(IV)、東京化成工業社製
・ビス(2−エチルヘキサン酸)亜鉛(II)(80質量%ジエチレングリコールモノメチルエーテル溶液)、和光純薬工業社製
・トリス(2−エチルヘキサン酸)鉄(III)(50質量%ミネラルスピリット溶液)、和光純薬工業社製
・ビス(2−エチルヘキサン酸)コバルト(II)(65質量%ミネラルスピリット溶液)、ナカライテスク社製
・ビス(2−エチルヘキサン酸)マンガン(II)(50質量%ミネラルスピリット溶液)、和光純薬工業社製
・メタノール:20℃における蒸気圧13.3kPa
・エタノール:20℃における蒸気圧6kPa
・2−プロパノール:20℃における蒸気圧4kPa
・シクロヘキサン:20℃における蒸気圧10.6kPa
・アセトン:20℃における蒸気圧24.7kPa
・ジエチレングリコールジメチルエーテ:20℃における蒸気圧0.4kPa
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル:20℃における蒸気圧0.004kPa
・プロピレングリコール:20℃における蒸気圧0.01kPa
・水:20℃における蒸気圧2.3kPa
(実施例1)
200mlガラス容器に、X−40−9250を4.3g、KR−500を17.1g、KF−96−1000csを1.1g、2−プロパノールを67.5g、D−25を10.0g、配合し、マグネチックスターラーを用いて、20分間撹拌して、塗料組成物(1液型硬化性組成物)を調製した。
別途、対象物としての平板テストピース(厚さ1mm、横60mm、縦90mm、材質A5052アルミニウム合金)をトルエンで溶剤脱脂処理した後、#80番のアルミナ粒子を用いてショットブラスト加工した。この平板テストピースに、塗料組成物をエアースプレーで塗布し、温度23℃、湿度40%の雰囲気下で18時間静置して、塗膜を作製した。
(実施例2)〜(実施例47)および(比較例1)〜(比較例17)
塗料組成物のそれぞれにおける各成分を、表1〜表6に従って変更した以外は、実施例1と同様にして、塗料組成物を調製し、続いて、塗膜を作製した。
(塗膜の評価)
各実施例および各比較例の塗膜について、以下の項目を評価した。その結果を表1〜表6に記載する。
[外観]
塗膜を目視で観察して、塗膜の外観(平滑性)を、下記の基準に従って、評価した。
目視で観察をした際に、塗膜上に微細な孔が生じている場合は、さらにデジタルマイクロスコープで、孔の大きさを測定した。
A:塗膜の表面が平滑であった。目視では孔を確認できなかった。
B:塗膜の表面が凹凸はないが、目視で確認できる孔(直径100μm以上)があった。
C:塗膜の表面が凹凸があった。
D:塗膜に剥がれや亀裂があった。
[非粘着性(剥離性)]
(i) 摺動試験前の塗膜の剥離強度
180度引き剥がし法(JIS Z 0237:2009年、方法4)に準拠して、塗膜の非粘着性(剥離性)を評価した。
つまり、まず、ニチバン社製のセロテープ(登録商標)品番CT405AP−18(幅18mm)の粘着剤を、粘着(感圧接着)させ、その後、セロテープ(距離80mm)を塗膜から、速度300mm/minで、引き剥がし距離80mmで、剥離した。そして、塗膜の非粘着性(剥離性(易剥離性))を剥離強度として評価した。
(ii)摺動試験後の塗膜の剥離強度
大平理科工業社製のRUBBING TESTERを用いて、羊毛フェルトを1kg/cm2の荷重で塗膜に対して押し付けて、摺動試験を実施した。具体的には、摺動回数5,000回後の塗膜の剥離強度を、上記した180度引き剥がし法に従って、測定した。
[鉛筆硬度]
鉛筆硬度法(JIS K−5600−5−4(1999))に準拠して、塗膜の硬度を評価した。
まず、新東科学社製のトライボギアTYPE38を用いて、鉛筆芯に750gの垂直荷重を掛けて、塗膜に対して鉛筆の芯が45度で接するようにセットした。その後、掃引速度1mm/秒、掃引距離20mmで塗膜上を鉛筆を移動させた。使用した鉛筆は、三菱鉛筆製のUni 6B〜9Hで、塗膜上を移動させた後に塗膜が削れない鉛筆硬度を測定した。
[貯蔵安定性]
室温(20℃)下で、密栓可能な100mlガラス瓶に、塗料組成物(1液型硬化性組成物)を60g充填後、密栓した。
密栓したガラス瓶に入った塗料組成物を40℃雰囲気下で4週間静置後の塗料組成物の状態を下記4段階で評価した。
A:塗料組成物が、凝固せず、凝集せず、増粘しなかった。
B:塗料組成物が、貯蔵開始時よりも増粘した。
C:塗料組成物が、一部凝集し、凝固した。
D:塗料組成物の体積の半分以上が、凝集し、凝固した。