JP2023054516A - 硬化性組成物およびその用途 - Google Patents

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真希 横山
Maki Yokoyama
勝哉 山田
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Abstract

【課題】撥水性に優れるだけでなく、落雪氷性も良好な硬化物を形成可能な硬化性組成物およびその用途を提供する。【解決手段】シリコーン系樹脂成分(A)と、少なくとも1つの反応性基を有する反応性シリコーン系オイル成分(B)とを含む硬化性組成物であって、前記シリコーン系樹脂成分(A)が、D単位を実質的に含まず、前記反応性シリコーン系オイル成分(B)の割合が、前記シリコーン系樹脂成分(A)100質量部に対して0.03~10質量部である、硬化性組成物を調製する。【選択図】なし

Description

本発明は、撥水性のみならず、落雪氷性(表面に付着した雪や氷が硬化膜表面から落下し易い性質)に優れた硬化物を形成できる硬化性組成物およびその用途に関する。
積雪量の多い寒冷地(豪雪地帯など)では、雪害によるインフラ(インフラストラクチャー)の障害または機能低下のおそれがあり、安全で快適な生活環境を確保するため除雪作業が行われている。しかし、除雪作業は多大な労力を要し、特に、雪が湿雪(多くの水分を含む湿った雪)である場合には非常に重く、作業はより大変で危険なものになる。そのため、人手が少ない地域であったり、対象とする屋外構造物の数が多いまたは危険な場所に設置されている場合など、頻繁に除雪するのが困難なケースがある。
また、道路標識、案内標識、交通信号機(信号灯器)などに雪が付着することで落雪し難くなり、その視認性が低下してしまうことも問題視されている。例えば、近年ではLED(発光ダイオード)を光源としたLED式信号機の普及が進んでいるが、省エネルギー効果などに優れる反面、従来の電球式に比べて発熱量が少なく、信号機の表示部が雪で覆い隠されてしまう「白信号」と呼ばれる現象が起き易くなっている。
そのため、基材表面(固体表面)に対する着雪氷を防止したり、付着してしまった雪や氷が自然に落下するよう落雪氷性を高めたりする技術が求められている。
特開平2-147688号公報(特許文献1)には、着氷防止効果を有する着氷防止組成物が開示されている。特許文献1の実施例では、被検体表面に接着した氷に力を加えて剥離することにより着氷せん断破壊強度を測定することで着氷防止効果を確認しているものの、力をかけなくても自然に落下する性質については何ら記載されていない。
なお、着氷防止性(固体表面に雪や氷が付着するのを抑制する性質)は、落雪氷性(固体表面に付着した雪や氷が落下し易い性質)と大きく異なる特性であることが知られている。「固体表面の濡れ性 超親水性から超撥水性まで(共立出版)」(非特許文献1)の第96頁には「雪が付着しにくい表面が落雪しやすい表面とは、必ずしも限らない」と記載されている。さらに「着雪性と落雪性は必ずしも同じ要因に支配されるわけではなく、表面特性(撥水性、親水性)と雪の性質(湿雪か乾雪か)により大きく変化する」とも記載されている。
また、国際公開第2019/039468号(特許文献2)には、防汚または保護機能を長期間に亘り維持できる硬化物を形成できる硬化性組成物が開示され、防汚または保護機能として、撥水性や落雪氷促進機能(落雪氷性)などについて記載されている。しかし、特許文献2の硬化性組成物でも落雪氷性などが十分でない場合があった。
特開平2-147688号公報 国際公開第2019/039468号
化学の要点シリーズ12 固体表面の濡れ性 超親水性から超撥水性まで(発行所:共立出版(株)、2014年12月10日発行)
また、雪害対策用塗料では、透明とされるグレードであっても着色したものが多く、落雪氷性と下地の視認性とを高度に両立するのは困難であった。
従って、本発明の目的は、撥水性に優れるだけでなく、落雪氷性も良好な硬化物を形成可能な硬化性組成物およびその用途を提供することにある。
本発明の他の目的は、撥水性、落雪氷性および滑水性にも優れた硬化物を形成可能な硬化性組成物およびその用途を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、撥水性、落雪氷性、滑水性および外観が良好な硬化物を形成でき、作業性(塗工性または塗装性)にも優れた硬化性組成物およびその用途を提供することにある。
本発明の別の目的は、耐久性(耐候性または耐光性)に優れた硬化物を形成可能な硬化性組成物およびその用途を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、様々な基材に対して適用(または塗工)しても、作業性(塗工性または塗工性)が良好で、下地の視認性(透明性)に優れた硬化物を形成可能な硬化性組成物およびその用途を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、D単位を実質的に含まないシリコーン系樹脂成分と、反応性基を有する特定の反応性シリコーン系オイル成分とを特定の割合で含む硬化性組成物を調製すると、硬化により得られる硬化物が高い撥水性を示すだけでなく、落雪氷性にも優れることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の硬化性組成物(コーティング組成物または塗料組成物)は、シリコーン系樹脂成分(A)と、少なくとも1つの反応性基を有する反応性シリコーン系オイル成分(B)とを含む硬化性組成物であって、
前記シリコーン系樹脂成分(A)が、シロキサン単位としてD単位を実質的に含まず、
前記反応性シリコーン系オイル成分(B)の割合が、前記シリコーン系樹脂成分(A)100質量部に対して0.03~10質量部である。
前記反応性シリコーン系オイル成分(B)は、一方の分子末端のみに前記反応性基を有するのが好ましく、なかでも、一方の分子末端がケイ素原子に直接結合するヒドロキシル基(シラノール基)および/またはケイ素原子に直接結合するアルコキシ基(アルコキシシリル基)などに変性されたシリコーンオイルであることが好ましい。また、前記反応性シリコーン系オイル成分(B)は、下記(i)の条件で調製した組成物を用いて平滑な基板上に乾燥物(乾燥被膜または塗膜)を作製したとき、この乾燥物表面が下記(ii)および(iii)を満たす反応性シリコーン系オイルであるのが好ましい。
(i)反応性シリコーン系オイル成分(B)1質量部と、イソパラフィン系溶剤99質量部とからなる組成物
(ii)水の滴下量3μLの水接触角が90°以上(例えば90~120°)
(iii)水の滴下量50μLの水滑落角が25°以下(例えば1~25°)
前記硬化性組成物は、さらに硬化触媒(C)を含んでいてもよく、前記硬化触媒(C)の割合は、前記シリコーン系樹脂成分(A)100質量部に対して0.05質量部以上20質量部未満、好ましくは0.1~19質量部(例えば1~18.5質量部)程度であってもよい。また、前記硬化性組成物は、さらに、硬化触媒(C)および溶剤(D)を含んでいてもよく、前記シリコーン系樹脂成分(A)、前記反応性シリコーン系オイル成分(B)および前記硬化触媒(C)の総量の割合が、硬化性組成物全体に対して9.5質量%以上であってもよい。前記硬化性組成物は、落雪氷を促進するためのコーティング組成物であってもよい。前記硬化性組成物は、硬化して硬化物を形成し、得られた硬化物表面に雪を付着させ、-15℃から8~10℃に30分かけて昇温したときの落雪にかかる時間が、未処理基材、例えば、A5052アルミニウム合金板表面に付着させた雪の落雪にかかる時間よりも短い。
本発明は、前記硬化性組成物の硬化物を包含するとともに、基材の表面に、前記硬化性組成物をコーティングし、得られたコーティング膜を硬化して、硬化物を製造する方法も包含する。
また、本発明は、基材と、この基材の表面を被覆し、かつ前記硬化物で形成された硬化膜とを含む複合体も包含する。前記基材は、屋外構造物の少なくとも一部の領域を形成する基材であってもよい。前記屋外構造物は、道路標識、案内標識、看板、電光掲示板、信号機、街灯または灯台であってもよい。
さらに、本発明は、前記基材の表面に、前記硬化性組成物をコーティングして硬化膜を形成し、前記基材表面における落雪氷を促進する方法も包含する。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、シロキサン単位(またはシロキサンユニット)とは、ポリシロキサン[シリコーンまたはオルガノポリシロキサン(シロキサンレジンもしくはシロキサンオリゴマー]を形成する1つのケイ素原子に対応する構成単位(ポリシロキサン骨格の内部または末端を構成する単位)、すなわち、M単位、D単位、T単位およびQ単位から選択される基本単位を意味する。
また、本明細書および特許請求の範囲において、「A5052アルミニウム合金板」は、JIS H 4000に準拠したA5052のアルミニウム合金製の板である。
本発明の硬化性組成物(コーティング組成物または塗料組成物)は、D単位を実質的に含まないシリコーン系樹脂成分(A)と、反応性基を有する所定の反応性シリコーン系オイル成分(B)とを特定の割合で組み合わせて含むため、高い撥水性を示すだけでなく、落雪氷性にも優れた硬化物を形成できる。また、撥水性、落雪氷性および滑水性にも優れた硬化物を形成することもできる。さらに、撥水性、落雪氷性、滑水性および外観が良好な硬化物を形成できるだけでなく、撥水性を向上するための成分として低表面エネルギー(または低表面張力)を有するシリコーン系成分を含んでいても、ハジキ(凹みまたはピンホール)などを有効に抑制でき、作業性(塗工性または塗装性)にも優れている。また、耐久性(耐候性または耐光性)に優れた硬化物を形成することもできる。さらに、様々な基材に対して適用(または塗工)しても硬化物が艶ぼけ(白ぼけ)、クラック、ハジキ(凹みまたはピンホール)などの影響によって下地の視認性を損ない難く、透明性に優れた硬化物を形成できるため、視認性が要求される基材(または部材)に対して好適に適用できる。
[硬化性組成物(コーティング組成物または塗料組成物)]
本発明の硬化性組成物は、特定のシリコーン系樹脂成分(A)と特定の反応性シリコーン系オイル成分(B)とを少なくとも含んでいる。硬化性組成物は、これらの成分を特定の割合で含むことにより、基材(成形体や屋外構造物など)に強固に密着し、撥水性、落雪氷性に優れた硬化物(特に、硬化膜)を形成できる。また、通常、屋外で使用される用途では、光、熱、水、雪などに晒されることにより、シリコーン系オイル成分が塗膜から脱離するためか、耐久性(耐候性または耐光性)が低下する場合があるが、本発明の硬化性組成物は耐久性に優れた硬化物(硬化膜またはコーティング膜)を形成できる。
(A)シリコーン系樹脂成分
シリコーン系樹脂成分(A)は、硬化物においてシロキサンマトリックスを形成する成分、すなわち、シロキサン単位を主たる構成単位とする樹脂成分(シリコーン系レジンまたはシリコーン系オリゴマー成分)であり、シリコーン系樹脂成分(A)中の構成単位全体に対するシロキサン単位の割合は、100質量%程度であり、シロキサン単位以外の構成単位は実質的に含んでいない。
シロキサン単位としては、M単位[R SiO1/2](式中、Rは独立して水素原子または有機基を示す。)、D単位[R SiO2/2](式中、Rは独立して水素原子または有機基を示す。)、T単位[RSiO3/2](式中、Rは水素原子または有機基を示す。)およびQ単位[SiO4/2]が挙げられる。
、R、Rで表される有機基は、例えば、置換基を有していてもよい炭化水素基(非反応性有機基)であるのが好ましい。
有機基を形成する炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などのC1-6アルキル基などが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)、ナフチル基などのC6-20アリール基などが挙げられる。
有機基を形成する炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。そのため、置換基を有する炭化水素基としては、例えば、フッ化炭化水素基(例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル基などのフッ化アルキル基など)であってもよい。
基R、R、Rは、有機基であるのが好ましく、なかでも置換基を有していてもよい炭化水素基(例えば、メチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのフッ化アルキル基など、好ましくはアルキル基またはアリール基)であるのが好ましく、さらに好ましくはC1-3アルキル基などのアルキル基であり、特にC1-2アルキル基(特にメチル基)が好ましい。
なお、M単位、D単位において、同一単位内の3つのR、2つのRの種類は、それぞれ互いに同一または異なっていてもよい。また、2以上のM単位を含む場合、各M単位におけるRの種類は互いに同一または異なっていてもよく、2以上のD単位を含む場合、各D単位におけるRの種類は互いに同一または異なっていてもよく、2以上のT単位を含む場合、各T単位におけるRの種類は互いに同一または異なっていてもよい。
シリコーン系樹脂成分(A)は、これらのシロキサン単位を、それぞれ、単独でまたは二種以上組み合わせて含まれていてもよい。
シリコーン系樹脂成分(A)は、分岐状または3次元網目状の硬化物(硬化膜、コーティング膜など)を形成するために、T単位および/またはQ単位を主たる構成単位として有している。特にT単位(特にRがメチル基などのアルキル基であるT単位)の割合が多いと、落雪氷性や滑水性を有効に向上できるようである。そのため、前記シリコーン系樹脂成分(A)に含まれるT単位(特にRがメチル基などのアルキル基であるT単位)の割合は、前記シリコーン系樹脂成分(A)中のシロキサン単位全体に対して、例えば50モル%以上(例えば60~100モル%)、好ましくは70モル%以上(例えば80モル%以上)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば95~100モル%)程度であってもよく、実質的にT単位のみで前記シリコーン系樹脂成分(A)を構成するのが特に好ましい。
また、シリコーン系樹脂成分(A)において、D単位(特に2つのRが双方ともメチル基などのアルキル基であるD単位)の割合が多すぎると落雪氷性や滑水性が低下し易いようである。そのため、前記シリコーン系樹脂成分(A)は本発明の効果を害しない範囲でD単位を含んでいてもよいが、前記シリコーン系樹脂成分(A)に含まれるD単位(特に2つのRが双方ともメチル基などのアルキル基であるD単位)の割合は、例えば5モル%以下(例えば0~3モル%)、さらに好ましくは1モル%以下(例えば0~0.5モル%)程度であってもよく、実質的にD単位を含まない(0モル%)のが特に好ましい。
シリコーン系樹脂成分(シリコーン系レジンまたは、シリコーン系オリゴマー)(A)としては、当該分子の少なくとも一方の末端(片末端または両末端)にアルコキシ基を有する各種の相当化合物が挙げられ、これらの線状、分岐状のいずれであってもよい。すなわち、シリコーン系樹脂成分(A)は、熱および/または湿気による硬化反応(縮合反応、加水分解反応および縮合反応など)で硬化物を形成するために、分子末端において、ケイ素原子に直接結合するヒドロキシル基(シラノール基)、および/またはケイ素原子に直接結合するアルコキシ基(アルコキシシリル基)などの加水分解性基を有しており、湿気硬化が可能な点から、アルコキシ基(アルコキシシリル基)を有するのが好ましい。
ケイ素原子に直接結合するアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、などのC1-6アルコキシ基などが挙げられる。これらのアルコキシ基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、メトキシ基やエトキシ基などのC1-3アルコキシ基が好ましく、C1-2アルコキシ基がさらに好ましく、メトキシ基が最も好ましい。
シリコーン系樹脂成分(A)は、シリコーン系レジンであってもよいが、常温で湿気硬化可能であり(硬化のための熱処理が不要であり)、例えば、火気厳禁の場所においても使用(施工)できる点から、シリコーン系オリゴマー(シロキサンオリゴマー)であるのが好ましい。なお、一般的にシリコーン系レジンとシリコーン系オリゴマーとの間に明確な線引きはないが、シリコーン系オリゴマーは、二量体~比較的低分子量な多量体(低分子量なシリコーン系レジン)を意味する。そのため、本明細書および特許請求の範囲において、シリコーン系オリゴマーの分子量(または重量平均分子量)は、例えば200~10000程度の範囲から選択でき、上限値は、例えば8000程度以下(例えば7000程度以下)、好ましくは6000程度以下(例えば5000程度以下)であってもよく、4000程度以下(例えば3000程度以下)、2000程度以下(例えば1000程度以下)などであってもよく、下限値は、例えば300程度以上(例えば400程度以上)、好ましくは500程度以上であってもよい。また、シリコーン系オリゴマーの分子量(または数平均分子量)は、例えば200~5000程度の範囲から選択してもよく、上限値は、4000程度以下(例えば3000程度以下)であってもよく、2000程度以下(例えば1000程度以下)であってもよく、下限値は、300程度以上(例えば400程度以上)、好ましくは500程度以上であってもよい。なお、重量平均分子量、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(標準ポリスチレン換算)により測定してもよい。
シリコーン系樹脂成分(A)は、後述する硬化触媒(C)の存在下で、アルコキシシリル基の架橋により、常温で硬化するものであってもよく、下記の平均組成式で示される化合物であってもよい。
Si(OR(4-a-b)/2
(式中、RおよびRは独立してアルキル基またはアリール基を示し、aは0.4~1.7の範囲にある平均値であり、bはシリコーン系樹脂成分(A)中における基ORの比率が5質量%以上となる値である)。
シリコーン系樹脂成分(A)の25℃における動粘度は、例えば0.1~200mm/s程度の範囲から選択してもよく、上限値は、120mm/s以下、好ましくは100mm/s以下程度であってもよく、下限値は0.5mm/s以上(例えば20mm/s以上)程度である。
具体的なシリコーン系樹脂成分(A)としては、例えば、メチル系シリコーンアルコキシオリゴマー、メチルフェニル系シリコーンアルコキシオリゴマーなどが挙げられる。これらのうち、メチル系シリコーンアルコキシオリゴマーが好ましい。
メチル系シリコーンアルコキシオリゴマーとしては、例えば、メチルトリメトキシシランから生成されるメチル系シリコーンメトキシオリゴマーが挙げられる。
シリコーン系樹脂成分(A)は、市販品であってよく、例えば、KC-89S、KR-515、KR-400、KR-500、X-40-9225(いずれも信越化学工業(株)製)、US-CF-2403、SR2402(いずれも東レ・ダウコーニング(株)製)などを利用できる。これらのシリコーン系樹脂成分(A)は、単独で用いてもよく、また2種類以上併用してもよい。
なお、シリコーン系樹脂成分(A)は、本発明の効果を害しない範囲でD単位を有するシリコーン系樹脂成分を含んでいてもよく、例えば、X-40-9246、X-40-9250(いずれも信越化学工業(株)製)などを含んでいてもよく、含まないのが好ましい。
シリコーン系樹脂成分(A)の割合は、特に制限されないが、硬化性組成物全体に対して、例えば1~90質量%程度の範囲から選択してもよく、下限値は、例えば10質量%以上(例えば20質量%以上)、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、上限値は、例えば70質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下(例えば、45質量%以下)である。シリコーン系樹脂成分(A)の割合が少なすぎると、適用する基材によっては塗布する際にハジキや艶ぼけ(白ぼけまたは艶引け)が発生し易く、下地の視認性が低下するおそれがあり、逆に多すぎると、作業性(塗工性、塗装性)が低下して硬化物の外観不良を招く(例えば、スポンジや刷毛などの塗装方法によっては塗装跡が残って、下地の視認性が低下する)おそれがある。
(B)反応性シリコーン系オイル成分
反応性シリコーン系オイル成分(変性シリコーン系オイル成分、反応性シリコーン系添加剤または反応性シリコーン系改質剤)(B)としては、硬化物に必要な撥水性、滑水性、落雪氷性などを付与する成分であり、シロキサン単位の繰り返し構造(ポリシロキサン骨格)を有しており、必要に応じて、M単位、T単位、Q単位などを有していてもよいが、主としてD単位で形成された鎖状(特に直鎖状)構造であるのが好ましい。
なお、反応性シリコーン系オイル成分(B)のシロキサン単位(M単位、D単位、T単位、Q単位)としては、前記シリコーン系樹脂成分(A)の項で例示した各単位と同様の単位などが挙げられる。これらのシロキサン単位は、それぞれ、単独でまたは二種以上組み合わせて含まれていてもよい。
反応性シリコーン系オイル成分(B)のシロキサン単位において、基R、R、Rは、有機基であるのが好ましく、なかでも置換基を有していてもよい炭化水素基(例えば、メチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのフッ化アルキル基など、好ましくはアルキル基またはアリール基)であるのが好ましく、さらに好ましくはC1-3アルキル基などのアルキル基であり、特にC1-2アルキル基(特にメチル基)が好ましい。
なお、M単位、D単位において、同一単位内の3つのR、2つのRの種類は、それぞれ互いに同一または異なっていてもよい。また、2以上のM単位を含む場合、各M単位におけるRの種類は互いに同一または異なっていてもよく、2以上のD単位を含む場合、各D単位におけるRの種類は互いに同一または異なっていてもよく、2以上のT単位を含む場合、各T単位におけるRの種類は互いに同一または異なっていてもよい。
反応性シリコーン系オイル成分(B)中のD単位は、例えば、Rが双方ともメチル基などのアルキル基であるD単位を主として含んでいてもよい。
本発明の反応性シリコーン系オイル成分(B)は、少なくとも1つの反応性基を有していればよく、落雪氷性を向上し易い点で、好ましくは、一方の分子末端(特に一方の分子末端のシロキサン単位)のみに反応性基(変性基)を有する化合物、すなわち、片末端変性シリコーン系オイル成分である。未変性(ストレートシリコーンオイル)を前記シリコーン系樹脂成分(A)と組み合わせると、落雪氷性、滑水性、耐久性などが低下するおそれがある。
前記反応性基(変性基)の種類は特に制限されず、炭素原子に直接結合するヒドロキシル基(またはヒドロキシル基含有基)などであってもよいが、特に、硬化反応によって硬化物の表面に配向し易く、耐久性(耐候性または耐光性)をより向上できる点から、ケイ素原子に直接結合するヒドロキシル基(シラノール基)や、ケイ素原子に直接結合するアルコキシ基(アルコキシシリル基)などの加水分解性基が好ましく、ケイ素原子に直接結合するアルコキシ基(アルコキシシリル基)を有するのがさらに好ましい(すなわち、片末端アルコキシ変性されたシリコーンオイルがさらに好ましい)。
なお、ケイ素原子に直接結合するアルコキシ基としては、好ましくはメトキシ基、エトキシ基などのC1-2アルコキシ基が挙げられ、さらに好ましくはメトキシ基が挙げられる。また、反応性シリコーン系オイル成分(B)の1分子中における前記反応性基の数は特に制限されず、2以上の反応性基を有する場合、各反応性基の種類は同一または異なっていてもよい。
反応性シリコーン系オイル成分(B)の25℃における動粘度(単位:mm/s)は、例えば5~1000(例えば10~800、好ましくは15~100)程度の範囲から選択してもよく、下限値は、例えば20以上(例えば30以上)、好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上(例えば80以上)程度であってもよく、上限値は、例えば500以下(例えば300以下)、好ましくは200以下(例えば150以下)、さらに好ましくは100以下(例えば、80以下)程度であってもよい。動粘度が高すぎると、硬化性組成物の調製が困難となったり、調製できても、塗装の際に塗り難かったり、ハジキが発生したりして作業性(塗工性、塗装性)が低下するおそれがある。なお、本明細書および特許請求の範囲において、動粘度は、JIS Z 8803:2011(液体の粘度測定 細管粘度計による粘度測定方法)に準じて測定できる。
反応性シリコーン系オイル(B)は、下記(i)の条件で調製した組成物(希釈液)を用いて、平滑な基板、例えば、ポリカーボネート樹脂基板(JIS K 6735準拠)上に乾燥物(または塗膜)を作製したとき、この乾燥物表面が下記(ii)および(iii)を満たす反応性シリコーン系オイルであるのが好ましい。
(i)反応性シリコーン系オイル成分(B)1質量部と、イソパラフィン系溶剤99質量部とからなる組成物(希釈液)
(ii)水の滴下量3μLの水接触角が90°以上
(iii)水の滴下量50μLの水滑落角が25°以下
前記(i)の組成物(希釈液)中のイソパラフィン系溶剤としては、後述する溶剤(D)に例示するイソパラフィン系溶剤などであってもよく、好ましくはCAS登録番号64741-66-8である。
また、前記(i)の組成物(希釈液)の乾燥物は、例えばポリカーボネート樹脂基材(JIS K 6735準拠)などの平滑な基板上に、前記条件(i)記載の組成物を乾燥前重量で10g/m程度となるように慣用の塗布方法、例えば、スポンジなどを用いて塗布し、室温(23℃)、湿度50%RH雰囲気下で24時間程度乾燥して調製でき、具体的には後述する実施例に記載の方法に準じて調製するのが好ましい。
前記(i)で得た乾燥物(または塗膜)の水接触角(ii)は、例えば90°以上、好ましくは90~120°程度であればよく、下限値は、より好ましくは95°以上、さらに好ましくは100°以上であり、上限値は、より好ましくは110°以下、さらに好ましくは105°以下程度であることが挙げられる。水接触角(ii)が小さすぎると、硬化物における撥水性や落雪氷性が低下するおそれがある。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、前記水接触角(ii)の測定方法は慣用の方法を利用でき、測定に用いる水の滴下量は、3μLが好ましく、具体的には後述する実施例の撥水性試験に記載した方法に準じて測定する。
前記(i)で得た乾燥物の水滑落角(iii)は、例えば30°以下(例えば0~25°(または0°を超え25°以下))程度であればよく、上限値は、好ましくは25°以下(例えば23°以下)、さらに好ましくは20°以下であり、下限値は、硬化物における滑水性や落雪氷性を有効に向上する観点から低いほど好ましく、例えば1°以上(例えば10°以上)であってもよく、15°以上(例えば17°以上)であってもよい。水滑落角(iii)が大きすぎると、硬化物における滑水性や落雪氷性が低下するおそれがある。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、前記水滑落角(iii)の測定方法は慣用の方法を利用でき、測定に用いる水の滴下量は、50μLが好ましく、具体的には後述する実施例の滑水性試験に記載した方法に準じて測定する。
シリコーン系オイル成分(B)は、市販品であってよく、例えば、X-22-170BX(片末端カルビノール変性、信越化学工業(株)製)、X-22-170DX(片末端カルビノール変性、信越化学工業(株)製)、X-22-176DX(片末端ジオール変性、信越化学工業(株)製)、X-22-176F(片末端ジオール変性、信越化学工業(株)製)、X-22-176GX-A(片末端ジオール変性、信越化学工業(株)製)、KR-4000A(片末端アルコキシ変性、信越化学工業(株)製)、KP-983(片末端アルコキシ変性、信越化学工業(株)製)などを利用できる。これらの反応性シリコーン系オイル成分(B)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
反応性シリコーン系オイル成分(B)の割合は、シリコーン系樹脂成分(A)100質量部に対して、例えば0.03~10質量部(例えば0.05~1.5質量部)程度であってもよく、下限値は、例えば0.05質量部以上であり、好ましくは0.1質量部以上であり、さらに好ましくは0.15質量部以上、とりわけ好ましくは0.25質量部以上(例えば0.3質量部以上)、最も好ましくは0.35質量部以上(例えば0.4質量部以上)であり、また、上限値は、例えば10質量部以下(例えば5質量部以下)、好ましくは2質量部以下(例えば2質量部未満)、さらに好ましくは1.5質量部以下(例えば1.2質量部以下)、とりわけ好ましくは1質量部以下(例えば0.8質量部以下)、最も好ましくは0.7質量部以下(例えば0.6質量部以下、好ましくは0.55質量部以下、特に0.5質量部以下)である。反応性シリコーン系オイル成分(B)の割合が多すぎると、塗装する際に(塗装方法などによっては)ハジキが発生し易く作業性(塗工性、塗装性)が低下したり、凹み(または凹凸)やピンホールなどの外観不良が生じるおそれがある。逆に反応性シリコーン系オイル成分(B)の割合が少なすぎると、滑水性、落雪氷性、特に滑水性が低下したりするおそれがある。
(C)硬化触媒
硬化性組成物は、硬化触媒(C)を必ずしも含んでいなくてもよいが、少なくとも含んでいるのが好ましい。硬化触媒(C)は、例えば、硬化性組成物の常温硬化(湿気硬化)を促進可能な触媒であれば特に制限されず、空気中の水分と反応して加水分解し、活性な[金属原子-OH]を生成し、[金属原子-OH]と、シリコーン系樹脂成分(A)または反応性シリコーン系オイル成分(B)とを縮合反応(脱水または脱アルコール縮合など)させて結合[金属原子-O-Si]を生成してシロキサン結合[Si-O-Si]の形成を促進できる硬化触媒であってもよい。
硬化触媒(C)としては、例えば、金属アルコキシド、金属キレート化合物、金属カルボン酸塩などが挙げられる。
金属アルコキシドとしては、例えば、チタンアルコキシド[チタントリブトキシドなどのチタントリC1-8アルコキシド;チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラn-プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn-ブトキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンテトラペントキシド、チタンテトラヘキソキシド、チタンテトラ(2-エチルヘキソキシド)などのチタンテトラC1-8アルコキシドなど]、アルミニウムアルコキシド(アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリn-プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリs-ブトキシド、アルミニウムトリn-ブトキシドなどのアルミニウムトリC1-8アルコキシドなど)、ジルコニウムアルコキシド(ジルコニウムテトラn-ブトキシド、ジルコニウムテトラn-プロポキシドなどのジルコニウムテトラC1-8アルコキシドなど)、ゲルマニウムアルコキシド(ゲルマニウムテトラエトキシドなどのゲルマニウムテトラC1-8アルコキシドなど)、スズアルコキシド(スズテトラn-ブトキシド、スズテトラt-ブトキシドなどのスズテトラC1-8アルコキシドなど)、ハフニウムアルコキシド(ハフニウムテトラ2-プロポキシド、ハフニウムテトラt-ブトキシドなどのハフニウムテトラC1-8アルコキシドなど)、ニオブアルコキシド(ニオブペンタエトキシドなどのニオブペンタC1-8アルコキシドなど)、タンタルアルコキシド(タンタルペンタn-ブトキシド、タンタルペンタエトキシドなどのタンタルペンタC1-8アルコキシドなど)などが挙げられる。これらの金属アルコキシドは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらのうち、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシドが好ましく、チタンテトラアルコキシド、アルミニウムトリアルコキシドがさらに好ましい。なお、金属アルコキシドにおける複数のアルコキシ基は、それぞれ炭素数や分岐の有無により反応性が異なる。一方、加水分解が過度に早く進行すると、安定性(または作業性)が低下する場合がある。そのため、反応性および安定性を考慮すれば、チタンテトラアルコキシドのうち、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンテトラn-ブトキシドなどのチタンテトラC2-4アルコキシドが特に好ましく、アルミニウムトリアルコキシドのうち、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリs-ブトキシドなどのアルミニウムトリC2-4アルコキシドが特に好ましい。
金属アルコキシドは、市販品であってもよく、例えば、D-25(チタンテトラn-ブトキシド、信越化学工業(株)製)などを利用できる。
金属キレート化合物は、例えば、β-ジケトン、リン酸エステル、アルカノールアミンなどの配位子が金属に配位した金属キレート化合物などが挙げられる。
β-ジケトンとしては、例えば、2,4-ペンタンジオン、2,4-ヘキサンジオン、3,5-ヘプタンジオン、2,4-オクタンジオン、2,4-デカンジオン、2,4-トリデカンジオンなどのC3-18アルカンジオン;5,5-ジメチル-2,4-ヘキサンジオン、2,2-ジメチル-3,5-ノナンジオン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオンなどのC1-3アルキルC3-18アルカンジオン;1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオンなどのアリールC3-18アルカンジオン;1,3-シクロペンタンジオン、1,3-シクロヘキサンジオンなどのシクロアルカンジオン;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルなどのアセト酢酸C1-3アルキル;アセト酢酸フェニルなどのアセト酢酸アリールなどが挙げられる。
リン酸エステルとしては、例えば、リン酸2-エチルヘキシルなどのリン酸アルキルエステルなどが挙げられる。
アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
これらの配位子は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、β-ジケトンが好ましく、2,4-ペンタンジオンなどのC3-12アルカンジオンが特に好ましい。
金属キレート化合物を形成する中心金属(金属原子)としては、特に限定されず、例えば、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、マグネシウム、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、パラジウム、インジウム、スズなどが挙げられる。これらの金属は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、アルミニウム、チタン、ジルコニウムが好ましい。
具体的な金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウムキレート化合物[例えば、トリス(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセタト)アルミニウム、ビス(エチルアセトアセタト)(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウムなど]、チタンキレート化合物[例えば、テトラキス(2,4-ペンタンジオナト)チタン、テトラキス(エチルアセトアセタト)チタンなど]、ジルコニウムキレート化合物[例えば、テトラキス(2,4-ペンタンジオナト)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセタト)ジルコニウムなど]、ニオブキレート化合物[例えば、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナトニオブ(IV)など]、マグネシウムキレート化合物[例えば、ジアクアビス(2,4-ペンタンジオナト)マグネシウムなど]、カルシウムキレート化合物[例えば、ジアクアビス(2,4-ペンタンジオナト)カルシウムなど]、クロムキレート化合物[例えば、トリス(2,4-ペンタンジオナト)クロムなど]、マンガンキレート化合物[例えば、ジアクアビス(2,4-ペンタンジオナト)マンガンなど]、鉄キレート化合物[例えば、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄など]、コバルトキレート化合物[例えば、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルトなど]、ニッケルキレート化合物[例えば、ビス(2,4-ペンタンジオナト)ニッケルなど]、銅キレート化合物[例えば、ビス(2,4-ペンタンジオナト)銅など]、亜鉛キレート化合物[例えば、ビス(2,4-ペンタンジオナト)亜鉛など]、ガリウムキレート化合物[トリス(2,4-ペンタンジオナト)ガリウムなど]、パラジウムキレート化合物[例えば、ビス(2,4-ペンタンジオナト)パラジウムなど]、インジウムキレート化合物[例えば、トリス(2,4-ペンタンジオナト)インジウムなど]、スズキレート化合物[例えば、ビス(2,4-ペンタンジオナト)スズなど]などが挙げられる。これらの金属キレート化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらのうち、アルミニウムキレート化合物[例えば、トリス(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウムなどのトリスC3-8アルカンジオナトアルミニウムなど]、チタンキレート化合物[例えば、テトラキス(2,4-ペンタンジオナト)チタンなどのテトラキスC3-8アルカンジオナトチタンなど]、ジルコニウムキレート化合物[例えば、テトラキス(2,4-ペンタンジオナト)ジルコニウムなどのテトラキスC3-8アルカンジオナトジルコニウムなど]が好ましく、硬化膜における優れた堅牢性(強度)を維持できる点から、アルミニウムキレート化合物[トリスC3-6アルカンジオナトアルミニウムなど]、チタンキレート化合物[テトラキス(2,4-ペンタンジオナト)チタンなどのテトラキスC3-6アルカンジオナトチタンなど]がさらに好ましい。
金属キレート化合物は、市販品であってもよく、例えば、オルガチックスTC-401(65質量%テトラキス(2,4-ペンタンジオナト)チタンの2-プロパノール含有液、マツモトファインケミカル(株)製)などを利用できる。
また、金属キレート化合物は、前記配位子に加え、アルコキシ基をさらに有するアルコキシ基含有金属キレート化合物であってもよい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、2-プロポキシ基、n-ブトキシ基、2-ブトキシ基、2-エチル-ヘキシルオキシ基などのC1-12アルコキシ基などが挙げられる。これらのアルコキシ基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのアルコキシ基のうち、2-プロポキシ基などのC1-4アルコキシ基が好ましい。アルコキシ基含有金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウムエチルアセトアセタトジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセタトジブトキシドなどのアルコキシ基含有アルミニウムキレート化合物、ビス(2,4-ペンタンジオナト)ビス(2-プロパノラト)チタンなどのアルコキシ基含有チタンキレート化合物などが挙げられる。
金属カルボン酸塩(カルボン酸金属塩)において、カルボン酸としては、例えば、エタン酸(酢酸)、プロパン酸(プロピオン酸)、ブタン酸(酪酸)、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸などの直鎖状C2-18脂肪族カルボン酸;2-メチルブタン酸、2-メチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、2-メチルヘプタン酸、4-メチルオクタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸などの分岐鎖状C4-18脂肪族カルボン酸;ナフテン酸などの脂環族カルボン酸などが挙げられる。これらのカルボン酸は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、分岐鎖状脂肪族カルボン酸が好ましく、2-エチルヘキサン酸などの分岐鎖状C6-10脂肪族カルボン酸がさらに好ましい。
金属カルボン酸塩を形成する金属としては、特に限定されず、例えば、前記金属キレート化合物を形成する金属として例示された金属などが挙げられる。前記金属は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。なお、塩を形成しないカルボン酸は縮合が困難であり、常温硬化を促進できないため、硬化触媒としては好ましくない。
金属カルボン酸塩としては、例えば、アルミニウムカルボン酸塩、チタンカルボン酸塩、ジルコニウムカルボン酸塩、ニオブカルボン酸塩、マグネシウムカルボン酸塩、カルシウムカルボン酸塩、クロムカルボン酸塩、マンガンカルボン酸塩、鉄カルボン酸塩、コバルトカルボン酸塩、ニッケルカルボン酸塩、銅カルボン酸塩、亜鉛カルボン酸塩、ガリウムカルボン酸塩、パラジウムカルボン酸塩、インジウムカルボン酸塩、スズカルボン酸塩、タンタルカルボン酸塩などが挙げられる。これらの金属カルボン酸塩は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらの金属カルボン酸塩のうち、亜鉛カルボン酸塩、鉄カルボン酸塩、コバルトカルボン酸塩、マンガンカルボン酸塩が好ましい。
亜鉛カルボン酸塩としては、例えば、酢酸亜鉛、ビス(2-エチルヘキサン酸)亜鉛などの分岐鎖状C2-12脂肪族カルボン酸亜鉛;ナフテン酸亜鉛などの脂環族カルボン酸亜鉛などが挙げられる。これらのうち、ビス(2-エチルヘキサン酸)亜鉛などの分岐鎖状C6-10脂肪族カルボン酸亜鉛が好ましい。
鉄カルボン酸塩としては、例えば、酢酸鉄、ビス(2-エチルヘキサン酸)鉄などの分岐鎖状C2-12脂肪族カルボン酸鉄;ナフテン酸鉄などの脂環族カルボン酸鉄などが挙げられる。これらのうち、ビス(2-エチルヘキサン酸)鉄などの分岐鎖状C6-10脂肪族カルボン酸鉄が好ましい。
コバルトカルボン酸塩としては、例えば、酢酸コバルト、ビス(2-エチルヘキサン酸)コバルトなどの分岐鎖状C2-12脂肪族カルボン酸コバルト;ナフテン酸コバルトなどの脂環族カルボン酸コバルトなどが挙げられる。これらのうち、ビス(2-エチルヘキサン酸)コバルトなどの分岐鎖状C6-10脂肪族カルボン酸コバルトが好ましい。
マンガンカルボン酸塩としては、例えば、酢酸マンガン、ビス(2-エチルヘキサン酸)マンガンなどの分岐鎖状C2-12脂肪族カルボン酸マンガン;ナフテン酸マンガンなどの脂環族カルボン酸マンガンなどが挙げられる。これらのうち、ビス(2-エチルヘキサン酸)マンガンなどの分岐鎖状C6-10脂肪族カルボン酸マンガンが好ましい。
これらの硬化触媒(C)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用でき、金属アルコキシド、金属キレート化合物および金属カルボン酸塩を、それぞれ単独で使用するのが好ましい。また、硬化触媒(C)は、後述する溶剤に溶解した触媒溶液として調製してもよい。これらの硬化触媒(C)のうち、金属アルコキシド、金属キレート化合物が好ましく、チタンアルコキシド、チタンキレート化合物などのチタン系硬化触媒がさらに好ましい。
硬化触媒(C)の割合は、シリコーン系樹脂成分(A)100質量部に対して、例えば0.05質量部以上20質量部未満(例えば0.1~19質量部、好ましくは1~18.5質量部)程度の範囲から選択してもよく、下限値は、例えば0.3質量部以上(例えば0.5質量部以上)、好ましくは0.6質量部以上(例えば0.8質量部以上)、さらに好ましくは1質量部以上(例えば3質量部以上)、特に5質量部以上(例えば8質量部以上)であり、上限値は、例えば19質量部以下(例えば18.5質量部以下)、好ましくは16質量部以下(例えば14質量部以下)、さらに好ましくは12質量部以下程度であってもよい。硬化触媒(C)の割合が少なすぎると、滑水性が低下したり、常温で迅速に硬化させるのが困難となり易く、逆に多すぎると、落雪氷性、滑水性が低下したり、耐候性が低下してクラックが生じ易く、外観不良(または下地の視認性低下)となるおそれがある。
(D)溶剤
溶剤(D)は、上述したシリコーン系樹脂成分(A)、反応性シリコーン系オイル成分(B)および硬化触媒(C)[単に、成分(A)~(C)ともいう]を溶解および/または分散可能な溶剤であれば特に制限されない。
溶剤(D)としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(または2-プロパノール)などのアルコール系溶剤(例えば、C1-4アルカノールなど);酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、エチルグリコールアセテート、酢酸アミルなどのエステル系溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン系溶剤;イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、ノナン、イソノナン、デカン、イソデカン、ミネラルターペンなどのパラフィン系溶剤;シクロペンタン、シクロヘキサンなどのナフテン系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤;ミネラルスピリットなどの石油系溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
これらのうち、アルコール系溶剤(2-プロパノールなどのC2-3アルカノール)、パラフィン系溶剤[作業性(塗工性、塗装性)の観点から好ましくはイソパラフィン系溶剤(例えば、イソペンタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソノナン、イソデカンなどのC4-12イソパラフィン系溶剤、好ましくはC7-10イソパラフィン系溶剤など)]であってもよい。
さらに、溶剤(D)は、塗料としての安定性確保の点から、実質的に水を含まないのが好ましい。水の割合は、組成物中1質量%以下であってもよく、好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、水を含まないのが最も好ましい。
溶剤(D)の割合は特に制限されず、作業性(塗工性、塗装性)や目的とする硬化膜の厚み(平均厚みまたは乾燥後重量)などに応じて適宜調整してもよく、成分(A)~(C)の総量の割合(特に硬化物を形成する固形分の濃度)が、硬化性組成物全体(特に前記成分(A)~(D)の総量)に対して、例えば4~95質量%(例えば9.5質量%以上)となるよう調整してもよく、下限値は、例えば4質量%以上(例えば8質量%以上)、好ましくは10質量%以上(例えば20質量%以上)、さらに好ましくは25質量%以上(例えば30質量%以上)、特に40質量%以上であり、上限値は、例えば95質量%以下(例えば90質量%以下)、好ましくは80質量%以下(例えば70質量%以下)、さらに好ましくは65質量%以下(例えば60質量%以下)、特に55質量%以下(例えば50質量%以下)である。成分(A)~(C)の総量の割合が少なすぎると、適用する基材や表面状態などによっては塗布する際にハジキや艶ぼけ(白ぼけ)が発生し易く、下地の視認性が低下して外観不良となったり、硬化物の透明性(または下地(基材)の視認性)を確保できなくなったり、作業性(塗工性、塗装性)が低下する[例えば、生産性または施工性が低下する(塗装作業に時間がかかる)]おそれがある。逆に多すぎると、硬化性組成物の作業性(塗工性、塗装性)が低下して塗布後に急速な乾燥で硬化膜の厚みムラが生成し易くなったり、塗装方法によっては(例えば、スポンジや刷毛などを用いて塗装すると)塗装跡が残り易く、作業性(塗工性、塗装性)や下地の視認性が低下するおそれがある。
(E)他の成分
本発明の硬化性組成物は、その用途および目的に応じて、顔料などの着色料をさらに含んでいてもよく、透明性(または下地の視認性)が重要な用途などでは顔料などの着色料を含まないのが好ましい。なお、顔料には、無機顔料、有機顔料が含まれる。これらのうち、耐候性などの点から、無機顔料が好ましい。
無機顔料としては、例えば、アルミニウム、銀などの金属単体;酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化チタン(TiO)、酸化鉄[オキシ水酸化鉄(FeOOH)など]の金属酸化物;CuCr、Cu(Cr,Mn)、Cu(Fe,Mn)、Co(Fe,Cr)、CoAl、CoTiOなど金属複合酸化物;パールマイカ(天然マイカまたは合成マイカに、酸化チタンや酸化スズなどの金属酸化物を被覆した顔料)などが挙げられる。これらの無機顔料は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、金属酸化物、金属複合酸化物が好ましい。
顔料の形状は、粒状、板状または鱗片状などであってもよい。顔料の平均粒子径は、例えば0.01~500μm、好ましくは、0.1~200μm、さらに好ましくは0.5~100μm、最も好ましくは1~10μmである。
顔料を含む場合、その割合は、硬化物(硬化膜)の発色性、隠蔽性などにより適宜選択でき、硬化性組成物中30質量%以下、例えば0.1~10質量%程度である。
本発明の硬化性組成物は、慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、防汚剤(例えば、亜酸化銅、有機スズ化合物、チオカーバメート類など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、界面活性剤、充填剤、粘度調整剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、レべリング剤などが挙げられる。慣用の添加剤の合計割合は、硬化性組成物中30質量%以下、例えば0.1~10質量%程度であってもよい。
[硬化性組成物の調製方法]
本発明の硬化性組成物(塗料組成物)の調製方法は、前述した特定のシリコーン系樹脂成分(A)および特定の反応性シリコーン系オイル成分(B)を所定の割合で混合する方法であれば特に制限されず、例えば、1液型硬化性組成物として調製してもよく、貯蔵安定性などの観点から2液型硬化性組成物として調製してもよい。
1液型硬化性組成物として調製する場合は、例えば、少なくともシリコーン系樹脂成分(A)および反応性シリコーン系オイル成分(B)、さらに必要に応じて硬化触媒(C)、溶剤(D)および他の成分(E)を、空気中の水分(湿気)がない状態で配合する。具体的には、各成分を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で配合して混合し、混合物を容器に密封してもよい。なお、他の成分(E)として、顔料を配合する場合、予め顔料を有機溶剤で分散しておき、他の成分と配合する際に混合してもよい。得られた1液型硬化性組成物は、通常、使用の直前の塗布現場において、容器を開栓して、基材(または対象物)に塗布する。
2液型硬化性組成物として調製する場合、2液の分け方は特に制限されず、各成分[例えば、成分(A)~(E)]の種類などに応じて貯蔵安定性などを考慮しつつ、適宜2つの液状組成物に分けて調製してもよい。例えば、少なくとも成分(A)~(D)を用いる場合、シリコーン系樹脂成分(A)および反応性シリコーン系オイル成分(B)を混合して、シリコーン組成物(第1の液状組成物)を調製し、別途、触媒(C)、溶剤(D)および必要に応じて他の成分(E)を混合して触媒組成物(第2の液状組成物)を調製してもよい。なお、他の成分(E)として、顔料を配合する場合は、1液型硬化性組成物と同様に予め有機溶剤で分散して配合してもよい。このように調製された2液型硬化性組成物は、通常、塗布現場において、シリコーン組成物と触媒組成物とを混合して、塗布用の硬化性組成物を調製する。
[硬化性組成物の用途]
本発明の硬化性組成物は、各種のコーティング組成物(特に落雪氷を促進するための雪害対策塗料組成物)として利用でき、例えば、基材の表面に、本発明の硬化性組成物をコーティングして硬化させて硬化物(硬化膜、コーティング膜または保護膜)を形成することにより、基材に撥水性のみならず、落雪氷性も付与できる。
硬化物は、基材の表面を少なくとも被覆する硬化膜であってもよく、基材の内部に浸透した硬化物であってもよい。また、硬化物は、一部が基材の表面を被覆する硬化膜を形成し、かつ残部が基材の内部に浸透して硬化物を形成していてもよい。例えば、基材である保護対象物の表面に、本発明の硬化性組成物をコーティングして硬化させて保護膜を形成することにより、対象物に付着した雪や氷が自然に(力をかけなくても)落ち易くする(落雪氷を促進する)。
そのため、本発明は、基材の表面に、前記硬化性組成物をコーティングして硬化膜を形成し、前記基材表面における落雪氷を促進する方法;さらには、基材と、この基材の表面を被覆し、かつ前記硬化物で形成された硬化膜とを含む複合体も包含する。
前記基材の材質としては、特に制限されず、例えば、樹脂などの有機材料(例えば、メタクリル酸メチル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などの透明樹脂など)、セラミック(ガラスなど)、金属(アルミニウムまたはその合金、ステンレス鋼など)などの無機材料などで形成されていてもよい。
なお、基材表面には、必要に応じて、接着性、着色性(意匠性、装飾性または美観性)、ハードコート性、耐久性、防水性、防汚性など機能を付与するための様々な機能層(塗膜、被膜または処理面)などが形成されていてもよい。これらの機能層は、単独または二種以上組合せて形成されていてもよい。代表的な機能層としては、基材表面と本発明の硬化物(硬化膜またはトップコート層(最表層))との密着性を高めるための接着層などが挙げられる。例えば、基材(特に樹脂製の基材など)は、表面にプライマーなどで形成された接着層(プライマー層)を備えていてもよい。プライマーとしては、基材表面と硬化物との密着性(基材-プライマー層間およびプライマー層-硬化膜(トップコート層)間の密着性)が確保できれば特に制限されず、基材の種類などに応じて慣用のプライマーが利用できる。なお、プライマー層は必ずしも必要ではなく、基材表面を荒らして(例えば、ブラスト処理などで)凹凸面などの処理面(または表面処理層)を形成することで硬化物との密着性を高めてもよい。
本発明の効果を有効に発揮する点から、硬化性組成物は、屋外構造物の少なくとも一部の領域を形成する基材(部材)に対して適用するのが好ましい。屋外構造物としては、例えば、屋外に設置された構造物または建築物[建築物、貯蔵タンク、橋梁、電柱、ケーブル、アンテナ、標識または標識板(道路標識、案内標識など)、看板、電光掲示板、交通信号(交通信号機、特にLED信号機)、街灯、灯台など]、屋外で利用される輸送機器(自動車、車両、船舶、航空機など、好ましくは前記輸送機器に使用されるカバーまたは筐体[例えば、ライト(またはランプ)、センサー類(車載センサー、鉄道車両速度計など)などの電気・電子部品のカバーまたは筐体など])などであってもよい。なかでも、硬化物(硬化膜)形成後においても透明性を確保し易い点から、下地の視認性が特に重要な屋外構造物、例えば、道路標識、案内標識、看板、電光掲示板、交通信号機、街灯、灯台などに対して有効に適用できる。
なお、コーティング方法としては、例えば、スプレーコート法、バーコート法、スピンコート法、ディスペンサ法、スポンジ塗り、刷毛塗り、へら塗り、ローラー塗り、ディッピング法などが挙げられる。これらのうち、スプレーコート法が好ましい。なお、本発明の硬化性組成物は拭き取りなどの作業は不要であり、作業性(塗工性、塗装性)にも優れている。
また、硬化性組成物のコーティング量(塗工量)は基材や用途、コーティング方法、硬化膜の厚み(平均厚み)などに応じて適宜調整してもよく、乾燥後重量(乾燥後に形成される硬化物(硬化膜)としての重量)で、例えば0.1~80g/m、好ましくは5~40g/m、さらに好ましくは10~20g/m程度であってもよい。なお、コーティング回数は1回であってもよく、例えば所望の平均厚みとなるように、繰り返し行ってもよい。乾燥後重量(硬化物としての重量)が多すぎると、作業性(塗工性、塗装性)が低下したり、耐候性が低下したり(例えば、クラックが発生し易くなったり)、下地の視認性が低下するおそれがあり、逆に少なすぎると、基材によっては白ぼけして視認性が低下する場合があったり、耐久性や機械的強度などが低下したり、傷(または衝撃)などに対する耐性も低下するおそれがある。
本発明では、コーティングされた組成物は、基材とともに常温(例えば20~30℃、好ましくは23℃程度)で放置(静置)することにより硬化してもよい。放置する際の湿度は、例えば10~90%RH(例えば30~70%RH)、好ましくは40~60%RH(例えば50%RH程度)であってもよい。放置する時間は特に限定されず、溶剤(D)などが留去(除去)され、硬化物を形成できる時間であればよく、例えば30分以上(例えば1時間以上)、好ましくは5時間以上(例えば10時間以上)、さらに好ましくは10~50時間程度であってもよい。シリコーン系樹脂成分(A)、反応性シリコーン系オイル成分(B)および硬化触媒(C)などがアルコキシ基を有する場合、常温での放置によって硬化反応が進行する際に副生成物として生じるアルコールは、この間に除去(留去)されてもよい。
なお、本発明の硬化性組成物は、常温硬化型であってもよいが、必要に応じて加熱したり(例えば常温硬化後にさらなる熱硬化を施したり)、または常温硬化に代えて熱硬化してもよい。加熱温度は、特に限定されず、50℃以上(例えば50~120℃程度)であってもよい。加熱によって、硬化物の硬度をより一層向上できる。
このようにして得られる硬化物(または硬化膜)の表面は、優れた落雪氷性を示すため、硬化物表面に雪を付着させ、-15℃から8~10℃に30分かけて昇温し、8~10℃を保持したときの落雪にかかる時間は、基材(硬化膜を形成しなかった未処理基材)[例えば、A5052アルミニウム合金板などの金属基材、ポリメタクリル酸メチル板などの樹脂基材など]表面に付着させた雪の落雪にかかる時間よりも短くてもよい。本発明の硬化膜表面における具体的な落雪時間は、前記未処理基材(例えば、A5052アルミニウム合金板)表面に雪を付着させた場合よりも、例えば0.5分以上(例えば1~30分)、好ましくは3分以上(例えば5~15分)、さらに好ましくは8分程度以上早く落雪してもよい。本明細書および特許請求の範囲において、落雪氷性(落雪時間)は、後述する実施例の落雪試験に記載した方法により測定できる。
また、硬化物(または硬化膜)表面は、優れた撥水性を示すため、硬化物表面における水接触角は、例えば70°以上(例えば80~130°)程度であればよく、好ましくは90~120°(例えば100~110°)程度であってもよい。なお、本明細書および特許請求の範囲において、硬化物表面の水接触角は後述する実施例の撥水性試験に記載した方法により測定できる。
さらに、硬化物(または硬化膜)表面は、優れた滑水性を示すこともできる。硬化物表面における水滑落角は、例えば0~40°以下(例えば35°以下)程度であればよく、好ましくは30°以下(例えば1~30°)、さらに好ましくは25°以下、特に20°以下(例えば5~10°)であってもよい。なお、本明細書および特許請求の範囲において、硬化物表面の水滑落角は後述する実施例の滑水性試験に記載した方法により測定できる。
また、硬化性組成物は作業性(塗工性、塗装性)にも優れるため、良好な外観の塗膜(硬化膜)を形成でき、例えば、クラックおよび/または艶ぼけがなく、様々な基材に適用しても良好な外観で下地の視認性を確保し易く、スポンジ塗りや刷毛塗りなど様々な方法で塗装しても塗装跡やハジキが抑制された塗膜を容易にまたは効率よく形成できる。
また、硬化物(または硬化膜)表面は、優れた耐久性(耐候性または耐光性)を示すこともできる。そのため、JIS K 5600 7-7(塗料一般試験方法)(促進耐候性および促進耐光性、キセノンランプ法)に準じた促進耐候試験480時間後においても、試験前の特性、例えば、前述の硬化物表面における水滑落角および塗膜外観などの特性を有効に保持できる。なお、本明細書および特許請求の範囲において、硬化物表面の促進耐光性試験は後述する実施例に記載した方法により測定できる。
硬化物が硬化膜を形成する場合、硬化膜の平均厚みは、例えば1~80μm(例えば5~20μm)、好ましくは10~15μm程度であってもよい。平均厚みが厚すぎると、作業性(塗工性、塗装性)が低下したり、耐候性が低下したり(例えば、クラックが発生し易くなったり)、下地の視認性が低下するおそれがあり、逆に薄すぎると、基材によっては白ぼけして視認性が低下する場合があったり、耐久性や機械的強度などが低下したり、傷(または衝撃)などに対する耐性も低下するおそれがある。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、使用原料および評価方法の詳細について示す。
[使用原料]
(A)シリコーン系樹脂成分
KR-500:メチル系シリコーンメトキシオリゴマー、T単位で構成、25℃における動粘度25mm/s、信越化学工業(株)製
KR-400:メチル系シリコーンメトキシオリゴマー、T単位で構成(有機アルミニウム系触媒DX-9740を10質量%含有)、25℃における動粘度1.2mm/s、信越化学工業(株)製
KC-89S:メチル系シリコーンメトキシオリゴマー、T単位で構成、25℃における動粘度5mm/s、信越化学工業(株)製
X-40-9225:メチル系シリコーンメトキシオリゴマー、T単位で構成、25℃における動粘度100mm/s、信越化学工業(株)製
X-40-9246:メチル系シリコーンメトキシオリゴマー、T単位とD単位とで構成、25℃における動粘度80mm/s、信越化学工業(株)製
X-40-9250:メチル系シリコーンメトキシオリゴマー、T単位とD単位とで構成、25℃における動粘度80mm/s、信越化学工業(株)製
(B)シリコーン系オイル成分
KR-4000A:片末端アルコキシ変性、25℃における動粘度60mm/s、信越化学工業(株)製
KP-983:片末端アルコキシ変性、25℃における動粘度23mm/s、信越化学工業(株)製
X-22-176DX:片末端ジオール変性、25℃における動粘度126mm/s、信越化学工業(株)製
KF-96-1000cs:非反応性シリコーンオイル(ポリジメチルシロキサン)、25℃における動粘度1000mm/s、信越化学工業(株)製
(C)硬化触媒
D-25:チタン系(チタン(IV)テトラn-ブトキシド)、信越化学工業(株)製
オルガチックスTC-401:チタン系キレート(チタン(IV)テトラアセチルアセトネート)、65質量% 2-プロパノール溶液、マツモトファインケミカル(株)製
DX-9740:アルミニウム系、信越化学工業(株)製
(D)溶剤
2-プロパノール(IPA):20℃における蒸気圧4kPa、関東化学(株)製
ISOPAR-E:イソパラフィン系溶剤、20°における蒸気圧2.37kPa、エクソンモービル社製
[硬化性組成物の調製]
200mLガラス容器に、後述する各表(表2~6)に示す質量割合で、シリコーン系樹脂成分(A)、シリコーン系オイル成分(B)、硬化触媒(C)および溶剤(D)を配合し、マグネティックスターラーを用いて10分間撹拌して、硬化性組成物を調製した。
[試験片の作製]
対象物(基材)は、平板テストピース(寸法:150mm×70mm、厚み:2mm、材質:ポリメタクリル酸メチル樹脂板、ポリカーボネート樹脂板およびA5052アルミニウム合金板)を使用した。この平板テストピースの一方の面に対し、各材質に合わせてプライマーで処理した。この処理面の上に、硬化性組成物を乾燥後重量で10~15g/mとなるようにエアスプレー(アネスト岩田(株)製「W-101-101E」)で塗布し、室温(23℃)、湿度50%RHの雰囲気下で24時間静置して、厚み10~15μmの乾燥被膜(硬化膜)を有する試験片を作製した。
[硬化膜の評価方法]
(落雪試験(かき氷を使用))
純水(脱イオン水)および電動氷かき器((株)山善製「YSIA-F25」)を用いて湿雪を想定したかき氷を作製した。-15℃以下の条件で、篩(目開き5mm)を用いてこのかき氷を水平にした試験片(基材:A5052アルミニウム合金板)に0.15~0.30g/cm積もらせた。-15℃程度で5分間静置後、試験片を90°(地面と垂直方向)に傾けた。-15℃から30分間で気温8~10℃程度まで徐々に昇温し、8~10℃を保持した際に、試験片から落雪(かき氷が落下)する様子を観察した。硬化性組成物を塗布(硬化膜を形成)していない未処理基材(未処理のA5052アルミニウム合金板)と比較して、落雪が早い場合を落雪氷性が優れると判断した。
〇:未処理基材より落雪のタイミングが早い
△:未処理基材と落雪のタイミングが同じ
×:未処理基材より落雪のタイミングが遅い。
(撥水性試験)
接触角計(dataphysics instruments GmbH社製「OCA 15EC」)を用いて、純水(脱イオン水)の接触角を測定した。乾燥被膜(硬化膜)が水平となるようにサンプルテーブル上に試験片を配置して、乾燥被膜の表面に3μLの水滴を滴下し、接触角計で水滴の水接触角を測定した。3点測定した平均値を接触角の値とした。水の接触角が90°以上を撥水性に優れると判断した。なお、試験片には、ポリメタクリル酸メチル樹脂板またはポリカーボネート樹脂板を基材とする試験片を用いた。
〇:水の接触角90°以上
△:水の接触角70°~90°未満
×:水の接触角70°未満。
(滑水性試験)
接触角計(dataphysics instruments GmbH社製「OCA 15EC」)を用いて、純水(脱イオン水)の滑落角を測定した。乾燥被膜(硬化膜)が水平となるようにサンプルテーブル上に試験片を配置して、乾燥被膜の表面に50μLの水滴を滴下し、前記サンプルテーブルを徐々に傾斜させて、水滴が滑り始める傾斜角度(滑落角)を測定した。3点測定した平均値を滑落角の値とした。水の滑落角25°以下を滑水性が優れると判断した。なお、試験片には、ポリメタクリル酸メチル樹脂板またはポリカーボネート樹脂板を基材とする試験片を用いた。
〇 :滑落角25°以下
△ :滑落角25°を超えて40°以下
× :滑落角40°を超えて90°以下(水滴が落下する)
××:試験片を90°に傾けても水滴が落下しない。
(塗膜の外観)
試験片の乾燥被膜(硬化膜)を目視で観察し、下記基準で評価した。なお、3種の基材(ポリメタクリル酸メチル樹脂板、ポリカーボネート樹脂板およびA5052アルミニウム合金板)を用いて作製した各試験片の乾燥被膜(硬化膜)をそれぞれ観察し、そのうち、最も低評価(外観不良)であった試験片の結果を後述する各表(表2~6)中に記載した。
〇 :乾燥被膜上にクラック、艶ぼけのいずれもない
△ :乾燥被膜上にクラック、艶ぼけのいずれかがある
× :乾燥被膜上にクラック、艶ぼけのいずれもある
××:指触乾燥しない。
(促進耐候性試験)
スガ試験機(株)製「スーパーキセノンウェザーメーター」を使用し、促進耐候性試験の条件は、JIS K 5600 7-7 塗料一般試験方法(促進耐候性及び促進耐光性、キセノンランプ法)に準拠して、試験片に促進耐候性試験を実施した。なお、試験片には、ポリメタクリル酸メチル樹脂板を基材とする試験片を用いた。得られた促進耐候性試験480時間後の試験片を用いて、前記(滑水性試験)および(塗膜の外観)の項とそれぞれ同様の方法および評価基準で試験し、耐候性を評価した。
[シリコーン系オイル成分(B)の塗膜の評価方法]
前述の反応性シリコーン系オイル成分(B)1質量部と、イソパラフィン系溶剤(エクソンモービル社製「ISOPAR-E」)99質量部とを混合して組成物(希釈液)を調製し、得られた組成物を平滑なポリカーボネート樹脂基板(JIS K 6735準拠)に対して10g/m(乾燥前重量)となるようにスポンジを用いて塗布し、室温(23℃)、湿度50%RHの雰囲気下で24時間静置して、一方の面に乾燥被膜(乾燥物)を有する試験片を作製した。得られた乾燥皮膜の水接触角および水滑落角を前記(撥水性試験)および(滑水性試験)と同様の方法で評価した。
シリコーン系オイル成分(B)の乾燥皮膜(塗膜)の評価結果を下記表1に示す。
Figure 2023054516000001
[実施例1-1~1-4および参考例1-1~1-2]
下記表2に示す質量割合で硬化性組成物を調製し、得られた硬化性組成物を用いて試験片を作製した。硬化性組成物の配合比および評価結果を以下に示す。
なお、特に断りのない限り、表中、「(A)/全体」は、硬化性組成物全体(成分(A)~(D)の合計量)に対するシリコーン系樹脂成分(A)の質量割合を示し、「((A)+(B)+(C))/全体」は、硬化性組成物全体に対する成分(A)~(C)の合計量の質量割合[硬化膜を形成する成分(溶剤を除いた固形分)の濃度]を示す(以降の表についても同様)。なお、実施例1-2における( )内の数値は、KR-400 100.00質量部中の90.00質量部をメチル系シリコーンメトキシオリゴマーを成分(A)とし、10.00質量部の有機アルミニウム系触媒DX-9740を成分(C)として計算した値を意味する。
Figure 2023054516000002
表2の結果から明らかなように、実施例(T単位で形成されたシリコーン系樹脂成分(A)の例)では、落雪氷性、撥水性、滑水性、外観、および耐候性が優れていた。また、いずれの実施例の試験片も下地の視認性に優れていた。一方、参考例(D単位を含むシリコーン系樹脂成分(A)の例)では、撥水性および外観は良好であったものの、落雪氷性および滑水性が劣っていた。
[実施例2-1~2-3および参考例2-1~2-2]
下記表3に示す質量割合で硬化性組成物を調製し、得られた硬化性組成物を用いて試験片を作製した。硬化性組成物の配合比および評価結果を以下に示す。
Figure 2023054516000003
表3の結果から明らかなように、実施例(片末端変性されたシリコーン系オイル成分(B)の例)では、落雪氷性、撥水性、滑水性および外観が優れていた。また、いずれの実施例の試験片も下地の視認性に優れていた。実施例2-3(片末端ジオール変性されたシリコーン系オイル成分(B)の例)では耐候性は低かった。
一方、参考例2-1(未変性のシリコーン系オイル成分(B)の例)では、撥水性は優れていたものの、落雪氷性および滑水性が低かった。そのため、撥水性が高ければ、必ずしも落雪氷性に優れるわけではないことが分かった。
また、参考例2-2(特許文献2記載の硬化性組成物の成分およびその割合に相当する例)では、撥水性に優れ、滑水性も参考例2-1よりは優れていたものの、落雪氷性が低かった。そのため、特許文献2に記載の硬化膜における非粘着性は、落雪氷性に対して影響が少ないようである。
なお、実施例2-1(1-1)の落雪試験では、未処理基材(A5052アルミニウム合金板)よりも10分程度早く落雪した。また、落雪試験の試験片(基材:A5052アルミニウム合金板)を、ポリメタクリル酸メチル板を基材とする試験片に変更したこと以外は同様にして試験したところ、実施例2-1(1-1)~2-3のいずれにおいても未処理のポリメタクリル酸メチル板よりも早く落雪した(○評価であった)。
[実施例3-1~3-8および参考例3-1]
下記表4に示す質量割合で硬化性組成物を調製し、得られた硬化性組成物を用いて試験片を作製した。硬化性組成物の配合比および評価結果を以下に示す。
Figure 2023054516000004
表4の結果から明らかなように、実施例では、片末端変性されたシリコーン系オイル成分(B)の割合を所定の範囲で変化させても落雪氷性および撥水性が優れていた。一方、シリコーン系オイル成分(B)の割合が少ない参考例3-1では、撥水性は維持しているものの、落雪氷性が低下した。
実施例3-1~3-6の中でも実施例3-6では、撥水性を高めるためのシリコーン系オイル成分(B)が多すぎるためか、塗装の際にハジキが起こり易く、艶ぼけによる外観不良となり、実施例3-1~3-5とは異なって作業性(塗工性、塗装性)および下地の視認性(外観)がやや低下した。なお、ハジキは、前記成分(B)の割合が増えるにつれて、より発生し易くなる傾向が見られた。例えば、スプレー塗装に代えてスポンジにより塗装したところ、実施例3-3ではハジキが発生しなかったのに対し、実施例3-4ではハジキが発生した。
なお、実施例3-1~3-6におけるシリコーン系樹脂成分(A)の種類を変更しても、各特性[落雪氷性、撥水性、滑水性、塗膜外観、耐候性および作業性(例えば、ハジキ難さ)]に差は見られなかった。すなわち、実施例3-1~3-6のKR-500(100質量部)に代えて、KR-400、KC-89SまたはX-40-9225(いずれの場合も100質量部)を用いたところ、前記各特性はいずれも実施例3-1~3-6に対応して同様の結果であった(なお、KR-400を用いた例では、実施例3-1~3-6における硬化触媒としてのD-25を添加することなく(表2のように)調製した)。
[実施例4-1~4-8および参考例4-1~4-2]
下記表5に示す質量割合で硬化性組成物を調製し、得られた硬化性組成物を用いて試験片を作製した。硬化性組成物の配合比および評価結果を以下に示す。なお、実施例4-6および4-8の( )内の数値は、TC-401の固形分を成分(C)として計算した値を意味する。
Figure 2023054516000005
表5の結果から明らかなように、硬化触媒の種類にかかわらず、いずれの実施例においても落雪氷性および撥水性が優れていた。また、いずれの実施例の試験片も下地の視認性に優れていた。
参考例4-1から、硬化触媒(C)の割合が少ないと、室温で硬化できず、100℃程度まで加熱したものの硬化膜を形成できなかったが、実施例4-1では、滑水性が実施例4-2,4-3に比べてやや低下したものの、落雪氷性、撥水性および外観のいずれも良好であった。
一方、参考例4-2から、硬化触媒(C)の割合が多いと、落雪氷性および滑水性が低下する傾向があることが分かった。また、実施例4-4では、滑水性が実施例4-2,4-3に比べてやや低下したものの、落雪氷性、撥水性および外観のいずれも良好であったが、耐候処理後にクラックによる外観不良が生じた。
なお、実施例4-7,4-8は、実施例4-3(1-1),4-6に対してそれぞれ溶剤(D)の種類を変更した例である。実施例4-7,4-8のいずれも落雪氷性、撥水性、滑水性、外観、耐候性および視認性が良好であるとともに、実施例4-3(1-1),4-6と比べ作業性(塗工性、塗装性)にも優れていた。
[実施例5-1~5-5]
下記表6に示す質量割合で硬化性組成物を調製し、得られた硬化性組成物を用いて試験片を作製した。硬化性組成物の配合比および評価結果を以下に示す。
Figure 2023054516000006
表6の結果から明らかなように、硬化性組成物全体(成分(A)~(D)の総量)に対する成分(A)~(C)の総量の割合(硬化膜を形成する固形分濃度)にかかわらず、いずれの実施例においても落雪氷性、撥水性および滑水性が優れていた。
実施例5-1では、試験片によっては乾燥後に白っぽくなり、艶ぼけ(白ぼけ)が見られ、下地の視認性が低く、外観が△であった。また、実施例5-1では所定の乾燥後重量(または膜厚)とするために、他の例に比べて多量に塗布する必要があるとともに、その際にハジキも発生し易い傾向にあり、作業性(塗工性、塗装性)が低かった。
一方、実施例5-2~5-5では全ての試験片で下地の視認性に優れており、スプレー塗装の作業性(塗工性、塗装性)も良好であった。なお、スプレー塗装に代えてスポンジや刷毛で塗装すると、実施例5-5では固形分濃度が高すぎるためか、実施例5-1~5-4とは異なり塗膜に塗装跡が残り易く、作業性(塗工性、塗装性)および下地の視認性(外観)が若干低下した。
本発明の硬化性組成物は、硬化物が撥水性および落雪氷性を有するため、各種のコーティング組成物(塗料組成物)、特に雪害対策用の(落雪氷を促進するための)コーティング組成物(着雪氷防止または落雪氷促進塗料)として有効に利用できる。また、本発明の硬化性組成物は、常温で湿気硬化可能なため、熱処理が不要な用途に好適に用いられ、火気の使用が制限される場所での利用にも適している。
また、本発明の硬化性組成物は、耐久性にも優れるため、屋外で使用される用途や一般家庭で使用される用途などにも適している。そのため、建築物、貯蔵タンク、橋梁、電柱、交通信号、ケーブル、アンテナ、標識などの建築・構造物や、自動車、車両、船舶、航空機などの輸送機器の表面に、雪や氷などの付着を防止するための組成物として利用できる。
具体的には、雪および/または氷が付着するのを防止するための組成物、特に、落雪氷を促進させるための組成物(落雪氷促進塗料)として利用でき、例えば、道路標識、信号機(LED信号機など)、ETCのセンサー、高速度道路の防音壁、線路切替機、屋根、パラボラアンテナ、電線、橋梁、気象測定器(風量計)、風力発電羽根、輸送機器[自動車(窓、車輪、除雪車のプロペラなど)、車両(鉄道車両のパンタグラフなど)、船舶、航空機(飛行機羽根、ドローンなど)]、輸送機器などに使用されるカバーまたは筐体[例えば、ライト(またはランプ)、センサー類(車載センサー、鉄道車両速度計など)などの電気・電子部品のカバーまたは筐体など]などの表面の保護膜(落雪氷促進膜)として利用できる。

Claims (14)

  1. シリコーン系樹脂成分(A)と、少なくとも1つの反応性基を有する反応性シリコーン系オイル成分(B)とを含む硬化性組成物であって、
    前記シリコーン系樹脂成分(A)が、D単位を実質的に含まず、
    前記反応性シリコーン系オイル成分(B)の割合が、前記シリコーン系樹脂成分(A)100質量部に対して0.03~10質量部である硬化性組成物。
  2. 前記反応性シリコーン系オイル成分(B)が、一方の分子末端のみに反応性基を有する請求項1記載の硬化性組成物。
  3. 前記反応性基がケイ素原子に直接結合するヒドロキシル基および/またはケイ素原子に直接結合するアルコキシ基である請求項1または2記載の硬化性組成物。
  4. 前記反応性シリコーン系オイル成分(B)が、下記(i)の条件で調製した組成物を用いて平滑な基板上に乾燥物を作製したとき、この乾燥物表面が下記(ii)および(iii)を満たす成分であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
    (i)反応性シリコーン系オイル成分(B)1質量部と、イソパラフィン系溶剤99質量部とからなる組成物
    (ii)水の滴下量3μLの水接触角が90°以上
    (iii)水の滴下量50μLの水滑落角が25°以下
  5. さらに、硬化触媒(C)を含み、前記硬化触媒(C)の割合が、前記シリコーン系樹脂成分(A)100質量部に対して0.05質量部以上20質量部未満である請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  6. さらに、硬化触媒(C)および溶剤(D)を含み、前記シリコーン系樹脂成分(A)、前記反応性シリコーン系オイル成分(B)および前記硬化触媒(C)の総量の割合が、硬化性組成物全体に対して9.5質量%以上である請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  7. 落雪氷を促進するためのコーティング組成物である請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  8. 硬化して硬化物を形成し、得られた硬化物表面に雪を付着させ、-15℃から8~10℃に30分かけて昇温したときの落雪にかかる時間が、A5052アルミニウム合金板表面に付着させた雪の落雪にかかる時間よりも短い、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物。
  10. 基材の表面に、請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化性組成物をコーティングし、得られたコーティング膜を硬化して、硬化物を製造する方法。
  11. 基材と、この基材の表面を被覆し、かつ請求項9記載の硬化物で形成された硬化膜とを含む複合体。
  12. 前記基材が、屋外構造物の少なくとも一部の領域を形成する基材である請求項11記載の複合体。
  13. 前記屋外構造物が、道路標識、案内標識、看板、電光掲示板、信号機、街灯または灯台である請求項12記載の複合体。
  14. 基材の表面に、請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化性組成物をコーティングして硬化膜を形成し、前記基材表面における落雪氷を促進する方法。
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