JP6402699B2 - 制振装置 - Google Patents
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Description
建物に用いられる制振装置として、履歴型ダンパー、粘弾性ダンパーあるいは粘性ダンパーが知られている。
また、粘弾性ダンパーは、ゴムなどの高分子材料を主成分とする粘弾性材料がせん断変形することにより、減衰抵抗力が発生し、エネルギー吸収を行う制振装置である。
また、粘性ダンパーは、オイルなどの粘性体の粘性抵抗を利用した速度依存型の制振装置である。
一方、履歴型ダンパーは高い初期剛性と変形性能により、微振動に対してはエネルギー吸収効果が小さく、大変形時のエネルギー吸収に有効である。
そして、履歴型ダンパーと粘弾性ダンパーの配列に関し、両者を並列に配置すると、履歴型ダンパーの高い初期剛性により粘弾性ダンパーの変形が抑制され、十分なエネルギー吸収性能を発揮出来ないこと、また、微小変形に効かせるように粘弾性ダンパーの厚さを薄くすると、大変形時に破断に至ってしまうこと等の理由から、直列に設置することが望ましいとされている。
特許文献1に開示されたものは、せん断降伏型(間柱型)の複合ダンパーであり、小振幅時に作用させる粘弾性ダンパーと、大振幅時に作用させる履歴型ダンパーとを直列に配置しており、粘弾性ダンパーがある変形量に達した際にそれ以上の変形が生じないためのストッパー機能を付加したものである。
また、兵庫県南部地震のような内陸直下地震の場合、瞬間的に大きな変形量を生じることが予想され、制振装置が繰返しによる十分なエネルギー吸収あるいは減衰効果を発揮する前に、制振装置が破断に至ってしまう可能性があった。
また、ダンパー部分に粘性ダンパーや粘弾性ダンパーを組み込んだ場合、制振効果を発揮させたい微振動の振幅を最大振幅に設定することで、大振幅時にも破断に至ることは無く、繰返し数が増えるだけとなり、一の材料特性のみで設計することが可能となる。
なお、制振装置は建物における地震等の外力によって相対変位する例えば架構などに取り付けられる。
図1は、上記のような制振装置1を、粘弾性ダンパーによって構成し、建物の架構における上梁3と下梁7の間に設置した実施の形態を示すものであり、建物の上梁3に取り付けた上側支持部材5と、上梁3の下方に設けられた下梁7に取り付けた下側支持部材9と、下端側が下側支持部材9に固定され、上端側が上側支持部材5に向かって延出するように設置された第1鋼板11と、第1鋼板11の上端側に回転可能に取り付けられた回転体13を有し、上側支持部材5のせん断方向の動きを回転体13を回転させることで回転運動に変換する第1変換機構15と、第1鋼板11に板面が対向配置された第2鋼板17と、一端側が回転体13の周縁部にピン接合され、他端側が第2鋼板17にピン接合された剛部材19を有し、回転体13の回転運動を第2鋼板17の往復運動に変換する第2変換機構21と、第2鋼板17と第1鋼板11の間に設置された粘弾性体23と、第2鋼板17が往復運動方向と直交する方向に移動するのを規制するストッパー25とを備えてなるものである。
制振装置1を取り付ける架構の柱や梁、また、上側支持部材5や下側支持部材9は十分な剛性を確保できるものであれば、鉄骨造でも鉄筋コンクリート造でも構造種別によらない。
なお、第1鋼板11、第2鋼板17及び粘弾性体23が上記本発明のダンパー部に相当する。
以下、各構成を詳細に説明する。
上側支持部材5及び下側支持部材9は、例えば、鋼材、鉄筋コンクリートのように剛性の高い部材で構成されていることが好ましい。
第1鋼板11は、矩形状の鋼板であり、下端側が下側支持部材9に固定され、上辺側が上側支持部材5に向かって延出し、上辺は上側支持部材5との間に所定の隙間を介して対向配置されている。
第1変換機構15は、上側支持部材5の下側支持部材9に対するせん断方向の相対的な動きを、回転体13を回転させることで回転運動に変換する機構である。
第1変換機構15の構成要素である回転体13は、第1鋼板11の上部に回転可能に取り付けられており、回転体13の一部が第1鋼板11の上辺よりも上方に突出している。なお、回転体13の一部を第1鋼板11の上辺より突出させる点は、必須ではない。
回転体13を形成する材料や形状は特に限定されるものではない。
例えば、回転体13を自動車のタイヤのようもので構成し、上側支持部材5との摩擦力によって力を伝達するような摩擦機構の場合、タイヤが大きなせん断力に耐え切れず、回転体13を円滑に回転させることが出来ないと考えられる。
このような機構にすることで、上側支持部材5が左右いずれの方向に移動した場合でも、線材にたわみが生じることなく、上側支持部材5に対する第1鋼板11の相対変位を回転運動に変換することが可能となる。
第2鋼板17は、第1鋼板11に板面を対向して配置された矩形状の鋼板である。
第2変換機構21は、一端側が回転体13の周縁部にピン接合され、他端側が第2鋼板17にピン接合された棒状の剛部材19を有し、回転体13の回転運動を第2鋼板17の往復運動に変換するものである。
なお、第2変換機構21を構成する剛部材19を形成する材料は特に限定されるものではないが、例えば鉄筋のような剛性の高いものが挙げられる。
粘弾性体23は、第2鋼板17と第1鋼板11の間に接着された高減衰ゴムなどからなるものである。第2鋼板17が往復運動することで粘弾性体23がせん断変形し、これによって減衰抵抗力が発生してエネルギー吸収が行われる。
ストッパー25は、第2鋼板17が往復運動方向と直交する方向に移動するのを規制する部材であり、第2鋼板17の両側に上下方向に第2鋼板17の両側縦辺に沿うように設けられている。
上側支持部材5が図中右方向に移動すると、その移動量に相当する分だけ回転体13が時計回りに回転する。回転体13が回転すると、一端が回転体13の外周部にピン接合された剛部材19が、回転体13の回転とともに上方に引っ張られ、同時に、剛部材19の他端にピン接合された第2鋼板17が上方に引っ張られる(図4(a)参照)。
このとき、剛部材19は水平方向の荷重も受け、かかる荷重が第2鋼板17に作用するが、ストッパー25の拘束により第2鋼板17は水平移動できないため、第2鋼板17は上下方向のみに移動する。この第2鋼板17の移動により、下側支持部材9に固定された第1鋼板11との間に接着された粘弾性体23が変形することで、減衰力を発揮する。
なお、上記の説明は上側支持部材5が図中右方向に移動した場合であるが、上側支持部材5が図中左方向に移動した場合も同様である。
このため、粘弾性ダンパーなどを微振動に対して効かせることを目的とする場合、粘弾性体23の変形量がさらに小さくなるため、効率が悪くなる。
このような場合には、回転運動を最大振幅が一定となる直線往復運動に変換する第2変換機構21が、回転運動から変換された直線往復運動の最大振幅を拡大する最大振幅拡大機構を有する機構とすることで効率悪化を防止できる。
図5に示す第2変換機構32は、一端側が回転体13の周縁部にピン接合され、他端側が第2剛部材35にピン接合されて回転体13の回転運動を往復運動に変換する棒状の第1剛部材33と、一端側が第1剛部材33の他端側にピン接合され、他端側が第2鋼板17(図示なし)に上下方向に変位可能なピン接合された第2剛部材35と、第2剛部材35における一端と他端の間で一端寄りの位置に設けられて第2剛部材35が傾動する支点の位置を固定すると共に第2剛部材35を軸方向移動可能に支持する支点部37と、を設けたものである。
また、第2剛部材35の一端と支点部37の距離と他端と支点部37との距離の比を適宜設定することで、最大振幅を簡易に設定することもできる。
粘性部材を用いる場合には、例えば第2鋼板17をオイルダンパーのピストン部(稼動部)、第1鋼板11をシリンダー部(固定部)に相当する構造にすればよい。
本実施の形態の制振装置41は、上側支持部材5と下側支持部材9との間に実施の形態1で説明した制振装置1を設置し、かつ制振装置1と並列に、一端側が上側支持部材5に固定されると共に他端側が下側支持部材9に固定され、上側支持部材5と下側支持部材9の相対移動のエネルギーを吸収する履歴型ダンパー43を設置したものである。
そこで、本実施の形態の制振装置41では、図6に示すように、履歴型ダンパー43を並列に配置することにより、粘弾性体23に負の荷重が発生した時には、履歴型ダンパー43でエネルギー吸収を行うことが可能となり、さらに合理的な制振ダンパーとなる。
本例では、一般的な建物を想定し、上下梁間高さを3,000mm程度、最大層間変形角を約1/50とすると、最大の片側水平変形量は約60mmとなる。なお、上下支持部材の弾性変形なども考慮すると実際はこれより小さい変形量と考えられる。
よって、建物に±60mmの1往復分の変形が発生すると、粘弾性体23には±10mmの4往復分の変形が生じることとなる。
このとき、建物に発生する±60mmの変形に対して、図9(a)に示すようにせん断変形角±200%の履歴ループが1ループ描かれ、この面積分の減衰力を得られる。
一方、本実施例では、同じく建物に発生する±60mmの変形に対して、図9(b)に示すようにせん断変形角±200%の履歴ループが4ループ描かれ、この約4倍の減衰力を得られる。
3 上梁
5 上側支持部材
7 下梁
9 下側支持部材
11 第1鋼板
13 回転体
15 第1変換機構
17 第2鋼板
19 剛部材
21 第2変換機構
23 粘弾性体
25 ストッパー
27 PC鋼より線
29 突起
31 歯車
32 第2変換機構(他の態様)
33 第1剛部材
35 第2剛部材
37 支点部
41 制振装置(実施の形態2)
43 履歴型ダンパー
45 鋼板
Claims (6)
- 建物の架構に設けられて前記建物の制振を行う制振装置であって、
外力によって前記架構に発生するせん断方向の動きによって回転する回転体を有し、該回転体を回転させることで前記せん断方向の動きを回転運動に変換する第1変換機構と、該第1変換機構によって変換された回転運動を最大振幅が一定となる直線往復運動に変換する第2変換機構と、該第2変換機構によって変換された直線往復運動のエネルギーを吸収するダンパー部とを有することを特徴とする制振装置。 - 前記第2変換機構は、回転運動から変換された直線往復運動の最大振幅を拡大する最大振幅拡大機構を有することを特徴とする請求項1記載の制振装置。
- 前記ダンパー部が、粘性ダンパー又は粘弾性ダンパーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の制振装置。
- 前記ダンパー部が、粘性ダンパー又は粘弾性ダンパーと、前記粘性ダンパー又は前記粘弾性ダンパーに並列に配置した履歴型ダンパーを備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の制振装置。
- 建物の上梁に取り付けた上側支持部材と、前記上梁の下方に設けられた下梁に取り付けた下側支持部材と、一端側が前記上側支持部材又は前記下側支持部材のいずれか一方に固定され、他端側が前記下側支持部材または前記上側支持部材側に向かって延出するように設置された第1鋼板と、該第1鋼板の前記他端側に回転可能に取り付けられた回転体を有し、前記上側支持部材または前記下側支持部材のせん断方向の動きを前記回転体を回転させることで回転運動に変換する第1変換機構と、第1鋼板に板面が対向配置された第2鋼板と、一端側が前記回転体の周縁部にピン接合され、他端側が前記第2鋼板にピン接合された剛部材を有し、前記回転体の回転運動を前記第2鋼板の往復運動に変換する第2変換機構と、前記第2鋼板と前記第1鋼板の間に設置された粘弾性体と、前記第2鋼板が前記往復運動方向と直交する方向に移動するのを規制するストッパーとを備えてなることを特徴とする制振装置。
- 一端側が前記上側支持部材に固定されると共に他端側が前記下側支持部材に固定され、前記上側支持部材と前記下側支持部材の相対移動のエネルギーを吸収する履歴型ダンパーを並列に設置したことを特徴とする請求項5記載の制振装置。
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