JP6400542B2 - 車両荷物室のヒーター構造体 - Google Patents
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Description
暖房パイプHP1等は、図8(b)に示すとおり、車両のエンジンを冷却して高温となったエンジン冷却水が流れるよう、ラジエータRAを備えたエンジン冷却水の循環系統に接続されている。寒冷地において、運搬するビール等が凍結する恐れのあるときは、ラジエータRAに流通させる高温のエンジン冷却水を、電磁弁SVを切り換えて暖房パイプHP1等に流し、荷台VBを加熱して、ビール等の凍結による食味の低下を防止する。
本発明の課題は、貨物の凍結を防止するよう箱型荷台の荷室内を加温する装置を設け、上述の問題点を解決することにある。
「断熱用パネルで囲まれた車両用の箱型荷台の荷室に設置されるヒーター構造体であって、
前記ヒーター構造体は、平坦な底面、前記底面の周縁から上方に延びる周壁及び前記周壁の上端から外側に延びる鍔部を有する断面ハット状の底板と、前記底板の底面の上面に置かれた板状の断熱材と、前記断熱材の上面に置かれた面状の電気式ヒーターとを備え、
前記底板の周壁の内側には、前記断熱材及び前記電気式ヒーターを覆う合成樹脂材が充填され、前記合成樹脂材の上面は前記底板の鍔部の上面と面一となるように設定されている」ことを特徴とするヒーター構造体となっている。
ヒーター構造体の面状の電気式ヒーターから生じた熱は、上方の合成樹脂材に伝達されて合成樹脂材の温度が上昇する。このとき、面状の電気式ヒーターの下方には断熱材が配置してあるため、電気式ヒーターの熱は効率よく上方の合成樹脂材に伝達され、合成樹脂材の温度を上昇させる。そして、高温となった合成樹脂材の上面から、輻射又は自然対流によって熱が荷室内に伝達され、荷室内が効率的に加温される。また、断熱材及び電気式ヒーターは底板の周壁の内側に充填された合成樹脂材により覆われている。そのため、底板の周壁の内側には断熱層である空気が無く、これにより電気式ヒーターの発する熱は効率よく合成樹脂材に伝達される。従って、大掛かりな設備を準備することなく低コストに積載した貨物の凍結を防止することができる。
さらに、本発明のヒーター構造体に内蔵される電気ヒーターは薄く、このヒーター構造体を箱型荷台の荷室の床構造に設置することで、床下に高温流体用のパイプを設置する従来の加温装置を荷室の床構造に設置するよりも、貨物を積載する床面の高さの上昇を抑えることが可能である。
さらに、請求項7の発明のように、ヒーター構造体を断面ハット状のインナーパンに収容して断熱用パネルに埋め込み、ヒーター構造体の鍔部をインナーパンの鍔部に固着すると、箱型荷台の床部材の内部に水が進入することが回避され、床部材が腐食するのを防止することができ、これにより箱型荷台の使用寿命が延びることとなる。
ヒーター構造体2は、底板4と、その上面に置かれる断熱材6と、断熱材6の上面に置かれる面状の電気式ヒーター8とを備える。底板4は、平坦な長方形形状の底面10と、この底面10の周縁から上方に延びる周壁12と、この周壁12の上端から外側に延びる枠状の鍔部14とを有する断面ハット状であり、アルミニウムの如き金属製の薄板を適宜機械加工することによって形成される。
断熱材6は、発泡ポリスチレンの如き断熱性能を有する板状部材であり、底壁4の底面10の上面において周壁12とわずかな隙間を有して設置されている。
さらに、本発明のヒーター構造体2にあっては、合成樹脂材18の上面は底板4の鍔部14の上面と面一となるように設定されている。このようにすることで、ヒーター構造体2の加熱側の面には段差が無く、取り扱い時に引っ掛かりとなるような角部が存在しない。合成樹脂材18としてはエポキシ樹脂が好適である。合成樹脂材18をエポキシ樹脂とすることで、エポキシ樹脂は耐摩耗性に優れているため、合成樹脂材18の上面と貨物等との間で摩擦が生じても、合成樹脂材18は劣化しにくい。
ヒーター構造体2を作動させる際には、電気式ヒーター8に通電する。電気式ヒーター8に通電されると、電気式ヒーター8は加熱され、電気式ヒーター8によって生じた熱が板部材16を介して合成樹脂材18に伝達される。このとき、面状の電気式ヒーター8の下方には断熱材6が配置してあるため、電気式ヒーター8の熱は下方には伝達されず、上方の合成樹脂材18に効率よく伝達される。さらに、板部材16はアルミニウム製であるため熱伝導性に優れ、面状の電気式ヒーター8で発生した熱を合成樹脂材18へ効率よく均一に伝達することができる。
さらにまた、底板4の周壁12の内側には合成樹脂材18が充填され、電気式ヒーター8と板部材16とが合成樹脂材18により覆われることにより、底板4の周壁12の内側には断熱層の役割を果たす空気を含むことがなく、これにより電気式ヒーター8が発する熱は効率よく合成樹脂材18に伝達され、合成樹脂材18が加熱される。そして、高温となった合成樹脂材18の上面から、輻射又は自然対流によって熱が荷室内に伝達され、荷室内が均等に加温される。
上板30は、領域32の内側に位置する第一の上板34と、領域32の外周縁に隣接して位置する第二の上板36と、第二の上板36の外周縁に隣接して位置する第三の上板38とを有し、いずれもベニヤの如き木製の薄板である。第一の上板34の外周縁は領域32の周縁より幾分内側に位置するようにして設置され、第一の上板34と第三の上板36の板厚は同じである。第二の上板36は長方形の枠状であって、その板厚は第一の上板34及び第三の上板38の板厚よりも後述するインナーパンの鍔部の肉厚分だけ薄い。
2個のインナーパン40は各々、底面42が第一の上板34の上面に位置すると共に鍔部46が第二の上板36の上面に位置するようにして、設置される。このとき、インナーパン40とヒーター構造体2の底板4の形状は上記関係にあるため、鍔部46の上面は第三の上板38の上面と面一になる。そして、インナーパン40は、鍔部46の外周縁部の所定位置において、皿ボルトの如き固定後に頂面が鍔部32の上面及び第三の上板38と面一になるような適宜の固定具48により、断熱用パネル20に固定される。
開口50の周縁は固定具48よりもインナーパン40の内側に位置し、開口50の周縁においてインナーパン40の鍔部46の上面に溶接される。このとき、上述したとおり、インナーパン40の鍔部46の上面(固定具48の頂面も含む)と第三の上板38の上面とは面一であるため、床表面材22は安定して設置される。このようにすることで、箱型荷台VBの荷室内を水等で洗浄した場合であっても、床部材FEの内部に水が進入することが回避され、床部材FEが腐食するのを防止することができ、これにより箱型荷台VBの使用寿命が延びる。床表面材22の後縁を除く外周縁には、上方に幾分延びる側片52が設けられている。側片52の外側面は箱型荷台VBの側壁の内周面(即ち断熱パネルの内側面)にシリコンの如きシール材を介して密着される。これにより、箱型荷台VBの荷室内を水等で洗浄した場合に箱型荷台VBの床部材FEと側壁との密着部位から床部材FEの内部に水が進入することが回避され、床部材FEの腐食がより確実に防止されると共に箱型荷台VBの使用寿命を延ばすことができる。
これにより、ヒーター構造体2が箱型荷台VBの床部材FEの上面と面一になるため、作業者が荷室内で作業をする際に躓き転倒する恐れがない。さらに、本発明のヒーター構造体2に内蔵される電気ヒーター8は薄く、このヒーター構造体2を箱型荷台VBの荷室の床構造に設置することで、床下に高温流体用のパイプを設置する従来の加温装置を荷室の床構造に設置するよりも、貨物を積載する床面の高さの上昇を抑えることが可能である。ヒーター構造体2は、鍔部14の外周縁部の所定位置において、皿ねじの如き固定後に頂面が鍔部14の上面及び床表面材22の上面と面一になるような適宜の固定具54により、インナーパン40の鍔部46及び断熱用パネル20に固定される。
貨物を箱型荷台VBの荷室内に収納する際には、箱型荷台VBの後方に設けられた後方扉RDを開放して行う。通常、食料品又は飲料品の貨物は予め複数個のパレットに格納されており、このパレットを床部材FEの上面に載置しこれに積み重ねた状態で荷室内に収納される。図示の実施形態においては、前後方向に長い2個のヒーター構造体2が床部材FEの左右両側に間隔を置いて設置されており、貨物を格納したパレットはこのヒーター構造体2の上面に載置され、2個のヒーター構造体2の間に存在する床表面材22の上面には載置されない。このとき、貨物が格納されたパレットは一般的に、配送先で搬出しやすいように後方扉RD側に寄せて載置しこれに積み重ねられる。
配送中、収容された貨物の凍結による品質劣化を防止すべく荷室内の温度を所定温度以上に保温する必要がある場合には、ヒーター構造体2を作動させる。ヒーター構造体2を作動させると、上述したとおり合成樹脂材18の上面(即ち、ヒーター構造体2の加熱側の面)より熱が輻射され、荷室内が加温される。箱型荷台VBの荷室は断熱用パネルにより囲まれており外気への放熱が遮断されているため、効率良く加温される。
配送先で貨物を搬出する際には、作業者は、箱型荷台VBの後方に設けられた後方扉RDを開放して荷室からパレットごと貨物を搬出する。一方、貨物を降ろした空きパレットを回収して箱型荷台VBの荷室内に収納する際には、作業者は、2個のヒーター構造体2の間に存在する表面部材22の上面を通路として利用して、この通路上で空きパレットを滑らせて箱型荷台VBの荷室の後方から前方へ搬送し、荷室の前方側で空きパレットを積み重ねる。このようにすることで、ヒーター構造体2の合成樹脂材18の表面の摩耗による劣化を軽減させることができる。
4:底板
6:断熱材
8:電気式ヒーター
10:底面
12:周壁
14:鍔部
16:板部材
18:合成樹脂材
20:断熱用パネル
22:床表面材
40:インナーパン
VB:箱型荷台
FE:床部材
Claims (7)
- 断熱用パネルで囲まれた車両用の箱型荷台の荷室に設置されるヒーター構造体であって、
前記ヒーター構造体は、平坦な底面、前記底面の周縁から上方に延びる周壁及び前記周壁の上端から外側に延びる鍔部を有する断面ハット状の底板と、前記底板の底面の上面に置かれた板状の断熱材と、前記断熱材の上面に置かれた面状の電気式ヒーターとを備え、
前記底板の周壁の内側には、前記断熱材及び前記電気式ヒーターを覆う合成樹脂材が充填され、前記合成樹脂材の上面は前記底板の鍔部の上面と面一となるように設定されている、ことを特徴とするヒーター構造体。 - 前記面状の電気式ヒーターが、PTC特性を有する面状発熱体からなる請求項1に記載のヒーター構造体。
- 前記面状の電気式ヒーターの上面にはアルミニウム製の板部材が設置され、前記板部材は前記断熱材及び前記電気式ヒーターと共に前記合成樹脂材によって覆われる、請求項1又は2に記載のヒーター構造体。
- 前記合成樹脂材はエポキシ樹脂である、請求項1乃至3のいずれかに記載のヒーター構造体。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載のヒーター構造体を設置した箱型荷台の床構造であって、
前記床構造は断熱用パネルと床表面材とを備えており、
前記ヒーター構造体が前記断熱用パネルに埋め込まれ、前記合成樹脂材の上面が前記床表面材の上面と面一となるよう設定される床構造。 - 長方形形状の複数の前記ヒーター構造体が間隔を置いて設置され、前記複数のヒーター構造体の間には前記床表面材が存在する請求項5に記載の床構造。
- 前記ヒーター構造体が断面ハット状のインナーパンに収容された状態で前記断熱用パネルに埋め込まれ、前記ヒーター構造体の鍔部が前記インナーパンの鍔部に固着される請求項5又は6に記載の床構造。
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