以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
(実施形態1)
本実施形態に係る樹脂成形金型210(樹脂成形金型機構)について図1〜図6を参照して説明する。図1〜図4は、動作中の樹脂成形金型210を模式的に示す断面図である。また、図5は、上型11のパーティング面11a(クランプ面、金型面ともいう。)を模式的に示す平面図である。また、図6は、下型12のパーティング面12a(クランプ面、金型面ともいう。)を模式的に示す平面図である。なお、図4には、樹脂成形金型210で樹脂成形された成形品100(成形後のワークW)が示されている。
樹脂成形金型210は、キャビティ13(以下、キャビティ凹部13ともいう)を有する一対の金型(上型11および下型12)を備え、これらが離れ、近づき型開閉可能である。本実施形態では、一方の金型を上型11とし、他方の金型を下型12としている。この樹脂成形金型210においては、図示しない公知の型開閉機構(プレス機構)が用いられる。この型開閉機構によって、例えば、上型11を固定型、下型12を可動型として型開閉可能な構成としてもよいし、上型11を可動型、下型12を固定型としたり、上型11と下型12とも可動型としたりしてもよい。なお、樹脂成形金型210は、型開閉機構を用いずに、手動で型開閉されてもよい。
樹脂成形金型210では、上型11にキャビティ凹部13が設けられる(形成される)。キャビティ凹部13は、上型11のパーティング面11aから凹むように設けられ、型閉じされて、キャビティ13を構成する。樹脂成形金型210は、このキャビティ凹部13の内面を含む上型11のパーティング面11aを覆うリリースフィルムF(以下、単に「フィルム」ともいう。)を備える。フィルムFを設けることで、成形後のワークWを樹脂成形金型210から容易に離型させることができる。
また、樹脂成形金型210は、公知の減圧機構を備えており、この減圧機構によってキャビティ凹部13の脱気を行うことができる。例えば、減圧機構は、クランパ15の下端面(上型11のパーティング面11a)にキャビティ凹部13と外部とを連通するエアベント溝(図示せず)と、外部側でエアベント溝と接続される減圧装置(例えば、真空ポンプ)とを備えている。
また、樹脂成形金型210では、下型12にワークWがセット(配置)されるセット部14が設けられている。セット部14は、下型12のパーティング面12aに設けられ、図示しない吸引路からワークWを吸引して保持できるように構成されている。セット部14では、ワークWがキャビティ凹部13に対向するようにセットされる。また、樹脂成形金型210では、セット部14の周りに並んで複数の樹脂R(本実施形態では、タブレット樹脂)が下型12のパーティング面12aにそれぞれセット(配置)される複数の樹脂セット部29が設けられている。なお、セット部14および樹脂セット部29は、それぞれワークWおよび樹脂Rを収容するように、下型12のパーティング面12aから凹む凹部として設けられてもよい。
ワークWは、基板101と、複数の実装部品102とを備える。基板101は、平面視円形状である。ワークWは、全体として平面視円形状の板状体であり、複数の実装部品102を有しているといえる。基板101上に複数の実装部品102がマトリクス状に整列して表面実装(搭載)される(図6参照)。この実装部品102は、実装される側の基板面102aとその反対面102bの表面を有する。なお、ワークWの平面視形状(図6参照)に合わせて、キャビティ凹部13の平面視形状(図5参照)は、円形状である。
ここで、ワークW(基板101)の平面視形状は、円形状に限らず、例えば矩形状であってもよい。また、基板101は、例えば、ウエハや配線基板でもよいし、eWLB(embeded Wafer Level Ball Grid Array)に代表とされる半導体チップを一時的に接着搭載する単なる板状のキャリアであってもよい。また、実装部品102は、例えば、半導体チップや電子部品などの能動部品や受動部品であってもよいし、他にリードフレーム等の露出端子を必要とする配線パターンや配線ブロック体であってもよい。
また、樹脂成形金型210は、図示しないヒータを備え、所定温度(例えば180℃)まで加熱可能な構成となっている。樹脂成形金型210では、上型11と下型12とでキャビティ凹部13が閉塞され(キャビティ13が形成される)、キャビティ凹部13内に充填、圧縮された樹脂Rを保圧した状態で熱硬化させて成形品100(図4参照)を成形(製造)する処理が行われる。
次に、樹脂成形金型210の上型11について具体的に説明する。上型11は、クランパ15と、キャビティ駒16と、プランジャ17(樹脂押圧部)と、ベース18(上型11のものには符号18aを付し、下型12のものには符号18bを付す場合がある。)とを備え、これら金型ブロックが組み付けられて構成される。本実施形態では、クランパ15、キャビティ駒16、およびベース18(ベース18a)がそれぞれ板状の金型ブロックからなり、プランジャ17が円柱状の金型ブロックからなる。
クランパ15には、上型11の平面視(パーティング面視)において、その中央部に円形状の貫通孔15aが厚み方向(型開閉方向)に形成されて設けられる。この貫通孔15aには、キャビティ駒16が挿入されてベース18にバネ部材21を介して設けられる。なお、プランジャ17は後述するように、ベース18に直接固定されてもよい。また、クランパ15には、上型11の平面視(パーティング面視)において、円形状の貫通孔15bが厚み方向(型開閉方向)に複数形成されて設けられる。これら複数の貫通孔15bのそれぞれには、複数のプランジャ17が挿入されてベース18にバネ部材19を介して設けられる。このように、貫通孔15bは、プランジャ17が挿入される挿入部でもある。この貫通孔15bは、平面視において貫通孔15aよりも小径であり、キャビティ駒16(貫通孔15a)から離れてキャビティ駒16の周りに等間隔で並ぶ。
また、クランパ15には、上型11のパーティング面11aを構成する端面に、複数の貫通孔15bからそれぞれキャビティ凹部13(貫通孔15a)へ向かって狭まるランナー・ゲート28(樹脂路)が複数形成されて設けられる。プランジャ17は、ランナー・ゲート28を通じてキャビティ凹部13へ樹脂Rを押圧(注入)する。すなわち、樹脂成形金型210では、平面視において、キャビティ凹部13の外周部から中央部へ向かって樹脂Rが流動するように、キャビティ凹部13の周りに複数のプランジャ17、複数の貫通孔15bおよび複数のランナー・ゲート28が設けられている。なお、ランナー・ゲート28を上型に設けたが、下型12にカル(図示せず)を設けることで、下型12にランナー・ゲート28を設けても良い。この場合、離型のための公知のエジェクタ機構を設けることにより成形後の離型も行うことができる。
これによれば、キャビティ凹部13の周りの一箇所からキャビティ凹部13へ樹脂Rが注入される場合に比べて、キャビティ凹部13内で樹脂Rが流れる距離を短くすることができる。樹脂Rが流れる距離が長くなると、先に流れたものと後に流れたものとで硬化のタイミングにバラツキが生じ、樹脂Rに含有されるフィラーが偏析したり、ボイド(気泡)が内在したりしてしまうおそれがある。そこで、キャビティ凹部13の周りの複数箇所からキャビティ凹部13へ樹脂Rを注入することで、キャビティ凹部13内で樹脂Rが流れる距離を短くし、フィラーの偏析や気泡の発生を防止することができる。
このように、クランパ15、キャビティ駒16、およびプランジャ17は、ベース18に、それぞれのバネ部材を介して組み付けられる。すなわち、クランパ15、キャビティ駒16、およびプランジャ17は、ベース18にそれぞれのバネ部材を介して保持される。ここで、樹脂成形金型210の型開閉の際には、上型11(一方の金型)が下型12(他方の金型)に対して相対的に離れたり、近づいたりする。このため、本実施形態では、ベース18が下型12に対して、型閉じの状態で近づき、型開きの状態で離れるよう相対的に移動される。
キャビティ駒16は、ベース18の下型12側に設けられる。そして、キャビティ駒16は、キャビティ凹部13の奥部(底部)を構成する。すなわち、キャビティ駒16の下型12側の端面が平面視円形状のキャビティ凹部13の内底面となる。本実施形態では、このキャビティ駒16は、型閉じの状態で実装部品102に当たる(図3参照)。また、キャビティ駒16は、バネ部材21(第1弾性部材)を介してベース18の下型12側に設けられる。このため、キャビティ駒16は、ベース18からバネ部材21によって吊り下げられる。
また、クランパ15は、ベース18の下型12側に設けられる。そして、クランパ15は、キャビティ駒16を囲んでキャビティ凹部13の側部を構成する。すなわち、クランパ15の貫通孔15aの内壁面がキャビティ凹部13の内側面となる。このクランパ15は、型閉じの状態で下型12に当たる(図2参照)。また、クランパ15は、バネ部材20(第2弾性部材、図5では破線で示す)を介してベース18の下型12側に設けられる。このため、キャビティ駒16は、ベース18からバネ部材20によって吊り下げられる。本実施形態では、プランジャ17で樹脂Rを押圧する際の樹脂漏れを防止するために、図5に示すように、平面視においてプランジャ17(樹脂セット部29)の周りに複数のバネ部材20が設けられる。具体的には、クランパ15の上端面(ベース18側の端面)の外縁部に沿って複数のバネ部材20が設けられる。
このようにして、クランパ15は、キャビティ駒16に対して型開閉方向に相対的に移動可能(進退動可能)にベース18の下型12側に設けられる。例えば、型閉じによりクランパ15が下型12に当たった後に(図2参照)、更に型閉じしていくと、クランパ15が下型12に当たった状態でバネ部材20が付勢される。そして、キャビティ駒16は、下型12に近づき、実装部品102に当たる(図3参照)。
また、プランジャ17は、ベース18の下型12側に設けられる。このプランジャ17は、型閉じの状態でキャビティ凹部13へ樹脂Rを押圧(注入)する。また、プランジャ17は、バネ部材19(第3弾性部材)を介してベース18の下型12側に設けられる。このため、プランジャ17は、ベース18からバネ部材19によって吊り下げられる。
このようにして、プランジャ17は、キャビティ駒16およびクランパ15に対して型開閉方向に相対的に移動可能(進退動可能)にベース18の下型12側に設けられる。これにより、例えば、型閉じによりキャビティ駒16が実装部品102に当たった後に(図3参照)、更に型閉じしていくと、クランパ15が下型12に当たった状態でバネ部材20が付勢され、また、キャビティ駒16が実装部品102に当たった状態でバネ部材21が付勢される。そして、プランジャ17は、下型12に近づき、樹脂Rを押圧し始め、更に型閉じしていくと、バネ部材19が付勢される(図4参照)。すなわち、本実施形態では、型閉じしていくにつれて、クランパ15下面が下型12上面と当たり、キャビティ駒16下面が実装部品102上面と当たり、そしてプランジャ17が樹脂Rを押圧する順となる。
このように、樹脂成形金型210によれば、プランジャ17の動作について、複雑な機構(例えば、油圧シリンダやモータなどの別駆動のアクチュエータ)を用いるのではなく、型開閉に伴うシンプルな構造を提供することができる。また、後述するが、樹脂成形金型210によれば、キャビティ駒16で実装部品102を当てて(押圧して)その表面に樹脂Rが付着するのを防止してから、プランジャ17で樹脂Rを押圧し始めるので、樹脂バリ(成形不良)が発生するのを防止することができる。すなわち、成形品質を向上させることができる。
次に、本実施形態に係る圧縮成形としての樹脂成形金型210の動作(樹脂成形方法の工程)について説明する。まず、図1に示すように、前述した型開閉可能な一対の金型(上型11および下型12)を備える樹脂成形金型210を準備する。
次いで、樹脂成形金型210を型開きさせた状態において、型開閉方向でキャビティ駒16と相対する(対向する)位置に成形前のワークW(被成形品)をセット(供給)する。具体的には、図示しないローダによって、ワークWが下型12のパーティング面12aまで搬送されて、セット部14にワークW(より具体的には、実装部品102をキャビティ駒16側に向けた状態の基板101)がセットされる。このワークWは、下型12に形成された吸引路(図示せず)を利用した公知の吸引装置(例えば、真空ポンプ)により吸着保持されてセット部14にセットされる。
また、樹脂成形金型210を型開きさせた状態において、型開閉方向でプランジャ17と相対する(対向する)位置に樹脂Rをセット(供給)する。具体的には、図示しないローダによってタブレット状の樹脂R(タブレット樹脂)が金型内部まで搬送されて、複数の樹脂セット部29のそれぞれに樹脂Rがセットされる。
また、樹脂成形金型210を型開きさせた状態において、フィルムFをキャビティ凹部13の内面を含む上型11のパーティング面11aを覆ってセットする。具体的には、上型11では、フィルムFが、ロール状に巻き取られた繰出しロールから引き出されて上型11のパーティング面11aを通過して巻取りロールへ巻き取られるようにして設けられる。このフィルムFは、例えば、クランパ15の貫通孔15aの内壁面とキャビティ駒16の外側面との隙間や、クランパ15の貫通孔15bの内壁面とプランジャ17の外側面との隙間を利用した公知の吸引装置(例えば、真空ポンプ)に吸着保持されてキャビティ凹部13の内面を含む上型11のパーティング面11aに張り付けされる。フィルムFは、樹脂成形金型210の加熱温度に耐えられる耐熱性を有し、上型11のパーティング面11aから容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するフィルム材である。フィルムFとしては、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジンなどが好適に用いられる。
続いて、型閉じ動作を開始して、図2に示すように、樹脂成形金型210を型閉じしていき(上型11と下型12とを近づけていき)、フィルムFを介して下型12にクランパ15を当てる(すなわち、金型クランプする)。このとき、上型11のベース18と下型12との距離が狭くなる。これにより、キャビティ凹部13の開口部が下型12のパーティング面12aによって閉塞される。また、本実施形態では、ワークW(基板101)の平面視の大きさがキャビティ凹部13の平面視の大きさよりも小さいので、キャビティ凹部13内にワークWが収納された状態となる。他方、ここでは、プランジャ17が樹脂Rに当たらない(接していない)ようにしている。そして、キャビティ凹部13の空間は、クランパ15の下端面に形成されているエアベント溝(図示せず)を介して減圧され始める。なお、図7に示すように、ワークW(基板101)の平面視の大きさがキャビティ凹部13の平面視の大きさよりも大きい場合、下型12にセットされた基板101がクランパ15によってクランプされて(挟まれて)も良い。この場合、クランパ15に基板101厚の段差が必要となる。この段差の必要性は、他の実施例においても同様である。
続いて、樹脂成形金型210を更に型閉じしていき、図3に示すように、実装部品102にキャビティ駒16を当てる。このとき、上型11のベース18と下型12との距離が更に狭くなる。これにより、セット部14(下型12のパーティング面12a)にセットされたワークWの実装部品102がフィルムFを介してキャビティ駒16によってクランプ(押圧)される。また、クランパ15が下型12に当たった状態でバネ部材20が付勢される(押し縮められる)。このように、キャビティ駒16は、型閉じ動作において実装部品102を押圧する部品押圧部でもある。そして、キャビティ凹部13の深さ(高さ)は、浅く(低く)なり、成形品100の成形厚となる。他方、ここでは、プランジャ17が樹脂Rに当たらない(接していない)ようにしている。但し、樹脂Rが実装部品102(ワークW)側まで流れださない程度であれば、プランジャ17を樹脂Rに当てておいてもよい。
続いて、樹脂成形金型210を更に型閉じしていき、プランジャ17でキャビティ凹部13に対してランナー・ゲート28を通じて樹脂Rを押圧(注入)し始め、図4に示すように、型閉じした状態において、キャビティ凹部13内を溶融した樹脂Rで充填する。このとき、上型11のベース18と下型12との距離が更に狭くなる。これにより、複数の実装部品102の間にも樹脂Rが充填される。また、クランパ15が下型12に当たり、キャビティ駒16が実装部品102に当たった状態でバネ部材20、21が付勢され(押し縮められ)、更に型閉じしていくと、バネ部材19が付勢される。
ここで、フィルムFを介してキャビティ駒16で実装部品102をクランプすることで、ある程度フィルムFへ実装部品102が食い込むため、実装部品102の反対面102bに樹脂Rが付着するのを防止することができる。更に、上型11のパーティング面11aに張り付けされたフィルムFは、粘着性の無いフィルムであっても良いが、パーティング面11aとは反対側(下型12側)の面が僅かに粘着性を有するもの(微粘着フィルム)であれば、実装部品102に粘着したまま、キャビティ駒16で実装部品102を押圧することもできる。これによれば、実装部品102の反対面102bに樹脂Rが付着するのをより防止することができる。また、フィルムFを設けることで、例えば、クランパ15とキャビティ駒16との隙間や、クランパ15とプランジャ17との隙間に樹脂Rが入り込んでなる樹脂バリの発生を防止したり、クランパ15やキャビティ駒16が移動しにくくなるのを防止したりすることができる。
次いで、キャビティ凹部13内に充填された樹脂Rを保圧した状態で熱硬化させた後、型開きして離型したワークWをさらに熱硬化(ポストキュア)させる。これによって、実装部品102の反対面102b(表面)が露出され、その他の面(基板面102aおよび側面)が樹脂成形部103(樹脂R)によって覆われた(封止された)成形品100が略完成する。また、プランジャ17が挿入される貫通孔15b(挿入部)やランナー・ゲート28に不要な成形樹脂が残存している場合は、ランナー・ゲート28に対応する成形樹脂の厚みが薄く、折れやすいため、不要な成形樹脂を除去することができる。
前述したように、樹脂成形金型210では、プランジャ17がクランパ15およびキャビティ駒16に対して型開閉方向に相対的に移動可能にベース18に設けられる。このため、例えば、実装部品102の破損を防止して実装部品102をクランプしつつ、樹脂Rを押圧し始めることができる。これにより、実装部品102の反対面102bで樹脂バリ(成形不良)が発生するのを防止することができる。したがって、樹脂成形金型210によれば、製造歩留まりを向上させることができ、また、成形品100の成形品質を向上させることができる。また、樹脂バリを除去する工程が不要となるため、製造コストを削減させることができる。
(実施形態2)
前記実施形態1では、プランジャ17が挿入されるクランパ15の貫通孔15b(挿入部)をキャビティ凹部13の全周に等間隔に複数並べられた樹脂成形金型210について説明した。これと相違する点について本実施形態に係る樹脂成形金型210Aとし、図8および図9を参照して説明する。図8は、樹脂成形金型210Aにおける上型11のパーティング面11aを模式的に示す平面図である。また、図9は、樹脂成形金型210Aにおける下型12のパーティング面12aを模式的に示す平面図である。なお、図8では、バネ部材20(図5参照)を図示していない。
樹脂成形金型210Aでは、キャビティ凹部13の周りの一領域に貫通孔15bが複数並べられ、貫通孔15bがない他の領域にオーバーフローキャビティ15c(余剰樹脂用の凹部)が複数並べられる。本実施形態では、樹脂成形金型210Aのクランパ15に、平面視(パーティング面視)においてキャビティ凹部13の周りにキャビティ凹部13から離れて並ぶオーバーフローキャビティ15cが複数設けられる。なお、オーバーフローキャビティ15cは、貫通孔15b間に設けてもよいし(実施形態1も同様)、下型12に設けてもよい。
オーバーフローキャビティ15cは、上型11のパーティング面11aを構成する端面から凹むように設けられ、下型12のパーティング面12aで閉塞されるよう型閉じされて、キャビティ13を構成する。このため、型開閉方向でオーバーフローキャビティ15cと相対する下型12のパーティング面12aの位置には、樹脂セット部29が設けられていない。また、クランパ15には、上型11のパーティング面11aを構成する端面に、キャビティ凹部13(貫通孔15a)から複数のオーバーフローキャビティ15cへそれぞれ向かうランナー50(樹脂路)が複数設けられる。
このような樹脂成形金型210Aによれば、ボイドとなるエアを巻き込んで樹脂Rがキャビティ凹部13内を流れる場合であっても、そのエアを含む樹脂Rをオーバーフローキャビティ15cへ押し出すことができる。したがって、キャビティ凹部13内における樹脂の充填性を向上させることができる。
また、樹脂成形金型210Aでは、プランジャ17が挿入される貫通孔15b(挿入部)が複数纏まった領域と、オーバーフローキャビティ15cが複数纏まった領域とが、平面視でキャビティ凹部13を挟むような位置に分けられている。これによれば、プランジャ17(貫通孔15b)からキャビティ凹部13へ、そしてオーバーフローキャビティ15cへと樹脂Rの流れがスムーズとなるため、キャビティ凹部13内における樹脂の充填性をより向上させることができる。
また、このような樹脂成形金型210Aでも、プランジャ17がクランパ15およびキャビティ駒16に対して型開閉方向に相対的に移動可能にベース18に設けられる。このため、前記実施形態1と同様に、例えば、実装部品102をクランプしつつ、樹脂Rを押圧し始めることができる。これにより、実装部品102の反対面102bで樹脂バリ(成形不良)が発生するのを防止して、反対面102bを露出させることができる。
(実施形態3)
前記実施形態1では、上型11のパーティング面11aのみにフィルムFが覆われた樹脂成形金型210について説明した。これと相違する点について本実施形態に係る樹脂成形金型210Bとし、図10を参照して説明する。図10は、樹脂成形金型210Bの模式的断面図である。
樹脂成形金型210Bでは、上型11のパーティング面11aおよび下型12のパーティング面12aの両方がフィルムFで覆われる。本実施形態では、樹脂成形金型210Bの下型12のパーティング面12aがフィルムFで覆われるため、ワークWはフィルムFを介してセット部14にセットされる。同様に、樹脂RはフィルムFを介して樹脂セット部29にセットされる。上型11および下型12の両方をフィルムFで覆われた樹脂成形金型210Bによれば、実装部品102を有するワークWに対して樹脂成形を行う場合、成形後のワークWを樹脂成形金型210から容易に離型させることができる。また、樹脂成形金型210Bのパーティングライン(上型11のパーティング面11aと下型12のパーティング面12aとの境界)からの樹脂漏れを防止することができる。
また、樹脂成形金型210Bでは、樹脂セット部29として、型開閉方向でプランジャ17と相対(対向)する位置に、下型12のパーティング面12aから凹む凹部が設けられる。これによれば、樹脂セット部29(凹部)に樹脂Rを容易にセットすることができる。また、樹脂Rが樹脂セット部29で位置決めされるため、例えば樹脂Rを押圧する前に下型12のパーティング面12aにセットされたワークW側へ樹脂Rが移動したり、広がったりするのを防止することができる。また、樹脂セット部29が凹部であることにより、ランナー・ゲート28は、上型11(クランパ15)ではなく、樹脂セット部29と通じるよう下型12のパーティング面12aに設けることもできる。
また、このような樹脂成形金型210Bでも、プランジャ17がクランパ15およびキャビティ駒16に対して型開閉方向に相対的に移動可能にベース18に設けられる。このため、前記実施形態1と同様に、例えば、実装部品102をクランプしつつ、樹脂Rを押圧し始めることができる。これにより、実装部品102の反対面102bで樹脂バリ(成形不良)が発生するのを防止して、反対面102bを露出させることができる。
(実施形態4)
前記実施形態1では、プランジャ17がバネ部材19を介してベース18の下型12側に設けられた樹脂成形金型210について説明した。これと相違する点について本実施形態に係る樹脂成形金型210Cとし、図11を参照して説明する。図11は、樹脂成形金型210Cの模式的断面図である。
樹脂成形金型210Cでは、プランジャ17がベース18に固定して設けられる。本実施形態では、樹脂成形金型210Cでは、プランジャ17(樹脂押圧部)がベース18の下型12側に例えばボルト(図示せず)によって固定して設けられる。このような樹脂成形金型210Cでも、プランジャ17がクランパ15およびキャビティ駒16に対して型開閉方向に相対的に移動可能にベース18に設けられる。このため、前記実施形態1と同様に、例えば、実装部品102をクランプしつつ、樹脂Rを押圧し始めることができる。これにより、実装部品102の反対面102bで樹脂バリ(成形不良)が発生するのを防止して、反対面102bを露出させることができる。
(実施形態5)
前記実施形態1では、プランジャ17が挿入される貫通孔15b(挿入部)が、ランナー・ゲート28を経て樹脂Rが流れるようにキャビティ駒16から外側へ離れて設けられた樹脂成形金型210について説明した。これと相違する点について本実施形態に係る樹脂成形金型210Dとし、図12および図13を参照して説明する。図12は、樹脂成形金型210Dの模式的断面図である。図13は、樹脂成形金型210Dにおける上型11のパーティング面11aの模式的平面図である。
樹脂成形金型210Dでは、貫通孔15b(挿入部)がキャビティ駒16(キャビティ凹部13)に接して設けられる。本実施形態では、樹脂成形金型210Dのクランパ15には、平面視(パーティング面視)においてキャビティ凹部13の周りに並び、プランジャ17(樹脂押圧部)が挿入される貫通孔15b(挿入部)がキャビティ駒16(キャビティ凹部13)に接して(直付け)複数設けられる。このような樹脂成形金型210Dによれば、キャビティ凹部13から離れた箇所からキャビティ凹部13へ樹脂Rが押圧(注入)される場合に比べて、キャビティ凹部13への注入を早めるよう注入タイミングを変更できる。また、不要な成形樹脂が発生するのを抑制することができる。
また、プランジャ17の樹脂押圧面(下型12側の端面)に、キャビティ凹部13へ向かって狭まるランナー・ゲート28が設けられている。本実施形態では、プランジャ17の下端面が、キャビティ凹部13側が鋭角をなすようテーパ状に形成されている。これによれば、貫通孔15b(挿入部)に成形樹脂が残存している場合であっても、テーパ状に対応する成形樹脂の厚みが薄く、折れやすくなり、残存した成形樹脂を除去しやすくなる。
また、このような樹脂成形金型210Dでも、プランジャ17がクランパ15およびキャビティ駒16に対して型開閉方向に相対的に移動可能にベース18に設けられる。このため、前記実施形態1と同様に、例えば、実装部品102をクランプしつつ、樹脂Rを押圧し始めることができる。これにより、実装部品102の反対面102bで樹脂バリ(成形不良)が発生するのを防止して、反対面102bを露出させることができる。
(実施形態6)
前記実施形態1では、上型11にキャビティ凹部13およびプランジャ17が設けられた樹脂成形金型210について説明した。これと相違する点について本実施形態に係る樹脂成形金型210Eとし、図14を参照して説明する。図14は、樹脂成形金型210Eの模式的断面図である。
樹脂成形金型210Eでは、上型11にキャビティ凹部13が設けられ、下型12に平面視においてキャビティ凹部13(キャビティ13)の周りに並ぶ複数のプランジャ17(樹脂押圧部)が設けられる。具体的には、上型11が、ベース18aと、キャビティ駒16と、クランパ15と、を有する。また、下型12が、ベース18bと、下型プレート52と、を有する。実施形態1では上型11側にベース18が存在したが、本実施形態の場合は上型11側にベース18aが存在し、下型12側にもベース18bが存在する。そして、下型12では、下型プレート52がバネ部材54を介してベース18bの上型12側に設けられる。
また、下型プレート52には、平面視においてキャビティ凹部13の外側にプランジャ17が挿入される貫通孔52a(挿入部)が複数設けられる。この貫通孔52aは、下型プレート52の厚み方向(型開閉方向)に形成される。複数の貫通孔52aのそれぞれには、複数のプランジャ17が挿入されてベース18bにバネ部材19を介して設けられる。そして、下型12のプランジャ17の上端面(上型11側の端面)に、キャビティ凹部13へ向かって狭まるテーパ状のランナー・ゲート28が設けられる。
このような樹脂成形金型210Eでは、ワークWがセットされるセット部14が下型プレート52の上端面(上型11側の端面)となる。また、樹脂Rがセットされる樹脂セット部29が下型プレート52に形成された貫通孔52a(挿入部)となる。このため、樹脂セット部29(凹部)に樹脂Rを容易にセットすることができる。また、樹脂Rが樹脂セット部29で位置決めされるため、例えば樹脂Rを押圧する前に下型プレート52の上端面(下型12のパーティング面12a)にセットされたワークW側へ樹脂Rが移動したり、広がったりするのを防止することができる。
また、このような樹脂成形金型210Eでも、プランジャ17が下型プレート52に対して型開閉方向に相対的に移動可能にベース18bに設けられる。このため、前記実施形態1と同様に、例えば、実装部品102をクランプしつつ、樹脂Rを押圧し始めることができる。これにより、実装部品102の反対面102bで樹脂バリ(成形不良)が発生するのを防止して、反対面102bを露出させることができる。
(実施形態7)
前記実施形態1では、上型11にキャビティ凹部13が設けられた樹脂成形金型210について説明した。これと相違する点について本実施形態に係る樹脂成形金型210Fとし、図15を参照して説明する。図15は、樹脂成形金型210Fの模式的断面図である。
樹脂成形金型210Fでは、下型12にキャビティ凹部13が設けられる。本実施形態では、樹脂成形金型210Fでは、下型12が、ベース18と、キャビティ駒16と、クランパ15と、プランジャ17(樹脂押圧部)と、を有する。なお、実施形態1では上型11側にベース18が存在するが、本実施形態では下型12側にベース18が存在する。この下型12において、クランパ15には、キャビティ駒16から離れてキャビティ駒16の周りに並び、プランジャ17が挿入される貫通孔15b(挿入部)が複数設けられる。そして、下型12のクランパ15の上端面(上型11側の端面)に、複数の貫通孔15bからそれぞれキャビティ凹部13へ向かって狭まるランナー・ゲート28が複数設けられる。なお、ランナー・ゲート28を下型12に設けたが、上型11にカル(図示せず)を設けて、上型ランナー・ゲートにしても良い。
このような樹脂成形金型210Fでは、ワークWがセットされるセット部14が下型12のキャビティ駒16の上端面(上型11側の端面)となる。また、樹脂Rがセットされる樹脂セット部29が下型12のクランパ15に形成された貫通孔15b(挿入部)となる。また、樹脂Rが樹脂セット部29で位置決めされるため、例えば樹脂Rを押圧する前に下型12のパーティング面12aにセットされたワークW側へ樹脂Rが移動したり、広がったりするのを防止することができる。
このような樹脂成形金型210Fでも、プランジャ17がクランパ15およびキャビティ駒16に対して型開閉方向に相対的に移動可能にベース18に設けられる。このため、前記実施形態1と同様に、例えば、実装部品102をクランプしつつ、樹脂Rを押圧し始めることができる。これにより、実装部品102の反対面102bで樹脂バリ(成形不良)が発生するのを防止して、反対面102bを露出させることができる。
(実施形態8)
前記実施形態7では、下型12にキャビティ凹部13が設けられ、キャビティ凹部13にセット部14が設けられた樹脂成形金型210Fについて説明した。これと相違する点について本実施形態に係る樹脂成形金型210Gとし、図16を参照して説明する。図16は、樹脂成形金型210Gの模式的断面図である。
樹脂成形金型210Gでは、上型11にセット部14が設けられる。本実施形態では、上型11のパーティング面11aを覆うようにフィルムFが設けられるが、このフィルムFに粘着性をもたせてワークWを接着してセット部14にセットすることができる。なお、フィルムFを用いずに、上型11のパーティング面11aに設けられた吸引路を利用した公知の吸引装置(例えば、真空ポンプ)によりワークWを吸引して保持してもよい。
ここで、図16中の一点鎖線より左側の樹脂成形金型210Gでは、プランジャ17がバネ部材19を介してベース18に設けられている。このプランジャ17が挿入される貫通孔15bは樹脂セット部29となり、樹脂Rとしてタブレット樹脂がセットされる。他方、図16中の一点鎖線より右側の樹脂成形金型210Gでは、プランジャ17がベース18に固定して設けられている。なお、複数のプランジャ17は、すべてバネ部材19を介して移動可能な構成でもよいし、すべて固定された構成でもよいし、一部がバネ部材19、他部が固定の混在した構成でもよい。
また、プランジャ17が挿入される貫通孔15bは樹脂セット部29となり、樹脂Rとして顆粒樹脂がセットされる。なお、樹脂Rの形状は、タブレット状、顆粒状に限らず、液状、粉状であってもよい。さらに実装部品形状の孔が空いたシート状樹脂であっても良い。
(実施形態9)
本実施形態に係る樹脂成形金型210Hについて、図17を参照して前記実施形態8と相違する点を説明する。図17は、樹脂成形金型210Hの模式的断面図である。
樹脂成形金型210Hでは、下型12において、クランパ15には、キャビティ駒16の周りに並び、プランジャ17が挿入される貫通孔15b(挿入部)がキャビティ駒16に接して複数設けられる。そして、下型12のプランジャ17の上端面(上型11側の端面)に、キャビティ凹部13へ向かって狭まるテーパ状のランナー・ゲート28が設けられる。なお、下型12と同様に、上型11にフィルムFが有っても良いが、無くとも良い(図17では無いものとする)。
(実施形態10)
本実施形態に係る樹脂成形金型210Iについて、図18を参照して前記実施形態6と相違する点を説明する。図18は、樹脂成形金型210Iの模式的断面図である。
樹脂成形金型210Iでは、上型11のクランパ15が、バネ部材ではなく固定ブロック56を介してベース18aに固定される。また、ランナー・ゲート28が、上型11のクランパ15の下端面(上型11のパーティング面11a)であって下型12のプランジャ17と対向する位置に設けられる。また、樹脂成形後ランナー・ゲート28に残存する成形樹脂を下型12より離型するためのエジェクタピン機構(図示せず)が下型12に設けられる。また、型閉じの際に下型プレート52がある程度の位置で係り止められるように、ストッパ58が下型12のベース18bの上面に設けられる。なお、上型11と同様に、下型12にフィルムFが有っても良いが、無くとも良い(図18では無いものとする)。
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
例えば、前記実施形態1では、ワークとして基板上に実装部品が実装されたものについて説明した。これに限らず、例えば、基板上にバンプを介して実装部品がフリップチップ実装されたものであってもよい。このような場合であっても、基板と実装部品との間(バンプ間)が樹脂で充填される、いわゆるモールドアンダーフィルを行うことができる。
例えば、前記実施形態1では、キャビティ駒を実装部品の反対面(表面)に当てて樹脂成形して、その反対面を露出させる場合について説明した。これに限らず、キャビティ駒をベースに対して一定間隔より下がらないように、例えばキャビティ駒上部にクランパ上面に当たる顎のストッパ機構を設けることでキャビティ駒を実装部品の反対面に当てずに樹脂成形することもできる。すなわち、その反対面を含む実装部品全体を封止することもできる。この場合、実装部品の反対面は樹脂で覆われることになる。