JP6397353B2 - 形状保持性を有するペースト状組成物、それを用いたカーボンナノチューブを含む膜体及び複合材料膜及び3次元構造物 - Google Patents

形状保持性を有するペースト状組成物、それを用いたカーボンナノチューブを含む膜体及び複合材料膜及び3次元構造物 Download PDF

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本発明は、カーボンナノチューブを含むペースト状組成物に関する。特に、厚膜のカーボンナノチューブを含む膜体を高いスループットで塗工するのに適した、カーボンナノチューブを含むペースト状組成物、それを用いたカーボンナノチューブを含む膜体及び複合材料膜及び3次元構造物に関する。
炭素原子のみで構成されるカーボンナノチューブ(以下、CNTとも称す)は、電気的特性や熱伝導性、機械的性質の優れた材料である。CNTは、非常に軽量、且つ、極めて強靱であり、また、優れた弾性・復元性を有する材料である。このように優れた性質を有するCNTは、工業材料として、極めて魅力的、且つ重要な物質である。
優れた特性を有するCNTを配線や電極、熱伝導性部材等に応用するために、膜体あるいは球状やファイバー状やチューブ状などの3次元構造物を形成するには、CNTを分散媒となる何らかの液体に分散させる必要がある。CNTはCNT相互の凝集力(ファンデルワールス力)により、バンドルと呼ばれる大きな束のような構造で存在している。このため、印刷法等によりパターン形成するには、バンドルを解きほぐして分散媒中に分散させる必要がある。なお、このようにCNTが分散媒中に分散した系を、以下では分散液と称する。例えば、特許文献1には、CNTをイオン液体と混錬することにより、CNTのバンドルを解きほぐして分散液を調製し、印刷および塗布する方法が提案されている。しかし、イオン液体は化学的安定性に課題があるため、CNTの優れた特性を損なう場合もあり、CNTを実製品に応用するには好ましくない。
一方、イオン液体を用いずにCNT分散液を調製する場合、汎用の有機溶媒などにCNTを分散させた分散液をスプレー法により塗膜する方法(非特許文献1)や、インクジェット法により塗膜する方法(特許文献2)が知られている。しかしながら、これら公知の方法で得られた分散液を用いてカーボンナノチューブを含む膜体(以下、CNT膜体とも称す)を形成する場合、1回の塗膜で形成される膜厚が薄くなり、例えば、0.1μm以上の厚膜を塗膜するのには、重ね塗りをするための長い時間が必要であった。
これは、公知の方法で得られた分散液は、粘度が低いことに起因する。CNT膜体を形成する場合、塗布したCNT分散液から分散媒を除去する工程が必要となるため、例えば、0.1μm以上の膜厚のCNT膜体を形成するには、CNT分散液を基板上に典型的には1mm程度まで厚く塗るプロセスが必要となる。このため、膜厚の高いCNT膜体を形成するためには、静置状態で形状保持性を有し、ペースト状の粘度特性を有するCNT分散液が求められる。しかし、イオン液体を用いずにそのような粘度特性を有するCNT分散液の調製は困難であった。そのため、公知の分散液を用いて、高い膜厚を有する平坦性に優れたCNT膜体を高いスループットで形成するのは困難であった。
特開2004−142972号公報 特開2010−174084号公報
A. L. M. Reddy et al. SCIENTIFIC REPORTS, 2,481(2012).
本発明は、上記の如き従来技術の問題点を解決するものであって、カーボンナノチューブを含む膜厚が高く平坦性に優れた膜体を高いスループットで塗工するのに適した、粘度特性を有するカーボンナノチューブを含むペースト状組成物、それを用いたカーボンナノチューブを含む膜体及び複合材料膜及び3次元構造物を提供する。
本発明は、イオン液体を用いずに、厚膜のカーボンナノチューブを含む膜体を高いスループットで塗工するのに適した粘度を有するペースト状組成物を提供するものである。
本発明の一実施形態によると、分散媒と、複数のカーボンナノチューブにより構成される、三次元空間に広がるネットワーク構造を備え、かつ分散媒を保持できる細孔を備えるカーボンナノチューブ集合体と、を備えるペースト状組成物であって、レオメータにより計測される粘度が剪断速度0.1s−1以下の条件で50Pa・s以上であり、且つ、剪断速度100s−1以上の条件では20Pa・s以下である形状保持性を有するペースト状組成物が提供される。
前記ペースト状組成物において、静置状態で、前記ペースト状組成物0.2gをガラス平板上に高さを5mm以上となる形状に配置したのち、1分後の高さが2mm以上となる形状保持性を備えてもよい。
前記ペースト状組成物において、前記ペースト状組成物は、剪断速度を100s−1以上から0.1s−1以下まで変化させた前後で測定される粘度が、0.1秒以内に20Pa・s以下の値から40Pa・s以上の値に上昇してもよい。
前記ペースト状組成物において、前記ペースト状組成物中に存在する前記カーボンナノチューブ集合体のサイズは、体積基準での粒度分布の中央値が5μmから50μmの範囲にあってもよい。
前記ペースト状組成物において、前記ペースト状組成物中に存在する前記カーボンナノチューブ集合体の濃度が0.1重量%以上20重量%以下であってもよい。
前記ペースト状組成物において、前記カーボンナノチューブ集合体における体積の80%以上が、前記分散媒を保持できる細孔であってもよい。
前記ペースト状組成物において、前記ペースト状組成物を構成する分散媒が、イオン液体でなくてもよい。前記ペースト状組成物を構成する分散媒は、有機溶媒や水などの液体物質、および分散剤や高分子化合物等が溶解した溶液であることが好ましい。
本発明の一実施形態によると、前記何れかのペースト状組成物を基材に塗布又は印刷して形成するカーボンナノチューブを含む膜体が提供される。
前記カーボンナノチューブを含む膜体において、厚さ0.1μm以上、平坦性30%以下、カーボンナノチューブの純度90%以上であってもよい。
本発明の一実施形態によると、前記何れかのペースト状組成物に高分子化合物をさらに含む複合材料を、基材に塗布又は印刷して形成する複合材料膜が提供される。
前記複合材料膜において、厚さ0.1μm以上、平坦性30%以下、カーボンナノチューブの純度90%以上であってもよい。
本発明の一実施形態によると、前記何れかのペースト状組成物から形成するカーボンナノチューブを含む3次元構造物が提供される。
本発明によると、厚膜のカーボンナノチューブを含む膜体を高いスループットで塗工するのに適した、カーボンナノチューブを含むペースト状組成物、それを用いたカーボンナノチューブを含む膜体及び複合材料膜及び3次元構造物を提供することができる。
適度な粘度を有する本発明に係るカーボンナノチューブを含むペースト状組成物は、形状保持性が高く、0.1μm以上の厚さを有するカーボンナノチューブを含む膜体やカーボンナノチューブを含む複合材料膜を、ブレードコーティングを初めとする塗工法により簡便に得ることができる。
本発明の一実施形態にカーボンナノチューブを含むペースト状組成物100に含まれるカーボンナノチューブ集合体110の模式図である。 本発明の一実施形態に係る超音波発生部プローブ先端の移動方法を示す模式図であり、(a)はビーカー上面から見た超音波発生部プローブ先端の移動方法を示す模式図であり、(b)はビーカー側面から見た超音波発生部プローブ先端の移動方法を示す模式図である。 本発明の一実施例に係るペースト状組成物の剪断速度に対する粘度の測定結果を示す図である。 本発明の一実施例に係るペースト状組成物の形状保持性を示す図であり、(a)は実施例1のペースト状組成物を示し、(b)は実施例5のペースト状組成物を示す。 (a)は本発明の一実施例に係るペースト状組成物において、剪断速度を変更した前後における粘度の時間変化測定の結果を示し、(b)は(a)の丸で囲んだ領域の拡大図を示す。 本発明の一実施例に係るペースト状組成物についてレーザ回折法で測定したCNT集合体の粒子サイズ分布を示す図であり、(a)は実施例2のペースト状組成物を示し、(b)は比較例2のペースト状組成物を示す。 本発明の実施例1に係るペースト状組成物について画像解析法で測定したCNT集合体の粒子サイズ分布を示す。 本発明の一実施例に係るペースト状組成物のCNT集合体濃度と粘度の関係を示す。 (a)は本発明の一実施例に係るペースト状組成物の塗工成膜時の設定塗膜厚と形成されたCNT膜体の膜厚との関係を示す図であり、(b)は設定塗膜厚を1500μmとして形成されたCNT膜体を示す。 本発明の一実施例に係る基材上に形成したCNT膜体を示す図であり、(a)はPETに形成したCNT膜体を示し、(b)はアルミホイルに形成したCNT膜体を示し、(c)はガラス基板に形成したCNT膜体を示し、(d)はシリコン基板に形成したCNT膜体を示す。 本発明の一実施例に係るスクリーン印刷法により形成したパターンを示し、(a)は形成したパターンを示し、(b)はライン/スペース(L/S)が80μm/160μmで形成したパターンを示し、(c)はそのレーザ顕微鏡像を示す。 本発明の一実施例に係るスクリーン印刷法により形成したパターンを示し、(a)はPETシートに形成したパターンを示し、(b)はポリイミドシートに形成したパターンを示し、(c)はシリコンゴムシートに形成したパターンを示す。 本発明の一実施例に係る、ペースト状組成物をシリンジから押し出し形成した、ファイバー状CNT3次元構造物を示す。
本発明者らは、上述した問題を解決すべく鋭意検討した結果、イオン液体を用いずに、厚膜のカーボンナノチューブを含む膜体を高いスループットで塗工するのに適した粘度を有するペースト状組成物を開発するに至った。以下に詳述する粘度を有するペースト状組成物は、これまでに報告されていない新規なペースト状組成物である。
以下、図面を参照して本発明に係るカーボンナノチューブを含むペースト状組成物、それを用いたカーボンナノチューブを含む膜体及び複合材料膜について説明する。本発明のカーボンナノチューブを含むペースト状組成物、それを用いたカーボンナノチューブを含む膜体及び複合材料膜は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び後述する実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブを含むペースト状組成物100(以下、ペースト状組成物とも称す)に含まれるカーボンナノチューブ集合体110(以下、CNT集合体とも称す)の模式図である。なお、図1においては、説明のため、分散媒は特に図示していない。本発明に係るペースト状組成物100は、カーボンナノチューブ集合体と、分散媒とを含み、レオメータにより計測される粘度が剪断速度0.1s−1以下の条件では50Pa・s以上となり、且つ、剪断速度100s−1以上の条件では20Pa・s以下となることを特徴とする。
図1(a)に示したように、本発明に係るペースト状組成物100においては、複数のCNT集合体110が分散媒とともに含まれた状態にある。また、図1(b)に示したように、CNT集合体110は、複数のCNT10(若しくはCNTのバンドル)が三次元空間に広がるネットワーク構造を有し、内部に微細な細孔15を多く有していることを特徴とする。このようなネットワーク構造は、CNT10(若しくはCNTのバンドル)が複数のCNT10(若しくはCNTのバンドル)と交差し、ファンデルワールス力により点で結合していることにより形成される。上記ファンデルワールス力により、静置状態においてCNT集合体110は細孔15を有するネットワーク構造を維持することができ、本発明に係るペースト状組成物100を構成する溶液を細孔15の内部に取り込むことができる。
なお、ペースト状組成物100においては、複数のCNT集合体110がそれぞれ隣接する構造を有する。ただし、CNT集合体110の間の結合は弱いため、ペースト状組成物100について、ペースト状組成物100を構成する溶液と同じ溶液で希釈したのちに、磁気撹拌子などによってよく撹拌することによって、単独のCNT集合体110を溶液中に分散する構造を得ることができる。このことを利用して、CNT集合体110のサイズをレーザ回折法又は顕微鏡観察などにより測定することができる。
また、上記CNT集合体110において細孔15が占める体積の比率については、ペースト状組成物100において細孔15によって保持されていない分散媒を、超遠心分離装置などによりCNT集合体110から分離し、分離後にCNT集合体110に含まれている分散媒の量を測定することにより定義することが出来る。本明細書においては、ペースト状組成物100に対して最大遠心加速度165000Gの条件で30分間遠心分離処理を行い、得られた沈殿において分散媒が占める体積比率を、細孔15が集合体110における体積比率と定義する。
上述したように、CNT集合体110におけるCNT間の結合は、主にCNT間の交差点におけるファンデルワールス力によるものである。特許文献1では、イオン液体を介した「カチオン−π」相互作用によってCNT間の結合を形成させ、CNTの三次元網目構造を得ている。一方、本発明に係るCNT集合体110においては、CNT間の交差点におけるCNT間のファンデルワールス力による直接の結合のみを用いることにより、三次元ネットワーク構造を有するCNT集合体110を得ることが可能であることを見出した。CNT間の直接の結合を用いたCNT集合体110を形成することによって、形状保持性に優れたCNT集合体110から構成される本発明のペースト状組成物100を得ることができる。
上記のような構造を有する本発明に係るペースト状組成物100は、バーコーティングなどの塗工法を用いることで、カーボンナノチューブを含んだ膜厚の高い平坦な膜体を高いスループットで形成するための以下の要件を満たしている。すなわち、(1)本発明に係るペースト状組成物100は静置状態における高い形状保持性を有しているため、基板上に高く配置することができる。(2)また上記ペースト状組成物は剪断応力を加えた際に流動性を示すため、バーコーティングなどの塗工法を用いることで基板上に濡れ広げることができ、平坦かつ均一な膜体を形成することが可能となる。(3)さらに上記ペースト状組成物は、剪断応力を解放した際に即座に静置状態の形状保持性が回復するため、バーコーティングなどの塗工法を用いて平坦な厚膜を形成した直後に、液ダレなどが起こらず、この厚膜の形状を維持することができる。
静置状態においてCNT集合体110は、CNT間の結合により細孔15を有するネットワーク構造を維持することができ、本発明に係るペースト状組成物100を構成する溶液を細孔15の内部に取り込むことができる。その結果、本発明に係るペースト状組成物100においては、静置状態では流動性が低く、形状保持性を有する。このような静置状態における形状保持性を利用すれば、基板上にペースト状組成物100を高く配置した後に、バーコーティングなどの塗工法を用いることで、厚膜のカーボンナノチューブを含んだ膜体を高いスループットで形成することができる。ここで、本発明に係るペースト状組成物100が示す形状保持性とは、ペースト状組成物0.2gをガラス平板上に高さを5mm以上となる形状に配置したのち、1分後の高さが2mm以上となることが好ましく、より好ましくは3mm以上、さらに好ましくは4mm以上、さらに好ましくは5mm以上となることが好ましい。
さらに本発明に係るペースト状組成物100が示す形状保持性は、低剪断速度条件で測定される粘度の値と相関がある。本明細書においては、本発明に係るペースト状組成物100が有する粘度を、以下の条件下においてレオメータにより計測するものとする。測定ステージと500μm以上の間隔を有する直径40mm以下の円形平板プレートの間にペースト状組成物を配置したのちに、円形平板プレートを回転させてから20秒以上経過したのちに円形平板プレートに加わるトルクを測定して得られる粘度を用いるものとし、測定時のペースト状組成物の温度は15℃から25℃の範囲にあるものとする。上記の条件下で剪断速度0.1s−1以下の低剪断条件においてレオメータにより計測される本発明に係るペースト状組成物100の粘度は、50Pa・s以上となることが好ましく、より好ましくは100Pa・s以上であり、さらに好ましくは200Pa・s以上であり、さらに好ましくは500Pa・s以上であり、さらに好ましくは1000Pa・s以上であることが好ましい。
一方、本発明のペースト状組成物100は、剪断応力を加えると、流動性が高くなるという特徴も有する。これは、CNT集合体110におけるネットワーク構造に剪断応力を加えると、CNT間の交差点を保ったまま、細孔15が圧縮され、細孔15の内部に存在していた溶液が外部に滲み出すことに由来する。この剪断応力で示す流動性を利用すれば、ブレードコーティングなど種々の塗工法により剪断応力を加えた際に、本発明のペースト状組成物100を基板上に濡れ広げることができ、均一かつ平坦な膜体に形成することができる。
本明細書において、ペースト状組成物100が示す流動性とは、レオメータで測定される高剪断速度領域で測定される粘度の値として定義される。すなわち、レオメータにより計測される粘度が剪断速度100s−1以上の高剪断条件では、本発明に係るペースト状組成物100の粘度は20Pa・s以下の値となるとなることが好ましく、より好ましくは10Pa・s以下であり、さらに好ましくは5Pa・s以下であり、さらに好ましくは2Pa・s以下であり、さらに好ましくは1Pa・s以下であることが好ましい。
したがって、本発明のペースト状組成物100は、静置状態で形状保持性を示すとともに、剪断応力が加えられると流動性を示すことが好ましく、剪断速度0.1s−1以下の低剪断条件での粘度が50Pa・s以上であり、且つ、剪断速度100s−1以上の高剪断条件での粘度が10Pa・s以下の値となるとなることが好ましい。より好ましくは、剪断速度0.1s−1における粘度が、剪断速度100s−1における粘度の100倍以上の値となることが好ましい。
また、本発明のペースト状組成物100は、剪断応力から解放されると、短時間で形状保持性を回復する特徴を有する。これは、CNT集合体110においてCNT間の絡まり合いが高密度に存在しているため、剪断応力によって圧縮された細孔15が短時間で復元する特性を備えているためである。このような形状保持性の回復性は、ブレードコーティングなど種々の塗工法により形成される本発明のペースト状組成物100からなる膜体の形状を保持する上で重要であり、いわゆる液ダレなどの問題を回避することができる。これによって、形状が維持されたペースト状組成物100を乾燥工程などに供することによって、均一かつ平坦なカーボンナノチューブを含んだ厚膜体を得ることができる。本明細書において、上記のペースト状組成物100における形状保持性の回復性は、剪断速度を0.01秒以内に100s−1以上から0.1s−1以下まで変化させ、かつ粘度測定を0.01秒以内の間隔で行うことが可能なレオメータを用いて、以下のように測定される。測定ステージと500μm以上の間隔を有する直径40mm以下の円形平板プレートの間にペースト状組成物を配置したのちに、100s−1以上の剪断速度で円形平板プレートを20秒以上回転させたのちに、0.01秒以内に剪断速度を0.1s−1以下まで変化させる。この前後において円形平板プレートに加わるトルクを測定して得られる粘度を用いる。測定時のペースト状組成物の温度は15℃から25℃の範囲にあるものとする。本発明に係るペースト状組成物100は、剪断速度を100s−1以上から0.1s−1以下まで変化させた前後で測定される粘度が、0.1秒以内に20Pa・s以下の値から40Pa・s以上の値に上昇することが好ましく、より好ましくは10Pa・s以下の値から40Pa・s以上の値に上昇することが好ましく、より好ましくは10Pa・s以下の値から100Pa・s以上の値に上昇することが好ましく、より好ましくは5Pa・s以下の値から100Pa・s以上の値に上昇することが好ましく、より好ましくは5Pa・s以下の値から150Pa・s以上の値に上昇することが好ましく、より好ましくは5Pa・s以下の値から200Pa・s以上の値に上昇することが好ましい。
本発明のペースト状組成物100に含まれるCNT集合体110のサイズは、平坦かつ均一なCNT膜体を成膜する上で、粗大すぎないことが好ましい。さらに、CNT集合体110は、細孔15の内部に分散媒を保持することが必要であるため、CNT間の絡まりあいが可能な範囲で高密度に存在していることが好ましい。よって、CNT集合体110は、ある程度以上のサイズを有する必要がある。本明細書において、細孔15も含めたCNT集合体110のサイズについては以下のように定義するものとする。CNT集合体110を含んだペースト状組成物100について、ペースト状組成物100を構成する分散媒と同じ溶液により100倍以上の体積になるまで希釈する。磁気撹拌子のみによって1時間以上撹拌することによって単独のCNT集合体110を溶液中に分散した構造を得る。この単独で分散しているCNT集合体110のサイズ分布についてレーザ回折法又は顕微鏡観察により測定する。画像解析法を用いる場合は、画像に投影された面積から得た円面積相当径をCNT集合体110のサイズとして用いるものとする。CNT集合体110のサイズは、上記の方法で得られた体積基準でのサイズ分布の中央値で評価することができる。具体的には、本発明に係るCNT集合体110は、体積基準での粒度分布の中央値が5μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上40μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下である。
本発明に係るペースト状組成物100中に存在するCNT集合体110の濃度は、0.1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3重量%以上である。CNT集合体110の濃度を高くすることによって、CNT集合体110の細孔15の内部に多くの分散媒を保持することが可能となり、形状保持性に優れたペースト状組成物100が得られる。
一方、本発明に係るCNT集合体110は、多くの細孔15を備えていることにより、多くの分散媒を保持することが可能になり、形状保持性に優れたペースト状組成物100が得られる。そのため、本発明に係るペースト状組成物100中に存在するCNT集合体110の濃度は20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。
(分散媒)
上述したように、イオン液体は化学的安定性に課題があるため、CNTの優れた特性を損なう場合もあり、本発明に係るペースト状組成物100には好ましくない。したがって、本発明に係るペースト状組成物100を構成する分散媒は、イオン液体ではないことが好ましく、有機溶媒や水などの液体物質、および分散剤や高分子化合物等が溶解した溶液であることが好ましい。本発明に係るペースト状組成物100においては、CNT間の絡まりあいにより生じるファンデルワールス力によってCNTが点で結合し、3次元網目構造体の形状保持性を発現させていると考えられる。イオン強度が高いイオン液体を用いると、CNT間にイオンが親和することによってCNT間の距離が離れ(ほぐされ)、ファンデルワールス力が弱まる。
本発明に係るペースト状組成物100が含む分散媒は、上記の条件を満たせば、有機溶媒や水などの液体物質、および分散剤や高分子化合物等が溶解した溶液であってもよい。本発明に係る分散媒に用いる有機溶媒としては、例えば、イソブチルアルコール、2−プロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、スチレン、1−ブタノール、2−ブタノール、エタノール、メタノール、ノルマルメチルピロリドン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、エチレングリコール、酢酸エチル、シクロヘキサノール、テトラヒドロフラン等を用いることができる。また、本発明に係る分散媒に用いる分散剤としては、例えば、コール酸、コール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ステアリルステアレート、ジグリセリンオレエート、クエン酸脂肪酸モノグリセライド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール等を用いることができる。また、本発明に係る分散媒として、高分子化合物やそのモノマーを溶解させた溶液を用いることもでき、例えば高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ジメチルポリシロキサン、ポリウレタン、ポリフェノール、ポリエチレンテレフタラート等を用いることができる。
(カーボンナノチューブ)
上述したように、本発明に係るCNT集合体110は、CNT10が複数のCNT10と交差し、ファンデルワールス力により点で結合したネットワーク構造を有する。このため、CNT10の長さは、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。このような長尺なCNT10は、CNT間の結合点が多いため、形状保持性に優れたネットワーク構造を形成することを可能とする。なお、本発明に係るCNT集合体110は、このような長尺なCNT10を主として含むものであればよく、その製造方法等は特に限定されない。
以上説明しように、本発明に係るペースト状組成物は、CNT集合体と、分散媒とを含み、レオメータにより計測される粘度が剪断速度1.0s−1以下の条件では50Pa・s以上となり、且つ、剪断速度100s−1以上の条件では20Pa・s以下となることを特徴とする。これにより、本発明に係るペースト状組成物は、形状保持性が高く、0.1μm以上の厚さを有するカーボンナノチューブを含む膜体やカーボンナノチューブを含む複合材料膜を、ブレードコーティングを初めとする塗工法により簡便に得ることができる。
(カーボンナノチューブを含む膜体)
上述した本発明に係るペースト状組成物を用いて、カーボンナノチューブを含む膜体(以下、CNT膜体とも称す)を形成することができる。本発明に係るCNT膜体は、本発明に係るペースト状組成物を基材に塗布又は印刷して形成する。本発明に係るCNT膜体は、厚さ0.1μm以上、平坦性30%以下、CNTの純度90%以上であることが好ましい。
なお、本明細書において、CNT膜体の「平坦性」とは以下のように定義される。それぞれ1mm以上離れた、CNT膜体における任意の10か所以上で、レーザ式の変位計などにより厚さを測定し、その測定値の標準偏差Raを平均値tで割った値を、平坦性として表す。
従来技術では、本発明に係るCNT膜体のような膜厚な膜体を形成するには、長時間を要するとともに、重ね塗りを施すため、十分な平坦性を確保するのは困難であった。本発明に係るペースト状組成物を用いることにより、膜厚で、平坦性の高いCNT膜体を高いスループットで形成することができる。
(複合材料膜)
上述した本発明に係るペースト状組成物を用いて、カーボンナノチューブを含む複合材料膜(以下、複合材料膜とも称す)を形成することができる。本発明に係る複合材料膜は、本発明に係るペースト状組成物に高分子化合物をさらに含む複合材料を、基材に塗布又は印刷して形成することができる。
本発明に係る複合材料に添加する高分子化合物としては、エラストマーや樹脂を用いることができる。エラストマーは、優れた変形能を有するため好ましい。本発明に係る複合材料に適用可能なエラストマーとしては、柔軟性、導電性、耐久性の点で、例えば、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)から選ばれる一種以上が挙げられる。本発明に係る複合材料に用いるエラストマーは、上記の群より選ばれる一種以上を架橋しても良い。
本発明に係る複合材料に用いる高分子化合物はとしては、特にフッ素ゴムが好ましい。フッ素ゴムは、CNT集合体との分散性が高く、CNTと高分子化合物が互いの変形に追随して変形するため、好ましい。
架橋剤としては、上記のエラストマーの種類に応じて異なるが、例えば、イソシアネート基含有架橋剤(イソシアネート、ブロックイソシアネート等)、硫黄含有架橋剤(硫黄等)、過酸化物架橋剤(パーオキサイド等)、ヒドロシリル基含有架橋剤(ヒドロシリル硬化剤)、メラミン等の尿素樹脂、エポキシ硬化剤、ポリアミン硬化剤や、紫外線や電子線等のエネルギーによってラジカルを発生する光架橋剤等が挙げられる。これらは単独または二種以上で用いてもよい。
また、本発明に係る複合材料に適用可能な樹脂としては、例えば、シリコーン系樹脂、変成シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、クロロプレン系樹脂、ポリサルファイド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチル系樹脂、フロロシリコーン系樹脂から選ばれる一種以上が挙げられる。
従来技術では、本発明に係る複合材料膜のような膜厚な複合材料膜を形成するには、長時間を要するとともに、重ね塗りを施すため、十分な平坦性を確保するのは困難であった。本発明に係るペースト状組成物を用いることにより、膜厚で、平坦性の高い複合材料膜を高いスループットで形成することができる。
(カーボンナノチューブを含む3次元構造物)
また、上述した本発明に係るペースト状組成物を用いて、カーボンナノチューブを含む所定の3次元形状を有する構造物(以下、CNT3次元構造物)を形成することができる。本発明に係るCNT3次元構造物の形状は、球、多面体、円柱のほかに曲面を複数含む複雑な構造なども含む。本発明の一実施形態によって製造されるCNT3次元構造物は、CNTの純度90%以上であることができる。また、高分子化合物を含む本発明に係るペースト状組成物を用いることによって高分子化合物とCNTの複合材料からなる3次元構造物を形成することもできる。
従来技術では、本発明に係る複雑な形状を有するCNT3次元構造体を形成するのは、CNT分散体に形状保持性がないために困難であった。本発明に係るペースト状組成物は形状保持性を有するため、所定の3次元形状に成形することが可能である。
(ペースト状組成物の製造方法)
上述した本発明に係るペースト状組成物の製造方法としては、本明細書において規定した条件を満たすペースト状組成物が得られる限り特に限定はされない。しかし、原料となるカーボンナノチューブを得るための合成工程と、合成工程で得られたカーボンナノチューブを分散媒に分散させる分散工程を組み合わせた方法により製造することもできる。また、上記分散工程によって得られた分散液から分散媒を一部取り除くことによって、分散液の粘度特性を調整してペースト状組成物を得る、濃縮工程を組み合わせる方法により製造することもできる。
(CNTの合成)
本発明に係るペースト状組成物を製造するために用いるCNTの合成工程は、本明細書に規定したCNTの特性を備える限り特に限定はされない。しかし、上述したように、1μm以上の長いCNTを合成する必要から、例えば、本発明者らによる国際公開WO2006/011655号に記載した方法により製造することもできる。
(CNTの分散方法)
本発明に係るペースト状組成物を製造するためには、上述の合成工程により得られたCNTと分散媒とを混合する必要がある。この混合方法としては、本明細書において規定した条件を満たすペースト状組成物が得られる限り特に限定はされない。しかし、本発明に係るペースト状組成物を得るためには、CNT集合体に含まれるCNTが可能な限り多くのCNTとの間に結合を形成したネットワーク構造を形成することが好ましい。このようなネットワーク構造を得るためには、原料であるCNTのバンドルを適度に解きほぐし、且つCNTの長さを長く保つ分散方法が必要である。さらに、静置状態で極めて粘度が高い本発明に係るペースト状組成物を得るためには、粘度が高い媒体中においても均一に分散を進行させる必要がある。
CNTの一般的な分散過程は、1.機械的にせん断力を加える手法(ボールミル、ローラーミル、振動ミル、混練機など)、2.キャビテーションを用いた手法(超音波分散)、3.乱流を用いた手法(ジェットミル、ナノマイザーなど)の3つに分類される。このうち、機械的にせん断力を加える手法に分類される方法のみでは、ファンデルワールス力に打ち勝ち、CNT間の絡み合いをほどくことが困難である。イオン液体を溶媒として用いることでCNT間のファンデルワールス力による結合自体を弱めている特許文献1では、せん断力のみでゲル状組成物を得ているが、CNT間のファンデルワールス力をネットワーク構造の形成に用いる本発明では、異なる分散手法が必要となる。
一方、キャビテーションや乱流を用いた手法においては、ファンデルワールス力に打ち勝ち、CNT間の結合をほぐしていく効果は高いものの、本発明に係るペースト状組成物のような高粘度の媒体中では、混合した全てのCNTを均一に分散させることが難しいという問題がある。例えば、超音波は短距離で減衰してしまうため、従来技術においては、プローブの極近傍にあるCNTについては分散が進行するが、一旦、プローブから遠い距離まで弾き飛ばされたCNTは、分散が進行しなくなり、さらに本発明に係るペースト状組成物が有する形状保持性のため、上記CNTが再びプローブの極近傍に戻ることは困難であるため、結果として十分に均一にCNT間の結合がほぐされた分散が得られない。
そこで以下では、上記の課題を解決するための、本発明の2つの実施形態について説明する。一つは、分散工程において、超音波発生部プローブなどの分散機を分散液が入った容器の中で移動させることにより、高粘度の媒体中においても混合したCNTを均一に分散させる。もう一つは、分散工程をCNTの濃度が低く低粘度の媒体中で行ったあと、分散液から分散媒を一部取り除く濃縮工程を組み合わせることによって、高粘度のペースト状組成物を得る。
本発明の一実施形態においては、超音波発生部プローブを分散液が入った容器の中で移動させる。さらに、プローブの移動を、容器の至る所まで到達するよう、プローブの移動経路を設定することにより、容器内のすべてのCNTについて分散を進行させ、より均一な分散を実現することができる。
本発明の一実施形態において、図2に示したように、固定された円筒状のビーカー内に溶液ならびにカーボンナノチューブを投入した後、超音波プローブを渦巻き状に移動させながら溶液に対して超音波を照射することで、容器内の至る所にあるCNTについて分散を進行させ、より均一な分散を実現することができる。
また、本発明の異なる一実施形態においては、低粘度のCNT分散液をCNTの分散工程により得た後で、さらに得られたCNT分散液から分散媒を除去する濃縮工程を経ることで、本発明に係るペースト状組成物を製造することもできる。この製造方法における分散工程においては、CNTを均一に分散させるために、工程後に得られるCNT分散液の静置状態での粘度が低いことが望ましい。具体的には、レオメータで測定される剪断速度0.1s−1における粘度が50Pa・s以下であることが望ましく、より好ましくは、20Pa・s以下であり、さらに好ましくは10Pa・s以下であり、さらに好ましくは1Pa・s以下であることが好ましい。また濃縮工程において分散液から分散媒を除去する方法としては、加熱蒸発、濾過、遠心分離などが挙げられる。
(カーボンナノチューブを含む膜体の製造方法)
このように調製した本発明に係るペースト状組成物を基材上に塗布又は印刷することにより、CNT膜体を得ることができる。ペースト状組成物を塗布又は印刷後に、ペースト状組成物に含まれる溶液を乾燥又は洗浄により除去することによって、高純度のCNT膜体を得ることができる。また、本発明に係るペースト状組成物を用いることにより、平坦性に優れた膜厚のCNT膜体を製造することができる。このように製造された本発明に係るCNT膜体は、平坦性30%以下、CNTの純度90%以上を有し、好ましくは厚さ0.1μm以上を有する。より好ましくは厚さ0.5μm以上を有し、さらに好ましくは1μm以上を有する。
(複合材料膜の製造方法)
また、ペースト状組成物にゴムや樹脂等の高分子化合物を溶解させることにより、CNTと高分子化合物との複合材料膜を塗布又は印刷により得ることができる。あるいは、モノマーを含んだペースト状組成物を塗布した後、これを重合させることによって、CNTと高分子化合物との複合材料膜を得ることができる。
ペースト状組成物を塗布又は印刷する方法は特に限定されないが、ブレードコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、浸漬コーティング、ロールコーティングならびにスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、他の種類の印刷などを利用することができる。
(カーボンナノチューブを含む3次元構造物の製造方法)
本発明に係るCNT3次元構造物を得るためには、まず本発明に係るペースト状組成物を押出法または射出成型法などを用いて所定の形状に加工する。本発明に係るペースト状組成物は形状保持性を有するため、所定の3次元形状に成形することが可能である。この後に、乾燥又は分散媒を溶解しうる媒体によって洗浄することにより、ペースト状組成物に含まれる溶液を除去することによって、本発明に係るCNT3次元構造物を得ることができる。
ペースト状組成物を押出し又は射出成型する方法は特に限定されないが、湿式紡糸、乾式紡糸、ディスペンサー、3Dプリンター、金型を用いた射出成型などを利用することができる。
上述した本発明に係るペースト状組成物、それを用いたカーボンナノチューブを含む膜体及び複合材料膜について、具体例を示して、詳細に説明する。なお、以下に説明する本発明に係るペースト状組成物、それを用いたカーボンナノチューブを含む膜体及び複合材料膜は一例であって、これらに限定されるものではない。
以下の実施例1から実施例5においては、まず、本発明者らによる国際公開WO2006/011655号に記載した方法により、CNTを合成した。CNTの長さは典型値として100μmであった。
(実施例1)
デオキシコール酸ナトリウム(DOC)10%水溶液を入れたビーカーにCNTを1.0重量%となるように投入した。超音波発生部先端が、ビーカー内の分散液の至る所に到達するよう、超音波分散機を移動させながら、超音波分散を行った。その際、超音波分散機を駆動型ステージに固定し、プログラムにより図2のように超音波発生部プローブ先端を移動させた。図2(a)はビーカー上面から見た超音波発生部プローブ先端の移動方法を示す模式図であり、図2(b)はビーカー側面から見た超音波発生部プローブ先端の移動方法を示す模式図である。一実施例として、直径10センチメートルのビーカーにDOC水溶液を300グラム入れ、直径36ミリメートルの超音波発生部プローブをビーカー内に挿入した。まず超音波発生部プローブを、ビーカー壁面に近くかつビーカー底面に近い位置に設置し、その後、図2(a)で示されたようにビーカー内を渦巻き状に移動し、1周約30秒の速度で移動しながら、3周程度で中心に達するように移動させた。その後、超音波発生部プローブ先端を1センチおよび2センチ高い位置に移動させ、それぞれ前述の周回運動を行った。このような移動方法を合計で2時間以上行った。超音波照射は出力100Wであった。このようにして、実施例1のペースト状組成物100を得た。
(ペースト状組成物の粘度)
実施例1のペースト状組成物について、粘度を測定した。粘度測定には、TA instrument社Discoveryを用い、φ40mmパラレルコーン(500μm)で20℃にて測定した。図3にペースト状組成物の粘度測定結果を示す。本実施例においては、剪断速度0.1s−1以下の低剪断条件での粘度は1500Pa・s以上であり、且つ、剪断速度100s−1以上の高剪断条件での粘度が5Pa・s以下の値となった。
(ペースト状組成物の形状保持性)
実施例1のペースト状組成物について、形状保持性を検証した。ペースト状組成物0.2gをポリエチレンテレフタラート(PET)基板上に配置した1分後に、高さを測定した。図4(a)は、PET基板上に配置した1分後のペースト状組成物を示す図である。高さが6mmとなり、良好な形状保持性を示した。
(ペースト状組成物における形状保持性の回復速度)
実施例1のペースト状組成物について、形状保持性の回復速度を評価した。測定には、TA instrument社Discoveryを用い、φ40mmパラレルコーン(500μm)で測定した。図5(a)は実施例1のペースト状組成物の粘度測定の結果を示し、図5(b)は図5(a)の丸で囲んだ領域の拡大図を示す。実施例2のペースト状組成物は、剪断速度を1000s−1から0.1s−1まで変化させた前後で測定される粘度が、0.1秒以内に8Pa・s以下の値から600Pa・s以上の値に上昇した。この結果から、実施例1のペースト状組成物の形状保持性は優れた回復速度を有することが示された。
レーザ回折法によりペースト状組成物に含まれるCNT集合体のサイズ分布を評価した。図6(a)は実施例1のペースト状組成物100のサイズ分布を示す。体積基準での粒度分布の中央値は18μmであった。
また、画像解析法を用いてペースト状組成物に含まれるCNT集合体の粒子サイズ分布を評価した。図7は実施例1のペースト状組成物100の体積基準での粒子サイズ分布を示す。体積基準での粒度分布の中央値は28μmであった。
ペースト状組成物を、Hitachi社Himac CS100GXII超遠心分離装置を用いて、最大遠心加速度165000Gの条件で30分間処理した。得られた沈殿におけるCNT集合体は3.4重量%であり、CNT集合体において細孔が占める体積は97%と算出された。
ペースト状組成物を希釈してガラス基板上に滴下して、孤立したCNT集合体の中のCNTの長さを光学顕微鏡により確認したところ、CNTの長さが5μm以上であることを確認した。
(塗膜)
基板にPET基板を用い、調製したペースト状組成物100をブレードコーティングにより塗布し、CNT膜体を形成した。前述したようにペースト状組成物は高い形状保持性を有するため、まず基板上に高さ2000μm以上のペースト状組成物を配置した。基板との間隔(塗膜設定厚)を500μmに設定したブレードを用いて、一方向に動かすことによって、ペースト状組成物を塗膜した。その後、エタノールに浸漬することによりDOCを洗浄した。その後、室温で乾燥させ、高純度カーボンナノチューブからなるCNT膜体1000を得た。
CNT膜体1000の膜厚の測定には触針型高さ測定器を用い、それぞれ1mm以上離れた、CNT膜体における任意の10か所以上で測定した。その測定値の標準偏差Raを平均値tで割ることで、平坦性を評価した。CNT純度は熱重量測定装置により評価した。
実施例1のCNT膜体1000の平均厚さは9μmであり、表面粗さは0.9μm以下であった。ここから計算された表面粗さは10%であった。熱重量測定装置で測定した結果、700℃以上で膜の重量が5%まで減少した。この重量の減少は、膜に残留していたDOCの残差によるものと考えられる。この結果から、実施例1のCNT膜体1000のCNT純度は92%と計算された。
(印刷法)
汎用の手刷り方式のスクリーン印刷機及び版を用いて、ペースト状組成物をインクとして用いた印刷を行った。基板としてPET基板を用いた。線幅80μmの線型パターンを基板上に形成することができた。DOC洗浄・乾燥工程を経た後、CNTのパターンの膜厚を測定した。レーザ式変位計で膜厚を測定したところ、膜厚は0.6μmであった。また、ガラス基板、ポリイミドシートにも同様のパターンを形成可能であることを確認した。
(実施例2)
本実施例においては、分散媒として有機溶媒であるN−メチルピロリドン(NMP)を用いたペースト状組成物の製造方法について説明する。NMPを入れたビーカーにCNTを0.8重量%となるように投入した。超音波分散機を駆動型ステージに固定し、実施例1と同様に超音波発生部先端を移動させた。超音波照射は出力100W、合計で2時間以上行った。
(ペースト状組成物の評価)
実施例2のペースト状組成物について、粘度を測定した。剪断速度0.1s−1以下の低剪断条件での粘度は1400Pa・s以上であり、且つ、剪断速度100s−1以上の高剪断条件での粘度が1Pa・s以下の値となった。
実施例2のペースト状組成物について、形状保持性を検証した。ペースト状組成物0.2gをポリエチレンテレフタラート(PET)基板上に配置した1分後に、高さを測定したところ6mmとなり、良好な形状保持性を示した。
(ペースト状組成物における形状保持性の回復速度)
実施例2のペースト状組成物について、形状保持性の回復速度を評価した。剪断速度を1000s−1から0.1s−1まで変化させた前後で測定される粘度が、0.1秒以内に2Pa・s以下の値から180Pa・s以上の値に上昇した。この結果から、実施例2のペースト状組成物の形状保持性は優れた回復速度を有することが示された。
レーザ回折法によりペースト状組成物に含まれるCNT集合体のサイズ分布を評価した。体積基準での粒度分布の中央値は16μmであった。
ペースト状組成物を希釈してガラス基板上に滴下して、孤立したCNT集合体の中のCNTの長さを光学顕微鏡により確認したところ、CNTの長さが5μm以上であることを確認した。
ペースト状組成物を、超遠心分離装置を用いて、最大遠心加速度165000Gの条件で30分間処理した。得られた沈殿におけるCNT集合体は4重量%であり、CNT集合体において細孔が占める体積は96%と算出された。
(塗膜法)
基板にPET基板を用い、調製したペースト状組成物をブレードコーティングにより塗布し、CNT膜体を形成した。塗膜設定厚を500μmに設定した。ペースト状組成物を塗膜後、ホットプレートで乾燥させNMPを除去し、実施例2のCNT膜体を得た。
実施例2のCNT膜体の平均厚さは8μmであり、表面粗さは1.2μm以下であった。ここから計算された表面粗さは15%であった。熱重量測定装置で測定した結果、800℃までに膜の重量が1%以下まで減少した。この結果から、実施例2のCNT膜体のCNT純度は99%以上であることが確認された。
(実施例3)
実施例3として、本発明に係る複合材料膜を、樹脂であるエポキシ樹脂を用いて形成した。メチルイソブチルケトン(MIBK、シグマアルドリッチジャパン社製)を入れたビーカーにCNTを0.5重量%となるように投入した。磁気撹拌子スターラーで一晩撹拌すると、粘度が高くなった。そこで、高粘度の高圧で送液するポンプを組み込んだジェットミル(常光社製ナノジェットパル(登録商標)JN10)に投入し、3回循環させてペースト状組成物1を得た。さらに、エポキシ樹脂のモノマーとしてビスフェノールF型(三菱化学、jER 806)を用い、ペースト状組成物1:モノマー:硬化剤を4.5:3.5:1の割合で混合した。上記混合物を100℃で3時間加熱しながら撹拌し、メチルイソブチルケトンの一部を蒸発させた。このようにして、実施例3のペースト状組成物を得た。
(ペースト状組成物の評価)
実施例3のペースト状組成物について、粘度を測定した。剪断速度0.1s−1以下の低剪断条件での粘度は100Pa・s以上であり、且つ、剪断速度100s−1以上の高剪断条件での粘度が5Pa・s以下の値となった。
実施例3のペースト状組成物について、形状保持性を検証した。ペースト状組成物0.2gをポリエチレンテレフタラート(PET)基板上に配置した1分後に、高さを測定した。高さが6mmとなり、良好な形状保持性を示した。
(ペースト状組成物における形状保持性の回復速度)
実施例3のペースト状組成物について、形状保持性の回復速度を評価した。剪断速度を1000s−1から0.1s−1まで変化させた前後で測定される粘度が、0.1秒以内に8Pa・s以下の値から50Pa・s以上の値に上昇した。この結果から、実施例3のペースト状組成物の形状保持性は優れた回復速度を有することが示された。
レーザ回折法によりペースト状組成物に含まれるCNT集合体のサイズ分布を評価した。体積基準での粒度分布の中央値は25μmであった。
ペースト状組成物を、超遠心分離装置を用いて、最大遠心加速度165000Gの条件で30分間処理した。得られた沈殿におけるCNT集合体は2.8重量%であり、CNT集合体において細孔が占める体積は97%と算出された。
ペースト状組成物を希釈してガラス基板上に滴下して、孤立したCNT集合体の中のCNTの長さを光学顕微鏡により確認したところ、CNTの長さが5μm以上であることを確認した。
(塗膜法)
基板にPET基板を用い、調製したペースト状組成物をブレードコーティングにより塗布し、エポキシ樹脂を重合させ、複合材料膜を形成した。塗膜設定厚は100μmに設定した。その後、170℃、2時間の熱処理によりエポキシ樹脂を重合させ、実施例3の複合材料膜を得た。
実施例3の複合材料膜の平均厚さは26μmであり、表面粗さは1.5μm以下であった。ここから計算された表面粗さは6%であった。
(実施例4)
実施例4として、本発明に係る複合材料膜を、エラストマーであるフッ素ゴムを用いて形成した。メチルイソブチルケトン(MIBK、シグマアルドリッチジャパン社製)を入れたビーカーにCNTを0.5重量%となるように投入した。磁気撹拌子スターラーで一晩撹拌すると、粘度が高くなった。そこで、高粘度の高圧で送液するポンプを組み込んだジェットミル(常光社製ナノジェットパル(登録商標)JN10)に投入し、3回循環させてペースト状組成物1を得た。別途、フッ素ゴム(ダイキン工業社製、Daiel-G912)をMIBKに40重量%の濃度で溶解させた溶液2を調整した。ペースト状組成物1と溶液2を等重量混合撹拌することで、実施例4のペースト状組成物を得た。
(ペースト状組成物の評価)
実施例4のペースト状組成物について、粘度を測定した。剪断速度0.1s−1以下の低剪断条件での粘度は60Pa・s以上であり、且つ、剪断速度100s−1以上の高剪断条件での粘度が9Pa・s以下の値となった。
実施例4のペースト状組成物について、形状保持性を検証した。ペースト状組成物0.2gをポリエチレンテレフタラート(PET)基板上に配置した1分後に、高さを測定した。高さが8mmとなり、良好な形状保持性を示した。
(ペースト状組成物における形状保持性の回復速度)
実施例4のペースト状組成物について、形状保持性の回復速度を評価した。剪断速度を1000s−1から0.1s−1まで変化させた前後で測定される粘度が、0.1秒以内に9Pa・s以下の値から30Pa・s以上の値に上昇した。この結果から、実施例4のペースト状組成物の形状保持性は優れた回復速度を有することが示された。
レーザ回折法によりペースト状組成物に含まれるCNT集合体のサイズ分布を評価した。体積基準での粒度分布の中央値は27μmであった。
ペースト状組成物を、超遠心分離装置を用いて、最大遠心加速度165000Gの条件で30分間処理した。得られた沈殿におけるCNT集合体は2.8重量%であり、CNT集合体において細孔が占める体積は97%と算出された。
ペースト状組成物を希釈してガラス基板上に滴下して、孤立したCNT集合体の中のCNTの長さを光学顕微鏡により確認したところ、CNTの長さが5μm以上であることを確認した。
(塗膜法)
基板にPET基板を用い、調製したペースト状組成物をブレードコーティングにより塗布し、加熱乾燥させ、複合材料膜を形成した。塗膜設定厚を100μmに設定した。ペースト状組成物を塗膜後、80℃、12時間真空乾燥させてMIBKを除去し、実施例4の複合材料膜を得た。
実施例4の複合材料膜の平均厚さは15μmであり、表面粗さは2.4μm以下であった。ここから計算された表面粗さは16%であった。
(実施例5)
本実施例は、本発明に係るペースト状組成物の製造方法において、分散工程の後で濃縮工程を実施するものを示すものである。まずDOC1%水溶液を入れたビーカーにCNTを0.05重量%となるように投入した。固定したビーカーに超音波分散機を挿入してこれも固定し、出力100Wで超音波を照射し、30分間でCNTを分散させた。これにより得られた0.05重量%のCNT分散液はペースト状とはならず、静置状態で液体的挙動を示した。続いて、濃縮工程として、このCNT分散液を入れたビーカーを95℃のホットスターラーの上に設置し、12時間撹拌した。これにより分散液中の水分を蒸発させ、CNTの濃度が0.5重量%まで高まった、ペースト状組成物を得た。なお、この濃縮工程は、遠心加速度が重力加速度の10000倍以上となるようにすれば、超遠心分離法でも行うことができる。また、孔径0.5μm以下のフィルターを用いれば、濾過法によっても行うことができる。
(ペースト状組成物の評価)
実施例5のペースト状組成物について、粘度を測定した。図3にペースト状組成物の粘度測定結果を示す。剪断速度0.1s−1以下の低剪断条件での粘度は300Pa・s以上であり、且つ、剪断速度100s−1以上の高剪断条件での粘度が2Pa・s以下の値となった。
実施例5のペースト状組成物について、形状保持性を検証した。ペースト状組成物0.2gをポリエチレンテレフタラート(PET)基板上に配置した1分後に、高さを測定した。図4(b)は、PET基板上に配置した1分後のペースト状組成物を示す図である。高さが5.5mmとなり、良好な形状保持性を示した。
(ペースト状組成物における形状保持性の回復速度)
実施例5のペースト状組成物について、形状保持性の回復速度を評価した。剪断速度を1000s−1から0.1s−1まで変化させた前後で測定される粘度が、0.1秒以内に5Pa・s以下の値から200Pa・s以上の値に上昇した。この結果から、実施例5のペースト状組成物の形状保持性は優れた回復速度を有することが示された。
レーザ回折法によりペースト状組成物に含まれるCNT集合体のサイズ分布を評価した。体積基準での粒度分布の中央値は19μmであった。
ペースト状組成物を、超遠心分離装置を用いて、最大遠心加速度165000Gの条件で30分間処理した。得られた沈殿におけるCNT集合体は3.3重量%であり、CNT集合体において細孔が占める体積は97%と算出された。
ペースト状組成物を希釈してガラス基板上に滴下して、孤立したCNT集合体の中のCNTの長さを光学顕微鏡により確認したところ、CNTの長さが5μm以上であることを確認した。
(塗膜法)
基板にPET基板を用い、調製したペースト状組成物をブレードコーティングにより塗布し、CNT膜体を形成した。塗膜設定厚を500μmに設定した。ペースト状組成物を塗膜後、エタノールに浸漬することによりDOCを洗浄した。その後、室温で乾燥させ、実施例5のCNT膜体を得た。
実施例5のCNT膜体の平均厚さは5μmであり、表面粗さは0.5μm以下であった。ここから計算された表面粗さは10%であった。熱重量測定装置で測定した結果、700℃で膜の重量が5%まで減少した。この重量の減少は、膜に残量していたDOCの残差によるものと考えられる。この結果から、実施例5のCNT膜体のCNT純度は92%と計算された。
(比較例1)
比較例として、DOC10%水溶液を入れたビーカーにCNTを0.05重量%となるように投入した。固定したビーカーに超音波分散機を挿入してこれも固定し、出力100Wで超音波を照射し、30分間でCNTを分散させた。
(ペースト状組成物の評価)
比較例1においては、ペースト状とはならず、静置状態で液体的挙動を示した。レオメータにより粘度測定を行ったところ、その最大値は剪断速度0.01s−1における粘度0.8Pa・s(50Pa・s以下)であった。0.2gの分散液を基板上に滴下し、1分間濡れ広がる様子を観察した結果、分散液の高さは0.05mm以下であった。CNT集合体濃度が0.05重量%のペースト状組成物では、高さが1mm以下となり、液ダレが激しく、塗工ができなかった。
(ペースト状組成物のCNT集合体濃度と粘度の関係)
実施例のペースト状組成物のCNT集合体濃度と粘度の関係を検討した。図8はペースト状組成物のCNT集合体濃度と粘度の関係を示す。ペースト状組成物のCNT集合体濃度と粘度とは正の相関を示し、CNT集合体濃度の上昇とともに粘度が急激に上昇することが明らかとなった。
(比較例2)
メチルイソブチルケトン(MIBK、シグマアルドリッチジャパン社製)を入れたビーカーにCNTを0.03重量%となるように投入した。磁気撹拌子スターラーで一晩撹拌して得た低粘性溶液をジェットミル(常光社製ナノジェットパル(登録商標)JN10)に投入し、1回循環させて得たCNT分散液を6時間60℃で乾燥させてMIBKを部分的に除去し、比較例2のペースト状組成物900を得た。ペースト状組成物900におけるCNT濃度は0.1重量%と計算された。
(ペースト状組成物900の評価)
比較例2においては、静置状態でペースト状ではあるものの、時間経過とともに分離し、液体的挙を示す分画がペースト状組成物から染み出る様子が観測された。レオメータにより粘度測定を行ったところ、その最大値は剪断速度0.01s−1における粘度37Pa・s(50Pa・s以下)であった。0.2gの分散液を基板上に滴下し、1分間濡れ広がる様子を観察した結果、分散液の高さは1.0mm以下であった。レーザ回折法によりペースト状組成物に含まれるCNT集合体のサイズ分布を評価した。図6(b)は比較例2のペースト状組成物900のサイズ分布を示す。体積基準での粒度分布の中央値は73μmであった。
(塗膜法)
基板にPET基板を用い、調製したペースト状組成物200をブレードコーティングにより塗布し、CNT膜体を形成した。ペースト状組成物を塗膜後、エタノールに浸漬することによりDOCを洗浄した。その後、ホットプレートで乾燥させエタノールを除去し、比較例2のCNT膜体2000を得た。基板にPET基板を用い、調製したペースト状組成物900をブレードコーティングにより塗布し、CNT膜体を形成した。塗膜設定厚を500μmに設定した。本ペースト状組成物は、塗工中にカーボンナノチューブが大きく凝集し、膜厚のムラが著しく大きくなった。比較例2のCNT膜体2000の平均厚さは9μmであり、表面粗さは6μmであった。ここから計算された表面粗さは70%であった。
(実施例6)
CNT膜体の膜厚制御を行うために、実施例1のペースト状組成物を用いて、塗工するペースト状組成物の膜厚とCNT膜体の膜厚との関係を検討した。図9(a)は塗工するペースト状組成物の膜厚とエタノール洗浄後得られたCNT膜体の膜厚との関係を示す図であり、塗工するペースト状組成物の膜厚とCNT膜体の膜厚とは正の相関を示し、CNT膜体の膜厚を任意に調整可能であることが示された。また、図9(b)は、ペースト状組成物の膜厚を1500μmで塗工し形成したCNT膜体を示し、エタノール洗浄によりDOC除去することにより、45μmの膜厚のCNT膜体が形成された。
(実施例7)
実施例1のペースト状組成物を様々な基材に塗工して、基材と塗工性の関係について検討した。図10(a)はPETに形成したCNT膜体を示し、図10(b)はアルミホイルに形成したCNT膜体を示し、図10(c)はガラス基板に形成したCNT膜体を示し、図10(d)はシリコン基板に形成したCNT膜体を示す。何れにおいても優れた塗工性を示した。
(実施例8)
実施例1のペースト状組成物を用いて、スクリーン印刷法によるパターン形成を行った。図11(a)は形成したパターンを示し、図11(b)はライン/スペース(L/S)が80μm/160μmで形成したパターンを示し、図11(c)はそのレーザ顕微鏡像を示す。また、図12は様々な基材に形成したパターンを示し、図12(a)はPETシートに形成したパターンを示し、図12(b)はポリイミドシートに形成したパターンを示し、図12(c)はシリコンゴムシートに形成したパターンを示す。本実施例においては、何れにおいても良好なパターン形成が認められた。
(実施例9)
CNT3次元構造物の製造を行うため、実施例1のペースト状組成物を、針内径1mmのシリンジに装填し、エタノール中に押し出した。形成されたファイバー状構造物を大気下で乾燥させることで、ファイバー状CNT3次元構造物を得た。ファイバーの太さは、0.6ミリメートルであった。図13は、形成されたファイバー状CNT3次元構造物を示す。上記方法に限らず、シリンジやディスペンサーで上記ペースト状組成物をガラス基板上に押し出てもCNT3次元構造物を製造することができる。
10:CNT、15:細孔、100:ペースト状組成物、110:カーボンナノチューブ集合体、200:ペースト状組成物、1000:CNT膜体、2000:CNT膜体

Claims (12)

  1. 分散媒と、
    複数のカーボンナノチューブにより構成される、三次元空間に広がるネットワーク構造を備え、かつ分散媒を保持できる細孔を備えるカーボンナノチューブ集合体と、を備えるペースト状組成物であって、
    レオメータにより計測される粘度が剪断速度0.1s-1以下の条件で50Pa・s以上であり、且つ、剪断速度100s-1以上の条件では20Pa・s以下であることを特徴とする形状保持性を有し、
    前記形状保持性は、静置状態で、前記ペースト状組成物0.2gをガラス平板上に高さが5mm以上となる形状に配置したのち、1分後の高さが2mm以上を備えるペースト状組成物。
  2. 前記形状保持性は、剪断速度を100s-1以上から0.1s-1以下まで変化させた前後で測定される粘度が、0.1秒以内に20Pa・s以下の値から40Pa・s以上の値に上昇することを特徴とする請求項に記載のペースト状組成物。
  3. 前記ペースト状組成物中に存在する前記カーボンナノチューブ集合体のサイズは、体積基準での粒度分布の中央値が5μmから50μmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のペースト状組成物。
  4. 前記ペースト状組成物中に存在する前記カーボンナノチューブ集合体の濃度が0.1重量%以上20重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至の何れか一に記載のペースト状組成物。
  5. 前記細孔は、前記カーボンナノチューブ集合体に設けられ、かつ前記カーボンナノチューブ集合体における体積の80%以上を占めることを特徴とする請求項1乃至の何れか一に記載のペースト状組成物。
  6. 前記ペースト状組成物を構成する分散媒が、イオン液体でないことを特徴とする請求項1乃至の何れか一に記載のペースト状組成物。
  7. 前記カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの平均長さは、1μm以上を備えることを特徴とする請求項1乃至の何れか一に記載のペースト状組成物。
  8. 請求項1乃至の何れか一に記載のペースト状組成物を基材に塗布又は印刷して形成することを特徴とするカーボンナノチューブを含む膜体。
  9. 厚さ0.1μm以上、平坦性30%以下、カーボンナノチューブの純度90%以上を備えることを特徴とする請求項に記載のカーボンナノチューブを含む膜体。
  10. 請求項1乃至の何れか一に記載のペースト状組成物に高分子化合物をさらに含む複合材料を、基材に塗布又は印刷して形成することを特徴とする複合材料膜。
  11. 厚さ0.1μm以上、平坦性30%以下、カーボンナノチューブの純度90%以上を備えることを特徴とする請求項10に記載の複合材料膜。
  12. 請求項1乃至の何れか一に記載のペースト状組成物から形成することを特徴とするカーボンナノチューブを含む3次元構造物。
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