JP6397353B2 - 形状保持性を有するペースト状組成物、それを用いたカーボンナノチューブを含む膜体及び複合材料膜及び3次元構造物 - Google Patents
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上述したように、イオン液体は化学的安定性に課題があるため、CNTの優れた特性を損なう場合もあり、本発明に係るペースト状組成物100には好ましくない。したがって、本発明に係るペースト状組成物100を構成する分散媒は、イオン液体ではないことが好ましく、有機溶媒や水などの液体物質、および分散剤や高分子化合物等が溶解した溶液であることが好ましい。本発明に係るペースト状組成物100においては、CNT間の絡まりあいにより生じるファンデルワールス力によってCNTが点で結合し、3次元網目構造体の形状保持性を発現させていると考えられる。イオン強度が高いイオン液体を用いると、CNT間にイオンが親和することによってCNT間の距離が離れ(ほぐされ)、ファンデルワールス力が弱まる。
上述したように、本発明に係るCNT集合体110は、CNT10が複数のCNT10と交差し、ファンデルワールス力により点で結合したネットワーク構造を有する。このため、CNT10の長さは、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。このような長尺なCNT10は、CNT間の結合点が多いため、形状保持性に優れたネットワーク構造を形成することを可能とする。なお、本発明に係るCNT集合体110は、このような長尺なCNT10を主として含むものであればよく、その製造方法等は特に限定されない。
上述した本発明に係るペースト状組成物を用いて、カーボンナノチューブを含む膜体(以下、CNT膜体とも称す)を形成することができる。本発明に係るCNT膜体は、本発明に係るペースト状組成物を基材に塗布又は印刷して形成する。本発明に係るCNT膜体は、厚さ0.1μm以上、平坦性30%以下、CNTの純度90%以上であることが好ましい。
上述した本発明に係るペースト状組成物を用いて、カーボンナノチューブを含む複合材料膜(以下、複合材料膜とも称す)を形成することができる。本発明に係る複合材料膜は、本発明に係るペースト状組成物に高分子化合物をさらに含む複合材料を、基材に塗布又は印刷して形成することができる。
また、上述した本発明に係るペースト状組成物を用いて、カーボンナノチューブを含む所定の3次元形状を有する構造物(以下、CNT3次元構造物)を形成することができる。本発明に係るCNT3次元構造物の形状は、球、多面体、円柱のほかに曲面を複数含む複雑な構造なども含む。本発明の一実施形態によって製造されるCNT3次元構造物は、CNTの純度90%以上であることができる。また、高分子化合物を含む本発明に係るペースト状組成物を用いることによって高分子化合物とCNTの複合材料からなる3次元構造物を形成することもできる。
上述した本発明に係るペースト状組成物の製造方法としては、本明細書において規定した条件を満たすペースト状組成物が得られる限り特に限定はされない。しかし、原料となるカーボンナノチューブを得るための合成工程と、合成工程で得られたカーボンナノチューブを分散媒に分散させる分散工程を組み合わせた方法により製造することもできる。また、上記分散工程によって得られた分散液から分散媒を一部取り除くことによって、分散液の粘度特性を調整してペースト状組成物を得る、濃縮工程を組み合わせる方法により製造することもできる。
本発明に係るペースト状組成物を製造するために用いるCNTの合成工程は、本明細書に規定したCNTの特性を備える限り特に限定はされない。しかし、上述したように、1μm以上の長いCNTを合成する必要から、例えば、本発明者らによる国際公開WO2006/011655号に記載した方法により製造することもできる。
本発明に係るペースト状組成物を製造するためには、上述の合成工程により得られたCNTと分散媒とを混合する必要がある。この混合方法としては、本明細書において規定した条件を満たすペースト状組成物が得られる限り特に限定はされない。しかし、本発明に係るペースト状組成物を得るためには、CNT集合体に含まれるCNTが可能な限り多くのCNTとの間に結合を形成したネットワーク構造を形成することが好ましい。このようなネットワーク構造を得るためには、原料であるCNTのバンドルを適度に解きほぐし、且つCNTの長さを長く保つ分散方法が必要である。さらに、静置状態で極めて粘度が高い本発明に係るペースト状組成物を得るためには、粘度が高い媒体中においても均一に分散を進行させる必要がある。
このように調製した本発明に係るペースト状組成物を基材上に塗布又は印刷することにより、CNT膜体を得ることができる。ペースト状組成物を塗布又は印刷後に、ペースト状組成物に含まれる溶液を乾燥又は洗浄により除去することによって、高純度のCNT膜体を得ることができる。また、本発明に係るペースト状組成物を用いることにより、平坦性に優れた膜厚のCNT膜体を製造することができる。このように製造された本発明に係るCNT膜体は、平坦性30%以下、CNTの純度90%以上を有し、好ましくは厚さ0.1μm以上を有する。より好ましくは厚さ0.5μm以上を有し、さらに好ましくは1μm以上を有する。
また、ペースト状組成物にゴムや樹脂等の高分子化合物を溶解させることにより、CNTと高分子化合物との複合材料膜を塗布又は印刷により得ることができる。あるいは、モノマーを含んだペースト状組成物を塗布した後、これを重合させることによって、CNTと高分子化合物との複合材料膜を得ることができる。
本発明に係るCNT3次元構造物を得るためには、まず本発明に係るペースト状組成物を押出法または射出成型法などを用いて所定の形状に加工する。本発明に係るペースト状組成物は形状保持性を有するため、所定の3次元形状に成形することが可能である。この後に、乾燥又は分散媒を溶解しうる媒体によって洗浄することにより、ペースト状組成物に含まれる溶液を除去することによって、本発明に係るCNT3次元構造物を得ることができる。
デオキシコール酸ナトリウム(DOC)10%水溶液を入れたビーカーにCNTを1.0重量%となるように投入した。超音波発生部先端が、ビーカー内の分散液の至る所に到達するよう、超音波分散機を移動させながら、超音波分散を行った。その際、超音波分散機を駆動型ステージに固定し、プログラムにより図2のように超音波発生部プローブ先端を移動させた。図2(a)はビーカー上面から見た超音波発生部プローブ先端の移動方法を示す模式図であり、図2(b)はビーカー側面から見た超音波発生部プローブ先端の移動方法を示す模式図である。一実施例として、直径10センチメートルのビーカーにDOC水溶液を300グラム入れ、直径36ミリメートルの超音波発生部プローブをビーカー内に挿入した。まず超音波発生部プローブを、ビーカー壁面に近くかつビーカー底面に近い位置に設置し、その後、図2(a)で示されたようにビーカー内を渦巻き状に移動し、1周約30秒の速度で移動しながら、3周程度で中心に達するように移動させた。その後、超音波発生部プローブ先端を1センチおよび2センチ高い位置に移動させ、それぞれ前述の周回運動を行った。このような移動方法を合計で2時間以上行った。超音波照射は出力100Wであった。このようにして、実施例1のペースト状組成物100を得た。
実施例1のペースト状組成物について、粘度を測定した。粘度測定には、TA instrument社Discoveryを用い、φ40mmパラレルコーン(500μm)で20℃にて測定した。図3にペースト状組成物の粘度測定結果を示す。本実施例においては、剪断速度0.1s−1以下の低剪断条件での粘度は1500Pa・s以上であり、且つ、剪断速度100s−1以上の高剪断条件での粘度が5Pa・s以下の値となった。
実施例1のペースト状組成物について、形状保持性を検証した。ペースト状組成物0.2gをポリエチレンテレフタラート(PET)基板上に配置した1分後に、高さを測定した。図4(a)は、PET基板上に配置した1分後のペースト状組成物を示す図である。高さが6mmとなり、良好な形状保持性を示した。
実施例1のペースト状組成物について、形状保持性の回復速度を評価した。測定には、TA instrument社Discoveryを用い、φ40mmパラレルコーン(500μm)で測定した。図5(a)は実施例1のペースト状組成物の粘度測定の結果を示し、図5(b)は図5(a)の丸で囲んだ領域の拡大図を示す。実施例2のペースト状組成物は、剪断速度を1000s−1から0.1s−1まで変化させた前後で測定される粘度が、0.1秒以内に8Pa・s以下の値から600Pa・s以上の値に上昇した。この結果から、実施例1のペースト状組成物の形状保持性は優れた回復速度を有することが示された。
基板にPET基板を用い、調製したペースト状組成物100をブレードコーティングにより塗布し、CNT膜体を形成した。前述したようにペースト状組成物は高い形状保持性を有するため、まず基板上に高さ2000μm以上のペースト状組成物を配置した。基板との間隔(塗膜設定厚)を500μmに設定したブレードを用いて、一方向に動かすことによって、ペースト状組成物を塗膜した。その後、エタノールに浸漬することによりDOCを洗浄した。その後、室温で乾燥させ、高純度カーボンナノチューブからなるCNT膜体1000を得た。
汎用の手刷り方式のスクリーン印刷機及び版を用いて、ペースト状組成物をインクとして用いた印刷を行った。基板としてPET基板を用いた。線幅80μmの線型パターンを基板上に形成することができた。DOC洗浄・乾燥工程を経た後、CNTのパターンの膜厚を測定した。レーザ式変位計で膜厚を測定したところ、膜厚は0.6μmであった。また、ガラス基板、ポリイミドシートにも同様のパターンを形成可能であることを確認した。
本実施例においては、分散媒として有機溶媒であるN−メチルピロリドン(NMP)を用いたペースト状組成物の製造方法について説明する。NMPを入れたビーカーにCNTを0.8重量%となるように投入した。超音波分散機を駆動型ステージに固定し、実施例1と同様に超音波発生部先端を移動させた。超音波照射は出力100W、合計で2時間以上行った。
実施例2のペースト状組成物について、粘度を測定した。剪断速度0.1s−1以下の低剪断条件での粘度は1400Pa・s以上であり、且つ、剪断速度100s−1以上の高剪断条件での粘度が1Pa・s以下の値となった。
実施例2のペースト状組成物について、形状保持性の回復速度を評価した。剪断速度を1000s−1から0.1s−1まで変化させた前後で測定される粘度が、0.1秒以内に2Pa・s以下の値から180Pa・s以上の値に上昇した。この結果から、実施例2のペースト状組成物の形状保持性は優れた回復速度を有することが示された。
基板にPET基板を用い、調製したペースト状組成物をブレードコーティングにより塗布し、CNT膜体を形成した。塗膜設定厚を500μmに設定した。ペースト状組成物を塗膜後、ホットプレートで乾燥させNMPを除去し、実施例2のCNT膜体を得た。
実施例3として、本発明に係る複合材料膜を、樹脂であるエポキシ樹脂を用いて形成した。メチルイソブチルケトン(MIBK、シグマアルドリッチジャパン社製)を入れたビーカーにCNTを0.5重量%となるように投入した。磁気撹拌子スターラーで一晩撹拌すると、粘度が高くなった。そこで、高粘度の高圧で送液するポンプを組み込んだジェットミル(常光社製ナノジェットパル(登録商標)JN10)に投入し、3回循環させてペースト状組成物1を得た。さらに、エポキシ樹脂のモノマーとしてビスフェノールF型(三菱化学、jER 806)を用い、ペースト状組成物1:モノマー:硬化剤を4.5:3.5:1の割合で混合した。上記混合物を100℃で3時間加熱しながら撹拌し、メチルイソブチルケトンの一部を蒸発させた。このようにして、実施例3のペースト状組成物を得た。
実施例3のペースト状組成物について、粘度を測定した。剪断速度0.1s−1以下の低剪断条件での粘度は100Pa・s以上であり、且つ、剪断速度100s−1以上の高剪断条件での粘度が5Pa・s以下の値となった。
実施例3のペースト状組成物について、形状保持性の回復速度を評価した。剪断速度を1000s−1から0.1s−1まで変化させた前後で測定される粘度が、0.1秒以内に8Pa・s以下の値から50Pa・s以上の値に上昇した。この結果から、実施例3のペースト状組成物の形状保持性は優れた回復速度を有することが示された。
基板にPET基板を用い、調製したペースト状組成物をブレードコーティングにより塗布し、エポキシ樹脂を重合させ、複合材料膜を形成した。塗膜設定厚は100μmに設定した。その後、170℃、2時間の熱処理によりエポキシ樹脂を重合させ、実施例3の複合材料膜を得た。
実施例4として、本発明に係る複合材料膜を、エラストマーであるフッ素ゴムを用いて形成した。メチルイソブチルケトン(MIBK、シグマアルドリッチジャパン社製)を入れたビーカーにCNTを0.5重量%となるように投入した。磁気撹拌子スターラーで一晩撹拌すると、粘度が高くなった。そこで、高粘度の高圧で送液するポンプを組み込んだジェットミル(常光社製ナノジェットパル(登録商標)JN10)に投入し、3回循環させてペースト状組成物1を得た。別途、フッ素ゴム(ダイキン工業社製、Daiel-G912)をMIBKに40重量%の濃度で溶解させた溶液2を調整した。ペースト状組成物1と溶液2を等重量混合撹拌することで、実施例4のペースト状組成物を得た。
実施例4のペースト状組成物について、粘度を測定した。剪断速度0.1s−1以下の低剪断条件での粘度は60Pa・s以上であり、且つ、剪断速度100s−1以上の高剪断条件での粘度が9Pa・s以下の値となった。
実施例4のペースト状組成物について、形状保持性の回復速度を評価した。剪断速度を1000s−1から0.1s−1まで変化させた前後で測定される粘度が、0.1秒以内に9Pa・s以下の値から30Pa・s以上の値に上昇した。この結果から、実施例4のペースト状組成物の形状保持性は優れた回復速度を有することが示された。
基板にPET基板を用い、調製したペースト状組成物をブレードコーティングにより塗布し、加熱乾燥させ、複合材料膜を形成した。塗膜設定厚を100μmに設定した。ペースト状組成物を塗膜後、80℃、12時間真空乾燥させてMIBKを除去し、実施例4の複合材料膜を得た。
本実施例は、本発明に係るペースト状組成物の製造方法において、分散工程の後で濃縮工程を実施するものを示すものである。まずDOC1%水溶液を入れたビーカーにCNTを0.05重量%となるように投入した。固定したビーカーに超音波分散機を挿入してこれも固定し、出力100Wで超音波を照射し、30分間でCNTを分散させた。これにより得られた0.05重量%のCNT分散液はペースト状とはならず、静置状態で液体的挙動を示した。続いて、濃縮工程として、このCNT分散液を入れたビーカーを95℃のホットスターラーの上に設置し、12時間撹拌した。これにより分散液中の水分を蒸発させ、CNTの濃度が0.5重量%まで高まった、ペースト状組成物を得た。なお、この濃縮工程は、遠心加速度が重力加速度の10000倍以上となるようにすれば、超遠心分離法でも行うことができる。また、孔径0.5μm以下のフィルターを用いれば、濾過法によっても行うことができる。
実施例5のペースト状組成物について、粘度を測定した。図3にペースト状組成物の粘度測定結果を示す。剪断速度0.1s−1以下の低剪断条件での粘度は300Pa・s以上であり、且つ、剪断速度100s−1以上の高剪断条件での粘度が2Pa・s以下の値となった。
実施例5のペースト状組成物について、形状保持性の回復速度を評価した。剪断速度を1000s−1から0.1s−1まで変化させた前後で測定される粘度が、0.1秒以内に5Pa・s以下の値から200Pa・s以上の値に上昇した。この結果から、実施例5のペースト状組成物の形状保持性は優れた回復速度を有することが示された。
基板にPET基板を用い、調製したペースト状組成物をブレードコーティングにより塗布し、CNT膜体を形成した。塗膜設定厚を500μmに設定した。ペースト状組成物を塗膜後、エタノールに浸漬することによりDOCを洗浄した。その後、室温で乾燥させ、実施例5のCNT膜体を得た。
比較例として、DOC10%水溶液を入れたビーカーにCNTを0.05重量%となるように投入した。固定したビーカーに超音波分散機を挿入してこれも固定し、出力100Wで超音波を照射し、30分間でCNTを分散させた。
比較例1においては、ペースト状とはならず、静置状態で液体的挙動を示した。レオメータにより粘度測定を行ったところ、その最大値は剪断速度0.01s−1における粘度0.8Pa・s(50Pa・s以下)であった。0.2gの分散液を基板上に滴下し、1分間濡れ広がる様子を観察した結果、分散液の高さは0.05mm以下であった。CNT集合体濃度が0.05重量%のペースト状組成物では、高さが1mm以下となり、液ダレが激しく、塗工ができなかった。
実施例のペースト状組成物のCNT集合体濃度と粘度の関係を検討した。図8はペースト状組成物のCNT集合体濃度と粘度の関係を示す。ペースト状組成物のCNT集合体濃度と粘度とは正の相関を示し、CNT集合体濃度の上昇とともに粘度が急激に上昇することが明らかとなった。
メチルイソブチルケトン(MIBK、シグマアルドリッチジャパン社製)を入れたビーカーにCNTを0.03重量%となるように投入した。磁気撹拌子スターラーで一晩撹拌して得た低粘性溶液をジェットミル(常光社製ナノジェットパル(登録商標)JN10)に投入し、1回循環させて得たCNT分散液を6時間60℃で乾燥させてMIBKを部分的に除去し、比較例2のペースト状組成物900を得た。ペースト状組成物900におけるCNT濃度は0.1重量%と計算された。
比較例2においては、静置状態でペースト状ではあるものの、時間経過とともに分離し、液体的挙を示す分画がペースト状組成物から染み出る様子が観測された。レオメータにより粘度測定を行ったところ、その最大値は剪断速度0.01s−1における粘度37Pa・s(50Pa・s以下)であった。0.2gの分散液を基板上に滴下し、1分間濡れ広がる様子を観察した結果、分散液の高さは1.0mm以下であった。レーザ回折法によりペースト状組成物に含まれるCNT集合体のサイズ分布を評価した。図6(b)は比較例2のペースト状組成物900のサイズ分布を示す。体積基準での粒度分布の中央値は73μmであった。
基板にPET基板を用い、調製したペースト状組成物200をブレードコーティングにより塗布し、CNT膜体を形成した。ペースト状組成物を塗膜後、エタノールに浸漬することによりDOCを洗浄した。その後、ホットプレートで乾燥させエタノールを除去し、比較例2のCNT膜体2000を得た。基板にPET基板を用い、調製したペースト状組成物900をブレードコーティングにより塗布し、CNT膜体を形成した。塗膜設定厚を500μmに設定した。本ペースト状組成物は、塗工中にカーボンナノチューブが大きく凝集し、膜厚のムラが著しく大きくなった。比較例2のCNT膜体2000の平均厚さは9μmであり、表面粗さは6μmであった。ここから計算された表面粗さは70%であった。
CNT膜体の膜厚制御を行うために、実施例1のペースト状組成物を用いて、塗工するペースト状組成物の膜厚とCNT膜体の膜厚との関係を検討した。図9(a)は塗工するペースト状組成物の膜厚とエタノール洗浄後得られたCNT膜体の膜厚との関係を示す図であり、塗工するペースト状組成物の膜厚とCNT膜体の膜厚とは正の相関を示し、CNT膜体の膜厚を任意に調整可能であることが示された。また、図9(b)は、ペースト状組成物の膜厚を1500μmで塗工し形成したCNT膜体を示し、エタノール洗浄によりDOC除去することにより、45μmの膜厚のCNT膜体が形成された。
実施例1のペースト状組成物を様々な基材に塗工して、基材と塗工性の関係について検討した。図10(a)はPETに形成したCNT膜体を示し、図10(b)はアルミホイルに形成したCNT膜体を示し、図10(c)はガラス基板に形成したCNT膜体を示し、図10(d)はシリコン基板に形成したCNT膜体を示す。何れにおいても優れた塗工性を示した。
実施例1のペースト状組成物を用いて、スクリーン印刷法によるパターン形成を行った。図11(a)は形成したパターンを示し、図11(b)はライン/スペース(L/S)が80μm/160μmで形成したパターンを示し、図11(c)はそのレーザ顕微鏡像を示す。また、図12は様々な基材に形成したパターンを示し、図12(a)はPETシートに形成したパターンを示し、図12(b)はポリイミドシートに形成したパターンを示し、図12(c)はシリコンゴムシートに形成したパターンを示す。本実施例においては、何れにおいても良好なパターン形成が認められた。
CNT3次元構造物の製造を行うため、実施例1のペースト状組成物を、針内径1mmのシリンジに装填し、エタノール中に押し出した。形成されたファイバー状構造物を大気下で乾燥させることで、ファイバー状CNT3次元構造物を得た。ファイバーの太さは、0.6ミリメートルであった。図13は、形成されたファイバー状CNT3次元構造物を示す。上記方法に限らず、シリンジやディスペンサーで上記ペースト状組成物をガラス基板上に押し出てもCNT3次元構造物を製造することができる。
Claims (12)
- 分散媒と、
複数のカーボンナノチューブにより構成される、三次元空間に広がるネットワーク構造を備え、かつ分散媒を保持できる細孔を備えるカーボンナノチューブ集合体と、を備えるペースト状組成物であって、
レオメータにより計測される粘度が剪断速度0.1s-1以下の条件で50Pa・s以上であり、且つ、剪断速度100s-1以上の条件では20Pa・s以下であることを特徴とする形状保持性を有し、
前記形状保持性は、静置状態で、前記ペースト状組成物0.2gをガラス平板上に高さが5mm以上となる形状に配置したのち、1分後の高さが2mm以上を備えるペースト状組成物。 - 前記形状保持性は、剪断速度を100s-1以上から0.1s-1以下まで変化させた前後で測定される粘度が、0.1秒以内に20Pa・s以下の値から40Pa・s以上の値に上昇することを特徴とする請求項1に記載のペースト状組成物。
- 前記ペースト状組成物中に存在する前記カーボンナノチューブ集合体のサイズは、体積基準での粒度分布の中央値が5μmから50μmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のペースト状組成物。
- 前記ペースト状組成物中に存在する前記カーボンナノチューブ集合体の濃度が0.1重量%以上20重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載のペースト状組成物。
- 前記細孔は、前記カーボンナノチューブ集合体に設けられ、かつ前記カーボンナノチューブ集合体における体積の80%以上を占めることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載のペースト状組成物。
- 前記ペースト状組成物を構成する分散媒が、イオン液体でないことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一に記載のペースト状組成物。
- 前記カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの平均長さは、1μm以上を備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一に記載のペースト状組成物。
- 請求項1乃至7の何れか一に記載のペースト状組成物を基材に塗布又は印刷して形成することを特徴とするカーボンナノチューブを含む膜体。
- 厚さ0.1μm以上、平坦性30%以下、カーボンナノチューブの純度90%以上を備えることを特徴とする請求項8に記載のカーボンナノチューブを含む膜体。
- 請求項1乃至7の何れか一に記載のペースト状組成物に高分子化合物をさらに含む複合材料を、基材に塗布又は印刷して形成することを特徴とする複合材料膜。
- 厚さ0.1μm以上、平坦性30%以下、カーボンナノチューブの純度90%以上を備えることを特徴とする請求項10に記載の複合材料膜。
- 請求項1乃至7の何れか一に記載のペースト状組成物から形成することを特徴とするカーボンナノチューブを含む3次元構造物。
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