JP6396839B2 - 土壌散布材製造方法および土壌侵食防止工法 - Google Patents

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本発明は、藻類、コケ類、シダ類、および地衣類を含む非種子植物を用いる土壌散布材、土壌散布材製造方法、土壌侵食防止工法および土壌散布材収容物セットに関する。
工事や営農活動等により露出した土壌では、風雨に晒されたときに該土壌表面に水の流れが発生し、水を含んで軟弱化した土壌粒子が剥離、運搬され土壌侵食が発生して河川や海に流出する。
このような土壌侵食の問題を解決するために、本出願人は、土壌表面に藻類を散布して繁殖させ土壌表面を藻類により被覆することにより土壌の侵食を防止することを特徴とする土壌侵食防止工法を提案している(下記特許文献1)。かかる土壌侵食防止工法によれば、土壌に藻類を散布して土壌表面を藻類により被覆することにより土壌の侵食を良好に防止することができる。
特開2004−360206号公報
本発明者らは、上記土壌侵食防止工法に関する技術をさらに改善するために鋭意検討した結果、以下の点でさらなる改良の余地があることがわかった。
即ち、散布する藻類を粉末状にして土壌に散布した場合に、散布して間もなく風雨などが発生すると、粉末状の藻類が土壌から飛散し、また流出する虞があった。上記飛散または流出の問題を鑑みて、藻類を適当な水分とで練り合わせてペースト状とし、土壌に散布した場合には、上述のような問題は回避可能であった。
しかしながら、ペースト状である藻類は、含水率が高いことから長期間の保存に不向きであり、数週間から数か月の保存により腐敗する場合があることがわかった。
また本出願人の検討によれば、藻類以外の生物材を土壌に散布する場合(具体的にはコケ類)にも同様の問題が生じ得ることがわかった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものである。即ち、本発明は、土壌に散布した後に風雨等の影響を受けて飛散または流出し難く、かつ長期保存性に優れた土壌散布材および当該土壌散布材の製造方法を提供する。
また本発明は、本発明の土壌散布材を用いた土壌侵食防止工法および土壌散布材収容物セットを提供する。
本発明の第一の土壌散布材製造方法は、1種類の非種子植物または2種類以上の非種子植物の組み合わせである生物材と、前記生物材を担持する粒状担持体と、を有し、粒子状に成形されていることを特徴とする土壌散布材を製造する土壌散布材製造方法であって、土壌様培地に生物材を生育させる生育工程と、前記土壌様培地の表面に生育した前記生物材と、前記土壌様培地と、を収穫する収穫工程と、前記収穫工程により得られた前記生物材および前記土壌様培地を混合して混合物を作製する混合工程と、前記混合物を乾燥および粒状化することによって粒状体である土壌散布材を成形する粒状体成形工程と、を備えることを特徴とする。
本発明の第二の土壌散布材製造方法は、1種類の非種子植物または2種類以上の非種子植物の組み合わせである生物材と、前記生物材を担持する粒状担持体と、を有し、粒子状に成形されていることを特徴とする土壌散布材を製造する土壌散布材製造方法であって、生物材を生育させ、生育した前記生物材を採取する採取工程と、前記採取工程において採取された前記生物材と、前記生物材を担持する複数の粒状担持体とを混合して混合物を作製する混合工程と、前記混合物を乾燥及び粒状化することによって粒状体である土壌散布材を成形する粒状体成形工程と、を備え、下記(III)または(IV)の少なくともいずれか1つを満たすことを特徴とする。
(III)前記採取工程において生育する前記生物材が、前記土壌散布材の散布が予定される所定の土壌に生育している生育生物、または生物の分類学上、前記生育生物と同属に分類される同属生物である、
(IV)前記混合工程において用いられる粒状担持体が、前記所定の土壌から採取された現地土壌構成粒土、または前記所定の土壌とは異なる土壌から採取され前記現地土壌構成粒土と同質である異地土壌構成粒土を含む。
本発明の土壌侵食防止工法は、生物材を有する土壌散布材を所定の土壌に散布して、前記所定の土壌の表層に前記生物材を繁茂させることにより前記所定の土壌の土砂流出を防止する土壌侵食防止工法であって、前記土壌散布材が、1種類の非種子植物または2種類以上の非種子植物の組み合わせである生物材と、前記生物材を担持する粒状担持体と、を有し、粒子状に成形されていることを特徴とする土壌散布材であることを特徴とする。
本発明の土壌散布材は、土壌に散布した後に風雨等の影響を受けて飛散または流出し難く、かつ長期保存性に優れる。本発明の土壌散布材は、一般的に種子を蒔いて発芽させる植物とは区別される非種子植物を粒子状物に含有させることで当該非種子植物を効率よく土壌に散布し増殖させることを可能とする。
また本発明の土壌散布材製造方法は、簡易なプロセスで本発明の土壌散布材を製造することができる。
また本発明の土壌侵食防止工法は、土壌に散布した後に風雨等の影響を受けて飛散または流出し難い土壌散布材を用いるため散布後の天候に左右されず、良好に土壌侵食を防止する土壌侵食防止効果を発揮することができる。
また本発明の土壌散布材収容物セットは、本発明の土壌散布材を使用する者が、複数種の土壌散布材集合体の中から、土壌侵食防止を予定する土地の土壌に適合した土壌散布集合体を選択することを可能とする。
(a)は、第一実施形態にかかる土壌散布材の一例であるペレット型の土壌散布材の斜視図、および当該土壌散布材の部分拡大図であり、(b)は、第一実施形態にかかる土壌散布材の一例である不定形型の当該土壌散布材の斜視図、および当該土壌散布材の部分拡大図であり、(c)は、第一実施形態にかかる土壌散布材の一例である一粒の粒状担持体からなる土壌散布材の斜視図、および当該土壌散布材の拡大図である。 第二実施形態に用いられる培養装置の一例を示す縦断面概略図である。 第二実施形態にかかる土壌散布材製造方法の工程を説明する説明図であり、(a)は、生育工程の初期を示し、(b)は、生育工程の後期を示し、(c)は、収穫工程の例である掻き取り方法を示し、(d)は、混合工程を示し、(e)は、粒状体成形工程を示し、(f)は、製造された複数の土壌散布材を示している。 土壌散布材に含まれる粒状担持体の個数基準における粒子径分布を示すグラフの一例である。
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
本発明の実施形態における各構成要素は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜、他の実施形態における対応する構成要素と変更可能である。
<第一実施形態>
以下に、本発明の第一実施形態として、本発明の土壌散布材の一実施態様に関し、適宜、図1を用いて説明する。図1(a)は、第一実施形態にかかる土壌散布材100の一例であるペレット型の土壌散布材100の斜視図、および土壌散布材100の部分拡大図である。図1(b)は、第一実施形態にかかる土壌散布材100の一例である不定形型の土壌散布材100の斜視図、および土壌散布材100の部分拡大図である。図(c)は、第一実施形態にかかる土壌散布材100の一例である一粒の粒状担持体20からなる土壌散布材100の斜視図、および土壌散布材100の拡大図である。尚、図1(a)から図1(c)は、いずれも紙面左側に土壌散布材100の斜視図を示し、紙面右側に拡大図を示している。
図1(a)から(c)に示すように、土壌散布材100は、1種類の非種子植物または2種類以上の非種子植物の組み合わせである生物材10と、生物材10を担持する粒状担持体20と、を有し、粒子状に成形されている。
本発明において、非種子植物とは、植物のうち種子植物を除く植物を指す。ここで種子植物とは、有性生殖を行い、種子を形成する植物を意味する。非種子植物の例としては、藻類、コケ類、シダ類、または地衣類が挙げられる。尚、地衣類は、菌類と藻類とが共生してなる複合体であり、その構成の複雑さから分類学上の取り扱いも変遷している。かつて地衣類は、独立した分類群または植物として取り扱われたこともあるが、現在の学術的な生物の分類では複合体を構成する菌類に着眼がおかれ、菌類として分類されることが主流である。ただし本発明では、地衣類が種子を生成して増殖する生物体(複合体)でないという観点から、便宜的に地衣類を非種子植物として取り扱う。
土壌散布材100は、粒状担持体20を備えるため、従来の粉末状の藻類と比較して重量が大きく、土壌に散布された後、風雨の影響を受けて飛散または流出し難い。
また、粒状化された固形物である土壌散布材100は、適宜乾燥することができる。乾燥状態の土壌散布材100は、腐敗し難く、長期保管性に優れる。非種子植物を生物材10とする土壌散布材100は、種子を形成しない非種子植物を効率よく所望の土壌に散布し、当該土壌において非種子植物を増殖させることが可能である。
土壌散布材100は、図1(a)、(b)に示すように、複数の粒状担持体20を有していてもよいし、図1(c)に示すように、実質的に1つの粒状担持体20から構成することもできる。
図1(a)、(b)に示すように、土壌散布材100は、生物材10を担持する粒状担持体20を複数有している。土壌散布材100に複数の粒状担持体20が含まれる場合には、複数の粒状担持体20は、互いに不定形であってもよい。
生物材10と、有意な長径を有し、かつ互いに不定形である複数の粒状担持体20と、が寄り集まって土壌散布材100をなす場合には、図1(a)に示すとおり、土壌散布材100の内部に空隙26が形成されやすい。空隙26を有する土壌散布材100は、散布後に、土壌散布材100の散布地に放水がなされ、あるいは降雨が生じたときなどに、空隙26が含水領域となるため、高い保水性を示し、生物材10の生育に良好な環境を付与可能である。また、空隙26は、生物材10の生育領域にもなり得る。即ち、土壌散布材100に含まれる生物材10は、生育初期において、その増殖の方向が土壌散布材100の外方向に限定されず、土壌散布材100の内方向に対しても増殖可能である。そのため、空隙26を有する土壌散布材100は、生物材10に対し散布後の初期の良好な生育環境を付与可能である。
ここで複数の粒状担持体20が互いに不定形とは、複数の粒状担持体20が、互いに実質的に同形状でないことを意味する。具体的には、上記不定形には、一の粒状担持体20が球形またはそれに近い形状であり他の粒状担持体20が球形以外の形状である場合、一の粒状担持体20および他の粒状担持体20がいずれも球形またはそれに近い形状であるが、互いに径が異なる場合を含む。
ただし、上述は本実施形態の土壌散布材100において、複数の粒状担持体20が、互いに実質的に同形状である態様を除外するものではない。ここで実質的に同形状とは、複数の粒状担持体の全形が確認可能の倍率の顕微鏡観察において、複数の粒状担持体20が人工的に粒子形状を揃えて形成されたことが観察される程度を意味する。
粒子状に成形されている土壌散布材100の寸法は特に限定されず、土壌に対し散布可能であり、風雨による飛散または防止が生じ難い範囲において適宜決定することができる。
たとえば好ましい例としては、土壌散布材100は、平均長径が、1mm以上20mm以下の範囲であり、より好ましくは、1mm以上10mm以下の範囲である。
土壌散布材100の平均長径が1mm以上であることにより、風雨による飛散または流出を良好に回避し得る。また土壌散布材100の平均長径が20mm以下であることにより、散布効率が良く、また取り扱い性が良好である。
尚、粒状担持体20を有さず実質的に生物材10のみを凝集させて適度な長径を有する粒状体とした場合、当該粒状体は、粉末の場合と比べて飛散または流出の問題が改善される。ただし、粒状担持体20を有しない上記粒状体は、生物材10の密度が高く乾燥し難いためカビが生え易く、保存性に問題が生じる虞がある。
ここで、土壌散布材100の長径とは、目視または顕微鏡にて観察される土壌散布材100の最長部分を意味する。土壌散布材100が略球形であればその直径が長径であり、楕円であればその長軸が長径であり、不定型であれば直線で採寸できる最も長い箇所が長径である。また、土壌散布材100が薄厚みのペレット形状である場合には、当該ペレットの主面の直径または長軸が上記長径に相当する。また平均長径とは、目視または顕微鏡で観察される複数の土壌散布材100から任意で規定数(たとえば30個)を選択し、それらの長径を測定し、各長径の和を上記規定数で除した値である。
土壌散布材100の形状は特に限定されないが、たとえば、図1(a)に示すように、適度な厚みのペレット形状であってもよい。ここでペレット形状とは、一定の厚みを有する柱状の形状を意味する。本明細書では上記柱状の端面を主面という。ペレット形状である土壌散布材100の寸法は特に限定されないが、たとえば、厚みが0.5mm以上5mm以下、主面の長径が1mm以上10mm以下とすることができる。たとえばペレット形状である土壌散布材100は、厚み寸法≦主面の長径、とすることができる。上記数値範囲を採用することによれば、散布効率が良好で、かつ飛散または流出が防止された土壌散布材100を提供することができる。上記ペレット形状の土壌散布材100の主面はたとえば円形または多角形であるが、これに限定されず所定の任意形状または不定形であってもよい。図1(a)では、厚みより長径が大きく、主面が円形であるペレット形状の土壌散布材100を示している。上記円形には、真円、長円、および楕円を含む。図1(a)に示す土壌散布材100は、部分拡大図に示すとおり、複数の不定形の粒状担持体20と生物材10とが入り交ざった状態で粒状化されてなる。
また土壌散布材100は、図1(b)に示すように、不定形の形状であってもよい。図1(b)に示す土壌散布材100は、部分拡大図に示すとおり、粒状担持体20として、大径粒状担持体22と小径粒状担持体32とを有している。小径粒状担持体32は大径粒状担持体22の周囲を包埋しており、小径粒状担持体32に包埋された大径粒状担持体22の表面または、隣り合う大径粒状担持体22と大径粒状担持体22との間に生物材10が存在している。このように大径粒状担持体22が小径粒状担持体32に包埋されていることにより、粒状担持体20に対する生物材10の接着性が向上し、散布後に、土壌散布材100から生物材10が離散して流出することが良好に防止される。
尚、図1を用いて上述する土壌散布材100は、一例を示すものであって本発明を何ら限定するものではない。たとえば、土壌散布材100は、図1(a)に示すとおりペレット形状など定型の形状であって、かつ、図1(b)の部分拡大図に示すように、粒状担持体20が、大径粒状担持体22および小径粒状担持体32の両方を有していてもよい。
また土壌散布材100は、図1(c)に示すように、実質的に一粒の粒状担持体20に生物材10が付着してなる態様であってもよい。
土壌散布材100の一粒の重量は、特に限定されないが、たとえば、好ましい態様の例としては、上記重量は、5mg以上100mgの範囲であり、より好ましくは、10mg以上30mg以下である。上記重量を5mg以上とすることにより、散布後の飛散または流出の問題を良好に改善することができ、また100mg以下することにより散布効率が良く取り扱い性が良好である。尚、複数の土壌散布材100の粒を散布する際に、複数の土壌散布材100の粒の重量が揃っていなくてもよい。たとえば、ランダムに選択した100粒の土壌散布材100において、重量の大きい上位10粒と重量の小さい下位10粒とを除き、残りの80粒が上記好ましい重量の範囲に含まれれば、所期の課題を充分に解決することができる。
本実施形態にかかる土壌散布材100の含水率は特に限定されないが、腐敗を回避し良好な保存安定性を得るためには、土壌散布材100の含水率は20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。
(生物材)
本発明における生物材10は、非種子植物である。生物材10は、1種類の非種子植物、または2種類以上の非種子植物の組み合わせを含む。このように種子により増殖しない植物を粒子状の土壌散布材に包含せしめることによって、非種子植物を効率的に土壌に散布し増殖させることができる。
たとえば本発明において、上記非種子植物である生物材10として、非維管束植物を挙げることができる。
本発明において非維管束植物とは、維管束を有しない植物を意味する。ここで維管束とは、植物の組織の一つであり、茎の中で縦方向(茎の伸長方向)に延在する組織である。維管束は、茎内から分離して葉や根の内部まで延在しうる。維管束は、水や養分などを植物内に運搬するとともに、当該植物を機械的に支持する役割を有する。そのため、維管束植物は、所謂、茎を伸長させ地表から陸上に向けて伸長して生育する性質を有する。一方、維管束を有しない非維管束植物は、一般的には地表に這うように生育するという特性を有する。非維管束植物は、上述のとおり地表を覆うように増殖するため、土壌侵食防止の効果が早期に発揮されやすい。
たとえば、非維管束植物である生物材10としては、土壌表層に生育可能な藻類、コケ類、および地衣類のいずれか一以上を挙げることができる。
次に生物材10の詳細について説明する。本発明の生物材10の代表的な例として、以下には、藻類、コケ類、シダ類、および地衣類(以下、これらをまとめて藻類等と呼ぶ場合がある)について説明する。ただし本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、これ以外の非種子植物を適宜、本発明の生物材10として用いることができる。
尚、生物材10に含まれる藻類等が同じ種類であるか否かは以下の通り判断する。即ち、生物材10に含まれる2つの植物が、生物の分類学上、互いに同属に分類される場合にはそれらは同種類と判断し、その生物材10には1種類の植物を含むと判断する。また生物材10に含まれる2つの植物が、生物の分類学上、互いに異なる属以上の上位の分類に属する場合には、それらは異なる種類と判断し、その生物材10には2種類の植物を含むと判断する。
生物材10は、土壌に増殖して当該土壌の侵食を防止する範囲において、その地表上の生育高さおよび地中における生育深さは特に限定されない。たとえば生物材10としてシダ類が含まれる場合には、地表上の生育高さは、特に限定されないが、たとえば10cm以上100cm以下の範囲などであってもよい。ここで生育高さとは、地表から陸上における植物の最高位までの高さを意味する。また生育深さとは、地表から土壌中における植物(根を含む)の最深位までの深さを意味する。
非維管束植物である藻類、コケ類、および地衣類の生育高さおよび生育深さは、特に限定されないが、一般的には、それぞれ数センチ程度である。藻類、コケ類、および地衣類が生育可能な土壌表層とは、地表、および地表から数センチ程度高さ範囲および地表から数センチ程度の深さ範囲を含む土壌表面近傍である。生物材10は、少なくとも土壌表層において生育可能である。生物材10は、土壌表層またそれを超えた範囲で生育することによって、土壌表層を構成する土壌粒子が剥離、運搬され土壌侵食が発生することを防止する。
本発明における上記藻類とは、単細胞藻類、群体藻類、糸状もしくは枝状藻類、または葉状藻類を含む。これらの4つの群は、生物学上の分類ではなく、主として藻類の形態状の特徴から判別される公知の群である。本発明では、便宜上、上記群を、属を超えた上位の分類群と位置づけ、2つの植物が、上述する4つの群において互いに異なる群に属する場合には、それらは異なる種類であると判断する。
単細胞藻類は、その形態が単粒状藻体であるが、増殖するにつれて細胞集合体を形成するという特徴を有する一群の藻類である。
群体藻類(定数群体)は、一定数の細胞が何らかの相互関係を持って寄り集まっている一群の藻類であり、増殖するにつれて相互に寄り集まって集合体を形成する特徴を有する一群である。
糸状もしくは枝状藻類は、増殖するにつれて糸状あるいは枝分かれした藻体が相互に絡み合って房状、ネット状等に発達するという特徴を有する一群の藻類である。
葉状藻類は、成長するにつれて、海産のヒトエグサのように葉状に広がる特徴を有する一群である。
本発明における藻類は、生物の分類学上からいえば、藍藻類(藍藻網)、紅藻類(紅藻網)、渦鞭毛藻類(渦鞭毛藻綱)、褐色鞭毛藻類(褐色鞭毛藻綱)、珪藻類(珪藻網)、黄緑藻類(黄緑藻網)、真正眼点藻類(真正眼点藻綱)、ユーグレナ藻類(ユーグレナ藻網)、プラシノ藻類(プラシノ藻綱)、緑藻類(緑藻網)などを含み、土壌表層などに生育可能な藻類から適宜選択して用いることができる。尚、本発明では、シアノバクテリア(真正細菌)を従来(旧分類体系)の分類学に基づいて藻類(特には、藍藻類(藍藻綱))として扱う。
たとえば、藍藻綱(Cyanophyceae)(シアノバクテリア(Cyanobacteria))としては、クロオコッカス属(Chroococcus)、グロエオカブサ属(Gloeocapsa)、グロエオセセ属(Gloeothece)、アファノカブサ属(Aphanocapsa)、アファノセセ属(Aphanothece)、シネココッカス属(Synechococcus)、クロログロエア属(Chlorogloea)、アルスロスピラ属(Arthrospira)、スピルリナ属(Spirulina)、オシラトリア属(Oscillatoria)、クリナリウム属(Crinalium)、ムラサキクダモ属(Porphyrosiphon)、ポリクラミジア属(Polychlamydium)、フォルミジウム属(Phormidium)、リングビア属(Lyngbya)、シゾトリックス属(Schizothrix)、シンプロカ属(Symplpca)、ミクロコレウス属(Microcoleus)、ヒドロコレウム属(Hydrocoleum)、シリンドロスペルマム属(Cylindrospermum)、ノストック属(Nostoc)、アナベナ属(Anabaena)、プレクトネマ属(Plectonema)、スキトネマトプシス属(Scytonematopsis)、スキトネマ属(Scytonema)、トリポスリップス属(Tolypothrix)、ペタロネマ属(Petalonema)、ミクロケト属(Microchaete)、カロスリックス属(Calothrix)、ディコスリックス属(Dichothrix)、リブラリア属(Rivularia)、ノストコプシス属(Nostochopsis)、マスチゴクラドプシス(Mastigocladopsis)属、マスチゴクラズス(Mstigocladus)属、ハパロシフォン属(Hapalosiphon)、ウエステラ属(Westella)、ベスチェロプシス属(Westiellopsis)、カムプティロネマ属(Camptylonema)、エンガリエーラ属(Iyengariella)、フィジケラ属(Fischella)、スティゴネマ属(Stigonema)、アナシスティス属(Anacystis)、トリポスリックス属(Tolypothrix)などを挙げることができる。
また、紅藻綱(Rhodophyceae)としては、ポルフィリディウム(和名:チノリモ)属(Porphyridium)、クロオテーセ属(Chroothece)、ロドスポラ属(Rhodospora)、フラグモネマ属(Phragmonema)などを挙げることができる。
また、渦鞭毛藻綱(Dinophyceae)としては、フィトディニウム属(Phytodinium)、グロエオディニウム属(Gloeodinium)、ルフシエラ属(Rufusiella)などを挙げることができる。
また、珪藻綱(Bcillariophyceae)としては、キクロテラ属(Cyclotella)、ステファノディスカス属(Stephanodiscus)、メロシラ属(Melosira)、タベラリア属(Tabellaria)、ディアトマ属(Diatoma)、メリディオン属(Meridion)、フラジラリア属(Fragilaria)、シネドラ属(Synedra)、ユーノティア属(Eunotia)、コッコネイス属(Cocconeis)、アクナンテス属(Achnanthes)、ナビクラ属(Navicula)、スタウロネイス属(Stauroneis)、フラスチュラ属(Frustula)、ネイディウム属(Neidium)、ディプロネイス属(Diploneis)、キンベラ属(Cymbella)、アンフォラ属(Amphora)、ゴンフォネマ属(Gomphonema)、ロイコスフェニア属(Rhoicosphenia)、カロネイス属(Caloneis)、ピンヌラリア属(Pinnularia)、デンティキュラ属(Denticula)、エピテミア属(Epithemia)、ロパロディア属(Rhopalodia)、ハンチア属(Hantzschia)、ニッチア属(Nitzschia)、スリレラ属(Surirella)などを挙げることができる。
また、黄緑藻綱(Xanthophycea)としては、プレウロクロリス属(Pleurochloris)、クロリデラ属(Chloridella)、エリプソイディオン属(Ellipsoidion)、モナランタス属(Monallantus)、ネフロディエラ属(Nephrodiella)、モノダス属(Monodus)、クロロクロスター属(Chlorocloster)、プレウロガスター属(Pleurogaster)、ディアクロス属(Diachros)、スクレロクラミス属(Sklerochlamys)、アラキノクロリス属(Arachnochloris)、ゴニオクロリス属(Goniochloris)、ブミレリオプシス属(Bumilleriopsis)、カラシオプシス属(Characiopsis)、ボトリディオプシス属(Botrydiopsis)、ボトリオクロリス属(Botryochloris)、スファエロソルス属(Sphaerosorus)、クロレリディオプシス属(Chlorellidiopsis)、クロレリディウム属(Chlorellidium)、グロエオボトリス属(Gloeobotrys)、グロエオスファエリディウム属(Gloeosphaeridium)、ヘテロトリケラ属(Heterotrichella)、ザントネマ属(Xanthonema)、ブミレリア属(Bumilleria)、トリボネマ属(Tribonema)、ヘテロコッカス属(Heterococcus)、カピチュラリエラ属(Capitulariella)、ヘテロペディア属(Heteropedia)、アエロネマ属(Aeronema)、ボトリディウム属(Botrydium)、アステロシフォン属(Asterosiphon)、フシナシミドロ属(Vaucheria)、ヘテロスリックス属(Heterothrix)などを挙げることができる。
また真正眼点藻綱(Eustigmatophyceae)としては、ユースチグマトス属(Eustigmatos)、ビスケリア属(Vischeria)、シュードカラキオプシス属(Pseudocharaciopsis)、クロロボトリス属(Chlorobotrys)、モノドプシス属(Monodopsis)などを挙げることができる。
またユーグレナ藻綱(Euglenophyceae)としては、ユーグレナ属(Euglena)、ヘテロネマ属(Heteronema)、アスタシア属(Astasia)、ペタロモナス属(Petalomonas)、スキトモナス属(Scytomonas)などを挙げることができる。
またプラシノ藻綱(Prasinophyceae)としては、ペディノモナス属(Pedinomonas)、 プラシノクロリス属(Prasinochloris)などを挙げることができる。
また緑藻綱(Chlorophyceae)としては、クラミドモナス属(Chlamydomonas)、クロロモナス属(Chloromonas)、カルテリア属(Carteria)、ヘテロクラミドモナス属(Heterochlamydomonas)、ロボモナス属(Lobomonas)、ポリトマ属(Polytoma)、ツセティア属(Tussetia)、テトラブレファリス属(Tetrablepharis)、ゴニウム属(Gonium)、パンドリナ属(Pandorina)、ボルブリナ属(Volvulina)、パルメロプシス属(Palmellopsis)、グロエオコッカス属(Gloeococcus)、クラミドカプサ属(Chlamydocapsa)、スファエレロキスティス属(Sphaerellocystis)、シストモナス属(Cystomonas)、クロロコッカム属(Chlorococcum)、ネオスポンギオコッカム属(Neospongiococcum)、ラディオスファエラ属(Radiosphaera)、アポドクロリス属(Apodochloris)、ナウトコッカス属(Nautococcus)、シュードプラノフィラ属(Pseudoplanophila)、ファシキュロクロリス属(Fasciculochloris)、ヘテロテトラシスチス属(Heterotetracystis)、スポンギオコッカム属(Spongiococcum)、テトラシスチス属(Tetracystis)、ボロディネロプシス属(Borodinellopsis)、アキシロスファエラ属(Axilosphaera)、カラキオクロリス属(Characiochloris)、クラミドポディウム属(Chlamydopodium)、アクチノクロリス属(Actinochloris)、マクロクロリス属(Macrochloris)、ディーソニア属(Deasonia)、シュードディクチオクロリス属(Pseudodictyochloris)、ホルモティロプシス属(Hormotilopsis)、クロロノマラ属(Chloronomala)、カラキオシフォン属(Characiosiphon)、ミルメキア属(Myrmecia)、ファセオラリア属(Phaseolaria)、ポロイディオン属(Poloidion)、ディクチオクロロプシス属(Dictyochloropsis)、シュードトロキスキア属(Pseudotrochiscia)、トロキスキオプシス属(Trochisciopsis)、イグナティウス属(Ignatius)、エテリア属(Ettlia)、ラウトスファエリア属(Lautosphaeria)、アキシロコッカス属(Axilococcus)、ホルモティラ属(Hormotila)、ギョルフイアナ属(Gyorffyana)、イノデルマ属(Inoderma)、ボトリオコリネ属(Botryokoryne)、クロロキトリウム属(Chlorochytrium)、フェルナンディネラ属(Fernandinella)、クロロプラナ属(Chloroplana)、コレオクラミス属(Coleochlamys)、カラキウム属(Characium)、アンキラ属(Ankyra)、サツルネラ属(Saturnella)、クロレラ属(Chlorella)、ムリエラ属(Muriella)、ロボスファエラ属(Lobosphaera)、ロボスファエロプシス属(Lobosphaeropsis)、プランクトスファエレラ属(Planktosphaerella)、ムリエルロプシス属(Muriellopsis)、シュードクロレラ属(Pseudochlorella)、ヘミクロリス属(Hemichloris)、シュードクロロコッカム属(Pseudochlorococcum)、エリプトクロリス属(Elliptochloris)、ケリオクラミス属(Keriochlamys)、シュードコッコミクサ属(Psedococcomyxa)、クロロロビオン属(Chlorolobion)、ポドヘドラ属(Podohedra)、ケラトコッカス属(Keratococcus)、クロステリオプシス属(Closteriopsis)、モノラフィディウム属(Monoraphidium)、コリキスチス属(Choricystis)、アンキストロデスムス属(Ankistrodesmus)、テレスファエラ属(Thelesphaera)、スコチェロプシス属(Scotiellopsis)、スコチエラ属(Scotiella)、コエラストレラ属(Coelastrella)、ディクチオスフェリウム属(Dictyosphaerium)、グロエオキスティス属(Gloeocystis)、コッコミクサ属(Coccomyxa)、シゾクラミデラ属(Schizochlamydella)、コエノクロリス属(Coenochloris)、ダクチロテーセ属(Dactylothece)、パルモディクティオン属(Palmodictyon)、トロキスキア属(Trochiscia)、ピリディオキチス属(Pilidiocystis)、オオキスティス属(Oocystis)、コンドロスファエラ属(Chondrosphaera)、コエラストルム属(Coelastrrum)、エナラックス属(Enallax)、セネデスムス属(Scenedesmus)、ブラクテアコッカス属(Bracteacoccus)、ディクチオコッカス属(Dictyococcus)、ディクチオクロリス属(Dictiochloris)、ネオクロリス属(Neochloris)、ホリキュラリア属(Follicularia)、スポンジオクロリス属(Spongiochloris)、クロロテトラエドロン属(Chlorotetraedron)、カラキオポディウム属(Characiopodium)、シュードスポンギオコッカム属(Pseudospongiococcum)、プロトシフォン属(Protosiphon)、クロロサルキナ属(Chlorosarcina)、フリードマニア属(Friedomannia)、 ポリスファエラ属(Polysphaera)、プラノフィラ属(Planophila)、クロロスファエロプシス属(Chlorosphaeropsis)、デスモテトラ属(Desmotetra)、クロロサルキノプシス属(Chlorosarcinopsis)、シュードテトラキスティス属(Pseudotetracystis)、ラフィドネモプシス属(Raphidonemopsis)、インテルフィルム属(Interfilum)、エラカトスリックス属(Elakatothrix)、ホッテア属(Fottea)、ゲミネルラ属(Geminella)、ホルミディオプシス属(Hormidiopsis)、ホルミディオスポラ属(Hormidiospora)、グロエオティラ属(Gloeotila)、グロエオティロプシス属(Gloeotilopsis)、シュードスキゾメリス属(Pseudoschizomeris)、ナンノクロリス属(Nannochloris)、ミクロスポラ属(Microspora)、プラシノコッカス属(Prasiococcus)、プラシオロプシス属(Prasiolopsis)、プラシオラ属(Prasiola)、イバノフィア属(Iwanoffia)、プロトデルマ属(Protoderma)、アパトコッカス属(Apatococcus)、 ジャーギエラ属(Jaagiella)、セデルクレウチエラ属(Cedercreutziella)、ディアフラグマ属(Diaphragma)、コッコボトリス属(Coccobotrys)、リゾタルス属(Rhizothallus)、ゾッダエア属(Zoddaea)、レプトシラ属(Leptosira)、ディプロスファエラ属(Diplosphaera)、デスモコッカス属(Desmococcus)、ハゼニア属(Hazenia)、レキシネマ属(Rhexinema)、ディラビフィルム属(Dilabifilum)、 スポンギオプラスティディウム属(Spongioplastidium)、シュードプレウロコッカス属(Pseudopleurococcus)、ツムロフィルム属(Tumulofilum)、ナヤリア属(Nayalia)、フリッチエラ属(Fritschiella)、オエドクラディウム属(Oedocladium)、ウロスリックス属(Ulothrix)、ウロネマ属(Uronema)、トリコサルシナ属(Trichosarcina)、シューデンドクロニウム属(Pseudendoclonium)、トレボウクシア属(Trebouxia)、プレウラストルム属(Pleurastrum)、ミクロタムニオン属(Microthamnion)、クレブスオルミディウム属(Klebsormidium)、スティココッカス属(Stichococcus)、ラフィドネマ属(Raphidonema)、ホルミディエラ属(Hormidiella)、メソテニウム属(Mesotaenium)、ローヤ属(Roya)、スピロテニア属(Spirotaenia)、キリンドロキスティス属(Cylindrocystis)、ネトリウム属(Netrium)、クロステリウム属(Closterium)、ペニウム属(Penium)、アクティノテニウム属(Actinotaenium)、コスマリウム属(Cosmarium)、ユーアストルム属(Euastrum)、 スタウラスツルム属(Staurastrum)、ジグネマ属(Zygnema)、デバルヤ属(Debarya)、ジゴゴニウム属(Zygogonium)などを挙げることができる。
次に本発明におけるコケ類について説明する。コケ類は、土壌表面、岩盤上、コンクリート等の人工構造物上、樹皮上、葉上などを被覆して生育している。土壌表面以外に生育するコケ類であっても、本発明におけるコケ類として使用可能である。更に、湿度の高い環境下では樹木の枝などから垂下して生育している種類もある。土壌表層(特に地表)では、コケ類は、土壌表層(特に地表)を被覆するよう平面的に拡張して成長する生物である。コケ類は、生活環のほとんどが配偶体(n世代(配偶体世代))であり、これを一般的にコケ植物体と呼んでいる。コケ植物体の形態には、原糸体(プロトネマ)、茎葉体のものと葉状体のものがある。コケ類の繁殖では、胞子の出芽あるいはコケ植物体の断片から原糸体(プロトネマ)が形成される。また、コケ植物体上に増殖能力を持つ無性芽が形成される種類もある。2n世代(胞子体世代)は、コケ植物体上に受精によって形成される胞子嚢と胞子柄のみである。土壌散布材100の生物材10としてコケ類を用いる場合には、胞子または無性芽の状態では、それらをそのまま単体として用いることができる。また、一般にコケと称呼される茎葉体、葉状体または原糸体(プロトネマ)の状態では、必要に応じて、所望の大きさに切断し生物材10として用いることができる。コケ類は、目視によって他の植物群と区別することが容易である。そのため、土壌散布材100の散布が予定される土壌に生育している植物群から、コケ類を選択的に採取することが容易である。そのため、土壌散布材100を散布することが予定される土地から、コケ類を選択的に採取し、必要に応じて増殖させて生物材10となし、これを用いた土壌散布材100を当該土地に散布することによって、自然環境(生態系)を破壊することなく土壌侵食を防止することができる。
コケ類の具体的な例としては、ゼニゴケ植物門、ツノゴケ植物門、マゴケ植物門などに分類されるものが知られるが、これに限定されない。
ゼニゴケ植物門(Marchantiophyta)としては、たとえばコマチゴケ網(Haplomitriopsida)、ゼニゴケ網(Marchantiopsida)、ウロコゴケ網(Jungermanniopsida)などを挙げることができる。
コマチゴケ網(Haplomitriopsida)としては、たとえば、コマチゴケ属(Haplomitrium)などを挙げることができる。
ゼニゴケ網(Marchantiopsida)としては、たとえば、ウスバゼニゴケ(Blasia)属、ゼニゴケ属(Marchantia)、ジャゴケ属(Conocephalum)などを挙げることができる。
ウロコゴケ網(Jungermanniopsida)としては、たとえば、カタウロコゴケ属(Mylia)、ムチゴケ属(Bazzania)、ムクムクゴケ属(Trichocolea)、テガタゴケ属(Ptilidium)などを挙げることができる。
ツノゴケ植物門(Anthocerotophyta)としては、ツノゴケ網(Anthocerotopsida)などを挙げることができる。
ツノゴケ網(Anthocerotopsida)としては、たとえば、ツノゴケ属(Anthoceros)、ニワツノゴケ属(Phaeoceros)、ツノゴケモドキ属(Notothylas)、アナナシツノゴケ属(Megaceros)などを挙げることができる。
マゴケ植物門(Bryophyta)としては、たとえばナンジャモンジャゴケ網(Takakiopsida)、ミズゴケ網(Sphagnopsida)、クロゴケ網(Andreaeopsida)、クロマゴケ網(Andreaeobryopsida)、イシズチゴケ網(Oedipodiopsida)、スギゴケ網(Polytrichopsida)、ヨツバゴケ網(Tetraphidopsida)、マゴケ網(Bryopsida)などを挙げることができる。
ナンジャモンジャゴケ網(Takakiopsida)としては、たとえば、ナンジャモンジャゴケ属(Takakia)を挙げることができる。
ミズゴケ網(Sphagnopsida)としては、たとえば、ミズゴケ属(Sphagnum)を挙げることができる。
クロゴケ網(Andreaeopsida)としては、たとえば、クロゴケ属(Andreaea)を挙げることができる。
クロマゴケ網(Andreaeobryopsida)としては、たとえば、クロマゴケ属(Andreaeobryum)を挙げることができる。
イシヅチゴケ網(Oedipodiopsida)としては、たとえば、イシヅチゴケ属(Oedipodium)を挙げることができる。
スギゴケ網(Polytrichopsida)としては、たとえば、タチゴケ属(Atrichum)、ニワスギゴケ属(Pogonatum)、スギゴケ属(Polytrichum)などを挙げることができる。
ヨツバゴケ網(Tetraphidopsida)としては、たとえば、ヨツバゴケ属(Tetraphis)などを挙げることができる。
マゴケ網(Bryopsida)としては、たとえば、イクビゴケ属(Diphyscium)、スナゴケ属(Racomitrium)、タマゴケ属(Bartramia)、ヒョウタンゴケ属(Funaria)、ハリガネゴケ属(Bryum)などを挙げることができる。
次に本発明の生物材10として用いられるシダ類について説明する。シダ類は、通常、胞子が発芽し前葉体を形成した後、受精して、一般的にシダ類と称呼する植物体に成長することが知られる。また、種によっては、根系、無性芽あるいは植物体の一部から植物体に成長するものがある。シダ類は、維管束植物であり、コケ植物の仮根に比較して強靭な根系を有している点で、土壌侵食防止に非常に有効である。
土壌散布材100に用いる場合には、胞子、無性芽、根茎を単体として用いることができる。また、胞子、無性芽、根系を増殖させた幼植物体を生物材10として用いることができる。シダ類は、その成長した植物体を他の植物群と区別することが容易である。そのため、土壌散布材100を散布することが予定される土地から、シダ類を選択的に採取し、必要に応じて増殖させて生物材10となし、これを用いた土壌散布材100を当該土地に散布することによって、自然環境(生態系)を破壊することなく土壌侵食を防止することができる。
上記シダ類、すなわちシダ植物門(Pteridophyta)には、マツバラン綱(Psilotopsida)、ヒカゲノカズラ綱(Lycopsida)、トクサ綱(Equisetopsida)、シダ綱(Filicopsida)などが含まれる。
マツバラン綱(Psilotopsida)としては、たとえば、マツバラン属(Psilotum)、ハナワラビ属(Botrychium)などが挙げられる。
ヒカゲノカズラ綱(Lycopsida)としては、たとえば、ヒカゲノカズラ属(Lycopodium)、イワヒバ属(Selaginella)などが挙げられる。
トクサ綱(Equisetopsida)としては、トクサ属(Equisetum)が挙げられる。
シダ綱(Filicopsida)としては、たとえば、ゼンマイ属(Osmunda)、コケシノブ属(Hymenophyllum)、コシダ属(Dicranopteris)、カニクサ属(Lygodium)、フサシダ属(Schizaea)、キジノオシダ属(Plagiogyria)、ヘゴ属(Cyathea)、ホラシノブ属(Sphenomeris)、ミミモチシダ属(Acrostichum)、イノモトソウ属(Pteria)、チャセンシダ属(Asplenium)、ヒリュウシダ属(Blechnum)、コモチシダ属(Woodwardia)、クサソテツ属(Matteuccia)、ヤブソテツ属(Cyrtomium)、オシダ属(Dryopteris)、イワヒトデ属(Colysis)、エゾデンダ属(Polypodium)、タマシダ属(Nephrolepsis)、ヒトツバ属(Pyrrosia)などが挙げられる。
次に地衣類について説明する。本発明において地衣類とは、上述する藻類(シアノバクテリア、緑藻を含む)と菌類が共生した生物体(共生体)である。地球上のあらゆる環境(極地から熱帯まで)に適応して分布しており外見はコケ類と似ているものも散見されるが、構造がコケ類とは全く異なっている。その構造の大部分は菌類(特に子嚢菌)で構成され、構造内部に共生する藻類の光合成によって生活する。地衣類は、土壌表層(特に地表)、岩盤表面、人工構造物表面、樹皮表面、植物の葉上などに生育している。土壌表層(特に地表)、樹皮表面などでは、葉(板)状に拡張して成長する場合が多い。本発明において用いられる地衣類は、土壌表層以外の領域に生育する地衣類を用いることが可能である。本明細書において、藻類と菌類とが共生してなる特殊な形態を地衣体という場合がある。
地衣類は、有性生殖を行うものと無性生殖を行うものとが知られており、いずれの地衣類も本発明に利用可能である。有性生殖を行う地衣類は、地衣体上に子器を形成し、その中に胞子を形成する。この胞子が散布され、発芽した後に親と同じ共生藻と共生して新しい地衣体を形成する。無性生殖を行う地衣類は、地衣体上に形成される無性生殖器官を有し、生育段階によらず地衣菌と藻類が共生した状態の個体を形成する。
地衣類は、生育初期段階から生育後期段階においてその形態が変化するものが知られる。
本明細書では、生育初期段階の地衣体を地衣幼体と称呼し、生育後期段階の地衣体を成熟地衣体と称呼する場合がある。
地衣幼体は、粉状、顆粒状、小板(葉)状を成すものが多い。地衣幼体は、無性生殖器官から増殖してきたものであって、主として成熟地衣体上あるいは成熟地衣体内に形成された粉芽、粉芽塊(ソラリア)、裂芽(イシディア)、泡芽(菌類と藻類の両者を持つ、すなわち共生体である)などが知られる。また異なる例として、何らかの外圧によって断片化した成熟地衣体の一部を地衣幼体として取り扱うことも可能である。また地衣幼体の他の例として、有性生殖によって形成された地衣体に含まれる菌類の胞子が放出され、地表面などに生育する藻類と共生したものを挙げることができる。尚、粉芽は、粉状または顆粒状などの形態が知られる。粉芽塊(ソラリア)は、粉芽が集まった塊状の個体である。裂芽(イシディア)は、地衣体の皮層部分に形成される微小突起物である。泡芽(パスチュール)は、地衣体の皮層部分に形成される泡状の突起で中空である。
地衣幼体は、上述のとおり、発育初期段階の地衣類であり、成熟地衣体に比べ生育が比較的速いことを本発明者らは確認している。地衣幼体は、土壌表層において、板(盤)状、網状あるいは集合紛体状に成長し拡大(増殖)し、土壌表層を構成する土壌粒子が剥離、運搬され土壌侵食が発生することを防止する効果を有する。したがって、地衣幼体は、本発明の生物材10として望ましい。ただし、成熟地衣体も地衣幼体と同様の土壌侵食防止効果があるため、生物材10として用いることができる。
地衣類は、土砂崩壊などで裸地化した土壌表面において、藻類および/またはコケ類と共に生育してくるパイオニアプランツであるため、地衣類と、藻類および/またはコケ類との組み合わせにより生物材10を構成することも好ましい。
地衣類(Lichen)は、菌類と藻類(シアノバクテリアを含む)から構成される共生生物であり、分類学上は共生する菌類から分類可能である。即ち、本発明では、地衣類の同定は、地衣類を構成する菌類(地衣菌)の分類を持って行う。即ち、2つの地衣類を構成するそれぞれの地衣菌が同属と同定される場合には、上記2つの地衣類は同種類の地衣類と判断し、地衣菌が異なる属であると同定される場合には、上記2つの地衣類は、異なる種類の地衣類であると判断する。ここで地衣類を構成する地衣菌としては、以下のようなものが例示されるが、地衣類の研究の発展とともに、さらに多くの地衣菌が明らかになるものと期待され、それらの地衣類と任意の藻類とから構成される地衣類を本発明は包含する。
例えば上記菌類の例としては、子嚢菌類(Ascomycetes)、担子菌類(Bacidiomycetes)担子地衣類(Bacidiolichenes)、不完全菌類(Fungi Imperfecti)不完全地衣類(Lichenes Imperfecti)などを挙げることができる。
子嚢菌類(Ascomycetes)との共生体である子嚢地衣類(Ascolichens)としては、レカノラ目(Lecanorales)、スフェリア目(Sphaeriales)、ピンゴケ目(Caliciales)、ヒステリウム目(Hysteriales)、プレオスポラ目(Pleosporales)、ミリアンギウム目(Myriangiales)などを挙げることができる。
レカノラ目(Lecanorales)は、たとえばダイダイゴケ属(Caloplaca)、ゲジゲジゴケ属(Anaptychia)、ムカデゴケ属(Physcia)、カラタチゴケ属(Ramalina)、サルオガセ属(Usnea)などを含む。
スフェリア目(Sphaeriales)は、たとえばカワイワタケ属(Dermatocarpon)、サネゴケ属(Pyrenula)、ニキビゴケ属(Anthracothecium)などを含む。
ピンゴケ目(Caliciales)は、たとえばサンゴゴケ属(Sphaerophorus)、ピンゴケ属(Calicium)、ヌカゴケ属(Coniocybe)などを含む。
ヒステリウム目(Hysteriales)は、たとえばイワボシゴケ属(Lecanactis)、メダイゴケ属(Chiodecton)、マゾシア属(Mazosia)などを含む。
プレオスポラ目(Pleosporales)は、たとえばホシゴケモドキ属(Arthopyrenia)、チクビゴケ属(Trypethelium)、モツレサネゴケ属(Pseudopyrenula)などを含む。
ミリアンギウム目(Myriangiales)は、たとえばホシゴケ属(Arthonia)、ゴマシオゴケ属(Arthothelium)などを含む。
また担子菌類(Bacidiomycetes)との共生体である担子地衣類(Bacidiolichenes)としては、ヒダナシタケ目(Aphyllophorales)、マツタケ目(Agaricales)などを挙げることができる。
ヒダナシタケ目(Aphyllophorales)は、たとえばケットゴケ属(Dictyonema)、キリタケ属(Multiclavula)などを含む。
マツタケ目(Agaricales)は、たとえばヒメサカズキタケ属(Omphalina)などを含む。
土壌散布材100は、上述する藻類、コケ類、シダ類または地衣類のいずれか1種類を含むものであってもよく、また2種類以上を含んでもよい。
2種類以上の藻類、コケ類、シダ類または地衣類を含む土壌散布材100としては、生物材10が、少なくとも下記(A)から(E)のいずれか一つの組み合わせを含む態様を挙げることができる。
(A)藻類、コケ類、シダ類、または地衣類から選択される2以上の組み合わせ。
(B)藻類であって生物の分類学上、異なる属に分類される2以上の藻類の組み合わせ。
(C)コケ類であって生物の分類学上、異なる属に分類される2以上のコケ類の組み合わせ。
(D)シダ類であって生物の分類学上、異なる属に分類される2以上のシダ類の組み合わせ。
(E)地衣類であって生物の分類学上、上記地衣類を構成する菌類が異なる属に分類される2以上の地衣類の組み合わせ。
上記(A)から(E)のいずれか一つの組み合わせを採用することにより、土壌散布材100に含まれる複数の生物材10の長所を活かし、好適な土壌侵食防止の効果を発揮することができる。即ち、上述する組み合わせで2種類以上の藻類等を含む土壌散布材100を散布することにより、土壌散布材100は、土壌においてそれらを共存させ、互いの生育態様の相違を活かして優れた土壌侵食防止効果を発揮する。
尚、本明細書において「異なる属に分類される」とは、生物の分類上、互いに異なる属以上の上位の分類に属することを意味する。たとえば本発明において、藻類であって異なる属に分類されるものは互いに異なる属に分類されるといい、また、藻類とコケ類などのように、属を超えた上位の分類において異なる場合、便宜的に互いに異なる属に分類されるという。
藻類等の生育態様の相違の一例は以下のとおりである。
藻類は、一般的にコケ類に比べて、散布後の初期の増殖力が良好であり、繁茂が目視で確認される時期が早い。本発明者らの研究によれば、生物材10として含まれる単細胞藻類は、生物材10として含まれる糸状藻類に比べて生育開始時期が早く、増殖力が旺盛であるため、早期に土壌侵食を防止する効果が発揮されることが確認された。一方、上記糸状藻類は、上記単細胞藻類に比べて初期の増殖力はやや劣る傾向にあるが、土壌表面付近にて充分に増殖した場合に、糸状体により粒状の土砂を緊縛し、上記単細胞藻類を上回り得る優れた土壌侵食防止効果を発揮することも、本発明者らの研究で確認された。尚、本発明における生物材に関し「増殖」とは、生物材10として用いた生物が生育により増えることを広く含み、たとえば、コケ類、シダ類の生育初期の「発芽」や、藻類が有性生殖(受精卵、接合子など)または無性生殖(遊走子など)で形成された細胞から増殖してくる場合にいう「発芽」の概念を含む。
コケ類は、初期の発芽力は藻類に劣る傾向にあるものの、生育が進めば、しっかりとした繊維体(茎葉体、葉状体、仮根、原子体(プロトネマ)など)により地表を被覆する。そのため、土壌侵食防止効果は、非常に高く、たとえばイネ科草本などに匹敵するほど高い土壌侵食防止効果が発揮される。
シダ類は、通常、胞子が発芽し前葉体を形成した後受精して、一般的にシダ類と称呼する植物体に成長する。また、種によっては、根茎、無性芽あるいは植物体の一部から発根して成長するものがある。シダ類は、維管束植物であり、コケ植物の仮根に比較して強靭な根を有している。シダ類は、コケ類よりはやや初期の繁殖が遅れるが、シダ類の土壌侵食防止効果は非常に高く、上記のイネ科草本などと同等の効果を有する。
地衣類は、菌類と藻類の共生体であり、菌糸が絡み合って、その中に藻類(通常単細胞藻類、シアノバクテリアにおいては糸状体)が存在している。地衣類は、その外部形態から、葉状、固着(痂状)、樹枝状などに大別される。また、その生育場所は、岩上着生(岩の表面に着生する)、蘚上着生(コケ類の上に生育する)、樹皮着生(樹幹や枝に着生する)、地上着生(土壌表面に着生する)などである。地衣類の生育初期段階のもの(地衣幼体)は、粉状、顆粒状、小板(葉)状のものが多い。これらは、主として地衣類の無性生殖器官である粉芽、粉芽塊(ソラリア)、裂芽(イシディア)、泡芽(パスチュール)から放出されたものや何らかの外圧によって断片化した地衣体の一部と考えられる。これらの地衣幼体、あるいは成熟地衣体は、土壌表面に強靭に付着して繁殖する傾向がある。コケ類やシダ類と同様に土壌侵食防止効果が、非常に高い。また、共生体であることから、乾燥など、過酷な自然環境に対する耐性が強く、乾燥地における土壌侵食防止にも強力な効果を有する。
以上のような生育態様の相違を利用した組み合わせは、例えば具体的には以下のとおりである。
上記(A)の組み合わせの生物材10としては、たとえば、藻類と、藻類以外の生物との組み合わせを挙げることができる。かかる組み合わせによりなる生物材10を含む土壌散布材100は、散布後、速やかに藻類が生育を開始するため早期に土壌防止効果を発揮する(時間的効果)とともに、遅れて生育し始めたコケ類、シダ類、または地衣類により地表面をしっかりと覆うことができる。そのため、侵食される土壌量を充分に少なくすることができる(量的効果)。即ち、かかる土壌散布材100は、土壌侵食防止に関する時間的効果と量的効果のいずれも良好に発揮し得る。
上記(B)の好ましい組み合わせの例としては、単細胞藻類から選択される1種類以上の藻類と、糸状藻類から選択される1種類以上の藻類と、の組み合わせを挙げることができる。単細胞藻類と糸状藻類とは、土壌の性質や、任意で使用される肥料の種類などで、そのどちらかを優勢に生育させることが可能であるため、生育開始時期を調整し、生物材10の生育開始時期や生育期間をプランニングすることが可能である。もちろん、単細胞藻類または糸状藻類のいずれかに含まれ、かつ異なる属として分類される2種類以上の組み合わせであってもよい。ただし、上記(B)の組み合わせはこれに限定されず、たとえば、同一の網に分類された異なる属の2以上の藻類の組み合わせ、あるいは異なる網に分類された2以上の藻類の組み合わせを含む。
上記(C)の組み合わせは、環境変化の影響が特に著しい土壌に散布するのに適した土壌散布材100を提供することができる。コケ類は、湿度の高い環境に生育するものと、乾燥した環境に生育するものが存在する。たとえば、乾燥した環境でも良好に繁茂可能な性質のコケ類と、湿潤環境に生育する他の性質のコケ類と、を組み合わせることによって、天候や季節などの環境変化に耐えて土壌侵食防止効果を長期に維持することができる。このように、特性(生育環境の異なる)の異なるコケ類を2種類以上組み合わせることも、土壌散布材100の好ましい態様の一つである。
上記(D)の組み合わせは、たとえば、乾燥した環境でも良好に繁茂可能なシダ類と、湿潤環境に生育する性質のシダ類との組み合わせを例示することができる。かかる組み合わせによって、土壌の環境変化(微環境)に対応した土壌侵食防止効果を長期に維持することができる。
上記(E)の組み合わせは、たとえば、乾燥した環境でも良好に繁茂可能な地衣類と、湿潤環境に生育する性質の地衣類との組み合わせを例示することができる。かかる組み合わせによって、土壌の環境変化(微環境)に対応した土壌侵食防止効果を長期に維持することができる。
(粒状担持体)
次に粒状担持体20について説明する。
粒状担持体20は、特に厳密な寸法が特定されるものではなく、1つ(図1(c)参照)または複数個(多数個)(図1(a)、(b)参照)により生物材10を担持可能な材料である。粒状担持体20の形状は特に限定されず、定型であってもよく不定形であってもよいが、特に不定形であることが好ましいことは上述のとおりである。また粒状担持体20は、粒子状、棘状、紡錘状などの種々の任意の形状の統一または混合であってよい。
ここで粒状担持体20が生物材10を担持するとは、生物材10の少なくとも一部を粒状担持体20の表面に付着させることをいい、これにより粒状担持体20と生物材10とは、互いに結着して一つの塊(即ち、一粒の土壌散布材100)を構成する。土壌散布材100は、粒状担持体20と生物材10、あるいは粒状担持体20と粒状担持体20とを結着させるために、適宜、結着剤が含まれてもよい。
たとえば、粒状担持体20は、土壌構成粒土、固形生物遺骸、加工固形物、鉱物の少なくともいずれか1つを含む。
中でも、無機質材料を主成分としてなる粒状担持体20は、腐敗し難いため、土壌散布材100の長期保管性に貢献する。ここで無機質材料が主成分とは、粒状担持体20の全体を100質量%としたときに、有機質の比率が20質量%以下の場合をいい、好ましくは10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下、特に好ましくは実質的に有機質が0質量%である。
上記土壌構成粒土とは、粘土、シルト、砂、または礫のいずれかまたは組み合わせを含む。土壌から採取された土砂は、上記土壌構成粒土に含まれる。粒状担持体20として土壌構成粒土を含む土壌散布材100は、生物材10の生育に適した性質の土壌構成粒土を選択可能であり、生物材10の保存状態の最適化、および土壌に散布したときの土壌に対する環境適応性の最適化を図ることが可能である。
上記粘土は、0.002mm以下のサイズの粒子である。
上記シルトは、0.002mmを超えて0.02mm以下のサイズの粒子である。シルトと粘土との混合物を泥岩と称呼する場合がある。
上記砂は、細砂と粗砂とに大別できる。細砂は、0.02mmを超えて0.2mm以下のサイズの粒子である。粗砂は、0.2mmを超えて2mm以下のサイズの粒子である。
上記礫は、2mmを超えたサイズの粒子である。
土壌構成粒土の粒子径が、0.2mm以上2mm以下である場合には、土壌散布材100の内部において毛細管現象が生じやすく、周囲の土壌から吸湿し、土壌散布材100の含水率を高めることができる。毛細管現象を生じさせるという観点からは、土壌散布材100の構成する土壌構成粒土に含まれる全粒状担持体20(100質量%)に対し、粒子径が0.2mm以上2mm未満である粒状担持体20が50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上含まれていることが好ましい。尚、土壌構成粒土の粒子径に関する好ましい数値範囲は、後述にて説明する固形生物遺骸、加工固形物、鉱物においても同様である。
上記固形生物遺骸は、炭化物、珪藻土、貝殻、またはサンゴ殻等であって適宜、適当な粒径に粉砕または切断された粒子のいずれかまたは組み合わせを含む。
上記炭化物は、炭素を主成分とする有機物を不完全燃焼させてなる生成物である。
上記珪藻土は、藻類の一種である珪藻の殻の化石よりなる堆積岩であり、二酸化ケイ素を主成分として含むものである。
上記貝殻とは、海水域または淡水域に生息する貝の殻であり、石灰質の小片である。
上記サンゴ殻は、海洋に生息するサンゴ殻、またはサンゴ殻の化石片である。
固形生物遺骸は、主として天然物であるため、粒状担持体20として固形生物遺骸を含む土壌散布材100は、土壌に散布されたときに土壌に対し毒性などを与える虞がなく、環境適応性が良好である。
上記加工固形物は、スラグ、フライアッシュ、レンガ、瓦粉、紙、またはその他のリサイクル品であって適宜、適当な粒径に粉砕または切断された粒子のいずれかまたは組み合わせを含む。また上記加工固形物は、上記生物遺骸で加工されたものであってもよいし、上記加工固形物と混合して生成されたものでもよい。
加工固形物は、人工的に調整可能であり、土壌に無害である廃材を利用することができ経済的有利性を有する。
上記スラグは、鉱石から金属を製錬する際に当該金属から溶融分離される鉱物成分を含む部材である。
上記フライアッシュは、石炭を燃焼する際に発生する灰分を含む粒子である。
上記レンガまたは瓦は、建築材料として一般に知られる部材である。
上記紙は、セルロース(特には木材由来のセルロース)を主成分として構成される部材である。
上記鉱物は、一般的に鉱物と理解される物であって、適宜、適当な粒径に粉砕された粒子を含み、たとえば人工合成されたゼオライト、天然より採取されたゼオライト、パーライト、イソライトなどを挙げることができるが、これに限定されない。
図1(a)および(b)に示されるように、一つの粒子である土壌散布材100に含まれる複数の粒状担持体20は、平均長径が0.1mm以上2mm以下のものを2以上有する。より好ましくは、上記複数の粒状担持体20は、平均長径が0.1mm以上2mm以下のものを多数有し、たとえば50個以上有している。このように、一つの粒子である土壌散布材100に比較的大きなサイズの粒状担持体20が2以上含まれることによって、当該一つの粒子である土壌散布材100は、適度な重量を有することとなり降雨により飛散または流出し難い。またかかる構成によれば、土壌散布材100の内部に空隙26が形成されやすい。上述する比較的大きなサイズの粒状担持体20が含まれていることは、1つの粒子である土壌散布材100に適当量の水を付加して粒子の形状を崩壊させ、複数の粒状担持体20を分散させた状態で顕微鏡観察することにより確認することができる。データの信頼性の観点からは、複数個(たとえば10個)の粒子である土壌散布材100それぞれについて上記観察を行い、それぞれの土壌散布材100に含まれる上記数値範囲の粒状担持体20の数を平均してもよい。
また本発明における粒状担持体20は、個数基準における粒子径分布において2以上のピークを有していてもよい。相対的に小径の粒状担持体20で、相対的に大径な粒状担持体20を包埋させることによって、微細な凹凸の箇所を多数設けることができ、生物材10の担持性能が向上する。
粒状担持体20の個数基準における上記2つのピークについて図4を用いて説明する。図4は、土壌散布材100に含まれる粒状担持体20の個数基準(個数分布)における粒子径分布を示すグラフの一例である。尚、図4に示すグラフは本発明の一実施形態における土壌散布材100に含まれる大径の粒状担持体20と小径の粒状担持体20の個数基準における粒子径分布を示す曲線であって、図4に示される数値は、本発明を何ら制限するものではない。
図4に示すように、土壌散布材100は、大径粒状担持体22(20)と小径粒状担持体32(20)のいずれをも含む。大径粒状担持体22(20)のピークトップ24と、小径粒状担持体32(20)のピークトップ34とは、たとえば、1オーダー以上相違している。図示省略する他の実施例では、ピークトップ24とピークトップ34とは2オーダー以上相違していてもよい。大径粒状担持体22(20)と小径粒状担持体32(20)との長径のピークが顕著に相違する場合には、特に、上記担持性能に優れ、散布後に、生物材10が粒状担持体20から分離することを良好に回避する。
大径粒状担持体22(20)および小径粒状担持体32(20)は、上述にて説明する粒状担持体20のいずれかから選択することができ、同一または異なる種類の粒状担持体20であってよい。大径粒状担持体22および小径粒状担持体32は、それぞれ2種以上の粒状担持体20から構成されてもよい。たとえば、大径粒状担持体22(20)として砂を選択し、小径粒状担持体32(20)として粘土を選択し、これらを混合して粒状担持体20を作製することができる。また、小径粒状担持体32(20)として、吸湿した状態で粘度が高くなる傾向にあるモンモリロナイトまたはカオリナイトを選択することにより、散布後に放水を受け、または降雨により、生物材10を特に強固に担持することが可能である。
大径粒状担持体22(20)および小径粒状担持体32(20)を含む粒状担持体20は、たとえば以下の方法により作製することができる。即ち、核となる大径粒状担持体22(20)に対し、これを包埋する小径粒状担持体32(20)を1種または複数種と、適当量の水と、を加えて撹拌装置により撹拌混合し中間体を得る。次いで上記中間体を、生物材10に影響を与えない温度(たとえば100℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、特に好ましくは23℃±2℃)で乾燥し、その後に適度な寸法となるよう必要に応じて粉砕処理を行うことによって、粒状担持体20を得ることができる。このとき、粒状担持体20における容積比率において、大径粒状担持体22(20):小径粒状担持体32(20)=90:10から70:30の範囲が好適である。ただし上記容積比率は、かかる範囲に限定されない。
以上に本実施形態の土壌散布材100について種々の態様を説明したが、上述は本実施形態の土壌散布材100を何ら限定するものではない。土壌散布材100は、たとえば、任意で、透水性、通気性、または保水性を確保するためのコーティング剤(ゼラチン、種々の多糖類)による外表面をコーティングされてもよい。また上記コーティング剤と同様の材料でマイクロカプセル化されてもよい。コーティングされ、またはマイクロカプセル化された土壌散布材100は、散布後の土壌との付着性が良好である。また、土壌散布材100は、適宜、生物材10に対し養分となり得る任意の材料を含有させることもできる。
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態として、本発明の土壌散布材製造方法の一実施形態に関し、適宜、図2、3を用いて説明する。図2は、第二実施形態に用いられる培養装置200の一例を示す縦断面概略図である。図3は、第二実施形態にかかる土壌散布材製造方法の工程を説明する説明図である。具体的には、土壌散布材製造方法において、図3(a)は生育工程の初期を示し、図3(b)は生育工程の後期を示し、図3(c)は収穫工程(掻き取り方法)を示し、図3(d)は混合工程を示し、図3(e)は粒状体成形工程を示し、図4(f)は製造された複数の土壌散布材を示している。尚、図3(a)から(c)は、土壌様培地40の表面を含む一部と生物材10を図示し、培養装置の図示を省略している。
本実施形態の土壌散布材製造方法は、本発明の土壌散布材100を製造する方法であり、生育工程、収穫工程、混合工程、粒状体成形工程を有する。生育工程は、土壌様培地40に生物材10を生育させる工程である。収穫工程は、土壌様培地40の表面に生育した生物材10と、土壌様培地40と、を収穫する工程である。混合工程は、収穫工程により得られた生物材10および土壌様培地40を混合して混合物50を作製する工程である。粒状体成形工程は、混合物50を乾燥および粒状化することによって粒状体である土壌散布材100を成形する工程である。
上記収穫工程の実施方法は特に限定されないが、たとえば、土壌様培地40の表面に生育した生物材10と、土壌様培地40の表層と、を掻き取る掻き取り方法、または土壌様培地40の表面に生育した生物材10と土壌様培地40の一部または全部とを収集する収集方法などを挙げることができる。
本実施形態の土壌散布材製造方法によれば、生物材10を培養した後に精製する必要がなく、簡易なプロセスで土壌散布材100を製造することができる。土壌散布材製造方法により製造された土壌散布材100は、生育した培地自体により担持されて粒状化される。そのため、保管時の生物材10の環境が最適化されており、また土壌に散布された場合に、環境の変化による生物材10のストレスを軽減し、速やかに生育を開始させることが可能である。ここで土壌様培地とは、土壌から採取された土壌自体からなる培地、当該土壌に任意の材を添加して作製された培地、または土壌の主要成分を模して作製された人工培地を意味する。上記人工培地とは、模範となる土壌に20%以上含まれる成分を同様の配合で含むものを意味する。
本実施形態の土壌散布材製造方法は、たとえば図2に示す培養装置200を用いて実施することができる。培養装置200は、上面が開口し、水218を保持できる容器である培養容器202を備える。培養容器202の内部には、壁204で仕切られた培養室206が設けられており、図2に示すように培養室206に土壌様培地40が充填される。培養室206の下方には水層208が設けられており、培養室206の下方と水層208とは透水可能に連通している。本実施形態では、水層208には透水シート210が敷設されており透水シート210の上面に土壌様培地40が盛られ、透水シート210を介して水層208における水が土壌様培地40に浸透するよう構成されている。水層208の下方には透水性板212が設けられている。水層208は、連通管214を介して貯水槽216と連続しており、適宜、貯水槽216から水が流れ込むよう構成されている。培養時には貯水槽216に水218が充填される。培養装置200は、貯水槽216の水位が一定となるよう貯水槽216内に浮かぶ浮き220を備える水位調整装置222を有している。当該水位が所定の高さより下がると浮き220の高さ位置も下方に下がり、これを水位調整装置222が感知して、給水管224より当該水位が所定の高さになるよう給水される。ここで、貯水槽216の水位と水層208の水位とは連動しており、たとえば同じ高さである。そのため、水層208の水量が少なくなり水層208の水位が下がると、これに連動して水218の水位も下がるため、両水位が所定の高さになるよう給水管224から給水される仕組みになっている。そのため、培養容器202における水量は常に一定の量が維持される。したがって、培養装置200は、土壌様培地40を常に水浸状態に維持することができる。
次に、本実施形態の土壌散布材製造方法の各工程について説明する。まず、図3(a)に示すように、土壌様培地40に素材となる生物材10を蒔く。コケ類または藻類である生物材10の培養温度は、特に限定されず、また精密な温度管理を必ずしも必要とするものではない。たとえば、10℃以上40℃以下が好ましく、20℃以上30℃以下がより好ましく、23℃以上25℃以下の範囲の温度環境で生育工程を実施することが更に好ましい。また生育工程における培養の照度は、特に限定されないが例えば一般的な明るさの指標で言えば、好ましくは1000Lux以上8000Lux以下、より好ましくは1500Lux以上6000Lux以下、更に好ましくは2000Lux以上3500Lux以下の範囲である。照度は、自然光であってもよく、この場合には夜間は消灯し、または夜間だけ人工燈を照射してもよい。ただし、日中と夜間との変動および季節変動を考慮すれば、自然光より人工燈を利用することにより、一日および年間を通じて安定的に培養することができる。尚、本明細書において素材とは、培地に巻かれる生物材10の素となる材料であって、培地において増殖し生物材10をなす材料を意味し、生物材10自体、生物材10の胞子、地衣類である生物材10の地衣幼体などを含む。
図3(b)に示すとおり、土壌様培地40の表面が生物材10に概ね被覆されたことが確認されるまで生育工程を実施するとよい。確認の方法は特に限定されず、目視または画像処理による観察などを含む。選択する生物材10の種類や培養環境にもよるが、生育工程は、素材となる生物材10を土壌様培地40に蒔いてから1週間以上4週間以下の期間で継続することで生物材10が繁茂した状態を実現可能である。ただし本発明において生育工程の終了の時期は、任意であるため、上記期間に限定されるものではない。
生育工程の終了後、図3(c)に示す収穫工程が実施される。本実施形態では収穫工程として掻き取り方法を例示する。掻き取り方法は、ヘラ60のような掻き取りに適した用具または装置を用い、土壌様培地40の表層と生物材10とを共に掻き取ることにより実施される。土壌様培地40の表層の掻き取り量は特に限定されず生育した生物材10の種類や繁茂の程度によって適宜調整してよい。掻き取り方法において、土壌様培地40は、たとえば、表層から0.5mm以上1mm以下程度を目安に土壌様培地40が掻き取られる。ヘラ60により掻き取られた部分の土壌様培地42は掻き取られていない領域よりも、侵食されている。ヘラ60により掻き取られた生物材10と土壌様培地40とは、混合物前駆体52を構成している。掻き取り方法を実施することによって、生育した生物材10の精製を行う作業を省略し、粒状担持体20である土壌様培地40および生物材10を含む混合物前駆体52を得ることができる。
尚、掻き取り方法において培養容器202(図2参照)に残留した土壌様培地40に他所の生物材10を残しておくことによって、生育工程における素材を蒔く作業を省略して再度の生育工程を実施することができる。二回目以降の培養は、既に土壌様培地40の環境に馴染んだ生物材10が存在するため、最初の培養期間よりも短い期間(たとえば、5日間以上10日間以下程度)で充分に土壌様培地40に生物材10を繁茂させることが可能である。ただし、二回目以降の培養において、適宜、素材となる生物材10を追加することは可能である。
収穫工程の後に、図3(d)に示す混合工程が実施される。混合工程は、たとえば上部開口の容器62に混合物前駆体52を収容し、撹拌用具63により全体を混合することによって実施され、これによって混合物50が形成される。尚、混合時には、適宜、適当な量の水または水溶液を添加し、混合物50をペースト状に調整することによって、後工程における取り扱い性が容易となる。添加される水または水溶液の量は特に限定されないが、混合物50が液性限界に近い程度に調整可能となるよう添加量を調整するとよい。
尚、生物材10にコケ類などの繊維体の発達が顕著なものが含まれる場合には、混合工程の前、または混合工程と平行して生物材10の切断工程を実施してもよい。
混合工程の後に、粒状体成形工程が実施される。粒状体成形工程の一実施態様としては、図3(e)に示すとおり、図示省略する基板上に、厚み方向に貫通する孔66を多数有する平板の枠体64を準備し、混合物50を孔66に擦り込む。その後、直ちに枠体64を撤去し、湿潤状態の粒状体を基板上に残置する(図示省略)。そして、湿潤状態の粒状体を乾燥することによって、図3(f)に示すように乾燥した粒状体である土壌散布材100が得られる。尚、乾燥時間及び乾燥温度は特に限定されず、粒状体の寸法や含水率によって適宜決定してよいが、長径が数mm程度の粒状体を作製する場合には、たとえば23℃±2℃の乾風を数時間(たとえば2時間から3時間)程度吹き付けるとよい。
たとえば、枠体64に混合物50を擦り込んだ後、図示省略する基板上に粒状化された混合物50を残して速やかに混合物50を取り除き、その後、混合物50を乾燥してもよい。かかる場合には、ペースト状の混合物50の好ましい液性限界は、JIS A 1205に規定される土の液性限界・塑性限界試験方法に準じて測定される混合物50の液性指数が、0.5以上、好ましくは0.8以上である。また混合物50の液性指数の上限は特に限定されないが、1.8以下、好ましくは1.5以下である。また上記液性限界における混合物50において、混合物50の固形物の質量に対する含水比率(含水される水分質量)の目安は、たとえば1:1から1:1.3程度であるが、これに限定されない。しかし、これは粒状体成形工程の一例であって、本実施形態は、混合物50をまず乾燥し、その後に適宜の大きさに乾燥物を粉砕または切断等する粒状化工程を実施してもよいし、粒状化と乾燥とを一部重複させて実施してもよい。
本実施形態における土壌散布材製造方法の好ましい態様として、下記(I)または(II)の少なくともいずれか1つを満たす態様を挙げることができる。
(I)生育工程において用いられる土壌様培地40が、土壌散布材100の散布が予定される所定の土壌から採取された現地土壌構成粒土、または所定の土壌とは異なる土壌から採取され現地土壌構成粒土と同質である異地土壌構成粒土を含む。
(II)生育工程において生育される生物材10が、所定の土壌に生育している生育生物、または生物の分類学上、上記生育生物と同属に分類される同属生物である。
上記(I)または(II)の少なくともいずれか1つを満たす本実施形態の土壌散布材製造方法によれば、製造された土壌散布材を散布する土壌における生態系を保持する配慮をなすことができる。
より具体的には、土壌散布材製造方法が上記(I)を満たすことによって、土壌散布材が散布された土壌の性質に大きな変更を与えず土壌における生態系を保持することが可能な土壌散布材を製造可能である。より好ましくは、任意で添加された養分などを除き、実質的に、粒状担持体20が現地土壌構成粒土またはこれと同質の異地土壌構成粒土からなる。特に、現地土壌構成粒土を用いることにより、現地の土壌(所定の土壌)に対し、土壌に含まれる外来種の非種子植物の移入を阻止することができる。
また土壌散布材製造方法が上記(II)を満たすことによって、所定の土壌に対し、外来種の非種子植物の移入を阻止することができる。
土壌散布材を散布しても、所定の土壌の土壌環境および生物環境のいずれも乱すことないという観点では、(I)および(II)のいずれも満たす態様が特に好ましい。
ここで、現地土壌構成粒土と異地土壌構成粒土とが同質とは、土壌大群・土壌群の分類において同じ大群に分類されるもの、または、土性区分の分類において同じ区分に分類されるものをいう。尚、現地土壌構成粒土と異地土壌構成粒土とが同質であるか否かの定義に関する本段落の記載は、適宜他の実施例にも参照される。
本明細書において、土壌大群・土壌群とは、独立行政法人農業環境技術研究所が2011年3月に刊行した農業環境技術研究所報告第29号「包括的土壌分類第1次試案」に開示される土壌大群・土壌群(即ち、造成土大群、有機質土大群、ポドゾル大群、黒ボク土大群、暗赤色土大群、低地土大群、赤黄色土大群、停滞水成土大群、褐色森林土大群、未熟土大群)の分類を指す。
また本明細書において、土性区分とは、国際土壌学会法による土壌粒子の大きさにより、粘土、シルト、砂の含量から区分される土性区分(即ち、砂土、壌質砂土、砂壌土、壌土、シルト質壌土、砂質埴壌土、埴壌土、シルト質埴壌土、砂質埴土、軽埴土、シルト質埴土、重埴土)を指す。
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態として、本発明の土壌散布材製造方法の一実施形態について説明する。
第三実施形態にかかる土壌散布材製造方法は、本発明の土壌散布材100を製造する方法であり、採取工程と、混合工程と、粒状体成形工程と、を備える。
採取工程は、生物材10を生育させ、生育した生物材10を採取する工程である。
混合工程は、採取工程において採取された生物材10と、生物材10を担持する複数の粒状担持体20とを混合して混合物50を作製する工程である。
粒状体成形工程は、混合物50を乾燥及び粒状化することによって粒状体である土壌散布材100を成形する工程である。
本実施形態にかかる土壌散布材製造方法は、生物材10と粒状担持体20とを個別に準備し、これらを混合して混合物50を作製する点で、第二実施形態における土壌散布材製造方法とは異なる。
本実施形態にかかる土壌散布材製造方法は、採取工程を有することにより、生物材10の生育により適した培地環境で生物材10を生育させることができる。
たとえば土壌様培地以外の培地で生育することに適した生物材10を用いる場合には、本実施形態における土壌散布材製造方法は好適である。具体的には、たとえば、液体培養に適した藻類を生物材10として選択する場合などである。
藻類の液体培養は、公知の方法を適宜採用することができる。たとえば、適当な液体培地の充填された培養容器(タンクまたはプールなど)に生物材10として選択された藻類の素材を添加する。上記液体培地は、選択された藻類に適した培地を適宜採用することができる。培養は、必要に応じて撹拌するとともに、pH、温度等を経時的に測定して望ましい範囲に調整してもよい。
液体培養により増殖した藻類(生物材10)は、例えば、0.025mm以上0.125mm以下の篩目(USA規格500mesh以上120mesh以下)の篩で所望のサイズのものを選別し、または連続遠心分離機で濃縮し、精製してもよい。ただし、上述は本実施形態における採取工程を何ら限定するものではない。
混合工程を行う準備として、粒状担持体20を調製する。粒状担持体20は、第一実施形態において説明した粒状担持体20と同様のものを用いることができる。
上述のとおり準備された粒状担持体20と、採取工程の実施により得られた生物材10とを混合する混合工程を実施する。
混合手段は特に限定されないが、たとえば、粒状担持体20に対し、生物材10と、適当量の水と、を加え、撹拌装置により撹拌混合する。これによって、粒状担持体20の表面に、生物材10が付着した中間体が得られる。尚、容積比において、生物材10:粒状担持体20=10:90から20:80の範囲で調整することが好ましいがこれに限定されない。上記中間体を、40℃以下(例えば23℃±2℃)の範囲の緩やかな乾燥条件で乾燥することによって土壌散布材100を得ることができる。
本実施形態における土壌散布材製造方法の好ましい例として、下記(III)または(IV)の少なくともいずれか1つを満たす態様を挙げることができる。
(III)採取工程において生育する生物材10が、土壌散布材100の散布が予定される所定の土壌に生育している生育生物、または生物の分類学上、上記生育生物と同属に分類される同属生物である。
(IV)混合工程において用いられる粒状担持体20が、所定の土壌から採取された現地土壌構成粒土、または所定の土壌とは異なる土壌から採取され現地土壌構成粒土と同質である異地土壌構成粒土を含む。
上記(III)または(IV)の少なくともいずれか1つを満たす本実施形態の土壌散布材製造方法によれば、製造された土壌散布材を散布する土壌における生態系を保持する配慮をなすことができる。
より具体的には、土壌散布材製造方法が上記(III)を満たすことによって、所定の土壌に対し、外来種の非種子植物の移入を阻止することができる。
また、土壌散布材製造方法が上記(IV)を満たすことによって、土壌散布材が散布された土壌の性質に大きな変更を与えず土壌における生態系を保持することが可能な土壌散布材を製造可能である。より好ましくは、任意で添加された養分などを除き、実質的に、粒状担持体20が現地土壌構成粒土またはこれと同質の異地土壌構成粒土からなる。特に、現地土壌構成粒土を用いることにより、現地の土壌(所定の土壌)に対し、当該現地以外の土壌に含まれる外来種の非種子植物の移入を阻止することができる。
第三実施形態において、現地土壌構成粒土と異地土壌構成粒土とが同質とは、上述する第二実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
<第四実施形態>
次に第四実施形態として、本発明の土壌侵食防止工法の一実施態様について説明する。
本実施形態にかかる土壌侵食防止工法は、生物材を有する土壌散布材を所定の土壌に散布して、所定の土壌の表層に生物材を繁茂させることにより所定の土壌の土砂流出を防止する土壌侵食防止工法であり、土壌散布材として、本発明の土壌散布材を用いる。
本実施形態にかかる土壌侵食防止工法によれば、土壌散布材を土壌に散布した後、降雨などの影響を受けても当該土壌散布材が飛散または流出し難い。そのため、土壌に生物材を良好に繁茂させることができ土壌侵食防止効果に優れる。
本実施形態にかかる土壌侵食防止工法において用いられる土壌散布材は、第一実施形態において説明する土壌散布材100と同様であるため、ここでは土壌散布材についての詳細な説明を省略する。
本実施形態にかかる土壌侵食防止工法において、土壌散布材の散布方法は、特に限定されず、たとえば、種子や肥料の散布方法に適宜準じて行うこともできる。より具体的には、散布場所の環境または土地形状などに応じて、人力散布、ペレット散布機あるいは種子吹付機を用いてもよい。
また、散布場所の土地形状または散布場所における土壌の性質などを勘案し、種類の異なる土壌散布材を2種以上散布してもよい。ここで土壌散布材の種類が異なるとは、少なくとも、一の土壌散布材に含まれる生物材と、他の土壌散布材に含まれる生物材とが異種の生物材である場合、または、一の土壌散布材に含まれる粒状担持体と、他の土壌散布材に含まれる粒状担持体とが異種の生物材である場合を含む。ここで生物材および粒状担持体は、それぞれ第一実施形態において説明したものと同様であるため詳細な説明を省略する。
本実施形態にかかる土壌侵食防止工法は、土壌散布材の散布の前、散布と同時、または散布の後に、散布領域に対し放水を行い土壌に適度な湿度を付与してもよい。これによって、土壌散布材を土壌に対して良好に付着させ、また土壌散布材に含まれる生物材の早期の生育開始を促進することができる。
本実施形態にかかる土壌侵食防止工法は、たとえば下記(V)または(VI)の少なくともいずれか1つを満たすことが好ましい。
(V)土壌散布材に含まれる生物材10が、所定の土壌に生育している生育生物、または生物の分類学上、生育生物と同属に分類される同属生物である。
(VI)土壌散布材100に含まれる粒状担持体20が、所定の土壌から採集された現地土壌構成粒土、または所定の土壌とは異なる土壌から採取され現地土壌構成粒土と同質である異地土壌構成粒土を含む。
上記(V)または(VI)の少なくともいずれか1つを満たす本実施形態の土壌侵食防止工法によれば、散布場所の土壌における生態系を保持する配慮をなすことができる。
より具体的には、土壌侵食防止工法が上記(V)を満たすことによって、所定の土壌に対し、外来種の非種子植物の移入を阻止することができる。
また、土壌侵食防止工法が上記(VI)を満たすことによって、土壌散布材を散布した土壌の性質に大きな変更を与えず土壌における生態系を保持することが可能である。より好ましくは、任意で添加された養分などを除き、実質的に、粒状担持体20が現地土壌構成粒土またはこれと同質の異地土壌構成粒土からなる。特に、現地土壌構成粒土を用いることにより、現地の土壌(所定の土壌)に対し、土壌に含まれる外来種の非種子植物の移入を阻止することができる。
第四実施形態において、現地土壌構成粒土と異地土壌構成粒土とが同質とは、上述する第二実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
<第五実施形態>
次に第五実施形態として本発明の土壌散布材収容物セットの一実施態様について説明する。
第五実施形態にかかる土壌散布材収容物セットは、本発明の土壌散布材が収容された収容物のセットである。上記土壌散布材収容物セットは、第一収容体に第一の土壌散布材が収容された第一収容物と、第二収容体に第二の土壌散布材が収容された第二収容物と、を有する。第一の土壌散布材に含まれる第一粒状担持体と、第二の土壌散布材に含まれる第二粒状担持体と、は異質である。
第一粒状担持体と第二粒状担持体とが異質である場合とは、下記(a)から(c)のいずれかの場合である。
(a)第一粒状担持体と第二粒状担持体とが、土壌構成粒土、固形生物遺骸、加工固形物、鉱物から、それぞれ異なる1種を選択してなる場合。
(b)第一粒状担持体と第二粒状担持体とが、土壌構成粒土、固形生物遺骸、加工固形物、鉱物から、それぞれ2種以上を組み合わせてなる場合であって、互いに選択された2種以上のうちの少なくとも1つが異なる場合。
(c)第一粒状担持体と第二粒状担持体とがそれぞれ土壌構成粒土を有し、互いの土壌構成粒土が、土壌大群・土壌群の分類において異なる大群に分類されるもの、または、土性区分の分類において異なる区分に分類されるものをいう。尚、土壌大群・土壌群の分類および土性区分は、第二実施形態において説明したものと同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
かかる土壌散布材収容物セットによれば、土壌散布材の散布が予定される土壌に適合し易い粒状担持体20が含まれた土壌散布材収容物を選択することができる。粒状担持体20の異なる複数の土壌散布物収容物をセットとして扱うことにより、本発明の土壌侵食防止工法の汎用性を向上させることができる。
第一収容体および第二収容体は、土壌散布材100を収容可能な収容体であって、たとえば個別の袋状物または容器などが挙げられるが、これに限定されない。第一収容体および第二収容体に収容されるそれぞれの土壌散布材は、粒子状物である土壌散布材100が、通常、多数個収容される。
たとえば第一収容体に含まれる粒状担持体が赤黄色土大群に分類されるものである場合には、当該第一収容体に「赤土用土壌散布材」等と印字してもよい。また、第二収容体に含まれる粒状担持体が黒ボク土大群に分類されるものである場合には、当該第二収容体に「黒土用土壌散布材」等と印字してもよい。これにより、土壌散布材を使用する者は、土壌散布材を散布する予定の土壌を勘案して、より適切な方を選択することができる。
以上に本発明の実施形態について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様を含む。また本発明の土壌散布材の製造方法の例として本発明の土壌散布材製造方法(第二実施形態および第三実施形態)を説明したが、これは本発明の土壌散布材の製造方法を制限するものではなく、その他の製造方法によって製造された土壌散布材も本発明は包含する。
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)1種類の非種子植物または2種類以上の非種子植物の組み合わせである生物材と、
前記生物材を担持する粒状担持体と、を有し、
粒子状に成形されていることを特徴とする土壌散布材。
(2)前記非種子植物が、非維管束植物である上記(1)に記載の土壌散布材。
(3)前記非維管束植物が、土壌表層に生育可能な藻類、コケ類、および地衣類のいずれか一以上である上記(2)に記載の土壌散布材。
(4)前記生物材を担持する前記粒状担持体を複数有し、
複数の前記粒状担持体が、互いに不定形である上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の土壌散布材。
(5)前記粒状担持体が、土壌構成粒土、固形生物遺骸、加工固形物、鉱物の少なくともいずれか1つを含む上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の土壌散布材。
(6)複数の前記粒状担持体は、平均長径が0.1mm以上2mm以下のものを2以上有する上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の土壌散布材。
(7)複数の前記粒状担持体は、個数基準における粒子径分布において2以上のピークを有する上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の土壌散布材。
(8)前記生物材が、少なくとも下記(A)から(E)のいずれか一つの組み合わせを含む上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の土壌散布材、
(A)藻類、コケ類、シダ類、または地衣類から選択される2以上の組み合わせ、
(B)藻類であって生物の分類学上、異なる属に分類される2以上の藻類の組み合わせ、
(C)コケ類であって生物の分類学上、異なる属に分類される2以上のコケ類の組み合わせ、
(D)シダ類であって生物の分類学上、異なる属に分類される2以上のシダ類の組み合わせ、
(E)地衣類であって生物の分類学上、前記地衣類を構成する菌類が異なる属に分類される2以上の地衣類の組み合わせ。
(9)平均長径が、1mm以上20mm以下の範囲である上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の土壌散布材。
(10)上記(1)から(9)のいずれか一項に記載の土壌散布材を製造する土壌散布材製造方法であって、
土壌様培地に生物材を生育させる生育工程と、
前記土壌様培地の表面に生育した前記生物材と、前記土壌様培地と、を収穫する収穫工程と、
前記収穫工程により得られた前記生物材および前記土壌様培地を混合して混合物を作製する混合工程と、
前記混合物を乾燥および粒状化することによって粒状体である土壌散布材を成形する粒状体成形工程と、
を備えることを特徴とする土壌散布材製造方法。
(11)下記(I)または(II)の少なくともいずれか1つを満たす上記(10)に記載の土壌散布材製造方法、
(I)前記生育工程において用いられる前記土壌様培地が、前記土壌散布材の散布が予定される所定の土壌から採取された現地土壌構成粒土、または前記所定の土壌とは異なる土壌から採取され前記現地土壌構成粒土と同質である異地土壌構成粒土を含む、
(II)前記生育工程において生育される前記生物材が、前記所定の土壌に生育している生育生物、または生物の分類学上、前記生育生物と同属に分類される同属生物である。
(12)上記(1)から(9)のいずれか一項に記載の土壌散布材を製造する土壌散布材製造方法であって、
生物材を生育させ、生育した前記生物材を採取する採取工程と、
前記採取工程において採取された前記生物材と、前記生物材を担持する複数の粒状担持体とを混合して混合物を作製する混合工程と、
前記混合物を乾燥及び粒状化することによって粒状体である土壌散布材を成形する粒状体成形工程と、
を備えることを特徴とする土壌散布材製造方法。
(13)下記(III)または(IV)の少なくともいずれか1つを満たす上記(12)に記載の土壌散布材製造方法、
(III)前記採取工程において生育する前記生物材が、前記土壌散布材の散布が予定される所定の土壌に生育している生育生物、または生物の分類学上、前記生育生物と同属に分類される同属生物である、
(IV)前記混合工程において用いられる粒状担持体が、前記所定の土壌から採取された現地土壌構成粒土、または前記所定の土壌とは異なる土壌から採取され前記現地土壌構成粒土と同質である異地土壌構成粒土を含む。
(14)生物材を有する土壌散布材を所定の土壌に散布して、前記所定の土壌の表層に前記生物材を繁茂させることにより前記所定の土壌の土砂流出を防止する土壌侵食防止工法であって、
前記土壌散布材が、上記(1)から(9)のいずれか一項に記載されていることを特徴とする土壌侵食防止工法。
(15)下記(V)または(VI)の少なくともいずれか1つを満たす上記(14)に記載の土壌侵食防止工法、
(V)前記土壌散布材に含まれる前記生物材が、前記所定の土壌に生育している生物、または生育生物の分類学上、前記生育生物と同属に分類される同属生物である、
(VI)前記土壌散布材に含まれる前記粒状担持体が、前記所定の土壌から採集された現地土壌構成粒土、または前記所定の土壌とは異なる土壌から採取され前記現地土壌構成粒土と同質である異地土壌構成粒土を含む。
(16)上記(1)から(9)のいずれか一項に記載の土壌散布材が収容された収容物のセットであって
第一収容体に第一の前記土壌散布材が収容された第一収容物と、
第二収容体に第二の前記土壌散布材が収容された第二収容物と、を有し、
前記第一の土壌散布材に含まれる第一粒状担持体と、前記第二の土壌散布材に含まれる第二粒状担持体と、が異質であることを特徴とする土壌散布材収容物セット。
10・・・生物材
20・・・粒状担持体
22・・・大径粒状担持体
24、34・・・ピークトップ
26・・・空隙
32・・・小径粒状担持体
40、42・・・土壌様培地
50・・・混合物
52・・・混合物前駆体
60・・・ヘラ
62・・・容器
63・・・撹拌用具
64・・・枠体
66・・・孔
100・・・土壌散布材
200・・・培養装置
202・・・培養容器
204・・・壁
206・・・培養室
208・・・水層
210・・・透水シート
212・・・透水性板
214・・・連通管
216・・・貯水槽
218・・・水
220・・・浮き
222・・・水位調整装置
224・・・給水管

Claims (5)

  1. 1種類の非種子植物または2種類以上の非種子植物の組み合わせである生物材と、
    前記生物材を担持する粒状担持体と、を有し、
    粒子状に成形されていることを特徴とする土壌散布材
    を製造する土壌散布材製造方法であって、
    土壌様培地に生物材を生育させる生育工程と、
    前記土壌様培地の表面に生育した前記生物材と、前記土壌様培地と、を収穫する収穫工程と、
    前記収穫工程により得られた前記生物材および前記土壌様培地を混合して混合物を作製する混合工程と、
    前記混合物を乾燥および粒状化することによって粒状体である土壌散布材を成形する粒状体成形工程と、
    を備えることを特徴とする土壌散布材製造方法。
  2. 下記(I)または(II)の少なくともいずれか1つを満たす請求項1に記載の土壌散布材製造方法、
    (I)前記生育工程において用いられる前記土壌様培地が、前記土壌散布材の散布が予定される所定の土壌から採取された現地土壌構成粒土、または前記所定の土壌とは異なる土壌から採取され前記現地土壌構成粒土と同質である異地土壌構成粒土を含む、
    (II)前記生育工程において生育される前記生物材が、前記所定の土壌に生育している生育生物、または生物の分類学上、前記生育生物と同属に分類される同属生物である。
  3. 1種類の非種子植物または2種類以上の非種子植物の組み合わせである生物材と、
    前記生物材を担持する粒状担持体と、を有し、
    粒子状に成形されていることを特徴とする土壌散布材
    を製造する土壌散布材製造方法であって、
    生物材を生育させ、生育した前記生物材を採取する採取工程と、
    前記採取工程において採取された前記生物材と、前記生物材を担持する複数の粒状担持体とを混合して混合物を作製する混合工程と、
    前記混合物を乾燥及び粒状化することによって粒状体である土壌散布材を成形する粒状体成形工程と、
    を備え、下記(III)または(IV)の少なくともいずれか1つを満たすことを特徴とする土壌散布材製造方法、
    (III)前記採取工程において生育する前記生物材が、前記土壌散布材の散布が予定される所定の土壌に生育している生育生物、または生物の分類学上、前記生育生物と同属に分類される同属生物である、
    (IV)前記混合工程において用いられる粒状担持体が、前記所定の土壌から採取された現地土壌構成粒土、または前記所定の土壌とは異なる土壌から採取され前記現地土壌構成粒土と同質である異地土壌構成粒土を含む。
  4. 生物材を有する土壌散布材を所定の土壌に散布して、前記所定の土壌の表層に前記生物材を繁茂させることにより前記所定の土壌の土砂流出を防止する土壌侵食防止工法であって、
    前記土壌散布材が、1種類の非種子植物または2種類以上の非種子植物の組み合わせである生物材と、
    前記生物材を担持する粒状担持体と、を有し、
    粒子状に成形されていることを特徴とする土壌散布材
    であることを特徴とする土壌侵食防止工法。
  5. 下記(V)または(VI)の少なくともいずれか1つを満たす請求項4に記載の土壌侵食防止工法、
    (V)前記土壌散布材に含まれる前記生物材が、前記所定の土壌に生育している生育生物、または生物の分類学上、前記生育生物と同属に分類される同属生物である、
    (VI)前記土壌散布材に含まれる前記粒状担持体が、前記所定の土壌から採集された現地土壌構成粒土、または前記所定の土壌とは異なる土壌から採取され前記現地土壌構成粒土と同質である異地土壌構成粒土を含む。
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