JP6394128B2 - 差幅調整方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アンギュラ玉軸受の差幅を調整する方法に関する。
アンギュラ玉軸受は、外輪、内輪、複数の玉、及びこれら玉を保持する環状の保持器を備えており、各玉は外輪軌道及び内輪軌道に対して接触角を有して接触し、アキシャル荷重及びラジアル荷重の双方を負荷することができる。
アンギュラ玉軸受は2つを軸方向に並べて使用されることがあり、この場合、並べたアンギュラ玉軸受に対してアキシャル方向(スラスト方向)の予圧を付与することにより軸受全体としての剛性を確保している。また、アンギュラ玉軸受を単独で用いる場合であっても、アキシャル方向の予圧を付与し軸受剛性を確保している。
しかし、アンギュラ玉軸受の差幅が、予圧等級に応じた許容範囲内にない場合、耐荷重や振動特性等の軸受性能が低下する。
このため、アンギュラ玉軸受の製造工程において、差幅を測定し、差幅が所定の範囲以内となるように生産管理する必要がある。例えば、特許文献1では、アンギュラ玉軸受を組み立てた状態で、その軸受の一方の端面を基準面に接触させ、他方の端面側において差幅を測定し、その差幅が基準値から許容範囲内となるように砥石で内輪又は外輪の端面を研削している。
特開2008−290205号公報
従来の方法では、アンギュラ玉軸受を組み立てた状態で差幅を測定し、更にその状態で内輪又は外輪の研削を行っているため、研削屑等の異物が玉の表面や内輪軌道及び外輪軌道に付着するおそれがある。なお、特許文献1では、研削水により洗浄を行いながら研削を実施して異物の付着を抑制しようとしているが、組み立て状態では軸受内部に研削液が滞留しやすく洗浄が不十分であって、異物は(多少減少するものの)残留する可能性が高い。軌道等に異物が残存していると、使用の際に騒音が発生したり、軸受寿命が低下したりする。
つまり、従来では、アンギュラ玉軸受を組み立てした後で、差幅の測定が行われ、差幅を調整するための加工が行われる。
そこで、本発明は、アンギュラ玉軸受を組み立てする前に、差幅を調整するための加工を行う差幅調整方法を提供することを目的とする。
本発明は、アンギュラ玉軸受における外輪の軸方向一方側の第1外輪端面と内輪の軸方向一方側の第1内輪端面との間の差幅を調整する差幅調整方法であって、前記差幅を測定する差幅測定工程と、前記差幅測定工程において求められた前記差幅と目標差幅とを比較して差幅加工量を求める加工量決定工程と、前記差幅加工量について研削を行うことで前記差幅を調整する加工工程とを備え、前記加工工程では、前記第1内輪端面と反対側の第2内輪端面、及び前記第1外輪端面を共通する基準平面上に位置させ、前記第1外輪端面と反対側の第2外輪端面、及び前記第1内輪端面を研削面として、当該第1内輪端面を前記差幅加工量について研削するまで、前記外輪となる外輪ワーク及び前記内輪となる内輪ワークの前記研削面を研削する。
本発明によれば、アンギュラ玉軸受を組み立てする前に、差幅を調整するための加工を行うことが可能となる。つまり、分解状態にある外輪ワーク及び内輪ワークに対して差幅を調整するための研削が行われる。このため、研削後に、外輪ワーク及び内輪ワークを個別に洗浄することができ、洗浄を行い易く、研削屑等の異物を除去することができる。
なお、第2外輪端面及び第1内輪端面を研削面として外輪ワーク及び内輪ワークを研削することで、外輪ワーク及び内輪ワークは軸方向に同じ長さとなり、これらを外輪及び内輪として組み立てて得たアンギュラ玉軸受では、軸方向一方側の差幅と、軸方向他方側の差幅とを等しくすることができる。このようにして差幅が調整されて組み立てられたアンギュラ玉軸受は、背面組み合わせ用及び正面組み合わせ用の双方に用いることが可能となり、組み合わせの自由度が高いアンギュラ玉軸受となる。
また、前記差幅調整方法は、更に、前記第2外輪端面及び前記第2内輪端面を共通する基準平面上に位置させ、前記第1外輪端面及び前記第1内輪端面を仕上げ加工面として、前記アンギュラ玉軸受の軸方向長さを目標長さとするために、前記外輪ワーク及び前記内輪ワークの前記仕上げ加工面を研削する仕上げ工程を備えているのが好ましい。
この場合、アンギュラ玉軸受の軸方向長さを目標長さとすることができる。また、前記加工工程によれば、外輪ワーク及び内輪ワークの軸方向長さは同じ状態にあり、その後の、仕上げ工程では、第1外輪端面及び第1内輪端面を仕上げ加工面として、外輪ワーク及び内輪ワークは同じ加工量についての研削が行われる。このため、前記加工工程で得られた差幅は維持される。さらに、この仕上げ工程によれば、外輪ワーク及び内輪ワークの軸方向長さは同じに維持され、これらを外輪及び内輪として組み立てて得たアンギュラ玉軸受では、軸方向一方側の差幅と、軸方向他方側の差幅とは等しくなる。
また、前記差幅測定工程は、外輪治具を含む内輪測定用の治具セットに対して内輪マスタを組み合わせることで得られる当該外輪治具と当該内輪マスタとの軸方向位置関係を示すマスタ基準値を基準として、当該内輪測定用の治具セットに対して前記内輪となる内輪ワークを組み合わせることにより前記外輪治具と当該内輪ワークとの軸方向位置関係を示す内輪測定値を求める内輪測定工程と、内輪治具を含む外輪測定用の治具セットに対して外輪マスタを組み合わせることで得られる当該内輪治具と当該外輪マスタとの軸方向位置関係を示すマスタ基準値を基準として、当該外輪測定用の治具セットに対して前記外輪となる外輪ワークを組み合わせることにより前記内輪治具と当該外輪ワークとの軸方向位置関係を示す外輪測定値を求める外輪測定工程と、前記内輪測定値、前記外輪測定値、前記内輪マスタと前記外輪マスタとを組み合わせた場合のマスタ差幅、及び、前記治具セットを用いることによる誤差を補正するための補正値に基づいて前記差幅を求める差幅算出工程とを備えているのが好ましい。
この差幅測定工程によれば、内輪測定工程では、内輪マスタと内輪ワークとのそれぞれを、共通する内輪測定用の治具セットに対して組み合わせて、前記内輪測定値が、内輪マスタとの対比で求められる。外輪測定工程では、外輪マスタと外輪ワークとのそれぞれを、共通する外輪測定用の治具セットに対して組み合わせて、前記外輪測定値が、外輪マスタとの対比で求められる。そして、差幅算出工程では、内輪測定値、外輪測定値、内輪マスタと外輪マスタとを組み合わせた場合のマスタ差幅、及び、治具セットを用いたことによる誤差を補正するための補正値に基づいて、外輪の軸方向一方側の第1外輪端面と内輪の軸方向一方側の第1内輪端面との間の差幅を求めることができる。
このように、アンギュラ玉軸受を組み立てする前に、つまり、内輪ワークと外輪ワークとを分解した状態で差幅の測定を行うことが可能となる。
本発明によれば、アンギュラ玉軸受を組み立てする前に、差幅を調整するための加工を行うことが可能となる。つまり、分解状態にある外輪ワーク及び内輪ワークに対して差幅を調整するための研削が行われる。このため、研削後に、外輪ワーク及び内輪ワークを個別に洗浄することができ、洗浄を行い易く、研削屑等の異物を除去することができる。この結果、アンギュラ玉軸受が回転した際に、騒音が発生したり、軸受寿命が低下したりするという不具合の発生確率を低下することが可能となる。
アンギュラ玉軸受の縦断面図である。 差幅調整方法のフロー図である。 内輪ワーク及び外輪ワークの軌道径の説明図である。 軌道径の測定方法の説明図である。 内輪測定工程で用いられる測定装置の説明図である。 内輪測定用の治具セットに対して、内輪ワーク(及び内輪マスタ)を組み合わせて行う測定方法を説明する説明図である。 内輪測定工程の説明図である。 外輪測定工程で用いられる測定装置の説明図である。 外輪測定用の治具セットに対して、外輪ワーク(及び外輪マスタ)を組み合わせて行う測定方法を説明する説明図である。 外輪測定工程の説明図である。 内輪測定値の説明図である。 軸方向距離の説明図である。 外輪測定値の説明図である。 マスタ差幅の説明図である。 内輪ワーク及び外輪ワークを模式的に示している加工工程の説明図であり、(A)が研削前の状態を示し、(B)が研削後の状態を示している。 加工工程を終えた内輪ワーク及び外輪ワークを内輪及び外輪として組み立てアンギュラ玉軸受を構成する場合の説明図である。 内輪ワーク及び外輪ワークを模式的に示している仕上げ工程の説明図であり、(A)が研削前の状態を示し、(B)が研削後の状態を示している。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1. アンギュラ玉軸受〕
まず、本発明の差幅調整方法により差幅の調整を行う対象となるアンギュラ玉軸受について説明する。
図1に示すように、アンギュラ玉軸受1は、内輪15、外輪16、複数の玉2、及びこれら玉2を保持する環状の保持器3を備えている。内輪15の外周面には、玉2が転動する軌道溝(以下、内輪軌道5bという。)が形成されており、外輪16の内周面には、玉2が転動する軌道溝(以下、外輪軌道6bという)が形成されている。各玉2は内輪軌道5b及び外輪軌道6bに対して接触角αを有して接触しており、アンギュラ玉軸受1はアキシャル荷重及びラジアル荷重の双方を負荷することができる。
そして、このアンギュラ玉軸受1の差幅δが予圧等級に応じた許容範囲内にない場合、耐荷重や振動特性等の軸受性能が低下することから、この差幅δを管理する必要がある。そこで、以下に説明する差幅調整方法により差幅δの寸法管理が行われる。なお、本実施形態で調整が行われる対象となる差幅δは、外輪16となる外輪ワーク6の軸方向一方側(図1において左側)の第1外輪端面(以下、外輪大端面6−1という)と、内輪15となる内輪ワーク5の軸方向一方側(図1において左側)の第1内輪端面(以下、内輪小端面5−1という)との間の軸方向についての寸法である。
また、本実施形態では、外輪ワーク6の軸方向他方側(図1において右側)の端面が、第2外輪端面(以下、外輪小端面6−2という)であり、内輪ワーク5の軸方向他方側(図1において右側)の端面が、第2内輪端面(以下、内輪大端面5−2という)である。
〔2. 差幅調整方法について〕
差幅調整方法には、図2に示すように、前記差幅δを測定する差幅測定工程St11、この差幅測定工程St11において求めた前記差幅δと目標差幅δ0とを比較して、差幅加工量(C:図15参照)を求める加工量決定工程St12、及び、この加工量決定工程St12で求められた差幅加工量(C)について研削を行うことで前記差幅δを調整する加工工程St13が含まれる。また、本実施形態の差幅調整方法には、更に、アンギュラ玉軸受1の軸方向長さWを目標長さW0とするために加工を行う仕上げ工程St14が含まれる。以下、各工程に関して説明する。
〔3. 用語の定義〕
まず、本実施形態の差幅調整方法(特に、差幅測定工程St11における差幅測定方法)で用いられる内輪ワーク5、外輪ワーク6、治具セット10,20、内輪マスタMi、及び外輪マスタMoについての説明を行う。
・内輪ワーク5:アンギュラ玉軸受1の内輪15となるもの。
・外輪ワーク6:アンギュラ玉軸受1の外輪16となるもの。
・内輪測定用の治具セット10(図7参照):内輪ワーク5に関する内輪測定値Aを求めるために用いられ、外輪治具11、転動体治具12及び保持器治具13を含む。
・・外輪治具11:外輪16の設計値に基づいて(一部を除いて)設計値とおりとなるように作製され、事前に各寸法が取得済みである。
・・転動体治具12:玉2の設計値に基づいて設計値とおりとなるように作製され、事前に寸法(直径)が取得済みである。
・・保持器治具13:保持器3の設計値に基づいて(一部を除いて)設計値とおりとなるように作製されたものである。
・外輪測定用の治具セット20(図10参照):外輪ワーク6に関する外輪測定値Bを求めるために用いられ、内輪治具21、転動体治具22及び保持器治具23を含む。
・・内輪治具21:内輪15の設計値に基づいて(一部を除いて)設計値とおりとなるように作製され、事前に各寸法が取得済みである。
・・転動体治具22:玉2の設計値に基づいて設計値とおりとなるように作製され、事前に寸法(直径)が取得済みである。
・・保持器治具23:保持器3の設計値に基づいて(一部を除いて)設計値とおりとなるように作製されたものである。
・内輪マスタMi(図7参照):内輪15の設計値に基づいて設計値とおりとなるように作製され、事前に各寸法が取得済みである。
・外輪マスタMo(図10参照):外輪16の設計値に基づいて設計値とおりとなるように作製され、事前に各寸法が取得済みである。
〔4. 差幅測定工程St11〕
本実施形態に係る差幅測定方法には、図2に示すように、準備工程St1、玉サイズ決定工程St2、内輪測定工程St3、外輪測定工程St4、及び差幅算出工程St5が含まれる。なお、各工程は図2に示す順に行われるが、内輪測定工程St3と外輪測定工程St4とはいずれを先に行ってもよい。
これら各工程を含む差幅測定方法は、アンギュラ玉軸受1を図1に示すような組み立てた状態とする前に、つまり、内輪15及び外輪16等が分解されている状態で行われる。そして、この差幅測定方法では、内輪15を内輪ワーク5と呼び、外輪16を外輪ワーク6と呼ぶ。
〔4.1 準備工程St1〕
準備工程St1では、図3に示す内輪ワーク5の軌道径Di及び外輪ワーク6の軌道径Doが測定される。軌道径Diは、内輪軌道5bの溝底における直径であり、軌道径Doは、外輪軌道6bの溝底における直径である。
内輪マスタMiの軌道径及び外輪マスタMoの軌道径が既知の値(実測値)であることから、内輪ワーク5の軌道径Diの測定は内輪マスタMiの軌道径との比較により行われ、また、外輪ワーク6の軌道径Doの測定は外輪マスタMoの軌道径との比較により行われる。
軌道径Diの測定方法の一例を説明する。図4(A)に示すように、内輪ワーク5を二つの固定側の支点S1,S2で下から支持し、接触子S3を上から内輪軌道5bの溝底に接触させる。この接触子S3の位置に応じて出力が変化する変位計35(図4(B)参照)から、内輪軌道5bの溝底の径方向についての位置に関する計測値を取得する。そして、このような計測値の取得を内輪マスタMiについても同様に行う。これにより、内輪ワーク5の計測値と内輪マスタMiの計測値との比較により軌道径Diを取得することができる。なお、外輪ワーク6の軌道径Doについても、支点S1,S2及び接触子S3を内周面から接触させることで、同様に測定することが可能である。
準備工程St1では、内輪ワーク5の内輪軌道5bの曲率半径Gi(図1参照)、及び、外輪ワーク6の外輪軌道6bの曲率半径Go(図1参照)が取得される。これらの曲率半径Gi,Goは、内輪ワーク5及び外輪ワーク6を製造する数値制御(NC)装置付き工作機械が内輪軌道5b及び外輪軌道6bを形成する際に用いられる値である。
更に、後述する内輪測定工程St3及び外輪測定工程St4では、内輪マスタMi、外輪マスタMo、内輪測定用の治具セット10に含まれる外輪治具11、及び、外輪測定用の治具セット20に含まれる内輪治具21が用いられる。そこで、これら各部材における内輪軌道の曲率半径(Gi)、及び、外輪軌道の曲率半径(Go)も取得される。これらの曲率半径の各値についても同様に数値制御(NC)装置付き工作機械が各内輪軌道(各外輪軌道)を形成する際に用いられる値とすることができる。
また、内輪マスタMi及び外輪マスタMoの軌道径も求められている。この軌道径については、寸法が既知であるリングゲージとの比較により、内輪ワーク5及び外輪ワーク6と同様の方法(図4参照)により測定可能である。
また、外輪治具11及び内輪治具21の軌道径についても、内輪ワーク5及び外輪ワーク6と同様の方法(図4参照)により測定される。
更に、内輪ワーク5の内輪軌道5bの曲率中心Ziと、外輪ワーク6の外輪軌道6bの曲率中心Zoとの軸方向についての距離X(図1参照)についても求められる。更に、後に説明するが、内輪ワーク5、外輪ワーク6、内輪マスタMi、外輪マスタMo、外輪治具11、及び内輪治具21がそれぞれ組み合わせて用いられる場合の、内輪軌道の曲率中心と外輪軌道の曲率中心との軸方向についての距離(X1、X2、X3、X4、X5)についても求められる。なお、内輪軌道5bの曲率中心Ziと外輪軌道6bの曲率中心Zoとの軸方向についての距離Xの他、前記距離(X1、X2、X3、X4、X5)を取得する方法については、後に説明する。
また、この準備工程St1では、内輪マスタMiと外輪マスタMoとを組み合わせた場合(図14参照)の差幅(マスタ差幅)δ1が取得される。つまり、外輪マスタMoの軸方向一方側の端面(大端面)Mo−1と、内輪マスタMiの軸方向一方側の端面(小端面)Mi−1との間の軸方向についての寸法を、マスタ差幅δ1として求める。このマスタ差幅δ1は、内輪マスタMiと外輪マスタMoとを、設計値とおりに作製された玉(転動体マスタ)を介して組み合わせ、アンギュラ玉軸受を構成し、実測することで求められる。
〔4.2 玉サイズ決定工程St2〕
玉サイズ決定工程St2では、接触角α(図1参照)に関して設計値(図面規格)を満足するための玉2のサイズ(直径Bd)が算出される。この算出のために、準備工程St1により取得された内輪ワーク5の軌道径Di(図3参照)及び外輪ワーク6の軌道径Do(図3参照)が用いられる。例えば、接触角αの設計許容値(設計値)が20°±2°である場合、接触角αが設計許容値の中央値である20°になるような玉2の直径Bdを求める。
ここで接触角αは次の式(1)により表される。
cosα=d/γ ・・・(1)
ただし、d=Gi+Go−(Do−Di)/2
γ=Gi+Go−Bd
Gi:内輪軌道5bの曲率半径
Go:外輪軌道6bの曲率半径
内輪軌道5bの曲率半径Gi及び外輪軌道6bの曲率半径Goは、前記準備工程St1において既に取得されている値である。
前記式(1)に、α(=20°)、Gi、Go、Do及びDiの各値を代入することで、接触角α=20°となるための玉2の直径Bdを求めることが可能となる。つまり、求められた直径Bdの玉2を、内輪ワーク5と外輪ワーク6との間に介在させれば、接触角α=20°のアンギュラ玉軸受1が得られる。
なお、内輪マスタMiと外輪マスタMoとの組み合わせに用いられる転動体マスタ(玉)の直径、内輪測定用の治具セット10に含まれる転動体治具12(玉)の直径、及び、外輪測定用の治具セット20に含まれる転動体治具22(玉)の直径は、実測することで求められる。この直径の測定は、前記準備工程St1で行われる。
〔4.3 内輪測定工程St3〕
内輪測定工程St3では、内輪測定用の治具セット10(図7参照)に対して、内輪ワーク5を組み合わせた場合と、内輪マスタMiを組み合わせた場合とで、所要の測定値についての比較を行い、後述する内輪測定値Aが求められる。図5は、内輪測定工程St3で用いられる測定装置30の説明図である。図6は、内輪測定用の治具セット10に対して内輪ワーク5(及び内輪マスタMi)を組み合わせて行う測定方法を説明する説明図である。
図5において、治具セット10の外輪治具11は装置ベース34に固定状態にある。この状態で、内輪ワーク5をシリンダ31により下方へ変位させ、図6(A)から図6(B)に示すように、固定状態にある外輪治具11を含む治具セット10に対して内輪ワーク5を組み合わせ、組み立て状態とする。この際、アキシャル方向の荷重が付与される。この組み立て状態における外輪治具11と内輪ワーク5との軸方向についての相対位置(ワーク位置という)を、測定器(変位センサ)32により測定する。
また、内輪ワーク5の代わりに、この治具セット10に対して内輪マスタMiを組み付け、内輪ワーク5の場合と同様の操作を行う。つまり、固定状態にある外輪治具11を含む治具セット10に対して、内輪マスタMiをシリンダ31により変位させ、組み立て状態とする。この際、同じアキシャル方向の荷重が付与される。この組み立て状態における外輪治具11と内輪マスタMiとの軸方向についての相対位置(マスタ位置という)を、測定器(変位センサ)32により測定する。
このように、内輪ワーク5及び内輪マスタMiそれぞれを、共通する内輪測定用の治具セット10に対して適用すると、内輪ワーク5を測定対象として、この内輪ワーク5における内輪小端面5−1から転動体治具(玉)12との接触位置p1までの距離L2(図6(B)参照)を測定した場合と、内輪マスタMiを測定対象として、この内輪マスタMiにおける小端面Mi−1から転動体治具(玉)12との接触位置p1までの距離L1(図6(B)参照)を測定した場合とで、小端面から玉との接触位置までの距離に関して異なる値が測定される。これは、内輪ワーク5と内輪マスタMiとは完全に同じ寸法に形成されておらず、それぞれには設計値に対して製造誤差が発生しているためである。
ここで、図7に示すように(図7では、内輪ワーク5を破線で示している。)、内輪ワーク5を用いた場合の前記距離L2と、内輪マスタMiを用いた場合の前記距離L1との差(L2−L1)は、内輪ワーク5を用いた場合の内輪ワーク5の内輪小端面5−1と外輪治具11の大端面11−1との差幅δ3と、内輪マスタMiを用いた場合の内輪マスタMiの小端面Mi−1と外輪治具11の大端面11−1との差幅δ2との差(δ3−δ2)と、等しくなる(L2−L1=δ3−δ2)。
そして、図5に示す測定装置30を用いて測定した前記ワーク位置と前記マスタ位置との差は、「内輪ワーク5を用いた場合の前記距離L2と、内輪マスタMiを用いた場合の前記距離L1との差(L2−L1)」と等しく、また、「内輪ワーク5を用いた場合の前記差幅δ3と、内輪マスタMiを用いた場合の前記差幅δ2との差(δ3−δ2)」と等しくなる。
以上より、本実施形態では、内輪測定用の治具セット10に対して内輪マスタMiを組み合わせることで得られる外輪治具11と内輪マスタMiとの軸方向位置関係を示すマスタ基準値として、前記マスタ位置(距離L1)が測定される。そして、この内輪測定用の治具セット10に対して内輪ワーク5を組み合わせることにより、前記マスタ位置(距離L1)を基準として、外輪治具11と内輪ワーク5との軸方向位置関係を示す内輪測定値Aが求められる。この内輪測定値Aは、本実施形態の場合、内輪測定用の治具セット10と組み合わせた場合に測定された内輪ワーク5の内輪小端面5−1から転動体治具(玉)12との接触位置p1までの距離L2と、内輪測定用の治具セット10と組み合わせた場合に測定された内輪マスタMiの小端面Mi−1から転動体治具(玉)12との接触位置p1までの距離L1との差である。
なお、測定装置30を用いて測定した前記ワーク位置及び前記マスタ位置の情報は、この測定装置30が備えている演算装置33(図5参照)に入力され、これら情報から「内輪ワーク5を用いた場合の前記距離L2と、内輪マスタMiを用いた場合の前記距離L1との差(L2−L1)」又は「内輪ワーク5を用いた場合の前記差幅δ3と、内輪マスタMiを用いた場合の前記差幅δ2との差(δ3−δ2)」が、前記内輪測定値Aとして演算装置33によって求められる。演算装置33は、例えば、プログラマブルロジックコントローラから構成される。
〔4.4 外輪測定工程St4〕
外輪測定工程St4では、外輪測定用の治具セット20(図10参照)に対して、外輪ワーク6を組み合わせた場合と、外輪マスタMoを組み合わせた場合とで、所要の測定値についての比較を行い、後述する外輪測定値Bが求められる。図8は、外輪測定工程St4で用いられる測定装置40の説明図である。図9は、外輪測定用の治具セット20に対して外輪ワーク6(及び外輪マスタMo)を組み合わせて行う測定方法を説明する説明図である。
図8において、外輪ワーク6は装置ベース44に固定状態にある。この状態で、治具セット20(内輪治具21)をシリンダ41により下方へ変位させ、図9(A)から図9(B)に示すように、固定状態にある外輪ワーク6に対して内輪治具21を含む治具セット20を組み合わせ、組み立て状態とする。この際、内輪測定工程St3の場合と同じアキシャル方向の荷重が付与される。この組み立て状態における外輪ワーク6と内輪治具21との軸方向についての相対位置(ワーク位置という)を、測定器(変位センサ)42により測定する。
また、外輪ワーク6の代わりに、この治具セット20に対して外輪マスタMoを組み付け、外輪ワーク6の場合と同様の操作を行う。つまり、固定状態にある外輪マスタMoに対して内輪治具21をシリンダ41により変位させ、組み立て状態とする。この際、同じアキシャル方向の荷重が付与される。この組み立て状態における外輪マスタMoと内輪治具21との軸方向についての相対位置(マスタ位置という)を、測定器(変位センサ)42により測定する。
このように、外輪ワーク6及び外輪マスタMoそれぞれを、共通する外輪測定用の治具セット20に対して適用すると、外輪ワーク6を測定対象として、この外輪ワーク6の外輪大端面6−1から転動体治具(玉)22との接触位置p3までの距離L4(図9(B)参照)を測定した場合と、外輪マスタMoを測定対象として、この外輪マスタMoの大端面Mo−1から転動体治具(玉)22との接触位置p3までの距離L3(図9(B)参照)を測定した場合とで、大端面から玉との接触位置までの距離に関して、異なる値が測定される。これは、外輪ワーク6と外輪マスタMoとは完全に同じ寸法に形成されておらず、それぞれには設計値に対して製造誤差が発生しているためである。
ここで、図10に示すように(図10では、外輪ワーク6を破線で示している。)、外輪ワーク6を用いた場合の前記距離L4と、外輪マスタMoを用いた場合の前記距離L3との差(L4−L3)は、外輪ワーク6を用いた場合の外輪ワーク6の外輪大端面6−1と内輪治具21の小端面21−1との差幅δ5と、外輪マスタMoを用いた場合の外輪マスタMoの大端面Mo−1と内輪治具21の小端面21−1との差幅δ4との差(δ4−δ5)と、等しくなる(L4−L3=δ4−δ5)。
そして、図8に示す測定装置40を用いて測定した前記ワーク位置と前記マスタ位置との差は、「外輪ワーク6を用いた場合の前記距離L4と、外輪マスタMoを用いた場合の前記距離L3との差(L4−L3)」と等しく、また、「外輪ワーク6を用いた場合の前記差幅δ5と、外輪マスタMoを用いた場合の前記差幅δ4との差(δ4−δ5)」と等しくなる。
以上より、本実施形態では、外輪測定用の治具セット20に対して外輪マスタMoを組み合わせることで得られる内輪治具21と外輪マスタMoとの軸方向位置関係を示すマスタ基準値として、前記マスタ位置(距離L3)が測定される。そして、この外輪測定用の治具セット20に対して外輪ワーク6を組み合わせることにより、前記マスタ位置(距離L3)を基準として、内輪治具20と外輪ワーク6との軸方向位置関係を示す外輪測定値Bが求められる。この外輪測定値Bは、本実施形態の場合、外輪測定用の治具セット20と組み合わせた場合に測定された外輪ワーク6の外輪大端面6−1から転動体治具(玉)22との接触位置p3までの距離L4と、外輪測定用の治具セット20と組み合わせた場合に測定された外輪マスタMoの大端面Mo−1から転動体治具(玉)22との接触位置p3までの距離L3との差である。
なお、測定装置40を用いて測定した前記ワーク位置及び前記マスタ位置の情報は、この測定装置40が備えている演算装置43(図8参照)に入力され、これら情報から「外輪ワーク6を用いた場合の前記距離L4と、外輪マスタMoを用いた場合の前記距離L3との差(L4−L3)」又は「外輪ワーク6を用いた場合の前記差幅δ5と、外輪マスタMoを用いた場合の前記差幅δ4との差(δ4−δ5)」が、前記外輪測定値Bとして演算装置43によって求められる。演算装置43は、例えば、プログラマブルロジックコントローラから構成される。
〔4.5 差幅算出工程St5〕
差幅算出工程St5では、図1に示すアンギュラ玉軸受1の差幅δが求められる。この差幅δは、外輪16の軸方向一方側の端面(外輪大端面)6−1と、内輪15の軸方向一方側の端面(内輪小端面)5−1との間の軸方向についての寸法である。差幅δは、後に説明する式(2)により、前記内輪測定値A、前記外輪測定値B、マスタ差幅δ1、及び、補正値X0に基づいて、コンピュータ等の演算装置により演算で求められる。なお、この演算装置は、前記測定装置30,40が備えている演算装置33,43と兼用されていてもよい。
以下において、その具体的方法について説明する。なお、以下の説明において、特に記載していない場合、処理の主体は前記演算装置である。
前記内輪測定値A、前記外輪測定値B、準備工程St1において取得された各値は、前記演算装置に入力され、記憶されている。また、演算装置には、次の式(2)により差幅δを算出するためのプログラムが記憶されている。
δ=(内輪測定値A)−(外輪測定値B)+δ1−X0 ・・・(2)
ただし、δ1:マスタ差幅
X0:補正値
このように、差幅算出工程St5では、内輪測定値A、外輪測定値B、内輪マスタMiと外輪マスタMoとを組み合わせた場合のマスタ差幅δ1、及び、補正値X0に基づいて、前記差幅δを求めることができる。
前記内輪測定工程St3及び前記外輪測定工程St4では、実際のアンギュラ玉軸受1(図1参照)を構成する内輪15及び外輪16を組み合わせて測定を行うのではなく、内輪15となる内輪ワーク5を内輪測定用の治具セット10と組み合わせて測定を行っており、また、外輪16となる外輪ワーク6を外輪測定用の治具セット20と組み合わせて測定を行っている。したがって、内輪15(内輪ワーク5)と外輪16(外輪ワーク6)とを組み合わせて測定を行うことと比較して、各測定に誤差が生じる。
そこで、これら内輪測定用の治具セット10及び外輪測定用の治具セット20を用いることによる誤差を補正するために、補正値X0を必要としている。なお、補正値X0については、後に説明するが、次の式により定義され、演算で求められる値である。
X0=X1−X2+X3−X4+X5−X
以上のように、本実施形態の差幅測定方法によれば、内輪測定工程St3では、内輪マスタMiと内輪ワーク5とのそれぞれを、共通する内輪測定用の治具セット10に対して組み合わせて、内輪ワーク5の前記内輪測定値Aを、内輪マスタMiとの対比で求めることができる。また、外輪測定工程St4では、外輪マスタMoと外輪ワーク6とのそれぞれを、共通する外輪測定用の治具セット20に対して組み合わせて、外輪ワーク6の外輪測定値Bを、外輪マスタMoとの対比で求めることができる。
そして、差幅算出工程St5では、測定して得られた内輪測定値A及び外輪測定値B、事前に求められている内輪マスタMiと外輪マスタMoとを組み合わせた場合のマスタ差幅δ1、及び、事前に求められている内輪測定用及び外輪測定用の治具セット10,20を用いたことによる補正値X0に基づいて、外輪ワーク6の軸方向一方側の端面(外輪大端面)6−1と内輪ワーク5の軸方向一方側の端面(内輪小端面)5−1との間の差幅δを求めることができる。
このように、アンギュラ玉軸受1を組み立てする前に、つまり、内輪15(内輪ワーク5)と外輪16(外輪ワーク6)とを分解した状態で差幅δの測定を行うことが可能となる。
なお、仮に、内輪ワーク5が内輪マスタMiと同一形状に精度よく作製されていて、外輪ワーク6が外輪マスタMoと同一形状に精度よく作製されている場合、内輪ワーク5を用いた場合の差幅δ2と内輪マスタMiを用いた場合の差幅δ3との差(δ3−δ2)がゼロとなり、また、外輪ワーク6を用いた場合の差幅δ4と外輪マスタMoを用いた場合の差幅δ5との差(δ4−δ5)がゼロとなり、内輪測定値A及び外輪測定値Bはそれぞれゼロとなる。また、この場合、前記補正値X0(=X1−X2+X3−X4+X5−X)においては、X1=X2、X3=X4、X5=Xとなり、この補正値X0もゼロとなる。すると、この場合、前記式(2)によれば、内輪マスタMiと外輪マスタMoとを組み合わせた場合のマスタ差幅δ1(既知の値)が、内輪ワーク5と外輪ワーク6との間の差幅δとなる。
〔5. 差幅δを求める前記式(2)について〕
前記式(2)は、次のようにして得られた数式である。
〔5.1 内輪測定値Aについて〕
内輪測定工程St3において説明したように、内輪測定値A(図7参照)は、内輪測定用の治具セット10の外輪治具11に内輪ワーク5を組み合わせた場合の差幅δ3と、この内輪測定用の治具セット10の外輪治具11に内輪マスタMiを組み合わせた場合の差幅δ2との差(δ3−δ2)と等しくなる。そして、図11に示すように、前記差幅δ3は(Bi+X1−Bo1)であり、前記差幅δ2は(Bi1+X2−Bo1)である。
これを数式で表現すると、次の式(3)となる。
(内輪測定値A)=δ3−δ2
=(Bi+X1−Bo1)−(Bi1+X2−Bo1)
=Bi−Bi1+X1−X2 ・・・(3)
この式(3)のX1,X2及びBi,Bo1,Bi1は、次のように定義される。
X1:内輪ワーク5と外輪治具11とを転動体治具12を挟んで組み合わせた場合における、内輪ワーク5の内輪軌道の曲率中心Ziと、外輪治具11の外輪軌道の曲率中心Zoとの軸方向距離
X2:内輪マスタMiと外輪治具11とを転動体治具12を挟んで組み合わせた場合における、内輪マスタMiの内輪軌道の曲率中心Ziと、外輪治具11の外輪軌道の曲率中心Zoとの軸方向距離
Bi:内輪ワーク5の軸方向端面(5−1)から内輪軌道の曲率中心Ziまでの軸方向距離
Bi1:内輪マスタMiの軸方向端面(Mi−1)から内輪軌道の曲率中心Ziまでの軸方向距離
Bo1:外輪治具11の軸方向端面(11−1)から外輪軌道の曲率中心Zoまでの軸方向距離
X1は、内輪ワーク5と外輪治具11とを組み合わせた場合における接触角により生じる軸方向距離であり、X2は、内輪マスタMiと外輪治具11とを組み合わせた場合における接触角により生じる軸方向距離である。そして、これらX1,X2は、次のようにして求められる。なお、これらX1,X2は、前記準備工程St1において求められる。
〔5.2 軸方向距離X1(X2)の求め方〕
軸方向距離X1は、図12に示すように、内輪軌道の曲率中心Ziと外輪軌道の曲率中心Zoとの軸方向距離であり、γは、内輪軌道の曲率中心Ziと外輪軌道の曲率中心Zoとの直線距離であり、dは、内輪軌道の曲率中心Ziと外輪軌道の曲率中心Zoとの半径方向距離である。そして、αは接触角である。
これらX1、γ、d、αの関係は、次の式(4)により表される。なお、Bdは、内輪軌道と外輪軌道との間に介在する玉の直径である。
式(4)中の曲率半径Gi、Go、軌道径Di,Do、玉の直径Bdは、前記のとおり、準備工程St1において求められている値である。
内輪ワーク5及び外輪治具11に関する各値を式(4)に代入することで、軸方向距離X1を求めることが可能となる。
また、軸方向距離X2の求め方は、軸方向距離X1の求め方と同様である。つまり、前記式(4)に、内輪マスタMi及び外輪治具11に関する各値を代入することで、軸方向距離X2を求めることが可能となる。
〔5.3 外輪測定値B〕
外輪測定工程St4において説明したように、外輪測定値B(図10参照)は、外輪測定用の治具セット20の内輪治具21に外輪ワーク6を組み合わせた場合の差幅δ5と、この外輪測定用の治具セット20の内輪治具21に外輪マスタMoを組み合わせた場合の差幅δ4との差(δ4−δ5)と等しくなる。図13に示すように、前記差幅δ5は(Bi2+X3−Bo)であり、前記差幅δ4は(Bi2+X4−Bo2)である。
これを数式で表現すると、次の式(5)となる。
(外輪測定値B)=δ4−δ5
=(Bi2+X4−Bo2)−(Bi2+X3−Bo)
=Bo−Bo2−X3+X4 ・・・(5)
この式(5)のX3,X4及びBo,Bo2,Bi2は、次のように定義される。
X3:外輪ワーク6と内輪治具21とを転動体治具22を挟んで組み合わせた場合における、外輪ワーク6の外輪軌道の曲率中心Zoと内輪治具21の内輪軌道の曲率中心Ziとの軸方向距離
X4:外輪マスタMoと内輪治具21とを転動体治具22を挟んで組み合わせた場合における、外輪マスタMoの外輪軌道の曲率中心Zoと、内輪治具21の内輪軌道の曲率中心Ziとの軸方向距離
Bo:外輪ワーク6の軸方向端面(6−1)から外輪軌道の曲率中心Zoまでの軸方向距離
Bo2:外輪マスタMoの軸方向端面(Mo−1)から外輪軌道の曲率中心Zoまでの軸方向距離
Bi2:内輪治具21の軸方向端面(21−1)から内輪軌道の曲率中心Ziまでの軸方向距離
X3は、外輪ワーク6と内輪治具21とを組み合わせた場合における接触角により生じる軸方向距離であり、X4は、外輪マスタMoと内輪治具21とを組み合わせた場合における接触角により生じる軸方向距離である。そして、これらX3,X4は、次のようにして求められる。なお、これらX3,X4は、前記準備工程St1において求められる。
軸方向距離X3(X4)の求め方は、軸方向距離X1,X2の求め方と同様である。つまり、前記式(4)に、外輪ワーク6、外輪マスタMo及び内輪治具21に関する各値を代入することで、軸方向距離X3(X4)を求めることが可能となる。
〔5.4 マスタ差幅δ1〕
図14に示すように、マスタ差幅δ1は、内輪マスタMiと外輪マスタMoとを組み合わせた場合の差幅であり、前記準備工程St1において実測により取得されている値である。このマスタ差幅δ1は、次の式(6)により表される。そして、この式(6)を変形させると、式(7)となる。
δ1=Bi1+X5−Bo2 ・・・(6)
Bi1−Bo2=δ1−X5 ・・・(7)
軸方向距離X5の求め方は、軸方向距離X1,X2等の求め方と同様である。つまり、前記式(4)に、内輪マスタMi及び外輪マスタMoに関する各値を代入することで、軸方向距離X5を求めることが可能となる。X5、Bi1、及びBo2は、次のように定義される。
X5:内輪マスタMiと外輪マスタMotとを転動体マスタMbを挟んで組み合わせた場合における、内輪マスタMiの内輪軌道の曲率中心Ziと外輪マスタMoの外輪軌道の曲率中心Zoとの軸方向距離
Bi1:内輪マスタMiの軸方向端面(Mi−1)から内輪軌道の曲率中心Ziまでの軸方向距離
Bo2:外輪マスタMoの軸方向端面(Mo−1)から外輪軌道の曲率中心Zoまでの軸方向距離
〔5.5 差幅δ〕
本実施形態の差幅測定方法により求める対象は、図1に示すように、内輪ワーク5と外輪ワーク6とを組み合わせた場合の差幅δである。
この差幅δは、次の式(8)により表される。
δ=Bi+X−Bo ・・・(8)
軸方向距離Xの求め方は、軸方向距離X1,X2等の求め方と同様である。つまり、前記式(4)に、内輪ワーク5及び外輪ワーク6に関する各値を代入することで、軸方向距離Xを求めることが可能となる。X、Bi、及びBoは、次のように定義される。
X :内輪ワーク5と外輪ワーク6とを玉2を挟んで組み合わせた場合における、内輪軌道5bの曲率中心Ziと外輪軌道6bの曲率中心Zoとの軸方向距離
Bi:内輪ワーク5の軸方向端面(5−1)から内輪軌道5bの曲率中心Ziまでの軸方向距離
Bo:外輪ワーク6の軸方向端面(6−1)から外輪軌道6bの曲率中心Zoまでの軸方向距離
ここで、前記式(3)及び前記式(5)を変形することで、次の式(9)及び式(10)が得られる。
Bi=(内輪測定値A)+Bi1−X1+X2 ・・・(9)
Bo=(外輪測定値B)+Bo2+X3−X4 ・・・(10)
これら式(9)及び式(10)を、式(8)に代入し、整理すると式(11)が得られる。
δ=(内輪測定値A)−(外輪測定値B)+(Bi1−Bo2)−(X1−X2
+X3−X4−X) ・・・(11)
さらに、この式(11)に前記式(7)を代入し、整理すると式(12)が得られる。
δ=(内輪測定値A)−(外輪測定値B)+δ1−(X1−X2+X3−X4
+X5−X) ・・・(12)
以上より、式(11)中の(X1−X2+X3−X4+X5−X)を「X0」と置き換えることで、つまり、X0=(X1−X2+X3−X4+X5−X)とすることにより、前記式(2)が得られる。
このX0は、内輪測定用及び外輪測定用の治具セット10,20を用いたことによる誤差を補正するための補正値である。この補正値X0を求めるための各値(X1、X2、X3、X4、X5、X)は、準備工程St1において取得されている軸方向距離である。
〔6. 内輪測定用の治具セット10について〕
図7に示す外輪治具11は、図1に示す外輪16の設計値に基づいて(一部を除いて)設計値とおりとなるように作製されたものである。つまり、本実施形態の外輪治具11では、図1に示す外輪16と比較すると、カウンタボアを有しておらず、外輪軌道11−3から小端面11−2までの内周面14の形状が異なる。
この内周面14は、外輪軌道11−3から小端面11−2に向かうにしたがって拡径するテーパ面からなる。しかも、この内周面14では、外輪軌道11−3の溝底(最大直径部)をテーパ形状の始点としている。このため、治具セット10に含まれる転動体治具12及び保持器治具13は、この内周面14のうちの小端面11−2側に位置することができ、その状態で、内輪ワーク5(内輪マスタMi)をこの治具セット10と、無理嵌めすることなく組み合わせることができる。
また、図7に示す保持器治具13は、図1に示す保持器3の設計値に基づいて(一部を除いて)設計値とおりとなるように作製されたものである。つまり、本実施形態の保持器治具13では、転動体治具(玉)12を保持するポケット18の形状が異なる。
このポケット18は、転動体治具(玉)12を収容する空間を径方向内側(内輪ワーク5側)において狭くする形状を有している。つまり、転動体治具(玉)12と接触可能となるポケット面18aが傾斜面となっており、内輪ワーク5及び内輪マスタMiが存在しない場合であっても、転動体治具(玉)12が保持器治具13から脱落しないように構成されている。これにより、内輪ワーク5(内輪マスタMi)を治具セット10に組み合わせる作業が容易となる。
〔7. 外輪測定用の治具セット20について〕
図10に示す内輪治具21は、図1に示す内輪15の設計値に基づいて(一部を除いて)設計値とおりとなるように作製されたものである。つまり、本実施形態の内輪治具21では、図1に示す内輪15と比較すると、カウンタボアを有しておらず、内輪軌道21−3から小端面21−1までの周面24の形状が異なる。
この周面24は、内輪軌道21−3から小端面21−1に向かうにしたがって縮径するテーパ面からなる。しかも、この周面24では、内輪軌道21−3の溝底(最大直径部)をテーパ形状の始点としている。このため、治具セット20に含まれる転動体治具22及び保持器治具23は、この周面24のうちの小端面21−1側に位置することができ、その状態で、この治具セット20を外輪ワーク6(外輪マスタMo)と、無理嵌めすることなく組み合わせることができる。
また、図10に示す保持器治具23は、図1に示す保持器3の設計値に基づいて(一部を除いて)設計値とおりとなるように作製されたものである。つまり、本実施形態の保持器治具23では、転動体治具(玉)22を保持するポケット28の形状が異なる。
このポケット28は、転動体治具(玉)22を収容する空間を径方向外側(外輪ワーク6側)において狭くする形状を有している。つまり、転動体治具(玉)22と接触可能となるポケット面28aが傾斜面となっており、外輪ワーク6及び外輪マスタMoが存在しない場合であっても、転動体治具(玉)22が保持器治具23から脱落しないように構成されている。これにより、治具セット20を外輪ワーク6(外輪マスタMo)に組み合わせる作業が容易となる。
〔8. 加工量決定工程St12〕
図2に示す〔4.5 差幅算出工程St5〕で説明したように、内輪ワーク5及び外輪ワーク6を内輪5及び外輪6として組み合わせて図1に示すアンギュラ玉軸受1を構成する場合の差幅δが、組み立て前の状態で求められる。
そして、この差幅δに基づいて、内輪ワーク5及び外輪ワーク6の一方又は双方の軸方向端面に対して研削加工が施され、設計上の差幅(目標差幅δ0:図1参照)を有するように、次の加工工程St13、更には、仕上げ工程St14が実施される。
そこで、加工量決定工程St12では、内輪ワーク5及び外輪ワーク6の軸方向端面に対して研削加工を行う量、つまり、差幅加工量C(図15(A)参照を求める。この差幅加工量(差幅取代量ともいう)Cは、前記差幅測定工程St11において求めた差幅δと、設計上の差幅の値(図面値)との差により算出される。
このように、加工量決定工程St12では、前記差幅測定工程St11において求められた差幅δと、設計上の差幅の値である目標差幅δ0とを比較して差幅加工量Cが求められる。
〔9. 加工工程St13〕
加工工程St13(図2参照)では、前記加工量決定工程St12において求められた差幅加工量Cについて、研削を行うことで差幅δを調整する。
なお、この加工工程St13(及びその次の仕上げ工程St13)では、アンギュラ玉軸受1を図1に示すような組み立てた状態とする前に、つまり、内輪15及び外輪16等が分解されている状態で行われる。そして、この加工工程St13(及びその次の仕上げ工程St13)における加工の対象は、内輪ワーク5及び外輪ワーク6である。
ここで、確認のため内輪ワーク5及び外輪ワーク6の端面に関して整理して説明する。
外輪ワーク6の軸方向一方側(図1において左側)の第1外輪端面が、外輪大端面6−1であり、外輪ワーク6の軸方向他方側(図1において右側)の第2外輪端面が、外輪小端面6−2である。
また、内輪ワーク5の軸方向一方側(図1において左側)の第1内輪端面が、内輪小端面5−1であり、内輪ワーク5の軸方向他方側(図1において右側)の第2内輪端面が、内輪大端面5−2である。
そして、分解状態にある外輪ワーク6に対して内輪ワーク5の向きを図1の場合と反対にし、図15(A)に示すように、内輪大端面5−2及び外輪大端面6−1を、共通する基準平面F上に位置させる。本実施形態では、この基準平面Fは、図外の研削盤(研削装置)の基盤9上の平面であり、内輪大端面5−2及び外輪大端面6−1を、この基盤9上に当接させる。なお、この図15は、内輪ワーク5及び外輪ワーク6を模式的に示している説明図である。また、図15(A)中の寸法Cは、前記加工量決定工程St12において求められた差幅加工量を示しているが、説明をわかり易くするためにこの差幅加工量Cを実際よりも大きく記載している。
図15(A)に示す状態で、前記研削盤(研削装置)により、基盤9上の内輪ワーク5及び外輪ワーク6に対して研削を行う。つまり、外輪小端面6−2及び内輪小端面5−1を、同時に研削する研削面Jとして、内輪ワーク5及び外輪ワーク6の前記研削面Jを共に研削する。更に、この際、内輪小端面5−1を前記差幅加工量Cについて研削するまで、内輪ワーク5及び外輪ワーク6の前記研削面Jを共に研削する。図15(A)では、外輪ワーク6の方が内輪ワーク5よりも軸方向に長くなっていることから、外輪ワーク6は、これらワーク5,6の長さの差sに、前記前記差幅加工量Cを加えた寸法について研削される。
研削後の状態を図15(B)に示す。研削前の外輪小端面6−2は、研削後、外輪小端面6−2aとなり、研削前の内輪小端面5−1は、研削後、内輪小端面5−1aとなる。
ここで、仮に、次の仕上げ工程St14を行わないで、図15(B)に示す内輪ワーク5及び外輪ワーク6を組み立てて図1に示すアンギュラ玉軸受1を構成する場合について説明する。組み立てのために、外輪ワーク6に対する内輪ワーク5の向きを反対とした状態(元に戻した状態)を、図16(A)に示す。同じ加工代(差幅加工量C)について、外輪ワーク6及び内輪ワーク5を同時に研削したことで、これら外輪ワーク6及び内輪ワーク5は軸方向に同じ長さH1となっている。
そして、これら内輪ワーク5及び外輪ワーク6に対して個別に洗浄を行い、図16(B)に示すように、本組み立てを行う。これら外輪ワーク6及び内輪ワーク5の間に玉2及び保持器3を介在させてアンギュラ玉軸受1を構成すると、このアンギュラ玉軸受1の軸方向一方側の差幅δは、軸方向他方側の差幅Δと同じとなる。
以上のように、本実施形態の加工工程St13によれば、アンギュラ玉軸受1を組み立てする前に、実際のワーク5,6の差幅δを目標差幅δ0と一致すべく調整するための加工を行うことが可能となる。つまり、分解状態にある外輪ワーク6及び内輪ワーク5に対して差幅δを調整するための研削が行われる。このため、この研削後に、外輪ワーク6及び内輪ワーク5を個別に洗浄することができ、洗浄を行い易く、研削屑等の異物を除去することができる。
また、前記のとおり(図15(A)(B)参照)、外輪小端面6−2及び内輪小端面5−1を研削面Jとして外輪ワーク6及び内輪ワーク5を研削することで、外輪ワーク6及び内輪ワーク5は軸方向に同じ長さH1となり(図16(A)参照)、これらワーク6,5を外輪16及び内輪15として組み立てて得たアンギュラ玉軸受1では、(図16(B)参照)軸方向一方側の差幅δと、軸方向他方側の差幅Δとを等しくすることができる。
軸方向両側における差幅δ、Δが等しいことから、このようにして差幅δ,Δが調整されて組み立てられたアンギュラ玉軸受1は、背面組み合わせ用及び正面組み合わせ用の双方に用いることが可能となり、組み合わせの自由度が高いアンギュラ玉軸受となる。
〔10. 仕上げ工程St14〕
図16では、仕上げ工程St14を省略してアンギュラ玉軸受1を組み立てる場合について説明したが、本実施形態では、図15に示す加工工程St13の次に、仕上げ工程St14が実施される。仕上げ工程St14では、アンギュラ玉軸受1(図1参照)の軸方向長さWを目標長さW0とするための加工が行われる。
なお、加工工程St13が行われると(図15(B)参照)、内輪ワーク5(及び外輪ワーク6)の軸方向の長さH1が測定され、この長さH1と、内輪15の設計値(図面値)との差が、仕上げ加工量tとして求められる。図17(A)中の寸法tが、この仕上げ加工量を示しているが、説明をわかり易くするためにこの仕上げ加工量tを実際よりも大きく記載している。
仕上げ工程St14では、図17(A)に示すように、外輪小端面6−2a及び内輪大端面5−2を、共通する基準平面F上に位置させる。本実施形態では、この基準平面Fは、図外の研削盤(研削装置)の基盤9上の平面であり、外輪小端面6−2a及び内輪大端面5−2を、この基盤9上に当接させる。
そして、この図17(A)に示す状態で前記研削盤(研削装置)により、基盤9上の内輪ワーク5及び外輪ワーク6に対して研削を行う。つまり、外輪大端面6−1及び内輪小端面5−1aを、同時に研削する仕上げ加工面Kとして、外輪ワーク6及び内輪ワーク5のこれら仕上げ加工面Kを研削する。この仕上げ加工面Kに対する加工代(加工量)は、既に求めている前記仕上げ加工量tである。研削後の状態を図17(B)に示す。研削前の外輪大端面6−1は、研削後、外輪大端面6−1aとなり、研削前の内輪小端面5−1aは、研削後、内輪小端面5−1bとなる。
そして、研削を終えると、内輪ワーク5及び外輪ワーク6に対して個別に洗浄を行い、本組み立てを行い、図1に示すアンギュラ玉軸受1が構成される。
この仕上げ工程St14によれば、設計値(図面値)に基づいて求められた仕上げ加工量tについて研削がされることで、アンギュラ玉軸受1の軸方向長さW(図1参照)を目標長さW0とすることができる。
また、この仕上げ工程St14の前工程である加工工程St13によれば、図15(B)及び図17(A)に示すように、外輪ワーク6及び内輪ワーク5の軸方向長さH1は同じ状態にあり、その後の、仕上げ工程St14では、外輪大端面6−1及び内輪小端面5−1aを仕上げ加工面Kとして、外輪ワーク6及び内輪ワーク5は同じ加工量(仕上げ加工量t)についての研削が行われる。これら外輪大端面6−1及び内輪小端面5−1aは、軸方向一方側の差幅δの基準となる面であり、これら両端面6−1,5−1aの双方が同じ仕上げ加工量tについて研削されることから、前工程である加工工程St13で得られた差幅δ,Δは、仕上げ工程St14後においても、維持される。
さらに、この仕上げ工程St14によれば、図17(B)に示すように、外輪ワーク6及び内輪ワーク5の軸方向長さH2は同じに維持され、図16(B)により説明した場合と同様、これらワーク6,5を外輪16及び内輪15として組み立てて得たアンギュラ玉軸受1では、軸方向一方側の差幅δと、軸方向他方側の差幅Δとは等しくなる。
このようにして差幅δ,Δが調整されて組み立てられたアンギュラ玉軸受1は、軸方向について目標長さW0を有しており、かつ、背面組み合わせ用及び正面組み合わせ用の双方に用いることが可能となり、組み合わせの自由度が高いアンギュラ玉軸受となる。
〔11. その他〕
以上より、本実施形態の差幅調整方法によれば、アンギュラ玉軸受1を組み立てする前に、差幅δ(Δ)を調整するための加工を行うことが可能となる。つまり、分解状態にある外輪ワーク6及び内輪ワーク5に対して差幅δ(Δ)を調整するための研削が行われる。このため、研削後に、外輪ワーク6及び内輪ワーク5を個別に洗浄することができ、洗浄を行い易く、研削屑等の異物を除去することができる。この結果、これら外輪ワーク6及び内輪ワーク5を外輪16及び内輪15として用いたアンギュラ玉軸受1が回転した際に、騒音が発生したり、軸受寿命が低下したりするという不具合の発生確率を低下することが可能となる。
また、本発明の差幅調整方法は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。なお、この差幅調整方法によれば、段替えにより接触角αが異なるアンギュラ玉軸受についても対応可能である。
また、本実施形態の差幅測定方法では、内輪ワーク5及び外輪ワーク6を分解した状態として、差幅の測定を行ったが、これとは別の方法で差幅を測定してもよい。例えば、内輪ワーク5、外輪ワーク6、玉2、及び保持器3を、図1に示す完成状態と同じ形態を有するように仮組み立てし、この仮組み立てした状態で差幅を測定してもよい。そして、この場合であっても、加工工程St12及び仕上げ工程St13では、仮組み立てした状態から分解し、前記実施のとおり内輪ワーク5及び外輪ワーク6に対して研削を行い、差幅を調整する。そして、その後、内輪ワーク5及び外輪ワーク6に対して個別に洗浄を行い、本組み立てを行う。
1:アンギュラ玉軸受 5:内輪ワーク
5−1,5−1a,5−1b:内輪小端面(第1内輪端面)
5−2:内輪大端面(第2内輪端面) 6:外輪ワーク
6−1,6−1a:外輪大端面(第1外輪端面)
6−2,6−2a:外輪小端面(第2外輪端面)
10:内輪測定用の治具セット 11:外輪治具 15:内輪
16:外輪 20:外輪測定用の治具セット 21:内輪治具
A:内輪測定値 B:外輪測定値 C:差幅加工量
F:基準平面 J:研削面 K:仕上げ加工面
Mi:内輪マスタ Mo:外輪マスタ
W:アンギュラ玉軸受の軸方向長さ W0:目標長さ
X0:補正値 δ:差幅 δ0:目標差幅 δ1:マスタ差幅

Claims (3)

  1. アンギュラ玉軸受における外輪の軸方向一方側の第1外輪端面と内輪の軸方向一方側の第1内輪端面との間の差幅を調整する差幅調整方法であって、
    前記差幅を測定する差幅測定工程と、
    前記差幅測定工程において求められた前記差幅と目標差幅とを比較して差幅加工量を求める加工量決定工程と、
    前記差幅加工量について研削を行うことで前記差幅を調整する加工工程と、
    前記加工工程の後に行われる、前記アンギュラ玉軸受の軸方向長さを目標長さとするための仕上げ工程と、
    を備え、
    前記加工工程では、
    前記第1内輪端面と反対側の第2内輪端面、及び前記第1外輪端面を共通する基準平面上に位置させ、前記第1外輪端面と反対側の第2外輪端面、及び前記第1内輪端面を研削面として、当該第1内輪端面を前記差幅加工量について研削するまで、前記外輪となる外輪ワーク及び前記内輪となる内輪ワークの前記研削面を研削し、
    前記仕上げ工程では、
    前記第2外輪端面及び前記第2内輪端面を共通する基準平面上に位置させ、前記第1外輪端面及び前記第1内輪端面を仕上げ加工面として、前記アンギュラ玉軸受の軸方向長さを目標長さとするために、前記外輪ワーク及び前記内輪ワークの前記仕上げ加工面を研削し、
    前記加工工程では、前記差幅の基準とならない前記第2外輪端面と、前記差幅の基準となる前記第1内輪端面とが、前記研削面であり、
    前記仕上げ加工工程では、前記差幅の基準となる前記第1外輪端面と、前記差幅の基準となる前記第1内輪端面とが、前記仕上げ加工面である
    ことを特徴とする差幅調整方法。
  2. 前記差幅測定工程は、
    外輪治具を含む内輪測定用の治具セットに対して内輪マスタを組み合わせることで得られる当該外輪治具と当該内輪マスタとの軸方向位置関係を示すマスタ基準値を基準として、当該内輪測定用の治具セットに対して前記内輪となる内輪ワークを組み合わせることにより前記外輪治具と当該内輪ワークとの軸方向位置関係を示す内輪測定値を求める内輪測定工程と、
    内輪治具を含む外輪測定用の治具セットに対して外輪マスタを組み合わせることで得られる当該内輪治具と当該外輪マスタとの軸方向位置関係を示すマスタ基準値を基準として、当該外輪測定用の治具セットに対して前記外輪となる外輪ワークを組み合わせることにより前記内輪治具と当該外輪ワークとの軸方向位置関係を示す外輪測定値を求める外輪測定工程と、
    前記内輪測定値、前記外輪測定値、前記内輪マスタと前記外輪マスタとを組み合わせた場合のマスタ差幅、及び、前記治具セットを用いることによる誤差を補正するための補正値に基づいて前記差幅を求める差幅算出工程とを備えている
    請求項1に記載の差幅調整方法。
  3. 前記外輪治具は、外輪軌道から拡径するテーパ面により構成された内周面を有し、
    前記内輪測定用の治具セットには、転動体治具となる玉を保持するポケットが設けられた保持器治具が含まれ、当該ポケットは、当該玉が脱落しないように当該玉を収容する空間が径方向内側において狭くなる形状を有し、
    前記内輪治具は、内輪軌道から縮径するテーパ面により構成された外周面を有し、
    前記外輪測定用の治具セットには、転動体治具となる玉を保持するポケットが設けられた保持器治具が含まれ、当該ポケットは、当該玉が脱落しないように当該玉を収容する空間が径方向外側において狭くなる形状を有する
    請求項2に記載の差幅調整方法。
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