JP6393132B2 - 放射線撮像装置およびその調整方法 - Google Patents
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Description
本発明は、放射線撮像装置およびその調整方法に関する。
X線等の放射線の画像を撮像する放射線撮像装置として、放射線が照射されたことを検出することによって撮像動作を行うものがある。特許文献1には、二次元的に配列された放射線検出素子にバイアス電圧を印加するためのバイアス線を流れる電流を電流検出手段によって検出することによって放射線の照射の開始および終了を検出する放射線画像撮影装置が記載されている。
放射線が照射されたことを検出する性能(以下、検出性能)は、放射線撮像装置の製造ばらつきによって異なりうるので、放射線撮像装置の出荷前または出荷後に検出性能を調整すべきである。ところが、放射線撮像装置に放射線を照射する環境を一定にすることは困難であるので、従来は、複数の放射線撮像装置の検出性能を調整作業において均一化することは困難であった。
本発明は、放射線の照射を検出する検出性能を均一化するために有利な技術を提供することを目的とする。
本発明の1つの側面は、放射線撮像装置に係り、該放射線撮像装置は、放射線による画像を撮像するための複数の画素が配列された画素アレイと、放射線の照射に応じた検出値を出力する検出部と、前記画素アレイから出力される信号または該信号を処理した処理結果と前記検出値との関係が所定の関係になるように前記検出部の特性を調整する調整部と、前記検出値が閾値を超えたことに応じて、放射線が照射されたことを検出する制御部と、を備える。
本発明によれば、放射線の照射を検出する検出性能を均一化するために有利な技術が提供される。
以下、添付図面を参照しながら本発明の放射線撮像システムをその実施形態を通して例示的に説明する。
図1には、本発明の1つの実施形態の放射線撮像システム10の構成が示されている。放射線撮像システム10は、例えば、放射線撮像装置100、制御装置200、放射線発生装置310および曝射制御装置320を含みうる。制御装置200の構成の全部または一部は、放射線撮像装置100に組み込まれてもよい。放射線撮像装置100の構成の全部または一部と制御装置200の構成の全部または一部とによって構成される装置を放射線撮像装置として理解することもできる。また、放射線撮像装置100の構成の一部(例えば、調整部187)は、制御装置200に組み込まれてもよい。制御装置200および曝射制御装置320は、1つの装置として実現されてもよい。
放射線撮像装置100は、画素アレイ110、駆動部120、読出部130、増幅部(インピーダンス変換部)140、DA変換器150、無線インターフェース(I/F)160、制御部170、検出部180、調整部187、バイアス電源190を含みうる。画素アレイ110には、放射線を検出うる複数の画素が配列されている。駆動部120は、画素アレイ110の複数の画素を駆動する。読出部130は、画素アレイ110の複数の画素から信号を読み出す。
DA変換器150は、増幅部140から出力される信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。無線I/F160は、制御装置200(の無線I/F220)と通信する。無線I/F160は、例えば、DA変換器150から提供される信号、曝射停止指令(露出制御情報)、放射線撮像装置100の状態を示す信号などを制御装置200に送信する。ここで、曝射停止指令(露出制御情報)は、放射線発生装置310による放射線の放射を停止させる指令あるいは情報である。制御部170は、画素アレイ110、駆動部120、読出部130、増幅部140、DA変換器150、無線I/F160、検出部180、調整部187、バイアス電源190を制御する。そのために、制御部170は、制御信号(D−CLK、DIO、XOE、RC、SH、CLK)を発生する。
バイアス電源190は、バイアス線Bs(電源線)を介して画素アレイ110にバイアス電圧を供給する。検出部180は、放射線撮像装置100に対する放射線の照射に応じた検出値を出力する回路、即ち、放射線の照射を検出するための回路である。より具体的には、検出部180は、放射線の照射を監視する期間において、バイアス線Bsを流れるバイアス電流に応じた検出値を出力する。検出部180は、放射線の照射に応じた電気信号を出力するセンサ182と、センサ182から出力される電気信号を処理して検出値を発生する処理部184とを含む。
調整部187は、画素アレイ110から出力される信号または該信号を処理した処理結果と、検出部180から出力される検出値との関係が所定の関係になるように検出部180の特性を調整する。読出部130によって読み出された信号を処理した処理結果は、例えば、画素アレイ110から読出部130によって読み出され信号を調整部187、制御部170、または、制御装置200の処理部210が処理した処理結果でありうる。調整部187による調整は、典型的には、放射線撮像装置100の出荷前、または、放射線撮像装置100のメンテナンス時になされうる。
制御部170は、処理部184から出力される検出値が閾値を超えたことに応じて、放射線が照射されたことを検出する。制御部170は、放射線が照射されたことが検出されるまでは画素アレイ110の画素を行単位でリセットするリセット動作を繰り返すように駆動部120を制御する。制御部170は、放射線が照射されたことが検出されると、リセット動作を停止させるように駆動部120を制御する。これにより、画素アレイ110では、照射された放射線に応じた電荷の蓄積が開始される。制御部170は、放射線の照射の検出から所定時間が経過したこと、または、処理部184から出力される検出値に基づいて、放射線の照射の終了を判定し、画素アレイ110から信号(画像)が読み出されるように駆動部120および読出部130を制御する。
制御装置200は、例えば、処理部210、無線I/F220、表示部230、入力部240(キーボード、ポインティングデバイスなど)を含みうる。制御装置200は、汎用コンピュータにソフトウエア(コンピュータプログラム)を組み込むことによって構成されうる。処理部210は、例えば、読出部130によって読み出された画素アレイ110の複数の画素の信号(つまり、画像信号)を処理する。
曝射制御装置320は、曝射スイッチ(不図示)を含み、曝射スイッチがオンされることに応じて曝射指令を放射線発生装置310に送信する。放射線発生装置310は、曝射指令に従って放射線を放射する。
図2には、放射線撮像装置100の具体的な構成例が示されている。画素アレイ110には、複数の画素Pが複数の行および複数の列を構成するように2次元的に配列されている。画素Pは、変換素子CVと、スイッチTTとを含む。変換素子CVは、放射線を電荷に変換する。変換素子CVは、放射線を可視光に変換するシンチレータと、可視光を電荷に変換する光電変換素子とで構成されうる。この場合、シンチレータは、複数の変換素子CVによって共有されうる。変換素子CVは、放射線を直接に電荷に変換するように構成されてもよい。変換素子CVは、MIS型またはPIN型の光電変換素子で構成されうる。スイッチTTは、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)で構成されうる。スイッチTTは、駆動信号G(駆動信号G1、G2、G3・・・Gmのうち該当するもの)に応じて変換素子CVの第1電極と信号線SLとを接続する。変換素子CVの第2電極は、バイアス線Bsに接続される。ここで、第n行の画素P(のスイッチTT)を駆動する駆動信号をGn(n=1〜m)と記載する。
第n行の駆動信号Gnが駆動部120によってアクティブレベルに駆動されると、第n行の画素PのスイッチTTがオン(導通)し、当該画素Pの変換素子CVに蓄積されていた電荷がスイッチTTを通して信号線SLに転送される。つまり、第n行の駆動信号Gnが駆動部120によってアクティブレベルに駆動されると、第n行の画素Pの信号が信号線SLに出力される。なお、この実施形態は、アクティブレベルはハイレベルであるが、アクティブレベルをローレベルとしてもよい。
読出部130は、信号線SLを介して画素Pから信号を読み出す。読出部130は、画素アレイ110における列ごとに、積分増幅器131、可変増幅器132、サンプルホールド回路133、バッファアンプ134を有する。信号線SLに出力された信号は、積分増幅器131および可変増幅器132によって増幅され、サンプルホールド回路133によってサンプルホールドされ、バッファアンプ134によって増幅される。読出部130は、マルチプレクサ135を有し、列ごとに設けられたバッファアンプ134から出力された信号は、マルチプレクサ135によって選択されて増幅部140に出力される。
積分増幅器131は、演算増幅器と、積分容量と、リセットスイッチと、を有する。演算増幅器105の反転入力端子には、信号線SLに出力された信号が入力され、非反転入力端子には、基準電圧Vrefが入力され、出力端子から増幅された信号が出力される。積分容量は、演算増幅器の反転入力端子と出力端子との間に配置される。可変増幅器132は、積分増幅器131から出力された信号を制御部170によって指定される増幅率で増幅する。サンプルホールド回路133は、サンプリングスイッチと、サンプリング容量とで構成されうる。
積分増幅器131のリセットスイッチは、制御信号RCによってオン(導通)・オフ(非導通)が制御される。サンプルホールド回路133のサンプリングスイッチは、制御信号SHによってオン・オフが制御される。マルチプレクサ135は、画素アレイ110から複数の信号線SLを通して読み出された信号を制御信号CLKに従って選択する。
バイアス電源190は、バイアス線Bsを介して画素アレイ110の各画素Pの変換素子CVの第2電極にバイアス電圧を供給する。検出部180は、放射線の照射を監視する期間において、バイアス線Bsを通してバイアス電源190と画素アレイ110を構成する画素Pの第2電極との間を流れるバイアス電流を検出する。具体的には、放射線の照射を監視する期間において、検出部180は、バイアス線Bsを流れるバイアス電流に応じた検出値を出力する。
センサ182は、例えば、電流電圧変換回路と、該電流電圧変換回路の出力電圧をデジタル信号に変換するAD変換回路で構成されうる。電流電圧変換回路は、例えば、オペアンプとトランスインピーダンスとを含むトランスインピーダンスアンプで、又は、シャント抵抗で構成されうるが、この例に限定されるものではない。
駆動部120は、制御部170から供給される制御信号(D−CLK、DIO、XOE)に応じて、画素アレイ110の画素PのスイッチTTを行単位に制御する駆動信号Gを発生する。駆動部120は、シフトレジスタを含み、制御信号D−CLKは、シフトレジスタにシフトクロックとして供給されるクロック信号である。制御信号DIOは、シフトレジスタに供給されるシフトパルスであり、制御信号XOEは、シフトレジスタの出力イネーブル信号である。
図3および図4には、放射線撮像システム10あるいは放射線撮像装置100の動作が概略的に示されている。ステップS310において放射線撮像装置100が起動されると、放射線撮像装置100が待機状態となる。待機状態では、画素アレイ110の複数の画素Pが、行単位で、所定順序でリセットされる(ステップS314)。この例では、第1行から第m行まで、行の番号の順に、複数の画素Pが行単位でリセットされ、その後、第1行に戻って同様の処理が繰り返される。
ステップS312では、制御部170は、検出部180から出力される検出値に基づいて、放射線の照射が開始されたかどうかを判定する。具体的には、制御部170は、検出値が所定の閾値を超えた場合に、放射線の照射が開始されたと判定し、ステップS316に進む(これは、画素Pのリセットを停止することを意味する)。一方、検出値が所定の閾値を超えるまでは、ステップS314において、画素Pのリセットが切り替えされる。つまり、ステップS312、S314では、放射線の照射が開始されたかどうかを監視しながら、放射線が照射されたと判定されるまで、画素アレイ110の画素Pを行単位でリセットする。ステップS312において放射線の照射が開始されたと判定されるまでの期間は、図4における「リセット」の期間である。
ステップS316では、制御部170は、放射線の照射の終了を判定し、放射線の照射が終了したと判定した場合には、ステップS320に進む。一方、放射線の照射が終了したと判定されるまでは、制御部170は、ステップS318において、照射された放射線に応じた電荷の蓄積を続けるように駆動部120を制御する。ここで、放射線が照射されたことの検出から所定時間が経過したことによって放射線の照射が終了したと判定してもよいし、検出値が基準値を下回ったことによって放射線の照射が終了したと判定してもよい。あるいは、他の方法によって放射線の照射が終了したと判定してもよい。ステップS320では、制御部170は、画素アレイ110から信号を読み出すように読出部130を制御する。
ステップS316において放射線の照射が終了したと判定されるまでの期間は、図4における「蓄積」の期間である。また、ステップS316において放射線の照射が終了したと判定された後の期間は、図4における「読出部からの信号の読出」の期間である。
図5には、図4の一部(放射線の照射の開始が検出されたタイミングの前後)が詳細に記載されている。この例では、第1Gn行のリセットが終了した直後に、放射線の照射が開始されたと判定されている。図5において、「バイアス電流」は、センサ182によって検出される信号、即ち、バイアス線Bsを流れるバイアス電流である。バイアス線Bsを流れるバイアス電流は、3つの成分(第1、第2、第3成分)を含みうる。第1成分は、変換素子CVに蓄積された電荷に比例した成分であり、これは照射された放射線の量を示す情報を含む。図5では、第1成分は、「放射線成分」として記載されている。第2成分は、外来ノイズと呼ばれる成分である。外来ノイズは、例えば、商用電源から生じた電磁界などによって発生する50〜60Hz程度の成分や、筺体に圧力や衝撃が加わった場合に発生する数Hz〜数kHzの成分である。外来ノイズは、スイッチTTのオン(導通)・オフ(非導通)とは無関係に発生する。図5では、第2成分は、「外来ノイズ成分」として記載されている。第3成分は、画素PのスイッチTTのオン・オフの切り替えによって発生するスイッチングノイズである。図5では、第3成分は記載されていない。
図5において、「サンプリング」は、処理部184によるセンサ182の出力のサンプリングを示している。放射線の照射の開始を判定するための情報として、処理部184によってサンプリングされたセンサ182の出力(サンプル値)そのものを用いてもよい。しかし、外来ノイズ成分を無視できない場合には、外来ノイズ成分を除去することが望ましい。
処理部184は、外来ノイズ成分を除去するための演算を行って検出値を発生する。例えば、処理部184は、画素PのスイッチTTをオンさせた状態におけるセンサ182の出力をサンプリングする。そのサンプリング値をSとする。また、処理部184は、画素PのスイッチTTをオフさせた状態におけるセンサ182の出力をサンプリングする。そのサンプリング値をNとする。処理部184は、SとNとの差分を演算し、この差分を検出値として出力する。これによって外来ノイズ成分を除去することができる。ただし、外来ノイズ成分は時間経過に伴い変動するため、可能な限り近い時刻においてサンプリングしたSとNを用いることが望ましい。すなわち、y回目にサンプリングしたSをS(y)、y回目にサンプリングしたNをN(y)、外来ノイズ成分を除去したサンプル値をX(y)とすると、処理部184は、以下のような演算を行いうる。
X(y)=S(y)−{N(y)+N(y−1)}/2 (1)
以上のようにして外来ノイズ成分を除去する方法は、CDS(相関二重サンプリング)と呼ばれうる。CDSを適用した演算は、(1)式に限定されるものではない。例えば、X(y)の演算にN(y)又はN(y−1)のどちらか一方を用いてもよいし、S(y−1)やN(y−2)等の隣接しないサンプル値を用いてもよい。
以上のようにして外来ノイズ成分を除去する方法は、CDS(相関二重サンプリング)と呼ばれうる。CDSを適用した演算は、(1)式に限定されるものではない。例えば、X(y)の演算にN(y)又はN(y−1)のどちらか一方を用いてもよいし、S(y−1)やN(y−2)等の隣接しないサンプル値を用いてもよい。
また、スイッチTTのオン・オフによるスイッチングノイズが無視できない場合、スイッチングノイズを除去したサンプリング値に基づいて放射線の照射の開始を判定することが望ましい。例えば、処理部184は、事前にスイッチングノイズをサンプリングし、そのスイッチングノイズの値を判定時におけるサンプリング値から減算した値を検出値として出力する。また、スイッチングノイズ量が行ごとに異なる場合において、同じ行のスイッチングノイズ量は再現性が高いことが知られている。そこで、同じ行の1フレーム前におけるサンプリング値を減算することで、スイッチングノイズを除去する方法が考えられる。画素アレイ110の行数がYである場合、1フレーム前のSはS(y−Y)、1フレーム前のNはN(y−Y)である。即ち、処理部184は、以下のような演算を行いうる
X(y)=[S(y)−{N(y)+N(y−1)}/2]
−[S(y−Y)−{N(y−Y)+N(y−1−Y)}/2] (2)
以上のようにしてスイッチングノイズを除去する方法は、フレーム補正と呼ばれうる。フレーム補正を適用した演算は、(2)式に限定されるものではない。例えば、kフレーム前のS及びNを用いてもよい(k>1)。Sだけ又はNだけを用いて演算を行ってもよい。
X(y)=[S(y)−{N(y)+N(y−1)}/2]
−[S(y−Y)−{N(y−Y)+N(y−1−Y)}/2] (2)
以上のようにしてスイッチングノイズを除去する方法は、フレーム補正と呼ばれうる。フレーム補正を適用した演算は、(2)式に限定されるものではない。例えば、kフレーム前のS及びNを用いてもよい(k>1)。Sだけ又はNだけを用いて演算を行ってもよい。
Sをサンプリングする方法としては、スイッチTTがオンしている期間に複数回にわたってサンプリングを行い、これによって得られる複数のサンプリング値を加算(平均)した結果をSとする方法が好適である。この方法によれば、高周波のノイズを除去することができる。Nのサンプリングも同様に、スイッチTTがオフしている期間に複数回にわたってサンプリングを行い、これによって得られる複数のサンプリング値を加算(平均)した結果をNとすることができる。このような処理は、加算処理と呼ばれうる。
加算処理の適用において、センサ182(電流電圧変換回路)の応答速度によっては、スイッチTTのオン・オフ状態を切り替えてからバイアス電流が変化するまでの遅延が無視できないことがある。このような場合には、スイッチTTをオフ状態からオン状態に切り替えた時刻からSのサンプリングを開始する時刻までに遅延をもたせることが好適である。また、スイッチTTのオフ状態からオン状態に切り替わる遷移時間では、放射線の照射による信号が十分にセンサ182の出力に現れない。したがって、このような遷移時間においてはサンプリングを行わないこと、あるいは、このような遷移時間においてサンプリングした値を捨てることが望ましい。Nのサンプリングについても同様である。
一例において、処理部184は、加算処理、CDS、フレーム補正の順に処理を行い、これらの処理が施されたサンプル値の積分値に基づいて放射線の照射の開始を判定するように構成されうる。
図6を参照しながら本発明の基本原理を説明する。放射線が照射されたことを検出する検出性能は、放射線撮像装置100の製造ばらつきによって異なりうるので、放射線撮像装置100の出荷前または出荷後に検出性能を調整すべきである。ところが、放射線撮像装置100に放射線を照射する環境を一定にすることは困難であるので、従来は、複数の放射線撮像装置100の検出性能を調整作業において均一化することは困難であった。
図6には、放射線の照射後に画素アレイ110から読出部130によって読み出された信号または該信号を処理した処理結果と、該放射線の照射時に検出部180から出力される検出値との関係が模式的に示されている。以下では、放射線の照射後に画素アレイ110から読出部130によって読み出された信号または該信号を処理した処理結果を画素信号ということにする。画素信号と検出値とは比例関係を有し、該比例関係は、直線の傾き(比例定数)で特定される。この傾きを信号変換係数γと呼ぶことにする。信号変換係数γは、調整部187によって検出部180の特性を調整することによって変更される。検出部180の特性は、例えば、センサ182の特性(例えば、センサ182がトランスインピーダンスアンプで構成される場合は、該トランスインピーダンスアンプのゲイン)を変更することによって調整されうる。あるいは、検出部180の特性は、処理部184における処理の内容を変更することによって変更されうる。処理部184における処理の内容の変更は、例えば、前述の加算処理、CDSおよびフレーム補正の全部又は一部の変更でありうる。
信号変換係数γは、放射線の照射条件、被検体の厚さ、放射線発生装置310と放射線撮像装置100との距離、放射線の照射範囲などには依存しない。よって、複数の放射線撮像装置100の信号変換係数γを許容範囲に収めることは容易である。つまり、信号変換係数γの調整を通して複数の放射線撮像装置100における放射線の検出性能を均一化することは容易である。
放射線撮像装置100において、制御部170は、検出部180から出力される検出値が閾値Tを超えたときに放射線が照射されたと判定する。閾値Tは、ノイズの影響によって放射線の照射を誤検出しないように設定されうる。閾値Tを超える画素信号の最小値は、検出限界Sminと呼ばれうる。信号変換係数γ、閾値T、検出限界Sminの関係は、以下のように与えられる。
Smin=T/γ (3)
図6において、Saが目標とする検出限界Sminであり、Sbが現在の検出限界Sminであるとする。換言すると、γaが目標する信号変換係数γであり、γbが現在の信号変換係数γである。信号変換係数γは、調整部187によってセンサ182の特性(例えば、センサ182がトランスインピーダンスアンプで構成される場合は、該トランスインピーダンスアンプのゲイン)を変更することによって調整されうる。信号変換係数γは、あるいは、調整部187によって処理部184における処理の内容を変更すること、例えば、前述の加算処理、CDSおよびフレーム補正の全部又は一部を変更することによって調整されうる。
図6において、Saが目標とする検出限界Sminであり、Sbが現在の検出限界Sminであるとする。換言すると、γaが目標する信号変換係数γであり、γbが現在の信号変換係数γである。信号変換係数γは、調整部187によってセンサ182の特性(例えば、センサ182がトランスインピーダンスアンプで構成される場合は、該トランスインピーダンスアンプのゲイン)を変更することによって調整されうる。信号変換係数γは、あるいは、調整部187によって処理部184における処理の内容を変更すること、例えば、前述の加算処理、CDSおよびフレーム補正の全部又は一部を変更することによって調整されうる。
図7を参照しながら調整部187による調整処理(キャリブレーション)について説明する。まず、ステップS712(測定工程)では、調整部187は、信号変換係数γを測定する。次いで、ステップS714(判定工程)では、調整部187は、ステップS712で測定した信号変換係数γが目標とする信号変換係数γaの許容範囲であるかどうかを判定する。そして、調整部187は、ステップS712で測定した信号変換係数γが信号変換係数γaの許容範囲である場合には調整処理を終了し、許容範囲でない場合には、ステップS716(調整工程)に進んで調整を行う。
図8、図9および図10を参照しながら図7のステップS712における信号変換係数γの測定について説明する。まず、比較例として、図8を参照しながら放射線撮像装置100における通常の撮像動作を説明する。図8に示されている動作は、図4に示されている動作と同様であるが、図8では、検出部180から出力される検出値が示されている。通常の撮像動作では、放射線の照射が開始されたことを判定するための閾値がT1に設定されている。放射線の照射によって検出部180から出力される検出値が徐々に大きくなる。制御部170は、検出値が閾値T1を超えた時点で放射線の照射が開始されたと判断してリセット動作を停止させるように駆動部120を制御する。これにより、画素アレイ110では、照射された放射線に応じた電荷の蓄積が開始される。
次に、図9を参照しながら放射線撮像装置100における信号変換係数γの測定時の動作を説明する。なお、図8、図9では放射線の照射時間が異なるように見えるが、これは通常の撮像動作時と信号変換係数γの測定時とにおいて放射線の照射時間を異なることを意図したものではなく、図9では駆動信号Gbと放射線の照射時間との関係を明示するためである。
信号変換係数γの測定時は、閾値T1が閾値(調整用閾値)T2に変更される。T2は、T1より大きい値であり、T2は、例えば、T1の10〜20倍程度の値に設定されうる。T閾値T1をそれより大きいT2に変更することは、放射線の照射が開始されたと判定されるタイミングを遅くすることを意味する。図9に示された例では、駆動信号Gbがアクティブレベルに駆動され、それに対応する行の画素Pがリセットされた時点で放射線の照射が停止している。また、検出部180から出力される検出値は、放射線の実際の照射に対して遅れて変化するので、駆動信号Gnがアクティブレベルに駆動された時点で検出値が閾値T2を超えたと判定され、リセット動作が停止されている。
図10(a)には、図8に示された駆動(通常の撮像時の駆動)がなされた場合に読出部130によって読み出された信号の行ごとの平均値が例示されている。例えば、Iaは、駆動信号G3が印加される第3行を構成する複数の画素の信号の平均値である。図10(b)には、図9に示された駆動(信号変換係数の測定時の駆動)がなされた場合に読出部130によって読み出された信号の行ごとの平均値が例示されている。例えば、Ibは、駆動信号Gbが印加される第b行を構成する複数の画素の信号の平均値である。
放射線が照射されてから、検出部180によって検出値が演算され、それに従って制御部170が放射線の照射の開始を検出するまでには、相応の時間遅延がある。この時間遅延の間も駆動信号Gがアクティブレベルに駆動される行の画素Pの変換素子はリセットされる。これによって、図10(a)、(b)に例示されるようなアーチファクトが発生する。アーチファクトは、閾値がT1より大きいT2に設定される信号変換係数γの測定時の方が大きい。図9、図10(b)に示された例では、第b行から第n行の画素Pは放射線の照射の停止後もリセットされているので、当該行の画素の信号の平均値は0となっている。
信号変換係数γは、検出値が閾値T2に到達した時点での画素Pの状態によって定めるアーチファクトの大きさと相関を有するので、該アーチファクトの大きさを定量化することによって信号変換係数γを求めることができる。ここで、検出値が閾値T2に到達した時点でのアーチファクトの大きさを定量化するために、第x行のアーチファクト量I(x)を、例えば、放射線の照射中にリセットされなかった行の画素の信号値と第x行の画素の信号値との差分と定義することができる。また、信号変換係数γは、以下の式のように定義することができる。アーチファクト量I(x)は、仮に検出値が閾値T2に到達した時点で第x行の画素Pから信号値を読み出すことができるならば、その信号値と、放射線の照射中にリセットされなかった行の画素の信号値とに基づいて得ることができる量である。
γ=T2/(α×ΣI(x)) (4)
ΣI(x)は、検出部180から出力される検出値が閾値T2に達するまでの時間におけるI(x)の積算値(図10(b)の例では、第1行から第n行までのI(x)の積算値)である。αは、スイッチTTの転送効率を示す定数であり、シミュレーションまたは実測によって予め求めることができる。α×ΣI(x)は、放射線の照射時におけるリセットによって失われた電荷の量に対応するものであり、放射線の照射時に変換素子CVで発生する電荷の量に対して相関を有する。つまり、α×ΣI(x)は、図6における横軸(画素信号(評価値))として理解することができる。
ΣI(x)は、検出部180から出力される検出値が閾値T2に達するまでの時間におけるI(x)の積算値(図10(b)の例では、第1行から第n行までのI(x)の積算値)である。αは、スイッチTTの転送効率を示す定数であり、シミュレーションまたは実測によって予め求めることができる。α×ΣI(x)は、放射線の照射時におけるリセットによって失われた電荷の量に対応するものであり、放射線の照射時に変換素子CVで発生する電荷の量に対して相関を有する。つまり、α×ΣI(x)は、図6における横軸(画素信号(評価値))として理解することができる。
また、信号変換係数γの計算は、上記の例に限定されるものではない。信号変換係数γは、放射線が照射された画素Pから読出部130によって読み出される信号の値またはそれを処理(例えば、平均値の演算、総和の演算など)した処理結果と検出部180から出力される検出値との関係を示す係数に過ぎない。よって、信号変換係数γは、放射線が照射された画素Pから読出部130によって読み出される信号の値またはそれを処理した処理結果と検出部180から出力される検出値とに基づいて計算されうる。
本実施形態の放射線撮像装置100は、放射線の照射時に画素Pから読出部130または他の回路によって信号を読み出すことができない。そこで、放射線の照射の終了後に読出部130によって読み出される信号から得ることができるアーチファクト量を利用して信号変換係数γが計算される。しかしながら、放射線の照射時に画素Pから信号を読み出すことができる構成においては、その信号に基づいて信号変換係数γを計算することができる。
次に、図11を参照しながら図7のステップS716における信号変換係数γの調整をステップS712、S714における処理とともに説明する。ここで、センサ182は、電流電圧変換回路と、該電流電圧変換回路の出力電圧をデジタル信号に変換するAD変換回路で構成されているものとする。図11において、第n行の駆動信号Gn、第(n+1)行の駆動信号Gn+1、バイアス線Bsを流れるバイアス電流を電流電圧変換回路によって電圧に変換した波形を示している。この例では、画素PのスイッチTTは、駆動信号がハイレベルになるとオンし、ローレベルになるとオフする。画素PのスイッチTTがオンする時間がTH、オフする時間がTL、処理部184がセンサ182の出力(AD変換回路の出力)をサンプリングするサンプリング周期がTSとして示されている。一例において、TH=TL=16μ秒、TS=1μ秒とすることができる。
1つの行のリセットにおいて、32個のバイアス電流信号がセンサ182から出力される。y回目のリセットにおいて、時刻t0で駆動信号Gnがハイレベルに切り替わるものとする。駆動信号Gnがハイレベルに切り替わったことがAD変換回路に対する入力の変化として現れるのは時刻t1である。時刻t1〜時刻t5までに処理部184に供給される16個のバイアス電流信号をy回目のリセットにおける有効値S(y)とする。同様に、時刻t5〜時刻t9までに処理部184に供給される16個のバイアス電流信号は、スイッチTTが非導通状態にある場合に対応する。処理部184は、時刻t5〜時刻t9における16個のサンプル値のうち時刻t7〜時刻t8に出力された中頃の8個のサンプル値の合計値をy回目の初期化動作に対するノイズ値N(y)とする。
処理部184は、時刻t0から遅延時間TD後のサンプル個数n個のバイアス電流信号を用いてγを計算する。図11(b)にその例を示す。一例において、調整部187は、最初にステップS712を実行するときは、遅延時間TDの初期値がt3、サンプル個数がnに設定された状態でγを測定する。そして、ステップS714において、γが許容範囲に収まっていないと判断した場合、調整部187は、ステップS716においてサンプリング条件(具体的には、遅延時間TDおよび/またはサンプル個数n)を変更し、ステップS712、S714を再度実行する。遅延時間TDの変更は、サンプリングのタイミングの変更を意味する。
このような処理は、ステップS714においてγが許容範囲に収まっていると判断されるまで、ステップS716において遅延時間TDまたはサンプル個数nを変更しながら繰り返される。ここで、遅延時間TDは、一例において、初期値t3からt3+1μs、t3−1μs、t3−2μs・・というように1μsずつ変更されうる。同様に、サンプル個数nは、一例において、初期値nからn+1、n+2・・・もしくはn−1、n−2・・というように1つずつ変更されうる。
上記の実施形態は、本発明の例示的な実施形態に過ぎず、種々の変形が可能である。例えば、リセット動作では、偶数行の画素のスイッチを順番に導通させてから奇数行の画素のスイッチを順番に導通させ、読出動作では、先頭行から最終行まで画素のスイッチを順番に導通させてもよい。あるいは、リセット動作では、先頭行から最終行まで画素のスイッチを順番に導通させ、読出動作では、偶数行の画素のスイッチを順番に導通させてから奇数行の画素のスイッチを順番に導通させてもよい。また、リセット動作と読出動作の両方において、偶数行の画素のスイッチを順番に導通させてから奇数行の画素のスイッチを順番に導通させてもよい。
また、リセット動作では、1度に1行の画素のスイッチのみを導通させるのではなく、複数行の画素のスイッチを同時に導通させてもよい。例えば、複数の偶数行の画素を同時に導通させながら全ての偶数行の画素をリセットした後に、複数の奇数行の画素の同時に導通させながら全ての奇数行の画素をリセットしてもよい。リセット動作は、行の番号の昇順または降順に行う必要はなく、連続的にリセットされる行は、相互に隣接しない行であってもよい。
上記の実施形態における機能は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することもできる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体又はかかるプログラムを伝送するインターネット等の伝送媒体も本発明の実施形態として適用することができる。また、上記のプログラムも本発明の実施形態として適用することができる。上記のプログラム、記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
110:画素アレイ、P:画素、180:検出部、187:調整部、170:制御部
Claims (10)
- 放射線による画像を撮像するための複数の画素が配列された画素アレイと、
放射線の照射に応じた検出値を出力する検出部と、
前記画素アレイから出力される信号または該信号を処理した処理結果と前記検出値との関係が所定の関係になるように前記検出部の特性を調整する調整部と、
前記検出値が閾値を超えたことに応じて、放射線が照射されたことを検出する制御部と、
を備えることを特徴とする放射線撮像装置。 - 前記画素アレイに電源線を介して電圧を供給する電源を更に備え、
前記検出部は、前記電源線を流れる電流に応じた値を前記検出値として出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。 - 前記画素アレイの各画素は、放射線を電気信号に変換する変換素子と、駆動信号に応じて前記変換素子と信号線とを接続するスイッチとを含み、
前記検出部は、放射線の照射に応じた電気信号を出力するセンサと、前記センサから出力される電気信号を処理して前記検出値を発生する処理部と、を含む、
前記処理部は、前記スイッチがオンしている間に前記センサから出力される信号と前記スイッチがオフしている間に前記センサから出力される信号との相関二重サンプリングによって前記検出値を得る、
ことを特徴とする請求項2に記載の放射線撮像装置。 - 前記処理部は、前記スイッチがオンしている間に前記センサから出力される1又は複数の信号をサンプリングし、また、前記スイッチがオフしているに前記センサから出力される1又は複数の信号をサンプリングし、
前記調整部は、前記処理部によるサンプリング条件を調整するように構成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。 - 前記サンプリング条件は、サンプリングのタイミングおよび個数の少なくとも一方についての条件を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の放射線撮像装置。 - 前記調整部は、前記閾値の代わりに調整用閾値が設定された状態でなされる放射線の照射に応じて前記画素アレイから出力される信号または該信号を処理した処理結果と前記調整用閾値とに基づいて前記検出部の特性を調整する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。 - 前記調整用閾値が設定された状態において、前記検出値が前記調整用閾値を超えるまでは前記複数の画素を所定順序でリセットするリセット動作を繰り返し、前記検出値が前記調整用閾値を超えたことに応じて前記リセット動作を停止し、放射線の照射の終了後に前記画素アレイから信号を読み出すように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の放射線撮像装置。
- 前記画素アレイから出力される信号には、放射線の照射が開始された後にリセットされる画素があることによってアーチファクトが発生し、
前記調整部は、前記アーチファクトと前記調整用閾値とに基づいて前記関係を評価しながら前記検出部の特性を調整する、
ことを特徴とする請求項7に記載の放射線撮像装置。 - 放射線による画像を撮像するための複数の画素が配列された画素アレイと、放射線の照射に応じた検出値を出力する検出部と、前記検出値が閾値を超えたことに応じて、放射線が照射されたことを検出する制御部と、を備える放射線撮像装置を調整する調整方法であって、
前記画素アレイから出力される信号または該信号を処理した処理結果と前記検出値との関係を得るための測定工程と、
前記関係が許容範囲からずれている場合に、前記関係が所定の関係になるように前記検出部の特性を調整する調整工程と、
を含むことを特徴とする放射線撮像装置の調整方法。 - 前記測定工程は、
前記放射線撮像装置の前記閾値を、前記閾値より大きい調整用閾値に設定する工程と、
前記調整用閾値が設定された前記放射線撮像装置に放射線を照射し、前記画素アレイに電荷を蓄積させる工程と、
前記画素アレイから出力される信号と前記調整用閾値とに基づいて前記関係を得る工程とを含み、
前記調整用閾値が設定された前記放射線撮像装置は、前記検出値が前記調整用閾値を超えるまでは前記複数の画素を所定順序でリセットするリセット動作を繰り返し、前記検出値が前記調整用閾値を超えたことに応じて前記リセット動作を停止し、放射線の照射の終了後に前記画素アレイから信号を読み出すように動作し、
前記画素アレイから出力される信号には、放射線の照射が開始された後にリセットされる画素があることによってアーチファクトが発生し、
前記関係を得る工程では、前記アーチファクトに基づいて前記関係を得る、
ことを特徴とする請求項9に記載の放射線撮像装置の調整方法。
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