JP6392561B2 - はんだ付け用フラックス組成物、それを用いた太陽電池モジュールの製造方法および電子基板の製造方法 - Google Patents
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すなわち、本発明のはんだ付け用フラックス組成物は、(A)溶剤と、(B)活性剤とを含有し、前記(A)成分は、(A1)炭素数2〜8のジカルボン酸と炭素数1〜7のアルコールからなるジカルボン酸エステル、(A2)炭素数2〜7のモノカルボン酸と炭素数1〜7のアルコールからなるモノカルボン酸エステル、および(A3)アルコール系溶剤を含有し、前記(B)成分は、炭素数2〜5のジカルボン酸であり、前記(B)成分の配合量が、前記(A1)成分100質量部に対して、30質量部以上450質量部以下であり、前記(A3)成分の配合量が、当該フラックス組成物100質量%に対して、75質量%以上95質量%以下であることを特徴とするものである。
本発明のはんだ付け用フラックス組成物においては、当該フラックス組成物100質量%に対する、前記(A1)成分の配合量が、0.05質量%以上5質量%以下であり、前記(A2)成分の配合量が、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
本発明のはんだ付け用フラックス組成物においては、ロジンを含有していないことが好ましい。
本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、前記はんだ付け用フラックス組成物を用いて太陽電池モジュールを作製することを特徴とする方法である。
本発明の電子基板の製造方法は、前記はんだ付け用フラックス組成物を用いて電子基板を作製することを特徴とする方法である。
すなわち、本発明のはんだ付け用フラックス組成物においては、フラックス残さの主要因であるロジンを含有していないため、はんだ付け後の残さを極めて少なくできる。一方で、ロジンを含有していないために、通常はロジンが担っている作用(はんだ表面の再酸化を抑制することや、熱媒体として活性剤の熱劣化を抑制すること)を他の成分で補うことが必要となる。これに対し、(B)成分と(A1)成分とを所定比率で組み合わせて用いた場合、はんだ表面の再酸化を抑制でき、(B)成分である活性剤の熱劣化を抑制できるという知見を本発明者らは見出し、このような構成を採用した。そして、(B)成分と(A1)成分に、更に(A2)成分を組み合わせることにより、はんだ付け時におけるフラックスの表面張力がより高まるため、はんだや接合対象の金属へのぬれ性を向上でき、金属に対し選択的にフラックス作用を及ぼすことができる。この理由については、電極などの金属は基材などと比較して表面張力が高いため、液体が金属部分に集まりやすいが、表面張力が高く、基材などにはじかれ易い液体の方が金属部分により集まりやすくなるためと推察される。以上のようなメカニズムにより、本発明のはんだ付け用フラックス組成物は、はんだ付け後の残さが極めて少ないにも拘わらず、はんだ付け性に優れるものと本発明者らは推察する。
本発明に用いる(A)溶媒は、以下説明する(A1)成分、(A2)成分および(A3)成分を含有するものである。
ジカルボン酸の炭素数は、はんだ付け性の観点から、3〜6であることが好ましく、4〜6であることがより好ましく、6であることが特に好ましい。ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、フタル酸などが挙げられる。
アルコールの炭素数は、はんだ付け性の観点から、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、フェノールなどが挙げられる。
また、この(A1)成分は、760mmHgにおける沸点が150℃以上300℃以下であることが好ましい。
モノカルボン酸の炭素数は、はんだ付け性の観点から、2〜4であることが好ましく、2〜3であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、安息香酸などが挙げられる。
アルコールの炭素数は、はんだ付け性の観点から、1〜5であることが好ましく3〜5であることがより好ましく、4であることが特に好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、フェノールなどが挙げられる。
また、この(A2)成分は、760mmHgにおける沸点が50℃以上200℃以下であることが好ましい。
また、前記(A1)成分および前記(A2)成分の合計配合量は、フラックス組成物の金属へのぬれ性を向上するという観点から、当該フラックス組成物100質量%に対して、5質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
また、この(A3)成分は、760mmHgにおける沸点が100℃以下であることが好ましい。
この(A4)成分としては、グリコール系溶剤、炭化水素系溶剤、(A1)成分および(A2)成分以外のエステル系溶剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に用いる(B)活性剤は、炭素数2〜5のジカルボン酸である。そして、本発明においては、この(B)成分の配合量が、前記(A3)成分100質量部に対して、30質量部以上450質量部以下であることが必要である。(B)成分の配合量が前記範囲内であれば、はんだ表面の再酸化を抑制することや、熱媒体として活性剤の熱劣化を抑制することができる。また、同様の観点から、(B)成分の配合量が、前記(A3)成分100質量部に対して、40質量部以上400質量部以下であることがより好ましく、50質量部以上300質量部以下であることが特に好ましい。
また、この(B)成分は、760mmHgにおける沸点が320℃以下であることが好ましい。
この(B)成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸などが挙げられる。これらの中でも、はんだ付け性とフラックス残さとのバランスの観点から、マロン酸、コハク酸、グルタル酸が好ましく、コハク酸が特に好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
次に、本発明の太陽電池モジュールおよび電子基板について説明する。本発明の太陽電池モジュールは、以上説明したフラックス組成物を用いて、例えばタブ線を太陽電池セルのバスバー電極に接合することで作製できる太陽電池モジュールである。また、本発明の電子基板は、以上説明したフラックス組成物を用いて、例えば電子部品をプリント配線基板などに実装することで作製できる電子基板である。なお、前記本発明のフラックス組成物は、太陽電池モジュール用のフラックス組成物として好適なものであるので、ここでは、太陽電池モジュールを作製する方法を例に挙げて、図面に基づいて説明する。
本発明の太陽電池モジュールは、図1に示すように、太陽電池セル1のバスバー電極11と、タブ線2とを、フラックス組成物3を用いてはんだ接合することで作製できる。具体的には、以下説明する塗布工程、配置工程およびはんだ接合工程により、太陽電池モジュールを作製できる。
太陽電池セル1は、図1(A)に示すように、バスバー電極11と、フィンガー電極12を備える。太陽電池セル1は、単結晶セル、多結晶セルなどの結晶性セルであってもよく、アモルファスセルであってもよい。また、バスバー電極11およびフィンガー電極12の金属としては、例えば、銀などを用いることができる。
タブ線2は、バー状の金属の表面にはんだメッキ処理が施されたものである。このタブ線2により、複数の太陽電池セル1を連結させることができる。タブ線2の材質は、金属であればよく特に限定されないが、例えば、銅などを用いることができる。また、はんだメッキ処理におけるはんだ組成としては、例えば、Snメッキ、Sn/Pbメッキ、Sn/Agメッキなどが挙げられる。
フラックス組成物3としては、前記本発明のフラックス組成物を用いる。
ここで用いる塗布装置としては、ディスペンサー、ジェットディスペンサーなどが挙げられる。
配置工程においては、図1(C)に示すように、フラックス組成物3と、タブ線2とが接するように、太陽電池セル1にタブ線2を配置する。
このはんだ接合工程においてはんだ接合の方式としては、熱圧着方式、パルスヒート方式などが採用できる。
例えば、熱圧着方式を採用し、タブ線2のメッキがSn/Pb共晶はんだである場合、熱圧着時の温度は、190℃以上250℃以下であることが好ましく、210℃以上230℃以下であることがより好ましい。熱圧着時の温度が前記下限未満では、太陽電池セル1のバスバー電極11とタブ線2とのはんだ接合が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、太陽電池セル1などが熱により変形しやすくなる傾向にある。
熱圧着時の圧力は、0.3MPa以下であることが好ましく、0.2MPa以下であることがより好ましい。
熱圧着時の加圧時間は、3秒間以上15秒間以下であることが好ましく、5秒間以上10秒間以下であることがより好ましい。
((A1)成分)
ジカルボン酸エステルA:アジピン酸ジメチル(沸点:230℃)
ジカルボン酸エステルB:アジピン酸モノメチル(沸点:292℃)
((A2)成分)
モノカルボン酸エステル:酢酸ブチル(沸点:99℃)
((A3)成分)
アルコール系溶剤A:エタノール(沸点:78℃)
アルコール系溶剤B:イソプロパノール(沸点:82℃)
アルコール系溶剤C:メタノール(沸点:64℃)
((B)成分)
活性剤A:コハク酸(沸点:235℃)
(他の成分)
活性剤B:アジピン酸(沸点:300℃以上)
ジカルボン酸エステルA0.4質量%、モノカルボン酸エステル7質量%、アルコール系溶剤A74.8質量%、アルコール系溶剤B16質量%、アルコール系溶剤C1.6質量%および活性剤A0.2質量%を容器に投入し、混合してフラックス組成物を得た。
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、フラックス組成物を得た。
[比較例1〜5]
表2に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、フラックス組成物を得た。
フラックス組成物の特性(はんだ付け後の残さ、はんだ付け性、銅板腐食性、接合強度)を以下のような方法で評価した。実施例について得られた結果を表1に示し、比較例について得られた結果を表2に示す。
(試験基板作製条件)
基板:FR−4(大きさ:150mm×100mm、厚み:1.6mm、はんだ付けポイント数:576箇所)
はんだの合金組成:Sn/0.3Ag/0.7Cu
はんだ付け装置:タムラ製作所社製の「HC33−36NF」
フラックス塗布装置:スプレーフラクサー(タムラ製作所社製の「TAF33−12PV」)
フラックス塗布量:100〜130mL/m3
プリヒート温度:100℃
(1)はんだ付け後の残さ
フローはんだ付後のフラックス残さの状態を目視により評価した。そして、下記の基準に従って、はんだ付け後の残さを評価した。
◎:残さ量が少なく均一である。
○:残さ量は少ないが、若干不均一である。
×:残さ量が多い。
(2)はんだ付け性
はんだ付け後の基板におけるツララ箇所を測定した。そして、下記の基準に従って、はんだ付け性を評価した。
○:基板1枚あたりのツララ発生数が、10箇所以下である。
△:基板1枚あたりのツララ発生数が、11箇所以上20箇所以下である。
×:基板1枚あたりのツララ発生数が、21箇所以上である。
(3)銅板腐食性
JIS Z 3197に記載の方法により、下記の基準に従って、銅板腐食性を評価した。
○:合格
×:不合格
(4)接合強度
太陽電池セル(大きさ:125mm×125mm、バスバー電極幅:1.5mm)とタブ線(タブ線幅:1.5mm、メッキのはんだ組成:Sn/90Ag)とを、フラックス組成物を用いて接合したものを試料とした。そして、引張試験機を用いて、その試料のタブ線を太陽電池セルに対して180°方向に線圧1N/mmの条件で引張った場合の引張強度を測定し、下記の基準に従って、接合強度を評価した。
○:引張強度が1.5N以上である。
×:引張強度が1.5N未満である。
これに対し、(A1)成分に対する(B)成分の配合量が前記範囲外の場合(比較例1〜4)には、はんだ付け後の残さ、はんだ付け性、銅板腐食性および接合強度のうちのいずれか1つ以上が不十分となることが確認された。また、活性剤として(B)成分以外のものを用いた場合(比較例5)には、銅板腐食性が劣り、例えば太陽電池モジュールでのはんだ付けの際には、太陽電池セルのフィンガー電極やタブ線などが腐食するといった問題があることが分かった。
11…バスバー電極
12…フィンガー電極
2…タブ線
3…フラックス組成物
Claims (6)
- (A)溶剤と、(B)活性剤とを含有し、
前記(A)成分は、(A1)炭素数2〜8のジカルボン酸と炭素数1〜7のアルコールからなるジカルボン酸エステル、(A2)炭素数2〜7のモノカルボン酸と炭素数1〜7のアルコールからなるモノカルボン酸エステル、および(A3)アルコール系溶剤を含有し、
前記(B)成分は、炭素数2〜5のジカルボン酸であり、
前記(B)成分の配合量が、前記(A1)成分100質量部に対して、30質量部以上450質量部以下であり、
前記(A3)成分の配合量が、当該フラックス組成物100質量%に対して、75質量%以上95質量%以下である
ことを特徴とするはんだ付け用フラックス組成物。 - 請求項1に記載のはんだ付け用フラックス組成物において、
前記(B)成分の配合量が、当該フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下である
ことを特徴とするはんだ付け用フラックス組成物。 - 請求項1または請求項2に記載のはんだ付け用フラックス組成物において、
当該フラックス組成物100質量%に対する、
前記(A1)成分の配合量が、0.05質量%以上5質量%以下であり、
前記(A2)成分の配合量が、1質量%以上20質量%以下である
ことを特徴とするはんだ付け用フラックス組成物。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のはんだ付け用フラックス組成物において、
ロジンを含有していない
ことを特徴とするはんだ付け用フラックス組成物。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のはんだ付け用フラックス組成物を用いて太陽電池モジュールを作製することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
- 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のはんだ付け用フラックス組成物を用いて電子基板を作製することを特徴とする電子基板の製造方法。
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