JP6310027B2 - はんだ付け用フラックス組成物、太陽電池モジュールの製造方法および電子基板の製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明のはんだ付け用フラックス組成物は、ロジンを含有しないはんだ付け用フラックス組成物であって、前記フラックス組成物は、(A)溶剤と、(B)活性剤とを含有し、前記(A)成分は、(A1)沸点が120℃以上320℃以下のグリコール系溶剤またはテルペン系溶剤、(A2)炭素数2〜8のジカルボン酸と炭素数1〜8のアルコールからなるジカルボン酸エステル、および(A3)アルコール系溶剤を含有し、前記(B)成分は、炭素数2〜6のジカルボン酸であり、前記(A3)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、75質量%以上95質量%以下であり、
前記(B)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、0.5質量%以上3質量%以下であることを特徴とするものである。
本発明のはんだ付け用フラックス組成物においては、前記(A2)成分の配合量が、当該フラックス組成物100質量%に対して、0.05質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
本発明のはんだ付け用フラックス組成物においては、前記(A1)成分が、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルおよびジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の太陽電池モジュールは、前記はんだ付け用フラックス組成物を用いて作製されることを特徴とするものである。
本発明の電子基板は、前記はんだ付け用フラックス組成物を用いて作製されることを特徴とするものである。
すなわち、本発明のはんだ付け用フラックス組成物においては、フラックス残さの主要因であるロジンを含有していないため、はんだ付け後の残さを極めて少なくできる。一方で、ロジンを含有していないために、通常はロジンが担っている作用(はんだ表面の再酸化を抑制することや、熱媒体として活性剤の熱劣化を抑制すること)を他の成分で補うことが必要となる。これに対し、(B)成分と(A1)成分および(A2)成分とを組み合わせて用いた場合、はんだ表面の再酸化を抑制でき、(B)成分である活性剤の熱劣化を抑制できる。そして、(A1)成分および(A2)成分は、はんだ付け時には大気中に揮発するために、設備のメンテナンス性を損なうことがない。さらに、(B)成分の配合量は、金属腐食を抑制できるような範囲としている。以上のようなメカニズムにより、本発明のはんだ付け用フラックス組成物は、はんだ付け後の残さが極めて少ないにも拘わらず、はんだ付け性に優れ、かつ金属腐食を十分に抑制できるものと本発明者らは推察する。
まず、本発明のはんだ付け用フラックス組成物について説明する。本発明のはんだ付け用フラックス組成物は、以下説明する(A)溶剤および(B)活性剤を含有するものである。
本発明に用いる(A)溶剤は、以下説明する(A1)成分、(A2)成分および(A3)成分を含有するものである。
前記(A1)成分としては、エチレングリコールモノメチルエーテル(124℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(249℃)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(295℃)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(271℃)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(259℃)、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(272℃)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(245℃)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(283℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(256℃)、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル(302℃)、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル(242℃)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(274℃)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(243℃)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(255℃)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(275℃)およびイソボルニルシクロヘキサノール(310〜318℃)などが挙げられる。これらの中でも、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、イソボルニルシクロヘキサノールが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、括弧内に記載の温度は、上記の溶剤の沸点である。
ジカルボン酸の炭素数は、はんだ付け性の観点から、3〜6であることが好ましく、4〜6であることがより好ましく、6であることが特に好ましい。ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、フタル酸などが挙げられる。
アルコールの炭素数は、1〜7であることが好ましく、また、はんだ付け性の観点から、1〜4であることがより好ましく、1〜2であることが更により好ましく、1であることが特に好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、フェノールなどが挙げられる。
また、この(A2)成分は、1013hPaにおける沸点が150℃以上300℃以下であることが好ましい。
また、この(A3)成分は、1013hPaにおける沸点が100℃以下であることが好ましい。
この(A4)成分としては、炭化水素系溶剤、(A1)成分以外のグリコール系溶剤、(A2)成分以外のエステル系溶剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に用いる(B)活性剤は、炭素数2〜6のジカルボン酸である。(B)成分の配合量が下記範囲内とすれば、はんだ表面の再酸化を抑制することや、熱媒体として活性剤の熱劣化を抑制することができる。
また、この(B)成分は、1013hPaにおける沸点が320℃以下であることが好ましい。
この(B)成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、およびアジピン酸などが挙げられる。これらの中でも、はんだ付け性とフラックス残さとのバランスの観点から、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸が好ましく、コハク酸が特に好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明のフラックス組成物は、前記(B)成分以外の活性剤として、非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤をさらに含有してもよい。この非解離型活性剤は、前記(B)成分の活性作用にほとんど影響を与えずに、非解離型活性剤としての活性作用を付与できる。
次に、本発明の太陽電池モジュールおよび電子基板について説明する。本発明の太陽電池モジュールは、以上説明したフラックス組成物を用いて、例えばタブ線を太陽電池セルのバスバー電極に接合することで作製できる太陽電池モジュールである。また、本発明の電子基板は、以上説明したフラックス組成物を用いて、例えば電子部品をプリント配線基板などに実装することで作製できる電子基板である。なお、前記本発明のフラックス組成物は、太陽電池モジュール用のフラックス組成物として好適なものであるので、ここでは、太陽電池モジュールを作製する方法を例に挙げて、図面に基づいて説明する。
本発明の太陽電池モジュールは、図1に示すように、太陽電池セル1のバスバー電極11と、タブ線2とを、フラックス組成物3を用いてはんだ接合することで作製できる。具体的には、以下説明する塗布工程、配置工程およびはんだ接合工程により、太陽電池モジュールを作製できる。
太陽電池セル1は、図1(A)に示すように、バスバー電極11と、フィンガー電極12を備える。太陽電池セル1は、単結晶セル、多結晶セルなどの結晶性セルであってもよく、アモルファスセルであってもよい。また、バスバー電極11およびフィンガー電極12の金属としては、例えば、銀などを用いることができる。
タブ線2は、バー状の金属の表面にはんだメッキ処理が施されたものである。このタブ線2により、複数の太陽電池セル1を連結させることができる。タブ線2の材質は、金属であればよく特に限定されないが、例えば、銅などを用いることができる。また、はんだメッキ処理におけるはんだ組成としては、例えば、Snメッキ、Sn/Pbメッキ、Sn/Agメッキ、Sn/Ag/Cuメッキなどが挙げられる。
フラックス組成物3としては、前記本発明のフラックス組成物を用いる。
ここで用いる塗布装置としては、ディスペンサー、ジェットディスペンサー、スプレーフラクサー、ロール転写などが挙げられる。
配置工程においては、図1(C)に示すように、フラックス組成物3と、タブ線2とが接するように、太陽電池セル1にタブ線2を配置する。
このはんだ接合工程においてはんだ接合の方式としては、熱圧着方式、パルスヒート方式、熱風ブロワー方式などが採用できる。
例えば、熱圧着方式を採用し、タブ線2のメッキがSn/Pb共晶はんだである場合、熱圧着時の温度は、190℃以上250℃以下であることが好ましく、210℃以上230℃以下であることがより好ましい。熱圧着時の温度が前記下限未満では、太陽電池セル1のバスバー電極11とタブ線2とのはんだ接合が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、太陽電池セル1などが熱により変形しやすくなる傾向にある。
((A1)成分)
グリコール系溶剤A:トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点:274℃)、日本乳化剤社製
グリコール系溶剤B:プロピレングリコールモノフェニルエーテル(沸点:243℃)、日本乳化剤社製
グリコール系溶剤C:ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(沸点:272℃)、日本乳化剤社製
テルペン系溶剤:イソボルニルシクロヘキサノール(沸点:310〜318℃)、日本テルペン化学社製
((A2)成分)
ジカルボン酸エステル:アジピン酸ジメチル(沸点:230℃)
((A3)成分)
アルコール系溶剤A:エタノール(沸点:78℃)
アルコール系溶剤B:イソプロパノール(沸点:82℃)
アルコール系溶剤C:メタノール(沸点:64℃)
((B)成分)
活性剤A:コハク酸(沸点:235℃)
活性剤B:アジピン酸(沸点:300℃以上)
(他の成分)
非解離型活性剤:ジブロモブテンジオール、エア・ブラウン社製
ロジン:商品名「中国ロジンX」、荒川化学工業社製
グリコール系溶剤A2質量%、ジカルボン酸エステル0.1質量%、アルコール系溶剤A83.5質量%、アルコール系溶剤B10質量%、アルコール系溶剤C1.6質量%、活性剤A2質量%および非解離型活性剤0.8質量%を容器に投入し、混合してフラックス組成物を得た。
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、フラックス組成物を得た。
[比較例1〜6]
表2に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、フラックス組成物を得た。
フラックス組成物の特性(残さおよびべたつき、はんだ付け性、銅板腐食性、保存性、ノズルの目詰まり)を以下のような方法で評価した。実施例について得られた結果を表1に示し、比較例について得られた結果を表2に示す。
(試験基板作製条件)
基板:太陽電池セル(大きさ:125mm×125mm、バスバー電極幅:1.5mm、バスバー電極:Ag100%焼成電極)
タブ線のはんだメッキの合金組成:Sn/Pb共晶はんだ(63Sn/37Pb)フラックス塗布:綿棒にて塗布
はんだ付け:ホットプレート上にて加熱(240℃、2秒間)
(1)残さおよびべたつき
はんだ付後のフラックス残さのべたつきを指触および目視により評価した。そして、下記の基準に従って、はんだ付け後のべたつきを評価した。
○:残さがほとんどなく、べたつきがない。
×:残さがあり、若干のべたつきがある。
××:残さが多く、べたつきがある。
(2)はんだ付け性
試験基板の接合強度を次のようにして測定した。すなわち、引張試験機を用いて、その試験基板のタブ線を太陽電池セルに対して180°方向に線圧1N/mmの条件で引張った場合の引張強度を測定し、下記の基準に従って、はんだ付け性を評価した。
○:引張強度が1.5N以上である。
△:引張強度が1.0N以上1.5N未満である。
×:引張強度が1.0N未満である。
(3)銅板腐食性
JIS Z 3197−1986に記載の方法により、下記の基準に従って、銅板腐食性を評価した。
○:合格
×:不合格
(4)保存性
フラックス組成物を、温度−15℃の環境下に、72時間放置して、その外観を目視にて観察した。そして、下記の基準に従って、フラックス組成物の保存性を評価した。
○:結晶の発生がない。
×:結晶が発生している。
(5)ノズルの目詰まり
ステンレスメッシュ(目開き:25μm)の上に、1滴(0.01mL)のフラックス組成物を滴下し、その後、温度25℃の室内に8時間放置したものを試料とする。試料のステンレスメッシュの開口穴(609箇所(29個×21列))を顕微鏡にて観察し、下記の基準に従って、ノズルの目詰まりを評価した。
◎:穴にフラックス組成物が残っていない。
○:穴にフラックス組成物が僅かに残っているが、目詰まりしていない。
×:フラックス組成物により目詰まりした穴がある。
これに対し、(B)成分の配合量が前記範囲外の場合(比較例1〜4)、或いは、(A1)成分を含有しない場合(比較例5および6)には、残さおよびべたつき、はんだ付け性、銅板腐食性、並びに、保存性のうちのいずれか1つ以上が不十分となることが確認された。
これに対し、本発明のフラックス組成物を用いた場合(実施例1〜11)には、ステンレスメッシュ上に長時間放置した場合にも、目詰まりが少ないことが確認された。そのため、ノズル径が小さいスプレーフラクサーノズルを用いた場合にも、目詰まりの発生を十分に抑制できる。
なお、スプレーフラクサーノズルの目詰まりの抑制の観点からは、(A1)成分が、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルおよびジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルのいずれかであることが好ましい。
11…バスバー電極
12…フィンガー電極
2…タブ線
3…フラックス組成物
Claims (6)
- ロジンを含有しないはんだ付け用フラックス組成物であって、
前記フラックス組成物は、(A)溶剤と、(B)活性剤とを含有し、
前記(A)成分は、(A1)沸点が120℃以上320℃以下のグリコール系溶剤またはテルペン系溶剤、(A2)炭素数2〜8のジカルボン酸と炭素数1〜8のアルコールからなるジカルボン酸エステル、および(A3)アルコール系溶剤を含有し、
前記(B)成分は、炭素数2〜6のジカルボン酸であり、
前記(A3)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、75質量%以上95質量%以下であり、
前記(B)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、0.5質量%以上3質量%以下である
ことを特徴とするはんだ付け用フラックス組成物。 - 請求項1に記載のはんだ付け用フラックス組成物において、
前記(A1)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、0.5質量%以上20質量%以下である
ことを特徴とするはんだ付け用フラックス組成物。 - 請求項1または請求項2に記載のはんだ付け用フラックス組成物において、
前記(A2)成分の配合量が、前記フラックス組成物100質量%に対して、0.05質量%以上5質量%以下である
ことを特徴とするはんだ付け用フラックス組成物。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のはんだ付け用フラックス組成物において、
前記(A1)成分が、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルおよびジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である
ことを特徴とするはんだ付け用フラックス組成物。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のはんだ付け用フラックス組成物を用いて太陽電池モジュールを作製することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
- 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のはんだ付け用フラックス組成物を用いて電子基板を作製することを特徴とする電子基板の製造方法。
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