本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
<回転電機の構造>
図1は、実施形態に係る回転電機1を、その回転軸Zrを通りかつ回転軸Zrを含む平面で切った断面図である。図2は、実施形態に係る回転電機1が備える巻線3Cの配線を示す図である。回転電機1は、ローター2と、ステーター3とを含む。ローター2は、回転軸Zrを中心として回転する。ローター2は、本体部2Bと、複数の突極2Tとを有する。複数の突極2Tは、本体部2Bの表面2BSから、回転軸Zrと直交する方向に突出する。本実施形態において、ローター2は、複数、より具体的には8個の突極2Tを備える。ローター2は、例えば、電磁鋼板を積層して製造される。
ステーター3は、ローター2の径方向外側に配置されてローター2の周囲を取り囲む環状の構造体としてのステーターコア3Kと、この構造体に取り付けられた複数の巻線3Cとを有する。ステーターコア3Kは、環状のヨーク3Yと、ヨーク3Yの内側、すなわちローター2側に設けられた複数の突極3Tとを有する。複数の突極3Tは、ヨーク3Yの周方向に沿って設けられる。隣接する突極3Tの間はスロット3Sであり、ここに巻線3Cが設けられる。本実施形態において、複数の巻線3Cは突極3T及びスロット3Sに集中巻されているが、巻線3Cは分布巻であってもよい。ステーターコア3Kは、例えば、電磁鋼板を積層して製造される。
巻線3Cを形成する電線は導体であり、例えば、銅線又はアルミニウム線等が用いられる。ステーター3は、巻線3Cが突極3Tに巻き回された構造体が樹脂でモールドされてもよい。このようにすることで、構造体と巻線とを一体にすることができるので、ステーター3の取り扱いが容易になる。
巻線3Cは、それぞれの突極3Tに巻き回され、スロット3Sに設けられる。本実施形態において、ステーター3は、複数、より具体的には12個の巻線3Cを備える。12個の巻線3Cは、環状の構造体、より具体的にはヨーク3Yの周方向に沿って設けられる。以下において、12個の巻線3Cを区別する場合は、3C1、3C2等のように符号3Cの後に数字を付して表す。
回転電機1の巻線3Cは、電機子巻線と界磁巻線とが共通となっている。回転電機1は、界磁巻線としての巻線3Cが作る磁界をローター2の磁極である突極2Tで変調し、電機子巻線としての巻線3Cが作る磁界と同期させてローター2を回転させる。このため、複数の巻線3Cは、界磁磁束を発生させるための界磁信号とローター2を3相の回転電機として駆動させるための駆動信号とが重畳されて入力される。界磁信号と駆動信号とが重畳された信号を、適宜合成駆動信号と称する。このような構造及び駆動信号により、回転電機1は、簡易な機器で界磁磁束及び電機子の磁束の両方が制御される。
図1及び図2中の符号A、B、C、D、E、F及び符号U、V、Wは、それぞれの巻線3Cの相を表す。相を表す符号に付される+及び−は、巻線3Cの相が生成する磁束の方向を示す。本実施形態においては、便宜上+をN極とし、−をS極とするが、+がS極、−がN極であってもよい。界磁信号は、回転電機1のA相と、B相と、C相と、D相と、E相と、F相とに入力される電気信号である。駆動信号は、回転電機1のU相と、V相と、W相とに入力される電気信号である。
本実施形態において、A相は巻線3C1及び3C7、B相は巻線3C4及び3C10、C相は巻線3C5及び3C11、D相は巻線3C8及び3C2、E相は巻線3C9及び3C3、F相は巻線3C12及び3C6である。本実施形態において、A相からF相のそれぞれの相に対応する複数(本実施形態では2個)の巻線3Cは、それぞれ並列に接続されている。
図1に示されるように、複数の巻線3C1から3C12は、ステーター3の周方向に沿って、+A相(+U相)、−D相(−U相)、−E相(−V相)、+B相(+V相)、+C相(+W相)、−F相(−W相)、−A相(−U相)、+D相(+U相)、+E相(+V相)、−B相(−V相)、−C相(−W相)、+F相(+W相)の順に配置される。
隣接する2個の巻線3C、3Cを巻線対とすると、6個の巻線対7a、7b、7c、7d、7e及び7fが形成される。巻線対7aは、隣接する2個の巻線3C1及び巻線3C12であり、巻線対7bは隣接する2個の巻線3C2、巻線3C3であり、巻線対7cは隣接する2個の巻線3C4、巻線3C5であり、巻線対7dは隣接する2個の巻線3C6、巻線3C7であり、巻線対7eは隣接する2個の巻線3C8、巻線3C9であり、巻線対7fは隣接する2個の巻線3C10、巻線3C11である。
巻線対7a、7c及び7eは、これらを形成する巻線3Cがいずれも+の相であり、N極を形成する。巻線対7b、7d及び7fは、これらを形成する巻線3Cがいずれも−の相であり、S極を形成する。このため、6個の巻線対7a、7b、7c、7d、7e及び7fは、巻線3Cに印加される界磁信号によって、ステーター3の周方向に沿って、N極とS極とを交互に形成する。
A相に対応する巻線3C1、3C7及びD相に対応する巻線3C2、3C8には、回転電機1を3相の回転電機として駆動するための駆動信号のU相が入力される。B相に対応する巻線3C4、3C10及びE相に対応する巻線3C3、3C9には、回転電機1を3相の回転電機として駆動するための駆動信号のV相が入力される。また、C相に対応する巻線3C5、3C11及びF相に対応する巻線3C6、3C12には、回転電機1を3相の回転電機として駆動するための駆動信号のW相が入力される。
(1)A相及びU相に対応する巻線3C1及び巻線3C7には、駆動信号のU相に対応する駆動電圧Vuと、回転電機1に界磁磁束を発生させるための界磁信号として界磁電圧+Vとが重畳されて印加される。
(2)B相及びV相に対応する巻線3C4及び巻線3C10には、駆動信号のV相に対応する駆動電圧Vvと、回転電機1に界磁磁束を発生させるための界磁信号として界磁電圧−Vとが重畳されて印加される。
(3)C相及びW相に対応する巻線3C5及び巻線3C11には、駆動信号のW相に対応する駆動電圧Vwと、回転電機1に界磁磁束を発生させるための界磁信号として界磁電圧+Vとが重畳されて印加される。
(4)D相及びU相に対応する巻線3C2及び巻線3C8には、駆動信号のU相に対応する駆動電圧Vuと、回転電機1に界磁磁束を発生させるための界磁信号として界磁電圧−Vとが重畳されて印加される。
(5)E相及びV相に対応する巻線3C3及び巻線3C9には、駆動信号のV相に対応する駆動電圧Vvと、回転電機1に界磁磁束を発生させるための界磁信号として界磁電圧+Vとが重畳されて印加される。
(6)F相及びW相に対応する巻線3C6及び巻線3C12には、駆動信号のW相に対応する駆動電圧Vwと、回転電機1に界磁磁束を発生させるための界磁信号として界磁電圧−Vとが重畳されて印加される。
駆動電圧Vu、Vv、Vwは交流電圧であり、界磁電圧+V、―Vは直流電圧である。界磁電圧+V、−Vば直流電圧には限定されない。
回転電機1は、図1に示されるように、同相の駆動信号が入力される巻線3C同士が隣接して配置される。具体的には、U相の駆動信号が入力される、A相に対応する巻線3C1とD相に対応する巻線3C2とが隣接し、同様にA相に対応する巻線3C7とD相に対応する巻線3C8とが隣接する。V相の駆動信号が入力される、E相に対応する巻線3C3とB相に対応する巻線3C4とが隣接し、同様にE相に対応する巻線3C9とB相に対応する巻線3C10とが隣接する。W相の駆動信号が入力される、C相に対応する巻線3C5とF相に対応する巻線3C6とが隣接し、同様にC相に対応する巻線3C11とF相に対応する巻線3C12とが隣接する。
図2中の矢印R1及び矢印R2は、巻線3Cのステーター3の突極3Tに対する巻方向を示しており、図2から分かるように、矢印R1と矢印R2とは、方向が反対になっている。図2に示されるように、A相に対応する巻線3C1と巻線3C7とは、巻方向が反対になっている。B相に対応する巻線3C4と巻線3C10とは、巻方向が反対になっている。C相に対応する巻線3C5と巻線3C11とは、巻方向が反対になっている。D相に対応する巻線3C2と巻線3C8とは、巻方向が反対になっている。E相に対応する巻線3C3と巻線3C9とは、巻方向が反対になっている。F相に対応する巻線3C6と巻線3C12とは、巻方向が反対になっている。
周方向に隣接するA相の巻線3C1とD相の巻線3C2とは、U相の駆動信号が入力されるが、ステーター3の突極3Tに対する巻方向が反対になっている。周方向に隣接するA相の巻線3C1は、F相の巻線3C12とともに巻線対7aを形成する。巻線対7aは+なので、巻線3C1は+の相となり、巻線3C1に隣接し、かつ巻線3C1とは巻方向が反対となる巻線3C2は−の相になる。このため、巻線3C1及び巻線3C2にU相の駆動信号が入力されると、巻線3C1は+U相及び+A相となり、巻線3C2は−U相及び−D相になる。
周方向に隣接するE相の巻線3C3とB相の巻線3C4とは、V相の駆動信号が入力されるが、ステーター3の突極3Tに対する巻方向が反対になっている。周方向に隣接するE相の巻線3C3は、D相の巻線3C2とともに巻線対7bを形成する。巻線対7bは−なので、巻線3C3は−の相となり、巻線3C3に隣接し、かつ巻線3C3とは巻方向が反対となる巻線3C4は+の相になる。このため、巻線3C3及び巻線3C4にV相の駆動信号が入力されると、巻線3C3は−V相及び−E相となり、巻線3C4は+V相及び+B相になる。
周方向に隣接するC相の巻線3C5とF相の巻線3C6とは、W相の駆動信号が入力されるが、ステーター3の突極3Tに対する巻方向が反対になっている。周方向に隣接するC相の巻線3C5は、B相の巻線3C4とともに巻線対7cを形成する。巻線対7cは+なので、巻線3C5は+の相となり、巻線3C5に隣接し、かつ巻線3C5とは巻方向が反対となる巻線3C6は−の相になる。このため、巻線3C5及び巻線3C6にW相の駆動信号が入力されると、巻線3C5は+W相及び+C相となり、巻線3C6は−W相及び−F相になる。
周方向に隣接するA相の巻線3C7とD相の巻線3C8とは、U相の駆動信号が入力されるが、ステーター3の突極3Tに対する巻方向が反対になっている。周方向に隣接するA相の巻線3C7は、F相の巻線3C6とともに巻線対7dを形成する。巻線対7dは−なので、巻線3C7は−の相となり、巻線3C7に隣接し、かつ巻線3C7とは巻方向が反対となる巻線3C8は+の相になる。このため、巻線3C7及び巻線3C8にU相の駆動信号が入力されると、巻線3C7は−U相及び−A相となり、巻線3C8は+U相及び+D相になる。
周方向に隣接するE相の巻線3C9とB相の巻線3C10とは、V相の駆動信号が入力されるが、ステーター3の突極3Tに対する巻方向が反対になっている。周方向に隣接するE相の巻線3C9は、D相の巻線3C8とともに巻線対7eを形成する。巻線対7eは+なので、巻線3C9は+の相となり、巻線3C9に隣接し、かつ巻線3C9とは巻方向が反対となる巻線3C10は−の相になる。このため、巻線3C9及び巻線3C10にV相の駆動信号が入力されると、巻線3C9は+V相及び+E相となり、巻線3C10は−V相及び−B相になる。
周方向に隣接するC相の巻線3C11とF相の巻線3C12とは、W相の駆動信号が入力されるが、ステーター3の突極3Tに対する巻方向が反対になっている。周方向に隣接するC相の巻線3C11は、B相の巻線3C10とともに巻線対7fを形成する。巻線対7fは−なので、巻線3C11は−の相となり、巻線3C11に隣接し、かつ巻線3C11とは巻方向が反対となる巻線3C12は+の相になる。このため、巻線3C11及び巻線3C12にW相の駆動信号が入力されると、巻線3C11は−W相及び−C相となり、巻線3C12は+W相及び+F相になる。
このように、本実施形態において、同相の駆動信号は、隣接する巻線3Cに入力される。同相の駆動信号が入力される巻線3C同士は、ステーター3の突極3Tの巻方向が反対になっている。このような構造により、回転電機1は、巻線3Cに界磁信号が入力されると、12個の巻線3Cにより形成される6個の巻線対7aから7fが、3次の界磁磁束を発生する。また、回転電機1は、12個の巻線3Cにより形成される6個の巻線対7aから7fが作る界磁磁界を、ローター2が有する8個の突極2Tで変調して、5次の高調波磁束を回転磁界として発生させる。この回転磁界により、ローター2が回転する。
図3は、実施形態に係る回転電機1のステーター3を展開した図である。図4は、実施形態に係る回転電機1のステーター3の突極3Tが発生する起磁力EFとステーター3の周方向における突極3Tの中心角φとの関係を示す図である。図5は、実施形態に係る回転電機1のステーター3の突極3Tが発生する起磁力EFを高速フーリエ変換した結果を示す図である。図5の横軸は起磁力EFの次数DNである。U相を流れる電流とV相を流れる電流とW相を流れる電流との比は、1:−0.5:−0.5になる。ステーター3のスロット3S、突極3T1から3T12及び巻線3C1から3C12はいずれも12個なので、それぞれの突極3T1、3T2、・・・3T12の、ステーター3の周方向における範囲に対応する中心角φは30度になる。
各突極3T1、3T2、・・・3T12の起磁力EFの分布は、図4に示すようになる。各突極3T1、3T2、・・・3T12の起磁力EFを高速フーリエ変換したときの起磁力EFのスペクトル分布は、図5に示すようになる。図5の結果から、突極3T1、3T2、・・・3T12の起磁力EFは、DN=5、すなわち5次が主成分であることが分かる。すなわち、回転電機1のステーター3の巻線3Cに3相の駆動信号を入力すると、5次の回転磁界が発生することが理解できる。回転電機1は、12個の巻線3Cにより形成される6個の巻線対7aから7fが作る界磁磁界を、ローター2が有する8個の突極2Tで変調して、5次の高調波磁束を生成する。この高調波磁束と、ステーター3による5次の回転磁界とが同期して、回転電機1のローター2が回転する。
<回転電機の制御装置>
図6は、実施形態に係る回転電機1及びこの回転電機1を制御する回転電機の制御装置100を示す図である。図6中の回転電機1は、図1に示した巻線3Cを省略してある。回転電機1は、回転電機の制御装置(以下、適宜制御装置と称する)100によって制御される。制御装置100は、制御部103とインバーター105とを有する。制御部103は、回転電機1に界磁磁束を発生させて、回転電機1を3相の回転電機として駆動するための制御信号を生成する。インバーター105は、制御部103によって生成された制御信号によって動作し、直流電源107から供給された直流電力から合成駆動信号を生成する。
インバーター105は、図2に示すそれぞれの巻線3C1から3C12に、界磁磁束を発生させるための界磁信号である界磁電圧+V、−Vと、ローター2を3相の回転電機として駆動するための駆動信号である駆動電圧Vu、Vv、Vwとが重畳された制御電圧を印加する。回転電機1を制御するインバーター105は、6相のインバーターであり、12個のスイッチング素子106によってフルブリッジが形成されている。スイッチング素子106の種類は問わないが、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられる。制御部103によって生成された制御信号は、インバーター105が備える各スイッチング素子106のゲートに入力される。
図7は、制御装置100の制御部103を説明するための図である。制御部103は、PI(比例及び積分)制御部110と、3相逆dq変換部111と、3相dq変換部112と、界磁電圧生成部113と、目標d軸電流生成部114と、目標q軸電流生成部115とを含む。PI制御部110は、インバーター105によって回転電機1に供給されるU相、V相及びW相の電流が、目標d軸電流生成部114によって生成された目標d軸電流Idt及び目標q軸電流生成部115によって生成された目標q軸電流Iqtとなるように、d軸電流及びq軸電流の電流指令値を生成する。
3相dq変換部112は、インバーター105から回転電機1に供給されるU相、V相及びW相の電流Iu、Iv、Iwを、d軸電流Id及びq軸電流Iqにdq変換する。dq変換において、3相dq変換部112は、図1に示す回転電機1のローター2の回転角度θrを用いる。出力シャフト4は、図1に示すローター2に連結されているので、出力シャフト4の回転角度は、ローター2の回転角度θrとなる。出力シャフト4の回転角度は、回転電機1の出力シャフト4の回転角度を検出する回転角度センサ5によって検出される。
PI制御部110は、3相dq変換部112によって変換された、回転電機1のd軸電流Id及びq軸電流Iqを取得し、目標d軸電流Idtとd軸電流Idとの偏差及び目標q軸電流Iqtとq軸電流Iqとの偏差がそれぞれ0になるように、電圧指令値を生成する。3相逆dq変換部111は、PI制御部110によって生成された電圧指令値を逆dq変換してU相の電圧指令値vu、V相の電圧指令値vv及びW相の電圧指令値vwを生成する。逆dq変換において、3相逆dq変換部111は、ローター2の回転角度θrを用いる。界磁電圧生成部113は、回転電機1に界磁磁束を発生させるために必要な界磁電圧の指令値を生成する。界磁電圧の指令値は、前述したA相〜F相までの6相に対応して、それぞれ+v、−v、+v、−v、+v、−vが生成される。
制御部103は、3相逆dq変換部111によって生成された電圧指令値vu、vv、vwと、界磁電圧生成部113が生成した界磁電圧の指令値+v、−v、+v、−v、+v、−vとをそれぞれ重畳して、制御信号を生成する。制御部103は、生成された制御信号をインバーター105に出力する。図2に示す巻線3C1、3C7に対する制御信号はvu+v、巻線3C4、3C10に対する制御信号はvv−v、巻線3C5、3C11に対する制御信号はvw+v、巻線3C8、3C2に対する制御信号はvu−v、巻線3C9、3C3に対する制御信号はvv+v、巻線3C12、3C6に対する制御信号はvw−vとなる。これらの信号がインバーター105に入力されることにより、インバーター105は、巻線3C1、3C7に合成駆動電圧Vu+Vを印加し、巻線3C4、3C10に合成駆動電圧Vv−Vを印加し、巻線3C5、3C11に合成駆動電圧Vw+Vを印加し、巻線3C8、3C2に合成駆動電圧Vu−Vを印加し、巻線3C9、3C3に合成駆動電圧Vv+Vを印加し、巻線3C12、3C6に合成駆動電圧Vw−Vを印加する。
A相の相電流及びD相の相電流には界磁電流が加えられているため、A相の相電流は0以上、D相の相電流は0以下となる。A相及びD相はいずれもU相なので、これらを合成したU相の相電流は、A相の相電流とD相の相電流とを合成したものになる。U相の相電流は、所定の周期で変動する電流となる。V相の相電流及びW相の相電流もU相の相電流と同様に求められる。このように、回転電機1のU相、V相及びW相には、3相の駆動電流が与えられるので、通常の3相のベクトル制御が可能になる。
制御部103の界磁電圧生成部113は、前述したA相〜F相までの6相に対応するそれぞれの界磁電圧の指令値+v、−v、+v、−v、+v、−vを別個独立に生成することができる。このため、制御装置100は、回転電機1の各巻線3Cに印加される界磁電圧を別個独立に制御することができるので、回転電機1の制御の自由度を向上させることができる。また、制御装置100は、回転電機1の各巻線3Cに印加される界磁電圧を変更することにより、回転電機1が発生するトルク及びトルクの特性、具体的には回転速度に対するトルクの変化の仕方を変更することができる。さらに、1つのインバーター105を含む1つの制御装置100が回転電機1を制御する。すなわち、回転電機1は、界磁磁束の制御と電機子の磁束の制御とに、それぞれ別個の機器は不要であるので、回転電機1は、簡易な機器で界磁磁束及び電機子の磁束の両方が制御できる。
<比較例との比較>
図8及び図9は、比較例に係る回転電機201及び201aを、その回転軸Zrを通りかつ回転軸Zrを含む平面で切った断面図である。図8に示される比較例1の回転電機201は、ステーター203のスロット203S、突極203T及び巻線203Cが12個で、ローター202の本体部202Bに設けられる突極202Tが10個である。回転電機201は、ステーター203の周方向に沿って、12個の巻線203CがA相、B相、C相、D相、E相、F相、A相、B相、C相、D相、E相、F相の順に配置される。
図9に示される比較例2の回転電機201aは、ステーター203aのスロット203Sa、突極203Ta及び巻線203Caが12個で、ローター202aの本体部202Baに設けられる突極202Taが7個である。回転電機201は、ステーター203の周方向に沿って、12個の巻線203CがA相、E相、F相、D相、E相、C相、D相、B相、C相、A相、B相、F相の順に配置される。
比較例1の回転電機201は、ローター202の突極202Tが10個なので、電磁力の合成ベクトルは0になり、原理上、ローター202の回転中に電磁力のアンバランスは発生しない。このため、回転電機201は、騒音及び振動が比較例2の回転電機201aよりも小さくなる。しかし、回転電機201は、ローター202が10個の突極202Tを有するので、ローター202が回転する際の周波数の10倍の磁束変化が発生する。このため、回転電機201は、高速でローター202が回転する際の鉄損が増加するとともに、力率も低下する。
比較例2の回転電機201aは、ローター202aの突極202Taが7個なので、ローター202の突極202Tが10個である比較例1の回転電機201よりもローター202aが回転する際の磁束変化は少ない。このため、回転電機201aは、回転電機201よりも高速回転での運転に適している。しかし、回転電機201aは、ローター202aの突極202Taが7個なので、電磁力の合成ベクトルは0にはならず、ローター202aの回転中に電磁力のアンバランスが発生し、騒音及び振動が大きくなる。
本実施形態の回転電機1は、ステーター3のスロット3S、突極3T及び巻線3Cが12個で、ローター2の本体部2Bに設けられる突極2Tが8個である。このため、電磁力の合成ベクトルは0になり、原理上、ローター2の回転中に電磁力のアンバランスは発生しない。また、回転電機1は、ローター2の突極2Tが8個なので、図8に示される、ローター202の突極202Tが10個である比較例1の回転電機201よりもローター2が回転する際の磁束変化は少ない。このため、回転電機1は、回転電機201よりも高速回転での運転に適している。このように、本実施形態の回転電機1は、振動及び騒音の発生を抑制でき、かつ高速での運転に適している。
本実施形態の回転電機1の巻線係数は、短節巻係数が0.966、分布巻係数が0.966、トータルで0.933となる。比較例1の回転電機201の巻線係数は、短節巻係数が0.866、分布巻係数が1、トータルで0.866となる。このように、本実施形態の回転電機1は、比較例1の回転電機201よりもトータルの巻線係数が高いので、高い出力を発生できる。
<回転電機1の出力特性>
図10は、実施形態に係る回転電機1と比較例1に係る回転電機201とのトルクTと回転速度Nとの関係を示す図である。図11は、実施形態に係る回転電機1と比較例1に係る回転電機201とのトルクTと時間tとの関係を示す図である。図10及び図11中の実線が実施形態の回転電機1であり、破線が比較例1の回転電機201である。
図10の結果から、実施形態の回転電機1の方が、比較例1の回転電機201よりも低回転高トルク型である。図11の結果から、実施形態の回転電機1は、比較例1の回転電機201よりも、時間tの経過に対するトルクTの変動幅が大きい。すなわち、実施形態の回転電機1の方が比較例1の回転電機201よりもトルクリップルが大きい。
図12は、比較例1に係る回転電機201のローター202の電気角θと誘起電圧Veとの関係を示す図である。図13は、実施形態に係る回転電機1のローター2の電気角θと誘起電圧Veとの関係を示す図である。図12のU1は、図8に示されるA相の巻線203C1の誘起電圧Veであり、U2はD相の巻線203C4の誘起電圧Veである。図13のU1は、図1及び図2に示される+A相の巻線3C1の誘起電圧Veであり、U2は+D相の巻線3C8の誘起電圧Veである。
図12に示される比較例1の回転電機201は、同じU相であれば、A相とD相とで誘起電圧Veの位相は同一である。具体的には、誘起電圧Veが0になる電気角θは、同じU相であれば、A相とD相とで同一になる。これに対して、実施形態の回転電機1は、図13に示されるように、同じU相でもA相とD相とで誘起電圧Veの位相が異なる。具体的には、誘起電圧Veが0になる電気角θは、同じU相であってもA相では電気角θ1、D相では電気角θ2となっており、両者は異なる。
図7に示される本実施形態の制御装置100は、A相の誘起電圧Veの位相とD相の誘起電圧Veの位相との中間の位相に基づいて、巻線3C1及び巻線3C2に駆動電圧Vuを与えている。例えば、誘起電圧Veが0になる位相で考えると、中間の位相は、電気角θ1と電気角θ2との間の電気角となる。U相において、A相の誘起電圧Veの位相とB相の誘起電圧Veの位相とがずれているにも関わらず、A相の巻線3C1及びD相の巻線3C8を共通の位相に基づいて駆動電圧Vuを与えていることが、図11に示した、回転電機1のトルクリップルの増加を招いていると考えられる。
本実施形態においては、同相の巻線3Cに入力される電圧Vを加算又は減算すると、界磁電圧が相殺される。制御装置100は、このような処理により、3相の正弦波波形に近づけた電流を回転電機1の各巻線3Cに流す。回転電機1は、誘起電圧が異なる巻線3C、例えば、A相の巻線3C1とD相の巻線3C8とに同一の電圧を与えるので、制御装置100によって回転電機1を制御すると、トルクリップルが増加すると考えられる。次に、実施形態の回転電機1のトルクリップルを低減させるための、回転電機の制御方法及び制御装置を説明する。
<制御例>
図14は、実施形態に係る回転電機1の制御方法の制御ブロック図である。図15は、実施形態に係る回転電機1を制御する回転電機の制御装置100aを示す図である。図16は、回転電機201に流れる制御電流Icと時間tとの関係を示す図である。この制御において、回転電機1には電圧Vdが与えられる。この電圧Vdを、以下においては適宜制御電圧Vdと称する。A相(U相)の制御電圧Vdは、+V+Vu1であり、B相(V相)の制御電圧Vdは、−V+Vv2であり、C相(W相)の制御電圧Vdは、+V+Vw1であり、D相(U相)の制御電圧Vdは、−V+Vu2であり、E相(V相)の制御電圧Vdは、+V+Vv1であり、F相(W相)の制御電圧Vdは、−V+Vw2である。Vu1、Vv1、Vw1、Vu2、Vv2、Vw2は、U相、V相、W相の各相の駆動電圧であり、Vは界磁電圧である。すなわち、制御電圧Vdは、駆動電圧と界磁電圧との和である。
回転電機1の巻線3Cに制御電圧Vdが入力されると、巻線3Cには電流Icが流れる。この電流Icを、以下においては適宜制御電流Icと称する。A相(U相)の制御電流Icは、Iu1+Ifであり、B相(V相)の制御電流Icは、Iv2−Ifであり、C相(W相)の制御電流Icは、Iw1+Ifであり、D相(U相)の制御電流Icは、Iu2−Ifであり、E相(V相)の制御電流Icは、Iv1+Ifであり、F相(W相)の制御電流Icは、Iw2−Ifである。電流Iu1、Iv1、Iw1、Iu2、Iv2、Iw2は、駆動電圧Vu1、Vv1、Vw1、Vu2、Vv2、Vw2によって各巻線3Cに流れる電流であり、電流Ifは界磁電圧Vによって各巻線3Cに流れる電流である。以下において、電流Ifを適宜オフセット電流Ifと称する。
本制御例において、まず、制御電流Icからオフセット電流Ifが減算されて、電流Irが求められる。以下において、電流Irを適宜参照電流Irと称する。参照電流Irは、A相、B相、C相、D相、E相及びF相毎に得られる。A相(U相)の参照電流Iru1は、Iu1+If−(+If)であり、B相(V相)の参照電流Irv2は、Iv2−If−(−If)であり、C相(W相)の参照電流Irw1は、Iw1+If−(+If)であり、D相(U相)の参照電流Iru2は、Iu2−If−(−If)であり、E相(V相)の参照電流Irv1は、Iv1+If−(+If)であり、F相(W相)の参照電流Irw2は、Iw2−If−(−If)である。このように、制御電流Icからオフセット電流Ifを減算することで、相毎に参照電流Irを抽出して、誘起電圧Veの位相が一致する相の参照電流Ir同士を1つの群にまとめることができる。
次に、得られた参照電流Irが、3相、すなわちU相、V相及びW相を一組とした2以上の群(この制御例では2の群)に分けられて、それぞれの群に対して参照電流Irに基づいてローター2を駆動するための駆動信号が生成される。そして、生成された駆動信号と界磁信号とが重畳されて、回転電機1のそれぞれの巻線3Cに入力される。
本制御例では、誘起電圧Veの位相が一致するU相、V相及びW相の参照電流Irが一組とされて、2つの群に分けられている。参照電流Iru1、Irv1、Irw1が第1群、参照電流Iru2、Irv2、Irw2が第2群となる。そして、第1群の参照電流Irを用いて第1ベクトル制御が実行されて電圧指令値vu1、vv1、vw1が求められ、第2群の参照電流Irを用いて第2ベクトル制御が実行されることにより電圧指令値vu2、vv2、vw2が求められる。得られた電圧指令値vu1、vv1、vw1、vu2、vv2、vw2と、界磁電圧の指令値+v、−v、+v、−v、+v、−vとがそれぞれ重畳されて、制御電圧Vdの指令値として図15に示されるインバーター105に入力される。インバーター105は、制御電圧Vdの指令値から制御電圧Vdを生成して、回転電機1の各巻線3Cに供給する。
このように、本制御例は、誘起電圧Veの位相が一致する相の参照電流Ir同士を1つの群にまとめて、それぞれの群に参照電流Irを用いて、誘起電圧Veの位相が一致する相毎にベクトル制御する。その結果、本制御例は、回転電機1のトルクリップルを低減することができる。次に、本制御例を実現する回転電機の制御装置100aについて説明する。
<制御装置100a>
図15に示されるように、回転電機の制御装置100a(以下、適宜制御装置100aと称する)は、本制御例に係る回転電機の制御方法を実行して、回転電機1を制御する。制御装置100aは、制御部103aが前述した制御装置100の制御部103と異なる。制御部103aは、回転電機1に界磁磁束を発生させて、回転電機1を3相の回転電機として駆動するための制御信号を生成する。
制御部103aは、第1PI制御部110Aと、第2PI制御部110Bと、第1逆dq変換部111Aと、第2逆dq変換部111Bと、第1dq変換部112Aと、第2dq変換部112Bと、界磁電圧生成部113と、目標d軸電流生成部114と、目標q軸電流生成部115と、参照電流演算部116とを含む。
第1PI制御部110Aは、インバーター105によって回転電機1に供給されるA相(U相)、C相(V相)及びE相(W相)の電流が、目標d軸電流生成部114によって生成された目標d軸電流Idt1及び目標q軸電流生成部115によって生成された目標q軸電流Iqt1となるように、d軸電流及びq軸電流の電流指令値を生成する。第2PI制御部110Bは、インバーター105によって回転電機1に供給されるB相(V相)、D相(U相)及びF相(W相)の電流が、目標d軸電流生成部114によって生成された目標d軸電流Idt2及び目標q軸電流生成部115によって生成された目標q軸電流Iqt2となるように、d軸電流及びq軸電流の電流指令値を生成する。
参照電流演算部116は、回転電機1の制御電流Icからオフセット電流Ifを減算して参照電流Irを求めて、第1dq変換部112Aと、第2dq変換部112Bとに出力する。具体的には、参照電流演算部116は、A相(U相)の参照電流Iru1、C相(W相)の参照電流Irw1及びE相(V相)の参照電流Irv1を求めて第1dq変換部112Aに出力し、B相(V相)の参照電流Irv2、D相(U相)の参照電流Iru2及びF相(W相)の参照電流Irw2を求めて第2dq変換部112Bに出力する。
オフセット電流Ifの求め方を説明する。回転電機1の温度、より具体的には巻線3Cの温度が一定であれば、参照電流演算部116は、界磁電圧Vを巻線3Cの電気抵抗値で除することにより、オフセット電流Ifを求めることができる。温度が変化すると巻線3Cの電気抵抗値が変化するので、参照電流演算部116は、温度に応じて巻線3Cの電機抵抗値を補正することが好ましい。
参照電流演算部116は、制御装置100aによる制御の1周期前において、巻線3Cを流れる制御電流Icの平均値(図16の二点鎖線で示される値)をオフセット電流Ifとしてもよい。また、参照電流演算部116は、制御装置100aによる制御の1周期前において、巻線3Cを流れる制御電流Icの最大値Icmaxと最小値Icminとを加算した値の1/2をオフセット電流Ifとしてもよい。
第1dq変換部112Aは、参照電流演算部116から入力されたA相(U相)の参照電流Iru1、C相(W相)の参照電流Irw1及びE相(V相)の参照電流Irv1を、d軸電流Id1及びq軸電流Iq1にdq変換する。第2dq変換部112Bは、参照電流演算部116から入力されたB相(V相)の参照電流Irv2、D相(U相)の参照電流Iru2及びF相(W相)の参照電流Irw2を、d軸電流Id2及びq軸電流Iq2にdq変換する。dq変換において、第1dq変換部112A及び第2dq変換部112Bは、図1に示される回転電機1のローター2の回転角度θrを用いる。
第1PI制御部110Aは、第1dq変換部112Aによって変換された、回転電機1のd軸電流Id1及びq軸電流Iq1を取得し、目標d軸電流Idt1とd軸電流Id1との偏差及び目標q軸電流Iqt1とq軸電流Iq1との偏差がそれぞれ0になるように、電圧指令値を生成する。第2PI制御部110Bは、第2dq変換部112Bによって変換された、回転電機1のd軸電流Id2及びq軸電流Iq2を取得し、目標d軸電流Idt2とd軸電流Id2との偏差及び目標q軸電流Iqt2とq軸電流Iq2との偏差がそれぞれ0になるように、電圧指令値を生成する。
第1逆dq変換部111Aは、第1PI制御部110Aによって生成された電圧指令値を逆dq変換してA相(U相)の電圧指令値vu1、E相(V相)の電圧指令値vv1及びC相(W相)の電圧指令値vw1を生成する。第2逆dq変換部111Bは、第2PI制御部110Bによって生成された電圧指令値を逆dq変換してB相(V相)の電圧指令値vv2、D相(U相)の電圧指令値vu2及びF相(W相)の電圧指令値vw2を生成する。
逆dq変換において、第1d逆変換部111A及び第2dq逆変換部111Bは、ローター2の回転角度θrを用いる。界磁電圧生成部113は、回転電機1に界磁磁束を発生させるために必要な界磁電圧の指令値を生成する。界磁電圧の指令値は、前述したA相からF相までの6相に対応して、それぞれ+v、−v、+v、−v、+v、−vが生成される。
制御部103aは、第1逆dq変換部111Aによって生成された電圧指令値vu1、vv1、vw1及び第2逆dq変換部111Bによって生成された電流指令値vv2、vu2、vw2を界磁電圧生成部113が生成した界磁電圧の指令値+v、+v、+v、−v、−v、−vとをそれぞれ重畳して、制御信号を生成する。制御部103は、生成された制御信号をインバーター105に出力する。
図2に示されるA相の巻線3C1、3C7に対する制御信号はvu1+v、B相の巻線3C4、3C10に対する制御信号はvv2−v、C相の巻線3C5、3C11に対する制御信号はvw1+v、D相の巻線3C2、3C8に対する制御信号はvu2−v、E相の巻線3C3、3C9に対する制御信号はvv1+v、F相の巻線3C6、3C12に対する制御信号はvw2−vとなる。これらの信号がインバーター105に入力されることにより、インバーター105は、巻線3C1、3C7に合成駆動電圧Vu1+Vを印加し、巻線3C4、3C10に合成駆動電圧Vv2−Vを印加し、巻線3C5、3C11に合成駆動電圧Vw1+Vを印加し、巻線3C2、3C8に合成駆動電圧Vu2−Vを印加し、巻線3C3、3C9に合成駆動電圧Vv1+Vを印加し、巻線3C6、3C12に合成駆動電圧Vw2−Vを印加する。その結果、制御装置100aは、簡易な機器で回転電機1の界磁磁束及び電機子の磁束の両方を制御できるとともに、トルクリップルを低減できる。
図17は、実施形態に係る回転電機1を制御装置100で制御した場合のトルクT、制御装置100aで制御した場合のトルクT及び比較例に係る回転電機201とのトルクTと時間tとの関係を示す図である。図18は、実施形態に係る回転電機1を制御装置100で制御した場合の制御電流Ic、制御装置100aで制御した場合の制御電流Ic及び比較例に係る回転電機201の制御電流Icと時間tとの関係を示す図である。図18は、A相の制御電流Icを示している。図17及び図18は、実線が実施形態に係る回転電機1を制御装置100aで制御した場合を示し、一点鎖線が実施形態に係る回転電機1を制御装置100で制御した場合を示し、破線が比較例1に係る回転電機201を示す。
図17の結果から、本制御例の制御装置100aが、本制御例の制御方法を実行することによって回転電機1を制御することにより、回転電機1のトルクリップルを低減できることが分かる。図18の結果から、本制御例の制御装置100aが、本制御例の制御方法を実行することによって回転電機1を制御した場合、制御電流Icの変動は、比較例1の回転電機201と同程度に抑えられる。この制御例によれば、回転電機1の巻線係数は、短節巻係数が0.966、分布巻係数が1、トータルで0.993となる。
本実施形態において、本制御例を用いて実施形態の回転電機1を制御したが、本制御例は実施形態の回転電機1以外に対しても適用できる。例えば、制御装置100aが本制御例の制御方法を実行することにより、比較例1の回転電機201又は比較例2の回転電機201aを制御してもよい。制御装置100aは、ステーターのスロットの数が6×j(jは1以上の整数)である回転電機であれば制御することができる。
例えば、ステーターのスロットの数が6×n、ローターの突極の数をm、界磁磁束の次数をkとすると、ローターの突極で変調された磁束の次数はm−kで求められる。このため、電機子の磁束の次数をpとすると、m−k=pの関係が成立する。次数pは、回転電機を3相の回転電機として駆動するための駆動信号を巻線に与えたときに発生する電機子の磁束の次数である。k、m、n及びpは1以上の自然数である。このような関係が成立する回転電機に対しても、この制御例は適用できる。
本実施形態において、突極2Tは8個、巻線3Cは12個、巻線対は6個、界磁磁束は3次としたが、これらに限定されない。本実施形態においては、nを1以上の整数としたとき、突極2Tは8×n個、巻線3Cは12×n個、巻線対は6×n個、界磁磁束は3×n次であってもよい。
以上、本実施形態及び変形例について説明したが、前述した内容により本実施形態及び変形例が限定されるものではない。また、前述した実施形態及び変形例の構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本実施形態及び変形例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更を行うことができる。