本発明の実施形態が説明される。
本発明は、繊維強化プラスチック製品の製造方法である。前記製造方法は付加製造技術工程を具備する。前記付加製造技術工程は、付加製造技術が用いられる工程である。前記工程では、樹脂(プラスチック)と、繊維とが用いられる。前記工程では、樹脂(マトリックスとなる樹脂)と、繊維とが、別々のノズルから、供給(排出)されても良い。各々の材料が同時に供給(排出)されても良い。時間差を持って供給(排出)されても良い。繊維強化プラスチック材料(樹脂中に繊維が分散した材料)が、一つのノズルから、供給(排出)されても良い。前記工程によって、所望形状の繊維強化プラスチック製品が得られた。前記繊維強化プラスチック製品Aと略同形状の物が、一つ(1回)の前記付加製造技術工程によって、成形される場合が有る。前記製品Aは、部分A1、…、部分Ak(kはn以下の整数)、…、部分An(nは2以上の整数)の合体になる場合が有る。このような場合は、前記部分A1は、一つ(1回)の付加製造技術工程A1によって、成形される。同様に、前記部分Akは、一つ(1回)の付加製造技術工程Akによって、成形される。前記部分Anは、一つ(1回)の付加製造技術工程Anによって、成形される。前記付加製造技術工程A1,…,Ak,…,Anによって成形された部分A1,…,Ak,…,Anを組み合わせた場合、この組み合わせたものが前記製品Aと同形状になる。すなわち、前記付加製造技術工程は、一つ(1回)で済む場合と、二つ以上(2回以上)を要する場合とが有る。どちらが採用されるかは、前記製品Aの内容によって、決定される。前記付加製造技術工程で得られた製品が、場合によっては、前記加圧工程の前において、予備成形される。前記予備成形によって、最終製品に近い形状の製品が得られる。勿論、予備成形が不要な場合も有る。ここで、予備成形とは、前記付加製造技術工程と前記加圧工程との間に行われる成形である。前記工程で得られた製品(繊維強化プラスチック製品)は、好ましくは、前記製品中の繊維が、プラスチック(マトリックス樹脂)中に、分散している。好ましくは、繊維がプラスチック(樹脂)中に分散しているように付加製造技術が行われた。前記付加製造技術工程は公知の条件下で行われても良い。或いは、格別な条件が採用されても良い。前記樹脂が熱可塑性樹脂の場合、前記付加製造技術工程における造形性の観点から、前記付加製造技術工程における温度は30℃以上が好ましかった。更に好ましくは50℃以上であった。更に好ましくは100℃以上であった。上限値に格別な制約はない。しかし、一般的には、好ましくは700℃以下であった。より好ましくは500℃以下であった。更に好ましくは450℃以下であった。もっと好ましくは400℃以下であった。前記樹脂が熱硬化性樹脂の場合、前記付加製造技術工程における造形性の観点から、前記付加製造技術工程における温度は0℃以上が好ましかった。更に好ましくは10℃以上であった。350℃以下が好ましかった。更に好ましくは150℃以下であった。もっと好ましくは100℃以下であった。前記製造方法は加圧工程を具備する。前記加圧工程は、前記付加製造技術工程で得られた製品(予備成形工程を有する場合は、予備成形された製品)が加圧される工程である。例えば、前記付加製造技術工程で得られた製品(予備成形工程を有する場合は、予備成形された製品)が所定形状の型(例えば、金型)内に入れられて加圧される工程である。例えば、前記付加製造技術工程で得られた製品(予備成形工程を有する場合は、予備成形された製品)が所定形状の型内に入れられて加熱・加圧される工程である。前記加圧工程は、好ましくは、10Pa以上の条件(圧力)下で行われた。より好ましくは50Pa以上であった。更に好ましくは100Pa以上であった。好ましくは10000000Pa以下であった。より好ましくは1000000Pa以下であった。更に好ましくは100000Pa以下であった。圧力が低すぎた場合、本発明の特長が小さかった。圧力が高すぎた場合、特長の向上度が比例して大きくなるものではなかった。圧力が高すぎた場合、コストが高く付いた。このようなことから、上記の範囲が好ましかった。加圧時間は、好ましくは、0.5秒以上であった。より好ましくは1秒以上であった。加圧方法にもよるが、好ましくは30分以下であった。加圧時における温度は、好ましくは、30℃以上であった。より好ましくは40℃以上であった。更に好ましくは50℃以上であった。もっと好ましくは100℃以上であった。加圧時における温度は、好ましくは、融点(若しくはガラス転移点、又は軟化温度)を持つ樹脂の場合、{(前記融点(若しくはガラス転移点、又は軟化温度))−50℃}以上の温度であった。より好ましくは{(前記融点(若しくはガラス転移点、又は軟化温度))−30℃}以上の温度であった。更に好ましくは{(前記融点(若しくはガラス転移点、又は軟化温度))−15℃}以上の温度であった。前記温度の上限値に格別な制約はない。しかし、高温すぎるメリットも余り考えられない。前記温度の上限値は、現実的には、{(前記融点(若しくはガラス転移点、又は軟化温度))+50℃}の温度であろう。前記融点、前記ガラス転移点、前記軟化温度の中の何れの概念(言葉)が用いられるかは、その樹脂に応じて、適宜、選択される。融点が存在する場合は、融点の概念で取り扱われる。
前記加圧工程を経たことによって、前記付加製造技術工程を経たに過ぎない場合の製品よりも、機械的強度(例えば、引張強度及び/又は曲げ強度)の向上が実現できた。
構成材料として、繊維強化プラスチックではなく、プラスチックのみ(非強化プラスチック)が用いられた場合、前記加圧工程がない場合と、前記加圧工程が追加された場合とで、付加製造技術製品の機械的特性に大きな差は認められなかった。
ところが、繊維強化プラスチック製品の場合には、加圧工程の有無によって、製品の機械的特性に大きな差が認められた。この特長(差異)は全く予想も出来なかった。
付加製造技術製品が型に入れられて加圧されると言った発想を、これまで、誰も、考えることがなかった。本発明者は、その理由として、付加製造技術は成形型を用いないと言う発想が根底に有ったからであろうと思っている。
本発明で用いられる樹脂(プラスチック)は、付加製造技術で用いることが出来る樹脂(マトリックス樹脂)ならば、如何なる樹脂でも良い。熱可塑性樹脂が用いられる。又は、熱硬化性樹脂が用いられる。どちらか一方が用いられるのみでも良い。併用されても良い。樹脂は、一種類であっても、二種類以上であっても良い。前記樹脂の形態はフィルム状(又はシート状)であっても良い。前記樹脂の形態は繊維(糸、又はフィラメント)状であっても良い。前記樹脂が繊維状の場合は、本発明にあっては、所謂、混繊糸(例えば、WO2016/167136A1参照)である。混繊糸の場合、WO2016/167136A1に開示の技術を採用できる。前記樹脂は官能基(反応性基:極性基)を持つものが好ましい。官能基(反応性基:極性基)を持たない樹脂を用いることも出来る。
熱可塑性樹脂には、熱可塑性樹脂のみからなる場合と、熱可塑性樹脂を主成分とする場合とがある。本発明にあっては、何れの場合でも良い。本発明(本明細書)において、熱可塑性樹脂の言葉には、特に、断らない限り、熱可塑性樹脂のみからなる場合、熱可塑性樹脂を主成分とする場合の双方が含まれる。熱可塑性樹脂が主成分とは、熱可塑性樹脂が50質量%以上の場合である。好ましくは、80質量%以上である。更に好ましくは90質量%以上である。
熱硬化性樹脂には、熱硬化性樹脂のみからなる場合と、熱硬化性樹脂を主成分とする場合とがある。本発明にあっては、何れの場合でも良い。本発明(本明細書)において、熱硬化性樹脂の言葉には、特に、断らない限り、熱硬化性樹脂のみからなる場合、熱硬化性樹脂を主成分とする場合の双方が含まれる。熱硬化性樹脂が主成分とは、熱硬化性樹脂が50質量%以上の場合である。好ましくは、80質量%以上である。更に好ましくは90質量%以上である。
熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などが例示される。
熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂)、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性ポリベンゾイミダゾール樹脂などが例示される。
前記ポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが例示される。
前記ポリスチレン樹脂としては、例えばポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)などが例示される。
前記ポリアミド樹脂としては、例えばポリアミド6樹脂(ナイロン6)、ポリアミド11樹脂(ナイロン11)、ポリアミド12樹脂(ナイロン12)、ポリアミド46樹脂(ナイロン46)、ポリアミド66樹脂(ナイロン66)、ポリアミド610樹脂(ナイロン610)などが例示される。前記ポリアミド系樹脂の一つであるナイロン(以下「PA」と略記することがある)としては、PA6(ポリカプロアミド、ポリカプロラクタム、ポリε−カプロラクタムとも称される)、PA26(ポリエチレンアジパミド)、PA46(ポリテトラメチレンアジパミド)、PA66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、PA69(ポリヘキサメチレンアゼパミド)、PA610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、PA611(ポリヘキサメチレンウンデカミド)、PA612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、PA11(ポリウンデカンアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)、PA1212(ポリドデカメチレンドデカミド)、PA6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、PA6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、PA912(ポリノナメチレンドデカミド)、PA1012(ポリデカメチレンドデカミド)、PA9T(ポリノナメチレンテレフタラミド)、PA9I(ポリノナメチレンイソフタルアミド)、PA10T(ポリデカメチレンテレフタラミド)、PA10I(ポリデカメチレンイソフタルアミド)、PA11T(ポリウンデカメチレンテレフタルアミド)、PA11I(ポリウンデカメチレンイソフタルアミド)、PA12T(ポリドデカメチレンテレフタラミド)、PA12I(ポリドデカメチレンイソフタルアミド)、ポリアミドXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、ポリアミドXD10(ポリキシリレンセバカミド)等が例示される。
前記ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ボリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリエステル等が例示される。
前記(メタ)アクリル樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレートが例示される。
前記変性ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば変性ポリフェニレンエーテル等が例示される。
前記熱可塑性ポリイミド樹脂としては、例えば熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが例示される。
前記ポリスルホン樹脂としては、例えば変性ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂などが例示される。
前記ポリエーテルケトン樹脂としては、例えばポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトンケトン樹脂などが例示される。
前記フッ素系樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン等などが例示される。
繊維強化樹脂における繊維としては、無機繊維が挙げられる。有機繊維であっても良い。両者の併用であっても良い。前記繊維の繊維長は、30mmを超える繊維長を有する連続強化繊維であることが特に好ましい。本発明で使用する連続強化繊維の平均繊維長は特に制限はないが、成形加工性を良好にする観点から、0.05〜20000mの範囲のものが好ましかった。より好ましくは100〜10000mであった。更に好ましくは1000〜7000mであった。本発明における繊維の長さは、特に述べない限り、重量平均繊維長である。前記繊維の平均繊維径は、好ましくは、3μm以上であった。より好ましくは4μm以上であった。更に好ましくは5μm以上であった。好ましくは50μm以下であった。より好ましくは20μm以下であった。更に好ましくは12μm以下であった。前記平均繊維径は、単糸の直径である。
前記無機繊維の例として、例えば炭素繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ガラス繊維、金属繊維などが挙げられる。これ等に限られない。
前記炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、石油・石炭ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、気相成長系炭素繊維などが例示される。これ等の中から一種または二種以上が適宜用いられる。用いられる炭素繊維は、好ましくは、引張弾性率が100GPa〜1000GPaのものであった。炭素繊維の形態は、特に限定されない。炭素繊維の形態は、連続繊維でも、不連続繊維でもよい。連続繊維としては、例えば炭素繊維を一方向に配置したもの(一方向材)が挙げられる。不連続繊維を用いる場合としては、樹脂中に、例えば炭素繊維が特定の方向に配向するように配置された材料、面内方向にランダムに分散して配置された材料などが挙げられる。炭素繊維は、単糸状のもの、繊維束状のもの、両者の混在物でも良い。炭素繊維は、一般的に、数千〜数万本のフィラメントが集合した繊維束状となっている。炭素繊維として炭素繊維束を用いる場合に、炭素繊維束をこのまま使用すると、繊維束の交絡部が局部的に厚くなり、薄肉の端面を有する炭素繊維強化樹脂加工品を得ることが困難になる場合がある。従って、炭素繊維として炭素繊維束を用いる場合は、炭素繊維束を拡幅したり、又は開繊したりして使用するのが好ましい。
前記金属繊維の例として、例えばAl繊維、Au繊維、Ag繊維、Fe繊維、ステンレス繊維などが挙げられる。
有機繊維の例として、例えばアラミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、セルロース繊維、ポリエチレン繊維、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維(Zylon(東洋紡社製))などが挙げられる。
前記繊維は処理剤で処理されていても良い。前記処理剤としては集束剤が挙げられる。表面処理剤が挙げられる。例えば、特許第4894982号公報に開示の処理剤が挙げられる。前記繊維表面の処理剤と前記樹脂の官能基(反応性基:極性基)とが反応した場合、好都合である。
前記処理剤は、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シランカップリング剤、水不溶性ポリアミド樹脂、及び水溶性ポリアミド樹脂の群の中から選ばれる。好ましくは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、水不溶性ポリアミド樹脂、及び水溶性ポリアミド樹脂の群の中から選ばれる。一種であっても、二種以上が用いられても良い。
前記エポキシ樹脂としては、グリシジル化合物(例えば、エポキシアルカン、アルカンジエポキシド、ビスフェノールA−グリシジルエーテル、ビスフェノールA−グリシジルエーテルの二量体、ビスフェノールA−グリシジルエーテルの三量体、ビスフェノールA−グリシジルエーテルのオリゴマー、ビスフェノールA−グリシジルエーテルのポリマー、ビスフェノールF−グリシジルエーテル、ビスフェノールF−グリシジルエーテルの二量体、ビスフェノールF−グリシジルエーテルの三量体、ビスフェノールF−グリシジルエーテルのオリゴマー、ビスフェノールF−グリシジルエーテルのポリマー、ステアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等)、グリシジルエステル化合物(例えば、安息香酸グリシジルエステル、p−トルイル酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレン酸グリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル等)、グリシジルアミン化合物(例えば、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、トリグリシジルシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート等)が挙げられる。
前記ウレタン樹脂としては、例えばポリオール、油脂と多価アルコールとをウムエステル化したポリオール、及びポリイソシアネートとOH基を持つ化合物とを反応させて得られるウレタン樹脂が挙げられる。
前記ポリイソシアネートとしては、脂肪族イソシアネート(例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,8−ジイソシアネートメチルカプロエート等)、脂環族ジイソソシアネート(例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、メチルシクロヘキシル−2,4−ジイソシアネート等)、芳香族ジイソシアネート(例えば、トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフテンジイソシアネート、ジフェニルメチルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソサネート、4,4−ジベンジルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等)、ハロゲン化ジイソシアネート(例えば、塩素化ジイソシアネート類、臭素化ジイソシアネート)が挙げられる。前記ポリイソシアネートは、一種でも、二種以上でも良い。
前記ポリオールとしては、通常ウレタン樹脂の製造に使用されるポリオールが挙げられる。例えば、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリチオエーテルポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリブタジエンポリオール、フランジメタノール等が挙げられる。前記ポリオールは、一種でも、二種以上でも良い。
前記シランカップリング剤としては、例えばトリアルコキシまたはトリアリロキシシラン化合物(例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等)、ウレイドシラン、スルフィドシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。前記シランカップリング剤は、一種でも、二種以上でも良い。
前記水不溶性ポリアミド樹脂は、25℃で1gのポリアミド樹脂を100gの水に添加した場合、99質量%以上が溶解しないものである。前記水不溶性ポリアミド樹脂が用いられる場合、水(又は有機溶媒)に、粉末状の水不溶性ポリアミド樹脂を分散(又は懸濁)させて用いることが好ましかった。このような粉末状の水不溶性ポリアミド樹脂の分散物(又は懸濁液)に混繊維束を浸漬して用い、乾燥させて混繊糸とすることが出来る。
水不溶性ポリアミド樹脂しては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(好ましくは、ポリキシリレンアジパミド、ポリキシリレンセバカミド)等が挙げられる。或いは、前記の共重合体が挙げられる。前記ポリアミド樹脂の粉体が、界面活性剤(例えば、ノニオン系、カチオン系、アニオン系、又はこれらの混合物)によって、乳化分散されたものでも良い。水不溶性ポリアミド樹脂(水不溶性ナイロンエマルジョン)の市販品として、例えばセポルジョンPA(住友精化製)、Michem Emulsion(Michaelman製)が挙げられる。
前記水溶性ポリアミド樹脂は、25℃で1gのポリアミド樹脂を100gの水に添加した場合、99質量%以上が水に溶解するものである。水溶性ポリアミド樹脂としては、アクリル酸グラフト化N−メトオキシメチル化ポリアミド樹脂、アミド基を付与したN−メトオキシメチル化ポリアミド樹脂などの変性ポリアミドが挙げられる。水溶性ポリアミド樹脂の市販品として、例えばAQ−ナイロン(東レ製)、トレジン(ナガセケムテックス製)が挙げられる。
前記処理剤の量は、好ましくは、強化繊維(例えば、炭素繊維など)の0.001〜1.5質量%であった。より好ましくは、0.1〜1.2質量%であった。更に好ましくは、0.5〜1.1質量%であった。このような範囲とすることにより、強化繊維の分散度が向上した。
処理剤による処理方法は、公知の方法を採用できる。例えば、処理剤溶液中に前記繊維が浸漬される。これにより、繊維表面に処理剤が付着する。繊維表面に処理剤をエアブローする手法も採用できる。既に表面処理剤(又は処理剤)で処理されている繊維が用いられても良い。表面処理剤(又は処理剤)が付着している市販の繊維を洗浄し、再度、表面処理剤(又は処理剤)を付着させるようにしても良い。
長さ30mmを超える繊維の割合は、好ましくは、30体積%以上であった。より好ましくは40体積%以上であった。更に好ましくは45体積%以上であった。或いは、好ましくは30質量%以上であった。より好ましくは42質量%以上であった。更に好ましくは55質量%以上であった。上限値に格別な制約はない。一つの基準として、例えば70体積%が挙げられる。好ましくは、60体積%が挙げられる。或いは、好ましくは、80質量%が挙げられる。
前記混繊糸に用いられる好ましい樹脂として熱可塑性樹脂が挙げられる。例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、熱可塑性ポリエーテルイミド等が挙げられる。ポリアミド樹脂は好ましい樹脂であった。
前記熱可塑性樹脂組成物は、エラストマー成分を含んでいても良い。エラストマー成分としては、例えばポリオレフィン系エラストマー、ジエン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコン系エラストマー等が挙げられる。好ましくはポリオレフィン系エラストマー及びポリスチレン系エラストマーである。ラジカル開始剤の存在下(又は非存在下)で、α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物、アクリルアミド並びにそれらの誘導体等で変性した変性エラストマーも好ましい。これらのエラストマーは、ポリアミド樹脂に対する相溶性を付与する為である。前記エラストマーか用いられる場合、エラストマー成分の配合量は、好ましくは、熱可塑性樹脂組成物の5〜25質量%であった。
本発明の目的・効果を損なわない範囲で、前記熱可塑性樹脂組成物には、各種の添加剤(例えば、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤等)を加えることが出来る。詳細は、特許第4894982号公報の記載を参酌できる(本願明細書に組み込まれる)。前記熱可塑性樹脂組成物は、フィラーを含んでいても良い。但し、好ましくは、フィラーを含まない。具体的には、熱可塑性樹脂組成物中のフィラーの含有量は、好ましくは、3質量%以下であった。
前記ポリアミド樹脂としては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリアミド66/6T、XD系ポリアミド(ポリキシリレンアジパミド、ポリキシリレンセバカミド、ポリキシリレンドデカミド等)、ポリアミド9T、ポリアミド9MT、ポリアミド6I/6T等が挙げられる。
前記ポリアミド樹脂の中でも、成形性、耐熱性の観点から、好ましくは、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位とを含み、ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂(XD系ポリアミド)であった。前記XD系ポリアミド樹脂は、好ましくは、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来するものであった。更に好ましくは、ジアミン由来の構成単位の90モル%以上がキシリレンジアミンに由来するものであった。前記ポリアミド樹脂が混合物である場合は、好ましくは、ポリアミド樹脂中のXD系ポリアミドの比率が50質量%以上のものであった。より好ましくは80質量%以上のものであった。
前記XD系ポリアミドは、好ましくは、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上(より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上)がメタキシリレンジアミン及び/又はパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の好ましくは50モル%以上(より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上)がα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくは、炭素原子数が4〜20)に由来するものであった。
前記XD系ポリアミドを構成するジアミンは、好ましくは、メタキシリレンジアミンを含む。より好ましくは、ジアミンの30モル%以上がメタキシリレンジアミンである。更に好ましくは、51モル%以上がメタキシリレンジアミンである。もっと好ましくは、70モル%以上がメタキシリレンジアミンである。
前記XD系ポリアミドの原料ジアミン成分として用いることが出来るメタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、脂肪族ジアミン(例えば、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等)、脂環式ジアミン(例えば、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等)、芳香環を有するジアミン(例えば、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン)が挙げられる。ジアミンは、1種でも、2種以上でも良い。
ジアミン成分としてキシリレンジアミン以外のジアミンが用いられる場合、好ましくは、ジアミン由来の構成単位は50モル%未満であった。より好ましくは30モル%以下であった。更に好ましくは25モル%以下であった。もっと好ましくは20モル%以下であった。好ましい下限値は1モル%であった。更に好ましい下限値は5モル%であった。
ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分は、好ましくは、α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくは、炭素原子数4〜20)であった。例えば、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などが挙げられる。前記酸は、1種でも、2種以上でも良い。前記酸の中でも、ポリアミド樹脂の融点が成形加工に適切な範囲となることから、好ましくは、アジピン酸またはセバシン酸であった。セバシン酸は特に好ましかった。
前記α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、フタル酸化合物(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等)、ナフタレンジカルボン酸(例えば、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸)が挙げられる。前記酸は、1種でも、2種以上でも良い。
前記α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を用いる場合は、成形加工性、バリア性の点から、好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸であった。テレフタル酸、イソフタル酸の割合は、好ましくは、ジカルボン酸構成単位の30モル%以下であった。より好ましくは1〜30モル%であった。更に好ましくは5〜20モル%であった。
前記ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、ポリアミド樹脂を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、ラクタム類(例えば、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等)、脂肪族アミノカルボン酸(例えば、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等)も共重合成分として使用できる。
前記ポリアミド樹脂は、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性の観点から、好ましくは、数平均分子量(Mn)が6000〜30000であった。より好ましくは8000〜28000であった。更に好ましくは9000〜26000であった。もっと好ましくは10000〜24000であった。特に好ましくは11000〜22000であった。前記数平均分子量(Mn)は、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH2](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)から、次式で算出される。
数平均分子量(Mn)=2000000/([COOH]+[NH2])
前記ポリアミド樹脂は、機械特性に優れた成形体の観点から、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))が、好ましくは、1.8〜3.1であった。より好ましくは1.9〜3.0であった。更に好ましくは2.0〜2.9であった。ポリアミド樹脂の分子量分布は、例えば重合開始剤や触媒の種類、量及び反応温度、圧力、時間等の重合反応条件などを、適宜、選択することにより、調整できる。異なる重合条件によって得られた平均分子量の異なる複数種のポリアミド樹脂を混合したり、重合後のポリアミド樹脂を分別沈殿させることによっても、調整できる。
前記分子量分布は、GPC測定により、求められる。具体的には、装置として東ソー社製「HLC−8320GPC」、カラムとして東ソー社製「TSK
gel Super HM−H」2本を使用し、溶離液トリフルオロ酢酸ナトリウム濃度10mmol/lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度40℃、流速0.3ml/分、屈折率検出器(RI)の条件で測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算の値として求めることが出来る。検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
前記ポリアミド樹脂は、吸水時の曲げ弾性率保持率が、好ましくは、85%以上であった。斯かるポリアミド樹脂が用いられると、成形体の高温高湿度下での物性低下が少なかった。反り等の形状変化が少なかった。前記曲げ弾性率保持率は、{試験片(ポリアミド樹脂をJIS K7171に従って成形した曲げ試験片)の0.5質量%の吸水時の曲げ弾性率}/{前記試験片の0.1質量%の吸水時の曲げ弾性率}で表される。曲げ弾性率はJIS K7171に従って測定した値である。前記曲げ弾性率保持率が高いと言うことは、吸湿しても、曲げ弾性率が低下し難いことを意味する。前記曲げ弾性率保持率は、好ましくは、90%以上であった。更に好ましくは95%以上であった。
前記ポリアミド樹脂の吸水時の曲げ弾性率保持率は、例えばパラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンの混合割合を変えることで、制御できる。前記パラキシリレンジアミンの割合が多い場合、前記曲げ弾性率保持率が良好になる。前記曲げ試験片の結晶化度をコントロールすることによっても調整できる。
前記ポリアミド樹脂の吸水率{試験片(JIS K7171に従って成形した曲げ試験片)を、23℃にて、1週間、水に浸漬した後で取り出し、水分を拭き取って直ちに測定した際の吸水率}が、好ましくは、1質量%以下であった。より好ましくは0.6質量%以下であった。更に好ましくは0.4質量%以下であった。この範囲であると、成形体の吸水による変形が起き難くかった。加熱加圧時等の成形加工時における発泡が抑制された。気泡の少ない成形体が得られた。
前記ポリアミド樹脂は、末端アミノ基濃度([NH2])が、好ましくは、100μ当量/g未満であった。より好ましくは5〜75μ当量/gであった。更に好ましくは10〜60μ当量/gであった。末端カルボキシル基濃度([COOH])は、好ましくは、150μ当量/g未満であった。より好ましくは10〜120μ当量/gであった。更に好ましくは10〜100μ当量/gであった。斯かる末端基濃度のポリアミド樹脂を用いることによって、ポリアミド樹脂をフィルム状又は繊維状に加工する際、安定した粘度になる。後述のカルボジイミド化合物との反応性が良好となる。
前記末端カルボキシル基濃度に対する前記末端アミノ基濃度の比([NH2]/[COOH])は、好ましくは、0.7以下であった。更に好ましくは0.6以下であった。より好ましくは0.5以下であった。0.7よりも大きいと、ポリアミド樹脂を重合する際に、分子量の制御が難しくなる場合があった。
末端アミノ基濃度は、ポリアミド樹脂0.5gを30mlのフェノール/メタノール(4:1)混合溶液に20〜30℃で攪拌溶解し、0.01Nの塩酸で滴定して測定できる。末端カルボキシル基濃度は、ポリアミド樹脂0.1gを30mlのベンジルアルコールに200℃で溶解し、160℃〜165℃の範囲でフェノールレッド溶液を0.1ml加える。その溶液を0.132gのKOHをベンジルアルコール200mlに溶解させた滴定液(KOH濃度として0.01mol/l)で滴定を行い、色の変化が黄〜赤となり色の変化がなくなった時点を終点とすることで算出できる。
前記ポリアミド樹脂は、特開2014−173196号公報記載の技術を参酌して製造できる。
前記ポリアミド樹脂は、融点が、好ましくは、150℃以上であった。より好ましくは180℃以上であった。好ましくは310℃以下であった。より好ましくは300℃以下であった。更に好ましくは250℃以下であった。
前記ポリアミド樹脂のガラス転移点は、好ましくは、50℃以上であった。より好ましくは55℃以上であった。更に好ましくは60℃以上であった。好ましくは100℃以下であった。この範囲であると、耐熱性が良好であった。
前記融点は、DSC(示差走査熱量測定)法により観測される昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度である。前記ガラス転移点は、試料を一度加熱溶融させ、熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度、昇温して測定されるガラス転移点である。前記軟化温度は加熱して行った時に、軟化し始める(変形し始める)温度である。測定には、例えば島津製作所社(SHIMADZU
CORPORATION)製「DSC−60」が用いられ、試料量は約1mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30ml/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めることができる。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移点を求めることが出来る。
ここで、樹脂が2種以上の樹脂からなる場合、配合量の多い方の樹脂の融点をもって、樹脂の融点とする。樹脂が2種以上の略等量の熱可塑性樹脂からなる場合、融点の最も高い樹脂の融点をもって、樹脂の融点とする。樹脂が融点を2つ以上有する場合、高い方の融点を持って樹脂の融点とする。熱可塑性樹脂が2種以上の樹脂成分からなる場合、前記2種以上の熱可塑性樹脂SP値(Solubility Parameter)の差が、それぞれ、3以下の樹脂であることが好ましかった。
前記混繊糸における前記樹脂の割合は、好ましくは、30質量%以上であった。好ましくは70質量%以下であった。更に好ましくは60質量%以下であった。場合によっては、40質量%以下の場合もある。前記混繊糸の場合、好ましくは、長さ30mmを超える強化用の繊維(例えば、炭素繊維など)と、熱可塑性樹脂繊維とを含む。前記混繊糸である場合、好ましくは、分散度が60〜100%であった。より好ましくは65%以上であった。更に好ましくは70%以上であった。このような範囲の場合、混繊糸はより均一な物性を示す。成形体の外観が向上する。成形体の機械的特性が良い。
前記熱可塑性樹脂繊維は、所謂、連続熱可塑性樹脂繊維である。その長さは、適宜、定められる。一例を挙げると、30mmを超える繊維長を有する熱可塑性樹脂繊維である。上限値は20,000mを挙げることが出来る。
前記熱可塑性樹脂繊維は、通常、熱可塑性樹脂繊維が束状になった熱可塑性樹脂繊維束を用いて製造される。例えば、熱可塑性樹脂繊維束1本の当たりの合計繊度が、好ましくは、40〜600dtexであった。より好ましくは50〜500dtexであった。更に好ましくは100〜400dtexであった。斯かる繊維を用いた場合、混繊糸中での熱可塑性樹脂繊維の分散状態が良好であった。前記熱可塑性樹脂繊維束を構成する繊維数は、好ましくは、1〜200fであった。より好ましくは5〜100fであった。更に好ましくは10〜80fであった。特に好ましくは20〜50fであった。このような場合、混繊糸中での熱可塑性樹脂繊維の分散状態が良好であった。
前記混繊糸を製造する場合、前記熱可塑性樹脂繊維束は、好ましくは、1本以上であった。より好ましくは15本以上であった。好ましくは100本以下であった。より好ましくは50本以下であった。更に好ましくは35本以下であった。このような範囲とすることにより、本発明の効果が効果的に発揮された。
前記混繊糸1本を製造する為の前記熱可塑性樹脂繊維の合計繊度は、好ましくは、200dtex以上であった。より好ましくは1000dtex以上であった。好ましくは24000dtex以下であった。より好ましくは12000dtex以下であった。このような範囲とすることにより、本発明の効果が効果的に発揮された。
前記混繊糸1本を製造する為の前記熱可塑性樹脂繊維の合計繊維数は、好ましくは、10f以上であった。より好ましくは20f以上であった。更に好ましくは200f以上であった。好ましくは4000f以下であった。より好ましくは2000f以下であった。更に好ましくは1000f以下であった。このような範囲とすることにより、混繊糸の混繊性が向上した。開繊した繊維がより均一に混合した。繊維が偏る領域が出来難い。均一性がある混繊糸が得られた。
前記熱可塑性樹脂繊維は、その表面が、好ましくは、処理剤で処理されている。このような態様とすることにより、混繊糸における強化繊維の分散度が向上する。処理剤は、熱可塑性樹脂繊維を集束する機能を有するものであれば、その種類は限定されない。処理剤としては、例えばエステル系化合物、アルキレングリコール系化合物、ポリオレフィン系化合物、フェニルエーテル系化合物が例示される。界面活性剤は好ましい処理剤である。
熱可塑性樹脂繊維の処理剤の量は、熱可塑性樹脂繊維に対し、好ましくは、0.1〜2質量%であった。より好ましくは0.5〜1.5質量%であった。このような範囲とすることにより、熱可塑性樹脂繊維の分散が良好になった。より均質な混繊糸が得られた。混繊糸を製造する際には、熱可塑性樹脂繊維には摩擦力(機械との摩擦力や繊維同士の摩擦力)が生じる。その際、熱可塑性樹脂繊維が切れることがある。しかしながら、前記の範囲とすることによって、繊維の切断を効果的に防止できた。均質な混繊糸を得る為、機械的な応力を熱可塑性樹脂繊維に加えるが、その際の応力による熱可塑性樹脂繊維の切断が効果的に防止された。
前記熱可塑性樹脂繊維の前記処理剤による処理方法は、前記熱可塑性樹脂繊維を前記処理剤溶液中に浸漬する手法が挙げられる。これにより、前記熱可塑性樹脂繊維の表面に前記処理剤が付着する。或いは、前記処理剤を前記熱可塑性樹脂繊維の表面に対してエアブローする手法が用いられる。
前記混繊糸に用いる強化繊維(例えば、炭素繊維など)は、所謂、連続強化繊維である。その長さは、適宜、決められる。
前記混繊糸の製造に用いる前記強化繊維は、例えば複数の強化繊維が束状になった強化繊維束である。前記強化繊維は、混繊糸1本当たりの合計繊度が、好ましくは、50dtex以上であった。より好ましくは250dtex以上であった。更に好ましくは500dtex以上であった。好ましくは50000dtex以下であった。より好ましくは40000dtex以下であった。更に好ましくは30000dtex以下であった。もっと好ましくは20000dtex以下であった。このような範囲とすることにより、加工が容易になった。得られる混繊糸の弾性率・強度が優れたものになった。
前記強化繊維は、混繊糸一本当たりの合計繊維数が、好ましくは、250f以上であった。より好ましくは500f以上であった。更に好ましくは750f以上であった。好ましくは50000f以下であった。より好ましくは30000f以下であった。更に好ましくは20000f以下であった。もっと好ましくは15000f以下であった。このような範囲とすることにより、混繊糸中での強化繊維の分散状態が良好になった。
1本の混繊糸において、強化繊維が、所定の合計繊度および合計繊維数を満たす為、1本の強化繊維束で製造しても良く、複数本の強化繊維束を用いて製造しても良い。1〜10本の強化繊維束を用いて製造することは好ましい。より好ましくは1〜3本の強化繊維束を用いる。更に好ましくは1本の強化繊維束を用いる。
前記混繊糸の製造には、前記熱可塑性樹脂繊維束と前記強化繊維束が用いられる。一本の混繊糸の製造に用いられる繊維の合計繊度(一本の混繊糸の製造に用いられる熱可塑性樹脂繊維の繊度の合計および強化繊維の繊度の合計を足し合わせた値)は、好ましくは、500dtex以上であった。より好ましくは750dtex以上であった。更に好ましくは1000dtex以上であった。もっと好ましくは1500dtex以上であった。好ましくは100000dtex以下であった。より好ましくは50000dtex以下であった。更に好ましくは15000dtex以下であった。
一本の混繊糸の製造に用いる前記熱可塑性樹脂繊維の繊度の合計と前記強化繊維の繊度の合計の比(前記熱可塑性樹脂繊維の繊度の合計/前記強化繊維の繊度の合計)は、好ましくは、0.1以上であった。より好ましくは0.5以上であった。好ましくは10以下であった。より好ましくは6以下であった。更に好ましくは2以下であった。
一本の混繊糸の製造に用いる前記繊維数の合計(前記熱可塑性樹脂繊維の繊維数の合計と前記強化繊維の繊維数の合計を合計した繊維数)は、好ましくは、50f以上であった。より好ましくは500f以上であった。更に好ましくは750f以上であった。もっと好ましくは1000f以上であった。よりもっと好ましくは1250f以上であった。特に好ましくは1500f以上であった。好ましくは100000f以下であった。より好ましくは70000f以下であった。更に好ましくは20000f以下であった。もっと好ましくは10000f以下であった。特に好ましくは5000f以下であった。このような範囲とすることにより、混繊糸の混繊性が向上した。繊維が偏る領域が少なく、互いの繊維がより均一に分散した。
一本の混繊糸の製造に用いる前記熱可塑性樹脂繊維の繊維数の合計と前記強化繊維の繊維数の合計の比(前記熱可塑性樹脂繊維の繊維数の合計/前記強化繊維の繊維数の合計)は、好ましくは、0.001以上であった。より好ましくは0.05以上であった。好ましくは1以下であった。より好ましくは0.5以下であった。更に好ましくは0.2以下であった。このような範囲とすることにより、混繊糸の混繊性が向上した。前記混繊糸中の前記熱可塑性樹脂繊維と前記強化繊維とは、互いの繊維が均一に分散していた。
前記混繊糸は、好ましくは、撚りが掛っている。撚りは公知の方法によって掛けられる。その方法は限定されない。撚りの回数は、前記熱可塑性樹脂繊維に用いる前記熱可塑性樹脂の種類、前記熱可塑性樹脂繊維の繊維数、繊度、強化繊維の種類、繊維数、繊度、熱可塑性樹脂繊維と強化繊維の繊維数比や繊度比に応じて、適宜、定められる。好ましくは1回/m(繊維長)であった。好ましくは200回/m(繊維長)以下であった。より好ましくは100回/m以下であった。更に好ましくは70回/mであった。もっと好ましくは50回/mであった。このような構成とした場合、機械的強度に優れた成形体が得られた。
前記混繊糸に用いた前記強化繊維および/または前記熱可塑性樹脂繊維は、好ましくは、処理剤で表面処理されたものである。このような構成とすることにより、前記強化繊維と前記熱可塑性樹脂繊維とが均一に分散した混繊糸が得られた。成形後の熱可塑性樹脂繊維成分の強化繊維への含浸率が向上した。
前記混繊糸には、前記強化繊維、前記熱可塑性樹脂繊維、前記処理剤以外の他の成分が含まれていても良い。例えば、短繊維長炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン、マイクロセルロースファイバー、タルク、マイカ等が挙げられる。尚、これらの他の成分の配合量は、好ましくは、前記混繊糸の5質量%以下である。
前記樹脂と前記繊維との配合割合は、目的とする製品によって、変動する。一義的には決められ難い。しかし、好ましくは、(前記繊維)/(前記樹脂)が1/99〜90/10(質量比)であった。より好ましくは10/90以上であった。より好ましくは80/20以下であった。
以下、本発明が具体的に説明される。下記実施例は本発明の一実施例に過ぎない。本発明は下記実施例に限定されない。すなわち、本発明の特長が大きく損なわれない変形・応用例も本発明に含まれる。
[実施例1]
樹脂(熱可塑性樹脂)としてXD10(三菱ガス化学(株)製)が用いられた。前記XD10は次のようにして得られた。撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート、窒素導入管、及びストランドダイを備えた反応容器に、セバシン酸(伊藤製油(株)製TAグレード)10kg(49.4mol)、及び酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム・一水和物(モル比=1/1.5)11.66gが入れられた。窒素置換が十分に行われた。この後、少量の窒素気流下で、系内が撹搾されながら、加熱溶融(〜170℃)が行われた。混合キシリレンジアミン6.647kg(メタキシリレンジアミン34.16mol、パラキシリレンジアミン14.64mol、三菱ガス化学(株)製)が溶融したセバシン酸に攪拌下で滴下された。生成する縮合水が系外に排出されながら、2.5時間かけて、240℃まで昇温した。滴下終了後、内温を上昇させ、250℃に達した時点で反応容器内が減圧された。更に内温を上昇させて255℃で20分間、溶融重縮合反応が継続された。この後、系内が窒素で加圧された。得られた重合物がストランドダイから取り出され、ペレット化が行われた。これにより、ポリアミド樹脂XD10が得られた。前記ポリアミド樹脂XD10の融点は213℃であった。数平均分子量は15400であった。前記XDが真空乾燥機で乾燥された。この乾燥XDが、単軸押出機(30mmφのスクリューを有する)で、溶融押出された。Tダイ(500mm幅)による押出成形が行われた。対ロール(ステンレス製、表面は凹凸状シボ、ロール温度70℃、ロール圧0.4MPa)によりフィルムが得られた。このフィルムは表面にシボを有していた。前記フィルムの端部がスリットされた。キャストフィルム(厚み20μm、500mm幅)が得られた。
繊維として炭素繊維(三菱レイヨン(株)製、Pyrofil−TR−50S−12000−AD、8000dtex、繊維数12000f)が用いられた。
前記炭素繊維が一方向に引き揃えられたシート状物と、前記XDフィルムとの積層物(前記樹脂:前記炭素繊維=100質量部:160質量部)が、加熱(220℃)・加圧(1MPa)された。フッ素樹脂コーティングのロールが、前記加熱・加圧に、用いられた。前記加熱・加圧後、40℃のロールで冷却された。前記複合材がスリット(幅:0.8mm)された。先頭側の端部が芯材に固定され、巻き取られた(0.1MPa(巻取張力)、1m/分(巻取速度)、25℃(温度)、50%(相対湿度))。
前記複合材(積層材)が用いられ、又、3Dプリンター(Velleman社製K8200)が用いられ、付加製造技術が実施(ノズル温度:250℃、ステージ温度:60℃)された。図1(p)は、図1(p’)を基点とし、図1(p”)を終点とする造形時の軌跡である。ノズルとステージとの距離を0.2mmに設定し、図1(p’)を基点として造形を開始した。終点の図1(p”)まで造形を終えた後、ノズルとステージの距離を0.5mmに設定した。再び、図1(p’)を基点として造形を開始した。終点の図1(p”)まで造形を終えた後、ノズルとステージとの距離を0.8mmに設定した。このようにノズルとステージとの距離を変えながら図1(p)の軌跡を複数回繰り返して所定の厚みの造形物を得た。
前記図1の製品が、金型(その内形は図1の製品の外形に相当)内に、入れられた。加熱・加圧(温度:220℃、圧力:60000Pa、時間:1分)が行われた。加圧方向(主たる加圧方向)は、炭素繊維の長さ方向に対して、交差する方向(垂直方向)であった。これによって、部材qの製品が得られた。図1(q)は部材qの概略平面図である。図1(q’)は部材qの概略正面図である。図1(q”)は部材qの概略側面図である。
[比較例1]
前記実施例1において、加熱・加圧工程が省略された以外は、同様に行われた。
[比較例2]
前記実施例1において、前記炭素繊維が用いられなかった以外は、同様に行われた。
[比較例3]
前記実施例1において、前記炭素繊維が用いられず、かつ、加熱・加圧工程が省略された以外は、同様に行われた。
[実施例2]
トレカプリプレグP3252S−25(東レ(株)、樹脂(熱硬化性樹脂):エポキシ樹脂、繊維:炭素繊維(T700SC))(前記樹脂:前記炭素繊維=100質量部:200質量部)がスリット(幅:0.8mm)された。直径0.5mmの円形断面に加工された。この加工物(材料)が用いられ、3Dプリンター(Velleman社製K8200)が用いられ、付加製造技術が実施(ノズル温度:45℃、ステージ温度:15℃)された。図1(p)は、図1(p’)を基点とし、図1(p”)を終点とする造形時の軌跡である。ノズルとステージの距離を0.2mmに設定し、図1(p’)を基点として造形を開始した。終点の図1(p”)まで造形を終えた後、ノズルとステージの距離を0.5mmに設定した。再び、図1(p’)を基点として造形を開始した。終点の図1(p”)まで造形を終えた後、ノズルとステージの距離を0.8mmに設定した。このようにノズルとステージの距離を変えながら図1(p)の軌跡を複数回繰り返して所定の厚みの造形物を得た。
前記図1の製品が、金型(その内形は図1の製品の外形に相当)内に、入れられた。加熱・加圧(温度:140℃、圧力:10000Pa、時間:30分)が行われた。加圧方向(主たる加圧方向)は、炭素繊維の長さ方向に対して、交差する方向(垂直方向)であった。これによって、部材qの製品が得られた。図1(q)は部材qの概略平面図である。図1(q’)は部材qの概略正面図である。図1(q”)は部材qの概略側面図である。
[特性]
上記各例で得られた製品について、JIS K7074に準拠する機械的特性(曲げ強度、曲げ弾性率)が調べられた。その結果が表−1に示される。
表−1
曲げ強度 曲げ弾性率
実施例1 8.8 22.3
実施例2 11.6 28.4
比較例1 3.5 10.7
比較例2 1 1
比較例3 1 1
*各例の曲げ強度は、比較例3の曲げ強度に対する比で表示。
*各例の曲げ弾性率は、比較例3の曲げ弾性率に対する比で表示。
本発明者は、前記実施例の製品の機械的強度が向上した理由として、次のように考えている。付加製造技術で得られた繊維強化プラスチック製品は、ボイド(気泡)が、内部に出来ている。前記ボイドの発生は繊維に起因したと考えられる。前記ボイドの存在によって、製品の機械的強度の向上度が低かったと考えられた。ところが、付加製造技術工程後の製品が加圧(特に、加熱・加圧)された場合、前記ボイドが減少(或いは、消滅)し、機械的強度の向上が得られたと考えられた。
[実施例3]
実施例1で用いられた3Dプリンターが用いられた。樹脂(熱可塑性樹脂)としてPEEK(Victrex製、Victrex(登録商標)が用いられた。繊維として炭素繊維(三菱レイヨン(株)製、Pyrofil−TR−50S−12000−AD、8000dtex、繊維数12000f。)が用いられた。配合割合は、前記樹脂100質量部に対して、前記炭素繊維が160質量部であった。前記材料と前記3Dプリンターとが用いられて、部材a,b,cが成形された。図2(a)は部材aの概略平面図である。図2(a’)は部材aの概略断面図(図2(a)中の点線で示される部分の断面図)である。図2(b)は部材bの概略平面図である。図2(b’)は部材bの概略断面図(図2(b)中の点線で示される部分の断面図)である。図2(c)は部材cの概略平面図である。図2(c’)は部材cの概略断面図(図2(c)中の点線で示される部分の断面図)である。図2中の(I)で示される段階((a)(a’)(b)(b’)(c)(c’)の図の段階)が付加製造技術工程である。
次に、予備成形型が用いられ、部材a,b,cが予備成形された。図2(d)は部材aが予備成形された概略断面図である。図2(e)は部材bが予備成形された概略断面図である。図2(f)は部材cが予備成形された概略断面図である。図2中の(II)で示される段階が予備成形工程である。
次に、予備成形工程で得られた各々の部材が積み重ねられた(図2(g)参照)。図2中の(III)で示される段階が組合工程(組立工程:合体工程:積重工程:重ね合わせ工程)である。
この後、図2(g)で示されるものが所定の金型に入れられ、加熱・加圧(370℃,500000Pa、3分)された(図2(h)(i)参照)。図2(h)は得られた製品(ギア)の斜視図である。図2(i)は得られた製品(ギア)の一部拡大断面図(図2(h)中の点線で示される部分の断面図)である。図2中の(IV)で示される段階が加熱・加圧工程である。
このようにして得られた製品は、一つ(1回)の付加製造技術工程で得られた製品に比べて、疲労強度の点において、優れた特長を奏するものであった。
[実施例4]
実施例1で用いられた3Dプリンターが用いられた。樹脂(熱可塑性樹脂)としてXD6(三菱ガス化学(株)製、S6011)が用いられた。繊維として炭素繊維(三菱レイヨン(株)製、Pyrofil−TR−50S−12000−AD、8000dtex、繊維数12000f)が用いられた。配合割合は、前記樹脂100質量部に対して、前記炭素繊維が160質量部であった。
前記材料と前記3Dプリンターとが用いられて、部材j,k,lが成形された。図3(j)は部材jの概略平面図である。図3(j”)は部材jの斜視図である。図3(k)は部材kの概略平面図である。図3(k’)は部材kの概略断面図(図3(k)中の点線で示される部分の断面図)である。図3(k”)は部材kの斜視図である。図3(l)は部材lの概略平面図である。図3(l’)は部材lの概略断面図(図3(l)中の点線で示される部分の断面図)である。図3(l”)は部材lの斜視図である。図3中の(V)で示される段階が付加製造技術工程である。
次に、予備成形型が用いられ、部材jが予備成形された。図3(m)は部材jが予備成形された概略平面図である。図3(m’)は部材jの予備成形物の概略断面図(図3(m)中の点線で示される部分の断面図)である。図3(m”)は部材jの予備成形物の斜視図である。図3中の(VI)で示される段階が予備成形工程である。予備成形が行われたのは部材jのみであった。
次に、各々の部材が積み重ねられた(図3(n)参照)。すなわち、図3(l)の部材の上に図3(m)の部材が配置された。図3(m)の部材の上に図3(k)の部材が配置された。図3中の(VII)で示される段階が組合工程(組立工程:合体工程:積重工程:重ね合わせ工程)である。
この後、図3(n)で示されるものが所定の金型に入れられ、加熱・加圧(220℃,300000Pa、2分)された(図3(o)参照)。図3(o)は得られた製品(ワッシャー)の概略平面図である。図3(o”)は部材oの斜視図である。図3中の(VIII)で示される段階が加熱・加圧工程である。
このようにして得られた製品は、一つ(1回)の付加製造技術工程で得られた製品に比べて、部材k,lの炭素繊維の長さ方向に対して、交差する方向(垂直方向)への炭素繊維方向を有する部材mのあることから、圧縮強度の点において、優れた特長を奏するものであった。
又、従来の方法では造形できなかった自由繊維配向の繊維強化プラスチック製品が得られた。