以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
[第1実施形態]
本実施形態では、バタフライバルブを車両用空調装置の冷凍サイクルに適用される切替弁として構成している。この車両用空調装置は、図示しない圧縮機、凝縮器、膨張装置、蒸発器等を配管にて接続した冷凍サイクルを備え、冷媒が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で車室内の空調を行う。冷媒としては、例えばHFC−134a、HFO−1234yfなどが採用される。このバタフライバルブは、その冷凍サイクルの所定位置に設置され、冷媒の流路を切り替え可能な三方弁として機能する。
図1〜図3は、第1実施形態に係るバタフライバルブの構成を表す図である。図1(A)は正面図であり、図1(B)は底面図である。図2(A)は図1(B)のA−A矢視断面図であり、図2(B)は図2(A)のB−B矢視断面図である。図3(A)は図2(A)のC−C矢視断面図であり、図3(B)は図3(A)のE部拡大図である。
図1(A)および(B)に示すように、バタフライバルブ10は、弁部を収容するボディ12と、弁部を駆動するためのアクチュエータ14とを一体に組み付けて構成される。なお、アクチュエータ14としては、DCモータ、ステッピングモータその他の電動アクチュエータを採用することができるが、その詳細については説明を省略する。
図2(A)に示すように、バタフライバルブ10は、ボディ12に収容されて冷媒通路16の開閉状態を調整可能(流路を切り替え可能)な弁体18と、弁体18の回動中心となるシャフト20を備える。シャフト20は、アクチュエータ14の回転機構22(回転軸)に接続されている。ボディ12は、例えばアルミニウム合金や真鍮などの金属材を切削加工等することにより得られる。
図2(B)にも示すように、ボディ12は断面T字状をなし、冷媒通路16はT字状の通路とされている。すなわち、冷媒通路16は、ボディ12を貫通する直線状の第1通路24と、第1通路24に対して直角に接続される第2通路26を有する。第2通路26の一端には上流側から冷媒を導入するための導入ポート30が設けられている。一方、第1通路24の一端には第1導出ポート32が設けられ、他端には第2導出ポート34が設けられている。弁体18は、第1通路24における第2通路26との接続点に配置されている。導入ポート30を介して導入された冷媒は、弁体18の回動位置に応じて第1導出ポート32又は第2導出ポート34から下流側に導出可能となっている。
図1(A)にも示したように、第2通路26の第1通路24への開口端部28は、シャフト20の軸線方向よりも直角方向に開口幅が小さい断面を有する。本実施形態では図示のように、上下に長い長円形状(非真円状)とされている。このように、開口端部28の横幅を相対的に小さくすることで、弁体18の長径を大きくとらなくともその弁体18が着座する座面領域を確保することができる。一方、開口端部28の縦幅を相対的に大きくすることで、十分な流量の冷媒を通過させることが可能となる。すなわち、弁体18を大きくしなくとも必要流量を確保することができる。
図2(A)に戻り、ボディ12は、アクチュエータ14の機構が配置される作動室33と冷媒通路16とを区画する隔壁35を有する。その隔壁35を貫通するように、シャフト20を挿通させるための挿通孔36が設けられている。ボディ12にはまた、冷媒通路16を挟んで挿通孔36と対向する軸受穴38が設けられている。軸受穴38は、挿通孔36と同軸状に形成されており、シャフト20の下端部を支持する。すなわち、シャフト20が冷媒通路16を径方向に横断するように延在し、自軸周りに回動可能となるようボディ12に支持されている。
挿通孔36は、上方から下方に向けて複数段に縮径される段付孔となっており、上段から大径部40、中径部42、小径部44が連設されている。大径部40には雌ねじ部46が形成されている。挿通孔36の上半部には、段付円筒状の軸支部材48が固定されている。シャフト20は、その軸支部材48と軸受穴38とによって軸線周りに回動可能に支持されている。軸支部材48は、その上半部に雄ねじ部50が形成されている。雄ねじ部50を雌ねじ部46に螺合させて締結することにより、軸支部材48をボディ12に固定することができる。軸支部材48の下半部は、中径部42に挿通される。軸支部材48の内方は段付円孔とされており、その段部52がシャフト20の上方への変位を規制するストッパとして機能する。
中径部42の下半部には、Oリングとバックアップリングとを交互に重ねた軸シール部材54が設けられている。すなわち、軸シール部材54は、下方からOリング56、バックアップリング58、Oリング60、およびバックアップリング62を配置して構成される。軸シール部材54は、中径部42の底面と軸支部材48の底面との間に配設され、特にOリング56,60が中径部42とシャフト20との間に介装されることにより、冷媒通路16側から作動室33側への冷媒の漏洩を規制する。軸シール部材54と弁体18との間に形成される間隙空間64にはオイルが封入されている。このオイルは、軸シール部材54と協働してシール性能を高める機能を有するが、その詳細については後述する。
図3(A)にも示すように、シャフト20は、段付円柱状をなし、その下半部が弁体18を貫通するようにして弁体18に組み付けられている。シャフト20の上半部が段階的に縮径しており、その段部66が軸支部材48の段部52により係止可能とされている。図3(B)にも示すように、シャフト20は、小径部44に位置する部分の外周面に凹部68が周設され、その部分が縮径部70となっている。この縮径部70と小径部44とに囲まれる間隙空間64にオイルが封入されている。仮に冷媒通路16の冷媒が挿通孔36に侵入すると、軸シール部材54だけでは冷媒の漏洩を完全には防止できない。Oリング等の樹脂材では冷媒の透過漏れまでを防止できないためである。
そこで本実施形態では、弁体18と軸シール部材54との間の間隙空間64にオイルを封入することで、軸シール部材54側への冷媒の流通を抑制している。ただし、万が一そのオイルが冷媒通路16に漏出しても問題とならないよう、オイルとして冷凍機油、つまり圧縮機等の潤滑に用いられるオイルを使用する。例えば冷媒としてHFC−134aが用いられる場合、ポリアルキレングリコール(PAG)等を採用することができる。HFO−1234yfが用いられる場合、ポリオールエステル(POE)等を採用することができる。
弁体18は、シャフト20に対して軸線方向に固定されておらず、冷媒通路16の内面により軸線方向への動きが規制されている。すなわち、弁体18の上端面および下端面とそれぞれ対向する冷媒通路16の内壁面には、切削加工による一対の平坦面71が形成されており、それらの平坦面71により弁体18の軸線方向への動きが規制されている。平坦面71の切削加工については、例えばマシニングセンタやインターナルブローチ等による加工を採用することができる。
弁体18は、図2(B)に示す状態から約45度回動すると、その外周部が冷媒通路16の内周面に沿って当接する(少なくとも部分的に密着する)。それにより、第1導出ポート32側の通路又は第2導出ポート34側の通路が閉止され、その閉止状態(閉弁状態)におけるシールが実現される。すなわち、弁体18は、冷媒通路16の軸線に沿う状態から一方向(図中反時計回り)又は反対方向(図中時計回り)に回動可能とされており(図中点線および波線参照)、アクチュエータ14により回転駆動される。図中点線状態では導入ポート30と第1導出ポート32とをつなぐ第1流路が開放され、導入ポート30と第2導出ポート34とをつなぐ第2流路が閉止(遮断)される。一方、図中波線状態では第2流路が開放され、第1流路が閉止(遮断)される。
次に、弁体18の構成の詳細について説明する。図4〜図6は、弁体18およびその周辺構造を示す図である。図4(A)は弁体18とシャフト20との接続構造を示す正面図であり、図4(B)は図4(A)のF−F矢視断面図である。図5(A)は弁体18を構成するプレートの構成を示す図であり、図5(B)は図5(A)のG−G矢視断面図である。図5(C)〜(E),図6(A),(B)は、弁体18の製造過程を示す図である。図6(C)は図6(B)のH−H矢視断面図であり、図6(D)は図6(C)のI部拡大図である。図6(E)は図2(A)のD部拡大図である。
図4(A)および(B)に示すように、弁体18は、正面視楕円形状をなす板状体であり、金属製のバルブ本体72の全体を弾性部材74により被覆して得られる。バルブ本体72は、第1プレート76と第2プレート78とを、互いの対向面中央部にシャフト20を組み付けるための取付孔80を形成するように接合した接合体として構成される。第1プレート76と第2プレート78とは同一構造を有し、両者を加締め接合することによりバルブ本体72が形成される。シャフト20は、全体的に段付円柱状をなすが、弁体18に挿通される部分にいわゆるDカットが施されている。すなわち、シャフト20において取付孔80に挿通される部分には一対の平坦面が形成され、それらがアクチュエータ14の回転力を伝達するための回転力伝達面82を構成する。
取付孔80が形成されるバルブ本体72の内壁面には、一対の回転力伝達面82にそれぞれ当接する一対の受圧面84が形成されている。アクチュエータ14の駆動によりシャフト20が回転駆動されると、回転力伝達面82が受圧面84を押圧することにより回転トルクを作用させる。弁体18は、アクチュエータ14の回転方向に応じた方向に回動して冷媒通路16の切り替えを実現する。
図5(A)および(B)に示すように、プレート76,78は、楕円形状の本体86を有し、その本体86の短軸L1に沿って凹状に曲折成形された取付孔形成部88を有する。本体86の長軸L2上には、短軸L1に対して対称となる位置に円ボス状の凸部90、円孔状の孔部92がそれぞれ設けられている。取付孔形成部88の内面には、本体86に延在する接合面94に平行な受圧面84が形成されている。
弁体18の製造工程においては、図5(C)に示すように、第1プレート76と第2プレート78とを互いの接合面94を対向させた状態で組み付ける。このとき、第1プレート76と第2プレート78の一方の凸部90を他方の孔部92に挿通させ、互いの接合面94を当接させる。そして図5(D)に示すように、所定の工具Wの先端を両プレートの凸部90の先端開口部に突き当てて加締める。このようにして、図5(E)に示すように、第1プレート76と第2プレート78とが接合されたバルブ本体72が形成される。すなわち、第1プレート76と第2プレート78とが、一方の対向面に設けられた凸部90を他方の対向面に設けられた孔部92に嵌合させることにより組み付けられ、その凸部90を加締めることにより接合されている。このとき、両プレートの取付孔形成部88に囲まれるように取付孔80が形成される。
続いて、図6(A)および(B)に示すように、バルブ本体72に対して弾性部材74(耐食性を有する樹脂材)の焼き付けが行われる。本実施形態では、弾性部材74としてゴムが採用され、そのゴムとバルブ本体72との加硫接合が行われる。それにより、弾性部材74がバルブ本体72に対し、密着した状態で安定に固定される。弾性部材74の上端面および下端面は互いに平行な平坦面98とされており、それらの平坦面98には、取付孔80の開口端の周囲を取り囲むように円環状のビード100が突設されている。
図6(D)にも示すように、ビード100は半球状(断面半円状)をなしている。弁体18をボディ12に対して組み付けた際には、図6(E)に示すように、ビード100がボディ12の平坦面71に強圧縮され、その平坦面71に対して環状に密着する。一方、弁体18におけるビード100の周囲の平坦面98は、平坦面71と当接するが、ビード100と比較してその平坦面71への密着度は小さい。すなわち、ビード100は、挿通孔36の開口端の周囲を取り囲みつつ、冷媒通路16の内面(平坦面71)に密着する。一方、ビード100の内外においては逆にその密着性能が緩和され、冷媒通路16の内面と弁体18との摺動抵抗が小さく抑えられている。なお、下方のビード100についても同様である。すなわち、下方のビード100は、軸受穴38の開口端の周囲を取り囲みつつ、冷媒通路16の内面(平坦面71)に密着する(図2(A)参照)。一方、ビード100の内外においては逆にその密着性能が緩和され、冷媒通路16の内面と弁体18との摺動抵抗が小さく抑えられている。このような構成により、第1流路および第2流路のいずれも閉止されない開弁時において、弁体18の上下面の摩擦抵抗を抑えることができ、弁体18の作動トルクを抑えることができる。
以上に説明したように、本実施形態のバタフライバルブ10では、バルブ本体72(第1プレート76,第2プレート78)の全体を被覆するように弾性部材74が設けられるため、弾性部材74がバルブ本体72に密着した状態を維持することができる。このため、弁体18が高圧冷媒に晒された状態で弁部の開閉作動が繰り返されたとしても、弾性部材74の欠損が生じ難い。また、バルブ本体72が芯金のように機能して弾性部材74の耐圧強度を高めることができる。その結果、バタフライバルブ10は、制御対象となる冷媒が高圧となる環境下においても良好に作動することが可能となる。
また、弁体18を構成する弾性部材74の上下端面にそれぞれビード100が形成され、そのビード100が圧縮されることによる冷媒通路16の内面(平坦面71)との局所的な密着によりシールが実現される。その結果、シール性能を確保するとともに、弁体18の作動領域において弁体18と冷媒通路16の内面とが密着する面積を小さくでき、バタフライバルブ10の作動トルクを小さく抑えることが可能となる。また、弁体18の摺動抵抗を小さく抑えることができるため、弁体18が一方の流路を確実に閉止し易くなり、バタフライバルブ10の弁閉止性能を向上させることができる。
さらに、第1プレート76および第2プレート78の一方の凸部90を他方の孔部92に嵌合させる工程を経ることで、両者の位置決めが自律的になされつつ組み付けられ、簡易に弁体18を得ることができる。そして、その組み付けにより形成された取付孔80にシャフト20を挿通させるという簡易な工程にて弁体18とシャフト20とを組み付けることができる。特に、第1プレート76と第2プレート78とを同一構造としたため、部品の共用化によるコスト削減を図ることができる。また、第1プレート76と第2プレート78との組み付け工程の流れにおいて凸部90を加締めることができるため、溶接等による接合方法を採用するよりも製造効率を高めることができる。
また、本実施形態によれば、弁体18と軸シール部材54との間隙空間64にオイルが封入されることで、冷媒通路16から軸シール部材54側へ冷媒の流通が規制される。このため、たとえ軸シール部材54(Oリング56,60)のみでは冷媒の透過漏れまでを防止できないとしても、そのオイルの介在により冷媒が軸シール部材54そのものへ到達し難くなる。すなわち、オイルと軸シール部材54による二重の規制により、冷媒の漏洩を防止するためのシール性能を高めることができる。
(変形例)
図7は、第1実施形態の変形例に係るバタフライバルブの主要部の構成を示す部分拡大断面図である。本変形例では、シャフト120の小径部44に位置する部分の外周面に複数段(図示の例では3段)の凹部170が周設されている。これらの凹部170と小径部44とに囲まれる間隙空間64にオイルが封入される。このような構成によっても、本実施形態と同様にシール性能を高めることができる。
なお、本実施形態では、図4(B)に示したように、シャフト20に第1プレート76と第2プレート78との接合面に対して平行な一対の平坦面を設け、それらを回転力伝達面82として各プレートの内壁面に当接させる構成とした。すなわち、バルブ本体72においてシャフト20を挿通させる取付孔80の内壁面が、シャフト20からの回転力を受ける受圧面として両プレートの接合面に平行な面のみを有する構成を示した。変形例においては、その取付孔80の内壁面が、両プレートの接合面に非平行な受圧面を含むようにしてもよい。例えば、シャフト20における上記一対の平坦面に連続する曲面と、取付孔80の内壁面とが当接する構成としてもよい。このような構成により、後述する第5実施形態と同様に、シャフト20の回転トルクによる力が、第1プレート76と第2プレート78との接合面に非平行な受圧面にも分散して作用するようになる。それにより、第1プレート76と第2プレート78との剥離や取付孔80の変形等の問題が生じ難くなる。
また、本実施形態では、図5等に示したように、複数のプレート(第1プレート76,第2プレート78)を用意し、それらを接合してバルブ本体72を形成する例を示した。変形例においては、金属材の一体成形によりバルブ本体72を形成してもよい。すなわち、金属材の射出成形、鍛造、ダイキャスト等によりバルブ本体72を成形してもよい。例えば、金属粉末射出成形(Metal Injectipn Molding:以下「MIM」ともいう)を行ってもよい。MIMは、金属粉末を材料とした射出成形により対象物を成形、焼結する加工技術であり、粉末冶金と射出成形とを融合させた技術である。具体的には、金属粉末に対して樹脂からなるバインダを混練し、それにより得られたコンパウンドを用いて射出成形を行う。このとき得られた射出成形品に対し、バインダを除去する脱脂を行った後に焼結し、バルブ本体72を得る。なお、必要に応じ、焼結後に切削等の後加工を行ってもよい。
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係るバタフライバルブの主要部の構成を示す部分拡大断面図である。図8(A)は第2実施形態の構成を示し、図8(B)は第2実施形態の変形例の構成を示す。以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
図8(A)に示すように、本実施形態では、ボディ212の小径部44の内周面に凹部268が周設されている。この凹部268とシャフト220とに囲まれる間隙空間64にオイルが封入される。一方、図8(B)に示すように、変形例では、小径部44の内周面に複数段(図示の例では3段)の凹部270が周設されている。これらの凹部270とシャフト220とに囲まれる間隙空間64にオイルが封入される。このような構成によっても、第1実施形態と同様にシール性能を高めることができる。
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態に係るバタフライバルブの主要部の構成を示す部分拡大断面図である。図9(A)は第3実施形態の構成を示し、図9(B)は第3実施形態の変形例の構成を示す。以下では第2実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第2実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
図9(A)に示すように、本実施形態では、ボディ312の挿通孔336において中径部42が延長され、小径部44が小さくされている。その中径部42の下部に円筒状の中間部材368が配置されている。そして、中間部材368の内周面に凹部268が周設されている。この凹部268とシャフト220とに囲まれる間隙空間64にオイルが封入される。一方、図9(B)に示すように、変形例では、中間部材370の内周面に複数段(図示の例では3段)の凹部270が周設されている。これらの凹部270とシャフト220とに囲まれる間隙空間64にオイルが封入される。このような構成によっても、第2実施形態と同様にシール性能を高めることができる。なお、中間部材368は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂からなるものでもよい。あるいは、焼結金属等の金属材からなるものでもよい。いずれにしても冷媒に対する耐食性に優れた耐食性材料であることが好ましい。
[第4実施形態]
図10は、第4実施形態に係るバタフライバルブの主要部の構成を示す部分拡大断面図である。図10(A)は第4実施形態の構成を示し、図10(B)は第4実施形態の変形例の構成を示す。以下では第3実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第3実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
図10(A)に示すように、本実施形態では、中径部42の下部に円筒状の中間部材468が配置されている。中間部材468の内周面には凹部268が周設され、外周面にも凹部467が周設されている。そして、凹部268とシャフト220とに囲まれる間隙空間64と、凹部467と中径部42とに囲まれる間隙空間464にオイルが封入される。一方、図10(B)に示すように、変形例では、中間部材470の内周面に複数段(図示の例では3段)の凹部270が周設され、外周面にも複数段(図示の例では3段)の凹部469が周設されている。そして、凹部270とシャフト220とに囲まれる間隙空間64と、凹部469と中径部42とに囲まれる間隙空間464にオイルが封入される。このような構成によっても、第2実施形態と同様にシール性能を高めることができる。
[第5実施形態]
図11は、第5実施形態に係るバタフライバルブの主要部の構成を示す図である。図11(A)は弁体とシャフトとの組み付け構造の要部を示す。図11(B)は図11(A)のJ−J矢視断面図である。なお、同図においては説明の便宜上、弾性部材の図示を省略している。以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。同図において第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
図11(A)および(B)に示すように、本実施形態では、第1プレート576と第2プレート578との接合により形成される取付孔580が菱形状となるように構成されている。すなわち、各プレートの本体586において取付孔580を形成する内壁面が、両プレートの接合面94と非平行の受圧面596とされている。図示の例では、第1プレート576および第2プレート578のそれぞれに、互いに直角をなす2つの受圧面596が形成されている。各受圧面596と接合面94とのなす角が45度となるように設定されている。そして、これら4つの受圧面596により取付孔580が形成される。そして、シャフト520において取付孔580に挿通される部分が、その取付孔580と相補形状となるように構成されている。すなわち、その挿通部分の断面が概略菱形状とされており、その挿通部分の4つの回転力伝達面582が4つの受圧面596にそれぞれ当接する。このような構成により、シャフト520の回転トルクに対するバルブ本体572の耐性を高めることができる。この作用効果については後述する。
(変形例)
図12は、第5実施形態の変形例に係るバタフライバルブの主要部の構成を示す図である。図12(A)は弁体とシャフトとの組み付け構造の要部を示す。図12(B)は図12(A)のJ−J矢視断面図である。
図12(A)および(B)に示すように、本変形例では、第1プレート676と第2プレート678との接合により形成される取付孔680が長方形状(又は正方形状)となるように構成されている。すなわち、各プレートの本体686において取付孔680を形成する内壁面が、両プレートの接合面94と平行となる受圧面696と、非平行となる一対の受圧面698を含む。受圧面696と受圧面698とは互いに直角をなす。そして、これら受圧面696,698により取付孔680が形成される。そして、シャフト620において取付孔680に挿通される部分が、その取付孔680と相補形状となるように構成されている。すなわち、その挿通部分の断面が長方形状(又は正方形状)とされており、その挿通部分の4つの回転力伝達面682が受圧面696,698にそれぞれ当接する。このような構成により、シャフト620の回転トルクに対するバルブ本体672の耐性を高めることができる。この作用効果については後述する。
図13は、第5実施形態およびその変形例の作用効果を表す図である。図13(A)は比較例として第1実施形態の構成を示し、図13(B)は第5実施形態の構成を示し、図13(C)は変形例の構成を示す。
図13(A)に示すように、第1実施形態の構成においては、シャフト20の回転トルクによる力が、第1プレート76と第2プレート78との接合面94に平行な一対の受圧面96にのみ作用する(太線矢印参照)。このため、図示のように、第1プレート76と第2プレート78とを引き離す方向の力が大きくなる。その結果、回転トルクの大きさによっては、第1プレート76と第2プレート78との剥離や取付孔580の変形を生じさせ、アクチュエータの駆動力が弁体に伝わらず、バタフライバルブとしての機能を果たせなくなる可能性が残る。
これに対し、図13(B)に示すように、第5実施形態の構成においては、シャフト520の回転トルクによる力が、第1プレート576と第2プレート578との接合面94に非平行な4つの受圧面596に分散して作用する(太線矢印参照)。しかも、その力の成分が、第1プレート576と第2プレート578とを引き離す方向(点線矢印参照)と、接合面94に平行な方向(二点鎖線矢印参照)とに分散される。このため、第1プレート576と第2プレート578との剥離や取付孔580の変形等の問題を生じさせ難い。また、接合面94に平行な方向の力を凸部90が受け止めるため、接合面94の剪断が生じることもない。その結果、弁体とシャフトとの組み付け状態を確保でき、シャフトによる回転力伝達機能を維持することができる。
また、図13(C)に示すように、変形例の構成においては、シャフト620の回転トルクによる力が、第1プレート676と第2プレート678との接合面94に平行な受圧面696と、接合面94に非平行な受圧面698とに分散して作用する(太線矢印参照)。このため、第1プレート676と第2プレート678との剥離や取付孔680の変形等の問題を生じさせ難い。また、接合面94に平行な方向の力を凸部90が受け止めるため、接合面94の剪断が生じることもない。その結果、弁体とシャフトとの組み付け状態を確保でき、シャフトによる回転力伝達機能を維持することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記実施形態においては、図1(A)に示したように、第2通路26の第1通路24への開口端部28を断面長円形状とする例を示した。変形例においては、開口端部28の断面形状として、他の形状を採用してもよい。図14は、変形例に係るバタフライバルブの構成を表す正面図である。
例えば、図14(A)に示すように、断面形状が縦長の長方形状の開口端部728としてもよい。あるいは、図14(B)に示すように、断面形状が第1実施形態とは異なる長円形状の開口端部828としてもよい。あるいは、樽形状や楕円形状など縦長の他の多角形状としてもよい。
上記実施形態では、図4に示したように、バルブ本体72(第1プレート76,第2プレート78)の全体を弾性部材74により被覆して弁体18を構成する例を示した。変形例においては、バルブ本体(プレート)の全体ではないが、少なくともその外周部を弾性部材により被覆するようにして弁体を構成してもよい。
上記実施形態ではボディ12を金属製とした。変形例においては、ボディ12を例えば樹脂等その他の材質から構成してもよい。
上記実施形態では、図5に示したように、第1プレート76と第2プレート78とを加締め接合する例を示した。変形例においては、ねじ接合等その他の方法により接合してもよい。すなわち、凸部90を本体86とは別体の雄ねじに置き換え、孔部92を本体86に形成された雌ねじに置き換えてもよい。
上記第3,第4実施形態では述べなかったが、中間部材を多孔質材にオイルを含浸させた含油部材にて構成してもよい。その場合、中間部材の内周面や外周面に凹部を形成しない構成としてもよい。また、中間部材を含油軸受として機能させ、シャフトを支持させるようにしてもよい。
上記実施形態では、間隙空間64にオイルを封入したが、グリースその他の潤滑剤を封入してもよい。このようなオイルやグリース等の潤滑剤は、冷媒と相溶性の材質からなるものでもよい。それにより、仮に潤滑剤が冷媒通路に漏洩するようなことがあっても、その潤滑剤が冷媒を変質させる等、冷媒にダメージを与えることを防止できる。このように冷媒と相溶性の潤滑剤を選択したとしても、少なくとも冷媒が軸シール部材54へ導かれる割合を少なくでき、冷媒が軸シール部材54を透過して外部に漏れることを抑制できる。あるいは逆に、その潤滑剤を冷媒と非相溶性の材質からなるものとしてもよい。それにより、間隙空間64においてその潤滑剤が遮蔽壁のように機能し、冷媒が軸シール部材54へ導かれることを効果的に抑制できる。このような潤滑剤として、冷媒と相溶性のもの又は非相溶性のもののいずれを選択するかは、バタフライバルブの用途に応じて適宜選択することができる。なお、樹脂材は、間隙空間64に封入されるが、軸シール部材54を構成する部材間にも充填されてよい。すなわち、Oリング56や58の周囲の空間にも潤滑剤が満たされてもよい。このような構成により、仮に冷媒がOリング56や58を透過したとしても、その空間に満たされた潤滑剤により冷媒が軸シール部材54を越えてアクチュエータ14側へ漏れることを防止又は抑制できる。
上記実施形態では、軸シール部材54を構成するシールリングとして断面円形状のOリング56,60を例示した。変形例においては、Oリングに代えて断面X形状のXリング、断面V形状のVリング(Vパッキン)、断面T形状のTリング等、その他のシールリングを採用してもよい。それにより、Oリングを採用する場合よりも、オイルやグリース等の充填量を多くすることができる。
上記実施形態では、図6(B)〜(E)においてビード100を円環状に構成する例を示した。変形例においては、ビードの形状および配置構成として、他の態様を採用してもよい。図15〜図18は、変形例に係るバタフライバルブの主要部の構成を表す図である。各図の(A)は斜視図であり、(B)は平面図である。なお、説明の便宜上、図中のビード部分(突出部分)をハッチング模様にて示している。
例えば、図15に示すようなビード710を採用してもよい。ビード710は、平坦面98の中央部において挿通孔36(図2参照)の開口端の周囲を取り囲む環状部712と、その環状部712から外方に伸びる突条部714,716を含む。突条部714と突条部716とは、環状部712の中心に対して対称となり、第1プレート76と第2プレート78との接合面(図4(B)参照)と同一平面上に位置するように配設されている。
あるいは、図16に示すようなビード720を採用してもよい。ビード720は、平坦面98の外周縁に沿って環状に設けられている。すなわち、ビード720が、平坦面98において最も外側に位置するように設けられている。このように構成することにより、ビード720の内側領域を大きくすることができる。このような構成においては、そのビード720の内側領域をボディ12の平坦面71に対して押し付けない構成(例えば、その内側領域と平坦面71との間にクリアランスをもたせる構成)とすることもでき、弁体の作動トルクを効果的に抑えることが可能となる。
あるいは、図17に示すようなビード730を採用してもよい。ビード730は、環状部712と、その環状部712から外方に伸びる突条部722,724および突条部726,727を含む。突条部722と突条部724とは、環状部712の中心に対して対称となるように設けられている。また、突条部726と突条部727とが、環状部712の中心に対して対称となるように設けられている。突条部722と突条部726とは、第1プレート76と第2プレート78との接合面(図4(B)参照)に対して対称となるように配設されている。また、突条部724と突条部727とが、第1プレート76と第2プレート78との接合面に対して対称となるように配設されている。
あるいは、図18に示すようなビード740を採用してもよい。ビード740は、平坦面98の中央部において挿通孔36(図2参照)と同心状に設けられた環状部742と、平坦面98の外周縁に沿って部分的に設けられた一対の突条部744,746とを連設して構成されている。このような構成によっても、冷媒の外部漏れを防止するとともに、弁体の作動トルクを抑えることができる。
なお、上記実施形態において、弁体の平面部におけるビードおよびその外側領域については冷媒通路16の内面に密着させる必要があるが、ビードの内側については冷媒通路16の内面に密着させなくてもよい。さらに言えば、ビードの内側については冷媒通路16の内面との間にクリアランスを設けてもよい。それにより、弁体の作動トルクを効果的に低減することができる。一方、上記変形例においては、弁体の平面部におけるビードについては冷媒通路16の内面に密着させる必要があるが、ビードの内側および外側については、冷媒通路16の内面との間にクリアランスを設けてもよい。すなわち、平面部についてはビードのみ冷媒通路16の内面に密着させ、ビードの内外については冷媒通路16の内面との間にクリアランスを設けてもよい。それにより、弁体の作動トルクをより効果的に低減することができる。
上記実施形態および変形例では述べなかったが、ビードを二重環状あるいは三重環状といったように挿通孔36の周囲に複数段に設けてもよい。
上記実施形態では、バタフライバルブを冷媒通路を切り替え可能な三方弁として構成する例を示した。変形例においては、バタフライバルブを四方弁や二方弁として構成してもよい。例えば二方弁とする場合、冷媒通路を開閉可能な開閉弁として構成してもよい。あるいは、冷媒通路の開閉状態や開度を調整可能な制御弁として構成してもよい。
上記実施形態では、バタフライバルブを車両用空調装置の冷凍サイクルに適用する例を示した。変形例においては、家庭用等その他の空調装置の冷凍サイクルに適用してもよい。あるいは、給湯装置等の水回路に適用してもよい。さらに、オイルその他の作動流体の流れを制御する装置に適用してもよい。
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。