以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。
[第1実施形態]
本実施形態では、バタフライバルブを車両用空調装置の冷凍サイクルに適用される切替弁として構成している。この車両用空調装置は、図示しない圧縮機、凝縮器、膨張装置、蒸発器等を配管にて接続した冷凍サイクルを備え、冷媒が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で車室内の空調を行う。冷媒としては、例えばHFC−134a、HFO−1234yfなどが採用される。このバタフライバルブは、その冷凍サイクルの所定位置に設置され、冷媒の流路を切り替え可能な三方弁として機能する。
図1〜図3は、第1実施形態に係るバタフライバルブの構成を表す図である。図1(A)は正面図であり、図1(B)は底面図である。図2(A)は図1(B)のA−A矢視断面図であり、図2(B)は図2(A)のB−B矢視断面図である。図3は図2(A)のC−C矢視断面図である。
図1(A)および(B)に示すように、バタフライバルブ10は、弁部を収容するボディ12と、弁部を駆動するためのアクチュエータ14とを一体に組み付けて構成される。なお、アクチュエータ14としては、DCモータ、ステッピングモータその他の電動アクチュエータを採用することができるが、その詳細については説明を省略する。
図2(A)に示すように、バタフライバルブ10は、ボディ12に収容されて冷媒通路16の開閉状態を調整可能(流路を切り替え可能)な弁体18と、弁体18の回動中心となるシャフト20を備える。シャフト20は、アクチュエータ14の回転機構22(回転軸)に接続されている。ボディ12は、例えばアルミニウム合金や真鍮などの金属材を切削加工等することにより得られる。
図2(B)にも示すように、ボディ12は断面T字状をなし、通路16はT字状の通路とされている。すなわち、通路16は、ボディ12を貫通する直線状の第1通路24と、第1通路24に対して直角に接続される第2通路26を有する。第2通路26の一端には上流側から冷媒を導入するための導入ポート30が設けられている。一方、第1通路24の一端には第1導出ポート32が設けられ、他端には第2導出ポート34が設けられている。弁体18は、第1通路24における第2通路26との接続点に配置されている。導入ポート30を介して導入された冷媒は、弁体18の回動位置に応じて第1導出ポート32又は第2導出ポート34から下流側に導出可能となっている。
ボディ12は、アクチュエータ14の機構が配置される作動室33と通路16とを区画する隔壁35を有する。その隔壁35を貫通するように、シャフト20を挿通させるための挿通孔36が設けられている。ボディ12にはまた、通路16を挟んで挿通孔36と対向する軸受穴38が設けられている。軸受穴38は、挿通孔36と同軸状に形成されており、シャフト20の下端部を支持する。すなわち、シャフト20が通路16を径方向に横断するように延在し、自軸周りに回動可能となるようボディ12に支持されている。
挿通孔36は、上方から下方に向けて複数段に縮径される段付孔となっており、上段から大径部40、中径部42、小径部44が連設されている。大径部40には雌ねじ部46が形成されている。挿通孔36の上半部には、段付円筒状の軸支部材48が固定されている。シャフト20は、その軸支部材48と軸受穴38とによって軸線周りに回動可能に支持されている。軸支部材48は、その上半部に雄ねじ部50が形成されている。雄ねじ部50を雌ねじ部46に螺合させて締結することにより、軸支部材48をボディ12に固定することができる。軸支部材48の下半部は、中径部42に挿通される。軸支部材48の内方は段付円孔とされており、その段部52がシャフト20の上方への変位を規制するストッパとして機能する。
中径部42の下半部には、Oリングとバックアップリングとを交互に重ねた軸シール部材54が設けられている。すなわち、軸シール部材54は、下方からOリング56、バックアップリング58、Oリング60、およびバックアップリング62を配置して構成される。軸シール部材54は、中径部42の底面と軸支部材48の底面との間に配設され、特にOリング56,60が中径部42とシャフト20との間に介装されることにより、通路16側から作動室33側への冷媒の漏洩を規制する。軸シール部材54と弁体18との間に形成される間隙空間64にはオイルが封入されている。このオイルは、軸シール部材54と協働してシール性能を高める機能を有する。
図3にも示すように、シャフト20は、段付円柱状をなし、その下半部が弁体18を貫通するようにして弁体18に組み付けられている。シャフト20の上半部が段階的に縮径しており、その段部66が軸支部材48の段部52により係止可能とされている。シャフト20は、小径部44に位置する部分の外周面に凹部68が周設され、その部分が縮径部70となっている。この縮径部70と小径部44とに囲まれる間隙空間64にオイルが封入され、軸シール部材54側への冷媒の流通を抑制している。
弁体18は、シャフト20に対して軸線方向に固定されておらず、通路16の内面により軸線方向への動きが規制されている。すなわち、弁体18の上端面および下端面とそれぞれ対向する通路16の内壁面には、切削加工による一対の平坦面71,73が形成されており、それらの平坦面により弁体18の軸線方向への動きが規制されている。これらの平坦面の切削加工については、例えばマシニングセンタやインターナルブローチ等による加工を採用することができる。
弁体18は、図2(B)に示す状態から約45度回動すると、その外周部が通路16の内周面に沿って当接する。それにより、第1導出ポート32側の通路又は第2導出ポート34側の通路が閉止され、その閉止状態(閉弁状態)におけるシールが実現される。すなわち、弁体18は、通路16の軸線に沿う状態から一方向(図中反時計回り)に又は反対方向(図中時計回り)に回動可能とされており(図中点線および波線参照)、アクチュエータ14により回転駆動される。
弁体18が一方向に回動することにより第1の弁が閉じ(図中点線状態)、導入ポート30と第1導出ポート32とをつなぐ第1流路が開放され、導入ポート30と第2導出ポート34とをつなぐ第2流路が閉止(遮断)される。一方、弁体18が他方向に回動することにより第2の弁を閉じ(図中波線状態)、第2流路が開放され、第1流路が閉止(遮断)される。本実施形態では、第1の弁および第2の弁のいずれの開閉に際しても、弁体18が、第1通路24の軸線に対して90度よりも小さい角度をなすようにして第1通路24の内面に着脱する。
次に、弁体18の構成の詳細について説明する。図4〜図6は、弁体18およびその周辺構造を示す図である。図4(A)は弁体18とシャフト20との接続構造を示す正面図であり、図4(B)は図4(A)のC−C矢視断面図である。図5は弁体18を構成するプレートの外観を表す図である。図5(A)は斜視図であり、図5(B)は正面図であり、図5(C)は平面図である。図6は弁体18の外観を表す図である。図6(A)は斜視図であり、図6(B)は正面図であり、図6(C)は平面図である。
図4(A)および(B)に示すように、弁体18は、金属製のプレート72の外面を弾性部材74により被覆して得られ、軸線L1に対して対称な構造を有する。図5(A)〜(C)にも示すように、プレート72は、正面視楕円状をなし、シャフト20を挿通する筒状のベース80と、ベース80から半径方向外向きに延出する板状の本体部82と、本体部82の外周部に沿って設けられたシール支持部84とを有する。ベース80の内方にシャフト20を挿通するための取付孔86が形成されている。図4(B)に示すように、シール支持部84は断面三股形状をなし、本体部82の延在方向に延出する第1支持部81と、本体部82から弁体18の回転方向一方の側に延出する第2支持部83と、本体部82から弁体18の回転方向他方の側に延出する第3支持部85とを有する。第2支持部83と第3支持部85とは、本体部82の径方向の断面において本体部82に対して互いに反対側に延び、それぞれ第1支持部81と約90度の角度をなす。
弁体18の製造工程においては、プレート72に対して弾性部材74(耐食性を有する樹脂材)の焼き付けが行われる。本実施形態では、弾性部材74としてゴムが採用され、そのゴムとプレート72との加硫接合が行われる。それにより、弾性部材74がプレート72に対し、密着した状態で安定に固定される。
図4(A)に示すように、シャフト20は、全体的に段付円柱状をなすが、弁体18に挿通される部分にいわゆるDカットが施されている。すなわち、シャフト20において取付孔86に挿通される部分には一対の平坦面が形成され、それらがアクチュエータ14の回転力を伝達するための回転力伝達面88を構成する。
一方、ベース80の内壁面には、一対の回転力伝達面88にそれぞれ当接する一対の受圧面90が形成されている。アクチュエータ14の駆動によりシャフト20が回転駆動されると、回転力伝達面88が受圧面90を押圧することによりプレート72に回転トルクを作用させる。弁体18は、アクチュエータ14の回転方向に応じた方向に回動して通路16の切り替えを実現する。
図6(A)〜(C)に示すように、弁体18は、平面視において上下左右対称に構成されている。弾性部材74は、プレート72の外面全体を滑らかに覆うベース部75と、ベース部75から突設され、弁体18の外周面に沿って連続する帯状のシール部77とを有する。弾性部材74の上端面および下端面は、それぞれ軸線に対して垂直であり、互いに平行な平坦面92,94とされている。平坦面92には、取付孔86の上端開口部を取り囲むように円形の環状ビード96が突設されている。環状ビード96は、挿通孔36の開口部を同軸状に取り囲みつつ、通路16の平坦面71に密着し、弁体18の内方への冷媒の流入を阻止する「第1環状シール部」として機能する(図2(A)参照)。一方、平坦面94には、取付孔86の下端開口部を取り囲むように円形の環状ビード98が突設されている。この環状ビード98は、軸受穴38の開口部を同軸状に取り囲みつつ、通路16の平坦面73に密着し、弁体18の内方への冷媒の流入を阻止する「第2環状シール部」として機能する(図2(A)参照)。
また、弾性部材74の外周面に沿って円弧を描くようにビード100,102,104および106が突設されている。弁体18の軸線L1に対して一方の側にビード100,102が並設され、他方の側にビード104,106が並設されている。一方、弾性部材74の上面には、環状ビード96から半径方向外向きに延出するように一対の直線ビード108,110が設けられている。さらに、これら直線ビード108,110の先端とそれぞれ直交するように弧状ビード112,114が設けられている。ビード100の上端が弧状ビード112の一端とつながり、ビード102の上端が弧状ビード112の他端とつながっている。ビード104の上端が弧状ビード114の一端とつながり、ビード106の上端が弧状ビード114の他端とつながっている。
同様に、弾性部材74の下面には、環状ビード98から半径方向外向きに延出するように一対の直線ビード116,118が設けられている。さらに、これら直線ビード116,118の先端とそれぞれ直交するように弧状ビード120,122が設けられている。ビード100の下端が弧状ビード120の一端とつながり、ビード102の下端が弧状ビード120の他端とつながっている。ビード104の下端が弧状ビード122の一端とつながり、ビード106の下端が弧状ビード122の他端とつながっている。
弧状ビード112,114は、環状ビード96と同心状に設けられている。同様に、弧状ビード120,122は、環状ビード98と同心状に設けられている。なお、ここでいう「同心状」は、円弧状であることは望ましいが、図示のように弧状ビードの長さが短い場合、直線状(環状シール部の同心円の接線方向に延びる形状)としてもよい。このような直線状は、実質的に「同心状」の概念に含めてよい。
環状ビード96,直線ビード108,110および弧状ビード112,114は、弁部の開閉状態にかかわらず、実質的に同じ潰し代にて通路16の平坦面71に密着する。弧状ビード112,114は、弾性部材74において軸線L1を中心とした半径方向の最も外側で平坦面71に当接する。同様に、環状ビード98,直線ビード116,118および弧状ビード120,122も、弁部の開閉状態にかかわらず、実質的に同じ潰し代にて通路16の平坦面73に密着する。弧状ビード120,122は、弾性部材74において軸線L1を中心とした半径方向の最も外側で平坦面73に当接する。
なお、ビード102,104が第1の弁を開閉する「第1ビード部」として機能し、ビード100,106が第2の弁を開閉する「第2ビード部」として機能する。環状ビード96が「第1環状シール部」として機能し、環状ビード98が「第2環状シール部」として機能する。弧状ビード112,114が「第1シール接続部」として機能し、直線ビード108,110が「第2シール接続部」として機能する。弧状ビード120,122が「第3シール接続部」として機能し、直線ビード116,118が「第4シール接続部」として機能する。各ビードは、断面半円状をなしている。
第1の弁が閉じられるときには、ビード102,104が通路16の内面に沿って密着する。このとき、ビード102,104が通路16の内面にて強圧縮され、十分なシール性能が確保される。すなわち、環状ビード96→直線ビード108→弧状ビード112→ビード102→弧状ビード120→直線ビード116→環状ビード98→直線ビード118→弧状ビード122→ビード104→弧状ビード114→直線ビード110→環状ビード96のように連続的につながる環状のシール構造が実現され、第1の弁を介する冷媒の流通が確実に遮断される。このとき、ビード100,106は、通路16の内面から離脱している(図2(B)の点線参照)。
一方、第2の弁が閉じられるときには、ビード100,106が通路16の内面に沿って密着する。このとき、ビード100,106が通路16の内面にて強圧縮され、十分なシール性能が確保される。すなわち、環状ビード96→直線ビード108→弧状ビード112→ビード100→弧状ビード120→直線ビード116→環状ビード98→直線ビード118→弧状ビード122→ビード106→弧状ビード114→直線ビード110→環状ビード96のように連続的につながる環状のシール構造が実現され、第2の弁を介する冷媒の流通が確実に遮断される。このとき、ビード102,104は、通路16の内面から離脱している(図2(B)の破線参照)。
次に、本実施形態のシール構造およびシール方法の詳細について説明する。
図7は、シール方法の原理を模式的に表す図である。図7(A)および(B)は、弁体のシール性能を向上させる構造を示す。図7(C)および(D)は、閉弁時における弁体の締め切りトルクを低減させる構造を示す。図8および図9は、図7のシール方法を実現するための具体的構造を表す図である。図8(A)〜(E)は、それぞれ図6(B)のA−A〜E−E矢視断面を示す。図9(A)〜(D)は、それぞれ図6(B)のF−F〜I−I矢視断面を示す。
本実施形態では、弁体18が高圧流体下におかれても十分なシール性能を確保すること(シール性能向上)、および閉弁時の締め切りトルクを抑制すること(トルク低減)を両立させる。シール性能向上の観点から、図7(A)および(B)に示すように、プレート72が、閉弁状態においてシール部のシール中心よりも低圧側に通路16の内面との間隙を狭小化させる特定形状を有する。すなわち、上述のように、シール支持部84が三股形状とされている。なお、ここでいう「シール部」は、弾性部材74において閉弁時に通路16に押し付けられて弾性変形する部分(押し潰される部分)である。「シール中心」は、シール部において最も高いシール面圧を発生させる部分を意味する。
図7(A)に示すように、第1の弁が閉じられることにより、第1導出ポート32側が高圧、第2導出ポート34側が低圧となる場合、導入ポート30側からみてシャフト20よりも奥側のシール部S1には自開方向、シャフト20よりも手前側のシール部S2には自閉方向の差圧が作用する。このような状況であっても、シール部S1のシール中心よりも低圧側に狭小部Pが形成されるため、その狭小部Pの間隙が抵抗となってシール部S1の変位を規制する。このとき、その抵抗に逆らってシール部S1がその間隙に押し込まれようとすることでその面圧が上昇し、シール部S1についても自封性を発揮させることができる。
図7(B)に示すように、第2の弁が閉じられることにより、第2導出ポート34側が高圧、第1導出ポート32側が低圧となる場合においても、シール部S1に自開方向、シール部S2に自閉方向の差圧が作用する。このような状況であっても、シール部S1のシール中心よりも低圧側に狭小部Pが形成されるため、シール部S1の変位を規制する。このため、自開側のシール部S1についても面圧が上昇し、自封性を発揮させることができる。以上により、いずれの弁が閉じるときにもシール性能を高めることが可能となる。
また、トルク低減の観点から、図7(C)および(D)に示すように、弾性部材74が、閉弁時に通路16の内面に沿って密着可能となるよう、プレート72側から通路16の内面に向けて突出するビード部(ビード100〜106)を有する。閉弁時には、これらのビード部がシール部S1,S2を構成する。
図7(C)に示すように、第1の弁が閉じられる場合、ビード104がシール部S1となり、ビード102がシール部S2となる。これらのビード102,104が「第1シール部」を構成する。また、図7(D)に示すように、第2の弁が閉じられる場合には、ビード100がシール部S1となり、ビード106がシール部S2となる。これらビード100,106が「第2シール部」を構成する。第1ビード部および第2ビード部の一方が通路16に密着した状態では、他方は通路16から離脱する。このように、通路16との密着部位をビード部に限定することで、閉弁時に弾性部材74における潰し量を最小限に抑えることができ、弁体18の締め切りトルクを小さく抑えることができる。
図8(A)〜(E)に示すように、ビード102,104は、それぞれ全長にわたり、第1支持部81と第3支持部85とによる二股形状(「第1の股形状」に対応する)に挟まれる。ビード102,104の中心(シール中心)は、その二股形状の中心線上に位置する。これらのビードが第1の弁の閉弁時においてほぼ同時に通路16の内面に着座し、それらの潰し代がほぼ均一となるよう、両ビードの形状および配置構成が定められている。それにより、第1の弁が閉弁を開始してから締め切るまでの弾性部材74の潰し量を最小限に抑えることができる。その結果、弁体18が第1の弁を閉じる際の締め切りトルクを小さく抑えることができる。
同様に、ビード100,106は、それぞれ全長にわたり、第1支持部81と第2支持部83とによる二股形状(「第2の股形状」に対応する)に挟まれる。ビード100,106の中心(シール中心)は、その二股形状の中心線上に位置する。これらのビードが第2の弁の閉弁時においてほぼ同時に通路16の内面に着座し、それらの潰し代がほぼ均一となるよう、両ビードの形状および配置構成が定められている。それにより、第2の弁が閉弁を開始してから締め切るまでの弾性部材74の潰し量を最小限に抑えることができる。その結果、弁体18が第2の弁を閉じる際の締め切りトルクを小さく抑えることができる。
図9(A)〜(D)に示すように、環状ビード96,直線ビード108および弧状ビード112は、通路16の開閉状態にかかわらず、通路16の平坦面71に密着する。図示を省略するが、直線ビード110および弧状ビード114についても同様である。既に述べたように、弧状ビード112,114が、弁体18の軸線を中心とした半径方向の最も外側で平坦面71に当接する。このため、開弁時に弁体18の作動トルク(回動抵抗)を発生させる部分を、弧状ビード112,114およびその内方の領域のみとすることができる。しかも、弧状ビード112,114は、環状ビード96と同心状に設けられているため、回動抵抗を小さく抑えることができる。直線ビード108,110についても、半径方向にそれぞれ一本ずつとされているため、潰し量を考慮しても概ね線接触であり、平坦面71との接触面積は小さく抑えられる。このため、弁体18のシール性を確保しつつも、その作動トルクを小さく抑えることができる。
同様に、環状ビード98,直線ビード116および弧状ビード120は、通路16の開閉状態にかかわらず、通路16の平坦面73に密着する。図示を省略するが、直線ビード118および弧状ビード122についても同様である。既に述べたように、弧状ビード120,122が、弁体18の軸線を中心とした半径方向の最も外側で平坦面73に当接し、環状ビード98と同心状に設けられている。直線ビード116,118についても半径方向にそれぞれ一本ずつとされている。このため、弁体18のシール性を確保しつつも、その作動トルクを小さく抑えることができる。
また、図9(D)に示すように、プレート72の上端部近傍および下端部近傍には、それぞれ半径方向外向きに突出するフランジ部130,132が設けられている。フランジ部130は、プレート72の上端に向けて外径が徐々に小さくなる形状を有する。それにより、環状ビード96の内側にプレート72と平坦面71との間隙を狭小化させる環状狭小部P2が形成される。すなわち、環状狭小部P2が「特定環形状」を有する。同様に、フランジ部132は、プレート72の下端に向けて外径が徐々に小さくなる形状を有する。それにより、環状ビード98の内側にプレート72と平坦面73との間隙を狭小化させる環状狭小部P2が形成される。
このため、弁体18が閉弁状態となったときに、環状ビード96,98の高圧側の側面に半径方向内向きの差圧が作用したとしても、その環状狭小部P2の間隙が抵抗となってその環状シール部の変位を規制する。このとき、その抵抗に逆らって環状シール部がその間隙に押し込まれようとすることでその面圧が上昇し、自封性を発揮する。このような構成により、バタフライバルブ10の閉弁時のシール性能を高めることが可能となる。
以上説明したように、本実施形態によれば、閉弁時にシール部のシール中心よりも低圧側に狭小部ができるようプレートを構成することで、高圧流体下での弁部のシールを確保するという課題に対処することができる。また、弁体の外周面に沿って帯状のシール部(ビード部)を形成し、通路に対してほぼ同時に着脱できる配置構成とすることで、弁体の締め切りトルクを抑制するという課題に対処することができる。さらに、通路の平坦部に常に当接するシール部を、環状シール部と弧状シール部とそれらをつなぐ直線状シール部に留めることで、弁体の作動トルクを抑制するという課題に対処することができる。
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態に係るバタフライバルブの弁体の構成を表す図である。図10(A)は正面図であり、図10(B)は平面図であり、図10(C)は図10(A)のA−A矢視断面図である。以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
本実施形態では、弾性部材がプレートの外面全体を覆ってはおらず、ビード部のみにより構成される点が第1実施形態と異なる。すなわち、図10(A)〜(C)に示すように、弁体218は、プレート72の外周面に沿って弾性部材274を配設して得られ、軸線L1に対して対称な構造を有する。弾性部材274は、第1実施形態の弾性部材74からベース部75を除き、シール部77を残したような構造を有する。すなわち、弾性部材274は、環状ビード96、直線ビード108、弧状ビード112、ビード100,102、弧状ビード120、直線ビード116、環状ビード98、直線ビード118、弧状ビード122、ビード104,106、弧状ビード114および直線ビード110を連続的につなげて構成される。
プレート72の上端面および下端面は、それぞれ軸線L1に対して垂直であり、互いに平行な平坦面292,294とされている。平坦面292に環状ビード96が設けられ、平坦面294に環状ビード98が設けられている。第1実施形態と同様に、環状ビード96,直線ビード108,110および弧状ビード112,114は、実質的に同じ潰し代にて通路16の平坦面71に密着する。同様に、環状ビード98,直線ビード116,118および弧状ビード120,122も、実質的に同じ潰し代にて通路16の平坦面73に密着する。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、弾性部材274を必要最小限に設ける形としたため、材料コストを抑制することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
図11は、第1変形例に係る弁体の断面図である。第1実施形態では図6に示したように、プレート72を滑らかに覆うベース部75に対してビード100〜106を突設する構成を例示した。本変形例では逆に、弁体318を構成する弾性部材374の一部が切り欠かれることによりビード部(シール部)が形成される。具体的には、プレート72を滑らかに覆うベース部375に対して断面半円状の溝377を複数成形することにより、ビード100〜106を形成してもよい。これらのビード100〜106も、プレート72側から突出する点については第1実施形態と同様である。このような構成によっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
図12は、第2変形例に係るバタフライバルブの弁体の構成を表す図である。図12(A)は正面図であり、図12(B)は平面図であり、図12(C)は図12(A)のA−A矢視断面図である。本変形例の弁体418は、弾性部材474が第1実施形態のようなビード100〜106を有しておらず、滑らかな側面を有している。このような構成においても、閉弁時には、シール支持部84の股形状に挟まれる部分400〜406がシール部S1又はS2として機能する(図7(A),(B)参照)。このような構成によっても、閉弁時にはシール部のシール中心よりも低圧側に狭小部が形成されるため、シール性能向上の点では第1実施形態と同様の効果を得ることができる。ただし、シール部がビード部によらないため、第1実施形態と同様のトルク低減効果を得ることはできない。
図13は、変形例に係るシール方法を模式的に表す図である。図13(A)および(B)は第3変形例を示し、図13(C)は第4変形例を示す。上記実施形態では、図7(A)および(B)に示したように、いわゆる三方弁に適用可能な構成として、シール支持部84が三股形状とされる例を示した。
第3変形例では、いわゆる二方弁を想定し、通路516において上流側と下流側とが切り替わる双方向の流れに適用可能な構成を示す。図13(A)に示すように、プレート572は、閉弁状態においてシール部のシール中心よりも低圧側に通路516の内面との間隙を狭小化させるための特定形状を有する。すなわち、シール支持部584が、本体部82の延在方向に延出する第1支持部81と、本体部82から弁体18の回転方向一方の側(閉弁方向)に延出する第2支持部83とを有する。
このような構成により、図13(A)に示すように、閉弁状態においてポート534側が高圧、ポート532側が低圧となる場合、シャフト20に対して一方の側のシール部S1には自閉方向、他方の側のシール部S2には自開方向の差圧が作用する。このような状況であっても、シール部S2のシール中心よりも低圧側に狭小部Pが形成されるため、弁体518の全周にわたって自封性を発揮させることができる。
また、図13(B)に示すように、閉弁状態においてポート532側が高圧、ポート534側が低圧となる場合、シャフト20に対して一方の側のシール部S1には自開方向、他方の側のシール部S2には自閉方向の差圧が作用する。このような状況であっても、シール部S1のシール中心よりも低圧側に狭小部Pが形成されるため、弁体518の全周にわたって自封性を発揮させることができる。本変形例を採用することにより、二方弁について三方弁の場合よりもプレートの形状を簡素にできる。
第4変形例では、通路516における流れが一方向となる場合に適用可能な構成を示す。図13(C)に示すように、プレート672は、閉弁状態においてシール部のシール中心よりも低圧側に通路516の内面との間隙を狭小化させるための特定形状を有する。すなわち、シール支持部684が、本体部82の先端付近でプレート672の延在方向に対して下流側にずれるように延出する形状を有する。
このような構成により、閉弁状態においてポート534側が高圧、ポート532側が低圧となる場合、シャフト20に対して一方の側のシール部S1には自閉方向、他方の側のシール部S2には自開方向の差圧が作用する。このような状況であっても、シール部S2のシール中心よりも低圧側に狭小部Pが形成されるため、弁体618の全周にわたって自封性を発揮させることができる。
なお、以上においては、通路に対する流れ方向に応じた特定形状の例をそれぞれ示したが、「シール部のシール中心よりも低圧側に通路の内面との間隙を狭小化させるための形状」であれば、その他の形状を採用することもできる。例えば、通路516における流れが一方向となる場合に、第3変形例の構成(図13(A)等)を採用してもよい。二方弁に対して第1,第2実施形態の構成(図7(A)等)を採用してもよい。
図14は、変形例に係るトルク低減方法を模式的に表す図である。上記実施形態では、図7(C)および(D)に示したように、いわゆる三方弁に適用可能な構成として、ビード102,104による第1ビード部と、ビード100,106による第2ビード部とを有する構成を示した。
本変形例では、いわゆる二方弁を想定する。弁体718は、第1実施形態の弁体18においてビード100,106による第2ビード部を省略した構成を有する。このような構成により、図14(A)に示すように、閉弁状態においてポート534側が高圧、ポート532側が低圧となる場合、ビード104がシール部S1となり、ビード102がシール部S2となる。また、図14(B)に示すように、閉弁状態においてポート532側が高圧、ポート534側が低圧となる場合にも、ビード104がシール部S1となり、ビード102がシール部S2となる。このような構成により、弁体718の締め切りトルクを小さく抑える効果を維持しつつ、通路516と密着する弾性部材の製造コストを抑えることができる。なお、本変形例の構成は、通路516における流れが一方向となる場合にも適用可能である。
上記実施形態では、閉弁時における通路の軸線に対する弁体の角度を45度に設定し、弁体がその通路を斜めにシールする構成を示した。変形例においては、その弁体の角度として他の適正な角度を採用してもよい。その弁体の角度は90度としてもよいが、90度よりも小さい角度とするのが好ましい。その角度を90度とすると、弁体におけるシャフトの両側において差圧が自開方向に作用するため、シール性能の安定化の観点から不利となるためである。90度よりも小さい角度とすることで、シャフトに対する一方の側については差圧が自閉方向に作用することになるため、相対的にシール性能を安定化させることができる。また、自閉側のシール部が弁体の回転に対するストッパ機能を有するため、シール部そのものを小さく抑えることもできる。それにより、シール部の潰し量を抑えることができ、締め切りトルクを抑制できる可能性がある。
上記実施形態ではボディ12を金属製としたが、樹脂その他の材質から構成してもよい。また、上記実施形態では弁体を構成するプレートを金属製としたが、樹脂その他の材質から構成してもよい。ただし、弾性部材よりも硬質な材質を選択する。
上記実施形態では、図4等に示したように、金属材の一体成形によりプレート72を形成した。上記実施形態では述べなかったが、金属材の射出成形(金属粉末射出成形など)、鍛造、ダイキャスト等によりプレート72を成形することができる。変形例においては、複数のプレート(第1プレート,第2プレート)を用意し、それらを接合してもよい。
図15は、変形例に係るプレートの構造を表す図である。上記実施形態のプレート72に代えて、プレート872を採用することもできる。プレート872は、ベース80、本体部82およびシール支持部884を有する。シール支持部884は、上記実施形態と同様に断面三股形状をなし、本体部82の延在方向に延出する第1支持部881と、本体部82から弁体の回転方向一方の側に延出する第2支持部883と、本体部82から弁体の回転方向他方の側に延出する第3支持部885とを有する。
ベース80および本体部82の上面には、弾性部材74(図6参照)の直線ビード108,110に対応する位置にそれぞれ第4支持部890,892が設けられ、弧状ビード112,114に対応する位置にそれぞれ第5支持部894,896が設けられている。第4支持部890,892は、一対の第1支持部881のそれぞれの周方向延長上に位置する。第4支持部890は第5支持部894と直交し、第4支持部892は第5支持部896と直交する。第4支持部890,892は、それぞれ直線ビード108,110のシール中心付近(好ましくはシール中心よりも低圧側)にプレート872と平坦面71(図2参照)との間隙を狭小化させる形状を有する。第5支持部894,896は、それぞれ弧状ビード112,114のシール中心よりも低圧側にプレート872と平坦面71との間隙を狭小化させる形状を有する。
同様に、本体部82の下面には、弾性部材74の直線ビード116,118に対応する位置にそれぞれ第6支持部898,900が設けられ、弧状ビード120,122に対応する位置にそれぞれ第7支持部902,904が設けられている。第6支持部898,900は、一対の第1支持部881のそれぞれの周方向延長上に位置する。第6支持部898は第7支持部902と直交し、第6支持部900は第7支持部904と直交する。第6支持部898,900は、それぞれ直線ビード116,118のシール中心付近(好ましくはシール中心よりも低圧側)にプレート872と平坦面73(図2参照)との間隙を狭小化させる形状を有する。第7支持部902,904は、それぞれ弧状ビード120,122のシール中心よりも低圧側にプレート872と平坦面73との間隙を狭小化させる形状を有する。
なお、第4支持部890,892が、図15(C)に示すよりもプレート872の幅方向に大きくずれていてもよい。それにより、第4支持部890,892が、それぞれ直線ビード108,110のシール中心よりも低圧側にプレート872と平坦面71との間隙を狭小化できるようにするのが好ましい。同様に、第6支持部898,900が、プレート872の幅方向にずれていてもよい。それにより、支持部898,900が、それぞれ直線ビード116,118のシール中心よりも低圧側にプレート872と平坦面73との間隙を狭小化できるようにするのが好ましい。
上記実施形態および変形例では述べなかったが、環状ビードを二重環状あるいは三重環状といったように複数段に設けてもよい。
上記実施形態および変形例では述べなかったが、シャフトが弁体を貫通しない構成としてもよい。具体的には、図2に示す構成において、シャフト20の先端が弁体18の内部に留まる構成としてもよい。その場合、軸受穴38を省略することができる。
上記実施形態では、バタフライバルブを車両用空調装置の冷凍サイクルに適用する例を示した。変形例においては、家庭用等その他の空調装置の冷凍サイクルに適用してもよい。あるいは、バッテリやモータの冷却等を目的とする自動車用の冷却液(冷却水や冷却オイル)の循環回路に適用してもよい。すなわち、自動車用流体制御システムの流体回路に適用してもよい。あるいは、給湯装置等の水回路に適用してもよい。さらに、オイルその他の作動流体の流れを制御する装置に適用してもよい。
上記実施形態では、三方に開口する流体通路として、2つの通路が同軸状に配置され、もう一つの通路がそれらに直交するT字状の通路を例示した。変形例においては、例えば3つの通路が互いに平行に設けられ、それらをつなぐ連通路又は連通孔を有する構成としてもよい。例えば同方向に開口する2つの間にもう一つの通路が反対方向に開口するように配置され、隣接する通路同士の隔壁に連通孔を形成してもよい。その他、様々な流路形状に上記バタフライバルブの構成を適用することができる。
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。