以下、本発明を実施するための例示的な実施例を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施例で説明する寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、図面において、同一であるか又は機能的に類似している要素を示すために図面間で同じ参照符号を用いる。なお、本明細書において、上下とは重力方向における上方向と下方向とにそれぞれ対応する。また、車両前方方向及び車両後方方向とは、車両の前進方向及び後進方向にそれぞれ対応し、車内方向及び車外方向とは、車両の内部へ向かう方向及び車両の外部へ向かう方向にそれぞれ対応する。さらに、車幅方向及び車両前後方向は車両の幅方向及び車両の前後進方向にそれぞれ対応するが、それぞれ車両の幅方向及び車両の前後方向に厳密に対応する必要はなく、それぞれの方向から多少ずれた方向も含むものとする。また、ドアパネルの車両前方側の端部及び車両後方側の端部とは、それぞれ、ドアパネルの車両外側表面の端部からドアの全閉時に車体に隣接するドアパネルの車両内側表面の端部までを含むものとする。
第1の実施例
本発明の第1の実施例について図1乃至5を参照して説明する。図1は車両1000の斜視図である。なお、図1においては、説明を簡略化するためホイール等の部材を省略している。車両1000には、車体B、車両用ドアD1及びフェンダーFが設けられている。また、車両用ドアD1には、ドアパネル10、グライドヒンジ20(回動部材)及びグライドアクチュエータ30(第1の駆動機構)が設けられている。グライドヒンジ20は車体Bに取り付けられている。また、ドアパネル10は車両前方側の部分においてグライドヒンジ20に取り付けられており、グライドヒンジ20を介して車体Bに取り付けられている。グライドアクチュエータ30は、車体B内に設けられるとともにグライドヒンジ20に接続されている。
ドアパネル10には、ドア側ダウンストッパ11及び操作ユニット13が設けられている。ドア側ダウンストッパ11が車体Bに取り付けられた車体側ダウンストッパ12と係合することにより、ドアパネル10の車両後方側が車体Bによって保持されることができる。なお、図1においては、ドア側ダウンストッパ11及び車体側ダウンストッパ12は1つのみ設けられているが、互いに対応するように配置されていればよく、2つ以上設けることもできる。
車体B及びドアパネル10に取り付けられたグライドヒンジ20について、図2A及びBを用いて説明する。図2Aは全閉位置にあるグライドヒンジ20を示し、図2Bはドアパネル10を車体Bから離れる方向へ移動させたときの全開位置にあるグライドヒンジ20を示す。なお、図2A及びBにおいては、説明を簡略化するため車体B及びドアパネル10を省略している。
図2Aは、グライドヒンジ本体21、車体側取付片22、ドアパネル側取付片24及びグライドアクチュエータ取付片26が設けられたグライドヒンジ20を示す。グライドヒンジ20は、車体側取付片22を介して車体Bに取り付けられており、車体側ヒンジ軸23を中心として回動することができる。また、ドアパネル10は、ドアパネル側取付片24を介してグライドヒンジ20に取り付けられており、ドアパネル側ヒンジ軸25を中心に回動することができる。グライドヒンジ20は略L字形状を有しており、グライドヒンジ20が車体側ヒンジ軸23を中心に回動しドアパネル10を車体Bから離れる方向へ移動させる際に、グライドヒンジ20がフェンダーFと当接しないように形成されている(図4A乃至Cを参照)。なお、グライドヒンジ20の形状は略L字形状に限られず、グライドヒンジ20がドアパネル10を車体Bから離れる方向へ移動させる際に、グライドヒンジ20がフェンダーFと当接しない形状であればよい。
車体側取付片22には角度調整ストッパ27(ストッパ)が設けられており、グライドヒンジ本体21にはストッパ当接部28が設けられている。図2Bに示すように、角度調整ストッパ27は、グライドヒンジ本体21が車体側ヒンジ軸23を中心に回動する際にストッパ当接部28と当接し、グライドヒンジ本体21の回動角度を制限する。また、角度調整ストッパ27は、調整部材29を用いて車体側取付片22に取り付けられており、調整部材29を調整することで角度調整ストッパ27をストッパ当接部28に対して近づけたり遠ざけたりすることができる。そのため、調整部材29を用いて角度調整ストッパ27とストッパ当接部28との間の距離を変更することによって、角度調整ストッパ27がストッパ当接部28と当接する際の車体Bに対するグライドヒンジ本体21の角度が変わる。したがって、調整部材29を用いて、グライドヒンジ本体21の制限される回動角度を変更することができる。なお、調整部材29は、例えばボルト及びナットなどの固定部材で構成することができる。しかしながら、調整部材29の構成は固定部材のみからなる構成に限られない。例えば、調整部材29を、角度調整ストッパ27を車体側取付片22に取り付けるための固定部材と、ストッパ当接部28に対する角度調整ストッパ27の位置を調整する別個の調整部材から構成することもできる。なお、図2A及びBにおいては、グライドヒンジ20に2つの角度調整ストッパ27及びストッパ当接部28が設けられている。しかしながら、角度調整ストッパ27及びストッパ当接部28の数は2つに限られない。角度調整ストッパ27及びストッパ当接部28はそれぞれ対応して設けられていればよく、それぞれ1つだけ設けてもよいし、3つ以上設けてもよい。
グライドヒンジ本体21には、図1に示すグライドアクチュエータ30に接続されたグライドアクチュエータ取付片26が取り付けられている。グライドヒンジ本体21は、グライドアクチュエータ取付片26を介して伝えられるグライドアクチュエータ30の動作に従って車体側ヒンジ軸23を中心に回動する。図2A及びBに示すように、グライドアクチュエータ取付片26は略クランク形状を有しており、グライドヒンジ本体21が回動する際に、グライドアクチュエータ取付片26が車体側取付片22及び車体Bに当接しないように形成されている。なお、グライドアクチュエータ取付片26の形状は略クランク形状に限られず、グライドヒンジ本体21が回動する際に、グライドアクチュエータ取付片26が車体側取付片22及び車体Bに当接しない形状であればよい。また、本実施例において、グライドアクチュエータ取付片26はグライドヒンジ本体21とは別個の部材として形成されているが、グライドヒンジ本体21と一体的に形成されることもできる。
グライドアクチュエータ30(第1の駆動機構)は、図1に示すように、車体Bの内側に設けられており、グライドアクチュエータシャフト31(移動棒)を含む。グライドアクチュエータシャフト31は任意のヒンジ部材を介してグライドアクチュエータ取付片26に回動可能に接続されている。そのため、グライドアクチュエータ30はグライドアクチュエータシャフト31を介してグライドアクチュエータ取付片26に接続されている。これにより、グライドアクチュエータ30はグライドヒンジ20に接続される。
グライドアクチュエータ30は、車幅方向におけるグライドアクチュエータシャフト31の移動を喚起することができる。グライドアクチュエータシャフト31は、車幅方向に移動することで、グライドアクチュエータシャフト31に接続されるグライドアクチュエータ取付片26を移動させ、グライドヒンジ本体21を車体側ヒンジ軸23まわりに回動させることができる。すなわち、グライドヒンジ20は、グライドアクチュエータ30の動作に基づいて、車体Bに対して車体側ヒンジ軸23まわりに回動することができる。そのため、グライドアクチュエータ30の動作に基づくグライドヒンジ20の回動に伴って、グライドヒンジ20に取り付けられたドアパネル10が車体Bから離れる方向に又は車体Bに近づく方向に移動する(グライドする)ことができる。グライドアクチュエータ30は、例えば、電動アクチュエータ、電磁アクチュエータ及び空気圧シリンダなどの動力シリンダ等を用いて構成することができる。
次に、本実施例によるドアパネル10の開閉動作について、図3及び4を参照して説明する。図3は、全閉位置にあるドアパネル10と全開位置にあるドアパネル10とを示す側面図である。図3において、FRは車両前方方向を示す。なお、図3においては、説明の簡略化のためホイールやダウンストッパ11、12等を省略している。図3は、全閉位置にあるドアパネル10を実線で示し、全開位置にあるドアパネル10を2点鎖線で示す。図3を参照すると、全開位置にあるドアパネル10は全閉位置にあるドアパネル10と比べ、ドアパネル10の車両前方側の端部14が車両前方方向に移動していることが分かる。これは、グライドアクチュエータ30の動作に従ってグライドヒンジ20が回動する際に、グライドヒンジ20の回動に従ってドアパネル10が車外方向(紙面手前方向)に移動するとともに車両前方方向に移動するためである。
図4A乃至Cは、ドアパネル10の開閉動作に関して、図3中の4−4線に沿ったドアD1の断面を上方から見た図である。図4Aは全閉位置にあるドアD1を示し、図4Bはグライドアクチュエータ30によってグライドヒンジ20が全開位置まで回動された際のドアD1を示し、図4Cは全開位置にあるドアD1を示す。図中、FRは車両前方方向を示し、OUTは車外方向を示す。なお、図4A乃至Cにおいては、説明の簡略化のためドアパネル10及び車体Bの内部の構造を省略している。
図4Aにおいては、ドアD1は全閉位置にあり、ドアパネル10はフェンダーFと共に車両1000の側面を形成する。この際、グライドアクチュエータ30はグライドアクチュエータシャフト31をグライドアクチュエータ30の内部から車外方向へ突出させ、グライドアクチュエータ取付片26を介してグライドヒンジ本体21を車体Bに隣接する位置で保持する。グライドヒンジ本体21が車体Bに隣接する位置で保持されることにより、グライドヒンジ本体21に取り付けられたドアパネル10も車体Bに隣接する位置に保持されるため、ドアD1が全閉位置に保持される。なお、ドアD1が全閉位置にある際には、ドアパネル10の車両後方側においてドアパネル側ダウンストッパ11と車体側ダウンストッパ12とが係合することにより、ドアパネル10の車両後方側もドアD1の全閉位置において保持されることができる。
ドアD1が全閉位置にある場合に、搭乗者が操作ユニット13を操作してグライドアクチュエータ30に開動作信号を入力すると、グライドアクチュエータ30がグライドアクチュエータシャフト31を車内方向に引いて移動させる。この際の様子を図4Bに示す。グライドアクチュエータシャフト31が車内方向に移動すると、グライドアクチュエータシャフト31に接続されるグライドアクチュエータ取付片26を介して、グライドヒンジ本体21が車体側ヒンジ軸23を中心として矢印A1に沿って車外方向に回動する。この際、角度調整ストッパ27がストッパ当接部28と当接する位置において、グライドヒンジ本体21の回動が規制される。グライドヒンジ本体21に取り付けられたドアパネル10は、当該グライドヒンジ本体21の回動に従って車外方向に移動する。すなわち、グライドアクチュエータ30の動作に基づいてグライドヒンジ20が車体側ヒンジ軸23まわりに回動し、グライドヒンジ20に取り付けられたドアパネル10がグライドヒンジ20の回動に従って車体Bから離れる方向に移動する。この際、図4Bに示すようにドアパネル10の車両前方側の端部14も車体Bから離れる方向に移動する。なお、以下において、このようなグライドヒンジ20の回動に基づくドアパネル10の移動をドアパネル10のグライドという。
図4Bに示すように、グライドヒンジ20が全開位置まで回動されたグライド全開位置にあるドアパネル10では、ドアパネル10の車両前方側の端部14が車体Bから離れる方向に移動するとともにドアパネル10が車両前方方向に移動する。これにより、ドアパネル10の車両後方側において、ドアパネル側ダウンストッパ11と車体側ダウンストッパ12との係合が解除され、ドアパネル10の車両後方側の端部15が自由端となる。そのため、搭乗者はドアパネル10を車外方向に移動させることで、ドアパネル10をドアパネル側ヒンジ軸25まわりに回動させることができる。また、ドアパネル10が車両前方方向に移動すると、ドアパネル10の車両後方側の端部15と車体Bとの間に空間ができるため、搭乗者は当該空間に手や腕などを差し入れてドアパネル10を容易に回動させることができる。従って、搭乗者が操作ユニット13を操作してグライドアクチュエータ30にドアパネル10をグライドさせることによって、搭乗者がドアパネル10を容易に開くことができる位置までドアD1が移動する。そのため、ドアD1の上記構成により、操作ボタンの押下等の簡易な操作によって、搭乗者がドアパネル10を容易に開くことができる位置までドアパネル10が移動する、いわゆるドアD1のポップアップ動作を実現することができる。このようなポップアップ動作は、搭乗者の手が荷物でふさがっている場合などに搭乗者の容易な搭乗を補助することができる。
搭乗者によって全開位置まで回動されたドアパネル10を図4Cに示す。ドアパネル10は矢印A2に沿ってグライド全開位置からドアD1の全開位置まで回動する。これにより、搭乗者は車両の座席に隣接するドアD1を開き、車両に乗車することができる。なお、以下において、グライドヒンジ20に対するこのようなドアパネル10のドアパネル側ヒンジ軸25を中心とした回動を、ドアパネル10のスイングという。また、ドアパネル10が全開位置までスイングされた際のドアパネル10の位置をスイング全開位置という。ここで、ドアパネル10のスイング全開位置は、不図示のドアチェックやその他の開度調整機構を用いてスイング全開開度を調整することで、設定することができる。
また、搭乗者がドアD1を閉じる際には、搭乗者が開いているドアパネル10を車内方向へ回動させ、図4Bに示すようにグライドヒンジ20に対して全閉位置までドアパネル10をスイングさせる。なお、ドアD1の全開位置から、グライドヒンジ20に対して全閉位置までドアパネル10を回動させた際のドアパネル10の位置をスイング全閉位置という。その後、搭乗者が操作ユニット13を操作してグライドアクチュエータ30に閉動作信号を入力すると、グライドアクチュエータ30がグライドアクチュエータシャフト31を車外方向へ突出させて移動させる。グライドアクチュエータシャフト31が移動すると、グライドアクチュエータシャフト31に接続されるグライドアクチュエータ取付片26を介して、グライドヒンジ本体21が車体側ヒンジ軸23を中心として車内方向に回動する。ドアパネル10はグライドヒンジ20の回動に従って移動し、図4Aに示すドアD1の全閉位置まで移動する。この際、ドアパネル側ダウンストッパ11と車体側ダウンストッパ12とが係合することにより、車体Bがドアパネル10の車両後方側を保持する。これによって、ドアD1の閉動作が終了する。
上記のように、グライドヒンジ20を用いてドアパネル10をグライドさせた後に、ドアパネル10をスイングさせることで、ドアパネル10が車体Bから離れた位置でスイングすることができる。これにより、ドアパネル10の車両前方側において、ドアパネル10と車体Bとの間の空間S(図4Cにおいて2点鎖線で囲まれる空間)を従来の車両用ドアの場合と比べて広く確保することができる。そのため、本実施例による車両用ドアD1を用いることで、ドアD1を開いた際にドアパネル10に隣接する座席の足場付近の空間、すなわち空間Sを広く確保することができ、搭乗者の足さばき用の空間を増大させ、搭乗者の円滑な乗降車を補助することができる。また、グライドアクチュエータ30を用いてドアパネル10をグライドさせることにより、従来の車両用ドアと同様に、搭乗者はドアパネル10を回動(スイング)させることのみでドアD1を開くことができる。そのため、搭乗者は不慣れなドアパネル10のグライド操作を行わずに、従来の車両用ドアと同様の操作によって本実施例によるドアD1を開くことができる。さらに、ドアパネル10がグライドしドアパネル10の車両後方側の端部15と車体Bとの間に空間ができるため、搭乗者は簡易な操作を行うだけで、ドアパネル10を容易に開くことができる位置に移動させることができる。
次に、本実施例によるドアパネル10における操作ユニット13について説明する。操作ユニット13は図1に示すように、ドアパネル10のドアピラーとして形成される。操作ユニット13は静電容量センサなどのタッチセンサを含み、搭乗者が操作ユニット13に触れたことを検知する。また、操作ユニット13はディスプレイを含むことができ、ディスプレイに任意の図形や文字等を表示することができる。操作ユニット13に含まれるディスプレイは、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどを含むことができ、タッチセンサを含むタッチディスプレイを含むこともできる。操作ユニット13は、搭乗者が操作ユニット13に触れて操作したことを検知すると、制御部を介してグライドアクチュエータ30にドアの開動作信号又は閉動作信号を伝達する。操作ユニット13の操作は、例えばディスプレイに表示されたボタンに触れることや操作ユニット13を所定の方向にスワイプ(なでる)することで行われる。操作ユニット13をスワイプして操作する場合には、車両前方方向にスワイプされると開動作信号を発し、車両後方方向にスワイプされると閉動作信号を発するように操作ユニット13を構成することで、人間工学に基づいたより直観的な操作でドアD1を開閉させることができる。なお、操作ユニット13は上記の構成に限られず、例えば押しボタンスイッチなどを用いてもよい。また、操作ユニット13の構成は、ドアパネル10のドアピラーとして形成される構成に限られない。操作ユニット13は、例えば、車体Bに設けられたドアピラーとして形成してもよいし、ドアパネル10の一部としてドアパネル10の側面部等に設けてもよい。
操作ユニット13や制御部での信号の流れについて、図5を用いて説明する。図5は、制御部等に関するブロック図である。ECU51は制御部の一例であり、制御部はCPUやECUなどの制御装置を含むことができる。操作スイッチ52はドアパネル10の車内側又は携帯装置に設けられたドアD1の開閉操作用のスイッチである。操作スイッチ52は、例えば押しボタン式のスイッチやタッチディスプレイに表示されたスイッチ等であってよい。ここで、ECU51は、操作ユニット13、操作スイッチ52及びグライドアクチュエータ30に接続されている。
ドアD1を開くように、搭乗者が操作ユニット13又は操作スイッチ52が操作する場合には、操作された操作ユニット13又は操作スイッチ52はECU51に開動作すべきドアD1のドア情報と共に開動作信号を送る。ECU51は開動作信号を受け取ると、ドア情報に基づいて開動作すべきドアD1のグライドアクチュエータ30に対して開動作信号を送る。グライドアクチュエータ30は、ECU51から開動作信号を受け取ると、グライドアクチュエータシャフト31を移動させて、グライドヒンジ本体21を車外方向へ回動させドアパネル10を車外方向へグライドさせる。なお、ドア情報とは動作すべきドアD1を特定するための情報であればよく、ドア自体の識別情報に限られない。例えば、ドアD1に対応付けられた操作ユニット13の情報などでもよい。
一方でドアD1を閉じるように、搭乗者が操作ユニット13又は操作スイッチ52が操作する場合には、操作された操作ユニット13又は操作スイッチ52がECU51に閉動作すべきドアD1のドア情報と共に閉動作信号を送る。ECU51は閉動作信号を受け取ると、ドア情報に基づいて閉動作すべきドアD1のグライドアクチュエータ30に対して閉動作信号を送る。グライドアクチュエータ30は、ECU51から閉動作信号を受け取ると、グライドアクチュエータシャフト31を移動させて、グライドヒンジ本体21を車内方向へ回動させドアパネル10を車内方向へグライドさせる。
上記のように、本実施例による車両用ドアD1は、車体Bに対して車体側ヒンジ軸23(第1の回転軸)まわりに回動可能に接続されたグライドヒンジ20(回動部材)と、グライドヒンジ20に対してドアパネル側ヒンジ軸25(第2の回転軸)まわりに回動可能に取り付けられたドアパネル10とを備える。また、車両用ドアD1は、グライドヒンジ20に接続されるグライドアクチュエータ30(第1の駆動機構)をさらに備える。車両用ドアD1では、グライドヒンジ20が、グライドアクチュエータ30の動作に基づいて車体Bに対して回動し、グライドヒンジ20が回動して車両用ドアD1が開動作する際に、ドアパネル10の車両前方側の端部14が車体Bから離れる方向に移動する。
上記構成から、車両用ドアD1が開かれる際には、ドアパネル10は車体Bから離れた位置においてドアパネル側ヒンジ軸25まわりに回動することができる。そのため、ドアD1が開かれる際には、従来の車両用ドアと比べて、ドアパネル10の車両前方側においてドアパネル10と車体Bとの間の空間Sをより広く確保することができる。空間Sは座席の足場に隣接しているため、空間Sを広く確保することで、搭乗者が乗降車する際に足をドアパネル10にぶつけてしまうことなどを防ぐことができる。したがって、本実施例による車両用ドアD1を用いることで、搭乗者の足さばき用の空間が増大し、搭乗者が円滑に乗降車することができる。
また、本実施例による車両用ドアD1では、グライドアクチュエータ30の動作に基づいてグライドヒンジ20が回動し、ドアパネル10が車体Bから離れる方向に又は車体Bに近づく方向に移動(グライド)する。このため、搭乗者は車両用ドアD1を開閉する際に、グライドアクチュエータ30を駆動することでドアパネル10をグライドさせることができるため、ドアパネル10に対し不慣れなグライド操作を自身で行う必要がない。従って、搭乗者はドアパネル10をグライドさせるという不慣れな操作を自身で行うことなく、従来の車両用ドアと同様にドアパネル10を回動(スイング)させることでドアD1を開閉することができる。そのため、グライドアクチュエータ30の動作に基づいてグライドヒンジ20が回動することでドアD1の操作性が向上し、搭乗者は容易にドアD1を開閉することができる。また、ドアD1を開く際には、上記のようにドアパネル10の車両前方側の端部14が車体Bから離れることに伴い、ドアパネル10の車両後方側の端部15も全閉位置から移動し、ドアパネル10の車両後方側の端部15と車体Bとの間に空間ができる。搭乗者は、ドアD1を開く場合、ドアパネル10をグライドさせた後にドアパネル10の車両後方側の端部15と車体Bとの間の空間に指や腕を差し入れて、容易にドアパネル10を回動させることができる。そのため、搭乗者はグライドアクチュエータ30を駆動させるだけで、ドアパネル10を回動させ易い位置に移動させることができる。このため、グライドアクチュエータ30の動作に基づいてグライドヒンジ20が回動することでドアD1の操作性が向上し、搭乗者は荷物で手がふさがっている場合でも容易にドアD1を開くことができる。
さらに、本実施例による車両用ドアD1では、グライドアクチュエータ30は、グライドアクチュエータシャフト31が車幅方向に移動するように構成されている。ここで、グライドアクチュエータシャフト31は、ドアD1が全閉位置にあるときに、グライドアクチュエータ30から最も突出する。また、車両用ドアD1は、ドアD1が全閉位置にあるときに、グライドアクチュエータシャフト31とグライドアクチュエータ取付片26との接続部分がドアパネル10の車外側の表面よりも車外方向に突出しないように構成されている。すなわち、車両用ドアD1は、ドアD1が全閉位置にあるときに、グライドアクチュエータ30及びグライドアクチュエータ取付片26が車幅方向においてドアパネル10よりも車外方向に突出しないように構成されている。このため、グライドアクチュエータシャフト31が車幅方向に移動する場合であっても、グライドアクチュエータシャフト31の突出位置に合わせてフェンダーFの形状を車外方向に膨らませる等の措置をとる必要がない。従って、車両用ドアD1は、グライドアクチュエータシャフト31の車幅方向への移動に基づく車両1000の外形の変更を必要としないため、車両1000の審美性を維持するとともに、外形の変化に基づく空気抵抗の増大を防止することができる。
本実施例による車両用ドアD1では、図4A乃至Cに示すように、グライドアクチュエータ30は、車体側ヒンジ軸23に対して、グライドヒンジ20のドアパネル10が取り付けられている位置とは反対の位置において、グライドヒンジ20に接続される。これにより、車体Bにグライドアクチュエータ30を設ける際のグライドアクチュエータ30の配置箇所の自由度を向上させることができる。ただし、グライドアクチュエータ30がグライドヒンジ20に接続される構成はこれに限られない。グライドアクチュエータ30は、グライドアクチュエータ30の動作に従ってグライドヒンジ本体21を車体側ヒンジ軸23まわりに回動させられるようにグライドヒンジ20に接続されていればよい。
また、本実施例による車両用ドアD1では、ドアD1が全閉位置にあるときに、グライドアクチュエータシャフト31とグライドアクチュエータ取付片26との間の角度が鋭角、すなわち90°よりも小さい角度をなすように、グライドアクチュエータ31が配置されている。この場合、ドアD1が全閉位置にあるときにグライドアクチュエータシャフト31とグライドアクチュエータ取付片26との間の角度が90°や鈍角をなすようにグライドアクチュエータ30が配置される場合と比べて、グライドアクチュエータ30が車体側ヒンジ軸23により近い位置に配置される。そのため、グライドアクチュエータシャフト31はグライドアクチュエータ取付片26をより長い距離移動させることができ、グライドヒンジ20の回動範囲をより大きくすることができる。従って、当該構成により、グライドヒンジ20の回動に従ったドアパネル10のグライドのストロークをより大きくすることができ、ドアD1が開かれる際にドアパネル10と車体Bとの間の空間Sをより広く確保することができる。
本実施例による車両用ドアD1では、全閉位置にあるドアD1では、ダウンストッパ11及び12が係合していることから、ドアパネル10の車両後方側が車体Bに保持される。ドアパネル10が所定の位置まで車外方向へグライドする場合には、ドアパネル10を移動させる動力によってダウンストッパ11及び12の係合が解除されて、ドアパネル10の車両後方側の端部15が車体Bから離れる方向に移動する。ドアパネル10の車両後方側の端部15は、ドアパネル10の車両前方側の端部14が所定の位置まで回動するまで、ダウンストッパ11及び12によって車体Bに保持された後、車体Bから離れる方向に移動する。そのため、グライドヒンジ20が回動して車両用ドアD1が開動作するとき、ドアパネル10が、ドアパネル10の車両後方側の端部15が車体B側を向くように、ドアパネル側ヒンジ軸25を中心として回動する。従って、グライドヒンジ20が回動して車両用ドアD1が開動作するとき、図4Bに示すように、ドアパネル10の車両前方側の端部14から車体Bまでの距離は、ドアパネル10の車両後方側の端部15から車体Bまでの距離よりも長くなる。また、ドアパネル10がグライド全開位置まで移動した後には、ドアパネル10がドアパネル側ヒンジ軸25を中心として車外方向へ回動(スイング)する。そのため、グライドヒンジ20の回動の後にドアパネル10を回動させて車両用ドアD1を開動させるときには、図4Cに示すように、ドアパネル10の車両前方側の端部14から車体Bまでの距離は、ドアパネル10の車両後方側の端部15から車体Bまでの距離より短くなる。本実施例による車両用ドアD1において、グライドヒンジ20を車外方向へ回動させる際には、グライドヒンジ20の回動に従ってドアパネル10が車体から離れる方向に移動(グライド)する。ここで、ドアパネル10がグライドする際に、ドアパネル10の車両前方側の端部14から車体Bまでの距離が、ドアパネル10の車両後方側の端部15から車体Bまでの距離よりも短い場合には、ドアパネル10のグライドに従ってドアパネル10の車両前方側の端部14がフェンダーFに衝突してしまう場合がある。これに対し、本実施例による車両用ドアD1は、上記のように構成されることによって、ドアパネル10のグライド動作時にドアパネル10の車両前方側の端部14がフェンダーFに衝突してしまうことを防止することできる。なお、グライドヒンジ20を回動して車両用ドアD1が開動作するときに、ドアパネル10の車両前方側の端部14から車体Bまでの距離は、ドアパネル10の車両後方側の端部15から車体Bまでの距離と等しくなるように構成されてもよい。この場合であっても、ドアパネル10のグライド動作時にドアパネル10の車両前方側の端部14がフェンダーFに衝突してしまうことを防止することができる。
さらに、本実施例においては、図2A及びBに示すように、グライドアクチュエータ取付片26は、2つの角度調整ストッパ27の間において、グライドヒンジ本体21に取り付けられている。このため、グライドアクチュエータ30の動作に従ってグライドヒンジ20が車体側ヒンジ軸23を中心に回動する際、グライドアクチュエータ取付片26が取り付けられている部分の上方及び下方において角度調整ストッパ27がストッパ当接部28と当接する。これにより、角度調整ストッパ27及びストッパ当接部28の当接によってグライドヒンジ本体21にもたらされる反力をグライドアクチュエータ取付片26が取り付けられている部分の上方及び下方で分散させることができる。従って、角度調整ストッパ27及びストッパ当接部28が、グライドアクチュエータ取付片26が取り付けられている部分の上方又は下方にのみ設けられている場合と比べて、当該反力によるグライドヒンジ本体21の撓み等を低減することができる。なお、角度調整ストッパ27及びストッパ当接部28は上記のように2つ以上設けられてもよい。この場合、グライドアクチュエータ30は、グライドアクチュエータ取付片26を介して、2つ以上設けられたストッパのうちのいずれか2つの間においてドアヒンジ20に接続されることで、上記構成と同様にグライドヒンジ本体21の撓み等を低減することができる。また、ドアパネル10のグライド全開位置は、角度調整ストッパ27及びストッパ当接部28の代わりに電磁クラッチを用いて設定することもできる。
第1の実施例では、車両用ドアD1を閉じる際に、ドアパネル10を図4Bに示すようなスイング全閉位置まで車内方向に回動(スイング)させた後に、ドアパネル10を車内方向にグライドさせて車両用ドアD1を閉じる構成としている。これは、グライドヒンジ本体21を回動させてドアパネル10を車内方向にグライドさせる際に、ドアパネル10が所定の角度まで車内方向にスイングされていないとドアパネル10の車両前方側の端部14がフェンダーFにぶつかってしまう場合があるためである。このことから、ドアパネル10の車両前方側の端部14がフェンダーFにぶつかることを防止するために、ドアパネル10がグライドヒンジ20に対し所定の角度以下まで回動していない場合には、ドアパネル10の車内方向へのグライドを禁止するように構成してもよい。
このような構成に関し、図6及び7を用いて説明する。図6はドアパネル側ヒンジ軸25にドアパネル10のスイング角度を検出するためのスイングセンサ61が設けられたグライドヒンジ60を示す。図6に示すグライドヒンジ60では、スイングセンサ61以外の要素は第1の実施例におけるグライドヒンジ20と同様のものであるため、各要素について同じ符号を用いている。なお、図6では説明の簡略化のため、車体B及びドアパネル10を省略している。また、図7は車両用ドアD1にスイングセンサ61が設けられた場合の制御部等を示すブロック図である。ECU53は、操作スイッチ52、操作ユニット13及びグライドアクチュエータ30に加えて、さらにスイングセンサ61に接続されている。
図6を参照すると、グライドヒンジ60のドアパネル側ヒンジ軸25にスイングセンサ61が設けられている。スイングセンサ61は、ドアパネル取付片24を介してグライドヒンジ60に取り付けられているドアパネル10の、グライドヒンジ60に対する角度を検出するためのセンサである。スイングセンサ61は、例えばロータリエンコーダなどの角位置センサを含むことができる。スイングセンサ61は、検出したドアパネル10のグライドヒンジ60に対する角度をECU53に送るように構成されている。
図7を参照すると、ECU53にスイングセンサ61が接続されている。ECU53は操作ユニット13または操作スイッチ52から閉動作すべきドアD1のドア情報と共に閉動作信号を受け取ると、スイングセンサ61から送られたドアパネル10のグライドヒンジ60に対する角度が所定の角度以下であるか否かを判断する。ECU53は、当該ドアパネル10の角度が所定の角度以下であると判断する場合には、閉動作信号に基づいて閉動作されるべきドアD1のグライドアクチュエータ30を駆動し、ドアパネル10を車内方向にグライドさせる。一方、ECU53が、当該ドアパネル10の角度が所定の角度よりも大きいと判断する場合には、閉動作信号をグライドアクチュエータ30には送らずに、不図示のスピーカや光源を含むインジケータなどによる音声信号や光信号などで搭乗者に対しドアパネル10の車内方向へのスイングを促す。当該構成により、ドアパネル10のグライドヒンジ60に対する角度が所定の角度よりも大きい場合には、ドアパネル10の車内方向へのグライドが禁止され、ドアD1を閉じる際にドアパネル10の車両前方側の端部14がフェンダーFにぶつかることを防止することができる。なお、スイングセンサ61は、ドアパネル側ヒンジ軸25に設けられるセンサに限られず、ECU53がグライドヒンジ60に対するドアパネル10の位置を判断するための情報を検出することができるセンサであればよい。そのため、スイングセンサは、例えば、ドアパネル10とグライドヒンジ60との間の距離を検出する、ドアパネル10又はグライドヒンジ60に設けた近接センサであってもよい。
第1の実施例では、ドアパネル10をグライドさせるためのグライドアクチュエータ30が、グライドアクチュエータ30の動作に基づいて車幅方向に移動するグライドアクチュエータシャフト31(移動棒)を備えるように車両用ドアD1が構成されている。車両用ドアD1では、グライドアクチュエータ30の動作がグライドアクチュエータシャフト31の移動を喚起してグライドヒンジ20を開動させる。しかしながら、ドアパネル10をグライドさせるための駆動機構の構成はこれに限られず、グライドヒンジ20を回動させて車体側ヒンジ軸23を中心に回動させられる構成であればよい。従って、例えば、グライドアクチュエータシャフトが車両前後方向に移動するようにグライドアクチュエータを設け、当該グライドアクチュエータの動作に基づいてグライドヒンジを回動させることもできる。
図8及び9を参照して、グライドアクチュエータが、グライドアクチュエータの動作に基づいて車両前後方向に移動するグライドアクチュエータシャフトを備えるように構成された車両用ドアD2を説明する。なお、ドアパネル10のスイングやダウンストッパ11及び12の動作は第1の実施例と同様であるため、相違点を中心に説明する。図8は車両用ドアD2を備えた車両2000を示す斜視図である。図9A及びBは、図8に示す9−9線に沿った断面を上方から見た図である。
図8はグライドアクチュエータシャフトが車両前後方向に移動するようにグライドアクチュエータが配置された車両用ドアD2を備えた車両2000を示す。なお、図8においては、説明の簡略化のため、ホイール等の部材を省略している。ドアD2には、ドアパネル10、グライドヒンジ80及びグライドアクチュエータ90が設けられている。グライドヒンジ80は車体B及びドアパネル10に取り付けられている。グライドヒンジ80にはグライドヒンジ本体81及びグライドアクチュエータ取付片86が設けられており、グライドヒンジ80は、グライドヒンジ本体81が車体側ヒンジ軸83を中心に回動できるように車体Bに取り付けられている。なお、グライドヒンジ80のその他の構成は、第1実施例におけるグライドヒンジ20と同様であるため省略する。
グライドアクチュエータ90(第1の駆動機構)は、図8に示すように、車体Bの内側に設けられており、グライドアクチュエータシャフト91(移動棒)を含む。グライドアクチュエータシャフト91は任意のヒンジ部材を介してグライドアクチュエータ取付片86に回動可能に接続されており、グライドアクチュエータ90はグライドアクチュエータシャフト91を介してグライドアクチュエータ取付片86に接続されている。グライドアクチュエータ90は、車両前後方向におけるグライドアクチュエータシャフト91の移動を喚起することができる。グライドアクチュエータシャフト91は、車両前後方向に移動することで、グライドアクチュエータシャフト91に接続されるグライドアクチュエータ取付片86を移動させ、グライドヒンジ本体81を車体側ヒンジ軸83まわりに回動させることができる。すなわち、グライドヒンジ80は、グライドアクチュエータ90の動作に基づいて、車体側ヒンジ軸83まわりに回動することができる。そのため、グライドアクチュエータ90の動作に基づいたグライドヒンジ80の回動に伴って、グライドヒンジ80に取り付けられたドアパネル10が車体から離れる方向に又は車体に近づく方向に移動(グライド)することができる。ここで、グライドアクチュエータ90は、例えば、電動アクチュエータ、電磁アクチュエータ及び空気圧シリンダなどの動力シリンダ等を用いて構成することができる。なお、車両用ドアD2では、グライドアクチュエータ取付片86はグライドヒンジ本体81とは別個の部材として形成されているが、グライドヒンジ本体81と一体的に形成されることもできる。
次にグライドアクチュエータシャフト91を車両前後方向に移動させるグライドアクチュエータ90の動作に基づく、ドアパネル10のグライドについて図9A及びBを参照して説明する。図9Aは全閉位置にあるドアD2を示し、図9Bはドアパネル10がグライド全開位置にあるときのドアD2を示す。図9A及びBに示すFRは車両前方を示し、OUTは車外方向を示す。なお、図9A及びBでは、説明の簡略化のためドアパネル10及び車体Bの内部の構造を省略している。
図9Aを参照すると、グライドヒンジ本体81は車体Bに隣接する位置にあり、グライドヒンジ本体81に取り付けられたドアパネル10は全閉位置にあることが分かる。この際、グライドアクチュエータ90は、グライドアクチュエータ取付片86を介してグライドヒンジ本体81に接続されるグライドアクチュエータシャフト91を車両前方方向に引いた位置で保持する。搭乗者によって開動作信号が入力されると、グライドアクチュエータ90は、図9Bに示すようにグライドアクチュエータシャフト91を車両後方方向に突出させて移動させる。グライドアクチュエータシャフト91が移動すると、グライドアクチュエータ取付片86を介してグライドアクチュエータシャフト91に接続されたグライドヒンジ本体81が車体側ヒンジ軸83を中心として矢印A3に沿って回動する。グライドヒンジ本体81が車体側ヒンジ軸83まわりに車外方向へ回動することにより、グライドヒンジ本体81に取り付けられたドアパネル10が車体Bから離れる方向に移動(グライド)する。また、グライド全開位置にあるドアパネル10を全閉位置までグライドさせる際には、閉動作信号の入力に応じて、グライドアクチュエータ90がグライドアクチュエータシャフト91を車両前方方向に引いて移動させる。これにより、グライドアクチュエータシャフト91に接続されたグライドアクチュエータ取付片86を介してグライドヒンジ本体81が車体側ドアヒンジ83を中心として車内方向に回動する。グライドヒンジ本体81が車内方向に回動することに伴って、グライドヒンジ本体81に取り付けられたドアパネル10が車体Bに近づく方向に移動(グライド)し、全閉位置まで移動する。
このように、グライドアクチュエータシャフト91が車両前後方向に移動するようにグライドアクチュエータ90が配置された車両用ドアD2であっても、搭乗者の操作に従って、ドアパネル10をグライドさせることができる。そのため、車両用ドアD2は、第1の実施例による車両用ドアDと同様の機能を果たすことができる。
次に、グライドアクチュエータ30の代わりに、車体側ドアヒンジ軸上にモータが設けられた車両用ドアD3について図10及び11を参照して説明する。なお、ドアパネル10のスイングやダウンストッパ11及び12の動作は第1の実施例と同様であるため、相違点を中心に説明する。図10は車両用ドアD3を備えた車両3000を示す斜視図である。図11A及びBは、図10に示す11−11線に沿った断面を上方から見た図である。
図10はグライドアクチュエータ30の代わりに、車体側ドアヒンジ軸上にモータが設けられた車両用ドアD3を備えた車両3000を示す。なお、図10においては、説明の簡略化のため、ホイール等を省略している。ドアD3には、ドアパネル10、グライドヒンジ100及びモータ110が設けられている。グライドヒンジ100は車体B及びドアパネル10に取り付けられている。グライドヒンジ100にはグライドヒンジ本体101が設けられており、グライドヒンジ100は、グライドヒンジ本体101が車体側ヒンジ軸103を中心に回動できるように車体Bに取り付けられている。なお、グライドヒンジ100のその他の構成は、第1実施例におけるグライドヒンジ20と同様であるため省略する。
モータ110は、図10に示すように、車体側ドアヒンジ軸103上に取り付けられており、車体側ドアヒンジ軸103を介してグライドヒンジ本体101に接続されている。モータ110は、グライドヒンジ本体101に動力を伝えることにより、グライドヒンジ本体101の移動を喚起することができる。従って、グライドヒンジ100は、モータ110の動作に基づいて、車体側ヒンジ軸103まわりに回動することができる。そのため、モータ110の動作に基づいたグライドヒンジ100の回動に伴って、グライドヒンジ100に取り付けられたドアパネル10が車体から離れる方向に又は車体に近づく方向に移動(グライド)することができる。
次にモータ110の動作に基づく、ドアパネル10のグライドについて図11A及びBを参照して説明する。図11Aは全閉位置にあるときのドアD3を示し、図11Bはドアパネル10がグライド全開位置にあるときのドアD3を示す。図11A及びBに示すFRは車両前方を示し、OUTは車外方向を示す。なお、なお、図11A及びBでは、説明の簡略化のためドアパネル10及び車体Bの内部の構造を省略している。
図11Aを参照すると、グライドヒンジ本体101は車体Bに隣接する位置にあり、グライドヒンジ本体101に取り付けられたドアパネル10は全閉位置にあることが分かる。搭乗者によって開動作信号が入力されると、モータ110は、グライドヒンジ本体101が車外方向に回動するように、車体側ドアヒンジ軸103を介して動力をグライドヒンジ本体101に伝える。これにより、図11Bに示すように、グライドヒンジ本体101が車体側ヒンジ軸103を中心として矢印A4に沿って回動する。グライドヒンジ本体101が車体側ヒンジ軸103まわりに車外方向へ回動することにより、グライドヒンジ本体101に取り付けられたドアパネル10が車体Bから離れる方向に移動(グライド)する。また、グライド全開位置にあるドアパネル10を全閉位置までグライドさせる際には、閉動作信号の入力に基づいて、モータ110が、グライドヒンジ本体101が車内方向に回動するように、車体側ドアヒンジ軸103を介して動力をグライドヒンジ本体101に伝える。これにより、グライドヒンジ本体101が車体側ドアヒンジ103を中心として車内方向に回動する。グライドヒンジ本体101が車内方向に回動することに伴って、グライドヒンジ本体101に取り付けられたドアパネル10が車体Bに近づく方向に移動し、全閉位置まで移動する。
このように、車体側ドアヒンジ軸103上にモータ110が設けられた車両用ドアD3であっても、搭乗者の操作に従って、ドアパネル10をグライドさせることができる。そのため、車両用ドアD3は、第1の実施例による車両用ドアDと同様の機能を果たすことができる。なお、この場合、ECU53はグライドアクチュエータ30の代わりにモータ110に接続され、モータ110に開動作信号や閉動作信号を送ることとなる。
第2の実施例
本発明の第1の実施例による車両用ドアD1では、ドアパネル10をグライドさせるためにグライドアクチュエータ30が設けられた。本発明の第2の実施例による車両用ドアD4では、更にドアパネルをスイングさせるためのスイングアクチュエータが設けられる。以下、図12乃至14を参照して本実施例による車両用ドアD4について説明する。なお、操作ユニット13の操作、ドアパネル120のグライド動作及びダウンストッパ11及び12の動作等は第1の実施例と同様であるため、相違点を中心に説明する。
図12は、第2の実施例による車両用ドアD4を備えた車両4000の斜視図である。なお、図12においては、説明を簡略化するためにホイール等を省略している。車両4000には、車体B、車両用ドアD4及びフェンダーFが設けられている。また、車両用ドアD4には、ドアパネル120、グライドヒンジ130、グライドアクチュエータ140(第1の駆動機構)及びスイングアクチュエータ121(第2の駆動機構)が設けられている。グライドヒンジ130は車体Bに取り付けられている。ドアパネル120はグライドヒンジ130に取り付けられており、グライドヒンジ130を介して車体Bに取り付けられている。グライドアクチュエータ140は車体Bに設けられるとともにグライドヒンジ130に接続されている。スイングアクチュエータ121は、ドアパネル120内に設けられるとともにグライドヒンジ130に接続されている。
グライドヒンジ130には、グライドヒンジ本体131、車体側取付片132、ドアパネル側取付片134、グライドアクチュエータ取付片136、角度調整ストッパ137及び当接部138が設けられている。グライドヒンジ130は第1の実施例による車両用ドアD1のグライドヒンジ20とほぼ同様の構成を有するが、スイングアクチュエータ121が接続されている点でグライドヒンジ20と異なる。なお、車体側取付片132及び角度調整ストッパ137等の機能は第1の実施例による車両用ドアD1におけるそれらの機能と同様であるため、説明を省略する。また、第1の実施例による車両用ドアD1におけるグライド取付片26と同様に、グライドアクチュエータ取付片136はグライドヒンジ本体131と別個の部材として形成されているが、グライドヒンジ本体131と一体的に形成されることができる。
グライドアクチュエータ140は、車体Bの内側に設けられており、グライドアクチュエータシャフト141(移動棒)を含む。また、グライドアクチュエータ140にはグライドアクチュエータシャフト141の位置を検出するグライドセンサ142が設けられている。なお、グライドアクチュエータ140の機能は第1の実施例による車両用ドアD1におけるグライドアクチュエータ30の機能と同様であるため、説明を省略する。
スイングアクチュエータ121は、ドアパネル120内に設けられ、スイングアクチュエータシャフト122(移動棒)を含む。スイングアクチュエータシャフト122は任意のヒンジ部材を介してグライドヒンジ本体131に回動可能に接続されており、スイングアクチュエータ121はスイングアクチュエータシャフト122を介してグライドヒンジ本体131に接続されている。また、スイングアクチュエータ121には、スイングアクチュエータシャフト122の位置を検出するスイングセンサ123(図13A乃至C参照)が設けられている。
スイングアクチュエータ121は、スイングアクチュエータシャフト122の移動を喚起することができる。スイングアクチュエータシャフト122は、ドアパネル120に沿って車両前後方向に移動することで、スイングアクチュエータシャフト122に接続されるグライドヒンジ本体131を押したり引いたりする。スイングアクチュエータ121を備えたドアパネル120は、スイングアクチュエータシャフト122がグライドヒンジ本体131に加える力に基づいて、ドアパネル側ヒンジ軸135まわりに回動することができる。すなわち、ドアパネル120は、スイングアクチュエータ121の動作に基づいて、グライドヒンジ130に対してドアパネル側ヒンジ軸135まわりに回動することができる。ここで、スイングアクチュエータ121は、例えば、電動アクチュエータ、電磁アクチュエータ及び空気圧シリンダなどの動力シリンダ等を用いて構成することができる。なお、本実施例ではスイングアクチュエータシャフト122が、直接グライドヒンジ130に接続されているが、例えばアクチュエータ取付片などの別個の部材を介してグライドヒンジ130に接続されてもよい。
スイングアクチュエータ121の動作に基づくドアパネル120のスイング動作について、図13A乃至Cを参照して説明する。図13A乃至Cは、図12に示す13−13線に沿った断面を上方から見た図である。図13Aは、全閉位置にあるドアD4を示す。図13Bは、グライドアクチュエータ140によってグライドヒンジ130が全開位置まで回動された際のドアD4を示す。図13Cは全開位置にあるドアD4を示す。図13において、FRは車両前方方向を示し、OUTは車外方向を示す。なお、図13A乃至Cにおいては、説明の簡略化のためドアパネル120及び車体Bの内部の構造を省略している。
図13Aにおいて、ドアD1は全閉位置にあり、ドアパネル120はフェンダーFと共に車両4000の側面を形成する。この際、グライドアクチュエータ140は、第1の実施例におけるグライドアクチュエータ30と同様に、グライドアクチュエータシャフト141を突出させ、ドアD4を全閉位置に保持している。
ここで、搭乗者が操作ユニット13を操作してグライドアクチュエータ140に開動作信号を入力すると、グライドアクチュエータ140が駆動し、ドアパネル120を車外方向へグライドさせる。ドアパネル120をグライドさせるグライドアクチュエータ140の動作は第1の実施例におけるグライドアクチュエータ30の動作と同様であるため、省略する。
グライドアクチュエータ140によってドアパネル120がグライド全開位置まで車外方向へグライドされたときのドアD4を図13Bに示す。グライドヒンジ本体131が車体Bに対して矢印A5に沿って車外方向へ回動すると、グライドヒンジ本体131に取り付けられたドアパネル120が車体Bから離れる方向に移動し、ドアパネル120の車両前方側の端部124が車体Bから離れる方向に移動する。この際、グライドセンサ142がグライドアクチュエータシャフト141の位置を検出し、車両4000の制御部であるECU54に当該位置情報を送る。ECU54は、受け取った位置情報に基づいて、ドアパネル120がグライド全開位置までグライドしたか否かを判断する。すなわち、ECU54は、グライドセンサ142から受け取った当該位置情報に基づいて、ドアパネル120が取り付けられたグライドヒンジ130が全開位置まで回動したか否かを判断する。ECU54はグライドヒンジ130が全開位置まで回動したと判断すると、スイングアクチュエータ121に開動作信号を送る。ここで、ECU54は、例えばグライドヒンジ130の位置とグライドアクチュエータシャフト141の位置を対応付けて記憶しておき、記憶したグライドアクチュエータシャフト141の位置とグライドセンサ142から送られてくる情報を対比して、グライドヒンジ130が全開位置にあるか否かを判断することができる。なお、ECU54は、グライドヒンジ130の位置の代わりにドアパネル120の位置とグライドアクチュエータシャフト141の位置を関連付けて記憶し、ドアパネル120がグライド全開位置まで移動したか否かを判断してもよい。
スイングアクチュエータ121は開動作信号を受け取ると、スイングアクチュエータシャフト122を突出する方向に移動させる。ここで、スイングアクチュエータシャフト122はグライドヒンジ本体131に回動可能に接続されている。そのため、スイングアクチュエータ121が内部に設けられるドアパネル120が、当該スイングアクチュエータシャフト122の移動に基づいて、ドアパネル側ヒンジ軸135を中心として車外方向に回動する。
従って、図13Cに示すように、スイングアクチュエータ121の動作に基づいて、ドアパネル120がグライドヒンジ130に対して矢印A6に沿って車外方向へ回動(スイング)する。図13Cは、グライド全開位置にあるドアパネル120がスイング全開位置までスイングすることで、全開位置まで開かれたドアD4を示す。ドアD4が全開位置にあるときには、ドアパネル120が、車体Bから離れた位置まで移動した上で車外方向に回動しているため、ドアパネル120と車体Bとの間に空間S(図13Cにおいて2点鎖線で囲まれる空間)を広く確保することができる。なお、ドアパネル120のスイング全開位置は、不図示のドアチェックやその他の開度調整機構を用いてスイング全開開度を調整することで、設定することができる。
また、搭乗者がドアD4を閉じる際には、搭乗者が操作ユニット13を操作することで、スイングアクチュエータ121に閉動作信号を入力する。スイングアクチュエータ121は、閉動作信号が入力されると、スイングアクチュエータシャフト122を引いて移動させる。この際、スイングアクチュエータシャフト122の移動に基づいて、スイングアクチュエータ121を含むドアパネル120がドアパネル側ヒンジ軸135を中心として車内方向に回動する。ここで、スイングセンサ123がスイングアクチュエータシャフト122の位置を検出し、ECU54に当該位置情報を送る。ECU54は、ドアパネル120が車内方向にスイングし、図13Bに示すようなスイング全閉位置まで回動したと判断すると、グライドアクチュエータ140に閉動作信号を送る。グライドアクチュエータ140は閉動作信号を受け取ると、第1の実施例におけるグライドアクチュエータ30と同様に動作し、ドアパネル120を車内方向にグライドさせて、ドアD4の全閉位置まで移動させる。この際、ドアパネル側ダウンストッパ11と車体側ダウンストッパ12とが係合することにより、車体Bがドアパネル120の車両後方側を保持する。これによって、ドアD4の閉動作が終了する。なお、ECU54は、例えばドアパネル120の位置とスイングアクチュエータシャフト122の位置を対応付けて記憶しておき、記憶したスイングアクチュエータシャフト122の位置とスイングセンサ123から送られてくる情報を対比して、ドアパネル120がスイング全閉位置まで回動したか否かを判断することができる。
本実施例による車両用ドアD4における操作ユニット13や制御部での信号の流れについて、図14を用いて説明する。図14は、制御部等に関するブロック図である。操作ユニット13及び操作スイッチ52は第1の実施例における操作ユニット13及び操作スイッチ52と同様のものである。ECU54は制御部の一例であり、制御部はCPUやECUなどの制御装置を含む。ECU54は、操作ユニット13、操作スイッチ52、グライドアクチュエータ140、スイングアクチュエータ121、グライドセンサ142及びスイングセンサ123に接続されている。
ドアD4を開くように、搭乗者が操作ユニット13又は操作スイッチ52を操作する場合には、操作された操作ユニット13又は操作スイッチ52がECU54に開動作すべきD4ドアのドア情報と共に開動作信号を送る。ECU54は開動作信号を受け取ると、ドア情報に基づいて開動作すべきドアD4のグライドアクチュエータ140に対して開動作信号を送る。グライドアクチュエータ140は、ECU54から開動作信号を受け取ると、グライドアクチュエータシャフト141を移動させて、グライドヒンジ本体131を車外方向へ回動させドアパネル120を車外方向へグライドさせる。ドアパネル120が車外方向へグライドする際には、グライドセンサ142がグライドアクチュエータシャフト141の位置を検出し、ECU54に当該位置情報を送る。ECU54は、上記のように予め記憶したドアパネル120の位置と対応付けられたグライドアクチュエータシャフト141の位置と、グライドセンサ142から送られてくる情報を対比して、ドアパネル120がグライド全開位置にあるか否かを判断する。ECU54は、グライドセンサ142から送られてくるグライドアクチュエータシャフト141の位置情報に基づいてドアパネル120のグライドが終了したと判断すると、当該ドアパネル120のスイングアクチュエータ121に開動作信号を送る。スイングアクチュエータ121は、ECU54から開動作信号を受け取ると、スイングアクチュエータシャフト122を移動させて、ドアパネル120をグライドヒンジ130に対して車外方向へ回動させる。これにより、ドアD4が開動作する。
一方で、ドアD4を閉じるように、搭乗者が操作ユニット13又は操作スイッチ52が操作する場合には、操作された操作ユニット13又は操作スイッチ52がECU54に閉動作すべきドアD4のドア情報と共に閉動作信号を送る。ECU54は閉動作信号を受け取ると、ドア情報に基づいて閉動作すべきドアD4のスイングアクチュエータ121に対して閉動作信号を送る。スイングアクチュエータ121はECU54から閉動作信号を受け取ると、スイングアクチュエータシャフト122を移動させ、ドアパネル120をグライドヒンジ130に対して車内方向へ回動させる。ドアパネル120が車内方向へ回動する際には、スイングセンサ123がスイングアクチュエータシャフト122の位置を検出し、ECU54に当該位置情報を送る。ECU54は、上記のように予め記憶したドアパネル120の位置に対応付けられたスイングアクチュエータシャフト122の位置と、スイングセンサ123から送られてくる情報を対比して、ドアパネル120がスイング全閉位置まで回動したか否かを判断する。ECU54は、スイングセンサ123から送られてくるスイングアクチュエータシャフト122の位置情報に基づいてドアパネル120のスイングが終了したと判断すると、当該ドアD4のグライドアクチュエータ140に閉動作信号を送る。グライドアクチュエータ140は、ECU54から閉動作信号を受け取ると、グライドアクチュエータシャフト141を移動させて、グライドヒンジ本体131を車内方向へ回動させドアパネル120を車内方向へグライドさせる。これにより、ドアD4が閉動作する。
上記のように、本実施例による車両用ドアD4は、グライドヒンジ130、ドアパネル120及びグライドアクチュエータ140(第1の駆動機構)に加えて、スイングアクチュエータ121(第2の駆動機構)をさらに備える。ドアパネル120は、スイングアクチュエータ121の動作に基づいてグライドヒンジ130に対して回動するように構成されている。本実施例による車両用ドアD4では、ドアD4を開く際に、グライドヒンジ130を用いてドアパネル120をグライドさせた後に、ドアパネル120をスイングさせることで、ドアパネル120が車体Bから離れた位置でスイングすることができる。これにより、ドアパネル120の車両前方側において、ドアパネル120と車体Bとの間の空間Sを従来の車両用ドアの場合と比べて広く確保することができる。そのため、本実施例による車両用ドアD4を用いることで、ドアD4を開いた際にドアパネル120に隣接する座席の足場付近の空間、すなわち空間Sを広く確保することができ、搭乗者の足さばき用の空間を増大させ、搭乗者の円滑な乗降車を補助することができる。また、グライドアクチュエータ140を用いてドアパネル120をグライドさせるとともに、スイングアクチュエータ121を用いてドアパネル120をスイングさせることにより、搭乗者は簡易な操作だけでドアD4を開閉することができる。そのため、搭乗者は不慣れなドアパネル120のグライド操作を行わずに、ドアD4を容易に開閉することができる。また、本実施例によるドアD4では、各アクチュエータ140、121によってドアD4の開閉を自動的に行わせることができるため、搭乗者は荷物で手がふさがっている場合であっても容易に乗降車することができる。
また、本実施例による車両用ドアD6は、車体Bに対してグライドヒンジ130が所定の位置にあることを検出するグライドセンサ142(第1の検出部)と、グライドヒンジ130に対してドアパネル120が所定の位置にあることを検出するスイングセンサ123(第2の検出部)を備える。ドアD6が開動作する際には、グライドセンサ142によってグライドヒンジ130が車体Bに対して車外方向(開方向)に所定の位置まで回動したことを検出すると、ドアパネル120がスイングアクチュエータ121の動作に基づいてグライドヒンジ130に対して開方向に回動する。また、車両用ドアD6が閉動作する際には、スイングセンサ123によってドアパネル120がグライドヒンジ130に対して閉方向に所定の位置まで回動したことを検出すると、グライドヒンジ130はグライドアクチュエータ140の動作に基づいて車体Bに対して閉方向に回動する。当該構成により、車両用ドアD4では、開動作時に、グライドヒンジ130が車体Bに対して開方向に回動しドアパネル120が開方向にグライド全開位置まで移動すると、グライドセンサ142の検出結果に基づいてドアパネル120がグライドヒンジ130に対して開方向に回動する。また、閉動作時に、ドアパネル120がグライドヒンジ130に対して閉方向に全閉位置まで回動すると、スイングセンサ123の検出結果に基づいてグライドヒンジ130が車体Bに対して閉方向に回動しドアパネル120が閉方向に移動する。このため、車両用ドアD4では、グライドセンサ142でグライドヒンジ130が車外方向に全開位置まで回動したことを検出すると、自動的にドアパネル120の車外方向(開方向)へのスイングを開始することができる。また、同様に車両用ドアD4では、スイングセンサ123で、ドアパネル120が車内方向に全閉位置までスイングしたことを検出することで、自動的にドアパネル120の車内方向(閉方向)へのグライドを開始することができる。
なお、本実施例による車両用ドアD4は、上記のように、開動作時にはドアパネル120のグライド動作後に自動的にスイング動作を行い、閉動作時にはドアパネル120のスイング動作後に自動的にグライド動作を行うように構成されている。これに対し、操作ユニット13や操作スイッチ52に、グライド開閉動作用のボタン及びスイング開閉動作用のボタン等を設けて、ドアパネル120のグライド動作及びスイング動作を搭乗者の入力に基づいて個別に行うように、車両用ドアD4を構成することもできる。
本実施例では、グライドアクチュエータ140はグライドアクチュエータシャフト141を車幅方向に移動させるように配置されている。しかしながら、グライドアクチュエータ140の構成はこれに限られず、第1の実施例の変形例のように、グライドアクチュエータ140はグライドアクチュエータシャフト141を車両前後方向に移動させるように配置されてもよい。また、グライドアクチュエータ140の代わりに車体側ヒンジ軸133上にモータを設けてグライドヒンジ130を回動させてもよい。同様に、スイングアクチュエータ121の代わりに、ドアパネル側ヒンジ軸135上にモータを設けて、ドアパネル120をグライドヒンジ130に対して回動させることもできる。この場合、ECU54はグライドアクチュエータ140やスイングアクチュエータ121の代わりにモータに接続され、当該モータに開動作信号や閉動作信号を送ることとなる。
また、本実施例では、グライドセンサ142をグライドアクチュエータシャフト141の位置を検出するセンサとして構成しているが、グライドセンサの構成はこれに限られない。グライドセンサは、車体Bに対するグライドヒンジ130の位置をECU54が判断するための情報を検出することができるセンサであればよい。そのため、グライドセンサは、例えば、車体Bに対するグライドヒンジ130の回動角度を検出する、車体側ヒンジ軸133上に設けられたロータリセンサなどの角位置センサであってもよい。また、グライドセンサは、車体Bに対するグライドヒンジ130の位置を検出する、グライドヒンジ130又は車体Bに設けられた近接センサ、特に車体側取付片132、角度調整ストッパ137又はストッパ当接部138に設けられた近接センサであってもよい。
同様に、本実施例では、スイングセンサ123をスイングアクチュエータシャフト122の位置を検出するセンサとして構成しているが、スイングセンサの構成はこれに限られない。スイングセンサは、グライドヒンジ130に対するドアパネル120の位置をECU54が判断するための情報を検出することができるセンサであればよい。そのため、スイングセンサは、例えば、グライドヒンジ130に対するドアパネル120の回動角度を検出する、ドアパネル側ヒンジ軸135上に設けられたロータリセンサなどの角位置センサであってもよい。また、スイングセンサは、グライドヒンジ130に対するドアパネル120の位置を検出する、グライドヒンジ130又はドアパネル120に設けられた近接センサであってもよい。
さらに、グライドセンサの代わりに、ECU54がグライドアクチュエータ140に開動作信号を送ってからの経過時間を計測するタイマを設けてもよい。この場合、ECU54は、タイマからの情報に基づいて、グライドアクチュエータ140への開動作信号の送信から所定の時間が過ぎたことを判断したら、スイングアクチュエータ121に開動作信号を送るように構成されてもよい。同様にスイングセンサの代わりに、ECU54がスイングアクチュエータ121に閉動作信号を送ってからの経過時間を計測するタイマを設けてもよい。この場合、ECU54は、タイマの情報に基づいて、スイングアクチュエータ121への閉動作信号の送信から所定の時間が過ぎたことを判断したら、グライドアクチュエータ140に閉動作信号を送るように構成されてもよい。これらの場合、タイマはECU54によって実行されるプログラムとして実現されることもできる。
本実施例による車両用ドアD4では、ドアD4が開く際に、ドアパネル120のグライドが終了することをECU54が判断してから、ドアパネル120のスイングを開始するように構成している。しかしながら、ドアパネル120のスイングを開始するタイミングはこれに限られない。ECU54は、グライドセンサ142からの情報に基づいて、ドアパネル120のグライドが終了する前において、ドアパネル120が所定の位置までグライドしたことを判断したら、スイングアクチュエータ121に開動作信号を送り、ドアパネル120のスイングを開始させてもよい。この場合、ドアD4が開く際に、ECU54はドアパネル120のグライドが終了することを待たずに、ドアパネル120をスイングさせ始めるため、ドアパネル120のグライド及びスイングが一体的な動作となり、ドアD4がより滑らかに開くようになる。また、ドアパネル120のグライドが終了することを待たずに、ドアパネル120がスイングし始めることで、ドアD4が全閉位置から全開位置に至るまでの時間を短縮することができる。搭乗者は、車両用ドアD4の開動作が短縮化されることにより、よりストレスなく乗降車することができる。なお、ドアパネル120のスイングを開始する際のドアパネル120の位置は、その位置でドアパネル120がスイングを始めてもドアパネル120の車両前方側の端部124がフェンダーFに衝突しないように設定することができる。
また、本実施例では、車両用ドアD4を閉じる際に、ドアパネル120を図13Bに示すようなスイング全閉位置まで車内方向に回動(スイング)させた後に、ドアパネル120を車内方向にグライドさせて車両用ドアD4を閉じる構成としている。これは、グライドヒンジ本体131を回動させてドアパネル120を車内方向にグライドさせる際に、ドアパネル120が所定の角度まで車内方向に回動(スイング)されていないとドアパネル120の車両前方側の端部124がフェンダーFに衝突してしまう場合があるためである。また、同様にグライドヒンジ130が全開位置にないときに、ドアパネル120を車内方向へスイングさせると、ドアパネル120の車両後方側の端部125が車体Bに衝突してしまう場合がある。ここで、このようなドアパネル120の車両後方側の端部125と車体Bの衝突を防止するために、車両用ドアD4を閉じる際に、グライドヒンジ130が全開位置にあることを確認した上で、ドアパネル120をスイングさせるように、ECU54を構成することができる。
この場合には、ECU54は、操作ユニット13又は操作スイッチ52から閉動作すべきドアD4のドア情報と閉動作信号を受け取ると、当該ドアD4のグライドセンサ142からの情報に基づいてグライドヒンジ130が全開位置にあるか否かを判断する。ECU54は、グライドヒンジ130が全開位置にあると判断した場合には、上記のようにドア情報に基づいてドアD4のスイングアクチュエータ121に閉動作信号を送ってドアD4の閉動作を開始する。一方で、ECU54が、グライドヒンジ130が全開位置にないと判断した場合には、ドアD4のグライドアクチュエータ140に開動作信号を送り、グライドヒンジ130を全開位置まで回動させる。その後、ECU54は、グライドセンサ142からの情報に基づいてグライドヒンジ130が全開位置にあることを判断して、スイングアクチュエータ121に閉動作信号を送り、ドアD4の閉動作を開始する。このように構成された車両用ドアD4では、車両用ドアD4が閉動作する際、グライドセンサ142によってグライドヒンジ130が車体Bに対して車外方向に所定の位置まで回動したことを検出すると、ドアパネル120がスイングアクチュエータ121の動作に基づいてグライドヒンジ130に対して車内方向に回動する。これにより、車両用ドアD4を閉じ始める際に、グライドヒンジ130が全開位置にあることが確保することができる。したがって、車両用ドアD4を閉じる際に、ドアパネル120が車体Bと衝突することを防止することができる。なお、ECU54は、ドアD4を開動作せる際と同様の方法によって、ドアD4のグライドセンサ142からの情報に基づいてドアパネル120がグライド全開位置にあるか否かを判断することができる。
第3の実施例
次に本発明の第3の実施例による車両用ドアD5を、図15乃至19を参照して説明する。本発明の第3の実施例による車両用ドアD5は、ドアパネルに設けられたガイドローラ(ローラ)と車体に設けられたガイドレール(溝部)を備える。車両用ドアD5では、ガイドローラが、ガイドレールに沿って移動することによって、ドアパネルがグライドする際にドアパネルの移動をガイドすることができる。図15は本実施例による車両用ドアD5を備えた車両5000の斜視図である。図16はガイドローラ166が設けられたドアパネル160を示し、図17は車体Bに設けられたガイドレール171を示す。本実施例による車両用ドアD5における、操作ユニット13の操作、ダウンストッパの動作、並びにグライドヒンジ、グライドアクチュエータ及びスイングアクチュエータの動作等は第2の実施例による車両用ドアD4におけるものと同様であるため、相違点を中心に説明する。なお、本実施例によるグライドヒンジ及びグライドアクチュエータについては、第2の実施例におけるものと同様のため、同じ参照符号を用いる。
図16は、ガイドローラ166が設けられたドアパネル160の拡大図である。図中、FRは車両前方方向を示し、OUTは車外方向を示す。ガイドローラ166はドアパネル160の車内側の下部に設けられており、回転軸167を中心に回転することができる。
図17は、車体Bに設けられたガイドレール171を示す。図中、FRは車両前方方向を示し、OUTは車外方向を示す。ガイドレール171は、ガイドローラ166が設けられた高さに対応する高さにおいて車体B内に設けられ、車両前後方向に延在する。ガイドレール171の一端は、開口部172として車外方向に開放されている。ガイドレール171は開口部172から車両後方方向に延在するとともに、ガイドレール171の他方の端部に向かうに従って徐々に車内方向へ曲がるように設けられている。なお、ガイドレール171の開口部172の開口幅W1はガイドローラ166の直径D1より大きく、ガイドローラ166は開口部172を通ってガイドレール171へ入る又はガイドレール171から出ることができる。
また、ガイドレール171には、ガイドレール171内におけるガイドローラ166の位置を検出するための2組の光電センサ173(光電センサ173a及び173b)並びに光電センサ174(光電センサ174a及び174b)が設けられている。光電センサ173aは投光器であって、光175を発する。光電センサ173bは受光器であって、光電センサ173aから発せられた光175を受光する。光電センサ173bは、受光した光の強度などからガイドローラ166が光電センサ173aと光電センサ173bとの間の光路を遮っているか否か、すなわち、光路上にガイドローラ166があるか否かを検出する。同様に、光電センサ174aは投光器であって、光176を発する。光電センサ174bは受光器であって、光電センサ174aからの光176を受光する。光電センサ174bは、受光した光の強度などからガイドローラ166が光電センサ174aと光電センサ174bとの間の光路を遮っているか否か、すなわち、光路上にガイドローラ166があるか否かを検出する。なお、光電センサ173a及び174aを受光器として、光電センサ173b及び174bを投光器としてもよい。また、ガイドローラ166を検出するセンサの構成はこれに限られず、ガイドレール171内にガイドローラ166があることを検出できるセンサであればよい。そのため、例えば、当該センサとして反射型の光電センサや近接センサ等を用いることができる。
次に図18A及びBを参照して、第3の実施例による車両用ドアD5におけるドアパネル160のグライド動作におけるガイドローラ166及びガイドレール171の作用について説明する。図18A及びBは、図15に示す線18−18に沿った断面を上方から見た図である。図18Aは全閉位置にあるドアD5を示し、図18Bはグライドアクチュエータ140によってグライドヒンジ130が全開位置まで回動された際のドアD5を示す。なお、図18A及びBにおいて、説明の簡略化のためドアパネル160及び車体Bの内部の構造を省略している。
図18Aを参照すると、ドアD5が全閉位置にありドアパネル160が車体Bに隣接している。この際、ドアパネル160に設けられたガイドローラ166は、車体Bに設けられたガイドレール171の開口部172とは反対側の端部付近に位置している。ドアパネル160は、ガイドローラ166の位置に基づいて車体Bに近づく方向へ、すなわち車内方向へ引きつけられている。
ドアパネル160が車外方向へグライドすると、ドアパネル160の移動に従ってガイドローラ166がガイドレール171の形状に沿ってガイドレール171内を摺動する。この際、ドアパネル160は、ガイドローラ166の移動に基づいて、すなわちガイドレール171の形状に従って移動する。そのため、ドアパネル160のグライドに従ってガイドローラ166がガイドレール171内を開口部172に向かって移動すると、ドアパネル160は、ガイドレール171の形状に従って徐々に車外方向へ移動する。ガイドローラ166はガイドレール171内を移動することによって、ドアパネル160のグライド動作をガイドするとともに、ドアパネル160のグライドヒンジ130に対する車外方向(開方向)の回動(スイング)を制限することができる。ドアパネル160がグライドヒンジ130に対して車外方向に回動する際には、ドアパネル160の車両前方側の端部164が車内方向に移動する。そのため、ドアパネル160がグライドする際にドアパネル160が車外方向へ回動すると、ドアパネル160の車両前方側の端部164がフェンダーFに衝突してしまう場合がある。これに対し、本実施例による車両用ドアD5は、ガイドローラ166及びガイドレール171によって、ドアパネル160のグライド動作をガイドするとともに、ドアパネル160のグライドヒンジ130に対する車外方向のスイングを制限することができる。このため、車両用ドアD5は、ドアパネル160のグライド動作時にドアパネル160の車両前方側の端部164がフェンダーFに衝突してしまうことを防止することできる。
このように、車両用ドアD5の全閉位置から、グライド全開位置まで移動したドアパネル160を図18Bに示す。ドアパネル160が当該位置にある際には、ガイドローラ166がガイドレール171の開口部172に位置する。そのため、ドアパネル160が回動部材に対し車外方向へ回動する際には、ガイドローラ166がガイドレール171から外れるため、ドアパネル160はガイドローラ166及びガイドレール171によって回動が制限されることなく車外方向へスイングすることができる。
また、車両用ドアD5を閉じる際には、ドアパネル160が車内方向へ回動し、スイング全閉位置までスイングすると、図18Bに示すように、ガイドローラ166が開口部172からガイドレール171に入る。ドアパネル160が車体Bに近づく方向へ、すなわち車内方向へグライドすると、ガイドローラ166がガイドレール171の形状に沿ってガイドレール171内を摺動する。ここで、ガイドレール171は開口部172から他方の端部に向かって徐々に車内方向へ曲がるように形成されている。そのため、ドアパネル160は、ガイドローラ166の移動に基づいて、すなわちガイドレール171の形状に従って、徐々に車体Bに近づく方向へ移動する。このため、ドアパネル160のグライドが終了すると、図18Aに示すように、ドアパネル160が車体Bに隣接する位置に移動することができる。このように、ガイドローラ166及びガイドレール171によって、ドアパネル160がグライドする際のドアパネル160の移動をガイドすることができる。
さらに、本実施例におけるガイドレール171には光電センサ173a、173b、174a及び174bが設けられており、光電センサ173及び174によってガイドレール171内におけるガイドローラ166の位置を検出することができる。ここで、本実施例における制御部等のブロック図を図19に示す。なお、図19において、説明の簡略化のためグライドアクチュエータやスイングアクチュエータを省略している。ECU55は制御部の一例であり、制御部はCPUやECU等の制御装置を含む。ECU55には、光電センサ173及び174、インジケータ191並びにスピーカ192が接続されている。
光電センサ173は図17に示す光175の光路上にガイドローラ166が存在するか否かを検出し、検出結果をECU55に送る。同様に、光電センサ174は光176の光路上にガイドローラ166が存在するか否かを検出し、検出結果をECU55に送る。ここで、ECU55は、光電センサ173及び174から送られてきた情報に基づいてガイドレール171内におけるガイドローラ166の位置を判断し、ドアD5の閉状態を判断することができる。ECU55は、ドアパネル160を車内方向へグライドさせてドアD5の閉じる際に、光電センサ174のみから光路上にガイドローラ166が存在するという検出結果を受け取ると、ドアD5が正確に閉じていると判断する。これに対し、光電センサ173から光路上にガイドローラ166が存在するという検出結果を受け取る場合、又は光電センサ173及び174のいずれからも光路上にガイドローラ166が存在するという検出結果を受け取らない場合には、ドアD5が正確に閉じられていないと判断する。ECU55はドアD5が正確に閉じられていないと判断すると、インジケータ191及びスピーカ192に警告信号を送る。インジケータ191及びスピーカ192はECU55から警告信号を受け取ると、光信号及び音声信号を発して搭乗者にドアD5が正確に閉じられていない状態、例えば半ドア状態にあることを通知し、ドアD5を正確に閉じるように促すことができる。そのため、光学センサ173及び174を用いることで、ドアD5を閉じる際にドアD5が何かを挟み込むなどして、ドアD5が正確に閉じられていないことを検出し、搭乗者にドアD5を正確に閉じるように促すことができる。
このように、本実施例による車両用ドアD5は、車体Bの内側において車両前後方向に延在し、その一端に車体Bの外側に向けた開口172を有するガイドレール171(溝部)と、ドアパネル160に設けられ、ガイドレール171内を摺動するガイドローラ166(ローラ)とを備える。ガイドローラ166はガイドレール171内を移動することにより、ドアD5が開動作する際に、ドアパネル160のグライド動作時におけるドアパネル160のグライドヒンジ130に対する開方向の回動を制限することができる。そのため、車両用ドアD5は、ドアパネル160のグライド動作時におけるドアパネル160のグライドヒンジ130に対する開方向の回動を制限して、ドアパネル160のグライド動作時におけるドアパネル160の車両前方側の端部164とフェンダーFの衝突を防止することできる。また、車両用ドアD5を閉じる際にも、ガイドローラ166及びガイドレール171によって、ドアパネル160がグライドする際のドアパネル160の移動をガイドすることができる。さらに、車両用ドアD5は、ガイドレール171において、光電センサ173a、174a(発光要素)と光電センサ173b、174b(受光要素)との間の光路をガイドローラ166が遮ることを検出する少なくとも一対の光電センサ173、174(光学センサ)を備える。これにより車両用ドアD5は、光電センサ173、174から検出結果に基づいて、ドアD5を閉じる際にドアD5が何かを挟み込むなどして、ドアD5が正確に閉じられていないことを検出し、搭乗者にドアD5を正確に閉じるように促すことができる。
なお、本実施例による車両用ドアD5では、第2の実施例による車両用ドアD4の構成にガイドローラ166及びガイドレール171を加えた構成とした。しかしながら、ガイドローラ及びガイドレールを第1の実施例による車両用ドアD1や第1の実施例の変形例による車両用ドアD2及びD3に設けることでも、本実施例による車両用ドアD5と同様の作用及び効果を奏することができる。
また、本実施例においては、ガイドローラ166をドアパネル160の下部に設けたが、ガイドローラ166を設ける位置はこれに限られない。例えば、ドアパネル160の上部に設けることもできる。さらに、本実施例においては、ガイドローラ166はドアパネル160から車内方向に突出する構成となっているが、ガイドローラ166の構成はこれに限られず、例えばドアパネルの縁に直接取り付けられていてもよい。なお、ガイドレール171は、ガイドローラ166が設けられた高さ及び位置に従って車体Bに設けることができる。
また、本実施例による車両用ドアD5において、グライドアクチュエータ140の代わりに、ガイドローラ166にモータを接続することでドアパネル160をグライドさせてもよい。すなわち、モータでガイドローラ166を回転させることで、ガイドローラ166がガイドレール171の形状に沿ってガイドレール171内を摺動し、ガイドローラ166の移動に従ってドアパネル160がグライドするように車両用ドアD5を構成してもよい。この場合、ECU55は搭乗者の操作に従ってガイドローラ166に接続されたモータに開動作信号又は閉動作信号を送る。
第4の実施例
本発明の第4の実施例による車両用ドアD6について、図20乃至25を参照して説明する。本発明の第4の実施例による車両用ドアD6は、ドアD6が全開位置にある際にドアパネルと車体との間の空間をより広く確保するとともに、当該空間をより広く確保するためのドアD6の動作をより円滑に行うことができる。
第2の実施例による車両用ドアD4のように、ドアを開く際に、アクチュエータ等を用いて、ドアパネルを車体Bから離れる方向に移動(グライド)させ、移動した後の位置において回動(スイング)させる車両用ドアでは、ドアパネルのグライド動作が終了した後にドアパネルのスイング動作が行われる。このような車両用ドアでは、ドアを開く際にドアパネルのグライド動作の終了を待ってからドアパネルのスイング動作を行うため、ドアが全閉位置から全開位置に達するまでに時間がかかる場合がある。
このため、本実施例では、車両用ドアを開く際のドアの動作をより円滑に行い、車両用ドアの開動作にかかる時間を短縮することができる車両用ドアD6を提供する。
本実施例による車両用ドアD6は、車体に対して第1の回転軸まわりに回動可能に接続された回動部材と、回動部材に対して第2の回転軸まわりに回動可能に取り付けられたドアパネルとを備える。車両用ドアD6は、回動部材に接続される第1の駆動機構と、ドアパネルに含まれる第2の駆動機構と、車体に対する回動部材が所定の位置にあることを検出する第1の検出部とをさらに備える。該車両用ドアでは、第1の駆動機構の動作に基づいて、回動部材が車体に対し回動し、回動部材が回動して該車両用ドアが開動作する際に、ドアパネルの車両前方側の端部が車体から離れる方向に移動する。また、第2の駆動機構の動作に基づいて、ドアパネルが回動部材に対し回動する。さらに、車両用ドアが開動作する際、第1の検出部によって回動部材が車体に対して開方向に所定の位置まで回動したことを検出すると、ドアパネルが第2の駆動機構の動作に基づいて回動部材に対して開方向に回動する。
上記構成から、車両用ドアD6は、開動作する際に、回動部材が車体Bに対して開方向に所定の位置まで回動しドアパネルが開方向に移動すると、第1の検出部の検出結果に基づいてドアパネルが回動部材に対して開方向に回動する。そのため、車両用ドアD6は、開動作時にドアパネルのグライド動作が終了することを待つことなくドアパネルのスイング動作を開始することができる。従って、車両用ドアD6では、一連の開動作としてドアパネルのグライド動作とスイング動作をより一体的に行うことができる。そのため、車両用ドアD6はより円滑に開くことができ、ドアD6が全開位置に達するまでの時間を短縮することができる。
図20は本実施例による車両用ドアD6を備える車両6000を示す斜視図である。図20においては、説明の簡略化のためホイール等を省略している。車両6000には、車体B、フェンダーF及び車両用ドアD6が設けられている。車両用ドアD6には、ドアパネル200、グライドヒンジ210(回動部材)及びグライドアクチュエータ220(第1の駆動機構)が設けられている。また、ドアパネル200は車両前方側の部分においてグライドヒンジ210に取り付けられており、グライドヒンジ210を介して車体Bに取り付けられている。グライドアクチュエータ220は、車体B内に設けられるとともにグライドヒンジ210に接続されている。
ドアパネル200には、ドア側ダウンストッパ11、操作ユニット13及びスイングアクチュエータ201(第2の駆動機構)が設けられている。ドア側ダウンストッパ11が車体Bに取り付けられた車体側ダウンストッパ12と係合することにより、ドアパネル200の車両後方側が車体Bによって保持されることができる。なお、図20においては、ドア側ダウンストッパ11及び車体側ダウンストッパ12は1つのみ設けられているが、互いに対応するように配置されていればよく、2つ以上設けることもできる。また、ドアパネル200の車内側の下部には、ガイドローラ206が設けられている。一方、車体Bには、ガイドローラ206が設けられた高さに対応する高さにおいてガイドレール231が設けられている。ガイドローラ206はガイドレール231内を摺動するように構成されている。
図21はグライドヒンジ210を示す。図21を参照すると、グライドヒンジ210には、グライドヒンジ本体211、車体側取付片212、ドアパネル側取付片214及びグライドアクチュエータ取付片216が設けられている。グライドヒンジ210は、車体側取付片212を介して車体Bに取り付けられており、車体側ヒンジ軸213を中心に回動することができる。また、ドアパネル200は、ドアパネル側取付片214を介してグライドヒンジ210に取り付けられており、ドアパネル側ヒンジ軸215を中心に回動することができる。グライドヒンジ210は略L字形状を有しており、グライドヒンジ210が車体側ヒンジ軸213を中心に回動しドアパネル200を車体Bから離れる方向へ移動させる際に、グライドヒンジ210がフェンダーFと当接しないように形成されている。なお、グライドヒンジ210の形状は略L字形状に限られず、グライドヒンジ210がドアパネル200を車体Bから離れる方向へ移動させる際に、グライドヒンジ210がフェンダーFと当接しない形状であればよい。
車体側取付片212には角度調整ストッパ217(ストッパ)が設けられており、グライドヒンジ本体211にはストッパ当接部218が設けられている。角度調整ストッパ217は、グライドヒンジ本体211が車体側ヒンジ軸213を中心に回動する際にストッパ当接部218と当接し、グライドヒンジ本体211の回動角度を制限する。また、角度調整ストッパ217は、調整部材219を用いて車体側取付片212に取り付けられており、調整部材219を調整することで角度調整ストッパ217をストッパ当接部218に対して近づけたり遠ざけたりすることができる。そのため、調整部材219を用いて角度調整ストッパ217とストッパ当接部218との間の距離を変更することによって、角度調整ストッパ217がストッパ当接部218と当接する際の車体Bに対するグライドヒンジ本体211の角度が変わる。したがって、調整部材219を用いて、グライドヒンジ本体211の制限される回動角度を変更することができる。なお、調整部材219は、例えばボルト及びナットなどの固定部材で構成することができる。しかしながら、調整部材219の構成は固定部材のみからなる構成に限られない。例えば、調整部材219を角度調整ストッパ217を車体側取付片212に取り付けるための固定部材と、ストッパ当接部218に対する角度調整ストッパ217の位置を調整する別個の調整部材から構成することもできる。なお、図23においては、グライドヒンジ210に2つの角度調整ストッパ217及びストッパ当接部218が設けられている。しかしながら、角度調整ストッパ217及びストッパ当接部218の数は2つに限られない。角度調整ストッパ217及びストッパ当接部218はそれぞれ対応して設けられていればよく、それぞれ1つだけ設けてもよいし、3つ以上設けてもよい。また、グライドヒンジ本体211の制限される回動角度は、角度調整ストッパ217及びストッパ当接部218の代わりに電磁クラッチを用いて設定することもできる。
グライドヒンジ本体211には、図20に示すグライドアクチュエータ220に接続されたグライドアクチュエータ取付片216が取り付けられている。グライドヒンジ本体211は、グライドアクチュエータ取付片216を介して伝えられるグライドアクチュエータ220の動作に従って車体側ヒンジ軸213を中心に回動する。グライドアクチュエータ取付片216は略クランク形状を有しており、グライドヒンジ本体211が回動する際に、グライドアクチュエータ取付片216が車体側取付片212及び車体Bに当接しないように形成されている。なお、グライドアクチュエータ取付片216の形状は略クランク形状に限られず、グライドヒンジ本体211が回動する際に、グライドアクチュエータ取付片216が車体側取付片212及び車体Bに当接しない形状であればよい。また、本実施例において、グライドアクチュエータ取付片216はグライドヒンジ本体211とは別個の部材として形成されているが、グライドヒンジ本体211と一体的に形成されてもよい。
グライドアクチュエータ220(第1の駆動機構)は、図20に示すように、車体Bの内側に設けられており、グライドアクチュエータシャフト221(移動棒)を含む。グライドアクチュエータシャフト221は任意のヒンジ部材を介してグライドアクチュエータ取付片216に回動可能に接続されている。そのため、グライドアクチュエータ220はグライドアクチュエータシャフト221を介してグライドアクチュエータ取付片216に接続されている。
グライドアクチュエータ220は、車幅方向におけるグライドアクチュエータシャフト221の移動を喚起することができる。グライドアクチュエータシャフト221は、車幅方向に移動することで、グライドアクチュエータシャフト221に接続されるグライドアクチュエータ取付片216を移動させ、グライドヒンジ本体211を車体側ヒンジ軸213まわりに回動させることができる。すなわち、グライドヒンジ210は、グライドアクチュエータ220の動作に基づいて、車体Bに対して車体側ヒンジ軸213まわりに回動することができる。そのため、グライドアクチュエータ220の動作に基づくグライドヒンジ210の回動に伴って、グライドヒンジ210に取り付けられたドアパネル200が車体Bから離れる方向に又は車体Bに近づく方向に移動する(グライドする)ことができる。ここで、グライドアクチュエータ220は、例えば、電動アクチュエータ、電磁アクチュエータ及び空気圧シリンダなどの動力シリンダ等を用いて構成することができる。また、グライドアクチュエータ220にはグライドアクチュエータシャフト221の位置を検出するグライドセンサ222が設けられている。
スイングアクチュエータ201は、ドアパネル200内に配置され、スイングアクチュエータシャフト202(移動棒)を含む。スイングアクチュエータシャフト202は任意のヒンジ部材を介してグライドヒンジ本体211に回動可能に接続されており、スイングアクチュエータ201はスイングアクチュエータシャフト202を介してグライドヒンジ本体211に接続されている。また、スイングアクチュエータ201には、スイングアクチュエータシャフト202の位置を検出するスイングセンサ203(図24A乃至D参照)が設けられている。
スイングアクチュエータ201は、スイングアクチュエータシャフト202の移動を喚起することができる。スイングアクチュエータシャフト202は、ドアパネル200に沿って車両前後方向に移動することで、スイングアクチュエータシャフト202に接続されるグライドヒンジ本体211を押したり引いたりする。スイングアクチュエータ201を備えたドアパネル200は、スイングアクチュエータシャフト202がグライドヒンジ本体211に加える力に基づいて、ドアパネル側ヒンジ軸215まわりに回動することができる。すなわち、ドアパネル200は、スイングアクチュエータ201の動作に基づいて、グライドヒンジ210に対してドアパネル側ヒンジ軸215まわりに回動することができる。ここで、スイングアクチュエータ201は、例えば、電動アクチュエータ、電磁アクチュエータ及び空気圧シリンダなどの動力シリンダ等を用いて構成することができる。なお、本実施例ではスイングアクチュエータシャフト202が、直接グライドヒンジ210に接続されているが、例えばアクチュエータ取付片などの別個の部材を介してグライドヒンジ210に接続されてもよい。
図22はドアパネル200の車内側に設けられたガイドローラ206を示し、図23は、車体Bに設けられたガイドレール231を示す。図22及び23において、FRは車両前方方向を示し、OUTは車外方向を示す。ガイドローラ206は回転軸207を中心に回転することができ、ガイドレール231内を摺動することができる。ガイドレール231は、ガイドローラ206が設けられた高さに対応する高さにおいて車体B内に設けられ、車両前後方向に延在する。ガイドレール231の一端は、開口部232として車外方向に開放されている。ガイドレール231は開口部232から車両後方方向に延在するとともに、ガイドレール231の他方の端部に向かうに従って徐々に車内方向へ曲がるように設けられている。ガイドレール231の開口部232の開口幅W2はガイドローラ206の直径D2より大きく、ガイドローラ206は開口部232を通ってガイドレール231へ入る又はガイドレール231から出ることができる。ここで、開口部232は、グライドヒンジ210を全開位置まで回動させドアパネル200をドアパネル側ヒンジ軸215まわりに車内方向に回動させた際に、ガイドローラ206が開口部232内に入ることができるように形成される。さらに、開口部232は、グライドヒンジ210の回動に基づくドアパネル200の車外方向への移動(グライド)の途中でガイドローラ206が開口部232を通ってガイドレール231から出ることができるように形成されている。具体的には、開口部232は上記のように形成された位置から車両後方方向に所定の長さだけガイドレール231を開放するように形成される。そのため、車両用ドアD6におけるガイドレール231の開口部232の開口幅W2は、第4実施例による車両用ドアD5におけるガイドレール171の開口部172の開口幅W1よりも大きくなる。
また、ガイドレール231には、ガイドレール231内におけるガイドローラ206の位置を検出するための2組の光電センサ233(233a及び233b)並びに234(234a及び234b)が設けられている。光電センサ233aは投光器であって、光235を発する。光電センサ233bは受光器であって、光電センサ233aから発せられた光235を受光する。光電センサ233bは、受光した光の強度などからガイドローラ206が光電センサ233aと光電センサ233bとの間の光路を遮っているか否か、すなわち、光路上にガイドローラ206があるか否かを検出する。同様に、光電センサ234aは投光器であって、光236を発する。光電センサ234bは受光器であって、光電センサ234aから発せられた光236を受光し、受講した光の強度などからガイドローラ166が光電センサ234aと光電センサ234bとの間の光路を遮っているか否か、すなわち、光路上にガイドローラ206があるか否かを検出する。なお、光電センサ233a及び234aを受光器として、光電センサ233b及び234bを投光器としてもよい。また、ガイドローラ206を検出するセンサの構成はこれに限られず、ガイドレール231内にガイドローラ206があることを検出できるセンサであればよい。そのため、例えば当該センサとして反射型の光電センサや近接センサ等を用いることができる。
次に、車両用ドアD6の開閉動作に関して、図24A乃至Dを参照して説明する。図24A乃至Dは、図20に示す24−24線に沿った断面を上方から見た図である。図24Aは全閉位置にある車両用ドアD6を示す。図24Bは、ドアパネル200がグライドヒンジ本体211の回動に従い車外方向へ移動しながら、ドアパネル側ヒンジ軸215を中心に回動し始める際の車両用ドアD6を示す。図24Cは、全開位置にあるドアD6を示す。図24Dは、ドアD6を閉じる際に、グライドヒンジ210が全開位置まで回動されているグライド全開位置において、ドアパネル200が車内方向へのスイングを終了した際のドアD6を示す。図24において、FRは車両前方方向を示し、OUTは車外方向を示す。なお、図24A乃至Dにおいては、説明の簡略化のため、ドアパネル200及び車体Bの内部の構造を省略している。
図24Aを参照すると、ドアD6は全閉位置にあり、ドアパネル200はフェンダーFと共に車両6000の側面を形成する。この際、グライドアクチュエータ220はグライドアクチュエータシャフト221をグライドアクチュエータ220の内部から車外方向へ突出させ、グライドアクチュエータ取付片216を介してグライドヒンジ本体211を車体Bに隣接する位置で保持する。グライドヒンジ本体211が車体Bに隣接する位置で保持されることにより、グライドヒンジ本体211に取り付けられたドアパネル200も車体Bに隣接する位置に保持されるため、ドアD6が全閉位置に保持される。なお、ドアD6が全閉位置にある際には、ドアパネル200の車両後方側においてドアパネル側ダウンストッパ11と車体側ダウンストッパ12とが係合することにより、ドアパネル200の車両後方側もドアD6の全閉位置において保持されることができる。また、ドアパネル200に設けられたガイドローラ206は、車体Bに設けられたガイドレール231の開口部232とは反対側の端部付近に位置している。ドアパネル200は、ガイドローラ206の位置に基づいて車体Bに近づく方向へ、すなわち車内方向へ引きつけられている。
ドアD6が全閉位置にある場合に、搭乗者が操作ユニット13を操作してグライドアクチュエータ220に開動作信号を入力すると、グライドアクチュエータ220がグライドアクチュエータシャフト221を車内方向に引いて移動させる。この際の様子を図24Bに示す。グライドアクチュエータシャフト221が車内方向に移動すると、グライドアクチュエータシャフト221に接続されるグライドアクチュエータ取付片216を介して、グライドヒンジ本体211が車体側ヒンジ軸213を中心として車外方向に回動する。グライドヒンジ本体211に取り付けられたドアパネル200は、当該グライドヒンジ本体211の回動に従って車外方向に移動する。すなわち、グライドアクチュエータ220の動作に基づいてグライドヒンジ210が車体側ヒンジ軸213まわりに車外方向に回動し、グライドヒンジ210に取り付けられたドアパネル200が、グライドヒンジ210の回動に従って車体Bから離れる方向に移動する。この際、ドアパネル200の車両前方側の端部204も車体Bから離れる方向に移動する。なお、以下において、このようなグライドヒンジ210の回動に基づくドアパネル200の移動をドアパネル200のグライドという。
ドアパネル200が車体Bから離れる方向に移動すると、当該移動に従ってドアパネル側ダウンストッパ11と車体側ダウンストッパ12の係合が解除される。また、ガイドローラ206は、開口部232に向かってガイドレール231の形状に沿ってガイドレール231内を摺動する。この際、ドアパネル200は、ガイドローラ206の移動に基づいて、すなわちガイドレール231の形状に従って移動する。そのためドアパネル200のグライドに従ってガイドローラ206がガイドレール231の開口部232に向かって移動すると、ドアパネル200は、ガイドレール231の形状に従って徐々に車外方向へ移動する。従って、ガイドローラ206はガイドレール231内を移動することによって、ドアパネル200のグライドする際のドアパネル200の移動をガイドし、ドアパネル200のグライドヒンジ210に対する車外方向(開方向)の回動(スイング)を制限することができる。ドアパネル200がグライドヒンジ210に対して車外方向に回動する際には、ドアパネル200の車両前方側の端部204が車内方向に移動する。そのため、ドアパネル200が車外方向にグライドする際にドアパネル200が車外方向へ回動すると、ドアパネル200の車両前方側の端部204がフェンダーFに衝突してしまう場合がある。これに対し、本実施例による車両用ドアD6は、ガイドローラ206がガイドレール231内を摺動するため、ガイドローラ206がガイドレール231を出るまで、グライド動作時のドアパネル200のグライドヒンジ210に対する車外方向のスイングを制限することができる。このため、車両用ドアD6は、ドアパネル200のグライド動作時にドアパネル200の車両前方側の端部204がフェンダーFに衝突してしまうことを防止することできる。
ここで、開口部232は、ドアD6が開動作する際に、ドアパネル200が車体Bから離れるように車外方向に移動(グライド)し終わる前に、ガイドローラ206が開口部232を介してガイドレール231から出ることができるように形成されている。すなわち、開口部232は、グライドヒンジ210が全開位置に至るまでガイドローラ206がガイドレール231内を摺動したと仮定した場合にガイドローラ206がガイドレール231から出る位置(図24Dを参照)から車両後方方向へ所定の長さだけガイドレール231を開放するように形成されている。そのため、ガイドローラ206は開口部232の形状に従って、ドアパネル200の車外方向へのグライドが終了する前に、ガイドレール231から出ることができる。従って、ドアパネル200は、ドアパネル200の車外方向へのグライドが終了することを待たずに、ドアパネル側ヒンジ軸215を中心として車外方向へ回動することができる。なお、以下において、ドアパネル200のグライドヒンジ210に対する回動をスイングという。
図24Bは、ドアパネル200が車外方向へグライドしている途中において、ガイドローラ206がガイドレール231から出て、ドアパネル200がドアパネル側ヒンジ軸215を中心に車外方向へ回動(スイング)し始めた際のドアD6を示す。グライドヒンジ211が車体に対して矢印A7に沿って車外方向へ回動すると、ドアパネル200がグライドヒンジ211の回動に従って全閉位置から車外方向へグライドする。この際、ガイドローラ206は、ドアパネル200の車外方向へのグライドに伴い開口部232へ移動する。ここで、開口部232が上記のようにガイドレール231を広く開放するように形成されているため、ガイドローラ206はドアパネル200の車外方向へのグライドが終了する前に開口部232に達することができる。そのため、図24Bに示すように、ドアパネル200は、車外方向へのグライドし終わる前に、ドアヒンジ軸215を中心として車外方向へスイングし始めることができる。
ドアパネル200が車外方向へグライドする際には、グライドセンサ222がグライドアクチュエータシャフト221の位置を検出し、車両6000の制御部であるECU56に当該位置情報を送る。ECU56は、受け取った位置情報に基づいて、ガイドローラ206がガイドレール231から出ることができる位置までドアパネル200が車外方向に移動したか否かを判断する。すなわち、ECU56は、グライドセンサ222から受け取った当該位置情報に基づいて、ドアパネル200が取り付けられたグライドヒンジ210が所定の位置まで回動したか否かを判断する。ECU56は、グライドヒンジ210が当該位置まで移動したと判断すると、スイングアクチュエータ201に開動作信号を送る。なお、ECU56は、例えば、グライドヒンジ210の位置とグライドアクチュエータシャフト221の位置を対応付けて記憶しておき、記憶したグライドアクチュエータシャフト221の位置とグライドセンサ222から受け取った情報と対比して、移動したグライドヒンジ210の位置を判断することができる。なお、ECU56は、グライドヒンジ210の位置の代わりにドアパネル200の位置とグライドアクチュエータシャフト221の位置を関連付けて記憶し、移動したドアパネル200の位置を判断してもよい。
スイングアクチュエータ201は開動作信号を受け取ると、スイングアクチュエータシャフト202を突出する方向に移動させる。ここで、スイングアクチュエータシャフト202はグライドヒンジ本体211に回動可能に接続されている。そのため、スイングアクチュエータ201が内部に設けられているドアパネル200が、当該スイングアクチュエータシャフト202の移動に基づいて、ドアパネル側ヒンジ軸215を中心として車外方向に回動する。これにより、スイングアクチュエータ201は、図24Bに示すように、ドアパネル200のグライド動作の途中において、ドアパネル200を車外方向にスイングさせる。
その後、グライドアクチュエータ220がグライドヒンジ210を全開位置まで開動させ、スイングアクチュエータ201がドアパネル200を全開位置まで回動させることで、全開位置まで開かれたドアD6を図24Cに示す。ドアD6が全開位置にあるときには、ドアパネル200が、車体Bから離れた位置まで移動(グライド)した上で、車外方向に矢印A8に沿って回動(スイング)している。これにより、ドアパネル200の車両前方側において、ドアパネル200と車体Bとの間の空間S(図24Cにおいて2点鎖線で囲まれる空間)を従来の車両用ドアの場合と比べて広く確保することができる。なお、ドアパネル200のグライドは、グライドヒンジ210の角度調整ストッパ217がストッパ当接部218に当接することでグライドヒンジ210の回動が規制されることで終了する。また、ドアパネル200が全開位置までスイングされた際のドアパネル200の位置をスイング全開位置といい、スイング全開位置は不図示のドアチェックやその他の開度調整機構を用いてスイング全開開度を調整することで、設定することができる。
このように、車両用ドアD6は、開動作時にドアパネル200のグライド動作が終了することを待つことなくドアパネル200のスイング動作を開始することができる。従って、車両用ドアD6は、一連の開動作としてドアパネル200のグライド動作とスイング動作をより一体的に行うことができる。
また、搭乗者がドアD6を閉じる際には、搭乗者が操作ユニット13を操作することで、スイングアクチュエータ201に閉動作信号を入力する。スイングアクチュエータ201は、閉動作信号が入力されると、スイングアクチュエータシャフト202を引いて移動させる。この際、スイングアクチュエータシャフト202の移動に従って、スイングアクチュエータ201を含むドアパネル200がドアパネル側ヒンジ軸215を中心として車内方向に回動する。
図24Dは、ドアD6の全開位置から、ドアパネル200が全閉位置まで車内方向へ回動された際のドアD6を示す。また、ドアD6の全開位置から、ドアパネル200が全閉位置まで車内方向へ回動された際のドアパネル200の位置をスイング全閉位置という。ドアパネル200が車内方向へスイング全閉位置まで回動すると、図24Dに示すように、ガイドローラ206は開口部232からガイドレール231に入る。ここで、スイングセンサ203がスイングアクチュエータシャフト202の位置を検出し、ECU56に当該位置情報を送る。ECU56は、受け取った位置情報に基づいて、ドアパネル200がスイング全閉位置まで回動したと判断すると、グライドアクチュエータ220に閉動作信号を送る。グライドアクチュエータ220は閉動作信号を受け取ると、グライドアクチュエータシャフト221を車外方向へ突出させて移動させる。グライドアクチュエータシャフト221が移動すると、グライドアクチュエータシャフト221に接続されるグライドアクチュエータ取付片216を介して、グライドヒンジ本体211が車体側ヒンジ軸213を中心として車内方向に回動する。なお、ECU56は、例えばドアパネル200の位置とスイングアクチュエータシャフト202の位置を対応付けて記憶しておき、記憶したスイングアクチュエータシャフト202の位置とスイングセンサ203から送られてくる情報を対比させて、ドアパネル200がスイング全閉位置まで回動したか否かを判断することができる。
ドアパネル200は、グライドヒンジ210の車内方向への回動に従って、車体Bに近づく方向へ、すなわち車内方向へ移動する。ドアパネル200が、スイング全閉位置から車内方向へ移動すると、ガイドローラ206がガイドレール231の形状に沿ってガイドレール231内を摺動する。ここで、ガイドレール231は開口部232から他方の端部に向かって徐々に車内方向へ曲がるように形成されている。そのため、ドアパネル200は、ガイドローラ206の移動に基づいて、すなわちガイドレール231の形状に従って、徐々に車体Bに近づく方向へ移動する。
ドアパネル200が、グライドヒンジ210の回動、すなわちグライドアクチュエータ220の動作に従ってドアD6の全閉位置まで移動すると、図24Aに示すように、ドアパネル200が車体Bに隣接する位置に移動することができる。このように、ガイドローラ206及びガイドレール231によって、ドアパネル200がグライドする際のドアパネル200の移動をガイドすることができる。なお、この際、ドアパネル側ダウンストッパ11と車体側ダウンストッパ12とが係合することにより、車体Bがドアパネル200の車両後方側を保持する。これによって、ドアD6の閉動作が終了する。
操作ユニット13や制御部での信号の流れについて、図25を用いて説明する。図25は、制御部等に関するブロック図である。操作ユニット13は、図20に示すようにドアパネル200のドアピラーとして形成された、静電容量センサなどのタッチセンサやタッチディスプレイを備える操作部である。なお、操作ユニット13は、例えば、車体Bに設けられたドアピラーとして形成されてもよいし、ドアパネル200の一部としてドアパネル200の側面部等に設けられてもよい。ECU56は制御部の一例であり、制御部はCPUやECUなどの制御装置を含む。操作スイッチ52はドアパネル200の車内側又は携帯装置に設けられたドアD6の開閉操作用のスイッチである。操作スイッチ52は、例えば押しボタン式のスイッチやタッチディスプレイに表示されたスイッチ等であってよい。ECU56は、操作ユニット13、操作スイッチ52、グライドアクチュエータ220、スイングアクチュエータ201、グライドセンサ222、スイングセンサ203、並びに光電センサ233及び234に接続されている。
ドアD6を開くように、搭乗者が操作ユニット13又は操作スイッチ52を操作する場合には、操作された操作ユニット13又は操作スイッチ52はECU56に開動作すべきドアD6のドア情報と共に開動作信号を送る。ECU56は開動作信号を受け取ると、ドア情報に基づいて開動作すべきドアD6のグライドアクチュエータ220に対して開動作信号を送る。グライドアクチュエータ220は、ECU56から開動作信号を受け取ると、グライドアクチュエータシャフト221を移動させて、グライドヒンジ本体211を車外方向へ回動させドアパネル200を車外方向へグライドさせる。ドアパネル200が車外方向へグライドする際には、グライドセンサ222が、グライドアクチュエータシャフト221の位置を検出し、当該位置情報をECU56に送る。ECU56は、グライドセンサ222から送られてくるグライドアクチュエータシャフト221の位置情報に基づいて、ガイドローラ206がガイドレール231から出ることができる所定の位置までドアパネル200が車外方向に移動したか否かを判断する。すなわち、ECU56は、グライドセンサ222から送られてくる当該位置情報に基づいて、ドアパネル200が取り付けられたグライドヒンジ210が所定の位置まで回動したか否かを判断する。ECU56は上記で述べたように、予め記憶しておいたグライドヒンジ210の位置と対応付けられたグライドアクチュエータシャフト221の位置と、グライドセンサ222から送られてくる情報を対比して、グライドヒンジ210の回動位置を判断する。ECU56は、グライドヒンジ210が所定の位置まで回動したと判断すると、当該ドアパネル200のスイングアクチュエータ201に開動作信号を送る。スイングアクチュエータ201は、ECU56から開動作信号を受け取ると、スイングアクチュエータシャフト202を移動させて、ドアパネル200をグライドヒンジ210に対して車外方向へ回動させる。これにより、ドアD6が開動作する。なお、ドア情報とは動作すべきドアD6を特定するための情報であればよく、ドア自体の識別情報に限られない。例えば、ドアD6に対応付けられた操作ユニット13の情報などでもよい。
一方でドアD6を閉じるように、搭乗者が操作ユニット13又は操作スイッチ52が操作する場合には、操作された操作ユニット13又は操作スイッチ52はECU56に閉動作すべきドアD6のドア情報と共に閉動作信号を送る。ECU56は閉動作信号を受け取ると、ドア情報に基づいて閉動作すべきドアD6のスイングアクチュエータ201に対して閉動作信号を送る。スイングアクチュエータ201はECU56から閉動作信号を受け取ると、スイングアクチュエータシャフト202を移動させ、ドアパネル200をグライドヒンジ210に対して車内方向へ回動させる。ドアパネル200が車内方向へ回動する際には、スイングセンサ203がスイングアクチュエータシャフト202の位置を検出し、当該位置情報をECU56に送る。ECU56は、スイングセンサ203から送られてくるスイングアクチュエータシャフト202の位置情報に基づいて、ドアパネル200のスイングが終了したか否かを判断する。ECU56は上記で述べたように、予め記憶しておいたドアパネル200の位置と対応付けられたスイングアクチュエータシャフト202の位置と、スイングセンサ203から送られてくる情報を対比して、ドアパネル200のスイングが終了したか否かを判断する。ECU56は、ドアパネル200のスイングが終了したと判断すると、当該ドアD6のグライドアクチュエータ220に閉動作信号を送る。グライドアクチュエータ220は、ECU56から閉動作信号を受け取ると、グライドアクチュエータシャフト221を移動させて、グライドヒンジ本体211を車内方向へ回動させドアパネル200を車内方向へグライドさせる。これにより、ドアD6が閉動作する。
さらに、本実施例におけるガイドレール231には光電センサ233a、233b、234a及び234bが設けられており、光電センサ233及び234によってガイドレール231内におけるガイドローラ206の位置を検出することができる。
光電センサ233は光235の光路上にガイドローラ206が存在するか否かを検出し、検出結果をECU56に送る。同様に、光電センサ234は光236の光路上にガイドローラ206が存在するか否かを検出し、検出結果をECU56に送る。ここで、ECU56は、光電センサ233及び234から送られてきた情報に基づいてガイドレール231内におけるガイドローラ206の位置を判断し、ドアD6の閉状態を判断することができる。ECU56は、ドアパネル200を車内方向へグライドさせてドアD6の閉じる際に、光電センサ234のみから光路上にガイドローラ206が存在するという検出結果を受け取ると、ドアD6が正確に閉じていると判断する。これに対し、光電センサ233から光路上にガイドローラ206が存在するという検出結果を受け取る場合、又は光電センサ233及び234のいずれからも光路上にガイドローラ206が存在するという検出結果を受け取らない場合には、ドアD6が正確に閉じられていないと判断する。ECU56はドアD6が正確に閉じられていないと判断すると、不図示のインジケータ及びスピーカ等を用いて搭乗者にドアD6が正確に閉じられていない状態、例えば半ドア状態にあることを通知し、ドアD6を正確に閉じるように促すことができる。そのため、光学センサ233及び234を用いることで、ドアD6を閉じる際にドアD6が何かを挟み込むなどして、ドアD6が正確に閉じられていないことを検出し、搭乗者にドアD6を正確に閉じるように促すことができる。
上記のように本実施例による車両用ドアD6は、車体Bに対して車体側ヒンジ軸213(第1の回転軸)まわりに回動可能に接続されたグライドヒンジ210(回動部材)と、グライドヒンジ210に対してドアパネル側ヒンジ軸215(第2の回転軸)まわりに回動可能に取り付けられたドアパネル200とを備える。車両用ドアD6は、グライドヒンジ210に接続されるグライドアクチュエータ220(第1の駆動機構)と、ドアパネル200に含まれるスイングアクチュエータ201(第2の駆動機構)と、車体Bに対してグライドヒンジ210が所定の位置にあることを検出するグライドセンサ222(第1の検出部)とをさらに備える。該車両用ドアD6では、グライドアクチュエータ220の動作に基づいて、グライドヒンジ210が車体Bに対して回動し、グライドヒンジ210が回動して車両用ドア6が開動作する際に、ドアパネル200の車両前方側の端部204が車体Bから離れる方向に移動する。また、スイングアクチュエータ201の動作に基づいて、ドアパネル200がグライドヒンジ210に対し回動する。さらに、車両用ドアD6が開動作する際、グライドセンサ222によってグライドヒンジ210が車体Bに対して車外方向(開方向)に所定の位置まで回動したことを検出すると、ドアパネル200がスイングアクチュエータ201の動作に基づいてグライドヒンジ210に対して開方向に回動する。
上記構成から、車両用ドアD6が開かれる際には、ドアパネル200は車体Bから離れた位置においてドアパネル側ヒンジ軸215まわりに回動することができる。そのため、ドアD6が開かれる際には、従来の車両用ドアと比べて、ドアパネル200の車両前方側においてドアパネル200と車体Bとの間の空間Sをより広く確保することができる。空間Sは座席の足場に隣接しているため、空間Sを広く確保することで、搭乗者が乗降車する際に足をドアパネル200にぶつけてしまうことなどを防ぐことができる。したがって、本実施例による車両用ドアD6を用いることで、搭乗者の足さばき用の空間が増大し、搭乗者が円滑に乗降車することができる。また、グライドアクチュエータ220を用いてドアパネル200をグライドさせるとともに、スイングアクチュエータ201を用いてドアパネル200をスイングさせることにより、搭乗者は簡易な操作だけでドアD6を開閉することができる。そのため、搭乗者は不慣れなドアパネル200のグライド操作を行わずに、ドアD6を容易に開閉することができる。また、本実施例によるドアD6では、各アクチュエータ220、201によってドアD6の開閉を自動的に行わせることができため、搭乗者は荷物で手がふさがっている場合であっても容易に乗降車することができる。さらに、本実施例によるドアD6では、開動作時に、グライドヒンジ210が車体Bに対して開方向に所定の位置まで回動しドアパネル200が開方向に移動すると、グライドセンサ222の検出結果に基づいてドアパネル200がグライドヒンジ210に対して開方向に回動する。そのため、車両用ドアD6は、開動作時にドアパネル200のグライド動作が終了することを待つことなく自動的にドアパネル200のスイング動作を開始することができる。従って、車両用ドアD6では、一連の開動作としてドアパネル200のグライド動作とスイング動作をより一体的に行うことができる。そのため、車両用ドアD6はより円滑に開くことができ、ドアD6が全開位置に達するまでの時間を短縮することができる。
また、本実施例による車両用ドアD6は、グライドヒンジ210に対してドアパネル200が所定の位置にあることを検出するスイングセンサ203(第2の検出部)を備える。車両用ドアD6が閉動作する際、スイングセンサ203によってドアパネル200がグライドヒンジ210に対して閉方向に所定の位置まで回動したことを検出すると、グライドヒンジ210はグライドアクチュエータ220の動作に基づいて車体Bに対して閉方向に回動する。そのため、車両用ドアD6では、閉動作時にスイングセンサ203で、ドアパネル200が全閉位置までスイングしたことを検出することで、自動的にドアパネル200の車内方向(閉方向)へのグライドを開始することができる。また、ドアD6は、ガイドローラ206が開口部232を通ってガイドレール231に入ることができる所定の位置までドアパネル200が車内方向に回動したことを検出することで、自動的にドアパネル200が車内方向へグライドを開始する構成としてもよい。
さらに、本実施例による車両用ドアD6は、車体Bの内側において車両前後方向に延在し、その一端に車体Bの外側に向けた開口232を有するガイドレール231(溝部)と、ドアパネルに設けられ、ガイドレール231内を摺動するガイドローラ206(ローラ)とを備える。ガイドローラ206はガイドレール231内を移動することによりドアパネル200のグライドヒンジ210に対する開方向の回動を制限することができる。そのため、車両用ドアD6は、ドアパネル200のグライド動作時において、ガイドローラ206がガイドレール231から出ることができる所定の位置にドアパネル200が至るまで、ドアパネル200のグライドヒンジ210に対する開方向の回動を制限することができる。従って、ドアパネル200のグライド動作時におけるドアパネル200の車両前方側の端部204とフェンダーFの衝突を防止することできる。また、車両用ドアD6を閉じる際、ガイドローラ206及びガイドレール231によって、ドアパネル200がグライドする際のドアパネル200の移動をガイドすることができる。さらに、車両用ドアD6は、ガイドレール231において、光電センサ233a、234a(発光要素)と光電センサ233b、234b(受光要素)との間の光路をガイドローラ206が遮ることを検出する少なくとも一対の光電センサ233、234(光学センサ)を備える。これにより車両用ドアD6は、光電センサ233、234からの検出結果に基づいて、ドアD6を閉じる際にドアD6が何かを挟み込むなどして、ドアD6が正確に閉じられていないことを検出し、搭乗者にドアD6を正確に閉じるように促すことができる。
本実施例による車両用ドアD6では、図24A乃至Dに示すように、グライドアクチュエータ220は、車体側ヒンジ軸213に対して、グライドヒンジ210のドアパネル200が取り付けられている位置とは反対の位置において、グライドヒンジ210に接続される。これにより、車体Bにグライドアクチュエータ220を設ける際のグライドアクチュエータ220の配置箇所の自由度を向上させることができる。ただし、グライドアクチュエータ220がグライドヒンジ210に接続される構成はこれに限られない。グライドアクチュエータ220は、グライドアクチュエータ220の動作に従ってグライドヒンジ本体211を車体側ヒンジ軸213まわりに回動させられるようにグライドヒンジ210に接続されていればよい。
本実施例では、グライドアクチュエータ220はグライドアクチュエータシャフト221を車幅方向に移動させるように配置されている。しかしながら、グライドアクチュエータ220の構成はこれに限られず、第1の実施例の変形例のように、グライドアクチュエータ220はグライドアクチュエータシャフト221を車両前後方向に移動させるように配置されてもよい。また、グライドアクチュエータ220の代わりに車体側ヒンジ軸213上にモータを設けてグライドヒンジ210を回動させてもよい。同様に、スイングアクチュエータ201の代わりに、ドアパネル側ヒンジ軸215上にモータを設けて、ドアパネル200をグライドヒンジ210に対して回動させることもできる。この場合、ECU56はグライドアクチュエータ220やスイングアクチュエータ201の代わりにモータに接続され、当該モータに開動作信号や閉動作信号を送ることとなる。
また、本実施例では、グライドセンサ222はグライドアクチュエータシャフト221の位置を検出するセンサであるが、グライドセンサの構成はこれに限られない。グライドセンサは、車体Bに対するグライドヒンジ210の位置をECU56が判断するための情報を検出することができるセンサであればよい。そのため、グライドセンサは、例えば、車体Bに対するグライドヒンジ210の回動角度を検出する、車体側ヒンジ軸213上に設けられたロータリセンサなどの角位置センサであってもよい。また、グライドセンサは、車体Bに対するグライドヒンジ210の位置を検出する、グライドヒンジ210又は車体Bに設けられた近接センサ、特に車体側取付片212、角度調整ストッパ217又はストッパ当接部218に設けられた近接センサであってもよい。
同様に、本実施例では、スイングセンサ203はスイングアクチュエータシャフト202の位置を検出するセンサであるが、スイングセンサの構成はこれに限られない。スイングセンサは、グライドヒンジ210に対するドアパネル200の位置をECU56が判断するための情報を検出することができるセンサであればよい。そのため、スイングセンサは、例えば、グライドヒンジ210に対するドアパネル200の回動角度を検出する、ドアパネル側ヒンジ軸215上に設けられたロータリセンサなどの角位置センサであってもよい。また、スイングセンサは、グライドヒンジ210に対するドアパネル200の位置を検出する、グライドヒンジ210又はドアパネル200に設けられた近接センサであってもよい。
さらに、グライドセンサ222の代わりに、ECU56がグライドアクチュエータ220に開動作信号を送ってからの経過時間を計測するタイマを設けてもよい。この場合、ECU56は、タイマからの情報に基づいて、グライドアクチュエータ210への開動作信号の送信から所定の時間が過ぎたことを判断したら、スイングアクチュエータ201に開動作信号を送るように構成されてもよい。同様にスイングセンサ203の代わりに、ECU56がスイングアクチュエータ201に閉動作信号を送ってからの経過時間を計測するタイマを設けてもよい。この場合、ECU56は、タイマの情報に基づいて、スイングアクチュエータ201への閉動作信号の送信から所定の時間が過ぎたことを判断したら、グライドアクチュエータ220に閉動作信号を送るように構成されてもよい。これらの場合、タイマはECU56によって実行されるプログラムとして実現されてもよい。
また、本実施例では、車両用ドアD6を閉じる際に、ドアパネル200を図24Dに示すようなスイング全閉位置まで車内方向に回動(スイング)させた後に、ドアパネル200を車内方向にグライドさせて車両用ドアD6を閉じる構成としている。これは、グライドヒンジ本体211を回動させてドアパネル200を車内方向にグライドさせる際に、ドアパネル200が所定の角度まで車内方向に回動(スイング)されていないとドアパネル200の車両前方側の端部204がフェンダーFにぶつかってしまう場合があるためである。また、同様にグライドヒンジ210が全開位置にないときに、ドアパネル200を車内方向へスイングさせると、ドアパネル200の車両後方側の端部205が車体Bに衝突してしまう場合がある。ここで、このようなドアパネル200の車両後方側の端部205とフェンダーFの衝突を防止するために、車両用ドアD6を閉じる際に、ドアパネル200がグライド全閉位置にあることを確認した上で、ドアパネル200をスイングさせるように、ECU56を構成することができる。
この場合には、ECU56は、操作ユニット13又は操作スイッチ52から閉動作すべきドアD6のドア情報と閉動作信号を受け取ると、当該ドアD6のグライドセンサ222からの情報に基づいてグライドヒンジ210が全開位置にあるか否かを判断する。ECU56は、グライドヒンジ210が全開位置にあると判断した場合には、上記のようにドア情報に基づいてドアD6のスイングアクチュエータ201に閉動作信号を送ってドアD6の閉動作を開始する。一方で、ECU56が、グライドヒンジ210が全開位置にないと判断した場合には、ドアD6のグライドアクチュエータ220に開動作信号を送り、グライドヒンジ210を全開位置まで回動させる。その後、ECU56は、グライドセンサ222からの情報に基づいてグライドヒンジ210が全開位置にあることを判断して、スイングアクチュエータ201に閉動作信号を送り、ドアD6の閉動作を開始する。このように構成された車両用ドアD6では、ドアD6が閉動作する際、グライドセンサ222によってグライドヒンジ210が車体Bに対して開方向に所定の位置まで回動したことを検出すると、ドアパネル200がスイングアクチュエータ201の動作に基づいてグライドヒンジ210に対して閉方向に回動する。これにより、車両用ドアD6を閉じ始める際に、グライドヒンジ210が全開位置にあることが確保することができる。したがって、車両用ドアD6を閉じる際に、ドアパネル200がフェンダーFと衝突することを防止することができる。なお、ECU56は、ドアD6を開動作せる際と同様の方法によって、ドアD6のグライドセンサ222からの情報に基づいてドアパネル200がグライド全開位置にあるか否かを判断することができる。
また、本実施例においては、ガイドローラ206をドアパネル200の下部に設けたが、ガイドローラ206を設ける位置はこれに限られない。例えば、ドアパネル200の上部に設けることもできる。さらに、本実施例においては、ガイドローラ206はドアパネル200から車内方向に突出する構成となっているが、ガイドローラ206の構成はこれに限られず、例えばドアパネル200の縁に直接取り付けられていてもよい。なお、ガイドレール231は、ガイドローラ206が設けられた高さ及び位置に従って車体Bに設けることができる。
第5の実施例
本発明の第5の実施例による車両用ドアD7について、図26乃至30を参照して説明する。本発明の第5の実施例による車両用ドアD7は、ドアD7が全開位置にある際にドアパネルと車体との間の空間をより広く確保するとともに、ロック機構を用いたドアD7の移動の規制をより確実に行うことができる。
非特許文献1に記載される車両用ドアのように、ドアを開く際に、ドアパネルが車体Bから離れる方向に移動(グライド)し、移動した後の位置において回動(スイング)する車両用ドアでは、ドアパネルのグライド動作時にドアパネルの車両前方側の端部が車体から離れる方向に移動する。そのため、このような車両用ドアにおいて、従来の車両用ドアのようにロック機構をドアパネルの車両後方側に設けると、ロック機構によってドアをロックしていても、ドアパネルの車両前方側の端部が回動部材の回動に従って移動してしまう場合がある。
このため、本実施例では、車両用ドアをロックする際に、ドアパネルの車両前方側の端部の移動を規制することができる車両用ドアD7を提供する。
本実施例による車両用ドアD7は、車体に対して第1の回転軸まわりに回動可能に接続された回動部材と、回動部材に対して第2の回転軸まわりに回動可能に取り付けられたドアパネルとを備える。車両用ドアD7は、車両用ドアのロック機構をさらに備える。ロック機構はドアパネルの車両前方側の端部に設けられる。また、車両用ドアD7は、回動部材に接続される第1の駆動機構と、ドアパネルに含まれる第2の駆動機構とをさらに備える。該車両用ドアでは、第1の駆動機構の動作に基づいて、回動部材が車体に対し回動し、回動部材が回動して該車両用ドアが開動作する際に、ドアパネルの車両前方側の端部が車体から離れる方向に移動する。また、第2の駆動機構の動作に基づいて、ドアパネルが回動部材に対し回動する。
上記構成から、車両用ドアD7では、ロック機構がドアパネルの車両前方側の端部に設けられることで、ロック機構が車体に対するドアパネルの車両前方側の端部の移動を規制することができる。そのため、車両用ドアD7では、ロック状態にある車両用ドアD7の移動をより確実に規制できる。
車両用ドアD7を備える車両7000を図26に示す。図26においては、説明の簡略化のためホイール等を省略している。車両7000には、車体B、フェンダーF及び車両用ドアD7が設けられている。車両用ドアD7には、ドアパネル260、グライドヒンジ(回動部材)280及びグライドアクチュエータ290(第1の駆動機構)が設けられている。また、ドアパネル260は車両前方側の部分においてグライドヒンジ280に取り付けられており、グライドヒンジ280を介して車体Bに取り付けられている。グライドアクチュエータ290は、車体B内に設けられるとともにグライドヒンジ280に接続されている。
ドアパネル260には、ドア側ダウンストッパ11、操作ユニット13、スイングアクチュエータ261(第2の駆動機構)及びドアロック270(ロック機構)が設けられている。ドア側ダウンストッパ11が車体Bに取り付けられた車体側ダウンストッパ12と係合することにより、ドアパネル260の車両後方側が車体Bによって保持されることができる。なお、図26においては、ドア側ダウンストッパ11及び車体側ダウンストッパ12は1つのみ設けられているが、互いに対応するように配置されていればよく、2つ以上設けることもできる。
図27はドアパネル260の車内側を示す図である。図27において、FRは車両前方方向を示し、OUTは車外方向を示す。なお、図27において、説明の簡略化のためグライドヒンジ280に接続されるヒンジ機構等は省略している。ドアロック270は、図27に示すようにドアパネル260の車両前方側の端部264に設けられている。車両前方側の端部264は、ドアD7が全閉位置にあるときに車体Bに隣接する。そのため、ドアロック270も、ドアD7が全閉位置にあるときに車体Bに隣接する。ドアロック270は、作動時には車体Bに設けられた不図示の棒状部材等と嵌合して車体Bに対してドアD7をロックし、車体Bに対するドアパネル260の移動を規制する。なお、ドアロック270は、車体Bに設けられた棒状部材と嵌合する構成に限られない。ドアロック270は、作動時に車体Bに対するドアパネル260の移動を規制できればよく、既存の車両用ドアロックや一般的なドアのドアロック等のロック機構を用いることができる。
図28はグライドヒンジ280を示す。グライドヒンジ280には、グライドヒンジ本体281、車体側取付片282、ドアパネル側取付片284及びグライドアクチュエータ取付片286が設けられている。グライドヒンジ280は、車体側取付片282を介して車体Bに取り付けられており、車体側ヒンジ軸283を中心に回動することができる。また、ドアパネル260は、ドアパネル側取付片284を介してグライドヒンジ280に取り付けられており、ドアパネル側ヒンジ軸285を中心に回動することができる。グライドヒンジ280は略L字形状を有しており、グライドヒンジ280が車体側ヒンジ軸283を中心に回動しドアパネル260を車体Bから離れる方向へ移動させる際に、グライドヒンジ280がフェンダーFと当接しないように形成されている。なお、グライドヒンジ280の形状は略L字形状に限られず、グライドヒンジ280がドアパネル260を車体Bから離れる方向へ移動させる際に、グライドヒンジ280がフェンダーFと当接しない形状であればよい。
車体側取付片282には角度調整ストッパ287(ストッパ)が設けられており、グライドヒンジ本体281にはストッパ当接部288が設けられている。角度調整ストッパ287は、グライドヒンジ本体281が車体側ヒンジ軸283を中心に回動する際にストッパ当接部288と当接し、グライドヒンジ本体281の回動角度を制限する。また、角度調整ストッパ287は、調整部材289を用いて車体側取付片282に取り付けられており、調整部材289を調整することで角度調整ストッパ287をストッパ当接部288に対して近づけたり遠ざけたりすることができる。そのため、調整部材289を用いて角度調整ストッパ287とストッパ当接部288との間の距離を変更することによって、角度調整ストッパ287がストッパ当接部288と当接する際の車体Bに対するグライドヒンジ本体281の角度が変わる。したがって、調整部材289を用いて、グライドヒンジ本体281の制限される回動角度を変更することができる。なお、調整部材289は、例えばボルト及びナットなどの固定部材で構成することができる。しかしながら、調整部材289の構成は固定部材のみからなる構成に限られない。例えば、調整部材289を、角度調整ストッパ287を車体側取付片282に取り付けるための固定部材と、ストッパ当接部288に対する角度調整ストッパ287の位置を調整する別個の調整部材から構成することもできる。なお、図28においては、グライドヒンジ280に2つの角度調整ストッパ287及びストッパ当接部288が設けられている。しかしながら、角度調整ストッパ287及びストッパ当接部288の数は2つに限られない。角度調整ストッパ287及びストッパ当接部288はそれぞれ対応して設けられていればよく、それぞれ1つだけ設けてもよいし、3つ以上設けてもよい。また、グライドヒンジ本体281の制限される回動角度は、角度調整ストッパ287及びストッパ当接部288の代わりに電磁クラッチを用いて設定することもできる。
グライドヒンジ本体281には、図26に示すグライドアクチュエータ290に接続されたグライドアクチュエータ取付片286が取り付けられている。グライドヒンジ本体281は、グライドアクチュエータ取付片286を介して伝えられるグライドアクチュエータ290の動作に従って車体側ヒンジ軸283を中心に回動する。グライドアクチュエータ取付片286は略クランク形状を有しており、グライドヒンジ本体281が回動する際に、グライドアクチュエータ取付片286が車体側取付片282及び車体に当接しないように形成されている。なお、グライドアクチュエータ取付片286の形状は略クランク形状に限られず、グライドヒンジ本体281が回動する際に、グライドアクチュエータ取付片286が車体側取付片282及び車体Bに当接しない形状であればよい。また、本実施例において、グライドアクチュエータ取付片286はグライドヒンジ本体281とは別個の部材として形成されているが、グライドヒンジ本体281と一体的に形成されてもよい。
グライドアクチュエータ290(第1の駆動機構)は、図26に示すように、車体Bの内側に設けられており、グライドアクチュエータシャフト291(移動棒)を含む。グライドアクチュエータシャフト291は任意のヒンジ部材を介してグライドアクチュエータ取付片286に回動可能に接続されている。そのため、グライドアクチュエータ290はグライドアクチュエータシャフト291を介してグライドアクチュエータ取付片286に接続されている。
グライドアクチュエータ290は、車幅方向におけるグライドアクチュエータシャフト291の移動を喚起することができる。グライドアクチュエータシャフト291は、車幅方向に移動することで、グライドアクチュエータシャフト291に接続されるグライドアクチュエータ取付片286を移動させ、グライドヒンジ本体281を車体側ヒンジ軸283まわりに回動させることができる。すなわち、グライドヒンジ280は、グライドアクチュエータ290の動作に基づいて、車体Bに対して車体側ヒンジ軸283まわりに回動することができる。そのため、グライドアクチュエータ290の動作に基づくグライドヒンジ280の回動に伴って、グライドヒンジ280に取り付けられたドアパネル260が車体Bから離れる方向に又は車体Bに近づく方向に移動することができる。ここで、グライドアクチュエータ290は、例えば、電動アクチュエータ、電磁アクチュエータ及び空気圧シリンダなどの動力シリンダ等を用いて構成することができる。また、グライドアクチュエータ290にはグライドアクチュエータシャフト291の位置を検出するグライドセンサ292が設けられている。
スイングアクチュエータ261は、ドアパネル260内に設けられ、スイングアクチュエータシャフト262(移動棒)を含む。スイングアクチュエータシャフト262は任意のヒンジ部材を介してグライドヒンジ本体281に回動可能に接続されており、スイングアクチュエータ261はスイングアクチュエータシャフト262を介してグライドヒンジ本体281に接続されている。また、スイングアクチュエータ261には、スイングアクチュエータシャフト262の位置を検出するスイングセンサ263(図29A乃至C参照)が設けられている。
スイングアクチュエータ261は、スイングアクチュエータシャフト262の移動を喚起することができる。スイングアクチュエータシャフト262は、ドアパネル260に沿って車両前後方向に移動することで、スイングアクチュエータシャフト262に接続されるグライドヒンジ本体281を押したり引いたりする。スイングアクチュエータ261を備えたドアパネル260は、スイングアクチュエータシャフト262がグライドヒンジ本体281に加える力に基づいて、ドアパネル側ヒンジ軸285まわりに回動することができる。すなわち、ドアパネル260は、スイングアクチュエータ261の動作に基づいて、グライドヒンジ280に対してドアパネル側ヒンジ軸285まわりに回動することができる。ここで、スイングアクチュエータ261は、例えば、電動アクチュエータ、電磁アクチュエータ及び空気圧シリンダなどの動力シリンダ等を用いて構成することができる。なお、本実施例ではスイングアクチュエータシャフト262が、直接グライドヒンジ280に接続されているが、例えばアクチュエータ取付片などの別個の部材を介してグライドヒンジ280に接続されてもよい。
次に、車両用ドアD7の開閉動作に関して、図29A乃至Cを参照して説明する。図29A乃至Cは、図26に示す29−29線に沿った断面を上方から見た図である。図29Aは全閉位置にある車両用ドアD7を示す。図29Bは、グライドアクチュエータ290によってグライドヒンジ280が全開位置まで回動された際のドアD7を示す。図29Cは、全開位置にあるドアD6を示す。図29A乃至Cにおいて、FRは車両前方方向を示し、OUTは車外方向を示す。なお、図29A乃至Cにおいては、説明の簡略化のためドアパネル260及び車体Bの内部の構造を省略している。
図29Aを参照すると、ドアD7は全閉位置にあり、ドアパネル260はフェンダーFと共に車両7000の側面を形成する。この際、グライドアクチュエータ290はグライドアクチュエータシャフト291をグライドアクチュエータ290の内部から車外方向へ突出させ、グライドアクチュエータ取付片286を介してグライドヒンジ本体281を車体Bに隣接する位置で保持する。グライドヒンジ本体281が車体Bに隣接する位置で保持されることにより、グライドヒンジ本体281に取り付けられたドアパネル260も車体Bに隣接する位置に保持されるため、ドアD7が全閉位置に保持される。なお、ドアD7が全閉位置にある際には、ドアパネル260の車両後方側においてドアパネル側ダウンストッパ11と車体側ダウンストッパ12とが係合することにより、ドアパネル260の車両後方側もドアD7の全閉位置において保持されることができる。
ドアD7が全閉位置にある場合に、搭乗者が操作ユニット13を操作してグライドアクチュエータ290に開動作信号を入力すると、グライドアクチュエータ290がグライドアクチュエータシャフト291を車内方向に引いて移動させる。この際の様子を図29Bに示す。グライドアクチュエータシャフト291が車内方向に移動すると、グライドアクチュエータシャフト291に接続されるグライドアクチュエータ取付片286を介して、グライドヒンジ本体281が車体側ヒンジ軸283を中心として矢印A9に沿って車外方向に回動する。この際、角度調整ストッパ287がストッパ当接部288と当接する位置において、グライドヒンジ本体281の回動が規制される。グライドヒンジ本体281に取り付けられたドアパネル260は、当該グライドヒンジ本体281の回動に従って車外方向に移動する。すなわち、グライドアクチュエータ290の動作に基づいてグライドヒンジ280が車体側ヒンジ軸283まわりに回動し、グライドヒンジ280に取り付けられたドアパネル260が、グライドヒンジ280の回動に従って車体Bから離れる方向に移動する。この際、ドアパネル260の車両前方側の端部264も車体Bから離れる方向に移動する。なお、ドアパネル260が車体Bから離れる方向に移動する際には、当該移動に従ってドアパネル側ダウンストッパ11と車体側ダウンストッパ12の係合が解除されることで、ドアパネル260の車両後方側の保持が解除される。以下において、このようなグライドヒンジ280の回動に基づくドアパネル260の移動をドアパネル260のグライドという。
グライドアクチュエータ290によってグライドヒンジ280が全開位置まで回動された際のドアD7を図29Bに示す。また、グライドアクチュエータ290によってグライドヒンジ280が全開位置まで回動された際のドアパネル260の位置をドアパネル260のグライド全開位置という。ドアパネル260が車外方向へグライドする際には、グライドセンサ292がグライドアクチュエータシャフト291の位置を検出し、車両7000の制御部であるECU57に当該位置情報を送る。ECU57は、受け取った位置情報に基づいて、ドアパネル260がグライド全開位置までグライドしたか否かを判断する。すなわち、ECU57は、グライドセンサ292から受け取った当該位置情報に基づいて、ドアパネル260が取り付けられたグライドヒンジ280が全開位置まで回動したか否かを判断する。ECU57はグライドヒンジ280が全開位置まで回動したと判断すると、スイングアクチュエータ261に開動作信号を送る。ここで、ECU57は、例えばグライドヒンジ280の位置とグライドアクチュエータシャフト291の位置を対応付けて記憶しておき、記憶したグライドアクチュエータシャフト291の位置とグライドセンサ292から送られてくる情報を対比させて、グライドヒンジ280が全開位置にあるか否かを判断することができる。なお、ECU57は、グライドヒンジ280の位置の代わりにドアパネル260の位置とグライドアクチュエータシャフト291の位置を関連付けて記憶し、ドアパネル260がグライド全開位置まで移動したか否かを判断してもよい。
スイングアクチュエータ261は開動作信号を受け取ると、スイングアクチュエータシャフト262を突出する方向に移動させる。ここで、スイングアクチュエータシャフト262はグライドヒンジ本体281に回動可能に接続されている。そのため、スイングアクチュエータ261が内部に設けられるドアパネル260が、当該スイングアクチュエータシャフト262の移動に基づいて、ドアパネル側ヒンジ軸285を中心として車外方向に回動する。以下において、このようなドアパネル260のドアパネル側ヒンジ軸285を中心とした回動をドアパネル260のスイングという。
従って、図29Cに示すように、スイングアクチュエータ261の動作に基づいて、ドアパネル260がグライドヒンジ本体281に対して矢印A10に沿って車外方向へ回動する。図29Cは、ドアパネル260がグライド全開位置までグライドするとともに全開位置までスイングすることで、全開位置まで開かれたドアD7を示す。また、スイングアクチュエータ261によってドアパネル260が全開位置まで回動された際のドアパネル260の位置をドアパネル260のスイング全開位置という。ドアD7が全開位置にあるときには、ドアパネル260が、グライドすることにより車体Bから離れた位置まで移動した上でスイングしているため、ドアパネル260と車体Bとの間に空間S(図29Cにおいて2点鎖線で囲まれる空間)を広く確保することができる。なお、ドアパネル260のスイング全開位置は、不図示のドアチェックやその他の開度調整機構を用いてスイング全開開度を調整することで、設定することができる。
また、搭乗者がドアD7を閉じる際には、搭乗者が操作ユニット13を操作することで、スイングアクチュエータ261に閉動作信号を入力する。スイングアクチュエータ261は、閉動作信号が入力されると、スイングアクチュエータシャフト262を引いて移動させる。この際、スイングアクチュエータシャフト262の移動に従って、スイングアクチュエータ261を含むドアパネル260がドアパネル側ヒンジ軸285を中心として車内方向に回動する。ここで、スイングセンサ263がスイングアクチュエータシャフト262の位置を検出し、ECU57に当該位置情報を送る。ECU57は、ドアパネル260が車内方向にグライドヒンジ280に対して全閉位置まで回動したと判断すると、グライドアクチュエータ290に閉動作信号を送る。なお、ドアD7の全開位置から、ドアパネル260が車内方向にグライドヒンジ280に対して全閉位置まで回動した際の、ドアパネル260の位置をスイング全閉位置という。グライドアクチュエータ290は閉動作信号を受け取ると、グライドアクチュエータシャフト291を車外方向へ突出させて移動させる。グライドアクチュエータシャフト291が移動すると、グライドアクチュエータシャフト291に接続されるグライドアクチュエータ取付片286を介して、グライドヒンジ本体281が車体側ヒンジ軸283を中心として車内方向に回動する。この際、ドアパネル側ダウンストッパ11と車体側ダウンストッパ12とが係合することにより、車体Bがドアパネル260の車両後方側を保持する。これによって、ドアD7の閉動作が終了する。なお、ECU57は、例えばドアパネル260の位置とスイングアクチュエータシャフト262の位置を対応付けて記憶しておき、記憶したスイングアクチュエータシャフト262の位置とスイングセンサ263から送られてくる情報を対比させて、ドアパネル260がスイング全閉位置まで回動したか否かを判断することができる。
操作ユニット13や制御部での信号の流れについて、図30を用いて説明する。図30は、制御部等に関するブロック図である。操作ユニット13は、図26に示すようにドアパネル260のドアピラーとして形成された、静電容量センサなどのタッチセンサやタッチディスプレイを備える操作部である。なお、操作ユニット13は、例えば、車体Bに設けられたドアピラーとして形成してもよいし、ドアパネル260の一部としてドアパネル260の側面部等に設けてもよい。ECU57は制御部の一例であり、制御部はCPUやECUなど制御装置を含む。操作スイッチ52はドアパネル260の車内側又は携帯装置に設けられたドアD7の開閉操作用のスイッチである。操作スイッチ52は、例えば押しボタン式のスイッチやタッチディスプレイに表示されたスイッチ等であってよい。ECU57は、操作ユニット13、操作スイッチ52、グライドアクチュエータ290、スイングアクチュエータ261、グライドセンサ292、スイングセンサ263、並びにドアロック270に接続されている。
ドアD7を開くように、搭乗者が操作ユニット13又は操作スイッチ52が操作する場合には、操作された操作ユニット13又は操作スイッチ52がECU57に開動作すべきドアD7のドア情報と共に開動作信号を送る。ECU57は開動作信号を受け取ると、ドア情報に基づいて開動作すべきドアD7のグライドアクチュエータ290に対して開動作信号を送る。グライドアクチュエータ290は、ECU57から開動作信号を受け取ると、グライドアクチュエータシャフト291を移動させて、グライドヒンジ本体281を車外方向へ回動させドアパネル260を車外方向へグライドさせる。ドアパネル260が車外方向へグライドする際には、グライドセンサ292が、グライドアクチュエータシャフト291の位置を検出し、当該位置情報をECU57に送る。ECU57は、グライドセンサ292から送られてくるグライドアクチュエータシャフト291の位置情報に基づいて、ドアパネル260がグライド全開位置まで移動したか否かを判断する。すなわち、ECU57は、グライドセンサ292から送られてくる当該位置情報に基づいて、ドアパネル260が取り付けられたグライドヒンジ280が全開位置まで回動したか否かを判断する。ECU57は上記で述べたように、予め記憶しておいたグライドヒンジ280の位置と対応付けられたグライドアクチュエータシャフト291の位置と、グライドセンサ292から送られてくる情報を対比して、グライドヒンジ280の回動位置を判断する。ECU57は、グライドヒンジ280が全開位置まで回動したと判断すると、開動作すべきドアD7のスイングアクチュエータ261に開動作信号を送る。スイングアクチュエータ261は、ECU57から開動作信号を受け取ると、スイングアクチュエータシャフト262を移動させて、ドアパネル260をグライドヒンジ280に対して車外方向へ回動させる。これにより、ドアD7が開動作する。なお、ドア情報とは動作すべきドアD7を特定するための情報であればよく、ドア自体の識別情報に限られない。例えば、ドアD7に対応付けられた操作ユニット13の情報などでもよい。
一方でドアD7を閉じるように、搭乗者が操作ユニット13又は操作スイッチ52が操作する場合には、操作された操作ユニット13又は操作スイッチ52がECU57に閉動作すべきドアD7のドア情報と共に閉動作信号を送る。ECU57は閉動作信号を受け取ると、ドア情報に基づいて閉動作すべきドアD7のスイングアクチュエータ261に対して閉動作信号を送る。スイングアクチュエータ261はECU57から閉動作信号を受け取ると、スイングアクチュエータシャフト262を移動させ、ドアパネル260をグライドヒンジ280に対して車内方向へ回動させる。ドアパネル260が車内方向へ回動する際には、スイングセンサ263がスイングアクチュエータシャフト262の位置を検出し、当該位置情報をECU57に送る。ECU57は、スイングセンサ263から送られてくるスイングアクチュエータシャフト262の位置情報に基づいて、ドアパネル260がスイング全閉位置まで回動したか否かを判断する。ECU57は上記で述べたように、予め記憶しておいたドアパネル260の位置と対応付けられたスイングアクチュエータシャフト262の位置と、スイングセンサ263から送られてくる情報を対比して、ドアパネル260がスイング全閉位置まで回動したか否かを判断する。ECU57は、ドアパネル260のスイングが終了したと判断すると、当該ドアパネル260に対応するグライドアクチュエータ290に閉動作信号を送る。グライドアクチュエータ290は、ECU57から閉動作信号を受け取ると、グライドアクチュエータシャフト291を移動させて、グライドヒンジ本体281を車内方向へ回動させドアパネル260を車内方向へグライドさせる。これにより、ドアD7が閉動作する。
上記のように、ドアを開く際に、ドアパネルが車体Bから離れる方向に移動(グライド)し、移動した後の位置において回動(スイング)する車両用ドアでは、ドアパネルのグライド動作時にドアパネルの車両前方側の端部も車体から離れる方向に移動する。そのため、このような車両用ドアにおいて、従来の車両用ドアのようにロック機構をドアパネルの車両後方側に設けると、ロック機構によってドアをロックしていても、ドアパネルの車両前方側の端部がグライドヒンジの回動に従って移動してしまう場合がある。車両後方側に設けられたロック機構によってドアがロックされている場合には、ドアパネルの車両後方側は車体に対して移動が制限される。しかしながら、ドアパネルはグライドヒンジに対して回動可能に接続されているため、ドアパネルの車両後方側が車体に対して移動が制限されても、ドアパネルがグライドヒンジに対して回動してしまい、グライドヒンジの回動によるドアパネルの車両前方側の移動がある程度まで許容されてしまう。これにより、ドアがロック状態にある場合であっても、ドアパネルの車両前方側の端部がグライドヒンジの回動に従って移動してしまう場合がある。
そこで、本実施例による車両用ドアD7では、図26及び27に示すように、ドアロック270がドアパネル260の車両前方側の端部264に設けられている。ドアロック270がドアパネル260の車両前方側の端部264に設けられていると、ドアD7をロックした際に、車体Bに対するドアパネル260の車両前方側の端部264の移動がドアロック270によって規制される。そのため、車両用ドアD7では、ロック状態にある車両用ドアD7の移動をより確実に規制できる。
本実施例による車両用ドアD7では、図30に示すように、ドアロック270はECU57に接続されている。ここで、ドアロック270を用いてドアD7をロックする際の信号の流れについて図30を参照して説明する。まず、ドアをロックするように搭乗者が操作ユニット13又は操作スイッチ52を操作すると、操作ユニット13又は操作スイッチ52がECU57にロックされるべきドアD7のドア情報とともにドアロック信号を送る。ECU57は、ドアロック信号を受け取ると、ドア情報に基づいてロックされるべきドアD7のドアロック270に、ドアロック信号を送る。ドアロック270はECU57から受け取ったドアロック信号に基づいてドアD7をロックする。
ドアD7のロックを解除する場合には、搭乗者がドアD7のロックを解除するように操作ユニット13又は操作スイッチ52を操作すると、操作ユニット13又は操作スイッチ52がECU57にロックが解除されるべきドアD7のドア情報とロック解除信号を送る。ECU57は、ロック解除信号を受け取ると、ドア情報に基づいてロックが解除されるべきドアD7のドアロック270に、ロック解除信号を送る。ドアロック270はECU57から受け取ったロック解除信号に基づいてドアD7のロックを解除する。
上記のように、本実施例による車両用ドアD7は、車体Bに対して車体側ヒンジ軸283(第1の回転軸)まわりに回動可能に接続されたグライドヒンジ280(回動部材)と、グライドヒンジ280に対してドアパネル側ヒンジ軸285(第2の回転軸)まわりに回動可能に取り付けられたドアパネル260とを備える。車両用ドアD7は、車両用ドアD7のドアロック270(ロック機構)をさらに備える。ドアロック270はドアパネル260の車両前方側の端部264に設けられる。また、車両用ドアD7は、グライドヒンジ280に接続されるグライドアクチュエータ290(第1の駆動機構)と、ドアパネル260に含まれるスイングアクチュエータ261(第2の駆動機構)とをさらに備える。該車両用ドアD7では、グライドアクチュエータ290の動作に基づいて、グライドヒンジ280が車体Bに対し回動し、グライドヒンジ280が回動して車両用ドア7が開動作する際に、ドアパネル260の車両前方側の端部264が車体Bから離れる方向に移動する。また、スイングアクチュエータ261の動作に基づいて、ドアパネル260がグライドヒンジ280に対し回動する。
上記構成から、車両用ドアD7が開かれる際には、ドアパネル260は車体Bから離れた位置においてドアパネル側ヒンジ軸285まわりに回動することができる。そのため、ドアD7が開かれる際には、従来の車両用ドアと比べて、ドアパネル260の車両前方側においてドアパネル260と車体Bとの間の空間Sをより広く確保することができる。空間Sは座席の足場に隣接しているため、空間Sを広く確保することで、搭乗者が乗降車する際に足をドアパネル260にぶつけてしまうことなどを防ぐことができる。したがって、本実施例による車両用ドアD7を用いることで、搭乗者の足さばき用の空間が増大し、搭乗者が円滑に乗降車することができる。また、ドアD7をロックした際には、車体Bに対するドアパネル260の車両前方側の端部264の移動がドアロック270によって規制される。そのため、車両用ドアD7では、ロック状態にある車両用ドアD7の移動をより確実に規制できる。さらに、グライドアクチュエータ290を用いてドアパネル260をグライドさせるとともに、スイングアクチュエータ261を用いてドアパネル260をスイングさせることにより、搭乗者は簡易な操作だけでドアD7を開閉することができる。そのため、搭乗者は不慣れなドアパネル260のグライド操作を行わずに、ドアD7を容易に開閉することができる。また、本実施例によるドアD7では、各アクチュエータ290、261によってドアD7の開閉を自動的に行わせることができため、搭乗者は荷物で手がふさがっている場合であっても容易に乗降車することができる。
本実施例による車両用ドアD7では、図29A乃至Cに示すように、グライドアクチュエータ290は、車体側ヒンジ軸283に対して、グライドヒンジ280のドアパネル260が取り付けられている位置とは反対の位置において、グライドヒンジ280に接続される。これにより、車体Bにグライドアクチュエータ290を設ける際のグライドアクチュエータ290の配置箇所の自由度を向上させることができる。ただし、グライドアクチュエータ290がグライドヒンジ280に接続される構成はこれに限られない。グライドアクチュエータ290は、グライドアクチュエータ290の動作に従ってグライドヒンジ本体281を車体側ヒンジ軸283まわりに回動させられるようにグライドヒンジ280に接続されていればよい。
また、本実施例による車両用ドアD7では、全閉位置にあるドアD7のドアパネル260を車外方向にグライドさせる際に、ダウンストッパ11及び12が係合していることから、ドアパネル260の車両後方側が車体Bに保持される。その後、ドアパネル260が所定の位置まで車外方向へグライドすると、ドアパネル260を移動させる動力によってダウンストッパ11及び12の係合が解除されて、ドアパネル260の車両後方側の端部265が車体Bから離れる方向に移動する。そのため、ドアパネル260の車両後方側の端部265は、ドアパネル260の車両前方側の端部264が所定の位置まで回動するまで、ダウンストッパ11及び12によって車体Bに保持された後、車体Bから離れる方向に移動する。従って、グライドヒンジ280が回動して車両用ドアD1が開動作するとき、図29Bに示すように、ドアパネル260の前方側の端部264から車体Bまでの距離は、ドアパネル260の車両後方側の端部265から車体Bまでの距離よりも長くなる。また、ドアパネル260がグライド全開位置まで移動した後には、ドアパネル260がドアパネル側ヒンジ軸285を中心として車外方向へ回動(スイング)する。そのため、グライドヒンジ280の回動の後にドアパネル260を回動させて車両用ドアD1を開動させるときには、図29Cに示すように、ドアパネル260の車両前方側の端部264から車体Bまでの距離は、ドアパネル260の車両後方側の端部265から車体Bまでの距離より短くなる。本実施例による車両用ドアD7において、グライドヒンジ280を車外方向へ回動させる際には、グライドヒンジ280の回動に従ってドアパネル260が車体から離れる方向に移動(グライド)する。ここで、ドアパネル260がグライドする際に、ドアパネル260の車両前方側の端部264から車体Bまでの距離が、ドアパネル260の車両後方側の端部265から車体Bまでの距離よりも短い場合には、ドアパネル260のグライドに従ってドアパネル260の車両前方側の端部264がフェンダーFに衝突してしまう場合がある。これに対し、本実施例による車両用ドアD7は、上記のように構成されることによって、ドアパネル260のグライド動作時にドアパネル260の車両前方側の端部264がフェンダーFに衝突してしまうことを防止することできる。なお、グライドヒンジ280を回動して車両用ドアD7が開動作するときに、ドアパネル260の車両前方側の端部264から車体Bまでの距離は、ドアパネル260の車両後方側の端部265から車体Bまでの距離と等しくなるように構成されてもよい。この場合であっても、ドアパネル260のグライド動作時にドアパネル260の車両前方側の端部264がフェンダーFに衝突してしまうことを防止することできる。
さらに、ドアパネル260と車体Bにそれぞれガイドローラ及びガイドレールを設け、ドアパネル260のグライド動作をガイドするようにドアD7を構成することで、ドアパネル260の車両前方側の端部264とフェンダーFの衝突を防止することができる。ガイドレールは車体Bの内側において車両前後方向に延在し、その一端に前記車体の外側に向けた開口部を有し、開口部から他方の端部に向かって徐々に車内方向へ曲がるように形成される。この場合、ドアパネル260に設けられたガイドローラは、ドアパネル260のグライド動作時に車体Bに設けられたガイドレール内を開口部に向かって摺動し、ドアパネル260の移動をガイドレールの形状に沿ってガイドする。これにより、ドアパネル260の車外方向へのグライド動作時におけるドアパネル260のグライドヒンジ280に対する車外方向への回動が制限される。そのため、ガイドローラ及びガイドレールを用いることで、ドアパネル260の車外方向へのグライド動作時におけるドアパネル260のグライドヒンジ280に対する車外方向への回動を制限し、ドアパネル260の車両前方側の端部264とフェンダーFの衝突を防止することができる。
なお、本実施例による車両用ドアD7では、グライドアクチュエータ290及びスイングアクチュエータ261によってドアパネル260のグライド動作及びスイング動作を行う構成としている。しかしながら、ドアロック270を用いて、ロック状態にあるドアD7の移動を制限する構成は、これらアクチュエータ292、261を備えていない車両用ドアにも適用することができる。また、本実施例による車両用ドアD7は、上記のように、開動作時にはドアパネル260のグライド動作後に自動的にスイング動作を行い、閉動作時にはドアパネル260のスイング動作後に自動的にグライド動作を行うように構成されている。これに対し、操作ユニット13や操作スイッチ52に、グライド開閉動作用のボタン及びスイング開閉動作用のボタン等を設けて、ドアパネル260のグライド動作及びスイング動作を搭乗者の入力に基づいて個別に行うように、車両用ドアD7を構成することもできる。
本実施例では、グライドアクチュエータ290はグライドアクチュエータシャフト291を車幅方向に移動させるように配置されている。しかしながら、グライドアクチュエータ290の構成はこれに限られず、第1の実施例の変形例のように、グライドアクチュエータ290はグライドアクチュエータシャフト291を車両前後方向に移動させるように配置されてもよい。また、グライドアクチュエータ290の代わりに車体側ヒンジ軸283上にモータを設けてグライドヒンジ280を回動させてもよい。同様に、スイングアクチュエータ261の代わりに、ドアパネル側ヒンジ軸285上にモータを設けて、ドアパネル260をグライドヒンジ280に対して回動させることもできる。この場合、ECU57はグライドアクチュエータ290やスイングアクチュエータ261の代わりにモータに接続され、当該モータに開動作信号や閉動作信号を送ることとなる。
また、本実施例では、グライドセンサ292はグライドアクチュエータシャフト291の位置を検出するセンサであるが、グライドセンサの構成はこれに限られない。グライドセンサは、車体Bに対するグライドヒンジ280の位置をECU57が判断するための情報を検出することができるセンサであればよい。そのため、グライドセンサは、例えば、車体Bに対するグライドヒンジ280の回動角度を検出する、車体側ヒンジ軸283上に設けられたロータリセンサなどの角位置センサであってもよい。また、グライドセンサは、車体Bに対するグライドヒンジ280の位置を検出する、グライドヒンジ280又は車体Bに設けられた近接センサ、特に車体側取付片282、角度調整ストッパ287又はストッパ当接部288に設けられた近接センサであってもよい。
同様に、本実施例では、スイングセンサ263はスイングアクチュエータシャフト262の位置を検出するセンサであるが、スイングセンサの構成はこれに限られない。スイングセンサは、グライドヒンジ280に対するドアパネル260の位置をECU57が判断するための情報を検出することができるセンサであればよい。そのため、スイングセンサは、例えば、グライドヒンジ280に対するドアパネル260の回動角度を検出する、ドアパネル側ヒンジ軸285上に設けられたロータリセンサなどの角位置センサであってもよい。また、スイングセンサは、グライドヒンジ280に対するドアパネル260の位置を検出する、グライドヒンジ280又はドアパネル260に設けられた近接センサであってもよい。
また、第5の実施例による車両用ドアD7では、ECU57からの信号に基づいて、ドアロック270が自らの動力で作動するように構成した。これに対し、ドアD7が閉じた状態において、ドアロックがスイングアクチュエータ261によって駆動されるように構成することもできる。車両用ドアD7では、ドアD7を開き始める際及び閉じきる際のドアパネル260の移動は、グライドアクチュエータ290の動作に基づいて行われる。そのため、ドアD7を開き始める際及び閉じきる際には、スイングアクチュエータ261はドアD7の開閉動作に動力源として用いられない。そこで、ドアD7が閉じた状態において行われるドアD7のロックの動力源としてスイングアクチュエータを用いることで、ドアロック自体に動力源を設ける必要がなくなり、ドアロックをより簡易な構成とすることができる。
上記のように、ドアロックの動力源としてスイングアクチュエータを用いた車両用ドアD7において、ドアロックを作動させる際の信号の流れについて図31を参照して説明する。図31は、ドアロックの動力源としてスイングアクチュエータを用いた車両用ドアD7の制御部等のブロック図である。ここで、ECU58は第5の実施例におけるECU57と同様の制御部であり、ドアロック314は自らの動力源を備えていないドアロックである。スイングアクチュエータ311は、第5の実施例におけるスイングアクチュエータ261と同様のアクチュエータであるが、ドアロック314にも接続されている。当該構成において、ECU58は、ドアロック314に接続されていない。なお、操作ユニット13及び操作スイッチ52等は第5の実施例における操作ユニット13等と同様のものであるため、同じ参照符号を用いる。
ドアD7をロックする場合には、ドアD7をロックするように搭乗者が操作ユニット13又は操作スイッチ52を操作すると、操作ユニット13又は操作スイッチ52がECU58にロックされるべきドアD7のドア情報とともにドアロック信号を送る。ECU58は、ドアロック信号を受け取ると、ドア情報に基づいてロックされるべきドアD7のスイングアクチュエータ311にドアロック信号を送る。スイングアクチュエータ311は、ECU58から受け取ったドアロック信号に基づいてドアロック314を駆動しドアD7をロックする。
ドアD7のロックを解除する場合には、搭乗者がドアD7のロックを解除するように操作ユニット13又は操作スイッチ52を操作すると、操作ユニット13又は操作スイッチ52がECU58にロックが解除されるべきドアD7のドア情報とロック解除信号を送る。ECU58は、ロック解除信号を受け取ると、ドア情報に基づいてロックが解除されるべきドアD7のスイングアクチュエータ311に、ロック解除信号を送る。スイングアクチュエータ311は、ECU58から受け取ったロック解除信号に基づいてドアロック314を駆動しドアD7のロックを解除する。
このように、第5の実施例の変形例による車両用ドアD7では、車両用ドアD7が閉じた状態において、ドアロック314がスイングアクチュエータ311によって駆動される。そのため、ドアロック314の動力源として、スイングアクチュエータ311を用いることで、ドアロックに独自の動力源を設ける必要がなくなる。従って、車両用ドアD7では、より簡易な構成のドアロック314を用いて、ロック時にドアD7の移動を制限することができる。
なお、上記各実施例においては、グライドアクチュエータを、グライドアクチュエータシャフトを引いて移動させることでグライドヒンジを車外方向に回動させ、突出させて移動させることでグライドヒンジを車内方向に移動させるように構成した。しかしながら、グライドアクチュエータシャフトを突出させて移動させることでグライドヒンジを車外方向に回動させ、引いて移動させることでグライドヒンジを車内方向に回動させるように、グライドアクチュエータを構成することもできる。同様に、上記各実施例においては、スイングアクチュエータを、スイングアクチュエータシャフトを突出させて移動させることでドアパネルを車外方向に回動させ、引いて移動させることでドアパネルを車内方向に回動させるように構成した。しかしながら、スイングアクチュエータシャフトを引いて移動させることでドアパネルを車外方向に回動させ、突出させて移動させることでドアパネルを車内方向に回動させるようにスイングアクチュエータを構成することもできる。
また、上記各実施例においては、本発明の車両用ドアについてフロントドアを例に説明したが、本発明による車両用ドアはフロントドアに限られず、リアドア、バックドアやリアハッチ等にも適用することができる。さらに、各実施例では、グライドヒンジは、ドアパネルの車両前方側に取り付けられるように構成されているが、車両後方側に取り付けてドアを車両後方側で開閉させる構成としてもよい。この場合、グライドアクチュエータやスイングアクチュエータもドアパネルに対して車両後方側に配置される。
以上、実施例を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述の各実施例及び変形例は、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。