JP6387020B2 - 道路橋の金属製床版 - Google Patents
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Description
道路橋の床版は、コンクリート系床版、鋼とコンクリートとの合成床版、鋼床版に大別される。従来の鋼床版は、例えば特許文献1に開示されるように、鋼板などの長尺のデッキプレートに補強リブを溶接により接合した構造であり、コンクリート系床版や合成床版に比して軽量である。また、架設後のコンクリート工事がなく、工期を短縮することができるという特徴を有している。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来の鋼床版と同等以上の強度、剛性を有し、疲労性能が高い道路橋の金属製床版を提供することにある。併せて、道路橋の施工性を向上させ、工期短縮と軽量化によるコスト低減を図るものである。
好ましくは、デッキプレートには、床版の自重および床版に加わる鉛直荷重を主桁の上面に伝達する脚部と、床版と主桁の上面とを接合する接合手段とを有している。
好ましくは、接合手段は、ナットをデッキプレートの上面から挿入可能かつボルトを下方から挿通可能なボルト装着部を備え、ボルト装着部と主桁の上面とをボルトおよびナットにより締結する。
好ましくは、ボルト装着部を補強リブに連接して形成する。
好ましくは、脚部には、垂直方向に切り欠かれた切欠部を橋軸方向に沿って複数有する。
もしくは、補強リブは、橋軸方向と直交する方向に延びる主リブと、隣接する主リブの間に連接されて主リブに床版に加わる荷重を伝達する副リブとからなる。
好ましくは、補強リブはデッキプレートの下面から垂直に板状に突設された平リブである。
好ましくは、デッキプレートは、上面視台形に形成する。
(実施例1)
図1は、道路橋の一部を示した斜視図である。図2は、道路橋の主桁、および横桁に本実施例に係る金属製床版を敷き詰めた状態を示す上面図である。図3は、本実施例に係る金属製床版を上面から見た斜視図である。図4は、図3の金属製床版を下面から見た斜視図である。図5(a)は、図3の金属製床版をA方向から見た側面図、図5(b)は、図3の金属製床版の一部を下面から見た平面図、図5(c)は、図3の金属製床版の一部をB方向から見た側面図である。
図2に示すように、床版14は、主桁4および横桁6により格子状に区画されたうちの1つの区画を覆う大きさを有し、複数の床版14が主桁4の上面および横桁6の上面に互いに隙間なく敷き詰められている。
図5(a)〜(c)に示すように、デッキプレート18は脚部26とボルト装着部(接合手段)28とを備えている。脚部26は、方向Yにおけるデッキプレート18の両端において、デッキプレート18の下面18bから垂直方向Zに板状に突設しており、主リブ22が連接される。
主リブ22は、厚みt1、垂直方向Zの高さH1を有して形成され、対向する脚部26間に亘って各脚部26に連接して延設されており、デッキプレート18の下面18bの橋軸方向Xにリブ間隔(ピッチ)P1を存して複数配置されている。
長リブ24aの橋軸方向Xにおける両端部にはそれぞれ、垂直方向Zに4つのボルト孔34が並んで穿孔されている。また、短リブ24bの橋軸方向Xにおける両端部にはそれぞれ、垂直方向Zに2つのボルト孔34が並んで穿孔されている。
道路橋1の仕様を以下に示す(図2参照)。
・路面幅Wr:10m、
・主桁4の中心間隔D1:2.5m、
・横桁6の中心間隔D2:5.0m
・デッキプレート18の大きさ(縦長L1×横幅W1):5.0m×2.5m、
・デッキプレート18の厚みt:12mm、
・主リブ22の高さH1:215mm、
・主リブ22の厚みt1:15mm、
・主リブ22のリブ間隔(ピッチ)P1:320mm、
・主リブ22の数:16、
・長リブ24a(副リブ24)の高さH2:215mm、
・長リブ24aの数:1、
・短リブ24b(副リブ24)の高さH3:100mm、
・短リブ24bの数:6、
・副リブ24の厚みt2:15mm
図6に示すように、主桁4の上部フランジ8の上面には、橋軸方向Xと直交する方向Yに隣接する床版14のそれぞれのデッキプレート18の脚部26が当接されている。車両の通行により床版14に発生する荷重は、主リブ22から脚部26に伝達され、あるいは副リブ24から主リブ22を介して脚部26に伝達され、主桁4の直上から矢印で示す鉛直方向Cに主桁4へ伝達される。
連結プレート42には、隣接する床版14の副リブ24同士に穿孔された各ボルト孔34に対応する位置にボルト孔44が穿孔されている。一貫するボルト孔34、44に、ボルト46を挿通して図示しないナットで締結することにより隣接する床版14同士が連結プレート42により互いに連結される。なお、図7では短リブ24bにおける連結のみを示したが、長リブ24aにおいても同様の連結プレート42を用いたボルト46による連結が行われる。
また、床版14として、疲労限300MPa、耐力値400MPa、許容応力度235MPa(安全率1.7)、ヤング率170GPa、ポアソン比0.28を有する材料にて行った応力解析シミュレーションによれば、同程度の大きさの最大応力が発生する条件下で、従来構造の鋼床版よりも本実施例の鋳物の床版14の方が床版自体の重量を軽減することが可能であり、もしくは同程度の重量の床版において、床版に発生する最大応力を低減可能であることが判明している。
これに対し本実施例の床版14は、発生応力に応じた最適な形状設計が容易に実現できる。また、少なくとも副リブ24の短リブ24bよりもリブ高さが高い主リブ22を主桁4と直交する方向Yに延設し、車両の通行により床版14に発生する荷重を主リブ22から脚部26を介して主桁4に真上から、あるいは副リブ24から主リブ22および脚部26を介して主桁4に真上から伝達する。したがって、縦リブ(主リブ)が主桁と平行に配置される従来の鋼床版の場合に比して、車両の通行により床版14に発生する荷重を主桁4に効率的に分散して伝達することができ、道路橋1の剛性を従来に比して向上することができる。
また、床版14は主桁4および横桁6により格子状に区画されたうちの1つの区画を覆う大きさを有し、床版14を主桁4の上部フランジ8に当接して支持する「単純はり」的な支持方法であるため、従来の鋼床版のように1つの鋼床版が複数の主桁を跨ぐ大きさを有し、1つの鋼床版を複数の主桁で支持する「連続ばり」による支持方法と比較して、主リブ22の端部に大きなモーメントが発生せず、また、床版14と主桁4との接合部を単純構造にすることができる。
また、ボルト装着部28を主リブ22に連接して形成することにより、ボルト装着部28にモーメントが作用したとしても、主リブ22の剛性によりボルト装着部28の強度を確保することができる。
また、主桁4と床版14とをボルト32およびナット36により締結する構造とすることにより、従来の鋼床版を主桁および/または横桁に溶接する場合に比して、現場での施工が容易になり、工期短縮とコスト低減を実現することができる。
なお、本発明は本実施例の形態に制約されるものではなく、種々の異なった実施形態が可能である。
詳しくは、ボルト32を主桁4の上部フランジ8に形成した貫通孔40の下方からボルト装着部28に穿孔されたボルト孔38に挿通し、ナット36をデッキプレート18の上面18aからボルト装着部38に穿孔されたボルト孔38の上孔38aに挿入して上孔38aと下孔38bとの段差により保持させ、ナット36をボルト32に螺合することにより、床版14と主桁4とがボルト32およびナット36により摩擦接合される。
また、ボルト装着部28を補強リブ20(主リブ22もしくは副リブ24)に連接せず、別部位に形成するようにしても良い。
また、主リブ22と副リブ24の高さを同じ高さに形成するようにしても良い。
図8は、本発明の他の実施例である金属製床版を下面から見た斜視図である。
この実施例では、実施例1の床版14を橋軸方向Xに4分割した大きさの床版48を連結して、床版14の大きさにしている。
・デッキプレート18の大きさ(縦長L2×横幅W2):1.25m×2.5m、
・主リブ22の数:4
実施例1の床版14を橋軸方向Xに4分割した大きさの床版48は、実施例1の床版14に比して小さく軽量となる。したがって、1つの床版48を小型車で運搬できるとともに、小型クレーンでの施工が可能となるため、道路橋1の建設における作業性を向上させ、コストを低減することができる。また、分割することで、主桁4の上部フランジ8の表面に不陸の箇所が存在してもなじむため、床版48の取り付けが容易となる。
図9は、本発明のさらに他の実施例である金属製床版を下面から見た斜視図である。
この実施例では、床版48を橋軸方向Xと直交する方向Yに張り出して拡幅した大きさの床版54を連結している。なお、実施例1および実施例2の場合と同じ形態のものについては説明を省略する。
・デッキプレート18の大きさ(縦長L2×横幅W3):1.25m×3.5m
この実施例のように、床版48を橋軸方向Xと直交する方向Yに拡幅した大きさの床版54とした場合には、路面幅Wrを実施例1の場合よりも1.0m拡幅した道路橋1を建設することができ、高欄等の設置が必要とされる外側車線に使用される。
図10は、本発明のさらに他の実施例である金属製床版が、主桁に設置されている状態を示した側面図である。この実施例では、床版57の脚部26には、垂直方向Zに切り欠かれた切欠部26aを形成している。この切欠部26aは、例えば上方向を頂点とする略二等辺三角形状をなし、脚部26の橋軸方向Xに沿って等間隔を存し複数配置されている。各切欠部26aは脚部26において各主リブ22が連接される位置の略中間に位置付けられている。
したがって、脚部26に切欠部26aを形成することにより、床版57と主桁4とを接合する際に、床版57が上方凸の弓なり形状の主桁4に追従して容易に載置可能である。また、脚部26ひいては床版57が変形することが許容されるため、主桁4と床版57とが馴染むような状態で接合することができる。
図11は、本発明のさらに他の実施例である金属製床版62を上面から見た図である。図12は、金属製床版62の橋軸方向Xにおける配置状態の一例を示した図である。図13は、金属製床版62の橋軸方向Xにおける配置状態の別例を示した図である。この実施例では、実施例2の床版48(実施例1の床版14を橋軸方向Xに4分割した大きさの床版48)のデッキプレート18を上面視台形に形成した床版62を使用している。
また、図13に示すように、橋軸方向Xに向けて連結された床版62を例えば3つ目毎に図12とは逆向きに配置して連結したり、矩形である床版48と組み合わせたりすることにより、図12の場合に比して緩やかな曲率半径R2のカーブを道路橋1に形成することもできる。
図14は、本発明のさらに他の実施例である金属製床版を上面から見た斜視図である。この実施例では、デッキプレート18の上面18aに、例えば大きさの異なる平面視六角形状の凸を2段重ねた凸部58を一様に多数有する床版60を形成している。この場合には、路面16を施工する際、デッキプレート18の上面18aに対するアスファルト等の舗装材の接合性を高めることができて好ましい。
4 主桁
8 上部フランジ
14 床版(金属製床版)
18 デッキプレート
18a デッキプレートの上面
18b デッキプレートの下面
20 補強リブ
22 主リブ
24 副リブ
26 脚部
26a 切欠部
28 ボルト装着部(接合手段)
32 ボルト(接合手段)
36 ナット(接合手段)
48 床版(金属製床版)
54 床版(金属製床版)
57 床版(金属製床版)
60 床版(金属製床版)
62 床版(金属製床版)
Claims (8)
- 道路橋の橋軸方向に延びる主桁の上面に支持される床版であって、
デッキプレートと、
前記デッキプレートの下面に形成した補強リブと
を備え、
前記デッキプレートおよび前記補強リブを鋳造により一体成形し、
前記デッキプレートには、
前記床版の自重および前記床版に加わる鉛直荷重を前記主桁の上面に伝達する脚部と、
前記床版と前記主桁の上面とを接合する接合手段と
を有し、
前記接合手段は、ボルトを前記デッキプレートの上面から挿通可能なボルト装着部を備え、前記ボルト装着部と前記主桁の上面とを前記ボルトおよびナットにより締結することを特徴とする道路橋の金属製床版。 - 道路橋の橋軸方向に延びる主桁の上面に支持される床版であって、
デッキプレートと、
前記デッキプレートの下面に形成した補強リブと
を備え、
前記デッキプレートおよび前記補強リブを鋳造により一体成形し、
前記デッキプレートには、
前記床版の自重および前記床版に加わる鉛直荷重を前記主桁の上面に伝達する脚部と、
前記床版と前記主桁の上面とを接合する接合手段と
を有し、
前記接合手段は、ナットを前記デッキプレートの上面から挿入可能かつボルトを下方から挿通可能なボルト装着部を備え、前記ボルト装着部と前記主桁の上面とを前記ボルトおよびナットにより締結することを特徴とする道路橋の金属製床版。 - 前記ボルト装着部を前記補強リブに連接して形成することを特徴とする請求項1または2に記載の道路橋の金属製床版。
- 前記脚部には、垂直方向に切り欠かれた切欠部を前記橋軸方向に沿って複数有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の道路橋の金属製床版。
- 前記補強リブは、前記橋軸方向と直交する方向に延びる主リブからなることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の道路橋の金属製床版。
- 前記補強リブは、
前記橋軸方向と直交する方向に延びる主リブと、
隣接する前記主リブの間に連接されて前記主リブに前記床版に加わる荷重を伝達する副リブと
からなることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の道路橋の金属製床版。 - 前記補強リブは、前記デッキプレートの下面から垂直に板状に突設された平リブであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の道路橋の金属製床版。
- 前記デッキプレートは、
上面視台形に形成することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の道路橋の金属製床版。
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