JP6386250B2 - 点火時期制御装置及び点火時期制御システム - Google Patents

点火時期制御装置及び点火時期制御システム Download PDF

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Description

本発明は、内燃機関(エンジン)のノッキングの状態によって点火時期を制御する点火時期制御装置及び点火時期制御システムに関し、例えば小型船舶、小型発電機、芝刈機等に使用される汎用エンジン、2輪車用のエンジン、各種の建設機械に用いられるエンジン等に適用可能な点火時期制御装置及び点火時期制御システムに関する。
従来より、エンジンのノッキングを防止して好適にエンジンの動作を制御する技術として、エンジンにノッキングセンサを取り付け、ノッキングセンサの出力に基づいて点火時期を制御する点火時期制御が知られている(特許文献1参照)。
具体的には、電子制御装置からイグナイタに対して、点火時期を示す点火信号が出力され、この点火信号に基づいて、イグナイタから点火コイルに対して、点火プラグに火花放電を行わせるための信号が出力される。
上述した点火時期制御を行う場合には、エンジンによって許容される点火時期の最大進角値を設定するとともに、この最大進角値より遅角側に、所定のマージンを設定して点火時期の基準となる基準点火時期(基準点火信号タイミング)を設定していた。
そして、ノッキングセンサによってノッキングが検出されなければ、段階的に点火時期(点火信号タイミング)を進角させ、ノッキングが検出された場合には、点火時期を遅角させることによって、ノッキングの発生を防止していた。
特開2008−215141号公報
ところで、近年では、エンジンを制御する電子制御装置(内燃機関用制御装置)とは別に、装置の汎用性の向上等の目的で、内燃機関用制御装置とイグナイタとの間に他の電子制御装置(点火時期調整装置)を配置し、内燃機関用制御装置から点火時期調整装置に、基準点火時期を示す基準点火信号を送信するとともに、点火時期調整装置にて、ノッキングセンサの出力に基づいて点火時期を調整する技術が研究されている。
しかしながら、内燃機関用制御装置とともに点火時期調整装置を用いる場合には、下記のような問題が生じることが考えられる。
例えば、図14に示すように、ノッキングセンサや点火時期調整装置に異常(即ちノッキングを検出できないような異常)が発生した場合には、実際にノッキングが発生しても、ノッキングの発生を検出できない恐れがある。
その場合、前記基準点火信号に基づいて、点火時期が例えば最大進角値を示す基準点火時期(基準点火信号タイミング)に設定されていたときには、実際にノッキングが発生しても、点火時期の調整が行われないので、ノッキングの発生を抑制できない恐れがある。その結果、内燃機関に損傷を与える可能性がある。
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、点火時期制御装置に異常が発生した場合でも、ノッキングの発生を抑制できる点火時期制御装置及び点火時期制御システムを提供することである。
(1)本発明は、第1態様(点火時期制御装置)として、内燃機関のノッキングを検出するノッキング検出装置と、前記ノッキング検出装置から得られる前記ノッキングの状態を示すノッキング信号と、外部の電子制御装置から得られる前記内燃機関の点火時期に関する外部点火信号と、に基づいて、前記内燃機関の点火時期を調整する点火時期調整装置と、を備えた点火時期制御装置であって、前記ノッキング検出装置及び前記点火時期調整装置のうち少なくとも一方について、ノッキングを検出できない可能性がある異常を検出する異常検出部と、前記異常検出部によって、前記異常を検出した場合には、前記点火時期調整装置にて調整する点火時期を、前記異常を検出する前に設定された前回の点火時期より遅角側に制御する制御部と、を備えており、さらに、前記制御部は、前記異常検出部によって、前記異常を検出した場合には、前記点火時期調整装置にて調整する点火時期を、前記外部点火信号が示す基準点火時期を基準として遅角側の領域内にて制御するとともに、前記基準点火時期から最大遅角量だけ遅角させた点火時期に設定すること特徴とする。
本第1態様では、ノッキング検出装置及び点火時期調整装置のうち少なくとも一方について、ノッキングを検出できない可能性のある異常を検出した場合には、点火時期調整装置にて調整する点火時期を、異常を検出する前に設定された前回(即ち異常検出の直前の)点火時期より遅角側に制御する
さらに、本第1態様では、異常を検出した場合には、点火時期調整装置にて調整する点火時期を、外部点火信号が示す基準点火時期を基準として遅角側の領域内にて制御するとともに、基準点火時期から最大遅角量だけ遅角させた点火時期に設定する。
これによって、ノッキングの発生を好適に抑制できる。
つまり、上述したように、ノッキング検出装置や点火時期調整装置に、前記異常が発生した場合には、実際にノッキングが発生してもノッキングを検出できず、そのため、ノッキングを抑制するような点火時期の制御を行えない可能性があるが、本第1態様では、ノッキング検出装置や点火時期調整装置に、前記異常を発生した場合には、安全を見込んで、点火時期を、異常を検出する前に設定された前回の点火時期(即ち異常発生の検出の直前に設定された点火時期)より遅角側に制御するので、詳しくは、点火時期調整装置にて調整する点火時期を、基準点火時期から最大遅角量だけ遅角させた点火時期に設定するので、ノッキングの発生を好適に抑制することができる。
つまり、本第1態様では、上述した異常が検出された場合には、最大遅角量に対応した点火時期に一気に遅角させるので、ノッキングの発生を速やかに抑制することができる。
なお、外部点火信号が示す基準点火時期としては、MBT(Minimum Advance for Best Torque)の範囲が挙げられる。また、基準点火時期を基準とした遅角側の領域としては、例えばMBTに対して+5°〜+10°の中で設定される設定値までの範囲が挙げられる。
ここで、最大遅角量とは、基準点火時期を遅角させる制御を行う際に設定される最大の遅角量であり、例えばMBTに対して+5°〜+10°の中で設定される設定値が挙げられる。
その結果、ノッキング検出装置や点火時期制御装置がノッキングを検出できない異常状態に陥ったとしても、内燃機関の損傷を防ぐことができる。また、点火時期制御装置に異常が発生した場合でも、内燃機関は停止せずに、運転を継続することが可能である。
)本発明は、第態様(点火時期制御システム)として、前記第1態様に記載の点火時期制御装置と前記外部の電子制御装置とを備えたことを特徴とする。
本第態様の点火時期制御システムは、上述した点火時期制御装置を備えているので、例えば運転状態の変化に対応して好適な点火時期を設定できる等の(第1態様に示すような)効果を奏する。
実施例1の点火時期制御装置が用いられる内燃機関のシステム構成を示す説明図である。 (a)は実施例1の点火時期制御装置を一部破断して示す平面図、(b)はその点火時期制御装置を一部破断して示す正面図である。 (a)は実施例1の点火時期制御装置及びその周辺の装置を示す説明図、(b)はその点火時期調整装置の接続端子を示す説明図である。 実施例1の点火時期制御装置及びその周辺の装置の電気的構成を示す説明図である。 実施例1におけるノッキングと点火時期の調整内容との基本的な関係を示すグラフである。 基準点火時期Aと補正点火時期Bとの関係を示すタイミングチャートである。 実施例1における異常の発生と点火時期の調整内容との関係を示すグラフである。 実施例1の点火時期調整装置で行われる補正点火時期算出処理を示すフローチャートである。 実施例1の点火時期調整装置で行われるノッキング検出処理を示すフローチャートである。 実施例1の点火時期調整装置のOBDシステムで行われる異常検出処理を示すフローチャートである。 異常検出の手法を例示する説明図である。 (a)は実施例2におけるノッキングと点火時期の調整内容との関係を示すグラフ、(b)は異常の発生と点火時期の調整内容との関係を示すグラフである。 実施例2の点火時期調整装置で行われる補正点火時期算出処理を示すフローチャートである。 従来技術における異常発生と点火時期の調整内容との関係を示すグラフである。
以下では、本発明を実施するための形態(実施例)の点火時期制御装置及び点火時期制御システムについて説明する。
本実施例の点火時期制御システムの点火時期制御装置は、汎用エンジンや2輪車用エンジンなどの各種のエンジン(内燃機関)に用いられるものであり、エンジンのノッキングを防止するために、点火時期を制御する装置である。なお、以下では、4サイクルの2輪車用エンジンを例に挙げて説明する。
a)まず、本実施例の点火時期制御装置を備えた内燃機関のシステム全体について説明する。
図1に示す様に、内燃機関(エンジン)1は、エンジン本体3と、エンジン本体3に空気を導入する吸気管5と、吸入空気量を検出するエアフローメータ7と、吸入空気量を調整するスロットルバルブ9と、スロットルバルブ9の開度を検出するスロットル開度センサ11と、燃焼室13内に空気を導入する吸気マニホールド15と、燃料を吸気マニホールド15内に噴射する燃料噴射弁17と、エンジン本体3から(燃焼後の)空気を排出する排気マニホールド19と、排気マニホールド19から排出される排気から空燃比を検出する空燃比センサ(又は酸素センサ)21などを備えている。
また、エンジン本体3のシリンダヘッド23には、点火プラグ25が取り付けられ、エンジン本体3には、エンジン回転数(回転速度)を検出するエンジン回転数センサ27や、クランク角を検出するクランク角センサ29が取り付けられている。
更に、エンジン本体3には、後述する点火時期制御装置31が取り付けられている。この点火時期制御装置31には、イグナイタ33が接続され、イグナイタ33には点火コイル35が接続され、点火コイル35は点火プラグ25に接続されている。
また、エンジン1には、エンジン本体3等の運転状態(例えばエンジン回転数や空燃比センサ21の出力に基づく空燃比フィードバック制御など)を総合的に制御する内燃機関用制御装置(エンジンコントロールユニット)37が設けられている。この内燃機関用制御装置37は、図示しないが、周知のRAM、ROM、CPU等を有するマイコンを備えた電子制御装置(ECU)である。
なお、この内燃機関用制御装置37が、本発明における外部の電子制御装置に該当する。また、以下では、点火時期制御装置31と内燃機関用制御装置37とを備えたシステムを、点火時期制御システム38と称する。
内燃機関用制御装置37の入力ポート(図示せず)には、エアフローメータ7、スロットル開度センサ11、空燃比センサ21、エンジン回転数センサ27、クランク角センサ29、点火時期制御装置31が接続されており、これらの各機器からの信号(センサ信号等)が入力ポートに入力する。
一方、内燃機関用制御装置37の出力ポート(図示せず)には、燃料噴射弁17、点火時期制御装置31が接続されており、これらの機器に対して、内燃機関用制御装置37から、各機器の動作を制御するための制御信号が出力される。
b)次に、本実施例の点火時期制御装置31について説明する。
図2に示す様に、本実施例の点火時期制御装置31は、ノッキング検出装置41と点火時期調整装置43とが、接続ケーブル45を介して、電気的及び機械的に分離不可能に一体に構成されたものである。
<ノッキング検出装置41>
ノッキング検出装置41は、周知の圧電素子65を用いた非共振型ノッキングセンサであり、主体金具47の軸孔47aに取付用ボルト(図示せず)が挿入される構造を有し、取付用ボルトによってエンジン本体3のシリンダブロック49(図1参照)に固定されるものである。
詳しくは、ノッキング検出装置41は、ほぼ全体が樹脂成形体51によってモールドさており、略円筒形状の本体部53と本体部53の側面から突出する略直方体形状のコネクタ部55とを備えている。
このうち、本体部53は、円筒形状の筒状部57とその一端側(図2(b)の下方)に設けられた環状の鍔部59とからなる前記主体金具47を有している。筒状部57には、鍔部59側から、環状の第1絶縁板61、環状の第1電極板63、環状の圧電素子65、環状の第2電極板67、環状の第2絶縁板69、環状のウエイト71、環状の皿バネ73、環状のナット75が配置されている。また、第1電極板63と第2電極板67とには、両電極板63、67間に発生した出力信号を取り出すための第1出力端子81と第2出力端子83とが、それぞれ接続されている。
<点火時期調整装置43>
点火時期調整装置43は、点火時期を調節する制御装置であり、前記内燃機関用制御装置37と同様に、周知のRAM、ROM、CPU等を有するマイコン(図示せず)を備えた電子制御装置である。
なお、この点火時期調整装置43には、ノッキングが発生した場合などに応じて点火時期を調整するマイコンとは別に、後に詳述するように、ノッキング検出装置41や点火時期調整装置43自身の異常を検知するために、自己故障診断(OBD:On-board diagnostics)システム44(図4参照)が設けられている。
<接続ケーブル45等>
接続ケーブル45は、内部に第1出力端子81と第2出力端子83とに接続された各電気配線(図示せず)が設けられているケーブルであり、この接続ケーブル45の両端には、両電気配線と接続された第1コネクタ85と第2コネクタ87とが設けられている。
つまり、第1コネクタ85は、ノッキング検出装置41のコネクタ部55の開口部55aに嵌め込まれるとともに、各電気配線が第1、第2出力端子81、83に接続されている。また、第2コネクタ87は、点火時期調整装置43の凹状のコネクタ部89に嵌め込まれるとともに、各電気配線が、点火時期調整装置43内の内部配線(図示せず)と接続されている。
本実施例では、接続ケーブル45の第1コネクタ85は、ノッキング検出装置41のコネクタ部55に嵌め込まれるとともに、接着剤によって固定されて分離不可能に一体に構成されている。同様に、接続ケーブル45の第2コネクタ87は、点火時期調整装置43のコネクタ部89に嵌め込まれるとともに、接着剤によって固定されて分離不可能に一体に構成されている。
c)次に、点火時期制御装置31に関する電気的構成などについて説明する。
図3(a)に示す様に、点火時期制御装置31の点火時期調整装置43は、バッテリ91から電力の供給を受けて作動するものである。よって、点火時期調整装置43には、図3(b)に示すように、バッテリ91からの電力を受けるための一対の電源端子93、95が設けられている。
また、点火時期調整装置43は、1組のリード線(信号線)97、99を介して、内燃機関用制御装置37と着脱可能に接続されている。なお、リード線97、99は、点火時期調整装置43及び内燃機関用制御装置37の両方に対して着脱可能とされている。
点火時期調整装置43には、後述する点火信号(基準点火信号:A)を、内燃機関用制御装置37から受信するための受信用端子101を備えており、この受信用端子101に前記リード線97が接続される。
同様に、点火時期調整装置43には、点火時期調整装置43から内燃機関用制御装置37に対して、詳述は省略するが、ノッキング検出装置41又は点火時期調整装置43の故障(異常)を示す信号を出力する出力用端子103を備えており、この出力用端子103に前記リード線103が接続される。なお、この出力用端子103は省略してもよい。
更に、点火時期調整装置43は、1本のリード線105を介して、イグナイタ33と接続されており、この点火時期調整装置43には、イグナイタ33に対して点火コイル35を作動させるため信号、即ち、後述する(調整後の)点火信号(補正点火信号:B)を出力するための点火用端子107が設けられている。
詳しくは、図4に示す様に、点火コイル35は、一次巻線35aと二次巻線35bとを備えており、一次巻線35aの一端には、バッテリ91の正極が接続され、他端には、(イグナイタ33の)npn型のパワートランジスタ33aのコレクタが接続されている。このパワートランジスタ33aは、一次巻線35aへの通電・非通電を切り替えるスイッチング素子である。なお、パワートランジスタ33aのエミッタは、バッテリ91の負極と同電位のグランドに接地されている。
一方、二次巻線35bの一端は、バッテリ91の負極と同電位のグランドに接地され、他端は、点火プラグ25の中心電極25aに接続されている。なお、点火プラグ25の接地電極25bは、バッテリ91の負極と同電位のグランドに接地されている。
また、本実施例では、内燃機関用制御装置37と点火時期調整装置43とが接続され、この点火時期調整装置43から、パワートランジスタ33aのベースに対して補正点火信号(B)が出力され、この補正点火信号(B)に基づいて、パワートランジスタ33aがスイッチング動作を行って、点火コイル35の一次巻線35aへの通電・非通電が切り替えられる。
更に、点火時期調整装置43は、通常の点火時期を調整するCPU等を備えたマイコンとは別に、ノッキング検出装置41や点火時期調整装置43自身の異常の有無を診断する(電子制御装置である)OBDシステム44を備える。なお、このOBDシステム44は、異常の有無の診断等を行うために図示しないCPU等を備えている。
詳しくは、このOBDシステム44は、点火時期調整装置43に対して、その短絡異常、断線異常、演算値の異常などの有無を診断するとともに、ノッキング検出装置41に対して、その短絡異常、断線異常などの異常(電気的異常)の有無を診断する。即ち、ノッキングの検出に影響を与える可能性のある異常の有無などを診断する。
なお、OBDシステム44による異常の有無の診断方法としては、後に詳述するが、例えば、公知の手法(例えば、特開昭58−011824号公報、特開平7−305649号公報などに記載の手法)なども採用ができる。
また、点火時期調整装置43は、OBDシステム44での診断により検出された異常状態に関する情報を記憶する異常情報記憶メモリ46を備える。
異常情報記憶メモリ46は、異常発生の有無(例えば異常検知フラグIKFの値)、検出した異常の種類(短絡異常、断線異常、演算値の異常など)、異常の発生箇所(点火時期調整装置43、ノッキング検出装置41)、異常検出日時などの情報を記憶する。
特に本実施例1では、後述するように、異常発生を示すフラグ(異常検知フラグIKF)が設定されており、異常が検出されない場合には、異常検知フラグIKFの値が0に設定されているが、異常が検出されると(詳しくは後述するように異常が確定されると)、異常検知フラグIKFの値が1に変更される。なお、この異常検知フラグIKFの値が、異常情報記憶メモリ46に記憶される。
異常情報記憶メモリ46は、不揮発性の記憶媒体で構成されており、点火時期調整装置43が停止された後も、異常状態に関する情報を記憶することが可能である。
d)次に、上述した点火時期制御装置31を用いた点火時期制御の動作について説明する。
内燃機関用制御装置37では、例えばエンジン回転数や吸入空気量などに基づいて、点火時期の基準となる基準点火時期を決定する。
本実施例では、図5に示すように、基準点火時期(基準点火信号タイミング)は、従来のような最大進角値よりも十分にマージンをとって遅角させた点火時期ではなく、例えばトルクが最大となる点火時期に対応した最大進角値を示すものである。
ここで最大進角値としては、例えばエンジン1の点火時期として最適化され、かつ、運転性能に影響を与えない点火時期(例えばMBT)を採用できる。
また、前記基準点火時期を示す信号が、基準点火信号(A:図6(a)の上図参照)である。そして、この基準点火信号(A)が、内燃機関用制御装置37から点火時期調整装置43に出力される。
基準点火信号(A)を受信する点火時期調整装置43では、ノッキング検出装置41にからの信号(ノッキング信号)を受信し、そのノッキング信号に基づいて、ノッキングの発生の有無を検出する。例えば、ノッキング信号のピーク値の大きさに基づいて、ノッキングの有無を判定する。
そして、点火時期調整装置43では、ノッキングの発生状態等に応じて、点火時期を調整(補正)して、補正点火時期を決定する。なお、この補正点火時期を示す信号が、補正点火信号(B:図6(a)の下図参照)である。
具体的には、前記図5に示す様に、所定期間毎(各燃焼サイクル毎)に、ノッキングが発生したか否かを判定し、ノッキングが発生したと判定された場合には、所定期間毎に、点火時期を最大遅角量(例えば最大進角値に対して+5°)に至るまで、所定の遅角量(例えば+1°)ずつ徐々に遅角させる。即ち、補正点火信号タイミングを示す補正点火信号(B)を設定する。
詳しくは、図6に示すように、今回の基準点火信号(A)が出力(オンからオフ)されたから次回の(直後に到来する)基準点火信号(A)の入力(オフからオン)までの間に、ノッキング信号を検出し(後述するノック検知ウィンドウKNWを設定して検出し)、そのノッキング信号に基づいてノッキングが発生した否かを判定し、その判定結果を当該次回の基準点火信号(A)の補正に使用する。
具体的には、図6(b)の右端に示すように、ノッキングが発生している場合、即ち、後述するノック検知フラグKNSが1の場合には、(前記次回の燃焼サイクルにおける)基準点火信号(A)を所定量遅角させて(当該次回の燃焼サイクルにおける)補正基準点火信号(B)を設定する。
これによって、同じ次回の燃焼サイクルについて、基準点火信号(A)に対して、所定の遅角量だけ遅角された補正点火時期を示す補正点火信号(B)が設定される。
一方、ノッキングが発生していないと判定された場合には、前記図5に示すように、点火時期を基準点火時期(即ち最大進角値に対応する最大進角点火時期)に一気に戻すように、補正点火時期を設定する。
従って、点火時期の調整は、常に最大進角値を基準として遅角側の領域(最大進角値を含む領域)で行われるので、補正点火時期を基準点火時期より進角側に調整させることはない。
なお、エンジン起動時や加速時等の運転過渡期といった場合などにおいて、エンジン回転数の変動が所定以上に大きな場合(例えば上述した基準点火時期の設定でも好適に制御しにくいような場合)には、前記点火時期を補正する処理は行わないように設定することができる。
特に、本実施例1では、図7に示すように、ノッキング検出装置41や点火時期調整装置43に異常(電気的異常)が発生した場合には、詳しくは、ノッキングを検出できないような異常が発生した場合には、点火時期を、(固定量である)所定の遅角量だけ遅角させた補正点火時期に設定する。詳しくは、補正点火時期として、基準点火時期から最大遅角量だけ遅角させた点火時期(即ち最大遅角値に対応する最大遅角点火時期)に設定する。
つまり、ノッキング検出装置41や点火時期調整装置43の異常が検出された場合には、異常が検出される前に設定された前回の(即ち直前の)点火時期が、基準点火時期であっても補正点火時期であっても、補正点火時期を最大遅角量に対応した最大遅角点火時期に設定する。
その後は、ノッキングの発生の有無にかかわらず、この補正点火時期を維持する。なお、異常が解消した場合には、点火時期を初期値の基準点火時期に戻してもよい。
そして、上述のように補正点火時期が決定されると、前記図4に示す様に、点火時期調整装置43から、イグナイタ33に対して、補正点火信号(B)が出力される。
イグナイタ33では、パワートランジスタ33aのベースに、補正点火信号(B)が与えられると、この補正点火信号(B)のオン・オフに応じてスイッチング動作が行われる。
詳しくは、補正点火信号(B)がオフ(ローレベル:一般にグランド電位)である場合には、ベース電流が流れずパワートランジスタ33aはオフ状態(遮断状態)となり、一次巻線35aに電流(一次電流i1)が流れることはない。また、補正点火信号(B)がオン(ハイレベル:点火時期調整装置43からの正の電圧が供給される状態)である場合には、ベース電流が流れてパワートランジスタ33aはオン状態(通電状態)となり、一次巻線35aに電流(一次電流i1)が流れる。この一次巻線35aへの通電により、点火コイル35に磁束エネルギーが蓄積される。
また、補正点火信号(B)がハイレベルであり一次巻線35aに一次電流i1が流れている状態で、補正点火信号(B)がローレベルになると、パワートランジスタ33aがオフ状態となり、一次巻線35aへの一次電流i1の通電が遮断(停止)される。すると、点火コイル35における磁束密度が急激に変化して、二次巻線35bに点火用電圧が発生し、これが点火プラグ25に印加されることで、点火プラグ25の中心電極25aと接地電極25bとの間に火花放電が発生する。このときに二次巻線35bに流れる電流が二次電流i2である。
なお、上述した基準点火信号(A)及び補正点火信号(B)には、ローレベルからハイレベルになるタイミングと、ハイレベルからローレベルになるタイミングとの情報が含まれている。このうち、ハイレベルからローレベルになるタイミングは、所望の点火時期(発火する時期)である。また、ハイレベルの期間は、必要な磁束エネルギーが蓄積されるように所定の期間が設定される。
d)次に、点火時期調整装置43にて行われる処理について説明する。
<補正点火時期算出処理>
本処理は、最大進角値に対応した基準点火時期に基づいて補正点火時期を算出するとともに、基準点火時期を示す基準点火信号(A)を利用してエンジン回転数を算出する処理である。
図8のフローチャートに示す様に、ステップ(S)100では、タイマー記憶変数Nをリセット(0に設定)する。
続くステップ110では、回転数格納/ノックウィンドウ(Window)変数Sをリセットする。この回転数格納/ノックウィンドウ変数Sとは、ステップ260にてエンジン回転数を順次記憶させていったときの時系列を示す変数、かつ、ステップ270にてノッキングを検出するクランク角ウィンドウの値を順次記憶させていったときの時系列を示す変数である。
続くステップ120では、タイマーTの初期値T(0)を0に設定する。
続くステップ130では、ノック検知ウィンドウKNWの初期値KNW(0)を0に設定する。このノック検知ウィンドウKNWとは、ノッキングの発生する可能性のある領域(所定の回転角の区間)を示すものであり、点火時期を起点に設定される特定の期間に相当し、ノッキング信号の解析区間に相当するものである。
続くステップ140では、内燃機関用制御装置37から受信した基準点火信号(A)に基づいて、基準点火時期(入力点火時期)TIGINを補正点火時期TIGとして設定する。なお、ここでの補正点火時期TIGの値は、まだ補正が行われていない値である。
続くステップ150では、点火信号間隔測定タイマーT1をリセットする。
続くステップ160では、基準点火信号(A)が入力したか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ170に進み、一方否定判断されると待機する。
ステップ170では、基準点火信号(A)が入力してからの時間を計測するために、点火信号間隔測定タイマーT1をスタートする。
続くステップ180では、再度基準点火信号(A)が入力したか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ190に進み、否定判断されると待機する。
ステップ190では、基準点火信号(A)が入力したので、前記タイマー記憶変数Nをカウントアップする。
続くステップ200では、今回(N回目)、基準点火信号(A)が入力した時間を、タイマーT(N)として記憶する。即ち、点火信号間隔測定タイマーT1の計数値を、タイマーT(N)の値として記憶する。
ステップ210では、補正点火時期TIGに基づいて、点火時期を調整する。即ち、後述するステップ330、350、360等の処理によって算出した補正点火時期TIGを、実際の点火時期として設定する。
続くステップ220では、前記ステップ210にて設定された点火時期にて、イグナイタ33に対して、点火信号(即ち補正点火信号(B))が出力される。これによって、点火動作(点火プラグ25における火花放電)が行われる。
続くステップ230では、今回(N回目)、基準点火信号(A)が入力した時間(T(N))と、前回(N−1回目)、基準点火信号(A)が入力した時間(T(N−1))との差ΔT(N)を求める。即ち、連続する基準点火信号(A)の間の時間を求める。
続くステップ240では、「2回転×60sec/ΔT(N)」の演算(4サイクルエンジンにて1点火/2回転の場合)によって、エンジン回転数(rpm)を算出する。
続くステップ250では、回転数格納/ノックウィンドウ変数Sをカウントアップする。
続くステップ260では、前記ステップ240で求めたエンジン回転数、即ち、回転数格納/ノックウィンドウ変数Sに対応したエンジン回転数を、RPN(S)として格納(記憶)する。
続くステップ270では、ノック検知ウィンドウKNW(S)の演算を行う。即ち、回転数格納/ノックウィンドウ変数Sに対応したノック検知ウィンドウKNW(S)の演算を、公知の演算手法によって行って、その値を記憶する。
続くステップ280では、回転数格納/ノックウィンドウ変数Sが2を上回るか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ290に進み、一方否定判断されると前記ステップ180に戻る。
ステップ290では、後述するノッキング検出処理を行って、ノッキングを検出(ノッキングが発生しているか否かを判定)する。
続くステップ300では、エンジン回転数の「RPNS(S)/RPNS(S−1)」の演算、即ち、今回(S回目)のエンジン回転数RPNS(S)を前回(S−1回目)のエンジン回転数RPNS(S−1)で割ることにより、エンジン回転数の変動の大きさを示すエンジン回転数の偏差(回転数偏差)ΔRPNを算出する。
続くステップ310では、ノッキング検出装置41や点火時期調整装置43に異常が発生しているか否かを、後述する異常検出処理にて設定される異常検知フラグIKFが1であるか否かによって判定する。ここで肯定判断されるとステップ365に進み、一方否定判断されるとステップ315に進む。
ステップ315では、回転数偏差ΔRPNが所定の判定値RPNsを下回るか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ320に進み、一方否定判断されるとステップ330に進む。
ステップ330では、回転数偏差ΔRPNが大きく、点火時期を進角させることは適当ではないので、基準点火時期TIGINそのものを補正点火時期TIGとして設定し、前記ステップ180に戻る。
一方、ステップ320では、ノッキングが発生しているか否かを、後述するノッキング検出処理にて設定されるノック検知フラグKNSが1であるか否かによって判定する。ここで肯定判断されるとステップ340に進み、一方否定判断されるとステップ330に進む。
ステップ330では、ノッキングが発生していないので、基準点火時期TIGINそのものを補正点火時期TIGとして設定し、前記ステップ180に戻る。
一方、ステップ340では、ノッキングが発生しているので、点火時期(補正点火時期TIG)が最大遅角値TIGMか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ360に進み、一方否定判断されるとステップ350に進む。
なお、最大遅角値TIGMとは、上述したように、最大進角値に対して最も大きな遅角量(最大遅角量)分(例えば+5°)遅角させた値である。
ステップ360では、補正点火時期TIGが最大遅角値TIGMであるので、その最大遅角値TIGMの値を補正点火時期TIGの値として設定し、前記ステップ180に戻る。
一方、ステップ350では、補正点火時期TIGが最大遅角値TIGMではないので、即ち更に遅角させる余裕があるので、点火時期を所定値ΔTIG分(例えば+1°)遅角させる。具体的には、補正点火時期TIGに所定値(補正遅角値)ΔTIGを加えて、今回の補正点火時期TIGとして設定し、前記ステップ180に戻る。
また、前記ステップ310にて肯定判断されて進むステップ365では、ノッキング検出装置41や点火時期調整装置43に異常(電気的異常)が発生しているので、即ち、ノッキングを検出できない可能性があるので、ノッキングの発生を確実に抑制するために、最大遅角値TIGMを補正点火時期TIGとして設定し、前記ステップ180に戻る。
従って、この様な処理によって、前記図5に示すように、ノッキングが検出された場合には、点火時期を、各ノッキング検出毎に徐々に遅角させることができ、ノッキングが検出されない場合には、一気に最大進角値に戻す(換言すれば、一気に基準点火時期TIGINに設定する)ことができる。
また、前記図7に示すように、ノッキング検出装置41や点火時期調整装置43に異常が発生した場合には、ノッキングが発生しないように、点火時期を一気に最大遅角値に設定することができる。
<ノッキング検出処理>
本処理は、ノッキング信号に基づいて、ノッキングを検出する処理である。本処理は所定期間毎に実施される。
図9に示す様に、ステップ400にて、ノック検知フラグKNSをクリア(0に設定)する。
続くステップ410では、点火時期か否か(点火信号がハイレベルからローレベルになるタイミングであるか否か)を判定する。ここで肯定判断されるとステップ420に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
ステップ420では、ノック検知ウィンドウ測定タイマーをスタートする。
続くステップ430では、ステップ250にて演算したノック検知ウィンドウKNWに対応する期間内にあるか否か(換言すれば、ノック検知ウィンドウKNW内であるか否か)をノックウィンドウ測定タイマーの値に基づき判定する。ここで肯定判断されるとステップ440に進み、一方否定判断されると前記ステップ430に戻って同様な処理を繰り返す。
ステップ440では、ノッキング検出装置41から得られたノッキング信号Kninが有効であると設定する。
続くステップ450では、ステップ250にて演算したノック検知ウィンドウKNWに対応する期間が経過したか否か(換言すれば、ノック検知ウィンドウKNW外であるか否か)をノックウィンドウ測定タイマーの値に基づき判定する。ここで肯定判断されるとステップ460に進み、一方否定判断されると前記ステップ440に戻って同様な処理を繰り返す。
ステップ460では、ノックウォンドウ測定タイマーをリセットする。
続くステップ470では、ノッキング信号Kninのピーク値KninPkを算出する。
続くステップ480では、ノッキング信号Kninのピーク値KninPkが、ノッキングの有無を判定する所定の判定値Thを上回るか否か、即ち、ノッキングが発生したか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ490に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
ステップ490では、ノッキングが発生しているので、そのことを示すノック検知フラグKNSをセット(1に設定)し、本処理を終了する。
<異常検出処理>
本処理は、ノッキング検出装置41や点火時期調整装置43の異常(電気的異常)を検出する処理であり、OBDシステム44にて実施される。本処理は所定期間(例えば5ms)毎に実施される。
図10に示す様に、ステップ600では、異常検知フラグIKFが0であるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ610に進み、一方否定判断されるとステップ630に進む。
続くステップ610では、ノッキング検出装置41及び点火時期調整装置43の少なくとも一方に、ノッキングの検知に支障を与えるような異常が発生しているか否かを判定する。なお、異常判定の手法については、後に詳述する。ここで肯定判断されるとステップ620に進み、一方否定判断されるとステップ630に進む。
ステップ630では、異常が発生していないので、即ち、異常が継続していないので、判定回数をクリア(0に設定)し、一旦本処理を終了する。
一方、ステップ620では、異常が発生したので、判定回数を係数するカウンタ(判定回数)をカウントアップする。即ち判定回数に1を加算する。
続くステップ640では、判定回数が所定の判定回数閾値を上回ったか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ650に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
ステップ650では、異常が一度ではなく、何度も継続して異常が検出されたので、異常の発生が確実であるとして、異常検知フラグIKFを1に設定して、一旦本処理を終了する。
つまり、本異常検出処理を、所定期間毎に繰り返して実施することにより、異常が(判定回数閾値を上回る)複数回検出された場合には、異常が発生したことを確定するのである。
<異常検出の手法>
次に、上述した異常検出処理に用いられる異常判定の手法について説明する。
なお、異常検出の手法としては、下記の手法を単独で使用できる。
・図11(a)に示すように、ノッキング検出装置41からの出力波形(センサ出力)が、バッテリショートを示す閾値より上回った場合には、異常が発生した(バッテリショートが発生した)と判定する。
・図11(a)に示すように、ノッキング検出装置41からの出力波形が、GNDショートを示す閾値より下回った場合には、異常が発生した(GNDショートが発生した)と判定する。
・図11(b)に示すように、ノッキング検出装置41からの出力波形の振幅(ピーク)が、ノッキング検出装置41(センサ)の断線・ショートを示す閾値より小さい場合、即ち、センサ出力のピークが閾値の幅の内側にある場合には、異常が発生した(センサ 断線・ショートが発生した)と判定する。
・前記図8のステップ230に示す演算値(ΔT)が、所定の正常な範囲内で無い場合は、点火時期調整装置43に異常が発生したと判定する。
・前記図8のステップ240に示す演算値(2*60/ΔT)であるエンジン回転数RPNが、所定の正常な範囲内で無い場合は、点火時期調整装置43に異常が発生したと判定する。例えば、エンジン回転数RPNが12000rpm以下に設定されているエンジン1において、それを上回るエンジン回転数RPNが検出された場合には、異常が発生したと判定する。
・その他、各種の演算値が、正常な範囲内でない場合に、異常が発生したと判定してもよい。
e)次に、本実施例の効果を説明する。
本実施例1の点火時期制御装置31では、ノッキング検出装置41と点火時期調整装置43とが、接続ケーブル45を介して、電気的に接続されているとともに一体に構成されており、しかも、点火時期調整装置43に対して、ノッキング検出装置41からノッキング信号が入力されるとともに、外部の内燃機関用制御装置37から(最大進角値に対応した)基準点火信号(A)が入力される。
特に、本実施例1では、ノッキング検出装置41及び点火時期調整装置43のうち少なくとも一方の異常状態を検出した場合には、点火時期調整装置43にて調整する点火時期を、異常を検出する前に設定された前回の(即ち異常検出の直前の)点火時期より遅角側に制御するので、ノッキングの発生を好適に抑制できる。
つまり、ノッキング検出装置41や点火時期調整装置43を含む点火時期制御装置31に、異常が発生した場合には、実際にノッキングが発生してもノッキングを検出することができず、そのため、ノッキングを抑制するような点火時期の制御を行えない恐れがあるが、本実施例1では、点火時期制御装置31に異常が発生した場合には、安全を見込んで、異常を検出する前に設定された前回の点火時期(即ち異常発生の検出の直前に設定された点火時期)を遅角側に制御するので、ノッキングの発生を効果的に防止することができる。
しかも、遅角側に制御する際には、点火時期を最大遅角値に一気に遅角させるので、ノッキングの発生を速やかに抑制することができるという利点がある。
なお、点火時期制御装置31の異常発生時に、異常を検出する前に設定された前回の点火時期が最大遅角値である場合には、これ以上の遅角ができないため、最大遅角値を維持させる点火時期の制御を行うことになる。
その結果、点火時期制御装置31(詳しくはノッキング検出装置41)がノッキングを検出できない状態でもあっても、エンジン1の損傷を防ぐことができる。また、点火時期制御装置31に異常が発生した場合でも、エンジン1は停止せずに、運転を継続することが可能である。
また、本実施例1では、内燃機関用制御装置37から得られる基準点火時期に対して、ノッキングの検出がある場合には、最大進角値を基準にして遅角側の領域にて点火時期を遅角させることによって、点火時期調整装置43からイグナイタ33に送る補正点火信号(B)のタイミングを、(1周期待つことなく)速やかに調節でき、点火時期調整装置43から出力する信号を速やかに調整できる。
これによって、例えばドライバビリティや点火性能など車両の性能を向上させることができるという効果を奏する。
次に実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容については説明を省略する。
本実施例2のハード構成は、前記実施例1と同様であり、その制御内容が異なるので、制御内容について説明する。なお、実施例1と同様なハード構成には同じ番号を付す。
本実施例2では、基本的な動作として、図12(a)に示すように、ノッキングが検出されない場合には、最大遅角量(従って最大遅角値)に対応した基準点火時期から、点火時期(補正点火時期)を徐々に進角させ、ノッキング検出されると、一気に基準点火時期に戻す制御を行う。
特に本実施例2では、図12(b)に示すように、ノッキング検出装置41や点火時期調整装置43に異常が検出された場合には、点火時期(補正点火時期)を最大遅角値に対応した基準点火時期に一気に戻す制御を行う。
次に、本実施例2における制御処理について説明する。
図13のフローチャートに示すように、本実施例2では、ステップ700〜800及びステップ810〜880では、それぞれ前記実施例1のステップ100〜200及びステップ210〜300と同様な処理を行うので、その説明は省略する。
なお、本実施例2では、前記実施例1のステップ210、220の処理は行わない。
そして、ステップ890では、ノッキング検出装置41又は点火時期調整装置43に異常が発生しているか否かを、上述した異常検出処理にて設定される異常検知フラグIKFが1であるか否かによって判定する。ここで肯定判断されるとステップ925に進み、一方否定判断されるとステップ895に進む。
ステップ895では、回転数偏差ΔRPNが所定の判定値RPNsを下回るか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ900に進み、一方否定判断されるとステップ910に進む。
ステップ910では、回転数偏差ΔRPNが大きく、点火時期を進角させることは適当ではないので、基準点火時期TIGINそのものを補正点火時期TIGとして設定し、前記ステップ780に戻る。
一方、ステップ900では、ノッキングが発生しているか否かを、上述したノッキング検出処理にて設定されるノック検知フラグKNSが1であるか否かによって判定する。ここで肯定判断されるとステップ920に進み、一方否定判断されるとステップ930に進む。
ステップ920では、ノッキングが発生しているので、点火時期(補正点火時期TIG)を最大遅角値TIGMである基準点火時期TIGINに設定し、前記ステップ780に進む。
一方、ステップ930では、ノッキングが発生していないので、点火時期(補正点火時期TIG)が最大進角値TIGAMか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ940に進み、一方否定判断されるとステップ950に進む。
ステップ940では、補正点火時期TIGが最大進角値TIGAMであるので、その最大進角値TIGAMの値を補正点火時期TIGの値として設定し、前記ステップ780に戻る。
一方、ステップ950では、補正点火時期TIGが最大進角値TIGAMではないので、即ち更に進角させる余裕があるので、点火時期を所定値ΔTIG分進角させる。具体的には、補正点火時期TIGから所定値(補正進角値)ΔTIGを引いて、今回の補正点火時期TIGとして設定し、前記ステップ780に戻る。
また、前記ステップ890にて肯定判断されて進むステップ925では、ノッキング検出装置41や点火時期調整装置43に異常が発生しているので、即ち、ノッキングを検出できない可能性があるので、ノッキングの発生を確実に抑制するために、最大遅角値TIGMである基準点火信号TIGINを補正点火時期TIGとして設定し、前記ステップ780に戻る。
従って、本実施例2では、上述した制御処理によって、前記実施例1と同様な効果を奏する。
[特許請求の範囲と実施例との対応関係]
前記異常検出部は、点火時期調整装置に配置されたOBDシステムによって実現でき、前記制御部は、点火時期調整装置にて点火時期を調整するCPU等によって実現できる。
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば、前記実施例1のように、異常が検出された場合に、最大遅角量に対応した点火時期(最大遅角点火時期)に設定する方法以外に、異常検出の直前の点火時期を、所定量(例えば最大遅角量より小さな固定値)だけ遅角させる制御を行ってもよい。この場合は、基準点火時期から最大遅角点火時期の範囲以内に補正点火時期が設定されることになる。
(2)また、前記実施例1では、基本となる制御として、ノッキングが検出された場合には、点火時期を所定量ずつ遅角させ、ノッキングが検出されない場合には、基準点火時期に戻す制御を行ったが、それとは別に、例えば、ノッキングが検出された場合には、点火時期を一気に最大遅角値に制御し、その後、ノッキングが検出されない場合には、所定量ずつ進角させるように制御してもよい。
つまり、実施例1の変形例(基本的な制御の変形例)として、点火時期を(基準点火時期に対して)遅角側にて制御するものであれば、各種の方法を採用できる。
(3)更に、ノッキング検出装置は、非共振型センサに限らず、共振型センサを使用でき、ノッキングを検出できれば、その種類に限定されない。
(4)また、ノッキングを検出する方法についても、ノッキング信号のピークから検出する方法に限らず、周知のノッキング信号に対するFFT、積分値を利用した方法など、ノッキングを検出できれば、その種類に限定されない。
(5)更に、本発明は、2サイクルのエンジンに適用することもできる。
(6)なお、本発明の外部の電子制御装置としては、マイコンによって各種の制御を行う装置が挙げられる。また、点火時期制御装置とは別体に(着脱可能なリード線等を介して)設けられて内燃機関の動作を制御する内燃機関用制御装置が挙げられる。
1…内燃機関(エンジン)
3…エンジン本体
25…点火プラグ
31…点火時期制御装置
33…イグナイタ
35…点火コイル
37…内燃機関用制御装置
41…ノッキング検出装置
43…点火時期調整装置
44…OBDシステム

Claims (2)

  1. 内燃機関のノッキングを検出するノッキング検出装置と、
    前記ノッキング検出装置から得られる前記ノッキングの状態を示すノッキング信号と、外部の電子制御装置から得られる前記内燃機関の点火時期に関する外部点火信号と、に基づいて、前記内燃機関の点火時期を調整する点火時期調整装置と、
    を備えた点火時期制御装置であって、
    前記ノッキング検出装置及び前記点火時期調整装置のうち少なくとも一方について、ノッキングを検出できない可能性がある異常を検出する異常検出部と、
    前記異常検出部によって、前記異常を検出した場合には、前記点火時期調整装置にて調整する点火時期を、前記異常を検出する前に設定された前回の点火時期より遅角側に制御する制御部と、
    を備えており、
    さらに、前記制御部は、前記異常検出部によって、前記異常を検出した場合には、前記点火時期調整装置にて調整する点火時期を、前記外部点火信号が示す基準点火時期を基準として遅角側の領域内にて制御するとともに、前記基準点火時期から最大遅角量だけ遅角させた点火時期に設定すること特徴とする点火時期制御装置。
  2. 前記請求項1に記載の点火時期制御装置と前記外部の電子制御装置とを備えたことを特徴とする点火時期制御システム。
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