JP6384672B2 - 窒化物熱電変換材料及びその製造方法並びに熱電変換素子 - Google Patents
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これらの熱電材料について、熱電性能向上のために、ゼーベック係数の絶対値および電気伝導率が大きく(電気抵抗率が小さく)、さらに熱伝導率が小さい材料が望まれている。
また、特許文献2では、一般式:AlzGayInxMuRvDwNs(式中、Mは遷移元素、Rは希土類元素及びDは第IV族または第II族元素からそれぞれ選ばれる少なくとも一種の元素であり、0≦z≦0.7、0≦y≦0.7、0.2≦x≦1.0、0≦u≦0.7、0≦v≦0.05、0≦w≦0.2及び0.9≦s≦1.1の範囲であって、かつx+y+z=1である。)で表され、100℃以上の温度におけるゼーベック係数の絶対値が50μV/K以上、電気抵抗率が10−3Ωm以下である窒化物熱電変換材料が記載されている。
すなわち、上記熱電材料で室温において性能が良いものとしてBiSbTe系が知られている。しかしながら、このBiSbTe系は、Bi、Sb、Teといった有害元素を含むと共に、結晶構造が層状化合物であるために、フィルム上へスパッタリングによる薄膜形成が困難であった。薄膜を形成する場合、BiSbTe系インクを作製して印刷するプリンテッド素子にする方法があるが、性能を上げるためには、熱処理が必要であり、フィルム等に直接形成することが容易でなかった。また、有機材料による熱電材料では、p型の熱電特性がほとんどであり、n型の良好な性能を有する材料は報告されていない。さらに、窒化物系の熱電材料では、上記のようなAlN系、TiN系、CaN系が知られているが、いずれもバルク体であり、熱電性能が低いという問題があった。
すなわち、この窒化物熱電変換材料では、膜の表面に対して垂直方向に延在している柱状結晶であるので、膜の結晶性が高く、高い耐熱性が得られる。
すなわち、この窒化物熱電変換材料では、柱状結晶の結晶径が、100nm以下であるので、ナノスケールの結晶サイズ化により、フォノン(格子)による熱が伝わり難くなることで、比較的粒子サイズの大きい(100nm以上)バルク焼結体材料に比べて面内方向の熱伝導率が小さくなり、熱電薄膜の面内の温度差をより大きくすることができる。したがって、熱起電力が大きくなり、熱電性能を向上させることが可能となる。また、材料自体のフレキシブル性も得ることができる。なお、複数の材料系において理論計算より100nmのカットオフ平均自由工程時の累積熱伝導率が半減している結果が得られている。そのため、熱電変換材料において、粒子径を100nm以下にすることで、熱伝導率を効果的に低減することが可能となる。
すなわち、この熱電変換素子では、n型の薄膜熱電変換部が、第1から第3の発明のいずれかの窒化物熱電変換材料で形成されているので、室温でゼーベック係数の絶対値が大きいn型の薄膜熱電変換部により、良好な性能を有するペルチェ素子、ゼーベック素子又はサーモパイル等とすることができる。
すなわち、この熱電変換素子では、絶縁性基材が、絶縁性フィルムであるので、熱処理なしで形成され絶対値の大きいゼーベック係数を有する薄膜熱電変換部により、樹脂フィルム等の耐熱性の低い絶縁性フィルムを用いることができると共に、薄型で良好な性能を有するフレキシブルな熱電変換素子が得られる。
すなわち、この窒化物熱電変換材料の製造方法では、Wスパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜するので、上記W1−yNyからなる本発明の窒化物熱電変換材料を熱処理なしで成膜することができる。また、メタルマスク法等により、n型半導体材料を配線化することで、熱電性能の優れた素子を作製することが可能である。
さらに、熱伝導率の低い絶縁基板(ガラス、樹脂フィルム)への成膜が可能であり、本発明の窒化物熱電変換材料はフレキシブル性も有するため、樹脂フィルム基板上に成膜することが可能である。
すなわち、この窒化物熱電変換材料の製造方法では、反応性スパッタを、ArとN2との混合ガス雰囲気中で行い、この際のN2ガス分率であるN2/(N2+Ar)を、0.5以上0.8以下の範囲に設定するので、β−W2N型であり、n型の熱電特性を有するW1−yNyの薄膜を形成することができる。
すなわち、本発明に係る窒化物熱電変換材料によれば、一般式:W1−yNy(0.18≦y≦0.33)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、β−W2N型であり、n型の熱電特性を有するので、有害元素を用いないと共に熱処理なしで形成でき、室温で有機材料系よりも絶対値の大きなゼーベック係数を有している。
また、本発明に係る窒化物熱電変換材料の製造方法によれば、Wスパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜するので、上記W1−yNyからなる本発明の窒化物熱電変換材料を熱処理なしで成膜することができる。
さらに、本発明に係る熱電変換素子によれば、n型の薄膜熱電変換部が、第1から第3の発明のいずれかの窒化物熱電変換材料で形成されているので、室温でゼーベック係数の絶対値の大きい薄膜熱電変換部により、良好な性能を有するペルチェ素子、ゼーベック素子又はサーモパイル等とすることができる。
なお、この窒化物熱電変換材料の薄膜は、基板に対して垂直方向へ[111]結晶配向性に優れている。
また、本実施形態では、p型の薄膜熱電変換部3pを有機材料の熱電材料(プリンテッド材料)で形成している。
上記接続電極部4と電極端子部5とは、AgやAg合金等でパターン形成されている。
一対の電極端子部5には、リード線6が接続され、リード線6が電源7に接続されている。
まず、本実施形態の窒化物熱電変換材料の製造方法は、Wスパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜する成膜工程を有している。
この成膜工程では、上記反応性スパッタにおいて、ArとN2との混合ガス雰囲気中で行い、この際のN2ガス分率であるN2/(N2+Ar)を、0.5〜0.8の範囲に設定する。
なお、接続電極部4及び電極端子部5は、メタルマスク法によりパターン形成する。
さらに、柱状結晶の結晶径が、100nm以下であるので、ナノスケールの結晶サイズ化により、フォノン(格子)による熱が伝わり難くなることで、比較的粒子サイズの大きい(100nm以上)バルク焼結体材料に比べて、熱電薄膜の面内方向の熱伝導率が小さくなり、熱電薄膜の面内の温度差をより大きくすることができる。したがって、熱起電力が大きくなり、熱電性能を向上させることが可能となる。また、材料自体のフレキシブル性も得ることができる。
さらに、反応性スパッタを、ArとN2との混合ガス雰囲気中で行い、この際のN2ガス分率であるN2/(N2+Ar)を、0.5以上0.8以下の範囲に設定するので、β−W2N型であり、n型の熱電特性を有するW1−yNyの薄膜を形成することができる。
一部のサンプルは、ポリイミドフィルム基板上へも成膜した。
なお、表1において、本発明の実施例のW1−yNyを簡易的にWNと記載している。
比較例1のBi2Te3のプリンテッド薄膜は以下のようにして用意した。Bi2Te3微粉末をエチレングリコールと分散剤とに混合し、Bi2Te3ペーストを得た。ディスペンサーにより、液晶ポリマー(LCP)基板上に、1ミクロン程度の膜厚をもつBi2Te3を配線化し、乾燥後、N2雰囲気中で、200℃により熱処理した。このサンプルは、フィルムとの密着もとれており、評価後、SEMにてクラックがないことを確認した。
比較例2のW薄膜、および、比較例3のTiN薄膜については、それぞれWターゲット、Tiターゲットを用いて反応性スパッタ法にて成膜した。
さらに、成膜した上記窒化物熱電変換材料の薄膜上に、一対のAg電極をメタルマスク法によりパターン形成して本発明の実施例及び比較例を作製した。
反応性スパッタ法にて得られた窒化物熱電変換材料について、X線光電子分光法(XPS)にて組成分析を行った。
また、窒化物膜中に含まれる酸素についても調べた結果、酸素比O/(W+N+O)が、0<O/(W+N+O)<0.04となり、酸素が不可避不純物として含まれていることがわかる。
しかしながら、熱電特性(ゼーベック係数、電気伝導率)と酸素量とに相関がないことから、酸素は熱電特性に積極的寄与しておらず、本熱電特性は金属窒化物系が主体であると考えられる。
反応性スパッタ法にて得られた窒化物熱電変換材料を、視斜角入射X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction)により、結晶相を同定した。この薄膜X線回折は、微小角X線回折実験であり、管球をCuとし、入射角を1度とすると共に2θ=10〜130度の範囲で測定した。一部のサンプルについては、入射角を0度とし、2θ=10〜100度の範囲で測定した。無アルカリガラス基板を用いた場合、20度以下において、ガラスのハローピークが大きくなったので、薄膜X線回折用として、熱酸化膜付きSi基板(SiO2付きSi基板)を用意し、同じスパッタ条件にて成膜し、上記条件にて測定した。
XRDプロファイルの一例として、実施例2について図2の(a)に示すと共に、実施例4について図2の(b)に示す。実施例4(窒素ガス分圧80%)の方が、実施例2(窒素ガス分圧60%)よりも、[111]結晶配向性に優れていることがわかる。
なお、窒素ガス分圧50%未満のサンプルについては、結晶性が十分でなく、β−W2N型結晶構造をもつWNと同定することができなかった。
なお、グラフ中(*)は装置由来および熱酸化膜付きSi基板由来のピークであり、サンプル本体のピーク、もしくは、不純物相のピークではないことを確認している。入射角を0度として、対称測定を実施し、そのピークが消失していることを確認し、装置由来および熱酸化膜付きSi基板由来のピークであることを確認した。
無アルカリガラス基板上の実施例においても、不純物相は検出されず、β−W2N型であり、 [111]結晶配向性に優れた材料であった。
次に、本発明の実施例及び比較例について、ゼーベック係数S、電気伝導率σ及びpower factor(パワー因子:S2σ)について評価した。なお、ゼーベック係数及び電気伝導率は、室温で測定した。
ゼーベック係数は、市販のペルチェ素子を2個用い、2個のペルチェ素子間で温度差がつくように、一方のペルチェ素子を冷却、他方のペルチェ素子を加熱するように配線し、2〜10℃の温度差をつけて測定した。0.15mmΦのシース熱電対(坂口電熱 T350155 シース材:Pt、シース内充填物:MgO粉末)を使って測定し、シースを電極として熱起電力を測定すると共に、熱電対を使って温度差を測定した。得られた熱起電力と温度差との関係を最小二乗法による直線近似することで、ゼーベック係数を評価した。また、電気伝導率は、Van der Pauw法で測定した。
また、電気伝導率を調べた結果、全ての実施例で100S/cm以上の高い電気伝導率を有していた。特に、実施例1〜4のサンプルについては、1000S/cm以上のきわめて高い電気伝導率を有していた。
これらの結果、本発明の実施例は、いずれも比較的大きなゼーベック係数の絶対値であると共に、良好な電気伝導率を有していた。
次に、窒化物熱電変換材料の断面における結晶形態を示す一例として、実施例2の断面SEM写真を、図3に示す。
これらの実施例のサンプルは、へき開破断したものを用いている。また、45°の角度で傾斜観察した写真である。
なお、写真中の柱状結晶の粒径(結晶径)は、いずれも100nm以下であった。
柱状結晶のアスペクト比を(長さ)÷(粒径)として定義すると、本実施例は5以上の大きいアスペクト比をもっている。柱状結晶の粒径が小さいことにより、膜が緻密となっていると考えられる。
本発明の実施例について、ゼーベック係数の温度依存性について評価した。その結果を、図4に示す。
この結果、本発明の実施例は、100℃の耐熱性を有していることが分かる。ゼーベック係数については、温度上昇ともに、ゼーベック係数の絶対値が増加する傾向がみられた。
また、100℃耐熱性試験後、視斜角入射X線回折を実施したが、酸化物不純物相は検出されなかった。したがって、本熱電特性は金属窒化物系が主体であると考えられる。
Claims (7)
- 一般式:W1−yNy(0.18≦y≦0.33)で示される金属窒化物からなり、
その結晶構造が、β−W2N型であり、n型の熱電特性を有することを特徴とする窒化物熱電変換材料。 - 請求項1に記載の窒化物熱電変換材料において、
膜状に形成され、
前記膜の表面に対して垂直方向に延在している柱状結晶であることを特徴とする窒化物熱電変換材料。 - 請求項2に記載の窒化物熱電変換材料において、
前記柱状結晶の結晶径が、100nm以下であることを特徴とする窒化物熱電変換材料。 - 絶縁性基材と、
該絶縁性基材上に形成されたp型の薄膜熱電変換部及びn型の薄膜熱電変換部と、
前記p型の薄膜熱電変換部と前記n型の薄膜熱電変換部とを接続する接続電極部とを備え、
前記n型の薄膜熱電変換部が、請求項1から3のいずれか一項に記載の窒化物熱電変換材料で形成されていることを特徴とする熱電変換素子。 - 請求項4に記載の熱電変換素子において、
前記絶縁性基材が、絶縁性フィルムであることを特徴とする熱電変換素子。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載の窒化物熱電変換材料を製造する方法であって、
Wスパッタリングターゲットを用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って成膜する成膜工程を有していることを特徴とする窒化物熱電変換材料の製造方法。 - 請求項6に記載の窒化物熱電変換材料の製造方法において、
前記反応性スパッタを、ArとN2との混合ガス雰囲気中で行い、この際のN2ガス分率であるN2/(N2+Ar)を、0.5以上0.8以下の範囲に設定することを特徴とする窒化物熱電変換材料の製造方法。
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