光ファイバクラッドとして使用するための改善された硬化性ポリマー組成物が本明細書で開示される。この組成物は、フッ素化単官能性及びフッ素化多官能性モノマーを含む。硬化組成物は、高い硬度(及び高い弾性係数)と低屈折率(及び高い開口数)を併せ持つという点で、独特な特性の組み合わせを示す。硬化組成物(架橋組成物又はコーティング又はクラッドとも呼ばれる場合がある)は、光ファイバ上により低屈折率のコーティング(他の市販の比較用クラッドと比較した場合)を形成し、そのため、高い硬度(56〜85のショアD)を維持し23℃で300MPaを超える弾性係数を示しながら、光ファイバ(例えば、シリカコアを有するファイバ)に最大で約0.50のより高い開口数(NA)を与える。この組成物は、光ファイバを被覆するのに使用される場合、熱エージング及び高湿度環境中でのエージング、熱サイクル、熱水への浸漬、及びきつく曲げた状態での高出力光への曝露を受けると、耐環境性の改善(他の市販のコーティングを上回る)を示す。
図1Aに図示されるような好ましい実施形態において、架橋組成物は、光ファイバ上に配置される場合、56〜85、好ましくは60〜80、より好ましくは65〜75のショアD硬度を示しながら、0.46を上回る、好ましくは0.47を上回る、より好ましくは0.48を上回る開口数をもたらす。
加えて、この組成物の化学成分は、技術的には、2009年12月30日発行の米国EPAの長鎖ペルフルオロ化化合物(PFC)行動計画によって定義されるようなPFOA類似化合物のカテゴリーから外れる。これは、組成物がトリフルオロカーボン(−CF3)基を含有しないため、及び/又は制限されたカテゴリーから除外される分子鎖長を有するためである。組成物の成分は、シラン含有液体の保存期間を最大化するために低い酸性度を有するように、しかし高湿度環境中でガラスファイバの線引き後の腐食を最小限にするために低い塩基性度も有するように、選択される。例示的な実施形態において(後で詳細に論じる)、フルオロカーボン繰り返し単位の数が6を上回る場合、フッ素化単官能性モノマー及びフッ素化多官能性モノマーの両方ともトリフルオロカーボン(−CF3)基を含有せず、フルオロカーボン繰り返し単位の数が6未満である場合、単官能性モノマー及びフッ素化多官能性モノマーのいずれか又は両方がトリフルオロカーボン(−CF3)基を場合により含有していてもよい。フルオロカーボン繰り返し単位はCF2又はCF部分である。クラッドは具体的には以下のタイプのフッ素化分子:
・CF3(CF2)n−CH=CH2;
・CF3(CF2)n−C(=O)−X(式中、Xは任意の化学部位である);
・CF3(CF2)m−CH2−X(式中、Xは任意の化学部位である);
(式中、n>5又はm>6)
を含まない。
光ファイバ上にクラッドを生成させる架橋反応は、一般に紫外線の使用によって活性化されるフリーラジカル反応であってもよい。架橋反応は、組成物の架橋を行うためのカチオン性重合を用いることによっても引き起こすことができる。本明細書で開示されるフッ素化単官能性モノマー及びフッ素化多官能性モノマーは、照射により活性化されるとフリーラジカル反応を用いて硬化される官能基(エチレン性不飽和官能基、アクリラート官能基、又はメタクリラート官能基など)を有する。しかし、エポキシド官能基又はビニルエーテル官能基などの反応性官能基を有する他のモノマーを、カチオン性重合を使用して架橋させてもよい。フッ素化(メタ)アクリラートのフリーラジカル重合の場合、他の特定のタイプの官能基(チオール及び/又はビニル及び/又はビニルエーテル)を有するフッ素化コモノマーを、限られた量で使用してもよい(この場合、アクリラート及び/又はメタクリラート基の数と比較してそれらのモル分率が0.5未満である)。エポキシド又はビニルエーテルのカチオン性重合の場合、アルコール官能基を含有するフッ素化コモノマーは、限られた量で使用してもよい(やはりこの場合、エポキシド又はビニルエーテル基のモル分率と比較して、それらのモル分率が0.5より大きく下回る)。
フッ素化単官能性モノマーは、架橋組成物内で共有結合されることを可能にする少なくとも1つの反応性基を有するフッ素化種を含む。好ましい実施形態において、フッ素化単官能性モノマーは、コーティングに共有結合されることを可能にする反応性基を1つのみ有するフッ素化種を含む。フッ素化種は、以下の式中の繰り返し単位の数「n」が6以上である場合にはいかなる三官能性フルオロカーボン部分も含まず、nが6未満である場合には場合により三官能性フルオロカーボン部分を含有していてもよい。フッ素化種は、直鎖フッ素化種、環状フッ素化種、分岐フッ素化種、又はそれらの組み合わせを含んでいてもよい。直鎖フッ素化種が好ましい。直鎖フッ素化単官能性モノマーは化学式(1A)
R1−(CF2)n−R2 (1A)
によって表される。
環状フッ素化単官能性モノマーは、化学式(1B)
によって表され、式(1A)又は(1B)において、nが6以上である場合には、R
1はCH
2F又はCHF
2を含むがCF
3を含まない非反応性末端基であり、nが6未満である場合には、R
1はCH
2F、CHF
2、又はCF
3を含む非反応性末端基であり;R
2は、アクリラート、メタクリラート若しくはビニルエーテル官能基などのエチレン性不飽和官能基;エポキシド官能基、ヒドロキシル官能基、ビニルエーテル官能基、又はチオール官能基を含む単官能性反応性基である。単官能性反応性基R
2がアクリラート又はメタクリラート官能基を含む場合、この種は好ましくはフリーラジカル反応によって架橋される。
上記の式(1)において、nは1〜15、好ましくは6〜10である。好ましい実施形態において、R2はエチレン性不飽和官能基、好ましくはアクリラート又はメタクリラート官能基を含む。
好ましい実施形態において、フッ素化単官能性モノマーは、1モル当たり1200グラム未満、好ましくは1モル当たり1000グラム未満、より好ましくは1モル当たり700グラム未満の数平均分子量を有する。フッ素化単官能性モノマーは60℃を上回る引火点を有するのが望ましい。
好ましい実施形態において、化学式(2A)によって表される直鎖フッ素化単官能性モノマーも使用してもよい。
R1−(CF2)n−(CH2)m−R2 (2A)
環状フッ素化単官能性モノマーは、化学式(2B)又は(2C):
によって表され、式(2A)、(2B)、及び(2C)において、R
1、R
2、及びnは上記に詳細に述べた通りであり、mは1〜10、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜2である。一実施形態において、R
2がチオール、アルコール又はエポキシドである場合を除き、R
2基はC−O−C部分を介して主構造に共有結合している。
分岐フッ素化単官能性モノマーも使用してもよく、化学式(3)
によって表され、式中、R
1及びR
3は、n及びoの和が6以上である場合には、CH
2F又はCHF
2を含むがCF
3を含まない非反応性末端基であり、n及びoの和が6未満である場合にはCH
2F、CHF
2、又はCF
3を含む非反応性末端基であり;R
2は、エチレン性不飽和官能基(アクリラート官能基、メタクリラート官能基若しくはビニルエーテル官能基など)、エポキシド官能基、ヒドロキシル官能基又はチオール官能基を含む単官能性反応性基である。
上記の式(3)において、n及びoはそれぞれ独立に1〜15、好ましくは2〜12、より好ましくは6〜10であり、一方pは1〜6、好ましくは1〜2である。分岐部分はフルオロカーボン分子の骨格に沿ってランダムに分散していてもよいことに留意すべきである。好ましい実施形態において、R2はエチレン性不飽和官能基、好ましくはアクリラート又はメタクリラート官能基である。
別の実施形態において、以下の式(4)を有する分岐フッ素化単官能性モノマー
も使用してもよく、式中、R
1、R
2、R
3、n、o及びpは、式(3)において上記で規定される通りであり、mは式(2)において規定される通りである。式(1A)、(1B)、(2A)、(2B)、(2C)、(3)及び(4)のフッ素化単官能性モノマーは、互いに任意の所望の組み合わせで使用してもよい。
組成物において使用してもよいフッ素化単官能性モノマーとしては、1,1−ジヒドロペルフルオロシクロヘキサンカルビノールアクリラート(本明細書においてペルフルオロシクロヘキシルメチルアクリラートとも呼ばれる)、1,1−ジヒドロペルフルオロシクロヘキサンカルビノールメタクリラート、(本明細書においてペルフルオロシクロヘキシルメチルメタクリラートとも呼ばれる)、1,1−ジヒドロペルフルオロシクロペンタンカルビノールアクリラート、1,1−ジヒドロペルフルオロシクロペンタンカルビノールメタクリラート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリラート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリラート、1H,1H,11H−ペルフルオロウンデシルアクリラート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルメタクリラート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルアクリラート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリラート、2−(ペルフルオロヘキシル)エチルアクリラート、2−(ペルフルオロヘキシル)エチルメタクリラート、2−プロペン酸、3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロ−5−(トリフルオロメチル)ヘキシルエステル、1H,1H,2H,2H,3H,3H,4H,4H−ペルフルオロデシルアクリラート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルアクリラートなど、又は前述のフッ素化単官能性モノマーのうち少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。
組成物において使用するための好ましい直鎖フッ素化単官能性モノマーは、1H,1H,11H−ペルフルオロウンデシルアクリラート又は1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルアクリラートである。好ましい環状フッ素化単官能性モノマーは、ペルフルオロシクロヘキシルメチルアクリラート及びペルフルオロシクロヘキシルメチルメタクリラートである。前述の直鎖フッ素化単官能性モノマー及び前述の環状フッ素化単官能性モノマーは、任意の所望の組み合わせで使用してもよい。
フッ素化単官能性モノマーは、組成物の総重量を基準として65〜95重量パーセント(wt%)の量で使用してもよい。好ましい実施形態において、フッ素化単官能性モノマーは、組成物の総重量を基準として75〜85重量パーセント(wt%)の量で使用してもよい。
組成物は、フッ素化多官能性モノマーも含む。フッ素化多官能性モノマーは、2個以上の官能基を有していてもよい。一実施形態において、フッ素化多官能性モノマーは、二官能性、三官能性、四官能性、五官能性などであってもよい。好ましい実施形態において、フッ素化多官能性モノマーは二官能性である。フッ素化多官能性モノマーは、直鎖、環状又は分岐状であってもよい。
一実施形態において、フッ素化多官能性モノマーは、式(5)から(8)
R2−(CF2)n−R2 (5)
R2−(CH2)m−(CF2)n−(CH2)m−R2 (6)
に示される構造を有し、式中、R
2はエチレン性不飽和官能基(例えば、アクリラート、メタクリラート又はビニルエーテル)を含む反応性基である。クラッドがフリーラジカル反応によって生成される場合、アクリラート又はメタクリラート反応性基が使用される;それらの場合、チオール官能基又はビニルエーテル官能基も、フッ素化コモノマー中で0.5より大きく下回るモル分率で使用してもよい。クラッドがカチオン性重合により生成される場合、エポキシド官能基又はビニルエーテル官能基を含む反応性基R
2を使用してもよい;それらの場合、ヒドロキシル又はアルコキシシランを含む反応性官能基を少量で使用してもよい。ここで式(5)〜(8)に関して、R
2がチオール又はアルコール又はエポキシドである場合を除き、反応性基R
2はC−O−C結合によりエチレン結合に共有結合している。
上記の式(5)から(8)において、n及びoは1〜15、好ましくは2〜12、より好ましくは4〜10であり、一方、mは1〜10、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜2である。式(7)において、pは1〜6、好ましくは1〜2である。式(7)の分岐部分はフルオロカーボンオリゴマーの骨格に沿ってランダムに分散していてもよいことに留意すべきである。式(7)のR3は、反応性又は非反応性であってもよい。好ましい実施形態において、R2は、エチレン性不飽和官能基、好ましくはアクリラート又はメタクリラート官能基である。
好ましいフッ素化多官能性モノマーは式(9)
R2−(CH2)m−(CF2)n−(CH2)m−R2 (9)
の構造を有し、式(9)において、R2はアクリラート基であり、nは1〜15、好ましくは4〜10であり、mは1〜10、好ましくは1〜2である。好ましいフッ素化多官能性モノマーは、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジアクリラート及び2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1,8−オクタンジオールジアクリラートである。
フッ素化多官能性モノマーは、組成物の総重量を基準として5〜35重量パーセント(wt%)の量で使用してもよい。好ましい実施形態において、フッ素化多官能性モノマーは、組成物の総重量を基準として10〜25wt%の量で使用してもよい。
組成物は、アミン官能基を含有しないシランカップリング剤をさらに含む。シランカップリング剤は、コーティングを形成するための組成物の塗布中及び組成物の硬化後に、組成物が光ファイバに結合するのを促進する。(メタ)アクリラート系配合物の場合、シランカップリング剤は、フッ素化モノ及びポリ不飽和モノマーとのフリーラジカル重合反応に寄与することが可能な少なくとも1つの官能基を含むことが望ましく、シランカップリング剤は、縮合して光ファイバとのSi−O−Si結合を形成することが可能な少なくとも1つのアルコキシシラン基を有することがさらに望ましい。エポキシ又はビニル−エーテル系配合物の場合、シランカップリング剤は、それぞれのフッ素化モノマータイプとのカチオン性重合反応に関与することが可能な少なくとも1つの官能基を含むだけでなく、縮合して光ファイバとのSi−O−Si結合を形成することが可能な少なくとも1つのアルコキシシラン基も有することが望ましい。
照射を受けると又は熱的加熱を受けると、シランカップリング剤は、フッ素化単官能性モノマー又はフッ素化二官能性モノマーのいずれかと反応する。シラン官能基の一部は、光ファイバ上でシリカと反応して光ファイバとの改善された結合をもたらす。上述の通り、モノマーがエポキシド又はビニルエーテルである反応性官能基を有する場合は、カチオン性重合が一般に用いられる。
フリーラジカル硬化配合物に適したシランの例は、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランであり;カチオン性エポキシ硬化配合物に適したシランの例は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなど、又は前述のシランカップリング剤のうち少なくとも1つを含む組み合わせである。好ましいシランカップリング剤は、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランである。グリシドキシ部分を有するシランは、エポキシ官能化されているモノマーを使用するカチオン性重合において使用される。ビニルエーテル反応性基を含有するシランは同様に、カチオン硬化性ビニルエーテルに基づく配合物に適している。
シランカップリング剤は、組成物の総重量を基準として0.5〜3重量パーセント(wt%)の量で使用してもよい。好ましい実施形態において、シランカップリング剤は、組成物の総重量を基準として1.0〜2.0重量パーセント(wt%)の量で使用してもよい。
組成物は、任意選択のチオール相乗剤をさらに含んでいてもよい。チオール相乗剤は一般に、フリーラジカルにより硬化されるアクリラート又はメタクリラート組成物においてのみ使用される。チオール相乗剤は、硬化速度を増加させるが、場合によって架橋密度を減少させ屈折率を低下させることがある。したがって、一般にチオール相乗剤は、使用する場合には非常に少量で使用される。例示的なチオール相乗剤が米国特許第4,511,209号明細書に開示されており、その全体の内容が参照により本明細書に組み込まれる。チオール相乗剤の例は、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオナート)など、又は前述のチオール相乗剤のうち少なくとも1つを含む組み合わせである。チオール相乗剤は、組成物の総重量を基準として好ましくは3wt%まで、より好ましくは0.1〜1wt%の量で使用される。
組成物は以下の添加剤:開始剤、抗酸化剤、熱安定剤、紫外線安定剤、表面張力改質添加剤、光沢剤(slickness agents)、又は前述の添加剤の少なくとも1つを含む組み合わせのうち、1つ又は複数をさらに含んでいてもよい。好ましい添加剤は光開始剤及び抗酸化剤である。
光開始剤は、組成物の総重量を基準として0.01〜5wt%、より好ましくは0.5〜1.5wt%の量で使用してもよい。光開始剤はフリーラジカル型又はカチオン性型であってもよく、これは、モノマーがアクリラート若しくはメタクリラートであるか(フリーラジカル型)、又はエポキシド又はビニルエーテルであるか(カチオン性型)に依存する。例示的な光開始剤は、IRGACURE(登録商標)1173である。
一実施形態において、組成物の1つの製造方法では、フッ素化単官能性モノマー、フッ素化多官能性モノマー、シランカップリング剤、光開始剤、及び場合によりチオール相乗剤を互いに混合して組成物を得る。組成物は、バッチ法又は連続法で製造してもよい。
組成物は、例えば、磁気撹拌プレート上で、又は場合によりさらに大きい体積で、例えば回転撹拌シャフト上のプロペラ翼を用いて、単純な混合により混合してもよい。加熱は必要である場合と必要でない場合がある。モノマーが室温で液体ではない場合、加熱が必要である。例えば、実施例の試料13の1H,1H,11H−ペルフルオロウンデシルアクリラートは、固体ワックスであり、これは約45℃で溶融する。
次いで、組成物を光ファイバ上にのせ、硬化又は架橋を行う。架橋は、一般に電磁波を使用して行われる。電磁波は、紫外線(UV)、マイクロ波放射線、電子線、又はそれらの組み合わせを含む。組成物を架橋するための放射線の好ましい形態は紫外線である。
架橋前の組成物は、塗布温度において100センチポアズ未満、好ましくは20センチポアズ未満の低い粘度を有する。理論に拘束されないが、低い粘度は、組成物中に存在する選択された成分の性質(相当なフッ素含量、比較的低い分子量、水素結合基の低い濃度)に起因する。これらのコーティングは、オープンカップ塗布装置(open−cup applicator)又はLindholmの米国特許第6,958,096号明細書に記載のような塗布装置を使用して容易に塗布できる。例えばスプレー又はエアロゾル供給などの、さらなるタイプのコーティング塗布を使用してもよい。架橋前の組成成分もそれぞれ大気圧で比較的揮発性が低く、光ファイバを被覆する間、安定な加工を可能にする。それらの「引火点」の値は、一般に70℃以上、好ましくは100℃以上である。
組成物の架橋は、組成物を光ファイバ上にのせた後、1平方センチメートル当たり0.1〜15ジュール(J/cm2)のエネルギー密度を有する紫外線量を用いて行ってもよい。好ましい実施形態において、組成物の硬化は、組成物を光ファイバ上にのせた後、0.5〜1.5(J/cm2)のエネルギー密度を有する線量を用いて行ってもよい。紫外線照射は、紫外線A、紫外線B、紫外線Cの組み合わせ、又は前述の形態の紫外線のうち少なくとも1つを含む組み合わせであってもよい。
架橋組成物は、一般に光ファイバ上のコーティングとして使用され、光ファイバのガラス部分の屈折率よりも屈折率が低く、このことはファイバのコア内で導光するためのファイバの使用を可能にする。シリカ系光ファイバにおいて、シリカ系コアの屈折率よりも低い屈折率を有する架橋組成物の使用は、シリカ系コア内で導光するための光クラッドとしてのその使用を容易にする。架橋組成物は、他の比較用の市販のポリマークラッドと比較して、屈折率と、硬度、弾性係数及びガラスへの接着性を含めた機械的特性とのより優れたバランスを有する。
架橋組成物は、好ましくはシリカの屈折率(すなわち、好ましくは850ナノメートルで約1.45未満)を下回る屈折率を有する。一実施形態において、架橋組成物(すなわちコーティング)は、850ナノメートルで約1.38未満の屈折率を有する。最も好ましくは、架橋組成物は、式RI≦1.368+10.8/X(式中、Xはナノメートルで表される波長を表す)によって波長と関連づけられる屈折率(RI)を有する。以下の表1は、波長の関数として屈折率がどのように変化するかを示す。
架橋組成物はポリマー性であり、したがって粘弾性であり、このことはコーティングの弾性率が時間及び温度に依存することを意味する。弾性率値は、選択された繰り返し歪みの周波数における動的機械分析(DMA)を用いて定量化してもよい。一実施形態において、1ラジアン毎秒の周波数で試験した場合に、コーティングは、23℃で、200MPaを上回る、好ましくは350MPaを上回る、最も好ましくは400〜1000MPaの範囲の動弾性係数を示す。対応するガラス転移温度Tg(1rad/sの繰り返し歪み速度でDMA tan deltaピーク温度により測定される)は30℃を上回り、好ましくは40℃を上回る。社内の試料調製技術を用いて測定されるショアD硬度は、56〜85、好ましくは60〜80の範囲であるべきである。
本発明のコーティング組成物を有する光ファイバは、75kpsi(キロポンド毎平方インチ)以上のレベルで、好ましくは150kpsi以上のレベルで耐力検査することができ、破断の頻度及び点欠陥の生成が少ない。ガラス直径が200マイクロメートルであるファイバは、150kpsiを上回る引張り耐力試験負荷でルーチン試験され耐えることができ、一方、ガラス直径が400マイクロメートルであるファイバは、100kpsiを上回る引張り耐力試験負荷、又は曲げ半径が38.4mmであるホイールを用いた100kpsiの耐力試験負荷によるラジアル曲げ(radial bend)のいずれかで検査され耐えることができる。ガラス直径が400マイクロメートルを上回り最大で2000マイクロメートルのファイバは、ガラス直径に応じて選択される曲げ半径を有するホイールを用いた75kpsiを上回る耐力試験負荷によるラジアル曲げで検査され耐えることができる。
被覆光ファイバは、上塗りするか又は第2の層で緩衝化してもよい。第1の(開示の)コーティングを塗布し、光ファイバ上で比較的薄い単層状に硬化させ、次いで、上塗りするか又は第2の層(例えば、押出熱可塑性プラスチック又は紫外線硬化コーティング)で緩衝化する。光ファイバは、第2の層がさらなるロバスト性(耐摩耗性;任意選択により難燃性)をもたらし且つ成端又は他のタイプのファイバ終端処理のために除去できるように設計されており、一方でポリマークラッド層は除去されない。ポリマークラッド(第1のコーティング)の厚さは、基材のガラスファイバの直径及びファイバ線引き条件に応じて、2〜30マイクロメートル、典型的には10〜15マイクロメートルである。第2の層(すなわち緩衝材)は、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)熱可塑性プラスチックを含んでいてもよいが、ファイバの設計はこの材料の使用に限定されない。別の緩衝材としては、押出ナイロン熱可塑性プラスチック、又は紫外線硬化アクリラート、紫外線硬化エポキシ、難燃性紫外線硬化コーティング、熱硬化若しくは紫外線硬化シリコーン、多層緩衝材などが挙げられる。第2の層の厚さは、ガラス直径にしたがって適応させてもよい。例えば、230マイクロメートルの直径のポリマークラッド上の緩衝材の厚さは約135マイクロメートルである。
一実施形態において、最大のパワー閉じ込め(power confinement)及び伝送が必要な場合は、コーティングはガラスクラッド光ファイバ上の第2のクラッドとしても使用できる。これは350〜2200ナノメートルの範囲の波長を含む。
被覆光ファイバ(第2の層有り及び無しの両方)はポリマークラッドの耐層間剥離性を示し、ファイバ線引き、巻き取り及び再スプーリング(respooling)の間、キャプスタン上での回転に耐えホイールを引っ張る。第2の層(又は緩衝材)が利用される場合、このファイバは、従来のファイバ剥離器具を使用して下にあるポリマークラッド層を引っ掻く又は剥がすことなく外層を機械的に剥がす及び除去する能力を示し(「耐爪スクラッチ性」とも表される)、この能力は比較用の市販のコーティングで被覆された他の比較用の市販の光ファイバよりも高い。
組成物で被覆された光ファイバは、HCS(登録商標)ファイバのために確立された「クリンプ及びクリーブ(crimp and cleave)」法を用いて、ポリマークラッドを元の場所に残してファイバを成端する能力を示す。組成物で被覆された光ファイバは、エポキシ/研磨法を用いてクラッドを無傷にしたままファイバを成端する能力を示し、一方、光ファイバ端部は最終用途のために研磨される。
硬化コーティングは、他で開示されるポリマークラッドと比較して、また他の比較用の市販の組成物と比較した場合に、より優れた熱安定性及び熱酸化安定性をもたらし黄変する傾向がより低い。これはウレタン系又はポリエーテル系であるクラッドと比較すると特に当てはまる。
光ファイバ上のポリマークラッドとして利用される場合、硬化コーティングは特に、他で開示されるポリマークラッドと比較して、また他の比較用の市販の組成物と比較した場合に、可視の波長範囲における少ない光減衰、及び環境曝露時の減衰の変化に対する優れた耐性を実現する。これは例示的なファイバについて以下のタイプの環境曝露において実証されている:
○ −65℃〜+125℃の範囲の熱サイクル
○ 85%の相対湿度で最大+85℃の温度へのサイクルを含み、その後零度以下の温度(−10℃)への熱サイクルが続く、FOTP−72による高温高湿度エージング
○ 150℃での熱エージング(24時間)
○ レーザーパワー下でのファイバ屈曲
○ 熱水中への浸漬
加えて、コーティングは、熱重量試験(空気中での重量減少対温度及び/又は時間)において実証されるように、熱酸化による切断に対する優れた耐性を実現する。
組成物について、光ファイバにおけるその使用と共に、以下の非限定的な実施例において詳細に述べる。
この実施例は、フッ素化単官能性モノマー(モノエン)及びフッ素化二官能性モノマーを含む組成物を実証説明するために行われた。表2に記載のような一連のフッ素化モノ及びジ(メタ)アクリラートモノマーを得た。これらは直鎖及び脂環式モノエンの両方を含むものとした。選択される液体特性(屈折率、吸光度、及び粘度)を30℃で測定し、これは可能であった。F20モノアクリラートは室温でワックスであり、そのためその液体特性を50℃で測定した。DDFODDAは室温で主に液体であったが、(調達時の状態で)結晶性分画を示しこれがいくらかのヘイズを生じたため、その吸光度を30及び50℃の両方で測定した。より高い温度でヘイズは最小であった。PFHXEMA及びPFHXEAは、調達時の状態で、他のモノマーよりも高い黄色度を示した。すべての頭字語を以下の表2に詳細に示す。
最終的な性能に影響を与える可能性がある要因を特徴づけるために、1wt.%の光開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、Irgacure1173、BASF)を取り入れ、次いで1J/cm2の線量で窒素環境中で紫外線を照射することにより、個々のモノマーを単独重合させた。間に薄いスペーサーを入れたガラススライドと石英スライドの間で(上側のスライドが石英である)液体を硬化させ、次いで硬化後にスライドを引き離すことにより、フィルムを調製した。硬化フィルムは、スライドの一方に優先的に付着したままであり、次いで屈折率を測定するために使用された。フィルムの屈折率を3つの波長でMetriconプリズム結合器を使用して測定した。ショアD硬度測定用の試料を、小さいアルミニウム皿(TA Instruments又はPerkin Elmerなどの企業によって示差走査熱量測定法(DSC)用に販売されているものなど)の中で液滴を紫外線硬化させることにより調製した。
表3に示すように、すべてのフッ素化モノマーは633〜1538ナノメートルの範囲の波長で1.37〜1.43の範囲の硬化後の屈折率値を示し、シリカコア(RI約1.4585)の屈折率を大幅に下回った。すべてのモノアクリラートはホモポリマーとしての機械的一体性が低かった。これらのうち、F20アクリラート(試料1)は最も扱いやすく、軟質のヘイズのあるフィルムが得られるが、破壊せずには基材から容易にはがれず、ショアD硬度が42であった。短鎖モノアクリラートであるDDFHPA(試料2)では粘性液体しか生成されず、そのため硬化後の屈折率を測定しなかった。フッ素化脂環式モノアクリラートであるPFCHMA(試料4)では、軟質フィルムが得られRI測定が可能であったが、そのショアD硬度は容易に測定されなかった。そのメタクリラート相当物であるPFCHMMA(試料3)は、元々の光開始剤の量及び紫外線量では容易に単独重合しないと思われ、そのためRI試験用のフィルムを生成させるために両方の要素を5倍に増加させた。OFHDDA及びDDFODDAジアクリラートは、それぞれ1分子当たり2つの官能基を有し、架橋を可能にする;これらはホモポリマーとしての高い硬度を実現したが(試料5及び6のそれぞれで88及び94のショアD硬度)、得られるフィルムは脆性であった。
Gelest社よりSIA0200.0として購入した1.5wt%のγ−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(APTMS)(シランカップリング剤)を取り入れて、次にモノマーの混合物を調べた(やはり表3を参照)。APTMSは、(i)他のアクリルモノマーと容易に共重合することができる反応性アクリル基を含有する;(ii)配合物の屈折率を著しく増加させない;(iii)アクリラート系コーティング配合物中で使用される場合、他のシラン(例えばメルカプトシラン)と比較して比較的長い保存期間をもたらす、という理由で選択された。試験された組成物の中で、いくつかはF20モノアクリラートをフッ素化ジアクリラートと組み合わせて、硬度(69〜72)と予測されるNA値(0.47〜0.49)との優れたバランスが得られた。
表3の試料1〜6は、100wt%の架橋フッ素化単官能性モノマー又は100wt%の架橋フッ素化二官能性モノマーのいずれかを含む比較用組成物を示す。
表3の試料7〜12は、それぞれフッ素化単官能性モノマー及びフッ素化二官能性モノマーの混合物を含む。試料7は、シリカファイバ上で約0.47の開口数NAを可能にすると予測される低い屈折率を有する。試料7は、F20フッ素化モノアクリラートをOFHDDAフッ素化ジアクリラートと80:20の比で組み合わせており、光開始剤及びシランカップリング剤をさらに加えている。室温において、この組成物は半ワックスであり、これはいったん40℃を超えて加熱されると透明液体となる。架橋組成物は透明である(すなわち、ヘイズがなく透明である)。表3は架橋組成物の主な特性を示す。
架橋組成物は、大部分の比較用の市販のポリマークラッド、特に同等の屈折率を有するものよりも硬い(表3及び図1を参照)。試料7(本発明の組成物)について得られるショアD硬度(70)は、比較用の市販のOFS Medium NA HCS(登録商標)クラッド(表4の試料1−A)において使用されるクラッドのショアD硬度と同じであるが、試料7の屈折率ははるかに低い(すなわち、NAがより高い)。測定されるクラッド硬度に基づき、対応するファイバ(試料7の架橋コーティングを有し緩衝化されている場合はETFEを有する)は機械的にロバストであり、満足のできるクリンプ及びクリーブによる成端を実現すると考えられる。
液体配合物の粘度は測定されていない。しかし、個々の成分の粘度に基づき、5〜8cPの範囲内に入ると予測され、例えばオープンカップコーティング塗布装置又はLindholmにより米国特許第6,958,096に記載されるタイプの低加圧対向流塗布装置(low−pressurize counter−flow applicator)を使用して、これを用途に適した状態にした。
比較用試料1−Aから5−Qは、外部の供給業者から並びに内部でOFSから得られる。表3から、600〜1600ナノメートルの波長で1ジュール毎平方センチメートルの紫外線量を受けた後に測定した場合、試料7〜12の例示的な架橋組成物の屈折率は約1.36〜約1.38で様々であることが分かる。
この実施例は、フッ素化単官能性モノマー(モノエン)及びフッ素化二官能性モノマーを含む組成物を実証説明するために行った。
表5に示される割合を有する配合で試料7(表3)と同様の試料13を調製した。
フィルム(試料13とラベルされる)を2J/cm2で紫外線硬化させ、熱重量分析を用いてその熱酸化安定性を試験した。試験法は公開されている方法(A.A.Stolov、D.A.Simoff、J.Li、Thermal stability of specialty optical fibers、J.Lightwave Tech.、2008年、26巻、3443〜3451頁)に従うものとした。図1Bは、本発明の組成物(試料13)が2つの他の比較用の市販ポリマークラッド1−A及び1−B(表4より)よりも高い熱安定性を示すことを図示するグラフである。室温での動弾性係数は、クラッド1−A及び1−Bの動弾性係数の中間である425MPであり、この屈折率レジームの他の市販のクラッドよりも著しく高いことが分かった(図2及び3を参照)。図2は市販のポリマークラッド1−A及び1−Bの弾性率と本発明の組成物(試料13)を比較するグラフ(動的機械分光法を行うことにより得られる)であり、一方、図3は他の市販のポリマークラッド(表4より)及び本発明の組成物(試料13)の弾性率を比較するグラフ(動的機械分光法を行うことにより得られる)である。
この実施例は、フッ素化単官能性モノマー(モノエン)及びフッ素化二官能性モノマーを含む開示の架橋組成物で被覆され(クラッド付与され)クラッド上にETFEを含む緩衝材がさらに配置されたファイバの特性を実証するために行われた。
表3に詳細に記載されるもの(特に表3の試料7及び10)と同様の、約0.47のNAを有する本発明の2つの配合物を使用して、ファイバの線引きを行った。比較のために、ファイバより低いNA(約0.44)を有する、表4の組成物1−A’と同様の比較用市販のクラッドを使用して、やはりファイバの線引きを行った。純粋なシリカプリフォームであるHeraeus F300を使用し、公称のファイバ直径は200/230/500μm/μm/μm(それぞれ、ガラス/クラッド/ETFE緩衝材外径)であった。回収されたファイバの長さは1〜2.2kmの範囲であった。3つのファイバのロットはすべて、線引き後に850nmの波長で2.2〜3.3デシベル毎キロメートル(dB/km)の範囲の低い光減衰を示した。NAが高いほうの新しいクラッドは、NAが低いほうのクラッドと比較して980nmでわずかに改善された(より低い)減衰をもたらした(それぞれ3.7及び4.1dB/km対6.0dB/km)。これらのファイバの架橋組成物及び緩衝材の詳細を以下の表6に示す。
各ファイバの100メートル(100m)ルーズコイルは、3つの異なる厳しい環境曝露を受けた。1つの組はFOTP−72による温度/湿度サイクルを施し、その間に可視波長である630nmでの減衰をモニタリングした(図4を参照)。第2の組は−65℃〜+125℃で熱サイクルを施し、やはり630nmでモニタリングした(図5を参照)。第3の組は、150℃で1日間の熱エージングを施し、曝露の前後にスペクトルの減衰を測定した(図6を参照)。図4は、FOTP−72による100mルーズコイルの温度及び湿度サイクルを行った場合の、630ナノメートルで測定した場合の減衰の変化対時間を示すグラフである。図5は、−65〜125℃で100mルーズコイルの熱サイクルを行った場合の630ナノメートルで測定した場合の減衰の変化対時間を示すグラフである。図6は、150℃で1日間のエージングの前後における、100mルーズコイルについての減衰対波長を示すグラフである。
試料16は、これらの試験中にすぐれた環境安定性を示した(表6を参照);このファイバは、F20フッ素化モノアクリラート対OFHDDAフッ素化ジアクリラートモノマーが80:20の重量比であるポリマークラッドを利用しており、重量比はF20フッ素化モノアクリラート及びOFHDDAフッ素化ジアクリラートモノマーのみの重量の和を基準とした。
表6から、架橋組成物を有するファイバは、FOTP−72により測定した場合に温度湿度サイクル後に630nmで0.4〜4.2デシベル毎100メートルの最大の減衰の増加を示すことが理解できる。表6から、このファイバは−65℃から+125℃の熱サイクル後に630nmで0.6〜3.4デシベル毎100メートルの最大の減衰の増加を示すことも理解できる。
これは、フッ素化単官能性モノマー(モノエン)及びフッ素化二官能性モノマーを含む開示の架橋組成物で被覆され(クラッド付与され)クラッド上にETFEを含む緩衝材がさらに配置されたファイバの特性を実証するために行われた別の実施例である。
以下の表7は、開示の組成物を使用して製造されたファイバ並びに比較用組成物を使用して製造されたファイバを開示している。比較用組成物は表4の試料1−A’として開示されているが、開示の組成物は表3の試料11と同様であるものとして詳細に示されている。純粋なシリカプリフォームであるHeraeus F300を使用し、公称のファイバ直径は200/230/500μm/μm/μm(それぞれ、ガラス/クラッド/ETFE緩衝材外径)である。回収されたファイバの長さは1〜2.2キロメートル(km)の範囲であった。両方のファイバのロットは、線引き後に850nmの波長で3.1〜3.3dB/kmの範囲の低い光減衰を示した。開口数は、新しいクラッド及び従来技術のクラッドのそれぞれについて633nmで0.48及び0.44と測定された。ファイバは上記の3種類の環境曝露を受け、結果を以下の表7にまとめた。
この実施例は、高出力レーザー光をファイバのコア中に送っている間の曲げ強度を実証するために行われた。純粋なシリカコア及びフルオロケイ酸塩ガラスの内部クラッドを有するFLUOSIL(登録商標)ガラスプリフォームを使用して、3つの異なるポリマークラッドを用いたファイバの線引きを行った。公称の形状寸法(ミクロン)は、ガラスコア、ガラスクラッド、ポリマークラッド、及びETFE緩衝材のそれぞれについて272/299/330/400であった。ポリマークラッドの対応する公称のNA値は、シリカコアに対して計算すると0.37、0.43及び0.47であった。しかし、この場合のファイバの真のNAは主にそのガラスクラッドによって決定される。結果を表8及び図7に示す。
Xiaoguang Sun;Jie Li;Adam Hokansson;Study of optical fiber damage under tight bend with high optical power at 2140 nm、Proc.SPIE 6433、Optical Fibers and Sensors for Medical Diagnostics and Treatment Applications VII、643309、2007年2月15日に詳細に記載される過去に公開された方法を使用して、レーザーパワーを伝送させながらファイバに2点曲げを行った。ファイバ試験において使用されるレーザーは、Lee Laser社のパルスNd:YAGレーザーであった。レーザーの中心波長は1064nmに位置し、パルス繰り返し数は6kHzに設定した。2mm/sの一定の挟みこみスピード(jaw speed)でファイバを曲げるように平行なプレートを互いに動かしながら、パワーを伝送させながら装置でファイバ破断の直径を測定した。平均出力は83Wであり、ピーク出力は170kWであった。
破損確率は、曲げ半径の関数として決定された(図7を参照)。図7は、曲げ半径の関数としての破損を示すグラフである。破断時の曲げ半径が小さいほど強度が高いことを示す。本開示のよりNAが高い(より屈折率が低い)クラッドは、比較用クラッドよりも小さい半径まで曲げることを可能にし、曲げている間の強度及びレーザーパワーへの機械的耐性がより優れていることを実証している。
この実施例は、本発明のクラッドを有するファイバを熱水に浸す間の性能を、比較用の市販のファイバと比較する。試料16と同じクラッド組成物及び製造処方(表6を参照)を使用して、開示の組成物を有する試料20を作った。クラッド1−A(表4を参照)を有する比較用ファイバ試料21を作った。両方とも公称の形状寸法は200/230/500ガラス/クラッド/ETFEであり、ここで寸法はミクロンである。80℃までの温度サイクルを行いながら両方を熱水中へ浸漬し、850nmの波長で減衰をモニタリングした。結果を図8に示す。試料20の減衰は曝露の間非常に安定のままであったが、試料21の減衰は試験中に上昇した。この試験において試料20は減衰の変化が0.05dB/(15メートル)未満であった。
この実施例は、本発明のファイバの性能バランスを、一連の市販のポリマークラッドを使用して作られたファイバの性能バランスと比較する。表4に詳細に記載されるものの中から特定の市販のクラッドを選択し、200ミクロンのガラス直径を有する光ファイバを線引きするのに使用した。いくつかのケースではHeraeus F300低OHガラスを使用してファイバの線引きを行ったが、一方他のファイバはHeraeus Spectrasil F2000高OHガラスを使用して線引きを行った。市販のクラッドはすべて、室温で1000センチポアズを上回る「高」粘度を有していた。23℃でポリマークラッドの弾性率が約50MPaを上回る場合、単独のコーティング層を使用し第2の緩衝材を使用せずに特定のファイバの線引きを行った。他のファイバは、外側緩衝層として紫外線硬化性ウレタンアクリラートの第2のコーティングを使用して線引きを行った。これらの緩衝材は、遠距離通信用ファイバにおいて一般に使用されるタイプの代表的なものであり、表9のUrAcrl及びUrAcr2として表される。3種類の環境曝露を使用して、実施例3及び4で開示される本発明のファイバ試料と同じ方法でファイバを試験した。第1のタイプの曝露では、100mのルーズファイバコイルを150℃で1日間エージングし、スペクトルベンチ及びよく知られているカットバック法(cutback method)を使用して、エージングの前後で630nmの波長で減衰を測定した。結果を表9にまとめており、ここでエージングなし及びエージングありのファイバについて630nmでの減衰を表にしている。第2のタイプの曝露では、図4のように、100mのルーズファイバコイルに、−10℃から+85℃の範囲の温度及び85%までの相対湿度値でFOTP−72による温度及び湿度サイクルを施した。第3のタイプの曝露では、図5のように、100mのルーズファイバコイルに、周囲湿度で−65℃から+125℃の熱サイクルを施した。温度湿度サイクル及び熱サイクルに関して、曝露の間630nmでの光伝送を測定し、各ファイバにおける最大の減衰の変化を表9で表にしている。
本発明のクラッドは、市販のクラッドと各々と比較してより優れた性能バランスを実現した。本発明のクラッドは、エージングなしのファイバについて630nmで15dB/km未満の光伝送を実現し、試料16、19及び20はエージング前に10dB/km未満を実現した。本発明のクラッドは、150℃で1日間のエージング後に630nmで45dB/km未満の光伝送を実現し、試料16、19及び20はエージング後に20dB/km未満の好ましい値を実現した。市販のクラッド4−N及び2−Eは、エージング前であっても特に高く極めて望ましくない減衰をもたらした(それぞれ64.9及び77.9dB/km)。他の市販のクラッドは、150℃で1日のエージング後に630nmで50dB/kmを上回る望ましくない高い減衰値をもたらした;これらには、単層コーティングとして塗布される場合のクラッド2−C、並びに紫外線硬化性緩衝材と一緒に塗布される場合のクラッド4−N、1−B及び2−Dが含まれた。温度湿度サイクル又は熱サイクルのいずれかが施される場合、開示のクラッドは630nmで4.5dB/(100−m)未満の減衰の増加をもたらし、試料16及び20は1dB/(100−m)未満の増加という特に好ましい値をもたらした。対照的に、市販のクラッド3−G、4−J、4−N及び4−Jは、温度湿度サイクルの間に10dB/(100m)を上回り最大で約48dB/(100m)の減衰の増加を示し、熱サイクルにおいて同様の望ましくない増加を示した。クラッド1−Bは、変動する性能を示し、環境曝露の結果として場合によっては比較的良好な低い減衰をもたらし、他の場合には特に不良である高い減衰をもたらした。
理論によって拘束されることを望まないが、これらの3つの異なるタイプの環境曝露を受けた場合の様々なファイバにおける減衰の増加は、黄変を生じさせる化学分解、光散乱を生じる未架橋の構成成分の相分離、軟らかいポリマークラッド上の緩衝材層の収縮に起因するマイクロベンディング、水分吸収による膨張から生じるマイクロベンディング及び光吸収、又は移動性の未架橋の構成成分の移行若しくはコーティングを通ってガラス/コーティング界面へ吸着した水分に起因する屈折率の増加などの、1つ又は複数のメカニズムから生じると考えられる。加えて、データは、不十分な性能が、ほとんどの場合で比較的低い弾性率を有するクラッド及び/又はシラン接着促進剤を含有しないクラッドに関連していることを示唆している。市販のクラッド5−P及び5−Qの場合、エージングなしのファイバ並びに3種類の環境曝露の間及び後で、比較的良好な光伝送が見られた。しかし、クラッド5−P及び5−Qは、開示される本発明のクラッドと比較して耐爪スクラッチ性が不十分であった。最後に、クラッド3−F、3−G、3−H、及び3−Iは、PFOAに類似するために制限されている成分を利用しているため、満足できないものである。
この実施例は、本発明のクラッドが、150℃で1日のエージングした後に、630nmで45dB/km未満、好ましくは630nmで35dB/km未満、好ましくは630nmで35dB/km未満、好ましくは630nmで20dB/km未満の光伝送を実現したことを実証する。
上記の実施例から、架橋組成物が独特な特性の組み合わせを有するファイバを実現することを理解できる。ファイバは、0.46を上回る、好ましくは0.47を上回る、より好ましくは0.475を上回る開口数を示す。ファイバは、シリカの光ファイバ上に配置される場合は、最大で0.50の開口数を示すことが可能である。ファイバは、高いレーザー出力下できつく曲げられる、より優れた可能性も示す。
ファイバはまた、630ナノメートルの波長で測定した場合に5.5〜12デシベル毎キロメートルの減衰を示し(それらの線引き後の条件において、100グラムの張力で巻いた場合)、150℃の温度に24時間曝露した後で630ナノメートルの波長で測定した場合に17〜45デシベル毎キロメートルの減衰を示す。
本明細書において詳細に記載されるすべての範囲は、終点を含むことに留意すべきである。異なる範囲からの数値は組み合わせ可能である。
移行部用語「含んでいる」は、移行部用語「から成っている」及び「から本質的に成っている」を包含する。
用語「及び/又は」は、「及び」並びに「又は」の両方を含む。例えば、「A及び/又はB」は、A、B、又はA及びBであると解釈される。
用語(メタ)アクリラートは、メタクリラート及びアクリラートの両方を包含する。
本発明についていくつかの実施形態を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲から逸脱せずに様々な変更を行うことができ且つ均等物をその要素と置き換えてもよいことを当業者は理解するであろう。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱せずに、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるように多くの改変を行うことができる。したがって、本発明は本発明の実施を意図する最良の方式として開示される特定の実施形態に限定されないが、本発明は添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるあらゆる実施形態を含むことになることが、意図されている。