本願発明は、(1)波長検知部による波長の検知結果と目標値との差に基づいて、波長選択要素に対応するヒータが設けられた半導体レーザの発振波長を制御する波長可変レーザの制御方法であって、メモリから、第1波長に対応した、前記波長検知部の波長特性あるいは前記目標値を定める検知部情報と、前記ヒータの制御目標値とを含む前記波長可変レーザの駆動条件を取得する第1ステップと、前記第1波長と前記第1波長とは異なる第2波長との波長差分に基づいて、前記第1ステップにおいて取得された、前記検知部情報とヒータの制御目標値を前記第2波長に対応した値に更新する第2ステップと、前記第2ステップによって得られた駆動条件に基づいて、前記波長可変レーザを駆動する第3ステップと、を含む波長可変レーザの制御方法である。
(2)前記波長選択要素は、複数の縦モードを有する第1波長選択要素、前記第1波長選択要素とは縦モード間隔が異なる複数の縦モードを有する第2波長選択要素、前記第1波長選択要素の温度を制御する第1ヒータ、前記第2波長選択要素の温度を制御する第2ヒータを含んでなり、前記第2ステップにおいては、前記波長差分に基づいて、前記第1ヒータおよび前記第2ヒータの前記制御目標値を更新する処理が実行されるとともに、その実行にあたっては、前記制御目標値を得るために、波長差分に対して適用される演算係数が、前記第1ヒータと前記第2ヒータとで異なっていてもよい。
(3)前記第1波長選択要素はSG−DFB領域であり、前記第2波長選択要素はSG−DBR領域であってもよい。
図1は、実施例1に係る波長可変レーザ100の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、波長可変レーザ100は、レーザデバイスとして、波長を制御可能な半導体レーザ30(チューナブル半導体レーザ)を備えている。本実施例の半導体レーザ30は、レーザ領域に連結してSOA(Semiconductor Optical Amplifier)となる領域が設けられている。このSOAは、光出力制御部として機能する。SOAは光出力の強度を任意に増減させることができる。また光出力の強度を実質的にゼロに制御することもできる。さらに波長可変レーザ100は、検知部50、メモリ60、コントローラ70などを備える。検知部50は、出力検知部および波長ロッカ部として機能する。コントローラ70は、波長可変レーザ100の制御を行うものであり、その内部にはRAM(Random Access Memory)を備えている。
図2は、本実施例における半導体レーザ30の全体構成を示す模式的断面図である。図2に示すように、半導体レーザ30は、SG−DFB(Sampled Grating Distributed Feedback)領域Aと、CSG−DBR(Chirped Sampled Grating Distributed Bragg Reflector)領域Bと、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)領域Cと、光吸収領域Dと、反射防止膜ARと、反射膜HRとを備える。SG−DFB領域Aと、CSG−DBR領域Bは、この半導体レーザ30の波長選択要素として機能する。この半導体レーザ30の波長制御は、このような波長選択要素の温度をヒータによって制御し、その屈折率を変更することにより、実行される。
一例として、半導体レーザ30において、フロント側からリア側にかけて、反射防止膜AR、SOA領域C、SG−DFB領域A、CSG−DBR領域B、光吸収領域D、反射膜HRがこの順に配置されている。SG−DFB領域Aは、利得を有しサンプルドグレーティングを備える。CSG−DBR領域Bは、利得を有さずにサンプルドグレーティングを備える。SOA領域Cは、光増幅器として機能する。
SG−DFB領域Aは、基板1上に、下クラッド層2、光導波層3、上クラッド層6が積層された構造を有する。SG−DFB領域Aにおける上クラッド層6よりも上部については後述する。CSG−DBR領域Bは、基板上1に、下クラッド層2、光導波層4、上クラッド層6、絶縁膜9、および複数のヒータ10が積層された構造を有する。各ヒータ10には、電源電極11およびグランド電極12が設けられている。SOA領域Cは、基板1上に、下クラッド層2、光増幅層19、上クラッド層6、コンタクト層20、および電極21が積層された構造を有する。光吸収領域Dは、基板1上に、下クラッド層2、光吸収層5、上クラッド層6、コンタクト層13、および電極14が積層された構造を有する。端面膜16は、AR(Anti Reflection)膜からなる。反射膜17は、HR(High Reflection)膜からなる。
SG−DFB領域A、CSG−DBR領域B、SOA領域Cおよび光吸収領域Dにおいて、基板1、下クラッド層2、および上クラッド層6は、一体的に形成されている。光導波層3、光導波層4、光吸収層5および光増幅層19は、同一面上に形成されている。SG−DFB領域AとCSG−DBR領域Bとの境界は、光導波層3と光導波層4との境界と対応している。
SOA領域C側における基板1、下クラッド層2、光増幅層19および上クラッド層6の端面には、端面膜16が形成されている。本実施例では、端面膜16はAR(Anti Reflection)膜である。端面膜16は、半導体レーザ30のフロント側端面として機能する。光吸収領域D側における基板1、下クラッド層2、光吸収層5、および上クラッド層6の端面には、反射膜17が形成されている。反射膜17は、半導体レーザ30のリア側端面として機能する。
基板1は、例えば、n型InPからなる結晶基板である。下クラッド層2はn型、上クラッド層6はp型であり、それぞれ例えばInPによって構成される。下クラッド層2および上クラッド層6は、光導波層3、光導波層4、光吸収層5および光増幅層19を上下で光閉込めしている。
光導波層3は、光伝搬方向に沿って利得領域3aと、利得を持たないパッシブ導波路3bとが交互に配置された構造を有する。利得領域3aは、例えば量子井戸構造を有しており、例えばGa0.32In0.68As0.92P0.08(厚さ5nm)からなる井戸層と、Ga0.22In0.78As0.47P0.53(厚さ10nm)からなる障壁層が交互に積層された構造を有する。パッシブ導波路3bは、例えば、PL波長差200nm以上のInGaAsP系バルク層、PL波長差200nm以上のAlGaInAsP系量子井戸構造層などである。
光導波層4は、例えばバルク半導体層で構成することができ、例えばGa0.22In0.78As0.47P0.53によって構成することができる。本実施例においては、光導波層4は、利得領域3aよりも大きいエネルギギャップを有する。光吸収層5は、半導体レーザ30の発振波長に対して、吸収特性を有する材料が選択される。光吸収層5としては、その吸収端波長が例えば半導体レーザ30の発振波長に対して長波長側に位置する材料を選択することができる。なお、半導体レーザ30の発振波長のうち、もっとも長い発振波長よりも吸収端波長が長波長側に位置していることが好ましい。
光吸収層5は、例えば、量子井戸構造で構成することが可能であり、例えばGa0.47In0.53As(厚さ5nm)の井戸層とGa0.28In0.72As0.61P0.39(厚さ10nm)の障壁層が交互に積層された構造を有する。また、光吸収層5はバルク半導体であってよく、例えばGa0.46In0.54As0.98P0.02からなる材料を選択することもできる。なお、光吸収層5は、利得領域3aと同じ材料で構成してもよく、その場合は、利得領域3aと光吸収層5とを同一工程で作製することができるから、製造工程が簡素化される。
光増幅層19は、電極21からの電流注入によって利得が与えられ、それによって光増幅をなす領域である。光増幅層19は、例えば量子井戸構造で構成することができ、例えばGa0.35In0.65As0.99P0.01(厚さ5nm)の井戸層とGa0.15In0.85As0.32P0.68(厚さ10nm)の障壁層が交互に積層された構造とすることができる。また、他の構造として、例えばGa0.44In0.56As0.95P0.05からなるバルク半導体を採用することもできる。なお、光増幅層19と利得領域3aとを同じ材料で構成することもできる。この場合、光増幅層19と利得領域3aとを同一工程で作製することができるため、製造工程が簡素化される。
コンタクト層13,20は、例えばp型Ga0.47In0.53As結晶によって構成することができる。絶縁膜9は、SiN,SiO2等の絶縁体からなる保護膜である。ヒータ10は、NiCr等で構成された薄膜抵抗体である。ヒータ10のそれぞれは、CSG−DBR領域Bの複数のセグメントにまたがって形成されていてもよい。
電極21、電源電極11およびグランド電極12は、金等の導電性材料からなる。基板1の下部には、裏面電極15が形成されている。裏面電極15は、SG−DFB領域A、CSG−DBR領域BおよびSOA領域Cにまたがって形成されている。
端面膜16は、1.0%以下の反射率を有するAR膜であり、実質的にその端面が無反射となる特性を有する。AR膜は、例えばMgF2およびTiONからなる誘電体膜で構成することができる。反射膜17は、10%以上(一例として20%)の反射率を有するHR膜であり、反射膜17から外部に漏洩する光出力を抑制することができる。例えばSiO2とTiONとを交互に3周期積層した多層膜で構成することができる。なお、ここで反射率とは、半導体レーザ内部に対する反射率を指す。反射膜17が10%以上の反射率を有しているので、外部からリア側端面に入射する迷光に対してもその侵入が抑制される。また、リア側端面から半導体レーザ30に侵入した迷光は、光吸収層5で光吸収される。それにより、半導体レーザ30の共振器部分、すなわち、SG−DFB領域AおよびCSG−DBR領域Bへの迷光の到達が抑制される。
回折格子(コルゲーション)18は、SG−DFB領域AおよびCSG−DBR領域Bの下クラッド層2に所定の間隔を空けて複数箇所に形成されている。それにより、SG−DFB領域AおよびCSG−DBR領域Bにサンプルドグレーティングが形成される。SG−DFB領域AおよびCSG−DBR領域Bにおいて、下クラッド層2に複数のセグメントが設けられている。ここでセグメントとは、回折格子18が設けられている回折格子部と回折格子18が設けられていないスペース部とが1つずつ連続する領域のことをいう。すなわち、セグメントとは、両端が回折格子部によって挟まれたスペース部と回折格子部とが連結された領域のことをいう。回折格子18は、下クラッド層2とは異なる屈折率の材料で構成されている。下クラッド層2がInPの場合、回折格子を構成する材料として、例えばGa0.22In0.78As0.47P0.53を用いることができる。
回折格子18は、2光束干渉露光法を使用したパターニングにより形成することができる。回折格子18の間に位置するスペース部は、回折格子18のパターンをレジストに露光した後、スペース部に相当する位置に再度露光を施すことで実現できる。SG−DFB領域Aにおける回折格子18のピッチと、CSG−DBR領域Bにおける回折格子18のピッチとは、同一でもよく、異なっていてもよい。本実施例においては、一例として、両ピッチは同一に設定してある。また、各セグメントにおいて、回折格子18は同じ長さを有していてもよく、異なる長さを有していてもよい。また、SG−DFB領域Aの各回折格子18が同じ長さを有し、CSG−DBR領域Bの各回折格子18が同じ長さを有し、SG−DFB領域AとCSG−DBR領域Bとで回折格子18の長さが異なっていてもよい。
CSG−DBR領域Bにおいては、少なくとも2つのセグメントの光学長が、互いに異なって形成されている。それにより、CSG−DBR領域Bの波長特性のピーク同士の強度は、波長依存性を有するようになる。本実施例においては、一例として、CSG−DBR領域Bは7つのセグメントを備える。SG−DFB領域A側から、同一の光学長を有する3つのセグメントSG1、同一の光学長を有する2つのセグメントSG2、および同一の光学長を有する2つのセグメントSG3が連結されている。セグメントSG1、セグメントSG2、およびセグメントSG3の光学長は、180μm程度であり、互いに異なっている。なお、SG−DFB領域Aにおける各セグメントが第1反射器を構成し、CSG−DBR領域Bにおける各セグメントが第2反射器を構成する。
SG−DFB領域Aは、光学長の大きい長セグメント(長セグメント領域)と、光学長の小さい短セグメント(短セグメント領域)とを含む。長セグメントは、短セグメントの少なくとも1つよりCSG−DBR領域Bに近い位置に配置されている。長セグメントは、短セグメントよりも、短セグメントの整数倍(n≧2)±25%の範囲で大きい光学長を有する。すなわち、長セグメントは、短セグメントに、当該短セグメントの光学長の整数倍±25%の光学長がプラスされた構成を有する。
また、長セグメントおよび短セグメントの回折格子部の光学長は、長セグメントおよび短セグメントのそれぞれのセグメントの光学長の10%以下の光学長を有する。すなわち、長セグメントと短セグメントの回折格子部の光学長が、それぞれの長セグメントおよび短セグメントのセグメントの光学長の10%以下の光学長であることが好ましい。
本実施例においては、一例として、SG−DFB領域Aは、6つのセグメントを備える。SOA領域C側から、同一の光学長を有する5つの短セグメントSG4が連結され、さらにCSG−DBR領域B側に1つの長セグメントSG5が連結されている。短セグメントSG4の光学長は、セグメントSG1〜SG3と異なっており、例えば160μm程度である。長セグメントSG5の光学長は、例えば320μm程度である。CSG−DBR領域BのセグメントSG1〜SG3およびSG−DFB領域Aの短セグメントSG4および長セグメントSG5が半導体レーザ30内において共振器を構成する。CSG−DBR領域BのセグメントSG1〜SG3およびSG−DFB領域Aの短セグメントSG4および長セグメントSG5の回折格子部の長さは、4μm程度である。
なお、本実施例では、長セグメントのスペース部の光学長を短セグメントのスペース部の光学長より大きくすることでセグメントの光学長をプラスしているが、長セグメントの回折格子の光学長を短セグメントの回折格子の光学長より大きくすることで、セグメントの光学長をプラスしてもよい。また、セグメントの回折格子およびスペース部の両方の光学長を変化させることで、セグメントの光学長をプラスしてもよい。
半導体レーザ30においては、フロント側への伝搬光とリア側への伝搬光との位相を整合させるために、半導体レーザ30の共振器内を伝搬する光の位相を90度シフトさせる位相シフト構造を有している。本実施例においては、長セグメントSG5が位相シフト構造を有している。具体的には、長セグメントSG5のスペース部において、導波路の幅を一部縮小(または拡大)した領域を設ける。これらを設けたことにより、他の導波路との境界(前後2箇所)において伝搬定数が変化する部分が生じる。この伝搬定数の変化により、上記位相シフトを実現している。この伝搬定数の変化量は、導波路幅の変化量によって決めることができる。なお、この方法によって位相シフトを導入する場合、SG−DFB領域とCSG−DBR側のそれぞれにおける回折格子の構造的なピッチの位相は、全て同じである。
なお、位相シフトを導入する方法は他にも種々ある。SG−DFB領域あるいはCSG−DBR領域側のいずれかの部分を境界にして、回折格子の構造的なピッチの位相をずらすことで位相シフトを実現することもできる。この境界は、スペース部でもよいし、回折格子部でもよい。境界は共振器全体の中央付近(本実施例ではSG5の付近)に付与することが好ましい。また、他の位相シフト構造として、光導波路の一部に他とは屈折率の異なる材料を導入する方法もある。
続いて、SG−DFB領域Aにおける上クラッド層6よりも上部について説明する。利得領域3aは、短セグメントSG4および長セグメントSG5の少なくとも回折格子18を含む領域の上に配置されている。利得領域3aの上方において、上クラッド層6上に、コンタクト層7および電極8が積層されている。コンタクト層7は、例えばp型Ga0.47In0.53As結晶によって構成することができる。電極8は、金等の導電性材料からなる。
パッシブ導波路3bは、短セグメントSG4および長セグメントSG5のスペース部において、利得領域3a以外の箇所に配置されている。したがって、各セグメントにおいて、回折格子18を含む領域に利得領域3aが配置され、スペース部の少なくとも一部の領域にパッシブ導波路3bが配置されている。パッシブ導波路3b上の上クラッド層6上には、絶縁膜9を介してヒータ22が設けられている。ヒータ22には、それぞれ電源電極23およびグランド電極24が設けられている。
なお、長セグメントSG5は、短セグメントSG4側から利得領域3a、パッシブ導波路3b、利得領域3aと配置されており、短セグメントSG4が2つ分構成されたものである。長セグメントSG5は、利得領域、パッシブ導波路、利得領域、パッシブ導波路の順に配置されたものうちCSG−DBR領域B側の利得領域、パッシブ導波路を反対に配置し、利得領域、パッシブ導波路、パッシブ導波路、利得領域の順に配置したものである。このように、長セグメントSG5は、両側に利得領域3a、その内側にパッシブ導波路3bのように配置される。上述したように、この隣り合ったパッシブ導波路は、1つのパッシブ導波路として扱うことができる。
また、長セグメントSG5は、CSG−DBR領域B側の端で利得領域3aを配置している。これは、CSG−DBR領域B側の端にパッシブ導波路3bが配置されていると、長セグメントSG5のパッシブ導波路3bを制御したときに、CSG−DBR領域Bのパッシブ導波路3bに影響が出てしまうためである。よって、CSG−DBR領域B側の端で利得領域3aが配置されている。よって、CSG−DBR領域B側の端で利得領域3aを配置すると、長セグメントSG5は、両側に利得領域3a、その内側にパッシブ導波路3bが配置された構成となる。
各電極8には、共通の電圧Vanodeが印加される。各ヒータ22のグランド電極24は、基準電位を有する共通端子に接続されている(図示しない)。長セグメントSG5のヒータは、短セグメントSG4のヒータ2つ分の構成である。各ヒータ22の電源電極23には、互いに独立した電源が接続されている。この場合、長セグメントSG5のヒータ22を短セグメントSG4のヒータ22と独立して制御できる。
続いて、半導体レーザ30の動作について説明する。電極8に所定の駆動電流を注入することによって、利得領域3aにおいて光が発生する。利得領域3aにおいて発生した光は、光導波層3および光導波層4を繰り返し反射および増幅されてレーザ発振する。各セグメントで反射した光は、互いに干渉する。それにより、SG−DFB領域Aにおいては、ピーク強度が所定の波長間隔を有する離散的な利得スペクトルが生成され、CSG−DBR領域Bにおいては、ピーク強度が所定の波長間隔を有する離散的な反射スペクトルが生成される。利得スペクトルおよび反射スペクトルの組み合わせにより、バーニア効果を利用して、所望の波長で安定してレーザ発振させることができる。
また、半導体レーザ30の温度を、図示しない温度制御装置(TEC:Thermoelectric cooler)によって、所定の値に制御する。さらに、電源電極11を介して各ヒータ10に所定の電力を供給することによって、各ヒータ10にそれぞれ所定の温度で発熱させる。それにより、セグメントSG1〜SG3の屈折率を変化させる。さらに、電源電極22を介して各ヒータ22に所定の電力を供給することによって、各ヒータ22にそれぞれ所定の温度で発熱させる。それにより、短セグメントSG4および長セグメントSG5の屈折率を変化させる。以上の手順により、発振波長を選択することができる。
レーザ発振によって得られるレーザ光は、フロント側端面(SOA領域C側)から外部に出力される。なお、電極21に所定の駆動電流を注入することによって、半導体レーザ30から出力されるレーザ光の光強度を所定の値に制御することができる。本実施例においては、CSG−DBR領域Bの波長特性のピーク同士の強度が波長依存性を有しているため、安定したレーザ発振を実現することができる。
図1に示すように、半導体レーザ30は、第1温度制御装置31上に配置されている。第1温度制御装置31は、ペルチェ素子を含み、TEC(Thermoelectric cooler)として機能する。第1サーミスタ32は、第1温度制御装置31上に配置されている。第1サーミスタ32は、第1温度制御装置31の温度を検出する。第1サーミスタ32の検出温度に基づいて、半導体レーザ30の温度を特定することができる。
波長可変レーザ100においては、検知部50が半導体レーザ30のフロント側に配置されている。検知部50が波長ロッカ部として機能することから、波長可変レーザ100は、フロントロッカタイプと呼ぶことができる。検知部50は、第1受光素子42、ビームスプリッタ51、エタロン52、第2温度制御装置53、第2受光素子54、および第2サーミスタ55を備える。
ビームスプリッタ41は、半導体レーザ30のフロント側からの出力光を分岐する位置に配置されている。ビームスプリッタ51は、ビームスプリッタ41からの光を分岐する位置に配置されている。第1受光素子42は、ビームスプリッタ51によって分岐された2つの光の一方を受光する位置に配置されている。エタロン52は、ビームスプリッタ51によって分岐された2つの光の他一方を透過する位置に配置されている。第2受光素子54は、エタロン52を透過した透過光を受光する位置に配置されている。
エタロン52は、入射光の波長に応じて透過率が周期的に変化する特性を有する。本実施例においては、エタロン52としてソリッドエタロンを用いる。なお、ソリッドエタロンの当該周期的な波長特性は、温度が変化することによって変化する。エタロン52は、ビームスプリッタ51によって分岐された2つの光の他方を透過する位置に配置されている。また、エタロン52は、第2温度制御装置53上に配置されている。第2温度制御装置53は、ペルチェ素子を含み、TEC(Thermoelectric cooler)として機能する。このようなエタロン52の温度を定める第2温度制御装置53の温度設定値は、波長検知部における検知部情報ということができる。
第2受光素子54は、エタロン52を透過した透過光を受光する位置に配置されている。第2サーミスタ55は、エタロン52の温度を特定するために設けられている。第2サーミスタ55は、例えば第2温度制御装置53上に配置されている。本実施例では、第2温度制御装置53の温度を第2サーミスタ55で検出することで、エタロン52の温度を特定している。
メモリ60は、書換え可能な記憶装置である。書き換え可能な記憶装置としては、典型的にはフラッシュメモリが挙げられる。コントローラ70は、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、電源などを備える。RAMは、中央演算処理装置が実行するプログラム、中央演算処理装置が処理するデータなどを一時的に記憶するメモリである。
メモリ60は、波長可変レーザ100の各部の初期設定値およびフィードバック制御目標値をチャネルに対応させて記憶している。チャネルとは、半導体レーザ30の発振波長に対応する番号である。各チャネルの波長は、波長可変レーザ100の波長可変帯域内において、離散的に定められている。例えば、各チャネルは、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)のグリッド波長(50GHz間隔)に対応している。または、ITU−Tグリットの間隔よりも狭めた間隔で、初期設定値を用意してもよい。本実施例においては、各チャネルの波長が基本波長と定義される。
図3は、上記初期設定値およびフィードバック制御目標値を示す図である。図3に示すように、上記初期設定値は、SG−DFB領域Aの電極8に供給される初期電流値ILD、SOA領域Cの電極21に供給される初期電流値ISOA、半導体レーザ30の初期温度値TLD、エタロン52の初期温度値TEtalon、セグメントSG1に対応するヒータ10に供給される初期電力値PHeater1、セグメントSG2に対応するヒータ10に供給される初期電力値PHeater2、セグメントSG3に対応するヒータ10に供給される初期電力値PHeater3、短セグメントSG4に対応するヒータ22に供給される初期電力値PHeater4、および長セグメントSG5に対応するヒータ22に供給される初期電力値PHeater5を含む。なお、ヒータの抵抗はあらかじめ得られているため、図3において、初期電力値PHeater1〜PHeater5は、電流値に変換して記載されている。
これら初期設定値は、チャネルごとに定められている。上記フィードバック制御目標値は、コントローラ70のフィードバック制御を行う際の目標値である。フィードバック制御目標値は、第1受光素子42が出力する光電流の目標値Im1、および第1受光素子42が出力する光電流Im1に対する第2受光素子54が出力する光電流Im2の比の目標値Im2/Im1を含む。このような目標値Im2/Im1についても、波長検知部の検知部情報ということができる。また、メモリ60には、温度補正係数C1が格納されている。温度補正係数C1の詳細については後述する。本実施例においては、温度補正係数C1は、各チャネルに共通の値である。なお、これらの各値は、波長可変レーザ100の出荷前に、波長計を使ったチューニングによって個体ごとに取得される。
本実施例に係る波長可変レーザ100は、要求波長が基本波長と一致しなくても、当該要求波長を出力することができる。基本波長と異なる波長での出力を可能とする制御のことを、以下、グリッドレス制御と称する。図4は、グリッドレス制御における要求波長と基本波長との関係を表す図である。図4に示すように、グリッドレス制御においては、要求波長は、基本波長と隣接する他の基本波長との間の波長である。なお、要求波長は、基本波長と一致していてもよい。
図5は、グリッドレス制御の原理を示す図である。図5において、横軸は波長を示し、縦軸は比Im2/Im1(エタロン52の透過率)の正規化値を示す。図5において、実線は、エタロン52の初期温度値TEtalonに対応する波長特性である。また、点線は、エタロン52の温度を第2温度制御装置53によって上昇させた場合の波長特性である。ここで、実線上の黒丸における比Im2/Im1がフィードバック目標値として採用されている場合、エタロン52が初期温度値TEtalonであると、基本波長で発振することになる。一方、エタロン52が点線で示される波長特性に対応した温度であると、比Im2/Im1が基本波長を得るための値(点線上の黒丸)であっても、実際の発振波長はエタロン特性の変更分だけ、その基本波長からシフトする。つまり、要求波長と基本波長との波長差だけエタロン特性をシフトすることで、フィードバック目標値である比Im2/Im1はそのままで、要求波長を実現することができる。すなわち、要求波長と基本波長との波長差分ΔFに基づき、エタロン温度を変更するための演算をし、これをエタロン温度として適用することで、要求波長を実現することができる。
本実施例においては、フィードバック制御目標値を変更しないが、コントローラ70は、上記波長差分ΔFを用いて、初期設定値から更新設定値を演算する。更新設定値には、要求波長を実現するための、エタロン52の温度値と、半導体レーザ30の波長調整用の制御パラメータとが含まされる。まず、エタロン52の温度値について説明する。上記したように、エタロン52の波長特性は、その温度にしたがってシフトする。エタロン52における周波数変動量/温度変化量[GHz/℃]を、エタロン52の温度補正係数C1と称する。なお、ここでは波長を周波数で表現している。温度補正係数C1は、波長可変レーザの駆動条件の波長変化に対する変化率に相当する。
要求波長の制御を実現するためのエタロン52の設定温度をTetln_A[℃]とする。またエタロン52の初期温度、すなわち選択された基本波長に対応したエタロン52の温度をTetln_B[℃]とする。Tetln_BはTEtalonに相当し、メモリ60から取得される。さらに、基本波長と要求波長との波長差分(絶対値)をΔF[GHz]とする。この場合、各パラメータの関係は、下記式(1)のように表すことができる。式(1)に基づいて要求波長を得るために必要な設定温度Tetln_Aを求めることができる。
Tetln_A=Tetln_B+ΔF/C1 (1)
第2温度制御装置53の温度を設定温度Tetln_Aに制御することによって、比Im2/Im1をそのまま利用して、要求波長を得ることが可能となる。なお、設定温度Tetaln_Aを更新設定値として用いる。なお、第2温度制御装置53の温度を設定温度Tetln_Bをそのまま利用し、比Im2/Im1を更新設定値として利用することによっても、要求波長で発振させる制御を実行することができる。
次に、半導体レーザ30の波長調整用の制御パラメータについて説明する。半導体レーザ30においては、短セグメントSG4の屈折率を制御することによって、SG−DFB領域Aの波長特性を調整することができる。それにより、SG−DFB領域Aの利得スペクトルを調整することができ、その結果、半導体レーザ30の発振波長を制御することができる。また、この制御に際しては、長セグメントSG5の屈折率制御による位相シフト量の調整と、セグメントSG1〜SG3の屈折率制御によるCSG−DBR領域Bの反射スペクトルの調整を行う。ここで、PHeater1〜PHeater5は、更新設定値に含まれる波長調整用の制御パラメータに相当する。
PHeater1〜PHeater5の更新設定値は、初期設定値から演算により求めることができる。本実施例においては、波長差分ΔFに応じて係数Aを用いてPHeater4の更新設定値を求める。これに応じて、波長差分ΔF、係数Aおよび係数B1を用いてPHeater1〜PHeater3の更新設定値を求め、波長差分ΔF、係数Aおよび係数B2を用いてPHeater5の更新設定値を求める。このようにすることで、セグメントSG4に対応するヒータ22の制御情報に応じて、セグメントSG1〜SG3に対応するヒータ10の制御情報およびセグメントSG5に対応するヒータ22の制御情報を演算することができる。その結果、波長検知部における検知部情報だけを更新する場合に比べて、高速に要求波長を実現することができる。
なお、SG−DFB領域AとCSG−DBR領域Bは、縦モードの間隔がそれぞれ異なっている。これを利用して、半導体レーザ30は、バーニア効果を利用した波長選択が可能になる。ここで、バーニア効果によって特定の縦モード波長が選択された状態で、SG−DFB領域AとCSG−DBR領域Bの波長特性を同じだけシフトさせれば、選択された縦モード波長は、そのバーニア効果(選択効果)を維持したまま、シフト分だけ波長を変化させることができる。このため、ヒータが設けられたSG−DFB領域AとCSG−DBR領域Bを備える場合には、それぞれに設けられたヒータを同じだけ変更すれば、上記バーニア効果を維持した状態での波長シフトが実現できる。しかし、SG−DFB領域AとCSG−DBR領域Bは構造が異なることが多く、同じ温度変化を与えると、バーニア効果が破たんする場合が考えられる。そこで、本実施例では、SG−DFB領域AとCSG−DBR領域Bのヒータ温度を演算するにあたって、前記波長差分に異なる係数を適用する。
本実施例においては、PHeater1〜PHeater3の更新設定値を求めるに際して、温度を用いる。初期設定値のPHeater1で実現されるセグメントSG1の温度をT1とし、PHeater1の更新設定値で実現されるセグメントSG1の温度をT´1とする。初期設定値のPHeater2で実現されるセグメントSG2の温度をT2とし、PHeater2の更新設定値で実現されるセグメントSG2の温度をT´2とする。初期設定値のPHeater3で実現されるセグメントSG3の温度をT3とし、PHeater3の更新設定値で実現されるセグメントSG3の温度をT´3とする。初期設定値のPHeater4で実現される短セグメントSG4の温度をT4とし、PHeater4の更新設定値で実現される短セグメントSG4の温度をT´4とする。初期設定値のPHeater5で実現される長セグメント5の温度をT5とし、PHeater5の更新設定値で実現される長セグメント5の温度をT´5とする。なお、T1〜T5およびT´1〜T´5は、半導体レーザ30の温度(第1温度制御装置31の温度)からの温度差を表している。
まず、T´4の演算方法について説明する。上記の係数Aは、短セグメントSG4における温度変化量/周波数変動量[℃/GHz]と定義することができる。ここでは波長を周波数で表現している。なお、短セグメントSG4における温度変化量は、短セグメントSG4に対応するヒータ22の温度変化量と同義である。係数Aは、半導体レーザ30の駆動条件の波長変化に対する変化率に相当する。この係数Aは、あらかじめ実験等によって得られた図6(a)のグラフの傾きとして得られる。図6(a)において、横軸は半導体レーザ30の発振周波数を示し、縦軸は短セグメントSG4の温度を示す。係数Aを用いることによって、下記式(2)に従って、T´4を求めることができる。係数D4を利用して、下記式(3)に従って、T´4を電力変化量P4に変換することができる。係数D4は、電力変化量/温度変動量(mW/℃)である。
T´4=T4+ΔF×A (2)
P4=T´4×D4 (3)
次に、T´1〜T´3の演算方法について説明する。上記の係数B1は、(セグメントSG1〜SG3における温度変化量(℃))/(短セグメントSG4における温度変化量(℃))と定義することができる。ここでは波長を周波数で表現している。セグメントSG1〜SG3における温度変化量は、セグメントSG1〜SG3に対応するヒータ10の温度変化量と同義である。係数B1は、あらかじめ実験等によって得られた図6(b)のグラフの傾きとして得られる。図6(b)において、横軸は短セグメントSG4における温度変化量を示し、縦軸はセグメントSG1〜SG3における温度変化量を示す。係数B1を用いることによって、下記式(4)に従って、T´1〜T´3を求めることができる。係数Aおよび係数B1を用いることによって、SG−DFB領域Aの波長特性変化に合わせて、CSG−DBR領域Bの反射スペクトルを変化させることができる。また、係数D1〜D3を利用して、下記式(5)に従って、T´1〜T´3を電力変化量P1〜P3に変換することができる。係数D1〜D3は、電力変化量/温度変動量(mW/℃)であり、ヒータ10の長さ(発熱量)に応じて設定される。
T´1=T1+ΔF×A×B1
T´2=T2+ΔF×A×B1
T´3=T3+ΔF×A×B1 (4)
P1=T´1×D1
P2=T´2×D2
P3=T´3×D3 (5)
次に、T´5の演算方法について説明する。上記の係数B2は、(長セグメントSG5における温度変化量(℃))/(短セグメントSG4における温度変化量(℃))と定義することができる。ここでは波長を周波数で表現している。長セグメントSG5における温度変化量は、長セグメントSG5に対応するヒータ22の温度変化量と同義である。係数B2は、あらかじめ実験等によって得られた図6(c)のグラフの傾きとして得られる。図6(c)において、横軸は短セグメントSG4における温度変化量を示し、縦軸は長セグメントSG5における温度変化量を示す。係数B2を用いることによって、下記式(6)に従って、T´5を求めることができる。なお、係数Aおよび係数B2を用いることによって、SG−DFB領域Aの波長特性変化に合わせて、位相をシフトさせることができる。また、係数D5を利用して、下記式(7)に従って、T´5を電力変化量P5に変換することができる。係数D5は、電力変化量/温度変動量(mW/℃)である。
T´5=T5+ΔF×A×B2 (6)
P5=T´5×D5 (7)
本実施例においては、電力変化量P1〜P3を初期電力値PHeater1〜PHeater3に足し合わせ、電力変化量P4を初期電力値PHeater4に足し合わせ、電力P5を初期電力値PHeater5に足し合わせることによって、PHeater1〜PHeater3の更新設定値を求めることができる。
以下に具体例を示す。いま、要求波長として196.1070[THz]が指示されたとする。典型的には、この要求波長が直接に値として、外部ユニット(図示せず)からコントローラ70へ指示される。この際の要求波長は、メモリ60に格納されている基本波長同士の間の波長帯域の全域にわたって受容される。つまり、入力された要求波長が基本波長に該当していなくとも、その入力を拒否しない。また、波長可変レーザ100は、入力された要求波長が基本波長から最大で隣接する基本波長に一致するまでの間の波長全域にわたって、波長制御が可能に構成される。このためには、エタロン52の波長特性のシフト幅が、隣接する基本波長の差の範囲にわたって可変であればよい。
さらに、メモリ60には、図3に示した基本波長のうち、最大値あるいは最小値となる波長(スタートグリット波長)、およびグリット間の波長差(グリット間隔波長)が記録されている(図示せず)。コントローラ70は、これらパラメータに基づき、指示された要求波長を用いて演算を実施することで、基本波長に対応したチャネル番号Chを求める。
典型的には、要求波長とスタートグリット波長との差を求め、これをグリット間隔波長で除した整数部を、チャネル番号Chとして採用する演算が実施される。また、コントローラ70は、演算によって得られたチャネル番号Chに対応するグリット波長を基本波長として求め、基本波長と要求波長との波長の差(波長差分ΔF)を演算する。基本波長を得るための典型的な演算は、前記チャネル番号Chとして得られた値にグリット間隔波長を乗じた値を前記スタートグリット波長に加算することで実行される。ここでは、基本波長は196.1000[THz]である。要求波長と、このようにして得られた基本波長との差を演算することで、波長差分ΔFを得ることができる。ここでは、演算によって得られた波長差分ΔFは+7.0[GHz]である。
次に、コントローラ70は、T´4を求める。まず、T4を10℃とする。このとき、波長差分ΔFを+7.0[GHz]、係数Aを−0.0918[℃/GHz]とすると下記式(8)からT´4は、9.36℃となる。これを電力変化量に変換すると、下記式(9)から102.18mWとなる。
T´4=T4(10℃)+ΔF(7GHz)×A(−0.0918℃/GHz)=9.36℃ (8)
P4=T´4×D4=9.36℃×10.92mW=102.21mW (9)
次に、T´1を求める。まず、T1を5℃とする。このとき、波長差分ΔFを+7.0[GHz]、係数Aを−0.0918[℃/GHz]、係数B1を0.85[℃/℃]とすると、下記式(10)からT´1は、4.45℃となる。これを電力変化量に変換すると、21.89mWとなる。
T´1=T1(5℃)+ΔF(7GHz)×A(−0.0918℃/GHz)×B1(0.85)=4.45℃ (10)
P1=T´1×D1=4.45℃×4.92mW=21.89mW (11)
次に、T´2を求める。まず、T2を10℃とする。このとき、波長差分ΔFを+7.0[GHz]、係数Aを−0.0918[℃/GHz]、係数B1を0.85[℃/℃]とすると下記式(12)からT´2は、9.45℃となる。これを電力変化量に変換すると、31.37mWとなる。
T´2=T2(10℃)+ΔF(7GHz)×A(−0.0918℃/GHz)×B1(0.85)=9.45℃ (12)
P2=T´2×D2=9.45℃×3.32mW=31.37mW (13)
次に、T´3を求める。まず、T3を15℃とする。このとき、波長差分ΔFを+7.0[GHz]、係数Aを−0.0918[℃/GHz]、係数B1を0.85[℃/℃]とすると下記式(14)からT´3は、14.45℃となる。これを電力変化量に変換すると、44.94mWとなる。
T´3=T3(15℃)+ΔF(7GHz)×A(−0.0918℃/GHz)×B1(0.85)=14.45℃ (14)
P3=T´3×D3=14.45℃×3.11mW=44.94mW (15)
次に、T´5を求める。まず、T5を2℃とする。このとき、波長差分ΔFを+7.0[GHz]、係数Aを−0.0918[℃/GHz]、係数B2を1.00[℃/℃]とすると下記式(16)からT´5は、1.36℃となる。これを電力変化量に変換すると、4.95mWとなる。
T´5=T5(2℃)+ΔF(7GHz)×A(−0.0918℃/GHz)×B2(1.00)=1.36℃ (16)
P5=T´5×D5=1.36℃×3.64mW=4.95mW (17)
図7は、波長可変レーザ100の起動手順を説明するためのフローチャートである。図7に示すように、コントローラ70に要求波長が入力される(ステップS1)。この要求波長は、図示しない外部入出力装置からの入力によるものである。典型的にはRS232C規格に対応した入出力装置が採用される。次に、コントローラ70は、一例として、要求波長に最も近い基本波長を選択する(ステップS2)。
次に、コントローラ70は、基本波長と要求波長との波長差分ΔFを算出する(ステップS3)。次に、コントローラ70は、設定値を要求波長に対応して更新(算出)し、更新設定値を得る(ステップS4)。次に、コントローラ70は、更新設定値を自身のRAMに書き込む(ステップS5)。次に、コントローラ70は、RAMに書き込まれた更新設定値を用いて半導体レーザ30を駆動させる(ステップS6)。なお、SOA領域Cについては、この時点では半導体レーザ30から光が出力されないように制御する。
次に、コントローラ70は、第1サーミスタ32の検出温度TH1がTLDの範囲内になるように、ATC(Automatic Temperature Control)制御を行う。また、第1サーミスタ32の検出温度TH1がTLDの範囲内にあるか否かを判定する(ステップS7)。ここでTLDの範囲とは、更新設定値の温度値TLDを中心とする所定範囲である。ステップS7において「No」と判定された場合、コントローラ70は、第1サーミスタ32の検出温度TH1が温度値TLD近づくように第1温度制御装置31に供給される電流値を変更する。
コントローラ70は、ステップS7と並行して、第2サーミスタ55の検出温度TH2が設定範囲内になるように、ATC(Automatic Temperature Control)制御を行う。また、第2サーミスタ55の検出温度TH2が設定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS8)。この場合の設定範囲は、更新設定値に含まれる設定温度Tetln_Aに基づいて決定される。例えば、上記設定範囲は、設定温度Tetln_Aを中心とする所定範囲とすることができる。ステップS8において「No」と判定された場合、コントローラ70は、第2サーミスタ55の検出温度TH2が設定温度Tetln_Aに近づくように第2温度制御装置53に供給される電流値を変更する。なお、ステップS8において「Yes」と判定された場合においても、上記の第2温度制御装置53によるATC制御の動作は継続する。
コントローラ70は、ステップS7およびステップS8の両方で「Yes」と判定されるまで待機する。ステップS7およびステップS8の両方で「Yes」と判定された場合、コントローラ70は、シャッタオープンの動作を行う(ステップS9)。具体的には、SOA領域Cの電極21に供給される電流を初期電流値ISOAに制御するAPC(Automatic Power Cotrol)制御を動作する。それにより、半導体レーザ30から更新波長のレーザ光が出力される。なお、ステップS9においても、APC(Automatic Power Cotrol)制御の動作は継続する。
次に、コントローラ70は、第1温度制御装置31による温度値TLDを制御目標とした温度制御を終了する(ステップS10)。次に、コントローラ70は、第1温度制御装置31によるAFC制御を開始する(ステップS11)。つまり、第1温度制御装置31の温度が、フィードバック制御目標値の比Im2/Im1を満たすようにフィードバック制御される。エタロン52の入力光と出力光の比(前後比)は、半導体レーザ30の発振波長を示している。また、第1温度制御装置31は半導体レーザ30の波長を制御するパラメータである。すなわちステップS11では、前後比がIm2/Im1になるように第1温度制御装置31の温度をフィードバック制御することで、半導体レーザ30の波長を制御するAFC制御が動作される。それにより、要求波長が実現される。コントローラ70は、比Im2/Im1がステップS2で選択された基本波長における目標値Im2/Im1を中心とする所定範囲内にあることを確認すると、ロックフラグを出力する(ステップS12)。その後、フローチャートの実行が終了する。
本実施例によれば、PHeater4の更新設定値が、波長差分ΔFと短セグメントSG4に対応するヒータ22の温度変化量との関係(図6(a))を用いて設定される。PHeater1〜PHeater3の更新設定値は、波長差分ΔFと短セグメントSG4に対応するヒータ22の温度変化量との関係(図6(a))が、半導体レーザ30の波長変化に対する短セグメントSG4の温度変化量とセグメントSG1〜SG3の温度変化量との相関関係(図6(b))を用いて補正されたものである。PHeater5の更新設定値は、波長差分ΔFと短セグメントSG4に対応するヒータ22の温度変化量との関係(図6(a))が、半導体レーザ30の波長変化に対する短セグメントSG4の温度変化量と長セグメントSG5の温度変化量との相関関係(図6(c))を用いて補正されたものである。この場合、セグメントSG1〜SG5をそれぞれ独立して制御する場合と比較して、制御パラメータを低減することができる。その結果、波長調整の精度を向上させることができる。