JP6381597B2 - 高減衰構造物 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1では、内燃機関のカバー類にスチール製の補強板を貼り合わせて溶接する内燃機関の騒音低減装置が提案されている。この特許文献1の騒音低減装置では、予め湾曲させておいた補強板の凸面側をカバー類の制振対象面に向けて無理に平板状に戻しながら溶接するもので、補強板が湾曲状に戻ろうとする応力によりカバー類の固有振動数を高めるものである。
本発明者らの方法は、具体的には、制振対象となる精密構造体についてFEM解析を行って、特に変位の大きい面を制振対象面とし、さらに制振対象面の振動の腹や節の位置を目安に、制振部材を固定するボルトの位置を決定するものである。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、板状の制振部材を固定するボルト位置の決定が容易で、かつ高い減衰効果を有する高減衰構造物の提供を目的とする。
また、制振部材を制振対象面に固定するボルトを振動の腹の位置では固定せず、振動の腹について対称な位置のみで固定するとともに、制振部材を制振対象面に全面密着させることにより、効果的に制振対象部の振動を減衰させることができる。
尚、ここで、「制振対象面」の「振動の腹」や「振動の節」とは、制振対象部全体の腹や節が制振対象面の外にある場合は、制振対象部の腹や節となる点又は線を制振対象面に垂直投影した線又は点をいい、「制振部材」の「振動の腹」や「振動の節」は、制振部材全体の振動の腹や節となる点又は線を制振部材の制振対象面と密着させる面に垂直投影させた点又は線をいうものとする。また、「制振対象面の長さ」は、当該制振対象面を備える正面壁、又は背面壁の長さをいうものとする。
図6は、第1実施形態に係る高減衰構造物100を用いて行った振動実測試験の様子を示している。高減衰構造物100は、長尺直方体の制振対象部10と、制振対象部10の最大面となる正面壁11、背面壁12(図2(e)参照)の内面にそれぞれ貼設して制振対象部10の振動を減衰させる一対の制振部材20,20と、制振部材20を制振対象部10に固定するボルト30とを備えている。
制振部材20は、制振対象面11aに固定するものと、制振対象面12aに固定するものと合わせて一対が設けられる。制振部材20は、その振動の節を制振対象部10の制振対象面11a,12aの振動の節を極力近づけるために、制振対象面の長さ1500mmの長さの94%に当たる1410mmに設けられている。
挿入スリット15aの寸法は、幅15mm×長さ162mm、内側角部がR10mmである。
(実施例1)
上記寸法の制振対象部10及び一対の制振部材20をSS400軟鋼板から形成し、強度区分A2−70のM6ステンレス製ボルト30を、図7に示したように、両端から3列目の4箇所で雌ネジ穴20aに螺合させて、一対の制振部材20を制振対象部10の一対の制振対象面11a,12aに固定して試験体とした。ボルト30は、締付トルクを4.2N・mとした。
ボルト30の締付トルクを5.9N・mとした以外は実施例1と同様にして、1次及び2次の固有振動数、減衰比及び減衰比倍率を求めた。
ボルト30の取り付け位置を図7に示したように両端から2列目に変更した以外は実施例1と同様にして、1次及び2次の固有振動数、減衰比及び減衰比倍率を求めた。
ボルト30の締付トルクを5.9N・mに変更した以外は実施例3と同様にして、1次及び2次の固有振動数、減衰比及び減衰比倍率を求めた。
試験体を制振対象部10のみとし制振部材20を省略した以外は実施例1と同様にして試験を行って、1次及び2次の固有振動数、減衰比求めた。
ボルト30の本数を6本としこれを図7に示したように中央と両端の3列に配置して制振部材20を制振対象部10に取り付けた以外は、実施例1と同様にして試験を行って、1次及び2次の固有振動数、減衰比及び減衰比倍率を求めた。
得られた結果から、制振対象部10の制振対象面11a,12aの90%以上の長さを有する制振部材をボルトにより密着固定することで、1次振動の減衰比を高められることがわかった。
図10は、本発明の第2実施形態に係る高減衰構造物200である。高減衰構造物200は、いわゆるガントリーであり、梁の部分が直方体の箱状をなす制振対象部210を構成し、制振部材220と、ボルト30と、一対の脚部240,240とを備えている。
尚、第2実施形態において、第1実施形態と共通する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
制振部材220は、振動の腹220Aを、制振対象面211a,212aの振動の腹211A,212Aに重ねるようにして、制振対象面211a,212aに貼着され、ボルト30は、制振対象面の1次振動の節211B,212Bから制振対象面211a,212aの長さの10%以内に、かつ制振対象部の2次振動の節210Dの外側に設けられている。
ボルト30の締付トルクは4.0N・m以上6.0N・mである。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第1実施形態と同じ制振対象部10を用い、制振部材の長さのみを短く変更したもので、図6に示した第1実施形態と同じ方法で振動実測試験を行って、制振部材の長さと制振効果の関係を調べるための実施形態である。
図11は、本発明の第3実施形態に係る実施例5の制振部材320aを示している。制振部材320aは、第1実施形態の制振部材20と同じSS400により、幅150mm×長さ1350mm×板厚9mmに形成され、3行×7列に並んだ21個の雌ネジ穴20a,20a,…を備えている。雌ネジ穴20a間の寸法a、b、dは、制振対象部10のボルト孔10a間の寸法と共通で、f=123mm、g=10mmである。一対の制振部材320aは、図16の模式図に示すように、その振動の腹321Aを制振対象面11a,11bの振動の腹11A,12Aに合わせた状態で、制振対象部10の両端から3列目のボルト孔10aに外側から通した4本の強度区分A2−70のM6ボルト30を制振部材320aの両端から2列目の雌ネジ穴20aに締付トルク4.2N・mで螺合することにより、制振対象部10に固定した。こうして、実施形態1と同様にして振動実測試験を行った。
図12は、本発明の第3実施形態に係る実施例6の制振部材320bを示している。実施例6は、制振部材320bの寸法fを48mmとした他は、実施例5と同様にして、振動実測試験を行った。
図13は、本発明の第3実施形態に係る実施例7の制振部材320cを示している。実施例7は、制振部材320cの寸法fを10.5mmとした他は、実施例5と同様にして、振動実測試験を行った。
図14は、本発明の第3実施形態に係る実施例8の制振部材320dを示している。実施例8は、制振部材320dの雌ネジ穴20aを3行×5列に15個配設し、寸法fを111mmとし、制振部材320dを、図16の模式図に示すように、制振対象部10の両端から3列目のボルト孔10aに外側から通した4本のボルト30を制振部材320dの両端から1列目の雌ネジ穴20aに締付トルク4.2N・mで螺合することにより、制振対象部10に固定した他は、実施例5と同様にして、振動実測試験を行った。
図15は、本発明の第3実施形態に係る実施例9の制振部材320eを示している。実施例9は、制振部材320eの寸法fを36mmとした他は、実施例8と同様にして、振動実測試験を行った。
実施例5〜実施例9の振動実測試験の結果を図16に、制振部材の長さと減衰比、及び減衰比倍率(制振対象部10のみの減衰比に対する倍率)の関係を図17に示す。
また、図17に示すように、制振部材が長くなるに従い、減衰効果が大きくなること、制振部材が制振対象面の長さの90%を超えると、急に減衰効果が高まることが分かった。
さらに、図7と図16の比較から、ボルト30の締付位置の制振対象面の1次振動の節11Bからの距離が小さければ、具体的には制振対象面11aの長さの2%以内(1.1%)であると、制振部材が短くても大きな制振効果が得られることが分かった。
10,210 制振対象部
11,211 正面壁
12,212 背面壁
11a,12a,211a,212a 制振対象面
11A,12A,211A,212A 制振対象面の振動の腹
11B,12B,211B,212B 制振対象面の振動の節
20,220,320a,320b,320c,320d,320e 制振部材
21A,21A,220A,321A 制振部材の振動の腹
21B,22B, 制振部材の振動の節
30 ボルト
Claims (7)
- 制振対象部の制振対象面に制振部材を貼設して制振対象部の振動を減衰させるよう構成された高減衰構造物であって、
直方体状の箱体からなり、6つの壁のうち最大面積を有する正面壁、及び/又は背面壁の内面を制振対象面とする制振対象部と、
前記制振対象面に貼設され、前記制振対象面より短い長方形の板状をなす制振部材と、
前記制振部材を前記制振対象部に固定するボルトと
を備え、
前記制振対象面、及び前記制振部材は、それぞれの長手方向の中央に位置する1次曲げモードの振動の腹の位置が一致するよう重ねられており、
前記制振部材は、全長にわたり前記制振対象面に密着するよう構成され、
前記ボルトは、前記振動の腹を挟んで対称な位置にのみ固定されていることを特徴とする高減衰構造物。 - 前記ボルトが、前記制振対象面の1次曲げモードの振動の節から制振対象面の長さの10%以下の距離の範囲に固定されている請求項1に記載の高減衰構造物。
- 前記ボルトが、前記制振対象面の1次曲げモードの振動の節から制振対象面の長さの2%以下の距離の範囲に固定されている請求項1に記載の高減衰構造物。
- 前記制振部材は、前記振動対象面の1対の1次曲げモードの振動の節間の距離以上の長さを有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高減衰構造物。
- 前記制振部材は、前記制振対象面の90%以上の長さを有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高減衰構造物。
- 前記制振対象面の1次曲げモードの振動の節と制振部材の1次曲げモードの振動の節の距離が制振対象面の長さの10%以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の高減衰構造物。
- 前記ボルトが、前記制振対象面の1次曲げモードの振動の節と前記制振部材の1次曲げモードの振動の節の間に固定されている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の高減衰構造物。
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