JP6377990B2 - 溝付き樹脂成形品及び複合成形品の製造方法、溝付き中空形状樹脂成形品及び複合成形品 - Google Patents
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Description
図1は、本発明に係る溝付き樹脂成形品1を製造する製造装置30の一例を示す図である。製造装置30は、レーザを照射するレーザ照射装置31と、このレーザ照射装置31から照射されたレーザを反射するミラー32と、このミラーからの反射光を受ける樹脂成形品10’を載せる載置台33とを備える。
溝形成工程は、無機充填剤11を含有する樹脂成形品10’の所要の面10’aに対し、ミラー32を介してレーザ照射装置31からレーザを照射し、ミラー32からの反射光で樹脂の一部除去を行う工程である。
(樹脂)
樹脂の種類は、レーザの照射等により除去され、結果として溝12を形成できるものであれば、特に限定されるものではなく、熱可塑性であってもよいし、熱硬化性であってもよい。樹脂の好適な材質として、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)等が挙げられる。
無機充填剤11は、樹脂成形品10’の樹脂の一部を除去することにより溝12を形成する際に、溝12から露出するものであれば特に限定されない。
続いて、レーザの照射について説明する。
ミラー32の載置角度、及び樹脂成形品10’の載置台33への載置角度は特に限定されるものでなく、レーザ照射装置31からレーザを照射したときに、溝12を形成する箇所にレーザを好適に照射できる角度であればよい。
レーザの照射は、照射対象材料の種類やレーザ装置の出力等をもとに設定されるが、樹脂に適度のエネルギーを照射して溝を形成しないと、無機充填剤が十分に露出しなかったり、設定どおりの幅や深さの溝を形成することが難しかったりするため、複数回に分けて行うことが好ましい。
図2は、溝付き樹脂成形品10のうち、レーザ照射部位とレーザ非照射部位とにより形成される凹凸を示す概略断面図である。レーザの照射によって得られる溝付き樹脂成形品10の表面には溝12が形成されている。溝12では、無機充填剤11が露出されている。無機充填剤が溝の両側に位置する山の間に架かることで、他の成形品と一体化して複合成形品を得る際、溝に入り込んだ他の成形品に対する高いアンカー効果を発揮することができる。そして、樹脂の一部除去により溝12を形成するとともに溝の少なくとも表面側において側面から露出し溝に照射されるレーザを一部遮蔽する無機充填剤11の一部を除去することにより、溝12の側面12aから繊維状無機充填剤11を溝側面より突出した状態で露出させることができる。無機充填剤11の少なくとも一部を除去することで、溝12に露出する無機充填剤11によるレーザの遮蔽効果が減ることで、溝の深くまでレーザが効果的に照射出来るため、溝をより深くすることができ、これにより、他の成形品20(図7)と複合成形したときのアンカー効果を高めることができる。また、他の成形品と一体化して複合成形品を得る際、少なくとも表面側において露出する無機充填剤11の端部を突出する状態で一部を除去し、とりわけ溝12の中央部の無機充填剤11を除去することで、流動状態にある他の成形品の溝への入り込みを容易にし、溝が深くとも高いアンカー効果を得ることができる。
図3及び図4は、溝形成工程の他の一例を示す図である。複合成形品の形状は複雑化しており、例えば、筒状の樹脂成形品の内側で他の成形品と一体化させた複合成形品等も提案されている。筒状の樹脂成形品の内側で他の成形品と好適に一体化できるようにするため、溝形成工程は、無機充填剤を含有する中空形状の樹脂成形品16’の内壁面16’aに対し、ミラー42を介してレーザ照射装置41からレーザを照射し、ミラー42からの反射光で内壁面16’aにおける樹脂の一部除去を行い、溝を形成する工程であることが好ましい。
本発明に係る複合成形品の製造方法は、特に限定されるものでないが、上記溝付き樹脂成形品の製造方法を使用した後、溝12を有する面12aを接触面12aとして他の成形品20と射出成型により一体化して複合成形品を製造する工程を含むことが好ましい。
未硬化材料を供給する手法は特に限定されるものでないが、一次成形品のレーザ被照射領域10bを有する面に射出注入された高温の未硬化材料との接触による熱伝達により溶融し、未硬化材料と高い圧力で接合できる点で、射出成形による多重成形法を用いることが好ましい。
硬化工程は、未硬化材料供給工程で供給した未硬化材料を硬化する工程である。これら低結晶化工程、未硬化材料供給工程及び硬化工程を経ることで、多重成形による硬化性樹脂との複合成形品1が得られる。
〔溝付き樹脂成形品〕
ガラス繊維入りポリブチレンテレフタレート(製品名:ジュラファイド(登録商標)PPS 1140A64,ウィンテックポリマー社製)を下記(ジュラネックスにおける射出成形の条件)に記載の条件で射出成形した射出成形品に、照射回数が30回になるように、図1に記載の製造装置30を用いて、ミラー32の載置角度を水平面に対して45度にし、樹脂成形品10’の載置角度を水平面に対して90度にして、レーザ照射装置31からレーザを水平方向に対して垂直方向からミラー32に向けて同心円状に照射した。レーザの発振波長は1.064μm、最大定格出力は13W(平均)とし、出力は90%、周波数は40kHz、走査速度は1000mm/sとした。これにより、溝幅が100μmである溝付き樹脂成形品10を得た。
(ジュラファイドPPSにおける射出成形の条件)
予備乾燥:140℃、3時間
シリンダ温度:320℃
金型温度:140℃
射出速度:20mm/sec
保圧:50MPa(500kg/cm2)
上記の溝付き樹脂成形品について、溝を有する面を電子顕微鏡(SEM)で拡大観察した。結果を図6及び図7に示す。図6の倍率は90倍であり、図7の倍率は270倍である。
〔溝付き樹脂成形品〕
上記PPS 1140A64を上記(ジュラファイドPPSにおける射出成形の条件)に記載の条件で図8の(1)に示す形状に射出成形した射出成形品に、レーザを、照射回数が30回になるように、射出成形品の表面に対して垂直方向から格子状に照射した(図8の(2))。レーザの照射条件は実施例と同じであった。
上記溝付き樹脂成形品について、レーザの照射によって形成された溝を有する面を接触面として射出成形用金型にインサートし、ポリアセタール樹脂(製品名:ジュラコン(登録商標)POM M90−44,ポリプラスチックス社製)を下記(ジュラコンPOMにおける射出成形の条件)に記載の条件で、図8の(3)に示すように射出成形した。これにより、参考例に係る複合成形品を得た。
(ジュラコンPOMにおける射出成形の条件)
予備乾燥:80℃、3時間
シリンダ温度:190℃
金型温度:80℃
射出速度:16mm/sec
保圧:80MPa(800kg/cm2)
[強度]
参考例に係る複合成形品の接合強度を評価するため、参考例に係る複合成形品について破壊荷重を測定した。破壊荷重の測定は次のようにして行った。測定機器としてテンシロンUTA−50kN(オリエンテック社製)を使用し、クロスヘッド速度が1mm/分の条件で行った。また、評価は複合成形体(131mm長さ、13mm幅、6.5mm厚み)を破壊に至るまで引張ることで接合強度を測定した。
上記の溝付き樹脂成形品について、溝を有する面を電子顕微鏡(SEM)で拡大観察した。また、参考例に係る複合成形品を作成する際に用いた溝付き樹脂成形品を電子顕微鏡(SEM)で拡大観察した。結果を図8、図9及び表1に示す。
10 溝付き樹脂成形品
11 繊維状無機充填剤
12 溝
12a 溝の側面
20 他の成形品
30 製造装置
31 レーザ照射装置
32 ミラー
33 載置台
Claims (6)
- 無機充填剤を含有する樹脂成形品の所要の面に対し、ミラーを介してレーザを照射し、前記ミラーからの反射光で樹脂の一部除去を行い、側面から前記無機充填剤が露出された溝を形成し、前記無機充填剤は溝の両側に位置する山の間に架かる溝形成工程を含む、溝付き樹脂成形品の製造方法。
- 前記溝形成工程は、前記無機充填剤を含有する中空形状の前記樹脂成形品の内壁面に対し、前記ミラーを介して前記レーザを照射し、前記ミラーからの反射光で前記内壁面における樹脂の一部除去を行い、前記溝を形成する工程である、請求項1に記載の溝付き樹脂成形品の製造方法。
- 前記ミラーは、錐状であり、
前記溝形成工程は、前記ミラーを前記樹脂成形品の中空部に入り込むように設置し、前記樹脂成形品の内壁面に対し、前記ミラーを介して前記レーザを照射し、前記ミラーからの反射光で前記内壁面における樹脂の一部除去を行い、前記溝を形成する工程である、請求項2に記載の溝付き樹脂成形品の製造方法。 - 請求項1から3のいずれかに記載の溝付き樹脂成形品の製造方法を使用した後、前記溝を有する面を接触面として他の成形品と射出成型により一体化して複合成形品を製造する、複合成形品の製造方法。
- 無機充填剤を含有する中空形状の樹脂成形品であって、
内壁面の少なくとも一部に、前記無機充填剤が露出された溝が形成されており、前記無機充填剤が溝の両側に位置する山の間に架かっている溝付き中空形状樹脂成形品。 - 請求項5に記載の溝付き中空形状樹脂成形品の前記溝を有する面上に他の成形品が隣接された複合成形品。
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