本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
まず始めに、本発明の各実施形態に係るX線撮影装置の本体部1(以下、「X線撮影装置の本体部1」と称す)の構成について図1を参照して説明する。図1はX線撮影装置の本体部1の外観を示す図であり、図1(a)は上面図、図1(b)は正面図、図1(c)は側面図である。
X線撮影装置の本体部1は、歯科用あるいは耳鼻科用等のX線撮影装置の本体部であって、床面に載置されるベース2と、ベース2から鉛直方向に立設された下部ポール3と、鉛直方向にスライド可能に下部ポール3に接続される上部ポール4と、上部ポール4の上端部に固定されている固定アーム5と、回転可能に固定アーム5に接続される旋回アーム6と、上部ポール4の中央部に固定されており被写体(例えば歯など)を含む人体の頭部を保持する頭部保持部7とを備えている。実施形態では、固定アーム5が上部ポール4に固定されているが、例えば、X線撮影装置の本体部1を設置する部屋の壁や天井に固定アーム5が直接あるいは部屋の壁や天井との距離を調整することができる調整機構を介して取り付けられる態様であってもよい。
旋回アーム6は、被写体に対してX線を照射するX線照射部8と、被写体を透過したX線を検出するX線検出部9とを対向して配置している。本実施形態では、X線検出部9として、照射されたX線に応じて電気信号を生成する変換素子が二次元状に配置されているフラットパネルディテクターを用いる。そして、フラットパネルディテクターの前面にはカーボンが設置されている。
X線撮影装置の本体部1の撮影モードは特に限定されないが、例えば、パノラマ撮影モードやCT撮影モードを挙げることができる。パノラマ撮影モードでは、X線照射部8及びX線検出部9が歯列弓の形状に沿った所定の軌跡を描くように、旋回アーム6の旋回軸を旋回軸に垂直な方向(X方向、Y方向)に移動させ、旋回アーム6を旋回軸回りに旋回させながら断層撮影を行う。CT撮影モードでは、頭部の対象撮影領域(画像再構成範囲)を中心にして旋回アーム6を回転させながら、対象撮影領域(画像再構成範囲)の断層撮影を行う。
ここで、CT撮影モードについて図2〜図7を参照してより詳細に説明する。
局所CT撮影モードは、歯顎領域内の上下歯牙領域全体よりも狭い特定の領域を撮影対象とするCT撮影モードである。局所CT撮影モードの画像再構成範囲は例えば直径51mm高さ55mmの円柱形状の空間領域である。図2は局所CT撮影モードの軌道を示している。局所CT撮影モードでは、図2に示すように、X線検出部9の中心がX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上にくるように旋回アーム6を旋回させながら複数の撮影位置で撮影が行われる。また、局所CT撮影モードでは、通常、図2に示すように、旋回アーム6の旋回軸中心206は定位置になっている。なお、図2には撮影位置として4箇所が図示されているが、これはあくまで例示であり撮影位置は図示された箇所に限定されるものではない。
局所CT撮影モードは、後述する全歯CT撮影モードや全顎CT撮影モードに比べてX線検出部9上でのX線ビーム幅Wが狭いため、X線検出部9のサイズが小さくても実施可能である。
なお、局所CT撮影モードでは、撮影対象部位(関心領域)の中心を何処に設定するかに応じて旋回アーム6の旋回軸中心206の位置を変えるようにしており、通常、図2に示すように、撮影対象部位(関心領域)の中心と旋回アーム6の旋回軸中心206の位置とが一致するように位置調整がなされる。局所CT撮影モードにおける撮影対象部位(関心領域)の中心は任意に設定することができる。図2に示した位置設定の他にも、例えば、図3に示すように撮影対象部位(関心領域)の中心208を仮想歯列弓201上の前歯の位置に設定することもでき、図4に示すように撮影対象部位(関心領域)の中心208を仮想歯列弓201上の左顎の位置に設定することもでき、図5に示すように撮影対象部位(関心領域)の中心208を仮想歯列弓201上の右第2小臼歯の位置に設定することもでき、その他種々の位置設定が可能である。
全歯CT撮影モードは、上下歯牙領域全体を撮影対象とするCT撮影モードである。全歯CT撮影モードの画像再構成範囲は例えば直径97mm高さ100mmの円柱形状の空間領域である。図6は全歯CT撮影モードの軌道を示している。全歯CT撮影モードでは、図6に示すように、X線検出部9の中心がX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上にくるように旋回アーム6を旋回させながら複数の撮影位置で撮影が行われる。また、全歯CT撮影モードでは、通常、図6に示すように、旋回アーム6の旋回軸中心206は定位置になっている。なお、図6には撮影位置として4箇所が図示されているが、これはあくまで例示であり撮影位置は図示された箇所に限定されるものではない。
全歯CT撮影モードは、上述した局所CT撮影モードに比べて撮影対象が広範囲になりX線検出部9上でのX線ビーム幅Wが広くなるため、その広いX線ビーム幅Wに見合ったX線検出部9のサイズを必要とする。
全顎CT撮影モードは、歯顎領域の全ての範囲を撮影対象とするCT撮影モードである。全顎CT撮影モードの画像再構成範囲は例えば直径161mm高さ100mmの円柱形状の空間領域である。図7は全顎CT撮影モードの軌道を示している。全顎CT撮影モードでは、図7に示すように、X線検出部9の中心がX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上からずれるように旋回アーム6を旋回させながら複数の撮影位置で撮影が行われる。また、全顎CT撮影モードでは、通常、図7に示すように、旋回アーム6の旋回軸中心206は定位置になっている。なお、図7には撮影位置として4箇所が図示されているが、これはあくまで例示であり撮影位置は図示された箇所に限定されるものではない。
全顎CT撮影モードは、X線検出部9の中心をX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上からずらして撮影を行っているので、上述した全歯CT撮影モードよりも画像再構成範囲207を拡大することができる。したがって、X線検出部9のサイズアップを抑えながら歯顎領域の全ての範囲を撮影対象とすることができる
なお、全顎CT撮影モードにおいて、X線検出部9をサイズアップして、X線検出部9上でのX線ビーム幅Wを図7に示す場合よりも拡大し、画像再構成範囲を例えば直径230mm高さ164mmの円柱形状の空間領域にすることで、歯顎領域の全ての範囲のみならず、頭頸部領域の全ての範囲を撮影対象とすることも可能である。
上述したCT撮影モードでは、撮影時に患者歯列弓203が想定した位置(図2、図6、図7に図示した位置)に存在することで、撮影者が意図していた通りの撮影を行うことができる。患者歯列弓203の想定した位置への位置合わせを容易に実現する方法としては、例えば、光ビームを利用する方法を挙げることができる。当該光ビームとしては、例えば、頭の正中線の位置を示す正中線光ビーム、眼窩下縁と外耳道を結ぶ線の位置を示す水平線光ビーム、犬歯の位置(断層撮影の基準位置)を示す断層基準線光ビームなどがあり、これらの光ビームの出力部をX線撮影装置に設け、これらの光ビームを参考にして患者の頭の位置を微調整するとよい。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係るX線撮影装置は、X線撮影装置の本体部1の他に、図8に示す画像処理装置10も備えている。
画像処理装置10は、ROM102やHDD107に格納されているプログラムに従って画像処理装置10全体を制御するCPU101と、固定的なプログラムやデータを記録するROM102と、作業メモリを提供するRAM103と、X線撮影装置の本体部1内に格納されX線撮影装置の本体部1の各部を制御する制御部(不図示)との間で通信を行うための通信インターフェース部104と、画像データを一時的に記憶するVRAM105と、VRAM105に記憶された画像データに基づいて画像を表示する表示部106と、前記制御部及びCPU101が協働してX線撮影動作を制御するための撮影制御プログラム、再構成画像を生成するための画像再構成処理プログラム、金属体の位置を特定するための金属体位置特定処理プログラム等の各種プログラム、各種プログラムを実行する際に用いられる各種パラメータの設定値、並びに、再構成画像データ等の各種データを記憶するHDD107と、キーボード、ポインティングデバイス等の入力部108とを備えている。
画像処理装置10は、画像処理装置10と前記制御部との通信方法は、有線通信でもよく、無線通信でもよく、有線と無線を組み合わせた通信であってもよい。画像処理装置10としては、例えば、パーソナルコンピュータを挙げることができる。なお、画像処理装置10は、画像処理以外に、X線撮影装置の本体部1の遠隔操作、画像表示も行う。HDD107に記憶されている各プログラムは、画像処理装置10にプリインストールされていてもよく、光ディスク等の記憶媒体に格納された形態で流通されて画像処理装置10にインストールされてもよく、ネットワークを介して流通されて画像処理装置10にインストールされてもよい。
画像処理装置10はX線撮影領域に含まれる金属体の位置を特定するために、金属体の位置特定処理プログラムを実行する。
図10は、図9に示す投影画像データの図9中に図示されている横軸方向に沿った4つの隣接する線(調査線SL1〜SL4)におけるプロファイルを示すグラフである。ここで、調査線とは、その線に沿ったピクセルの輝度値および隣接する他の調査線に沿ったピクセルの輝度値の変化の度合を調べ、その調べた情報を取り出すのに使用する画像(本実施形態では投影画像を金属体の位置特定処理の対象画像としているが、金属体の位置特定処理の対象画像は測定画像であっても構わない)上のピクセルに沿った線のことをいう。
顎骨部分と非顎骨部分との境界部分(図9及び図10の黒塗り矢印で示す部分)、及び、チタン或いはチタン合金からなるインプラント部分と非インプラント部分との境界部分(図9及び図10の白塗り矢印で示す部分)は、他の部分と異なり、4つのプロファイル間でのばらつきが大きくなっている。そして、そのばらつき特性は、顎骨部分と非顎骨部分との境界部分と、チタン或いはチタン合金からなるインプラント部分と非インプラント部分との境界部分とで異なっている。具体的には、顎骨部分と非顎骨部分との境界部分は、隣接する2つのプロファイル間で輝度値の変化度合(プロファイルの傾き)がほぼ一定であるのに対して、チタン或いはチタン合金からなるインプラント部分と非インプラント部分との境界部分は、一組の隣接する2つのプロファイル間の輝度値の差が他の組の隣接する2つのプロファイル間の輝度値の差に比べて著しく大きい。したがって、本実施形態では、上記のばらつき特性を利用して、チタン或いはチタン合金からなるインプラント部分の抽出処理を実行する。
チタン或いはチタン合金からなるインプラント部分の抽出処理において、画像処理装置10は、まず、4×4ピクセル(縦軸方向、横軸方向それぞれ4ピクセル分の矩形領域)を1単位とし、各単位において1単位内の所定位置(例えばx座標値が最大、y座標値が最大である右下隅)の1ピクセルの輝度値をその1単位の代表輝度値として使用する。画像処理装置10は、或る単位の代表輝度値と或る単位より一つ下の単位の代表輝度値との差を或る単位の代表輝度値で正規化したものを求め、その求めた値の横軸方向に隣接する4つの単位における合計sumkが予め定めた規定値より大きければ、顎骨部分と非顎骨部分との境界部分、或いは、チタン或いはチタン合金からなるインプラント部分と非インプラント部分との境界部分であると判定する。sumkは下記の(1)式で表すことができる。下記の(1)式や後述する(2)式及び(3)式中のbv(横軸方向座標, 縦軸方向座標)は対数変換処理後のピクセルの輝度値を示す関数である。当該判定はk毎(横軸方向に16ピクセル毎)に行われ、かつ、調査線SL1〜SL4それぞれに関して行われる。なお、本実施形態では、4×4ピクセルが1単位になっているが、この数値に限定されることはない。また、本実施形態では、図9に示す投影画像データの上から下に向かう方向を縦軸方向の正方向とし、図9に示す投影画像データの左から右に向かう方向を横軸方向の正方向としている。
ここで、或る単位の代表輝度値と或る単位より一つ下の単位の代表輝度値との差から基準として定めた或る一対の輝度差smbvを引いて得られる輝度差を或る単位の代表輝度値で正規化したものを単位毎に求めた場合を考える。この場合、その求めた値の横軸方向に隣接する4つの単位における合計sumk1が小さければ、隣接する2つのプロファイル間で輝度値の変化度合(プロファイルの傾き)がほぼ一定であるので、顎骨部分と非顎骨部分との境界部分であると判断することができる。sumk1は下記の(2)式で表すことができる。
しかしながら、上記の(1)式を用いて、顎骨部分と非顎骨部分との境界部分、或いは、チタン或いはチタン合金からなるインプラント部分と非インプラント部分との境界部分であると判定した部分から、上記の(2)式を用いて顎骨部分と非顎骨部分との境界部分であると判定した部分を取り除いただけでは、図10に示す顎骨部分の網掛け矢印部分をインプラント部分として抽出してしまう。
そこで、本実施形態では、顎骨部分と非顎骨部分との境界部分は縦軸方向の座標が同一であるピクセルが各プロファイルでほぼ同一の輝度値であるのに対して、チタン或いはチタン合金からなるインプラント部分と非インプラント部分との境界部分は縦軸方向の座標が同一であるピクセルに関して他のプロファイルと輝度値が異なるプロファイルが存在することを利用する。
すなわち、上記の(2)式では或る単位の代表輝度値と或る単位より一つ下の単位の代表輝度値同士を比較していたが、輝度差が最小になる代表輝度値同士を比較するようにする。つまり、横軸座標は、この輝度差が最小となる代表輝度値に対応するピクセルとの差分だけずらすことになり、その差分をddピクセルとすると、上記の(2)式は下記の(3)式に置き換わる。
なお、画像処理装置10は、図11に示すフローチャートに従って全ピクセルを対象としてddを算出する。
上記の(3)式を用いた判定を行えば、上記の(2)式を用いた判定は不要となる。したがって、画像処理装置10は、上記の(1)式、上記の(3)式それぞれに適した閾値を設け、まず上記の(1)式が閾値を超える輝度値を有するピクセルを抽出し、次にその抽出したピクセルを対象として上記の(3)式が閾値を超える輝度値を有するピクセルを抽出することで、チタン或いはチタン合金が現れ始めたピクセルを抽出することができる。上記の(1)式を用いずに、上記の(3)式のみを用いてチタン或いはチタン合金が現れ始めたピクセルを抽出することも可能であるが、ノイズ等の要因による誤抽出を抑制する観点から上記の(1)式および上記の(3)式の双方を用いてチタン或いはチタン合金が現れ始めたピクセルを抽出することが望ましい。
上述したチタン或いはチタン合金が現れ始めたピクセルを抽出する処理を縦軸方向のプラス方向とマイナス方向の両方について実施することによって、チタン或いはチタン合金の始点部分とチタン或いはチタン合金の終点部分とが判明する。そこで、画像処理装置10は、縦軸方向の座標毎に、チタン或いはチタン合金の始点部分から順に横軸方向に沿ってチタン或いはチタン合金の終点部分までをチタン或いはチタン合金の領域であると判定する。
そして、画像処理装置10は、図9に示す投影画像データに対して、上記の金属体の位置特定処理において金属であると判定されたピクセルに「0」値を付与し、金属であると判定されなかったピクセルに「1」値を付与する。
上記の金属体の位置特定処理は、チタン或いはチタン合金からなるインプラント部分の位置を特定することができる。また、金属体がFOVからはみだした場合であっても金属体の位置を特定することができる。また、特許文献1で行われている擬似投影データの再構成処理が不要であるため、計算時間を短くすることができる。
測定画像に対して、金属体の位置に対応するピクセルに例えば歯に対応する輝度値を付与すれば、輝度値が上がり、金属アーチファクトを低減することができる。投影画像に対して、金属体の位置に対応するピクセルに例えば歯に対応する輝度値を付与すれば、輝度値が下がり、金属アーチファクトを低減することができる。また、投影画像に対して、金属体の位置に対応するピクセルに高い輝度値を付与すれば、再構成して得られるCT画像上で閾値を設定することにより金属を抽出することもできる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係るX線撮影装置は、本発明の第1実施形態に係るX線撮影装置と同様に、X線撮影装置の本体部1の他に、図8に示す画像処理装置10も備えている。
画像処理装置10はX線撮影領域に含まれる金属体の位置を特定するために、図12に示すフローチャートに従って、金属体の位置特定処理プログラムを実行する。
ステップS10において、第1実施形態で実行した調査線を用いた二値化処理を実行する。
ステップS10の二値化処理によってチタン或いはチタン合金からなるインプラント部分をある程度抽出できているが、完全ではなく、チタン或いはチタン合金からなるインプラント部分であっても対数変換した後の輝度値が低ければ抽出されない場合がある。また、非金属の部分であっても、歯の重なり部分や骨の厚い部分では輝度値が金属部分と同程度になる場合があるので、これらの部分を金属部分として抽出しないようにしなければならない。
金属部分と非金属部分との境界では輝度値が急激に変化するが、輝度値が金属部分と同程度である非金属部分と、輝度値が金属部分と同程度でない非金属部分との境界でも輝度値が急激に変化する。
しかしながら、金属部分に関しては、撮影角度に関わらず周りの非金属部分よりも対数変換した後の輝度値が常に相対的に高いのに対し、輝度値が金属部分と同程度である非金属部分に関しては、周辺部分よりも対数変換した後の輝度値が常に相対的に高くなるわけではない。したがって、金属部分はサイノグラム上で正弦波状曲線を示すのに対して、輝度値が金属部分と同程度である非金属部分はサイノグラム上で正弦波状曲線を示さない。なお、本実施形態において、サイノグラムとは、同時計数で測定された投影データを投影方向の角度の順序にしたがって配列した二次元情報であって、CT撮影におけるアームの回転軸に垂直な投影データ上の軸方向を横軸に、投影角度を縦軸に配列したものをいう。
画像処理装置10は、上述した金属部分のサイノグラム上での特徴を利用して金属体の位置を特定している。すなわち、画像処理装置10は、ステップS20以降の処理を実行し、サイノグラム上の正弦波状曲線を利用して金属体の位置を特定している。
ステップS20において、画像処理装置10は、図9に示す投影画像データ及び二値化データそれぞれに対してサイノグラム変換処理を行う。
二値化データのサイノグラムを図13A〜図13Cに示す。図13Aは後述する横軸中心位置A0および縦軸A1〜A4を二値化データのサイノグラムに図示したものであり、図13Bは後述する横軸中心位置A0および縦軸A1〜A4と後述する縦軸上の座標(j)とを図示したものであり、図13Cは後述する横軸中心位置A0および縦軸A1〜A4と後述する縦軸上の座標P1〜P4とを図示したものである。
ステップS20に続くステップS30において、画像処理装置10は、二値化データのサイノグラムの横軸中心位置A0において、金属始点部分となる「0」値を有するピクセルの縦軸上の座標(j)と、金属終点部分となる「0」値を有するピクセルの縦軸上の座標(j)とを求め、金属始点部分となる「0」値を有するピクセルが正弦波状曲線の一部を構成しているかを判定し、金属終点部分となる「0」値を有するピクセルが正弦波状曲線の一部を構成しているかを判定する。当該判定は、横軸中心位置A0に隣接して設けた縦軸A1〜A4それぞれにおいて「0」値を有するピクセルの縦軸状の座標P1〜P4を求め、座標(j)及び座標P1〜P4が正弦波状曲線の一部を構成しているかを調べている。なお、図13Bおよび図13Cにおいては、最初の金属始点部分および金属終点部分の各座標(j)及び各座標P1〜P4と二番目の金属始点部分および金属終点部分の各座標(j)と三番目の金属始点部分および金属終点部分の各座標(j)のみを図示しているが、実際には横軸中心位置A0を上から下方向にスキャンすることによって四番目以降の金属始点部分および金属終点部分の各座標(j)も求めることができ、縦軸A1〜A4を上から下方向にスキャンすることによって二番目以降の金属始点部分および金属終点部分の各座標(j)に対応する座標P1〜P4も求めることができる。正弦波状曲線の一部を構成していると判定した場合には、正弦波状曲線の横軸中心位置A0における縦軸の座標(j)と、座標(j)から座標P1〜P4それぞれに移動するのに必要となる横軸方向の変化量に対する縦軸方向の変化量とをパラメータとして記憶することで正弦波状曲線を抽出する。なお、二値化データだけでは、正弦波状曲線の一部を構成しているか否かの判定がつき難い場合には、図9に示す投影画像データについても同様の判定(ただし、縦軸A0〜A4を上から下方向にスキャンした際に、ピクセルの値が急激(例えば或る閾値以上)に高くなった場合は急激に高くなったピクセルを金属始点部分とし、ピクセルの値が急激に低くなった場合は急激に低くなる直前のピクセルを金属終点部分としている)を行い、二値化データについての判定結果と図9に示す投影画像データについての判定結果を総合的に評価して、最終的な判定を行う。
しかしながら、ステップS30の処理によって正弦波状曲線を完全に抽出できるわけではなく、正弦波状曲線の抽出に抜けが生じる場合がある。したがって、この抜けが、計算上のエラーに起因するものであるか、X線照射部8、X線検出部9、及び被写体との位置関係により原理的に金属部分が写らない撮影角度に起因するものであるかを判断し、前者であれば正弦波状曲線を追加する必要がある。画像処理装置10は、この追加をステップS30に続くステップS40において実施する。
ステップS40の処理(正弦波状曲線の修正処理)の詳細について図14に示すフローチャートを参照して説明する。nはサイノグラムデータの番号を示し、iは正弦波状曲線の番号を示す。ns(n)は金属部分始点の正弦波状曲線の数を示し、nf(n)は金属部分終点の正弦波状曲線の数を示す。js(n,i)は金属部分始点の座標を示し、jf(n,i)は金属部分終点の座標を示す。ads(n,i)は金属部分始点の移動量を示し、adf(n,i)は金属部分終点の移動量を示す。ii1は前のサイノグラムデータの正弦波状曲線の番号を示し、i1は現在のサイノグラムデータの正弦波状曲線の番号を示す。i11は正弦波状曲線を復活させる場合に対応する正弦波状曲線の番号を示し、nsnは復活させる正弦波状曲線の数を示す。
まず始めに、画像処理装置10は、ステップS30で抽出した正弦波状曲線のデータ(パラメータ)を読み込む(ステップS401)。
次に、画像処理装置10は、nsnの値を0にセットし(ステップS402)、i11の値を0にセットする(ステップS403)。そして、画像処理装置10は、js(n,i1-1)≦js(n-1,ii1) ≦js(n,i1)が成立するか否かを判定する(ステップS404)。js(n,i1-1)≦js(n-1,ii1) ≦js(n,i1)が成立しなければ、後述するステップS409に移行する。
一方、js(n,i1-1)≦js(n-1,ii1) ≦js(n,i1)が成立すれば、画像処理装置10は、i11の値をi1とし(ステップS405)、js(n-1,ii1)がjs(n,i1-1)、js(n,i1)それぞれと所定のピクセル数以上離れている否かを判定する(ステップS406)。
js(n-1,ii1)がjs(n,i1-1)、js(n,i1)それぞれと所定のピクセル数以上離れていなければ(ステップS406のNO)、後述するステップS409に移行する。一方、js(n-1,ii1)がjs(n,i1-1)、js(n,i1)それぞれと所定のピクセル数以上離れていれば(ステップS407のYES)、正弦波状曲線の抜けがあるとみなすことができるので、画像処理装置10は、js(n-1,ii1)近傍で輝度値の変化量および輝度値が所定の条件を満たす縦軸上の座標をj0とおき、nsnに1を加えた値を新たにnsnの値としてセットし、復活させる正弦波状曲線のj座標js0(n,i1-1+nsn)の値をj0とし、復活させる正弦波状曲線の移動量ads0(n,i1-1+nsn)の値をads(n-1,ii1)とする(ステップS407)。ステップS407に続くステップS408において、画像処理装置10は、復活させる正弦波状曲線以降の現データにおける正弦波状曲線の番号をずらし、その後ステップS409に移行する。
ステップS409において、画像処理装置10は、i1がns(n)以下であるかを判定し、i1がns(n)以下であれば、i1をインクリメントし(ステップS410)、ステップS403に戻る。
i1がns(n)以下でなければ、画像処理装置10は、ii1がns(n-1)以下であるかを判定し、ii1がns(n-1)以下であれば、ii1をインクリメントし(ステップS412)、ステップS403に戻る。
ii1がns(n-1)以下でなければ、画像処理装置10は、ns(n)を新たなns(n)+nsnとし、復活させ且つ番号をずらした正弦波状曲線のパラメータを順番に格納する(ステップS413)。
上述したステップS403〜ステップS413の処理が金属始点部分の処理になる。ステップS413に続くステップS414において、画像処理装置10は、金属終点部分についても上述したステップS403〜ステップS413と同様の処理を実行する。
ステップS414に続くステップS415において、画像処理装置10は、正弦波状曲線のパラメータをj座標(js(n,i),jf(n,j))の昇順に並べ替える。
ステップS415に続くステップS416において、画像処理装置10は、nが所定数以下であるかを判定する。nが所定数以下であれば、nをインクリメントし(ステップS417)、ステップS402に戻る。nが所定数以下でなければ、ステップS40の処理(正弦波状曲線の修正処理)を終了する。なお、ステップS416において判定の基準値として用いている所定数はサイノグラムのデータ数(撮影データの縦軸方向のピクセル数)である。
ステップS40の処理が終了すると、画像処理装置10は、第1段階の金属抽出処理を行う(図12のステップS50)。
サイノグラム上に図15に示すような正弦波状曲線の右肩下がり部分(紙面の左から右に向かうにつれて紙面の上から下に向かう部分)が存在するとき、金属部分の始点を示す正弦波状曲線SC1と金属部分の終点を示す正弦波状曲線SC2との間が金属部分となる。本実施形態では、金属部分の座標に「0」を、非金属部分の座標に「1」を入力するのであれば、正弦波状曲線SC1と正弦波状曲線SC2との間が「0」値になり、それ以外が「1」値になればよい。なお、正弦波状曲線SC1と正弦波状曲線SC2との間の領域が、請求項に記載されている「正弦波状曲線領域」に該当する。
金属部分始点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍が特定でき、その特定した正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC1を特定する。横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC1の各座標まで紙面の左から右に向かう横方向に沿って「0」を入力すると、図16Aに示すようになる。なお、図16Aにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現している。
次に、金属部分終点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍が特定でき、その特定した正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC2を特定する。横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC2の各座標まで横方向に沿って「1」を入力すると、図16Bに示すようになる。なお、図16Bにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現し「1」を入力した領域を斜線領域で表現している。
また、金属部分終点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍が特定でき、その特定した正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC2を特定する。横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC2の各座標まで紙面の右から左に向かう横方向に沿って「0」を入力すると、図16Cに示すようになる。なお、図16Cにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現し「1」を入力した領域を斜線領域で表現している。
次に、金属部分始点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍が特定でき、その特定した正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC1を特定する。横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC1の各座標まで紙面の右から左に向かう横方向に沿って「1」を入力すると、図16Dに示すようになる。なお、図16Dにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現し「1」を入力した領域を斜線領域で表現している。上述した図15から図16Dに至る処理では、まず紙面の上から下に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて横軸中心位置より右側の領域を処理し、その後紙面の下から上に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて横軸中心位置より左側の領域を処理したが、これとは逆にまず紙面の下から上に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて横軸中心位置より左側の領域を処理し、その後紙面の上から下に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて横軸中心位置より右側の領域を処理してもよい。
そして、サイノグラム上に図17Aに示すような正弦波状曲線の右肩上がり部分(紙面の左から右に向かうにつれて紙面の下から上に向かう部分)が存在するときも、金属部分の始点を示す正弦波状曲線SC1と金属部分の終点を示す正弦波状曲線SC2との間が金属部分となる。
金属部分始点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍が特定でき、その特定した正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC1を特定する。横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC1の各座標まで紙面の右から左に向かう横方向に沿って「0」を入力すると、図17Bに示すようになる。なお、図17Bにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現している。
次に、金属部分終点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍が特定でき、その特定した正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の上から下に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の右から左に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC2を特定する。横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC2の各座標まで横方向に沿って「1」を入力すると、図17Cに示すようになる。なお、図17Cにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現し「1」を入力した領域を斜線領域で表現している。
また、金属部分終点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍が特定でき、その特定した正弦波状曲線SC2の横軸中心位置近傍を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC2を特定する。横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC2の各座標まで紙面の左から右に向かう横方向に沿って「0」を入力すると、図17Dに示すようになる。なお、図17Dにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現し「1」を入力した領域を斜線領域で表現している。
次に、金属部分始点の横軸中心位置における縦軸の座標と移動量から正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍が特定でき、その特定した正弦波状曲線SC1の横軸中心位置近傍を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、その見つけた境界を基準に紙面の下から上に向かう縦方向に所定量移動した位置で紙面の左から右に向かう横方向に沿って輝度値が急激に変化している境界を見つけ、それ以後同様の処理を繰り返す。このようにして見つけた境界の軌跡により正弦波状曲線SC1を特定する。横軸中心位置A0から正弦波状曲線SC1の各座標まで紙面の左から右に向かう横方向に沿って「1」を入力すると、図17Eに示すようになる。なお、図17Eにおいては「0」を入力した領域を網掛け領域で表現し「1」を入力した領域を斜線領域で表現している。上述した20Aから図20Eに至る処理では、まず紙面の上から下に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて横軸中心位置より左側の領域を処理し、その後紙面の下から上に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて横軸中心位置より右側の領域を処理したが、これとは逆にまず紙面の下から上に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて横軸中心位置より右側の領域を処理し、その後紙面の上から下に向かう縦方向の所定量移動を繰り返しながら輝度値が急激に変化している境界を見つけて横軸中心位置より左側の領域を処理してもよい。
以上の処理により、横軸中心位置A0の左右両側で抽出できていなかった金属部分が抽出できる。すなわち、ステップS40の処理が終了した時点で得られている図18に示す二値化データを画像処理装置10が取り出して、その取り出した二値化データに対して上述したステップS50の処理を実行することで、図19Aに示す二値化データを得ることができる。図19Aに示す二値化データでは、歯の重なり部分がなくなり、抽出できていなかった金属部分が抽出されている。
しかしながら、図19Aに示す二値化データでは、金属部分の抽出がうまくいっていない部分や、不連続な直線部分があり、明らかに不自然である。その原因としては、i)金属が交差する部分箇所で境界条件が曖昧になったことや、ii)金属部分の端で輝度値の条件を満たさなくなり、金属部分の終点が消滅してしまったため、図16Aから図16Bになるための処理がなされなかったこと等が挙げられる。
このような不自然なところを修正するため、画像処理装置10は、第2段階の金属抽出処理を行う(ステップS60)。ステップS60において、画像処理装置10は、図19Aに示す二値化データを縦軸方向にスキャンした場合に横軸方向に直線状に突如「0」値から「1」値へあるいは「1」値から「0」値へ変化する箇所を見つけたら以下の処理を行う。
図19Aに示す二値化データと同一の二値化データである図19Bにおいて、上記直線状の間の黒い部分R1は本来非金属領域であるから、輝度値は相対的に低い。したがって、図9に示す投影画像データを処理対象として、この黒い領域R1の横軸方向の始点と終点の境界の輝度値をある条件に従って結んだ特性線よりも小さい輝度値をもつピクセルを非金属として除外し、当該処理の結果を図19Aに示す二値化データに反映させる。
図19Aに示す二値化データと同一の二値化データである図19Bにおいて、上記直線状の間の白い部分R2は本来金属であるから、輝度値は相対的に高く、図9に示す投影画像データのサイノグラムにおいて、横軸方向には急激に輝度値が変化して非金属領域と同程度の輝度値になるピクセルがある。したがって、図9に示す投影画像データのサイノグラムにおいて、縦軸方向で金属部分が切れてしまったピクセルの輝度値と、縦軸方向で金属部分が切れる直前のピクセルの輝度値とを比較して、輝度値の変化量が予め定めた規定値よりも小さければ、縦軸方向で金属部分が切れてしまったピクセルを金属領域とする。この処理を縦軸方向に順次行っていくことによって金属領域を抽出することができる。当該処理の結果を図19Aに示す二値化データのサイノグラムに反映させる。
ステップS60に続くステップS70において、画像処理装置10は、ステップS60までの処理で補正された二値化データのサイノグラム(図20に示す二値化データのサイノグラム)を投影データ(本実施形態とは異なり、金属体の位置特定処理の対象画像を測定画像とした場合には測定画像データ)に変換する。なお、ステップS60までの処理で補正された二値化データのサイノグラム(図20に示す二値化データのサイノグラム)が、請求項に記載されている「抽出処理済みサイノグラム」に該当する。この投影データは、金属体の位置を特定した投影データであり、金属部分のピクセルが「0」値になっており、非金属部分のピクセルが「1」値になっている。ステップS70の処理が終了すると、金属体位置特定処理が終了する。
金属体位置特定処理によって得られた投影データは、ステップS10の二値化処理だけの場合に比べて、金属体の位置を高精度に特定することができる。また、金属体がFOVからはみだした場合であっても金属体の位置を特定することができる。また、特許文献1で行われている擬似投影データの再構成処理が不要であるため、計算時間を短くすることができる。
測定画像に対して、金属体の位置に対応するピクセルに例えば歯に対応する輝度値を付与すれば、輝度値が上がり、金属アーチファクトを低減することができる。投影画像に対して、金属体の位置に対応するピクセルに例えば歯に対応する輝度値を付与すれば、輝度値が下がり、金属アーチファクトを低減することができる。また、投影画像に対して、金属体の位置に対応するピクセルに高い輝度値を付与すれば、再構成して得られるCT画像上で閾値を設定することにより金属を抽出することもできる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係るX線撮影装置は、X線撮影装置の本体部1の他に、図21に示す画像処理装置10も備えている。図21に示す画像処理装置10は、図8に示す画像処理装置10と同一のハードウェア構成であるが、散乱線補正処理を行うための散乱線補正処理プログラムをHDD107が記憶している点で図8に示す画像処理装置10と異なっている。
散乱線補正処理プログラムを実行すると、画像処理装置10は散乱線補正装置として機能する。散乱線補正処理は画像再構成処理中に割り込んで実施される。
<<散乱線補正処理の前提となる理論>>
散乱線補正処理の内容を説明する前に、散乱線補正処理の前提となる理論について説明する。当該理論は、測定画像のピクセルの輝度値を元に散乱線による輝度値を算出する理論であって、本発明者が独自に構築したものである。本発明者は、モンテカルロシミュレーションの結果を用いて当該理論を構築した。
ここで、モンテカルロシミュレーションの計算のジオメトリーを図22に示す。図22(a)は上面図であり、図22(b)は側面図である。被写体11は、X線焦点8AとX線検出器9Aとの間に配置される。X線検出器9Aはシンチレーター等を備えるフラットパネルディテクターとした。また、X線検出器9Aの手前にはカーボン9Bが設置されている。
モンテカルロシミュレーションの計算において、X線焦点8Aで発生させるX線スペクトルは、実際の撮影において使用するX線管等の仕様に基づいてX線管から放出され、X線検出器9Aの位置でX線検出器9Aの有感領域となるようコリメートされた一様なX線束となるようにした。
被写体については、生体に近づけるため、顎部を想定した直径15cmの円柱形の水ファントム12A、頭部を想定した直径18cmの円柱形の水ファントム12B、頸部を想定した直径13cmの円柱形の水ファントム12Cを図23(a)に示す側面図および図23(b)に示す上面図のように組み合せ、水ファントム12Aの内部に厚さ2mmの円筒状の皮質骨を設置し、水ファントム12Bの内部に厚さ1mmの円筒状の皮質骨を設置し、水ファントム12Aおよび12Cの内部に長径4cm、短径3cm、厚さ3mmの楕円筒状の頸椎部分12Dを設置した。ただし、図23(a)に示す一点鎖線で囲った部分においては、円筒状の皮質骨および頸椎部分12Dをカットした。
モンテカルロシミュレーションの計算においては、図23(a)に示す一点鎖線で囲った部分を金属の設置場所として、金属によるX線の減衰および散乱線を調べることにする。これは、骨があることによる周りからの散乱線の減衰効果を維持しつつ、骨によらない金属のみによる効果を見積もるためである。
まず、図23に示す水ファントムの組み合わせであって、図23(a)に示す一点鎖線で囲った部分に金属を設置しないものを被写体にしてモンテカルロシミュレーションの計算を行う。その計算結果を図24において実線で示す。図24に示すグラフの横軸は白画像における平均輝度値に対する全X線(直接線と散乱線)による輝度値の比であり、図24に示すグラフの縦軸はX線検出器9Aの或るピクセルで検出される全X線量に対するその全X線量に含まれる散乱線量の比である。
白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比は被写体のX線照射方向の厚みが薄いほど大きくなる。図24において実線で示されている計算結果より、被写体のX線照射方向の厚みが薄いほど全X線量に対する散乱線量の比が小さくなることが分かる。図24において実線で示されている計算結果は、例えばy=A/(x−C)+Bで近似することができる。A=0.049556、B=0.046501、C=−0.16274とすると、図24において破線で示されている近似曲線が得られる。
次に、下記(1)〜(3)の場合におけるモンテカルロシミュレーションの各計算結果を図25及び図26に示すグラフで比較する。
図25に示すグラフの横軸は図23に示すx軸方向のピクセル位置を示すピクセル番号であり、図25に示すグラフの縦軸は白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比である。なお、ピクセル番号が大きいほど、対応するX線検出器9Aのピクセルに入射したX線が透過した被写体の厚みは厚い。図25中の曲線C1は下記(1)の場合に得られる計算結果である。同様に、図25中の曲線C2は下記(2)の場合に得られる計算結果であり、図25中の曲線C3は下記(3)の場合に得られる計算結果である。
また、図26に示すグラフの横軸は図23に示すx軸方向のピクセル位置を示すピクセル番号であり、図26に示すグラフの縦軸はX線検出器9Aの或るピクセルで検出される全X線量に対するその全X線量に含まれる散乱線量の比である。図26中の曲線C11は下記(1)の場合に得られる計算結果である。同様に、図26中の曲線C12は下記(2)の場合に得られる計算結果であり、図26中の曲線C13は下記(3)の場合に得られる計算結果である。
(1)図23に示す水ファントムの組み合わせであって、図23に示す一点鎖線で囲った部分に金属を設置しないものを被写体にした場合
(2)図23に示す水ファントムの組み合わせであって、図23に示す一点鎖線で囲った部分に幅5mm、長さ8cm、厚さ3mmのチタンを、幅方向をz軸、長さ方向をy軸、厚さ方向をx軸に合わせて設置したものを被写体にしてX線の照射方向をx軸に合わせた場合
(3)図23に示す水ファントムの組み合わせであって、図23に示す一点鎖線で囲った部分に幅5mm、長さ8cm、厚さ1mmのAuAgPd合金を、幅方向をz軸、長さ方向をy軸、厚さ方向をx軸に合わせて設置したものを被写体にしてX線の照射方向をx軸に合わせた場合
図25及び図26から、X線検出器9Aのピクセルで検出される全X線による輝度値(測定画像のピクセルの輝度値に相当)が同程度であっても、X線が透過する金属の種類や厚さによって散乱線量が異なることが分かる。
例えば、白画像の平均輝度値が3万であり、X線検出器9Aのピクセルで検出される全X線による輝度値が600である条件すなわち白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比が0.02である条件を満たすピクセル番号は、上記(2)の場合は201であり、上記(3)の場合は5である(図25参照)。これらのピクセル番号に対応するピクセルで検出される全X線量に対するその全X線量に含まれる散乱線量の比を図26からから求めると、それぞれ0.491、0.987となり、散乱線による輝度値に変換するとそれぞれ295、592となる。したがって、測定画像のピクセルの輝度値が同じ600であっても、X線がどのような材質の物質を透過したかによって、すなわち、物質の減弱係数の違いによって、散乱線量(測定画像のピクセルの散乱線成分)は異なってくる。
図23に示す水ファントムの組み合わせであって、図23(a)に示す一点鎖線で囲った部分に金属を設置しないものを被写体にしてモンテカルロシミュレーションの計算を行って得られる白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比は、被写体のX線照射方向の厚みに応じて異なる(図25中の曲線C1参照)。以下、被写体の着目する部位を透過するX線経路上の骨あるいは金属を皮膚に置き換えた場合にX線検出器9Aのピクセルで得られる輝度値を理想値と呼び、白画像における平均輝度値に対する理想値の比を理想値比と呼ぶ。
理想値比を固定した状態で金属の種類や厚さを変えながら、白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比と、X線検出器9Aの或るピクセルで検出される全X線量に対するその全X線量に含まれる散乱線量の比との関係を求めることで図27に示す一つのグラフを得る。例えば、理想値比を0.1に固定した状態で図25及び図26中の白抜き丸、白抜き三角から図27中の白抜き丸、白抜き三角の各点を得て、その各点からy=A/(x−C)+Bの曲線を近似してA、B、Cの各値を求めることで図27中の曲線C23を得ることができる。
そして、理想値比を変更することで、図27に示すそれぞれのグラフを得る。図27中の曲線C21は理想値比が1のグラフであり、図27中の曲線C22は理想値比が0.3のグラフであり、図27中の曲線C23は理想値比が0.1のグラフであり、図27中の曲線C24は理想値比が0.03のグラフである。
ここで、図27中の各曲線はX線撮影の投影角度を或る値に固定した場合に対応するものである。そして、白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比と、X線検出器9Aの或るピクセルで検出される全X線量に対するその全X線量に含まれる散乱線量の比との関係を示す曲線は、X線撮影の投影角度に応じて異なる。なぜなら、歯列がX線焦点8Aに近い側に位置するような投影角度のX線撮影に対応する場合には、図23(a)に示す一点鎖線で囲った部分内で金属をX線焦点8Aに近い側に設置し、歯列がX線焦点8Aに遠い側に位置するような投影角度のX線撮影に対応する場合には、図23(a)に示す一点鎖線で囲った部分内で金属をX線焦点8Aに遠い側に設置するといったように、X線撮影の投影角度によって被写体中における金属の設置位置が異なり、この金属の設置位置の違いが金属を透過した直接線を検出するX線検出器9Aのピクセルで検出される散乱線量に影響を与えるからである。
以上により、測定画像のピクセルの輝度値を元に散乱線による輝度値を算出する方法をまとめると、以下のようになる。
[1]測定画像の全てのピクセルについて理想値比を算出する。
[2]理想値比と、白画像における平均輝度値に対する測定画像の輝度値の比と、X線撮影の投影角度とから、測定画像の全てのピクセルの散乱線成分を算出する。
ところで、CT撮影においては余分な被ばくを抑えるためX線の照射範囲がX線検出器9Aの有感領域に一致するようX線焦点8Aの近傍でX線をカットしている。よって、X線検出器9Aの端部に位置するピクセルでは、X線検出器9Aの中央部に位置するピクセルと比較して被写体からの散乱線による影響が少ない。その結果、端部に位置するピクセルでは散乱線成分が減少する。
この減少傾向は、X線検出器9Aの端のピクセルほど強いが、X線検出器9Aの端から離れるにつれて連続的に小さくなり、X線検出器9Aの端から所定のピクセル以上離れたX線検出器9Aの中央部ではほぼ0となる。しかし、白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比が高いピクセルにおいては、被写体のX線照射方向の厚みが薄いので元々被写体からの散乱線は少ない。このため、理想値比が高いピクセルほど、ピクセルがX線検出器9Aの端部に位置したことによる散乱線成分の減少は小さくなる。したがって、ピクセルがX線検出器9Aの端部の方に位置し、且つ、理想値比が低い場合は、上述した散乱線成分の減少を加味して散乱線成分を求めることが望ましい。
<<散乱線補正処理の内容>>
散乱線補正処理は、理想値比算出処理、散乱線成分算出処理、補正処理に分けられ、理想値比算出処理、散乱線成分算出処理、補正処理の順で実行される。
<理想値比算出処理>
画像処理装置10は、理想値比算出処理において、例えば、512×512ピクセルの測定画像を16×16ピクセルごとにまとめ、横方向32個×縦方向32個の合計1024個の領域に分割し、各領域の理想値比を計算した後に各ピクセルの理想値比を算出する。このような算出手順にした理由は、被写体のX線照射方向の厚みに応じてピクセルの輝度値は徐々に変化するものの、1ピクセルごとに調べていたのでは、各ピクセルの輝度値の誤差が大きいため、輝度値の減少または増加が被写体のX線照射方向の厚みが変化したためであるのか、それとも誤差によるものなのか判別するのが非常に難しくなるからである。なお、上記のピクセルサイズや分割する領域の個数はあくまで例示であり、上記に示した値に限定されない。
また、画像処理装置10は、横方向32個×縦方向32個の領域の各中心位置の理想値比について、まず横方向に領域を移動して得られる32個の曲線(横方向の領域をx、白画像における平均輝度値に対する中心位置の全X線による輝度値の比をyとして得られる曲線)を測定画像と図23に示す水ファントムの組み合わせであって、図23(a)に示す一点鎖線で囲った部分に金属を設置しないものを被写体にしてモンテカルロシミュレーションの計算を行って得られるデータとからそれぞれ算出し、次に縦方向に領域を移動して得られる32個の曲線(縦方向の領域をx、白画像における平均輝度値に対する中心位置の全X線による輝度値の比をyとして得られる曲線)を測定画像と図23に示す水ファントムの組み合わせであって、図23(a)に示す一点鎖線で囲った部分に金属を設置しないものを被写体にしてモンテカルロシミュレーションの計算を行って得られるデータとからそれぞれ算出するという手順で理想値比算出処理を行う。なお、本実施形態では、各領域を代表する理想値比としてそれぞれの中心位置の理想値比を採用しているが、各領域を代表する理想値比はこれに限定されることはなく、例えば、各領域において領域全体の理想値比の平均値を求め、各領域を代表する理想値比として各平均値を採用してもよい。
測定画像を対象として横方向に輝度値の高い方から低い方へ行う方向で領域を移動したとき、白画像における平均輝度値に対する中心位置の全X線による輝度値の比は、骨部分に入るまでの皮膚のみの部分においては基本的にy=A/(x−C)+Bの曲線に従って変化し、皮膚のみの部分から骨部分に入ると当該曲線から外れて大きく落ち込む。また、当該曲線(xの範囲は骨部分に入るまでの皮膚のみの部分に限定)と図25中の曲線C1とは必ずしも一致しない。
そこで、画像処理装置10は、当該曲線(xの範囲は骨部分に入るまでの皮膚のみの部分に限定)と図25中の曲線C1とが一致するように、図25中の曲線C1をx軸方向に伸縮処理或いは縮小処理し、x軸方向に伸縮処理或いは縮小処理した後の図25中の曲線C1に基づいて領域の中心位置の理想値比を算出する。
しかし、X線を被写体の背面付近から照射する場合および正面付近から照射する場合については、皮膚のみの部分の範囲が極端に狭くなってしまうため、測定画像を対象として横方向に輝度値の高い方から低い方へ行う方向で領域を移動したときに求まる理想値比の算出精度が悪くなってしまう。
一方、縦方向に関しては、顎部や頸部等の広い範囲で皮膚のみの部分がある。そこで、X線を被写体の背面付近から照射する場合や正面付近から照射する場合に対応する投影角度においては、横方向に領域を移動させたときの理想値比の計算で皮膚のみの部分がある範囲以下となった時点で、縦方向に領域を移動させたときの理想値比の計算に切り替え、端から例えば5列分について縦方向に領域を移動させたときの理想値比の計算を行うようにする。この縦方向に領域を移動させたときの理想値比の計算結果から得られる値を、皮膚のみの部分から得られる理想値比と仮定することによって、皮膚のみの部分から理想値比を算出することが困難だった横方向に領域を移動させたときの理想値比の算出が可能となるので、その後横方向に領域を移動させたときの理想値比の計算を再開する。
横方向に領域を移動させたときの理想値比の計算は各行で行うため、図25中の曲線C1に対するx軸方向の伸縮処理或いは縮小処理の程度も各行で異なる。このため、縦方向の理想値比の変化が滑らかではなく、凸凹になることが多い。そこで、縦方向についても理想値比の変化を滑らかにする処置を施す必要がある。ただし、横方向の場合と同様の処置を行ったのでは、次は横方向の理想値比の変化がまた凸凹になってしまうので、本実施形態では、最小二乗法を利用することにした。
y=A/(x−C)+Bに最小二乗法を適用すると非常に複雑になり、A、B、Cの値を求めることができない。そこで、理想値比に対して対数z=logyをとると、zは局所的にはxに比例することから、z=Ax+Bについて最小二乗法を適用し、その後にzをyに戻すことで、理想値比を算出するようにした。本実施形態は、最小二乗法を適用する範囲を4つに分割し、それぞれについて境界が滑らかになるようにしつつ別々に最小二乗法を適用した。なお、最小二乗法を適用する範囲の分割数は4つ以外であってもよい。
さらに、画像処理装置10は、上述した手順で算出した各領域の理想値比の変化をより滑らかにするため、各領域を注目領域の対象とし、注目領域の周りの領域の理想値比の平均値を注目領域の理想値比とする平滑化処理を行う。
理想値比算出処理の最後において、画像処理装置10は、各領域の中心位置の理想値比に基づいて各ピクセルの理想値比の値を算出する。例えば、理想値比の値の算出対象であるピクセルが、隣り合う領域の中心位置同士を結ぶ線分上に位置する場合は、当該線分上で理想値比が線形的に変化するものとし、理想値比の値の算出対象であるピクセルが、隣り合う領域の中心位置同士を結ぶ線分上に位置しない場合は、当該ピクセルを囲む四つの中心位置の理想値比を利用し、まず当該ピクセルと横方向の座標が同一であって横方向に隣り合う一組の領域の中心位置同士を結ぶ線分上に位置する第1の点の理想値比を当該線分上で理想値比が線形的に変化するものとして算出し、次に当該ピクセルと横方向の座標が同一であって横方向に隣り合うもう一組の領域の中心位置同士を結ぶ線分上に位置する第2の点の理想値比を当該線分上で理想値比が線形的に変化するものとし算出し、そして第1の点と第2の点とを結ぶ線分上に位置する場合は、当該線分上で理想値比が線形的に変化するものとすることで各ピクセルの理想値比の値を算出できるが、他の方法で各ピクセルの理想値比の値を求めてもよい。例えば、上記の方法において横方向を縦方向に置き換えてもよい。
<散乱線成分算出処理>
画像処理装置10は、測定画像のピクセル毎に、上述した理想値比算出処理で算出した理想値比と、白画像における平均輝度値に対する測定画像の輝度値の比と、X線撮影の投影角度とから、図27に示す曲線のデータを用いて測定画像の散乱線成分を算出する。図27に示す曲線のデータは、y=A/(x−C)+Bの定数A、B、Cの各値が、理想値比と投影角度とに関連付けられたデータテーブルの形式でHDD107に記憶されている。
ここで、画像処理装置10は、ピクセルがX線検出器9Aの端部の方に位置し、且つ、理想値比が低い場合は、上記の通り算出した散乱線成分を減少させる修正処理を行うようにしてもよい。
<補正処理>
画像処理装置10は、測定画像のピクセル毎に、測定画像のピクセルの輝度値から、上述した散乱線成分算出処理で算出した散乱線成分を除去する補正処理を行う。これにより、X線撮影で得られる測定画像データから散乱線成分を低減した画像データを直接的に導出することができる。したがって、X線撮影で得られる測定画像データから散乱線成分を差し引いた画像データ(以下、「直接放射線データ」と称す)も導出することができる。
<変形例>
以上、散乱線補正処理について説明したが、散乱線補正処理は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えて実施することができる。
例えば、X線撮影の撮影範囲が制限されている等の理由により、X線撮影の投影角度が変わっても白画像における平均輝度値に対する全X線による輝度値の比と、X線検出器9Aの或るピクセルで検出される全X線量に対するその全X線量に含まれる散乱線量の比との関係を示す曲線がほとんど変化しない場合には、散乱線成分算出処理において画像処理装置10が、測定画像のピクセル毎に、上述した理想値比算出処理で算出した理想値比と、白画像における平均輝度値に対する測定画像の輝度値の比との二つのみから、図27に示す曲線のデータを用いて測定画像の散乱線成分を算出するようにしてもよい。
上述した実施形態において説明した歯科用あるいは耳鼻科用等のX線撮影装置では、被写体が人間の頭部に限定されている。ただし、散乱線補正処理は被写体が人間の頭部である場合に限定されるものではない。被写体が人間の頭部でない場合は、モンテカルロシミュレーションにおいて使用する被写体のモデルを、図23に示すモデルではなく、実際の被写体に適したモデルにすればよい。
また、上述した実施形態以外の方法で直接放射線データを求めてもよい。
<<金属体の位置特定処理>>
散乱線補正処理が終了すると、画像処理装置10はX線撮影領域に含まれる金属体の位置を特定するために、金属体の位置特定処理プログラムを実行する。X線撮影領域に含まれる金属体の位置を特定する処理の一例を図28のフローチャートに従い説明する。
図28のフローチャートの開始時には、既に散乱線補正処理を行っているため、各ピクセルにおける全放射線に対する直接放射線の割合が分かっている。全放射線に対する散乱放射線の割合は、X線が透過する被写体での減弱が大きいほど増加する。すなわち全放射線に対する直接放射線の割合は、X線が透過する被写体での減弱が大きいほど減少する。したがって、全放射線に対する直接放射線の割合に閾値を設け、閾値未満である場合は金属であると判定し、閾値以上である場合は非金属であると判定する。これにより、ある程度金属を抽出することができる。
抽出する金属が金属クラウンや金属詰め物に用いられるAuAgPd合金である場合は、上記の閾値処理によって抽出対象のほとんどを抽出することができるが、抽出する金属がインプラントに用いられるチタン或いはチタン合金である場合は後述するステップS50及びS60の金属抽出処理を行うにしても上記の閾値処理だけでは不十分になるので、追加抽出処理(閾値処理で抽出できなかったチタン或いはチタン合金の抽出処理)を行う。尚、追加抽出処理はチタン或いはチタン合金以外の金属体の抽出にも適用することが可能である。また、追加抽出処理を行う前に、全放射線データまたは直接放射線データのいずれかに対して対数変換処理が実行され投影画像データが生成されるとともに、全放射線データまたは直接放射線データのいずれかに対して、上記の閾値処理において金属であると判定されたピクセルには「0」値を付与し、上記の閾値処理において金属でないと判定されたピクセルには「1」値を付与することで、追加抽出処理前二値化データを得る。
追加抽出処理は、図12に示すステップS10と同様の処理である。なお、追加抽出処理の対象画像を、直接放射線データ、又は、直接放射線データを対数変換処理した投影画像データにすることも可能である。
追加抽出処理が終了すると、画像処理装置10は、追加抽出処理前二値化データに対して、上記の金属体の位置特定処理において金属であると判定されたピクセルに「0」値を付与する(上記の閾値処理においてすでに金属であると判定されたピクセルは「0」値が付与されているのでそのままにする)ことで、追加抽出処理後二値化データを得る(ステップS10)。追加抽出処理後二値化データでは、上記の閾値処理において金属であると判定されたピクセル及び上記の追加抽出処理において金属であると判定されたピクセルに「0」値が付与されており、上記の閾値処理及び上記の追加抽出処理のいずれにおいても金属であると判定されなかったピクセルに「1」値が付与されている。ステップS20以降の処理は、第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、ステップS20における投影画像データは、全放射線データを対数変換処理した投影画像データ、直接放射線データを対数変換処理した投影画像データのいずれであってもよい。