以下、本発明の実施形態について説明する。以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
以下、平均値は、何ら規定していなければ、数平均値を意味する。また、粉体(例えば後述する、静電潜像現像用トナー、トナー粒子、トナー母粒子、樹脂粒子、ケイ素含有無機粒子)に関する評価値(形状又は物性などを示す値)も、何ら規定していなければ、数平均値を意味する。数平均値は、相当数の測定対象について測定した値の和を、測定した個数で除算した値である。更に、粉体の粒子径は、何ら規定していなければ、電子顕微鏡により測定された一次粒子の円相当径である。円相当径は、粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径である。体積中位径D50は、コールターカウンター法を用いて、体積基準で算出されたメディアン径である。
本実施形態は、トナーに関する。本実施形態のトナーは、トナー粒子を複数含む。トナー粒子は、トナー母粒子と、複数のケイ素含有無機粒子と、複数の樹脂粒子とを有する。ケイ素含有無機粒子と樹脂粒子とは、各々、トナー母粒子の表面に備えられる。
本実施形態のトナーは、形成される画像におけるダッシュマークの発生及び補給かぶりの発生を抑制することができる。その理由は、以下のように推測される。
まず、説明の便宜上、補給かぶりについて説明する。トナーを用いて画像を形成する場合に、現像装置内の現像剤に含まれるトナーには、現像動作に起因するストレスがかかる傾向がある。このようなストレスがトナーに長期間かけられると、現像剤に含まれるトナーが劣化することがある。トナーの劣化としては、例えば、無機粒子の劣化が挙げられる。無機粒子は、外添剤としてトナー母粒子の表面に備えられている。無機粒子の劣化は、トナーが正帯電トナーである場合に、特に発生し易い。現像剤に含まれるトナーが劣化した状態で、劣化していない新しいトナーが補給されると、劣化したトナーと新たに補給されたトナーとの間に、帯電量の差が生じ易くなる。そして、帯電量が低下しているトナーは、感光体の非露光部(非画像部)に引き寄せられ易い。その結果、形成される画像の白紙部(非画像部)に、いわゆる補給かぶりが発生すると考えられる。
ここで、本実施形態のトナーは、トナー母粒子の表面に、ケイ素含有無機粒子に加えて、樹脂粒子を備えている。無機粒子の劣化によって補給かぶりが発生すると考えられることから、樹脂粒子をトナー母粒子の表面に備えることにより、補給かぶりの発生を抑制することができる。トナー母粒子の表面に樹脂粒子が備えられることにより、ケイ素含有無機粒子の添加量を減少させた場合であっても、好適に画像を形成できる傾向があるためである。
しかし、樹脂粒子がトナー母粒子の表面に備えられる場合、形成される画像にはダッシュマークが発生し易くなる。図1は、ダッシュマークが発生した際に感光体の表面に付着していた付着物を、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM、日本電子株式会社製「JSM−3000」)を用いて、倍率5万倍で観察した写真図である。図1中のスケールバーは、100nmを示す。図1から、80nm程度の粒子径を有する樹脂粒子が、軟化して合一化され、凝集していることが確認される。このことから、ダッシュマークが発生する理由は、次のように推測される。
理解を容易にするため、感光体とクリーニング部(例えば、クリーニングブレード)とを備える画像形成装置を用いて画像を形成する場合を例に挙げて説明する。トナーが感光体に現像される際に、樹脂粒子がトナー母粒子から感光体の表面に脱離することがある。クリーニングブレードによって感光体の表面がクリーニングされる際に、感光体の表面に脱離した樹脂粒子は、感光体とクリーニングブレードとの当接部において熱圧縮される。熱圧縮された樹脂粒子は凝集し、感光体の表面に付着する。感光体の表面に付着した凝集した樹脂粒子が原因となり、形成される画像にダッシュマークが発生すると考えられる。
ここで、本実施形態のトナーは、トナー母粒子の表面に樹脂粒子を備えている。樹脂粒子の160℃における凝集度Y160は30質量%以下である。なお樹脂粒子の凝集度Y160については後述する。樹脂粒子の凝集度Y160を30質量%以下とすることにより、感光体の表面に樹脂粒子が脱離した場合であっても、樹脂粒子が感光体とクリーニングブレードとの当接部において熱圧縮され難くなる。その結果、感光体の表面で樹脂粒子が凝集し難くなり、感光体表面に樹脂粒子が付着し難くなる。従って、本実施形態のトナーによれば、形成される画像においてダッシュマークの発生を抑制することができる。
次に、トナー粒子が有する樹脂粒子、ケイ素含有無機粒子及びトナー母粒子について説明する。
<1.樹脂粒子>
樹脂粒子はトナー母粒子の表面に備えられる。これにより、トナーを用いて形成される画像における補給かぶりの発生を抑制することができる。また、樹脂粒子がトナー母粒子の表面に備えられることにより、トナーの流動性及びトナーを用いて形成される画像の画像濃度を向上できる傾向がある。
(凝集度)
樹脂粒子の凝集度Y160は、30質量%以下である。樹脂粒子の凝集度Y160は、下記数式(1)で表される。数式(1)中、M160Bは、温度160℃で5分間0.1kgf/mm2の圧力が付与された樹脂粒子の質量を表す。M160Aは、温度160℃で5分間0.1kgf/mm2の圧力が付与された樹脂粒子を目開き75μm(JIS Z8801−1で規定される200メッシュ、線径50μm及び平織の正方形のふるい目を有する篩)の篩を用いて分離し、分離後に篩上に残留した樹脂粒子の質量を表す。
Y160=100×M160A/M160B・・・(1)
樹脂粒子の凝集度Y160を30質量%以下とすることにより、感光体の表面に樹脂粒子が脱離した場合であっても、樹脂粒子が感光体とクリーニングブレードとの当接部において熱圧縮され難くなる。その結果、感光体の表面で樹脂粒子が凝集し難くなり、感光体の表面に凝集した樹脂粒子が付着し難くなる。その結果、本実施形態のトナーによれば、形成される画像においてダッシュマークの発生を抑制することができる。また、既に述べたように、樹脂粒子の凝集度Y160を30質量%以下とすることにより、樹脂粒子がトナー母粒子から感光体の表面に脱離した場合であっても、感光体の表面に凝集した樹脂が付着し難い。そのため、トナー母粒子の質量に対する樹脂粒子の添加量を増加させた場合であっても、ダッシュマークの発生を抑制することができる。
ダッシュマークの発生を一層抑制するためには、樹脂粒子の凝集度Y160は25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
次に、樹脂粒子の凝集度Y30、Y80及びY120について説明する。樹脂粒子の凝集度Y30、Y80及びY120は、各々、下記数式(5)、(2)及び(6)で表される。下記数式(5)、(2)及び(6)中、M30B、M80B及びM120Bは、各々、温度30℃、80℃及び120℃で5分間0.1kgf/mm2の圧力が付与された樹脂粒子の質量を表す。数式(5)、(2)及び(6)中、M30A、M80A及びM120Aは、各々、温度30℃、80℃及び120℃で5分間0.1kgf/mm2の圧力が付与された樹脂粒子を、目開き75μm(JIS Z8801−1で規定される200メッシュ、線径50μm及び平織の正方形のふるい目を有する篩)の篩を用いて分離し、分離後に篩上に残留した樹脂粒子の質量を表す。
Y30(質量%)=100×M30A/M30B ・・・(5)
Y80(質量%)=100×M80A/M80B ・・・(2)
Y120(質量%)=100×M120A/M120B・・・(6)
樹脂粒子が感光体とクリーニングブレードとの当接部において熱圧縮される場合、樹脂粒子に付与されるエネルギーは、80℃を超える(例えば、120℃以上の)エネルギーに相当すると推測される。そのため、樹脂粒子が熱圧縮される際に引き起こされる樹脂粒子の凝集を抑制するためには、80℃を超える温度領域における樹脂粒子の凝集度の変化率を制御することが重要と考えられる。例えば、複数種の樹脂粒子を比較する場合、80℃以下の温度領域における凝集度(例えば、Y30及びY80)が同じであっても、80℃を超える温度領域における凝集度(例えばY120及びY160)は異なっている。そのため、80℃を超える温度領域における凝集度が低く(凝集度の変化率が小さく)なるように、樹脂粒子を調製することが好ましい。これにより、樹脂粒子が感光体とクリーニングブレードとの当接部を通過する際に、樹脂粒子が凝集し難くなる。その結果、このような樹脂粒子を含有するトナーは、形成される画像におけるダッシュマークの発生を一層抑制できる傾向がある。
80℃を超える温度領域における樹脂粒子の凝集度の変化率を制御し、ダッシュマークの発生を一層抑制するためには、樹脂粒子の凝集度Y160と樹脂粒子の凝集度Y80とは、下記数式(3)及び下記数式(4)の関係を満たすことが好ましい。
Y160>Y80 ・・・(3)
Y160−Y80≦30 ・・・(4)
同様の理由から、樹脂粒子の凝集度Y160と樹脂粒子の凝集度Y120とは、下記数式(7)及び下記数式(8)の関係を満たすことがより好ましい。
Y160>Y120 ・・・(7)
Y160−Y120≦30 ・・・(8)
樹脂粒子の凝集度Y30、Y80、Y120及びY160は、例えば、実施例で後述する方法で測定される。樹脂粒子の凝集度Y30、Y80、Y120及びY160は、トナー母粒子から樹脂粒子を分離した後、分離した樹脂粒子を測定試料として測定されてもよい。トナーから樹脂粒子を分離する方法としては、例えば、実施例で後述する方法が挙げられる。
(数平均一次粒子径)
樹脂粒子の数平均一次粒子径は、50nm以上100nm以下であることが好ましく、50nm以上80nm以下であることがより好ましい。樹脂粒子の数平均一次粒子径が100nm以下であると、トナーの流動性及びトナーにより形成される画像濃度を向上させ易い。一方、樹脂粒子の数平均一次粒子径が50nm以上であると、形成される画像における補給かぶりの発生を抑制し易くなる。更に、樹脂粒子の数平均一次粒子径が50nm以上であると、樹脂粒子がトナー母粒子に埋没し難く、連続して画像を形成した場合であっても画像濃度を向上させ易くなる。
樹脂粒子の数平均一次粒子径は、例えば、以下の方法で測定される。詳しくは、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM、日本電子株式会社製「JSM−3000」)を用いて、測定試料(トナー)を拡大倍率10万倍にて観察する。顕微鏡の視野中に観察された1個のトナー粒子に備えられる複数の樹脂粒子から、10個の樹脂粒子を無作為に選択する。選択された10個の樹脂粒子の一次粒子径(樹脂粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径、即ち円相当径)を、各々測定する。測定された10個の樹脂粒子の一次粒子径の和を、測定した樹脂粒子の個数(10個)で除算する。これにより、樹脂粒子の数平均一次粒子径が算出される。
(被覆率)
トナー母粒子の表面の総面積Xtに対する、樹脂粒子が備えられるトナー母粒子の表面の面積Xrの比率(以下、トナー母粒子の表面における樹脂粒子の被覆率と記載する場合がある)Rrは、下記数式(9)に基づき算出される。
Rr(%)=100×Xr/Xt・・・(9)
以下、図2を参照して、トナー母粒子の表面における樹脂粒子の被覆率Rrの測定方法の一例を説明する。図2(a)は、トナー粒子の表面を電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM、日本電子株式会社製「JSM−3000」)により観察した写真図である。図2(b)は、図2(a)で示す写真図中に観察される複数の樹脂粒子の輪郭線内をペンツールで塗りつぶしたことを示す写真図である。図2(a)及び(b)で示す写真図は、各々、電界放射型走査型電子顕微鏡を用いて拡大倍率3万倍で撮影される。図2(a)及び(b)中、スケールバーは100nmを示す。
まず、電界放射型走査型電子顕微鏡を用いて、拡大倍率3万倍にて測定試料(トナー)を観察する。電子顕微鏡の視野中に観察されたトナー粒子の表面について、SEM撮影像を得る。得られたSEM撮影像の一例を図2(a)に示す。SEM撮影像を、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析する。そして、トナー母粒子の表面の総面積Xtを算出する。トナー母粒子の表面の総面積Xtは、図2(a)で示される電子顕微鏡の視野全体の画素数(図2(a)では616514.4ピクセル)に対応する。
次に、SEM撮影像中のトナー母粒子の表面に付着する複数の樹脂粒子の全てに対して、ペンツールを用いて各樹脂粒子の輪郭線を描画し、輪郭線内を塗りつぶす。輪郭線内を塗りつぶしたSEM撮影像の一例を図2(b)に示す。図2(b)中、ペンツールによって塗りつぶされた部分を白色で示す。ペンツールによって塗りつぶされた部分(輪郭線によって囲まれた部分)の投影面積の合計(トナー母粒子の表面に付着する複数の樹脂粒子の合計面積)Xrを算出する。トナー母粒子の表面に付着する複数の樹脂粒子の合計面積Xrは、図2(b)において白色で示される部分の画素数(図2(b)では100968.4ピクセル)に対応する。そして、数式(9)に基づき、トナー母粒子の表面における樹脂粒子の被覆率Rrを算出する。例えば、図2(a)及び(b)では、数式「100×Xr(100968.4ピクセル)/Xt(616514.4ピクセル)」から、被覆率Rrは16.4%と算出される。なお、説明の便宜のため、1個のトナー粒子に対する測定方法を説明したが、トナー母粒子の表面における樹脂粒子の被覆率Rrは、上記操作を例えば10個のトナー粒子について行い、得られた被覆率Rrの和を測定した個数(10個)で除算した値(数平均値)である。
トナー母粒子の表面における樹脂粒子の被覆率Rrは、40%以上100%以下であることが好ましく、40%以上80%以下であることがより好ましい。
トナー母粒子の表面における樹脂粒子の被覆率Rrが40%以上100%以下であると、形成される画像における補給かぶりの発生を抑制し易くなる。また、トナー母粒子の質量に対するケイ素含有無機粒子の添加量を減少させた場合であっても、トナーの流動性を維持し易くなる。そのため、トナー母粒子の質量に対するケイ素含有無機粒子の添加量を減少させた場合に、トナー母粒子の表面における樹脂粒子の被覆率Rrを高く設定することができる。その結果、トナーの流動性と、形成される画像における補給かぶりの発生の抑制とを、両立させ易くなる。更に、既に述べたように樹脂粒子は所定の凝集度Y160を有するため、トナー母粒子の表面における樹脂粒子の被覆率Rrを高めた場合であっても、トナー母粒子から感光体の表面に脱離した樹脂粒子が凝集し難い。そのため、形成される画像におけるダッシュマークの発生を抑制することができる。
なお、樹脂粒子とケイ素含有無機粒子とは、トナー母粒子の表面に互いに重なって備えられる(外添される)ことがある。そのため、トナー母粒子の表面における樹脂粒子の被覆率Rrと、後述するトナー母粒子の表面におけるケイ素含有無機粒子の被覆率Rsとの合計は、100%を超えることがある。
形成される画像におけるダッシュマークの発生を抑制するためには、樹脂粒子の含有量(添加量)は、トナー母粒子100.0質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上2.0質量部以下であることがより好ましい。また、形成される画像におけるダッシュマークの発生を抑制するためには、トナー母粒子の質量に対する樹脂粒子の含有量は、トナー母粒子の質量に対するケイ素含有無機粒子の含有量よりも、多いことが好ましい。
樹脂粒子の例としては、スチレンアクリル樹脂粒子、スチレン樹脂粒子、ビニル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、アクリルニトリル樹脂粒子、又はアクリルアミド樹脂粒子が挙げられる。
スチレン樹脂粒子は、例えば、スチレン単量体の1種以上を重合又は共重合させることにより得られる。スチレン単量体は、スチレン及びスチレン誘導体からなる群から選択される。スチレン単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、又はp−tert−ブチルスチレンが挙げられる。
スチレンアクリル樹脂粒子は、例えば、スチレン単量体の1種以上と、アクリル酸単量体の1種以上とを共重合させることにより得られる。スチレン単量体は、スチレン及びスチレン誘導体からなる群から選択される。スチレン単量体の例は、スチレン樹脂粒子を形成するためのスチレン単量体の例と同様である。形成される画像におけるダッシュマークの発生を抑制するためには、スチレン単量体のなかでも、スチレンが好ましい。アクリル酸単量体は、アクリル酸及びアクリル酸誘体からなる群から選択される。アクリル酸単量体の例としては、メタクリル酸、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸、又はアクリル酸アルキルエステルが挙げられる。メタクリル酸アルキルエステルの例としては、メチルメタクリル酸、エチルメタクリル酸、ブチルメタクリル酸、イソプロピルメタクリル酸、又は2−エチルヘキシルメタクリル酸が挙げられる。アクリル酸アルキルエステルの例としては、メチルアクリル酸、エチルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、ブチルアクリル酸、オクチルアクリル酸、又は2−エチルヘキシルアクリル酸が挙げられる。形成される画像におけるダッシュマークの発生を抑制するためには、アクリル酸単量体のなかでも、メタクリル酸アルキルエステルが好ましく、ブチルメタクリル酸がより好ましい。
スチレンアクリル樹脂粒子の形成には、架橋剤を使用してもよい。架橋剤を使用することにより、樹脂粒子の架橋度を向上させることができ、樹脂粒子の凝集度Y160を小さくできる傾向がある。架橋剤の例としては、ビニル基を2個以上(好ましくは2個又は3個、より好ましくは2個)有する単量体が挙げられる。ビニル基を2個以上有する単量体の具体例としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリル酸、エチレングリコールジメタクリル酸、ポリエチレングリコールジアクリル酸、ポリエチレングリコールジメタクリル酸、トリメチロールプロパントリアクリル酸、又はトリメチロールプロパントリメタクリル酸が挙げられる。形成される画像におけるダッシュマークの発生を抑制するためには、ジビニルベンゼンを使用することが好ましく、パラジビニルベンゼン及びメタジビニルベンゼンの1種以上を使用することがより好ましく、パラジビニルベンゼンを使用することが特に好ましい。架橋剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
スチレンアクリル樹脂粒子の形成に使用される架橋剤の純度は、80%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。架橋剤の純度がこのような範囲内であると、形成されるスチレンアクリル樹脂粒子の凝集度Y160を小さくすることができ、形成される画像におけるダッシュマークの発生を抑制し易くなる。
ビニル樹脂粒子は、例えば、ビニル化合物の1種以上を重合又は共重合させることにより得られる。ビニル化合物の例としては、オレフィン、ハロゲン化ビニル、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、N−ビニル化合物、ビニルナフタレン、又はビニルピリジンが挙げられる。オレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、又はイソブチレンが挙げられる。ハロゲン化ビニルの例としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、又はフッ化ビニリデンが挙げられる。ビニルエステルの例としては、プロピオン酸ビニル、又は酢酸ビニルが挙げられる。ビニルエーテルの例としては、ビニルメチルエーテル、又はビニルエチルエーテルが挙げられる。ビニルケトンの例としては、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、又はビニルヘキシルケトンが挙げられる。N−ビニル化合物の例としては、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、又はN−ビニルピロリドンが挙げられる。
ポリエステル樹脂粒子は、例えばアルコールの1種以上とカルボン酸の1種以上とを縮重合又は共縮重合させることにより得られる。アルコールの例としては、後述する結着樹脂のポリエステル樹脂を合成する際に用いられるアルコールと同様のものが挙げられる。カルボン酸の例としては、後述する結着樹脂のポリエステル樹脂を合成する際に用いられるカルボン酸と同様のものが挙げられる。
ウレタン樹脂粒子は、例えば、ジイソシアネートとジオール化合物とを縮合させることにより得られる。
アクリルニトリル樹脂粒子は、例えば、アクリルニトリル及びメタクリルニトリルのうちの1種以上を重合又は共重合させることにより得られる。
アクリルアミド樹脂粒子は、例えば、アクリルアミド系単量体の1種以上を重合又は共重合させることにより得られる。アクリルアミド系単量体の例としては、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、又はN−オクタデシルアクリルアミドが挙げられる。
形成される画像におけるダッシュマークの発生を抑制するためには、樹脂粒子は、アクリル酸及びアクリル酸誘導体からなる群から選択されるアクリル酸単量体と、スチレン及びスチレン誘導体からなる群から選択されるスチレン単量体と、ビニル基を2個以上有する単量体との共重合体であることが好ましい。
形成される画像におけるダッシュマークの発生を抑制するためには、樹脂粒子は、ブチルメタクリル酸と、スチレンと、ジビニルベンゼンとの共重合体であることがより好ましい。
(樹脂粒子の製造方法)
樹脂粒子の製造方法は、30質量%以下の凝集度Y160を有する樹脂を製造できる限り特に限定されない。樹脂粒子は、例えば、既に述べた樹脂粒子を形成するための単量体を、重合又は共重合することにより製造される。なお、樹脂粒子の製造方法は、要求される樹脂粒子の構成又は特性に応じて任意に変更されてもよい。また、必要のない操作を割愛してもよい。以下、樹脂粒子がスチレンアクリル樹脂粒子である場合を例に挙げて説明する。
スチレンアクリル樹脂粒子の製造方法は、例えば、樹脂粒子形成工程を含む。スチレンアクリル樹脂粒子の製造方法は、必要に応じて、蒸留工程を含んでもよい。
樹脂粒子形成工程では、アクリル酸及びアクリル酸誘導体からなる群から選択されるアクリル酸単量体と、スチレン及びスチレン誘導体からなる群から選択されるスチレン単量体とを反応(共重合)させることにより、複数の樹脂粒子を形成する。共重合反応は、例えば、アクリル酸単量体とスチレン単量体とを、溶媒中で加熱しながら攪拌することにより行われる。共重合反応では、アクリル酸単量体及びスチレン単量体に加えて、必要に応じて、架橋剤、乳化剤及び重合開始剤が添加されてもよい。好適に共重合反応を進行させるためには、共重合反応は、窒素雰囲気下で行われることが好ましい。
アクリル酸単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、スチレン単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
スチレン単量体の添加量は、アクリル酸単量体100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
樹脂粒子形成工程では、アクリル酸単量体とスチレン単量体とに加えて、架橋剤を添加することが好ましい。樹脂粒子形成工程で架橋剤を使用することにより、形成されるスチレンアクリル樹脂の架橋度を向上させ易くなる。これにより、形成されるスチレンアクリル樹脂の160℃における凝集度Y160を小さくすることができ、形成される画像におけるダッシュマークの発生を抑制し易くなる。
形成される画像におけるダッシュマークの発生を抑制するために、架橋剤としては、ビニル基を2個以上(好ましくは2個又は3個、より好ましくは2個)有する単量体が好ましく、ジビニルベンゼンがより好ましく、パラジビニルベンゼン及びメタジビニルベンゼンの1種以上が特に好ましく、パラジビニルベンゼンが最も好ましい。架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
架橋剤の添加量は、アクリル酸単量体100質量部に対して、40質量部以上80質量部以下であることが好ましい。架橋剤の添加量がこのような範囲内であると、形成されるスチレンアクリル樹脂粒子の架橋度が向上すると考えられる。これにより、形成されるスチレンアクリル樹脂粒子の160℃における凝集度Y160を所望の値に調整し易くなる。その結果、形成される画像におけるダッシュマークの発生を抑制し易くなる。
共重合反応に乳化剤を使用する場合、乳化剤の例としては、スルホン酸塩含有乳化剤が挙げられ、より具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、又はイソオクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。形成されるスチレンアクリル樹脂粒子の160℃における凝集度Y160を所望の値に調整し易いことから、乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。形成されるスチレンアクリル樹脂粒子の160℃における凝集度Y160を所望の値に調整し易いことから、乳化剤の添加量は、アクリル酸単量体100質量部に対して、3質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
共重合反応に重合開始剤を使用する場合、重合開始剤の例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、又は過酸化水素が挙げられる。形成されるスチレンアクリル樹脂粒子の160℃における凝集度Y160を所望の値に調整し易いことから、重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイドが好ましい。形成されるスチレンアクリル樹脂粒子の160℃における凝集度Y160を所望の値に調整し易いことから、重合開始剤の添加量は、アクリル酸単量体100質量部に対して、10質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
共重合反応に使用される溶媒の例としては、水性媒体が挙げられる。水性媒体とは、水を主成分とする媒体である。水性媒体は、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。水性媒体の具体例としては、水、又は水と極性溶媒との混合液が挙げられる。水性媒体中に含有される極性溶媒の例としては、メタノール又はエタノールが挙げられる。水性媒体における水の含有率は、水性媒体の質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが一層好ましく、100質量%であることが最も好ましい。共重合反応を好適に進行させるためには、溶媒として水を使用することが好ましい。共重合反応を好適に進行させるためには、溶媒の添加量は、アクリル酸単量体100質量部に対して、200質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、500質量部以上700質量部以下であることがより好ましい。
共重合反応の攪拌条件を適宜変更することにより、形成される樹脂粒子の数平均一次粒子径を調整することができる。共重合反応における攪拌速度を速くすると、形成される樹脂粒子の数平均一次粒子径が小さくなる傾向がある。一方、共重合反応における攪拌速度を遅くすると、形成される樹脂粒子の数平均一次粒子径が大きくなる傾向がある。
共重合反応を好適に進行させるためには、共重合反応の反応温度は、70℃以上100℃以下であることが好ましく、85℃以上95℃以下であることがより好ましい。同様の理由から、共重合反応の反応時間は、1時間以上5時間以下であることが好ましく、2時間以上4時間以下であることがより好ましい。
樹脂粒子形成工程で、架橋剤を使用する場合、架橋剤は事前に蒸留されてもよい(蒸留工程)。架橋剤としてビニル基を2個以上有する単量体が使用される場合、ビニル基を2個以上有する単量体は事前に蒸留されてもよい。ビニル基を2個以上有する単量体を蒸留することにより、ビニル基を2個以上有する単量体の純度を高め、形成されるスチレンアクリル樹脂粒子の架橋度を向上できると考えられる。これにより、形成されるスチレンアクリル樹脂の160℃における凝集度Y160を小さくすることができ、形成される画像におけるダッシュマークの発生を抑制し易くなる。
ビニル基を2個以上有する単量体は、例えば、以下の方法で蒸留される。フラスコ内にジビニルベンゼンを投入する。フラスコ内を真空ポンプを用いて減圧しながら、フラスコの内容物を加熱する。フラスコ内の圧力は、1.0mmHg以上1.5mmHg以下に維持されることが好ましい。これにより、ジビニルベンゼンに含有される不純物(例えば、ジエチルベンゼン、又はエチルビニルベンゼン)を蒸発させて、不純物を除去する。
蒸留工程において蒸留されたビニル基を2個以上有する単量体の純度は、80質量%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。蒸留工程において得られるビニル基を2個以上有する単量体の純度がこのような範囲内であると、形成されるスチレンアクリル樹脂粒子の架橋度が向上すると考えられる。これにより、形成されるスチレンアクリル樹脂粒子の160℃における凝集度Y160を所望の値に調整し易くなる。その結果、形成される画像におけるダッシュマークの発生を抑制し易くなる。
ビニル基を2個以上有する単量体の純度は、例えば、以下の方法で確認される。1H−NMR(プロトン核磁気共鳴分光計、アジレント・テクノロジー社製「600CSL型」)を用いて、ビニル基を2個以上有する単量体を分析する。溶媒として、重水素化クロロホルム(CDCl3)を使用する。内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を使用する。測定された1H−NMRスペクトルから、ビニル基を2個以上有する単量体に由来するピークのシグナル強度及び不純物に由来するピークのシグナル強度を算出する。そして、ビニル基を2個以上有する単量体に由来するピークのシグナル強度と、不純物に由来するピークのシグナル強度との比率から、ビニル基を2個以上有する単量体の純度を算出する。例えば、ビニル基を2個以上有する単量体がジビニルベンゼンである場合、ジビニルベンゼンの純度は以下の方法で算出される。ジビニルベンゼンに由来するピーク(化学シフト6.70ppmに現れるピーク)のシグナル強度をP1とする。全ビニル基に由来するピーク(化学シフト5.00ppm以上7.00ppm以下の範囲に現れるピーク)のシグナル強度の合計をP2とする。エチル基に由来するピーク(化学シフト1.00ppm以上3.00ppm以下の範囲に現れるピーク)のシグナル強度の合計をP3とする。この場合、ジエチルベンゼンの純度は、数式「1/[1+[(8/3)×(P3/P1)]+(P3/P2)]×100」により算出される。
<2.ケイ素含有無機粒子>
ケイ素含有無機粒子がトナー母粒子の表面に備えられることにより、トナーの流動性を向上できる傾向がある。
ケイ素含有無機粒子の例としては、シリカ、炭化ケイ素、又は窒化ケイ素が挙げられる。ケイ素含有無機粒子の表面は疎水化処理剤により疎水化処理されてもよい。疎水化処理剤の例としては、チタンカップリング剤、シランカップリング剤、脂肪酸もしくはその金属塩、又はシリコーンオイルが挙げられる。
(数平均一次粒子径)
ケイ素含有無機粒子の数平均一次粒子径は、10nm以上である。ケイ素含有無機粒子の数平均一次粒子径が10nm以上であると、以下の利点があると考えられる。
第一の利点としては、形成される画像における補給かぶりの発生を抑制し易くなる。この理由は以下のように推測される。ケイ素含有無機粒子の数平均一次粒子径が10nm未満であると、トナー表面におけるケイ素含有無機粒子の被覆率が高くなる傾向がある。ケイ素含有無機粒子の被覆率が高くなると、現像時のトナー粒子とキャリアとの摩擦(ストレス)によって、トナー母粒子の表面におけるケイ素含有無機粒子が劣化し易くなる。その結果、形成される画像に補給かぶりが発生し易くなる。そのため、ケイ素含有無機粒子の数平均一次粒子径を10nm以上に設定することにより、形成される画像における補給かぶりの発生を抑制し易くなる。
第二の利点としては、連続して画像を形成した場合であっても画像濃度を向上させ易くなる。ケイ素含有無機粒子の数平均一次粒子径が10nm以上であると、現像時のトナー粒子とキャリアとの摩擦(ストレス)により、ケイ素含有無機粒子がトナー母粒子に埋没し難くなる。その結果、連続して画像を形成した場合であっても、形成される画像の画像濃度が向上すると考えられる。
ケイ素含有無機粒子の数平均一次粒子径は、10nm以上40nm以下であることが好ましく、12nm以上30nm以下であることが好ましい。ケイ素含有無機粒子の数平均一次粒子径がこのような範囲内であると、トナーの流動性を向上させ易くなる。
ケイ素含有無機粒子の数平均一次粒子径は、例えば、以下の方法で測定される。詳しくは、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM、日本電子株式会社製「JSM−3000」)を用いて、測定試料(トナー)を拡大倍率10万倍にて観察する。顕微鏡の視野中に観察された1個のトナー粒子に備えられる複数のケイ素含有無機粒子から、10個のケイ素含有無機粒子を無作為に選択する。選択された10個のケイ素含有無機粒子の一次粒子径(ケイ素含有無機粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径、即ち円相当径)を、各々測定する。10個のケイ素含有無機粒子の一次粒子径の和を、測定したケイ素含有無機粒子の個数(10個)で除算する。これにより、ケイ素含有無機粒子の数平均一次粒子径が算出される。
(被覆率)
トナー母粒子の表面の総面積Xtに対する、ケイ素含有無機粒子が備えられるトナー母粒子の表面の面積Xsの比率(以下、トナー母粒子の表面におけるケイ素含有無機粒子の被覆率と記載する場合がある)Rsは、下記数式(10)に基づき算出される。
Rs(%)=100×Xs/Xt・・・(10)
トナー母粒子の表面におけるケイ素含有無機粒子の被覆率Rsは、例えば、以下の方法で測定される。詳しくは、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM、日本電子株式会社製「JSM−3000」)を用いて、拡大倍率3万倍にて測定試料(トナー)を観察する。電子顕微鏡の視野中に観察されたトナー粒子の表面について、SEM撮影像を得る。得られたSEM撮影像を、画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析する。そして、トナー母粒子の表面の総面積Xtを算出する。次に、SEM撮影像中のトナー母粒子の表面に付着する複数のケイ素含有無機粒子の全てに対して、ペンツールを用いて各ケイ素含有無機粒子の輪郭線を描画し、輪郭線内を塗りつぶす。そして、ペンツールによって塗りつぶされた部分(輪郭線によって囲まれた部分)の投影面積の合計(トナー母粒子の表面に付着する複数のケイ素含有無機粒子の合計面積)Xsを算出する。そして、数式(10)に基づき、トナー母粒子の表面におけるケイ素含有無機粒子の被覆率Rsを算出する。なお、トナー母粒子の表面におけるケイ素含有無機粒子の被覆率Rsの具体的な測定方法は、図2を参照して説明したトナー母粒子の表面における樹脂粒子の被覆率Rrの測定方法と同様である。また、説明の便宜のため、1個のトナー粒子に対する測定方法を説明したが、トナー母粒子の表面におけるケイ素含有無機粒子の被覆率Rsは、上記操作を例えば10個のトナー粒子について行い、得られた被覆率Rsの和を測定した個数(10個)で除算した値(数平均値)である。
トナー母粒子の表面におけるケイ素含有無機粒子の被覆率Rsは、0%より大きく40%以下であることが好ましく、15%以上40%以下であることがより好ましく、15%以上30%以下であることが特に好ましい。トナー母粒子の表面におけるケイ素含有無機粒子の被覆率Rsが40%以下であると、形成される画像において補給かぶりが発生し難くなる。この理由は以下のように推測される。現像時のトナー粒子とキャリアとの摩擦(ストレス)によって、トナー母粒子の表面におけるケイ素含有無機粒子が劣化することがある。しかし、ケイ素含有無機粒子の被覆率Rsが40%以下であると、ケイ素含有無機粒子の劣化が、トナーの帯電量に影響を与えにくくなる。その結果、劣化したトナーと新たに補給されたトナーとの間に、帯電量の差が生じ難くなり、補給かぶりの発生を抑制し易くなる。
形成される画像における補給かぶりの発生を抑制するためには、ケイ素含有無機粒子の含有量(添加量)は、トナー母粒子100.0質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上2.0質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上1.5質量部以下であることが特に好ましい。また、形成される画像における補給かぶりの発生を抑制するためには、トナー母粒子の質量に対するケイ素含有無機粒子の含有量は、トナー母粒子の質量に対する樹脂粒子の含有量よりも、少ないことが好ましい。
<3.その他の外添剤>
トナー粒子は、必要に応じて、樹脂粒子及びケイ素含有無機粒子以外の外添剤(その他の外添剤)を更に有してもよい。その他の外添剤は、例えば、トナーの流動性を向上させる目的、又は感光体をトナーにより研磨し易くする目的で使用される。
その他の外添剤の例としては、金属酸化物が挙げられる。金属酸化物として具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウムが挙げられる。
その他の外添剤の数平均粒子径は、1nm以上1μm以下であることが好ましく、1nm以上50nm以下であることがより好ましい。その他の外添剤の使用量は、トナー母粒子100.0質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。
<4.トナー母粒子>
以下、トナー母粒子について説明する。トナー母粒子は、結着樹脂と、着色剤とを少なくとも含有する。トナー母粒子は、必要に応じて、離型剤、電荷制御剤、磁性粉の1種以上を含有してもよい。ただし、トナーの用途に応じて必要のない成分(例えば、離型剤、電荷制御剤、又は磁性粉)を割愛してもよい。
なお、トナー母粒子は、カプセル化されていてもよい。カプセル化されたトナー母粒子は、例えば、以下に述べるトナー母粒子と同様の構造及び成分を有するトナーコアと、トナーコアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを有する。
トナー母粒子の体積中位径D50は5μm以上10μm以下であることが好ましい。
<4−1.結着樹脂>
結着樹脂は、トナーの調製に用いられる結着樹脂である限り、特に限定されない。結着樹脂としては、トナーの定着性を向上させるという観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の好適な例としては、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂、スチレンアクリル酸系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ビニルエーテル樹脂、N−ビニル化合物系樹脂、又はスチレンブタジエン樹脂が挙げられる。結着樹脂中での着色剤の分散性、トナーの帯電性及びトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂がポリエステル樹脂であることがより好ましい。以下、ポリエステル樹脂について説明する。
ポリエステル樹脂は、例えばアルコールとカルボン酸とを縮重合又は共縮重合させることにより得られる。
ポリエステル樹脂の調製に用いられるアルコールの好適な例としては、ジオール類、ビスフェノール類、又は3価以上のアルコール類が挙げられる。
ジオール類の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるカルボン酸の例としては、2価カルボン酸、又は3価以上のカルボン酸が挙げられる。
2価カルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸、又はアルケニルコハク酸が挙げられる。アルキルコハク酸の例としては、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸が挙げられる。アルケニルコハク酸の例としては、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
アルコール及びカルボン酸は、各々1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。更に、カルボン酸を、エステル形成性の誘導体に誘導体化して使用してもよい。エステル形成性の誘導体の例としては、酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステルが挙げられる。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を意味する。
ポリエステル樹脂の軟化点は、80℃以上150℃以下であることが好ましく、90℃以上140℃以下であることがより好ましい。
結着樹脂としてポリエステル樹脂が使用される場合、結着樹脂中のポリエステル樹脂の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
結着樹脂として熱可塑性樹脂が使用される場合、熱可塑性樹脂の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、熱可塑性樹脂に、架橋剤又は熱硬化性樹脂を添加してもよい。結着樹脂内に部分的に架橋構造を導入することにより、トナーの定着性を確保しながら、トナーの保存安定性、形態保持性及び耐久性を向上させ易くなる。
結着樹脂として熱可塑性樹脂と共に使用できる熱硬化性樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、又はシアネート系樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、30℃以上60℃以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移点がこのような範囲内であると、トナーの高い定着性を維持しながら、トナーの保存安定性、形態保持性及び耐久性を向上させ易い。
結着樹脂のガラス転移点の測定方法の例としては、示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて結着樹脂の吸熱曲線を測定し、得られた吸熱曲線における比熱の変化点から結着樹脂のガラス転移点を求める方法が挙げられる。具体的には、測定試料(結着樹脂)10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25℃以上200℃以下、昇温速度10℃/分の条件で結着樹脂の吸熱曲線を求める。そして、得られた吸熱曲線に基づいて結着樹脂のガラス転移点を求める。
<4−2.着色剤>
着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料が用いられる。着色剤の使用量は、100質量部の結着樹脂に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。
(黒色着色剤)
トナー母粒子は、黒色着色剤を含有してもよい。黒色着色剤は、例えば黒色顔料、又は黒色染料が挙げられる。黒色顔料の具体例としては、カーボンブラックが挙げられる。後述するイエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された黒色着色剤を使用してもよい。
(カラー着色剤)
トナー母粒子は、カラー着色剤を含有してもよい。カラー着色剤の例としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤が挙げられる。
イエロー着色剤の例としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、又はアリールアミド化合物が挙げられる。イエロー着色剤の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローが挙げられる。
マゼンタ着色剤の例としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物が挙げられる。マゼンタ着色剤の具体例としては、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)が挙げられる。
シアン着色剤の例としては、銅フタロシアニン、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、又は塩基染料レーキ化合物が挙げられる。シアン着色剤の具体例としては、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーが挙げられる。
<4−3.離型剤>
離型剤は、例えばトナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の使用量は、100質量部の結着樹脂に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、2質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
離型剤の例としては、脂肪族炭化水素ワックス、脂肪族炭化水素ワックスの酸化物、植物由来のワックス、動物由来のワックス、鉱物由来のワックス、脂肪酸エステルを主成分とするワックス、又は脂肪酸エステルの一部もしくは全部が脱酸化されたワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素ワックスの例としては、エステルワックス、ポリエチレワックス(例えば、低分子量ポリエチレン)、ポリプロピレンワックス(例えば、低分子量ポリプロピレン)、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素ワックスの酸化物の例としては、酸化ポリエチレンワックス、又は酸化ポリエチレンのブロック共重合体が挙げられる。植物由来のワックスの例としては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスが挙げられる。動物由来のワックスの例としては、みつろう、ラノリン、又は鯨ろうが挙げられる。鉱物由来のワックスの例としては、オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムが挙げられる。脂肪酸エステルを主成分とするワックスの例としては、モンタン酸エステルワックス、又はカスターワックスが挙げられる。脂肪酸エステルの一部もしくは全部が脱酸化されたワックスの例としては、脱酸カルナバワックスが挙げられる。
離型剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<4−4.電荷制御剤>
電荷制御剤は、例えば、帯電レベル及び帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。また、耐久性及び安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルに帯電可能か否かの指標である。
正帯電させたトナーを用いて現像する場合には、正帯電性の電荷制御剤を使用することが好ましい。一方、負帯電させたトナーを用いて現像する場合には、負帯電性の電荷制御剤を使用することが好ましい。ただし、トナーにおいて十分な帯電量が確保される場合には、電荷制御剤を使用しなくてもよい。
正帯電性の電荷制御剤の例としては、アジン化合物、アジン化合物からなる直接染料、ニグロシン化合物、ニグロシン化合物からなる酸性染料、ナフテン酸の金属塩類、高級脂肪酸の金属塩類、アルコキシル化アミン、又はアルキルアミドが挙げられる。
アジン化合物の例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2−オキサジン、1,3−オキサジン、1,4−オキサジン、1,2−チアジン、1,3−チアジン、1,4−チアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、又はキノキサリンが挙げられる。
アジン化合物からなる直接染料の例としては、アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、又はアジンディープブラック3RLが挙げられる。
ニグロシン化合物の例としては、ニグロシン、ニグロシン塩、又はニグロシン誘導体が挙げられる。ニグロシン化合物からなる酸性染料の例としては、ニグロシンBK、ニグロシンNB、又はニグロシンZが挙げられる。4級アンモニウム塩の例としては、べンジルデシルヘキシルメチルアンモニウムクロライド、又はデシルトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。
また、4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を有する樹脂も、正帯電性の電荷制御剤として使用できる。迅速な立ち上がり性を得るためには、ニグロシン化合物が特に好ましい。
負帯電性の電荷制御剤の例としては、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の例としては、アルミニウムアセチルアセトナート又は鉄(II)アセチルアセトナートのようなアセチルアセトン金属錯体;又は3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロムのようなサリチル酸系金属錯体が挙げられる。有機金属塩の例としては、サリチル酸系金属塩が挙げられる。なかでも、サリチル酸系金属錯体及びサリチル酸系金属塩がより好ましい。
電荷制御剤の使用量は、トナー全量を100質量部とした場合に、1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。1種の電荷制御剤を単独で使用してもよいし、複数種の電荷制御剤を併用してもよい。
<4−5.磁性粉>
磁性粉の例としては、鉄、強磁性金属、鉄及び/又は強磁性金属を含む合金、鉄及び/又は強磁性金属を含む化合物、強磁性化処理を施された強磁性合金、あるいは二酸化クロムが挙げられる。鉄の例としては、フェライト、又はマグネタイトが挙げられる。強磁性金属の例としては、コバルト、又はニッケルが挙げられる。強磁性化処理の例としては、熱処理が挙げられる。
磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましい。このような範囲の粒子径を有する磁性粉を用いる場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させ易い。
なお、トナーの帯電極性は特に限定されないが、正極性であることが好ましい。既に述べたように、トナー母粒子の表面に備えられる無機粒子の劣化は、トナーが正帯電トナーである場合に発生し易い。そのため、本実施形態のトナーが正帯電トナーである場合に、ダッシュマークの発生を一層抑制できると考えられる。
なお、本実施形態のトナーは、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。二成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いることが好ましい。
キャリアとして、樹脂により被覆されたキャリアコアを使用してもよい。また、キャリアとして、樹脂中にキャリアコアを分散させた樹脂キャリアを用いてもよい。
キャリアコアの例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、又はコバルトの粒子;これらの材料と金属(例えば、マンガン、マグネシウム、亜鉛及び/又はアルミニウム)との合金の粒子;鉄−ニッケル合金の粒子;鉄−コバルト合金の粒子;セラミックスの粒子;あるいは高誘電率物質の粒子が挙げられる。セラミックスの例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、又はニオブ酸リチウムが挙げられる。高誘電率物質の例としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、又はロッシェル塩が挙げられる。これらのキャリアコアは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
キャリアコアを被覆する樹脂の例としては、アクリル酸系重合体、スチレン系重合体、スチレンアクリル酸系共重合体、オレフィン重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、又はアミノ樹脂が挙げられる。オレフィン重合体の例としては、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、又はポリプロピレンが挙げられる。フッ素樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、又はポリフッ化ビニリデンが挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
キャリアの粒子径は、20μm以上120μm以下であることが好ましく、25μm以上80μm以下であることがより好ましい。キャリアの粒子径は、例えば、電子顕微鏡により測定される。
トナーを二成分現像剤において用いる場合、トナーの含有量は、二成分現像剤の質量に対して、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
二成分現像剤の作製方法の例としては、ボールミルのような混合装置を用いてトナーとキャリアとを混合する方法が挙げられる。
<5.トナーの製造方法>
トナーは、例えば、以下の方法で製造される。なお、トナーの製造方法は、要求されるトナーの構成又は特性に応じて任意に変更されてもよい。また、必要のない操作を割愛してもよい。効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に形成することが好ましい。
<5−1.トナー母粒子の製造工程>
トナー母粒子の製造方法の例としては、凝集法、又は粉砕法が挙げられる。凝集法は、粉砕法よりも、円形度の高いトナー母粒子を製造し易い。また、凝集法は、均一な形状及び粒子径を有するトナー母粒子を製造し易い。一方、粉砕法は、凝集法よりも簡便にトナー母粒子を製造できる。
(粉砕法)
以下、粉砕法の一例を説明する。まず、結着樹脂、着色剤及び必要に応じて含有される成分(例えば、電荷制御剤、離型剤及び磁性粉)を混合する。続けて、得られた混合物を溶融し混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕し分級する。これにより、所望の粒子径を有するトナー母粒子を得る。
(凝集法)
次に、凝集法の一例を説明する。まず、結着樹脂の微粒子、着色剤の微粒子及び必要に応じて含有される各成分(例えば、電荷制御剤、離型剤及び磁性粉)の微粒子を水性媒体中で凝集させて、凝集粒子を得る。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。これにより、トナー母粒子が得られる。
<5−2.外添工程>
外添工程では、複数のケイ素含有無機粒子と複数の樹脂粒子とを、トナー母粒子の表面に付着させる(外添する)。これにより、トナー粒子が得られる。外添工程では、必要に応じて、ケイ素含有無機粒子及び樹脂粒子以外の外添剤を、トナー母粒子の表面に付着させてもよい。外添方法の好適な例としては、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー、又はホソカワミクロン株式会社製のナウターミキサー(登録商標))を用いて、トナー母粒子とケイ素含有無機粒子と樹脂粒子とを混合する方法が挙げられる。混合機の混合条件は、ケイ素含有無機粒子と樹脂粒子とがトナー母粒子に完全に埋没しないような条件に設定されることが好ましい。
以上、本実施形態のトナーを説明した。本実施形態のトナーによれば、形成される画像におけるダッシュマークの発生及びトナーの補給かぶりの発生を抑制することができる。
本発明の実施例について説明する。しかし、本発明は以下の実施例に何ら限定されない。
<1.ケイ素含有無機粒子の準備>
まず、トナー粒子を形成するためのケイ素含有無機粒子として、表1に示すケイ素含有無機粒子S1〜S4を準備した。
<2.樹脂粒子の製造>
次に、トナー粒子を形成するための樹脂粒子として、樹脂粒子A〜Kを以下の方法で製造した。
(ジビニルベンゼンの準備)
まず、樹脂粒子の形成に使用するビニル基を2個以上有する単量体として、以下のジビニルベンゼンDVB−A、B及びCを準備した。
DVB−A:メタジビニルベンゼンとパラジビニルベンゼンとの混合物(純度50%、東京化成工業株式会社製、CAS番号1321−74−0)
DVB−B:パラジビニルベンゼン(純度80%、アルドリッチ社製、CAS番号105−06−6)
DVB−C:パラジビニルベンゼン(純度98%、蒸留処理されたDVB−B)
DVB−Cは、DVB−Bを以下の方法で蒸留することにより調製した(蒸留工程)。具体的には、冷却管、真空ポンプ及び温度計を備えた容量1000mLのフラスコを準備した。フラスコ内に、500gのDVB−Bを投入した。フラスコの内容物を、オイルバスを用いて加温した。フラスコの内容物が45℃になったときに、フラスコをオイルバスから取り出した。続いて、フラスコ内を、真空ポンプを用いて減圧した。フラスコ内の圧力をマノメーターを用いて測定しながら、フラスコ内の圧力が1.3mmHgになるまで、フラスコをガスバーナーを用いて加熱した。フラスコ内の圧力が1.3mmHgに維持されるようにフラスコを加熱しながら、不純物としてフラスコの内容物に含有されるジエチルベンゼンとエチルビニルベンゼンとを蒸発させた。蒸発させたジエチルベンゼンとエチルビニルベンゼンとを、冷却管を通過させることにより冷却し、冷却管に連結される別のフラスコに回収した。これにより、DVB−C(蒸留処理されたDVB−B)を得た。DVB−Cの純度を、1H−NMR(プロトン核磁気共鳴分光計、アジレント・テクノロジー社製「600CSL型」)を用いて確認したところ、DVB−Cの純度は98%であった。なお、DVB−Cの純度は、実施形態で述べた純度の算出方法と同様の方法で測定した。
(樹脂粒子Aの製造)
以下のように、樹脂粒子Aを製造した(樹脂粒子形成工程)。攪拌機、冷却管、温度計及び窒素導入管を備えた1000mLの四つ口フラスコを準備した。フラスコ内に、アクリル酸単量体としてのブチルメタクリル酸(BMA)100gと、スチレン単量体としてのスチレン20gと、ビニル基を2個以上有する単量体としてのジビニルベンゼンDVB−A80gと、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)6gと、重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド(BPO)15gと、イオン交換水600gとを、攪拌しながら投入した。フラスコ内に窒素ガスを導入しながら、フラスコの内容物を90℃で3時間、攪拌下で反応(共重合)させた。攪拌条件を調整することにより、得られる樹脂粒子の数平均一次粒子径を調整した。その結果、反応生成物(樹脂粒子A)のエマルションが得られた。樹脂粒子Aのエマルションを冷却し、洗浄し、脱水した。これにより、エマルションから共重合体粒子(樹脂粒子A)を分離した。樹脂粒子Aの数平均一次粒子径は80nmであった。
(樹脂粒子B〜Kの製造)
以下の点を変更した以外は、樹脂粒子Aの製造と同様の方法で、樹脂粒子B〜Kを製造した。ブチルメタクリル酸(BMA)の添加量を、樹脂粒子Aの製造における100gから、表2に示す添加量に変更した。スチレンの添加量を、樹脂粒子Aの製造における20gから、表2に示す添加量に変更した。ジビニルベンゼンの種類及び添加量を、樹脂粒子Aの製造におけるDVB−Aの80gから、表2に示す種類(DVB−A、B、又はC)及び添加量に変更した。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)の添加量を、樹脂粒子Aの製造における6gから、表2に示す添加量に変更した。原料を反応させる際の攪拌速度を変更することにより、樹脂粒子の数平均一次粒子径を、樹脂粒子Aの80nmから、表2に示す数平均一次粒子径に変更した。樹脂粒子A〜Kの数平均一次粒子径は、実施形態で述べた方法と同様の方法で測定した。なお、160℃における樹脂粒子の凝集度Y160の測定方法については後述する。
表2中、BMA、DBS、BPO及びY160は、各々、ブチルメタクリル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゾイルパーオキサイド及び160℃における樹脂粒子の凝集度を示す。表2中、数平均一次粒子径は、樹脂粒子の数平均一次粒子径を示す。
<3.トナーの製造>
次に、準備したケイ素含有無機粒子S1〜S4、準備した樹脂粒子A〜K、トナー母粒子及びその他の外添剤を用いて、実施例1〜36及び比較例1〜13のトナーを製造した。
<3−1.実施例1>
実施例1のトナーを以下の方法で製造した。
(トナー母粒子の製造)
トナー母粒子の原料として、以下の結着樹脂、着色剤、電荷制御剤及び離型剤を使用した。
結着樹脂 :ポリエステル樹脂(花王株式会社製「タフトン(登録商標)NE−410」)
離型剤 :ポリプロピレンワックス(三洋化成工業株式会社製「ビスコール(登録商標)660P」)
着色剤 :カーボンブラック(キャボット社製「REGAL(登録商標)330R」)
電荷制御剤:BONTRON(登録商標)P−51(オリエント化学工業株式会社製)
100質量部の結着樹脂、5質量部の離型剤、5質量部の着色剤、1質量部の電荷制御剤を、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて攪拌し、混合物を得た。混合物を、2軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM−26SS」)を用いて溶融しながら混練した。得られた溶融混錬物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)16/8型」)を用いて粗粉砕した。得られた粗粉砕物を、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル RS型」)で粉砕した。得られた粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。これにより、トナー母粒子を得た。得られたトナー母粒子の体積中位径D50は、7.0μmであった。
(外添)
100質量部のトナー母粒子、1.5質量部の酸化チタン(導電性酸化チタン微粒子、チタン工業株式会社製「EC−100」)、1.5質量部のケイ素含有無機粒子S1(レオシロール(登録商標)HG−09、株式会社トクヤマ製)及び1.0質量部の樹脂粒子DをFMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、回転数3500rpmで5分間混合した。これにより、実施例1のトナーを得た。
<3−2.実施例2〜36及び比較例1〜13のトナーの製造>
以下の点を変更した以外は、実施例1のトナーの製造方法と同様にして、実施例2〜36及び比較例1〜13のトナーを製造した。ケイ素含有無機粒子の種類について、実施例1のトナーの製造におけるケイ素含有無機粒子S1から、表3〜表5に示す種類のケイ素含有無機粒子に変更した。ケイ素含有無機粒子の添加量について、実施例1のトナーの製造における1.5質量部から、表3〜表5に示す添加量に変更した。樹脂粒子の種類について、実施例1のトナーの製造における樹脂粒子Dから、表3〜表5に示す種類の樹脂粒子に変更した。樹脂粒子の添加量について、実施例1のトナーの製造における1.0質量部から、表3〜表5に示す添加量に変更した。
<4.二成分現像剤の製造>
得られた実施例1〜36及び比較例1〜13のトナーの各々と、キャリアとを用いて、二成分現像剤を製造した。
まず、以下のようにして、キャリアを調製した。キャリアコアとして、平均粒子径35μmのMn−Mgフェライトコアを使用した。シリコーン樹脂30質量部を、トルエン200質量部に溶解させた。得られた溶液を、流動層コーティング装置(フロイント産業株式会社製「スパイラフロー(登録商標)SFC−5」)を用いて、80℃の熱風を送り込みながら、キャリアコア1000質量部に噴霧した。その結果、キャリアコアが、未硬化の有機層(流動層)で被覆された。未硬化の有機層(流動層)で被覆されたキャリアコアを、乾燥機を用いて、200℃で60分間加熱した。これにより、流動層を硬化させた。その結果、キャリアコアと、キャリアコアを覆う樹脂層(コート層)とを有するキャリアが得られた。
次に、トナー10質量部と、得られたキャリア90質量部とを、ボールミルを用いて均一に混合した。これにより、二成分現像剤が得られた。
<5.樹脂粒子の凝集度の測定>
樹脂粒子A〜Kの各々の凝集度を、以下の方法で測定した。まず、実施例1〜36及び比較例1〜13のトナーの各々について、以下の方法で、トナーから樹脂粒子を分離した。詳しくは、トナー10gを、界面活性剤水溶液500mLに投入した。界面活性剤水溶液は、花王株式会社製「マイペット」(濃度7%のアルキルエーテル硫酸エステルナトリウムの水溶液)を水で10倍に希釈して調製した。得られたトナーと界面活性剤水溶液との混合物を超音波分散機(超音波工業株式会社製「ウルトラソニックミニウェルダーP128」)を用いて5分間分散させて、トナー母粒子と樹脂粒子との分散液を得た。得られた分散液を濾紙(シグマアルドリッチ社製「Whatman(登録商標)グレード3」)を用いて濾過し、濾液を回収した。回収した濾液にトナー母粒子の微粉が混入している可能性を考慮して、濾液を濾紙(シグマアルドリッチ社製「Whatman(登録商標)グレード3」)を用いて再度濾過した。これにより、濾液を白濁液として回収した。回収した濾液を、遠心分離器を用いて、回転速度3000rpmで1分間遠心分離した。これにより、樹脂粒子と比較して比重の重いケイ素含有無機粒子及び酸化チタンを沈降させた。そして、樹脂粒子を含む上澄み液を回収した。上澄み液を加圧濾過し、樹脂粒子のウェットケーキを得た。得られた樹脂粒子のウェットケーキを真空乾燥することにより、乾燥した樹脂粒子を得た。このトナーからの樹脂粒子の分離操作を、乾燥した樹脂粒子の回収量が10mgになるまで繰り返した。
次に、160℃における樹脂粒子A〜Kの凝集度Y160を、温度23℃及び湿度50%RHの環境下で、治具(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製)を用いて、以下の方法で測定した。治具として、円柱状の穴(直径10mm及び深さ10mm、材質SUS304)が形成された台と、圧子(直径10mm、材質SUS304)と、加熱器とを備える治具を使用した。なお、SUS304は、オーステナイトステンレス鋼(鉄(Fe)−クロム(Cr)−ニッケル(Ni)合金、ニッケル含有率8%、クロム含有率18%)である。
治具の円柱状の穴に、10mgの測定試料(樹脂粒子A〜Gの何れか)を投入した。投入した10mgの測定試料を160℃に加熱しながら、圧子を用いて0.1kgf/mm2(100N)の圧力を5分間測定試料に付与した。圧力を付与した後、測定試料の全量を回収した。回収した測定試料の質量(篩を用いて分離する前の測定試料の質量)M160Bを測定した。
その後、回収した測定試料を、目開き75μmの篩(JIS Z8801−1で規定される200メッシュ、線径50μm及び平織の正方形のふるい目を有する篩)の上にセットした。下方から吸引機(アマノ株式会社製「V−3SDR」)を用いて吸引することにより、測定試料を分離した。篩を用いて分離した後に篩上に残留した測定試料の質量M160Aを測定した。
篩を用いて分離する前の測定試料の質量(M160B)と、篩を用いて分離した後に篩上に残留した測定試料の質量(M160A)とから、下記数式(1)に基づき、160℃における測定試料の凝集度Y160を算出した。
Y160(質量%)=100×M160A/M160B・・・(1)
算出された樹脂粒子A〜Kの160℃における凝集度Y160を、表3〜表5に示す。なお、凝集度Y160の値が小さいほど、樹脂粒子が凝集し難いことを示す。
樹脂粒子A〜Fについては、30℃、80℃及び120℃における凝集度Y30、Y80及びY120も算出した。測定試料(樹脂粒子A〜Fの何れか)の凝集度Y30、Y80及びY120の算出は、以下の点を変更した以外は、凝集度Y160の算出方法と同様にして算出した。測定試料の加熱温度を、凝集度Y160の測定における160℃から、30℃、80℃及び120℃に変更した。加熱温度を30℃、80℃及び120℃に変更した測定試料について、各々、加熱及び加圧後に回収した測定試料の質量(篩を用いて分離する前の測定試料の質量)M30B、M80B及びM120Bを測定した。また、加熱温度を30℃、80℃及び120℃に変更した測定試料について、各々、加熱及び加圧後に回収した測定試料を篩を用いて分離し、分離後に篩上に残留した測定試料の質量M30A、M80A及びM120Aを測定した。そして、下記数式(5)、(2)及び(6)に基づき、30℃、80℃及び120℃における測定試料の凝集度Y30、Y80及びY120を算出した。算出された樹脂粒子A〜Fの30℃、80℃、120℃及び160℃における凝集度Y30、Y80、Y120及びY160を、表3に示す。
Y30(質量%)=100×M30A/M30B ・・・(5)
Y80(質量%)=100×M80A/M80B ・・・(2)
Y120(質量%)=100×M120A/M120B・・・(6)
また、樹脂粒子A〜Fの30℃、80℃、120℃及び160℃における凝集度Y30、Y80、Y120及びY160を、図3に示す。図3中、横軸は、樹脂粒子A〜Fを加熱した温度(℃)を示す。図3中、縦軸は、各温度に対応する樹脂粒子A〜Fの凝集度(質量%)を示す。樹脂粒子A〜Fの測定結果は各々、ひし形、四角形、上三角形(X軸と平行な一辺の上側に対頂点が位置する三角形)、バツ形、下三角形(X軸と平行な一辺の下側に対頂点が位置する三角形)及び丸形のプロットにより示される。
<6.被覆率の測定>
製造した各トナー(測定試料)について、トナー母粒子の表面における樹脂粒子の被覆率Rr及びトナー母粒子の表面におけるケイ素含有無機粒子の被覆率Rsを、実施形態で述べた方法と同様の方法で測定した。
<7.流動性の評価>
調製した各トナーの見掛け密度(AD)を、JIS K5101−12−1に準拠する方法により測定した。測定された見掛け密度から、下記評価基準に従って、トナーの流動性を評価した。トナーの見掛け密度及びトナーの流動性の評価結果を、表6及び表7に示す。なお、見掛け密度の値が大きいほど、トナーの流動性が高いことを示す。
(流動性の評価基準)
評価A:見掛け密度が0.340g/mL以上である。
評価B:見掛け密度が0.340g/mL未満である。
<8.画像濃度、耐補給かぶり性及び耐ダッシュマーク性>
形成される画像における画像濃度(ID)、耐補給かぶり性及び耐ダッシュマーク性を、以下の方法で評価した。これらの評価は、温度23℃、湿度50%RHの環境下で行った。
まず、二成分現像剤と評価機とを用いて、用紙に画像を連続して形成した。詳しくは、評価機として、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa 500ci」)を用いた。用紙として、カラー/モノクロ兼用紙(富士ゼロックス株式会社製「C2」)を使用した。二成分現像剤をブラック用の現像器に投入した。また、補充用のトナーをブラック用のトナーコンテナに投入した。
続いて、二成分現像剤と評価機とを用いて、10万枚の用紙に画像Iを連続して形成した。画像Iは、印字率5%の画像部と、3個のソリッド画像部を含んでいた。1枚目に画像Iが形成された用紙の3個のソリッド画像部の画像濃度を各々、反射濃度計(X−rite社製「RD914」)を用いて測定した。測定された3個の画像濃度の和を、3で除することにより、初期画像濃度の平均値を求めた。得られた平均値を、初期画像濃度の評価値とした。次に、10万枚目に画像Iが形成された用紙の3個のソリッド画像部の画像濃度を各々、反射濃度計(X−rite社製「RD914」)を用いて測定した。測定された3個の画像濃度の和を、3で除することにより、10万枚印字後の画像濃度の平均値を求めた。得られた平均値を、10万枚印字後の画像濃度の評価値とした。得られた初期画像濃度の評価値と10万枚印字後の画像濃度の評価値とを、各々、下記初期画像濃度の評価基準と10万枚印字後の画像濃度の評価基準とに基づいて評価した。測定された初期画像濃度とその評価結果及び測定された10万枚印字後の画像濃度とその評価結果を、表6及び表7に示す。
(初期画像濃度の評価基準)
評価A:画像濃度が1.30以上である。
評価B:画像濃度が1.30未満である。
(10万枚印字後の画像濃度の評価基準)
評価A:画像濃度が1.10以上である。
評価B:画像濃度が1.10未満である。
10万枚の用紙に画像Iを連続して印刷した後、新しい補充用のトナーをブラック用のトナーコンテナに補給した。続けて、評価機を用いて、1000枚の用紙に画像IIを連続して形成した。画像IIは、印字率20%の画像部と、白紙部と、3個のソリッド画像部とを含んでいた。画像IIが形成された1000枚の用紙の白紙部の画像濃度を、反射濃度計(X−rite社製「RD914」)を用いて測定した。得られた白紙部の画像濃度の各々からベースペーパーの画像濃度を引いた値を、かぶり濃度とした。得られた1000個のかぶり濃度のうちの最大値を補給かぶり濃度とした。測定された補給かぶり濃度を、下記評価基準に基づいて評価した。測定された補給かぶり濃度とその評価結果を表3、表6及び表7に示す。
(耐補給かぶり性の評価基準)
評価A:補給かぶり濃度が0.010以下である。
評価B:補給かぶり濃度が0.010超0.035以下である。
評価C:補給かぶり濃度が0.035超である。
なお、耐補給かぶり性の評価がCであるトナーを、不合格とした。
続いて、1000枚目に形成された画像IIを肉眼で観察し、ダッシュマークの発生の有無を確認した。1000枚目に形成された画像IIにおいて、白紙部に黒点が発生した場合又はソリッド画像部に白点が発生した場合に、ダッシュマークが発生したと判断した。ダッシュマークの発生の有無から、下記基準に従って、トナーの耐ダッシュマーク性を評価した。耐ダッシュマーク性の評価結果を、表3、表6及び表7に示す。
(耐ダッシュマーク性の評価基準)
評価A:ダッシュマークが発生していない。
評価B:ダッシュマークが発生している。
なお、耐ダッシュマーク性の評価がBであるトナーを、不合格とした。
表3中、Y30、Y80、Y120及びY160は、各々30℃、80℃、120℃及び160℃における樹脂粒子の凝集度を示す。表3中、FDは、補給かぶり濃度を示す。表4〜表7中、Y160、FD、AD、ID(初期)、ID(10万枚印字後)は、各々、160℃における樹脂粒子の凝集度、トナーを用いて形成した画像における補給かぶり濃度、トナーの見掛け密度、初期画像濃度及び10万枚印字後の画像濃度を示す。
実施例1〜36のトナーでは、ケイ素含有無機粒子の数平均一次粒子径が10nm以上であった。樹脂粒子の凝集度Y160が30質量%以下であった。そのため、表3、表6及び表7から明らかなように、実施例1〜36のトナーの耐ダッシュマーク性の評価はAであった。更にこれらのトナーの耐補給かぶり性の評価はA又はBであった。従って、これらのトナーは、形成される画像におけるダッシュマークの発生及び補給かぶりの発生を抑制することが示された。
実施例1〜36のトナーのうち、実施例1〜22のトナーでは、ケイ素含有無機粒子の数平均一次粒子径が10nm以上40nm以下であった。トナー母粒子の表面におけるケイ素含有無機粒子の被覆率は、0%より大きく40%以下であった。樹脂粒子の数平均一次粒子径は、50nm以上100nm以下であった。トナー母粒子の表面における樹脂粒子の被覆率は、40%以上100%以下であった。そのため、表3、表6及び表7から明らかなように、実施例1〜22のトナーでは、耐ダッシュマーク性の評価及び耐補給かぶり性の評価が何れもAであった。従って、実施例1〜22のトナーは、形成される画像におけるダッシュマークの発生を抑制し、更に補給かぶりの発生を一層抑制することが示された。更に実施例10〜22のトナーでは、トナーの流動性の評価、初期画像濃度の評価及び10万枚印字後の画像濃度の評価が何れもAであった。従って、実施例10〜22のトナーは、耐ダッシュマーク性と耐補給かぶり性とに加えて、トナーの流動性、初期画像濃度及び連続印刷後の画像濃度にも優れることが示された。
図3から明らかなように、30℃及び80℃における樹脂粒子の凝集度Y30及びY80は、樹脂粒子A〜Fの間で差異はなかった。しかし、比較例1〜6のトナーに含有される樹脂粒子A、C及びFでは、80℃を超えて加熱された場合に、樹脂粒子の凝集度が急激に増大し、樹脂粒子の凝集が進行することが確認された。一方、実施例1〜7に含有される樹脂粒子B、D及びEでは、120℃における樹脂粒子の凝集度Y120が0質量%であり、160℃における樹脂粒子の凝集度Y160が30質量%以下であった。更に、樹脂粒子B、D及びEでは、80℃及び160℃における樹脂粒子の凝集度Y80及びY160が「Y160>Y80」及び「Y160−Y80≦30」の関係を満たしていた。これは、以下の理由によると考えられる。樹脂粒子Bの製造においては、純度が80%以上であるジビニルベンゼンDVB−Bを、ブチルメタクリル酸100質量部に対して、80質量部以上反応させていた。樹脂粒子D及びEの製造においては、純度が98%以上であるジビニルベンゼンDVB−Cを、ブチルメタクリル酸100質量部に対して、40質量部以上反応させていた。そのため、ジビニルベンゼン(ビニル基を2個以上有する単量体)の純度及び添加量が、形成される樹脂粒子の架橋度に影響を与え、樹脂粒子の耐凝集性が向上したと考えられる。
比較例1のトナーは、トナー母粒子の表面に樹脂粒子が備えられていなかった。そのため、表3から明らかなように、比較例1のトナーは、耐補給かぶり性に劣った。
比較例2〜12のトナーでは、トナー母粒子の表面に備えられる樹脂粒子の160℃における凝集度Y160が30質量%を超えていた。そのため、表3、表6及び表7で明らかなように、比較例2〜12のトナーでは、耐ダッシュマーク性に劣った。これは、画像形成時にトナー母粒子から脱離した樹脂粒子が、感光体とクリーニング部との当接部において熱圧縮されることにより凝集し、形成される画像にダッシュマークが発生したためと考えられる。
比較例13のトナーでは、ケイ素含有無機粒子の数平均一次粒子径が10nm未満であった。そのため、表7から明らかなように、比較例13のトナーでは、耐補給かぶり性に劣った。