JP6610574B2 - 静電潜像現像用トナー及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本実施形態に係るトナーは、正帯電性を有し、複数のトナー粒子を含む。トナー粒子は、各々、トナー母粒子と、外添剤とを備える。トナー母粒子は、各々、トナーコアと、シェル層とを有する。トナーコアは、結着樹脂を含有する。シェル層は、トナーコアの表面を覆う。外添剤は、樹脂を含有する第1外添剤粒子を複数含む。第1外添剤粒子は、各々、シェル層の表面に存在する。トナー粒子では、トナーコアと、第1外添剤粒子の各々とは、シェル層内の共有結合により、互いに結合されている。
詳しくは、所定量のトナー粒子(試料)を溶剤に溶解させる。得られた溶液をNMR(核磁気共鳴)測定用試験管に入れ、NMR装置を用いて1H−NMRスペクトルを測定する。ここで、1H−NMRスペクトルでは、化学シフトδが6.5付近に、第2級アミドに由来する三重線(トリプレット)のシグナルが出現することが、分かっている。そのため、得られた1H−NMRスペクトルにおいて、化学シフトδが6.5付近に三重線のシグナルが確認されれば、トナー粒子において特定の共有結合が存在すると推定される。よって、トナーコアと第1外添剤粒子の各々とが特定の共有結合により互いに結合されている、と推定される。1H−NMRスペクトルの測定条件の一例としては、以下に示す条件が挙げられる。
<1H−NMRスペクトルの測定条件の一例>
NMR装置:フーリエ変換核磁気共鳴装置(FT−NMR)(日本電子株式会社製「JNM−AL400」)
NMR測定用試験管:5mm試験管
溶剤:重水素化クロロホルム(1mL)
試料温度:20℃
試料質量:20mg
積算回数:128回
化学シフトの内部基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
以下、本実施形態に係るトナーの好ましい構成を説明する。
本実施形態に係るトナーに対して、高周波出力が100Wであり、且つ発振周波数が50kHzである超音波を、10分間、照射した場合における第1外添剤粒子の脱離率(以下、単に「第1外添剤粒子の脱離率」と記載する)が、0.1%以上5%未満であることが好ましい。第1外添剤粒子の脱離率は、後述の実施例に記載の方法又はそれに準拠した方法で、測定されることが好ましい。
上述したように、トナーコアは、結着樹脂を含有する。好ましくは、結着樹脂の酸価が1mgKOH/g以上10mgKOH/g以下である。結着樹脂の酸価が1mgKOH/g以上であれば、第1カルボキシル基とオキサゾリン基との反応が進行し易いため、第1アミド結合が形成され易い。結着樹脂の酸価が10mgKOH/g以下であれば、画像形成が行われる環境に依存することなく帯電安定性に優れるトナーを提供できる。例えば、高湿環境下で画像形成を行った場合であっても、トナーの帯電量の低下を防止できる。より好ましくは、結着樹脂の酸価が3mgKOH/g以上7mgKOH/g以下である。結着樹脂の酸価は、後述の実施例に記載の方法又はそれに準拠した方法で、測定されることが好ましい。
好ましくは、シェル層は、特定のビニル樹脂とは異なる樹脂(以下、「他の樹脂A」と記載する)をさらに含有する。他の樹脂Aは、正帯電性樹脂と疎水性樹脂とを含有することが好ましい。ここで、「正帯電性樹脂」とは、結着樹脂よりも強い正帯電性を有する樹脂を意味する。結着樹脂が2種以上存在する場合、何れの結着樹脂よりも、正帯電性樹脂の方が、正帯電性に優れる。また、「疎水性樹脂」とは、正帯電性樹脂よりも強い疎水性を有する樹脂を意味する。正帯電性樹脂が2種以上存在する場合、何れの正帯電性樹脂よりも、疎水性樹脂の方が、疎水性に優れる。シェル層が他の樹脂Aをさらに含有すれば、帯電特性に優れる正帯電性トナーを提供できる。シェル層が他の樹脂Aをさらに含有する場合には、シェル層は、以下に示す構成を有することが好ましい。
まず、透過電子顕微鏡(TEM、例えば株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H−7100FA」)を用いて、トナー粒子の断面TEM写真を撮影する。次に、得られたトナー粒子の断面TEM写真を、画像解析ソフトウェア(例えば三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて、解析する。詳しくは、トナー粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引く。その2本の直線の各々において、トナーコアと介在部との界面(トナーコアの表面に相当)から介在部の表面までの長さを測定する。このようにして測定された4箇所の長さの平均値を、1個のトナー粒子が備える介在部の厚さとする。このような介在部の厚さの測定を複数のトナー粒子に対して行い、複数のトナー粒子(測定対象)が備える介在部の厚さの平均値を求める。このようにして求められた介在部の厚さの平均値を「介在部の厚さ」とする。
(第1外添剤粒子)
好ましくは、第1外添剤粒子の個数平均1次粒子径が10nm以上50nm以下である。第1外添剤粒子の個数平均1次粒子径が10nm以上であれば、第1外添剤粒子を容易に製造できる。第1外添剤粒子の個数平均1次粒子径が50nm以下であれば、シェル層の表面領域において、第1外添剤粒子とは異なる外添剤粒子(例えば後述の第2外添剤粒子)が付着するスペースを確保し易い。
外添剤は、複数の第2外添剤粒子をさらに含むことが好ましい。第2外添剤粒子は、樹脂を含有しないことが好ましく、シリカ粒子又は金属酸化物で構成された粒子であることが好ましい。金属酸化物は、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウムであることが好ましい。外添剤は、1種類の第2外添剤粒子を含んでいても良いし、2種類以上の第2外添剤粒子を含んでいても良い。トナー粒子における第2外添剤粒子の含有量は、100質量部のトナーコアに対し、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。また、第2外添剤粒子の粒子径は、0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
図1は、第1の具体例に係るトナーに含まれるトナー粒子の構成を示す断面図である。図2は、図1に示す領域IIを模式的に示す図である。なお、図2では、トナー粒子10の径方向を「Dr」で表し、トナー粒子10の径方向内側を「X1」で表し、トナー粒子10の径方向外側を「X2」で表す。
本実施形態に係るトナーの製造方法は、好ましくは複合粒子の製造工程を含み、より好ましくは外添工程をさらに含む。ここで、複合粒子は、トナー母粒子と第1外添剤粒子とを備えるが、第1外添剤粒子とは異なる外添剤粒子(例えば、第2外添剤粒子)を備えない。また、複合粒子では、トナーコアと、第1外添剤粒子の各々とは、互いに、特定の共有結合により、結合されている。なお、トナー粒子が第1外添剤粒子とは異なる外添剤粒子を備えない場合、複合粒子がトナー粒子に相当する。また、同時に製造されたトナー粒子は、互いに略同一の構成を有すると考えられる。
複合粒子の製造工程は、好ましくは、トナーコアの製造工程と、第1外添剤の分散液の調製工程と、シェル層形成用液の調製工程と、シェル層の形成工程とを、含む。
トナーコアの製造工程では、第1カルボキシル基を有するトナーコアを製造する。公知の粉砕法又は公知の凝集法によりトナーコアを製造すれば、トナーコアを容易に製造できる。
第1外添剤粒子の分散液の調製工程では、第2カルボキシル基を有する第1外添剤粒子の分散液を調製する。次に示す方法で、第1外添剤粒子の分散液を調製することが好ましい。詳しくは、分散媒中において、樹脂Bを構成可能なモノマーを、重合させることが好ましい。より好ましくは、重合開始剤の存在下で樹脂Bを構成可能なモノマーを重合させる。1種のモノマーを単重合させても良いし、2種以上のモノマーを共重合させても良い。このようにして、第1外添剤粒子の分散液が得られる。なお、上記分散媒は、例えば、水(より具体的にはイオン交換水)を含むことが好ましい。
シェル層形成用液の調製工程では、形成用ビニル樹脂の溶液を調製することが好ましい。形成用ビニル樹脂の溶液としては、例えば、株式会社日本触媒製の「エポクロス(登録商標)WS−300」を使用できる。エポクロスWS−300は、2−ビニル−2−オキサゾリンとメタクリル酸メチルとの共重合体(水溶性架橋剤)を含む。共重合体を構成するモノマーの質量比は、(2−ビニル−2−オキサゾリン):(メタクリル酸メチル)=9:1である。ここで、2−ビニル−2−オキサゾリンは、下記式(1−4)においてR4が水素原子である場合のビニル化合物に相当する。
シェル層の形成工程では、トナーコアの表面を覆うシェル層を形成する。より具体的には、所定の温度で、トナーコアと、第1外添剤粒子の分散液と、シェル層形成用液とを混合する。ここで、所定の温度は、第1カルボキシル基及び第2カルボキシル基の各々とオキサゾリン基とが反応してアミド結合が形成される温度以上である。これにより、シェル層が形成され、複合粒子の分散液が得られる。得られた分散液に対して固液分離と洗浄と乾燥とを行えば、複数の複合粒子が得られる。
混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いて、複合粒子と、第1外添剤粒子とは異なる外添剤粒子(例えば第2外添剤粒子)とを、混合する。このようにして、トナー粒子を複数含むトナーが、得られる。
トナーは、複数のトナー粒子を含む。トナー粒子は、各々、トナーコアと、シェル層と、第1外添剤粒子とを備える。以下、トナーコアとシェル層と第1外添剤粒子とを順に説明する。
トナーコアは、結着樹脂を含有する。トナーコアは、着色剤と電荷制御剤と離型剤とのうちの少なくとも1つをさらに含有しても良い。
トナーコアでは、一般的に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。
ポリエステル樹脂は、1種以上のアルコールと1種以上のカルボン酸との共重合体である。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示す2価アルコール又は3価以上のアルコールを使用できる。2価アルコールとしては、例えば、ジオール類又はビスフェノール類を使用できる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示す2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸を使用できる。
結晶性ポリエステル樹脂は、アルコール成分として、炭素数2以上8以下のα,ω−アルカンジオールを含むことが好ましい。α,ω−アルカンジオールは、例えば、2種類のα,ω−アルカンジオールであることが好ましい。より具体的には、α,ω−アルカンジオールは、炭素数4の1,4−ブタンジオールと炭素数6の1,6−ヘキサンジオールとであることが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂は、アルコール成分として、ビスフェノール類を含むことが好ましい。ビスフェノール類は、例えば、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のうちの少なくとも1つであることが好ましい。
スチレン−アクリル酸系樹脂は、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体である。スチレン−アクリル酸系樹脂を合成するために使用されるスチレン系モノマーとしては、以下に示すスチレン系モノマーを好適に使用できる。また、スチレン−アクリル酸系樹脂を合成するために使用されるアクリル酸系モノマーとしては、以下に示すアクリル酸系モノマーを好適に使用できる。
結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(具体的には、水酸基価、酸価、ガラス転移点、又は軟化点)を調整できる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなる。また、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。
着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
シェル層は、特定のビニル樹脂を含有する。好ましくは、シェル層は、特定のビニル樹脂と、他の樹脂Aとを含有する。
特定のビニル樹脂は、構成単位(1−1)と、構成単位(1−2)と、構成単位(1−3)とを含む。特定のビニル樹脂は、ビニル化合物(1−4)とは異なるビニル化合物に由来する構成単位をさらに含んでも良い。ビニル化合物(1−4)とは異なるビニル化合物は、上記(結着樹脂:スチレン−アクリル酸系樹脂)に記載のスチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーのうちの少なくとも1つであることが好ましい。
他の樹脂Aは、正帯電性樹脂と疎水性樹脂とを含有することが好ましい。
正帯電性樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、正帯電性の官能基を有するモノマーに由来する構成単位を含むことがより好ましい。より具体的には、正帯電性樹脂は、正帯電性の官能基を有するモノマーとアクリル酸系モノマーとの共重合体であることが好ましい。
疎水性樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。より好ましくは、疎水性樹脂は、スチレン樹脂とアクリル酸系樹脂とスチレン−アクリル酸系樹脂とのうちの少なくとも1つである。より具体的には、疎水性樹脂を構成するモノマーは、スチレン系モノマーとアクリル酸系モノマーとのうちの少なくとも1つであることが好ましい。疎水性樹脂を構成するモノマーとして使用可能なスチレン系モノマーは、上記(結着樹脂:スチレン−アクリル酸系樹脂)に記載のスチレン系モノマーのうち、スチレン、アルキルスチレン、又はハロゲン化スチレンであることが好ましい。また、疎水性樹脂を構成するモノマーとして使用可能なアクリル酸系モノマーは、上記(結着樹脂:スチレン−アクリル酸系樹脂)に記載のアクリル酸系モノマーのうち、(メタ)アクリロニトリル、又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。より具体的には、疎水性樹脂は、例えば、スチレンと(メタ)アクリル酸n−ブチルとの共重合体、スチレンと(メタ)アクリル酸n−ブチルと(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとの共重合体、又はスチレンと(メタ)アクリル酸n−ブチルとアクリロニトリルとの共重合体であることが好ましい。
トナー粒子における第1外添剤粒子の含有量は、100質量部のトナーコアに対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。これにより、耐熱性と耐熱ストレス性と帯電安定性とにさらに優れるトナーを提供できる。
(非晶性ポリエステル樹脂PES−1の合成方法)
温度計(より具体的には熱電対)と脱水管と窒素導入管と攪拌装置とを備えた4つ口フラスコ(容量:5L)に、1700gのビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物と、650gのビスフェノールAエチレンオキサイド付加物と、500gのn−ドデセニル無水コハク酸と、400gのテレフタル酸と、4gの酸化ジブチル錫とを入れた。フラスコ内の温度を220℃にまで上昇させた。フラスコ内の温度を220℃に保った状態で、9時間にわたってフラスコの内容物を反応させた。フラスコの内圧を8kPaに下げた。高温減圧(温度220℃且つ圧力8kPa)下で、フラスコの内容物をさらに反応させた。このようにして、非晶性ポリエステル樹脂PES−1を得た。非晶性ポリエステル樹脂PES−1では、軟化点(Tm)が124.8℃であり、ガラス転移点(Tg)が57.2℃であり、酸価が6.0mgKOH/gであり、水酸基価が41mgKOH/gであり、数平均分子量(Mn)が3737であり、質量平均分子量(Mw)が109475であった。
温度計(より具体的には熱電対)と脱水管と窒素導入管と攪拌装置とを備えた4つ口フラスコ(容量:5L)に、990.0g(84モル部)の1,4−ブタンジオールと、242.0g(11モル部)の1,6−ヘキサンジオールと、1480.0g(100モル部)のフマル酸と、2.5gの1,4−ベンゼンジオールとを入れた。フラスコ内の温度を170℃にまで上昇させた。フラスコ内の温度を170℃に保った状態で、5時間にわたってフラスコの内容物を反応させた。フラスコ内の温度を210℃にまで上昇させた。フラスコ内の温度を210℃に保った状態で、1.5時間にわたってフラスコの内容物を反応させた。フラスコの内圧を8kPaに下げた。高温減圧(温度210℃且つ圧力8kPa)下で、1時間にわたってフラスコの内容物をさらに反応させた。
温度計(より具体的には熱電対)と脱水管と窒素導入管と攪拌装置とを備えた4つ口フラスコ(容量:5L)に、2Lのイオン交換水と、5.0gの第三リン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製)とを入れた。フラスコの内容物を回転速度50rpmで攪拌しながら、700.0gのスチレンと、270.0gのアクリル酸n−ブチルと、4.5gのジビニルベンゼンと、30.0gのアクリル酸と、油相とを入れた。油相では、15.0gの2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が25.0gのジエチレングリコールに溶解されていた。フラスコ内の温度を80℃にまで上昇させた。フラスコ内の温度を80℃に保った状態で、8時間にわたってフラスコの内容物を重合反応させた。このようにして、ビーズ状のスチレン−アクリル酸系樹脂SA−1を得た。スチレン−アクリル酸系樹脂SA−1では、Tmが102.3℃であり、Tgが40.3℃であり、酸価が7.2mgKOH/gであり、Mnが2680であり、Mwが131026であった。
温度計(より具体的には熱電対)と脱水管と窒素導入管と攪拌装置とを備えた4つ口フラスコ(容量:5L)に、2Lのイオン交換水と、5.0gの第三リン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製)とを入れた。フラスコの内容物を回転速度50rpmで攪拌しながら、730.0gのスチレンと、270.0gのアクリル酸n−ブチルと、4.5gのジビニルベンゼンと、油相とを入れた。油相では、15.0gの2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が25.0gのジエチレングリコールに溶解されていた。フラスコ内の温度を80℃にまで上昇させた。フラスコ内の温度を80℃に保った状態で、8時間にわたってフラスコの内容物を重合反応させた。このようにして、ビーズ状のスチレン−アクリル酸系樹脂SA−2を得た。スチレン−アクリル酸系樹脂SA−2では、Tmが110.3℃であり、Tgが41.5℃であり、酸価が0.0mgKOH/gであり、Mnが2740であり、Mwが120263であった。
「JIS K0070−1992」に記載の方法に準拠して、結着樹脂の酸価を測定した。
詳しくは、20gの結着樹脂(測定試料)を三角フラスコに加えた。三角フラスコに、100mLの溶剤と、数滴のフェノールフタレイン溶液(指示薬)とを加えた。非晶性ポリエステル樹脂PES−1及び結晶性ポリエステル樹脂PES−2の各々の酸価を測定する場合には、溶剤として、アセトンとトルエンとの混合液[アセトン:トルエン=1:1(体積比)]を使用した。スチレン−アクリル酸系樹脂SA−1及びSA−2の各々の酸価を測定する場合には、溶剤として、ジエチルエーテルとエタノールとの混合液[ジエチルエーテル:エタノール=2:1(体積比)]を使用した。
酸価=(B×f1×5.611)/W1・・・(数式1)
(外添剤サスペンションR−1の作製方法)
アンカー型攪拌翼を備えた丸底フラスコに、60.0質量部のスチレンと、25.0質量部のメタクリル酸メチルと、5.0質量部のメタクリル酸と、10.0質量部のジビニルベンゼンと、4.5質量部の過硫酸カリウム(水溶性重合開始剤)と、100.0質量部のイオン交換水とを入れた。丸底フラスコの内容物を100rpmで攪拌しながら、丸底フラスコ内の温度を70℃にまで上昇させた。丸底フラスコ内の温度を70℃に保った状態で、8時間にわたって丸底フラスコの内容物を乳化重合させた。このようにして、有機微粒子の分散液を得た。得られた分散液を濾過し、濾過により得られた固形物を洗浄した。洗浄された固形物を、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム水溶液(濃度:10質量%)に分散させた。このようにして、第1外添剤粒子の分散液(固形分濃度:8質量%)を得た。
アンカー型攪拌翼を備えた丸底フラスコに、60.0質量部のスチレンと、28.0質量部のメタクリル酸メチルと、2.0質量部のメタクリル酸と、10.0質量部のジビニルベンゼンと、4.5質量部の過硫酸カリウム(水溶性重合開始剤)と、100.0質量部のイオン交換水とを入れた。その後は、外添剤サスペンションR−1の作製方法に従い、外添剤サスペンションR−2を得た。
アンカー型攪拌翼を備えた丸底フラスコに、60.0質量部のスチレンと、30.0質量部のメタクリル酸メチルと、10.0質量部のジビニルベンゼンと、4.5質量部の過硫酸カリウム(水溶性重合開始剤)と、100.0質量部のイオン交換水とを入れた。その後は、外添剤サスペンションR−1の作製方法に従い、外添剤サスペンションR−3を得た。
上記[結着樹脂の酸価の測定方法]に記載の方法に従い、外添剤サスペンションR−1〜R−3の各々に含まれる第1外添剤粒子の酸価を測定した。その結果は、表4に示すとおりである。また、電界放出形走査型電子顕微鏡(FE−SEM)(日本電子株式会社製「JSM−7600F」)を用いて、外添剤サスペンションR−1〜R−3の各々に含まれる第1外添剤粒子の個数平均1次粒子径を測定した。その結果は、表4に示すとおりである。また、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて、外添剤サスペンションR−1〜R−3の各々に含まれる第1外添剤粒子のガラス転移点を測定した。その結果は、表4に示すとおりである。
温度計(より具体的には熱電対)と冷却管と窒素導入管と攪拌羽根とを備えた3口フラスコ(容量:1L)に、90gのイソブタノールと、100gのメタクリル酸メチルと、35gのアクリル酸n−ブチルと、30gの2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(Alfa Aesar社製)と、6gの水溶性アゾ重合開始剤(和光純薬株式会社製「VA−086」)とを入れた。フラスコ内の温度を80℃にまで上昇させた。フラスコ内の温度を80℃に保った状態で、窒素雰囲気下で、3時間にわたって、フラスコの内容物を反応させた。
温度計と攪拌羽根とを備えた3つ口フラスコ(容量:1L)に、875mLのイオン交換水と75mLのアニオン界面活性剤(花王株式会社製「ラテムル(登録商標)WX」、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、固形分濃度:26質量%)とを入れた。フラスコをウォーターバスにセットした後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に保った。フラスコ内の温度を80℃に保った状態で、5時間にわたって、第2液体と第3液体とをフラスコに滴下した。第2液体は、18mLのスチレンと2mLのアクリル酸n−ブチルとで構成されていた。第3液体では、0.5gの過硫酸カリウムが30mLのイオン交換水に溶解されていた。フラスコ内の温度を80℃に保った状態で、2時間にわたって、フラスコの内容物を反応(重合反応)させた。このようにして、疎水性サスペンションを得た。
<トナーT−1の製造方法>
まず、複合粒子の製造工程を行った。次に、外添工程を行った。
(1−1.トナーコアの製造工程)
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、80.0質量部の非晶性ポリエステル樹脂PES−1と、20.0質量部の結晶性ポリエステル樹脂PES−2と、5.0質量部のエステルワックス(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−3」)と、6.0質量部のカーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」)とを混合した。
次に、シェル層を形成した。詳しくは、温度計と攪拌羽根とを備えた3つ口フラスコ(容量:1L)に300mLのイオン交換水を入れた後、フラスコをウォーターバスにセットした。ウォーターバスを用いて、フラスコ内の温度を30℃に保った。フラスコに、3.0gのオキサゾリン基含有高分子水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロスWS−300」、固形分濃度:10質量%、Tg:90℃)と、75.0gの外添剤サスペンションR−1と、220.0gの疎水性サスペンションと、12.0gの正帯電性サスペンションとを加えた。さらに、フラスコに、300.0gのトナーコアTC−1と、6mLのアンモニア水(濃度:1質量%)とを加えた。ここで、100.0質量部のトナーコアTC−1に対するオキサゾリン基含有高分子水溶液の固形分(より具体的には形成用ビニル樹脂)の含有量が0.1質量部となるように、オキサゾリン基含有高分子水溶液の配合量を調整した。また、100.0質量部のトナーコアTC−1に対する外添剤サスペンションR−1の固形分(より具体的には第1外添剤粒子)の含有量が2.0質量部となるように、外添剤サスペンションR−1の配合量を調整した。
得られた分散液を、ブフナー漏斗を用いて、吸引濾過した。得られたウェットケーキ状の複合粒子をイオン交換水に再度分散させた。得られた分散液を、ブフナー漏斗を用いて、吸引濾過した。このような固液分離処理を5回にわたって繰返し行った。
得られた複合粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。これにより、複合粒子のスラリーが得られた。連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃且つブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中の複合粒子を乾燥させた。密閉型の流動式混合機(日本コークス工業株式会社製「FM−20C/I」)を用いて、回転速度3000rpm、ジャケット温度20℃、且つ処理時間10分間の条件で、複合粒子に機械的処理(より詳しくは、剪断力を与える処理)を施した。このようにして、複合粒子を得た。
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)に、100.0質量部の複合粒子と、1.2質量部の疎水性シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)RA−200H」)と、0.8質量部の導電性酸化チタン粒子(チタン工業株式会社製「EC−100」)とを入れた。回転速度3000rpm、ジャケット温度20℃、且つ処理時間2分間の条件で、複合粒子と疎水性シリカ粒子と導電性酸化チタン粒子とを混合した。このようにして、多数のトナー粒子を含むトナーT−1を得た。
上記(1−2.シェル層の形成工程)における外添剤サスペンションR−1の配合量を変更したことを除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−2及びT−3を製造した。
上記(1−2.シェル層の形成工程)におけるオキサゾリン基含有高分子水溶液の配合量を変更したことを除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−4及びT−5を製造した。
上記(1−2.シェル層の形成工程)では、外添剤サスペンションR−1の代わりに、外添剤サスペンションR−2を配合した。このことを除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−6を製造した。
結着樹脂として100.0質量部のスチレン−アクリル酸系樹脂SA−1を用いて、トナーコアTC−2を製造した。トナーコアTC−2を用いて、トナーT−7を製造した。これらを除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−7を製造した。
上記(1−2.シェル層の形成工程)においてオキサゾリン基含有高分子水溶液を配合しなかったことを除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−8を製造した。
結着樹脂として100.0質量部のスチレン−アクリル酸系樹脂SA−2を用いて、トナーコアTC−3を製造した。トナーコアTC−3を用いて、トナーT−9を製造した。これらを除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−9を製造した。
上記(1−2.シェル層の形成工程)では、外添剤サスペンションR−1の代わりに、外添剤サスペンションR−3を配合した。このことを除いてはトナーT−1の製造方法に従い、トナーT−10を製造した。
以下に示す方法で、特定の共有結合の存在を確認した。また、トナーの耐熱性と、トナーの低温定着性と、現像スリーブの表面に対するトナーの付着の有無と、第1外添剤粒子の脱離率とを、評価した。結果を表5に示す。
まず、20mgの複合粒子(試料)を1mLの重水素化クロロホルムに溶解させた。得られた溶液を試験管(直径:5mm)に入れた。試験管をフーリエ変換核磁気共鳴装置(FT−NMR)(日本電子株式会社製「JNM−AL400」)に入れた。試料温度20℃且つ積算回数128回の条件で、1H−NMRスペクトルを測定した。化学シフトの内部基準物質としては、テトラメチルシランを使用した。得られた1H−NMRスペクトルにおいて、化学シフトδが6.5付近に三重線のシグナルが確認されれば、特定の共有結合が存在すると推定した。
3gのトナー(トナーT−1〜T−10)をポリエチレン製容器(容量:20mL)に入れて密閉した。密閉された容器を、58℃に設定された恒温槽内に3時間静置した。その後、容器を恒温槽から取り出して室温(約25℃)まで冷却して、評価用トナーを得た。
トナー凝集度=100×篩別後のトナーの質量/篩別前のトナーの質量
(評価対象の調製方法)
トナー(トナーT−1〜T−10の各々)の含有量が10質量%となるようにトナーとキャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「TASKalfa5550ci」用キャリア)とをボールミルに入れ、これらを30分間にわたって混合した。このようにして、評価対象を得た。
評価機としては、定着温度を調節できるようにプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」)を改造したものを使用した。評価対象(未使用)を評価機の現像装置に入れ、補給用トナー(未使用)を評価機のトナーコンテナに入れた。本実施例では、補給用トナーとしては、評価対象に含まれるトナーと同一のトナーを用いた。このようにして、評価機を準備した。
以下に示す方法で、最低定着温度を測定した。ここで、最低定着温度とは、低温オフセットが発生しなかったと判断された場合の定着温度のうちの最低温度を意味する。
評価対象としては、<トナーの低温定着性の評価方法>で準備した評価対象を使用した。評価機としては、プリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550ci」)を使用した。評価対象(未使用)を評価機の現像装置に入れ、補給用トナー(未使用)を評価機のトナーコンテナに入れた。本実施例では、補給用トナーとしては、評価対象に含まれるトナーと同一のトナーを用いた。このようにして、評価機を準備した。
2gのトナー(トナーT−1〜T−10)を500mLの界面活性剤の水溶液に加えて、測定用サンプルを調製した。界面活性剤の水溶液は、イオン交換水と、0.2質量%のアルキルエーテル硫酸エステルナトリウムとを、含んでいた。
(第1外添剤粒子の脱離率)=(初期のピーク面積−照射後のピーク面積)×100/(初期のピーク面積)・・・式(A)
11,111 トナーコア
12 シェル層
13 外添剤
14,114 第1外添剤粒子
15 第2外添剤粒子
21 第1アミド結合
22 第2アミド結合
125 延伸部
Claims (7)
- 正帯電性を有する静電潜像現像用トナーであって、
前記静電潜像現像用トナーは、複数のトナー粒子を含み、
前記トナー粒子は、各々、トナー母粒子と、外添剤とを備え、
前記トナー母粒子は、各々、結着樹脂を含有するトナーコアと、前記トナーコアの表面を覆うシェル層とを有し、
前記外添剤は、樹脂を含有する第1外添剤粒子を複数含み、
前記第1外添剤粒子は、各々、前記シェル層の表面に存在し、
前記トナーコアと、前記第1外添剤粒子の各々とは、前記シェル層内の共有結合により、互いに結合されており、
前記共有結合は、第1アミド結合と、第2アミド結合とを有し、
前記シェル層は、ビニル樹脂を含有し、
前記ビニル樹脂は、下記式(1−1)で表される構成単位と、下記式(1−2)で表される構成単位と、下記式(1−3)で表される構成単位とを含み、
下記式(1−1)で表される構成単位に含まれるアミド結合が、前記第1アミド結合であり、
下記式(1−2)で表される構成単位に含まれるアミド結合が、前記第2アミド結合であり、
前記シェル層は、正帯電性樹脂と疎水性樹脂とをさらに含有し、
前記正帯電性樹脂は、前記結着樹脂よりも、強い正帯電性を有し、
前記疎水性樹脂は、前記正帯電性樹脂よりも、強い疎水性を有する、静電潜像現像用トナー。
- 前記静電潜像現像用トナーに対して、高周波出力が100Wであり、且つ発振周波数が50kHzである超音波を、10分間、照射した場合における前記第1外添剤粒子の脱離率が0.1%以上5%未満である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記外添剤は、複数の第2外添剤粒子をさらに含み、
前記第2外添剤粒子は、各々、前記シェル層の表面領域のうち、前記正帯電性樹脂と前記疎水性樹脂とを含有する部分の表面に、設けられ、
前記第2外添剤粒子は、各々、シリカ又は金属酸化物で構成される、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。 - 前記結着樹脂の酸価が、1mgKOH/g以上10mgKOH/g以下であり、
前記第1外添剤粒子が含有する樹脂の酸価が、1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である、請求項1〜3の何れか一項に記載の静電潜像現像用トナー。 - 正帯電性を有する静電潜像現像用トナーの製造方法であって、
トナーコアを製造する工程と、
第1外添剤粒子の分散液を調製する工程と、
シェル層形成用液を調製する工程と、
前記トナーコアの表面を覆うシェル層を形成する工程と、
を含み、
前記トナーコアは、結着樹脂を含有し、
前記トナーコアは、表面に第1カルボキシル基を有し、
前記第1外添剤粒子は、各々、表面に第2カルボキシル基を有し、
前記シェル層形成用液は、ビニル樹脂を含み、
前記ビニル樹脂は、下記式(1−3)で表される構成単位を含み、
前記シェル層を形成する工程は、所定の温度で、前記トナーコアと、前記第1外添剤粒子の分散液と、前記シェル層形成用液とを混合する工程を含み、
前記所定の温度は、前記第1カルボキシル基及び前記第2カルボキシル基の各々と前記構成単位に含まれる一部のオキサゾリン基とが反応してアミド結合が形成される温度以上であり、
前記シェル層形成用液は、正帯電性樹脂を含有する粒子と疎水性樹脂を含有する粒子とをさらに含み、
前記正帯電性樹脂は、前記結着樹脂よりも、強い正帯電性を有し、
前記疎水性樹脂は、前記正帯電性樹脂よりも、強い疎水性を有する、静電潜像現像用トナーの製造方法。
- 前記結着樹脂の酸価が、1mgKOH/g以上10mgKOH/g以下であり、
前記第1外添剤粒子が含有する樹脂の酸価が、1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である、請求項5に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。 - 前記所定の温度は、50℃以上100℃以下である、請求項5又は6に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
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