JP6371242B2 - 原子炉内機器材料の防食方法及び防食システム - Google Patents
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Description
SCCは、炉内環境において、電気化学腐食電位(ECP:Electrochemical Corrosion Potential)を−0.1Vvs.SHE以下に低下することで、発生、進展ともに抑制できることが知られている。ECPは、基準となる電位を発生する電極を基準として、溶液中に浸漬された金属が発生する電位であり、腐食環境の強度を表すパラメータとして用いられる。基準となる電極電位として、標準水素電極(SHE)電位が広く用いられている。SHEに対する電位は、各温度における式(1)の反応における電子のエネルギーを0Vとおいた場合の相対電位であり、Vvs.SHEの単位で表記される。
H2 = 2H+ + 2e− ・・・(1)
原子炉冷却材(以下、炉水と称す)中に一定以上の濃度の溶存水素が存在すると、炉内機器材料のECPが低下することが知られている。このため、沸騰水型原子力発電プラントでは、SCC抑制策の1つとして、沸騰水型原子力発電プラントの構造部材に接触する炉水の腐食環境を改善するため、水素注入が広く用いられている。原子炉内の炉水には、炉水の放射線分解により生成され、構造部材の腐食の原因となる酸化剤として、酸素および過酸化水素が含まれており、主としてそれらが腐食環境を形成している。水素注入は、給水系配管等を介して炉水に水素を注入し、炉水の放射線分解により生成する酸素および過酸化水素の生成量を減じる技術である。酸素や過酸化水素などの酸化剤の濃度の低下によりECPが低下し、構造部材におけるSCCの発生および進展が緩和される。
また、特許文献2には、炉水に水素を注入し、電気化学ノイズを用いて原子炉内の腐食をモニタリングする技術が示されている。測定される電気化学ノイズから、電極表面の酸化皮膜のボイド移動速度を求め、予め求められたボイド移動速度とSCC発生確率との相関を用いて炉水と接する構造部材のSCC発生確率を求めるものである。
ECP測定に基づいてオンライン貴金属注入の有効性を確認する方法の一つとして、脱塩水を使用して炉水サンプルの酸素濃度を調節する方法が、特許文献3に記載されている。ECP測定部に炉水が到達するまでに、配管内で酸素が消費され、酸素濃度が低下することにより過剰に低いECPが測定され得る。そこで特許文献3では、ECP測定部より上流側で脱塩水を炉水に注入し酸素濃度を上昇させ、本来、ECP測定すべき炉水を模擬する、すなわち、炉水と同等の酸素濃度とするものである。
原子炉構造材の表面に付着した貴金属は、原子炉の定格運転期間中を通じて徐々に炉水中に離脱・再付着を繰り返すが、その付着量は経時的に減少する。このため、オンライン貴金属注入の有効性が得られていることを確認し、必要に応じて貴金属の再付着処理を実施する必要がある。
しかしながら、特許文献1では原子炉停止中に、貴金属注入及び水素注入を行うものであり、オンライン貴金属注入の有効性の確認については、考慮されていない。
特許文献2では、水素注入技術を用いるものの、貴金属注入による水素の酸化反応を触媒的に促進する点について配慮されておらず、また、SCC発生確率を求めるに止まる。
また、特許文献3は、オンライン貴金属注入の有効性を、ECP測定により確認するものである。しかしながら、ECPの急激な変化は、貴金属注入の有効性が喪失した時点以降に生じることが予想される。従って、貴金属の再付着処理によるSCC抑制効果を得ることは困難となる。これは、ECPがアノード分極曲線とカソード分極曲線の交点で表され、かつ、ステンレス鋼に代表される不働態金属のアノード分極曲線が非線形であることに起因する。
また、本発明の防食システムは、原子炉冷却材が流動する給水系配管に、所定量の水素を注入する水素注入装置と、前記給水系配管に、所定量の貴金属を注入する貴金属注入装置と、前記給水系配管より分岐し内部を流動する前記原子炉冷却材に浸漬するよう分岐配管に配され、前記給水系配管を形成する原子炉構成材料と同種材料で形成される相互に絶縁された第一電極及び第二電極と、前記第一電極及び第二電極の間に絶縁部材を介して配される疑似参照電極と、前記電極間の電気化学ノイズを測定し、当該測定結果から前記電極表面に残存する貴金属付着量を推定し、前記推定された貴金属付着量に基づき、少なくとも前記給水系配管へ貴金属を添加すべき時期を検出し、所定量又は前記推定された貴金属付着量に応じて貴金属を前記給水系配管へ注入するよう前記貴金属注入装置を制御する電気化学ノイズ測定装置と、を備えることを特徴とする。
更にまた、本発明の原子炉内機器材料の防食方法は、給水系配管内を流動する原子炉冷却材に、所定量の水素を注入する原子炉内機器材料の防食方法であって、溶存水素を含む原子炉冷却材中に浸漬され、前記給水系配管を形成する原子炉構成材料と同種材料で形成される少なくとも2つ以上の電極により、前記電極間の電気化学ノイズを測定し、前記測定された電気化学ノイズに基づき前記電極表面に残存する貴金属付着量を推定し、前記推定された貴金属付着量に基づき、少なくとも前記給水系配管へ貴金属を添加すべき時期を検出し、所定量又は前記推定された貴金属付着量に応じて、前記給水系配管へ貴金属を注入することを特徴とする。
電気化学ノイズの測定法は、溶液中に浸漬された金属電極が自然に生起する、電位の経時的な揺らぎから、又は電流の経時的な揺らぎから、或はその両方の経時的な揺らぎから求めた電位/電流比から、腐食状態を評価する手法である。評価対象材料(測定対象材料)で製作した同種材料の少なくとも2個以上の電極、或は、評価対象材料で製作した電極と、基準となる一定の電位を常に発生する疑似参照電極とを、電位差計や無抵抗電流計に接続して測定する。
なお、電気化学ノイズの測定法には、(a)電位ノイズのみを測定する方式、(b)電流ノイズのみを測定する方式、(c)電位ノイズと電流ノイズ双方を同時に測る方式、とがある。また、電気化学ノイズ測定用電極も複数種類存在する。上記(a)の場合は、評価対象材料(測定対象材料)で製作した同種材料の2個の電極、或は、評価対象材料で製作した電極と、常に基準となる一定の電位を発生する疑似参照電極とを一組として使用する。上記(b)の場合は、評価対象材料で製作した同種材料の2個の電極が用いられる。上記(c)の場合は、評価対象材料で製作した同種材料の3個の電極、或は、評価対象材料で製作した同種材料の2個の電極と、常に基準となる一定の疑似参照電極1個とを一組として使用する。
加えて、電気化学ノイズの評価法には、(a)ランダムなノイズから全面腐食の進行状態を評価するものと、(b)個々の波形を解析することで局部腐食の発生有無を評価するものとがある。
なお、従来のECPのみを測定する方式では、仮に、水素と酸素が同時に流れてきた場合、水素による影響及び酸素による影響が同時に検出されてしまう。しかし、本発明の実施形態で用いる電気化学ノイズの測定法によれば、貴金属上での水素の酸化反応が触媒的に生じるため、如何なる酸素濃度の状況下においても、酸化反応に供される水素量を検出することができる。よって、電気化学ノイズの測定法を用いることにより、酸素濃度の調整は不要となる。
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。
給水系配管6は、オンライン貴金属注入によって接液面に貴金属が付着されている。なお、給水系配管6の一方端、すなわち、炉水の流動方向に沿って下流側の端部は、図示しない原子炉圧力容器に接続されている。そして、給水系配管6の内部を流動する炉水(原子炉冷却材)は、原子炉圧力容器のダウンカマ内へ流入し、複数の燃料集合体が装荷された炉心(図示せず)の下方から上方へと通流することにより、燃料集合体を冷却する。
分岐配管7は、給水系配管6の所定の位置に設けられ、給水系配管6内を流動する炉水の一部をその内部へ導入する。分岐配管7の接液面も貴金属が付着されている。図1に示すように、水素注入装置4及び貴金属注入装置5は、給水系配管6内を流動する炉水(原子炉冷却材)の流動方向において、分岐配管7より上流側にて、それぞれ、水素供給配管8及び貴金属供給配管9を介して、給水系配管6に接続されている。
フィルタ33a及びフィルタ33bは、例えば、所望の周波数帯域の周波数のみを通過させるバンドパスフィルタにて実現される。また、演算部34及び制御部36は、例えば、各種プログラムを格納するROM、演算過程のデータを一時的に格納するRAM、及び、ROMに格納された各種プログラムを読出し実行するCPU等のプロセッサにて実現される。ここで、ROMに格納される各種プログラム及び/又は、RAMに格納される演算過程のデータを、記憶部35に格納するよう構成しても良い。
図4のA―A断面矢視図に示すように、電気化学ノイズ測定用電極2を構成する第一電極21a〜第三電極21c及び絶縁部材22の分岐配管7側の末端は、分岐配管7内を流動する炉水(原子炉冷却材)に対し流路抵抗とならぬよう配される。また、第一電極21a〜第三電極21cの分岐配管7側の末端とは反対側の端部は、それぞれ、リード線40a〜40cに接続されている。
次に、防食システム1の動作について説明する。図5は、図1に示す防食システムの動作を示すフローチャートである。原子炉の定格運転中において、給水系配管6内には常に炉水(原子炉冷却材)が流動する。給水系配管6内を流動する炉水の一部は、分岐配管7へ導入され、原子炉の定格運転期間中は、常に、電気化学ノイズ測定用電極2を構成する第一電極21a〜第三電極21cの接液部(分岐配管7側の末端)と接触する。この状態において、電気化学ノイズ測定装置3を構成する制御部36(図1)からの指令値に応じて、貴金属注入装置5は貴金属供給配管9を介して給水系配管6へ貴金属を注入する。すなわち、オンライン貴金属注入を施工する(ステップS11)。ステップS11により、電気化学ノイズ測定用電極2を構成する第一電極21a、第二電極21b、及び第三電極21cの接液部に、給水系配管6と同様の施工条件で貴金属が付着される。
ステップS12では、制御部36からの指令値に応じて、水素注入装置4は水素供給配管8を介して給水系配管6へ水素を注入する。ステップS12により、給水系配管6内を流動する炉水(原子炉冷却材)中に水素が溶存される。
ステップS15では、演算部34は、抽出された電位ノイズEの時系列データ、すなわち、電位ノイズEの経時変化から標準偏差σEを算出する。また、演算部34は、抽出された電流ノイズIの時系列データ、すなわち、電流ノイズIの経時変化から標準偏差σIを算出する。更に、演算部34は、Rn=σE/σIの関係式により、ノイズ抵抗Rnを算出する(ステップS16)。
なお、ステップS17では、演算部34が、図6に示す検量線を用いて、算出されたノイズ抵抗Rnから貴金属付着量Wを推定する構成としたが、これに限られるものではない。例えば、図6に示す検量線に替えて、ノイズ抵抗Rnに加え、炉水(原子炉冷却材)の温度、圧力、水素濃度、酸化剤濃度、電気伝導度、pH、及び流速のうちのいずれか、又はこれらの組み合わせをパラメータとして含め、予め求めたこれらパラメータと貴金属付着量Wとの相関関係を示す相関式を用いる構成としても良い。
ステップS19では、制御部36は、演算部34より推定した貴金属付着量Wが下限値(Wmin)以下であることを示す信号を受信すると、所定量の貴金属を注入するよう指令値を、制御信号線37を介して貴金属注入装置5へ出力する。貴金属注入装置5は、制御部36からの指令値に応じて、所定量の貴金属を、貴金属供給配管9を介して給水系配管6へ注入する。すなわち、オンライン貴金属注入を再施工する。その後、ステップS13へ戻り、ステップS18までの処理を繰り返し実行し、ステップS18にて、推定された貴金属付着量Wが下限値(Wmin)を上回ると判定されるまで、連続的、または断続的に貴金属注入装置5より給水系配管6へ所定量の貴金属が注入される。
ここで、所定量とは、例えば、予め定めた一定量でも良く、または、初期状態の貴金属付着量(Wo)とステップS17にて推定された貴金属付着量Wとの差分、或はこの差分に応じた量を含むものとする。また、事業者により予め設定される下限付着量である下限値(Wmin)は、例えば、貴金属が水素の酸化反応における触媒的効果を発揮することが困難となる貴金属量に所定量を加算した値を下限値として設定しても良い。
なお、ステップS18の処理を、演算部34に替えて、制御部36が実行するよう構成しても良い。この場合、ステップS17にて演算部34により得られる、推定された貴金属付着量Wを制御部36が受信する。その後、制御部36は、推定された貴金属付着量Wが下限値(Wmin)以下か否かを判定する。
本実施例では、電気化学ノイズ測定用電極2a、2b、2cの初期状態における貴金属付着量(Wo)がそれぞれ異なるよう構成している。具体的には、電気学ノイズ測定用電極2aの初期状態における貴金属付着量(Wo)は、0.01μg/cm2としている。電気化学ノイズ測定用電極2bの初期状態における貴金属付着量(Wo)は、0.1μg/cm2としており、また、電気化学ノイズ測定用電極2cの初期状態における貴金属の付着量(Wo)を、1μg/cm2のとしている。よって、炉水(原子炉冷却材)の流動方向に沿って、下流側に配される電気化学ノイズ測定用電極ほど、初期状態における貴金属付着量(Wo)が大となる構成としている。なお、予め電気化学ノイズ測定用電極2a、2b、2cへ貴金属を付着させる処理は、実施例1と同様に、給水系配管6と同様の施工条件で行われる。
スキャナ51は、図7に示す状態から次に、電気化学ノイズ測定用電極2bを構成する、第一電極21aに接続されるリード線41a及び第二電極21bに接続されるリード線41bが、電位差計31と電気的に接続されるよう切り替える。これと同時に、スキャナ51は、第二電極21bに接続されるリード線41b及び第三電極21cに接続されるリード線41cが、電流計32と電気的に接続されるよう切り替える。
続いて、スキャナ51は、電気化学ノイズ測定用電極2cを構成する、第一電極21aに接続されるリード線42a及び第二電極21bに接続されるリード線42bが、電位差計31に電気的に接続されるよう切り替える。これと同時に、スキャナ51は、第二電極21bに接続されるリード線42b及び第三電極21cに接続されるリード線42cが、電流計32に電気的に接続されるよう切り替える。
演算部34は、図5に示すステップS14〜ステップS16までの処理を実行することにより、電気化学ノイズ測定用電極2a〜2cに対応する3組の電位ノイズEの標準偏差σE及び電流ノイズIの標準偏差σIが算出され、これらそれぞれの標準偏差σE、σIから3種のノイズ抵抗Rnが算出される。すなわち、電気化学ノイズ測定用電極2a〜2c毎のノイズ抵抗Rnが得られる。ステップS17では、演算部34は、記憶部35に予め格納される電気化学ノイズ測定用電極2a〜2cに対応する検量線を参照し、上記得られた3種のノイズ抵抗Rnに基づき、各電気化学ノイズ測定用電極(2a,2b,2c)の貴金属付着量Wを推定する。以降のステップS18及びステップS19については、実施例1と同様であるため説明を省略する。
防食システム1bの動作は、図5で説明した実施例1と同様であるため説明を省略する。
また、実施例1及び実施例2と比較し、第二電極21bを必要とせず、電極数を低減することが可能となる。
2,2a,2b,2c,2d…電気化学ノイズ測定用電極
3…電気化学ノイズ測定装置
4…水素注入装置
5…貴金属注入装置
6…給水系配管
7…分岐配管
8…水素供給配管
9…貴金属供給配管
21a…第一電極
21b…第二電極
21c…第三電極
22…絶縁部材
23…構造部材
31…電位差計
32…電流計
33a,33b…フィルタ
34…演算部
35…記憶部
36…制御部
37…制御信号線
40a,40b,40c…リード線
41a,41b,41c…リード線
42a,42b,42c…リード線
51…スキャナ
Claims (15)
- 原子炉冷却材が流動する給水系配管に、所定量の水素を注入する水素注入装置と、
前記給水系配管に、所定量の貴金属を注入する貴金属注入装置と、
前記給水系配管より分岐し内部を流動する前記原子炉冷却材に浸漬するよう分岐配管に配され、前記給水系配管を形成する原子炉構成材料と同種材料で形成される少なくとも2つ以上の電極と、
前記電極間の電気化学ノイズを測定し、当該測定結果から前記電極表面に残存する貴金属付着量を推定し、前記推定された貴金属付着量に基づき、少なくとも前記給水系配管へ貴金属を添加すべき時期を検出し、所定量又は前記推定された貴金属付着量に応じて貴金属を前記給水系配管へ注入するよう前記貴金属注入装置を制御する電気化学ノイズ測定装置と、
を備えることを特徴とする防食システム。 - 請求項1に記載の防食システムにおいて、
前記電気化学ノイズ測定装置は、原子炉冷却材中に溶存する水素が前記電極表面に残存する貴金属により触媒的に反応する酸化反応により生じる前記電極間の電位ノイズを測定する電位差計と、前記電極間の電流ノイズを測定する電流計を有することを特徴とする防食システム。 - 請求項2に記載の防食システムにおいて、
前記原子炉構成材料と同種材料で形成される少なくとも2つ以上の電極を有する電気化学ノイズ測定用電極を、前記分岐配管内に前記原子炉冷却材の流動方向に沿って、相互に離間するよう複数配し、
前記複数の電気化学ノイズ測定用電極表面に予め付着された貴金属量は相互に異なり、
前記電気化学ノイズ測定装置は、前記各電気化学ノイズ測定用電極と、前記電位差計及び前記電流計との電気的接続を切り替える切替え部を備えることを特徴とする防食システム。 - 請求項2又は請求項3に記載の防食システムにおいて、
前記電気化学ノイズ測定装置は、
前記電位差計より得られる所定期間内の電位ノイズから電位ノイズの標準偏差を求めると共に、前記電流計より得られる所定期間内の電流ノイズから電流ノイズの標準偏差を求める演算部を備え、
前記演算部は、前記電位ノイズの標準偏差を前記電流ノイズの標準偏差で除することによりノイズ抵抗を求め、当該求めたノイズ抵抗に基づき、前記電極表面に残存する貴金属付着量を推定することを特徴とする防食システム。 - 請求項4に記載の防食システムにおいて、
前記電気化学ノイズ測定装置は、
予め前記ノイズ抵抗と前記貴金属付着量との相関関係を表す検量線を格納する記憶部を備え、
前記演算部は、求めたノイズ抵抗及び前記記憶部に格納される検量線を用いて、前記電極表面に残存する貴金属付着量を推定することを特徴とする防食システム。 - 請求項5に記載の防食システムにおいて、
前記記憶部は、予め設定された貴金属付着量の下限値を格納し、
前記演算部は、前記推定された電極表面に残存する貴金属付着量が前記下限値以下の場合、前記給水系配管へ貴金属を添加すべき時期であることを検出することを特徴とする防食システム。 - 原子炉冷却材が流動する給水系配管に、所定量の水素を注入する水素注入装置と、
前記給水系配管に、所定量の貴金属を注入する貴金属注入装置と、
前記給水系配管より分岐し内部を流動する前記原子炉冷却材に浸漬するよう分岐配管に配され、前記給水系配管を形成する原子炉構成材料と同種材料で形成される相互に絶縁された第一電極及び第二電極と、
前記第一電極及び第二電極の間に絶縁部材を介して配される疑似参照電極と、
前記電極間の電気化学ノイズを測定し、当該測定結果から前記電極表面に残存する貴金属付着量を推定し、前記推定された貴金属付着量に基づき、少なくとも前記給水系配管へ貴金属を添加すべき時期を検出し、所定量又は前記推定された貴金属付着量に応じて貴金属を前記給水系配管へ注入するよう前記貴金属注入装置を制御する電気化学ノイズ測定装置と、
を備えることを特徴とする防食システム。 - 請求項7に記載の防食システムにおいて、
前記疑似参照電極は、Ti、Ti合金、Zr、Zr合金、Pt、Rh、及びPdの何れかにより形成されることを特徴とする防食システム。 - 請求項8に記載の防食システムにおいて、
前記電気化学ノイズ測定装置は、
原子炉冷却材中に溶存する水素が前記第一電極及び前記疑似参照電極に残存する貴金属により、触媒的に反応する酸化反応により生じる前記第一電極及び前記疑似参照電極間の電位ノイズを測定する電位差計と、
原子炉冷却材中に溶存する水素が前記疑似参照電極及び前記第二電極に残存する貴金属により、触媒的に反応する酸化反応により生じる前記疑似参照電極及び前記第二電極間の電流ノイズを測定する電流計と、
を備えることを特徴とする防食システム。 - 請求項9に記載の防食システムにおいて、
前記第一電極及び前記第二電極並びに前記疑似参照電極を有する電気化学ノイズ測定用電極を、前記分岐配管内に前記原子炉冷却材の流動方向に沿って、相互に離間するよう複数配し、
前記複数の電気化学ノイズ測定用電極表面に予め付着された貴金属量は相互に異なり、
前記電気化学ノイズ測定装置は、前記各電気化学ノイズ測定用電極と、前記電位差計及び前記電流計との電気的接続を切り替える切替え部を備えることを特徴とする防食システム。 - 給水系配管内を流動する原子炉冷却材に、所定量の水素を注入する原子炉内機器材料の防食方法であって、
溶存水素を含む原子炉冷却材中に浸漬され、前記給水系配管を形成する原子炉構成材料と同種材料で形成される少なくとも2つ以上の電極により、前記電極間の電気化学ノイズを測定し、
前記測定された電気化学ノイズに基づき前記電極表面に残存する貴金属付着量を推定し、
前記推定された貴金属付着量に基づき、少なくとも前記給水系配管へ貴金属を添加すべき時期を検出し、
所定量又は前記推定された貴金属付着量に応じて、前記給水系配管へ貴金属を注入することを特徴とする原子炉内機器材料の防食方法。 - 請求項11に記載の原子炉内機器材料の防食方法において、
原子炉冷却材中に溶存する水素が前記電極表面に残存する貴金属により触媒的に反応する酸化反応により前記電極間に生じる電位ノイズを測定すると共に、前記電極間に生じる電流ノイズを測定することにより、前記電気化学ノイズを測定することを特徴とする原子炉内機器材料の防食方法。 - 請求項12に記載の原子炉内機器材料の防食方法において、
前記測定される電位ノイズの所定期間の時系列データから電位ノイズの標準偏差を求めると共に、前記測定される電流ノイズの所定期間の時系列データから電流ノイズの標準偏差を求め、
前記求めた電位ノイズの標準偏差を、前記求めた電流ノイズの標準偏差により除することによりノイズ抵抗を求め、
前記求めたノイズ抵抗に基づき、前記電極表面に残存する貴金属付着量を推定することを特徴とする原子炉内機器材料の防食方法。 - 請求項13に記載の原子炉内機器材料の防食方法において、
予め記憶部に格納される、前記ノイズ抵抗及び前記貴金属付着量との相関関係を表す検量線を読み出し、
前記読み出された検量線と前記求めたノイズ抵抗により、前記電極表面に残存する貴金属付着量を推定することを特徴とする原子炉内機器材料の防食方法。 - 請求項14に記載の原子炉内機器材料の防食方法において、
予め設定され記憶部に格納される貴金属付着量の下限値を読み出し、
前記推定された電極表面に残存する貴金属付着量が、前記読み出された下限値以下の場合、前記給水系配管へ貴金属を添加すべき時期であることを検出することを特徴とする原子炉内機器材料の防食方法。
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