以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本発明の梯子を、ユニット式建物を構築する際に用いる梯子として具体化している。まず、ユニット式建物について、図8、図9を参照しつつ説明する。図8は建物10の概略図、図9は建物ユニット20の構成を示す斜視図である。
図8に示すように、住宅等の建物10は、建物10は、基礎11上に設けられた建物本体12と、その上方に設けられた屋根部13とを備える。建物本体12は、下階部としての一階部分14と、上階部としての二階部分15とを有している。屋根部13は、陸屋根(フラットルーフ)であり、二階部分15に対して設けられている。
建物10は、複数の建物ユニット20が互いに連結されることで構築されており、鉄骨ラーメン構造を有する二階建てのユニット式建物である。各建物ユニット20は、全体として直方体状に形成されている。建物10においては、一階部分14及び二階部分15のそれぞれが複数の建物ユニット20を有しており、二階部分15の複数の建物ユニット20には、建物10の出隅部分を形成する出隅ユニット20Aが含まれている。
図9に示すように、出隅ユニット20Aは、四隅に配置された柱21と、柱21の上端部(上仕口)に連結された天井大梁22と、柱21の下端部(下仕口)に連結された床大梁23とを有しており、これら柱21、天井大梁22、床大梁23により直方体状の骨格(フレーム)が形成されている。柱21は四角筒状の角形鋼よりなる。また、天井大梁22及び床大梁23は断面コ字状の溝形鋼よりなり、溝部開放側を互いに向き合わせるようにユニット内側に向けて配置されている。
出隅ユニット20Aにおいて長辺部(桁面)に沿って延び且つ相対する天井大梁22の間には、所定間隔で複数の天井小梁25が架け渡されている。同じく長辺部に沿って延び且つ相対する床大梁23の間には、所定間隔で複数の床小梁26が架け渡されている。天井小梁25及び床小梁26は、それぞれ同一の間隔で且つ短辺側(妻側)の天井大梁22及び床大梁23と平行に延びている。天井小梁25及び床小梁26はそれぞれリップ溝形鋼よりなる。天井小梁25によって天井面材28が支持され、床小梁26によって床面材29が支持されている。
出隅ユニット20Aにおいては、柱21、天井大梁22及び床大梁23により形成された骨格がユニット躯体31とされており、このユニット躯体31が建物躯体を構成している。
出隅ユニット20Aは、ユニット躯体31に加えて、このユニット躯体31に取り付けられた外壁パネル32,33を有している。外壁パネル32,33は、建物10の外壁面を形成するものであり、天井大梁22と床大梁23とに架け渡された状態でそれら大梁22,23に固定されている。外壁パネル32,33のうち第1外壁パネル32は、出隅ユニット20Aの長手方向に延びており、第2外壁パネル33は、短手方向に延びている。
外壁パネル32,33は、ユニット躯体31に固定された外壁下地と、外壁下地の屋外側に設けられた外壁面材とを有している。外壁下地は、ランナやスタッドなどの長尺部材を複数有する下地フレームであり、外壁面材は、窯業系サイディングボード等により形成された外装材である。
出隅ユニット20Aは、一対の長辺部35a,35b及び一対の短辺部36a,36bを側面部として有している。一対の長辺部35a,35bのうち、第1外壁パネル32を含む外壁長辺部35aは、建物10が構築された状態で外壁を形成し、第1外壁パネル32を含まない屋内長辺部35bは、建物10が構築された状態で屋内側に配置される。同様に、一対の短辺部36a,36bのうち、第2外壁パネル33を含む外壁短辺部36aは、建物10が構築された状態で外壁を形成し、第2外壁パネル33を含まない屋内短辺部36bは、建物10が構築された状態で屋内側に配置される。
出隅ユニット20Aの外周部においては、外壁長辺部35a及び外壁短辺部36aが外壁部分に相当し、屋内長辺部35b及び屋内短辺部36bが屋内部分に相当する。この場合、外壁部分及び屋内部分は、それぞれ隣り合う側面部に架け渡された状態になっている。
出隅ユニット20Aにおいて4本の柱21には、外壁長辺部35aと外壁短辺部36aとの交差部分(境界部)に配置された出隅柱21A、屋内長辺部35bと屋内短辺部36bとの交差部分に配置された屋内柱21Bが含まれている。この場合、出隅柱21Aは、外壁部分の中間位置に配置されており、屋内柱21Bは、屋内部分の中間位置に配置されている。また、4本の柱21には、外壁部分と屋内部分との境界部に配置された境界柱21C,21Dが含まれている。境界柱21Cは、外壁長辺部35aと屋内短辺部36bとの境界部に配置されており、境界柱21Dは、外壁短辺部36aと屋内長辺部35bとの境界部に配置されている。
なお、出隅ユニット20Aは、外壁パネル32,33に加えて屋根パネルを有している。屋根パネルは、屋根小梁や野地板等の屋根下地材と、折板材等の屋根仕上材(屋根葺き材)とを有しており、外壁パネル32,33に接続されている一方で、屋内長辺部35b及び屋内短辺部36bの上方には配置されていない。つまり、屋内長辺部35b及び屋内短辺部36bにおいては、天井大梁22に対して屋根パネルが固定されていない。これは、出隅ユニット20Aとその隣の建物ユニット20とをユニット躯体31同士で連結する際に、屋根パネルが支障にならないようにするためである。
建物ユニット20は、工場で製造され、その後、トラック等により工場から建築現場に運搬される。建築現場においては、建物ユニット20は、クレーン等の重機により吊り上げられることで設置場所に下ろされる。なお、建物ユニット20は、保護シートにより覆われた状態で工場から建築現場に運搬される。保護シートは、建物ユニット20が建築現場にて設置場所に下ろされる前に取り外される。
ここでは、出隅ユニット20AがトラックTに搭載された場合について、図1、図2を参照しつつ説明する。図1は出隅ユニット20Aを搭載したトラックTの斜視図、図2は出隅ユニット20Aを搭載したトラックTの縦断面図である。なお、図2においては、トラックTの縦断面部分を前方から見た図を示す。また、図1、図2には、建築現場において、出隅ユニット20Aから保護シートが取り外された状態の図を示す。
図1、図2に示すように、出隅ユニット20Aは、トラックTの荷台T1に積載されている。荷台T1においては、出隅ユニット20Aの長辺部35a,35bがトラックTの進行方向(荷台T1の長手方向)に延びており、屋内短辺部36bが前側(座席側)に配置され、外壁短辺部36aが後側に配置されている。
なお、トラックTの荷台T1には、出隅ユニット20Aを荷台T1に対して固定する固定穴が設けられている。固定穴は、荷台T1の上面(載置面)を形成する荷台板が下方に向けて凹んだ凹部であり、出隅ユニット20Aは、柱21や床大梁23から下方に向けて突出した凸部が固定穴に挿入される位置に載置されている。出隅ユニット20Aの凸部には、荷台板の下方から固定穴の底部を貫通して固定ボルトがねじ込まれており、この固定ボルトにより出隅ユニット20Aが荷台T1に固定されている。このため、固定ボルトが取り外されることで、荷台T1に対する出隅ユニット20Aの固定が解除される。
建築現場においては、トラックTを所定位置に停車させた後、出隅ユニット20Aを吊り上げるための準備作業を行う。この準備作業には、出隅ユニット20Aに梯子41を装着する作業が含まれており、作業者は、この梯子41を昇降することで出隅ユニット20Aに乗った状態での作業を行うことが可能になる。梯子41は、出隅ユニット20Aの外壁長辺部35aにおいて天井大梁22及び床大梁23に対して装着される。
梯子41は、作業者の昇降を可能とする梯子本体42と、出隅ユニット20Aの天井大梁22に当接する上側当接部43と、床大梁23に当接する下側当接部44とを有している。
梯子本体42は、昇降方向に延びている一対の支柱46と、これら支柱46を連結している複数の踏み桟47とを有している。各支柱46及び踏み桟47は、いずれもアルミニウム等の金属材料により形成されている。踏み桟47は、支柱46の長手方向に所定間隔で並べられている。例えば、各支柱46の長さ寸法は4.8mとされており、踏み桟47の間隔は30cmとされている。
上側当接部43は、天井大梁22に上方から引っ掛け可能な引っ掛け部であり、下側当接部44は、梯子本体42の厚み方向に向けて突出している突出部である。上側当接部43及び下側当接部44は、いずれも梯子本体42の各支柱46に取り付けられており、上側当接部43は、梯子本体42の上端寄りの位置に配置され、下側当接部44は、上側当接部43よりも下方において梯子本体42の下端寄りの位置に配置されている。
梯子本体42は、上側当接部43よりも上方に突出した上側部分42aと、下側当接部44よりも下方に突出した下側部分42bと、上側部分42aと下側部分42bとの間に配置された中間部分42cとを有している。上側部分42aの長さ寸法は、作業者が梯子41から出隅ユニット20Aの上に乗り移る際に手摺として機能可能な大きさ(例えば90cm)とされている。下側部分42bの長さ寸法は、地面と出隅ユニット20Aとの離間距離よりも小さくされており、下側部分42bの下端部が地面から所定距離(例えば20cm)だけ上方に配置される大きさ(例えば90cm)とされている。
梯子41が出隅ユニット20Aに装着された場合、その昇降方向は鉛直方向に対して傾斜している。水平方向に対する梯子本体42の角度は、作業者が梯子41を安全に昇降できる所定角度θ(例えば75度)とされている。この場合、梯子本体42の下端部はトラックTから側方に離間した位置に配置されている一方で、梯子本体42の上端部は出隅ユニット20Aの上方位置に配置されている。
下側当接部44は、その先端部が床大梁23の外側面(出隅ユニット20Aの外周側の側面)に当接していることで、梯子41を水平方向に対して所定角度で保持することになる。下側当接部44は、梯子本体42に取り付けられた一対の当接アーム部51と、これら当接アーム部51の各先端部を連結している連結部52と、当接アーム部51を支えている補助アーム部53とを有しており、当接アーム部51の先端部及び連結部52により下側当接部44の先端部が形成されている。梯子41が出隅ユニット20Aに装着された場合、連結部52は、床大梁23の側面に重ねられた状態で、その床大梁23の長手方向に延びることになる。
補助アーム部53は、当接アーム部51の中間部分から梯子本体42に向けて斜め上方に延びており、当接アーム部51と支柱46とに架け渡された状態になっている。支柱46においては、補助アーム部53の固定位置が当接アーム部51の固定位置より高い位置に配置されている。この場合、補助アーム部53は、重力に抗して当接アーム部51を上方から支持していることになる。
下側当接部44は、当接アーム部51の先端部に取り付けられた磁石54を有している。磁石54は、その磁力により床大梁23の側面に吸着されることで、下側当接部44の先端部を床大梁23に当接した状態で保持することが可能になっている。つまり、梯子41を出隅ユニット20Aに装着された状態で保持することが可能になっている。磁石54は、当接アーム部51の下側に配置されており、一対の当接アーム部51のそれぞれに取り付けられている。
なお、磁石54は、下側当接部44において連結部52に取り付けられていてもよい。また、磁石54は、下側当接部44において、床大梁23の上面や下面に吸着される態様で設けられていてもよい。
次に、梯子41について図3、図4を参照しつつ説明する。図3は梯子41の側面図、図4は上側当接部43の構成を説明するための図である。なお、図3においては、(a)に上側当接部43及び下側当接部44の移動態様を示し、(b)に梯子41の分解図を示す。図4においては、(a)に梯子41における上側当接部43周辺の拡大図を示し、(b)に出隅ユニット20Aにおける出隅柱21Aの上端部周辺の斜視図を示す。
図3(a)に示すように、梯子41においては、下側当接部44が梯子本体42に対して折り畳み可能になっており、下側当接部44は、折り畳まれることで突出状態から折り畳み状態に移行する。下側当接部44においては、当接アーム部51が支柱46に対して回動可能に軸支され、補助アーム部53が当接アーム部51に対して回動可能に軸支されている。補助アーム部53は、固定部材等により支柱46に対して着脱可能に固定されており、支柱46に対する補助アーム部53の固定が解除されることで、当接アーム部51及び補助アーム部53の回動が可能になる。下側当接部44は、当接アーム部51及び補助アーム部53の両方が支柱46に沿って延びた状態に移行することで折り畳み状態に移行し、補助アーム部53が固定部材等により支柱46に対して固定されることで、折り畳み状態が保持される。
図3(b)に示すように、梯子本体42は、上側当接部43が取り付けられた上側本体部56と、下側当接部44が取り付けられた下側本体部57とを有しており、これら本体部56,57は、ボルト等の連結具により互いに分離可能に連結されている。上側本体部56及び下側本体部57は、それぞれ一対の支柱部56a,57aを有しており、上側本体部56の支柱部56aと下側本体部57の支柱部57aとが連結されていることで支柱46が形成されている。なお、一対の支柱部56a,57aは踏み桟47により連結されている。また、連結具は、つまみ等の把持部を有しており、作業者が連結具の着脱を容易に実施できるようになっている。
支柱46においては、支柱部56a,57aが重ね合わされた状態で互いに連結されている。上側本体部56においては、その最下段の踏み桟47から支柱部56aが下方に延出しており、この延出部分に連結孔56bが複数形成されている。下側本体部57においては、その最上段の踏み桟47から支柱部57aが上方に延出しており、この延出部分に連結孔57bが複数形成されている。上側本体部56と下側本体部57とは、それぞれの連結孔56b,57bが連通するように支柱部56a,57aが重ねられ状態で、連結孔56b,57bに連結具が挿通されることで連結されている。
上側本体部56と下側本体部57とは長さ寸法がほぼ同じにされている。ここで、梯子41は、出隅ユニット20Aを搭載したトラックTや、他の建物ユニット20を搭載したトラックに載せて工場から建築現場に運搬される。このため、出隅ユニット20Aの天井大梁22と床大梁23とに架け渡すことができるほどの大型の梯子41であっても、上側本体部56と下側本体部57とに分割することで、建物ユニット20を搭載した状態のトラックの荷台において、その余剰部分を利用して梯子41を載せることが可能になる。
図4(a)に示すように、上側当接部43は、全体としてコ字状に形成されている。上側当接部43は、支柱46(上側本体部56の支柱部56a)に取り付けられたベース部61と、天井大梁22の上面に重ねられる上側重ね部62と、天井大梁22の内側面(出隅ユニット20Aの内周側の側面)に重ねられる内側重ね部63とを有している。これらベース部61、上側重ね部62及び内側重ね部63は、金属材料等の硬質材料により一体的に成型されている。
ベース部61は、上側重ね部62を挟んで内側重ね部63に対向しており、天井大梁22の外側面(出隅ユニット20Aの外周側の側面)に重ねられる外側重ね部にもなっている。上側当接部43においては、ベース部61、上側重ね部62及び内側重ね部63により凹部65が形成されており、この凹部65に天井大梁22を入り込ませることで、上側当接部43が天井大梁22に引っ掛けられたことになる。
上側当接部43は、凹部65の内周面に重ねられた保護層66を有している。保護層66は、ゴムや合成樹脂材料により形成されており、ベース部61や上側重ね部62及び内側重ね部63が天井大梁22に直接接触しないようにしている。このため、上側当接部43の硬質部分により天井大梁22に傷が付くことを保護層66により抑制できる。
図4(b)に示すように、出隅ユニット20Aの天井大梁22には、屋根パネルを支持する支持ブラケットとしての屋根ブラケット71が取り付けられている。屋根ブラケット71は、天井大梁22の上面に固定された固定板部72と、この固定板部72から上方に向けて延びている上方延出部としての延出板部73とを有している。屋根ブラケット71は、アングル等の鋼材により形成され、直交する方向に延びる一対の板部を有しており、一方の板部が固定板部72を形成し、他方の板部が延出板部73を形成している。屋根パネルは、延出板部73の上端部に屋根小梁が固定されることで屋根ブラケット71に対して取り付けられるようになっている。
上述したように、工場から出荷された状態の出隅ユニット20Aにおいては、屋内長辺部35bの天井大梁22に屋根パネルが固定されていないため、上側当接部43を天井大梁22に引っ掛けることが可能になっている。ところが、屋内長辺部35bにおいては、屋根パネルが天井大梁22に固定されていないことで屋根ブラケット71が露出した状態になっており、上側当接部43を天井大梁22に引っ掛ける際に、屋根ブラケット71が支障になることが懸念される。
これに対して、上側当接部43には、屋根ブラケット71の延出板部73を収納する収納部43aが形成されている。収納部43aは、凹部65内において上側重ね部62の下面が上方に向けて凹むことで形成されており、屋根ブラケット71の延出板部73を収納可能な大きさ及び形状とされている。収納部43a内には保護層66が設けられていない。収納部43aは、梯子41からの荷重が延出板部73ではなく天井大梁22に加えられるような形状及び配置とされており、収納部43a内に保護層66が設けられていなくても、上側重ね部62により延出板部73が傷付きにくいようになっている。収納部43aは、上側重ね部62において内側重ね部63側の端部に配置されている。
上側当接部43が天井大梁22に引っ掛けられた場合、屋根ブラケット71は、天井大梁22と共に上側当接部43の凹部65に入り込み、特に、延出板部73は収納部43a内に収納される。この場合、上側重ね部62は、屋根ブラケット71の固定板部72に上から重ねられた状態になる。
建物10においては、一階部分14の建物ユニット20が二階部分15の出隅ユニット20A等の建物ユニット20よりも高さ寸法の大きいハイユニットとされている。ハイユニットにおいては、天井大梁22と床大梁23との離間距離が出隅ユニット20Aよりも大きくなっている。これに対して、梯子41は、出隅ユニット20Aに加えてハイユニットにも装着可能な構成になっている。
図3(a)、図4(a)に示すように、梯子41においては、上側当接部43が梯子本体42に沿って移動可能になっている。上側当接部43は、第1位置N1と、この第1位置N1よりも高い位置にある第2位置N2とに移動可能になっており、梯子41が出隅ユニット20Aに装着される場合には第1位置N1に配置され、梯子41がハイユニットに装着される場合には第2位置N2に配置される。
上側当接部43は、ベース部61が支柱46の外側面に重ねられた状態で、支柱46に対して着脱可能に取り付けられている。支柱46には、その長手方向に沿って取付孔46aが複数設けられ、ベース部61には、支柱46の取付孔46aに連通可能な取付孔61aが所定数(例えば2個)設けられている。上側当接部43は、互いに連通する取付孔46a,61aにボルト等の取付具が挿通されることで、支柱46に取り付けられている。上側当接部43は、取付具を取り外すことで第1位置N1及び第2位置N2に移動可能になっており、支柱46においては、上側当接部43の取り付けに用いられる取付孔61aが第1位置N1と第2位置N2とで異なるものが選択されるようになっている。なお、取付具は、つまみ等の把持部を有しており、作業者が取付具の着脱を容易に実施できるようになっている。
次に、出隅ユニット20AをトラックTの荷台T1から吊り上げる際の作業手順について、図1、図4〜図6を参照しつつ説明する。図5は出隅ユニット20Aを吊り上げる際の作業手順を示す図、図6は出隅ユニット20Aに装着した状態の吊り具81を示す図である。
図5(a)に示すように、建築現場に到着したトラックTに出隅ユニット20Aが搭載されている。トラックTを建築現場の所定位置に停車させた状態で、荷台T1に対する出隅ユニット20Aの固定を解除する。また、図1、図5(b)に示すように、出隅ユニット20Aの屋内長辺部35bに梯子41を装着する。この場合、例えば梯子41が外壁長辺部35aや外壁短辺部36aに装着された場合に比べて、梯子41により外壁パネル32,33や屋根パネルを傷付けるという事態が生じにくくなっている。また、梯子41の装着に際して外壁パネル32,33や屋根パネルが支障になりにくいため、梯子41の装着状態が不安定になるということを回避できる。
また、梯子41は、出隅ユニット20Aに装着された場合に、下端から出隅ユニット20Aに向けて斜め上方に延びているため、作業者が梯子41を昇降している状態で、磁石54による床大梁23に対する吸着力に加えて、その作業者からの荷重により下側当接部44が床大梁23に押し付けられた状態になる。このため、下側当接部44が床大梁23から離間して梯子41が不安定な状態になるという事態が生じにくくなっている。
その後、図5(c)に示すように、作業者が梯子41を登って出隅ユニット20Aの上に乗り、吊り具81を出隅ユニット20Aに取り付ける。図6に示すように、吊り具81は、索82,83と、これら索82,83を連結した連結リング84とを有しており、重機のブームから吊り下げられた重機フックに連結リング84を引っ掛けて使用されるものである。
索82,83のうち、調整索82は長さ調整が可能な吊り索になっており、定尺索83は長さ調整ができない吊り索になっている。調整索82は、ワイヤやチェーン等の線状部材により形成された索本体82aと、チェーンブロック等の長さ調整部82bとを有している。長さ調整部82bは、索本体82aの中間位置に配置され、索本体82aの巻き取り及び繰り出しを行うことで調整索82の長さ寸法を増減させることが可能になっている。定尺索83は、長さ調整部82bを有しておらず、線状部材の長さ寸法により定尺索83の長さ寸法が設定されている。
なお、長さ調整部82bは、吊り具81により出隅ユニット20Aが吊り上げられた状態など、張力が加えられた状態で、作業者がチェーン等の操作部材を操作して調整索82の長さ調整を行うことが可能になっている。
索82,83の先端部には、出隅ユニット20Aに引っ掛けることが可能な索フックが取り付けられている。図4(b)に示すように、出隅ユニット20Aにおいては、索フックを引っ掛けることが可能な引っ掛け孔86が、屋内柱21B等の各柱21の上端部に設けられている。引っ掛け孔86は、柱21の上面部を上下に貫通している。
図6に示すように、吊り具81は、調整索82を2本有している。各調整索82においては、一端が連結リング84に接続され、他端に索フックが接続されている。また、吊り具81は、定尺索83を1本有している。定尺索83は、連結リング84に挿通された状態で、その両端のそれぞれに索フックが接続された状態になっている。このため、定尺索83は、2つの柱21の各引っ掛け孔86に架け渡された状態で出隅ユニット20Aに装着することが可能になっている。
吊り具81が出隅ユニット20Aに取り付けられた状態では、屋内長辺部35bに沿って並ぶ屋内柱21B及び境界柱21Dのそれぞれに調整索82が引っ掛けられ、外壁長辺部35aに沿って並ぶ出隅柱21A及び境界柱21Cのそれぞれに定尺索83が引っ掛けられている。
吊り具81を出隅ユニット20Aに取り付けた後、図5(d)に示すように、吊り具81による出隅ユニット20Aの吊り上げバランスを整えるために、出隅ユニット20Aを荷台T1から浮く程度に吊り上げる。この状態で、出隅ユニット20Aが水平状態になるように、調整索82の長さ寸法を調整する。
ここで、出隅ユニット20Aにおいては、外壁長辺部35a及び外壁短辺部36aの方が屋内長辺部35b及び屋内短辺部36bよりも重量が大きいことに起因して、重心が出隅柱21A側に偏っていると想定される。そこで、調整索82が屋内柱21Bに引っ掛けられていることで、例えば調整索82が出隅柱21Aに引っ掛けられた場合に比べて、調整索82により持ち上げる又は引き下げる重量が小さくなるため、作業者が長さ調整部82bを操作するために必要な力を極力小さくできる。
なお、定尺索83は、連結リング84に挿通された状態になっているため、連結リング84に対する出隅柱21A及び境界柱21Cの離間距離をまとめて調整することが可能になっている。このように、1本の定尺索83を隣り合う2つの柱21A,21Cに引っ掛けることで、出隅ユニット20Aの四隅に吊り具81を引っ掛ける場合に、4本の調整索82を使用しなくても、吊り上げ時の出隅ユニット20Aのバランスを整えることができる。
出隅ユニット20Aを吊り上げた場合、トラックTにおいては、荷台T1が地面に対して上昇することになる。荷台T1に出隅ユニット20Aが搭載されている場合は、荷台T1の高さ位置がH1にある一方で、出隅ユニット20Aが荷台T1から上方に離間した場合には、サスペンションにより荷台T1の高さ位置がH2まで上昇する。
ここで、出隅ユニット20Aの吊り上げバランスを整える作業は、出隅ユニット20Aに梯子41が装着された状態のまま行う。これにより、作業者が出隅ユニット20Aから降りるために梯子41を再び装着するという手間を省くことができる。これに対して、例えば、梯子41を地面に立てて出隅ユニット20Aに立て掛けていたのでは、出隅ユニット20Aの吊り上げに伴って梯子41が倒れることが懸念される。また、梯子41の下側当接部44を荷台T1に当接させていたのでは、出隅ユニット20Aの吊り上げに伴って下側当接部44が荷台T1から外れて梯子41が出隅ユニット20Aから離脱することが懸念される。
なお、梯子41の重量は、出隅ユニット20Aの重量に対して十分に小さいため、梯子41の装着の有無は、出隅ユニット20Aの吊り上げバランスに影響を与えにくくなっている。
出隅ユニット20Aの吊り上げバランスを整えた後、図5(e)に示すように、出隅ユニット20Aを下ろすことで、再び荷台T1の上に載せる。その後、作業者は梯子41を使用して出隅ユニット20Aから降り、梯子41を出隅ユニット20Aから取り外す。そして、図5(f)に示すように、出隅ユニット20Aをバランスの整えられた状態で吊り上げ、建築現場において一階部分14の建物ユニット20の上に設置する。
また、建物10において、複数の建物ユニット20に、他の建物ユニット20よりも薄型の薄型ユニット20Bが含まれている場合、その薄型ユニット20BもトラックTにて運搬され、梯子41が装着されることになる。ここでは、薄型ユニット20Bについて、図7を参照しつつ説明する。図7は薄型ユニット20Bを搭載したトラックTの縦断面図である。なお、薄型ユニット20Bは、短手方向の長さ寸法が出隅ユニット20A等の他の建物ユニット20よりも小さいものであり、薄型ユニット20Bとしては、前記長さ寸法が1/2であるハーフユニットがある。
図7に示すように、薄型ユニット20Bは、トラックTの幅方向において荷台T1のほぼ中央に載せられており、薄型ユニット20Bにおいては、屋内長辺部35bが荷台T1よりも内側に配置されている。これに対して、梯子41においては、下側当接部44が梯子本体42から側方に延びており、梯子本体42が荷台T1に引っ掛からない状態で下側当接部44を屋内長辺部35bの床大梁23に当接している。この場合、荷台T1の上方位置においては、薄型ユニット20Bの側方スペースがデッドスペースになってしまうが、このデッドスペースを利用して下側当接部44を床大梁23に当接させることができる。なお、荷台T1の側端部からの床大梁23の離間距離(入り込み距離)は、梯子本体42からの下側当接部44の延出寸法よりも小さくされている。
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、梯子41の下側当接部44が床大梁23の側面に当接可能な構成としたが、下側当接部44が床大梁23の側面に加えて、その床大梁23の上面及び下面の少なくとも一方に当接可能な構成としてもよい。
例えば、図10(a)に示すように、下側当接部44が上下方向において床大梁23に引っ掛かる引っ掛け部材91を備えた構成とする。引っ掛け部材91は、床大梁23の外側面に重ねられる外側重ね部92と、床大梁23の上面に重ねられる上側重ね部93と、床大梁23の下面に重ねられる下側重ね部94とを有している。引っ掛け部材91は、断面コ字状の溝形鋼により形成されており、溝形鋼のウェブが外側重ね部92とされ、上側フランジが上側重ね部93とされ、下側フランジが下側重ね部94とされている。
引っ掛け部材91が床大梁23に引っ掛けられた場合、床大梁23が引っ掛け部材91の溝部内に入り込んだ状態になっている。この場合、上側重ね部93が床大梁23の上面に引っ掛かることで、梯子41の上端部が出隅ユニット20Aに近づく向きで梯子41が倒れることを規制できる。また、下側重ね部94が床大梁23の下面に引っ掛かることで、梯子41の上端部が出隅ユニット20Aから離れる向きで梯子41が倒れることを規制できる。これらのことにより、引っ掛け部材91が床大梁23に引っ掛けられた状態では、梯子41の変位が規制されるため、上側当接部43が天井大梁22から離脱しにくくなっている。
また、下側当接部44が引っ掛け部材91を有している構成では、上側当接部43は、支柱46に対して回動可能に軸支されていることが好ましい。これにより、上側当接部43を天井大梁22に引っ掛けた後、上側当接部43の引っ掛け状態を保持したまま、支柱46(梯子本体42)を回動させながら引っ掛け部材91を床大梁23に引っ掛けることが可能になる。これにより、梯子41を建物ユニット20に適正に且つ確実に装着することができる。
さらに、下側当接部44の下側重ね部94が床大梁23の下方に挿し入れられる場合には、出隅ユニット20Aが木材等のスペーサを介して荷台T1の上に載せられていることが好ましい。
(2)上記実施形態では、梯子41を出隅ユニット20Aに装着した場合に下側当接部44の一部として当接アーム部51が床大梁23に当接する構成としたが、下側当接部44の一部であればどの部分が床大梁23に当接してもよい。例えば、図10(b)に示すように、下側当接部44が、当接アーム部51及び補助アーム部53に代えて、梯子本体42に固定された一対の当接ユニット95を有しており、これら当接ユニット95の先端部が連結部52により連結された構成とする。
この構成では、連結部52は合板等の板材により形成されており、板面が当接ユニット95の先端面に重ねられた状態で各当接ユニット95にビス等により固定されている。連結部52が床大梁23に当接する場合、その板面が床大梁23の側面に重ねられた状態になる。連結部52の高さ寸法は、床大梁23の高さ寸法とほぼ同じにされている。
当接ユニット95は、上下に並べられた状態で梯子本体42の厚み方向に延びている上側アーム部96及び下側アーム部97と、アーム部96,97の長手方向に並べられた状態でこれらアーム部96,97を接続している第1接続部98及び第2接続部99とを備えた構成とする。上側アーム部96、下側アーム部97及び第1接続部98は、木材等の長尺材により形成されており、第2接続部99は合板等の板材により形成されている。
アーム部96,97は、それぞれの一端が互いに離間した状態で第1接続部98により接続され、その第1接続部98を介して支柱46に固定されている。第1接続部98は、支柱46に沿って延びた状態で支柱46の外側面にビス等により固定されている。アーム部96,97は、第1接続部98とは反対側の各端部が当接又は近接した状態で第2接続部99により接続されている。第2接続部99は、アーム部96,97の各側面に架け渡された状態でアーム部96,97にビス等により固定されており、連結部52は、アーム部96,97の先端面及び第2接続部99の側端面に重ねられた状態で、アーム部96,97及び第2接続部99にビス等により固定されている。
梯子41が出隅ユニット20Aに装着された状態では、下側アーム部97が水平方向に延び、上側アーム部96が支柱46から床大梁23に向けて斜め下方に延びている。なお、アーム部96,97は、両方が水平方向に延びていてもよく、両方が斜め上方や下方に延びていてもよい。
(3)上記実施形態では、梯子41を出隅ユニット20Aの外壁長辺部35aに装着していたが、屋内長辺部35bや短辺部36a,36bに装着してもよい。例えば、梯子41を屋内長辺部35bに装着する場合、その屋内長辺部35bが、天井大梁22及び床大梁23に梯子41を装着した状態で、その梯子41が第1外壁パネル32や屋根パネルに接触しない態様に設定されていることが好ましい。
(4)上記実施形態では、出隅ユニット20Aに装着された梯子41が、その出隅ユニット20Aに向けて斜め上方に延びた状態になっていたが、鉛直方向に延びた状態になっていてもよい。例えば、支柱46からの下側当接部44の突出寸法が、床大梁23に対する支柱46の離間距離が天井大梁22に対する支柱46の離間距離と同じになる程度の大きさに設定された構成とする。
(5)上記実施形態では、梯子41において上側本体部56と下側本体部57とが分離可能に構成されていたが、これら本体部56,57は折り畳まれる構成としてもよい。例えば、上側本体部56と下側本体部57とが連結部材により互いに回動可能に連結された構成とする。この場合でも、本体部56,57を折り畳み状態に移行させることで、梯子41をトラック等で運搬することが容易になる。
(6)上記実施形態では、梯子41において上側本体部56と下側本体部57とが上下に隣り合って配置されていたが、これら本体部56,57の間に中間本体部が配置されていてもよい。また、梯子41は、1つの本体部により形成されていてもよい。この場合、1つの本体部に上側当接部43及び下側当接部44が両方とも取り付けられていることになる。
(7)上記実施形態では、吊り具81が調整索82及び定尺索83の両方を有していたが、いずれか一方を有していてもよい。