JP6370226B2 - 哺乳動物細胞内で増幅された目的遺伝子の発現を高めるポリヌクレオチド - Google Patents

哺乳動物細胞内で増幅された目的遺伝子の発現を高めるポリヌクレオチド Download PDF

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本発明は、哺乳動物細胞内で目的遺伝子を高度に増幅した際に起こる、目的遺伝子の発現抑制を回避(または軽減)し、目的遺伝子の発現を高める方法、および当該方法を行うためのキット等に関する。より具体的には、本発明者が開発した「高度遺伝子増幅系」を用いて高度に増幅した遺伝子に起こり得る発現抑制を回避(または軽減)して、増幅遺伝子を高発現させる手段に関する。また、当該方法により、目的遺伝子の発現が高められた形質転換細胞に関する。
本発明者は、哺乳動物の複製開始領域(IR;Initiation Region)と核マトリックス結合領域(MAR; Matrix Attachment Region)とを持つプラスミドベクター(「IR/MARベクター」または「IR/MARプラスミド」という。)をヒト由来がん細胞(COLO 320 大腸がん細胞株、およびHeLa細胞株)にリポフェクション法で導入し、プラスミド上に存在する薬剤耐性遺伝子(ブラストサイジン(Blasticidin)あるいはネオマイシン(Neomycine))を利用して選択するだけで、
(1)発現させるべきタンパク質をコードする遺伝子(以下、適宜「目的遺伝子」という。)の細胞内コピー数を1万コピー程度にまで増幅できること、および、
(2)目的遺伝子はIR/MARベクターに対して同一の遺伝子構築物(シス)として導入した場合であっても、別の遺伝子構築物(トランス)として導入した場合であっても、高度に増幅することができるということを見出し、上記IR/MARベクターを用いて目的遺伝子を高度に増幅する系(「高度遺伝子増幅系」または「IR/MAR遺伝子増幅系」という。)を完成させるに至った(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1、および非特許文献2参照を参照のこと。)。ここで、高度遺伝子増幅系(IR/MAR遺伝子増幅系)を用いた遺伝子増幅法を、「IR/MAR遺伝子増幅法」と呼ぶ。
ところが、IR/MAR遺伝子増幅法によって遺伝子増幅を行った場合、増幅した領域には目的遺伝子による単純反復配列が形成される。一般的に、反復配列は、頻繁にRepeat-Induced Gene Silencing(RIGS)と呼ばれる現象によって、ヘテロクロマチン化が起こり、転写抑制されることが知られている。また反復配列はRNAi系を高効率的に活性化し、DNAのメチル化を誘導することも知られている。このため、IR/MAR遺伝子増幅法によって増幅した遺伝子は、コピー数とその発現量とが必ずしも比例しない場合があった(非特許文献3を参照のこと。)。
遺伝子の反復配列に起因する転写抑制を解除する方法としては、例えばtrichostatin A等のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤で細胞を処理する方法が知られている(非特許文献4を参照のこと。)。
本発明者は、上記のようなIR/MAR遺伝子増幅法における反復配列に起因する遺伝子発現抑制の問題点を解決する手段を見出した(特許文献3を参照のこと。)。特許文献3には、(a)IR/MARベクターおよび目的遺伝子を哺乳動物細胞に導入する際に、λ−ファージDNA等の10kbp以上のポリヌクレオチド、またはインシュレーター配列を含むポリヌクレオチドをコトランスフェクションする、(b)IR/MARベクターおよび目的遺伝子が導入された哺乳動物細胞を、漸増濃度の薬剤を含有する培地で培養して選抜する、(c)目的遺伝子の発現を誘導するプロモーター活性を、転写活性化因子を用いて向上させる、(d)IR/MAR遺伝子増幅法を用いて増幅した遺伝子領域を、Cre-LoxP Systemで染色体外に切り出す、(e)IR/MAR遺伝子増幅法により遺伝子増幅が起こった細胞を5-aza-2’-deoxycytidineで処理を行ないDNAのメチル化のレベルを低下させる、(f)IR/MAR遺伝子増幅法による遺伝子増幅がダブルマイニュート染色体上で起こっている上記哺乳動物細胞を選択するという手段が開示されている。
特開2003−245083号公報(公開日:平成15(2003)年9月2日) 特開2004−337066号公報(公開日:平成16(2004)年12月2日) 国際公開第2006/054561号パンフレット(国際公開日:2006年5月26日)
Noriaki Shimizu, et al. (2001) Plasmids with a Mammalian Replication Origin and a Matrix Attachment Region Initiate the Event Similar to Gene Amplification. Cancer Research vol.61, no.19, p6987-6990. Noriaki Shimizu, et al (2003) Amplification of plasmids containing a mammalian replication initiation region is mediated by controllable conflict between replication and transcription. Cancer Research, vol.63, no.17, p5281-5290. Shimizu, N., Hanada, N., Utani, K., and Sekiguchi, N. (2007). Interconversion of intra- and extra-chromosomal sites of gene amplification by modulation of gene expression and DNA methylation. Journal of cellular biochemistry 102, 515-529. McBurney, M. W. et al, Exp Cell Res (2002), vol 274, p1-8
本発明は、上記のようなIR/MAR遺伝子増幅法における反復配列に起因する遺伝子発現抑制の問題点を解決し得る、新たな手段を提供することを目的としている。
本発明者はIR/MAR遺伝子増幅法においてコピー数が増えても反復配列のために発現抑制されるという独自の問題点を解決するために、IR/MAR配列を持って自発的に遺伝子増幅し得るプラスミド(IR/MARベクター)をベクターとして用いた独自のスクリーニング方法によって検討した結果、ヒトの第2番染色体短腕16.1の遺伝子密度の低い領域に由来する3,271(bp)のヒトゲノム断片(以下、「B−3−31」という。)を見出すことに成功し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は以下の発明を包含する。
本発明は、哺乳動物細胞内で増幅された目的遺伝子の発現を高める方法であって、哺乳動物細胞内で機能する哺乳動物複製開始領域および哺乳動物細胞内で機能する核マトリックス結合領域を具備するベクターと、目的遺伝子と、下記(a)または(b)を含む発現促進ポリヌクレオチドとを、哺乳動物細胞に同時に導入する工程を含む方法である:
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(b)配列番号1に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加され、且つ増幅された目的遺伝子の発現を高める活性を有するポリヌクレオチド。
また、本発明において、上記哺乳動物複製開始領域が、c−myc遺伝子座、ジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座、およびβ−グロビン遺伝子座の複製開始領域のいずれか1つに由来するものであってもよい。
また、本発明において、上記核マトリックス結合領域が、Igκ遺伝子座、SV40初期領域、およびジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座の核マトリックス結合領域のいずれか1つに由来するものであってもよい。
また、本発明は、上記目的遺伝子と、上記ポリヌクレオチドとが、上記ベクターに含まれた状態で、哺乳動物細胞に導入することを特徴とする方法であってもよい。
また、本発明は、哺乳動物細胞内で増幅された目的遺伝子の発現を高めるためのキットであって、下記(a)または(b)を含む発現促進ポリヌクレオチドを少なくとも備えることを特徴とするキットである:
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(b)配列番号1に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加され、且つ増幅された目的遺伝子の発現を高める活性を有するポリヌクレオチド。
本発明のキットは、哺乳動物細胞内で機能する哺乳動物複製開始領域と哺乳動物細胞内で機能する核マトリックス結合領域とを具備するベクターをさらに備えていてもよい。
また本発明のキットにおいて、上記哺乳動物複製開始領域が、c−myc遺伝子座、ジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座、およびβ−グロビン遺伝子座の複製開始領域のいずれか1つに由来するものであってもよい。
また本発明のキットにおいて、上記核マトリックス結合領域が、Igκ遺伝子座、SV40初期領域、およびジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座の核マトリックス結合領域のいずれか1つに由来するものであってもよい。
また本発明のキットにおいて、上記ベクターは目的遺伝子が挿入されるベクターであり、上記発現促進ポリヌクレオチドは、上記ベクターに含まれていてもよい。
また本発明は、哺乳動物細胞内で機能する哺乳動物複製開始領域および哺乳動物細胞内で機能する核マトリックス結合領域を具備するベクターと、目的遺伝子と、下記(a)または(b)を含む発現促進ポリヌクレオチドとが導入されてなる哺乳動物細胞である:
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(b)配列番号1に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加され、且つ増幅された目的遺伝子の発現を高める活性を有するポリヌクレオチド。
また本発明の哺乳動物細胞において、上記哺乳動物複製開始領域が、c−myc遺伝子座、ジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座、およびβ−グロビン遺伝子座の複製開始領域のいずれか1つに由来するものであってもよい。
また本発明の哺乳動物細胞において、上記核マトリックス結合領域が、Igκ遺伝子座、SV40初期領域、およびジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座の核マトリックス結合領域のいずれか1つに由来するものであってもよい。
また本発明の哺乳動物細胞において、上記目的遺伝子と、上記発現促進ポリヌクレオチドとが、上記ベクターに含まれた状態で、哺乳動物細胞に導入されていてもよい。
また本発明は、上記本発明の哺乳動物細胞を用いた、目的タンパク質を生産する方法をも包含する。
本発明によれば、IR/MAR遺伝子増幅法によって形成される目的遺伝子の反復配列に起因する遺伝子発現抑制の問題点を解決することができ、所望のタンパク質を高発現させることが可能となるという効果を奏する。それゆえ本発明によれば、遺伝子増幅の手法により、有用タンパク質を大量に生産する系を樹立することができる。
B−3−31の塩基配列(3,271bp、配列番号1)を示す図である。 本発明の実施例において使用した各種プラスミドの構築手順を示す模式図である。 本発明の実施例において使用したプラスミドp△BM d2EGFP-Asc Iの構築手順を示す模式図である。 本発明の実施例において使用した大腸菌1次ゲノムライブラリーのプラスミドの構築手順を示す模式図である。 LibraryB-3 3926 31 3.0 kbpが導入されたCHO DG44細胞およびコントロールのベクターDNAが導入されたCHO DG44細胞のそれぞれのGFP発現強度を示すヒストグラムを重ねて表示したものであり、(a)(c)(e)はLibraryB-3 3926 31 3.0 kbpが導入されたCHO DG44細胞のGFP発現強度を示すヒストグラムを前面に表示した場合、(b)(d)(f)はコントロールのベクターDNAが導入されたCHO DG44細胞のGFP発現強度を示すヒストグラムを前面に表示した場合である。
<1.哺乳動物細胞内で増幅された目的遺伝子の発現を高める方法>
本発明の一実施形態は、哺乳動物細胞内で増幅された目的遺伝子の発現を高める方法(以下、適宜「本発明の方法」という。)に関する。本発明の方法は、哺乳動物細胞内で機能する哺乳動物複製開始領域および哺乳動物細胞内で機能する核マトリックス結合領域を具備するベクターと、目的遺伝子と、下記(a)または(b)を含む発現促進ポリヌクレオチドとを、哺乳動物細胞に同時に導入する工程を含むことを特徴としている。
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(b)配列番号1に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加され、且つ増幅された目的遺伝子の発現を高める活性を有するポリヌクレオチド。特に、本発明は培養細胞等を用いたEx vivoの系において好ましく実施され得る。
(1−1)発現促進ポリヌクレオチド
本発明の方法は、IR/MAR遺伝子増幅法によって目的遺伝子が高度に増幅されたにもかかわらず、目的遺伝子の発現量が必ずしも比例しない場合があるという課題を解決するための方法である。換言すれば、IR/MAR遺伝子増幅法において、目的遺伝子の発現量を向上するための方法である。上記の課題は、IR/MAR遺伝子増幅法によって目的遺伝子の反復配列が生じ、これに起因して目的遺伝子の発現抑制が起こると考えられた。本発明者が考案した独自のスクリーニング方法によりスクリーニングを行った結果、ヒトゲノムから目的遺伝子の発現を高める活性を備えるポリヌクレオチド「B−3−31」を見出すことに成功した。本発明の方法は、当該B−3−31を発現促進ポリヌクレオチドとして利用する。「発現促進ポリヌクレオチド」とは、増幅された目的遺伝子の発現を高める活性(「発現促進活性」ともいう。)を有するポリヌクレオチドを意味する。
B−3−31は、配列番号1に示される塩基配列からなる。よって本発明の方法において使用する発現促進ポリヌクレオチドの一実施形態としては、配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むものであるといえる。ただし、本発明の方法に使用する発現促進ポリヌクレオチドはこれに限定されるものではなく、増幅された目的遺伝子の発現を高める活性(「発現促進活性」ともいう。)を有するポリヌクレオチドであれば、配列番号1に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加されたポリヌクレオチド(すなわち「変異ポリヌクレオチド」。)であってもよい。上記「数個」とは、例えば30個以下、好ましくは15個以下、より好ましくは10個以下、最も好ましくは5個以下の塩基が置換、欠失、挿入もしくは付加されていることを意味する。
また配列番号1に示されている塩基配列を、クエリーとしてBLASTN 2.2.1などの相同検索プログラムを用いて、GenBankやEMBL、DDBJなどのデータベースに対して相同検索を行うことで得られた塩基配列からなるポリヌクレオチドを、本発明の方法において発現促進ポリヌクレオチドとして利用することは可能である。上記の変異ポリヌクレオチドまたは相同検索を行うことで得られたポリヌクレオチドと、配列番号1に示されるポリヌクレオチドとの相同性は、例えば、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がさらに好ましく、99%以上が最も好ましい。
B−3−31は、ヒトゲノムから見いだされたポリヌクレオチドであるが、本発明の方法に用いられ得る発現促進ポリヌクレオチドとしては、発現促進活性を有しているポリヌクレオチドであれば、ヒト由来に限定されるものではなく、サル、マウス、ラット、ハムスター、ウシ、ブタ、等の哺乳動物細胞由来であってもよい。
なお、あるポリヌクレオチドが発現促進活性(増幅された目的遺伝子の発現を高める活性)を有しているか否かは、当該ポリヌクレオチドをPCRや化学合成等公知の手段を用いて取得し、これを後述する実施例において検討したように、IR/MARベクター、目的遺伝子(実施例の場合はEGFP遺伝子(Enhanced Green Fluorescent Protein遺伝子))、および当該ポリヌクレオチドを、哺乳動物細胞(実施例の場合はCHO DG44細胞)に導入した場合の目的遺伝子の発現量と、当該ポリヌクレオチドを導入せずIR/MARベクターおよび目的遺伝子を導入した場合の目的遺伝子の発現量とを比較し、前者の発現量よりも後者の発現量が上回っていた場合に、当該ポリヌクレオチドが発現促進活性を有していると判断できる。
本発明の方法に用いられる発現促進ポリヌクレオチドとしては、配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドやその変異ポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドが用いられ得る。なお、当該ポリヌクレオチドが発現促進活性を有していることは言うまでもない。
上記「ストリンジェントな条件」とは、相同性が少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、最も好ましくは99%以上の時にハイブリダイゼーションが起こる得る条件を意味する。上記ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法のような周知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、また塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり(つまりハイブリダイズし難くなる)。例えば、42℃、6×SSPE、50%ホルムアミド、1%SDS、100μg/ml サケ精子DNA、5×デンハルト液(ただし、1×SSPE;0.18M 塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム、pH7.7、1mM EDTA。5×デンハルト液;0.1% 牛血清アルブミン、0.1% フィコール、0.1% ポリビニルピロリドン)が、ストリンジェントな条件の一例として挙げられる。
さらに本発明の方法に用いられる発現促進ポリヌクレオチドとしては、配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドやその変異ポリヌクレオチドの全長のポリヌクレオチドのみならず、これらのポリヌクレオチド断片が利用され得る。本発明の方法に利用するに当たり、当該ポリヌクレオチド断片が発現促進活性を有していることは言うまでもない。ポリヌクレオチド断片が発現促進活性を備えているか否かは、配列番号1にかかるポリヌクレオチドやその変異ポリヌクレオチドの断片を調製し、上述の実験により当該ポリヌクレオチド断片が発現促進活性を有しているかどうか確認すればよい。なお、本発明者の解析によれば、B−3−31には、Stress-Induced Duplex Destabilization (SIDD)とinverted repeatとが隣接して存在する。このような領域は、MAR活性を示す可能性が示唆されている。よって、この領域を少なくとも含むポリヌクレオチドであれば発現促進活性を有している可能性があると判断できる。
本発明の方法に用いられる発現促進ポリヌクレオチドを構成するポリヌクレオチドの鎖長は特に限定されるものではないが、特許文献3が10kbp以上のポリヌクレオチドを用いることを規定している為、これとの差別化のためには、上限として10kbp未満であるとことが好ましい。また発現促進ポリヌクレオチドを構成するポリヌクレオチドの鎖長の下限としては、発現促進活性を有する最小限の鎖長ということができる。
なお、本発明の方法に用いられる発現促進ポリヌクレオチドにかかるポリヌクレオチドは、その5’側または3’側には、クローニングのためのリンカーDNAや、マルチクローニングサイト等の制限酵素サイトにかかる塩基配列などが付加されていてもよい。
(1−2)IR/MARベクターおよび目的遺伝子
本発明にかかる方法は、上述の発現促進ポリヌクレオチドとともに、哺乳動物細胞内で機能する哺乳動物複製開始領域および哺乳動物細胞内で機能する核マトリックス結合領域を具備するベクター(「IR/MARベクター」という。)と、目的遺伝子とを、哺乳動物細胞に同時に導入する工程を含む方法である。
上記複製開始領域(IR)としては哺乳動物細胞内で機能するものであれば特に限定されるものではなく、c−myc遺伝子座、ジヒドロ葉酸リダクターゼ(以下、適宜「DHFR」という。)遺伝子座、β−グロビン遺伝子座等の複製開始領域が挙げられる。なおc−myc遺伝子座の複製開始領域については、例えば「McWhinney, C. et al., Nucleic Acids Res. vol. 18, p1233-1242 (1990) 」に記載されている。DHFR遺伝子座の複製開始領域については、例えば「Dijkwel, P.A. et al., Mol. Cell. Biol. vol.8, p5398-5409 (1988) 」に記載されている。β−グロビン遺伝子座の複製開始領域については、例えば「Aladjem, M. et al., Science vol. 281, p1005-1009 (1998) 」に記載されている。
また核マトリックス結合領域(MAR)としては、哺乳動物細胞内で機能するものであれば特に限定されるものではなく、Igκ遺伝子座、SV40初期領域、ジヒドロ葉酸リダクターゼ(DHFR)遺伝子座等の核マトリックス結合領域に由来する配列が挙げられる。なお、Igκ遺伝子座の核マトリックス結合領域については、例えば「Tsutsui, K. et al., J. Biol. Chem. vol. 268, p12886-12894 (1993) 」に記載されている。SV40初期領域の核マトリックス結合領域については、例えば「Pommier, Y. et al., J. Virol., vol 64, p419-423 (1990) 」に記載されている。DHFR遺伝子座の核マトリックス結合領域については、例えば「Shimizu N. et al., Cancer Res. vol. 61, p6987-6990 」に記載されている。
本発明の方法において利用されるIR/MARベクターには、IRおよびMARの他、適宜目的に応じて、大腸菌内でクローニングを行なうために必要な配列、あるいは、マーカータンパク質として薬剤耐性遺伝子(ブラストサイジン抵抗性遺伝子、ネオマイシン抵抗性遺伝子、ヒグロマイシン抵抗性遺伝子、等)またはEGFP遺伝子等の蛍光タンパク質遺伝子等を選択マーカーとして有してもよい。これらの選択マーカーを指標としてIR/MARベクターが導入された細胞を選別できる。
一方、本発明の方法において利用される「目的遺伝子」とは、発現させるべきタンパク質(「目的タンパク質」という。)をコードするポリヌクレオチドのことである。よって、目的遺伝子は、特に限定されるものではなく、所望のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを適宜選択の上、採用すればよい。当該ポリヌクレオチドは、その塩基配列情報を元にPCR等の公知の技術を用いて取得すればよい。
目的遺伝子は、プロモーターに制御可能に連結されていることが好ましい。上記プロモーターは、導入される哺乳動物細胞において機能するものであれば特に限定されるものではなく、転写因子等による所定の操作によって、プロモーターの転写活性が活性化または不活性化されるプロモーター(「転写活性調節型プロモーター」という。)であっても、恒常的に転写活性が活性化されている恒常型プロモーターであってもよい。「転写活性調節型プロモーター」は、上記特性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、TREプロモーター(クロンテック社製)、T−REXプロモーター(インビトロジェン社製)等の市販品が本発明にかかる方法において利用可能である。恒常型プロモーターとしては、CMVプロモーター、SV40初期領域由来プロモーター(SV40プロモーター)、SRalphaプロモーター(SRαプロモーター)、LTRプロモーター、MMTVプロモーター等が利用可能である。
目的遺伝子は、その他、ターミネーター等目的遺伝子の発現に必要なポリヌクレオチドや、制限酵素サイトや薬剤耐性遺伝子等のクローニングに必要なポリヌクレオチドが含まれていてもよい。
(1−3)導入工程
本発明にかかる方法は、IR/MARベクターと、目的遺伝子と、発現促進ポリヌクレオチドとを、哺乳動物細胞に同時に導入する工程(「導入工程」という。)を含む方法である。
ここで、上記哺乳動物細胞としては、特に限定されるものではなく、各種哺乳動物由来の細胞(例えば、各種哺乳動物由来の培養細胞)が本発明において利用され得る。例えば、チャイニーズハムスター由来のCHO細胞や、各種腫瘍細胞等が挙げられる。CHO細胞としては、例えば、CHO−K1細胞(ATCC CCL-61、RIKEN RCB0285、RIKEN RCB0403等)や、CHO DG44細胞が挙げられる。CHO細胞は、現在、医薬等の有用タンパク質の実生産に用いられており、安全性が確認されている細胞であり、本発明の方法が適用される哺乳動物細胞としては好ましい。ただし、遺伝子増幅効率が高いという点では、無限増殖能を有する腫瘍細胞が好ましい。上記腫瘍細胞としては、例えば、HeLa細胞(入手先:例えば、ATCC CCL-2、ATCC CCL-2.2、RIKEN RCB0007、RIKEN RCB0191等)、ヒト大腸がんCOLO 320DM細胞(入手先:例えば、ATCC CCL-220)、ヒト大腸がんCOLO 320HSR細胞(入手先:例えば、ATCC CCL-220.1)、NS0細胞(入手先:例えば、RIKEN RCB0213)等が挙げられる。なおヒト大腸がんCOLO 320DM細胞については、「Shimizu, N., Kanda, T., and Wahl, G. M. Selective capture of acentricfragments by micronuclei provides a rapid method for purifying extrachromosomally amplified DNA. Nat. Genet., 12: 65−71, 1996.」を参照のこと。
なお、導入工程は、IR/MARベクターと、目的遺伝子と、発現促進ポリヌクレオチドとが同時に哺乳動物細胞へ導入される態様であれば特に限定されるものではなく、IR/MARベクターに、目的遺伝子と発現促進ポリヌクレオチドと挿入して同一の遺伝子構築物として導入してもよいし、それぞれが別体の遺伝子構築物として導入してもよい。また上記3つエレメントの内の2つのエレメントが同一の遺伝子構築物で、残り一つのエレメントが別体の遺伝子構築物として導入してもよい。遺伝子構築物の形態については、プラスミドであってもコスミドであってもよい。なお実施例では、全てのエレメントが同一の遺伝子構築物として導入された場合の結果のみが示されているが、各エレメントがそれぞれ別体の遺伝子構築物として導入しても遺伝子増幅が起こる点については、IR/MAR遺伝子増幅法の特徴点として知られている事実である(例えば、特許文献1等を参照のこと)。よって、実施例において実験するまでもなく、当業者であれば、各エレメントがそれぞれ別体の遺伝子構築物として導入しても本発明の方法の効果が得られることを理解する。
本発明の方法における導入工程は、特に限定されるものではなく、リポフェクション、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法等公知の方法を適宜選択の上、利用可能である。またその詳細な条件については、導入される哺乳動物や、各エレメント等に応じて適宜最適な条件を検討の上、採用すればよい。
(1−4)その他の工程
なお本発明にかかる方法には、上記導入工程の他に、目的遺伝子とベクターと発現促進ポリヌクレオチドとが導入された哺乳動物細胞を分離する工程(以下、「選抜工程」という)や、当該選抜工程によって選抜された哺乳動物細胞(すなわち形質転換細胞)を培養する培養工程(以下、「培養工程」という)が含まれていてもよい。また、上記培養工程によって生産された目的タンパク質を精製する方法(以下、「精製工程」という)が含まれていてもよい。すなわち本発明は、目的遺伝子とベクターと発現促進ポリヌクレオチドとが導入された哺乳動物細胞を用いた目的タンパク質を生産する方法をも包含する。
上記「選抜工程」は、目的遺伝子とベクターと発現促進ポリヌクレオチドとが導入された哺乳動物細胞を分離する工程である。より詳細には、選抜工程は、目的遺伝子とベクターと発現促進ポリヌクレオチドとが導入されていない哺乳動物細胞、および目的遺伝子とベクターと発現促進ポリヌクレオチドとが導入された哺乳動物細胞が含まれる細胞の多クローン性集団から後者の細胞を選抜する工程である。かかる選抜工程によって、哺乳動物細胞に導入された目的遺伝子を高発現し得る哺乳動物細胞を選抜することができる。
上記選抜工程の具体的方法は特に限定されるものではないが、例えば、目的遺伝子とベクターと発現促進ポリヌクレオチドとを哺乳動物細胞へ導入する際に用いた遺伝子構築物に薬剤耐性遺伝子が含まれている場合、その薬剤耐性を利用して目的遺伝子とベクターと発現促進ポリヌクレオチドとが導入された哺乳動物細胞を選抜すればよい。また、PCR法やサザンブロット法によって、哺乳動物細胞に含まれる目的遺伝子、IR/MARベクター、または発現促進ポリヌクレオチド由来のポリヌクレオチドを検出することによっても選抜工程を行い得る。上記薬剤耐性、PCR法、サザンブロット法の具体的な方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が適宜利用され得る。
上記「培養工程」は、上記選抜工程によって既に選抜された哺乳動物細胞を培養する工程である。かかる培養工程によって、目的遺伝子を哺乳動物細胞において高発現させることができる。上記培養工程の具体的方法は特に限定されるものではなく、培養する哺乳動物細胞に最適な条件を検討の上、適宜採用すればよい。
上記「精製工程」は、上記培養工程によって生産された目的タンパク質を精製する方法である。本精製工程におけるタンパク質精製の具体的方法としては、例えば、哺乳動物細胞をPBS(Phosphate Buffered Saline)等の緩衝溶液に懸濁した後、ホモジェナイザーまたは超音波等で細胞を破砕し、遠心分離をして上清を回収する。上記緩衝溶液には、タンパク質の可溶化を促進するための界面活性剤や、タンパク質の立体構造を安定化するための還元剤、タンパク質の分解を防止するためのプロテアーゼインヒビターを適宜添加することもできる。上記界面活性剤としては、CHAPS(3-[(3-cholamidopropyl)-dimethylammonio-1-propanesulfonate]、Triton X-100、Nikkol、n−オクチルグリコシド等を利用することができる。また、上記還元剤としては、DTT(dithiothreitol)、DET(dithioerythritol)等を利用することができる。また、上記プロテアーゼインヒビターとしては、アプロチニンや、ロイペプチンを利用することができる。
上記上清から、目的タンパク質をアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ろ過クロマトグラフィー等のカラムクロマトグラフィーを用いて、精製することができる。また、精製されたタンパク質溶液を適当な緩衝液に透析することで不要な塩を除去することもできる。上記のタンパク質の精製工程は、タンパク質の分解を抑えるために低温条件下で行われることが好ましい。特に4℃下で精製工程が行われることが好ましい。なお、上記精製工程の具体的方法は、この限りではなく、公知の方法を適宜利用され得る。
<2.哺乳動物細胞内で増幅された目的遺伝子の発現を高めるためのキット>
上述した発現促進ポリヌクレオチドを少なくとも含むことで、哺乳動物細胞内で増幅された目的遺伝子の発現を高めるためのキット(「本発明のキット」という。)を構成することができる。本発明のキットによれば、IR/MAR遺伝子増幅法によって高度に増幅された目的遺伝子の発現量を高めることができる。発現促進ポリヌクレオチドに関する説明については、前項の説明を援用する。なお、本発明に係るキットは、遺伝子増幅によって生じた反復配列が原因で起こる発現抑制を回避または軽減することによって、目的遺伝子の発現を高めることを原理としている為、IR/MAR遺伝子増幅法のみならず、他の遺伝子増幅法においても奏功する可能性が有る。
本発明のキットは、特にIR/MAR遺伝子増幅法に好ましく適用され得るため、本発明のキットには、発現促進ポリヌクレオチドに加え、IR/MARベクターが含まれていてもよい。IR/MARベクターの説明については、前項の説明を援用する。
目的遺伝子としては、本発明のキットの使用者が適宜選択し得る為、本発明のキットには目的遺伝子は含まれていなくてもよい。ただし、試行用の目的遺伝子サンプルとして、EGFP遺伝子等の公知のタンパク質をコードする遺伝子が含まれていてもよい。
本発明のキットにIR/MARベクターが含まれている場合、IR/MARベクター上には発現促進ポリヌクレオチドが挿入されていてもよいし、IR/MARベクターと発現促進ポリヌクレオチドとが別体となっていてもよい。
本発明のキットには、形質転換に必要な機器や試薬、宿主となる哺乳動物細胞、その他取扱説明書などがさらに含まれていてもよい。
<3.本発明の哺乳動物細胞>
本発明は、IR/MARベクターと、目的遺伝子と、発現促進ポリヌクレオチドとが導入されてなる哺乳動物細胞をも包含する。当該哺乳動物細胞は、本発明の方法が施された哺乳動物細胞の形質転換体であり、高度に増幅された目的遺伝子が高発現し得る細胞である。当該哺乳動物細胞を培養することによって、目的タンパク質を大量に生産することが可能となる。IR/MARベクター、目的遺伝子、発現促進ポリヌクレオチド、哺乳動物細胞等の説明については、前項の説明を援用する。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
<1.方法>
(1)プラスミドの構築
本実施例に用いたプラスミド名と構築法を示す。全てのプラスミドは、HighPure Plasmid Midiprep Kit(Invitrogen社)を用いて、推奨されるプロトコルに従って精製されたものが使用された。
(1−1)pSFVdhfr、pSFV-V、pSFV-V △BN
pSFVdhfr(10,986bp、図2参照のこと。)はJohn Kolman博士とGeoffrey M.Wahl博士(The Salk Institute, CA)から供与された。このプラスミドは、チャイニーズハムスターDHFR遺伝子座由来の4.6kbpのIRを持つ。このIRはDHFR遺伝子座内で優先的に複製が開始するOriβ領域に由来する(参考文献:Altman, A.L., and Fanning, E. (2001). Molecular and cellular biology21, 1098-1110.、およびPelizon, C., Diviacco, S., Falaschi, A., and Giacca, M. (1996). Molecular and cellular biology 16, 5358-5364.)。また上記IRは、その中にMAR活性を示す配列が存在する(参考文献:Shimizu, N., Miura, Y., Sakamoto, Y., and Tsutsui, K. (2001). Cancer research 61, 6987-6990.)。このプラスミドは、ブラストサイジン抵抗性遺伝子(BSR)およびヒグロマイシン抵抗性遺伝子(Hyg)の2つの薬剤耐性遺伝子を持つ。
pSFVdhfrからDHFR遺伝子由来の配列をNotI消化により除いたものがpSFV-V(6,335bp、図2参照のこと。)である。また、pSFV-VからHyg領域をBamHIおよびNruI切断により除いて構築したプラスミドがpSFV-V △BN(4,083bp、図2参照のこと。)である。
(1−2)p△BM-MCS
p△BM-MCSは、以下のようにして構築された(参考文献:Harada, S., Uchida, M., and Shimizu, N. (2009).J Biol Chem 284, 24320-24327.、図2参照のこと。)。
すなわち、pSFVdhfrをBamHIおよびMluIで切断することでHyg遺伝子領域を除き、この位置に合成マルチクローニングサイト(MCS)2本鎖DNAをコヒーシブエンドライゲーションで挿入することにより、p△BM-MCS(8,824bp)が構築された。MCSの配列は、IR/MAR下流よりBamHI−KpnI−AscI−SalI−SwaI−AsisI−SbfI−BamHI−MluIと続く62bpの配列からなる。
(1−3)p△BM-d2EGFP
p△BM-d2EGFPは以下のようにして、構築された(参考文献:Harada, S., Uchida, M., and Shimizu, N. (2009).J Biol Chem 284, 24320-24327.、図2参照のこと。)。
まずp△BM-MCSをそのMCS内に存在するAscIおよびAsisIで切断した。一方で、pCMV-d2EGFP(Clontech社)のd2EGFP発現カセット部分をPvuIおよびBssHIIで切り出した。AscIとPvuI、AsisIとBssHII断片とは、それぞれコヒーシブである。そこで、d2EGFP 発現カセットをp△BM-MCS内にコヒーシブエンドライゲーションにより挿入することで、p△BM-d2EGFP(11,169bp)が構築された。
(1−4)p△BM d2EGFP-Asc I
p△BM d2EGFP-Asc Iは、以下のようにして構築された(図3を参照のこと。)。
まずp△BM d2EGFPをそのMCS内に存在するMluIで切断した。この直鎖状DNAと、図3に示す合成リンカーDNA(センス鎖:配列番号2およびアンチセンス鎖:配列番号3)とを、In-Fusion(登録商標)酵素(タカラバイオ株式会社)で連結することにより、p△BM d2EGFP-Asc I(11,213bp)は構築された。ここで用いられた合成リンカーは、中央にAscIサイトを持ち、その両端に、ヒトゲノム断片の両端に付与した配列と同じ15塩基配列、MluIサイト、およびp△BM d2EGFPをMluIで切断した両末端の塩基配列からなる。
(2)動物細胞株と、その培養方法
(2−1)COLO320DM細胞株:神経内分泌細胞由来ヒト大腸がん細胞株(ATCC CCL−220)。COLO 320DM細胞は、がん遺伝子c−mycを含む単一の増幅単位が、DMの形態で、約62倍に増幅した細胞である。増幅遺伝子は分裂期中期染色体標本中に見られる平均して43.6±27.6個のDM上に位置している(参考文献:Alitalo, K., Schwab, M., Lin, C.C., Varmus, H., and Bishop, J.M. (1983). Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 80, 1701-1711.、およびShimizu, N., Kanda, T., and Wahl, G.M. (1996). Nat Genet 12, 65-71.)。
この細胞株の培養にはCOインキュベーター(MCO-17AIC、三洋電機株式会社製)を用い、培養温度は37℃、CO濃度は5%(v/v)に設定した。培養液にはRPMI 1640 培地(日水製薬製)を用い、規定通り溶解後オートクレーブ滅菌(120℃、15分)を行った。その後、炭酸水素ナトリウム(ナカライテスク株式会社)を適量加え、L−グルタミン(片山化学工業株式会社)を0.03%(w/v)、FCS(Fetal Calf Serum;Euroclone社)を10%(w/v)となるように加えて使用した。約3日ごとに継代培養を行った。
(2−2)CHO DG44細胞株:CHOはChinese Hamster Ovaryの略でチャイニーズハムスターの卵巣から樹立された正常不死化線維芽細胞株である。CHO DG44細胞は、ガンマ線を使用した突然変異誘導でdhfr遺伝子座を完全に除去したCHO細胞である(参考文献:Urlaub, G., and Chasin, L.A. (1980). Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 77, 4216-4220.)。Dhfr(ジヒドロ葉酸還元酵素;dihydrofolate reductase)はグリシン、プリン、チミジル酸の合成のための必須酵素である。この細胞株の細胞培養にはCOインキュベーター(MCO-17AIC、三洋電機株式会社製)を用い、培養温度は37℃、CO濃度は5%(v/v)に設定した。培養液にはHam’s F-12培地(和光純薬工業株式会社製)を用いた。FCSを10%(w/v)となるように加えて使用した。細胞の継代は、PBS(日水製薬製)とTrypLETM Express(Life Technologies Corporation)を用いて約3日ごとに行われた。
(3)1次ゲノムライブラリーの構築
ベクタープラスミドp△BM d2EGFP-Asc Iに、ランダムに断片化したヒトゲノムDNAを挿入することで、1次ゲノムライブラリーを構築した。以下にその工程を記す。
(3−1)ヒトゲノムDNAの抽出
対数増殖期のヒトCOLO 320 DM細胞培養液を50mL遠心管(住友ベークライト社製)に移し、遠心分離を行った(TSローター、1,000rpm、5分間、室温、トミー精工LC06-SSp遠心機、以下同じ。)。上清を除いた後、PBS(−)50mLで再懸濁し、遠心分離を行うという遠心洗浄を2回繰り返した。10mLのDNA lysis buffer(50mM Tris-Cl, pH 8.0、1 mM EDTA-Na, pH8.0、0.5 % SDS)を、細胞の沈殿に加えて穏やかに混合した。続いて、RNase A (シグマ−アルドリッチ社)を100μg/mLの濃度で37℃、1時間処理することによりRNAを消化した後、Proteinase K (シグマ−アルドリッチ社)を100μg/mLの濃度で50℃、一晩処理した。その溶液を1時間以上かけてフェノール処理し、フェノール/クロロホルム処理を2回(1時間および30分間)行った後、エタノール沈殿法によってDNAを回収した。これにTEを1mL加え、DNA塊が融解するまで50℃で加温し、融解後4℃で保存した。
(3−2)ヒトゲノムDNAの断片化
ヒトゲノム断片をベクタープラスミドに組み込むため、予めヒトゲノムDNAを超音波処理により、ランダムに1,000〜3,000bp程度に断片化した。
まず、ヒトCOLO 320DM細胞から抽出したDNAをTEで希釈し、液量500μL、濃度100μg/mLに調製した。これをEpiShearTM Probe Sonicator (ACTIV MOTIF社)を用いて、1,000〜3,000bpのDNA断片が最も多く得られる条件(Duty=30、Output=2、15秒間)で超音波処理を行った。
(3−3)Polyethylene Glycol(PEG)沈殿
高分子量のポリエチレングリコールを添加して遠心すると、短いDNAは沈殿せずに長いDNAのみを沈殿させることが出来る。前項で断片化したDNA50μgをTEに溶かし全量を200μLとした。これに20%(w/v)のPEG8000(Powder Molecular Biology Grade, Promega社)/30mM MgCl溶液100μLを混ぜ(終濃度約6.7% PEG、10mM MgCl)、ボルテックスミキサーにかけた。その後、ただちに15,000rpm、室温、10分間、遠心分離を行い、上清を除いた。70%(v/v)エタノールを300μL加え、15,000rpm、室温で5分間遠心分離を行い、上清を除いてドライアップした後、20μLの超純水に溶かした。この操作により約600bp以下のサイズのヒトゲノム断片を除いた。
(3−4)DNA末端の平滑化
ランダムに断片化されたヒトゲノムDNAの末端を、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を持つKOD DNA Polymerase(東洋紡株式会社)を用いて平滑化(Blunting)した。すなわち、10×KOD Buffer (東洋紡株式会社)5.0μL、2mM dNTP(東洋紡株式会社)5.0μL、25mM MgCl 2.0μL、KOD DNA polymerase (2.5U/mL) 2.5μLを、前項でPEG沈殿を行なったDNA断片溶解液に加え、超純水を加えて全量50μLにメスアップした。この溶液を72℃で5分間反応させ、DNA末端を平滑化した。
(3−5)Asc I-S/Asc I-AS アニーリングによるリンカーの作製
ベクタープラスミド(p△BM d2EGFP-Asc I)をAsc Iで切断した時の末端15塩基対と相同な2本鎖DNAを合成した。すなわち、AscI-S鎖(5'-aagcagtggtatcaaggcgcgcc-3':配列番号4)およびAscI−AS鎖(3'-ggcgcgccttgataccactgcttac-5':配列番号5)の各10pMの溶液を100μLずつ混合し、これに5M NaCl 4μLを加え、95℃、10分間、熱変性した後、30秒毎に0.5℃ずつ温度を低下させ、12℃まで反応さることにより、リンカーDNA(AscI−S/AscI−AS リンカーDNA)を作製した。
(3−6)リンカーライゲーション反応
前項にて作製したリンカーDNAを、ヒトゲノム断片の末端にライゲーションした。すなわち、Bluntingを行ったヒトゲノム断片と作製したリンカーDNAとを、ヒトゲノム断片:リンカーDNAのモル比が1:1000で全量100μLになるように溶液を調製した。この溶液にLigation high(東洋紡株式会社)を50μL加え、16℃で1時間反応させた。その後、PCR精製カラム(Roche High pure PCR cleanup micro kit)を用いて付属のプロトコル通りにDNA溶液を精製し、さらに、PEG沈殿(終濃度10%(w/v))を行うことで余分なリンカーDNAを除去した。
(3−7)In-Fusion反応と大腸菌1次ゲノムライブラリーの構築
リンカーDNAを付加したヒトゲノム断片とAscIで切断した直鎖状ベクターp△BM d2EGFP-Asc IをIn-Fusion(登録商標) HD Cloning Kit(タカラバイオ株式会社)を用いて連結した(図4を参照のこと。)。その後、In-Fusion反応液で大腸菌DH5α株のコンピテントセルを形質転換し、Ampicillin sodium salt(ナカライテスク株式会社)100μg/mLを含むLB寒天培地上にまき広げて37℃で一晩培養した。多数の異なる大きさのヒトゲノム断片を含む大腸菌コロニーから成る、大腸菌1次ゲノムライブラリーを得た。
(3−8)コロニーPCRによるヒトゲノム領域の増幅
各ライブラリーで、コロニーごとの挿入ヒトゲノム断片の鎖長を確認するため、ヒトゲノム断片が挿入された領域がPCRで増幅されるように、ヒトゲノム断片にライゲーションしたリンカーDNAの配列とアニールするようなプライマー(in-fusion AscI−S:5'-aagcagtggtatcaagg-3':配列番号6)を設計した。このプライマーと Blend Taq(登録商標) -Plus-(東洋紡株式会社)を使用して、各大腸菌1次ライブラリーについてコロニーPCRを行った。PCR反応液10μLは1×Blend Taq(登録商標) Buffer(東洋紡株式会社)、200μM dNTPs(東洋紡株式会社)、0.25units Blend Taq(登録商標) -Plus-(東洋紡株式会社)、2pMプライマーを含む。大腸菌コロニーのピックには200μL ピペットチップ(WATSON社)を用いた。チップの先端部でシングルコロニーをピックアップし、PCR反応液に浸すことで、菌体内で複製されたプラスミドを反応液内に溶かし出し、PCRの鋳型とした。PCR反応条件は、変性を94℃、30秒間、アニーリングを59℃、30秒間、伸長を72℃、2分間とし、35サイクル行った。反応産物は、1.0%アガロースゲルで100V、30分間、アガロースゲル電気泳動することで解析した。
(3−9)ライブラリープラスミドの回収
10cm dishのLB寒天培地上の大腸菌コロニーに、プレート1枚あたりLB液体培地を10mL加え、コンラージ棒を使用して掻き取り、PureLinkTM Hipure Plasmid Midiprep Kit(Invitrogen社)を用いて付属のプロトコルに従いプラスミドDNAを精製した。その後、大腸菌プレート3枚から精製したプラスミドDNAあたり、TE 100μLに溶解した。
(4)哺乳動物細胞の形質転換
全ての形質転換には、Lipofectamine(登録商標) 2000 (Invitrogen社)を用いて、リポフェクション法により行った。初めに、対数増殖期にあるCHO DG44細胞(4.0×10 cells/mL、2mL)を、3cm dish(住友ベークライト株式会社)に植え継ぎ、COインキュベーター内で1日培養した。次にOpti−MEM(Life Technologies社)250μLに対し、導入するプラスミドDNA(4.0μg)を加え、ピペッティングにより混合して「DNA希釈液」を調製した。10.5μLのLipofectamine(登録商標)2000と262.5μLのOpti-MEMとを混ぜ、ピペッティングした後、5分間静置し、「Lipofectamine(登録商標)希釈液」を調製した。Lipofectamine(登録商標)希釈液 260μLをDNA希釈液に加え、ピペッティング操作でよく混合した後、20分間静置した。この溶液を培養しておいた細胞に全量加え、4時間後に新鮮なF−12培地(10%(w/v)FBSを含む)と入れ替えた。さらに翌日(トランスフェクション1日後)、細胞を10cm dish(住友ベークライト株式会社)にスケールアップし、全量10mLとした。さらに、その翌日(トランスフェクション2日後)に Blasticidin S Hydrochloride(フナコシ株式会社)を終濃度10μg/mLで加え、形質転換された細胞を選択した。その後、細胞がコンフルエントになったら植え継ぎ、ブラストサイジンによる薬剤選択圧を終濃度100μg/mLに上げて培養した。増殖の程度を見ながら、培地を一部交換して培養を続け、約4週間培養することで安定した形質転換体を得た。
(5)大腸菌1次ゲノムライブラリーのスクリーニング
(5−1)FACS AriaによるGFP高発現細胞のソーティング
FACS(Fluorescence activated Cell Sorter)は、一点に集められたレーザー光を、フローセル中を通過する細胞に照射し、そこから生じる散乱光と、蛍光を同時に測定する。加えて、その情報に基づき特定の細胞だけを、生きたまま分取することが可能である。
対数増殖期にある安定した形質転換細胞を細胞培養フラスコ(Orange Scientific社)で培養した。これらについて、FACS Aria(Becton, Dickinson and Company)を用いてGFP発現強度を解析し、発現上位0.1%〜2.0%の細胞を、接着細胞用マルチプレート96 F(住友ベークライト株式会社)に1ウェル当たり1〜10個ずつソートした。96ウェル プレートには、新鮮なF−12倍地とCHO DG44細胞を培養したConditioned Mediumとを7:3の割合で混合し、ブラストサイジンおよびペニシリンを10μg/mLになるように、各ウェルに100μLずつ前もって加えた。分取した細胞をCOインキュベーター内で、37℃で培養した。
(5−2)蛍光顕微鏡観察によるGFP高発現細胞の選別
96ウェルプレートにソートした細胞を、培地が蒸発してしまわないようにF−12培地(10μg/mLのブラストサイジンを含む)を加えて3〜4週間培養した。その後、蛍光顕微鏡を用いて各細胞コロニーのGFP発現を観察し、特に発現の強い細胞コロニーを24ウェルプレートにスケールアップし、更に1週間程度培養した。再び蛍光顕微鏡で各細胞コロニーのGFP発現を観察し、発現の特に強い細胞については個別に細胞を回収し、比較的弱い細胞については10ウェル程度の細胞をまとめて回収した。
(5−3)細胞からのDNA抽出
Dishから剥がした細胞を遠心分離(TSローター、1000rpm、5分、室温、トミー精工LC06-SSp遠心機、以下同じ。)して沈殿とした後、上清を除き、回収したときの培地と等量のPBS(−)を加えて、遠心することによる遠心洗浄を2回繰り返した。細胞濃度が2×10 cells/mLとなるようにlysis buffer(65mM Tris HCl, pH8.8、16.6mM ammonium sulfate、1mM mercaptoethanol、6.7mM EDTA、0.5% TritonX-100)を加え、Proteinase Kを終濃度0.06mg/mLとなるように加えた。ウォーターバスで50℃、1時間以上加温し、その後、94℃で12分間加温して1.5mLチューブに移し、10,000g、3分間、室温で遠心分離を行い、上清を回収して4℃で保存した。
(6)2次ゲノムライブラリーの構築
前項で抽出した1次ゲノムライブラリー導入CHO DG44細胞のDNAを鋳型として、PCR法によりヒトゲノム断片を増幅した。この時プライマーとしてin-fusion AscI−Sを使用した。PCR反応条件は、変性を94℃、30秒間、アニーリングを59℃、30秒間、伸長を72℃、2分間とし、30サイクル行なった。PCR産物と、AscIで切断した直鎖状ベクターp△BM d2EGFP-Asc IとをIn-Fusion反応で連結した。その後、In-Fusion反応液で大腸菌コンピテントセルDH5αを形質転換し、大腸菌2次ゲノムライブラリーを構築した。そして、大腸菌1次ライブラリーと同じようにコロニーPCR法により挿入ヒトゲノム断片の鎖長と割合を計測した。
大腸菌1次ライブラリーと同じ手法で、大腸菌2次ライブラリーからプラスミドDNAを回収し、CHO DG44細胞へのトランスフェクションを行い、薬剤選択を経て安定した形質転換細胞を獲得した。
(7)フローサイトメーターによる解析
(7−1)細胞の調製
対数増殖期にある細胞培養液5mLを15mL容の遠心管に回収し、遠心して上清を除き、PBS 2mLで懸濁した。測定を行うまで細胞懸濁液を氷中で保存し、測定直前に5mL容のポリスチレンチューブ付きセルストレーナー(Becton, Dickinson and Company)に通して細胞凝集塊を除いた。
(7−2)FACS Caliburを用いたGFP発現強度の計測
Becton Dickinson社のFACS Caliburを使用し、Cell Quest Pro Softwareを用いて細胞あたりの蛍光強度を測定した。細胞の大きさ(前方散乱光 forward scatter、FSC)、内部構造(side scatter、SSC)を測定し、この情報をもとに生細胞についてのみゲートをかけた。ゲートをかけた20,000の細胞集団について、GFPの蛍光強度を定量した。測定条件は下記の通り。
測定条件;
Detectors/Amps:
Parameter P1;Detector:FCS、Voltage:E00、AmpGain:1.50、Mode:Lin、
Parameter P2;Detector:SSC、Voltage:350、AmpGain:1.35、Mode:Lin、
Parameter P3;Detector:FL1、Voltage:600、AmpGain:1.00、Mode:Log。
(8)陽性2次ライブラリーを構成するプラスミドのクローン化
再現性良くGFP高発現を示すライブラリーのプラスミドDNAで、大腸菌コンピテントセルSURE2株(Agilent Technologies社)を形質転換し、コロニーを形成させた。SURE2はこれまで用いてきた大腸菌DH5αのコンピテントセルに比べて、反復配列(Inverted Repeat)や、Z−DNAなどの二次構造を作りやすい不安定な配列をもつDNAのクローニングに適したコンピテントセルである。Tks Gflex(登録商標) DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社)を用いたコロニーPCR法により、各大腸菌コロニーのヒトゲノム断片の有無、及びその鎖長を確認した。PCR反応液10μLは1×Tks Gflex(登録商標) DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社)、2× Gflex(登録商標) PCR Buffer(Mg2+、dNTP plus)(タカラバイオ株式会社)、2pM Primer (in-fusion AscI-S)を含む。PCR反応条件は(3−8)の項で示した条件と同条件で行った。さらに、同じ鎖長のPCR産物を区別するために、4塩基認識制限酵素Sau3AI(タカラバイオ株式会社)で37℃、90分間処理した後、電気泳動で解析することも行った。このようにして単離した大腸菌を、アンピシリン 100μg/mLを含むLB液体培地50mL、37℃、140rpmの条件で12時間、振盪培養を行った。大量培養した大腸菌はPureLinkTM Hipure Plasmid Midiprep Kit(Invitrogen社)を用いて付属のプロトコルに従い精製を行った。精製したプラスミドはオートクレーブ・フィルター滅菌済みTE 100μLに溶解し、4℃で保存した。
(9)ヒトゲノムDNAの塩基配列決定
(9−1)DNAシークエンス反応
4種類の蛍光色素で標識されたddNTPを含むDNA合成系(Dye Terminator法)を利用して、標識されたDNAフラグメントを内径50μmのキャピラリー管の中で電気泳動を行い、A(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)それぞれの蛍光をCCDカメラで検出し、塩基配列を読み取った。
シークエンス用試料の調製にはBigDye(登録商標) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied biosystems社)を用いた。反応溶液は、BigDye(登録商標) Terminater mix 1.0μL、5× Dilution Buffer 3.5μL、鋳型DNA 200ng、primer 3.2pmol、脱イオン水で20μLにすることで調製された。シークエンス反応は、96℃、1分間後、変性を96℃、10秒間、アニーリングを50℃、5秒間、伸長を60℃、4分間行った。シーケンス産物に、125mM EDTA 5μLおよび100%(v/v)エタノール60μLを加えて混合し、室温に15分間静置後、遠心分離(15,000rpm、室温、20分間)を行って、上清を除いた。得られた沈殿を70%(v/v)エタノール100μLで遠心洗浄し(10分間)、上清を除いた。得られた沈殿を風乾し、HiDiTMホルムアミド10μLを加えてピペッティングで溶解した。95℃、2分間変性し、即座に氷中に移した。このようにして精製した試料を、ABI PRISM(登録商標) 310 Genetic Analyzer(Applied biosystems社)を用いて解析し、塩基配列を決定した。(3−8)の項で構築したPrimer in-fusion AscI−Sでは、1種類のプライマーでヒトゲノム断片の両方からDNA伸長が起こるため、シークエンス解析には用いることができない。そこで、ゲノム挿入領域からそれぞれ50bp程度離れた位置にプライマーを構築し、シークエンスに使用した。
ヒトゲノムを挿入していないp△BM d2EGFP Asc Iを鋳型としたPCRでプライマーに、GFP Cter Asc1 PCR S(5'-acgatcgccctgcagggga-3':配列番号7)およびAsc1 PCR AS(3'-aattcgaacacgcagatgcag-5':配列番号8)を用いた場合には135bp、primer F BMd2E long(5'-tatgcagtgctgccataacc-3':配列番号9)およびprimer R BMd2E long(3'-ggtgtccccggaagaaata-5':配列番号10)を用いた場合にには268bpの断片が増幅される。従って、シークエンスで得られた配列を解析に用いる際には、これらの配列を除かなければならない。
(9−2)塩基配列解析
シーケンスにより読み取った挿入ヒトゲノム断片の塩基配列について、ヒト染色体上での位置を同定するためにNCBIのHomo sapiens (human) Nucleotide BLAST (Basic Local Alignment Search Tool)(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE_TYPE=BlastSearch&BLAST_SPEC=OGP__9606__9558)を使用した。さらに、塩基配列の物理的特性を解析する目的には、次に示すウェブ上のツールを使用した。non-B DB Motif Search Tool (http://nonb.abcc.ncifcrf.gov/apps/nBMST/default/) は、塩基配列からB型DNA立体構造以外の構造、例えばクルシフォーム構造やヘアピン構造、Z−DNAといった構造を取りやすい領域を検索するツールである。MARSCAN(http://emboss.bioinformatics.nl/cgi-bin/emboss/marscan)は、MAR活性を示す領域に認められるモチーフ配列8bp(aataayaa)と16bp(awwrtaannwwgnnnc:配列番号11)とを、200bpの範囲内に持つ領域を検索するツールである。SIDD/ZDNA Analysis(http://benham.genomecenter.ucdavis.edu/sibz/)は、熱や塩によるストレスより誘導されるDNAの不安定化、すなわちStress-induced Duplex Destabilization(SIDD)を起こしやすい領域を検索するツールである。
(10)FISH法
FISH法は、ある塩基配列に特異的なDNAもしくはRNAプローブを、細胞内のDNAもしくはRNAにハイブリダイズさせた後、蛍光物質によりプローブを可視化させ、それを蛍光顕微鏡下で検出する方法である。この技術は、遺伝子マッピングや間期細胞における染色体分布など、幅広い分野で必須の手法となっている。本実施例では、様々な種類のプラスミドを導入した細胞について、プラスミド配列をFISH法により検出した。
(10−1)分裂中期染色体標本(メタフェイズスプレット)の調製
各ライブラリー導入細胞の遺伝子増幅の度合いと、コントロールとして作製したヒトゲノム配列を含まないp△BM d2EGFP-Asc IをトランスフェクションしたCHO DG44細胞の遺伝子増幅の度合いを比較することを目的として染色体標本を調製した。
細胞の固定にはメタノール酢酸固定法を用いた。この方法は、アルコールによりタンパク質を変性させて固定する方法で、ギムザ染色、Gバンド染色、Rバンド染色のほか、FISH法により染色体診断など染色体を観察するのに一般的によく用いられる。
まず、対数増殖期にある細胞培養液5〜10mLを15mL容の遠心管(住友ベークライト社製)に入れて遠心分離(TSローター、1,000rpm、5分間、室温、トミー精工LC06-SSp遠心機、以下同じ。)を行った後、上清を200μL程度残して取り除き、穏やかなタッピングにより完全に懸濁した。次に、37℃に保温しておいた75mM KCl溶液を10mL加えた。この際、最初の1mLは1滴加えるたびにタッピングを行いつつ徐々に加えた。これを37℃で10分間保温した後、4℃のカルノア固定液(メタノール(ナカライテクス):酢酸(ナカライテクス)=3:1)を3、4滴加え、穏やかに混合した。その後直ちに遠心分離を行い、上清を少量残して取り除いた。得られた沈殿を穏やかなタッピングにより完全に懸濁した後、4℃のメタノール酢酸溶液を10mL加えた。この際、先程と同様に最初の1mLは1滴ごとに攪拌しつつ加えた。これを氷中で20分間静置した後、遠心分離を行った。同様の操作を、カルノア固定液を5mL、3mLと繰り返して行い、最後にカルノア固定液1mLを1滴ずつ攪拌しながら加えた。保存は短期間では氷中、長期では‐20℃で行った。長期保存した場合、使用する際にカルノア固定液を交換した。
スライドグラス(松浪硝子工業株式会社)への細胞固定は、以下の方法で行った。超純水で十分に湿らせたキムワイプ(日本製紙クレシア株式会社)でスライドグラスを拭き、薄い水の層を作った後、すぐにカルノア固定した細胞溶液50μL程度を数滴滴下した。スライドグラスを十分に乾燥させた後、位相差での検鏡を行い細胞が適切な密度で広がっていることを確認した。細胞が固定されたスライドグラスは、作製から1週間以内にFISH法に用いられた。
(10−2)プローブの調製
DIG(digoxigenen)標識プローブを、 BioPrime DNA Labeling System(Invitrogen社)を用いてランダムプライム法により行った。鋳型となるDNAは、プラスミドを用いる場合は、制限酵素処理で直鎖状DNAとしたものを用いた。鋳型DNA200ngに、2.5×Random Primers Solution(125mM Tris-HCl(pH 6.8)、12.5mM MgCl、25mM2-mercaptoethanol、750μg/mLoligodeoxyribonucleotide primers(random octamers)を20μLと、高純水を加えて44μLにした。熱湯で5分間処理した後、氷中で急冷し、DNAを変性させた。10×DIG DNA Labeling Mixture (1mM dATP、1mM dCTP、1mM dGTP、0.65mM dTTP、0.35mM DIG-dUTP(Roche社))を5μL加えて混合した後、Klenow Fragment(large fragment of DNA polymerase I、40U/μL invitrogen社製)を1μL加えてゆっくり混和させ、37℃で1時間反応させた。反応後、氷中に移し、Stop buffer(10mM Na2EDTA(pH8.0))を5μL加えて反応を停止させた。未反応ヌクレオチドの除去には、High pure PCR cleanup micro kit(Roche社)を付属のプロトコルに従い用いた。精製したプローブ溶液を本実施例において用いた。鋳型となるDNAにはpSFV-V △BNを用いた。pSFV-V △BNは、CHO DG44細胞に存在しないDNA配列であるブラストサイジン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、大腸菌複製開始領域を持つプラスミドであり、これをプローブとすることで導入したプラスミドに特異的にハイブリダイズする。
(10−3)ハイブリダイゼーション
標本に、終濃度100μg/mLのRNaseA(シグマ‐アルドリッチ社)を含む2×SSC溶液を80μL滴下し、その上にカバーグラス(松浪硝子工業株式会社)を被せ、モイストチャンバー内で37℃、30分間処理した。処理後、カバーグラスを除き、2×SSCで洗浄した。次に70、80、90、100%(v/v)エタノール中でそれぞれ3分間ずつ順に脱水処理を行った。十分に乾燥させ、5〜10分間ヒートブロック(DRI-BLOCK DB-3L、エムエス機器株式会社)上で70℃まで温めた後、70%(v/v)ホルムアミド(シグマ‐アルドリッチ社)を含む2×SSC溶液中で72℃、2分間処理し、DNAを変性させた。変性の後、すぐに‐20℃であらかじめ保冷しておいた70、80、90、100%(v/v)エタノール中で、それぞれ3分間ずつ順に脱水処理を行った。スライドグラス1枚分のハイブリダイゼーション溶液は以下の手順で調製した。FISH用プローブ20ngに、10ng/mL Salmon Sperm DNA(GIBCO BRL)を0.7μL、超純水を加え、20μLとした。さらに、1/10量の3M 酢酸ナトリウムを加え、十分に混合した後、2.1倍量の100%(v/v)エタノールを加えた。これを−80℃で30分間静置し、14,000rpm、15分間遠心してエタノール沈殿を行った。上清を除いて風乾後、超純水3μLを加え、完全に溶解させ、60%(v/v)ホルムアミド、12%(w/v)Dextran Salfateを含む2×SSC溶液を12.5μL加えた。その後、75℃で5分間処理してDNAを変性させた。スライドグラスにハイブリダイゼーション溶液をそれぞれ15μLずつ滴下し、22mm×40mmカバーグラス(松浪硝子工業株式会社)をのせた。パラフィルムをのせ、標本の乾燥を防ぐためにハイブリパック(コスモ・バイオ株式会社)に入れてポリシーラー(富士インパルス株式会社)で密封し、37℃で一晩保温した。その後、カバーグラスをスライドグラスから慎重に取り除き、45℃のウォーターバス(SM-05、タイテック株式会社)中で、50%(v/v)ホルムアミドを含む2×SSC溶液で3回、2×SSCで3回、3分間ずつ順に洗うことで、非特異的に結合しているプローブを除いた。
(10−4)プローブの検出
非特異的に結合しているプローブを除いた後、ブロッキング溶液(4%(w/v)Block Ace(大日本住友製薬株式会社)、0.1%(w/v)Tween20(シグマ‐アルドリッチ社)を含む2×SSC溶液)100μLをスライドグラスに滴下して37℃、30分間処理し、シグナル検出のための抗体が非特異的に結合するのを防いだ。次に、一次抗体の終濃度が10μg/mLになるように調製した溶液(一次抗体、1%(w/v)Block Aceを含む1×PBS(−)溶液)を90μL滴下してパラフィルムを被せ、モイスチャーチャンバー内で37℃、60分間処理した。抗体を反応させた後、1×PBS(−)、0.05%(w/v)Tween20/1×PBS(−)、1×PBS(−)、1×PBS(1)中で、それぞれ3分間ずつ順に洗浄し、非特異的に結合した一次抗体を除いた。DIG標識したプローブの検出にFITC-conjugated Anti-DIG, Fab fragments(Roche社)を用いた。プローブの検出を行った後、蛍光褪色防止剤であるVECTASHIELD Mounting Medium(VECTOR Laboratories社)を用いて1μg/mLに希釈したPI(propidium iodide)を、スライドグラスに15μL滴下し、DNAの染色を行った。22×40mmカバーグラスを気泡が入らないように被せた後、4℃で遮光保存した。
(11)蛍光顕微鏡による観察
蛍光顕微鏡はECLIPSE TE2000-U(株式会社ニコン)を用い、60倍の油浸対物レンズ(Nikon Plan Fluor, NA 1.40 oil)によりスライドを観察した。画像の撮影には、CCDカメラ(株式会社ニコン、DIGITALSIGHT DS-QilMc)を用い、画像の取り込みにはCamera Control Pro2(株式会社ニコン)を用いた。その後、Photoshop(登録商標) R CS(Adobe Systems Incorporated)により画像処理を行った。
(12)電気泳動
DNAサンプルを、1.0%(w/v)アガロースゲル、TAE(Tris Acetate EDTA)緩衝溶液中で100V、30分間、室温で電気泳動することにより分画した。泳動槽にはMupid(登録商標) - 2X(株式会社アドバンス)、泳動マーカーには6×Loading Buffer(東洋紡株式会社)を用いた。電気泳動後、0.5μg/mL ethidium bromide(EtBr)溶液中で15分間染色した後、紫外線を照射し、FASII(東洋紡株式会社)により写真を撮影した。
<2.結果>
(1)1次ゲノムライブラリーの構築
大腸菌DH5αを宿主とした大腸菌1次ゲノムライブラリー6種類(ライブラリーA,B,C,D,E,F)構築した。独立コロニーの総数は約230,000個であり、コロニーPCRによりインサートの有無を確認した結果、ヒトゲノム断片が挿入されたプラスミドの割合は約45%で、インサートの平均鎖長はおよそ1.27kbpであった。この結果から1次ゲノムライブラリー全体で1.3×10bpのヒトゲノムを含むことになるため、ヒト全ゲノム3.0×10bpのおよそ4.2%をカバーしていることが分かった。
(2)1次ゲノムライブラリーのスクリーニング
ライブラリーAのDNAを導入したCHO DG44細胞を、ブラストサイジン存在下で4週間培養することにより安定した形質転換体を選択した。これらについて、FACS Ariaを用いてGFP発現強度を解析し、GFP強度で上位0.5%の細胞2,280個、および上位2.0%の細胞2,280個を、96ウェルプレートに1ウェルあたり1〜10個の細胞が入るようにソートした。同様に、ライブラリーBについても同様にした。また、ライブラリーC〜Fをそれぞれ導入したCHO DG44細胞を混合した細胞集団より、GFP強度上位0.1%の細胞1,824個、および上位0.3%の細胞2,016個を、96ウェルプレートに1ウェルあたり1〜10個の細胞が入るようにソートした。ソートした細胞の入った96ウェルプレートは、さらに3週間程度培養してから、さらに蛍光顕微鏡観察により、GFP発現の高い細胞が増殖しているウェルを選別し、それらを24ウェルへとスケールアップして1週間程度培養してから、6ウェルプレートにスケールアップした。また、GFP発現は中程度であるが、コロニー全体がGFPの発現を示している細胞については5〜6個のウェルからまとめて6ウェルプレートにスケールアップして培養した。
その結果、ライブラリーAより5種類、ライブラリーBより8種類、ライブラリーMix(C〜F)より13種類、合計26種類のGFP高発現細胞集団と、GFPが中程度に発現した細胞集団(「GFP中程度発現細胞集団」)をミックスした4種類の集団を分離した。これらの細胞集団は、それぞれ形質転換で生じた大腸菌一次コロニー23万個からなっていた。
(3)2次ゲノムライブラリーの構築
上記で得られたGFP高発現細胞集団26種類と、GFP中程度発現細胞集団をミックスした細胞集団4種類から、ゲノムDNAを抽出し、それを鋳型として、PCR法によりベクターに挿入されていたヒトゲノム断片を増幅した。この際、5種類のGFP高発現細胞集団のゲノムDNAを鋳型としたPCR産物からは、電気泳動でバンドが検出されなかった。これはヒトゲノム断片を持たないコントロールベクターが、遺伝子導入時に染色体上で活発に転写されるような領域の近くに組み込まれた結果生じた位置効果により、GFPの高発現を示した形質転換細胞がソートされたためだと考えられた。増幅バンドが検出されたPCR産物を、ベクターp△BM d2EGFP Asc IのAscIサイトにIn-Fusion反応により連結し、大腸菌DH5αコンピテントセルを形質転換して、大腸菌を宿主とした2次ゲノムライブラリーを計25種類構築した。それぞれのライブラリーのコロニー数は約10,000個程度であった。ランダムに選んだコロニーから、コロニーPCRによりヒトゲノム断片を増殖させ、その平均鎖長を求めると1.71kbpであった。1次ライブラリーの段階ではインサートの平均鎖長は1.27kbpであり、これに比べて平均鎖長が長くなっていたことから、スクリーニングにより、発現に影響を与えない短い断片が除かれたことが考えられた。
(4)2次ゲノムライブラリー導入細胞の評価
大腸菌2次ライブラリーのプラスミドDNAでシングルウェルから回収したGFP高発現細胞集団21種類、および複数ウェルの細胞を混合した細胞集団4種類、合計25種類、および、コントロールとして用いたベクターDNA(p△BM d2EGFP-Asc I)をCHO DG44細胞に導入し、ブラストサイジン存在下で4週間ほど培養して得られた安定形質転換細胞について、GFP発現量をFACS Caliburを用いて測定した。
その結果、GFP発現がコントロールよりも高い細胞集団が6種類、同程度の細胞集団が13種類、低い細胞集団が6種類であった。
次に(3)で得られた各細胞集団から染色体標本を調製し、FISH法によりプラスミド配列を検出して、プラスミド配列の増幅構造の形成頻度を間期の核内で評価した。その結果、各ライブラリーで遺伝子増幅構造の形成頻度(「遺伝子増幅頻度」ともいう。)に差が見られたことから、遺伝子増幅構造に影響を与えるヒトゲノム断片がライブラリーに含まれている可能性が示唆された。
コントロールと比較したGFP発現の程度および遺伝子増幅頻度を基準にして、2次ライブラリーを9通りに分類した。GFP発現と遺伝子増幅頻度がともに高まった細胞集団が3種類あった。この2次ライブラリーの中には遺伝子増幅を促進するようなヒトゲノム配列が存在する可能性が示唆された。また、遺伝子増幅頻度は変化しなかったが、GFP発現が高まった細胞集団が2種類あった。この2次ライブラリーには、ヘテロクロマチン化によるサイレンシングを解除するようなヒトゲノム配列が含まれている可能性が期待された。
(5)GFP高発現2次ライブラリーの再現性
コントロールと比較してGFP発現が高まった6種類の2次ライブラリー(Library A9 E3、Library B-3、Library Mix9 G10、Library Mix6 C4、Library Mix9 D8、Library Mix7 F7)と、コントロールのベクター(p△BM d2EGFP-Asc I)について、それらのDNAを再度CHO DG44細胞へ導入し、約4週間ブラストサイジン存在下で培養して安定した形質転換体を獲得した。それらの細胞について、FACS Caliburを用いてGFP発現をコントロールと比較した。
その結果、6種類のうち4種類(Library A9 E3、Library B-3、Library Mix9 G10、Library Mix6 C4)の2次ライブラリー導入細胞は、コントロールに比べ、発現が顕著に高かった。すなわち、これら4種類の2次ライブラリーでGFP発現が高いという結果の再現性が確認できた。これら4種類の2次ライブラリーを陽性2次ライブラリーと称する。
(6)陽性2次ライブラリーを構成するヒトゲノム断片のクローン化
前項で同定された4種類の陽性2次ライブラリーDNAを用いて、大腸菌コンピテントセルを形質転換した。この時、4種類の陽性2次ライブラリーのうち、2つ(Library A 9E3、Library Mix 6C4)についてはこれまでと同じ大腸菌DH5αのコンピテントセルに形質転換を行った。残りの2つの陽性2次ライブラリー(Library mix9 G10、Library B-3)については大腸菌SURE2のコンピテントセルに形質転換を行なった。これは、これまで用いてきた大腸菌DH5αのコンピテントセルでは逆位反復配列やZ-DNAといった不安定なDNAを含むプラスミドのクローニングには適しておらず、そのような配列の取りこぼしが起きていた可能性が考えられた。そこで、不安定な配列のクローニングに適した大腸菌SURE2のコンピテントセルを用いてのクローニングを行った。
大腸菌DH5αを形質転換した2つの陽性2次ライブラリー(Library A 9E3、Library Mix 6C4)については、これまでと同様にBlend Taq(登録商標) -Plus- DNA polymerase を使用して、シングルコロニーを鋳型としたコロニーPCRにより挿入ヒトゲノム断片を増幅した。一方、大腸菌SURE2を形質転換した2つのライブラリー(Library mix9 G10、Library B-3)は、Tks Gflex(登録商標) DNA Polymerase を使用して、シングルコロニーを鋳型としたコロニーPCRにより挿入ヒトゲノム断片を増幅した。Tks Gflex(登録商標) DNA Polymeraseは、これまで用いてきたBlend Taq(登録商標) -Plus- DNA Polymeraseのような通常のPCR酵素では増幅が困難な、GC−リッチやAT−リッチな領域を含む塩基配列に対するPCR増幅の成功率を向上させたPCR酵素であり、GC−リッチやAT−リッチな領域を含む塩基配列の取りこぼしを減らすことが期待して、今回から用いた。
上記のようにして得られたPCR産物を電気泳動にすることにより、増幅されたヒトゲノム断片のバンドを確認した。一方、同じ鎖長の塩基配列は電気泳動では区別することができないため、4塩基認識の制限酵素Sau3AIを用いてPCR産物を消化し、電気泳動を行うことも行った。その結果得られた塩基の鎖長と、その全コロニーに占める割合を計測した。
その結果、Library A9 E3から6種類の、Library Mix6 C4から2種類の、Library Mix9 G10から5種類の、LibraryB-3から8種類の、それぞれ異なるヒトゲノム断片を持つクローン化プラスミドDNAが得られた。これらのプラスミドを持つ大腸菌を、それぞれ大量培養し、クローン化プラスミドDNAを精製した。
(7)クローン化ヒトゲノム断片導入細胞のGFP発現
前項で得られた、Library A9 E3由来の6種類のプラスミド、Library Mix6 C4由来の2種類のプラスミド、Library Mix9 G10由来の5種類のプラスミド、LibraryB-3由来の8種類のプラスミド、及びコントロールのベクター(p△BM d2EGFP-Asc I)をそれぞれCHO DG44細胞へ導入し、約4週間ブラストサイジン存在下で培養して安定した形質転換体を獲得した。これらについてFACS Caliburを用いてGFPの発現強度を解析し、コントロールと比較した。
その結果を図5に示す。図5(a)および(b)はLibraryB-3 3926 31 3.0 kbpが導入された細胞、およびコントロールのベクターが導入された細胞のそれぞれのGFP強度を示すヒストグラムを重ねて表示したものであり、図5(a)はLibraryB-3 3926 31 3.0 kbpが導入された細胞のGFP強度を示すヒストグラムを前面に表示した場合、図5(b)はコントロールのベクターが導入された細胞のGFP強度を示すヒストグラムを前面に表示した場合である。図5(a)および(b)において、コントロールのベクターが導入された細胞のGFP強度を示すヒストグラムよりも、LibraryB-3 3926 31 3.0 kbpが導入された細胞のGFP強度を示すヒストグラムの方が右側にシフトしていることから、LibraryB-3 3926 31 3.0 kbpが導入された細胞においてGFP強度が高い細胞数が増えていることが分かる。よって、LibraryB-3由来の3.0kbpのヒトゲノム断片を含むプラスミドDNA(LibraryB-3 3926 31 3.0 kbp)が導入された細胞は、コントロールのベクターが導入された細胞と比較してGFPの発現量が高いことが分かった。
同様な実験を独立してさらにもう2回行い、コントロールとのGFP強度の比較を行なった。その結果、LibraryB-3由来の3.0kbpのヒトゲノム断片を含むプラスミドDNA(LibraryB-3 3926 31 3.0 kbp)は、独立した計3回の実験で、再現性良くGFP発現量の増強効果が見られた(図5(a)〜(f)を参照のこと)。図5(c)および(d)はLibraryB-3 3926 31 3.0 kbpが導入された細胞、およびコントロールのベクターが導入された細胞のそれぞれのGFP強度を測定した再現実験(1回目)の結果であり、図5(c)は、LibraryB-3 3926 31 3.0 kbpが導入された細胞のGFP強度を示すヒストグラムを前面に表示した場合、図5(d)はコントロールのベクターが導入された細胞のGFP強度を示すヒストグラムを前面に表示した場合である。図5(e)および(f)はLibraryB-3 3926 31 3.0 kbpが導入された細胞およびコントロールのベクターが導入された細胞のそれぞれのGFP強度を測定した再現実験(2回目)の結果であり、図5(e)は、LibraryB-3 3926 31 3.0 kbpが導入された細胞のGFP強度を示すヒストグラムを前面に表示した場合、図5(f)はコントロールのベクターが導入された細胞のGFP強度を示すヒストグラムを前面に表示した場合である。
また、CHO DG44細胞に代えてCOLO 320DM細胞を用いて上記と同様の実験を行ったところ、LibraryB-3 3926 31 3.0 kbpが導入された細胞の方がコントロールのベクターが導入された細胞よりもGFP強度が高かった。しかも、LibraryB-3 3926 31 3.0 kbpのGFP発現量の増強効果は、CHO DG44細胞を用いた場合よりも顕著であった(データは省略する。)。
(8)LibraryB-3 3926 31 3.0 kbpを導入したCHO DG44細胞の遺伝子増幅
LibraryB-3 3926 31 3.0 kbpを導入したCHO DG44細胞の染色体標本を作製し、プラスミド配列をプローブとしたFISH法により、プラスミド配列の増幅構造を観察した。
その結果、コントロールとの間で、遺伝子増幅構造の形成頻度に大きな差は見られなかった。このことから、LibraryB-3 3926 31 3.0 kbpは遺伝子増幅を促進する作用ではなく、増幅した遺伝子からの発現を増強する働きを持つことが示唆された。
(9)ヒトゲノム断片(LibraryB-3 3926 31 3.0 kbp)の塩基配列
コントロールと比較して再現性良くGFP高発現が確認できたLibraryB-3 3926 31 3.0 kbp中のヒトゲノム由来の塩基配列をABI PRISM(登録商標)310 Genetic Analyzer(Applied biosystems社)を用いて決定した。その結果、両末端から約300bpの塩基配列が得られた。この配列を用いて、ヒト染色体上で相同性が高い領域を、NCBIのHomo sapiens nucleotide BLAST (Basic Local Alignment Search Tool)で検索したところ、ヒト2番染色体上の3,271bp(位置番号57,315,359 から 57,318,630)のDNAであることが分かった(図1を参照のこと。)。この鎖長は、LibraryB-3 3926 31 3.0 kbpのアガロースゲル電気泳動での結果と良く一致していたことから、間違いないと判断した。
この塩基配列についてウェブ上の遺伝子解析ツールnon-B DNA Motif Search Toolを利用して解析を行った。この塩基配列はGC含量32%、AT含量68%と塩基配列の分布に偏りがあり、9つのInverted repeat、1つのMirror repeat、1つのG-Quadruplex forming repeat、1つのSINE elementを含んでいることが分かった。また、MARSCANを用いた解析では2,275bp〜2,293bpの間にMARが存在することが示唆された。また、SIDD/ZDNA Analysisを用いた解析では1,500bp付近と1,800bp付近にStress-Induced Duplex Destabilizationを受けやすい不安定な領域が存在することが示唆された。また、染色体上で付近に遺伝子が存在するかを確認したところ、偽遺伝子が40kbp程度上流にあることが分かった。
<3.考察>
(1)IR/MAR遺伝子増幅法の増幅遺伝子の発現を増強させるヒトゲノム配列
本実施例で、IR/MAR遺伝子増幅法で増幅させた遺伝子からの発現を増強させるヒトゲノム配列をスクリーニングした結果、2次ライブラリーLibraryB-3 に含まれていたクローン3926-31の3.0kbp断片が、所望の配列として単離された。このような発現増強効果は、3回の独立した実験で、再現性が得られた。この配列の存在により、IR/MARプラスミドによる増幅構造の形成自体には変化がなかったことから、このヒトゲノム配列(「B−3−31」)は、遺伝子増幅の過程には影響を与えず、増幅された遺伝子からの発現を高める配列であることが示唆された。
このヒトゲノム断片の塩基配列を決定し、公開されているヒトゲノム配列に対してBLAST検索を行ったところ、ヒト2番染色体短腕バンド2P16.1にある3,271bpの塩基配列であることが判明した。この塩基配列は、全体としてGC含量32.2%、AT含量67.8%と塩基配列の分布に大きな偏りがあった。ヒト2番染色体上で、ランダムに3,200bpの領域を50箇所選択し、それぞれのAT含量を計測した結果、B−3−31の配列のAT含量は最も高かった。このような高AT含量の領域は、3,271bpの領域全体に及んでいたが、特に塩基番号1,400〜1,800の領域はAT含量76.0%と極めてAT含量が高い領域であった。
一方、このB−3−31をnonB-DNA motif search toolで解析したところ、9つのInverted repeat (6〜8塩基のリピートで中央に0〜4塩基のスペーサーを含む。)、1つのG-Quadruplex forming repeat、1つのSINE elementを含んでいた。また、SIDD/ZDNA analysisで解析したところ、環境ストレスにより2本鎖構造が変性するStress-Induced Duplex Destabilization (SIDD)領域が1,500bp周辺と、1,900bp周辺に存在することが示唆された。さらに、MARSCANによる解析で、1つのMAR/SAR recognition siteが予測された。さらに、NCBI Map Viewerを用いて2番染色体上の遺伝子を持つ領域を検索し、染色体上のこの配列近傍に遺伝子が存在するか否かを検討した。その結果、この遺伝子は遺伝子の少ないサブバンドに局在していたため、タンパク質をコードしている遺伝子は周辺1Mb以内には存在せず、およそ40kb上流に偽遺伝子が存在するのみであった。このことから、エンハンサーのように、何らかの遺伝子の近傍で働いている配列ではないことが示唆された。
このようなB−3−31の特徴を、代表的な(1)複製開始領域、(2)MAR配列、および、(3)プロモーター配列について、同じ解析ツールを用いて同様な検討を行い、相互に比較した。すなわち、(1)複製開始領域として、DHFR遺伝子座由来IR配列、c−myc遺伝子座由来IR配列、β-globin RepP由来IR配列、(2)MAR配列として、Igκ遺伝子のイントロン由来の強力なMARを含むAR1配列、および、(3)プロモーター配列として、EF1aプロモーター配列について解析を行って比較検討した。その結果、本研究で得られたB−3−31、(1)の複製開始領域3種、(2)のMAR配列1種について、SIDD siteとinverted repeatが隣接して存在する領域が共通して存在した。3つのIR配列についてのこのような領域は、発明者によるMAR Finder programを用いた解析の結果、MAR活性を持つ領域として予測された配列(DHFR遺伝子座由来IRの1,900〜2,800bp、β-globin RepP由来IRでは800〜1,600bp、c−myc遺伝子座由来IRでは500〜900bp)と一致した。よって、B−3−31に存在する、1,400〜1,500bpの間と、1,800〜1,900bp間に存在するSIDD siteとinverted repeatとが隣接して存在する領域は、MAR活性を示す可能性が示唆された。
(2)スクリーニング方法
本実施例では、ヒトゲノムDNAのスクリーニングにおいて、通常の大腸菌(DH5α)を宿主としたライブラリーの構築と、通常のPCR酵素(Blend taq(登録商標) -Plus-)によるヒトゲノム領域の増幅を行なった。大腸菌を用いたプラスミドDNAのクローニングでは、Inverted RepeatやZ−DNAなどの二次構造を作りやすい配列を含んでいる場合、大腸菌の修復システムにより組み換えられたり、削除されたりしてしまうことがある。また、PCR法によるDNAの増幅においても、AT−リッチやGC−リッチな配列や、Inverted Repeatの増幅は困難である。一方、発現を促進するプロモーター配列やMAR配列にはAT−リッチな領域や二次構造を作りやすい配列が含まれていることが多く、これらの配列を取りこぼしている可能性が考えられる。
今回はスクリーニング実験の終盤にあたるシングルプラスミド単離の段階で、4つのライブラリーの内、3つについては大腸菌とPCR酵素とを変更して実験を行った。大腸菌はDH5αのコンピテントセルから、SURE2のコンピテントセルに変更した。SURE2は不安定なDNAのクローニングに適した大腸菌で、UV修復システムの遺伝子と、SOS修復システムの遺伝子を削除することで長い反復配列を持つDNAのクローニング効率を向上させている。PCR酵素はBlend taq(登録商標) -Plus- DNA PolymeraseからTks Gflex(登録商標) DNA Polymeraseに変更した。Tks Gflex(登録商標) DNA PolymeraseはGC−リッチやAT−リッチなどの通常のPCR酵素では増幅が困難な鋳型からの増幅も成功率が著しく向上したPCR酵素である。本実施例では、大腸菌とPCR酵素とを変更して行われたスクリーニングによって、所望の活性を有するB−3−31を見出すことに成功した。
上記説示したように、本発明によれば、IR/MAR遺伝子増幅法によって形成される目的遺伝子の反復配列に起因する遺伝子発現抑制の問題点を解決することができ、所望のタンパク質を高発現させることが可能となるという効果を奏する。それゆえ、本発明によれば、所望のタンパク質(例えば、有用タンパク質)を大量に生産することが可能になるという効果を奏する。
したがって、本発明はタンパク質の生産を行う産業、例えば、医薬品、化学、食品、化粧品、繊維等種々広範な産業において利用可能である。

Claims (14)

  1. 哺乳動物細胞内で増幅された目的遺伝子の発現を高める方法であって、
    哺乳動物細胞内で機能する哺乳動物複製開始領域および哺乳動物細胞内で機能する核マトリックス結合領域を具備するベクターと、目的遺伝子と、下記(a)または(b)を含む発現促進ポリヌクレオチドとを、哺乳動物細胞に同時に導入する工程を含む方法:
    (a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、
    (b)配列番号1に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加され、且つ増幅された目的遺伝子の発現を高める活性を有するポリヌクレオチド。
  2. 上記哺乳動物複製開始領域が、c−myc遺伝子座、ジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座、およびβ−グロビン遺伝子座の複製開始領域のいずれか1つに由来する、請求項1に記載の方法。
  3. 上記核マトリックス結合領域が、Igκ遺伝子座、SV40初期領域、およびジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座の核マトリックス結合領域のいずれか1つに由来する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 上記目的遺伝子と、上記ポリヌクレオチドとが、上記ベクターに含まれた状態で、哺乳動物細胞に導入することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 哺乳動物細胞内で増幅された目的遺伝子の発現を高めるためのキットであって、
    下記(a)または(b)を含む発現促進ポリヌクレオチドを少なくとも備えることを特徴とするキット:
    (a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、
    (b)配列番号1に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加され、且つ増幅された目的遺伝子の発現を高める活性を有するポリヌクレオチド。
  6. 哺乳動物細胞内で機能する哺乳動物複製開始領域と哺乳動物細胞内で機能する核マトリックス結合領域とを具備するベクターをさらに備える、請求項5に記載のキット。
  7. 上記哺乳動物複製開始領域が、c−myc遺伝子座、ジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座、およびβ−グロビン遺伝子座の複製開始領域のいずれか1つに由来する、請求項6に記載のキット。
  8. 上記核マトリックス結合領域が、Igκ遺伝子座、SV40初期領域、およびジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座の核マトリックス結合領域のいずれか1つに由来する、請求項6または7に記載のキット。
  9. 上記ベクターは目的遺伝子が挿入されるベクターであり、
    上記発現促進ポリヌクレオチドは、上記ベクターに含まれていることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のキット。
  10. 哺乳動物細胞内で機能する哺乳動物複製開始領域および哺乳動物細胞内で機能する核マトリックス結合領域を具備するベクターと、目的遺伝子と、下記(a)または(b)を含む発現促進ポリヌクレオチドとが導入されてなる哺乳動物細胞:
    (a)配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、
    (b)配列番号1に示される塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加され、且つ増幅された目的遺伝子の発現を高める活性を有するポリヌクレオチド。
  11. 上記哺乳動物複製開始領域が、c−myc遺伝子座、ジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座、およびβ−グロビン遺伝子座の複製開始領域のいずれか1つに由来する、請求項10に記載の哺乳動物細胞。
  12. 上記核マトリックス結合領域が、Igκ遺伝子座、SV40初期領域、およびジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座の核マトリックス結合領域のいずれか1つに由来する、請求項10または11に記載の哺乳動物細胞。
  13. 上記目的遺伝子と、上記発現促進ポリヌクレオチドとが、上記ベクターに含まれた状態で、哺乳動物細胞に導入されていることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の哺乳動物細胞。
  14. 請求項10〜13のいずれか1項に記載の哺乳動物細胞を用いた、目的タンパク質を生産する方法。
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