JP6369708B1 - 津波や洪水からの漂着避難装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】津波や洪水等水害対策で、避難や救助及び救命方法の確立、構造物の損壊防止、並びに、防災関連施設の設置の困難さの解決を課題とする。【解決手段】津波や洪水等水害による予想される水流の方向に上がっていく階段状等の形状を成し、本水流による浸水時、本水流は透過させ、漂着した水害遭難者の身体は通過させず上向きの反力を作用させ水面まで上昇させる構造とした装置により、避難施設を形成すると同時に、本水流に呑まれた水害遭難者を救助または救命できる。構造物の損壊防止については、スライダー等による接続部分を用いた支持構造により、本水流による浸水時に支持対象部分を倒伏させるなどして、当該構造物の損壊を防止できる。防災関連施設の設置の困難さの解決については、通常時は倒伏して格納し、本水流による浸水時は起立する架構とすることにより、通常時上部を他用途に利用できるため、設置が容易となる。

Description

津波や洪水等の水害時における防災、避難及び救助に関するもの
津波や洪水等の水害に対する危険性の認識が高まり、様々な方法で防災や避難の方法が検討されるようになった。
特開2009−007851 特開2012−246694
内閣府 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ、「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ(第一次報告)(平成24年8月29日発表)/南海トラフの巨大地震建物被害・人的被害の被害想定項目及び手法の概要」、P.21「浸水深別死者数」、[online]、[平成29年5月31日検索]、インターネット <URL: http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/nankaitrough_info.html>
津波や洪水等水害対策には、提起されていない事柄を含め、多くの課題が残されている。中でも、重要なものとして、避難や救助及び救命方法の確立、構造物の損壊防止、及び、防災関連施設の設置の困難さの解決といった課題が挙げられる。
<避難や救助方法の確立に関して>
津波や洪水等水害の発生時、安全な避難場所への避難は難しく、また、一旦津波や洪水等水害が引き起こす本水流に呑まれると、水没により、人命が失われ、または、負傷する可能性が高い。内閣府によると、1mの浸水深で、津波に巻き込まれた人の全てが死亡すると見られている。(非特許文献1参照)
<構造物の損壊防止に関して>
津波や洪水等水害の発生時、津波や洪水等水害が引き起こす本水流の動圧による荷重や、漂流物の衝突により、様々な構造物が破壊される。これを防止するには、当該構造物に、津波や洪水等の水害により引き起こされることが予想される水流に対し十分な強度を持たせることの他、水害の発生前に、当該構造物を影響を受けない場所に移動させておく、当該構造物が板状などの場合は倒伏させておく、本水流により大きな荷重を受ける部分を撤去しておく等、人力による事前の作業により対応する方法が考えられるが、水害の発生が予測されてから作業を完了するのに時間が十分あるとは限らず、また、作業に危険を伴う可能性がある。
<防災関連施設の設置の困難さの解決に関して>
津波や洪水等水害に関する、防災、避難や救助のための装置は、一般的に、専用の設置スペースが必要となり、さらに、通常時、都市や地域の視界や風景を遮ってしまう。
本開示はかかる課題に対して解決手段を提示するものである。
<避難や救助方法の確立に関して>
段状や傾斜面とする場合を含み、津波や洪水等の水害により引き起こされることが予想される水流の方向に上がっていく形状を成す装置で、格子状などとすることにより、本水流を透過させ、本水流に呑まれた水害遭難者は通過させない構造とし、本水流に呑まれ水中にて当該装置に漂着した、または、当該装置上に位置していて本水流に呑まれ、本水流の動圧による荷重を受け続ける当該水害遭難者の身体に対し、上向きとなる反力を作用させることにより、当該装置の本水流の上流側となる前面に沿って上昇させ、水面に到達させる構造とすることにより、当該水害遭難者を救助または救命する、漂着救助装置を構成できる。
漂着救助装置は、人の身体の上方への移動を補助もしくは促進することができる移動補助装置を付置もしくは組み込み、または、形成することで、本水流による浸水時、当該漂着救助装置に漂着し当該装置の前面に沿って上昇し水面に到達した水害遭難者が、当該移動補助装置を上り、上部の避難スペースや避難通路である、上部避難路に避難したり、本水流による浸水前には、近隣の住民等がアクセスし、当該移動補助装置を上って避難することが可能な初期避難先とすることができる。
さらに、本水流による浸水時、漂着し水面に到達した水害遭難者の転落を防止する転落防止装置を設置すると、当該水害遭難者が当該移動補助装置を自力で上り避難できない場合であっても、安全に待避して救助を待つことができる。
<構造物の損壊防止に関して>
当該構造物の支持構造により、津波や洪水等水害の本水流による浸水時に、支持対象となる部分を回転させ、倒伏させ、または、脱落させて漂流させることにより、当該構造物の損壊を防止することができる。
当該支持対象部分と、これを支持するベースとを、本水流の方向に高くなる傾斜部分を持つスライダーやガイドと、ピンによる、複数個所の接続部分により接続することにより、当該支持対象部分が、通常時は、安定して支持され、本水流による浸水時は、本水流の動圧による荷重を受け、回転、倒伏、または、脱落できるようになる。
<防災関連施設の設置の困難さの解決に関して>
当該装置の架構の構造により、通常時は倒伏した状態で格納され、津波や洪水等水害の発生時には起立し機能することが可能となる装置を構成することができる。
当該架構は、起立時に、下端となる部分が、スライダー等に接続され、中間または上部となる部分が、やはり倒伏して格納された控え等に接続され、移動や変形を制限されており、津波や洪水等の水害により引き起こされることが予想される水流の動圧による荷重等により、当該下端となる部分を当該スライダー等に沿って移動させることで起立することができる部材を用いて構成するもので、当該装置は、当該架構により、通常時は倒伏した状態で地表仕上げ面内に格納され、津波や洪水等水害の発生時は、本水流の動圧による荷重等により起立し機能できるものとなる装置を構成することができる。
<避難や救助方法の確立に関して>
本開示により、本水流に呑まれた水害遭難者の、救助または救命、及び、その後の避難を可能とし、近隣からの避難先としても機能できる装置や施設を提供することができる。
当該装置や施設は、本開示にて示された実施例のように、多様な方法により実施可能で、単独で設置し、または、他の装置や施設等に組み合わせて設置することにより、津波や洪水等の水害時の避難、及び、救助または救命の用に供する装置や施設を構成することができる。
避難時について、従来、避難の容易さは、避難対象地域の各所の、避難先となる避難施設等への距離や立地が大きく影響していたが、当該開示による漂着避難施設を線状に配置することにより、避難対象地域のどこからでも容易にアクセスできるものとなり、かつ、より安全な場所に段階的に安全度を高めながら避難することが可能な避難路ネットワークを形成することができるものとなる。
津波や洪水等水害の本水流による浸水時、これまで、逃げ遅れて本水流に呑まれると、特に津波の場合、水害遭難者はほとんど助かる見込みがないとされてきたが、流された水害遭難者が水中で当該開示による装置や施設に漂着すると、水面まで上昇することができ、そのまま避難し、または、救助を待つことができるようになる。
また、当該開示による装置や施設は、地域の広域な範囲での配置計画により、逃げ遅れて本水流に呑まれた水害遭難者を、一定距離以内で漂着させ救助または救命することが可能な、セーフティネットを形成することができる。
当該開示による漂着避難施設は、上部避難路をつたって移動することができ、漂着避難装置を成す部分は、基本的に全ての部分が水位に関わらず水上からも上部避難路からもアクセス可能な形状であるため、本水流が落ち着くと、容易にゴムボート等を進水したり着岸することができ、当該施設を線状かつネットワーク状に配置し構成することにより、水害遭難者の救助活動の拠点とすることができる。
これらにより、津波や洪水等水害の発生時の地域住民等の安全な避難を可能とし、水害遭難者の生存の可能性を大きく向上させることができる。
さらに、本開示による階段状の漂着避難装置等は、一般の建築施設やその部分などに適用することで、通常時の利用を兼用することが可能である。
<構造物の損壊防止に関して>
津波や洪水等水害の本水流による浸水時、当該支持構造に支持される当該支持対象部分は、本水流の動圧による荷重を受け、自ら回転、倒伏、または、脱落して漂流することができるため、当該構造物は本水流の動圧や漂流物の衝突等による荷重を受け流すことができる。また、上記のように、人力による事前の作業により対応する場合に対し、危険や労力を省くことができ、急な浸水の場合でも当該構造物の破壊を防止することができる。
<防災関連施設の設置の困難さの解決に関して>
通常時は倒伏して地表仕上げ面内に格納されるため、格納された当該装置の上部空間を、有効に活用し、もしくは、別の用途と兼用することができ、都市や地域の視界や風景を遮らないものすることができる。さらに、道路や広場などの路面内や地表仕上げ面内に設置した場合、起立させると線状に長く連続する施設を構成することもできる。
実施例1 見取り図 実施例1 断面詳細図 実施例1 水害遭難者漂着時断面図 実施例1 水害遭難者水面到達時断面図 実施例1 水位低下時断面図 実施例2 見取り図 実施例3 上面図 実施例3 3B断面図 実施例4 見取り図 実施例5 断面詳細図 実施例5 見取り図 実施例6 歩行時・避難時上面図 実施例6 断面詳細図 実施例6 歩行時・避難時6C断面図 実施例6 浸水時断面図 実施例6 水害遭難者漂着時断面図 実施例6 水害遭難者水面到達時断面図 実施例6 水位低下時断面図 実施例7 各段断面図 実施例7 回転起動機構説明図 実施例7 ロック状態7C断面図 実施例7 ロック解除状態7C断面図 実施例7 歩行時・避難時断面図 実施例7 浸水時断面図 実施例7 水害遭難者漂着時断面図 実施例7 水害遭難者水面到達時断面図 実施例7 水位低下時断面図 実施例8 各段断面図 実施例8 歩行時・避難時断面図 実施例8 浸水時断面図 実施例8 水害遭難者漂着時断面図 実施例8 水害遭難者水面到達時断面図 実施例8 水位低下時断面図 実施例9 各段断面詳細図 実施例9 歩行時・避難時断面図 実施例9 水害遭難者漂着時断面図 実施例9 最大回転時断面図 実施例9 水害遭難者水面到達時断面図 実施例9 水位低下時断面図 実施例9 歩行時・避難時断面詳細図 実施例9 水害遭難者漂着時断面詳細図 実施例9 最大回転時断面詳細図 実施例9 水害遭難者通過後断面詳細図 実施例10 各段断面図 実施例10 歩行時・避難時断面図 実施例10 浸水時断面図 実施例10 水害遭難者漂着・水面到達時断面図 実施例10 水位低下時断面図 実施例10 歩行時・避難時断面詳細図 実施例10 浸水直後水害遭難者漂着時断面詳細図 実施例10 浸水後回転完了・水害遭難者通過後断面詳細図 実施例11 後付式段鼻ユニットによる階段状の漂着避難装置断面図 実施例11 蹴込を横桟とした方式の通常時の状態 実施例11 蹴込を横桟とした方式の段鼻が押し込まれた状態 実施例11 蹴込に櫛型のフィンを用いた方式の通常時の状態 実施例11 蹴込に櫛型のフィンを用いた方式の段鼻が押し込まれた状態 実施例11 蹴込をケーブルの格子とした方式の通常時の状態 実施例11 蹴込をケーブルの格子とした方式の通常時の状態での11G部分拡大図 実施例11 蹴込をケーブルの格子とした方式の段鼻が押し込まれた状態 実施例11 蹴込をケーブルの格子とした方式の段鼻が押し込まれた状態での11I部分拡大図 実施例11 後付式段鼻ユニットとケーブルによる蹴込を組合せた場合の歩行時・避難時の状態の断面図 実施例11 後付式段鼻ユニットとケーブルによる蹴込を組合せた場合の水害遭難者保護状態の断面図 実施例12 各段断面図 実施例12 歩行時・避難時断面図 実施例12 水害遭難者漂着時断面図 実施例12 水害遭難者水面到達後水位低下時断面図 実施例12 水害遭難者漂着時断面詳細図 実施例12 水害遭難者保護状態断面詳細図 実施例13 各段断面図 実施例13 水害遭難者漂着時断面図 実施例13 水害遭難者水面到達後水位低下時断面図 実施例14 断面詳細図 実施例14 歩行時・避難時断面図 実施例14 水害遭難者漂着時断面図 実施例14 段鼻回転中断面図 実施例14 段鼻起立後断面図 実施例14 水害遭難者漂着時断面詳細図 実施例14 段鼻回転中断面詳細図 実施例14 段鼻起立後断面詳細図 実施例15 見取り図 実施例16 断面図 実施例17 横断面図 実施例18 横断面図 実施例19 横断面図 実施例20 見取り図 実施例21 平面図 実施例22 平面図 実施例23 基準階平面図 実施例23 23B断面図 実施例24 断面図 実施例24 基準階平面図 実施例25 断面図 実施例26 見取り図 実施例27 正面図 実施例27 避難時27B断面図 実施例27 浸水時断面図 実施例27 水害遭難者漂着時断面図 実施例27 水害遭難者水面到達後水位低下時断面図 実施例27 通常時の状態での断面詳細図 実施例27 浸水時の状態での断面詳細図 実施例27 水害遭難者保護状態での断面詳細図 実施例28 浸水前避難時断面図 実施例28 浸水時断面図 実施例28 水害遭難者漂着時断面図 実施例28 水位低下時断面図 実施例29 見取り図 実施例30 見取り図 実施例31 見取り図 実施例32 見取り図 実施例33 見取り図 実施例34 見取り図 実施例35 断面図 実施例36 通常時の下部断面図 実施例36 浸水時の下部断面図 実施例36 手摺上昇時の下部断面図 実施例36 手摺回転時の下部断面図 実施例36 手摺倒伏時の下部断面図 実施例37 断面詳細図 実施例38 通常時断面図 実施例38 ルーバー断面詳細図 実施例38 手摺見取り図 実施例38 浸水前支持機構詳細図 実施例38 浸水前断面図 実施例38 上昇時支持機構詳細図 実施例38 上昇時断面図 実施例38 回転時支持機構詳細図 実施例38 回転時断面図 実施例39 浸水前断面図 実施例39 水害遭難者漂着時断面図 実施例39 手摺部回転時断面図 実施例40 断面図 実施例41 断面図 実施例42 ロック時断面図 実施例42 ロック時ロック機構42B断面図 実施例42 ロック解除時断面図 実施例42 ロック解除時ロック機構42D断面図 実施例43 浸水時見取り図 実施例44 断面詳細図 実施例44 漂流物衝突時の一段階目の変形時断面図 実施例44 漂流物衝突時の二段階目の変形時断面図 実施例44 漂流物衝突時の三段階目の変形時断面図 実施例45 控え機構付手摺やフェンス通常時断面図 実施例45 控え機構付手摺やフェンス控え上昇完了時断面図 実施例45 控え機構付手摺やフェンス控え開放時断面図 実施例45 控え機構付手摺やフェンス支柱上昇完了時断面図 実施例45 控え機構付手摺やフェンス支柱回転完了時断面図 実施例46 縦横の編み方による網状の漂着避難装置 実施例46 三角形の網目を持つ網状の漂着避難装置 実施例46 足掛りの穴のカバーシート見取り図 実施例46 網状かつ階段状の漂着避難装置見取り図 実施例46 建築物間に設置した網状の漂着避難装置見取り図 実施例46 側端部をガイドレールで支持する漂着避難装置見取り図 実施例46 側端部のガイドレールと外れ止め部詳細図 実施例46 側端部をガイドレールで支持する場合断面図 実施例46 上辺をメインケーブルで支持する場合断面図 実施例46 緑地帯に設置した網状の漂着避難装置見取り図 実施例47 引張材支持方式通常時断面図 実施例47 引張材支持方式起立時断面図 実施例47 圧縮材支持方式通常時断面図 実施例47 圧縮材支持方式起立時断面図 実施例47 引き波対応型通常時断面図 実施例47 引き波対応型起立中断面図 実施例47 引き波対応型起立時断面図 実施例47 引き波対応型中間支持材付起立時断面図 実施例47 引き波対応型漂着避難施設ラチス構造起立時断面図 実施例47 引き波対応型漂着避難施設ラチス構造起立時スライダー接続部分拡大断面図 実施例47 摺動部型起立補助機構断面図 実施例47 可動体回転型起立補助機構断面図 実施例47 水流受シート通常時断面図 実施例47 水流受シート浸水時断面図 実施例47 漂流物ガード起立時断面図 実施例47 防潮堤起立時断面図 実施例47 避難施設にも適用できる架構起立中 実施例47 避難施設にも適用できる架構起立後 実施例47 避難施設にも適用できる省スペース型架構起立中 実施例47 避難施設にも適用できる省スペース型架構起立後 実施例48 格納式漂着避難装置用転落防止装置通常時断面図 実施例48 格納式漂着避難装置用転落防止装置浸水時断面図 実施例48 回転手摺漂着避難装置用転落防止装置通常時断面図 実施例48 回転手摺漂着避難装置用転落防止装置浸水時断面図 実施例48 梯子状漂着避難装置用転落防止装置通常時断面図 実施例48 梯子状漂着避難装置用転落防止装置浸水時断面図
当該「発明を実施するための形態」では、請求項記載の開示に関することや、本願による開示全体に関する共通事項等について説明し、実施例により、代表的な構造や構成等を例示し説明する。
尚、当該「発明を実施するための形態」記載の事項は、請求項記載の事項を限定するものではない。
以下、請求項記載の開示に関することや、本願による開示全体に関する共通事項等について説明する。
<請求項記載の開示について>
本願請求項1記載の開示は、
津波や洪水等の水害時における救助または救命の用に供する装置であって、前記装置は、津波や洪水等の水害により引き起こされることが予想される水流を透過させるも、本水流に呑まれた水害遭難者の身体は通過させない構造とし、
小構造体を繰り返し連続的に配置することにより構成する場合を含み、本水流の方向に、連続的または断続的に上がっていく形状を成し、かつ、前記装置は、
本水流に呑まれ、水中にて当該装置に漂着し、当該装置の上流側前面に衝突した前記水害遭難者の身体に、本水流の方向の逆となる方向より上向きとなる反力を作用させることにより、当該水害遭難者の身体の運動方向を、上方に変換させ、または、
当該装置上に位置していて本水流に呑まれ、もしくは、本水流に呑まれて当該装置に漂着し、水中にて当該装置に接触している前記水害遭難者の身体に、本水流の動圧による荷重と、当該装置からの反力による、当該装置上方に向かう合力を作用させる構造とすることにより、
当該装置上に位置していて本水流に呑まれ、もしくは、本水流に呑まれて当該装置に漂着し、本水流を受け続ける前記水害遭難者の身体を、当該装置の上流側前面に沿って当該装置上方に移動させ、水面に到達させて救助または救命する、漂着救助装置を成す装置。
本願請求項2記載の開示は、
前記請求項1は、記載の上流側前面が、本水流の方向に高くなる傾斜した面を成すことにより、前記水害遭難者の身体を、当該前面に沿って当該装置上方に移動させる、傾斜前面である装置。
本願請求項3記載の開示は、
前記請求項2は、記載の傾斜前面が、縦方向の格子状である装置。
本願請求項4記載の開示は、
前記請求項2は、記載の傾斜前面が、網状である装置。
本願請求項5記載の開示は、
前記請求項4は、記載の網状の部分のうち、40平方cm以上の網目の面積の割合が、当該網状の部分全体の面積に対し、3割未満となる装置。
本願請求項6記載の開示は、
前記請求項4は、記載の網状の部分のうち、40平方cm以上の網目には、当該網目の下側の辺となる部分に、当該網目を覆い塞ぐ大きさのカバーを取り付けた装置。
本願請求項7記載の開示は、
前記請求項2から6までのいずれかに記載の装置は、本水流による浸水時に変形して前記傾斜前面を成す構造とした装置であり、
その可動部が、通常時は、振動、前記漂着救助装置上の歩行、または、風圧力により、有害な変形をせず、本水流による浸水時には、当該可動部が、浮力、重力、本水流の動圧による荷重、または、前記水害遭難者の身体の接触や衝突による荷重を受けて、変形することにより、本水流の上流側となる前面が前記傾斜前面を成す構造とした装置。
本願請求項8記載の開示は、
前記請求項2または7は、前記漂着救助装置が段状であり、各段の、段の先端部または全部が、本水流の方向に押し込まれることができる構造を採っており、かつ、
a)当該段の先端部と、当該段の先端部または全部の下面に面する範囲の、当該段の下段の上面の部分とを、一定のあそびを持たせた長さのコード、または、伸縮性を有するコードで接続し、これを段鼻に平行な方向に一定の間隔で連続的に配置することにより格子状部分を成し、通常時は、これを蹴込とし、本水流による浸水時には、本水流の動圧による荷重、または、前記水害遭難者の身体の接触や衝突による荷重を受けて、当該段の先端部または全部が押し込まれ、当該格子状部分が引き伸ばされることにより格子状の前記傾斜前面を形成させる構造、
b)当該段の先端部または全部の下面に面する範囲の、当該段の下段の上面の部分に、本水流の上流側となる前面が本水流の方向に高くなる勾配を持ち、本水流の方向に見た場合に櫛歯状に上部が開放された縦方向の格子状となる、傾斜面を成す格子状部分を有し、または、これに加え、
当該段の先端部または全部の下面に、本水流の上流側となる前面が櫛歯状に下部が開放された縦方向の格子状の面を成す格子状部分を有し、
通常時はこれら格子状部分は蹴込とされているが、本水流による浸水時には、本水流の動圧による荷重、または、前記水害遭難者の身体の接触や衝突による荷重を受けて、当該段の先端部または全部が押し込まれ、当該段の下段の上面の部分が有する格子状部分の本水流の上流側となる前面により、格子状の前記傾斜前面を形成させる構造、または、
c)当該段の先端部または全部の下面に面する範囲の、当該段の下段の上面の部分に、本水流の上流側となる前面が凸曲面である横桟を持つ格子状部材を設置し、通常時は、これは蹴込とされているが、本水流による浸水時には、本水流の動圧による荷重、または、前記水害遭難者の身体の接触や衝突による荷重を受けて、当該段の先端部または全部が押し込まれ、当該段の先端部と当該格子状部材の横桟の前面を結ぶ面により、格子状の前記傾斜前面を形成させる構造とした装置。
本願請求項9記載の開示は、
前記請求項1は、本水流の上流側となる前面に、水平面に投影した場合に軌道の方向が本水流の方向と平行となる向きに配された、スライダー、案内面やガイド、回転軸を含む、変形や移動の軌道を制限する機構によって支持された、可動のユニットを有し、本水流による浸水時に、当該可動のユニットの本水流の上流側となる先端部または前面が、前記水害遭難者の身体により本水流の方向に押し込まれると、前記軌道を制限する機構によって、当該先端部または前面が、上方に誘導されることにより、
本水流に呑まれ、水中にて当該装置に漂着し、当該先端部または前面に衝突した前記水害遭難者の身体に、本水流の方向の逆となる方向より上向きとなる反力を作用させ、当該水害遭難者の身体の運動方向を、上方に変換させ、または、
当該装置上に位置していて本水流に呑まれ、もしくは、本水流に呑まれて当該装置に漂着し、水中にて当該先端部または前面に接触している前記水害遭難者の身体に、本水流の動圧による荷重と、当該先端部または前面からの反力による、当該装置上方に向かう合力を作用させ、
本水流を受け続ける当該水害遭難者の身体を、当該装置の上流側前面に沿って当該装置上方に移動させる構造とした装置。
本願請求項10記載の開示は、
前記請求項9は、記載の可動のユニットが、本水流と直交する水平方向に配された回転軸を持つ回転体であり、
当該可動のユニットは、通常時の状態において、
本水流の上流側となる前面の、本水流に対し最も上流側に位置する部分が、当該回転軸より上方に位置する形状を持ち、かつ、
当該最も上流側に位置する部分が下方に移動する方向に回転しない構造を持つことにより、
通常時に、当該可動のユニットの上面の、当該回転軸より本水流の上流側となる部分を歩行しても、当該可動のユニットは回転せず、
本水流による浸水時に、当該可動のユニットの、当該最も上流側に位置する部分が、前記水害遭難者の身体により本水流の方向に押し込まれると、当該最も上流側に位置する部分が、上方に誘導されることにより、
本水流に呑まれ、水中にて当該装置に漂着し、当該最も上流側に位置する部分に衝突した前記水害遭難者の身体に、本水流の方向の逆となる方向より上向きとなる反力を作用させ、当該水害遭難者の身体の運動方向を、上方に変換させ、または、
当該装置上に位置していて本水流に呑まれ、もしくは、本水流に呑まれて当該装置に漂着し、水中にて当該最も上流側に位置する部分に接触している前記水害遭難者の身体に、本水流の動圧による荷重と、当該最も上流側に位置する部分からの反力による、当該装置上方に向かう合力を作用させ、
本水流を受け続ける当該水害遭難者の身体を、当該装置の上流側前面に沿って当該装置上方に移動させる構造とした装置。
本願請求項11記載の開示は、
前記請求項1から10までのいずれかに記載の装置は、人の身体の上方への移動を補助または促進する移動補助装置を、前記漂着救助装置に付置もしくは組み込み、または、成すことにより、人の身体を上方に移動させる構造を持つ装置。
本願請求項12記載の開示は、
前記請求項11は、記載の移動補助装置が、通常時は階段状の形状を維持しており、本水流により浸水すると、蹴込部分が、下段側の踏面部材と接続する部分を中心として本水流の下流側に回転して倒伏し、当該倒伏した蹴込部分と当該踏面部材とが連続する水平面を形成する装置。
本願請求項13記載の開示は、
前記請求項1から12までのいずれかに記載の装置は、転落防止装置を具有し、当該転落防止装置は、本水流による浸水時に、
前記水害遭難者の身体が前記漂着救助装置に沿って水中を上昇することを妨げず、当該漂着救助装置上かつ水面に位置する前記水害遭難者の身体が下方に移動することを防止し、水位低下後に当該水害遭難者の身体を水中または水面に転落させることなく大気中に待避させておくことができる構造を持つ装置。
本願請求項14記載の開示は、
前記請求項13は、記載の転落防止装置が、本水流による浸水時またはその後の水位低下時に、直接的または間接的に、浮力、重力、本水流の動圧による荷重、または、前記水害遭難者の身体の接触や衝突による荷重を受けることにより、前記漂着救助装置から当該水害遭難者の身体の転落防止のための部分を、突出させ、もしくは、起立させ、または、当該部分の角度を当該水害遭難者の身体の転落を防止できる角度に調整する装置。
本願請求項15記載の開示は、
前記請求項13は、記載の転落防止装置が、本水流による浸水時またはその後の水位低下時に、直接的または間接的に、浮力、重力、本水流の動圧による荷重、または、前記水害遭難者の身体の接触や衝突による荷重を受けることにより、前記漂着救助装置上面の部分を、落下させまたは下方に移動させ、当該部分が隣接する、当該漂着救助装置下部側の部分を、当該部分に対し、相対的に高くさせる構造とすることにより、前記転落防止装置とした装置。
本願請求項16記載の開示は、
前記請求項14は、記載の転落防止装置が、本水流と直交する水平方向に配された回転軸により支持され、その先端に、当該回転軸と平行な回転軸を介して、ねじりばねと回転止めで回転を制御された爪を具有し、当該爪は、
本水流による浸水時、当該ねじりばねにより前記漂着救助装置上流側前面より突出され、水中での前記水害遭難者の身体の当該前面に沿った上昇時には、当該水害遭難者の身体が接触し、当該上昇方向への荷重を作用されることにより、当該前面に押し込まれ、かつ、当該水害遭難者の身体の当該前面に沿った下方への移動時には、当該水害遭難者の身体が接触し、当該下方への移動方向に作用される荷重により当該爪に発生する回転モーメントを、当該爪が接続する回転軸と当該回転止めを介し、当該転落防止装置に伝達させることにより、当該転落防止装置を回転させて当該漂着救助装置から突出させる構造とした装置。
本願請求項17記載の開示は、
記請求項1から16までの、いずれか一つまたは複数の請求項に記載の装置を、複数、鉛直方向に、水平面に投影したときに重なる部分を持つように配置した装置。
本願請求項18記載の開示は、
前記請求項1から17までのいずれかに記載の装置は、
防波堤、防潮堤、または、堤防の、上方、側方、または、上方及び側方を覆うと共に、当該装置上部に、避難スペースや避難通路となる、上部避難路を具有し、当該上部避難路の上面の高さを、当該防波堤、防潮堤、または、堤防を越流する本水流の予想水面より高い位置に設定した装置。
本願請求項19記載の開示は、
前記請求項1から18までのいずれかに記載の装置は、
建築物を囲む外周の、全部または部分に設置され、当該建築物の外壁面が地面と接する部分より上部にて、当該建築物と接続する構造とされた装置。
本願請求項20記載の開示は、
津波や洪水等の水害時に、当該水害により引き起こされることが予想される水流の動圧による荷重や漂流物の衝突により、構造物が破壊されることを防止するための、当該構造物における支持構造で、通常時は、支持対象部分の重量により、安定して当該支持対象部分を支持し、本水流による浸水時は、本水流の動圧による荷重を受けて、当該支持対象部分を、本水流の方向に回転、倒伏、または、脱落させることにより、当該構造物が破壊されることを防止する構造であり、
当該支持構造は、当該支持対象部分と、地盤、基礎構造または床面に設置されたベースとを、水平面に投影した場合に軌道部分が本水流の方向と平行となる向きに配され、本水流の方向に上がっていく傾斜を成す軌道部分を含む、スライダーやガイドと、当該スライダーやガイドに接続するピンとからなる、複数組の接続部分により接続されて成り、
各接続部分は、それぞれ、スライダーやガイドと、ピンのうち、一方はベース側に、他方は当該支持対象部分側に具有され、
当該支持対象部分は、当該接続部分の、スライダーやガイドに、それぞれ接続するピンを沿わせて相対的に移動させることにより、動作や姿勢を制御され、
当該支持構造は、少なくとも、当該支持対象部分の回転軸またはピンの軸線方向に重なり合わない2組の接続部分を含み、これら2組の接続部分のうち、いずれか一方となる第一の接続部分は、通常時に、ピンが本水流の方向に上がっていく傾斜を成す軌道部分の端部に位置し、当該端部は、当該軌道部分以外の方向に閉じていることにより当該端部に位置している当該ピンの相対的な移動を制限し、当該ピンと当該端部との間で、通常時の、当該支持対象部分の重量による鉛直荷重、並びに、一定の範囲の方向または当該重量に対し一定の割合以下となる大きさの、当該支持対象部分の重量により生じる転倒モーメントによる荷重並びに当該支持対象部分に作用する衝撃及び風圧による荷重を含む、その他の荷重を伝達し、他方となる第二の接続部分のスライダーやガイドによる軌道の、通常時にピンが位置する部分が、通常時に第一の接続部分のスライダーやガイドの前記端部に位置するピンの芯を中心とした円弧を成さないことにより、通常時に当該支持対象部分を安定して支持し、
本水流による浸水時には、本水流の動圧による荷重を受けて、当該支持対象部分が上昇しながら本水流の方向に移動することにより、全ての接続部分のピンは、それぞれが接続するスライダーやガイドの、本水流の方向に上がっていく傾斜を成す軌道部分を相対的に通過し、このとき、当該支持構造を構成する接続部分のうち、
a)少なくとも1組の接続部分は、スライダーやガイドの、接続するピンが相対的に接近する側の端部を、閉じた形状とすることにより、当該ピンを相対的に当該端部に到達させ、本水流の動圧による荷重を受け続ける当該支持対象部分を、当該端部に相対的に到達した当該ピンを回転軸として、計画した角度まで回転または倒伏させる構造で、かつ、当該接続部分に対し当該支持対象部分の回転軸またはピンの軸線方向に重なり合わない全ての接続部分のスライダーやガイドは、前記により当該支持対象部分が計画した角度まで、または、倒伏するまで回転する間、それぞれ接続するピンの軸部外周が相対的に描く軌跡を、全て包含する、または、当該軌跡のいずれの部分も遮断せず、外部に開放する部分を持つ形状である構造、または、
b)全ての接続部分のスライダーやガイドが、それぞれ接続するピンが相対的に接近する側が、閉じておらず、外部に開放された形状であることにより、当該支持対象部分を脱落させる構造。
本願請求項21記載の開示は、
前記請求項20は、記載の支持対象部分に浮体部分を具有させ、または記載の支持対象部分を浮体とした構造。
本願請求項22記載の開示は、
前記請求項20または21は、浸水時以外に、または、地震時に、記載の支持対象部分を、回転、倒伏、または、脱落させない、ロック機構を持つ構造。
本願請求項23記載の開示は、
前記請求項20から22までのいずれかに記載の構造は、手摺やフェンスの支持構造。
本願請求項24記載の開示は、
前記請求項20から23までのいずれかに記載の構造は、本水流による浸水時に、本水流の動圧による荷重を受けて、前記支持対象部分を本水流の方向に回転させる構造で、かつ、当該支持対象部分を回転させた際に当該支持対象部分を支持する構造の一部を成す控えを具有し、当該控えは、
当該支持対象部分に、本水流と直交する水平方向に配された回転軸、または、当該回転軸に加えて軌道が鉛直方向成分を含むスライダーを介して接続され、
本水流による浸水時には、本水流の動圧による荷重を受け、開き止めにより回転の角度が制限されるまで、当該回転軸を中心として、本水流の方向に回転して展開し、
当該支持対象部分が、本水流の動圧による荷重を受けて、本水流の方向に回転した際に、当該控えの下端を、地面、基礎構造上面、または、床面に到達させることにより、当該支持対象部分を支持する構造の一部を成す構造。
本願請求項25記載の開示は、
前記請求項1から3まで、7、9、10、11、または、13から19までのいずれかに記載の装置は、本水流の方向に上がっていく傾斜を成して設置されることにより、または、前記請求項20から24までのいずれかに記載の構造で支持し、本水流による浸水時に、本水流の動圧による荷重を受けて、本水流の方向に一定の角度まで回転させることにより、前記漂着救助装置を成す、ルーバー、手摺やフェンス、または、これらを組み合わせた装置。
本願請求項26記載の開示は、
津波や洪水等の水害時における、防災、避難や救助のための装置の架構であって、通常時は倒伏した状態であり、動力により、または、津波や洪水等の水害により引き起こされることが予想される水流による浸水時の浮力もしくは本水流の動圧による荷重を受けることにより、起立する架構で、
当該架構は、当該架構の起立中は本水流の方向に上がっていく傾斜を成しながら起立する、第一の部材を有し、
第一の部材は、第一の部材の起立時に下端となる部分が、本水流と直交する水平方向に配された回転軸を介し、地盤もしくは基礎構造に設置された、水平面に投影した場合に軌道部分が本水流の方向と平行となる向きに配された、スライダーやガイドに接続され、
第一の部材は、第一の部材の起立時に上部または中間となる部分に、本水流と直交する水平方向に配された回転軸または方向を問わず回転自在な接続部を介し、第二の部材に接続され、
第二の部材は、第二の部材の起立時に下端となる部分が、本水流と直交する水平方向に配された回転軸または方向を問わず回転自在な接続部を介し、地盤もしくは基礎構造に、または、地盤もしくは基礎構造に設置された、水平面に投影した場合に軌道部分が本水流の方向と平行となる向きに配された、スライダーやガイドに接続され、
当該架構の起立時には、第一の部材と第二の部材が異なる勾配の傾斜を成す構造とすることにより、及び、
第一の部材は、第一の部材の起立時に第二の部材が接続する部分より下部となる部分において、浸水時に本水流を受けるパラシュート状の装置、通常時は倒伏した状態で浸水時は起立し本水流を受ける板状の装置、ウィンチ、または、アクチュエータに接続され、
第一の部材が、接続するウィンチもしくはアクチュエータによる荷重を受け、または、本水流により浸水し、接続する浸水時に本水流を受けるパラシュート状の装置もしくは通常時は倒伏した状態で浸水時は起立し本水流を受ける板状の装置による荷重を受けることにより、起立する架構。
本願請求項27記載の開示は、
前記請求項26は、記載の第一の部材が、接続する、浸水時に本水流を受けるパラシュート状の装置、通常時は倒伏した状態で浸水時は起立し本水流を受ける板状の装置、ウィンチ、または、アクチュエータによる荷重を受け、即座に起立を開始できるようにする、起立補助機構を持つ架構。
本願請求項28記載の開示は、
前記請求項27は、記載の起立補助機構が、
第一の部材及びこれに接続された構造部材のうちの、全部または一部となる構造部分が、前記架構の倒伏時に、水平面に投影した場合に軌道の方向が本水流の方向と平行となる向きに配された、スライダーやガイドを含む、変形や移動の軌道を制限する機構のみにより拘束または支持されることにより、当該構造部分が、接続する、ウィンチもしくはアクチュエータにより作用される荷重、または、本水流により浸水し、浸水時に本水流を受けるパラシュート状の装置もしくは通常時は倒伏した状態で浸水時に起立し本水流を受ける板状の装置により作用される荷重を受け、倒伏した状態のまま、本水流の方向に移動できる構造を採り、かつ、当該構造部分と、地盤または基礎構造との間に、
a)当該構造部分の一部を押し上げる摺動部を有し、
当該摺動部は、当該構造部分と、地盤または基礎構造の、双方に対偶を具有させて、当該対偶が互いに摺動し合う機構とすることにより成り、
当該対偶のうち少なくともいずれか一方は本水流の方向に上がっていく傾斜を持つ案内面を含み、倒伏した状態の当該構造部分が本水流の方向に移動すると、当該対偶が互いに摺動し合い、当該構造部分が具有する対偶が上方に誘導されることにより、
b)もしくは、当該構造部分の一部を押し上げる可動体を有し、
当該可動体は、水平面に投影した場合に軌道の方向が本水流の方向と平行となる向きに配された、スライダー、案内面やガイド、回転軸を含む、変形や移動の軌道を制限する機構によって姿勢を制御され、
当該可動体は、倒伏した状態のまま本水流の方向に移動した当該構造部分により接触され、本水流の方向に押し込まれ、
または、ウィンチもしくはアクチュエータに接続され、これらにより作用される荷重、もしくは、前記パラシュート状の装置もしくは前記板状の装置に接続され、本水流により浸水し、これらの装置により作用される荷重を受け、本水流の方向に押し込まれ、
当該可動体の少なくとも一部が上方に誘導されることにより、
c)または、当該摺動部と当該可動体とを併せて有し、
倒伏した状態の当該構造部分が本水流の方向に移動した範囲により、当該構造部分が具有する対偶が上方に誘導され、または、当該可動体の少なくとも一部が上方に誘導されることにより、
倒伏した状態の当該構造部分が本水流の方向に移動した際に、当該構造部分の一部を上方に押し上げ、当該架構の起立を補助する、前記起立補助機構を構成する架構。
本願請求項29記載の開示は、
前記請求項1から16のいずれかに記載の装置は、前記請求項26から28までのいずれかに記載の架構を持つ装置。
本願請求項30記載の開示は、
津波や洪水等の水害時の本水流を抑制する装置や防潮堤を成す装置で、前記請求項26から28までのいずれかに記載の架構を持つ装置。
本願請求項31記載の開示は、
漂流物ガードを成す装置で、前記請求項26から28までのいずれかに記載の架構を持つ装置。
本願請求項32記載の開示は、
避難施設を成す装置で、前記請求項26から28までのいずれかに記載の架構を持つ装置。
<請求項記載の開示に関する説明>
<請求項1記載の開示に関連する説明>
小構造を繰り返すことにより形成する段状や傾斜面とする場合を含み、津波や洪水等の水害により引き起こされることが予想される水流(以下、「本水流」という。また、本水流の来襲側を「上流側」、本水流の抜ける側を「下流側」という)の方向に上がっていく形状を成す装置で、格子(一方向のみの桟による連子等を含む。以下、「格子」という)状としたり、当該装置を貫通する多数の小さな開口や間隙を持たせる等により、本水流は透過させるが、本水流に呑まれて水中または水面を漂流する者(水害発生時において当該傾斜面上にいた者も含む。以下、「水害遭難者」という)の身体は通過させない構造とし、かつ、本水流に呑まれ、水中にて当該装置に漂着し、当該装置の上流側前面に衝突した水害遭難者の身体に、本水流の方向の逆となる方向より上向きとなる反力を作用させることにより、当該水害遭難者の身体の運動方向を、上方に変換させ(当該水害遭難者の身体が当該装置の上流側前面により反発する場合も、本水流の方向の逆となる方向より上向きに反発させることで、本水流を受け続ける当該水害遭難者の身体は、当該装置の上流側前面の、より上方に再度漂着することを繰り返しながら上方に移動することができるようになる)、または、当該装置上に位置していて本水流に呑まれ、もしくは、本水流に呑まれて当該装置に漂着し、水中にて当該装置に接触している水害遭難者の身体に、本水流の動圧による荷重と、当該装置からの反力による、当該装置上方に向かう合力を作用させる構造とすることにより、または、変形してそのようになる構造とすることにより、本水流による浸水時に、当該装置上に位置していて本水流に呑まれた水害遭難者や、水中で当該装置に漂着し、本水流を受け続ける水害遭難者を、当該装置の上流側前面に沿って上方に押し上げて、水面付近に到達させ、または、その状態を維持することにより、当該水害遭難者を救助または救命することができる装置(以下、「漂着救助装置」という)を提供する。請求項1は、実施例1、5、9、27他にて例示される。
尚、水害遭難者を漂着救助装置の上流側前面に沿って上方に押し上げる構造として、漂着救助装置の上流側前面を、本水流の方向に高くなる傾斜面(以下、「傾斜前面」という)とする方法(請求項2に関連)や、漂着救助装置の上流側前面に、押し込まれると、その前面が上方に誘導される機構を有する可動のユニットを設置する方法(請求項9や10に関連)を後述する。
<請求項2記載の開示に関連する説明>
当該装置の上流側前面を、なめらかな傾斜前面とすると、本水流による浸水時に、水中にて当該傾斜前面に接触している水害遭難者の身体には、本水流の動圧による荷重と、当該傾斜前面からの、法線方向の反力が作用している。これらの合力は、当該傾斜前面に平行な上向きとなり、当該水害遭難者の身体は、当該傾斜前面に沿って上昇することができる。
尚、当該水害遭難者の身体が、当該傾斜前面や漂着救助装置の上流側前面に衝突した際に反発する場合は、当該反力が大きくなるため、当該合力は当該傾斜前面や漂着救助装置の上流側前面から離れた角度となるが、上記のように、当該水害遭難者は本水流を受けて再び当該装置に漂着することを繰り返すため、当該装置上方に誘導される。これは、漂着救助装置の上流側前面に可動のユニットを設置する方法とした場合も同様である。
請求項2は、実施例1、7、11他にて例示される。
<請求項3記載の開示に関連する説明>
傾斜前面は、縦方向の格子状の表面とすることにより、漂着した水害遭難者を滑らかに上方に誘導でき、板状、短冊状、線状等の部材で構成できるため、簡易で合理的な構造とできる。
請求項3は、実施例1、4、26、他にて例示される。
<請求項4記載の開示に関連する説明>
傾斜前面は、一定の条件を満たすことにより、網状の構造とすることができる。
請求項4は、実施例46にて例示される。
<請求項5記載の開示に関連する説明>
傾斜前面を網状とする場合は、水中にて漂着した水害遭難者の頭部や手足が網目に入り込み引掛らないようにするためには、網目を小さくすることが有効であるが、同時に、網状の装置を上って避難できるようにするためには、一定の大きさの足掛りの穴がある程度必要となる。
請求項5は、実施例46にて例示される。
<請求項6記載の開示に関連する説明>
足掛りの穴は、浸水時にめくれあがり、塞ぐことができるカバーを設置することで、大気中では足掛りとしての機能を果たしながら、水中では漂着した水害遭難者の頭部や手足の引掛りを防止することができ、安全性を向上させることができる。
請求項6は、実施例46にて例示される。
<請求項7記載の開示に関連する説明>
漂着救助装置は、浸水時に変形することにより、漂着救助装置として機能する構造とすることができる。この場合、当該装置は、通常時に、当該装置上の歩行や振動、風圧力等により、部材同士が衝突し騒音を発生させる、使用上の支障をきたす、事故を引き起こす、等の問題の原因となる、有害な変形をしない構造とすることが重要となるが、可動部分の形状や支持方法により、または、ロック機構により、通常時に変形せず、安定して形状を保つ構造とすることができる。このうち、傾斜前面を形成する装置は、本水流による浸水時、ロック機構を持つ場合はロックが解除され、浮力、重力、本水流の動圧による荷重、または、漂着した水害遭難者の接触や衝突による荷重を受けて変形し、本水流の上流側となる前面が、傾斜前面を形成する、または、傾斜前面を当該水害遭難者が上昇するのにより適切な勾配となるよう調整する構造とすることができる。
形状や支持方法により通常時に安定する例として、実施例10、12、28、38他がある。実施例28は、可動部分が、通常時は重心と支点の位置関係などにより安定しているが、浸水すると、浮力や本水流の動圧による荷重を受けて変形し、重力を加えたバランスにより、傾斜前面を形成する。水害遭難者が漂着すると、接触や衝突による荷重を受けて、当該傾斜前面が、当該水害遭難者を上方に誘導するのにより適切な角度に変形する。
ロック機構を持つ例として、実施例7や8があるが、後述する転落防止装置等も含めて本水流による浸水時に変形させる可動部については、別途、可動部に、実施例40、41、42に示すようなロック機構を適用することにより、通常時のさらなる安定や安全を図ったり、当該可動部の浸水に先駆けてロック解除できるものとして漂着した水害遭難者に対する安全性を向上することもできる。
<請求項8記載の開示に関連する説明>
漂着救助装置が段状であり、各段の、段の先端部を含む部分または全部が水平方向に押し込まれることができる構造としたもので、本水流による浸水時に、当該段の先端部が、本水流の動圧による荷重や、水中にて漂着した水害遭難者の接触や衝突による荷重を受けて押し込まれることで、当該段の先端部と、その下部に設置した蹴込となる部分により、傾斜前面を形成する装置を提供する。蹴込となる部分は、以下のa〜cの3通りの構造を示している。尚、蹴込となる部分は、通常時は段の先端より飛び出して昇降や歩行の邪魔にならない位置に設置する。
a)段の先端部と、その下部となる下段の上面を、一定のあそびを持たせた長さとした、または伸縮性を有する、ワイヤー、ケーブルやコード等(以下、これらを総称して「コード」という)で接続し、当該コードを段鼻に平行な方向に一定の間隔で連続的に配置することによって、格子状部分を形成させ、本水流による浸水時に段の先端部が押し込まれると、当該格子状部分が引き伸ばされ、格子状の傾斜前面を形成させる構造。
b)段の先端部の下部となる、下段の上面の部分に、本水流の上流側となる前面が本水流の方向に高くなり、本水流の方向に見た場合に櫛歯状に上部が開放された縦方向の格子状の傾斜面を形成する格子状部材を設置し、または、これに加え、この上部となる当該段の先端部の下面に、本水流の上流側となる前面が櫛歯状に下部が開放された縦方向の格子状の面(鉛直面またはこれに近い傾斜面とすることが望ましい)を形成する格子状部材を設置し、本水流による浸水時に段の先端部が押し込まれると、下段の上面の部分に設置した当該格子状部材の本水流の上流側となる前面により、格子状の傾斜前面を形成させる構造。
c)段の先端部の下部となる、下段の上面の部分に、本水流の上流側となる前面が凸曲面である横桟を持つ格子状部材を設置し、本水流による浸水時に段の先端部が押し込まれると、当該段の先端部と、下段の上面の部分に設置した当該格子状部材の横桟の前面を結ぶ面により、格子状の傾斜前面を形成させる構造。
請求項8は、実施例11で例示される。
<請求項9記載の開示に関連する説明>
本水流の上流側となる前面に可動のユニットを持たせて水害遭難者を漂着救助装置に沿って上方に押し上げる構造について説明する。
当該可動のユニットの本水流の上流側となる先端部または前面が、本水流による浸水時に、水中にて当該装置に漂着し接触した水害遭難者の身体により押し込まれると、スライダーやガイド、回転軸等、当該可動のユニットの軌道を制限する機構により当該可動のユニットの本水流の上流側となる先端部または前面が上方に誘導される構造とすることにより、当該部分に対し、本水流の方向に接触または衝突した当該水害遭難者の身体に、上方への反力を作用させることができ、衝突した当該水害遭難者の身体の運動方向を上方に変換させ、または、接触している当該水害遭難者の身体に当該装置上部へ向かう方向への合力を与え当該方向に運動させることができる。
請求項9は、実施例9、10、14にて例示される。
<請求項10記載の開示に関連する説明>
上述の可動のユニットを、水流の方向と直交する水平方向の回転軸を持つ回転体とした場合、水中にて当該装置に漂着した水害遭難者の身体が接触または衝突する、当該可動のユニットの本水流の上流側となる前面の先端となる部分が、当該回転軸より上部に位置する形状とすることにより、当該先端となる部分は、当該水害遭難者の身体により本水流の方向に押し込まれると、当該可動のユニットが回転し、当該先端となる部分が上方に誘導され、接触している当該水害遭難者の身体に、上方への反力を作用させることができ、衝突した当該水害遭難者の身体の運動方向を上方に変換させ、または、接触している当該水害遭難者の身体に当該装置上部へ向かう方向への合力を与え当該方向に運動させることができる。
尚、当該可動のユニットは、回転中全ての時点において、最も先端となる部分が当該回転軸より上方となるようにする必要はなく、当該水害遭難者の身体が上方への運動を開始し、一定量回転した時点で、当該可動のユニットの下部を突出させて傾斜前面を形成させる構造などとすることもできる。このため、少なくとも通常時の状態においては、当該可動のユニットの、最も先端となる部分が、当該回転軸より上方に位置するものとし、当該水害遭難者の身体の接触開始後、一定の回転範囲においては、最も先端となる部分が当該回転軸より上方となるようにするとよい。
また、通常時、当該可動のユニットは、当該先端となる部分が下方に移動する方向に回転しない構造とすることで、その上面を安全に歩行することができ、本水流による浸水時は、当該装置に漂着した水害遭難者の身体が、当該可動のユニットの先端となる部分に、一時的に下方への荷重を作用させても、当該可動のユニットは逆回転せず、当該水害遭難者の身体に対し、確実に上方への反力を作用させることできる。
請求項10は、実施例9、14にて例示される。
<請求項11記載の開示に関連する説明>
漂着救助装置に、スロープ状、階段状、梯子状等の形状を成すことなどにより人の身体の上方への移動を補助もしくは促進する装置(以下、「移動補助装置」という)を付置し、もしくは、組み込み、または、漂着救助装置が移動補助装置を形成することにより、水面に到達した水害遭難者が上方に避難することを可能にする装置(以下、「漂着避難装置」という)を構成することができる。
請求項11は、実施例1、3、5、7、26、他にて例示される。
<漂着避難施設について>
漂着避難装置は、上部に避難スペースや避難通路(両者を総称して「上部避難路」という)を設けることにより、または、上部を別の避難施設等に接続させることにより、水中を漂流する水害遭難者が漂着して避難できる施設(以下、「漂着避難施設」という)を形成することができる。
<避難路ネットワークやセーフティネットの形成について>
漂着避難施設は、地面からアクセス可能なものとすることで、近隣からの避難(以下、「初期避難」という)先となる避難施設として機能できる。また、漂着避難施設は、水平方向に線状に連続させることにより、より広範な地域住民が避難先として利用できる。
さらに、この線状の漂着避難施設をネットワーク状に構成することで、対象地域の各所からの一定範囲内の距離での避難を可能にすると同時に、上部避難路のネットワークにより、段階的に、より安全な避難施設や避難路に避難できる、避難路のネットワーク(以下、「避難路ネットワーク」という)を構成することができる(以下、段階的な避難について、初期避難した漂着避難施設の上部避難路が接続する、より安全な上位の避難施設や避難路への避難を「二次避難」、さらに安全な上位の避難施設等への避難を「三次避難」という)。
また、漂着避難施設をネットワーク状または予想される本水流と直交する方向に連続した(または断続して平行に配置し、互いをオーバーオーバーラップさせた)線状に展開することにより、逃げ遅れて本水流に呑まれた水害遭難者を、一定距離以内で漂着させ救助することが可能な、人命の物理的なセーフティネット(以下、「セーフティネット」という)を形成することができる。
避難路ネットワークやセーフティネットの形成に関しては、実施例2にて詳細を説明する。
<請求項12記載の開示に関連する説明>
階段状の漂着避難装置で、浸水後、漂着して水面に到達した水害遭難者が待避できるスペースを、通常時の踏面寸法以上に拡張できる構造について説明する。
通常時は階段状の形状を維持しており、浸水後、本水流の動圧や漂着した水害遭難者の身体により段鼻部分や蹴込部分が押し込まれると、当該蹴込部分が下段側の踏面部材と接続する部分を中心に回転し当該蹴込部分が傾斜前面を形成し、さらに押し込まれると、当該蹴込部分が倒伏し、当該踏面部材と連続する水平面を形成することができる。
請求項12は、実施例13にて例示される。
<請求項13記載の開示に関連する説明>
漂着救助装置には、水害による水位が最高に達した高度において、水面付近に到達した水害遭難者が重力により下方向に移動することを防止し、水位低下後に当該水害遭難者が水中または水面に転落することなく、大気中に待避しておくことができる装置(以下、「転落防止装置」という)を付加することにより、当該水害遭難者に意識が無い場合や体力が無く自力で避難ができない場合であっても、水面または大気中に留まり救助を待つことが可能となる。
津波等による本水流は乱流となり、局所的な渦の発生などにより水面の高さは細かく変動するものと考えられるが、これにより、既に水面に到達していた水害遭難者は、一時的に上昇した水面に押し上げられ、漂着救助装置に沿って、より高い位置に到達し、転落防止装置に捕捉されるため、平均的な水位が長時間低下しない状況であっても、およそ大気中で待避しておくことができるものとなる。
転落防止装置は、漂着救助装置上に、一定間隔おきに連続的に配置することにより、漂着救助装置全体にわたって当該水害遭難者が安全に待避できる機能を提供することができる。
尚、転落防止装置は、水害遭難者が漂着救助装置に沿って水中を上昇することを妨げない構造とする。
請求項13は、実施例3、10、27他にて例示される。
<請求項14記載の開示に関連する説明>
転落防止装置は、本水流による浸水時やその後の水位低下時に、直接的または間接的に、浮力、重力、本水流の動圧による荷重、または、漂着した水害遭難者の接触や衝突による荷重を受けて、漂着救助装置から水害遭難者の転落防止のためのアーム状などの部分を突出させ、起立させ、または、水害遭難者の身体の転落を防止するために最適な角度に調整される構造とすることができる。
請求項14は、実施例7、10、27、48他にて例示される。
<請求項15記載の開示に関連する説明>
漂着救助装置上面について、本水流による浸水時やその後の水位低下時に、水害遭難者の身体が収まる大きさの部分を一定量落下または下方に移動させる構造とすることにより、当該部分とその周囲を合わせて転落防止装置として機能させることができる。
これは、当該部分を落下または下方に移動させることにより、当該部分の周囲を相対的に高くすることができ、このうち漂着救助装置下部側(上流側)の部分により、当該水害遭難者の転落を防止できるためである。
請求項15は、実施例9にて例示される。
<請求項16記載の開示に関連する説明>
漂着救助装置上に、回転軸で支持され、ねじりばねや同様の機能を持つ機構(以下、「ねじりばね」という)や、浮力や水流の動圧による荷重を受けるなどして回転にモーメントを与える機構と、回転可能な範囲を制限する機構(以下、「回転止め」という)により回転を制御された、アーム状などの部材を設置することにより、回転式の転落防止装置を構成できる。
例えば、アーム状の転落防止部材を、その下部にて回転軸により支持し、これを傾斜前面上に等間隔に配置する。通常時、当該転落防止部材は、当該傾斜前面に対し、限定された角度で開いているものとすることにより、本水流による浸水時に漂着した水害遭難者に対し、当該転落防止部材を軸方向に突きつけて負傷させることを避けつつ(水平に近い角度で開いていると危険となる)、当該水害遭難者の身体が当該転落防止部材の前面を押し込みやすいものとすることができる。当該転落防止部材が押し込まれることで、当該傾斜前面が漂着救助装置の上流側前面に現れ、または、当該転落防止部材の前面が新たな傾斜前面を成し、当該水害遭難者は、この傾斜前面に沿って上方に誘導される。当該水害遭難者が当該部分を通過した後、当該転落防止部材はねじりばね等により一定角度まで開こうとするため、当該水害遭難者が最高位となる水面に到達後、水流の水位が低下したすると、当該水害遭難者は当該転落防止部材に捕捉されるが、当該転落防止部材が開き止めにより回転を制限されるまで大きく開くことができるものとすることにより、当該転落防止部材による、より広い待避のためのスペースを創出することができる。
また、転落防止装置を、上記のような回転式の構造とした場合、その先端に、回転軸を介して、ねじりばねと、回転止めにより、回転を制御された爪を具有させることによって、当該水害遭難者の身体が漂着救助装置前面に沿って下降しようとする際、当該爪に接触させ、当該転落防止装置を引き起こして当該水害遭難者の身体を捕捉させる機構を構成できる。当該爪は、回転して本水流の方向に押し込むことができるため、水中にて漂着救助装置に漂着した水害遭難者の漂着救助装置上方への移動を阻害せず、また、傾斜前面の一部となることもできる。当該水害遭難者が水面付近に到達後、水位の低下により下方に転落しようとすると、当該爪が当該水害遭難者の身体を捕捉して接続する当該転落防止装置を回転し展開させるため、より確実に当該水害遭難者を捉え、待避させることが可能となる。
請求項16は、実施例7にて例示される。
<請求項17記載の開示に関連する説明>
漂着救助装置は、単層による構成が望ましいが、上下に重ねて配置することにより、省スペース化や省コスト化することが可能となる。
階段状の漂着避難装置とする場合であれば、当該階段状の漂着避難装置を上り、連絡通路などにより本水流の前面側に移動する、ということを繰り返し上方に避難できる構成とすると合理的だが、一般の折り返し階段のように、上る方向が交互に逆転する構成とする場合、本水流の方向に対し、当該漂着避難装置が下りとなる側の揚裏に水害遭難者が漂着すると危険となるため、このようにならないよう、水害遭難者を当該漂着避難装置が上りとなる側に誘導するなどの配慮が肝要となる。
また、水害遭難者が、漂着した漂着避難装置上で水面に到達しない場合を想定し、その下流側に別途漂着避難装置を設けたり、なおも水面に到達しない場合を想定し、その上部を開放し、水害遭難者を引き続き漂流させて救助または救命の可能性を残す、といった配慮も肝要である。
請求項17は、実施例21、23、24他にて例示される。
<請求項18記載の開示に関連する説明>
防波堤、防潮堤、もしくは堤防の上方や側方を、当該防潮堤上部の予想越流高さを超える高さまで立ち上げた漂着避難装置と上部避難路で覆うことにより、安全な漂着避難施設とでき、水害遭難者を救助または救命するセーフティーネットとしての機能を発揮できる。また、ゴムボート等の接岸や進水が可能であり、避難路ネットワークの動線としての利用、漂着避難装置や上部避難路の作業スペースとしての利用などにより、浸水後の救助活動を容易にできる。
さらに、当該漂着避難施設上部に避難や救助活動等に利用可能な建築物を設置することにより、水害襲来後の、より強力な救助拠点として機能することができる。
請求項18は、実施例18、19にて例示される。
<請求項19記載の開示に関連する説明>
漂着避難装置を建築物の、本水流の下流側に設置することにより、避難が遅れるなどして当該建築物内で本水流に呑まれ、建築物から、本水流の下流側に流出した水害遭難者を、即座に救助または救命することができる。
また、漂着避難装置を建築物の、本水流の上流側に設置することにより、上流側地域からの水害遭難者を救助または救命することができ、計画によっては、近隣住民等の初期避難先とすることができる。
これらを当該建築物に接続することにより、当該漂着避難装置に漂着した水害遭難者が、当該建築物に避難することができる。
その他、側面の屋外階段に漂着避難装置を適用することもできる。
建築物に漂着避難装置を設置し、または、接続する場合、特に、建築物そのものを漂着避難施設とする場合、敷地や構造等を兼用できるなど利点が多く、合理的である。
請求項19は、実施例34、38、46他にて例示される。
<請求項20記載の開示に関連する説明>
津波や洪水等の水害時、本水流の動圧による荷重や、漂流物の衝突により、様々な構造物が破壊される。これを防止するには、当該構造物に、本水流に対し十分な強度を持たせることの他、当該構造物が設置場所に固定されていない場合や固定を外すことができる場合、水害の発生前に、当該構造物を影響を受けない場所に移動させておく、当該構造物が板状などの場合は倒伏させておく、本水流の動圧により大きな荷重を受ける部分を撤去しておく、といった対応方法が考えられるが、水害の発生が予測されてから対応を完了するのに時間が十分あるとは限らず、また、対応作業に危険を伴う可能性がある。
このため、板状等の構造物に適用可能で、通常時には安定して支持対象部分を支持でき、浸水時には本水流の動圧による荷重を利用して当該支持対象部分を回転もしくは倒伏させ、または、脱落して漂流させることができる支持構造を示す。
当該支持構造は、当該支持対象部分と、これを支持するベースとを、スライダーやガイドと、ピンによる、接続部分により接続することにより構成され、当該支持対象部分が、通常時は、自重により安定して支持され、本水流による浸水時は、本水流の動圧による荷重を受けて、回転、倒伏、または、脱落する構造としたものである。
スライダーやガイドは、支持対象部分、ベースのどちらの側に設置してもよく、もう一方の側にピンを設置し、一組の接続部分を構成する。各スライダーやガイドは本水流の方向に上がっていく傾斜部分を持つ。
支持対象部分が小さい場合は、一箇所のベースにより支持することもできるが、支持対象が水平方向に長い場合などは、複数のベースにより支持するとよりよい。この場合、全てのスライダーやガイドの軌道部分が存する平面は、互いに平行になるよう配置する。尚、ピンの軸線の向きは、これらの平面の法線となる。当該支持対象部分を回転または倒伏させる場合、同一軸線上に配置されたピンが当該支持対象部分の回転軸となり、当該ピンを有する接続部分のスライダーやガイドの軌道部分は、当該回転軸方向またはピンの軸線方向に重なり合う形状とする。
当該支持構造は、少なくとも、当該支持対象部分の回転軸またはピンの軸線の方向に重なり合わない2組の接続部分を持つことにより、当該支持構造は当該支持対象部分を支持し、また、姿勢を制御することが可能となる。通常時には、当該支持対象部分は自重により下方に移動しようとするが、このとき、これら2組の接続部分のうちのいずれか一方となる第一の接続部分について、スライダーやガイドの前記傾斜部分の、ピンが接近しようとする側の端部を閉じたものとすることにより、当該端部で、当該端部に位置するピンを介し、当該支持対象部分の重量による鉛直荷重、並びに、一定の範囲の方向または当該重量に対し一定の割合以下となる大きさの、当該支持対象部分の重量により生じる転倒モーメントによる荷重並びに当該支持対象部分に作用する衝撃及び風圧による荷重を含む、その他の荷重を受けることができる。さらに、このとき、前記の2組の接続部分のうちの他方となる、第二の接続部分の、スライダーやガイドによる軌道の、ピンが位置する部分が、第一の接続部分のピンの芯を中心とした円弧を形成していないことにより、第二の接続部分のピンは第一の接続部分のピンの芯を中心として回転することができないため、当該支持対象部分は、安定して支持された状態を維持できる。
本水流による浸水時には、当該支持対象部分は、当該支持対象部分に作用する本水流の動圧による荷重を受け、各接続部分の、スライダーやガイドの、本水流の方向に上がっていく傾斜部分に、各々接続するピンを沿わせながら上昇する。
尚、これら本水流の方向に上がっていく傾斜部分は、互いに、平行としたり、同一の形状かつ同一の向きや角度とすることにより、ピンが当該傾斜部分に位置する間は、当該支持対象部分を回転させずに支持しておくことができるため、当該支持対象部分に作用する荷重により発生するモーメントの影響を受けて当該支持対象部分を移動させることがなく、通常時、当該支持対象部分を、より安定させることができ、当該構造物のより安全な利用が可能となる。
本水流による浸水時に当該支持対象部分を回転または倒伏させるものとする場合、少なくとも1つの接続部分のスライダーやガイドの、本水流による浸水時にピンが接近する側の端部を閉じた形状とすることにより、当該端部に到達した当該ピンの芯を中心として当該支持対象部分を回転または倒伏させることができる。
当該支持対象部分の回転軸とならない接続部分のスライダーやガイドは、接続する各々のピンの軸部外周が、当該支持対象部分が回転を開始する時の位置から、当該回転軸に対し、計画された角度を回転させた軌跡を含む形状とする。ここで、これらのスライダーやガイドを閉じた形状とせず、当該軌跡やその延長部分が通過する部分にて外部に開放してもよい。この場合、当該支持対象部分を一定の角度まで回転させるものとする場合は、別途、回転する角度を制限する回転止めを設ける。
さらに、すべてのスライダーやガイドの、浸水時にピンが接近する側の端部を外部に開放した形状とすることにより、浸水により、支持対象部分を脱落させ漂流させることができるものとなる。
尚、上記説明でのピンの位置や移動についての既述は、接続するスライダーやガイドに対する相対的な関係を含む。
請求項20は、実施例35他にて例示される。
<請求項21記載の開示に関連する説明>
支持対象部分は、浮体を具備させる、または、浮体とすることにより、浸水時に当該支持対象部分に浮力を作用させ、当該支持対象部分が、当該支持構造の各接続部分のピンをスライダーやガイドに沿わせながら、上昇しやすいものとすることができる。
請求項21は、実施例35他にて例示される。
<請求項22記載の開示に関連する説明>
支持対象部分の通常時の倒伏や回転防止として、当該支持対象部分に一定の重量を持たせることにより、いたずらや衝突等、または、風圧力に対し移動や変形をさせないものとすることができ、地震力に対しては、予想される加速度や振幅に対し、スライダーやガイドの、本水流の方向に上がっていく傾斜部分に、適切な勾配や長さを持たせることにより対策することができるが、実施の際の条件によっては、ロック機構を併用すると、よりよい。
一般的に提案されているような構造を持つ耐震ロック機構を設置した場合、地震時に一定の揺れが発生した時にロックさせることができるが、これに対し、次の実施例のように、通常時はロックしておき、浸水時のみロックが解除されるロック機構を設置することもできる。
実施例36、37は、通常時は支持対象部分を上昇させないようロックしておき、浸水時は浮体を用いたロック機構によりロックを解除し、支持対象部分が上昇し、回転や倒伏が可能となる機構を示している。
実施例40は、簡単に設置できるユニット式のロック機構を、実施例41、42は、支持構造付近の浸水に先行してロックを解除させ、より確実に支持対象部分の移動や変形を可能とするロック機構を示している。
請求項22は、実施例36、37、40、41、42にて例示される。
<請求項23記載の開示に関連する説明>
手摺やフェンスは、本水流による浸水時、回転や倒伏ができるものとすることにより、本水流の動圧による荷重や、漂流物の衝突による破壊を防止でき、漂着避難装置付近に設置されたものである場合、水害遭難者が当該漂着避難装置に漂着することを妨げないものとすることができる。
請求項23は、実施例35、36他にて例示される。
<請求項24記載の開示に関連する説明>
本水流による浸水時に支持対象部分を回転させるものとする場合、支持構造に、通常時は直立し他の部材より大きく突出しないよう格納され、本水流により浸水し当該支持対象部分が回転した際には当該支持対象部分に本水流の動圧や漂流物の衝突等による大きな荷重が加わっても、当該支持構造を一定以上回転させず、または破壊させないための、本水流による浸水時に本水流の下流側に展開して圧縮材として当該支持構造の一部となり当該支持対象部分を補助的に支持する部材(後述する、通常時は倒伏して格納され、本水流による浸水時には起立する架構に適用する場合を含め、起立したまたは起立させる構造体の上部または中間部と地盤や基礎構造とを接続することにより、起立した状態の当該構造体の回転や当該構造体及び当該構造体の支持構造の破壊を防止する部材で、本水流の上流側に配置され引張材とするものや、頬杖、バットレス等を含み、以下、これらを総称して「控え」という)を具有させると、当該支持対象部分の回転時、当該支持構造は、より大きな強度を発揮できるものとなる。
当該控えは、当該支持対象部分に回転軸または回転軸とスライダー(鉛直方向成分を含むことにより、通常時に、当該控えの下端をベース側に接触させておくことができ、当該ベース側の形状により当該控えが振られないものとできる)を介して接続させ、通常時には支持対象部分の一部などとして格納しておくことができるが、浸水時には本水流の動圧による荷重を受けて開き止めにより回転の角度が制限されるまで回転して本水流の下流側に展開し、当該支持対象部分が回転して当該控えの下端が床面や当該支持構造の設置面等に到達すると、当該控えは当該支持構造の一部となり、当該支持構造は大きな強度を発揮できるものとなる。
後述する、本水流による浸水時に回転して漂着救助装置や漂着避難装置を成すルーバー、手摺やフェンス、または、これらを組み合わせた装置などは、支持構造をベースプレートなどでまとめた片持構造とすると簡易に構成できるが、上記の控えを具有させることにより、本水流による浸水時に当該控えが展開し、水害遭難者の漂着時等に当該装置に作用する大きな荷重に備えることができるものとなる。
尚、控えは、支持対象部分の回転に先行して展開させる構造とすることにより、より確実に支持構造を補助することができ、よりよい。
請求項24は、実施例45にて例示される。
<請求項25記載の開示に関連する説明>
ルーバー(羽板状部分を一定間隔で配置し桟状部分などにより支持したもの。以下、「ルーバー」という)、手摺やフェンス、または、これらを組み合わせた装置は、本水流の方向に上がっていく傾斜を成すものとすることにより、または、本水流による浸水時、一定の角度まで回転できる構造とすることにより、当該装置自体を漂着救助装置や漂着避難装置とすることができる。また、当該装置を設置した建築物等は、漂着避難施設とすることができる。
請求項25は、実施例34、38、39他にて例示される。
<請求項26記載の開示に関連する説明>
津波や洪水等の水害時の防災、避難や救助のための装置の架構で、通常時は倒伏した状態で格納されており、上部空間を有効に利用したり、視界を妨げないものとすることができ、水害の襲来時には起立し機能させることができる架構について示す。
当該架構は、起立時に下端となる部分がスライダー等に接続され、中間または上部となる部分がやはり倒伏して格納された控え等に接続され移動や変形を制限された部材を、本水流の動圧による荷重等を利用することなどにより、当該下端となる部分を当該スライダー等に沿って移動させ、起立させるものである。
この構造を応用することにより、通常時は倒伏して格納され、水害の襲来時は起立し機能させる様々な施設を構成することができる。
請求項26は、実施例47にて例示される。
<請求項27記載の開示に関連する説明>
請求項26による格納式の架構を起立させる荷重は、およそ水平方向に作用するため、当該架構を完全に倒伏した状態から起立させるのは難しい。
このため、当該架構を浮体とする、当該架構に浮体を具備させる、当該架構に浸水により動作するインフレーターを備えたエアバッグを具備させる、または、当該架構に部材の移動や変形の方向を変換する機構を持たせる、などにより、前記の、中間または上部となる部分を控え等に接続され移動や変形を制限された部材が、その下端となる部分に、本水流の動圧等による、およそ水平方向となる荷重を受けた際に、即座に起立を開始できるようにする、起立補助の機構(以下、「起立補助機構」という)を当該架構に持たせると、よりよい。
請求項27は、実施例47にて例示される。
<請求項28記載の開示に関連する説明>
第一の部材もしくはこれに接続された部材のうちの、全部または一部となる構造部分が、倒伏時にスライダー等のみにより拘束または支持される構造とすることにより、当該構造部分は倒伏した状態のまま、一定量本水流の方向に移動できるものとなる。
当該構造部分と、地盤または基礎構造との間に、当該構造部分が本水流の方向に移動した際に、当該構造部分の一部を押し上げる機構を設置することにより、当該構造部分が、本水流の動圧による荷重等を受けて本水流の方向に移動すると、そのまま当該架構が起立を開始できるものとなる、起立補助機構を構成することができる。
この起立補助機構の構成の例として、請求項9や10に記載の、可動のユニットにより水中にて漂着した水害遭難者を上方に誘導する機構と同様に、可動体を介することにより、本水流の方向に移動する当該構造部分の一部を上方へ押し上げる機構を構成することができる。
また、当該構造部分と、地盤または基礎構造の双方に、互いに摺動し合う対偶を具備させ、これらのうちの少なくともいずれか一方は本水流の方向に上がっていく傾斜を持つ案内面を含むものとすることで、倒伏した状態の当該構造部分が本水流の方向に移動した際に、当該対偶が互いに摺動し合い、当該構造部分が具有する対偶が上方に誘導されることにより、当該構造部分の一部を上方に押し上げる機構を構成することができる。
さらに、これらの機構を併置し、当該構造部分の移動する範囲や位置により、作用させる起立補助の機構を切り替えることができる。例えば、当該構造部分が移動を開始した直後は、上記摺動部による起立補助機構を作用させ、当初から大きな力で確実に一定の角度まで起立させ、その後は上記可動体による起立補助機構が作用するようにし、大きな角度にわたり起立させるなどとすると、より効果的な起立補助機構を構成することができる。
請求項28は、実施例47にて例示される。
<請求項29記載の開示に関連する説明>
請求項26から28の格納式の架構を用いて、通常時に倒伏して格納可能な、漂着救助装置や漂着避難装置を構成することができる。
請求項29は、実施例47にて例示される。
<請求項30記載の開示に関連する説明>
請求項26から28の格納式の架構を用いて、通常時に倒伏して格納可能な、津波や洪水等の水害時の本水流を抑制する装置や、防潮堤を構成することができる。
請求項30は、実施例47にて例示される。
<請求項31記載の開示に関連する説明>
請求項26から28の格納式の架構を用いて、通常時に倒伏して格納可能な漂流物ガードを構成することができる。
請求項31は、実施例47にて例示される。
<請求項32記載の開示に関連する説明>
請求項26から28の格納式の架構を用いて、通常時に倒伏して格納可能な避難施設を構成することができる。
請求項32は、実施例47にて例示される。
以下、図面を参照しながら、本開示による実施形態や適用例、応用例及び関連する機構などの実施例を示す。
尚、ここでは実施の上で参考となる構造や他の施設等への適用の方法などを例示しているが、当該開示により示される技術や方法などは、これらに限定されるものではない。
固定式の階段状を成す、簡単に構成できる 漂着避難装置や漂着避難施設の実施例を示す。
図1Aや図1Bに示す様に、支持桁1eoにより支持された横繋ぎ材1epを下地とし、階段状の漂着避難装置1daが設置され、上部は上部避難路1dcに接続する。階段状の漂着避難装置1daは、基本的に避難者1aaが迫り来る本水流を背にして避難方向1cdの方向に上って避難できる向きに配置する。
津波や洪水等の水害からの避難時、当該地域の住民等の避難者1aaは、当該漂着避難施設の階段状の漂着避難装置1daの直近の部分にアクセスして上り(初期避難)、上部避難路1dcに避難する。上部避難路1dcに避難した避難者1aaは、上部避難路1dcが接続する、さらに安全な避難施設や漂着避難施設に避難する(二次避難)。
階段状の漂着避難装置1daは、成形した板状の部材を、一定の間隔を空けて水平方向に連続的に配置することにより、格子状に階段状の形状を形成している。このため、津波や洪水等の水害による浸水時は、段の前面傾斜部分1ecの、縦格子の間隙部分を本水流1caが透過する。逃げ遅れて本水流に呑まれ、図1Cのように、水中で当該階段状の漂着避難装置1daに漂着した水害遭難者1abは、階段状の漂着避難装置1daを透過する本水流1caにより、前面傾斜部分1ecに押し付けられるが、前面傾斜部分1ecは本水流1caの方向に高くなる勾配を持つ傾斜前面を成しているため、漂着した水害遭難者1abは、前面傾斜部分1ecに沿って上段側に押し上げられ、図1Bや図1Dに示す漂着後の水害遭難者の移動の軌跡1ccのように、これを繰り返し、最終的に水面1baまで到達して呼吸が可能となり、これにより水害遭難者1abを救助し救命し得る。この水害遭難者1abは意識があり自力で避難できる場合は、残る段を上り、上部避難路1dcに避難する。水害遭難者1abは、意識が無い場合や動けない場合、本水流が弱まり、水位が下がったり、本水流(以下、津波や洪水等水害の当初の来襲時の方向の本水流を「寄せ波」、その後、方向が逆転した本水流を「引き波」という)が引き波になっても、転落防止の立ち上がり1ebに押しとどめられ、待避スペース1ddにて、図1Eのように転落せずに大気中に留まり救助を待つことができる。
上部避難路1dcを挟んだ反対側にも階段状の漂着避難装置1daを対称に設置することで、ごく近い下流側の地域からも避難先とすることができ、引き波時の水害遭難者の救助または救命の効果も期待できる。また、当該側においても、後の救助活動を容易にすることができる。
尚、この実施例では、漂着し水面付近に押し上げられた水害遭難者1abの体が転落せずに留まれるだけの待避スペース1ddの奥行き寸法が必要となるが、階段としてはかなり大きな踏面寸法が必要となり、また、十分な高さの転落防止の立ち上がり1ebを設置すると、昇降時に足を置きづらくなる。さらに、蹴込にあたる部分が通常の階段とは逆方向に傾斜しているため、歩行時は大きくまたぎ、的確に足を下ろさないと、つま先やかかとを取られて躓いたり転倒しやすく危険となる。このため、これらの問題点を解決した、変形する階段状の実施形態や、雛壇状、スロープ状、梯子状などの漂着避難装置による実施形態について後述する。実施の際は、設置条件等に合わせて、適切な方法を採用するものとする。
当該開示による漂着避難施設は、単独で設置しても一定の効果が見込めるが、連続的に線状に配置することで、地域住民等の段階的な避難を可能とする避難路ネットワークを構成することができ、また、水に流された水害遭難者を漂着させ、救助または救命し、さらなる避難も可能とする人命のセーフティネットを構成することができる。
図2は、都市や地域全体で、津波や洪水等の水害時に、漂着避難施設等がどのように避難及び救助や救命に機能するかを例示したものである。
実施例29に示した小型の漂着避難施設209等、線状の漂着避難施設を、地域の各所から、本水流に対して安全な避難方向(極力本水流と同一の方向)に、短い距離で到達(初期避難)できる、一段階目の避難施設として配置する。これらの一段階目の漂着避難施設は、実施例25に示した高架施設と組み合わせた積層型漂着避難施設207や、実施例18に示した防潮堤の上部を覆う漂着避難施設205といった二段階目の避難施設に接続し、一段階目の漂着避難施設の上部避難路に避難した人が、当該上部避難路が浸水するまでの間に、より安全な二段階目の避難施設に避難(二次避難)できるように構成する。この二段階目の避難施設が漂着避難施設である場合、その上部避難路を、さらに安全な、実施例19に示した港湾の管理施設兼防災拠点施設206、津波避難タワー210、高台の避難場所211、津波避難ビル212など、三段階目の避難施設に接続することで、三次避難ができる。このように構成することで、当該地域の住人や訪問者が、段階的に安全度を高めながら避難できる避難路ネットワークを形成することができ、その後の水害遭難者の救助活動の足がかりとなると共に、逃げ遅れて本水流に呑まれた水害遭難者が漂着して大気中の安全な場所に避難または待避ができるセーフティネット204を形成できる。
避難時は、基本的に、図示された初期避難の方向2cdのように海側から内陸側に、また、二次避難の方向2ce、三次避難の方向201のように、低い所から高い所に向かって避難するが、避難施設の損傷などに対するフェールセーフの視点や予想外の状況、救助活動の動線などを考慮し、双方向避難202の図示箇所のように、双方向の行き来の可能性を想定して避難路ネットワークを構成することが望ましい。
尚、予想される本水流の進行方向と、地上での初期避難の方向2cdを、極力合致させて漂着避難施設を配置し計画することで、近隣住民等が避難中に本水流に呑まれて水害遭難者となっても、目指していた漂着避難施設の直近の部分に短時間で漂着でき、当該水害遭難者の生存の可能性を大きくすることができる。
小型の漂着避難施設209等の計画にあたっては、暗渠上部や路地などを利用すると、用地を確保しやすい。緑道や小規模な公園、延焼防止帯、散歩道、都市インフラの用地を兼用することもできる。また、一定の距離ごとに、当該施設のデッドスペースなどに防災備蓄倉庫や救助物資置場を設けることで、水害のみならず、地震や火災等に対しても地域の防災能力を向上することができ、地域の避難路を兼ねた、線状の防災拠点として機能できる。ただし、浸水時に本水流の透過を妨げ支障を生じないよう配慮する。
実施例21、実施例22、実施例23に示す屋外階段や実施例38や実施例39に示す漂着して避難できるバルコニーを備えた建築物、実施例34に示す建築物を漂着避難施設とした建築物など、漂着避難装置を持つ建築物等208を、本水流の進行方向に対して互いにオーバーラップさせて雁行配置することにより、漂着して避難または待避できる、セーフティネット204の部分を構成できる。
こういった建築物は、相互もしくは別の避難場所に空中の渡り廊下などで接続すれば、避難路ネットワークの一部としても機能できるが、共用階段や、下階から操作できるバルコニー床の避難ハッチや避難はしごを用いて上層階に避難することが漂着後の主要な避難動線となるため、当該建築物自体が津波避難ビル等の要件を満たした、避難場所として安全なものであることが望ましい。また、実施例34に示す、漂着避難施設とした建築物であれば、より安全で、初期避難先としても利用できる。
実施例47に示す、道路面内等に格納できる漂着避難装置や、実施例46に示す、建築物の間や、津波に強い樹木による緑地2deなどに設置できる網状の漂着避難装置等により、通常時の都市の機能を阻害せずにセーフティネットや避難路ネットワークの部分を構成することができる。
尚、漂着避難施設の、本水流の上流側に、津波に強い樹木による緑地2deや、実施例43にて示す鉄筋コンクリート等工作物による漂流物ガード43dfのような漂流物止めを設置することで、大型の漂流物をフィルタリングし、大型の漂流物から、当該漂着避難施設や、当該施設に漂着した水害遭難者を守ることができる。
具体的な漂着避難施設の配置や、避難路ネットワーク、セーフティネットの構成については、設置地域の地勢や諸条件を考慮して、都市計画や地域防災計画などの広範な見地から検討し計画することが望ましい。
水害遭難者が漂流物に押しつぶされないための機構を有する、雛壇状の漂着避難装置の実施例を示す。
実施例3は、板状の平場3eaを、本水流の方向に高くなっていくよう雛壇状に配置し、本水流の方向に高くなる傾斜前面を成す縦格子である誘導格子3ecを、各板状の平場3ea上面から、上段に差し掛かるよう立ち上げ、この先端部を延長した誘導格子延長部分3ebと、その下部の壁状の格子部材により、上段に漂着した水害遭難者3abが安全に待避できる待避スペース3ddを形成するものである。この誘導格子延長部分3ebは、水害遭難者3abの、漂流物3acからのガード兼下段側への転落防止装置として機能する。これら誘導格子3ecは、本水流と直交方向となる水平方向には断続的に配置され、途切れる部分には上段への避難路と階段303を、平面的に千鳥配置となるように設けている。
避難時はこの上段への避難通路と階段303を通り、より高所に避難するが、浸水後に漂着した水害遭難者3abは、本水流に押され、誘導格子3ecに沿って上段側に移動することを繰り返し、水位が最高に達した時の水面付近まで到達し、水位の低下や逆流時には誘導格子延長部分3ebに捕捉され、下段側に転落せずに留まることができる。この時、誘導格子延長部分3ebが形成する待避スペース3ddは、漂着物3acの衝突や圧迫から水害遭難者3abを保護する。
尚、上段への避難通路と階段303を千鳥配置とすることにより、本水流の進行方向に対しての見付面は常に誘導格子3ecとなるため、漂着した水害遭難者3abは当該施設の漂着した箇所を問わず水面に向かって押し上げられる。
実施例4は、実施例3に対し、移動補助装置である階段部分を、踊場をなくした直階段状とすることにより、漂着避難装置全体の勾配を大きくして、当該漂着避難装置の設置スペースを小さく抑えるものである。この場合、当該階段部分は、後述する階段状の漂着避難装置の実施形態を適用する。
スロープ状の漂着避難装置の実施形態について説明する。
実施例5は、傾斜した格子状下地材5eo上面に転落防止アーム5ebを千鳥状に配置し、支持回転軸5ewを介して格子状下地材5eoに取り付け、その上面を歩行可能なスロープとしたものである。
通常時は転落防止アーム5ebは自重により倒伏した状態なので、浸水前の避難時も避難者5aaがこのスロープ上を歩行し、より高い位置に避難できる。転落防止アーム5ebは、浮体の部分を持っており、浸水すると、浮力により、本水流の動圧による荷重や自重と釣合う位置まで起立する。水害遭難者が漂着すると、転落防止アーム5ebを押し倒しながら本水流に押され、スロープ上面に沿って上方に移動し、水面5baに到達すると、水害遭難者は立ち上がりスロープを上り、より高い位置に避難できる。水面に到達した水害遭難者が自力で動けない場合、水位の低下等により下方に転落しようとすると、一定角度までしか開かない構造の転落防止アーム5ebに押しとどめられ、その位置にて安全に待避しておくことができる。尚、転落防止アーム5ebを千鳥に配置しているのは、水害遭難者が水面から転落しても僅かな距離で押しとどめられ、およそ大気中で待避でき、同時に捕捉した水害遭難者がこの転落防止アーム5ebを乗り越えて転落しないよう部材を十分に長くすることができるためである。
尚、寄せ波による強い本水流が継続している状態で水位が低下する場合は、転落防止アーム5ebが有効に開かないケースもありうるので、転落防止アーム5ebは、実施例6に示すような、起立を補助する機構を持つことが望ましい。
実施例6は、図6Bに示すように、転落防止アーム6ebが接続する支持回転軸6ewから格子状下地材6eoの下部にアーム603を延長し、先端にフロートフィン6ehを接続することにより、浮力と本水流の動圧による荷重を受けて、転落防止アーム6ebに対し、起立を補助する回転モーメントを与えるものである。フロートフィン6ehを大きくしたり、アーム603を長くすることで、本水流の流速が大きい場合でも、転落防止アーム6ebを起立させることができる。また、図6Aに示すように、転落防止アーム6ebは平面的に少しずつずらす雁行配置などとすることで、漂着して水面6baに到達した水害遭難者6abの転落距離を、千鳥配置とした場合以上に小さくできる。
以下、避難時から本水流による浸水後の水害遭難者の待避状態までを説明する。
避難時、避難者6aaは、図6Cに示すように、倒伏した状態の転落防止アーム6ebの上面を歩行して避難する。浸水すると、図6Dのように転落防止アーム6ebが起立し、水害遭難者6abが漂着すると、当該水害遭難者6abは、図6Eのように転落防止アーム6ebを押し倒しながら、本水流に押され、スロープ上面に沿って上方に移動し、水面6baに到達し、図6Fのような状態となる。水位が低下し漂着していた水害遭難者6abが下方に転落しようとすると、図6Gのように転落防止アーム6ebに押しとどめられるため、大気中で安全に待避しておくことができる。
段全体が回転変形する階段状の漂着避難装置を示す。
この実施例は、図7Aに示すような各段の機構を持ち、蹴込・踏面構成部材7ecを、一定の間隔を空けて連続して配置することで格子状の踏面と蹴込を構成し、階段として利用できるものとし、浸水時には支持回転軸7ewを中心に回転変形させることにより、水中を漂着した水害遭難者を上部に誘導する形状に変形させるものである。
機構の詳細な状態について、通常時や浸水前は、図7Bや図7Cに示すように、ロックピン7eiが蹴込・踏面構成部材7ecと支持部材7eqを貫通していることにより、階段部分に荷重や衝撃を受けても図7Aの階段状の形状を保っており、図7Eのように歩行者の安全な昇降や避難を可能とする。
浸水時は、フロートフィン接続アーム709を介して支持回転軸7ewに接続する、フロートとフィンを兼ねたフロートフィン7ehが、本水流の動圧による荷重と浮力を受け、フロートフィン接続アーム709と共に支持回転軸7ewを中心に回転することにより、フロートフィン接続アーム709側面のブラケット状部分のロック解除機構アーム712が上方に持ち上がる。これに下端で接続するロックピンリンク711の上端側に接続するロックピン7eiは、貫通する孔の内面に移動を制限され、押込か引抜となる水平方向にしか移動できないため、ロック解除機構アーム712が上方に持ち上がると、接続するロックピンリンク711はロックピン7eiを支持部材7eqから引き抜き、図7Dの状態となり、階段状の形状を保持するロックが解除される。
浸水し、ロックが解除された後は、フロートフィン7ehによる回転力が、ロック解除機構アーム712先端の蹴込・踏面構成部材押上用突起713を介して蹴込・踏面構成部材7ecに伝わるため、蹴込・踏面構成部材7ecも連動して支持回転軸7ewを中心に回転する。この回転角度は、本水流による動圧や浮力、重量のバランスによるが、フロートフィン7ehを長くすることでフロートフィン7ehが本水流から受ける動圧による荷重の影響が支配的となり、計画した理想的な角度に近づきやすい。このようにして、図7Fのように、格子状の踏面部の奥側が上方にせり上がり、漂着した水害遭難者を上方に誘導可能な傾斜前面を形成する。
尚、ロックピン7eiが外れてロックが解除された後、何らかの予想しない荷重がかかっても、図7Aに示す蹴込・踏面構成部材7ec下端のフック717が、段の上下方向に隣り合う支持部材7eq間を接続する格子状の固定踏面構成部材7edの下端にかかるため、逆方向には回転しない。さらに、蹴込・踏面構成部材7ecが回転し、フック717が戻り止めラッチ7et部分を通過すると、戻り止めラッチ7etはこの方向にしかフック717を通さない構造であるため、図7Gのように水害遭難者7abが衝突するなどして蹴込・踏面構成部材7ecが逆方向に回転しようとしても、フック717が戻り止めラッチ7etを越えて回転することはなく、元の踏面部分は傾斜前面を成し続け、確実に水害遭難者7abを上方に誘導する。
蹴込・踏面構成部材7ecの、回転後の上部側となる端部には、漂着した水害遭難者7abを捕捉し、転落を防止する形状に変形するための爪702が、回転軸を介して取り付けられており、ねじりばねと開き止めにより、通常時は蹴込・踏面構成部材7ecに対し、図7Aのような角度となっている。この爪702は、反対側の回転方向にも開き止めがあるため、図7Gのように水中を漂着した水害遭難者7abが接触すると、押し込まれて回転し、蹴込・踏面構成部材7ecの踏面部分の延長となる角度まで回転し、漂着した水害遭難者7abを上部に誘導する格子状の傾斜面の一部を形成する。水害遭難者7abが通過した部分の爪702は、ねじりばねによって以前の角度に戻ろうとして開き止めまで回転し、図7Hのように立ち上がった状態となっているため、水害遭難者7abが最高位の水面付近まで到達した後、水位の低下等により転落しようとすると、下段の爪702が水害遭難者7abの体に押されて接続する蹴込・踏面構成部材7ecが回転し、また、その上段側に隣接する蹴込・踏面構成部材7ecも水害遭難者7abの体に押されて回転し、それぞれが蹴込・踏面構成部材回転エンドストッパー7esに突き当たるまで回転するため、図7Iのような状態となり、水害遭難者7abの転落を防止し、水害遭難者7abは、固定踏面構成部材7edの上で待避しておくことができる。尚、フロートフィン7ehは、フロートフィン接続アーム709とは開き止めとねじりばねのついたヒンジにより接続しており、蹴込・踏面構成部材7ecが回転して水害遭難者7abの転落防止の形態に変形する時、フロートフィン7ehは図7Iのように、固定踏面構成部材7ed下部に留まる。
尚、蹴込・踏面構成部材7ecは、数個ずつ連結すると、フロートフィン7ehによる回転機構やロックに関する機構などをまとめられ、合理的な構成とすることができる。
重力を利用したロック機構を持つ階段状の漂着避難装置の実施例を示す。
図8Aに示すように、この実施例は、支持桁8eoから持出し材801により横繋ぎ支持材8epを支持し、横繋ぎ支持材8epに取り付けた支持ブラケット8eqが、緩衝機構8elを備えた支持回転軸8ewにて、蹴込構成部材8ecと、踏面構成部材8edのスライダ8ek部分を支持し、これら蹴込構成部材8ecと、踏面構成部材8edが一定間隔を空け、格子状に連続配置されることで階段状の形状を構成する。
通常時や避難時は、横繋ぎ支持材8epから持ち出した回転ロックユニット802が、その一端に接続された錘兼浮体として機能するフロート兼ウェイト8efの重量により、ロックユニット回転軸803を中心として反対側のフック804を押し上げ、支持回転軸8ewで支持される蹴込構成部材8ec端部のピン8eiの移動を拘束するため、蹴込構成部材8ecは回転することができず、また、このとき、蹴込構成部材8ecに段鼻回転軸8exを介して接続する踏面構成部材8edも、反対側がスライダー8ekを介して支持回転軸8ewに支持されるため、回転ができない。これにより、当該部分は変形せず、図8Bに示すように、歩行者や避難者8aaは安全な昇降や避難ができる。尚、緩衝機構8elの緩衝材は、変形に対し十分大きなばね定数やヤング率を持つものとしたり、実施例10での緩衝機構10el同様、ポケット付きのスライダーとするなどして、昇降や避難時に有害な変形をしないものとする。また、フロート兼ウェイト8efは、通常時に、台風等の風圧力で回転ロックユニット802が回転しない重量とし(条件により補助として風防を設けるとよりよい)、浸水時はこれを十分上回る浮力を発生させるものとする。
浸水すると、フロート兼ウェイト8efが本水流から受ける動圧による荷重と浮力により、回転ロックユニット802がロックユニット回転軸803を回転中心として回転し、フック804が、蹴込構成部材8ec下端部のピン8eiから離れる。
これにより、蹴込構成部材8ecは支持回転軸8ewを中心として回転できるようになるが、上端部にて段鼻回転軸8exを介して接続する踏面構成部材8edが持つスライダー8ekのストローク範囲が限定されているため、上段側に高くなるよう傾斜する方向にのみ回転できる。水位が上昇し、蹴込構成部材8ecが接続する支持回転軸8ewより下の部分が受ける本水流の動圧による荷重の合計よりも上の部分が受ける本水流の動圧による荷重の合計が大きくなった時、または蹴込構成部材8ecや段鼻回転軸8exに水害遭難者8abが衝突した時、蹴込構成部材8ecは支持回転軸8ewを中心として回転し、図8Cに示すように、階段上段側に高くなる傾斜面を形成することにより、漂着した水害遭難者8abを上部に誘導できる形状となる。
図8Dに示す水害遭難者8abが漂着した際の、蹴込構成部材8ecの前面に衝突した衝撃は、上端で段鼻回転軸8exを介して接続する踏面構成部材8edが接続する支持回転軸8ewまたは蹴込構成部材8ecを直接支持する支持回転軸8ewを支持する、それぞれの支持ブラケット8eqの緩衝機構8elにより吸収される。
漂着した水害遭難者8abの転落防止装置については、浸水前には隣り合う踏面構成部材8edの間隙に格納されている、転落防止部材8ebが、斜線部の浮体部分を持っているため、浸水時には浮力により段鼻回転軸8exを中心として起立する。寄せ波の間は、本水流の動圧による荷重と浮力による釣合った角度となるが、本水流が弱まってくると鉛直に近い角度となり、また、一定以上の角度に開かない構造となっているため、図8Fに示すように、漂着し水面に到達していた水害遭難者8abが転落しようとするのを押しとどめることができる。
尚、この転落防止部材8ebは、踏面構成部材8edの下方に、実施例6に示すフロートフィン6eh同様の機構を具備させることで、より確実に起立し水害遭難者の体を補足することができる。
特殊な形状の回転可能な段鼻部分のユニットにより、漂着した水害遭難者を上段側に誘導する階段状の漂着避難装置の実施例を示す。
通常時や水害遭難者の漂着前は、各段は図9Aのような状態となっている。支持桁9eoから持ち出した支持材9eq上部の緩衝機構9el部分で支持される支持回転軸9ewに取り付けられた、板材を切り出すなどして成形した段鼻ユニット9evや踏面構成部材9edを、一定の間隙を空けて連続的に配置することにより、格子状に階段状の形状を形成する。段鼻ユニット9evは、支持回転軸9ewを中心に回転することができ、自重や歩行時の荷重により、段鼻先端が下がる方向に回転しようとするが、その下部の誘導斜面形成部分9ec端部が支持材9eqに取り付けられたストッパー9esに突き当たっているため、図9Bのように回転せずに形状を保持しており、歩行者や避難者9aaは安全に歩行することができる。この時の段鼻廻りの状態は図9Gのようになる。
浸水後、水害遭難者9abが漂着すると、当該部分の段鼻ユニット9evは、段鼻に平行な支持回転軸9ewを中心に、段鼻先端が持ち上がる方向に回転できるが、この支持回転軸9ewよりも漂着した水害遭難者9abの体が接触する部位の高さが高くなる形状とすることで、およそ水平方向に漂流し漂着した水害遭難者9abの体に押されて段鼻ユニット9evが回転するようにできる。この段鼻ユニット9evの前面には滑り止め901が付いているため、図9Cのように水害遭難者9abの体は段鼻ユニット9evを押し込み回転させながら、接触している体の部位に上向きの荷重が伝達されて持ち上げられ、上段側に誘導される。この時の段鼻廻りの状態は図9Hのようになる。
段鼻ユニット9evの前面は、中心点を支持回転軸9ewより上方に持った円弧などの形状とすることにより、回転に伴う段鼻の、当該段の最先端部となる位置を、緩やかに変化させることができ、当該段の先端部が水害遭難者9abの身体に作用させる反力を平準化することにより水害遭難者9abへの負荷を抑えつつ、水害遭難者9abの身体の運動方向を、およそ水平となる本水流の方向から、漂着救助装置上部に向かう方向へと滑らかに変換させることができる。また、段鼻ユニット9ev先端の滑り止め901は、極力段鼻ユニット9evが水害遭難者9abを上向きに押し上げる方向にだけ機能し、また、水害遭難者9abの体に食い込み過ぎて負傷しないような形状や材質とする。
尚、水害遭難者9abが漂着し、衝突した時の衝撃が大きい時は、緩衝機構9elにより衝撃が吸収される。
段鼻ユニット9evは、図9Hのように、一定量回転すると、誘導斜面形成部分9ecが踏面構成部材9edの隙間から立ち上がって来るため、下段側に残っている水害遭難者9abの体の部分は跳ね上げられる。さらに一定量回転すると、図9D、図9Iのように、誘導斜面形成部分9ecの先端のフック902が下段側の踏面構成部材9edに当たるため、それ以上回転しないが、誘導斜面形成部分9ecや踏面構成部材9edが、上段側に高くなる格子状の斜面を形成するため、下段側に残っている水害遭難者9abの体の部分は、これに沿って上段側に誘導される。
また、段鼻ユニット9evが回転すると、上段の支持回転軸9ewと、当該段鼻ユニット9ev内部のスリット9ekにピン9eiを乗せ掛けることにより支持されていた踏面構成部材9ed先端のピン9eiが、段鼻ユニット9ev内部のスリット9ekから外れて当該装置の他の部位に当たるまで落下し、図9Hに示す状態となる。水害遭難者9abが通過した後は、図9Eに示すように、自重により段鼻ユニット9evが回転して元の位置に戻るが、踏面構成部材9edは落下したままなので、図9Fや図9Jのように、段鼻ユニット9evと踏面構成部材9edの段差が形成され、水害遭難者9abの転落を防止する、転落防止装置として機能する。
尚、支持回転軸9ewは、一本で複数の段鼻ユニット9evを受け、支持架構については、横繋ぎ材を設け、支持材9eqは一旦横繋ぎ材で受けてから、支持桁9eoに荷重を伝達する、といった構成とすると、緩衝機構9elや支持部材を纏めることができ、コストダウンや機構の動作の信頼性の向上を期待できる。また、緩衝機構9elのスライダー部分に、実施例10での緩衝機構10el同様にポケット部分を設けると、通常時、より安定させることができ、上部をより安全に歩行できるものとなる。
段鼻に跳ね上がるフラップを設けた階段状の漂着避難装置の実施例を示す。
この実施例は、図10Aに示すように、蹴込構成部材10ecと踏面構成部材10edを一体化した部材を一定の間隔を空けて格子状に連続配置し、上段側、下段側の両端を、緩衝機構10el付き受け材10eqにて支持される支持軸10ewに接続し、その段鼻部分に浮力や本水流の動圧で跳ね上がる段鼻ユニット10evを取り付けることにより、階段状の形状を構成するものである。
通常時や浸水前は、図10Bや図10Fに示す状態となっており、段鼻ユニット10evは、断面の中央付近に取り付けられた回転軸ピン10exで踏面構成部材10edに取り付けられたスライダー10ekに支持されており、段鼻ユニット10evの、段の奥側に取り付けられた姿勢制御ピン10eiをスライダー10ek後方の段鼻ユニット姿勢制御ガイド1001にて上部から抑えていること、回転軸ピン10exが重力により、スライダー10ekの段鼻先端側下部のポケット部分に落とし込まれていること、同様に蹴込構成部材10ecと踏面構成部材10edを支持するそれぞれの支持軸10ewが重力により受け材10eqの緩衝機構10elのスライダーの段鼻側先端下部ポケットに部分に落とし込まれていることにより、階段としての形状を構成し、歩行時の荷重、衝撃や振動で有害な変形をせず安全に歩行できる。
浸水後は図10Cに示すように段鼻ユニット10evが、取り付けられたフロート10efの浮力により、回転軸ピン10exを回転中心として回転し起立を開始し、また、フロート10efや先端クッション10em廻りが本水流の動圧による荷重を受け、段鼻ユニット10evは、段鼻ユニット10evの姿勢制御ピン10eiがストッパー10esに当たるまで回転し、同時にラッチ10etにより固定され、図10Hのように、蹴込構成部材10ecを延長する立ち上がりを形成する。これにより、漂着した水害遭難者10abを水面まで誘導する傾斜面を形成すると同時に、図10Eのように、水害遭難者10abが水面10baに到達した後の転落を防止できる。
また、図10Dに示すように、段鼻ユニット10evが起立する前に水害遭難者10abが水面10ba付近にて漂着し、段鼻ユニット10evに衝突した場合、当該段の状態は、段鼻ユニット10evの先端クッション10em、スライダー10ekの緩衝材、受け材10eqの緩衝機構10elにより、図10Gに示す状態となり、衝撃を吸収し局所的な荷重は分散される。それと同時に、水害遭難者10abの体に押し込まれた段鼻ユニット10evに取り付けられた回転軸ピン10exは、スライダー10ekのポケット部分を外れると、水平方向にしか移動しないが、同じく段鼻ユニット10evに取り付けられた姿勢制御ピン10eiが段鼻ユニット姿勢制御ガイド1001により下方に押し込まれるため、段鼻ユニット10evの段鼻側の先端は上方に持ち上がり、段鼻ユニット10evは押し込まれながら水害遭難者10abを上方に押し上げて、上段側に誘導することができる。
尚、支持軸10ewと回転軸ピン10exを受けているスライダーのポケット部分は浅く、これらの軸が伝達する荷重の成分について、押し込まれる水平方向の成分が、鉛直下向きの成分に対して一定以上の割合となることで、軸がポケットを外れ、スライダーを移動できるようになる。浸水前は、上部を歩行する際、鉛直下向きの荷重が優勢となるため、安定して形状を保持し、漂着した水害遭難者10abが衝突した際は、水平方向の荷重が優勢となるため、軸がポケットを外れてスライダーを移動できるようになり、緩衝機能を発揮しながら必要な変形をする。
また、横繋ぎ材などを用いて、複数の蹴込構成部材10ecと踏面構成部材10edを一定数ごとにユニットとして一体化し、スライダー10ekや受け材10eqを纏め、数量を減らすと、省コスト化やメンテナンス性、動作の信頼性の向上を期待できる。
透かし階段の段鼻や蹴込部分にユニット化した装置を組み合わせて取り付けることで階段状の漂着避難装置を構成でき、既存の透かし階段にも簡単に設置できる実施例を示す。
図11Aは、透かし階段に後付式段鼻ユニットを設置したもので、これに、後述する蹴込ユニットを組み合わせて設置することにより、漂着避難装置を構成するものである。ここに示す3段は、上から順に、通常時や浸水前の状態、浸水後水害遭難者が漂着して接触し、段鼻を水平方向に押し込んでいる状態、水位低下後水害遭難者を大気中で保護している状態を示している。透かし階段の段板11eaに、先端部分には片持構造の段鼻ユニット11evを、踏面上部にはフカシユニット11edを取り付けたもので、これらに、後述する蹴込ユニット11ecを組み合わせて設置する。段鼻ユニット11evの構造については、段板11eaに打ち込まれたアンカー11enが、下地プレート1101を段板11eaの先端上部に固定すると共に、構造プレート1102のスライダー11ekを貫通し、構造プレート1102の移動の方向や範囲を制限し、かつ、その上面の浮き上がりを抑えることにより、構造プレート1102を片持構造として先端で歩行者の荷重を受けることを可能としている。下地プレート1101の先端上部には突起があり、段鼻ユニット11ev上部に歩行者による鉛直荷重がかかっている間は構造プレート1102の裏面に設けた突起11esが下地プレート1101側の突起を乗り越えることができないため、構造プレート1102は移動せず、当該装置は階段として安全に利用できる。
段鼻ユニット11ev上部には、上端が歩行者の昇降時のためのノンスリップとして機能できる回転軸受け1103と、これに回転軸11exを介して接続する転落防止板11ebがあり、転落防止板11ebは浮体を挟み込むなどしているため(斜線部)、浸水すると、浮力により回転軸11exを中心として回転し起立しようとする。
通常時は転落防止板11ebは倒伏した状態であり、その上部を歩行して昇降できるが、段板奥の部分と段差ができ、昇降しづらくなる。このため、段板奥の部分に、上面の高さを揃えるためのフカシユニット11edを設置している。
フカシユニット11ed上面と、段鼻ユニット11ev先端部の間に、別途蹴込ユニット11ecを設置する。
水害遭難者が漂着して段鼻ユニット11evが押し込まれると、構造プレート1102は、奥側がフカシユニット11edの下部に潜り込み、段鼻側の先端部に接続した蹴込ユニット11ecは水害遭難者を上段側に誘導する形状に変形する。
構造プレート1102と、段鼻ユニット11ev下面を覆うシールプレート1104の間の空間には、二種類の弾性体が設置される。変形用弾性体11elはヤング率が小さく、ストロークを大きく取ったもので、弱い力で構造プレート1102が押し込まれて、蹴込ユニット11ecが、漂着した水害遭難者を上段側に誘導できる形状に変形できる。それに対し、緩衝用弾性体11emはヤング率が大きく、水害遭難者が漂着し衝突した際の衝撃を吸収する緩衝材として機能する。
尚、段鼻ユニット11ev上の転落防止板11ebの先端部と、フカシユニット11edの先端部は、互いにぶつかると転落防止板11ebが跳ね上がるテーパー形状となっているため、転落防止板11ebが浮力で起立する以前に水面付近を水害遭難者が漂着して段の前面に衝突しても転落防止板11ebは起立を開始し、段鼻ユニット11evの先端はそのまま押し込むことができる。
転落防止板11ebは開き止めにより一定の角度までしか回転しないが、本水流が弱まったり引き波に切り替わると、鉛直に近い角度に起立するため、最高位となる水面付近まで到達した水害遭難者が転落しようとすると、直下の転落防止板11ebに支えられ、安全に待避しておくことができる。
尚、段板11ea本体を格子状とし、転落防止板11ebも短冊状等の形状として踏面面内に格納する機構とするなどにより、フカシユニット11edは省略することができる。
以下、上記の後付式段鼻ユニットに組み合わせて設置する、蹴込ユニット11ecの例を示す。
これらの例では、昇降時に足を下ろす際の障害となり、躓いたり転倒したりすることを防止するため、通常時や避難時は、当該蹴込上部の段鼻先端より蹴込ユニット11ecの部分が飛び出さないものとしている。
図11Bは、横桟を用いた蹴込ユニット11ecの例である。
下段側にベース1105を設置し、上下の段板間の間隙の中央付近に横桟11eeを支持する。水害遭難者が漂着し、段鼻ユニット11evが押し込まれると、図11Cに示すように、その下部の横桟11eeから、押し込まれた段鼻ユニット11ev先端にかけて、上段側に高くなる傾斜面1106を形成する。これにより、漂着した水害遭難者を上段側に誘導することができる。横桟11eeは、回転可能もしくは表面を滑りやすい材質とした円筒とすることで、漂着者を滑らかに上部に誘導できる。
段差(蹴上)が大きい場合、複数の横桟が上段に向かって高くなる格子状の斜面を形成するようにすると、水害遭難者を滑らかに押し上げやすい。
尚、蹴込ユニット11ecを横桟にて形成する場合は、水害遭難者の身体の部分が、これら横桟の間隙部分に入り込み引掛り易くなることや、横桟を円筒とすることで、本水流を透過できる間隙部分の面積を圧迫することに注意する。
図11Dは、上段側段鼻下面と、その直下となる下段側上面それぞれに、正面の見付形状が櫛型となるフィンを、互い違いとなる様に設置し、縦格子状の蹴込を形成する蹴込ユニット11ecの例である。
下段側フィン1107は、正面の蹴込面が、上段側に高くなる勾配を持つ格子状の面を形成し、上段側フィン1108は、正面の蹴込面が、およそ鉛直な格子状の面を形成している。
図11Eのように、上段側の段鼻が押し込まれると、取り付けられた上段側フィン1108も奥に移動するため、下段側フィン1107が単独で前面に残り、上段側に高くなる勾配を持つ格子状の傾斜面を形成するため、漂着した水害遭難者を上段側に誘導することができる。
下段側フィン1107のみでも蹴込ユニット11ecとして機能することは可能だが、およそ鉛直な前面を形成する上段側のフィン1108により、衝突した水害遭難者の身体の部分が段鼻下部に入り込み引掛かることを防止でき、滑らかに上段に誘導することができるため、安全性が向上する。
図11Fは、上段側段鼻先端と、その直下となる下段側の部分を、ケーブルで構成する格子状のネットを樹脂コーティングしたもので接続し蹴込とした、蹴込ユニット11ecの例である。
図11Gに示すように、段鼻ユニット11ev先端部には、水害遭難者が漂着した際の緩衝材となるクッション1109を取り付け、それを巻き込むようにネット1110を取り付ける。ネット1110の上端と下端は、それぞれ、上部接着ライン1111、下部接着ライン1112により、上段側の段鼻ユニット11ev先端部とその下部となる下段側の上面に接着する。
このネットは、通常時の状態では、上下段を結ぶ方向の長さに遊びを持たせており、フラップ状折り返し1113やクッション下部折り返し1114を設けることにより、これら遊び分を邪魔にならないよう格納している。クッション下部折り返し1114は、クッション1109表面に粘着または弱い接着などとしておくと、通常時に垂れて昇降の邪魔になりにくい。
水害遭難者が漂着し、段鼻ユニット11evが押し込まれると、上段側の段鼻ユニット11evと下段側上面に接着されたネット1110が引張られるため、フラップ状折り返し1113やクッション下部折り返し1114が引き伸ばされて開き、図11H、図11Iに示すように、ネット1110全体が格子状の傾斜面を形成するため、漂着した水害遭難者を上段側に誘導することができる。
尚、ネット1110を樹脂コーティングすることで、通常時に上述の折り返し部分などの形状を保持し、ケーブル等の劣化防止、水害遭難者の身体への食い込みの防止や、水害遭難者を滑らかに上段に誘導する効果が得られる。
この樹脂コーティングしたネットによる蹴込ユニット11ecを、段鼻ユニット11evに組み合わせて取り付けた例を示す。
図11Jは、通常の昇降時や避難時、図11Kは水害遭難者が漂着して最高位の水面まで到達後、水位が下がり、転落防止板11ebにより保護され待避している状態を示す。
透かし階段に段鼻と蹴込部分をまとめてユニット化したものを取り付けることで階段状の漂着避難装置を構成でき、既存の透かし階段にも簡単に設置できる実施例を示す。
図12Aに示すように、段鼻部分は、下段に設置した山型ベース1201の頂部の山型ベース上部回転軸12ewにより支持された蹴込上部アーム12ecが、段鼻プレート12evの先端部を、蹴込上部回転軸12exを介して支持している。山型ベース1201や蹴込上部アーム12ecは成形した板状部材などで、一定の間隔を空けて連続配置することにより、格子状の蹴込を形成する。
図12Bに示すように、階段としての利用時、歩行により段鼻部分にかかる鉛直荷重は、倒伏した状態の転落防止板12ebにより、転落防止板回転軸1203を介し転落防止板回転軸受け1204と、段鼻プレート12evを介し、段板12ea先端付近に伝達される。転落防止板回転軸受け1204に伝わる下向きの鉛直荷重により、段鼻先端部に蹴込上部回転軸12exを介して接続する蹴込上部アーム12ecは、山型ベース上部回転軸12ewを中心として下段方向に回転しようとするが、蹴込上部アーム12ec上部に蹴込上部回転軸12exを介して接続する段鼻プレート12evの段奥側端部はフック形状となっており段板アンカープレート12en上端部のフック部分に嵌合しているため、段鼻プレート12evの引張応力を受け蹴込上部アーム12ecは回転せずに形状や位置を保ち、蹴込上部回転軸12exと山型ベース上部回転軸12ewの間の圧縮応力のみ負担することにより、ロック機構なしで可動部全体が変形せず安定し、階段として機能する。
水害遭難者12abの漂着時には、図12Cや図12Eに示すように、段鼻部分が水平方向に押し込まれ、山型ベース1201と蹴込上部アーム12ecが連続して上段側に傾斜する格子状の傾斜面を形成するため、水害遭難者12abは上段側に誘導される。
この時、段鼻プレート12ev段奥側先端の横繋ぎ材1205が、段板側に固定されたガイドスライダー1206に移動を制限されているため、段鼻プレート12evは確実にフカシユニット12ed下部に誘導される。
尚、蹴込上部回転軸12exと段板アンカープレート12enは、段鼻部分が押し込まれた時に圧縮応力を発生する2つの弾性体により接続される。このうち、変形用弾性体12elは、弱い本水流で水害遭難者12abが漂着した場合にも水害遭難者12abが上部に誘導される傾斜面が形成されるヤング率やバネ定数を持つもの、緩衝用弾性体12emは、水害遭難者12abの漂着の衝撃を和らげる適切なヤング率やバネ定数を持つものとする。
水害遭難者12abの体が上段側に通過した後の蹴込や段鼻部分は、変形用弾性体12elにより、蹴込上部アーム12ecが元の位置に押し戻されるが、本水流が弱くなると上部の転落防止板12ebは浮体を挟み込むなどしているため(斜線部)、浸水すると、浮力により転落防止板回転軸1203を中心として回転し起立しようとする。転落防止板12ebは開き止めにより一定の角度までしか回転しないが、本水流が弱まったり引き波に切り替わると、図12Fに示すように、鉛直に近い角度に起立するため、最高位となる水面付近まで到達した水害遭難者12abが水位の低下等により転落しようとすると、図12Dに示すように、直下の転落防止板12ebに支えられ、安全に待避しておくことができる。
この実施例の段鼻プレート12evは、実施例11の、片持構造とした構造プレート1102と異なり、上述の引張応力や、転落防止板12ebが起立した状態で水害遭難者12abの体重により有害な変形を生じない強度を発揮できればよいため、簡易なものとできる。この段鼻プレート12evは短冊状などとし、段奥側を柔軟な材料の横繋ぎ材1205で接続すれば、部分的な範囲にとどめたしなやかな変形が可能となる。
階段状の漂着避難装置とする場合で、急勾配のため踏面が小さく、水位が低下した後に水害遭難者の体が留まる十分なスペースが確保しにくい場合に、構成部材が変形して広いスペースを形成できる実施例を示す。
図13Aに示すように、支持桁13eoから持ち出した支持材13eqに支持される支持回転軸13ewに取り付けた蹴込構成部材13ecと踏面構成部材13edを、一定の間隔を空けて連続的に配置し、これらを段鼻回転軸13exで接続することにより、格子状に階段状の形状を形成する。
歩行時や避難時は、ねじりばね13erが蹴込構成部材13ecを下段側に回転させるモーメントを与え続けることと、踏面構成部材13edのスライダー13ekの段奥側端部上側に設けたポケット部が支持回転軸13ewに載せ掛けられていることにより、当該漂着避難装置は安定して階段状の形状を保ち、歩行時の荷重や振動等により変形せず、安全に昇降できる。
図13Bに示すように、水害遭難者13abの漂着時には、水平方向に段鼻を押し込む荷重が働き、踏面構成部材13edのスライダー13ekのポケット部が支持回転軸13ewを乗り越えて移動することができるが、踏面構成部材13edを複数結合したユニットとして、間隙にフロート13efを取り付けるなどしておくことにより、浸水時にこのユニットに浮力が働き、スライダー13ekのポケット部が支持回転軸13ewによる拘束を離れて水害遭難者13abの漂着時の変形に備えておくことができ、変形の初動時の衝撃を小さくできる。
段鼻や蹴込構成部材13ecが水平方向に押し込まれると、蹴込構成部材13ecは下端の支持回転軸13ewを中心として回転し、その上端の押し込まれた段鼻部に接続する踏面構成部材13edは、水平方向に押し込まれながら、スライダー13ekに接続する支持回転軸13ewを中心として回転することにより、蹴込構成部材13ecと踏面構成部材13edそれぞれが段奥側に高くなる格子状の傾斜前面を形成する。この際、蹴込構成部材13ecは、ストッパー13esに突き当たるまで回転し、水平になることが可能だが、この状態でも、これに段鼻回転軸13exで接続する踏面構成部材13edは、段奥側に高くなる傾斜前面を形成しているため、漂着した水害遭難者13abは上段側に誘導される。水害遭難者13abが通過した後の蹴込構成部材13ecと踏面構成部材13edは、ねじりばね13erにより、元の形状に戻る。
水害遭難者13abが水面13ba付近に到達すると、下段側の、水平に復元された踏面構成部材13edと、上段側の、押し込まれた状態で体が抑えつけている蹴込構成部材13ecが、連続的な水平面を構成するため、広い平場を形成できる。
また、踏面構成部材13ed先端上部に取り付けられた転落防止板回転軸受け1302に転落防止板回転軸1301を介して支持される転落防止板13ebは、浮体を挟み込むなどしているため(斜線部)、本水流が弱くなると、浮力により転落防止板回転軸1301を中心として回転し起立し、図13Cに示すように、水害遭難者13abの転落を防止する。
これらにより、水害遭難者13abは転落せず、安全に待避しておくことができる。
実施例9同様の原理を用いて、段鼻ユニットを透かし階段に取り付けることで簡易な漂着避難装置を構成できる実施例を示す。
図14Aに示すように、この実施例では、硬質ゴム等による段鼻ユニット14evを、透かし階段の段板14eaの先端に取り付る。
段鼻ユニット14evは、段鼻回転軸14exにより支持されるが、段鼻回転軸14exは、段板14eaに埋め込まれた持出し実部材1401に支持されている。歩行時に段鼻ユニット14ev先端に加えられる鉛直荷重による回転モーメントは、段鼻ユニット14evの断面形状と段鼻ユニット14evを支持する段鼻回転軸14exの位置との関係により、段板14ea先端面の段鼻ユニット14evに密着する部分への支圧力として伝達され、図14Bに示すように、段鼻ユニット14evは回転せず安定して歩行時の荷重を支持できる。
図14Cや図14Fに示すように、水害遭難者14abが漂着すると、段鼻ユニット14evは硬質ゴム等であるため水害遭難者14abの身体と接触する部分の局所的な衝撃を吸収しながら、接触面の大部分が段鼻回転軸14exより高い位置となる断面形状であることにより、図14Dや図14Gに示すように、先端部が上部に跳ね上がる方向に回転する。
水害遭難者14abは、この段鼻ユニット14evを押し込み回転させながら、先端部や接触した部分から身体を上方に押し上げる反力を受け、上段側に誘導される。
尚、段鼻ユニット14evの、段板14eaと接する部分の、上部の突出部14etは、段鼻ユニット14evの段鼻回転軸14exを中心として段板14ea先端面までを半径とする円弧より突出しているため、段鼻ユニット14evが回転して先端を上部に跳ね上げる時、突出部14etが段板14ea先端面に押し付けられて圧縮され、一定の回転の抵抗が得られる。これにより、歩行して上る際につま先が当たり回転して躓きやすくなることを防ぎ、回転後に図14Eや図14Hのような起立した状態を維持できることにより、漂着して水面付近に到達した水害遭難者が転落することを防ぐことができる。但し、ラッチ等により、回転して起立した状態でロックされる機構を併設することが望ましい。
また、この例では、段板の先端の垂直面に段鼻ユニット14evや段鼻回転軸14exの支持部材となる持出し実部材1401を埋め込んでいるが、条件によっては段鼻ユニット14evや段鼻回転軸14exを接続したアングル等の部材を段板先端部の前面から上面にかけて被せ、上端からアンカーボルトで固定するなど、最適な取付方法を採用するとよりよい。
大型駅周辺や都心部の一体的な開発などで、ビル間の下部や駅前の広場などをデッキテラスや大階段を含む立体的なオープンスペースとして利用する避難漂着施設の実施例を示す。
この実施例は、複数棟のビル1501間の下部に、公開空地などのオープンスペースとなる広場1502を地面より高い位置に設置し、階段状の漂着避難装置15daにより周囲から自由にアクセスできるようにした漂着避難施設である。階段状の漂着避難装置15daは光や景色、空気を透過できるため、その下部空間にも屋外的空間や採光や通風を求める室を配置可能で、広場1502や階段状の漂着避難装置15da廻りを、その下部空間を含めて、開放的で立体的にアクセスしやすいビルの基壇部分として、テラスや公共空間、もしくは店舗などに活用することができる。
当施設は、オープンスペースや店舗などを地面より高い位置に設定することにより、施設利用者や地域の訪問者の多くを、津波や洪水等の水害時にも浸水しない安全な高さの位置に集めておくことができる。
また、当該施設を、上流となる地域からの初期避難先とすることで、避難中に本水流に呑まれても、そのまま当該階段状の漂着避難装置15daに漂着できるため、生存する可能性を大きくすることができる。このため、津波避難ビルとして避難先に指定されていることが望ましい。水害時、とりわけ津波の襲来時には、近隣の住民や当該地域への訪問者は、即座に避難先を見つけないとならないが、当該実施例による施設は避難先として認識されやすいため、迷わず避難することができる。
また、津波や洪水等の水害時、独立した津波避難ビルは、入館して安全な階に避難する際にルートの確認に時間を要したり、一箇所に大勢の避難者が詰め掛けると、通路幅がボトルネックになるなど、やはり避難に時間がかかり、逃げ遅れる可能性が考えられる。これに対し、当該実施例では、大量の避難者が一度にアクセスした場合であっても、本水流の上流側全体にわたり設置された漂着避難装置により、容易に上部の広場1502に初期避難することができ、その後時間をかけながら、広場1502からビル1501に入り、より安全な上階に避難することができるため、避難施設まで到達しても逃げ遅れるというケースを防止できる。
配置については、予想される本水流の方向15caに対し、ビル1501を45度に振って配置するなどすれば、当該ビル1501への本水流による動圧による荷重は軽減されるが、同時に、本水流に押し流された水害遭難者が当該ビルに到達しても滑らかにビルの左右に押し流され、広場1502と組み合わせる、階段状の漂着避難装置15daに漂着することが可能となる。
階段状の漂着避難装置15daは、建築計画の条件等により、階段状ではなく、スロープ状の漂着避難装置などとしてもよい。
浮体の避難施設に設置する漂着避難施設を示す。
これまで、避難施設全体を浮体とすることにより津波や洪水等水害による浸水時に浮上して安全を確保する避難施設が複数案提案されてきたが、こういったフロート避難施設1601の上部に避難する階段に、漂着避難装置16daを用いることにより、浸水前の上部への避難のみならず、浸水後や浮上後に当該避難施設に漂着した水害遭難者を救助または救命することが可能となる。この場合、漂着避難装置16daは、フロート避難施設1601の上流側前面の全幅にわたり設置することが望ましい。尚、このフロート避難施設1601は、流されないよう係留されても地上に直接固定する工作物ではないため、漂着避難装置16daのための漂流物ガードを直接装備することが望ましい。この実施例では、漂着避難装置の支持架構を兼ねたフレーム状の漂流物ガード16dfを装備している。大型の漂流物は漂流物ガード16dfにてガードするが、漂着避難装置16daの手摺は、実施例43に示す構造桁や手摺を兼ねた漂流物ガード43eoのようなものとし、漂流物ガード16dfの間隙を通り抜けた漂流物から、漂着した水害遭難者を守れるものとすることが望ましい。
漂着避難装置16daは、設置条件により、スロープ型、階段型、梯子型のいずれとしてもよい。
防潮堤型の漂着避難施設の実施例を示す。
本実施例は、階段状などの漂着避難装置17daを上部避難路17dcの両側に設置し、線状に連続させることにより、寄せ波にも引き波にも対応できる防潮堤状の断面形状の漂着避難施設を形成するものである。
内部空間1702や上部避難路17dcは、通常時は道路や歩道、鉄道等に利用し、入隅など交通に利用しづらいデッドスペース1706は、その他のインフラのスペースや緑化スペース、防災備蓄倉庫等に利用するとよい(その場合、設置物は本水流の透過に支障が無い大きさとし、これらが流出しても悪影響が及ばないよう配慮する)。
構造計画については、断面全体が台形または三角形となるため、漂着避難装置17daの支持桁17eoに架構全体の梁間方向の水平応力を負担させると、柱1701や梁1703を省略し、または鉛直応力のみの負担として小さな断面とすることが可能で、基礎構造1704や杭1705についても簡易なものとすることができる。
防潮堤の上部を覆う漂着避難施設の実施例について説明する。
津波は非常に波長が長く、寄せ波が長時間継続するため、海岸部の地形等の条件によっては、継続的に押し寄せる波により、防潮堤付近に到達した波が引き帰せずに水位が大きく上がり、高い防潮堤を乗り越える可能性が考えられる。防潮堤単体であれば、水位が防潮堤を越えた場合、防潮堤上部に居る人は本水流に呑まれてしまう。しかし、この実施例のように、漂着避難施設18dbを、防潮堤1801の上部に被せるように、防潮堤1801を越流する水深以上のクリアランスを取って設置すると、当該漂着避難施設18dbの上部避難路18dcは、防潮堤1801を越流する津波の水面18baより上部となるため浸水せず、安全を確保できる。そのため、防潮堤1801の海側(本水流の上流側)の地域からの、どこからでも簡単にアクセスできる避難施設として、また、本水流に呑まれた水害遭難者18abが漂着できるセーフティネットとして機能できる。引き波の際は、水害遭難者18abが内陸側から海に流出する最終のセーフティーネットとしても機能する。
このように、津波が防潮堤を乗り越える想定をして漂着避難施設18dbを設置することは、海岸沿いの地域の避難や救助または救命に効果的と考えられる。
漂着避難施設18dbは、通常時は、海岸側と内陸側を結ぶ階段や展望ステージ、歩道、公園などとして利用可能で、防潮堤1801によって分断された地域間の自由な行き来を容易にし、津波や洪水等水害時は漂着避難装置18daにより上部避難路18dcへの避難を容易にする。とりわけ、局所的な階段しかアクセスする箇所がない急勾配の防潮堤を覆う場合には、漂着避難施設18dbの設置により、通常利用時、避難時共、アクセスのしやすさが大幅に向上する。
上部避難路18dc両脇に、逆U字型などの分節された形状の手摺18euを、片側二列に、それぞれ千鳥状に連続して配置すると、通行時は手摺18euの間を縫って通り抜けることができ、漂着避難装置18daと上部避難路18dc間の行き来を容易に保ったまま、津波や洪水等水害時に水位が上昇し、予期せず水面18baが上部避難路18dcの床面を越えた際は、上部避難路18dc上の避難者18aaが手摺18euに掴まることにより、本水流に流されるのを防止することができる。
漂着避難装置18daは、階段状とした場合、均質なルーバー状の断面を持つため、透過する本水流の向きを整え流速を平準化して局所的な急流や強い渦流を抑制することができ、防潮堤1801周りの洗掘を低減できる。
尚、漂流物から、漂着した水害遭難者18abや施設全体を守るため、上流側に、実施例43で示す、鉄筋コンクリート等工作物による漂流物ガード43dfのような、漂流物ガード18dfを設置することが望ましい。また、津波で流されにくい樹種による緑地帯を配置することも漂流物を遮るのに有効と考えられる。
実施例18に示す漂着避難施設の実施例に、防災拠点となる施設を組み合わせたものを示す。
防災拠点施設1901は、通常時は港湾の監視・管理施設や、展望台などとして利用でき、浸水時には避難施設や救助の拠点として利用できる。
防災拠点施設1901は、倉庫とクレーン等の荷卸し設備を備えるが、通常の防災備蓄倉庫と異なり、ゴムボート等、救助活動に必要な物資を常備し、大型の搬出入開口1902やクレーン1903等により、大量の、また、重量物の搬出入が容易に行える。
クレーン1903は、クレーン用レール1904が搬出入開口1902を貫通することにより、倉庫から容易に物資を搬出することができ、バルコニー・テラス1905を含む防災拠点施設1901周囲の任意の箇所に対し荷卸し等できるようにすることで、救助活動を容易にする。
バルコニー・テラス1905は、搬出入等の仮置きや作業スペースに活用できる。
屋上にはヘリポート・ラペリングポイント1906を設けることにより、海上や上部避難路19dc以外に、空からの輸送や移動の手段を提供し、救助または救命活動を強力にサポートすることができる。尚、ヘリポート・ラペリングポイント1906は床をグレーチング等として下部に太陽電池パネルを設置し、外部からの電源喪失に備えるとよりよい。
津波や洪水等の水害時、漂着避難装置19daは、初期避難や水害遭難者の漂着に対するセーフティーネットとして機能するのみならず、小型のボートの進水や接岸、乗降、荷物の積み下ろしなど、レスキュー隊等1907による海上の救助活動に必要な作業スペースや着岸可能な岸壁としての機能を提供する。
漂着避難施設の景観への配慮について説明する。
漂着避難装置は、格子状などの構造により、水平方向の見付面の大部分で光を透過し、風景を透かすことができる。しかしながら、人工物として地域の風景の一部に入り込むため、極力景観に配慮した形状や外観とすることが望ましい。
周囲の自然環境や背景となる風景に合わせて外形に変化を持たせ、地形の一部のように有機的な形状とすることにより、画一的で人工的な景観の形成を回避し、同時に、公園や丘のように、自由に散策でき、地域を見渡せるなど、積極的に景観やレクリエーション等に寄与するものとできる。また、山の稜線のように、最上部または上部避難路の高さに変化をもたせた場合、ピークとなる部分に、二次避難先となる避難施設を設置すると、避難路ネットワークの安全性を向上できる。
階段状の漂着避難装置であれば、LEDによる揚裏の間接照明などを設置することにより、通常時は夜間イルミネーション等に利用し、地震が発生し津波の上陸が予想される場合、当該施設への初期避難の対象地域に対し、予め当該地域の住民に周知された光り方をして警告すると同時に、避難誘導灯のように、避難方向を誘導する役割を果たす、といった活用が可能となる。
また、日常の利用時、落とし物等の物品の下部空間への落下を防止するため、漂着避難装置の空隙(階段状であれば蹴込部分など)を開閉もしくは本水流により破壊可能な板等で塞ぐこともできるが、この場合は、透明なアクリル板等とし、光や景観を透過できるものとするとよりよい。
階段状の漂着避難装置を建築物の屋外階段に適用する実施例を示す。
連続する階間をつなぐ、直階段等の折り返さない階段状の漂着避難装置21daを、予想される本水流の方向21caに上がっていく向きに配置し、上流側には実施例35、実施例36、実施例37の機構を用いた、浸水時に倒伏する手摺21dgを、下流側や側面には格子状の手摺またはフェンス21euを設置し、上階へ接続する階段状の漂着避難装置21daと、下階へ接続する階段状の漂着避難装置21daは、回り込んで接続する平場2101で接続し、この平場2101の上流側には、階高または天井高全長にわたるフェンス2103を設置し、水害遭難者を平場2101には漂着させないようにする。また、建築物の上流側の面で、漂着避難装置21daの前面とならない部分には、実施例38、実施例39の、手摺・ルーバーを用いた、漂着避難施設となるバルコニー21dbを設置することが望ましい。
これにより、浸水時に水害遭難者が当該建築物に漂着すると、漂着避難施設となるバルコニー21dbか、漂着避難装置21daに漂着させ、救助または救命することが可能となる。
このような構成の建築物を、別棟2102のように、複数棟を平行に、かつ、本水流の方向21caに対し互いにオーバーラップして直交するように配置すると、棟を分けて独立した建築物同士でありながら、全体として、地域における連続するセーフティネットの部分を構成できる。
一つの階段室の中に複数の直階段状の漂着避難装置22daを、予想される本水流の方向22caに上る向きに、本水流の方向22caに対し互いにオーバーラップして直交するように配置することで、本水流に対して当該階段室全幅にわたって、水害遭難者の漂着に対応可能な屋外階段を構成することができる。
実施例23は、折り返し階段状に配置した漂着避難装置23daによる階段室を連続的に雁行配置し、漂着避難施設を形成するものである。法令等により、合計として大きな幅員の階段の設置が求められる施設などに適用することを想定している。
本水流の方向23caが対応可能範囲2301(寄せ波、引き波共)に示す範囲内である場合に、水害遭難者23abを安全に漂着させる施設として機能できる。
浸水時には、実施例35、実施例36、または、実施例37の機構を用いた、浸水時に倒伏する手摺23dgが本水流に押され下流側に倒伏し、漂流する水害遭難者23abはこの上部を通過し階段室内に進入する。表面を横桟とした格子状の壁状体2302または柱形2303に漂着した場合は、本水流に押され、これらの表面に沿って水平方向に漂流し、倒伏した浸水時に倒伏する手摺23dgの上部に誘導され、ここを通過し、階段室内に進入する。ここで、各階段室の扉2304は、常時閉鎖式などとすることで、水害遭難者23abは扉2304を通過せずに、折り返し階段状の漂着避難装置23daの、本水流の方向に向かって上りとなる側に誘導され、水中でこれに漂着すると、これに沿って上方に持ち上げられる。この時、漂着避難装置23daにより持ち上げられる範囲は、当該漂着避難施設が折り返し階段状であるため、半階分の高さまでとなるが、下流側の傾斜手摺23euは本水流の方向に高くなる傾斜前面を成しているため、漂着した当該漂着避難装置23daの高さの範囲にて水面23baに到達しなかった水害遭難者23abは、傾斜手摺23euに漂着して再び押し上げられる。この傾斜手摺23euを、転落防止装置付きの梯子状の漂着避難装置などとすると、水面23baがこの傾斜手摺23euの高さの範囲にある場合は押し上げられた水害遭難者23abが水面23ba付近で安全に留まり、またはそこから避難することができる。水面23baが傾斜手摺23euより高い位置にある場合、当該施設では水害遭難者23abを救助できないため、水害遭難者23abが傾斜手摺23euを越えて漂流を続けられるよう、傾斜手摺23euの上部は外部に開放されている。尚、傾斜手摺23euの範囲で水面23baに到達した水害遭難者23abは、傾斜手摺23euと壁状体2302の表面の横桟23eeを手がかりや足がかりとして上階に上り、より安全な場所に避難することができる。
漂着避難施設は、本水流の方向に平行となる全体の断面が、実施例17のように、台形となる構成が理想的だが、全体を数階に分割して積層することにより、省スペース化することができる。深い水中に漂着した水害遭難者を確実に上昇させて安全を確保する機能は劣るが、十分な用地が確保できない場合などは、この積層型の構成が有効となる。また、道路や鉄道などの高架施設の下部空間に設置することで、用地の兼用のみならず、当該高架施設の上部路面等の部分を避難路として利用することができる。
尚、この実施例は、階段状の漂着避難装置などを用いることにより、観覧のための施設などとしても利用することができる。
また、この形態を、スキップフロアなどの断面構成とした建築物の内部に組み込むと、浸水時に逃げ遅れて室内で本水流に呑まれた居住者が、フロア間を接続する漂着避難装置部分に漂着し水面に上昇でき、生き残る可能性を大きくすることができる。
実施例24は、このような積層型の基本となる実施例を示したものである。
浸水前の避難時、対象となる地域の住民は、初期避難として、当該漂着避難施設の階段状の漂着避難装置24daの、直近となる箇所に直接アクセスし、漂着避難装置24daを上り、避難の動線24cdに示すように、漂着避難装置24da上部の連絡通路2401から、渡り廊下2403を通って前面側連絡通路2404に回り込み、上階への漂着避難装置24daを上ることを繰り返し、上部避難路となる最上階の連絡通路2401に避難し、さらにこれが接続する、より安全な避難施設等に二次避難する。
浸水時は、2階以上の部分にある前面側連絡通路2404の前面に取り付けられた実施例35、実施例36、実施例37の機構を用いた、浸水時に倒伏する手摺24dgが本水流24caを受けて倒伏するため、水中を流されている水害遭難者24abはこれに遮られることなく漂着避難装置24daに漂着する。また、渡り廊下2403の、前面側連絡通路2404を挟んで本水流の上流側となる前面部分は、漂着した水害遭難者24abを左右に振り分ける格子状の誘導板2406が取り付けられており、渡り廊下2403の両側面は落下防止の柵をかねた格子状の壁2405で塞がれているため、漂着した水害遭難者24abは、渡り廊下2403部分には漂着せず、図24Bに示す水害遭難者の移動の軌跡24ccのように、漂着避難装置24daの部分に漂着する。
漂着した漂着避難装置24daの高さの範囲内で水面24baに到達しなかった場合、水害遭難者24abの体は、当該漂着避難施設を透過する本水流24caに押されながら、階段上部の連絡通路2401を越えて、手摺24euに到達し、水面24baに到達するまで、漂着救助装置とした手摺24euに沿って上昇し、手摺24euの高さの範囲内で水面24baに到達しない場合、手摺24euを乗り越え、その奥にあるフェンス2407に到達する。フェンス2407は、やはり漂着救助装置であるため、水害遭難者24abは、フェンス2407に沿ってさらに上昇する。尚、各階の手摺24euとフェンス2407の間は、渡り廊下延長部分2408を除いて吹抜け2409となっているため、水中を漂流する水害遭難者24abはフェンス2407に沿って上階床面に遮られることなく上昇を続けることができる。
フェンス2407は、本水流上流側となる前面は傾斜前面を成す縦桟、背面は移動補助装置を成す梯子状の横桟となっているため、水害遭難者24abは水中で当該縦桟に沿って滑らかに上方に押し上げられることができるが、フェンス2407に接した状態で水面24baに到達すると、縦桟の間から背面の横桟に手足を掛けて上階に上ることができる。その後、水害遭難者24abは、さらに横方向に移動し、水面24baより上方にある渡り廊下延長部分2408に降り立ち、渡り廊下2403を渡って前面側連絡通路2404に回りこみ、上階への漂着避難装置24daを上り避難することができる。
尚、水面24baがこのフェンス2407上端より高い位置にある場合は、この施設では救助できないため、水害遭難者24abは、このフェンス2407を乗り越えて本水流に乗って漂流を続ける。
2階奥側の手摺24euとフェンス2407の間は吹き抜けではなく、手摺24eu上端より多少下がった位置に水平面2410を設けることにより、フェンス2407で水面24baに到達していた水害遭難者24abが自力でフェンス2407を上れずそのまま水位が低下した場合は、この部分に体が収まり、そのまま大気中で救助を待つことが可能となる。
手摺24euやフェンス2407に転落防止装置を適用すると、手摺24euやフェンス2407に沿って水面に到達した水害遭難者24abが、自力で横桟に掴まり避難することができなくても、安全に待避し救助を待つことが可能となる。
実施例24同様の漂着避難施設25dbを、高架施設2501の下部空間に設置し、背中合わせに高架施設2501が分断する地域の両側に向けて設置することにより、寄せ波、引き波双方に対応可能な施設を構成できる。実施例25は、高架施設2501の下部に当該施設を納めて省スペース化すると同時に、当該漂着避難施設の最上部から連絡階段2502にて高架施設2501に接続することで、高架施設2501上を経由してさらに安全な避難場所に二次避難することができるものである。
梯子状の漂着避難装置の実施例を示す。
実施例26では、縦桟26eyと横桟26eeにより、本水流の方向に上がっていく傾斜する梯子状の構造体を形成し、縦桟26eyと横桟26eeが交差する箇所に、横桟26eeを回転軸とした転落防止アーム26ebを取り付けたものである。転落防止アーム26ebは曲げ加工した鋼板で浮体を挟み込むなど、強度と浮力が得られる構造とし、回転軸となる横桟26eeの反対側(漂着救助装置の裏側)にも浮体兼錘となるフロート・ウェイト26egを具備させている。
通常時、転落防止アーム26ebが風で浮き上がりぶつかるなどして異音を立てたりしないよう、フロート・ウェイト26egは一定の質量を持ち、転落防止アーム26ebが風圧等の影響を受けにくいものとする。
避難時は、避難者26aaは、横桟26eeを手がかりや足がかりとし、上方に上って避難する。
浸水すると、転落防止アーム26ebやフロート・ウェイト26egに浮力が作用し、転落防止アーム26ebが縦桟26eyから離れる方向に回転しようとする。本水流が強い間は、転落防止アーム26ebは本水流の動圧に抑えつけられ開かず、漂着した水害遭難者は、縦桟26eyに平行に傾斜面を形成する転落防止アーム26ebの表面に沿って水面26baまで押し上げられるが、本水流が弱まり浮力が支配的になると、転落防止アーム26ebが回転して開き、同時に、水面付近に押し上げられた水害遭難者が水位の低下に伴い降下しだすと、直下の開いた転落防止アーム26ebに体が支えられ、安全に待避できる。
尚、転落防止アーム26ebは、縦桟26eyと横桟26eeの交差する箇所のうち、縦方向、横方向とも一つずつ飛ばしながら配置し、千鳥に並ぶようにすることで、転落防止に有効なアームの長さを確保しつつも、同時に、水害遭難者が到達した最高水位の水面26baから転落防止アーム26ebに保護されるまでの降下する距離を小さくできるため、より早く確実に大気中に待避することが可能となる。
寄せ波による強い本水流が継続している状態で水位が低下する場合は、転落防止アーム26ebが有効に開かないケースもありうるので、転落防止アーム26ebには起立を補助する機構を持たせることが望ましい。
実施例27では、図27Fに示すように、転落防止アーム27ebが、接続する回転軸となる横桟27eeの反対側にウェイト27egを具備することにより、実施例26同様、通常時に風圧等の影響を受けずに姿勢を維持できるようにしているが、同時に、横桟27eeに、これを回転軸としたアーム2701を取り付け、先端にフロートフィン27ehを接続することにより、浸水時にフロートフィン27ehが浮力と本水流の動圧による荷重を受けて横桟27eeを中心に上昇するように回転し、アーム2701側面のピン27eiが、転落防止アーム27ebの、横桟27eeへの接続部分側面にあるフック2702を押し上げ、転落防止アーム27ebを本水流上流側に回転させる。フロートフィン27ehを大きくしたり、アーム2701を長くすることで、本水流の流速が大きく、転落防止アーム27ebに作用する動圧による荷重が大きい場合でも、転落防止アーム27ebを起立させることができる。
このように、本水流を受けて、転落防止アーム27ebやフロートフィン27ehが回転するが、フロートフィン27ehが水平となる図27Gに示す位置まで回転したところで、別途、下地構造27eoに取り付けるなどしたフロートフィン27ehの回転止めにより、フロートフィン27ehは回転を停止する。同時に、転落防止アーム27ebは、本水流の動圧による荷重や、ウェイト27egの自重により、逆方向に回転しようとするが、上述のように、フロートフィン27ehの大きさやアーム2701の長さにより、フロートフィン27ehから受ける回転モーメントの方が大きくなるよう計画することで、転落防止アーム27ebは、図27Cや図27Gに示す位置を維持することができる。
この状態の時、転落防止アーム先端爪2703の前面は、桁や形成する梯子面全体と平行な面を形成し、水中を漂着した水害遭難者を上部に誘導する傾斜前面を成す。
さらに、漂着した水害遭難者27abが転落防止アーム27ebを押し込む荷重により、転落防止アーム27ebが回転変形をするが、図27Dのような状態となり、転落防止アーム中間部表面2704が、さらに押し込まれると、転落防止アーム下部表面2705が、やはり傾斜前面を成し、水中を漂着した水害遭難者27abを上方に誘導することができる。水害遭難者27abが上方に通過し終えた部分の転落防止アーム27ebは、フロートフィン27ehから伝達される回転モーメントにより図27Gの状態に戻る。これにより、水面27ba付近まで押し上げられた水害遭難者27abは、水位の低下により下降しようとすると、図27Gのように開いた下部の転落防止アーム27ebに受け止められる。転落防止アーム27ebは別途、下地構造27eoに取り付けるなどした回転止めによる角度まで回転することができ、図27Eや図27Hのように大きく開き、十分な待避スペースが形成された状態になるが、転落防止アーム先端爪2703が転落防止の働きをするため、水害遭難者27abは安全に待避しておくことができる。
尚、転落防止アーム27ebには、漂着した水害遭難者27abにより、一定角度以上押し込まれると回転モーメントの発生を開始するねじりばねを設置するなどして、漂着した水害遭難者の衝突ダメージを軽減できるようにすることが望ましい。
また、転落防止アーム27ebの回転軸である横桟27eeの支持箇所に緩衝機構27elを設けるとよりよい。
回転する三角形のユニットを連続的に千鳥配置することにより構成する梯子状の漂着避難装置の実施例を示す。
図28Aのように、支持桁28eoから緩衝機構付ブラケット28eqにて持ち出した横繋ぎ支持材28epを回転軸として、短冊状や管状などを含む線状の部材により形成する三角形ユニット2801を、通常時にこの図のように逆三角形となる角度に、また、正面から見て千鳥となるよう配置して取り付ける。その前面の先端立ち上がり28eb上部に、これらを水平方向に連続的に接続する梯子状横桟28eeを取り付ける。避難時、避難者28aaは、図28Aに示すように、梯子状横桟28eeを手がかりや足がかりとして上り、上方に避難する。
この三角形ユニット2801は、下端の頂点部分を貫通し支持される横繋ぎ支持材28epの後部(漂着救助装置裏側)にフロートフィンユニット28ehを接続している。
三角形ユニット2801は、接続されたフロート等を含めた重心が、支持される横繋ぎ支持材28epより前側(本水流の上流側)となるようにするが、上段の横繋ぎ支持材28epが、当該三角形ユニット2801の中空部分を貫通しており、当該三角形ユニット2801の裏側(下流側)の辺となる部材の移動を制限するため、浸水前はこれらが接触した状態で静止している。ここで、実施例40、実施例41、実施例42に示すフロートを用いたロック機構を適用することで、より安定した状態とでき、安全な避難を可能とする。
浸水すると、上述の、フロートを用いたロック機構を適用している場合は、ロックが解除され、図28Bのように、三角形ユニット2801は、これを支持している横繋ぎ支持材28epを中心として、三角形ユニット2801の自重や、三角形ユニット2801が本水流から受ける動圧による荷重、フロートフィンユニット28ehに作用する本水流から受ける動圧による荷重や浮力が釣合う角度に回転し、三角形ユニット2801前面は、格子状の傾斜前面を形成し、漂着避難装置として機能できるようになる。
図28Cのように、水害遭難者28abが漂着すると、水害遭難者28abは傾斜前面を形成する三角形ユニット2801前面をさらに押し込み、緩勾配となった三角形ユニット2801前面の傾斜前面に沿って上昇し、やがて水面28baに到達する。
水害遭難者28abが三角形ユニット2801に衝突した際の衝撃は、横繋ぎ支持材28epを介して緩衝機構付ブラケット28eqに伝達され、吸収される機構となっているが、三角形ユニット2801が回転変形することによっても、一定の緩衝効果が得られ、また、強い本水流を受けている間の水害遭難者28abの移動を緩やかなものとできるため、水害遭難者28abの負傷の可能性を低減できる。
漂着した水害遭難者28abが通り過ぎた部分の三角形ユニット2801は、浮力や本水流などのバランスにより、漂着前の状態に戻っているため、水害遭難者28abは、水面28baに到達した後、水位が下がるなどして下降しようとすると、図28Dのように、下部の三角形ユニット2801に受け止められ、さらに先端立ち上がり28ebが転落防止装置として機能するため、水害遭難者28abは安全に待避することができる。
尚、三角形ユニット2801は千鳥配置となっているため、避難時の手がかりや足がかりとなる梯子状横桟28eeの間隔を小さくできるが、同時に、漂着して水面28baに到達した水害遭難者28abの下降の距離を抑えながらも広い待避スペースを形成できる。
梯子状の漂着避難装置を用いた小型の漂着避難施設の実施例を示す。
通常時は上部避難路29dc下部の内部空間2901を水路、歩道や緑地、防災備蓄倉庫等に利用し、上部避難路29dcは歩道等に利用できる。上部へは、実施例30に示すスロープ3001等を用いてアクセスする。
避難時は、側面の梯子状の漂着避難装置29daまたはスロープ3001を用いて上部避難路29dcに初期避難し、上部避難路29dcを通り、上部避難路29dcが接続する、より安全な避難施設等に二次避難することができる。
梯子状の漂着避難施設や階段状の漂着避難施設は、高齢者等が上部避難路へアクセスできるよう、このようなスロープを併設することが望まれるが、用地や費用等の条件によりスロープを十分に設置できない場合に、自力で漂着避難装置を上れない高齢者等(以下、「被介助者」という)を上部避難路に引上げる方法を示す(以下、被介助者の引き上げ作業者を「介助者」という)。
実施例31に示すように、予め当該漂着避難施設に装備されている滑車3101やロープ3102に接続するハーネス3103を、被介助者3105は当該漂着避難施設の下部で装着し、介助者3104は当該漂着避難施設上部で装着する。介助者3104が漂着避難装置31daをゆっくり降りることにより、ロープ3102や滑車3101を介して繋がれた被介助者3105が引き上げられ、被介助者3105は上部避難路31dcに避難できる。
当該漂着避難施設は基本的に、寄せ波の上流側からアクセスして避難することを想定しているが、介助者3104が、被介助者3105と同じ上流側に降りることにより、被介助者3105の状況を確認しながら引上げ作業ができ、また、作業途中で本水流に呑まれても、そのまま当該漂着避難施設に押し上げられ、安全に避難できるものとなる。
尚、ハーネス3103は、極力簡単に着脱可能なものとする。また、滑車3101は、引き上げ作業途中の休憩やミス等での滑落防止のため、逆回転防止機構やブレーキ機構を持つものとすることが望ましい。
実施例32は、階段状や梯子状の漂着避難装置32daなどと併せて設置する、手摺を被介助者の引き上げ用レールとして利用できる装置で、被介助者3205が上部に座ったり寝そべった状態で滑らかに引き上げられるようにするものである。
手摺兼レール3201は、3本以上の鋼管などを、およそ半円形を描くように並べた断面とすることで、引き上げ対象の被介助者3205が座っても嵌り込んだり転落したりしにくいものとできる。手摺兼レール3201の手摺部分を支柱3204から持ち出して支持する持出支持材3206は、手摺兼レール3201内に飛び出さないよう半円形などの形状とする。手摺兼レール3201最下部については、一定の長さの水平部分3202をとり、引き上げ対象の被介助者3205が座って引き上げられる準備をしやすいようにする。また、この先端部3203は、本水流に呑まれた水害遭難者が漂着して当該部分に衝突した際に上部に持ち上げられるように、また、被介助者3205が水平部分3202上に上がりやすいよう、先端が下向きになるよう傾斜させておくと、よりよい。
梯子状の漂着避難装置を用いて、極力省スペース化しつつも、大きな浸水深に対応する漂着避難施設の例を示す。
およそ切妻型の断面形状を持つ漂着避難施設で、梯子状の漂着避難装置33daを、各階の側面に、上下方向に人の体が通過できるスリット3302が生じるようセットバックさせながら段状に取り付け、桁行き方向に連続させて漂着避難施設を構成するものである。この実施例では、梁間方向には三角形のフレーム3301を用いているので、小さな部材断面で大きな強度を発揮しやすいものとなる。1階部分の漂着避難装置33daは、所々を平面計画的にもずらしてスリットを設けることにより、1階の内部空間3303への出入りを可能とし、避難時は、階段3304から上階に避難できるものとなる。浸水後に当該漂着避難施設に漂着した水害遭難者33abは、漂着避難装置33daの、到達した最高位の水面付近にて、転落防止装置の転落防止アーム33ebに捕捉され、待避できる。そのまま自力もしくは救助者3305の助けにより、梯子状の漂着避難装置33daをつたって直近のスリット3302から、安全な内部空間3303に移動し、当該漂着避難施設が接続する、より安全な避難施設等に二次避難することができる。尚、予想される寄せ波に対し、下流側最上部となる開放面3306は、漂着避難装置33daを設置せず外部に開放することにより、水位が最上階の床よりも高くなった場合に内部に居る人が閉じ込められることがない。また、物品スペース3307の部分は本来、入り隅等によりデッドスペースとなるが、救命胴衣やロープ等の救助または救命のための物品や、さらなる避難用の物品等を備えておくと、よりよい。尚、この場合、備えた物品が、本水流の当該施設の透過を阻害して、有害な水流の抵抗を生じさせないよう配慮する。
尚、設置スペースの都合等、条件によっては、寄せ波側のみに漂着避難装置を設置することにより、より簡易な構造とすることもできる。
梯子状の漂着避難装置を建築物に設置して漂着避難施設とした実施例を示す。
この実施例では、近隣住民等に漂着避難施設としての機能を提供すると同時に、当該建築物の屋内で逃げ遅れて本水流に流された住民等が即座に漂着避難装置の部分に漂着し、水面に出て避難することを可能とするものである。
この例では、板状の集合住宅を想定しており、予想される浸水深により、浸水が及ぶ漂着避難装置適用階3412までに漂着避難装置を適用し、その上部の漂着避難装置不適用階3413は通常の基準階型の構成としている。
予想される本水流の方向34caに対し、上流側となるバルコニー3402側の、漂着避難装置適用階3412までの部分は、バルコニー3402前面を、漂着避難装置である梯子状ルーバー34daで覆い、外部テラス3406を設けて階毎にセットバックさせている。バルコニー3402と外部テラス3406は、バルコニー3402の突出部である進入・避難用突出部3405の側面に設けた進入・避難用扉3414にて連絡する。梯子状ルーバー34daは、実施例38、実施例39のルーバーのように、水平羽板部分を持った構造とすることで、住戸内の光熱環境やプライバシーの向上に寄与できる。
共用廊下3403の下流側には、吹抜3404を介して梯子状の漂着避難装置であるフェンス3410があり、フェンス連絡ブリッジ3411にて共用廊下3403と接続している。また、共用廊下3403と吹抜3404間には、共用廊下3403側表面を縦格子とした漂着救助装置である共用廊下手摺3409が設置されている。
当該建築物が本水流により浸水し、外部からの水害遭難者が漂着した時は、当該水害遭難者はバルコニー3402の前面の梯子状ルーバー34daに沿って上昇し、水面付近に到達すると、意識がある場合はそのまま梯子状ルーバー34daの横桟を手がかりや足がかりとして安全な階まで上って避難できる。この時、途中の外部テラス3406は、当該水害遭難者の一時的な休憩や、当該水害遭難者が転落した場合に受け止める役割を果たす。漂着した水害遭難者に意識が無い場合は、梯子状ルーバー34daの転落防止装置に保護された状態で救助を待つことになるが、救助者は当該水害遭難者を付近の外部テラス3406に運び、手当てをしたり、進入・避難用扉3414から屋内側に運び込むことができる。
屋内については、上流側となるバルコニー側外壁3407やその開口部が本水流により破壊されると、本水流が住戸3401内に入り込むが、住戸3401の内部間仕切りや共用廊下側外壁3408を、浸水時に本水流により破壊されやすいものとすることで、住戸3401内で逃げ遅れた住民等が本水流に流され、共用廊下側に出ることができる。流されて共用廊下手摺3409に到達した当該住民等は、共用廊下手摺3409に沿って上昇し、さらに水位が高い場合、共用廊下手摺3409を越えてフェンス3410に到達し、フェンス3410に沿って、各階の吹抜3404を通過しながら、フェンス3410の高さの範囲で水面に到達するまで上昇を続ける。
フェンス3410に接した状態で水面に到達した当該住民等は、そのままフェンス3410の横桟を手がかりや足がかりとして上り、直上階の最寄のフェンス連絡ブリッジ3411上に降り立ち、共用廊下3403から付近の共用階段に回り込み、安全な階まで上って避難する。漂着した住民等の意識が無い場合は、フェンス3410の転落防止装置に保護された状態で救助を待つ。
最上段のフェンス連絡ブリッジ3411床面が最高浸水高さ以上となる場合、このフェンス連絡ブリッジ3411の先端付近に、フェンス際手摺34euを設置すると、水害遭難者は、一旦フェンス連絡ブリッジ3411先端の平場に立ち、安全を確保した状態でフェンス際手摺34euを、その横桟を足がかりにして乗り越え、共用廊下3403側に避難することができる。これにより、フェンス連絡ブリッジ3411の側面の手摺を乗り越えるのに必要な高さまでフェンス3410を立ち上げる必要が無くなる。
尚、梯子状ルーバー34da上部や、フェンス3410最上部がある階の共用廊下3403などには、転落防止装置に保護されて待避している水害遭難者の救助活動のため、ロープやウィンチ等、レスキューのための物資を備えておくと、よりよい。
共用廊下3403からフェンス3410にかけての部分は、この構造に代えて、実施例24のような、階段状の漂着避難装置を積層した構造とすることで、共用廊下や共用階段を兼用した漂着避難施設とすることができる。
共用廊下側手摺3409は、実施例35、36、37に示すような、本水流による浸水時に回転する手摺とすると、通常時は直立して利用できるため、共用廊下3403を、より歩行しやすくできる。
火災時等のバルコニー側からの避難計画については、行政との協議や確認が必要となるが、一般的に設置されるバルコニーの避難梯子の代わりに、進入・避難用扉3414と梯子状ルーバー34daを経由して地面まで下りて避難することができる。消防活動については、進入・避難用扉3414を非常用進入口や代替進入口として利用できる。進入・避難用扉3414は、子供の落下防止や防犯のため、通常時は施錠され、開錠スイッチや火災感知器、水害や浸水に対する警報の信号等と連動して開錠できるものとし、さらに、水圧開錠可能とするか、破壊可能なガラス戸とし、消防隊の進入に対応する。または、梯子状ルーバー34daを外部テラス3406の床面から落下防止の手摺となる高さまで立ち上げ、進入・避難用扉3414が開くと防犯のための信号が管理室等に発信される、などといった構成とするとよい。
浸水に対応する各階の天井面は、計画的に空気を滞留させる場合を除き、漂流者の天井付近での停滞防止のため、浸水後に、本水流方向に対し直交する梁形や垂壁などが極力突出しないようにすることが望ましい。構造躯体をフラットスラブ構造などとすると、計画しやすい。フェンス連絡ブリッジ3411は、当該ブリッジの桁行き方向に直交する断面が逆三角形となるように揚裏中央を低くし、フェンス3410との取り合い部分も揚裏側にハンチを付けるなどとすることにより、水中を漂流中または上昇中の水害遭難者がフェンス連絡ブリッジ3411下部に押し留められたりフェンス3410との間に挟まって上昇できなくなることを防止できる。これは、実施例24での、渡り廊下延長部分2408についても同様である。
尚、バルコニーの構成については、梯子状ルーバー34daのすぐ背後を外壁面とし、図で示すバルコニー3402の部分を屋内として、梯子状ルーバー34daを落下防止の手摺となる高さまで外部テラス3406の床面から立ち上げ、外部テラス3406をバルコニーとする計画も可能である。
当該実施例は、近隣からの漂着避難施設として機能するが、初期避難先として利用するかどうかは、津波避難ビルの指定や、管理組合と行政との協定等が必要と考えられる。初期避難先として利用する場合は、梯子状ルーバー34daからではなく、極力、安全かつ簡単に上れる、共用階段を利用して避難できるようにすることが望ましい。また、実施例21にて示した、屋外階段への階段状の漂着避難装置の適用例同様、このような建築物を複数棟を雁行配置することにより、全体として地域におけるセーフティネットの一部として機能することができる。
可倒式の手摺やフェンスの実施例について示す。
尚、必要に応じて、手摺やフェンスは倒伏させることも、一定の角度までの回転とすることもできる。ここでは、手摺とした場合の実施例を示している。
実施例35は、可倒式の手摺の、基本的な構造の実施例である。手摺支柱3501の下部には、下部ピン3506と上部ピン3507が取り付けられており、これらはそれぞれベースプレート3503の下部スライダー3504と上部スライダー3505にはめ込まれているため、手摺支柱3501の移動はこれらスライダーの形状に制限される。
通常時は、手摺の自重により、手摺支柱3501下部の下部ピン3506と上部ピン3507が、下部スライダー3504と上部スライダー3505の最下部に落とし込まれることにより、手摺は安定して使用できる。
手摺は、手摺支柱3501等の中空部に発泡ウレタン等の浮体を充填する、または、キャップや樹脂材料等で当該中空部の気密性を保ち浮体とするなどにより、浮力が得られる構造となっており、浸水を開始すると、一定の水深になった時点で手摺に作用する浮力が手摺の自重を上回り、手摺は上昇を始める。また、下部スライダー3504と上部スライダー3505(最上部を除く)は、本水流の方向に上がっていくよう傾斜した形状であるため、水位が低く、十分な浮力が得られていない場合でも、手摺に作用する本水流の動圧による荷重を受け、手摺を上昇させることができる。
このとき、下部スライダー3504と上部スライダー3505は、上部スライダー3505の上部を除いて平行な形状のため、手摺支柱3501は上部ピン3507が上部スライダー3505の最上部に到達するまで、鉛直方向に直立した姿勢を保ったまま上昇する。上部スライダー3505の最上部は、本水流の下流側に開放する形状(手摺を倒伏させる場合)、または手摺が最高となる高さまで上昇し、下部スライダー3504の最上部に下部ピン3506が位置する時に、この下部ピン3506の芯を中心として当該手摺を本水流の下流側に回転させた場合に上部ピン3507の軸部外周が描く円弧を包含できる形状に切り替わる(回転角度を制限する場合)ようにすることにより、手摺が浮上し下部ピン3506と上部ピン3507が、それぞれ下部スライダー3504と上部スライダー3505の最上部に到達した後、手摺は下部ピン3506を回転中心として、上部ピン3507が上部スライダー3505の最上部から本水流の下流側に向かって回転することができる。
このとき、上部スライダー3505の最上部の形状が、上記後者である場合、包含する円弧の下流側端部の位置により、回転角度を制限できる。
尚、通常の使用時の安全性への配慮として、手摺の単位長さあたりの重量を大きくすることで風圧力による持ち上がりを防止し、また、手摺を一定長さごとに一体的に結合してユニットとし、一つのユニットを人力で持ち上がらない重量のものとして、いたずら等による持ち上がりを防止し、予期しない手摺の回転や倒伏による危険を防止することができる。さらに、実施例36、37にて、浮体を用いたロックシステムを装備することにより、浸水時のみロックが解除されて手摺が持ち上がり、回転や倒伏が可能となる機構を示す。
実施例36は、下部の横桟を利用するなどしたハウジング3601に、ロックピンフロート36efやロックピン36eiによるロック機構を収納する構造としたものである。
通常時は図36Aに示すように、ロックケーブル3602の一端を、手摺支柱3604の、下部ピン3607などに接続し、反対側はリング状としてロックプレート3603の間に差し入れ、ロックプレート3603ごとロックピン36eiを貫通させて拘束することにより、手摺支柱3604はこのロックケーブル3602が遊びを消化し伸びきる範囲以上は移動や上昇ができない。また、手摺支柱3604が外力によりロックケーブル3602が伸びきるだけ持ち上がっても、下部スライダー3605と上部スライダー3606は、本水流の方向に上がっていく勾配を持つ傾斜した形状であるため、当該外力が消滅すると、手摺の自重により、下部ピン3607と上部ピン3608がそれぞれのスライダーに沿いながら最下部まで落下するように移動し、通常の状態に戻る。
当該手摺が本水流により浸水すると、ロックケーブル3602の貫通孔を兼ねた上部通水孔3609や下部通水孔3610からハウジング3601内に水が入り込み、同時に、ハウジング3601内の空気を上部通水孔3609から追い出すため、ハウジング3601内の水位が上昇し、ロックピンフロート36efが浮上し、図36Bのような状態となる。
この時、ロックピンフロート36efに取り付けられたロックピン36eiがロックプレート3603の孔から外れることにより、ロックケーブル3602のリング状の部分は自由に移動できるようになる。
その後、当該手摺周囲の水位が上昇すると、上述の原理により手摺がスライダーの形状に沿って上昇するが、手摺支柱3604に接続するロックケーブル3602は既に下端側を拘束されていないため、図36Cのように手摺はそのまま上昇し、図36Dや図36Eのように、回転したり倒伏することができる。
尚、ロック機構を収納するハウジング3601の設置位置に関して、ロックピン36eiがロックプレート3603の孔から外れるより先に手摺支柱3604が上昇を開始した場合、ロックピン36eiがロックケーブル3602に引き寄せられ、ロックプレート3603の孔の内周面との摩擦によりロックプレート3603の孔から外れなくなる恐れがあるので、ハウジング3601は極力低い位置に設定し、確実に手摺の上昇より先にロックピンフロート36efを浮上させ、ロックケーブル3602の拘束を解除できるようにすることが望ましい。
また、設置場所が水はけの良い場所であれば、通常時に、上部通水孔3609から浸入した雨水は、下部通水孔3610から排出されるため、雨水が内部に溜まってロック機構が解除されることはない。
実施例36のロック機構は、フロートやケーブルを用い、機械的な可動部を極力少なくして簡易な構造としているが、さらに、雨仕舞に配慮することでハウジング内部の腐食、劣化、固着等を防ぎ、ハウジング内の清掃など、通常時のメンテナンス性を高めた実施例を示す。
ハウジング3701は上部から雨水が入り込むことを防ぐため、上面に開口を設けず、上部全体をハウジング3701より大きな蓋3702で覆い、ハウジング3701の側面より張り出した部分の下面に上部通水孔3703を設ける。蓋3702の一辺は、このように大きく張り出させず、ハウジング3701の側面と蝶番3705にて接続し、メンテナンス時は、蓋3702を開けてハウジング3701内部の清掃や点検ができるようにしている。
ロックケーブル3706は、ハウジング3701底部側面にある、下部通水孔3704を通しており、ロックケーブル3706に張力が作用した際に、下部通水孔3704の縁などに接触し、ハウジング3701を破損しないよう、ケーブルガイド3707を通している。
尚、ベースプレート3708やハウジング3701が取り付く設置面37bcは、雨水が溜まらない、水はけの良い位置とする。また、ロックピンフロート37efは、下部のロックプレート3710との固着を防止するため、フロート脚3709を持つ。
集合住宅等のバルコニーの手摺やルーバーに、実施例35、36、及び37で示した手摺の機構を適用することにより、浸水時に変形して漂着避難施設となる実施例を示す。
この漂着避難施設は、水中を漂流する水害遭難者が当該建築物に漂着した際に、水害遭難者を上方に押し上げ、当該建築物に上陸して避難させることのみならず、水害遭難者が、水没直前のバルコニーのスラブ下や屋内に潜り込んで窒息する可能性を減少させることができるものである。
図38Aのように、集合住宅等のバルコニーなどに、手摺と下階のルーバーを上下に連続させたものをバルコニーの床スラブ先端に取り付けたもので、通常時は、手摺は落下防止に、ルーバーは水平羽板を用いて室内への日射取込を調整する装置として利用できるが、浸水時は、浮力や本水流の動圧による荷重を受け、手摺やルーバーが上昇し、回転することにより、漂着した水害遭難者を上方に誘導する梯子状の漂着避難装置の形状に変形する。
ルーバーは、図38Bに示すような構造を持つ。水平羽板3801は水平羽板回転軸3802を中心として回転して角度を調整できるため、図38Aに示すように、冬の日射3814を取り込み、夏の日射3815は遮りつつ、水平羽板3801に当たった日射の柔らかい反射・拡散光3805を室内奥まで届けるなど、室内への日射の取り込みをコントロールでき、快適性や光熱環境の性能を向上させ、省エネに寄与することができる。また、ブラインドのように、近隣との視線3816をコントロールし、プライバシーを向上することができる。
手摺は図38Cに示すような構造を持つ。手摺には、子供が上って落下する事故を防止するため、手摺の内側には手摺内側縦桟3803を、手足が入りにくい間隔で、奥の手摺横桟38eeから極力離して取り付ける。
図38Aの上階部分に示すように、ツタ植物などにより、当該手摺やルーバー部分に緑化3806を施すことで、都市に対するヒートアイランド対策等、環境性能の向上を期待でき、緑化部分の、透過光や反射・拡散光3805により、室内を、森林に居るような快適な光環境とすることができる。但し、緑化に用いた植物が当該漂着避難装置の可動部を拘束し、動作の妨げとならないよう配慮が必要である。
手摺またはルーバーは、固定式の梯子状の漂着避難装置として、予め傾斜させて設置することが望ましいが、設置スペースの都合や日常の利用の利便性のため、この実施例では、通常時は直立させ、本水流による浸水時に変形して傾斜面を形成する実施形態を示している。
回転させる手摺またはルーバーは、縦桟38ey等の中空部分に発泡ウレタンを充填したり、キャップや樹脂材料等で当該中空部分の気密性を保ち浮体とするなどにより、本水流による浸水時に浮力を発生させることができる。本水流による浸水時は、浮力や本水流の動圧による荷重を受け、実施例35に示した原理により、手摺またはルーバーが上昇、回転し、漂着避難装置を形成する。当該漂着避難装置の、本水流の上流側となる前面は、縦桟38eyが勝っており、これが傾斜前面として機能する。ルーバー部分については、縦桟38eyによる傾斜前面の代わりに、水平羽板3801に、請求項9や10に記載の、可動のユニットの構造を持たせることによって水害遭難者を上昇させる構造としてもよい。漂着した水害遭難者は、手摺横桟38eeや水平羽板回転軸3802を横桟として手がかりや足がかりにして上り、バルコニー3804に上陸し、または手摺上を、当該階上部のルーバーに掴まるなどしながら水平移動し、上階バルコニー床の避難ハッチ下部に格納された避難はしごを下ろし、これを上って安全な上階に避難する。実施計画にあたっては、このような避難を可能とするため、器具や装置の位置関係等に配慮するものとする。また、当該避難ハッチや避難はしごは、津波からの避難に対応した、下階から操作できるものとする。
手摺やルーバーの外面に転落防止装置を装備することにより、水害遭難者が当該手摺やルーバーの外面で水面まで到達し、そこが最高水位であった場合に、当該転落防止装置に保護され、安全に待避しておくことができる。
手摺部分は通常の使用時に不意に回転すると危険であるため、いたずらや風圧力等により持ち上がり回転しないよう対策する必要がある。手摺部分は、人力で持ち上がりにくい重量となる長さごとに一体的に接続したユニットとし、同時に、台風等の影響を受けないよう、長さや見付面積による風圧力に対する単位重量を大きくすることにより、いたずらや風圧力等による回転を防止できる。また、実施例36や37に示すようなロック機構を設置してもよい。
ルーバーの下端は、火災時の消防活動等の差し支えの無い範囲で、極力、当該階下部の手摺近くまで延長すると、よりよい。
これにより、日常の使用時には、光熱環境の向上と共に、視線を遮蔽し、プライバシーを向上できる。
また、浸水時には、水害遭難者が漂着し避難できる範囲を大きくすることができ、上述のように、水害遭難者が、逃げ場の無いバルコニーのスラブ下や屋内に流れ込んで窒息する可能性を減少させることができる。これは、当該ルーバーを設置しない場合、水害遭難者が漂着した位置が、当該階の高い位置であれば、既に水位が天井に迫っており、安全な位置への避難が可能な時間の猶予が少なく、また、必要な足場や手がかりを得にくく梁や垂壁に阻害され水平移動が困難となり、上階のバルコニーの床に設置された避難ハッチを開けて上階に避難したり、住戸を抜けて反対側に避難することが非常に困難となるが、当該ルーバーを下方に長く延長することにより、その範囲において、これを防止できるためである。
尚、この漂着避難施設の実施例は、各階でのルーバーと手摺の高さの範囲でしか、漂着した水害遭難者を上方に誘導することはできないので、水中深く漂流する水害遭難者には有効ではない。
但し、当該建築物を、バルコニーを雛壇状に連続的にセットバックさせた構成とする場合は、手摺をルーバー下端より高く立ち上げ、浸水時に手摺が回転すると上部ルーバーに差し掛かり本水流に対しオーバーラップする、または連続する傾斜面を形成するものとすることにより、当該建築物に流れ着いた水害遭難者38abの、バルコニーのスラブ下や屋内への流入を、より確実に防止でき、漂着避難装置に沿った、地表面から当該構成部分の最上部までの範囲にわたる上昇を可能にする。
実施例38は、手摺とルーバーを、縦桟を共有するなどして一体化したもので、当該装置が浸水後、縦桟38eyがスライダーに沿って上昇し、縦桟38eyの、回転軸となる下部ピン3807より上方の部分が下方の部分よりも大きな荷重を本水流の動圧により受けることで回転するものである。
図38Dは、この時の縦桟38eyの支持部を拡大したものである。
手摺やルーバーは、縦桟38eyに取り付けられた下部ピン3807と上部ピン3808が、それぞれ、支持プレート3809の下部スライダー3810と上部スライダー3811にセットされていることにより、支持されている。支持プレート3809は、アンカー38enにより、バルコニーのスラブ先端に支持されている。
実施例39は、ルーバー部分を傾斜した状態で固定し、上部手摺部分のみ可動としたもので、手摺部分が回転していない状態で水害遭難者がルーバー部分に漂着した場合にも水害遭難者は上方に誘導されるため、実施例38に比べ、より早い時点から漂着避難装置として有効に機能できる。さらに、水位が上昇すると、手摺部分が上昇し回転して前面が傾斜面となり、図39Cに示すように、ルーバー部分と連続した漂着避難装置を構成する。
以下、水位38baの上昇に伴う当該装置の変形と、漂着や避難について説明する。
図38D、図38Eは本水流による浸水前の階の状態を示している。
本水流により浸水した階に漂着した水害遭難者38abは、上階のバルコニー3804床の避難ハッチ3812下部に格納された避難はしごを下ろし、水害遭難者の移動方向38ccのように、当該避難はしごを上り、上階床の避難ハッチ3812を開けて、上階のバルコニー3804に移動することを繰り返し、安全な階に避難する。このとき、実施例39の場合、図39Aに示す状態となっている。
図38F、図38Gは、縦桟38eyが浸水し、スライダーの形状に沿って上昇した状態を示したものである。
手摺またはルーバーは、本水流38caを受け、機構の変形の方向38cbのように移動する。このとき、実施例39の場合、図39Bに示す状態となる。
また、この時、実施例38では、縦桟38ey最下端まで前面が直立した状態なので、水害遭難者が漂着しても水中を上昇させることはできない。これに対し、実施例39では、元々ルーバー部分を傾斜した状態で固定しているため、水位が低く手摺部分が直立した状態であっても、ルーバーの高さの範囲で漂着した水害遭難者を上昇させることができる。
図38H、図38Iは、水位38baの上昇に伴い、下部ピン3807より上方の手摺部分に作用する本水流の動圧による荷重が、下部ピン3807より下方のルーバー部分に作用する本水流の動圧による荷重より大きくなることにより、当該手摺やルーバーが、下部ピン3807を回転軸として回転した状態を示したものである。
手摺とルーバーを一体化したものは、この状態となって、初めて漂着避難装置として機能する。縦桟38eyが回転し、図38Hに示すように、上部ピン3808が、上部スライダー3811の、本水流の下流側となる端部に到達すると、ラッチ38etにロックされるため、水位38baのぶれや変動があっても、また、縦桟38eyの回転軸となる下部ピン3807より下方に位置するルーバー部に水害遭難者38abが漂着し衝突しても、縦桟38eyは回転しないため、当該手摺やルーバーは漂着避難装置としての機能を果たすことができる。
漂着した水害遭難者38abは、水害遭難者の移動方向38ccのように移動し、避難することができる。
このとき、実施例39の場合、図39Cに示す状態となる。
上記のように形成された漂着避難装置に漂着した水害遭難者38abは、当該漂着避難装置を上り、バルコニー3804に上陸し、または手摺上を当該階上部のルーバーに掴まるなどしながら水平移動し、上階のバルコニー床の避難ハッチ3812下部に格納された避難はしごを下ろしてこれを上り、浸水前の上階に避難する。当該漂着避難装置が上階のバルコニー床の避難ハッチ3812と離れており、漂着した水害遭難者38abが、一旦バルコニー3804上を当該避難ハッチ3812下に歩行して移動してから上階に避難する必要がある場合、実施例39のようにルーバー部分は固定し、手摺は倒伏する構造とすると、よりよい。
尚、図38Iに示す、危険な位置に潜り込んだ水害遭難者3813は、漂着避難装置部分に漂着せず、スラブや天井下に潜り込んでしまい、水位38baが上昇する中、活路を見失った状態を表す。このようにならないよう、上述のように、漂着避難装置のルーバーは、極力下部手摺付近まで延長することが望ましい。また、手摺上端と、当該階上部のルーバーの間隙が小さい場合、漂着避難装置部分に漂着した水害遭難者38abに十分な体力があれば、当該手摺を上り、そのまま上部のルーバーを上って上階に避難することも可能となる。
本開示による、津波や洪水等の水害時に変形させる、漂着避難装置やその他の装置の可動機構について、本開示の各実施例では、通常時は変形せずに安全に利用できる構造を示しているが、条件により、別途ロック機構を設けることが望まれる場合が考えられる。地震時のみロックさせる場合は、一定の揺れが発生した際にロックされる一般的に提案されている構造の耐震ロック機構を設置する方法がある。これに対し、常時ロックしておき通常時安全な利用ができるものとし、浸水時のみロックが解除される、簡単に設置できるユニット式のロックシステムの例を示す。
当該ユニット式のロックシステムは、局所的に設置するもので、通常時は設置箇所にてロック対象となる部材間の、ずれ方向の移動を拘束してロックし、設置箇所が浸水することでロック解除する、単体で完結するシステムである。
ロック対象部材(外側)4001に挟まれたロック対象部材(内側)4002を貫通するロックピン貫通孔4003をロックピン4004が貫通することにより、これら2種類のロック対象部材の水平移動を拘束している。
当該ロックシステム設置箇所が浸水すると、上部通水孔4005や下部通水孔4006からハウジング4007内に水が入り込み、また、同時にそれによりハウジング4007内の空気を上部通水孔4005から追い出すため、ハウジング4007内の水位が上昇し、フロート40efが浮上し、フロート40efに取り付けられたロックピン4004がロックピン貫通孔4003から外れることにより、ロック対象部材(外側)4001とロック対象部材(内側)4002は、相互の拘束を解かれ、自由に移動できるようになる。
通常時、ハウジング4007は、蓋4009を取り外すことにより、内部の点検や清掃等のメンテナンスができる。
また、ハウジング4007は、雨が降り込むことによる誤動作や、腐食等の劣化を防止するため、通常時の雨仕舞に配慮する。上部通水孔4005は、蓋4009の、ハウジング4007の側面より張り出した部分の下側に設けることにより、極力ハウジング4007内への雨水の浸入を防止でき、浸入した水は底部側面の下部通水孔4006から排水し、これらの開口から通気も行えるため、内部には水が溜まらない。また、フロート40ef下部にはフロート脚4008を取り付けることにより、フロート40efの劣化や菌類の発生等による設置面への固着を防止できる。
尚、ロック対象部材(外側)4001とロック対象部材(内側)4002は、通常の使用時の位置にて相互に嵌合する凹凸を持つ位置調整ノッチ4010を設けて、支圧が発生する条件とすることなどにより、あるべき位置に自ずと位置を微調整させることができる。この時、ロックピン貫通孔4003の孔径をロックピン4004の直径より大きくすることで、これらの間にクリアランスを確保し、浸水時にロックピン4004がロックピン貫通孔4003の内側の面に接触して拘束され浮上できなくなることを防止している。
水害遭難者が、水面付近を高速で漂流する場合など、ロックが解除される前に漂着避難装置に漂着すると、当該漂着避難装置が水害遭難者の漂着に備えた状態となっていないため、衝突時の衝撃が大きくなるとともに、漂着避難装置としての機能も発揮できない。このようなケースに配慮して、当該漂着避難装置よりも低い位置にフロートによる感知部(ロック解除ユニット)を設置し、先行して浸水を感知させることにより、これが接続する当該漂着避難装置に設置したロック機構のロックが解除されるロックシステムの例を示す。
当該ロックシステムは、ロックユニット4101にて対象部材をロックし、より低い位置に設置したロック解除ユニット4102が浸水することによりロックを解除するシステムである。
ロックユニット4101、ロック解除ユニット4102共、実施例40同様、雨仕舞やメンテナンスに配慮したハウジングを持つが、ロック解除ユニット4102は、蓋4109下部にフロートアーム4103の回転中心となる支点板4104を持ち、設置箇所が浸水し、内部の水位が上昇すると、フロート41efが浮上し、接続するフロートアーム4103のフロートアームノッチ4105が支点板4104を挟み込むようにこれを支点とし、フロート41efやフロートアーム4103が回転する。これにより、フロートアーム4103の先端に接続した伝達ケーブル4106が下方に引き下げられるが、この伝達ケーブル4106は、ケーブルガイドシース4108の内部を通り、ロックユニット4101のロックピン4110に接続するため、ロックピン4110はロックピン貫通孔4111から引き抜かれ、ロックユニット4101によるロックは解除される(ロック解除後の状態は破線で表す)。
ロックユニット4101の構造は、おおむね実施例40に示すものと同様だが、ロックピン4110に伝達ケーブル4106を接続しており、ロックユニット4101とロック解除ユニット4102の高低差分の伝達ケーブル4106の重量に対するカウンターウェイトとして、ウェイト41egを持つ。また、ロック解除ユニット4102の浸水に関わらずロックピン4110がロックピン貫通孔4111から引き抜かれない不具合等あった場合でも、ロックピン4110は、ロックピンフロート4112に取り付けられているため、ロックユニット4101が浸水すれば、実施例40に示すものと同様に、ロックユニット4101のロックピンフロート4112が浮上し、ロックピン4110がロックピン貫通孔4111から引き抜かれ、ロックが解除される。
尚、伝達ケーブル4106はケーブルガイドシース4108の内部を通すことにより、外部環境等の影響を受けず、滑車等を用いる方法に比較して簡単に設置でき、自由なルートで配管できる。但し、ケーブルガイドシース4108は、内面に、フッ素樹脂ライニングを施す等、腐食せず、極力伝達ケーブル4106との間の摩擦が小くなる材質とすることが望ましい。
実施例41の方法に対し、多数の可動部に設置されたロック機構のロックを、一箇所のロック解除ユニットにより解除できるロックシステムの例を示す。
当該ロックシステムは、実施例41に示すものと同様のロック解除ユニット4202を持ち、伝達ケーブル4201を通して、複数のロック機構に接続し、ロック解除ユニット4202が浸水すると、これら全てのロック機構のロックを同時に解除できるものである。尚、ここでは、ロック機構が、回転体の回転を制限するものとして例示している。
ロック解除ユニット4202は、ケーブルガイドシース4203の内部を通した伝達ケーブル4201により、ロックプレートレール4204上をスライドできる複数のロックプレート4205に接続する。
ロック解除ユニット4202が浸水すると、ケーブルガイドシース4203の内部の伝達ケーブル4201が引かれ、接続するロックプレート4205がスライドすることにより、ロックが解除された状態となる。このとき、複数のロックプレート4205の間は伝達ケーブルにて、距離がある場合はケーブルガイドシースの内部に通して、接続しており、これら全てが同時にスライドし、ロックが解除された状態になる。また、ロック解除ユニット4202に接続した伝達ケーブル4201の反対側には、ロック解除ユニット4202とロックプレート4205との高低差分の伝達ケーブル4201の重量に対するカウンターウェイトとして、ウェイト42egを接続する。ウェイト42egにより、当該ロック機構全体のバランスをとり正しく機能させると同時に、当該ロック機構の動作試験を行った場合に、ロック解除ユニット4202を通常時の状態に戻すだけで、容易に復旧させることができる。
図42Aは、ロック解除ユニット4202が浸水前の状態、すなわち、各ロック機構がロックしている状態を示す。
各々のロック機構は、欠き込み状のロックプレートレール開放部分4206を持つロックプレートレール4204に、欠き込み状のロックプレート開放部分4207を持つロックプレート4205がスライドできるよう保持されており、通常時はロックプレートレール開放部分4206を、ロックプレート4205の欠き込まれていない部分で塞ぐことにより、ロックさせる対象部材の部分がロックプレートレール開放部分4206を通過するのを妨げ、当該対象部材をロックした状態とする。ここでは、図42Bに示すような、回転軸42ewにより支持されるロック対象部材4208が、一定の方向に回転できないようロックする例を示している。ロック対象部材4208は突起部4209を持つが、図42A、図42Bの状態では、ロックプレート4205の欠き込まれていない部分が突起部4209の通過を妨げるため、ロックされた状態となっている。図42C、図42Dの状態では、ロック解除ユニット4202が浸水することにより、伝達ケーブル4201が引かれ、各ロック機構のロックプレート4205がスライドしている。これにより、ロックプレートレール開放部分4206にロックプレート開放部分4207が重なり、ここをロック対象部材4208の突起部4209が通過できるため、ロックが解除された状態となっている。
この時、ロックプレート4205は、ロックプレートレール4204に設けたストッパー42esにより、ロックプレートレール開放部分4206にロックプレート開放部分4207が重なる位置までしか移動できないため、ロック解除ユニット4202からの荷重が加わっている間は、その位置で静止し、確実にロックが解除された状態を保つことができる。
尚、ロックプレートレール4204は、上部をフッ素樹脂コーティングするなど、極力ロックプレートとの摩擦が小さくなるよう配慮する。ベアリングやローラーを用いる場合は、メンテナンス性に配慮する。いずれの場合も、静止摩擦力を極力抑えることが重要となる。
実施例40、41及び42に示す何れの機構も、基本的に電源を喪失した状況を想定し、動力を必要とせず浸水時の浮力によりロック解除する、受動的に作動可能なものとしている。同時に、回転軸等、機械的な可動部を極力用いないことで、動作の信頼性を高くし、通常時は極力メンテナンスフリーまたは簡単な点検や清掃により維持管理しやすい構造としている。
漂着避難装置は水流を透過し、人体は通過させない構造であるため、当該装置の強度を大きくすれば漂流物の流出を防止するフィルターとしても機能させることができる。しかしながら、津波では、漂流物の接触や圧迫等による死亡者も少なくない。このため、漂着避難装置には、水害遭難者が安全に漂着できることのみならず、当該水害遭難者の漂着後に危険な漂流物が当該漂着避難装置に漂着しないよう対策することが望まれる。また、重量物の衝突では当該漂着避難装置の破壊のおそれもあるため、別途漂流物ガードを設置することが望ましい。
漂着避難装置に直接設置または上流側に併設する、漂流物ガードの設置例を示す。
漂着避難装置43daには、トラス構造とすることで大きな強度が発揮できる、構造桁や手摺を兼ねた漂流物ガード43eoを設置すると、漂流物が衝突しても、漂着避難装置43daが破壊されにくく、さらに、この設置間隔を狭めると、漂流車両等4302などの漂流物が、構造桁や手摺を兼ねた漂流物ガード43eoの間に入り込むのを防止でき、漂着避難装置43daに漂着した水害遭難者43abを守ることができる。尚、構造桁や手摺を兼ねた漂流物ガード43eoをトラス構造とした場合など、斜材や上弦材等が形成する鋭角の入隅には、水中を漂着した水害遭難者43abの頭部や肢体が挟まるのを防止するための水害遭難者の挟まり防止材4301を設けることが望ましい。
構造桁や手摺を兼ねた漂流物ガード43eoは、それぞれを船舶や住宅といった大型の漂流物43acの衝突に耐える強度のものとすることが合理的とは限らないので、上流側に津波に強い樹木による緑地43deや、鉄筋コンクリート等工作物による漂流物ガード43dfを配置し、大型の漂流物43acを先んじてフィルタリングする構成とするとよりよい。
通常時は車の進入禁止のバリケードなどを兼用できる、逆U字型の漂流物ガードの実施例を示す。
漂着避難施設に直接設置してもよいが、初期避難時の安全確保などにも有効と考えられるため、漂着避難施設の上流側の近傍に、一定間隔おきに設置すると、よりよい。通常時は、車両による、当該漂着避難施設への衝突防止や、当該敷地への浸入防止等の効果を発揮できる。
この漂流物ガードは、地覆コンクリートを打設する箇所など、強固なアンカリングが可能な場所に設置するもので、図44Aに示すように、逆U字型部材44dfを支持する埋込ボックス型ベース4401をアンカーボルト44enにより下部コンクリート等に固定し、埋込ボックス型ベース4401の天端まで埋め戻すことにより設置する。
逆U字型部材44dfの脚部は、埋込ボックス型ベース4401の天板に開けられた上流側スリット4402と下流側スリット4403を貫通し、下端にはそれぞれベースプレート4404が取り付けられており、これが埋込ボックス型ベース4401の内側の面により、上下方向の移動を拘束され、支持されている。
逆U字型部材44dfの脚部は上流側スリット4402と下流側スリット4403に沿って移動できるが、逆U字型部材44dfに大きな荷重が加わり変形しても、脚部は各スリットのストロークの範囲を滑らかに移動できるよう、ベースプレート4404の上下の面には、埋込ボックス型ベース4401内を滑りやすくするためのスライディングプレート4405が取り付けられている。
本水流による浸水時、重量の大きな漂流物44acが逆U字型部材44dfに衝突した際、図44Bに示すように、逆U字型部材44dfが、その脚部が上流側スリット4402と下流側スリット4403の形状に沿うように移動するが、この時、これらのスリットの内部に設置された緩衝材44emが押しつぶされることで衝撃を吸収する。上流側スリット4402は下流側スリット4403より短いため、逆U字型部材44dfの上流側の脚部が上流側スリット4402の下流側の端部に到達した後は、図44Cに示すように、逆U字型部材44dfは、脚部が開くように変形を開始し、下流側の脚部は下流側スリット4403内部の緩衝材44emを押しつぶしながら移動することにより、装置全体は、より大きな応力を発揮しながら変形を続ける。
下流側の脚部が下流側スリット4403のストロークを使い切った後は、図44Dに示すように、逆U字型部材44dfは二本の脚部両方を変形させながら逆U字型部材44df全体で水平方向へのせん断変形を開始する。これにより、さらに大きな応力を発揮しながら変形を続けることができる。
このように、逆U字型部材44dfが段階的に応力を増しながら大きく変形できるものとすることにより、当該漂流物ガードは、簡易でありながら、大きなエネルギーを吸収でき、粘り強く漂着物を抑えることができる。
実施例35から39に示す本水流による浸水時に回転する手摺に具備させる格納式の控えの機構について示す。
手摺支柱4501には、その高い位置に回転軸4503を介して控え部材4502が接続されており、当該回転軸4503は、手摺支柱4501または控え部材4502に設けられた、これらの材軸方向にのびる短いスライダー4504により一定量の移動が可能となっている。
通常時、控え部材4502の下端はベースプレート4505天端の傾斜面4509と、手摺支柱4501に取り付けられた回転止めブロック4508が成す谷状の部分に落とし込まれており、控え部材4502の下端がこの谷状の部分に接した状態で控え部材4502の上端の回転軸4503はスライダー4504の途中に位置しているため、控え部材4502の重量は当該谷状の部分にて受けることとなり、控え部材4502は振れたりせず安定する。
通常時、控え部材4502に手摺の前後方向の荷重が加わると、控え部材4502の下端が当該谷状の部分に沿って上昇しようとするが、当該谷状の部分の鉛直方向の深さは、控え部材4502の上端の回転軸4503が接続するスライダー4504のストロークより大きいため、控え部材4502に、人体や物品の衝突、風圧力等の、手摺の前後方向の荷重が加わっても、下端が当該谷状の部分を上がりきって外れることはなく、これらの荷重がなくなると、控え部材4502の下端は再び当該谷状の部分の底部に落ち込み、元の状態に戻る。
本水流による浸水時、手摺支柱4501がベースプレートのスライダー4506にピン4507を沿わせながら上昇すると、控え部材4502も、上端が接続する回転軸4503や、下端が接する回転止めブロック4508に押し上げられることにより、手摺支柱4501と一体的に上昇する。
ベースプレート4505の天端の傾斜面4509の勾配は、ベースプレートのスライダー4506と平行またはより水平に近いものとし、前記谷状部分の底部から傾斜面4509の最上部までの高低差を、ベースプレートのスライダー4506のストロークの長さより小さなものとすることにより、手摺支柱4501のピン4507が、ベースプレートのスライダー4506のストロークのうち一定量を移動し上昇した時点で、控え部材4502下端がベースプレート4505天端の傾斜面4509を上りきり傾斜面4509による拘束を離れ、控え部材4502が水流の動圧による荷重を受けて上端の回転軸4503を中心に回転を開始することができる。このとき、手摺支柱4501のピン4507はベースプレートのスライダー4506を上りきっておらず手摺は回転できないため、控え部材4502を先行して展開させることが可能となる。
尚、控え部材4502は、手摺支柱4501に回転止め4510を設けるか、下端付近をケーブル、スライダーまたはリンク4511により手摺支柱4501下部またはベースプレート4505に接続することにより、一定量しか展開できないものとしている。
控え部材4502が回転を開始した後、手摺支柱4501のピン4507はベースプレートのスライダー4506を上りきり、手摺も回転を開始する。手摺が一定量回転すると、先行して展開しきった控え部材4502の下端が地面や床面に突き当たり、回転した手摺支柱4501を支える控えとして機能できるようになる。
尚、ベースプレート4505天端の傾斜面4509は、控え部材4502の下端がベースプレート4505の面外方向に外れないようフック状の部分を持たせるなど、控え部材4502の外れ防止に配慮する。
網状の漂着避難装置及び漂着避難施設の例を示す。
漂着避難装置は、編み方や支持方法などに関して一定の条件を満たすことにより、網状の構造とすることができる。網状の構造とすることにより、構造全体が簡易なものとでき、通常時は巻き取るなどして格納しておくことができるため、道路上やビルの間、高架施設下部、緑地、公園などに設置することができる。公園等では、通常時に遊具としての利用も可能となる。また、ツタなどを這わせて、「緑のカーテン」とすると、都市の光熱環境向上や省エネルギーに寄与することができる。
漂着避難装置を網状とする場合は、水中にて漂着した水害遭難者の頭部や手足が網目に入り込み引掛り、水面に向けて上昇できなくなることと、水流の動圧による荷重や接触した水害遭難者の身体を介し作用する荷重により、当該漂着避難装置の部分が押し込まれて当該部分より上部の勾配が大きくなり、水害遭難者を上昇させる機能が低下することについて留意する必要があり、これらの対策が網状の漂着避難装置の計画の重要なポイントとなる。
格納した状態から災害時に展開して漂着避難装置としてセットさせる構成として、路面内や地表仕上げ面内に格納しておき、網の上辺両端をウインチ等により上方に巻き上げる構成の他、地面から高架施設に掛け渡す場合は当該高架施設側に格納し、網の下辺の両端を下方に引き下ろしたり、地面と当該高架施設に予め傾斜させて掛け渡した格納箱から網の側方の一辺の上下端部を当該高架施設や地面に設置した水平方向のガイドレールに沿って引き出し、漂着避難装置としてセットする、などといった構成が考えられる。
図46Aや図46Bは、梯子のように上ることができる網状の漂着避難装置の構造の例である。
図46Aの例は、縦材4601と横材4602からなる縦横の格子状の編み方としており、漂着した水害遭難者が水中を上昇する際に手足が入り込みにくいよう、網目は60mm角程度の大きさとしている。この大きさの網目は、避難時に、手掛りとすることは容易だが、足掛りにすることは困難である。このため、一定の規則により、頭部や手足が入り込み引掛りにくいよう最小限の足掛りとできる足掛りの穴4603を開けている。網の縦材4601は、網全体の縦方向の構造強度を負担するものを一本おきに配し、足掛りの穴4603は隣り合うこれらの材に挟まれており、足掛りとして上りやすいよう千鳥状に配置されている。これに対し、足掛りの穴4603の上下の辺の中央を結ぶ縦材4601に期待する主な機能は、前記のように、水害遭難者の手足が入り込みにくいようにし、かつ、有効な傾斜前面を成して水害遭難者の身体を滑らかに上昇させることであり、網全体の強度を負担する構造部材ではないため、足掛りの穴4603の部分で分断されていても支障がないものとしている。
この場合においても、図46Cに示すように、足掛りの穴4603の直下に、足掛りの穴4603を覆う大きさのカバーシート4604をたらしておくと、水流を受けた際に、カバーシート4604がめくれ上がり、足掛りの穴4603を塞ぐことができ、水害遭難者の手足が入り込むことを防ぐことができる。カバーシート4604は、棒状の浮体を連ねるなどとしたすだれ状とすると、水害遭難者の身体の足掛りの穴4603への入り込みを防止しながらも、しなやかで確実にめくれ上がり易く、カバーシート4604自体が変形して足掛りの穴4603に入り込む可能性も小さい。また、同時に、板状とした場合のように、水害遭難者の身体に突き立てられるような危険も少ない。尚、足掛りの穴4603の周囲は、上る際に足掛りの位置として判り易くするよう目立つ色とするとよりよい。
また、網目の大きさは、小さくしすぎると、水流の透過する抵抗が大きくなるため、手足が入り込み引掛らない程度とすることが望ましい。
図46Bの例は、斜材4605と横材4602から成る三角形の網目を持つ編み方の例である。
斜材4605と横材4602は、網全体の構造強度を負担するものを一本おきに配し、これらに挟まれた足掛りの穴4603を千鳥状に配している。この例では、足掛りの穴4603を除き、網目を一辺が60mm程度の正三角形としている。
図46Dの例は、網状でかつ階段状としたものである。
吊橋のように、上下のアンカーポイントに掛け渡した縦材4601からハンガーケーブル4606を下げ、踏板4607を吊っている。縦材4601が踏板4607より上部に来ることにより、漂着した水害遭難者は、踏板4607に手足を引掛けず、縦材4601を格子状の傾斜前面として滑らかに上昇することができる。
縦材4601が踏板4607の下部に位置する構造とした場合や、縦材4601同士の間隔が大きくなる場合、水害遭難者の身体は踏板4607に接触し、縦材4601は傾斜前面としての機能を果たさなくなるため、格子状蹴込部材4609を設置し、別途傾斜前面を形成するなどにより、漂着避難装置として機能できるようにする。
当該装置は、剛性のある踏板4607を設置しても、吊構造であるため、歩行時に振動がおきやすく、通常の階段と比較して、歩行しづらいものとなる。階段状の部分を上り易くし避難を容易にするためには、破線で表現された部材を追加し、このうち下弦材4608に張力を加え、当該装置を下方に抑えることにより安定させるとよい。この場合、すくなくとも踏板4607の端部か、踏板4607同士の接続箇所となる部分を通るようこれらの部材を設置するとよい。
網状の漂着避難装置により漂着避難施設を形成する場合、図46Eのように、建築物間などを繋ぐように配置すると、比較的容易に都市の避難路ネットワークやセーフティネットの部分を形成できるが、通常時に格納しておく計画とすると、交通の遮断等の不都合がおきにくい。
この場合、網状部分の上辺には、構造上の一次部材としてメインケーブル4610を配し、これに接続する縦材4601や斜材を二次部材とすると、当該網状部分は、下辺以外は当該メインケーブル4610の両端のアンカーのみにより支持することもできるが、計画した網状部分の勾配が大きい場合や部材の変形量が大きくなる場合、図46Iに示すように、水流の動圧による荷重や接触した水害遭難者46abの身体を介し作用する荷重により、当該漂着避難装置の勾配が部分的に大きくなり、水害遭難者を水面まで上昇させることができなくなる可能性がある。このため、設置条件により、上辺のメインケーブル4610で支持するのではなく、図46Fや図46Hに示す例のように、網の左右の辺をガイドレール4612などにより線状に支持し、漂着避難装置に急勾配となる部分が発生しにくいものとすることが望ましい。尚、この場合、網を展開する際は、通常、図46Gに示すように、網の側端部の上端を引上げることになるが、当該側端部の外れ止め4611がガイドレール4612内を上昇し、当該側端部は外れ止め4611を介し、ガイドレール4612により線状に支持される。
尚、この例のように、漂着避難装置を建築物等に接続する場合は、漂着避難装置上部から当該建築物等に避難できる漂着避難施設とすることが望ましい。
図46Jは、網状の漂着避難装置を、緑地帯などの内部に線状に設置した例を示す。
津波や洪水等水害で流されにくい樹木間に網状の漂着避難装置を掛け渡すことで、避難路ネットワークを構成し、または、セーフティネットを構成することができる。
所々、樹上に避難所となるデッキ4613を設置するとよりよい。デッキ4613は、ツリーハウスとしてもよく、網状の部分は遊具として用いるなど、通常時、森に親しむレクリエーション施設とすることができ、日頃親しんでおくことで津波や洪水等水害時にスムーズな避難がしやすくなる。
このように、樹林帯に漂着避難装置や漂着避難施設を設置する場合、森林全体が津波や洪水等水害で流されにくい樹木で構成されることが望ましく、当該漂着避難装置や漂着避難施設の上流側にも一定以上の量の樹木が存在することで、大型の漂流物4614をフィルタリングすることができ、当該漂着避難装置や漂着避難施設、及び、避難者や水害遭難者を保護することができる。
通常時は地表仕上げ面内に格納しておき、浸水時には浮力や本水流の動圧による荷重などにより起立し機能することが可能となる、格納式の漂着救助装置や漂着避難装置及び漂着避難施設の実施形態を示す。また、当該機構を用いた、格納式の漂流物ガードや防潮堤、及び、より広範な施設に適用可能な架構の例も示す。
当該実施形態は、基本的に、漂着救助装置またはその下地構造材が起立した状態の時に、下端となる部分に接続された回転軸を、スライダーやガイドにて受け、中間部や上部となる部分はケーブルまたは控え等のリンクを接続し、これらの軸方向の応力にて支持し、通常時は倒伏した状態として格納され、地表仕上げ面から突出して障害物とならないよう構成するものである。
本水流により浸水すると、やはり倒伏するなどして格納されていた、本水流の動圧による荷重を利用し当該漂着救助装置や漂着避難装置を起立させるエネルギーを得るための装置が、起立するなどにより本水流の動圧による荷重を受け、引張材やリンクを介する等により接続する、前記漂着救助装置またはその下地構造材の下端の回転軸に、水平方向の荷重を伝達する。当該回転軸は、スライダーやガイド等に沿って水平方向に移動することができるが、当該漂着救助装置またはその下地構造材の中間部や上部となる部分は、前記ケーブルまたはリンクと接続しており移動が限定されるため、当該漂着救助装置やその下地構造材は、前記水流の動圧を利用する装置から伝達された荷重により、立て起こされる。このとき、当該漂着救助装置またはその下地構造材の立て起こされる角度は、前記回転軸を含む、その下端となる部分が、前記スライダーやガイド、または付置したストッパー等により移動を制限される範囲による。この範囲の限界まで移動した、前記漂着救助装置またはその下地構造材の、下端の回転軸は、地盤または基礎構造などに設置されたラッチにより固定されるため、水流が弱まったり、水流の方向が変化しても、当該漂着救助装置は起立した状態を保つことができる。
尚、当該実施例の図中において、想定した水流の方向や、部材や装置の変形の方向は、それぞれ、水流の方向47ca、変形の方向47cbにて示されている。
ところで、漂着救助装置等は通常時、倒伏した状態であるため、本水流による浸水後、上記本水流の動圧による荷重を利用する装置により水平方向の荷重を受けても、起立を開始しにくい。このため、漂着救助装置またはその下地構造材等を浮体としたり、浮体を具備させる(この場合、漂着救助装置またはその下地構造材等を透過する本水流を極力阻害しないよう計画する)、浸水により動作するインフレーターを備えたエアバッグを具備させる、または、図47Kや図47Lに示す方法のように、部材の移動や変形の方向を変換する構造とすることなどにより、漂着救助装置やその下地構造材が上記水平方向の荷重を受け即座に起立を開始できるようにする、起立補助機構を持たせることが望ましい。
起立補助機構として、インフレーターを備えたエアバッグや大型の浮体を具備させる場合、漂着救助装置/漂着避難装置47daの最上部より下部となる、図示された起立補助装置47efの位置に設置すると、当該位置が水面47baまで浮上しようとするため(エアバッグの場合は膨張しているとして)、漂着救助装置下地構造材47eoは、これらの浮力を利用しながら漂着救助装置/漂着避難装置47daの上部が大気中に突き出し計画された角度まで起立することができ、かつ、当該設置位置は接続する漂着救助装置下地構造材47eoの下端の回転中心となる回転軸からも離れているため、漂着救助装置下地構造材47eoが起立するのを補助するために有効な大きさの回転モーメントを与えることができる。
漂着救助装置/漂着避難装置47daを漂着避難装置とすれば、漂着した水害遭難者が移動して安全な位置に避難できるものとなる。さらに、上部避難路を形成させ、より安全な避難場所に接続させると、二次避難が可能となる。また、当該装置や施設の頂部となる部分の反対側にも漂着救助装置や漂着避難装置を形成させると、引き波にも対応する施設を構成できる。
当該施設は構造上、連続して一体的なものとするのではなく、一定の長さごとに分離して独立する構造としたものを、小さなクリアランスを空けて連続的に配置することにより、障害物等により適切に動作できない部分があった場合に、当該部分の影響を最小限に抑えることができ、フェールセーフを図ることができる。
また、当該実施例に示す構造は、起立して漂着救助装置や漂着避難装置を形成するだけでなく、後述するように、格納式の避難施設、漂流物ガードや防潮堤を形成することもできる。
尚、通常時、大きな部材は倒伏した状態で地表仕上げ面47bb内に、または地表仕上げ面47bbから大きく突出することなく格納されているため、上部を道路や通路、広場等に利用でき、視界を遮ることもない。また、地表仕上げ面より下部に格納されるため、通常時に当該格納部に雨水が溜まると、不必要に起立を開始したり、部材が劣化する等の悪影響が考えられるが、これを防ぐため、当該格納部に浸入した雨水は当該格納部底部の勾配により排水溝に集め、雨水排水管4708から排水できるようにするとよい。
図47Aや図47Bは、ケーブル等の引張材により、漂着救助装置下地構造材47eoの上部となる部分や中間部を支持する例である。
通常時は上述のように、各部材が倒伏して格納されているが、浸水すると、浮体部分を有する水流受板4701が浮力や水流の動圧による荷重を受けて起立する。水流受板4701は、起立時に下部となる部分が回転軸を介してスライダー47ekに接続されており、当該回転軸は、漂着救助装置下地構造材47eoの、同様に起立時に下端となる部分の回転軸に、引張材4705を介して接続されている。水流受板4701は、その上部と引張材4705とを開き止めのケーブルにより接続されており、およそ鉛直となる角度までしか開かないため、水流の動圧による荷重を最大限利用することができる。およそ鉛直に起立した水流受板4701は、さらなる水流の動圧による荷重を受け、スライダー47ekに沿って下流側に移動しようとする。このとき、当該荷重は、引張材4705を介して漂着救助装置下地構造材47eoの下端となる回転軸に伝達される。この漂着救助装置下地構造材47eoの下端となる回転軸は、上記水流受板4701とは別のスライダー47ekにより支持されており、当該スライダー47ekに沿って下流側に移動する。漂着救助装置下地構造材47eoは、その中間部を、ケーブル等の引張材による控え部材4709を介して、上流側に設置した支持回転軸47ew(もしくはアンカー)に接続されているため、図47Bのように、漂着救助装置下地構造材47eoは、その下端が、支持するスライダー47ekの下流側端部まで移動することにより、当該漂着救助装置下地構造材47eoは一定の角度まで起立し、その上流側の表面となる漂着救助装置/漂着避難装置47daは計画した角度の傾斜面を形成することができる。このとき、漂着救助装置下地構造材47eoの下端は、通過したラッチ47etにより逆方向への移動を制限され、形成された傾斜面は安定してその形状を維持できる。さらに、漂着救助装置下地構造材47eoは、起立した状態の時に、当該下端以外の部分と、下端より下流側となる、地盤、もしくは、基礎構造とを、ケーブル、または、やはり下端を回転軸を介しスライダーに接続された、リンク、もしくは、漂着救助装置/漂着避難装置47da(この場合引き波にも対応して漂着させることが可能となる)により、これらが、伸びきった状態となるよう接続すると、水流が逆流しても、漂着救助装置下地構造材47eoや、漂着救助装置下地構造材47eoに設置された漂着救助装置/漂着避難装置47daが反転しない構造とすることができる。
尚、水流受板4701をパラシュートのように捉え、支障なく確実に展開できるよう配慮した設計とすることにより、水流受板4701下部のスライダー47ekは省略することができる。
これらの図の例において、図中に示された引張材である控え部材4709の部分を漂着救助装置/漂着避難装置47daや漂着救助装置下地構造材47eoに置換し、図中に示された漂着救助装置/漂着避難装置47daや漂着救助装置下地構造材47eoの部材は、回転軸で接続された、単なる圧縮支持材とすることもできる。この場合、漂着避難装置には、実施例46に示す網状の装置を適用することもでき、周囲にケーブル等の支持を取るための高さのある構造物等がなくとも浸水時に起立できる、簡単な網状の漂着避難装置を形成することができる。
また、図中で控え部材4709として示される部分の下端部を、ウィンチで巻き取る、または、アクチュエータ等により水流の方向の逆となる方向にスライドさせる構造とすることで、図中で漂着救助装置下地構造材47eoとして示される部分の下端の回転軸が接続するスライダー47ekは省略することができる。
図47Cや図47Dの例について説明する。
控え部材4709として、図47Aや図47Bの例では、漂着救助装置/漂着避難装置47daが起立した状態で漂着救助装置/漂着避難装置47da下端より上流となる側にケーブル等引張材を設置しているのに対し、図47Cや図47Dの例では、下流となる側に圧縮材を設置している。圧縮材である控え部材4709の下端は、支持回転軸47ewに接続されており、上端も回転軸を介し、漂着救助装置下地構造材47eoの中間部に接続されている。
図47E、図47F、図47Gの例は、図47Cや図47Dの例における控え部材4709を、漂着救助装置下地構造材47eoおよび漂着救助装置/漂着避難装置47daに置き換え、上流側と下流側それぞれの漂着救助装置下地構造材47eoを、最上部となる部分で互いに回転軸を介して接続する構造とし、引き波時にも対応できるようにしたものである。
図47Hの例は、図47E、図47F、図47Gの例に対し、漂着救助装置下地構造材47eoの中間部に、漂着救助装置下地構造材47eoおよび漂着救助装置/漂着避難装置47daの面外応力を補助的に負担する中間支持部材として、または漂着救助装置下地構造材47eoに加わる軸方向の圧縮力に対する座屈防止材として、ラチス部材4710を設けたものである。
当該装置が完全に起立すると、当該ラチス部材4710の下端の回転軸は、これが接続するスライダー47ekの下流側端部に到達するが、このとき当該回転軸は、ラッチ47etに移動を拘束されるようになるため、当該ラチス部材4710が、接続する漂着救助装置下地構造材47eoから伝達される荷重は、当該ラチス部材4710下端の回転軸を介して、接続するスライダー47ekや、ラッチ47etに伝達され、さらに、下部の基礎構造や地盤に伝達される。
図47Iの例は、図47Hの例のラチス部材4710による構造を発展させたもので、漂着救助装置/漂着避難装置47daにて示す部分を漂着避難装置とし、上部避難路47dcを形成させることで、漂着避難施設を構成させるものである。
この例では、浸水後変形時、複数のラチス部材4710下端の回転軸が同一のスライダー47ek上をスライドするが、最終的に、計画した漂着避難施設の形状を形成した時に、当該複数のラチス部材4710下端の回転軸それぞれが、当該スライダー47ek上をスライドできないよう拘束する機構を持つ。これは、漂着避難装置に面外方向の荷重が加わった際、当該漂着避難装置の下地の構造材から、これに接続するラチス部材4710に、軸圧縮力となる荷重が伝達されるが、当該ラチス部材4710またはこれに軸方向に連続して接続するラチス部材4710の、最下端となる回転軸が、接続するスライダー47ekや、当該拘束する機構を介し、当該荷重を基礎構造や地盤に適切に伝達することができるようにするためである。
尚、当該図中の漂着救助装置/漂着避難装置47daや漂着救助装置下地構造材47eoとして示した部分を漂流物ガードとし、その内部側に平行して隣接するラチス部材4710の通りを漂着避難装置や漂着救助装置下地構造材47eoとすると、倒伏して格納される、漂流物ガード付きの漂着避難施設が構成できる。
図47Jは、図47Iに示す構造での、ラチス部材4710下部の回転軸がスライダー47ek上を移動できないように拘束するための機構を説明するものである。
当該施設は、下流側の漂着救助装置下地構造材47eo下端の回転軸が、接続するスライダー47ekの端部に位置したまま起立を開始し(この回転軸はスライダーではなく、ピン支持としてもよい)、計画した形状の漂着避難施設を形成するが、このとき、当該スライダー47ekに接続する他の回転軸は、それぞれ、ラッチ47etにより、上流側となる方向(戻る方向)に移動できないようになっている。また、これらの回転軸のうち、ラチス部材4710の下部であるものは、それぞれ、接続する2本のラチス部材4710のうちの一方が、当該回転軸を越えて下方に一定量延長させた構造材延長部分4707をもち、これが、当該回転軸の下流側近傍に設置したストッパーブロック47esに接触するため、当該回転軸は、これより下流側に移動できない。これらにより、各回転軸は、所定の位置に到達すると拘束され、下流側となる方向にも、上流側となる方向にも移動できなくなる。
尚、構造材延長部分4707は、装置全体の起立変形中は、ラチス部材4710の傾斜が小さく回転軸より下方への突出も小さいため、基本的にストッパーブロック47esの上部を通過することができるが、所定の位置に近づくと、ラチス部材4710の傾斜が大きくなり回転軸より下方への突出も大きくなっているため、計画した形状の漂着避難施設が形成された後は、構造材延長部分4707は、近傍のストッパーブロック47esを越えることができない。
図47Kは、起立補助機構の例を示したものである。
控え部材4709の、起立時に下端となる部分(この図では右端)の回転軸を、スライダー47ekにより支持することにより、漂着救助装置下地構造材47eoや控え部材4709は、倒伏した状態でも水流の方向47caに荷重を加えられると、移動や変形をすることができるようになる。
漂着救助装置下地構造材47eoの、起立時に上部または中間となる部分に対し、倒伏時に下流側近傍となる、地盤や基礎構造上面の部分に、本水流の方向にせりあがる斜面を上面に持つ起立補助ガイド4713を設置することにより、漂着救助装置下地構造材47eoの、起立時に下端となる部分(この図では左端)の回転軸が本水流の方向に移動しようとすると、漂着救助装置下地構造材47eoの下方への突出部分が、起立補助ガイド4713の上面の斜面に接触し、これに沿って持ち上げられ、漂着救助装置下地構造材47eoは回転を開始することができる。その後、漂着救助装置下地構造材47eoの下端となる部分の回転軸が、さらに本水流の方向に荷重を加えられ移動すると、これに伴い、漂着救助装置下地構造材47eoは傾斜を大きくし、最終的に計画した角度に到達することができる。
尚、起立補助ガイド4713の上面の斜面は、地表仕上げ面から突出するなど通常の利用時に邪魔にならない範囲で、できるだけ大きな高低差を持たせ、当該斜面に接触させる漂着救助装置下地構造材47eoの下方への突出部分は、通常時に、図のように、極力当該斜面の最下部に近い高さに位置させることで、漂着救助装置下地構造材47eoが起立補助ガイド4713により持ち上げられる高さを大きくすることができ、漂着救助装置下地構造材47eoを、より滑らかに起立させることができるようになる。
図47Lも、上述のように、本水流による浸水直後の起立を補助する機構の例を示したものである。本水流による浸水後、引張材4705が、本水流を受けた水流受板4701等により引張られると、引張材4705の中間に接続した起立補助圧縮材4712の下端が地盤側突出部4711に突き当たり、起立補助圧縮材4712は、この部分を中心として起立するように回転し、その上端が、上部にある漂着救助装置下地構造材47eoまたはラチス部材4710等の構造材に接触する。さらに引張材4705に大きな張力が作用すると、起立補助圧縮材4712は、上部にある当該構造材を押し上げ起立を開始させ、起立補助圧縮材4712はさらに回転することにより、地盤側突出部4711を乗り越え、引張材4705の一部として移動できるようになる。引張材4705は、本水流の方向に上がっていく傾斜を成す当該構造材の最下端となる、スライダー等に接続された回転軸に接続されているため、そのまま、起立補助圧縮材4712を含めた引張材4705に引張力が作用することによって、既に起立を開始した当該構造材を、予定の位置や角度まで起立させることができる。
尚、起立補助圧縮材4712が押し上げる、上部にある構造材の下面の、起立補助圧縮材4712の上端の上流側となる部分に、地盤側突出部4711同様の突出部を、当該断面図において、地盤側突出部4711と点対称となる向きに設け、かつ、当該上部にある構造材が水流を受けるなどして本水流の方向に移動できる構造とすると、当該上部にある構造材が水流方向へ移動しようとした際、当該上部にある構造材の下面の突出部の側面が起立補助圧縮材4712の上端に突き当たり、当該上部にある構造材は、起立補助圧縮材4712上端に対し水平方向に押し込む荷重を作用させることにより起立補助圧縮材4712を起立させ、これにより、当該上部にある構造材自身が起立を開始するものとできる。
図47Mや図47Nは、パラシュート状の断面形状を持つ水流受けシート4702により、水流受板4701同様に、本水流の動圧を利用して引張材4705に引張力を作用させることができる装置を示す。
通常時は、図47Mに示すように、装置全体が地表仕上げ面47bbより突出しないように格納しておき、本水流による浸水時は、水流受シート浮き4703に作用する浮力や、本水流の動圧による荷重により、水流受けシート4702がパラシュートのように広がり、さらに本水流の動圧による荷重を受けて引張材4705に引張力を伝達させるものである。
尚、浸水時は、水流受シート浮き4703が浮上するが、水流受けシート4702の下部に水流受シート錘4704を取り付けることで、より確実に、水流受けシート4702を展開させることができる。また、ガイド4706により、水流受けシート4702や引張材4705が、構造材等、他の部分に干渉するといった障害を防止でき、さらに、水流受シート浮き4703を大きなものとした場合、本水流の流速が小さい場合でも、水流受シート浮き4703に作用する浮力を利用して引張材4705に引張力を作用させることができる。
図47Oは、図47Cや図47Dの例と同様の構造を用いた、本水流による浸水時に自ら起立する格納式の漂流物ガードの例である。
漂着救助装置/漂着避難装置47daや、漂着救助装置下地構造材47eoに該当する部分を、漂流物をフィルタリングすることができる強度を持つ、格子状等水流を透過する構造の漂流物フィルター47dfに置換し、これを鉛直となるまで起立させる構造とすることにより、漂流物ガードとして機能させるものである。
図47Pは、図47Oと同様の構造を用いた、本水流による浸水時に自ら起立する格納式の防潮堤の例である。
図47Oでの漂流物フィルター47dfに相当する部分を、防潮板4715とし、これを起立させて防潮堤として機能させるものである。
防潮堤は、水流をせき止めることが目的であるため、本水流から起立に必要な動力を得るための水流受板4701は、防潮板4715より上流側に設置され、その起立時に下端となる部分は、回転軸を介して、防潮板4715と同一のスライダー47ekにより支持されており、防潮板4715下端の回転軸と、圧縮力を伝達可能な水流受板リンク4714により接続されている。水流受板リンク4714の上部には水流受板4701の回転止めとなるストッパーがあり、本水流による浸水後、水流受板4701が起立すると、これに突き当たるため、水流受板4701は鉛直となる角度までしか回転できず、本水流の動圧による荷重を最大限利用することができる。当該荷重は、水流受板リンク4714を介して防潮板4715下部の回転軸に伝達され、防潮板4715を起立させることができる。この図の例では、図47Kの例で説明した起立補助ガイド4713を設置しており、津波の急な襲来による荷重に対し、装置が破壊されることなく防潮板4715が確実に起立できるものとしている。
尚、この例による格納式防潮堤は、起立した状態で控え部材4709の下端となる回転軸が防潮板4715から離れたものとする程、基礎構造に発生する上向きの引抜応力が小さくなるため、地盤の性状によっては、杭工事を含め、基礎構造を、より簡易なものとすることができる。
また、同様の構造により、格納式の、津波や洪水等水害による水流を抑制する装置を形成することもできる。この場合は、当該実施例の他の図の例のように、本水流から起立に必要な動力を得るための装置は、下流側に設置することができる。
断面が、長方形の架構は、隅部をヒンジとすることにより、平行四辺形に変形させることができるが、さらに大きく変形させると、線状となる。このような架構と、当該実施例で上述してきた構造や機構を用いると、通常時には路面内や地表仕上げ面内に倒伏した状態で格納させておき、本水流による浸水時には長方形の断面形状の漂着避難施設や避難施設等が形成される装置を構成することができる。この場合、起立時に架構が一定の角度以上に回転せず、直立した状態で静止し安定するようにするためには、当該架構に構造部材となる斜材を追加するとよい。
図47Qや図47Rは、簡易な構造で上部避難路を大きくとれる漂着避難施設を構成でき、また、後述するように、アクチュエーターやウィンチ等で能動的に起立させることにより、専用の避難施設なども構成することができる架構の例である。
前記長方形断面を形成する架構の下部は、地盤や基礎構造からのピン支持としている。漂着救助装置/漂着避難装置47daは前記構造部材となる斜材を兼用しており、上端は前記長方形断面を形成する架構の上端のヒンジに、下端は地盤や基礎構造に設置したスライダーに接続させ、さらに本水流を受ける装置やウインチ等に接続させることで、起立中は下端が変形の方向47cbに移動し、架構全体を起立させる圧縮材として機能し、起立完了後は架構全体の水平応力を負担する構造部材となる斜材として機能することができる。専用の避難施設などとした場合は、構造部材となる斜材として、図中の漂着救助装置/漂着避難装置47daの位置に代えて、破線の位置に、階段やはしご等の昇降装置が形成されるものとすると、倒伏し格納した通常時の状態での省スペース化が図れる。
図47Sや図47Tは、構造部材となる斜材下端をスライダーにより移動できるものとした図47Qや図47Rの例に対し、前記長方形断面を形成する架構本体の下端を地盤や基礎構造に設置したスライダーにより支持させるものとし、本水流から起立に必要な動力を得るための装置やウインチ等に接続させ、構造部材となる斜材は、スライダーを介さないピン接合により、上端は前記長方形断面を形成する架構の上端のヒンジに、下端は地盤や基礎構造に接続し、架構全体を立て起こす引張材として機能させるものとしている。省スペース上、より有利な構成となるが、長方形断面を形成する架構本体の下端がスライダーにより支持されるため、当該スライダーには大きな強度や信頼性が求められる。
当該実施例では、浸水時に浮力や本水流の動圧による荷重を受けて、受動的に漂着救助装置や漂着避難装置等を計画した角度に起立させる構造を示しているが、別途動力が確保できる場合は、アクチュエータ等で部材の移動や変形をさせる、引張材4705をウインチで巻き取るなど、本水流による浸水前に能動的に起立できる構造とすれば、近隣からの初期避難が可能な避難施設としても利用できるようになる。これを、図47Oによる漂流物ガードや、図47Pによる防潮堤に適用すると、本水流による浸水直後から漂流物ガードや防潮堤として有効に機能させることができるものとなる。
受動的に起立する構造と能動的に起立する構造を併用することにより、本水流による浸水前の起立中に電力等の動力を喪失しても、本水流により浸水すれば、浮力や本水流の動圧による荷重により、起立を再開することができるものとなる。
当該実施例による構造は、ラッチや戻り止め等、起立のための変形の逆方向への変形を防止する機構を持たせることにより、水流の乱れやトラブル等により起立が一時中断しても姿勢を維持することができ、起立再開時も滑らかに始動でき、本水流による浸水が小規模であり完全に起立するのに十分な浮力や本水流の動圧を得られなかった場合であっても、起立した分だけの機能を果たすことができるようになる。
当該実施例による装置は、通常時に路面内や地表仕上げ面内に格納される場合、上部を交通等に支障なく利用できるようにするためには、格納された当該装置の天端の面を揃えたり、隙間を小さくする、隙間にスペーサーを設置する、浸水時に流出する浮体とした蓋で上部を覆う、といった配慮をするとよりよい。
図48Aや図48Bは、倒伏して格納しておく漂着救助装置や漂着避難装置に適用する転落防止装置の例である。
転落防止装置を線状または格子状等の部材とすることにより、通常時は漂着救助装置や漂着避難装置本体同様、倒伏した状態で格納しておくことが可能となる。
転落防止材48ebは、転落防止材回転軸4816により漂着救助装置/漂着避難装置48daに接続されており、倒伏した状態で転落防止材回転軸4816より上流側となる部分の長さを下流側となる部分の長さより長くすることにより、重心が転落防止材回転軸4816より上流側となるため、転落防止材48ebの密度を水または海水より大きなものとすれば、漂着救助装置/漂着避難装置48daが本水流により浸水し、起立を開始すると、転落防止材48ebは重力により上流側の部分が下方に下がる方向に回転し、さらに、当該部分が水流48caから受ける動圧による荷重は、転落防止材回転軸4816を挟んだ反対側の部分が受ける同荷重よりも大きくなるため、前記方向への回転力を得られる。これらにより、転落防止材48ebは、上部回転止め4818に接触するまで回転し、転落防止装置として機能できるようになる。この状態で、転落防止材48ebが漂着救助装置/漂着避難装置48daの前面に突出した部分は、水流48caの方向には押し込んで回転させることができるため、漂着救助装置/漂着避難装置48daに沿って上昇する水害遭難者の上昇を妨げない。上部回転止め4818の代わりに、転落防止材48eb下部と漂着救助装置/漂着避難装置48daを、ケーブル、スライダーまたはリンク4819により接続してもよい。
尚、漂着救助装置/漂着避難装置48daが起立を開始した時に、水流48caの動圧による荷重を受けて、倒伏した状態で転落防止材48ebの上流側にあった部分が上昇する方向に回転しないよう、漂着救助装置/漂着避難装置48daには下部回転止め4817が取り付けられている。
図48Cや図48Dは、図48Aや図48Bの例に示す機構を応用した、本水流による浸水時に回転する手摺やフェンスに適用する転落防止装置の例である。
通常時倒伏して格納される漂着救助装置や漂着避難装置の場合、転落防止材も倒伏して格納されているため、通常時にこれを特別に安定させる機構は不要となるが、手摺やフェンスの場合、通常時に直立した姿勢であるため、回転して漂着救助装置/漂着避難装置48daを形成する支柱や縦桟部分に、転落防止材回転軸4816の他に、通常時に転落防止材48ebを支持する部分を持たせている。転落防止材回転軸4816は、接続する支柱や縦桟部分または転落防止材48ebに、短いストロークのスライダー48ekを介して接続されている。転落防止材48ebの下端部は、水流48caの方向に高くなる傾斜面を持ち、通常時、これが支柱や縦桟に取り付けられた下部回転止め4817と、転落防止材受4820の間に落とし込まれており、この時、転落防止材回転軸4816はスライダー48ekのストロークの途中の部分にあるため、転落防止材48ebに作用する重力は全て下部の転落防止材受4820に伝達される。転落防止材48ebの下端部は、下部回転止め4817と、転落防止材受4820に密着しているため、通常時、振れたりせず安定している。尚、転落防止材48ebは、風圧力により煽られて転落防止材受4820を乗り越えない重量を持つものとする。
本水流により浸水すると、転落防止材48ebが水流48caの動圧による荷重を受けることにより、または、支柱や縦桟部分が回転して漂着救助装置/漂着避難装置48daを形成し、転落防止材受4820に伝達される転落防止材48ebの重量による荷重の方向が相対的に変化することにより、転落防止材48ebは、転落防止材回転軸4816をスライダー48ek上方にスライドさせながら移動し、転落防止材48ebの下端部の傾斜面が転落防止材受4820を乗り越えると、転落防止材48ebは、転落防止材回転軸4816より下側の部分が上側の部分より長く、本水流の動圧により受ける荷重も下側のほうが大きくなるため、回転し、転落防止装置として機能できるようになる。
手摺やフェンスに転落防止装置を設置する場合、当該構造を適用することで、簡単に転落防止装置を構成することができ、同時に、通常時の状態で手摺やフェンスからの突出がないため、手摺やフェンスとしての利用に支障をきたさないものとすることができる。
図48Eや図48Fは、図48Aや図48Bの例、及び、図48Cや図48Dの例に示す機構を応用した、梯子状の漂着避難装置に適用する転落防止装置の例である。
この例では、図48Cや図48Dの例と異なり、漂着救助装置/漂着避難装置48daが固定されているため、転落防止材48ebの下端が転落防止材受4820を乗り越えるのに、自重は利用できず、浮力と水流48caの動圧による荷重のみ利用できる。しかし、ここで自重を利用しないことにより、転落防止材48ebの下端部は、傾斜面とした場合より、通常時に安定する形状とすることができる。当該下端部は突出部を持ち、下部回転止め4817と、転落防止材受4820の間に挿入され、当該突出部の側面と、当該下端部の突出していない部分が形成する谷状の面が転落防止材受4820に載せ掛けられることにより、転落防止材48ebの重量が転落防止材受4820に伝達され、転落防止材48ebは風圧力等の荷重を受けても振られず安定する。
本水流により浸水すると、転落防止材48ebに取り付けられた水流受4821に水流48caの動圧による荷重が作用し、転落防止材48ebは転落防止材回転軸4816をスライダー48ekに沿わせて上昇し、下端部の突出部が転落防止材受4820を乗り越えると、転落防止材48ebは、転落防止材回転軸4816より下側の部分が上側の部分より長く、本水流の動圧により受ける荷重も下側のほうが大きくなるため、回転する。
当該構造を用いることで、簡易で、通常時や浸水前の避難時に邪魔になりにくい転落防止装置を形成できる。
尚、図48Cや図48D、及び、図48Eや図48Fの例は、図48Aや図48Bの例と異なり、転落防止材48ebの密度を、水または海水より小さなものとすることで、浮力を作用させ、より滑らかに回転を開始させることができる。
当該「発明を実施するための形態」にて示された各実施例について、以下に共通事項を記す。
示された実施例では、様々な構成要素を組み合わせているが、実施に当たっては、条件に合わせて、これらの構成要素を組み替え調整したり、別途最適な方法を検討し、計画することが望ましい。
漂着避難装置等の下地となる支持部材や架構は、採用する緩衝機構や設置する施設の規模、計画する支持スパン等の設置条件により、適切な方法等を検討し、設計する。
緩衝機構で用いる緩衝材または緩衝機構は、弾性素材、塑性素材、ダンパー等、条件に合わせて適切な材料や機構を採用する。
格子状等の形状を形成する部材等は、連続した複数のものを横繋ぎ材などで纏めてユニット化することで、これらを支持する支持部材、緩衝機構やスライダー、回転軸等も纏めることができ、コストダウンやメンテナンス性、機構の動作の信頼性の向上等を期待できる。
この場合、水害遭難者の身体にかかる漂着時の衝撃を抑えるため、一つのユニットの重量が大きくなり過ぎないようにしたり、小さなユニットとして、弾性素材などにより相互に接続させ、互いに連動して緩やかに変形させ合うものとすると、よりよい。
漂着避難装置や漂着避難施設等を、通常時に通路や広場等を含む別用途に利用せず、専用の装置や施設とする場合などは、格納式またはコンパクトにできる折りたたみ式とすると、敷地を別用途に兼用でき、付近の視界も遮らないものとできるが、避難時に支障なく展開させ、浸水時に確実に機能させることができるよう、障害物等の対策に留意する。
可動式の装置の可動部分については、基本的に、浸水等により電源を喪失している状態でも本水流の動圧による荷重等により受動的に変形し機能できるものとしているが、電源を確保できる場合は、当該可動部分の変形や、漂着した水害遭難者の上方への移動の支援等を電動機によるものとしたり、自動制御システムを導入して、より確実に動作や機能ができるものとするなど、電気やその他の動力を併用すると、よりよい。
1ab:水害遭難者 1ba:水面 1ca:本水流 1cc:水害遭難者の移動の軌跡
1cd:避難方向 1da:漂着避難装置 1dc:上部避難路 1dd:待避スペース 1eb:転落防止の立ち上がり 1ec:前面傾斜部分 1eo:支持桁 1ep:横繋ぎ材 2cd:初期避難の方向 2ce:二次避難の方向 2de:津波に強い樹木による緑地 201:三次避難の方向 202:双方向避難 204:セーフティネット
205:防潮堤の上部を覆う漂着避難施設 206:港湾の管理施設兼防災拠点施設 207:高架施設と組み合わせた積層型漂着避難施設 208:漂着避難装置を持つ建築物等 209:小型の漂着避難施設 210:津波避難タワー 211:高台の避難場所
212:津波避難ビル 3ab:水害遭難者 3ac:漂流物 3dd:待避スペース
3ea:板状の平場 3eb:誘導格子延長部分 3ec:誘導格子 303:上段への避難通路と階段 5aa:避難者 5ba:水面 5eb:転落防止アーム 5eo:格子状下地材 5ew:支持回転軸 6aa:避難者 6ab:水害遭難者 6ba:水面 6eb:転落防止アーム 6eh:フロートフィン 6eo:格子状下地材 6ew:支持回転軸 603:アーム 7ab:水害遭難者 7ec:蹴込・踏面構成部材 7ed:固定踏面構成部材 7eh:フロートフィン 7ei:ロックピン 7eq:支持部材 7es:蹴込・踏面構成部材回転エンドストッパー 7et:戻り止めラッチ 7ew:支持回転軸 702:爪 709:フロートフィン接続アーム 711:ロックピンリンク 712:ロック解除機構アーム 713:蹴込・踏面構成部材押上用突起 717:フック 8aa:避難者 8ab:水害遭難者 8eb:転落防止部材 8ec:蹴込構成部材 8ed:踏面構成部材 8ef:フロート兼ウェイト 8ei:ピン 8ek:スライダー 8el:緩衝機構 8eo:支持桁 8ep:横繋ぎ支持材 8eq:支持ブラケット 8ew:支持回転軸 8ex:段鼻回転軸 801:持出し材 802:回転ロックユニット 803:ロックユニット回転軸 804:フック 9aa:避難者 9ab:水害遭難者 9ec:誘導斜面形成部分 9ed:踏面構成部材 9ei:ピン 9ek:スリット 9el:緩衝機構 9eo:支持桁 9eq:支持材 9es:ストッパー 9ev:段鼻ユニット 9ew:支持回転軸 901:滑り止め 902:フック10ab:水害遭難者 10ba:水面 10ec:蹴込構成部材 10ed:踏面構成部材 10ef:フロート 10ei:姿勢制御ピン 10ek:スライダー
10el:緩衝機構 10em:先端クッション 10eq:受け材 10es:ストッパー 10et:ラッチ 10ev:段鼻ユニット 10ew:支持軸 10ex:回転軸ピン 1001:段鼻ユニット姿勢制御ガイド 11ea:段板 11eb:転落防止板 11ec:蹴込ユニット 11ed:フカシユニット 11ek:スライダー 11el:変形用弾性体 11em:緩衝用弾性体 11en:アンカー 11es:突起
11ev:段鼻ユニット 11ex:回転軸 1101:下地プレート 1102:構造プレート 1103:回転軸受け 1104:シールプレート
11ee:横桟 1105:ベース 1106:傾斜面 1107:下段側フィン 1108:上段側フィン 1109:クッション 1110:ネット 1111:上部接着ライン 1112:下部接着ライン 1113:フラップ状折り返し 1114:クッション下部折り返し 12ab:水害遭難者 12ea:段板 12eb:転落防止板 12ec:蹴込上部アーム 12ed:フカシユニット 12el:変形用弾性体 12em:緩衝用弾性体 12en:段板アンカープレート 12ev:段鼻プレート 12ew:山型ベース上部回転軸 12ex:蹴込上部回転軸 1201:山型ベース 1203:転落防止板回転軸 1204:転落防止板回転軸受け 1205:横繋ぎ材 1206:ガイドスライダー 13ab:水害遭難者 13ba:水面 13eb:転落防止板 13ec:蹴込構成部材 13ed:踏面構成部材 13ef:フロート 13ek:スライダー 13eo:支持桁 13eq:支持材 13er:ねじりばね 13es:ストッパー 13ew:支持回転軸 13ex:段鼻回転軸 1301:転落防止板回転軸
1302:転落防止板回転軸受け 14ab:水害遭難者 14ea:段板 14et:突出部 14ev:段鼻ユニット 14ex:段鼻回転軸 1401:持出し実部材 15ca:本水流の方向 15da:階段状の漂着避難装置 1501:ビル 1502:広場 16da:漂着避難装置 16df:漂流物ガード 1601:フロート避難施設 17da:漂着避難装置 17dc:上部避難路 17eo:支持桁 1701:柱
1702:内部空間 1703:梁 1704:基礎構造 1705:杭 1706:デッドスペース 18aa:避難者 18ab:水害遭難者 18ba:水面 18da:漂着避難装置 18db:漂着避難施設 18dc:上部避難路 18df:漂流物ガード 18eu:手摺 1801:防潮堤 19da:漂着避難装置 19dc:上部避難路 1901:防災拠点施設 1902:搬出入開口 1903:クレーン 1904:クレーン用レール 1905:バルコニー・テラス 1906:ヘリポート・ラペリングポイント 1907:レスキュー隊等 21ca:本水流の方向 21da:漂着避難装置 21db:漂着避難施設となるバルコニー 21dg:浸水時に倒伏する手摺 21eu:格子状の手摺またはフェンス 2101:平場 2102:別棟 2103:フェンス 22ca:本水流の方向 22da:漂着避難装置 23ab:水害遭難者 23ba:水面 23ca:本水流の方向 23da:漂着避難装置 23dg:浸水時に倒伏する手摺 23ee:横桟 23eu:傾斜手摺 2301:対応可能範囲 2302:壁状体 2303:柱形 2304:扉 24ab:水害遭難者 24ba:水面 24ca:本水流 24cc:水害遭難者の移動の軌跡 24cd:避難の動線 24da:漂着避難装置 24dg:浸水時に倒伏する手摺 24eu:手摺 2401:連絡通路 2403:渡り廊下 2404:前面側連絡通路 2405:格子状の壁 2406:誘導板 2407:フェンス 2408:渡り廊下延長部分 2409:吹抜け 2410:水平面 25db:漂着避難施設 2501:高架施設 2502:連絡階段 26aa:避難者 26ba:水面 26eb:転落防止アーム 26ee:横桟 26eg:フロート・ウェイト 26ey:縦桟 27ab:水害遭難者 27ba:水面 27eb:転落防止アーム 27ee:横桟 27eg:ウェイト 27eh:フロートフィン 27ei:ピン 27el:緩衝機構 27eo:下地構造 2701:アーム
2702:フック 2703:転落防止アーム先端爪 2704:転落防止アーム中間部表面 2705:転落防止アーム下部表面 28aa:避難者 28ab:水害遭難者
28ba:水面 28eb:先端立ち上がり 28ee:梯子状横桟 28eh:フロートフィン 28eo:支持桁 28ep:横繋ぎ支持材 28eq:緩衝機構付きブラケット 2801:三角形ユニット 29da:漂着避難装置 29dc:上部避難路 2901:内部空間 3001:スロープ 31da:漂着避難装置 31dc:上部避難路 3101:滑車 3102:ロープ 3103:ハーネス 3104:介助者 3105:被介助者 32da:漂着避難装置 3201:手摺兼レール 3202:水平部分 3203:先端部 3204:支柱 3205:被介助者 3206:持出支持材
33ab:水害遭難者 33da:漂着避難装置 33eb:転落防止アーム 3301:フレーム 3302:スリット 3303:内部空間 3304:階段 3305:救助者 3306:開放面 3307:物品スペース 34ca:本水流の方向 34da:梯子状ルーバー 34eu:フェンス際手摺 3401:住戸 3402:バルコニー 3403:共用廊下 3404:吹抜 3405:進入・避難用突出部 3406:外部テラス 3407:バルコニー側外壁 3408:共用廊下側外壁 3409:共用廊下手摺 3410:フェンス 3411:フェンス連絡ブリッジ 3412:漂着避難装置適用階 3413:漂着避難装置不適用階 3414:進入・避難用扉 3501:手摺支柱 3503:ベースプレート 3504:下部スライダー 3505:上部スライダー 3506:下部ピン 3507:上部ピン 36ef:ロックピンフロート 36ei:ロックピン 3601:ハウジング 3602:ロックケーブル 3603:ロックプレート 3604:手摺支柱 3605:下部スライダー 3606:上部スライダー 3607:下部ピン 3608:上部ピン 3609:上部通水孔 3610:下部通水孔 37bc:設置面 37efロックピンフロート 3701:ハウジング 3702:蓋 3703:上部通水孔 3704:下部通水孔 3705:蝶番 3706:ロックケーブル 3707:ケーブルガイド 3708:ベースプレート 3709:フロート脚 3710:ロックプレート 38ab:水害遭難者 38ba:水位 38ca:本水流 38cb:機構の変形の方向 38cc:水害遭難者の移動方向 38ee:手摺横桟 38en:アンカー 38et:ラッチ 38ey:縦桟 3801:水平羽板 3802:水平羽板回転軸 3803:手摺内側縦桟 3804:バルコニー 3805:反射・拡散光 3806:壁面緑化 3807:下部ピン 3808:上部ピン 3809:支持プレート 3810:下部スライダー 3811:上部スライダー 3812:避難ハッチ 3813:危険な位置に潜り込んだ水害遭難者 3814:冬の日射 3815:夏の日射 3816:視線 40dg:浸水時に回転または倒伏する手摺 40ef:フロート 4001:ロック対象部材(外側) 4002:ロック対象部材(内側) 4003:ロックピン貫通孔 4004:ロックピン 4005:上部通水孔 4006:下部通水孔 4007:ハウジング 4008:フロート脚 4009:蓋 4010:位置調整ノッチ 41ef:フロート 41eg:ウェイト 4101:ロックユニット 4102:ロック解除ユニット 4103:フロートアーム 4104:支点板 4105:フロートアームノッチ 4106:伝達ケーブル 4108:ケーブルガイドシース 4109:蓋 4110:ロックピン 4111:ロックピン貫通孔
4112:ロックピンフロート 42eg:ウェイト 42es:ストッパー 42ew:回転軸 4201:伝達ケーブル 4202:ロック解除ユニット 4203:ケーブルガイドシース 4204:ロックプレートレール 4205:ロックプレート 4206:ロックプレートレール開放部分 4207:ロックプレート開放部分 4208:ロック対象部材 4209:突起部 43ab:水害遭難者 43ac:大型の漂流物 43da:漂着避難装置 43de:津波に強い樹木による緑地 43df:鉄筋コンクリート等工作物による漂流物ガード 43eo:構造桁や手摺を兼ねた漂流物ガード 4301:水害遭難者の挟まり防止材 4302:漂流車両等 44ac:漂流物 44df:逆U字型部材 44em:緩衝材 44en:アンカーボルト 4401:埋込ボックス型ベース 4402:上流側スリット 4403:下流側スリット 4404:ベースプレート 4405:スライディングプレート 4501:手摺支柱 4502:控え部材 4503:回転軸 4504:スライダー 4505:ベースプレート 4506:ベースプレートのスライダー 4507:ピン 4508:回転止めブロック 4509:傾斜面 4510:回転止め 4511:ケーブル、スライダーまたはリンク46ab:水害遭難者 4601:縦材 4602:横材 4603:足掛りの穴 4604:カバーシート 4605:斜材 4606:ハンガーケーブル 4607:踏板 4608:下弦材 4609:格子状蹴込部材 4610:メインケーブル 4611:外れ止め 4612:ガイドレール 4613:デッキ 4614:大型の漂流物 47ba:水面 47bb:地表仕上げ面 47ca:水流の方向 47cb:変形の方向 47da:漂着救助装置/漂着避難装置 47dc:上部避難路 47df:漂流物フィルター
47ef:起立補助装置 47ek:スライダー 47eo:漂着救助装置下地構造材
47es:ストッパーブロック 47et:ラッチ 47ew:支持回転軸 4701:水流受板 4702:水流受シート 4703:水流受シート浮き 4704:水流受シート錘 4705:引張材 4706:ガイド 4707:構造材延長部分 4708:雨水排水管 4709:控え部材 4710:ラチス部材 4711:地盤側突出部 4712:起立補助圧縮材 4713:起立補助ガイド 4714:水流受板リンク 4715:防潮板 48ca:水流 48da:漂着救助装置/漂着避難装置 48eb:転落防止材 48ek:スライダー 4816:転落防止材回転軸 4817:下部回転止め 4818:上部回転止め 4819:ケーブル、スライダーまたはリンク 4820:転落防止材受 4821:水流受

Claims (32)

  1. 津波や洪水等の水害時における救助または救命の用に供する装置であって、前記装置は、津波や洪水等の水害により引き起こされることが予想される水流を透過させるも、本水流に呑まれた水害遭難者の身体は通過させない構造とし、
    小構造体を繰り返し連続的に配置することにより構成する場合を含み、本水流の方向に、連続的または断続的に上がっていく形状を成し、かつ、前記装置は、
    本水流に呑まれ、水中にて当該装置に漂着し、当該装置の上流側前面に衝突した前記水害遭難者の身体に、本水流の方向の逆となる方向より上向きとなる反力を作用させることにより、当該水害遭難者の身体の運動方向を、上方に変換させ、または、
    当該装置上に位置していて本水流に呑まれ、もしくは、本水流に呑まれて当該装置に漂着し、水中にて当該装置に接触している前記水害遭難者の身体に、本水流の動圧による荷重と、当該装置からの反力による、当該装置上方に向かう合力を作用させる構造とすることにより、
    当該装置上に位置していて本水流に呑まれ、もしくは、本水流に呑まれて当該装置に漂着し、本水流を受け続ける前記水害遭難者の身体を、当該装置の上流側前面に沿って当該装置上方に移動させ、水面に到達させて救助または救命する、漂着救助装置を成す装置。
  2. 前記請求項1は、記載の上流側前面が、本水流の方向に高くなる傾斜した面を成すことにより、前記水害遭難者の身体を、当該前面に沿って当該装置上方に移動させる、傾斜前面である装置。
  3. 前記請求項2は、記載の傾斜前面が、縦方向の格子状である装置。
  4. 前記請求項2は、記載の傾斜前面が、網状である装置。
  5. 前記請求項4は、記載の網状の部分のうち、40平方cm以上の網目の面積の割合が、当該網状の部分全体の面積に対し、3割未満となる装置。
  6. 前記請求項4は、記載の網状の部分のうち、40平方cm以上の網目には、当該網目の下側の辺となる部分に、当該網目を覆い塞ぐ大きさのカバーを取り付けた装置。
  7. 前記請求項2から6までのいずれかに記載の装置は、本水流による浸水時に変形して前記傾斜前面を成す構造とした装置であり、
    その可動部が、通常時は、振動、前記漂着救助装置上の歩行、または、風圧力により、有害な変形をせず、本水流による浸水時には、当該可動部が、浮力、重力、本水流の動圧による荷重、または、前記水害遭難者の身体の接触や衝突による荷重を受けて、変形することにより、本水流の上流側となる前面が前記傾斜前面を成す構造とした装置。
  8. 前記請求項2または7は、前記漂着救助装置が段状であり、各段の、段の先端部または全部が、本水流の方向に押し込まれることができる構造を採っており、かつ、
    a)当該段の先端部と、当該段の先端部または全部の下面に面する範囲の、当該段の下段の上面の部分とを、一定のあそびを持たせた長さのコード、または、伸縮性を有するコードで接続し、これを段鼻に平行な方向に一定の間隔で連続的に配置することにより格子状部分を成し、通常時は、これを蹴込とし、本水流による浸水時には、本水流の動圧による荷重、または、前記水害遭難者の身体の接触や衝突による荷重を受けて、当該段の先端部または全部が押し込まれ、当該格子状部分が引き伸ばされることにより格子状の前記傾斜前面を形成させる構造、
    b)当該段の先端部または全部の下面に面する範囲の、当該段の下段の上面の部分に、本水流の上流側となる前面が本水流の方向に高くなる勾配を持ち、本水流の方向に見た場合に櫛歯状に上部が開放された縦方向の格子状となる、傾斜面を成す格子状部分を有し、または、これに加え、
    当該段の先端部または全部の下面に、本水流の上流側となる前面が櫛歯状に下部が開放された縦方向の格子状の面を成す格子状部分を有し、
    通常時はこれら格子状部分は蹴込とされているが、本水流による浸水時には、本水流の動圧による荷重、または、前記水害遭難者の身体の接触や衝突による荷重を受けて、当該段の先端部または全部が押し込まれ、当該段の下段の上面の部分が有する格子状部分の本水流の上流側となる前面により、格子状の前記傾斜前面を形成させる構造、または、
    c)当該段の先端部または全部の下面に面する範囲の、当該段の下段の上面の部分に、本水流の上流側となる前面が凸曲面である横桟を持つ格子状部材を設置し、通常時は、これは蹴込とされているが、本水流による浸水時には、本水流の動圧による荷重、または、前記水害遭難者の身体の接触や衝突による荷重を受けて、当該段の先端部または全部が押し込まれ、当該段の先端部と当該格子状部材の横桟の前面を結ぶ面により、格子状の前記傾斜前面を形成させる構造とした装置。
  9. 前記請求項1は、本水流の上流側となる前面に、水平面に投影した場合に軌道の方向が本水流の方向と平行となる向きに配された、スライダー、案内面やガイド、回転軸を含む、変形や移動の軌道を制限する機構によって支持された、可動のユニットを有し、本水流による浸水時に、当該可動のユニットの本水流の上流側となる先端部または前面が、前記水害遭難者の身体により本水流の方向に押し込まれると、前記軌道を制限する機構によって、当該先端部または前面が、上方に誘導されることにより、
    本水流に呑まれ、水中にて当該装置に漂着し、当該先端部または前面に衝突した前記水害遭難者の身体に、本水流の方向の逆となる方向より上向きとなる反力を作用させ、当該水害遭難者の身体の運動方向を、上方に変換させ、または、
    当該装置上に位置していて本水流に呑まれ、もしくは、本水流に呑まれて当該装置に漂着し、水中にて当該先端部または前面に接触している前記水害遭難者の身体に、本水流の動圧による荷重と、当該先端部または前面からの反力による、当該装置上方に向かう合力を作用させ、
    本水流を受け続ける当該水害遭難者の身体を、当該装置の上流側前面に沿って当該装置上方に移動させる構造とした装置。
  10. 前記請求項9は、記載の可動のユニットが、本水流と直交する水平方向に配された回転軸を持つ回転体であり、
    当該可動のユニットは、通常時の状態において、
    本水流の上流側となる前面の、本水流に対し最も上流側に位置する部分が、当該回転軸より上方に位置する形状を持ち、かつ、
    当該最も上流側に位置する部分が下方に移動する方向に回転しない構造を持つことにより、
    通常時に、当該可動のユニットの上面の、当該回転軸より本水流の上流側となる部分を歩行しても、当該可動のユニットは回転せず、
    本水流による浸水時に、当該可動のユニットの、当該最も上流側に位置する部分が、前記水害遭難者の身体により本水流の方向に押し込まれると、当該最も上流側に位置する部分が、上方に誘導されることにより、
    本水流に呑まれ、水中にて当該装置に漂着し、当該最も上流側に位置する部分に衝突した前記水害遭難者の身体に、本水流の方向の逆となる方向より上向きとなる反力を作用させ、当該水害遭難者の身体の運動方向を、上方に変換させ、または、
    当該装置上に位置していて本水流に呑まれ、もしくは、本水流に呑まれて当該装置に漂着し、水中にて当該最も上流側に位置する部分に接触している前記水害遭難者の身体に、本水流の動圧による荷重と、当該最も上流側に位置する部分からの反力による、当該装置上方に向かう合力を作用させ、
    本水流を受け続ける当該水害遭難者の身体を、当該装置の上流側前面に沿って当該装置上方に移動させる構造とした装置。
  11. 前記請求項1から10までのいずれかに記載の装置は、人の身体の上方への移動を補助または促進する移動補助装置を、前記漂着救助装置に付置もしくは組み込み、または、成すことにより、人の身体を上方に移動させる構造を持つ装置。
  12. 前記請求項11は、記載の移動補助装置が、通常時は階段状の形状を維持しており、本水流により浸水すると、蹴込部分が、下段側の踏面部材と接続する部分を中心として本水流の下流側に回転して倒伏し、当該倒伏した蹴込部分と当該踏面部材とが連続する水平面を形成する装置。
  13. 前記請求項1から12までのいずれかに記載の装置は、転落防止装置を具有し、当該転落防止装置は、本水流による浸水時に、
    前記水害遭難者の身体が前記漂着救助装置に沿って水中を上昇することを妨げず、当該漂着救助装置上かつ水面に位置する前記水害遭難者の身体が下方に移動することを防止し、水位低下後に当該水害遭難者の身体を水中または水面に転落させることなく大気中に待避させておくことができる構造を持つ装置。
  14. 前記請求項13は、記載の転落防止装置が、本水流による浸水時またはその後の水位低下時に、直接的または間接的に、浮力、重力、本水流の動圧による荷重、または、前記水害遭難者の身体の接触や衝突による荷重を受けることにより、前記漂着救助装置から当該水害遭難者の身体の転落防止のための部分を、突出させ、もしくは、起立させ、または、当該部分の角度を当該水害遭難者の身体の転落を防止できる角度に調整する装置。
  15. 前記請求項13は、記載の転落防止装置が、本水流による浸水時またはその後の水位低下時に、直接的または間接的に、浮力、重力、本水流の動圧による荷重、または、前記水害遭難者の身体の接触や衝突による荷重を受けることにより、前記漂着救助装置上面の部分を、落下させまたは下方に移動させ、当該部分が隣接する、当該漂着救助装置下部側の部分を、当該部分に対し、相対的に高くさせる構造とすることにより、前記転落防止装置とした装置。
  16. 前記請求項14は、記載の転落防止装置が、本水流と直交する水平方向に配された回転軸により支持され、その先端に、当該回転軸と平行な回転軸を介して、ねじりばねと回転止めで回転を制御された爪を具有し、当該爪は、
    本水流による浸水時、当該ねじりばねにより前記漂着救助装置上流側前面より突出され、水中での前記水害遭難者の身体の当該前面に沿った上昇時には、当該水害遭難者の身体が接触し、当該上昇方向への荷重を作用されることにより、当該前面に押し込まれ、かつ、当該水害遭難者の身体の当該前面に沿った下方への移動時には、当該水害遭難者の身体が接触し、当該下方への移動方向に作用される荷重により当該爪に発生する回転モーメントを、当該爪が接続する回転軸と当該回転止めを介し、当該転落防止装置に伝達させることにより、当該転落防止装置を回転させて当該漂着救助装置から突出させる構造とした装置。
  17. 記請求項1から16までの、いずれか一つまたは複数の請求項に記載の装置を、複数、鉛直方向に、水平面に投影したときに重なる部分を持つように配置した装置。
  18. 前記請求項1から17までのいずれかに記載の装置は、
    防波堤、防潮堤、または、堤防の、上方、側方、または、上方及び側方を覆うと共に、当該装置上部に、避難スペースや避難通路となる、上部避難路を具有し、当該上部避難路の上面の高さを、当該防波堤、防潮堤、または、堤防を越流する本水流の予想水面より高い位置に設定した装置。
  19. 前記請求項1から18までのいずれかに記載の装置は、
    建築物を囲む外周の、全部または部分に設置され、当該建築物の外壁面が地面と接する部分より上部にて、当該建築物と接続する構造とされた装置。
  20. 津波や洪水等の水害時に、当該水害により引き起こされることが予想される水流の動圧による荷重や漂流物の衝突により、構造物が破壊されることを防止するための、当該構造物における支持構造で、通常時は、支持対象部分の重量により、安定して当該支持対象部分を支持し、本水流による浸水時は、本水流の動圧による荷重を受けて、当該支持対象部分を、本水流の方向に回転、倒伏、または、脱落させることにより、当該構造物が破壊されることを防止する構造であり、
    当該支持構造は、当該支持対象部分と、地盤、基礎構造または床面に設置されたベースとを、水平面に投影した場合に軌道部分が本水流の方向と平行となる向きに配され、本水流の方向に上がっていく傾斜を成す軌道部分を含む、スライダーやガイドと、当該スライダーやガイドに接続するピンとからなる、複数組の接続部分により接続されて成り、
    各接続部分は、それぞれ、スライダーやガイドと、ピンのうち、一方はベース側に、他方は当該支持対象部分側に具有され、
    当該支持対象部分は、当該接続部分の、スライダーやガイドに、それぞれ接続するピンを沿わせて相対的に移動させることにより、動作や姿勢を制御され、
    当該支持構造は、少なくとも、当該支持対象部分の回転軸またはピンの軸線方向に重なり合わない2組の接続部分を含み、これら2組の接続部分のうち、いずれか一方となる第一の接続部分は、通常時に、ピンが本水流の方向に上がっていく傾斜を成す軌道部分の端部に位置し、当該端部は、当該軌道部分以外の方向に閉じていることにより当該端部に位置している当該ピンの相対的な移動を制限し、当該ピンと当該端部との間で、通常時の、当該支持対象部分の重量による鉛直荷重、並びに、一定の範囲の方向または当該重量に対し一定の割合以下となる大きさの、当該支持対象部分の重量により生じる転倒モーメントによる荷重並びに当該支持対象部分に作用する衝撃及び風圧による荷重を含む、その他の荷重を伝達し、他方となる第二の接続部分のスライダーやガイドによる軌道の、通常時にピンが位置する部分が、通常時に第一の接続部分のスライダーやガイドの前記端部に位置するピンの芯を中心とした円弧を成さないことにより、通常時に当該支持対象部分を安定して支持し、
    本水流による浸水時には、本水流の動圧による荷重を受けて、当該支持対象部分が上昇しながら本水流の方向に移動することにより、全ての接続部分のピンは、それぞれが接続するスライダーやガイドの、本水流の方向に上がっていく傾斜を成す軌道部分を相対的に通過し、このとき、当該支持構造を構成する接続部分のうち、
    a)少なくとも1組の接続部分は、スライダーやガイドの、接続するピンが相対的に接近する側の端部を、閉じた形状とすることにより、当該ピンを相対的に当該端部に到達させ、本水流の動圧による荷重を受け続ける当該支持対象部分を、当該端部に相対的に到達した当該ピンを回転軸として、計画した角度まで回転または倒伏させる構造で、かつ、当該接続部分に対し当該支持対象部分の回転軸またはピンの軸線方向に重なり合わない全ての接続部分のスライダーやガイドは、前記により当該支持対象部分が計画した角度まで、または、倒伏するまで回転する間、それぞれ接続するピンの軸部外周が相対的に描く軌跡を、全て包含する、または、当該軌跡のいずれの部分も遮断せず、外部に開放する部分を持つ形状である構造、または、
    b)全ての接続部分のスライダーやガイドが、それぞれ接続するピンが相対的に接近する側が、閉じておらず、外部に開放された形状であることにより、当該支持対象部分を脱落させる構造。
  21. 前記請求項20は、記載の支持対象部分に浮体部分を具有させ、または記載の支持対象部分を浮体とした構造。
  22. 前記請求項20または21は、浸水時以外に、または、地震時に、記載の支持対象部分を、回転、倒伏、または、脱落させない、ロック機構を持つ構造。
  23. 前記請求項20から22までのいずれかに記載の構造は、手摺やフェンスの支持構造。
  24. 前記請求項20から23までのいずれかに記載の構造は、本水流による浸水時に、本水流の動圧による荷重を受けて、前記支持対象部分を本水流の方向に回転させる構造で、かつ、当該支持対象部分を回転させた際に当該支持対象部分を支持する構造の一部を成す控えを具有し、当該控えは、
    当該支持対象部分に、本水流と直交する水平方向に配された回転軸、または、当該回転軸に加えて軌道が鉛直方向成分を含むスライダーを介して接続され、
    本水流による浸水時には、本水流の動圧による荷重を受け、開き止めにより回転の角度が制限されるまで、当該回転軸を中心として、本水流の方向に回転して展開し、
    当該支持対象部分が、本水流の動圧による荷重を受けて、本水流の方向に回転した際に、当該控えの下端を、地面、基礎構造上面、または、床面に到達させることにより、当該支持対象部分を支持する構造の一部を成す構造。
  25. 前記請求項1から3まで、7、9、10、11、または、13から19までのいずれかに記載の装置は、本水流の方向に上がっていく傾斜を成して設置されることにより、または、前記請求項20から24までのいずれかに記載の構造で支持し、本水流による浸水時に、本水流の動圧による荷重を受けて、本水流の方向に一定の角度まで回転させることにより、前記漂着救助装置を成す、ルーバー、手摺やフェンス、または、これらを組み合わせた装置。
  26. 津波や洪水等の水害時における、防災、避難や救助のための装置の架構であって、通常時は倒伏した状態であり、動力により、または、津波や洪水等の水害により引き起こされることが予想される水流による浸水時の浮力もしくは本水流の動圧による荷重を受けることにより、起立する架構で、
    当該架構は、当該架構の起立中は本水流の方向に上がっていく傾斜を成しながら起立する、第一の部材を有し、
    第一の部材は、第一の部材の起立時に下端となる部分が、本水流と直交する水平方向に配された回転軸を介し、地盤もしくは基礎構造に設置された、水平面に投影した場合に軌道部分が本水流の方向と平行となる向きに配された、スライダーやガイドに接続され、
    第一の部材は、第一の部材の起立時に上部または中間となる部分に、本水流と直交する水平方向に配された回転軸または方向を問わず回転自在な接続部を介し、第二の部材に接続され、
    第二の部材は、第二の部材の起立時に下端となる部分が、本水流と直交する水平方向に配された回転軸または方向を問わず回転自在な接続部を介し、地盤もしくは基礎構造に、または、地盤もしくは基礎構造に設置された、水平面に投影した場合に軌道部分が本水流の方向と平行となる向きに配された、スライダーやガイドに接続され、
    当該架構の起立時には、第一の部材と第二の部材が異なる勾配の傾斜を成す構造とすることにより、及び、
    第一の部材は、第一の部材の起立時に第二の部材が接続する部分より下部となる部分において、浸水時に本水流を受けるパラシュート状の装置、通常時は倒伏した状態で浸水時は起立し本水流を受ける板状の装置、ウィンチ、または、アクチュエータに接続され、
    第一の部材が、接続するウィンチもしくはアクチュエータによる荷重を受け、または、本水流により浸水し、接続する浸水時に本水流を受けるパラシュート状の装置もしくは通常時は倒伏した状態で浸水時は起立し本水流を受ける板状の装置による荷重を受けることにより、起立する架構。
  27. 前記請求項26は、記載の第一の部材が、接続する、浸水時に本水流を受けるパラシュート状の装置、通常時は倒伏した状態で浸水時は起立し本水流を受ける板状の装置、ウィンチ、または、アクチュエータによる荷重を受け、即座に起立を開始できるようにする、起立補助機構を持つ架構。
  28. 前記請求項27は、記載の起立補助機構が、
    第一の部材及びこれに接続された構造部材のうちの、全部または一部となる構造部分が、前記架構の倒伏時に、水平面に投影した場合に軌道の方向が本水流の方向と平行となる向きに配された、スライダーやガイドを含む、変形や移動の軌道を制限する機構のみにより拘束または支持されることにより、当該構造部分が、接続する、ウィンチもしくはアクチュエータにより作用される荷重、または、本水流により浸水し、浸水時に本水流を受けるパラシュート状の装置もしくは通常時は倒伏した状態で浸水時に起立し本水流を受ける板状の装置により作用される荷重を受け、倒伏した状態のまま、本水流の方向に移動できる構造を採り、かつ、当該構造部分と、地盤または基礎構造との間に、
    a)当該構造部分の一部を押し上げる摺動部を有し、
    当該摺動部は、当該構造部分と、地盤または基礎構造の、双方に対偶を具有させて、当該対偶が互いに摺動し合う機構とすることにより成り、
    当該対偶のうち少なくともいずれか一方は本水流の方向に上がっていく傾斜を持つ案内面を含み、倒伏した状態の当該構造部分が本水流の方向に移動すると、当該対偶が互いに摺動し合い、当該構造部分が具有する対偶が上方に誘導されることにより、
    b)もしくは、当該構造部分の一部を押し上げる可動体を有し、
    当該可動体は、水平面に投影した場合に軌道の方向が本水流の方向と平行となる向きに配された、スライダー、案内面やガイド、回転軸を含む、変形や移動の軌道を制限する機構によって姿勢を制御され、
    当該可動体は、倒伏した状態のまま本水流の方向に移動した当該構造部分により接触され、本水流の方向に押し込まれ、
    または、ウィンチもしくはアクチュエータに接続され、これらにより作用される荷重、もしくは、前記パラシュート状の装置もしくは前記板状の装置に接続され、本水流により浸水し、これらの装置により作用される荷重を受け、本水流の方向に押し込まれ、
    当該可動体の少なくとも一部が上方に誘導されることにより、
    c)または、当該摺動部と当該可動体とを併せて有し、
    倒伏した状態の当該構造部分が本水流の方向に移動した範囲により、当該構造部分が具有する対偶が上方に誘導され、または、当該可動体の少なくとも一部が上方に誘導されることにより、
    倒伏した状態の当該構造部分が本水流の方向に移動した際に、当該構造部分の一部を上方に押し上げ、当該架構の起立を補助する、前記起立補助機構を構成する架構。
  29. 前記請求項1から16のいずれかに記載の装置は、前記請求項26から28までのいずれかに記載の架構を持つ装置。
  30. 津波や洪水等の水害時の本水流を抑制する装置や防潮堤を成す装置で、前記請求項26から28までのいずれかに記載の架構を持つ装置。
  31. 漂流物ガードを成す装置で、前記請求項26から28までのいずれかに記載の架構を持つ装置。
  32. 避難施設を成す装置で、前記請求項26から28までのいずれかに記載の架構を持つ装置。
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