本発明の貼付剤用支持体(以下、単に「支持体」と表記することがある)は、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布とが、未延伸ポリエステル繊維を含む繊維ウエブの未延伸ポリエステル繊維の変形により接着している。
ポリエステルフィルムは粘着剤の透過を防止し、薬効成分の充分な作用の補助、使用者の着衣等への粘着防止、及び薬物の揮散防止作用を奏する。このようなポリエステルフィルムとしては、後述の未延伸ポリエステル繊維との接着性等から、少なくとも1軸延伸されたポリエステルフィルムであるのが好ましい。
このようなフィルムを構成するポリエステルは非エラストマーであるのが好ましい。非エラストマーからなると、エラストマーのようなソフトセグメントを含まず、ポリエステルフィルム自体が薬剤吸着を生じにくいためである。このように「非エラストマー」とは、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールなどをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステルブロック共重合体ではないことを意味する。
具体的には、芳香族ジカルボン酸を主な酸成分とし、アルキレングリコールを主なグリコール成分とするポリエステルは非エラストマーである。例えば、芳香族ジカルボン酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸等を挙げることができる。また、アルキレングリコールとして、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘキシレングリコール等を挙げることができる。より具体的には、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、又はポリエチレンテレフタレートであるのが好ましい。これらポリエステルフィルムは、薬物を吸着しにくいため、薬効作用を充分に発揮させることができる。特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、極めて薬物を吸着しにくく、また、後述の未延伸ポリエステル繊維の変形により接着させても、寸法を維持することができるため、好適である。
なお、ポリエステルフィルムには、意匠性を高める目的、効能を表示する目的、及び/又は隠蔽性向上の目的等のために、エンボス処理、サンドブラスト処理、印刷、無機及び/又は有機の微粒子、染料、又は顔料による着色、が施されていても良い。また、ポリエステルフィルムは単層品である必要はなく、積層品であっても良い。
本発明の支持体は、上述のようなポリエステルフィルムに加えて、ポリエステル繊維不織布を備えており、アンカー効果により薬物を含有する粘着剤を保持することができるため、貼付剤を剥離した際に、粘着剤が皮膚に残留することがない。
このポリエステル繊維不織布はポリエステル繊維を主体とする、つまり、50mass%以上がポリエステル繊維からなる不織布であるため、後述の未延伸ポリエステル繊維の変形により、ポリエステルフィルムと強固に接着でき、ポリエステルフィルムと剥離しにくい。なお、未延伸ポリエステル繊維の変形によって、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布とが接着する際に、ポリエステル繊維も変形し、接着してしまうと、ポリエステル繊維不織布の嵩がなくなり、粘着剤の保持性が低下し、流れ出してしまう可能性や、ポリエステル繊維不織布が硬くなってしまい、貼付剤使用時に違和感を覚える傾向があるため、ポリエステル繊維は延伸ポリエステル繊維であるのが好ましい。この「延伸ポリエステル繊維」とは、ポリエステル繊維を紡糸した後に、機械的な延伸作用を作用させた繊維をいう。本発明においては、単に「ポリエステル繊維」と表記した場合は「延伸ポリエステル繊維」を意味し、未延伸ポリエステル繊維を意味する場合には、「未延伸ポリエステル繊維」と表記する。
このポリエステル繊維を構成するポリエステル樹脂としては、前述のポリエステルフィルムと同様のポリエステル樹脂であることができ、具体的には、芳香族ジカルボン酸を主な酸成分、アルキレングリコールを主なグリコール成分とすることができる。より具体的には、芳香族ジカルボン酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸等を挙げることができる。また、アルキレングリコールとして、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘキシレングリコール等を挙げることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンフタレートは、薬物を吸着しにくく、薬効作用を充分に発揮させることができるため好適である。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートは極めて薬物を吸着しにくいため、好適である。なお、ポリエステル繊維は、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有していても良い。
このポリエステル繊維は上述のような、一種類のポリエステル樹脂からなる単一成分繊維であっても良いが、二種類以上のポリエステル樹脂を複合した複合繊維であることもできる。例えば、熱収縮率の異なる二種類のポリエステル樹脂が複合された、繊維断面における配置がサイドバイサイド型又は偏芯型の複合繊維であると、熱の作用によって、捲縮を発現してポリエステル繊維不織布の厚さを厚くでき、粘着剤のアンカー効果による保持性に優れるため、粘着剤が流れ出しにくく、また、ポリエステル繊維不織布自体が柔軟で、支持体が柔軟で曲げやすいため、貼付剤使用時の違和感が生じにくい、という効果を奏する。
なお、ポリエステル繊維不織布は、ポリエステル繊維以外の繊維として、例えば、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド繊維;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン繊維;ポリアクリロニトリルなどのアクリル繊維;及び/又はポリビニルアルコール繊維などを含んでいることができる。しかしながら、ポリエステルフィルムと強固に接着でき、ポリエステルフィルムと剥離しにくいように、ポリエステル繊維はポリエステル繊維不織布中、60mass%以上含まれているのが好ましく、80mass%以上含まれているのがより好ましく、100%ポリエステル繊維からなるのが更に好ましい。
このような本発明のポリエステル繊維不織布を構成する繊維(特にポリエステル繊維)は白色であることができるが、白色以外に、顔料で着色した繊維及び/又は染料で染色した繊維であっても良い。例えば、ポリエステル繊維不織布構成繊維が肌色に着色していると、皮膚に貼付した際に目立たないため好適である。
このようなポリエステル繊維不織布を構成する繊維(特にポリエステル繊維)の繊維長は、繊維同士が絡みやすく、ほつれにくいことによって、繊維の脱落が生じにくいように、20mm以上であるのが好ましく、25mm以上であるのがより好ましく、30mm以上であるのが更に好ましく、35mm以上であるのが更に好ましい。例えば、貼付剤剥離時に、ポリエステル繊維不織布が層間剥離して、繊維と一緒に粘着剤が皮膚に残留しにくく、また、貼付剤の粘着剤含有面同士が貼り付いてしまった場合、無理に剥がしても、粘着剤含有ポリエステル繊維不織布面が破壊されることがない。なお、繊維長の上限は特に限定するものではないが、ポリエステル繊維不織布製造時の繊維の開繊性の点から、110mm以下であるのが好ましい。本発明の「繊維長」は、JIS L1015「化学繊維ステープル試験方法」の8.4.1に直接法(C法)として規定される測定値をいう。
なお、本発明のポリエステル繊維不織布は繊維長の異なる繊維(特にポリエステル繊維)を2種類以上含むことができるが、繊維長の異なる繊維を2種類以上含んでいる場合には、次の関係式から算出される平均繊維長(L)が前記繊維長の範囲内にあるのが好ましい。
(関係式) ポリエステル繊維不織布に含まれる、各繊維の繊維長がa(mm)、b(mm)、c(mm)・・・であり、各繊維のポリエステル繊維不織布における含有割合が、順にa´(mass%)、b´(mass%)、c´(mass%)・・・である時に、次の関係式が成り立つ。
(a´/a)+(b´/b)+(c´/c)・・・=(100/L)
なお、このようなポリエステル繊維不織布を構成する繊維(特にポリエステル繊維)の繊度は、繊維同士が絡みやすく、また、地合いの優れるポリエステル繊維不織布であるように、5.5dtex以下であるのが好ましく、4.4dtex以下であるのがより好ましく、3.3dtex以下であるのが更に好ましく、2.2dtex以下であるのが更に好ましく、1.7dtex以下であるのが更に好ましく、1.5dtex以下であるのが更に好ましい。一方で、繊度が小さ過ぎると、繊維同士の絡みが強くなり過ぎてしまい、柔軟性が悪くなる傾向があるため、0.5dtex以上であるのが好ましく、0.8dtex以上であるのがより好ましい。
なお、本発明のポリエステル繊維不織布は、繊度の異なる繊維(特にポリエステル繊維)を2種類以上含むことができるが、繊度の異なる繊維を2種類以上含んでいる場合には、次の関係式から算出される平均繊度(D)が前記平均繊度の範囲内にあるのが好ましい。
(関係式) ポリエステル繊維不織布に含まれる、各繊維の繊度がx(dtex)、y(dtex)、z(dtex)・・・であり、各繊維のポリエステル繊維不織布における含有割合が、順にx´(mass%)、y´(mass%)、z´(mass%)・・・である時に、次の関係式が成り立つ。
(x´/x)+(y´/y)+(z´/z)・・・=(100/D)
本発明のポリエステル繊維不織布は、例えば、ポリエステル繊維を主体とする繊維ウエブを形成した後、結合して製造することができる。なお、繊維ウエブの形成方法としては、例えば、カード法、エアレイ法などの乾式法、湿式法、又はスパンボンド法などの直接法を挙げることができる。ポリエステル繊維不織布は前述の通り、粘着剤を保持して、流れ出してしまうのを抑制できるように、厚い方が好ましいため、厚い繊維ウエブを形成することのできる、乾式法により繊維ウエブを形成するのが好ましい。なお、これら繊維ウエブを積層することもできる。また、繊維ウエブ構成繊維の配向方向は特に限定するものではなく、例えば、たて方向に配向したパラレルウエブ、パラレルウエブをクロスレイヤー等でよこ方向に配向させたクロスウエブ、パラレルウエブとクロスウエブとを積層したクリスクロスウエブ、ランダムウエブ、クロスレイウエブ1枚とパラレルウエブもしくはランダムウエブ2枚とを積層したトライアスクロスウエブであることができる。
なお、ポリエステル繊維を主体とする繊維ウエブの目付は特に限定するものではないが、厚さの厚いポリエステル繊維不織布とすることによって、粘着剤の流れ出しを防止でき、また、貼付剤使用時に違和感がないように、15〜100g/m2であるのが好ましく、20〜85g/m2であるのがより好ましく、20〜70g/m2であるのが更に好ましく、20〜50g/m2であるのが更に好ましい。本発明における「目付」は1m2あたりの質量であり、JIS L 1085:1998−6.2(単位面積当たりの質量)に規定する方法により得られる値である。
この繊維ウエブを結合する方法は、特に限定するものではないが、絡合のみによって結合しているのが好ましい。このように絡合のみによって結合していると、液状バインダや接着性繊維によって結合した場合のように、繊維同士が強固に結合しておらず、繊維同士の融通性があることから、ポリエステル繊維不織布が柔軟で、結果として貼付剤用支持体も柔軟であることができ、貼付剤使用時の違和感が少ないためである。このような絡合のみによって結合する方法としては、例えば、水流などの流体流により絡合する方法、ニードルによって絡合する方法などを挙げることができる。特に、水流により絡合する方法であると、厚さを維持しやすい、繊維同士が強固に絡むことができるためポリエステル繊維不織布が層間剥離しにくい、地合いが優れている、及び表面が平滑であるなど、様々な利点を有するため好適である。
この好適である水流で絡合する場合、その条件は特に限定するものではないが、プレシャワーを除く、ノズル1本あたりの平均水圧を3MPa以上とするのが好ましく、3.5MPa以上とするのがより好ましく、4MPa以上とするのが更に好ましい。一方、平均水圧が高過ぎると、繊維同士の絡み合いが強くなり過ぎてしまい、柔軟性と地合いを大きく損なう傾向があるため、20MPa以下とするのが好ましく、18MPa以下とするのがより好ましく、16MPa以下とするのが更に好ましい。
なお、熱の作用によって、捲縮を発現できる繊維を含んでいる場合には、繊維ウエブを結合した後に、熱を作用させることによって、捲縮を発現させれば良い。或いは、熱を作用させることによって、捲縮を発現させた後に、繊維ウエブを結合すれば良い。なお、捲縮を発現させる場合には、繊維ウエブをオーバーフィードするなど、捲縮を発現できる繊維が捲縮を発現しやすい条件下で熱を作用させるのが好ましい。また、加熱は捲縮の発現を阻害しないように、熱風ドライヤーや赤外線ランプなどの、固体によって圧力を作用させない条件下で実施するのが好ましい。
本発明の支持体は上述のようなポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布とを有するものであるが、これらは未延伸ポリエステル繊維を含む繊維ウエブの未延伸ポリエステル繊維の変形により接着している。このように、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布とは、接着剤により接着しておらず、未延伸ポリエステル繊維の変形により接着しているため、薬剤吸着や変色が生じにくく、薬剤の効能を発揮しやすいものである。また、粘着剤や薬剤の影響により未延伸ポリエステル繊維の接着力が低下するということもなく、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布との剥離が生じにくいため、貼付剤を引き剥がしても、粘着剤が皮膚に残留しにくいものである。
この未延伸ポリエステル繊維はポリエステルフィルム及びポリエステル繊維不織布と同様にポリエステル樹脂からなるにもかかわらず、塑性変形することによって、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布とを強固に接着することができるため、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布とが剥離しにくい。この「未延伸」とは、紡糸後に機械的な延伸作用を受けていないことを意味し、そのため、未延伸ポリエステル繊維は加熱加圧によって、塑性変形し、接着作用を奏することができる。
この未延伸ポリエステル繊維は未延伸である限り、ポリエステル繊維不織布を構成できるポリエステル繊維と同様のポリエステル樹脂から構成することができる。つまり、芳香族ジカルボン酸を主な酸成分、アルキレングリコールを主なグリコール成分とすることができる。具体的には、芳香族ジカルボン酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸等を挙げることができる。また、アルキレングリコールとして、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘキシレングリコール等を挙げることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンフタレートは薬物吸着性が少ないため、好適である。特に、ポリエチレンテレフタレート繊維は極めて低い薬物吸着性を有するため、好適である。なお、未延伸ポリエステル繊維は帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有していても良い。
本発明の未延伸ポリエステル繊維は上述のような一種類のポリエステル樹脂からなる未延伸ポリエステル繊維であっても良いし、二種類以上のポリエステル樹脂を複合した未延伸ポリエステル複合繊維であっても良い。このような未延伸ポリエステル複合繊維は繊維断面における樹脂の配置が、例えば、芯鞘型、サイドバイサイド型、オレンジ型、又は海島型であることができる。
この未延伸ポリエステル繊維の繊度は特に限定するものではないが、接着をより強固とするため、0.5dtex以上であるのが好ましく、1dtex以上であるのがより好ましく、1.5dtex以上であるのが更に好ましい。一方で、太すぎると充分な接着力が得られない可能性があるため、10dtex以下であるのが好ましく、8dtex以下であるのがより好ましく、7dtex以下であるのが更に好ましく、5dtex以下であるのが更に好ましく、4dtex以下であるのが更に好ましい。
なお、後述の通り、繊維ウエブは未延伸ポリエステル繊維以外の繊維を含むことができ、繊度の異なる繊維を2種類以上含むことができるが、繊度の異なる繊維を2種類以上含んでいる場合には、ポリエステル繊維不織布と同様にして算出される平均繊度が前記繊度の範囲内にあるのが好ましい。
このような繊維ウエブを構成する繊維(特に未延伸ポリエステル繊維)の繊維長は、接着強度が優れるように、また、地合いが均一であるように、20mm以上であるのが好ましく、25mm以上であるのがより好ましく、30mm以上であるのが更に好ましく、35mm以上であるのが更に好ましい。なお、繊維長の上限は特に限定するものではないが、繊維ウエブ製造時の繊維の開繊性の点から、110mm以下であるのが好ましい。
なお、後述の通り、繊維ウエブは未延伸ポリエステル繊維以外の繊維を含むことができ、繊維長の異なる繊維を2種類以上含むことができるが、繊維長の異なる繊維を2種類以上含んでいる場合には、ポリエステル繊維不織布と同様に定義される平均繊維長が前記繊維長の範囲内にあるのが好ましい。
本発明の繊維ウエブは上述のような未延伸ポリエステル繊維を含むものであるが、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布とを強固に接着し、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布とが剥離することがないように、未延伸ポリエステル繊維は、繊維ウエブ中、15mass%以上含まれているのが好ましく、25mass%以上含まれているのがより好ましく、35mass%以上含まれているのが更に好ましく、45mass%以上含まれているのが更に好ましく、50mass%以上含まれているのが更に好ましい。一方で、未延伸ポリエステル繊維量が多いと、支持体が硬くなり、貼付剤使用時に違和感を覚えやすくなる傾向があるため、90mass%以下含まれているのが好ましく、85mass%以下含まれているのがより好ましく、80mass%以下含まれているのが更に好ましく、70mass%以下含まれているのが更に好ましい。
なお、繊維ウエブを構成する未延伸ポリエステル繊維以外の繊維は、ポリエステル繊維不織布を構成できる繊維と同様の繊維であることができる。つまり、延伸ポリエステル繊維(特に、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンフタレート繊維);ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド繊維;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン繊維;ポリアクリロニトリルなどのアクリル繊維;ポリビニルアルコール繊維などを含んでいることができる。これらの中でも、延伸ポリエステル繊維(特に、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンフタレート繊維)は薬物を吸着しにくく、薬効作用を充分に発揮させることができるため、好適である。
このような繊維ウエブを構成する繊維(特に、未延伸ポリエステル繊維)は、前述のポリエステル繊維不織布と同様に、白色であっても良いし、顔料及び/又は染料で着色した繊維であっても良い。
なお、繊維ウエブは未延伸ポリエステル繊維を含んでいる限り、その製造方法は特に限定するものではないが、例えば、カード法、エアレイ法などの乾式法;湿式法;メルトブロー法などの直接法により形成することができる。これらの中でも乾式法によれば、未延伸ポリエステル繊維とそれ以外の繊維(特に、延伸ポリエステル繊維)とを任意の割合で均一に混合することができ、未延伸ポリエステル繊維で接着することによって、硬くなるのを緩和することができるため、好適である。
また、繊維ウエブの目付は特に限定するものではないが、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布とを強固に接着することができるように、3g/m2以上であるのが好ましく、4g/m2以上であるのがより好ましく、5g/m2以上であるのが更に好ましい。一方で、繊維ウエブの目付が高すぎると、支持体が硬くなり、貼付剤使用時に違和感を覚えやすい傾向があるため、15g/m2以下であるのが好ましく、12g/m2以下であるのがより好ましく、9g/m2以下であるのが更に好ましい。
このような繊維ウエブの未延伸ポリエステル繊維は変形して、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布とを接着しているが、この接着は、例えば、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布とを、未延伸ポリエステル繊維を含む繊維ウエブを介して積層した状態で、加熱加圧することによって、未延伸ポリエステル繊維を変形させ、接着することができる。この加熱加圧条件は未延伸ポリエステル繊維によって異なり、実験的に適宜設定することができる。例えば、好適である未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維を使用する場合、熱接着可能な温度は180℃程度であるため、190〜230℃で加熱するとともに、線圧150〜250N/cmで加圧すれば良い。なお、加熱と加圧は同時であっても良いし、加熱後に加圧しても良い。
本発明の支持体は、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布とを、未延伸ポリエステル繊維を含む繊維ウエブの未延伸ポリエステル繊維の変形により接着したものであるが、ポリエステルフィルムを除いた厚さが100μm以上と、薬物を含有する粘着剤の保持に関与できる繊維を含む層の厚さが厚く、繊維によって粘着剤を充分に保持することができるため、薬物を含む粘着剤が流れ出るのを抑制することができる。この繊維を含む層の厚さが厚ければ厚い程、繊維によって粘着剤を保持することができるため、110μm以上であるのが好ましく、120μm以上であるのがより好ましい。一方で、繊維を含む層の厚さが厚すぎると、支持体が硬くなり、貼付剤使用時に違和感を覚えやすい傾向があるため、厚さは900μm以下であるのが好ましく、800μm以下であるのがより好ましく、700μm以下であるのが更に好ましく、600μm以下であるのが更に好ましく、500μm以下であるのが更に好ましい。この繊維を含む層の厚さは、圧縮弾性試験機を用い、接触面積5cm2、荷重0.98N{100gf}の条件で、支持体の厚さを測定し、この厚さからポリエステルフィルムの厚さを差し引いた厚さをいう。
なお、ポリエステルフィルムの厚さは特に限定するものではないが、皮膚に貼着した際に違和感を感じにくいように、25μm以下であるのが好ましく、20μm以下であるのがより好ましく、15μm以下であるのが更に好ましい。一方、ポリエステルフィルムの厚さの下限は、支持体製造時及び貼付剤使用時の取り扱い性に優れるように、1.5μm以上であるのが好ましく、3.5μm以上であるのがより好ましく、5μm以上であるのが更に好ましく、7μm以上であるのが更に好ましい。なお、ポリエステルフィルムの厚さは、支持体の厚さ方向における断面の電子顕微鏡写真を撮影し、その電子顕微鏡写真をもとに測定した10点における厚さの算術平均値をいう。
なお、前記繊維を含む層のうち、繊維ウエブの未延伸ポリエステル繊維で接着した領域は未延伸ポリエステル繊維が変形し、空隙が少なく、粘着剤の保持に関与しにくいため、繊維ウエブに由来する層の厚さは40μm以下であるのが好ましく、30μm以下であるのがより好ましく、20μm以下であるのが更に好ましい。別の見方をすれば、ポリエステル繊維不織布の層の厚さが60μm以上であるのが好ましく、70μm以上であるのがより好ましく、80μm以上であるのが更に好ましく、100μm以上であるのが更に好ましい。この「繊維ウエブに由来する層の厚さ」又は「ポリエステル繊維不織布の層の厚さ」は、支持体の厚さ方向における断面の電子顕微鏡写真を撮影し、その電子顕微鏡写真をもとに測定した10点における厚さの算術平均値をいう。
本発明の支持体の繊維を含む層(ポリエステル繊維不織布と繊維ウエブの層)の厚さが100μm以上であったとしても、繊維を含む層の空隙が少なく、粘着剤を保持できる空隙が少ないと、充分に粘着剤を保持することができず、流れ出やすい傾向があるため、繊維を含む層の見掛密度は0.3g/cm3以下であるのが好ましく、0.28g/cm3以下であるのがより好ましく、0.26g/cm3以下であるのが更に好ましい。一方で、見掛密度が低過ぎると、繊維量が少なく、粘着剤を保持しにくい傾向があり、また、貼付剤を剥離させた際に、ポリエステル繊維不織布内で層間剥離してしまう場合があるため、0.10g/cm3以上であるのが好ましく、0.14g/cm3以上であるのがより好ましい。この繊維を含む層の見掛密度(単位:g/cm3)は、繊維を含む層の目付(単位:g/m2)を、繊維を含む層の厚さ(単位:μm)で除した値である。なお、繊維を含む層の目付は支持体の目付からフィルムの目付を差し引いた値である。このフィルムの目付(=M、単位:g/m2)は、フィルムの厚さから算出することのできる1m2あたりの体積(=Vu、単位:cm3/m2)に、ポリエステルフィルムの比重(=SG、単位:g/cm3)を乗ずることによって算出することができる。つまり、次の式から算出できる。
M=Vu×SG
このように、本発明の支持体はポリエステルフィルムを除いた繊維を含む層の厚さが100μm以上であるが、このように従来の支持体よりも嵩高であると、硬く、曲げにくくなる傾向があるが、嵩高であっても、曲げやすく、貼付剤使用時に違和感を感じにくいように、KES方式による曲げ剛性のたて方向とよこ方向の平均値が0.3cN・cm2/cm以下であるのが好ましく、0.29cN・cm2/cm以下であるのがより好ましく、0.26cN・cm2/cm以下であるのが更に好ましく、0.24cN・cm2/cm以下であるのが更に好ましく、0.22cN・cm2/cm以下であるのが更に好ましい。なお、この曲げ剛性の平均値が小さい程、貼付剤使用時の違和感を感じにくいため、曲げ剛性の平均値の下限は特に限定するものではないが、曲げ剛性が低過ぎると、支持体の取り扱い性が悪くなる傾向があるため、0.05cN・cm2/cm以上であるのが好ましい。
このKES方式による曲げ剛性は、純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES−FB2)を用いて、「風合い評価の標準化と解析第2版」(川端季雄ら著、風合い計量と規格化研究委員会編)の第27〜28頁に記載の方法により測定される値である。即ち、試料の支持体を幅1cmの間隔で長さ20cmにわたってチャックに把持し、曲率K=−2.5〜2.5cm−1の範囲において、変形速度0.50cm−1/sec.で等速度曲率の純曲げを行い、この際の曲げモーメントを測定することにより、単位長さ当たりの曲げ剛性(cN・cm2/cm)を求める計測を、支持体のたて方向、よこ方向について、それぞれ3回ずつ行い、測定して得た単位長さ当たりの曲げ剛性を算術平均した値である。なお、本発明における「たて方向」とは、ポリエステル繊維不織布生産時における生産方向(流れ方向)をいい、「よこ方向」とは、たて方向に直交する方向、つまりポリエステル繊維不織布生産時における幅方向をいう。
前述の通り、本発明の支持体はポリエステルフィルム、ポリエステル繊維不織布、未延伸ポリエステル繊維を含む繊維ウエブから構成されているが、いずれもポリエチレンテレフタレートから構成されているのが好ましい。前述の通り、ポリエチレンテレフタレートは薬剤を吸着しにくく、効果的に薬効作用を奏することができるためである。
本発明の支持体はポリエステルフィルム、ポリエステル繊維不織布及び繊維ウエブからなるため、その目付は特に限定するものではないが、20〜150g/m2であるのが好ましく、20〜125g/m2であるのがより好ましく、20〜100g/m2であるのが更に好ましく、30〜80g/m2であるのが更に好ましく、40〜60g/m2であるのが更に好ましい。
また、支持体は繊維の層によって粘着剤を保持し、流れ出すのを防止することができるように、繊維の層の厚さは100μm以上であるため、支持体の厚さは101.5μm以上であるのが好ましく、103.5μm以上であるのがより好ましく、105μm以上であるのが更に好ましく、107μm以上であるのが更に好ましい。一方で、支持体の厚さが厚すぎると、貼付剤使用時に違和感を感じやすくなる傾向があるため、925μm以下であるのが好ましく、825μm以下であるのがより好ましく、725μm以下であるのが更に好ましく、625μm以下であるのが更に好ましく、525μm以下であるのが更に好ましい。
本発明の支持体はポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布とを繊維ウエブの未延伸ポリエステル繊維により接着したものであるが、皮膚から剥がす際に支持体が破れてしまうことのないように、支持体はたて方向、よこ方向のいずれの方向における引張り強さも、5N/15mm以上であるのが好ましく、7N/15mm以上であるのがより好ましく、10N/15mm以上であるのが更に好ましく、15N/15mm以上であるのが更に好ましく、20N/15mm以上であるのが更に好ましい。
この「引張り強さ」は、支持体から幅が15mm、長さが150mmの試料片を採取し、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン)を用い、試料片が破断するまでの最大荷重を測定する。この最大荷重の測定を3枚の試料片について行い、これら最大荷重を算術平均し、引張り強さとする。なお、測定はつかみ間隔100mm、引張速度200mm/分の条件で行う。
また、本発明の支持体は柔軟性に優れているように、たて方向、よこ方向のいずれの方向における伸び率も、3%以上であるのが好ましく、5%以上であるのがより好ましく、10%以上であるのが更に好ましく、15%以上であるのが更に好ましい。
この伸び率(Sr、単位:%)は前述の引張り強さの測定を行った時の、最大荷重時の試料片の伸び(Smax、単位:mm)[=(最大荷重時の長さ、単位:mm)−(つかみ間隔=100mm)]のつかみ間隔(100mm)に対する百分率をいう。つまり、次の式から得られる値である。この測定を3回行い、前記百分率の算術平均値を伸び率とする。
Sr=(Smax/100)×100
本発明の支持体は、薬物を含有する粘着剤の保持に関与することのできる繊維を含む層の厚さが100μm以上と厚く、繊維によって粘着剤を充分に保持することができるため、薬物を含む粘着剤が流れ出るのを抑制することができる。また、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布とが、未延伸ポリエステル繊維を含む繊維ウエブの未延伸ポリエステル繊維の変形により接着しており、いずれもポリエステル系樹脂からなるため、接着が強固で、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布との剥離が生じにくい支持体である。更に、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布とは、接着剤により接着しておらず、未延伸ポリエステル繊維の変形により接着しているため、薬剤吸着や変色が生じにくく、また、粘着剤や薬剤の影響により接着剤が劣化し、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布が剥離してしまうということのない支持体である。
特に、KES方式による曲げ剛性のたて方向とよこ方向の平均値が0.3cN・cm2/cm以下である支持体、又は絡合によってのみ結合したポリエステル繊維不織布を備える支持体は、柔軟で曲げやすいため、貼付剤使用時の違和感の少ない支持体である。また、ポリエステルフィルムが非エラストマー(特に、ポリエチレンテレフタレート)からなり、ポリエステル繊維不織布及び未延伸ポリエステル繊維を含む繊維ウエブも、ポリエチレンテレフタレート繊維のみから構成されていると、薬剤を吸着しにくいため、薬効作用を効果的に発揮させることができる支持体である。
更に、ポリエステル繊維不織布を構成するポリエステル繊維の繊維長が20mm以上であると、ポリエステル繊維同士の絡みが強く、ほつれにくいため、繊維の脱落が生じにくい。例えば、貼付剤剥離時に、ポリエステル繊維不織布が層間剥離して、繊維と一緒に粘着剤が皮膚に残留しにくく、また、貼付剤の粘着剤含有面同士が貼り付いてしまった場合、無理に剥がしても、粘着剤含有ポリエステル繊維不織布面が破壊されることがない。
そのため、本発明の支持体は、例えば、薬物を含有する粘着剤を支持して、貼付剤(例えば、パップ剤、プラスター剤、テープ製剤等)を形成するための支持体、化粧用ゲル又は化粧液を支持して、顔面パック材を形成するための支持体、として好適に使用することができる。
本発明の貼付剤は前述のような支持体のポリエステル繊維不織布側に、薬物を含有する粘着剤を備えているため、薬物を含む粘着剤が流れ出しにくいものである。また、ポリエステルフィルムとポリエステル繊維不織布との剥離が生じにくいため、貼付剤剥離時に、ポリエステル繊維と一緒に粘着剤が皮膚に残留しにくい貼付剤である。更に、薬剤吸着や変色が生じにくい貼付剤である。
本発明の貼付剤は前述のような支持体を用いていること以外は、従来の貼付剤と全く同様であることができる。
例えば、薬物は経皮吸収性を有するものが好ましく、局所性薬物や全身性薬物のいずれであっても良い。より具体的には、コルチコステロイド類、鎮痛消炎剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌剤、抗真菌剤、ビタミン剤、冠血管拡張剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、性ホルモン、抗鬱剤、脳循環改善剤、制吐剤、抗腫瘍剤、生体医薬などの薬物を例示でき、これら薬物を1種類、又は2種類以上を併用することができる。
また、粘着剤として、例えば、アクリル系重合体からなるアクリル系粘着剤;スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のゴム系粘着剤;シリコーンゴム、ジメチルシロキサンベース、ジフェニルシロキサンベース等のシリコーン系粘着剤;ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系粘着剤;酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル系粘着剤;ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、ジメチルフタレート等のカルボン酸成分とエチレングリコール等の多価アルコール成分からなるポリエステル系粘着剤等を例示することができ、粘着剤は1種類、又は2種類以上から構成されていても良い。
なお、薬物の粘着剤における含有量は、薬物の種類や投与目的によって異なるため、特に限定するものではないが、一般的には、薬物は粘着剤中の0.5〜40mass%を占めているのが好ましく、1〜30mass%を占めているのがより好ましい。
本発明の貼付剤は、前述の支持体のポリエステル繊維不織布面に対して、薬物を含有する粘着剤溶液を塗布し、乾燥する方法、離型紙上に粘着剤溶液を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した後に、粘着剤層を前述の支持体のポリエステル繊維不織布面に転写する方法、によって製造することができる。
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は次の実施例に限定されるものではない。
(比較例1、実施例1〜3)
厚さ12μm、目付16.8g/m2の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
また、延伸ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度:1.45dtex、繊維長:38mm)のみを、カード機により開繊し、たて方向に配向したパラレルウエブを形成した。続いて、前記パラレルウエブを、90メッシュのポリエステル製綾織ネットで搬送しながら、ノズル1本あたりの平均水圧9.0MPaで水流絡合し、温度110℃で乾燥して、延伸ポリエチレンテレフタレート繊維の水流絡合不織布を形成した。なお、水流絡合不織布の目付を15g/m2、20g/m2、25g/m2、30g/m2とし、順に、比較例1、実施例1、実施例2、実施例3の水流絡合不織布とした。
更に、未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度:4dtex、繊維長:38mm)と延伸ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度:1.1dtex、繊維長:38mm)とを、質量比60:40の割合で混綿し、フラットカード機を用いて、目付6g/m2の繊維ウエブ(平均繊度:1.9dtex、平均繊維長:38mm)を形成した。
次いで、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムと水流絡合不織布とを、繊維ウエブを介して積層した状態で、温度215℃に加熱した金属ロールと弾性ロールとの間(線圧:200N/cm)を、10m/分の速度で通過させる熱カレンダー処理により、繊維ウエブ中の未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維を可塑化変形させ、結晶化させると共にポリエチレンテレフタレートフィルムと水流絡合不織布とを接着して、それぞれ支持体を製造した。これら支持体の物性は表1に示す通りであった。
(実施例4)
ポリエチレンテレフタレート(融点:250℃)/共重合ポリエステル(融点:230℃)の組み合わせで、繊維断面においてサイドバイサイド型に配置した潜在捲縮性繊維(繊度2.2dtex、繊維長51mm)のみを、カード機により開繊し、たて方向に配向したパラレルウエブを形成した。
続いて、前記パラレルウエブを、90メッシュのポリエステル製綾織ネットで搬送しながら、ノズル1本あたりの平均水圧2.5MPaで水流絡合して、水流絡合ウエブを形成した。次いで、水流絡合ウエブを温度110℃で乾燥した後、よこ方向を規制することなく、たて方向にオーバーフィードしつつ、ネットで搬送する水流絡合ウエブに対して、熱風ドライヤーによる温度175℃での熱処理を行うことによって、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させるとともに収縮させ(面積収縮率:59.1%)、延伸ポリエチレンテレフタレート潜在捲縮繊維が捲縮を発現した水流絡合不織布(目付:30g/m2)を形成した。
そして、この水流絡合不織布を使用したこと以外は実施例1〜3と全く同様に、ポリエチレンテレフタレートフィルムと繊維ウエブを介して積層し、熱カレンダー処理を行って、支持体を製造した。この支持体の物性は表1に示す通りであった。
(比較例2)
実施例1〜3と同じ2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
また、未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度:4dtex、繊維長:38mm)と延伸ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度:1.0dtex、繊維長:38mm)とを、質量比40:60で混綿し、カード機により開繊し、目付30g/m2の繊維ウエブ(平均繊度:1.4dtex、平均繊維長:38mm)を作製した。
続いて、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムと繊維ウエブとを積層した状態で、温度205℃に加熱した金属ロールと弾性ロールとの間(線圧:200N/cm)を、10m/分の速度で通過させる熱カレンダー処理により、未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維を可塑化変形させ、結晶化させると共にポリエチレンテレフタレートフィルムと接着して、支持体を製造した。この支持体の物性は表1に示す通りであった。
(比較例3)
実施例1〜3、比較例1〜2と同じ2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
また、目付を50g/m2としたこと以外は実施例1〜3と同様にして、水流絡合不織布を製造した。
次いで、ドライラミネート方式(条件:テンポ20m/分、ニップ圧3kg/cm2、ニップ温度50℃)により、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面の全面に塗布した2液反応型のウレタン系溶剤型接着剤によって、水流絡合不織布と接着一体化し、支持体を製造した。この支持体の物性は表1に示す通りであった。
(支持体の評価)
(1)粘着剤の流れ出し性の評価;
<評価方法>
次の配合により、高粘度の擬似膏体と低粘度の擬似膏体とを、それぞれ調製した後、乾燥後の厚さが100μmとなるように、ライナーフィルムに塗膏し、粘着剤層をそれぞれ形成した。
(高粘度の擬似膏体)
スチレン/イソプレン/スチレン系ゴム:1.5wt%
ポリイソブチレン:8wt%
水添ロジンエステル:10wt%
流動パラフィン:13.5wt%
トルエン:67wt%
(低粘度の擬似膏体)
スチレン/イソプレン/スチレン系ゴム:3.5wt%
ポリイソブチレン:7.5wt%
水添ロジンエステル:5.5wt%
流動パラフィン:16.5wt%
トルエン:67wt%
続いて、前記各粘着剤層を、プレス圧0.5kg/cm2、プレス温度90℃で支持体の繊維を含む層側(例えば、水流絡合不織布層側)に転写した後、1cm角に切り出してそれぞれ試験片を調製した。
そして、試験片に3g/cm2の荷重を掛けた状態で、温度60℃で24時間のエイジングを行った後、各試験片における粘着剤層の状態を観察し、次の評価基準で評価した。これらの結果は表1に示す通りであった。
<評価基準>
◎:試験片の4辺に、はみ出しが全くない
○:試験片の4辺のうち、1辺のみ点状に、はみ出している
△:点状以外(例えば線状)に、はみ出しているが、はみ出しの程度がはみ出した辺から2mm以内
×:点状以外(例えば線状)に、はみ出しており、はみ出しの程度がはみ出した辺から2mmを超える
(2)薬剤吸着の評価;
<評価方法>
各支持体を裁断し、7cm角の試験片を調製した。
次いで、薬効成分として、ケトプロフェンを含有する市販の消炎鎮痛用貼付薬の粘着剤面と、前記各試験片の繊維を含む層側(例えば、水流絡合不織布層側)の面とを密着させた状態でアルミパックに密封した。この粘着剤面と各試験片の大きさは同じであり、互いに、はみ出る部分がない状態とした。
このアルミパックを50℃の温度条件で10日間静置した後、貼付薬と試験片とを分離した。その後、貼付薬と試験片の各々をメタノールにて薬効成分を抽出した。そして、これら各抽出液に関して、液体クロマトグラフィーにて、下記測定条件で、貼付剤側における薬効成分の濃度(Cp)とサンプル側における薬効成分の濃度(Cs)を測定し、次の計算式から、単位面積当たりの薬物吸着率(=Ad、単位:%)を算出した。
Ad=[Cs/(Cp+Cs)]×100
(測定条件)
使用カラム:『CAPCELL PAK C18 UG120S5』
(内径4.6mm×長さ250mm;(株)資生堂製、商品名)
移動相:CH3CN/H2O=60/40(pH2.2、リン酸調整)
フローレート:1.0mL/分
実施温度:40℃
検出:230nm(UVディレクターによる)
これらの結果は表1に示す通りであった。
(3)剥離性の評価
<評価方法>
各支持体の両面に、50mm幅のクラフトテープ(品名:日東テープNo.712)を、各支持体のたて方向に貼付した後、50mm幅×250mm長の長方形に裁断し、試験片を調製した。
次いで、試験片の一端から8cm程度、繊維を含む層(例えば、水流絡合不織布層側)とクラフトテープとの間を引き剥がした後、この引き剥がした部分を、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン)のチャック間(100mm)に固定し、速度200mm/分で引張ることにより支持体とクラフトテープとを引き剥がし、この時の剥離力の最大点荷重を測定した。この測定を3枚の試験片について行い、最大点荷重を算術平均して、剥離強さとした。これらの結果は表1に示す通りであった。なお、比較例3の支持体から調製した試験片について、剥離強さを測定しようとしたが、試験片のフィルムが破断してしまい、測定不可能であった。
表1の実施例1〜3と比較例1との結果から、繊維の層の厚さが100μm以上であることによって、粘着剤が流れ出しにくいことがわかった。そのため、粘着剤が包装体の内面に粘着しにくいため、貼付剤を取り出しやすく、また、充分な薬効作用を奏することのできる貼付剤を製造できることが推測できた。
また、実施例4と実施例3との結果から、潜在捲縮性繊維を含有していることによって、更なる厚さアップが可能であり、また、厚くても柔軟性に優れる支持体を製造できることがわかった。
更に、実施例3と比較例2との結果から、ポリエステル繊維不織布とは別の未延伸ポリエステル繊維を含む繊維ウエブによってポリエステルフィルムと接着していることによって、接着に関与する未延伸ポリエステル繊維を偏在させることができる結果、柔軟で曲げやすく、違和感を感じにくい貼付剤を製造できることがわかった。
更に、実施例3と比較例3との結果から、接着剤を使用せず、未延伸ポリエステル繊維の変形により接着すると、薬剤を吸着しにくいため、薬効作用を効果的に発揮できる貼付剤を製造できることがわかった。