以下、添付図面を参照しながら、MRI装置およびMRI方法の実施形態について説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
<第1の実施形態>
第1の実施形態は、「脊椎の椎間板撮像」を例としたプレサチュレーションパルスの印加領域の設定の自動化に関するものである。
図1は、第1の実施形態におけるMRI装置20の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、MRI装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石22と、静磁場用磁石22の内側において軸を同じにして設けられた筒状のシムコイル24と、傾斜磁場コイル26と、RFコイル28と、制御系30と、被検体Pが乗せられる寝台32とを備える。ここでは一例として、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸について、鉛直方向をY軸方向として説明する。また、寝台32は、その天板の載置用の面の法線方向がY軸方向となるように配置されているものとし、静磁場用磁石22およびシムコイル24の軸方向をZ軸方向とする。
制御系30は、静磁場電源40と、シムコイル電源42と、傾斜磁場電源44と、RF送信器46と、RF受信器48と、シーケンスコントローラ50と、コンピュータ52とを備える。
傾斜磁場電源44は、X軸傾斜磁場電源44xと、Y軸傾斜磁場電源44yと、Z軸傾斜磁場電源44zとで構成されている。また、コンピュータ52は、演算装置60と、入力装置62と、表示装置64と、記憶装置66とで構成されている。
静磁場用磁石22は、静磁場電源40に接続され、静磁場電源40から供給された電流により撮像空間に静磁場を形成させる。シムコイル24は、シムコイル電源42に接続され、シムコイル電源42から供給される電流により、この静磁場を均一化する。静磁場用磁石22は、超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源40に接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。なお、静磁場電源40を設けずに、静磁場用磁石22を永久磁石で構成してもよい。
傾斜磁場コイル26は、X軸傾斜磁場コイル26xと、Y軸傾斜磁場コイル26yと、Z軸傾斜磁場コイル26zとで構成され、静磁場用磁石22の内側で筒状に形成されている。X軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zはそれぞれ、傾斜磁場電源44のX軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zに接続される。
そして、X軸傾斜磁場電源44x、Y軸傾斜磁場電源44y、Z軸傾斜磁場電源44zからX軸傾斜磁場コイル26x、Y軸傾斜磁場コイル26y、Z軸傾斜磁場コイル26zにそれぞれ供給される電流により、X軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzが撮像空間にそれぞれ形成される。
RF送信器46は、シーケンスコントローラ50から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすためのRFパルスを生成し、これを送信用のRFコイル28に送信する。RFコイル28には、ガントリに内蔵されたRFパルスの送受信用の全身用コイル(WBC:whole body coil)や、寝台32または被検体Pの近傍に設けられるRFパルスの受信用の局所コイルなどがある。
送信用のRFコイル28は、RF送信器46からRFパルスを受けて被検体Pに送信する。受信用のRFコイル28は、被検体Pの内部の原子核スピンがRFパルスによって励起されることで発生したMR信号を受信し、このMR信号は、RF受信器48により検出される。
RF受信器48は、検出したMR信号に所定の信号処理およびA/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化された複素データである生データ(raw data)を生成し、生成したMR信号の生データをシーケンスコントローラ50に入力する。
演算装置60は、MRI装置20全体のシステム制御を行うものであり、これについては後述の図2を用いて説明する。
シーケンスコントローラ50は、演算装置60の指令に従って、傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させるために必要な制御情報を記憶する。ここでの制御情報とは、例えば、傾斜磁場電源44に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報である。
シーケンスコントローラ50は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源44、RF送信器46およびRF受信器48を駆動させることにより、X軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場GzおよびRFパルスを発生させる。また、シーケンスコントローラ50は、RF受信器48から入力されるMR信号の生データを受けて、これを演算装置60に入力する。
図2は、図1のコンピュータ52の詳細、特に演算装置60の詳細を示す機能ブロック図である。図2に示すように、演算装置60は、MPU(Micro Processor Unit)80と、条件記憶部82と、撮像条件設定部84と、画像処理条件設定部86と、表示制御部88と、画像再構成部90と、画像処理部92と、システムバス94とを備える。
MPU80は、撮像条件の設定、撮像動作および撮像後の画像処理において、システムバス94を介してMRI装置20全体のシステム制御を行う。
入力装置62は、撮像条件や画像処理条件を設定する機能を操作者に提供する。また、入力装置62は、撮像条件の決定後、操作者により入力された撮像開始または撮像中断などの制御指示をMPU80に入力する。
条件記憶部82は、撮像条件と画像処理条件とを記憶するものである。
撮像条件設定部84は、システムバス94を介して過去の撮像における撮像条件を条件記憶部82から取得し、入力装置62を介して操作者による撮像条件の設定を受け付ける。また、撮像条件設定部84は、操作者の入力により変更された撮像条件を条件記憶部82に記憶させる。
さらに撮像条件設定部84は、後述の画像処理部92が行う「領域抽出処理」の結果に基づいて、「プレパルス領域算出処理」を行う。この点が本実施形態の大きな特徴の1つであり、これによりプレサチュレーションパルスの印加領域が決定される。
上記の「領域抽出処理」および「プレパルス領域算出処理」については、後述の図8以下の説明において詳細を述べる。
画像処理条件設定部86は、システムバス94を介して過去の画像処理条件を条件記憶部82から取得し、入力装置62を介して操作者による画像処理条件の設定を受け付ける。また、画像処理条件設定部86は、操作者の入力により設定された画像処理条件を条件記憶部82に記憶させる。
画像再構成部90は、シーケンスコントローラ50から入力されるMR信号の生データに公知の2次元フーリエ変換等の処理を施して、被検体Pの各スライスのMR画像の画像データを生成する。画像再構成部90は、生成した画像データを画像処理部92に入力する。
画像処理部92は、条件記憶部82に記憶された画像処理条件に従って、入力された画像データに画像処理を施し、画像処理後の画像データを記憶装置66に記憶させる。また、画像処理部92は、例えば位置決め画像の撮像により得られた画像データ等に基づいて、臓器や背骨などの被検体Pの体内の特定組織の領域を抽出する領域抽出処理を行う。この点も本実施形態の大きな特徴の1つである。
記憶装置66は、画像データベースとして機能するものであり、画像再構成部90により生成された後に画像処理部92により画像処理が施された画像データと、そのMR画像を撮像するのに用いた撮像条件および患者情報とを関連づけて記憶する。また、記憶装置66は、MPU80の指令に従って、画像処理部92や表示制御部88に画像データを送信する。
表示制御部88は、条件記憶部82に保存されている撮像条件および画像処理条件を表示装置64に表示させると共に、記憶装置66に保存されている画像データをMR画像として表示装置64に表示させる。また、表示制御部88は、条件記憶部62に記憶されている撮像条件または画像処理条件に変更があった場合には、最新の撮像条件および画像処理条件を表示装置64に表示させる。
図3は、脊椎の撮像時に用いられる位置決め画像の例としての冠状面(Coronal Plane)の断面像を示す模式図であり、図4は、脊椎の撮像時に用いられる位置決め画像の例としての矢状面(Sagittal Plane)の断面像を示す模式図である。図3、図4において、外側の四角い枠は関心領域を含む撮像スライスの外縁100、102をそれぞれ示し、その内側の実線部分は被検体Pの体表境界線104を示し、点線部分は被検体Pの体内組織の輪郭106を示す。
図5は、脊椎および体表の境界情報の例としてのCoronal断面像を示す模式図であり、図6は、脊椎および体表の境界情報の例としてのSagittal断面像を示す模式図である。
図5では、被検体Pの体表境界線104を実線で示し、背骨の輪郭108を点線で示す。図6では、腹側体表境界線120および背中側体表境界線122を実線で示し、腹側脊椎境界線124および背中側脊椎境界線126を点線で示す。
図7は、プレサチュレーションパルスの印加領域の決定方法を示すSagittal断面像の模式図であり、決定方法の時系列順に(1)〜(4)としたものである。
図7(1)は脊椎および体表の境界線の抽出後を示し、図7(2)はプレサチュレーションパルスの印加領域の向きの決定後を示し、図7(3)は腹側体表境界線120に接触する直線134の決定後を示し、図7(4)はプレサチュレーションパルスの印加領域の厚みの決定後を示す。
図7(1)〜(4)において、最も外側の四角い枠は表示装置64に表示される位置決め画像の外縁116を示し、図7(2)、(3)において太い実線で示した四角い枠は、関心領域を含む(位置決めした)撮像スライスの外縁128を示す。
なお、図7(4)では煩雑となって他の要素が見づらくなるので、撮像スライスの外縁128を省略している。また、図7(2)〜(4)における符号130、132、134、136、138で示される直線の意味については、次の図8を用いながら、MRI装置20の動作として説明する。
図8は、第1の実施形態のMRI装置20の動作を示すフローチャートである。以下、適宜図1、図2、図5〜図7を参照しながら、図8に示すフローチャートに従って、MRI装置20の動作を説明する。
[ステップS1]入力装置62(図1参照)を介して、操作者により撮像目的が指定される。本実施形態では一例として、「脊椎の椎間板撮像」と指定されるものとする。
撮像条件設定部84(図2参照)は、撮像条件として「脊椎」を条件記憶部82に記憶させると共に、「脊椎の椎間板撮像」として過去に用いられた撮像条件を条件記憶部82から取得し、これを表示制御部88に入力する。表示制御部88は、「脊椎の椎間板撮像」として過去に用いられた撮像条件の例を表示装置64に表示させる。
操作者は、この表示内容を参考に自ら撮像条件を編集できるが、何も入力がない場合、撮像条件設定部84は、撮像スライスの位置決めに用いるMR画像(以下、位置決め画像という)としてCoronal断面像およびSagittal断面像を撮像するように設定する。ここでは撮像目的として「脊椎の椎間板撮像」が指定されているため、Axial断面像(横断面)よりも、Coronal断面像およびSagittal断面像の方が一般に位置決めに適しているからである。
[ステップS2]入力装置62を介して操作者により撮像開始が指示されると、MRI装置20により位置決め画像の撮像が行われる。これにより、シーケンスコントローラ50からMR信号の生データが画像再構成部90に入力され、画像再構成部90は、この生データに2次元フーリエ変換等の処理を施して位置決め画像の画像データを生成し、これを画像処理部92に入力する。画像処理部92は、条件記憶部82に記憶された画像処理条件に従って、入力された画像データに所定の画像処理を施し、画像処理後の画像データを記憶装置66に一旦記憶させる。
[ステップS3]画像処理部92は、記憶装置66から位置決め画像の画像データを取得して、この画像データに基づいて脊椎および体表の境界線の位置を抽出する領域抽出処理を行う。
より詳細には、画像処理部92は、ステップS2で生成されたCoronal断面像およびSagittal断面像の画像データに対して、例えばメディアンフィルタや収縮処理(Erosion)によるノイズ除去処理を施す。
次に、画像処理部92は、ノイズ除去後の画像データに対し、閾値処理を施すことで空気の部分と脊椎の部分とを抽出したマスク画像を取得する。一般に、MR画像における空気や骨の領域は、水を殆ど含まないゆえに水素原子が少ないから、低信号領域として(MR画像としては黒く)写るため、隣接する他の組織の領域と識別できるからである。
次に、画像処理部92は、画像の外縁部の低信号部分(黒い領域)と連結している部分を空気領域とみなした空気マスク像と、空気領域以外の低信号部分を脊椎領域とみなした脊椎マスク像とを作成する。次に、画像処理部92は、位置決め画像の画像データに対して、微分フィルタを用いたエッジ抽出処理をする。画像処理部92は、このエッジ抽出結果と、上記の空気マスク像および脊椎マスク像とを組み合わせることで、脊椎の境界線位置を抽出する(図5、図6参照)。
また、画像処理部92は、空気マスク像の外縁を空気と身体組織との境界線、即ち、体表の境界線として取得する。画像処理部92は、このようにして抽出した脊椎および体表の境界線情報を記憶しておくと共に、撮像条件設定部84に入力する。
また、画像処理部92は、Axial断面像の位置決めのために、Coronal断面像およびSagittal断面像の画像データに基づいて、椎骨と椎間板の選り分け処理を行う。
この選り分け処理には、例えば、椎骨と椎間板の形状、大きさ等を含む標準的な人体の骨格モデルに基づいて撮像画像とテンプレートマッチングを行う、といった従来技術の画像処理を用いればよい。画像処理部92は、このようにして選り分けた椎骨と椎間板の境界線情報を記憶しておくと共に、撮像条件設定部84に入力する。
[ステップS4]撮像条件設定部84は、本スキャンの撮像の位置決めを行う。脊椎のSagittal断面の撮像領域については、Coronal断面の位置決め画像に対してFOV(Field Of View:実視野)が直交するように位置決めする。
また、この脊椎のSagittal断面の撮像領域における位相エンコード方向については、Coronal断面の位置決め画像から抽出した脊椎の延在方向に対して平行とし、足から頭に向かう方向を正方向として設定する。
また、撮像条件設定部84は、Sagittal断面の位置決め画像から抽出された脊椎領域を参照し、脊椎領域を覆うように、画像処理条件として設定されているマージンを脊椎領域に加えたFOVを設定する。撮像条件設定部84は、脊椎の中心を通るSagittal断面を撮像するため、抽出された脊椎領域の中心位置に撮像スライスの中心が通るように、複数スライスを撮像するように設定する。
また、撮像条件設定部84は、各椎間板の断面を撮像するため、ステップS3で取得した椎骨と椎間板の境界線情報に基づいて、椎間板の中心に撮像スライスの中心が合うように椎間板のAxial断面像の位置決めをし、そのスライス数は例えば3枚に設定する。
上記の撮像条件の設定結果は、条件記憶部82に記憶され、また、表示制御部88によって表示装置64に表示される。なお、操作者は、必要に応じて、入力装置62を介して、手動で撮像条件の設定を調整してもよい。
[ステップS5]ステップS5、S6において撮像条件設定部84は、プレパルス領域算出処理を行うが、このステップS5ではプレサチュレーションパルスの印加領域の向きを算出し、次のステップS6でその厚みを算出する。なお、脊椎の撮像におけるプレサチュレーションパルスは、腹部の体動によるアーチファクトの軽減の目的がある。
具体的には、撮像条件設定部84は、ステップS3で取得したSagittal断面像における脊椎および体表の境界線情報と、MR画像に対する体位方向の情報とに基づいて、Sagittal断面像における腹側と背中側を識別する。
これにより、2本の体表の境界線のいずれが腹側体表境界線120(または背中側体表境界線122)であるかを決定する。同様にして、腹側脊椎境界線124と、背中側脊椎境界線126とを決定する(図7(1)参照)。なお、MR画像に対する体位方向の情報については、一般には各MR画像の撮像時に入力される撮像条件であるため、条件記憶部82から取得できる。
次に、撮像条件設定部84は、図7(2)に示すように、撮像スライスの外縁128の内側における腹側脊椎境界線124を線形近似した直線130を算出する。
ここでの線形近似には、例えば腹側脊椎境界線124を2次元座標系の多数のプロットに置換後に、最小二乗法を適用するなどの公知の手法を用いればよい。
なお、腹側脊椎境界線124における、撮像スライスの外縁128からはみ出ている部分については、直線130の算出において考慮しない。撮像条件設定部84は、この直線130の方向をプレサチュレーションパルスの印加領域の向きとして暫定的に決定する。
[ステップS6]撮像条件設定部84は、プレサチュレーションパルスの印加領域の厚みを算出するため、図7(2)に示すように、直線130に平行であって、かつ、撮像スライス範囲内の腹側脊椎境界線124に腹側から外接する直線132を算出する。
次に、撮像条件設定部84は、図7(3)に示すように、直線132に平行であって、かつ、撮像スライスの外縁128内の腹側体表境界線120に対して腹よりも外側から接触する直線134を算出する。なお、腹側体表境界線120における、撮像スライスの外縁128からはみ出ている部分については、直線134の算出において考慮しない。
次に、撮像条件設定部84は、図7(4)に示すように、画像処理条件の一つとして設定されたマージン(脊椎境界線からプレサチュレーションパルスの印加領域端までの幅)だけ、直線132を腹側に平行移動した直線136(図では一点鎖線で示した)を算出する。
このマージンについては、以下の2点を考慮した上で、予め適切な値(例えば10mm、20mm、脊椎幅の1/3等)を設定しておけばよい。第1には、このマージンが小さすぎると、被検体Pが少しでも動いた場合に、関心領域である脊椎領域からのMR信号もプレサチュレーションパルスによって抑制されてしまう点である。第2には、マージンが大きすぎると、関心領域以外における体動アーチファクトを抑制する効果が小さくなってしまう点である。
次に、撮像条件設定部84は、図7(4)に示すように、画像処理条件の一つとして設定されたマージンだけ、直線134を腹よりも外側に(撮像スライスの外縁128側に)平行移動した直線138(図では一点鎖線で示した)を算出する。ここでのマージンは、プレサチュレーションパルスの印加領域の端から腹側体表境界線120までの幅に該当する。
直線136と直線138との間隔がプレサチュレーションパルス領域の厚みとなる。即ち、撮像条件設定部84は、直線136、138で挟まれた領域をプレサチュレーションパルスの印加領域として暫定的に決定し、この印加領域を撮像条件として、条件記憶部82に記憶させる。このようにして自動的に算出されたプレサチュレーションパルスの印加領域は、表示制御部88によって例えば図7(4)のように表示装置64に表示される。
ここで、操作者は、表示されたプレサチュレーションパルスの印加領域の向きや幅について、必要に応じて入力装置62を介して変更(調整)できる。プレサチュレーションパルスの印加領域に関する操作者の入力がない場合、撮像条件設定部84は、上記のように自動算出された(暫定的に決定された)印加領域を、プレサチュレーションパルスの印加領域として最終的に決定する。
なお、上記のように自動算出されたプレサチュレーションパルスの印加領域を操作者の確認のために表示することなく、自動算出された印加領域を最終的な印加領域として自動決定してもよい。
[ステップS7]以上のように最終決定された撮像条件に従って撮像が行われる。即ち、直線136、138に挟まれた領域にプレサチュレーションパルスを印加後、画像データ収集用のRFパルス等を印加し、被検体PからのMR信号をRF受信器48により検出する。
シーケンスコントローラ50は、MR信号の生データを画像再構成部90に入力し、画像再構成部90は、この生データに所定の処理を施して画像データを生成し、これを画像処理部92に入力する。
画像処理部92は、入力された画像データに所定の画像処理を施し、画像処理後の画像データを記憶装置66に記憶させる。また、この画像処理後の画像データは、表示制御部88により表示装置64に表示される。
以上が第1の実施形態のMRI装置20の動作説明である。
このように第1の実施形態では、体動アーチファクトやフローアーチファクトの低減のためのプレサチュレーションパルスの印加領域に関わる撮像条件は、MRI装置20によって自動的に算出される。これにより、操作者による撮像条件の設定の負担は軽減される。この結果、MRI装置20を用いた検査のスループットを向上できる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、脊椎の椎間板撮像においてプレサチュレーションパルスの印加領域を自動算出する点で第1の実施形態と同様であるが、以下の点で第1の実施形態とは異なる。
即ち、第2の実施形態では、ダイナミック撮像(同じ断面に対し、時相を変えて複数の撮像を行う手法)により得られた各時相の画像データに対してそれぞれ、第1の実施形態と同様に直線136、138(プレサチュレーショパルスの印加領域端に該当)を算出する。そして、直線136、138の間隔(プレサチュレーショパルスの印加領域の厚みに該当)が最大となる時相の画像データにおける直線136、138の間の領域を、プレサチュレーションパルスの印加領域として(暫定的に)決定する。
第2の実施形態は、装置構成としては図1、図2に示した第1の実施形態のMRI装置20と同様であるので構成図を省略し、MRI装置の符合も第1の実施形態と同じく20とする。
図9は、ダイナミック撮像により呼吸位相を変えて得られた各Sagittal断面像に対して、第1の実施形態と同様に直線136、138を求めた模式図であり、図中の横軸は経過時間tを示す。
この例では、時刻t1において腹部の厚みは最大となるために、プレサチュレーショパルスの印加領域の厚みに該当する直線136、138の間隔も最大値(d1)となり、時刻t2において直線136、138の間隔が最小値(d2)となる場合を示す。
図10は、第2の実施形態におけるMRI装置20の動作をフローチャートである。以下、図10に示すフローチャートに従い、第1の実施形態との違いに焦点を置いて、第2の実施形態のMRI装置20の動作を説明する。
[ステップS1a]入力装置62を介して(図2参照)、撮像目的として「脊椎の椎間板撮像」が操作者により指定されると共に、腹部の体動による体表の位置変化を検出するために「ダイナミック撮像」が指定される。
[ステップS2a]入力装置62を介して操作者により撮像開始が指示されると、MRI装置20により位置決め画像のダイナミック撮像が行われる。そして、画像再構成部90は、撮像された複数の時相の位置決め画像の画像データを生成し、これを画像処理部92に入力する。画像処理部92は、画像処理後の各画像データを記憶装置66に一旦記憶させる。
[ステップS3a]画像処理部92は、記憶装置66から時相を変えた各MR画像の画像データを取得して、これら画像データに基づいて、第1の実施形態のステップS3と同様の手順で脊椎および体表の境界線の位置を抽出する。
画像処理部92は、抽出した脊椎および体表の境界線情報を記憶しておくと共に、撮像条件設定部84に入力する。また、画像処理部92は、第1の実施形態と同様の手順で椎骨と椎間板の選り分け処理を行い、椎骨と椎間板の境界線情報を記憶しておくと共に、撮像条件設定部84に入力する。
[ステップS4a]撮像条件設定部84は、第1の実施形態のステップS4と同様に、本スキャンの撮像の位置決めを行う。
[ステップS5a]撮像条件設定部84は、プレサチュレーションパルスの印加領域の向きを求めるため、第1の実施形態のステップS5と同様にSagittal断面像における腹側脊椎境界線124を線形近似した直線130を算出する(図7参照)。
この腹側脊椎境界線124を線形近似した直線130の算出については、時相を変えた全ての画像の画像データに対して行ってもよいが、いずれかの時相の画像の画像データに対してのみ行ってもよい。呼吸による腹部の体動アーチファクトでは、脊椎自体はそれほど動かないと考えられるためである。
[ステップS6a]撮像条件設定部84は、各時相の画像データに対して、第1の実施形態のステップS6と同様の処理を繰り返し実施することで、プレサチュレーションパルスの印加領域の厚みに該当する直線136、138の間隔をそれぞれ算出する(図9参照)。
次に、撮像条件設定部84は、直線136と直線138との間隔(プレサチュレーションパルス領域の厚み)が最大となる時相の画像データを選択する(図9では時刻t1の時相)。
次に、撮像条件設定部84は、この選択した画像データに対して算出した直線136、138の間の領域をプレサチュレーションパルスの印加領域として暫定的に決定し、この印加領域を撮像条件として条件記憶部82に記憶させる。
このようにして自動的に算出されたプレサチュレーションパルスの印加領域は、表示制御部88によって(例えば図9の左側の画像のように)表示装置64に表示される。
ここで、操作者は、表示されたプレサチュレーションパルスの印加領域の向きや幅について、必要に応じて入力装置62を介して変更(調整)できる。プレサチュレーションパルスの印加領域に関する操作者の入力がない場合、撮像条件設定部84は、上記のように自動算出された(暫定的に決定された)印加領域を、プレサチュレーションパルスの印加領域として最終的に決定する。
なお、上記のように自動算出されたプレサチュレーションパルスの印加領域を操作者の確認のために表示することなく、自動算出された印加領域を最終的な印加領域として自動決定してもよい。
[ステップS7a]以上のように最終決定された撮像条件に従って、第1の実施形態のステップS7と同様に撮像が行われる。
以上が第2の実施形態の動作説明であり、第2の実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、第2の実施形態では、ダイナミック撮像で得られた各時相の画像データに対しプレサチュレーショパルスの印加領域端に相当する直線136、138をそれぞれ算出する。そして、直線136、138の間隔が最大となる時相の画像データにおける直線136、138の間の領域をプレサチュレーションパルスの印加領域として暫定的に決定して表示する。従って、腹部が最も膨らんだ時相(即ち、吸気位相)の画像データに基づいてプレサチュレーションパルスの印加領域を自動的に算出することになるため、呼吸による腹部の体動アーチファクトを確実に抑制できる。
<第3の実施形態>
図11は、第3の実施形態におけるMRI装置20Aの全体構成を示すブロック図である。第1の実施形態との違いは、呼吸同期ユニット150をさらに設けた点である。
この呼吸同期ユニット150は、被検体Pの胸部に当接されて胸郭運動に比例する信号を検知する呼吸センサ(電極)を備える。呼吸同期ユニット150は、この呼吸センサの検知信号から呼吸曲線データを演算することで、被検体Pの呼吸周期の所望期間(例えば呼気期間)に同期させた呼吸同期信号を生成し、この呼吸同期信号をシーケンスコントローラ50に入力する。
なお、呼吸同期ユニット150に代えて、被検体Pの呼吸位置を求めるためのプロジェクションデータの収集用の周波数エンコード用傾斜磁場パルスを印加して呼吸周期を検出する構成としてもよい。
具体的には、時系列の複数のプロジェクションデータをそれぞれリードアウト方向にフーリエ変換することで、呼吸性の動きを示す実空間の複数の投影データを作成する。そして、投影データを参照することにより、各プロジェクションデータが収集されたタイミングにおける被検体Pの心臓等の撮像部位の呼吸による動き量を、ある基準位置に対する撮像部位の相対的な移動量として求めることができる。
基準位置に対する撮像部位の相対的な移動量の求め方としては、例えば、基準位置に対応する投影データと、相対的な移動量を求めようとする投影データとの間における相互相関をとることにより、相対的な位置シフト量を求める方法が挙げられる。
或いは、腹筋の運動を光学的な変量として検知することで呼吸周期を検出するなどの他の構成であってもよい。
或いは、呼吸同期ユニット150に代えて、RMC(real−time motion correction)法を用いて、呼吸周期を検出してもよい。RMCは、アーチファクトの原因となる被検体の体動を、リアルタイムに補正する技術である。
RMCでは例えば、ECG(electrocardiogram)同期を伴ってMPP(motion probing pulse)を収集する。そして、MPPに基づいて測定される動き量を用いて呼吸による動きの影響が除去されるように、リアルタイムにイメージングデータの収集領域や収集されたデータを補正する。
MPPは、例えば横隔膜を含む領域からイメージングデータの位相エンコード量よりも小さい位相エンコード量で、或いは、位相エンコード用傾斜磁場を印加しないで取得される。
そうすると、MPPを1次元フーリエ変換して得られる信号からMPPの収集時刻における体軸方向に関しての横隔膜の位置を呼吸レベルとして検出できる。即ち、息を吸うと横隔膜は体軸方向に足側に下がり、息を吐くと横隔膜は体軸方向に頭側に上がるので、吸気位相、吐気位相をそれぞれ検出できる。従って、所望の呼吸位相に対応するタイミングでのイメージングが可能となる。
そして、呼吸レベルの基準値からの変動量を呼吸による動き量として求めることができる。さらに、呼吸による動き量に相当する移動量だけデータ収集領域を移動させる。これにより呼吸による動きの影響を低減できる。
第3の実施形態におけるMRI装置20Aの動作の流れは、図8を用いて説明した第1の実施形態のものと同様であり、第1の実施形態との違いは以下の3点である。
第1に、ステップS1において、撮像条件として呼吸同期も指定される。
第2に、ステップS2での位置決め画像の撮像前に呼吸同期ユニット150から呼吸同期信号がシーケンスコントローラ50に入力される。MPU80は、シーケンスコントローラ50から呼吸同期信号を取得し、呼吸同期信号に基づいて吸気位相の位置決め画像が撮像される。
第3に、ステップS3では、吸気位相の位置決め画像の画像データに基づいて脊椎および体表の境界線が抽出され、ステップS5、S6では、吸気位相の位置決め画像の画像データに基づいてプレサチュレーションパルスの印加領域が自動算出および決定される。
以上、第3の実施形態においても第1および第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第3の実施形態では呼吸同期信号を用いるので、吸気位相での画像データを取得するために、時相を変えて複数の撮像を行う必要はない。従って、呼吸による腹部の体動アーチファクトを確実に抑制するために吸気位相の画像データに基づいてプレサチュレーションパルスの印加領域を決定する上で、その決定に用いる位置決め画像のスライス数を最小にすることができる。
<第4の実施形態>
第4の実施形態は、腎動脈の撮像を例として、IRパルスおよびプレサチュレーションパルスの2つのプレパルスの印加領域を自動的に算出するものである。第4の実施形態は、装置構成としては図1、図2に示した第1の実施形態のMRI装置20と同様であるので構成図を省略し、MRI装置の符合も第1の実施形態と同じく20とする。
図12は、IRパルスおよびプレサチュレーションパルスの印加領域の算出方法を示す模式図を(1)〜(4)の順に時系列的に並べたものであり、各図において左側はCoronal断面像を、右側はAxial断面像をそれぞれ示す。具体的には、図12(1)は腎臓領域の抽出後を示し、図12(2)は撮像位置決め後を示し、図12(3)はIRパルスの印加領域220の算出後を示し、図12(4)はプレサチュレーションパルスの印加領域224の算出後を示す。図12(1)〜(4)において、体表境界線200は太線で、腎臓領域204は斜線で、腎動脈208は実線で、静脈212は点線で、(関心領域である)撮像領域216は実線の四角い枠で、IRパルスの印加領域220は一点鎖線の四角い枠で、プレサチュレーションパルスの印加領域224は二点鎖線の四角い枠でそれぞれ示す。
図13は、第4の実施形態のMRI装置20の動作を示すフローチャートである。以下、図12を参照しながら、図13に示すフローチャートに従ってMRI装置20の動作を説明する。
[ステップS11]入力装置62を介して、操作者により撮像目的が「腎動脈」と指定される。撮像条件設定部84は、撮像条件として「腎動脈」を条件記憶部82に記憶させると共に、過去に「腎動脈」を撮像したときに用いられた撮像条件を条件記憶部82から取得し、これを表示制御部88に入力する。
表示制御部88は、「腎動脈」の撮像に用いられた撮像条件の例を表示装置64に表示させる。操作者は、この表示内容を参考に自ら撮像条件を編集できるが、何も入力がない場合、撮像条件設定部84は、位置決め画像としてCoronal断面像およびAxial断面像を撮像するように設定する。
[ステップS12]入力装置62を介して操作者により撮像開始が指示されると、MRI装置20により位置決め画像の撮像が行われ、画像再構成部90は、位置決め画像の画像データを生成し、これを画像処理部92に入力する。
画像処理部92は、条件記憶部82に記憶された画像処理条件に従って、入力された画像データに所定の画像処理を施し、画像処理後の画像データを記憶装置66に一旦記憶させる。
[ステップS13]画像処理部92は、記憶装置66から位置決め画像の画像データを取得して、この画像データに基づいて腎臓および体表の境界線の位置を抽出する(図12(1)参照)。
腎臓領域の抽出には、例えば、腎臓や肺などの各臓器の形状、大きさ、臓器間の相対的な位置関係などを含む人体モデルの統計的な情報に基づいて、テンプレートマッチングにより撮像画像と一致する臓器領域を抽出する、といった従来技術の画像処理を用いればよい。画像処理部92は、抽出した腎臓および体表の境界線情報を記憶しておくと共に、撮像条件設定部84に入力する。
[ステップS14]撮像条件設定部84は、本スキャンの撮像領域216の位置決めを行う。
具体的には、腎動脈208のAxial断面における撮像領域216については、Coronal断面の位置決め画像に対してFOVが直交するように位置決めする(図12(2)の右側参照)。
また、Coronal断面における撮像領域216については、Coronal断面像から抽出された腎臓領域204を包含するように、画像処理条件として設定されているマージンを加えてFOVを設定する(図12(2)の左側参照)。
また、この腎動脈のAxial断面像の位相エンコード方向については、被検体Pの前後方向(背中から腹に向かう方向)に設定する。
上述の撮像条件の設定結果は、条件記憶部82に記憶され、また、表示制御部88によって表示装置64に表示される。なお、操作者は、必要に応じて、入力装置62を介して、手動で撮像条件の設定を調整してもよい。
[ステップS15]このステップS15ではIRパルスの印加領域220を自動算出し、次のステップS16でプレサチュレーションパルスの印加領域224を自動算出する。ここでは腎動脈208の撮像であるため、図12(2)の左側のCoronal断面像において、下側(両足側)から静脈212によって撮像領域216に流入する血液のMR信号を抑制することで、撮像領域216内の腎動脈208を流れる血液を効果的に描出することが望まれる。
そのためにまず、撮像領域216全域からその下側に亘ってIRパルスを印加することで、撮像領域216内の腎動脈208を流れる血液の原子核スピンも、下側から静脈212によって撮像領域216に流入する血液の原子核スピンも、縦磁化成分を180°反転させる。
このIRパルスとは別々のタイミングで、撮像領域216の下端からさらに下側に亘って(原子核スピンの縦磁化成分を90°傾ける)プレサチュレーションパルスを印加する。このプレサチュレーションパルスにより、下側から静脈212によって撮像領域216に流入する血液は、原子核スピンが飽和して(縦磁化成分がゼロに近くなり)、そのMR信号が選択的に抑制される。この結果、撮像領域216内の腎動脈208を流れる血液を選択的に描出できる。
そこで、このステップS15において撮像条件設定部84は、ステップS14で決定された撮像領域216の向きに合わせて、IRパルスの印加領域220の厚さ方向をAxial方向(図12(3)の左側のCoronal断面像では、紙面の上下方向)に設定する。
また、撮像条件設定部84は、Coronal断面におけるIRパルスの印加領域220の上端を撮像領域216の上端に合致させると共に、IRパルスの印加領域220の厚さを撮像領域216の例えば2倍に設定する(図12(3)の左側参照)。
ここで「2倍」とした理由は、下側から静脈212によって撮像領域216に流入する血流のMR信号を抑制する上で十分な幅が、経験則的に撮像領域216の厚みの約2倍以上であるという意味であり、本実施形態は特にこの値に限定されるものではない。
IRパルスの印加領域220の厚みについては、下側から静脈212によって撮像領域216に流入する血流のMR信号をどの程度抑制したいかという点から、撮像条件設定部84に適切に設定させればよい。
また、撮像条件設定部84は、Axial断面において関心領域が含まれるようにIRパルスの印加領域220を算出する。ここでは一例として、撮像条件設定部84は、Axial断面におけるIRパルスの印加領域220が撮像領域216に合致するように設定する(図12(3)の右側のAxial断面像では、両者の線が重ならないよう、一点鎖線で示すIRパルスの印加領域220を、実線枠で示す撮像領域216の内側に若干ずらして描画している)。
撮像条件設定部84は、上記のように算出したIRパルスの印加領域220を撮像条件として条件記憶部82に記憶させる。このようにして暫定的に決定されたIRパルスの印加領域220は、表示制御部88によって例えば図12(3)のように表示装置64に表示される。
ここで、操作者は、表示されたIRパルスの印加領域220について、必要に応じて入力装置62を介して変更(調整)できる。IRパルスの印加領域220の印加領域に関する操作者の入力がない場合、撮像条件設定部84は、上記のように自動算出された(暫定的に決定された)印加領域を、IRパルスの印加領域220の印加領域として最終的に決定する。
なお、上記のように自動算出されたIRパルスの印加領域220の印加領域を操作者の確認のために表示することなく、自動算出された印加領域を最終的な印加領域として自動決定してもよい。
[ステップS16]撮像条件設定部84は、プレサチュレーションパルスの印加領域224の厚さ方向を、IRパルスの印加領域220の厚さ方向と同じに設定する。
また、撮像条件設定部84は、プレサチュレーションパルスの印加領域224の厚さを次のように設定する。即ち、Coronal断面において、プレサチュレーションパルスの印加領域224の上端が撮像領域216の下端に合致するように、プレサチュレーションパルスの印加領域224の下端がIRパルスの印加領域220の下端に合致するように設定する(図12(4)の左側のCoronal断面像を参照)。
即ち、本実施形態では一例として、Coronal断面において、互いに隣接する撮像領域216とプレサチュレーションパルスの印加領域224とを合わせた領域が、IRパルスの印加領域220となる。
また、撮像条件設定部84は、Axial断面において関心領域が含まれるようにプレサチュレーションパルスの印加領域224を暫定的に決定する。ここでは一例として、撮像条件設定部84は、Axial断面におけるプレサチュレーションパルスの印加領域224が撮像領域216に合致するように設定する(図12(4)の右側のAxial断面像では、両者の線が重ならないよう、二点鎖線で示すプレサチュレーションパルスの印加領域224を、実線枠で示す撮像領域216の内側に若干ずらして描画している)。
撮像条件設定部84は、上記のように設定したプレサチュレーションパルスの印加領域224を撮像条件として条件記憶部82に記憶させる。このようにして自動算出(暫定的に決定)されたプレサチュレーションパルスの印加領域224は、表示制御部88によって例えば図12(4)のように表示装置64に表示される。
ここで、操作者は、表示されたプレサチュレーションパルスの印加領域224について、必要に応じて入力装置62を介して変更(調整)できる。プレサチュレーションパルスの印加領域224に関する操作者の入力がない場合、撮像条件設定部84は、上記のように自動算出された(暫定的に決定された)印加領域を、プレサチュレーションパルスの印加領域224として最終的に決定する。
なお、上記のように自動算出されたプレサチュレーションパルスの印加領域224の印加領域を操作者の確認のために表示することなく、自動算出された印加領域を最終的な印加領域として自動決定してもよい。
[ステップS17]以上のように決定された撮像条件に従って撮像が行われる。即ち、上記のように決定された各領域(220、224)に対し、IRパルスとプレサチュレーションパルスとが別々のタイミングで印加される。その後、データ収集のRFパルス等が印加される。
これにより、腎動脈208を対象とした撮像領域216のMR画像の画像データが生成されて記憶装置66に記憶される。また、この画像データは、表示制御部88により表示装置64に画像として表示される。
以上が第4の実施形態のMRI装置20Cの動作説明である。
このように第4の実施形態では、プレサチュレーションパルスの印加領域224に加えて、IRパルスの印加領域220もMRI装置20によって自動的に算出される。従って、操作者による撮像条件の設定の負担は大幅に軽減される。この結果、MRI装置20を用いた検査のスループットを大きく向上させることができる。
以上に詳述した各実施形態によれば、MRIにおけるプレパルスに関わる撮像条件の設定を従来よりも容易にすることができる。
<実施形態の補足事項>
[1]第1〜第4の実施形態では、プレサチュレーションパルスやIRパルスの印加領域の自動算出の過程において、位置決め画像を用いる例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。プレサチュレーションパルスやIRパルスの印加領域の算出および決定前に行われるその他の撮像シーケンスで得られたMR画像を印加領域の決定に用いてもよい。
[2]脊椎領域や、腎動脈の撮像において本発明によるプレパルスの印加領域の自動決定法を適用する例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。本発明の実施形態は、心臓などの他の領域を撮像する場合にも適用可能である。
例えば心臓を撮像する場合について説明すると、心臓は、血液を送り出す時相において収縮し、心室に血流が流入してくる時相において膨張する。従って、被検体Pの心拍情報を表すECG(electrocardiogram)信号を取得するECGユニットを設けて、心臓が最も膨張した時相を検出し、その時相の画像データに基づいて心臓領域を抽出し、心臓ならびに大血管のフローアーチファクトを抑制するようにプレパルスの印加領域を自動決定してもよい。
或いは、撮像目的によっては、心臓が最も収縮した時相の画像データに基づいて心臓領域を抽出し、プレパルスの印加領域を自動決定してもよい。
[3]また、本発明は、例えばt−SLIP(Time Spatial Labeling Inversion Pulse)法における領域選択IRパルスや領域非選択IRパルスの印加領域の自動決定にも適用可能である。
ここでt−SLIP法は、血液のラベリングを行う撮像方法の1つであり、複数のラベリング用パルスを用いるものである。t−SLIP法のパルスシーケンスでは、撮像領域に流入する血液に対して、ASLパルス(Arterial Spin Labeling Pulse)を印加することでラベリングをする。
この後、反転時間(TI:inversion time)後からMR信号のデータ収集を行えば、撮像領域に到達したラベリングされた血液を選択的に描出することができる。
なお、t−SLIP法のパルスシーケンスは、少なくとも領域選択IRパルスを含み、領域非選択IRパルスのオンとオフとを切換可能である。即ち、t−SLIP法のパルスシーケンスは、領域選択IRパルスのみで構成される場合と、領域選択IRパルスおよび領域非選択IRパルスの双方で構成される場合とがある。
[4]第2および第3の実施形態では、吸気位相のときの撮像で得られた画像データに基づいてプレサチュレーションパルスの印加領域を決定する例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。関心領域の場所や撮像目的によっては、吐気位相のときの撮像で得られた画像データに基づいてプレサチュレーションパルスの印加領域を決定してもよい。
[5]請求項の用語と実施形態との対応関係を説明する。なお、以下に示す対応関係は、参考のために示した一解釈であり、本発明を限定するものではない。
腹側体表境界線120や腹側脊椎境界線124などを抽出する画像処理部92(図2参照)と、画像処理部92の抽出結果に基づいてプレサチュレーションパルスやIRパルスの印加領域を自動的に算出および決定する撮像条件設定部84は、請求項記載の算出部の一例である。
腹側体表境界線120は、組織領域の一例である。組織領域とは例えば、体表(体の表面)、骨、血管、臓器などの人体の組織の領域を総称した意味である。
撮像条件設定部84によって自動算出されたプレサチュレーションパルスの印加領域やIRパルスの印加領域を表示する表示制御部88および表示装置64の機能は、請求項記載の表示部の一例である。
[6]本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。