JP6366408B2 - 水素濃度検出素子 - Google Patents
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Description
特許文献1に示された水素センサは、測定極、参照極、及び水素イオン伝導体を備えている。この水素センサは、測定極と参照極との間における電位差によって生じる起電力を利用して、水素濃度を検出するものである。水素イオン伝導体は、水酸化物イオン伝導性を備えた溶融塩電解質からなり、測定極及び参照極に接触するよう両者の間に介在している。
水素透過性金属からなり試料と接触する試料極と、
所定の水素濃度に保たれた標準極と、
上記試料極及び上記標準極に接触した状態で上記試料極及び上記標準極の間に介在する水素イオン伝導体と、を備え、
上記水素イオン伝導体は、溶融塩電解質を除く、水素イオン伝導性を有する電解質からなり、
上記試料極は、パラジウム又はパラジウム合金からなり、該試料極を保持する保持層の表面に形成されており、上記試料極の厚さが1μm以下であり、
上記保持層は、複数の流通孔を備えた多孔質膜を有している、
ことを特徴とする水素濃度検出素子にある。
本発明の第2の態様は、水素透過性金属からなり試料と接触する試料極と、
所定の水素濃度に保たれた標準極と、
上記試料極及び上記標準極に接触した状態で上記試料極及び上記標準極の間に介在する水素イオン伝導体と、を備え、
上記水素イオン伝導体は、溶融塩電解質を除く、水素イオン伝導性を有する電解質からなり、
上記試料極と上記標準極との間に電圧を印加し電流を流すことにより、上記試料極の水素を水素イオンとして離脱させる手段を設けた、ことを特徴とする水素濃度検出素子にある。
上記第2の態様の水素濃度検出素子によれば、上記試料極内の水素を速やかに離脱することができ、これにより、上記水素濃度検出素子によって水素濃度を検出した後、次回の水素濃度を検出するまでの間隔を短縮することができる。
すなわち、溶融塩電解質は、塩を加熱し溶融させたものであり、融点以上の温度において優れたイオン伝導性を有しているが、その一方で融点以下ではイオン伝導性が低下する。そのため、100℃以下の低温の試料における水素濃度を検出する際には、溶融電解質のイオン伝導性が低下した温度領域となり、水素濃度の検出時間が増大する。
上記水素濃度検出素子においては、上述のような特性を有する溶融塩電解質を除く、水素イオン伝導性を備えた電解質を上記水素イオン伝導体として用いている。該水素イオン伝導体を用いることで、100℃以下の低温でも優れたイオン伝導性を発揮し、100℃以下の上記試料の測定の場合においても、試料の水素濃度を速やかに検出することが可能となる。
上記水素濃度検出素子においては、試料極および標準極に水素透過性金属を用いている。該水素透過性金属を用いることで、水素のみに反応して高い精度で水素濃度を検出することが可能となる。
また、上記水素濃度検出素子において、上記水素イオン伝導体としては、例えば、希硫酸、リン酸水溶液、希硝酸、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液等の水素イオン伝導性の電解質を用いることができる。これらの水素イオン伝導体はポリアクリル酸ナトリウム等の高吸水性高分子ポリマー等に吸収させてゲル状にしても良い。特に、上記水素イオン伝導体は、水素イオン伝導性の固体電解質からなることが好ましい。この水素イオン伝導性の固体電解質としては、例えば、スルホン酸基、リン酸基、炭酸基、カルボキシル基、パーフルオロ三級アルコール基、スルホン酸アミド基等を含むものを用いることが好ましい。具体的には、ナフィオン(登録商標)、パーフルオロスルホン酸ポリマー、パーフルオロカルボン酸ポリマー等の水素イオン伝導性の固体電解質を用いることができる。この場合には、万が一、上記水素濃度検出素子が損傷しても、上記水素濃度検出素子の外部に上記水素イオン伝導体の電解質が漏出するのを防止することができる。
上記試料極の厚さは、500nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。上記試料極の厚さを薄くすることにより、上記試料の水素濃度への応答性をさらに向上することができる。また、試料極の厚さが100nm以下の場合には、試料極内の水素の離脱を極めて速やかに行うことができる。これにより、上記試料極における水素の離脱を促進するための手段を、上記水素濃度検出素子から省略することができる。
また、上記保持層によって、上記試料極の厚さが薄くなることで低下する上記試料極の強度を補強することができる。これにより、上記試料極の損傷を防止することができる。この場合、上記保持層の表面に上記試料極を直接成膜してもよい。上記保持層表面への上記試料極の成膜方法として、スパッタ法、メッキ法、蒸着法等を用いることができるがこれに限られるものではない。
パラジウム合金としては、具体的には、Pd−Au(パラジウム−金)、Pd−Ag(パラジウム−銀)、Pd−Pt(パラジウム−白金)、Pd−Cu(パラジウム−銅)等を用いることができる。また、上記パラジウムまたはパラジウム合金には、添加元素として、3族元素、4族元素、5族元素、鉄族元素、白金族元素を微量添加しても良い。添加元素としては、具体的には、Y(イットリウム)、Ho(ホルミウム)、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Ni(ニッケル)、Nb(ニオブ)、V(バナジウム)、Ru(ルテニウム)等を用いることができる。
上記水素検出素子にかかる実施例について、図1及び図2を参照して説明する。
図1に示すごとく、水素濃度検出素子1は、試料における水素濃度を検出するためのものである。水素濃度検出素子1は、水素透過性金属からなり試料と接触する試料極2と、所定の水素濃度に保たれた標準極4と、試料極2及び標準極4に接触した状態で試料極2及び標準極4の間に介在する水素イオン伝導体6とを備えている。水素イオン伝導体6は、溶融塩電解質を除く、水素イオン伝導性を有する電解質からなる。
図1に示すごとく、水素濃度検出素子1の軸方向Xにおける試料極2が配置された側を先端側とし、その反対側を基端側として説明する。
水素濃度検出素子1は、例えば、飲料、食物等、100℃以下の液体状の試料に溶存する水素の濃度を検出可能なものである。尚、液体状の試料としては、ゼリー状等、試料極2が損傷しない程度の固さを有する半液体状のものであってもよい。
標準極4は、水素供給手段7から供給される水素によって水素濃度が一定に保たれている。水素供給手段7は、円筒状のノズル71と、水素ガスが充填されたガスボンベ(図示略)とを備えている。ノズル71は、内側筒部5の内周側に配置されており、ガスボンベから供給された水素ガスをノズル71から標準極4に向かって吹き付けている。本例において、水素供給手段7によって水素を供給された標準極4は、供給される水素分圧に相当する水素ポテンシャルを保った状態にある。内側筒部5内に供給された水素は、内側筒部5とノズル71との間の空隙を通じ、内側筒部5の基端側端部近傍に形成された排出孔(図示略)から排出される。
試料極2は、純パラジウムからなり、厚さは100nmに設定されている。本例の試料極2は、スパッタにより形成されたパラジウム膜を、円形状に切り出した後、保持層21の表面に固体電解質を用いて貼り付けてある。また、試料極2には、導電性を有するリード線22の一端が電気的に接続されている。リード線22の表面は電気絶縁性を有する絶縁層によって覆われている。また、リード線22の他端は、図示しない演算装置及び電源装置と接続されている。
多孔質膜211は、限外ろ過膜(UF膜)からなる。この多孔質膜211に、溶媒に溶解させた固体電解質を塗布することで多孔質膜211の表面が固体電解質によって覆われる。また、溶媒が揮発した後、固体電解質が試料極2を多孔質膜211に保持するための接着剤の役割を果たす。尚、多孔質膜211としては、限外ろ過膜(UF膜)以外にも多孔質セラミックスや不織布等を用いることができる。
一方、標準極4側では、供給される水素が標準極4を透過し、水素イオン伝導体6と標準極4との界面まで到達する。これにより、平衡状態においては、水素イオン伝導体6と標準極4の界面は、水素供給手段によって供給される水素ガスの水素分圧と同等の水素分圧を有している。つまり、標準極4における水素イオン伝導体6側の界面の水素分圧と、水素供給手段7によって供給される水素ガスの水素分圧とは部分平衡状態にある。
水素濃度検出素子1において、水素イオン伝導体6は、溶融塩電解質を除く水素イオン伝導性を有する電解質からなる。そのため、100℃以下の試料であっても、水素濃度を、速やかに検出することができる。
本確認試験は、図4〜図9に示すごとく、3つの水素濃度検出素子1、100、101、102における水素濃度の検出時間を比較したものである。
図4に示すごとく、水素濃度検出素子1、100は、保持層21を多孔質膜211のみによって構成しており、多孔質膜211の表面に試料極2が形成されている。水素濃度検出素子1において、試料極2は、純パラジウムからなり厚さは100nmである。また、水素濃度検出素子100において、試料極2は、純パラジウムからなり厚さは400nmである。その他の構成は実施例1と同様である。
水素濃度検出素子101において、試料極2は、純パラジウムからなり厚さは5μmである。また、水素濃度検出素子102において、試料極2は、純パラジウムからなり厚さは25μmである。水素濃度検出素子101、102において、試料極2は、圧延加工により形成されており多孔質膜211は備えられていない。その他の構成は実施例1と同様である。
本確認試験に用いられる試料は、20℃の純水中に水素を吹き込み、水素濃度を飽和させた水素水である。
水素濃度検出素子1、100、101、102の試料極2をそれぞれ試料中に浸漬することで、試料極2に生じる起電力と、この起電力が低下収束するまでの検出時間とを計測した。尚、水素濃度検出素子1、100、101、102は、試験実施前に大気中において、試料極2の水素を離脱した状態にある。
図6に示すごとく、水素濃度検出素子1における検出時間t1は約45秒であった。
図7に示すごとく、水素濃度検出素子100における検出時間t2は約100秒であった。また、図8に示すごとく、水素濃度検出素子101における検出時間t3は約180秒であった。また、図9に示すごとく、水素濃度検出素子102における検出時間t3は約4000秒であった。このように、試料極2の厚さが薄くなるにつれて、検出時間が短縮されることが確認された。したがって、試料極2の厚さを薄くすることで、試料中の水素濃度を速やかに検出することができる。
本例は、図10に示すごとく、実施例1の水素濃度検出素子における構成を一部変更したものである。
本例の水素濃度検出素子103においては、内側筒部5を先端側の位置に配置することにより、標準極4を保持層21における電解質膜212に当接させている。つまり、電解質膜212が水素イオン伝導体6を兼ねている。外側筒部3の内側には、電解質膜212の湿潤を保つために純水8が注入されている。
その他の構成は実施例1と同様である。
また、水素イオン伝導体6は、固体電解質からなる。そのため、万が一、水素濃度検出素子103が損傷しても、水素濃度検出素子103の外部に水素イオン伝導体6が漏出するのを防止することができる。
また、本例においても実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
本例は、図11及び図12に示すごとく、実施例1の水素濃度検出素子における構成を一部変更したものである。
本例の水素濃度検出素子104において、水素供給手段7は、水素吸蔵合金72であるパラジウムからなり、Pd−H系における圧力−組成−等線図においてプラトー領域となる水素量を固溶させたパラジウム水素化物である。尚、本例において、水素吸蔵合金72は標準極4を兼ねるものである。水素吸蔵合金72は外側筒部3内の水素イオン伝導体6に浸漬されている。
その他の構成は実施例1と同様である。
また、本例においても実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
本例は、図13に示すごとく、実施例1の水素濃度検出素子における構成を一部変更したものである。
本例の水素濃度検出素子105において、水素供給手段7は、水素化物であるZrH2(二水素化ジルコニウム)からなり、飽和量の水素を固溶させている。水素供給手段7は、内側筒部5の内側において、標準極4と接触するように配設されている。
標準極4は、試料極2における電解質膜212に接触するように配設されている。本例において、試料極2における電解質膜212は、水素イオン伝導体6を兼ねるものである。
外側筒部3の内側には、標準極4と内側筒部5の先端近傍とが浸漬するように純水が入れられている。
その他の構成は実施例1と同様である。
また、本例においても、実施例3と同様の作用効果を得ることができる。
本例は、図14に示すごとく、実施例1の水素濃度検出素子における構造を一部変更したものである。
本例の水素濃度検出素子106において、水素供給手段7は、水素化物であるNbH(水素化ニオブ)からなり、飽和量の水素が固溶されている。水素供給手段7は、パラジウムからなる標準電極によって被覆されており、保持層21の電解質膜212に接触するように配設されている。
その他の構成は実施例1と同様である。
また、本例においても、実施例3と同様の作用効果を得ることができる。
2 試料極
21 保持層
211 多孔質膜
212 電解質膜
22、41 リード線
3 外側筒部
4 標準極
5 内側筒部
6 水素イオン伝導体
7 水素供給手段
71 ノズル
8 純水
Claims (7)
- 100℃以下の液体状の試料における水素濃度を検出可能な水素濃度検出素子であって、
水素透過性金属からなり試料と接触する試料極と、
所定の水素濃度に保たれた標準極と、
上記試料極及び上記標準極に接触した状態で上記試料極及び上記標準極の間に介在する水素イオン伝導体と、を備え、
上記水素イオン伝導体は、溶融塩電解質を除く、水素イオン伝導性を有する電解質からなり、
上記試料極は、パラジウム又はパラジウム合金からなり、該試料極を保持する保持層の表面に形成されており、上記試料極の厚さが1μm以下であり、
上記保持層は、複数の流通孔を備えた多孔質膜を有している、
ことを特徴とする水素濃度検出素子。 - 上記水素イオン伝導体は、固体電解質からなることを特徴とする請求項1に記載の水素濃度検出素子。
- 上記保持層は、水素イオンの伝導性を有する固体電解質からなる電解質膜を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素濃度検出素子。
- 上記標準極は、パラジウム又はパラジウム合金からなり、水素供給手段によって所定の水素分圧に保たれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水素濃度検出素子。
- 上記水素供給手段は、所定量の水素を固溶させた水素化物又は水素吸蔵合金からなることを特徴とする請求項4に記載の水素濃度検出素子。
- 水素透過性金属からなり試料と接触する試料極と、
所定の水素濃度に保たれた標準極と、
上記試料極及び上記標準極に接触した状態で上記試料極及び上記標準極の間に介在する水素イオン伝導体と、を備え、
上記水素イオン伝導体は、溶融塩電解質を除く、水素イオン伝導性を有する電解質からなり、
上記試料極と上記標準極との間に電圧を印加し電流を流すことにより、上記試料極の水素を水素イオンとして離脱させる手段を設けた、ことを特徴とする水素濃度検出素子。 - 上記試料極と上記標準極との間に印加される電圧は、0.4V以上0.75V以下の範囲にあることを特徴とする請求項6に記載の水素濃度検出素子。
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