JP2008281356A - オゾン濃度測定装置及びオゾン濃度測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 電解質を含まない若しくは微量にしか含まないオゾン水やオゾンガス等の流体中のオゾン濃度を測定可能なオゾン濃度測定装置及びオゾン濃度測定方法において、優れた応答速度を確保すると共に共存物質の影響を良好に排除すること。
【解決手段】 オゾン濃度測定装置1では、電解質膜2の下面に検出用電極3が押し当てられ、電解質膜2の上面には、容器4によって電解質水溶液5がその電解質膜2に接触するように保持されている。容器4の下面には、電解質膜2と検出用電極3との接触部を通ってオゾン水を流通させる流路7が設けられている。更に、容器4に保持された電解質水溶液5には、白金製の対極11と参照電極に接続される塩橋17とが挿入されている。オゾンの還元に必要なプロトンは容器4に保持された電解質水溶液5から供給される。検出用電極3を導電性ダイヤモンドで構成したことにより共存物質の影響を排除できる。
【選択図】 図2
【解決手段】 オゾン濃度測定装置1では、電解質膜2の下面に検出用電極3が押し当てられ、電解質膜2の上面には、容器4によって電解質水溶液5がその電解質膜2に接触するように保持されている。容器4の下面には、電解質膜2と検出用電極3との接触部を通ってオゾン水を流通させる流路7が設けられている。更に、容器4に保持された電解質水溶液5には、白金製の対極11と参照電極に接続される塩橋17とが挿入されている。オゾンの還元に必要なプロトンは容器4に保持された電解質水溶液5から供給される。検出用電極3を導電性ダイヤモンドで構成したことにより共存物質の影響を排除できる。
【選択図】 図2
Description
本発明は、オゾン水,オゾンガス等の流体中のオゾン濃度を測定するオゾン濃度測定装置及びオゾン濃度測定方法に関し、詳しくは、電気化学的測定方法により上記オゾン濃度を測定するオゾン濃度測定装置及びオゾン濃度測定方法に関する。
オゾンは酸素よりも7倍程度酸化力が強く、殺菌、脱臭、脱色等に広く利用できる。更に、オゾンは水中に溶解させることで各種活性酸素種を生成し、その活性を一段と向上させることができる。
近年、オゾン水の利用機運が高まりを見せ、食品洗浄や手洗い等における殺菌手段として浸透しているのみではなく、半導体洗浄水としての利用や臨床利用などにも用途が広がっている。上記用途にオゾン水を利用する際には、その効果を最大限に高め、また、無駄な消費をなくすためにも、オゾン水中の溶存オゾン濃度を定期的にモニタリングすることが必要である。特に、高濃度のオゾンは人体に有害であることから、オゾン濃度管理の徹底が望まれている。そこで、簡便かつ高精度に溶存オゾン濃度を定量・モニタリングできる測定装置が望まれている。
オゾン濃度測定方法としては、紫外線吸収法、ヨウ素滴定法、半導体法、電気化学的測定方法が知られている。このうち、電気化学的測定法には、測定が比較的簡便に行え、装置の小型化が容易で、またコストも低く抑えられる等のメリットがある。この電気化学的測定方法によりオゾン濃度を測定する具体的方法として、オゾンの透過性隔膜を通してオゾンを測定セル内に導き、金或いは白金等の電極上で測定系セル内のオゾンを還元し、そのときの電流値から換算して溶存オゾン量を求める装置が方法されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
この方法によれは、オゾンガスや水中に溶存したオゾンを定量することが可能である。しかし、この方法には、オゾンが膜を透過するのに時間がかかるために応答速度が遅く、特に停止時からの立ち上がりに時間を要するといった課題がある。
一方、電気化学的測定方法によりオゾン濃度を測定する他の具体的方法として、プロトンを透過する電解質膜の片面に検出用電極を配設し、電解質水溶液を上記電解質膜の他面に接触するように保持し、上記電解質膜及び上記検出用電極にオゾンガス等の試料流体を接触させ、上記検出用電極の電位を制御すると共に上記検出用電極に流れる電流量を検知し、そのときの上記電位と上記電流量とに基づいて上記試料流体中の溶存オゾン濃度を測定する方法も提案されている(例えば、非特許文献2,3参照)。
この方法では、上記検出用電極と上記電解質膜とが接する界面でオゾンの還元反応(O3+2H++2e→H2O+O2)が起こるため、オゾンは膜を透過する必要がなく応答速度は格段に向上する。この還元反応に必要となるプロトンは上記電解質水溶液から上記電解質膜を通過して供給され、電子は検出用電極より供給される。このため、上記電位と上記電流量とに基づいて上記試料流体中の溶存オゾン濃度を求めることができる。
特開平9−49823号公報
Ronald B. Smart他2名、「In Situ Voltammetric Membrane Ozone Electrode」、Analytical Chemistry 第51巻 1979年 2315-2319頁
Gilberto Schiavon他4名、「Amperometric Monitoring of Ozone in Gaseous Media by Gold Electrode Supported on Ion Exchange Membranes (Solid Polymer Electrolytes)」Analytical Chemistry 第62巻 1990年 293-298頁
Lei Xie他1名、「A Solid-State Ozone Sensor Based on Solid Polymer Electrolyte」、Electroanalysis 第10巻 1998年 842-845頁
ところが、非特許文献2,3では、検出用電極の電極材料として金や白金などの貴金属を使用しているため、次のような課題があった。すなわち、これらの貴金属類からなる電極は触媒活性や分子の吸着力が非常に強く、オゾン水溶液中に汚損物質等の共存物質が存在していた場合にその影響を受け易い。例えば、オゾンの還元電位付近で共存物質による副反応の応答が観察されてしまったり、溶存イオン種や有機分子の吸着によりバックグラウンド電流の変化などが起きてしまう。
また、本願出願人は、電気化学的測定方法によりオゾン濃度を測定する場合の電極として、導電性を有するダイヤモンド或いは導電性を有する硬質アモルファス炭素を使用することを提案している(例えば、特願2006−31107号,特願2007−100758号参照)。これらの電極はオゾンに対する選択性が高く、共存物質の存在下でもオゾン濃度の正確な定量・モニタリングが可能である。また、バックグラウンド電流が非常に小さいため、検出感度に優れる。更に、電極表面は吸着に対して不活性であり、溶存イオン種や有機分子の吸着は起こり難い。また更に、これらの電極は耐久性・耐薬品性が高く、過酷な条件で使用しても電極の劣化が起き難い。
しかしながら、上記提案では、試料溶液の流路中に上記検出用電極を載置し、試料溶液に電解質を予め添加しておくことによってプロトンを供給しているため、水道水や純水中に溶存したオゾン濃度をそのまま測定することはできない。すなわち、上記提案の装置では、水道水や純水中の溶存オゾン濃度を測定する際には試料溶液に電解質溶液を添加する機構または作業が必要となり、測定器の複雑化、測定操作の煩雑化の要因となっていた。
そこで、本発明は、電解質を含まない若しくは微量にしか含まないオゾン水やオゾンガス等の流体中のオゾン濃度を測定可能なオゾン濃度測定装置及びオゾン濃度測定方法において、優れた応答速度を確保すると共に共存物質の影響を良好に排除することを目的としてなされた。
上記目的を達するためになされた本発明のオゾン濃度測定装置は、プロトンを透過する電解質膜と、該電解質膜の片面に配設され、空孔を有する検出用電極と、電解質水溶液を上記電解質膜の他面に接触するように保持する容器と、上記検出用電極の電位を制御する制御手段と、上記検出用電極に流れる電流量を検知する検知手段と、を備え、上記検出用電極が導電性を有するダイヤモンドまたは硬質アモルファス炭素を用いて構成され、上記電解質膜の片面及び上記検出用電極が試料流体に接触可能に構成されたことを特徴としている。
このように構成された本発明のオゾン濃度測定装置では、電解質膜の片面及び検出用電極を試料流体に接触させると、検出用電極と電解質膜とが接する界面で、試料流体に含まれるオゾンの還元反応(O3+2H++2e→H2O+O2)が起こる。このため、試料流体のオゾンは膜を透過する必要がなく、前述のよう優れた応答速度を確保することができる。そして、上記還元反応に必要となるプロトンは容器に保持された電解質水溶液から電解質膜を通過して供給され、電子は検出用電極より供給される。このため、制御手段によって制御される検出用電極の電位と、検知手段によって検知される検出用電極に流れる電流量とに基づいて、上記試料流体中の溶存オゾン濃度を応答性よく求めることができる。しかも、本発明では、プロトンは容器に保持された電解質水溶液から供給されるので、試料流体に電解質溶液を添加する必要もない。
また、本発明では、検出用電極の電極材料として、導電性を有するダイヤモンドまたは硬質アモルファス炭素を用いている。これらの電極材料はオゾンに対する選択性が高く、共存物質の存在下でもオゾン濃度の正確な定量・モニタリングが可能である。また、バックグラウンド電流が非常に小さいため、検出感度に優れる。更に、電極表面は吸着に対して不活性であり、溶存イオン種や有機分子の吸着は起こり難い。また更に、これらの電極材料は耐久性・耐薬品性が高く、過酷な条件で使用しても電極の劣化が起き難い。従って、本発明のオゾン濃度測定装置では、共存物質の影響も良好に排除して正確なオゾン濃度を測定することができる。
更に、検出用電極を構成するダイヤモンド或いは硬質アモルファス炭素は、表面にイオン種や有機分子が吸着し難く汚損され難い特性を有しているが、それが接する電解質膜は汚損されてしまう可能性がある。上記ダイヤモンド或いは硬質アモルファス炭素は安定な電極材料であり、正電位を印加した場合には有機物を酸化分解したりオゾンを発生したりすることが可能である。そこで電解質膜が汚損された場合でも、検出用電極に正電位を印加し、表面に付着した有機分子を直接酸化分解したり、オゾンを発生させてその分解作用で付着物を取り除くことが可能である。
なお、本発明は以下の構成に限定されるものではないが、上記電解質膜と上記検出用電極との接触部を通って試料流体を流通させる流路を、更に備えてもよい。本発明のオゾン濃度測定装置は、前述のように優れた応答性を有するので、このような流路を設けてオゾン水生成装置等から供給される試料流体を流通させれば、試料流体のオゾン濃度の変化を容易にモニタリングすることができる。
また、上記検出用電極が、自立型の導電性ダイヤモンドに空孔を穿設してなるものであってもよい。この場合、検出用電極を構成する導電性ダイヤモンドは自立体型であるため、剥離の心配がなく、高温などの過酷な条件下でも安定してオゾン濃度を測定することができる。
また、上記検出用電極の少なくとも表面が、導電性を有する硬質アモルファス炭素からなるものであってもよい。ダイヤモンドは炭素のみからなる結晶で、sp3炭素結合が三次元的に連続したいわゆるダイヤモンド構造をとる。一方、グラファイトはsp2炭素結合が二次元的に連続したいわゆるグラファイト構造からなり、各シートは弱い分子間力で結合して結晶を形成する。これに対して、硬質アモルファス炭素は、sp3炭素結合とsp2炭素結合の両方で構成された不規則構造からなる準安定なアモルファス(非晶質)状態となっている。硬質アモルファス炭素は、炭素を主成分とし、その他に水素を含んでおり、ダイヤモンドやグラファイトの同素体ではない。水素原子は、sp3炭素結合の不対結合手を終端する形で取り込まれている。
このような硬質アモルファス炭素は本来優れた絶縁体であるが、グラファイト構造を有するクラスターを導入したり、異種元素や金属微粒子をドーピングしたり、基板との中間層に金属を使用するなど、成膜方法や条件を工夫することで導電性を付与することができる。このような導電性を有する硬質アモルファス炭素を検出用電極の電極材料として使用した場合、アルゴン雰囲気下で測定した還元側の電位窓、すなわち水素発生反応が起こるまでの電位領域がダイヤモンド電極に匹敵するほど広くなり、酸素飽和条件でのバックグラウンド電流も非常に小さくなる。
また、本願出願人の研究により、硬質アモルファス炭素は導電性ダイヤモンドとは異なり、水素終端化された状態が非常に安定であり、酸素終端化されないことが分かった。このため、硬質アモルファス炭素からなる検出用電極は、オゾンが溶存するような高い酸化性雰囲気でも表面が変化することがなく、安定して長期間使用でき、導電性ダイヤモンドを電極材料として使用した場合のように予め酸素終端化処理を施しておく必要もない。
従って、上記のように検出用電極の少なくとも表面が導電性を有する硬質アモルファス炭素からなる場合、装置の製造コストを低減することができると共に、長期間安定してオゾン濃度を測定することができる。
また、本発明のオゾン濃度測定方法は、導電性を有するダイヤモンドまたは硬質アモルファス炭素を用いて構成され空孔を有する検出用電極を、プロトンを透過する電解質膜の片面に配設し、電解質水溶液を上記電解質膜の他面に接触するように保持し、上記電解質膜及び上記検出用電極に試料流体を接触させ、上記検出用電極の電位を制御すると共に上記検出用電極に流れる電流量を検知し、上記電位と上記電流量とに基づいて上記試料流体中の溶存オゾン濃度を測定することを特徴としている。
このように構成された本発明のオゾン濃度測定方法では、電解質膜及び検出用電極に試料流体を接触させているので、検出用電極と電解質膜とが接する界面で、試料流体に含まれるオゾンの還元反応(O3+2H++2e→H2O+O2)が起こる。このため、試料流体のオゾンは膜を透過する必要がなく、前述のよう優れた応答速度を確保することができる。そして、上記還元反応に必要となるプロトンは電解質膜の他面に保持された電解質水溶液からその電解質膜を通過して供給され、電子は検出用電極より供給される。このため、検出用電極の電位を制御すると共にその検出用電極に流れる電流量を検知することにより、上記電位と上記電流量とに基づいて、上記試料流体中の溶存オゾン濃度を応答性よく求めることができる。しかも、本発明では、プロトンは電解質膜の他面に保持された電解質水溶液から供給されるので、試料流体に電解質溶液を添加する必要もない。
また、本発明では、検出用電極の電極材料として、導電性を有するダイヤモンドまたは硬質アモルファス炭素を用いている。これらの電極材料はオゾンに対する選択性が高く、共存物質の存在下でもオゾン濃度の正確な定量・モニタリングが可能である。また、バックグラウンド電流が非常に小さいため、検出感度に優れる。更に、電極表面は吸着に対して不活性であり、溶存イオン種や有機分子の吸着は起こり難い。また更に、これらの電極材料は耐久性・耐薬品性が高く、過酷な条件で使用しても電極の劣化が起き難い。従って、本発明のオゾン濃度測定方法では、共存物質の影響も良好に排除して正確なオゾン濃度を測定することができる。
更に、検出用電極を構成するダイヤモンド或いは硬質アモルファス炭素は、表面にイオン種や有機分子が吸着し難く汚損され難い特性を有しているが、それが接する電解質膜は汚損されてしまう可能性がある。上記ダイヤモンド或いは硬質アモルファス炭素は安定な電極材料であり、正電位を印加した場合には有機物を酸化分解したりオゾンを発生したりすることが可能である。そこで電解質膜が汚損された場合でも、検出用電極に正電位を印加し、表面に付着した有機分子を直接酸化分解したり、オゾンを発生させてその分解作用で付着物を取り除くことが可能である。
次に、本発明の実施の形態を、実施例により説明する。
(1)オゾン濃度測定装置及び実験系の構成
図1は、実施例のオゾン濃度測定装置1を備えた実験系全体の構成を表す説明図であり、図2は、そのオゾン濃度測定装置1の構成を詳細に表す説明図である。図2に示すように、オゾン濃度測定装置1では、略水平に配置された電解質膜2(デュポン社製ナフィオン膜N117)の片面(下面)に検出用電極3が押し当てられ、電解質膜2の他面(上面)には、中空の容器4によって電解質水溶液5がその電解質膜2に接触するように保持されている。なお、検出用電極3は、導電性を有するダイヤモンドまたは硬質アモルファス炭素を用いて構成されている。
図1は、実施例のオゾン濃度測定装置1を備えた実験系全体の構成を表す説明図であり、図2は、そのオゾン濃度測定装置1の構成を詳細に表す説明図である。図2に示すように、オゾン濃度測定装置1では、略水平に配置された電解質膜2(デュポン社製ナフィオン膜N117)の片面(下面)に検出用電極3が押し当てられ、電解質膜2の他面(上面)には、中空の容器4によって電解質水溶液5がその電解質膜2に接触するように保持されている。なお、検出用電極3は、導電性を有するダイヤモンドまたは硬質アモルファス炭素を用いて構成されている。
また、容器4の下面には、試料流体としてのオゾン水を電解質膜2と検出用電極3との接触部を通って流通させる流路7が設けられている。そして、その流路7の両端には、オゾン水を流路7に導入するための導入管8と、流路7からオゾン水を排出するための排出管9とが接続されている。更に、容器4に保持された電解質水溶液5には、白金製の対極11と、制御手段及び検知手段としての制御検出部15の銀−塩化銀製の参照電極13(図1参照)に接続される塩橋17とが挿入されている。
図1に示すように、上記制御検出部15は、検出用電極3、対極11、及び参照電極13のそれぞれと導電線により接続されており、検出用電極3の電位を参照電極13に対して任意に制御することができる。また、制御検出部15は、検出用電極3と対極11との間に流れる電流量を測定することができる。
オゾン濃度測定装置1では、検出用電極3と電解質膜2とが接する界面で、流路7内のオゾン水に含まれるオゾンの還元反応(O3+2H++2e→H2O+O2)が起こる。このため、オゾンが隔膜などを透過する必要がなく、優れた応答速度を確保することができる。そして、上記還元反応に必要となるプロトンは容器4に保持された電解質水溶液5から電解質膜2を通過して供給され、電子は検出用電極3より供給される。このため、制御検出部15によって制御または検出される上記電位及び電流量に基づいて、オゾン水中の溶存オゾン濃度を応答性よく求めることができる。しかも、オゾン濃度測定装置1では、プロトンは容器4に保持された電解質水溶液5から供給されるので、オゾン水に電解質溶液を添加する必要もない。
更に、検出用電極3を構成するダイヤモンド或いは硬質アモルファス炭素は、表面にイオン種や有機分子が吸着し難く汚損され難い特性を有しているが、それが接する電解質膜2は汚損されてしまう可能性がある。上記ダイヤモンド或いは硬質アモルファス炭素は安定な電極材料であり、正電位を印加した場合には有機物を酸化分解したりオゾンを発生したりすることが可能である。そこで電解質膜2が汚損された場合でも、検出用電極3に正電位を印加し、表面に付着した有機分子を直接酸化分解したり、オゾンを発生させてその分解作用で付着物を取り除くことが可能である。
また、本実施例の実験系は、図1に示すように、オゾン濃度測定装置1の他に、オゾン水生成装置20と、紫外可視分光光度計30とを備えている。オゾン水生成装置20は、純水を保持する純水タンク21と、純水タンク21から水を引き出すポンプ23と、オゾン発生装置25と、純水タンク21から送られた水にオゾン発生装置25で発生したオゾンを混合する気液混合器27とを備えており、オゾン水を製造することができる。
オゾン水生成装置20で製造されたオゾン水は、配管29により、オゾン濃度測定装置1の導入管8、及び、紫外可視分光光度計30に送られる。すなわち、配管29は、途中から配管29aと配管29bとに分岐しており、配管29aは、オゾン濃度測定装置1の導入管8に接続され、配管29bは、紫外可視分光光度計30に接続されている。このため、オゾン水生成装置20で製造された水は、配管29aを通ってオゾン濃度測定装置1の流路7へ送られると共に、配管29bを通って紫外可視分光光度計30へも送られ、測定試料の同時検出が可能である。
なお、紫外可視分光光度計30は、オゾン水中の溶存オゾンの極大吸収が258nmに観察され、そのときのモル吸光係数が2900M-1cm-1であることを利用して、オゾン水の溶存オゾン濃度を測定するものである。また、本実施例のオゾン濃度測定装置1は、一定濃度のオゾン水をポンプ23にてオゾン水生成装置20から導入した後、ポンプ23を停止してオゾン水が静止した状態で測定を行う静止モードと、一定量でオゾン水を流しながら測定を行う定常モードとを備えている。このうち、定常モードでは、流路7に流通されるオゾン水のオゾン濃度の変化を容易にモニタリングすることができる。
以下の実施例では、定常モードでの流量を100mL/minとした。なお、本実施例で得られる検量線は電位掃引速度や電気化学測定法、装置の形態や流量に大きく依存することから、採用する条件毎に検量線を作成する必要がある。
(2)検量線の具体例(その1)
導電性ダイヤモンドの自立板に直径1mmの空孔を40個穿設した電極(エレメントシックス製)を検出用電極3とした。容器4側の電解質水溶液5としては0.1M硫酸水溶液を用いた。静止モードで得られた電流−電位曲線を図3に示す。なお、図3において、点線はアルゴン雰囲気下での純水の応答を、破線は酸素雰囲気下での純水の応答を、実線は酸素雰囲気下でのオゾン水(濃度:4.0,6.6,11.3,14.1,17.4mg/L)の応答を、それぞれ表している。
(2)検量線の具体例(その1)
導電性ダイヤモンドの自立板に直径1mmの空孔を40個穿設した電極(エレメントシックス製)を検出用電極3とした。容器4側の電解質水溶液5としては0.1M硫酸水溶液を用いた。静止モードで得られた電流−電位曲線を図3に示す。なお、図3において、点線はアルゴン雰囲気下での純水の応答を、破線は酸素雰囲気下での純水の応答を、実線は酸素雰囲気下でのオゾン水(濃度:4.0,6.6,11.3,14.1,17.4mg/L)の応答を、それぞれ表している。
図3に示すように、オゾンが溶存した場合にのみ+0.5V付近よりオゾンの還元反応に対応する電流が流れ始めた。この付近の酸素雰囲気下での電流応答(図3破線)は、アルゴン雰囲気のもの(図3点線)と同等であり、従ってオゾン水中の溶存酸素の影響は排除できることが分かった。また、アルゴン雰囲気下で測定した還元側の電位窓、すなわち水素発生反応が起こるまでの電位領域は十分に広く、酸素飽和条件でも酸素還元反応は測定した電位領域で殆ど観察されなかった。更に、−0.4V〜+1.0Vの範囲においてバックグラウンド電流が非常に小さくかつ平滑である。
オゾンが溶存した条件では、+0.5V付近よりオゾンの還元反応に対応する電流が流れ始めた。この還元電流は溶存オゾン濃度に比例しており、測定で得られた電流値から溶存オゾン濃度を決定することが可能である。0Vの還元電流密度を既知の溶存オゾン濃度に対してプロットすると図4に示す検量線が得られた。次に、定常モードで電位を0Vに固定し、オゾンの還元反応に伴って流れる電流を測定した。この電流は、溶存したオゾンの量に比例しており、既知の溶存オゾン濃度に対してプロットすることにより図5に示す検量線を得た。得られた検量線の傾きを表1に示す。
導電性ダイヤモンドの自立板に直径2mmの空孔を1個穿設した電極(エレメントシックス製)を検出用電極3とした。容器4側の電解質水溶液5としては0.1M硫酸水溶液、0.1M過塩素酸水溶液、0.1Mクエン酸水溶液、0.1M硫酸ナトリウム水溶液、0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いた。静止モードで電位を0Vに固定して測定された還元電流から検量線を得た。また、定常モードでも電位を0Vに固定し、還元電流から検量線を得た。得られた検量線の傾きを表2に示す。
(4)検出用電極3の変形例
検出用電極3の変形例として、導電性ダイヤモンドの微粒子を上記ナフィオンからなる電解質膜3上に直接固定化した電極(以下、微粒子状電極という)を用いた。この微粒子状電極は以下のように作成した。市販の20%ナフィオン溶液(デュポン社製)をエタノールで希釈し、0.5wt%のナフィオン/エタノール溶液とした。この溶液5mL中に、ダイヤモンド微粒子(エレメントシックス製、粒径0.1〜10μm)を0.1g添加し、十分に攪拌した。この溶液50μLを電解質膜3上に滴下し、乾燥させて微粒子状電極とした。このようにして作成された微粒子状電極は、導電性ダイヤモンドの微粒子が接触し合うことにより一体の導体として機能する。また、本例では、容器4内の電解質水溶液5として0.1M硫酸水溶液を用いた。静止モードで電位を0Vに固定して測定された還元電流から検量線を得た。また、定常モードで電位を0Vに固定して測定された還元電流からも検量線を得た。得られた検量線の傾きを表3に示す。
(5)本発明の他の変形例
更に、本発明は上記実施例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、検出用電極3の電極材料としては、前述のダイヤモンドの他、硬質アモルファス炭素からなる電極(例えば、ナノテック製の導電性アモルファス炭素膜)を使用することもできる。また、導電性を有するダイヤモンド或いは硬質アモルファス炭素の形状としては、種々の形状が考えられるが、板状としたものに空孔を穿設したもの、メッシュ状の基体の上に薄膜を形成したもの、多孔質状の基体の上に薄膜を形成したもの、微粒子状のものが好ましい。基体材料としては、必要形状に加工でき、なおかつその基体上に導電性を有するダイヤモンド或いは硬質アモルファス炭素が形成できるものが使用できる。例えば、各種金属類、セラミックス類、樹脂類などが該当する。
但し、上記実施例のように自立型の導電性ダイヤモンドに空孔を穿設してなる検出用電極3を利用した場合、検出用電極3を構成する導電性ダイヤモンドは自立体型であるため、剥離の心配がなく、高温などの過酷な条件下でも安定してオゾン濃度を測定することができる。
また、検出用電極3の少なくとも表面が、導電性を有する硬質アモルファス炭素からなる場合、次のような更なる効果が生じる。すなわち、本願出願人の研究により、硬質アモルファス炭素は導電性ダイヤモンドとは異なり、水素終端化された状態が非常に安定であり、酸素終端化されないことが分かった。このため、硬質アモルファス炭素からなる検出用電極3は、オゾンが溶存するような高い酸化性雰囲気でも表面が変化することがなく、安定して長期間使用でき、導電性ダイヤモンドを電極材料として使用した場合のように予め酸素終端化処理を施しておく必要もない。従って、検出用電極3の少なくとも表面が導電性を有する硬質アモルファス炭素からなる場合、装置の製造コストを低減することができると共に、長期間安定してオゾン濃度を測定することができる。更に、上記実施例のオゾン濃度測定装置1では、流路7へ試料流体としてのオゾンガスを直接導入することによりオゾンガスの濃度を測定することもできる。
1…オゾン濃度測定装置 2…電解質膜 3…検出用電極
4…容器 5…電解質水溶液 7…流路
11…対極 13…参照電極 15…制御検出部
17…塩橋 20…オゾン水生成装置 30…紫外可視分光光度計
4…容器 5…電解質水溶液 7…流路
11…対極 13…参照電極 15…制御検出部
17…塩橋 20…オゾン水生成装置 30…紫外可視分光光度計
Claims (5)
- プロトンを透過する電解質膜と、
該電解質膜の片面に配設され、空孔を有する検出用電極と、
電解質水溶液を上記電解質膜の他面に接触するように保持する容器と、
上記検出用電極の電位を制御する制御手段と、
上記検出用電極に流れる電流量を検知する検知手段と、
を備え、
上記検出用電極が導電性を有するダイヤモンドまたは硬質アモルファス炭素を用いて構成され、上記電解質膜の片面及び上記検出用電極が試料流体に接触可能に構成されたことを特徴とするオゾン濃度測定装置。 - 上記電解質膜と上記検出用電極との接触部を通って試料流体を流通させる流路を、
更に備えたことを特徴とする請求項1記載のオゾン濃度測定装置。 - 上記検出用電極が、自立型の導電性ダイヤモンドに空孔を穿設してなることを特徴とする請求項1または2記載のオゾン濃度測定装置。
- 上記検出用電極の少なくとも表面が、導電性を有する硬質アモルファス炭素からなることを特徴とする請求項1または2記載のオゾン濃度測定装置。
- 導電性を有するダイヤモンドまたは硬質アモルファス炭素を用いて構成され空孔を有する検出用電極を、プロトンを透過する電解質膜の片面に配設し、
電解質水溶液を上記電解質膜の他面に接触するように保持し、
上記電解質膜及び上記検出用電極に試料流体を接触させ、
上記検出用電極の電位を制御すると共に上記検出用電極に流れる電流量を検知し、上記電位と上記電流量とに基づいて上記試料流体中の溶存オゾン濃度を測定することを特徴とするオゾン濃度測定方法。
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---|---|---|---|
JP2007123595A JP2008281356A (ja) | 2007-05-08 | 2007-05-08 | オゾン濃度測定装置及びオゾン濃度測定方法 |
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-
2007
- 2007-05-08 JP JP2007123595A patent/JP2008281356A/ja active Pending
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