JP6365639B2 - ナトリウム塩スケール防止剤、ナトリウム塩スケール防止方法、水系の粘度低減剤、水系の管理方法及び水系の粘度低減方法 - Google Patents
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Description
本実施形態に係る、ナトリウム塩スケール防止剤は、少なくとも、不飽和スルホン酸系単量体を単量体とする、スルホン基含有ポリマーを含む。このようなナトリウム塩スケール防止剤を、多量のナトリウムイオンを含有する水系に添加することにより、その水系において、ナトリウムイオンに由来するナトリウム塩スケールの発生を防止することができる。
スルホン基含有ポリマーは、少なくとも、不飽和スルホン酸系単量体を単量体とするものである。スルホン基含有ポリマーのスルホン基が、ナトリウムイオンと親和性が高くイオン状態で保持することができる。これにより、ナトリウムイオンに由来するナトリウム塩スケールの発生を防止することができる。
不飽和スルホン酸系単量体とは、スルホン基と重合性官能基を有する化合物をいう。一実施形態において、不飽和スルホン酸系単量体は、例えば、スルホン基とカルボニル基を有し、カルボニル炭素のα位の炭素とβ位の炭素の間の結合が、不飽和炭素結合である化合物であってよい。また、一実施形態において、不飽和スルホン酸系単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−スルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、アクリルアミドメチルスルホン酸及びこれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩から選択される1以上を用いることができる。このうち、アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩があり、アンモニウム塩としてはアンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン等の塩を用いることができる。
一実施形態において、スルホン基含有ポリマーは、少なくとも、不飽和スルホン酸系単量体及び不飽和カルボン酸系単量体を単量体とする重合体であってもよい。
一実施形態において、スルホン基含有ポリマーは、本発明の目的の効果が損なわれない範囲において、上述の不飽和カルボン酸系単量体及び不飽和スルホン酸系単量体以外の単量体をポリマーの構成成分としてもよい。
一実施形態において、スルホン基含有ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、例えば、200g/mol以上であることが好ましく、700g/mol以上であることがより好ましく、1,000g/mol以上であることがさらに好ましく、2,000g/mol以上であることが特に好ましい。一方で、スルホン基含有ポリマーの重量平均分子量は、120,000g/mol以下であることが好ましく、70,000g/mol以下であることがより好ましく、50,000g/mol以下であることがさらに好ましく、14,000g/mol以下であることが特に好ましい。ただし、重量平均分子量は、200g/mol未満又は120,000g/mol超であってもよい。スルホン基含有ポリマーの重量平均分子量が所要量であることにより、ナトリウム塩スケール発生の防止効果を高めることができる。また、カルボキシル基を有するポリマーの重量平均分子量が120,000以下であることにより、ポリマー添加による水系の粘度の上昇を抑制し、取り扱いを容易にすることができる。ここで、「重量平均分子量」とは、分子量既知のポリエチレングリコールを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めた値をいう。
スルホン基含有ポリマーの製造方法としては、特に限定されるものではないが、一実施形態において、例えば、溶液重合、塊状重合等を用いて製造することができる。スルホン基含有ポリマーは、原料である単量体が水溶性であることが多く、その場合、例えば、水を溶媒とする水溶液重合を用いることができる。水溶液重合においては、単量体の5〜50重量%の水溶液を調製し、不活性ガスにより雰囲気を置換し、50〜100℃に加熱し、水溶性重合開始剤を添加することにより重合することができる。水溶性重合開始剤としては、例えば、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩系開始剤、過酸化水素、過ヨウ素酸ナトリウム等の過酸化物系開始剤等を挙げることができる。また、必要に応じて、アルコール類やリン酸類等を連鎖移動剤として用いることができる。このような場合、重合は、通常3〜6時間で終了し、放冷することによりスルホン基含有ポリマーの水溶液を得ることができる。
一実施形態において、ナトリウム塩スケール防止剤は、本発明の目的の効果が損なわれない範囲において、スルホン基含有ポリマー以外の成分を含有してもよい。例えば、ナトリウム塩スケール防止剤は、ポリアクリル酸(塩)、ポリマレイン酸(塩)等を含有することができる。
本実施形態に係るナトリウム塩スケール防止方法は、上述したナトリウム塩スケール防止剤を水系に添加するナトリウム塩スケール防止方法である。
本実施形態に係る水系の管理方法は、同一の水系に、硫酸ナトリウムを添加する工程と、上述のスルホン基含有ポリマーを添加する工程とを含む方法である。
本実施形態に係る水系の粘度低減方法は、同一の水系に、硫酸ナトリウムを添加する工程と、上述のナトリウム塩スケール防止剤を添加する工程とを含む方法である。
以下、本実施形態に係るナトリウム塩スケール防止剤又は防止方法の適用対象の水系として、パルプの生産設備の例を挙げ説明するが、本発明は、以下の記載に何ら限定されるものではない。
蒸解系10は、図示しないヒーターを上部及び/又は下部に有する蒸解釜11を有し、この蒸解釜11の下流にはパルプ精製部が設けられている。蒸解釜11には、パルプの原料である木材チップと、水酸化ナトリウムを含有する白液とが投入され、木材チップの蒸解が行われる。これによって生じたパルプ(パルプスラリー)はパルプ精製部へと移送され、漂白、抄紙工程等を順次受け、紙が製造される。一方、廃液である黒液は、水酸化ナトリウムの回収等のため、後述するエバポレータ21へと移送される。
黒液処理系20は、上流から順に、エバポレータ21、ボイラ22、を有する。黒液は、粘度低減剤としての硫酸ナトリウムが添加され、エバポレータ21を用いて濃縮された後、ボイラ22へと移送され、このボイラ22内で燃焼される。すると、黒液に含有されていた無機ナトリウム塩が溶融し、ボイラ22の底部から緑液(スメルト)として排出される。排出された緑液は、溶解タンク31へと移送される。
緑液製造系30は、上流から順に、溶解タンク31と、緑液クラリファイア32と、緑液タンク33と、を有する。緑液は、溶解タンク31において水に撹拌され溶解する。これにより、水酸化ナトリウムに加え、炭酸ナトリウムを豊富に含有する緑液が生成される。溶解タンク31には図示しない送液ポンプが設けられており、緑液はこの送液ポンプに吸引され、緑液クラリファイア32へと移送される。緑液は、残存する未溶解成分が緑液クラリファイア32において除去される。その後、緑液タンク33へと移送されて貯留され、やがて苛性化系41へと移送される。
緑液処理系40は、上流から順に、苛性化系41、白液クラリファイア42、白液タンク43、を有し、白液クラリファイア42の下流にキルン44、を有する。苛性化系41、白液クラリファイア42、白液タンク43は、互いに連通され、全体として循環路を構成する。またキルン44は苛性化系41に連通される。
導入部は、例えば、蒸解系10又は黒液処理系20にあり、ナトリウム塩スケール防止剤が導入される。
(実施例1)
クラフトパルプ製造工場における黒液濃縮缶より採取した黒液(濃度20%、硫酸ナトリウム5質量%含有)に、ナトリウム塩スケール防止剤として、アクリル酸/AMPSコポリマー(アクリル酸/AMPSのモル比=50/50、不飽和スルホン酸系単量体/全単量体のモル比(以下、「モル比」という)=50、Mw=3,000g/mol)を、100mg/Lとなるように添加した。1Lステンレスビーカーに入れ、IHヒーターで加熱して、180rpmで撹拌しながら濃縮し、濃縮液を得た。濃縮液を、九谷焼多用途急須専用金網(61mm)を用いてろ過し、黒液の質量に対する残渣の質量(以下、「残渣率」という)を測定した。
ナトリウム塩スケール防止剤として、アクリル酸/AMPSコポリマー(アクリル酸/AMPSのモル比=70/30、モル比=30、Mw=5,000g/mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、残渣率を測定した。
ナトリウム塩スケール防止剤として、アクリル酸/AMPSコポリマー(アクリル酸/AMPSのモル比=80/20、モル比=20、Mw=5,000g/mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、残渣率を測定した。
ナトリウム塩スケール防止剤として、アクリル酸/AMPSコポリマー(アクリル酸/AMPSのモル比=90/10、モル比=10、Mw=5,000g/mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、残渣率を測定した。
ナトリウム塩スケール防止剤として、アクリル酸/AMPSコポリマー(アクリル酸/AMPSのモル比=95/5、モル比=5、Mw=5,000g/mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、残渣率を測定した。
ナトリウム塩スケール防止剤として、アクリル酸/AMPSコポリマー(アクリル酸/AMPSのモル比=98/2、モル比=2、Mw=5,000g/mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、残渣率を測定した。
ナトリウム塩スケール防止剤として、アクリル酸/AMPSコポリマー(アクリル酸/AMPSのモル比=80/20、モル比=20、Mw=500g/mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、残渣率を測定した。
ナトリウム塩スケール防止剤として、アクリル酸/AMPSコポリマー(アクリル酸/AMPSのモル比=80/20、モル比=20、Mw=15,000g/mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、残渣率を測定した。
ナトリウム塩スケール防止剤として、アクリル酸/AMPSコポリマー(アクリル酸/AMPSのモル比=80/20、モル比=20、Mw=100,000g/mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、残渣率を測定した。
ナトリウム塩スケール防止剤として、アクリル酸/HAPSコポリマー(アクリル酸/HAPSのモル比=85/15、モル比=15、Mw=7,000g/mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、残渣率を測定した。
ナトリウム塩スケール防止剤として、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(モル比100、Mw=3,000g/mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、残渣率を測定した。
ナトリウム塩スケール防止剤を用いない以外は、実施例1と同様にして、残渣率を測定した。
ナトリウム塩スケール防止剤として、アクリル酸ホモポリマー(モル比=0、Mw=5,000g/mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、残渣率を測定した。
ナトリウム塩スケール防止剤として、マレイン酸ホモポリマー(モル比=0、Mw=2,000g/mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、残渣率を測定した。
ナトリウム塩スケール防止剤として、マレイン酸/アクリル酸コポリマー(マレイン酸/アクリル酸のモル比=70/30、モル比=0、Mw=5,000g/mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、残渣率を測定した。
ナトリウム塩スケール防止剤として、マレイン酸/アクリル酸コポリマー(マレイン酸/アクリル酸のモル比=30/70、モル比=0、Mw=5,000g/mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、残渣率を測定した。
表2に、実施例1〜11及び比較例1〜5において測定された残渣率(%)を示す。このように、不飽和スルホン酸系単量体を単量体とする、スルホン基含有ポリマーを水系に添加することにより、未添加の場合に比べてスケールの発生を抑制できることが分かった。また、重量平均分子量が700g/mol以上70,000g/mol以下であり、不飽和スルホン酸系単量体のモル比が3モル%以上であるスルホン基含有ポリマーを用いることにより、アクリル酸やマレイン酸を単量体とし、スルホン基を有しないポリマーに比べてナトリウム塩スケールの発生を抑制できることが分かった。
10 蒸解系
11 蒸解釜
20 黒液処理系
21 エバポレータ
22 ボイラ
30 緑液製造系
31 溶解タンク
32 緑液クラリファイア
33 緑液タンク
40 緑液処理系
41 苛性化系
42 白液クラリファイア
43 白液タンク
44 キルン
411 スレーカ
412 苛性化反応
Claims (10)
- 少なくとも、不飽和スルホン酸系単量体を単量体とする、スルホン基含有ポリマーを含み、
前記スルホン基含有ポリマーの重量平均分子量が2,000g/mol以上14,000g/mol以下であり、
前記スルホン基含有ポリマーを構成する前記不飽和スルホン酸系単量体のモル数が、前記スルホン基含有ポリマーを構成する全ての単量体のモル数の総和100モル%に対し、6モル%以上であり、
前記不飽和スルホン酸系単量体が、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及び3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−スルホン酸並びにこれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩から選択される1以上である
ナトリウム塩スケール防止剤。 - 前記スルホン基含有ポリマーが、少なくとも、不飽和スルホン酸系単量体及びカルボン酸系単量体を単量体とする共重合体である
請求項1に記載のナトリウム塩スケール防止剤。 - 前記不飽和カルボン酸系単量体が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩からなる群から選択される1以上である
請求項2に記載のナトリウム塩スケール防止剤。 - 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のナトリウム塩スケール防止剤を水系に添加する
ナトリウム塩スケール防止方法。 - 前記ナトリウム塩スケール防止剤の濃度が1mg/L以上1,000mg/L以下となるように水系に添加する
請求項4に記載のナトリウム塩スケール防止方法。 - 前記水系が、硫酸ナトリウムを1質量%以上含む
請求項4又は5に記載のナトリウム塩スケール防止方法。 - 前記水系が、クラフトパルプ製造工程における黒液である
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のナトリウム塩スケール防止方法。 - 硫酸ナトリウムと、少なくとも、不飽和スルホン酸系単量体を単量体とする、スルホン基含有ポリマーとを含み、
前記スルホン基含有ポリマーは、重量平均分子量が2,000g/mol以上14,000g/mol以下であり、
前記スルホン基含有ポリマーを構成する前記不飽和スルホン酸系単量体のモル数が、前記スルホン基含有ポリマーを構成する全ての単量体のモル数の総和100モル%に対し、6モル%以上であり、
前記不飽和スルホン酸系単量体が、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及び3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−スルホン酸並びにこれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩から選択される1以上である
水系の粘度低減剤。 - 同一の水系に、
硫酸ナトリウムを添加する工程と、
少なくとも、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及び3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−スルホン酸並びにこれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩から選択される1以上である不飽和スルホン酸系単量体を単量体とする、重量平均分子量が2,000g/mol以上14,000g/mol以下であるスルホン基含有ポリマーであって、該スルホン基含有ポリマーを構成する該不飽和スルホン酸系単量体のモル数が、該スルホン基含有ポリマーを構成する全ての単量体のモル数の総和100モル%に対し、6モル%以上であるスルホン基含有ポリマーを添加する工程とを含む
水系の管理方法。 - 同一の水系に、
硫酸ナトリウムを添加する工程と、
少なくとも、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及び3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−スルホン酸並びにこれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩から選択される1以上である不飽和スルホン酸系単量体を単量体とする、重量平均分子量が2,000g/mol以上14,000g/mol以下であるスルホン基含有ポリマーであって、該スルホン基含有ポリマーを構成する該不飽和スルホン酸系単量体のモル数が、該スルホン基含有ポリマーを構成する全ての単量体のモル数の総和100モル%に対し、6モル%以上であるスルホン基含有ポリマーを添加する工程とを含む
水系の粘度低減方法。
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