JP2008221143A - マグネシウム系スケール防止剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来のスケール抑制剤では、十分かつ確実な効果を達成し得なかった軟水給水のボイラ水系におけるケイ酸マグネシウム等のマグネシウム系スケールを効果的に抑制し、ボイラの運転を安全かつ効率的なものとするマグネシウム系スケール防止剤を提供する。
【解決手段】軟水給水のボイラ水系で使用するマグネシウム系スケール防止剤において、分散剤と、キレート剤を含有するマグネシウム系スケール防止剤。分散剤としては、ポリアクリル酸および/またはその塩、並びに、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合物および/またはその塩よりなる群から選ばれる1種または2種以上が好ましく、キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸および/またはその塩が好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、軟水給水のボイラ水系で使用するマグネシウム系スケール防止剤に係り、特に、軟水給水のボイラ水系において、ケイ酸マグネシウム等のマグネシウム系スケールの生成を抑制し、ボイラを安全かつ高効率に運転するためのスケール防止剤に関する。
近年、エネルギーコスト削減のため、系外にブローされる水量を減らし、高濃縮で運転する水系システムが多くなってきている。このような水系では、水中のカルシウムやマグネシウム、シリカなどのスケール成分も高濃度となり、これらがスケール化して析出することにより、熱効率の低下や配管の閉塞などを引き起こす。特に、ボイラ水系では、ボイラ缶内に持ち込まれたカルシウムやマグネシウムやシリカ、鉄などのスケール成分が、熱負荷の高い伝熱面においてスケール化し、伝熱面に付着することで、鋼材の過熱による膨張、湾曲、破裂や熱効率の低下を引き起こす原因となる。また、スケールが付着することにより、伝熱阻害を引き起こし、エネルギーロスが生じるため、燃料費の増加に繋がる。
このようなスケールトラブルを防止するために、従来、以下の手法がとられてきた(非特許文献1)。
(1)原水中の硬度成分であるカルシウムやマグネシウムを軟水器で処理して軟水とし、これを給水とすることでスケールの付着を防止する手法。
(2)スケール抑制剤を用いた処理を行い、水系システムに持ち込まれたスケール成分の系内への付着を抑制し、ブローによって系外に排出する手法。例えば、リン酸三ナトリウムやトリポリリン酸ナトリウムなどのリン酸塩、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリマーをスケール抑制剤として添加し、缶内に持ち込まれた硬度成分がスケール化するのを抑制し、スケール化を生じにくくする手法。
(3)ボイラの運転を停止し、ボイラ水を全ブローにより排出した後、高濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤やスルファミン酸等の有機酸を用いて化学洗浄を行う手法。
なお、分散剤とキレート剤を用いる水処理剤として、スケール除去剤(特許文献1)、即ち、既に伝熱壁等に付着したスケールを除去するための薬剤があるが、スケール防止剤、即ち、スケールが付着するのを防止するための薬剤としての使用についての記載はなされていない。
特開2000−154996号公報 「栗田工業ハンドブック」(栗田工業製品ハンドブック編集委員会 平成元年7月13日)
上記(1)の手法で軟水を給水としても、給水中には微量のカルシウムやマグネシウムの硬度成分が存在し、これらがボイラ水系において過剰に濃縮した場合や、水循環が不十分な場合には、この微量の硬度成分が局部的に濃縮してスケール化し、ボイラの水管に付着して伝熱阻害を引き起こしたり、剥離したスケール片が水循環の不十分な部位に堆積し、堆積した下部で二次腐食を生成する原因となることがある。
また、上記(2)に示した従来のスケール抑制剤は、単独では効果が不十分であり、特に、硬度成分のうちカルシウムに対しては十分なスケール化抑制効果を発揮するが、マグネシウムに対してはスケール化抑制効果が十分ではなく、このため、給水より導入された微量のマグネシウムの一部が局部的にスケール化し、ボイラの水管に付着して伝熱阻害を引き起こしたり、剥離したスケール片が水循環の不十分な部位に堆積し、堆積した下部で二次腐食を生成する原因となることがある。
また、上記(2)に示した従来のリン酸系のスケール抑制剤については、排水処理の問題もある。即ち、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等の閉鎖性水域において、平成13年に策定された第5次水質総量規制により、富栄養化の原因物質である窒素およびリンも排出規制の対象として追加されており、リンの排出に対する規制が厳しくなっている。このため、リン酸系スケール抑制剤を使用した場合、排水中に含まれるリンは排水処理において、排出基準以下に処理した後に放流する必要があるため、排水処理設備に負荷が掛かる、もしくは、排水処理設備を増強する必要が生じる場合もあり、リンを含まないスケール抑制剤を使用することまたはリンを用いることなくスケールを抑制する方法を適用することが望まれる。
また、上記(3)のEDTAやスルファミン酸等を用いた化学洗浄は、化学洗浄実施時の僅かな設定条件の違いや、高濃度での連続使用の場合、腐食を生じる可能性が高くなり、また、ボイラの運転を停止することにより、生産性に影響が生じることもあるため、現状では殆ど採用されていない。
本発明は上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、従来のスケール抑制剤では、十分かつ確実な効果を達成し得なかった軟水給水のボイラ水系におけるケイ酸マグネシウム等のマグネシウム系スケールを効果的に抑制し、ボイラの運転を安全かつ効率的なものとするマグネシウム系スケール防止剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、分散剤とキレート剤とを併用することにより、軟水給水のボイラ水系におけるマグネシウム系スケールの生成を効果的に抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 軟水給水のボイラ水系で使用するマグネシウム系スケール防止剤において、分散剤と、キレート剤を含有することを特徴とするマグネシウム系スケール防止剤。
[2] [1]において、前記分散剤が、ポリアクリル酸および/またはその塩、並びに、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合物および/またはその塩よりなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とするマグネシウム系スケール防止剤。
[3] [1]または[2]において、前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸および/またはその塩であることを特徴とするマグネシウム系スケール防止剤。
本発明のマグネシウム系スケール防止剤によれば、分散剤とキレート剤とを併用することによる優れた相乗効果で、従来のスケール抑制剤では、十分かつ確実な効果を達成し得なかった軟水給水のボイラ水系におけるケイ酸マグネシウム等のマグネシウム系スケールを効果的に抑制し、ボイラを安全かつ効率的に運転することが可能となる。
しかも、本発明によれば、EDTA等のキレート剤に対して分散剤を併用することで、EDTA等のキレート剤の必要濃度を低減することができ、ボイラ缶体の腐食を引き起こし難い安全性の高いスケール防止剤を実現することができる。また、本発明のマグネシウム系スケール防止剤はリン酸系の薬剤を使用しないため、排水処理の負荷も軽減される。
なお、本発明のマグネシウム系スケール防止剤によれば、マグネシウム系スケールだけでなく、カルシウム系スケールについても十分な抑制効果を得ることができる。
以下に本発明のマグネシウム系スケール防止剤の実施の形態を詳細に説明する。
本発明のマグネシウム系スケール防止剤は、分散剤とキレート剤とを含有するものである。
本発明で用いる分散剤としては、ポリアクリル酸および/またはその塩、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合物および/またはその塩、アクリル酸ナトリウムと2−ヒドロキシ−3−アリルオキシ−1−プロパンスルホン酸との共重合物および/またはその塩、スチレンスルホン酸と無水マレイン酸との共重合物および/またはその塩などが挙げられるが、これらに限定されない。分散剤としては、望ましくは安全性の観点から、FDA(PART.21CFR173.310)に記載のあるポリアクリル酸および/またはその塩、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合物および/またはその塩が好ましい。これらの分散剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
一方、キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸および/またはその塩、ニトリロ三酢酸および/またはその塩、ジエチレントリアミン五酢酸および/またはその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸および/またはその塩、メチルグリシン三酢酸三ナトリウムおよび/またはその塩などが挙げられるが、これらに限定されない。キレート剤としては特にエチレンジアミン四酢酸および/またはその塩が好ましい。これらのキレート剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
特に、スケール抑制効果の面で、分散剤としてポリアクリル酸および/またはその塩を用い、キレート剤としてエチレンジアミン四酢酸および/またはその塩を用いることが好ましい。
なお、上記の分散剤およびキレート剤の例示において、「その塩」としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
本発明のマグネシウム系スケール防止剤に含まれる分散剤とキレート剤の割合には特に制限はないが、その併用による相乗効果に優れる点において、分散剤:キレート剤(重量比)=95:5〜60:40、特に80:20〜90:10であることが好ましい。この割合よりも分散剤が多くてもキレート剤が多くても、これらの併用による優れた相乗効果が得られない場合がある。
なお、本発明のマグネシウム系スケール防止剤には、分散剤とキレート剤の他、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ剤や、通常のスケール防止剤に配合される防食剤、脱酸素剤等の他の薬剤の1種類以上が含まれていても良い。
本発明のマグネシウム系スケール防止剤は、分散剤、キレート剤および必要に応じて配合される他の薬剤が予め混合されて一剤化されたものであっても良く、また、これらが別々に提供されるものであっても良い。
本発明のマグネシウム系スケール防止剤は、処理対象水に添加、溶解させて使用されるが、その添加量は、処理対象とするボイラ水中の有効成分(即ち、分散剤とキレート剤との合計量)濃度として1〜750mg/L、特に10〜200mg/Lとなるような量であることが好ましい。
このような本発明のマグネシウム系スケール防止剤は、マグネシウムが持ち込まれる軟水給水系の特殊循環ボイラ、水管ボイラ、丸ボイラ、排熱回収ボイラなどのあらゆるボイラ水系に有効に使用することができ、後述の実施例に示す如く、本発明のスケール防止剤を添加しながらボイラを運転することにより、缶体を腐食させることなく、カルシウム系スケールのみではなく、マグネシウム系スケールをも有効に防止して、スケールによる伝熱阻害や剥離して堆積したボイラ下部での二次腐食等のスケール障害を防止することができる。
なお、本発明で対象とする軟水給水のボイラ水系の軟水とは、市水、工業用水、井水等から軟水器、逆浸透膜装置等を用いて、カルシウム、マグネシウムといった硬度成分を除去した水質のものである。
以下に実験例、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
なお、以下の実験例、実施例および比較例においては、表1の条件で運転している小型貫流ボイラにおいて、種々の薬剤を缶内濃度を変えて添加することにより、スケール防止効果等を調べる試験を行った。
Figure 2008221143
なお、給水(軟水)の水質は次の通りである。
<給水水質>
pH:7〜8
電気伝導率:20〜30mS/m
酸消費量:(pH4.8):25〜45mg−CaCO/L
全硬度:<1mg−CaCO/L
Cl:20〜25mg/L
SO 2−:20〜25mg/L
SiO:15〜20mg/L
また、図1,2に示すボイラへのスケール付着量は、薬剤を添加しなかった場合(ブランク)のスケール付着量を100とした場合の相対値で示したが、その算出方法は次の通りである。
(ボイラへのスケール付着量の算出方法)
<1> スケールの付着工程を終了後、ボイラの運転を停止し、ボイラ缶水を排出する。
<2> 給水を缶内に入れて、満水になったら排出する。
(即ち、<1>,<2>のものはスケールではなく、スラッジを含んでいると考えて、スケール量には入れず、捨てる。)
<3> 給水を缶内に入れ、スケール剥離剤としてのエチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA・4Na)が缶水中に1500mg/Lとなるように添加する。
<4> ボイラのブローバルブを閉とし、ボイラを運転して170℃(6〜7kgf/cm)で3時間保ち、運転を停止し、缶水を排出する。
<5> ボイラ缶水をサンプリングして、原子吸光分析により、缶水中のCaとMgの濃度を求める。ボイラ缶水の量とこの分析値を乗じて、スケール中の成分量を算出する。
<6> <3>〜<5>を2回繰り返して、合計した値をスケール付着量とする。
なお、図1におけるブランクのスケール付着量は31640mg−CaCOであり、図2におけるブランクのスケール付着量は31920mg−CaCOである。
また、薬剤としては、以下のものを用いた。
PAA:ポリアクリル酸ナトリウム
AA−AMPS:アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸 との共重合物
EDTA:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム
実験例1
ボイラ立上げ後、給水に対して、PAAを添加し、十分に濃縮してPAAの缶内濃度が定常状態になるまで運転を続けた後、給水にスケール成分の添加を開始した。添加したスケール成分は、塩化カルシウム(CaCl)と硫酸マグネシウム(MgSO)を用いて、炭酸カルシウム換算で約100mg/L(Ca:Mg=2:1)となるように、18時間添加した。
スケール成分の添加開始より一定時間経過後、ボイラの運転を停止し、スケールの付着量を測定した。
同様に、缶内のPAA濃度と缶内の硬度成分濃度が異なる場合について、それぞれスケール付着量の違いを調べ、結果を図1に示した。
図1より、硬度に対するPAAの比率が高くなるほど、カルシウム系スケールの付着量は減少するが、マグネシウム系スケールについては、PAA添加濃度が高くなるほど、付着量は増加し、PAAの添加量を増大させても、マグネシウム系スケールを減少させることができないことが確認された。
また、AA−AMPSについても単独添加では同様の傾向があることが確認された。
PAA、AA−AMPS等の分散剤は、硬度リーク発生時にも対応できるように、ボイラ水中に10〜200mg/L程度で添加されるのが一般的であるが、軟水管理が良好に行われていれば、ボイラ水中の硬度成分濃度は炭酸カルシウム換算で数mg/L以下であり、通常運転時においては、硬度に対する分散剤の比率は非常に高くなり、この結果、マグネシウム系スケールを抑制しにくい環境にあることが分かる。
実施例1,2、比較例1〜4
表2に示す薬剤を表2に示す缶内添加濃度で用い、実験例1と同様にしてスケール付着量を調べ、結果を図2に示した。また、このときのボイラ水中の鉄濃度を図3に示した。
ただし、この際の試験条件としては、より実系に近い条件として、缶内に添加したスケール成分は炭酸カルシウム換算で約20mg/L(Ca:Mg=2:1)、スケール成分の添加時間は90時間とした。
Figure 2008221143
図2より、缶水への添加濃度としてAA−AMPSを500mg/L(比較例1)、PAAを500mg/L(比較例2)、またはEDTAを90mg/L(比較例3)、それぞれ単独で用いた場合は、カルシウム系スケールの付着を防止することはできるが、マグネシウム系スケールが付着してしまうのに対して、缶水添加濃度としてAA−AMPSを500mg/LとEDTAを90mg/Lを併用した場合(比較例1)またはPAAを500mg/LとEDTAを90mg/Lを併用した場合(実施例2)は、カルシウム系スケールのみではなく、マグネシウム系スケールについても付着を効果的に抑制できることが分かった。特に、PAAとEDTAを併用すると効果的にスケールの付着を抑制できることが確認された。
また、EDTAの添加濃度を450mg/Lに増加させることでも、マグネシウム系スケールの付着を抑制できることが分かったが(比較例4)、この場合には、以下の如く、缶内腐食の問題がある。
即ち、図3よりボイラ水中にPAAを500mg/L(比較例2)、EDTAを90mg/L(比較例3)、またはPAAを500mg/LとEDTAを90mg/Lを併用した条件(実施例2)においては、ボイラ水中の鉄濃度はほぼ同程度であり、ブランクに対して、僅かに増加するのみであるのに対して、EDTAを450mg/L(比較例4)で添加した場合は、ボイラ水中の鉄濃度はブランクの約3倍の濃度なり、マグネシウム系スケールを抑制するためにEDTAの添加濃度を増加させると、缶内を腐食させ、鉄濃度が上昇することが確認された。
なお、この図3においては、ブランク(薬品無添加)の場合の缶水鉄濃度0.16mg/Lを16として相対値で示してあり、例えば、EDTA450mg/Lを添加した比較例4の場合の缶水鉄濃度は0.47mg/L(図3における値では47)である。
実験例1の結果を示すグラフである。 実施例1,2および比較例1〜4におけるスケール付着量を示すグラフである。 実施例2および比較例2〜4におけるボイラ水中鉄濃度を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 軟水給水のボイラ水系で使用するマグネシウム系スケール防止剤において、分散剤と、キレート剤を含有することを特徴とするマグネシウム系スケール防止剤。
  2. 請求項1において、前記分散剤が、ポリアクリル酸および/またはその塩、並びに、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合物および/またはその塩よりなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とするマグネシウム系スケール防止剤。
  3. 請求項1または2において、前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸および/またはその塩であることを特徴とするマグネシウム系スケール防止剤。
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