JP6365369B2 - 高温殺菌対応共押出フィルムおよび深絞り包装体 - Google Patents
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Description
しかし、このような包装体は、外層と内層に硬い性質のポリプロピレンを使用している為に耐ピンホール性に劣り、輸送中の振動や落下等においてピンホールが発生しやすく、特に0℃以下の低温工程において著しく発生し、大きな問題となる。
しかしながら、ポリエチレン樹脂の内層では耐熱性が低く、高温殺菌処理により樹脂が内容物側へ溶融することやシール強度が低下すること等の問題が発生する。また直鎖状低密度ポリエチレン系接着樹脂の耐熱性も低い為、高温殺菌処理によりポリアミド樹脂層と接着樹脂層との間でデラミネーションが発生する。
しかしながら、特許文献2の技術では、ピンホールの発生は防ぎ切れておらず、特に低温下での発生防止が喫緊の課題となっている。また、高密度ポリエチレンは透明性が悪く、包装体の見栄えを損ない、引いては内容物の価値を損なうといった問題も抱えている。
尚、本明細書において、「主成分として構成される」とは、各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の50質量%以上100質量%以下、好ましくは70質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは85質量%以上100質量%以下を占めることを意味する。
本発明のフィルムの最外層に、高温殺菌後のフランジ部のカールを抑制する目的でポリプロピレン樹脂(以下、PPと略記することもある)層を少なくとも1層配する。
使用可能なポリプロピレン樹脂としてはホモポリマーやエチレン等とのランダムコポリマー、ブロックコポリマーなどが挙げられる。高温殺菌後のカール抑制や白化防止の観点からホモポリマーの使用が好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、後述の最外層の隣接層に用いる熱可塑性エラストマーと同種のものを使用できる。
熱可塑性エラストマーの混合比率は、最外層全体を100質量%として70質量%以下である。混合比率が70質量%よりも多いと、高温殺菌後にフランジ部がカールしてしまい、見栄えが劣ってしまう。
本発明フィルムの最外層の隣接層には、熱可塑性エラストマー(以下、ELAと略記することがある)層を配する。このことにより、最外層に剛質なポリプロピレン系樹脂層を配しても、耐ピンホール性や高温殺菌後の透明性を向上させることが出来る。
熱可塑性エラストマーは、40℃以上70℃以下の融点を持つ低結晶性の樹脂を含有する。低結晶性の樹脂としては、エチレン共重合比率が50モル%以上であるエチレン−α−オレフィン共重合体が用いられる。α−オレフィンには、例えばプロプレン、ブテン等が挙げられる。その融点が40℃未満では、常温で結晶化が進んでしまい透明性が損なわれ、また融点が70℃よりも高いと柔軟性が損なわれ、耐ピンホール性が劣ってしまう。
低結晶性の樹脂の含有量は、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
本発明のフィルムの中間層に、耐ピンホール性と深絞り成形性を付与する目的で少なくとも1層のポリアミド樹脂(以下、PAと略記することもある)層を配する。
中間層で用いられるポリアミド樹脂は特に限定されないが、3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、ジアミンとジカルボン酸を50モル%以上用いることが好ましい。
またポリアミド樹脂がポリマーブレンドである場合には、ポリアミド成分はポリマーブレンド質量全体の70質量%以上、好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上含まれていることが望ましい。
また、ポリアミド樹脂層は2層以上設けることもでき、その場合、各層が異なる種類のナイロン系樹脂で形成されていてもよい。
本発明のフィルムの中間層に、酸素バリア性を向上させる目的で、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物樹脂(以下、EVOHと略記することがある)層またはMXD−6ナイロン樹脂(以下、MXDと略記することがある)層を有することができる。
本発明のフィルムは、中間層と内層との間に接着層として、ポリプロピレン樹脂を主成分とする接着樹脂(以下、ADと略記することがある)からなる層を少なくとも1層配する。
接着層の厚みが5μm以上であれば、層間剥離強度を向上させることができる。また接着層が厚すぎると、フィルムの総厚みが厚くなってしまうほか、製造コストも嵩む為上限は25μm以下であることが望ましい。
本発明のフィルムは、接着層と隣接してその内側に、ポリプロピレン樹脂を主成分とする接着層と、ポリエチレン樹脂から成る内層との接着を高める目的で、ポリプロピレン樹脂とポリエチレン系エラストマーとの混合層を少なくとも1層配する。
混合層の厚みが5μm以上であれば、接着層と内層との接着性を向上させることができる。また混合層が厚すぎると、フィルムの総厚みが厚くなってしまうほか、製造コストも嵩む為上限は25μm以下であることが望ましい。
本発明のフィルムは、内層に密度0.925以上且つ融点125℃以上であるポリエチレン樹脂(以下、PEと略記することがある)層を少なくとも1層配する。より好ましくは、密度0.930以上、融点130℃以上である。これは高温殺菌処理において、樹脂が溶融せず、内容物への析出を防止する為に必要な条件である。
本発明のフィルムの内層に隣接した最内層に、包装体の開封性を向上させる目的で、凝集破壊性を有するイージーピール(以下、EPと略記することがある)層を配することができる。ここで、凝集破壊性を有するとは、包装体を開封する際に、イージーピール層自身が破壊することにより剥離すること意味し、破壊後のイージーピール層はその上下の層の双方に残る。
イージーピール層に用いるポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂の融点が共に125℃以上であることにより、高温殺菌中に樹脂が溶融せず、内容物への析出や開封きっかけ部の底材と蓋材の融着を防止することができる。
ポリエチレン樹脂の混合比率が50質量%以上であれば、シール層がポリエチレン樹脂である蓋材と良好なヒートシール性を維持でき、混合比率が90質量%以上では、イージーピール層の凝集力が強すぎて良好な易剥離性が得られない。
イージーピール強度の下限は、好ましくは2.94N/15mm幅以上、より好ましくは3.92N/15mm幅以上、さらに好ましくは4N/15mm幅以上である。一方、イージーピール強度の上限は、好ましくは9.8N/15mm幅以下、さらに好ましくは7.84N/15mm幅以下である。
イージーピール強度が1.96N/15mm幅(200gf/15mm幅)以上あれば、高温殺菌処理時に包装体が破袋してしまう危険性がなく、また11.8N/15mm幅(1200gf/15mm幅)以下であれば、包装体の良好な開封性を維持できる。
イージーピール層の厚みを3μm以上とすることにより、安定したフィルム製膜性が得られる。一方、イージーピール層の厚みを15μm以下とすることにより、包装体の開封時に毛羽立ちの発生を抑えることができ、かつ良好な剥離外観が得られる。
本発明のフィルムの総厚みの上限は、300μm以下、好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下とし、下限は70μm以上、好ましくは80μm以上、さらに好ましくは90μm以上とすることが望ましい。
総厚みの上限が300μm以下であれば、良好な深絞り成形性を維持できると共に、成形加熱工程の加熱時間が比較的短くて済み、かつ易開封性を維持できる。一方、総厚みの下限が70μm以上であれば、良好な耐ピンホール性が得られる。
好ましい層構成は、(1)、(3)、(5)、(6)である。
(2)C/B/F/G/H/I
(3)A/B/F/G/H/I/J
(4)A/B/D/F/G/H/I
(5)A/B/E/F/G/H/I
(6)A/B/E/F/G/H/I/J
尚、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂の密度はJIS K 7112法、融点はJIS K 7121法に準じて測定したものである。
[PP+ELA]2; プロピレン−エチレンランダム共重合体+ELA、混合重量比20:80
MXD ; MXD−6ナイロン
PA ; 6ナイロン
ADPE2; ポリエチレン系接着樹脂(密度0.912、融点120℃)
ADPP ; ポリプロピレン系接着樹脂
PE2 ; 直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.920、融点120℃)
PP2 ; エチレン−ポリプロピレンランダム共重合体
EP2 ; 低密度ポリエチレン(融点115℃)+ポリプロピレン(融点141℃)、混合質量比7:3
ONy ; 二軸延伸ナイロン6フィルム
LL ; 直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(高耐熱グレード)
底材に、各例に示す層構成の共押出多層フィルムを用いた。
蓋材には、実施例1〜5、比較例2〜6では、CPP//ONy//LLの積層フィルムを用い、比較例1では、CPP//ONy//CPPの積層フィルムを用いた。
フィルム層構成と試験評価結果を表1にまとめて示す。尚、フィルム層構成に関する表中数字は、各層厚み(μm)である。
PP1/ELA/PA/ADPP/[PP+PE系ELA]/PE1
[PP+ELA]1/ELA/PA/ADPP/[PP+PE系ELA]/PE1
[PP+ELA]2/ELA/PA/ADPP/[PP+PE系ELA]/PE1
PP1/ELA/EVOH/PA/ADPP/[PP+PE系ELA]/PE1
PP1/ELA/MXD/PA/ADPP/[PP+PE系ELA]/PE1
PP1/ELA/PA/ADPP/[PP+PE系ELA]/PE1/EP1
PP1/PA/ADPP/PP2
PP1/PA/ADPE2/PE2
PP1/PA/ADPE1/PE1
PP1/PA/ADPP/[PP+PE系ELA]/PE1
PP1/ELA/PA/ADPE1/PE1
PP1/ELA/PA/ADPP/[PP+PE系ELA]/PE1/EP2
(1)深絞り包装体の作製
実施例で作製したフィルムを深絞り包装機(大森機械工業社製FV6300)を用いて図1に示すような包装体に作製し、121℃、30分間の条件で高温殺菌処理した後、評価試験(2)〜(6)に供した。
図1において、網掛け表記部は、内容物としてハンバーグを含んだ深絞り成形部1であり、内容物の周縁部は、底材と蓋材とのヒートシール部2である。角部はヒートシールしていない開封きっかけ部3である。包装体の長辺は140mm、短辺は120mm、開封きっかけ部は縦横30mmである。
図2に示すように、包装体の底材4を上側に、蓋材5を下側にして置いた場合の水平面6に対するフランジ部のカールを評価した。カール高さ7が最も高い箇所で3mm未満であるものを◎、3mm以上5mm未満であるものを○、5mm以上であるものを×として評価した。
底材のデラミネーション(層間剥離)の有無を評価した。デラミネーションが発生しなかったものを○、発生したものを×として評価した。
フィルム構成樹脂の内容物側への溶け出し、及び開封きっかけ部における底材と蓋材の融着の有無を評価した。樹脂溶融及び融着が発生しなかったものを○、発生したものを×として評価した。
深絞り包装体を−20℃、24時間冷凍した後、ダンボール箱に入れて50cmの高さよりコンクリート面に垂直落下させ、包装体の割れやピンホールの不良の発生有無を評価した。
割れやピンホールが1つも発生しなかったものを○、割れやピンホールが何れか1つ以上発生したものを×として評価した。
底材フィルムを100mm×100mmに切断して試験片とし、衝撃強度試験機を用い、温度−20℃、ストライカの針径0.5インチ、打ち抜き速度3m/secの条件で、衝撃強度を測定した。
50kgf・mm以上のものを◎、30kgf・mm以上50kgf・mm未満のものを○、30kgf・mm未満のものを×として評価した。
高温殺菌処理前と処理後のフィルムをJIS K 7105に基づき23℃以下でのヘーズを測定した。10%未満のものを○、10%以上のものを×として評価した。
実施例3は、最外層に熱可塑性エラストマーが70質量%より多く含まれている為、フランジ部がカールした。
比較例2〜4は内層にポリエチレン樹脂を用いているが、外層がポリプロピレン樹脂層のみであるため、耐ピンホール性が不十分であった。
比較例2と6は、内層に低融点のポリエチレン樹脂を用いている為、内容物への溶融や開封きっかけ部の融着が発生した。
2 ヒートシール部
3 開封きっかけ部
4 底材
5 蓋材
6 水平面
7 カール高さ
Claims (4)
- 最外層にポリプロピレン樹脂層、最外層と隣接する層に融点40℃以上70℃以下の低結晶性樹脂を30質量%以上含有する熱可塑性エラストマー層、中間層にポリアミド樹脂層、ポリプロピレン樹脂を主成分とする接着樹脂からなる接着層、接着層と隣接する層にポリプロピレン樹脂とポリエチレン系エラストマーとの混合層、内層に密度0.925以上かつ融点125℃以上のポリエチレン樹脂層の層順であることを特徴とする共押出フィルム。
- 最外層中に、融点40〜70℃の低結晶性樹脂を30質量%以上含有する記熱可塑性エラストマーを、最外層全体を100重量%として70質量%以下の範囲で混合した請求項1に記載の共押出フィルム。
- 内層に隣接した最内層に、融点125℃以上のポリエチレン樹脂と融点125℃以上のポリプロピレン樹脂との混合で構成したイージーピール層を配する請求項1または2に記載の共押出フィルム。
- 請求項1〜3の何れかに記載の共押出しフィルムを用いて成形した深絞り包装体。
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