以下、本発明の各実施形態に係る電流センサについて図を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る電流センサの外観を示す斜視図である。図2は、図1の電流センサを矢印II方向から見た側面図である。図3は、図2の電流センサをIII−III線矢印方向から見た断面図である。図4は、本発明の実施形態1に係る電流センサの構成を示す分解斜視図である。図5は、本発明の実施形態1に係る電流センサの回路基板の外観を示す斜視図である。図6は、本発明の実施形態1に係る電流センサの回路構成を示す回路図である。図1〜3においては、後述する1次導体110の幅方向をX軸方向、1次導体110の長さ方向をY軸方向、1次導体110の厚さ方向をZ軸方向として、図示している。
図1〜6に示すように、本発明の実施形態1に係る電流センサ100は、測定対象の電流が流れる1次導体110と、1次導体110を流れる電流により発生する磁界の強さを検出する2つの磁気センサとを備える。2つの磁気センサは、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bから構成されている。本実施形態においては、電流センサ100は、2つの磁気センサを備えているが、これに限られず、少なくとも1つの磁気センサを備えていればよい。
さらに、電流センサ100は、1次導体110および2つの磁気センサの周りを囲む第1磁性体部170と、第1磁性体部170の周りを囲む第2磁性体部180とを備える。第1磁性体部170は、空隙173が設けられており、空隙173により周方向において不連続となった筒形状を有する。
本実施形態においては、第1磁性体部170は、2つの第1磁性体部材171,172から構成されている。ただし、第1磁性体部170の構成は上記に限られず、少なくとも1つの第1磁性体部材で構成されていればよい。2つの第1磁性体部材171,172は、1次導体110を流れる電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、互いの端部同士の間に空隙173が設けられた矩形形状を成し、1次導体110および2つの磁気センサの周りを囲んでいる。具体的には、2つの第1磁性体部材171,172は、後述する、第1回路基板160a、第2回路基板160b、および、第1回路基板160aと第2回路基板160bとに挟まれた部分の1次導体110に対して間隔を置いて周りを囲んでいる。
本実施形態においては、第2磁性体部180は、全周に亘って繋がった筒形状を有する。第2磁性体部180は、1つの第2磁性体部材で構成されている。ただし、第2磁性体部180の構成は上記に限られず、少なくとも1つの第2磁性体部材で構成されていればよい。第2磁性体部材は、1次導体110を流れる電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、矩形形状を成し、2つの第1磁性体部材171,172に対して間隔を置いて周りを囲んでいる。
1次導体110、第1回路基板160a、第2回路基板160b、2つの第1磁性体部材171,172、および、第2磁性体部材の各々の相対位置は、図示しないケースなどにより維持されている。ケースは、ポリフェニレンスルファイドなどの高温耐性を有するエンジニアリングプラスティックなどで形成されていることが好ましい。第1回路基板160aおよび第2回路基板160bの各々とケースとをネジにより締結する場合には、磁場の乱れが生じないように、非磁性材料からなるネジで締結されていることが好ましい。
以下、各構成について詳細に説明する。
本実施形態においては、1次導体110は、平板形状を有している。1次導体110は、1次導体110の表面から裏面まで貫通した1つの貫通部を有している。具体的には、1次導体110の幅方向における中央部に、平面視にて円形の貫通孔110hが設けられている。電流は、1次導体110をY軸方向に流れる。
本実施形態においては、1次導体110は、銅で構成されている。ただし、1次導体110の材料はこれに限られず、銀、アルミニウムなどの金属またはこれらの金属を含む合金でもよい。1次導体110は、表面処理が施されていてもよい。たとえば、ニッケル、錫、銀、銅などの金属またはこれらの金属を含む合金からなる、少なくとも1層のめっき層が、1次導体110の表面に設けられていてもよい。
本実施形態においては、薄板をプレス加工することにより1次導体110が形成されている。ただし、1次導体110の形成方法はこれに限られず、切削、鍛造または鋳造などの方法によって1次導体110が形成されてもよい。
本実施形態においては、第1磁気センサ120aは、第1オペアンプ140aおよび第1受動素子150aとともに第1プリント基板130aに実装されている。第1磁気センサ120aは、第1プリント基板130aの中央に配置されている。第1磁気センサ120a、第1プリント基板130a、第1オペアンプ140aおよび第1受動素子150aは、第1回路基板160aを構成している。第1プリント基板130aは、ガラスエポキシまたはアルミナからなる基板、および、基板上に銅箔などの金属箔がパターニングされて形成された配線を含む。第1回路基板160aには、第1磁気センサ120aからの信号を演算する演算回路が構成されている。
第2磁気センサ120bは、第2オペアンプ140bおよび第2受動素子150bとともに第2プリント基板130bに実装されている。第2磁気センサ120bは、第2プリント基板130bの中央に配置されている。第2磁気センサ120b、第2プリント基板130b、第2オペアンプ140bおよび第2受動素子150bは、第2回路基板160bを構成している。第2プリント基板130bは、ガラスエポキシまたはアルミナからなる基板、および、基板上に銅箔などの金属箔がパターニングされて形成された配線を含む。第2回路基板160bには、第2磁気センサ120bからの信号を演算する演算回路が構成されている。
第1回路基板160aは、1次導体110の表面上に載置されている。第1磁気センサ120aは、第1プリント基板130aを1次導体110との間に挟んで、貫通孔110hの直上に位置している。第2回路基板160bは、1次導体110の裏面上に配置されている。第2磁気センサ120bは、第2プリント基板130bを1次導体110との間に挟んで、貫通孔110hの直下に位置している。
すなわち、第1磁気センサ120aと第2磁気センサ120bとは、1次導体110を挟んで互いに反対側に位置している。第1磁気センサ120aは、1次導体110の幅方向(X軸方向)における中央部の、1次導体110の厚さ方向(Z軸方向)における一方側(上方側)に配置されている。第2磁気センサ120bは、1次導体110の幅方向(X軸方向)における中央部の、1次導体110の厚さ方向(Z軸方向)における他方側(下方側)に配置されている。
第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々の検出軸の方向(感磁方向)は、1次導体110の幅方向(X軸方向)である。すなわち、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々は、1次導体110の厚さ方向(Z軸方向)および1次導体110を電流が流れる方向(Y軸方向)の両方と直交する方向(X軸方向)の磁界を検出可能とされている。
第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々は、検出軸の一方向に向いた磁界を検出した場合に正の値で出力し、かつ、検出軸の一方向とは反対方向に向いた磁界を検出した場合に負の値で出力する、入出力特性を有している。
第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々は、4つのAMR(Anisotropic Magneto Resistance)素子からなるホイートストンブリッジ型のブリッジ回路を有する。なお、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々が、AMR素子に代えて、GMR(Giant Magneto Resistance)、TMR(Tunnel Magneto Resistance)、BMR(Balistic Magneto Resistance)、CMR(Colossal Magneto Resistance)などの磁気抵抗素子を有していてもよい。また、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々が、2つの磁気抵抗素子からなるハーフ・ブリッジ回路を有していてもよい。その他にも、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bとして、ホール素子を有する磁気センサ、磁気インピーダンス効果を利用するMI(Magneto Impedance)
素子を有する磁気センサまたはフラックスゲート型磁気センサなどを用いることができる。磁気抵抗素子およびホール素子などの磁気素子は、樹脂パッケージされていてもよく、または、シリコーン樹脂若しくはエポキシ樹脂などでポッティングされていてもよい。
第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々のAMR素子は、バーバーポール型電極を含むことによって、奇関数入出力特性を有している。具体的には、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々のAMR素子は、バーバーポール型電極を含むことにより、所定の角度に電流が流れるようにバイアスされている。第1磁気センサ120aのAMR素子における磁気抵抗膜の磁化方向と、第2磁気センサ120bのAMR素子における磁気抵抗膜の磁化方向とは、同一方向である。これにより、外部磁界の影響による出力精度の低下を小さくすることができる。
図6に示すように、電流センサ100は、第1磁気センサ120aの検出値と第2磁気センサ120bの検出値とを演算することにより1次導体110を流れる電流の値を算出する算出部190を備える。算出部190は、差動増幅器である。ただし、算出部190が減算器であってもよい。
図1,3,4に示すように、1次導体110を電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、第1磁性体部材171,172は、それぞれL字形状を有する。第1磁性体部材171,172の各々は、第1板状部と、第1板状部に直交している第2板状部とを有している。第1磁性体部材171,172の各々の第1板状部と1次導体110とは、互いに平行に位置している。
2つの空隙173の各々は、1次導体110を電流が流れる方向(Y軸方向)において、第1磁性体部170の一端から他端まで延在している。2つの空隙173の各々は、1次導体110を流れる電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、第1磁性体部材171,172が成す矩形形状の対角に位置している。1次導体110を流れる電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、第1磁性体部材171,172が成す矩形形状の中心位置と、1次導体110の貫通孔110hの位置とは重なっている。
第1磁性体部材171,172の各々は、PBパーマロイで構成されている。第2磁性体部材は、PCパーマロイで構成されている。PBパーマロイは、Ni成分を約45%含み、残部が主にFe成分である合金である。PCパーマロイはNi成分を約80%含み、残部が主にFe成分である合金である。第2磁性体部材を構成する材料の初透磁率が、第1磁性体部材171,172の各々を構成する材料の初透磁率より高い方が好ましい。第1磁性体部材171,172および第2磁性体部材の各々の材料としては、上記に限られず、軟鉄鋼、ケイ素鋼、電磁鋼、PBパーマロイ、PCパーマロイ、ニッケル合金、鉄合金またはフェライトなどの、透磁率および飽和磁束密度の高い磁性体材料が好ましい。
本実施形態においては、第2磁性体部材は、第1磁性体部材171,172の各々より薄い。ただし、第2磁性体部材は、第1磁性体部材171,172の各々と同等以上に厚くてもよい。
本実施形態においては、薄板をプレス加工することにより第1磁性体部材171,172および第2磁性体部材の各々が形成されている。ただし、第1磁性体部材171,172および第2磁性体部材の各々の形成方法はこれに限られず、切削、鍛造または鋳造などの方法によって第1磁性体部材171,172および第2磁性体部材の各々が形成されてもよい。
第1磁性体部材171,172と第2磁性体部材との間の隙間は、比透磁率が1に近い材料で満たされていることが好ましい。具体的には、樹脂、無機物、セラミックス、若しくはこれらの複合材料、または空気などで、上記隙間が満たされていることが好ましい。樹脂では、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリマー、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂、または、フェノール樹脂などを用いることができる。無機物では、ガラスなどを用いることができる。セラミックスでは、アルミナまたはステアタイトなどを用いることができる。
ここで、貫通部を有さない比較例1の1次導体110、および、貫通孔110hが設けられた実施例1の1次導体110について、1次導体110の幅方向(X軸方向)における中央部の直上または直下の位置における、1次導体110の表面110sまたは裏面110tからの距離と磁束密度との関係をシミュレーション解析した結果について説明する。
図7は、比較例1に係る1次導体の横断面形状を示す断面図である。図8は、実施例1に係る1次導体の横断面形状を示す断面図である。図7,8に示すように、比較例1および実施例1において、1次導体110の横断面の外形は、幅30mm、厚さ2.5mmとした。実施例1に係る1次導体110の幅方向の中央部に、直径2mmの貫通孔110hを設けた。比較例1および実施例1において、1次導体110を流れる電流の値を100Aとして、図7,8に示すように、1次導体110の幅方向の中央部の直上または直下に位置する基準線1上における磁束密度分布をシミュレーション解析により算出した。なお、比較例1および実施例1においては、第1磁性体部材171,172および第2磁性体部材は配置していない。
図9は、実施例1に係る1次導体の周囲に発生する磁界を模式的に示す断面図である。図9においては、図8と同一の断面視にて図示している。図10は、比較例1および実施例1に係る1次導体の幅方向の中央部の直上または直下に位置する基準線上における、1次導体の表面または裏面からの距離と1次導体の幅方向(X軸方向)の磁束密度との関係を示すグラフである。図10においては、縦軸に磁束密度(mT)、横軸に1次導体110の表面110sまたは裏面110tからの距離(mm)を示している。また、図10においては、実施例1に係る1次導体110のデータを実線で、比較例1に係る1次導体110のデータを点線で示している。
図9に示すように、いわゆる右ねじの法則によって、貫通孔110hの左側に位置する1次導体110を流れる電流10により磁界110eが発生する。同様に、貫通孔110hの右側に位置する1次導体110を流れる電流10により磁界110eが発生する。
1次導体110の幅方向の中央部の直上に位置する基準線1上においては、貫通孔110hの左側に位置する1次導体110を流れる電流10により発生した磁界110eによるZ軸方向の磁束密度LZと、貫通孔110hの右側に位置する1次導体110を流れる電流10により発生した磁界110eによるZ軸方向の磁束密度RZとが、打ち消し合う。一方、貫通孔110hの左側に位置する1次導体110を流れる電流10により発生した磁界110eによるX軸方向の磁束密度LXと、貫通孔110hの右側に位置する1次導体110を流れる電流10により発生した磁界110eによるX軸方向の磁束密度RXとが、組み合わされる。
1次導体110の幅方向の中央部の直下に位置する基準線1上においては、貫通孔110hの左側に位置する1次導体110を流れる電流10により発生した磁界110eによるZ軸方向の磁束密度LZと、貫通孔110hの右側に位置する1次導体110を流れる電流10により発生した磁界110eによるZ軸方向の磁束密度RZとが、打ち消し合う。一方、貫通孔110hの左側に位置する1次導体110を流れる電流10により発生した磁界110eによるX軸方向の磁束密度LXと、貫通孔110hの右側に位置する1次導体110を流れる電流10により発生した磁界110eによるX軸方向の磁束密度RXとが、組み合わされる。
図10に示すように、比較例1に係る1次導体110の幅方向の中央部の直上に位置する基準線1上におけるX軸方向の磁束密度は、1次導体110の表面110sからの距離が大きくなるに従って低下している。一方、実施例1に係る1次導体110の幅方向の中央部の直上に位置する基準線1上におけるX軸方向の磁束密度は、1次導体110の表面110sからの距離が4mmに到達するまでは距離が大きくなるに従って増加し、1次導体110の表面110sから4mm以上10mm以下の位置においては略一定になっている。
実施例1に係る1次導体110の幅方向の中央部の直上に位置する基準線1上におけるX軸方向の磁束密度は、1次導体110の表面110sからの距離に関わらず、比較例に係る1次導体110の幅方向の中央部の直上に位置する基準線1上におけるX軸方向の磁束密度より低くなっている。これは、貫通孔110hの部分に、電流が流れていないためである。
同様に、比較例1に係る1次導体110の幅方向の中央部の直下に位置する基準線1上におけるX軸方向の磁束密度は、1次導体110の裏面110tからの距離が大きくなるに従って低下している。一方、実施例1に係る1次導体110の幅方向の中央部の直下に位置する基準線1上におけるX軸方向の磁束密度は、1次導体110の裏面110tからの距離が4mmに到達するまでは距離が大きくなるに従って増加し、1次導体110の裏面110tから4mm以上10mm以下の位置においては略一定になっている。
実施例1に係る1次導体110の幅方向の中央部の直下に位置する基準線1上におけるX軸方向の磁束密度は、1次導体110の裏面110tからの距離に関わらず、比較例に係る1次導体110の幅方向の中央部の直下に位置する基準線1上におけるX軸方向の磁束密度より低くなっている。これは、貫通孔110hの部分に、電流が流れていないためである。
このシミュレーション解析の結果から分かるように、本実施形態に係る電流センサ100においては、第1磁気センサ120aを、1次導体110の貫通孔110hの直上の位置に配置することにより、第1磁気センサ120aに作用する磁束密度を低減することができる。よって、1次導体110に大電流が流れた場合においても、第1磁気センサ120aの磁気抵抗素子が磁気飽和することを抑制することができる。
同様に、第2磁気センサ120bを、1次導体110の貫通孔110hの直下の位置に配置することにより、第2磁気センサ120bに作用する磁束密度を低減することができる。よって、1次導体110に大電流が流れた場合においても、第2磁気センサ120bの磁気抵抗素子が磁気飽和することを抑制することができる。
図11は、磁気抵抗素子に作用する磁束密度と磁気抵抗素子の出力電圧との関係を示すグラフである。図11においては、縦軸に磁気抵抗素子の出力電圧、横軸に磁気抵抗素子に作用する磁束密度を示している。
図11に示すように、磁気抵抗素子が磁気飽和していない第1領域T1においては、磁気抵抗素子に作用する磁束密度の増加に比例して磁気抵抗素子の出力電圧が増加する。磁気抵抗素子が磁気飽和している第2領域T2においては、磁気抵抗効果素子に作用する磁束密度が増加しても磁気抵抗素子の出力電圧はほとんど増加しない。
本実施形態に係る電流センサ100においては、複雑な回路によらずに1次導体110に貫通孔110hを設けた簡易な構造で磁気抵抗素子に作用する磁束密度を低減することにより、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bを第1領域T1にて動作させることができる。その結果、電流センサ100の入力ダイナミックレンジを拡大させることができ、電流センサ100によって大電流を正確に測定することが可能となる。
また、第1磁気センサ120aを1次導体110の貫通孔110hの直上の位置に配置し、第2磁気センサ120bを1次導体110の貫通孔110hの直下の位置に配置することにより、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に作用するX軸方向およびZ軸方向の磁束密度を低減することができるため、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に加わる磁界の強度にばらつきが生ずることを抑制できる。その結果、電流センサ100によって被測定電流の大きさを安定して測定することができる。
上記のように、実施例1に係る1次導体110の幅方向の中央部の直上または直下に位置する基準線1上において、1次導体110の表面110sまたは裏面110tから4mm以上10mm以下の位置は、X軸方向の磁束密度が略一定になっているロバスト領域である。
本実施形態に係る電流センサ100においては、第1磁気センサ120aが、第1プリント基板130aを1次導体110との間に挟んで、貫通孔110hの直上に位置していることにより第1磁気センサ120aがロバスト領域内に位置している。すなわち、第1磁気センサ120aがロバスト領域内に位置するように、第1プリント基板130aの厚さを適宜設定している。
同様に、電流センサ100においては、第2磁気センサ120bが、第2プリント基板130bを1次導体110との間に挟んで、貫通孔110hの直下に位置していることにより第2磁気センサ120bがロバスト領域内に位置している。すなわち、第2磁気センサ120bがロバスト領域内に位置するように、第2プリント基板130bの厚さを適宜設定している。
第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々をロバスト領域内に位置させることにより、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に加わる磁界の強度にばらつきが生ずることを安定して抑制できる。その結果、電流センサ100によって被測定電流の大きさをさらに安定して測定することができる。なお、1次導体110に貫通孔110hを設ける代わりに、絞り加工などにより凹部を設けた場合にも同様にロバスト領域を形成することができる。
図9に示すように、第1磁気センサ120aに作用するX軸方向の磁束の向きと、第2磁気センサ120bに作用するX軸方向磁束の向きとが反対であるため、1次導体110を流れる電流により発生する磁界の強さについて、第1磁気センサ120aの検出値の位相と、第2磁気センサ120bの検出値の位相とは、逆相である。
よって、第1磁気センサ120aの検出した磁界の強さを正の値とすると、第2磁気センサ120bの検出した磁界の強さは負の値となる。第1磁気センサ120aの検出値と第2磁気センサ120bの検出値とは、算出部190に送信される。
算出部190は、第1磁気センサ120aの検出値から第2磁気センサ120bの検出値を減算する。その結果、第1磁気センサ120aの検出値の絶対値と、第2磁気センサ120bの検出値の絶対値とが加算される。この加算結果から、1次導体110を流れた電流の値が算出される。
本実施形態に係る電流センサ100においては、第1磁気センサ120aと第2磁気センサ120bとの間に、1次導体110、第1プリント基板130a、および第2プリント基板130bが位置しているため、外部磁界源は、物理的に第1磁気センサ120aと第2磁気センサ120bとの間に位置することができない。
そのため、外部磁界源から第1磁気センサ120aに印加される磁界のうちの検出軸の方向における磁界成分の向きと、外部磁界源から第2磁気センサ120bに印加される磁界のうちの検出軸の方向における磁界成分の向きとは、同じ向きとなる。よって、第1磁気センサ120aの検出した外部磁界の強さを正の値とすると、第2磁気センサ120bの検出した外部磁界の強さも正の値となる。
その結果、算出部190が第1磁気センサ120aの検出値から第2磁気センサ120bの検出値を減算することにより、第1磁気センサ120aの検出値の絶対値と、第2磁気センサ120bの検出値の絶対値とが減算される。これにより、外部磁界源からの磁界は、ほとんど検出されなくなる。すなわち、外部磁界の影響が低減される。
本実施形態の変形例として、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bにおいて、検出値が正となる検出軸の方向を互いに反対方向(180°反対)にしてもよい。この場合、第1磁気センサ120aの検出する外部磁界の強さを正の値とすると、第2磁気センサ120bの検出する外部磁界の強さは負の値となる。
一方、1次導体110を流れる電流により発生する磁界の強さについて、第1磁気センサ120aの検出値の位相と、第2磁気センサ120bの検出値の位相とは同相となる。
本変形例においては、算出部190として差動増幅器に代えて加算器または加算増幅器を用いる。外部磁界の強さについては、第1磁気センサ120aの検出値と第2磁気センサ120bの検出値とを加算器または加算増幅器によって加算することにより、第1磁気センサ120aの検出値の絶対値と、第2磁気センサ120bの検出値の絶対値とが減算される。これにより、外部磁界源からの磁界は、ほとんど検出されなくなる。すなわち、外部磁界の影響が低減される。
一方、1次導体110を流れる電流により発生する磁界の強さについては、第1磁気センサ120aの検出値と第2磁気センサ120bの検出値とを加算器または加算増幅器によって加算することにより、第1磁気センサ120aの検出値の絶対値と、第2磁気センサ120bの検出値の絶対値とが加算される。この加算結果から、1次導体110を流れた電流の値が算出される。
このように、第1磁気センサ120aと第2磁気センサ120bとの入出力特性を互いに逆の極性にしつつ、差動増幅器に代えて加算器または加算増幅器を算出部として用いてもよい。
本実施形態に係る電流センサ100においては、上記のように、第1磁性体部材171,172の各々はPBパーマロイで構成され、第2磁性体部材はPCパーマロイで構成されている。図12は、磁性材料の比透磁率と磁界の強さとの関係を示すグラフである。図12においては、縦軸に磁性材料の比透磁率、横軸に磁界の強さを示している。磁性材料の磁気シールドとしての効果は、磁性材料の透磁率が高いほど大きくなる。図12に示すように、磁界の強さが1.0(Oe)程度であるとき、PBパーマロイおよびPCパーマロイは、軟鉄鋼および電磁鋼と同程度の比透磁率まで低下する。よって、上記の算出部190によって外部磁界源からの磁界をほとんど検出されなくすることにより、外部磁界の強さに関わらず外部磁界の影響を低減することができる。
図1,3に示すように、本実施形態に係る電流センサ100においては、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々は、第1磁性体部170および第2磁性体部180によって周りを2重に囲まれているため、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に誤差要因である外部磁界が到達することを確実に抑制できる。その結果、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々が、不要な外部磁界を検知しないようにすることができる。すなわち、第1磁性体部170および第2磁性体部180の各々が、磁気シールドとして機能する。
第1磁性体部170に空隙173が設けられることにより、1次導体110を流れる電流により発生する磁界によって第1磁性体部170内を周回する磁束に対する磁気抵抗が増加する。その結果、第1磁性体部材171,172が、1次導体110を流れる電流により発生する磁界によって磁気飽和することを抑制できる。これにより、第2磁性体部材の残留磁化によって発生する磁界が第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に到達することを抑制できる。また、1次導体110を流れる電流により発生する磁界によって、第2磁性体部材が磁気飽和することを抑制できる。
よって、本実施形態に係る電流センサ100は、第1磁性体部170および第2磁性体部180を有することにより、ヒステリシスの増加を抑制しつつ入力と出力との線形性を確保して、測定誤差を低減することができる。
本実施形態に係る電流センサ100においては、2つの空隙173の各々が、1次導体110を流れる電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、第1磁性体部材171,172が成す矩形形状の対角に位置していることにより、第1磁性体部材171,172の残留磁化により発生する磁界による測定誤差を低減することができる。
本実施形態に係る電流センサ100においては、第2磁性体部180が全周に亘って繋がった筒形状を有していることにより、第2磁性体部180の周方向に外部磁界の侵入路となる空隙が存在しない。そのため、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に誤差要因である外部磁界が到達することをより確実に抑制できる。
本実施形態に係る電流センサ100においては、第2磁性体部材を構成する材料の初透磁率が、第1磁性体部材171,172の各々を構成する材料の初透磁率より高いため、外部磁界を効果的に遮蔽することができる。
本実施形態に係る電流センサ100においては、第2磁性体部材は、第1磁性体部材171,172の各々より薄いため、電流センサ100が小型および軽量になり、電流センサ100を廉価に製造可能となる。
また、本実施形態に係る電流センサ100においては、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々をロバスト領域内に位置させることにより、電流センサ100の組み立てに高い精度が要求されないため、電流センサ100を容易に製造可能である。
以下、本発明の実施形態2に係る電流センサについて説明する。なお、実施形態2に係る電流センサ200は、第2磁性体部に空隙が設けられている点のみ実施形態1に係る電流センサと異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
(実施形態2)
図13は、本発明の実施形態2に係る電流センサの構成を示す断面図である。図13においては、図3と同様の方向から電流センサを見た断面視にて図示している。
図13に示すように、本発明の実施形態2に係る電流センサ200は、第2磁性体部280は、空隙273が設けられており、空隙273により周方向において不連続となった筒形状を有する。本実施形態においては、第2磁性体部280は、2つの第2磁性体部材281,282から構成されている。2つの第2磁性体部材281,282は、1次導体110を流れる電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、互いの端部同士の間に空隙273が設けられた矩形形状を成し、2つの第1磁性体部材171,172に対して間隔を置いて周りを囲んでいる。
図13に示すように、1次導体110を電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、第2磁性体部材281,282は、それぞれL字形状を有する。第2磁性体部280の空隙273は、第1磁性体部材171,172の各々の角部171r,172rの外側に位置している。
第2磁性体部材281,282の各々は、第3板状部と、第3板状部に直交している第4板状部とを有している。第2磁性体部材281,282の各々の第3板状部と1次導体110とは、互いに平行に位置している。第2磁性体部材281の第3板状部と、第1磁性体部材172の第1板状部とは、互いに間隔を置いて平行に位置している。第2磁性体部材282の第3板状部と、第1磁性体部材171の第1板状部とは、互いに間隔を置いて平行に位置している。
第2磁性体部材281の第4板状部と、第1磁性体部材171の第2板状部とは、互いに間隔を置いて平行に位置している。第2磁性体部材282の第4板状部と、第1磁性体部材172の第2板状部とは、互いに間隔を置いて平行に位置している。
2つの空隙273の各々は、1次導体110を電流が流れる方向(Y軸方向)において、第2磁性体部280の一端から他端まで延在している。2つの空隙273の各々は、1次導体110を流れる電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、第2磁性体部材281,282が成す矩形形状の対角に位置している。1次導体110を流れる電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、第2磁性体部材281,282が成す矩形形状の中心位置と、1次導体110の貫通孔110hの位置とは重なっている。
第2磁性体部材281,282の各々は、PCパーマロイで構成されているが、第2磁性体部材281,282の各々の材料は、PCパーマロイに限られず、軟鉄鋼、ケイ素鋼、電磁鋼、PBパーマロイ、ニッケル合金、鉄合金またはフェライトなどの、透磁率および飽和磁束密度の高い磁性体材料が好ましい。
本実施形態においては、薄板をプレス加工することにより第2磁性体部材281,282の各々が形成されている。ただし、第2磁性体部材281,282の各々の形成方法はこれに限られず、切削、鍛造または鋳造などの方法によって第2磁性体部材281,282の各々が形成されてもよい。
図13に示すように、本実施形態に係る電流センサ200においては、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々は、第1磁性体部170および第2磁性体部280によって周りを2重に囲まれているため、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に誤差要因である外部磁界が到達することを抑制できる。その結果、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々が、不要な外部磁界を検知しないようにすることができる。すなわち、第1磁性体部170および第2磁性体部280の各々が、磁気シールドとして機能する。
また、第2磁性体部280の空隙273が、第1磁性体部材171,172の各々の角部171r,172rの外側に位置していることにより、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの周りを、第1磁性体部170および第2磁性体部280によって略完全に囲むことができる。そのため、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に誤差要因である外部磁界が到達することを確実に抑制できる。
本実施形態に係る電流センサ200においては、第2磁性体部280に空隙273が設けられることにより、1次導体110を流れる電流により発生する磁界または外部磁界によって第2磁性体部280内を周回する磁束に対する磁気抵抗が増加する。その結果、第2磁性体部材281,282が、1次導体110を流れる電流により発生する磁界または外部磁界によって磁気飽和することを抑制できる。これにより、第2磁性体部280の磁気シールドとしての機能を維持できるため、外部磁界が第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に到達することを抑制できる。
本実施形態に係る電流センサ200においても、第1磁性体部170および第2磁性体部280を有することにより、ヒステリシスの増加を抑制しつつ入力と出力との線形性を確保して、測定誤差を低減することができる。
以下、本発明の実施形態3に係る電流センサについて説明する。なお、実施形態3に係る電流センサ300は、1つのプリント基板に2つの磁気センサが実装されている点のみ実施形態2に係る電流センサと異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
(実施形態3)
図14は、本発明の実施形態3に係る電流センサの構成を示す断面図である。図14においては、図3と同様の方向から電流センサを見た断面視にて図示している。図14に示すように、本発明の実施形態3に係る電流センサ300においては、プリント基板330cは、貫通孔330hに1次導体110を挿入された状態で保持される。すなわち、プリント基板330cは、1次導体110に垂直に位置している。
第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bは、差動増幅器および受動素子と共にプリント基板330cに実装されている。なお、図14においては、差動増幅器および受動素子は図示していない。差動増幅器および受動素子は、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bが実装されているプリント基板330cとは異なるプリント基板に、実装されていてもよい。
第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bは、貫通孔330hを挟んで互いに反対側に位置している。第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々は、貫通孔330hに対して間隔を置いて位置している。プリント基板330cの貫通孔330hに1次導体110が挿入された状態において、第1磁気センサ120aは貫通孔330hの直上に位置し、第2プリント基板130bは貫通孔330hの直下に位置している。すなわち、第1磁気センサ120aと第2磁気センサ120bとは、1次導体110を挟んで互いに反対側に位置している。
本実施形態に係る電流センサ300においては、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々は、ロバスト領域内に位置している。すなわち、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bがロバスト領域内に位置するように、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々と貫通孔330hとの間隔を適宜設定している。
第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々の検出軸の方向(感磁方向)は、1次導体110の幅方向(X軸方向)である。本実施形態に係る電流センサ300においても、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に作用するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の磁束密度を低減することができるため、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bに加わる磁界の強度にばらつきが生ずることを抑制できる。その結果、電流センサ300によって被測定電流の大きさを安定して測定することができる。
以下、本発明の実施形態4に係る電流センサについて説明する。なお、実施形態4に係る電流センサ400は、プリント基板および磁性体部材が1次導体に対して付け外し可能に構成されている点のみ実施形態3に係る電流センサと異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
(実施形態4)
図15は、本発明の実施形態4に係る電流センサにおいて、プリント基板および磁性体部材を1次導体に対して取り付けた状態を示す断面図である。図16は、本発明の実施形態4に係る電流センサにおいて、プリント基板および磁性体部材を1次導体に対して取り付ける前の状態を示す断面図である。図15,16においては、図3と同様の方向から電流センサを見た断面視にて図示している。
図15,16に示すように、本発明の実施形態4に係る電流センサ400においては、第1磁性体部材171、第2磁性体部材281、および、プリント基板430cが、樹脂または接着剤などからなる第1接合部材491により互いに接合されて一体になっている。第1磁性体部材172および第2磁性体部材282が、樹脂または接着剤などからなる第2接合部材492により互いに接合されて一体になっている。
具体的には、プリント基板430cの周面と第1磁性体部材171の内面とが、第1接合部材491により互いに接合されている。互いに対向している、第1磁性体部材171の第2板状部の外面と第2磁性体部材281の第4板状部の内面とが、第1接合部材491により互いに接合されている。互いに対向している、第1磁性体部材172の第2板状部の外面と第2磁性体部材282の第4板状部の内面とが、第2接合部材492により互いに接合されている。第1接合部材491および第2接合部材492の各々が樹脂で構成されている場合には、熱溶着により上記の部材同士が接合される。
プリント基板430cの周面のうち、第1磁性体部材171および第2磁性体部材281に囲まれていな端面側から、反対側の端面に向けて貫通溝430hが設けられている。プリント基板430cと第2磁性体部材281の第3板状部との間には、第1磁性体部材172の第1板状部が挿入可能な隙間が設けられている。
プリント基板430c、第1磁性体部材171,172および第2磁性体部材281,282を1次導体110に対して取り付ける際には、プリント基板430cの貫通溝430hに1次導体110が挿入されるように、矢印41で示す方向にプリント基板430c、第1磁性体部材171および第2磁性体部材281を1次導体110に対して接近させる。また、プリント基板430cと第2磁性体部材281の第3板状部との間の隙間に第1磁性体部材172の第1板状部が挿入されるように、矢印42で示す方向に第1磁性体部材172および第2磁性体部材282を1次導体110に対して接近させる。
図15に示すように、プリント基板430cおよび磁性体部材を1次導体110に対して取り付けた状態においては、プリント基板430cは、貫通溝430hに1次導体110を挿入された状態で保持される。すなわち、プリント基板430cは、1次導体110に垂直に位置している。
本実施形態においては、2つの空隙173および2つの空隙273の各々は、第1接合部材491および第2接合部材492の少なくとも一方によって埋められている。本実施形態に係る電流センサ400においては、プリント基板430cおよび磁性体部材が1次導体110に対して付け外し可能に構成されているため、電流センサ400の組み立ておよび分解が容易である。
本実施形態に係る電流センサ400においても、2つの空隙173の各々が、1次導体110を流れる電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、第1磁性体部材171,172が成す矩形形状の対角に位置していることにより、第1磁性体部材171,172の残留磁化により発生する磁界による測定誤差を低減することができる。
また、第2磁性体部280の空隙273が、第1磁性体部材171,172の各々の角部171r,172rの外側に位置していることにより、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの周りを、第1磁性体部170および第2磁性体部280によって略完全に囲むことができる。そのため、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に誤差要因である外部磁界が到達することを確実に抑制できる。
以下、本発明の実施形態5に係る電流センサについて説明する。なお、実施形態5に係る電流センサ500は、第1磁性体部の構造のみ実施形態1に係る電流センサと異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
(実施形態5)
図17は、本発明の実施形態5に係る電流センサの構成を示す断面図である。図17においては、図3と同様の方向から電流センサを見た断面視にて図示している。図17に示すように、電流センサ500は、1次導体110および2つの磁気センサの周りを囲む第1磁性体部570と、第1磁性体部570の周りを囲む第2磁性体部180とを備える。第1磁性体部570は、空隙573が設けられており、空隙573により周方向において不連続となった筒形状を有する。
本実施形態においては、第1磁性体部570は、2つの第1磁性体部材571,572から構成されている。2つの第1磁性体部材571,572は、1次導体110を流れる電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、互いの端部同士の間に空隙573が設けられた矩形形状を成し、1次導体110および2つの磁気センサの周りを囲んでいる。具体的には、2つの第1磁性体部材571,572は、第1回路基板160a、第2回路基板160b、および、第1回路基板160aと第2回路基板160bとに挟まれた部分の1次導体110に対して間隔を置いて周りを囲んでいる。
1次導体110を電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、第1磁性体部材571,572は、それぞれU字形状を有する。第1磁性体部材571,572の各々は、第1板状部と、第1板状部に直交している第2板状部と、第2板状部に直交して第1板状部と対向している他の第1板状部を有している。第1磁性体部材571,572の各々の第1板状部および他の第1板状部と、1次導体110とは、それぞれ互いに平行に位置している。
2つの空隙573の各々は、1次導体110を電流が流れる方向(Y軸方向)において、第1磁性体部570の一端から他端まで延在している。2つの空隙573の各々は、1次導体110を流れる電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、第1磁性体部材571,572が成す矩形形状の互いに対向する2辺に位置している。具体的には、第1磁性体部材571の第1板状部と、第1磁性体部材572の第1板状部との間に、一の空隙573が形成されている。第1磁性体部材571の他の第1板状部と、第1磁性体部材572の他の第1板状部との間に、他の空隙573が形成されている。
図17に示すように、本実施形態に係る電流センサ500においては、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々は、第1磁性体部570および第2磁性体部180によって周りを2重に囲まれているため、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に誤差要因である外部磁界が到達することを抑制できる。その結果、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々が、不要な外部磁界を検知しないようにすることができる。すなわち、第1磁性体部570および第2磁性体部180の各々が、磁気シールドとして機能する。
第1磁性体部570に空隙573が設けられることにより、1次導体110を流れる電流により発生する磁界によって第1磁性体部570内を周回する磁束に対する磁気抵抗が増加する。その結果、第1磁性体部材571,572が、1次導体110を流れる電流により発生する磁界によって磁気飽和することを抑制できる。これにより、第2磁性体部材の残留磁化によって発生する磁界が第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に到達することを抑制できる。また、1次導体110を流れる電流により発生する磁界によって、第2磁性体部材が磁気飽和することを抑制できる。
よって、本実施形態に係る電流センサ500は、第1磁性体部570および第2磁性体部180を有することにより、ヒステリシスの増加を抑制しつつ入力と出力との線形性を確保して、測定誤差を低減することができる。
以下、本発明の実施形態6に係る電流センサについて説明する。なお、実施形態6に係る電流センサ600は、第2磁性体部に空隙が設けられている点のみ実施形態5に係る電流センサと異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
(実施形態6)
図18は、本発明の実施形態6に係る電流センサの構成を示す断面図である。図18においては、図3と同様の方向から電流センサを見た断面視にて図示している。図18に示すように、本発明の実施形態6に係る電流センサ600は、第2磁性体部680は、空隙673が設けられており、空隙673により周方向において不連続となった筒形状を有する。本実施形態においては、第2磁性体部680は、2つの第2磁性体部材681,682から構成されている。2つの第2磁性体部材681,682は、1次導体110を流れる電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、互いの端部同士の間に空隙673が設けられた矩形形状を成し、2つの第1磁性体部材571,572に対して間隔を置いて周りを囲んでいる。
図18に示すように、1次導体110を電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、第2磁性体部材681,682は、それぞれU字形状を有する。第2磁性体部材681,682の各々は、第3板状部と、第3板状部に直交している第4板状部と、第4板状部に直交して第3板状部と対向している他の第3板状部を有している。第2磁性体部材681,682の各々の第3板状部および他の第3板状部と、1次導体110とは、それぞれ互いに平行に位置している。第2磁性体部材681の第4板状部と、第1磁性体部材571の第2板状部とは、互いに間隔を置いて平行に位置している。第2磁性体部材682の第4板状部と、第1磁性体部材572の第2板状部とは、互いに間隔を置いて平行に位置している。
2つの空隙673の各々は、1次導体110を電流が流れる方向(Y軸方向)において、第2磁性体部680の一端から他端まで延在している。2つの空隙673の各々は、1次導体110を流れる電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、第2磁性体部材681,682が成す矩形形状の互いに対向する2辺に位置している。具体的には、第2磁性体部材681の第3板状部と、第2磁性体部材682の第3板状部との間に、一の空隙673が形成されている。第2磁性体部材681の他の第3板状部と、第2磁性体部材682の他の第3板状部との間に、他の空隙673が形成されている。また、第1磁性体部材572の第1板状部と、第2磁性体部材681の第3板状部とが対向している。第1磁性体部材572の他の第1板状部と、第2磁性体部材681の他の第3板状部とが対向している。
図18に示すように、本実施形態に係る電流センサ600においては、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々は、第1磁性体部570および第2磁性体部680によって周りを2重に囲まれているため、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に誤差要因である外部磁界が到達することを抑制できる。その結果、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々が、不要な外部磁界を検知しないようにすることができる。すなわち、第1磁性体部570および第2磁性体部680の各々が、磁気シールドとして機能する。
第2磁性体部680に空隙673が設けられることにより、1次導体110を流れる電流により発生する磁界または外部磁界によって第2磁性体部680内を周回する磁束に対する磁気抵抗が増加する。その結果、第2磁性体部材681,682が、1次導体110を流れる電流により発生する磁界または外部磁界によって磁気飽和することを抑制できる。これにより、第2磁性体部680の磁気シールドとしての機能を維持できるため、外部磁界が第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に到達することを抑制できる。
本実施形態に係る電流センサ600においても、第1磁性体部570および第2磁性体部680を有することにより、ヒステリシスの増加を抑制しつつ入力と出力との線形性を確保して、測定誤差を低減することができる。
以下、本発明の実施形態7に係る電流センサについて説明する。なお、実施形態7に係る電流センサ700は、第1磁性体部の構造のみ実施形態1に係る電流センサと異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
(実施形態7)
図19は、本発明の実施形態7に係る電流センサの構成を示す断面図である。図19においては、図3と同様の方向から電流センサを見た断面視にて図示している。図19に示すように、電流センサ700は、1次導体110および2つの磁気センサの周りを囲む第1磁性体部770と、第1磁性体部770の周りを囲む第2磁性体部180とを備える。第1磁性体部770は、空隙773が設けられており、空隙773により周方向において不連続となった筒形状を有する。
本実施形態においては、第1磁性体部770は、1つの第1磁性体部材から構成されている。第1磁性体部材の端部同士は、間隔を置いて対向している。第1磁性体部材は、1次導体110を流れる電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、端部同士の間に空隙773が設けられた矩形形状を成し、1次導体110および2つの磁気センサの周りを囲んでいる。具体的には、第1磁性体部材は、第1回路基板160a、第2回路基板160b、および、第1回路基板160aと第2回路基板160bとに挟まれた部分の1次導体110に対して間隔を置いて周りを囲んでいる。空隙773は、1次導体110を電流が流れる方向(Y軸方向)において、第1磁性体部770の一端から他端まで延在している。
図19に示すように、本実施形態に係る電流センサ700においては、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々は、第1磁性体部770および第2磁性体部180によって周りを2重に囲まれているため、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に誤差要因である外部磁界が到達することを抑制できる。その結果、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々が、不要な外部磁界を検知しないようにすることができる。すなわち、第1磁性体部770および第2磁性体部180の各々が、磁気シールドとして機能する。
第1磁性体部770に空隙773が設けられることにより、1次導体110を流れる電流により発生する磁界によって第1磁性体部770内を周回する磁束に対する磁気抵抗が増加する。その結果、第1磁性体部材が、1次導体110を流れる電流により発生する磁界によって磁気飽和することを抑制できる。これにより、第2磁性体部材の残留磁化によって発生する磁界が第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に到達することを抑制できる。また、1次導体110を流れる電流により発生する磁界によって、第2磁性体部材が磁気飽和することを抑制できる。
よって、本実施形態に係る電流センサ700は、第1磁性体部770および第2磁性体部180を有することにより、ヒステリシスの増加を抑制しつつ入力と出力との線形性を確保して、測定誤差を低減することができる。
以下、本発明の実施形態8に係る電流センサについて説明する。なお、実施形態8に係る電流センサ800は、第2磁性体部に空隙が設けられている点のみ実施形態7に係る電流センサと異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
(実施形態8)
図20は、本発明の実施形態8に係る電流センサの構成を示す断面図である。図20においては、図3と同様の方向から電流センサを見た断面視にて図示している。図20に示すように、本発明の実施形態8に係る電流センサ800は、第2磁性体部880は、空隙873が設けられており、空隙873により周方向において不連続となった筒形状を有する。本実施形態においては、第2磁性体部880は、1つの第2磁性体部材から構成されている。第2磁性体部材の端部同士は、間隔を置いて対向している。第2磁性体部材は、1次導体110を流れる電流が流れる方向(Y軸方向)から見て、互いの端部同士の間に空隙873が設けられた矩形形状を成し、第1磁性体部材に対して間隔を置いて周りを囲んでいる。空隙873は、1次導体110を電流が流れる方向(Y軸方向)において、第2磁性体部880の一端から他端まで延在している。
図20に示すように、本実施形態に係る電流センサ800においては、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々は、第1磁性体部770および第2磁性体部880によって周りを2重に囲まれているため、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に誤差要因である外部磁界が到達することを抑制できる。その結果、第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々が、不要な外部磁界を検知しないようにすることができる。すなわち、第1磁性体部770および第2磁性体部880の各々が、磁気シールドとして機能する。
第2磁性体部880に空隙873が設けられることにより、1次導体110を流れる電流により発生する磁界または外部磁界によって第2磁性体部880内を周回する磁束に対する磁気抵抗が増加する。その結果、第2磁性体部材が、1次導体110を流れる電流により発生する磁界または外部磁界によって磁気飽和することを抑制できる。これにより、第2磁性体部880の磁気シールドとしての機能を維持できるため、外部磁界が第1磁気センサ120aおよび第2磁気センサ120bの各々に到達することを抑制できる。
本実施形態に係る電流センサ800においても、第1磁性体部770および第2磁性体部880を有することにより、ヒステリシスの増加を抑制しつつ入力と出力との線形性を確保して、測定誤差を低減することができる。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。