以下、本発明に係る操作特性調整装置の実施形態について説明する。各図において、同一記号で表現されるものは、同一機能を有するため、説明が省略され得る。
<本発明に係る操作特性調整装置を備える車両の全体構成>
本発明に係る操作特性調整装置を備える車両には、図1に示すように、制動操作部材BP、制限手段SG2、ばね部材DSB、操作変位取得手段BPA、車両状態量取得手段JPA、電子制御ユニットECU、電源(バッテリ)BAT、反力調整手段(反力調整アクチェータ)ACT、及び、制動手段BRKが備えられている。
制動操作部材BP(例えば、ブレーキペダル)は、運転者の足によって操作される。制動操作部材BPの操作によって、車両の制動手段BRKが調整され、車両の減速状態(結果として、車両速度)が制御される。制動操作部材BPは、車体BDYに回転可能な状態で固定される。制動操作部材BPは、運転者が足で操作するための操作面(踏面)PTM、及び、車体BDYに対して回転可能に取り付けられた第1リンクLN1にて構成される。操作面PTMは、第1リンクLN1に固定されている。
制限手段SG2によって、制動操作部材BPの動作(動き)が制限される。制限手段SG2は、所謂、ストッパであって、車体BDYに固定されている。運転者による制動操作部材BPの操作量が徐々に増大されると、BPは制限手段SG2に接触され、その動作が制限される。制動操作部材BPは、制限手段SG2に、強く押し付けられるが、それ以上の動きは妨げられる。
第1固定端ジョイントKT1は、第1リンクLN1の車体BDYでの取り付け部であり、第1固定端ジョイントKT1を中心に第1リンクLN1(即ち、操作面PTM)は回転可能である。制動操作部材BPには、操作面PTMの変位(即ち、第1リンクLN1の回転角)に応じた操作力Fbpを発生するため、ばね部材(例えば、コイルばね、ねじりばね)DSBが設けられる。
ばね部材(例えば、コイルばね、ねじりばね)DSBは、所謂、パッシブな(外部からのエネルギ供給を必要としない受動的な)ばね要素であり、制動操作部材BPの変位に対して操作力Fbp(ばね部材DSB単独の発生力Fds)を発生させる。加えて、制動操作部材BPの全体における操作力Fbpは、反力調整手段ACTの電気モータMTRによっても発生される。従って、制動操作部材BPの操作特性(操作変位Bpaと操作力Fbpとの関係)は、ばね部材DSBが発生するばね力Fdsが、電気モータMTRが発生する力(出力)Fmtよって調整可能とされる。即ち、全体の操作力Fbpは、ばね部材DSBによる成分(ばね力)Fds、及び、電気モータMTRによる成分(調整力)Fmtによって発生される(Fbp=Fds+Fmt)。
操作変位取得手段BPAが設けられ、運転者によって操作された制動操作部材BPの操作変位Bpaが取得(検出)される。例えば、操作変位取得手段BPAは、第1リンクLN1の第1固定端ジョイントKT1における回転角センサであり、第1固定端ジョイントKT1に取り付けられる。第1リンクLN1は、第1固定端ジョイントKT1を中心に回転可能であるが、第1固定端ジョイントKT1に対する第1リンクLN1の回転角が、操作変位Bpaとして取得される(図1右側のA視図)。また、電気モータMTRの回転角取得手段MKAが、操作変位取得手段BPAとして採用され得る(即ち、MTRの回転角Mkaが、操作変位Bpaとして採用され得る)。操作変位Bpaは、電子制御ユニットECUに入力される。
車両状態量取得手段JPAが設けられ、車両状態量Jpaが取得される。車両状態量Jpaは、反力調整手段ACTの駆動制御に供される状態量(変数)である。具体的には、車両状態量Jpaは、運転者による操作特性の指示状態Swaである。また、車両状態量Jpaとして、車両の走行状態Jva(例えば、車両速度Vxa、車両の旋回状態)が採用され得る。即ち、JPAとして、運転者による指示状態取得手段(マニュアルスイッチ)SWA、及び、走行状態取得手段JVA(例えば、車速取得手段VXA)のうちの少なくとも1つが採用される。車両状態量Jpaは、電子制御ユニットECUに入力される。
指示状態取得手段SWAにて、運転者が所望する操作特性の指示状態Swaが取得(入力)される。具体的には、指示状態取得手段SWAは、多段階の入力スイッチであり、上記の多段階のうちから、運転者によって決定された1つの段(選択段)によって、指示状態Swaが指示される。従って、上記の選択段が、指示状態Swaとして取得される。
行状態取得手段JVAにて、車両の走行状態量Jvaが取得(検出)される。具体的には、走行状態量Jvaは、車両の走行速度、及び、車両の旋回状態量のうちの少なくとも1つである。従って、車輪速度取得手段VWAによって取得される車輪速度Vwa、ヨーレイト取得手段YRAによって取得されるヨーレイトYra、横加速度取得手段GYAによって取得される横加速度Gya、及び、操舵角取得手段SAAによって取得されるステアリングホイールSWの操舵角Saaのうちの少なくとも1つが、走行状態量Jvaとして採用される。
電子制御ユニットECUでは、各種入力信号(操作変位Bpa等)に基づいて、反力調整手段ACT、及び、制動手段BRKを制御するための信号(Imt等)が演算される。該演算処理は、電子制御ユニットECU内のマイクロコンピュータにプログラムされている制御手段(制御アルゴリズム)CTLによって実行される。電子制御ユニットECU内の制御手段CTLにて、操作変位Bpa、及び、車両状態量Jpaに基づいて、反力調整手段ACTの電気モータMTRを駆動するための目標通電量Imtが演算される。目標通電量Imtは、操作変位Bpaの増加に従って変化する演算マップに基づいて決定される。演算マップにおいては、操作変位Bpaの増加量に対する目標通電量Imtの変化量が、車両状態量Jpaに基づいて調整されるよう構成されている。目標通電量Imtは、反力調整手段ACT(例えば、電気モータMTRの駆動手段DRV)に送信される。
さらに、電子制御ユニットECU(即ち、制御手段CTL)では、制動手段BRK(制動アクチュエータ)を制御するための目標制動トルクBrtが演算される。具体的には、制動操作変位Bpa、及び、演算特性(演算マップ)に基づいて、目標制動トルクBrtが決定される。演算マップは、操作変位Bpaが増加するに従って目標制動トルクBrtが増加するよう設定されている。目標制動トルクBrtは、制動手段BRKに送信される。
蓄電池(バッテリ)BATが、電子制御ユニットECU、制動手段BRK、及び、反力調整手段ACTに電力供給するために設けられる。即ち、蓄電池BATは、操作特性調整装置、及び、制動手段BRKにとっての電力源である。
反力調整手段(アクチュエータ)ACTによって、ばね部材(コイルスプリング)DSBが発生するばね力(変位に応じて発生する力)Fdsが調整され、最終的な制動操作部材BPの操作力Fbpが決定される。ここで、「操作力Fbp」は、運転者の制動操作部材BPの操作に対抗する力であり、制動操作部材BPを初期位置(制限手段SG1に当接する位置)に戻そうとする反力である。基本的には、ばね部材DSBのばね力Fdsによって、操作力Fbpが発生される。ばね力Fdsは、常に、制動操作部材BPを初期位置に戻す方向(一方向)に作用する。反力調整手段ACTを構成する電気モータMTRの出力トルクによって、ばね力Fdsが、増加又は減少されて、操作力Fbpが調節される。反力調整手段ACTは、電気モータMTR、及び、動力伝達機構DDBにて構成される。
電気モータMTRによって、操作力Fbpを調整するための力(調整力)Fmtが発生される。調整力Fmtは、ばね部材DSBのばね力(弾性力)Fdsが増加される方向(操作力Fbpが増加し、BPの操作が重く感じられる方向)に発生される。換言すれば、電気モータMTRが発生する力(調整力)Fmtによって、制動操作部材BPに対するばね力Fdsの影響度合が増加される。
また、調整力Fmtは、ばね力Fdsが減少される方向(操作力Fbpが減少し、BPの操作が軽く感じられる方向)に発生される。即ち、電気モータMTRが発生する力(調整力)Fmtによって、制動操作部材BPに対するばね力Fdsの影響度合が減少される。このように、電気モータMTRの正転駆動/逆転駆動が利用され、調整力Fmtは双方向(2つの方向)に作用する。
電気モータMTRには、駆動手段DRVが設けられ、目標通電量Imtに基づいてパワー素子(例えば、MOS−FET、IGBT)がスイッチング駆動される。その結果、電気モータMTRの出力(発生トルクの大きさと方向)が制御される。電気モータMTRの出力(トルク)は、動力伝達機構DDBを介して、制動操作部材BP(具体的には、第1リンクLN1)に伝達される。
動力伝達機構DDBによって、電気モータMTRの出力が制動操作部材BPに伝達される。例えば、電気モータMTRの出力軸MTJのトルクが、減速されて、第1固定端ジョイントKT1まわりのトルクとして伝達される。第1固定端ジョイントKT1は、第1リンクLN1に固定されるため、電気モータMTRの出力が制動操作部材BPに伝達される。
制動手段BRKが、車両の各車輪WHに設けられる。電子制御ユニットECUから送信される、目標制動トルクBrt(信号)に基づいて、制動手段BRKが駆動される。制動手段BRKによって、各車輪WHの制動トルクが制御され、車両の減速度が調整される(最終的には、車両の速度が制御される)。制動手段BRKとして、制動流体(ブレーキ液)による制動トルク調整(所謂、液圧システム)、及び、電気モータによる制動トルク調整(所謂、EMB;Electro-Mechanical Brake)のうちの少なくとも1つが採用される。
<反力調整手段(反力調整アクチュエータ)>
図2の構成図を参照しながら、動力伝達機構DDBとして、4節リンク機構LNKが採用される場合の反力調整手段(反力調整アクチュエータ)ACTについて説明する。ここで、「リンク機構」とは、複数のリンクを組み合わせて構成した機械的な機構のことであり、リンク(節)と称呼される変形しない物体が、ジョイント(関節)と称呼される可動部分によって接続され、1つ以上の閉路を構成するものである。従って、「4節リンク機構」は、4つのリンクを備える機構である。具体的には、3つの実際のリンク(第1リンクLN1、第2リンクLN2、及び、中間リンクLNC)、及び、車体フロアFLRに固定されることによる仮想的なリンクである固定リンクLNVにて、4節リンク機構LNKが構成される。
図1において、同一記号を付された部材は、図2においても同一の機能を有する。しかし、装置の構成に多少の違いがあるため、先ず、その相違点について説明する。
図1の構成では、第1リンクLN1が車体BDYから吊り下げられ(所謂、吊り下げ式の制動操作部材BP)、ばね部材DSBが第1リンクLN1に固定される。従って、ばね部材DSBは、直接、制動操作部材BPを初期位置に戻そうとする力(ばね力)Fdsを発生させる。一方、図2の構成では、第1リンクLN1は、車体BDYのフロアFLRに支持され(所謂、オルガンペダル式の制動操作部材BP)、第2リンクLN2と一体である支持リンクLNSにばね部材DSBが固定される(ばね部材DSBの固定点Pd1,Pd2)。ばね部材DSBは、第1リンクLN1(最終的には、操作面PTM)に力を付与するためのばね要素であり、制動操作部材BPを初期位置に戻す方向の力(ばね力)Fdsを発生する。ここで、「初期位置」は、運転者によって制動操作部材BPが操作されていない場合(即ち、非操作時)に、制限手段SG1によって、BPの動きが制限された位置である。4節リンク機構LNKの第1リンクLN1と、電気モータMTRの出力軸MTJとの間の動力伝達経路において、任意の箇所にばね部材DSBが設けられ得る。
動力伝達機構DDBを形成する4節リンク機構LNKは、第1リンクLN1、第1固定端ジョイントKT1、中間リンクLNC、第1自由端ジョイントJY1、第2リンクLN2、第2自由端ジョイントJY2、及び、第2固定端ジョイントKT2にて構成される。ここで、「固定端ジョイント」は、車体BDYに回転可能な状態で固定されている。「自由端ジョイント」は、車体BDYには固定されておらず、各リンクで拘束される位置に、自由に移動され得る。
4節リンク機構LNKを介して、第1リンクLN1と電気モータMTRとの間で動力伝達が行われる。第1リンクLN1には、運転者による操作力が入力される。第2リンクLN2は、運転者の操作力に対抗する力(操作反力)を発生させるために、電気モータMTRに接続されている。そして、第1、第2リンクLN1,LN2は、中間リンクLNCを介して、接続されている。第1、第2リンクLN1,LN2と、中間リンクLNCとの接続部位が、第1、第2自由端ジョイントJY1,JY2である。この接続部位JY1,JY2とは反対側で、第1、第2リンクLN1,LN2は、車体BDYに回転可能な状態で支持されている。車体BDYの支持部位が、第1、第2固定端ジョイントKT1,KT2である。
制動操作部材BPの操作面PTM(運転者の足が触れる部分)への力(操作力)は、第1リンクLN1、及び、中間リンクLNCを介して、第2リンクLN2に伝達される。第2リンクLN2には、電気モータMTRの動力(トルク)が伝達され、操作面PTMから伝達される力に対抗する。第2リンクLN2の固定端ジョイントKT2には、大径歯車DKHが固定される。そして、大径歯車DKHは、電気モータMTRの出力軸MTJに固定される小径歯車SKHとかみ合わされる。従って、電気モータMTRの発生力(出力)は、減速されて(即ち、発生力が増加されて)、第2固定端ジョイントKT2に伝達される。なお、電気モータMTRは、車体フロアFLRに固定されたマウントMNTに固定されている。即ち、電気モータMTRは、車体BDYに固定されている。
第1制限部材(第1制限手段)SG1、及び、第2制限部材(第2制限手段)SG2によって、4節リンク機構LNKの動きが制限される。換言すれば、第1、第2制限部材SG1,SG2によって、4節リンク機構LNK(例えば、第1リンクLN1)の動作可能な範囲が限定される。制限手段SG1は、制動操作部材BPが操作されていない場合(即ち、非制動時)の初期位置(Bpa=0に対応する位置)を制限する。例えば、第1制限部材SG1は、車体BDYのフロアFLRに固定されるマウントMNTに設置され、車体BDYに対する、第2リンクLN2の動きを制限する。第2制限部材SG2は、制動操作部材BPが最大に操作される場合の最大操作位置(Bpa=bp1,bp3に対応する位置)を制限する。例えば、第2制限部材(制限手段に相当)SG2は、車体フロアFLRに固定され、車体BDYに対する、第1リンクLN1の動作を制限する。
第1制限部材SG1において、第2リンクLN2と接触し得る部分には、弾性体(例えば、ゴム部材)が設けられ、第2リンクLN2と第1制限部材SG1とが接触する際の衝撃が緩和され得る。同様に、第2制限部材SG2において、第1リンクLN1と接触し得る部分には、弾性体(例えば、ゴム部材)が設けられ、第1リンクLN1と第2制限部材SG2とが接触する際の衝撃が緩和され得る。制限手段(ストッパ)SG1,SG2は、4節リンク機構LNKの可動範囲を制限するものであるため、車体BDYに対して、第1リンクLN1、第2リンクLN2、及び、中間リンクLNCのうちの少なくとも1つの動きを制限するように構成され得る。
<制限手段SG2>
図3の構成図を参照しながら、制限手段(特に、第2制限部材SG2)について説明する。第2制限部材(制限手段に相当)SG2は、制動操作部材BPが操作された場合に、制動操作部材(ブレーキペダル)BPの動作(移動量)を制限するもので、所謂、ストッパとして機能する。また、制限手段SG2の弾性力Fgmによって、非線形特性をもって操作力Fbpを滑らかに増大する機能も有する。制限手段SG2は、車体BDYに固定されている。
制動操作部材BPと制限手段SG2とが、接触した瞬間の操作変位Bpaが、「当接操作変位bp1」と称呼される。制限手段SG2は弾性変形するが、制限手段SG2によって、制動操作部材BPが、これ以上は移動できなくなった状態における、制動操作部材BPの操作変位Bpaが、「最大操作変位bp3」と称呼される。制動操作部材BPの可動領域は、初期位置(非操作時に対応し、Bpa=0)から最大操作変位(Bpa=bp3)までの範囲である。制動操作部材BPの可動範囲内に、当接操作変位bp1が存在する(0<bp1<bp3)。当接操作変位bp1、及び、最大操作変位bp3は、反力調整手段ACTの諸元にて決定されるため、これらの値は、予め設定された所定値である。
図3(a)に示すように、第2制限部材(制限手段に相当)SG2は、ゴム部位SG2a、及び、金属部位SG2bにて構成される。換言すれば、ゴム部材SG2aと金属部材SG2bとが接合されて、第2制限部材SG2が形成されている。ゴム部材SG2aの端部(頭頂部)Tpaが、制動操作部材BPと接触する部分である。第2制限部材SG2は、金属部材SG2bにて、車体BDYに固定される。ゴム部材SG2aが制動操作部材BPと当接を開始した状態(即ち、Bpa=bp1の状態)では、ゴム部材SG2aは然程、力Fgmを発生しない。さらに、制動操作部材BPが操作されて、Bpaが増加されると、ゴム部材SG2aの弾性力Fgmが徐々に増大される。ゴム部材SG2aが圧縮変形されるにつれて、ゴム部材SG2aが発生する弾性力Fgmの増加量(操作変位Bpaの変化に対する力Fgmの変化量)が増大し、その限界に到達した状態(即ち、Bpa=bp3の状態)で制動操作部材BPの動きは完全に制限(拘束)される。制動操作部材BPがゴム部材SG2aと接触している範囲内において、操作力Fbpは、DSBのばね力Fds、MTRの調整力Fmt、及び、SG2aの弾性力Fgmによって決まる。
図3(b)は、制限部材SG2の他の実施形態を示している。図3(b)の左図に示すように、窪みを有する金属部材SG2cと、この窪み内に接合されたゴム部材SG2aとで、第2制限部材(制限手段に相当)SG2が構成され得る。上記と同様に、金属部材SG2cが車体BDYに固定され、ゴム部材SG2aの端部(頭頂部)Tpaが、制動操作部材BPと接触して、制動操作部材BPの動作が制限される。例えば、金属部材SG2cの端部(BDYの固定部とは反対側)が、座ぐり加工されて、座ぐり穴(counter bore)が設けられる。そして、この座ぐり穴に、隙間Skmをもって、ゴム部材SG2aが固定される。このとき、ゴム部材SG2aの高さは、座ぐり穴の深さよりも高く、ゴム部材SG2aの端部(頭頂部)Tpaは座ぐり穴の外部に突出している。
運転者によって制動操作部材BPが操作され、操作変位Bpaが順次増加される場合を想定する。先ず、操作変位Bpaが当接操作変位bp1となると、第2制限部材SG2aの頭頂部Tpaが制動操作部材BPと接触し始める。この瞬間は、ゴム部材SG2aは、未だ変形していないため、ゴム部材SG2aは弾性力Fgmを生じない。操作変位Bpaが、徐々に増加されると、ゴム部材SG2aは圧縮変形し始める。このとき、ゴム部材SG2aは弾性力Fgmを発生し始める。また、ゴム部材SG2aの圧縮変形にともない、隙間Skmがゴム部材SG2aによって徐々に充填されていく(満たされていく)。ゴム部材SG2aが圧縮変形されるにつれて、操作変位Bpaの変化に対する、ゴム部材SG2aが発生する弾性力Fgmの変化量(増加量)が増大される。
そして、図3(b)の右図に示すように、金属部材SG2cの端部Tpcが、制動操作部材BPと接触すると、制動操作部材BPの動きは完全に制限(拘束)され、これ以上の動きは妨げられる。即ち、制動操作部材BPと、金属部材SG2cの端部Tpcとが接触する状態での操作変位Bpaが、最大操作変位bp3となる。この状態では、ゴム部材SG2aと金属部材SG2cの窪み(座ぐり穴)との隙間Skmは、略、埋められている。上記と同様に、図3(b)に示した構成においても、制動操作部材BPがゴム部材SG2aと接触している範囲内において、操作力Fbpは、DSBのばね力Fds、MTRの調整力Fmt、及び、SG2aの弾性力Fgmによって決まる。即ち、FdsとFmtと合力に、Fgmが加えられたものが、Fbpとなる。
<目標通電量Imtの演算処理、及び、電気モータMTRの駆動制御処理>
図4の機能ブロック図を参照しながら、制御手段CTL(制御アルゴリズム)での目標通電量Imtの演算処理、及び、目標通電量Imtに基づく、駆動手段DRVでの電気モータMTRの駆動制御処理について説明する。
制御手段CTL内に、目標通電量演算ブロックIMTが設けられ、目標通電量Imtが演算される。ここで、「通電量」とは、電気モータMTRが生じる力(出力トルク)を制御するための状態量(変数)である。電気モータMTRは電流に概ね比例するトルクを出力するため、通電量の目標値(目標通電量)として電気モータMTRの電流目標値が用いられ得る。また、電気モータMTRへの供給電圧を増加すれば、結果として電流が増加されるため、目標通電量として供給電圧値が用いられ得る。さらに、パルス幅変調におけるデューティ比によって供給電圧値が調整され得るため、このデューティ比(1周期における通電時間の割合)が通電量として用いられ得る。
電気モータMTRは、双方向(正転方向、又は、逆転方向)に出力を発生させるが、目標通電量Imtの符号(正符号、或いは、負符号)に基づいて、電気モータMTRの回転方向が決定される。例えば、電気モータMTRの回転方向は、正転方向Fwdが正(プラス)の値、逆転方向Rvsが負(マイナス)の値として設定される。目標通電量Imtの大きさに基づいて、電気モータMTRが発生する力(即ち、出力トルク)が決定される。
目標通電量演算ブロックIMTには、制動操作部材BPの操作変位Bpa、及び、車両状態量Jpaが入力される。目標通電量演算ブロックIMTには、目標通電量Imtを決定するための演算特性(演算マップ)が記憶されている。目標通電量Imtの演算特性(演算マップ)には、制動操作変位Bpaの増加に従って目標通電量Imtがゼロから増加される増加モードMdz、及び、操作変位Bpaの増加に従って目標通電量Imtがゼロから減少される減少モードMdgが存在する。
増加モードMdzでは、調整力Fmt(MTRの発生力)は、ばね力Fds(DSBの発生力)と同じ方向に作用する。従って、制動操作部材BPの操作力Fbpは、ばね力Fdsのみによって発生される場合に比較して、大きくされる。換言すれば、増加モードMdzでは、調整力Fmtによって、制動操作部材BPに対するばね力Fdsの影響度合が増加される。一方、減少モードMdgでは、調整力Fmtは、ばね力Fdsを打ち消す方向(Fdsとは逆向きの方向)に作用する。従って、制動操作部材BPの操作力Fbpは、ばね力Fdsのみによって発生される場合に比較して、小さくされる。換言すれば、減少モードMdgでは、調整力Fmtによって、制動操作部材BPに対するばね力Fdsの影響度合が減少される。
増加モードMdz、及び、減少モードMdgのうちから何れのモードが選択されるかは、車両状態量取得手段JPAによって取得された車両状態量Jpa(指示状態量Swa、走行状態量Jva)に基づいて決定される。ここで、指示状態量Swaは、運転者によって操作される指示取得手段SWA(例えば、多段階で設定可能なマニュアルスイッチ)にて取得(検出)される信号である。また、走行状態量Jvaは、車両の走行状態(車両の走行速度、車両の旋回状態、等)を表現する変数(信号)であり、走行状態取得手段JVAによって取得(検出)される。
車両状態量Jpaとして、指示取得手段SWAにて取得(検出)される指示状態Swaが採用される場合を例に説明する。
指示取得手段SWAが、指示状態量Swaとして、「重めの操作感」を取得する場合、増加モードMdzが選択される。ここで、増加モードMdzは、演算特性において、Imt=0の特性(Z)から特性CImaxまでの領域である。増加モードMdzでは、操作変位Bpaが増加するに従って、目標通電量Imtがゼロから増加される。そして、操作変位Bpaが当接操作変位bp1(制限手段SG2に接触を開始する位置に相当)に達すると、目標通電量Imtは一定値(>0)に保持される。操作変位Bpaが、さらに増加され、値bp2(>bp1、所定値)に達すると目標通電量Imtは、ゼロに向けて減少(変更)され始める。そして、操作変位Bpaが、最大操作変位(所定値)bp3に達すると、目標通電量Imtは所定値iz3(>0)(例えば、iz3=0)にまで低減される。
増加モードMdzでは、目標通電量Imtは正の値(>0)に演算され、電気モータMTRは正転方向Fwdに駆動される。従って、増加モードMdzでは、調整力Fmtは、ばね部材DSBのばね力(制動操作部材BPを初期位置に戻そうとする弾性力)Fdsと同じ向きに発生される。即ち、増加モードMdzでは、運転者が制動操作部材BPを相対的に大きな踏力で操作することが必要となる。このため、制動操作部材BPの操作において剛性感が向上される。なお、Imt=0の場合には、操作力Fbpが、ばね部材DSB単体が生じる、ばね力Fdsと一致する(即ち、電気モータMTRによる調整が行われない)。
操作変位Bpaが当接操作変位(所定値)bp1に達すると、これ以上、操作力Fbpを増加する必要がなくなるため、目標通電量Imtが、一旦、保持される。さらに、操作変位Bpaが増加されると、操作力Fbpは、ゴム部材SG2aの弾性力Fgmによって発生されるため、操作変位Bpaが所定値bp2(>bp1)になると、目標通電量Imtはゼロに向けて減少され始める。操作変位Bpaが増加されるにつれて、ゴム部材SG2aの弾性力Fgmは、下に凸の非線形特性をもって増大されるため、その影響度合が順次増加される。即ち、操作力Fbpにおいて、弾性力Fgmの影響が支配的になっていく。
制動変位Bpaが最大操作変位(所定値)bp3に達すると、目標通電量Imtは、概ねゼロとされる。このため、電気モータMTRの最大出力状態の継続が回避されるため、MTRの発熱が抑制され得る。目標通電量Imtがゼロに向けて減少されると、電気モータMTRによる正転方向Fwdの調整力Fmtも減少されるが、この力Fmtの変化は、ゴム部材SG2aの弾性力Fgmによって補われる。その結果、制動操作部材BPの操作力Fbpにおいて、目標通電量Imtの調整による不連続が回避され、制動操作部材BPの操作特性が好適に維持され得る。
一方、指示取得手段SWAが、指示状態量Swaとして、「軽めの操作感」を取得する場合、減少モードMdgが選択される。ここで、減少モードMdgは、演算特性において、Imt=0の特性(Z)から特性CIminまでの領域である。減少モードMdgでは、操作変位Bpaが増加するに従って、目標通電量Imtがゼロから減少される。Mdzの場合と同様に、操作変位Bpaが値bp1(SG1によって制限される位置に対応)に達すると、目標通電量Imtは一定値(<0)に保持される。さらに、操作変位Bpaが増加され、値bp2(>bp1)に達すると目標通電量Imtは、ゼロに向けて増加(変更)され始める。そして、操作変位Bpaが、最大操作変位bp3に達すると、目標通電量Imtは所定値ig3(<0)(例えば、ig3=0)にまで増加される。
減少モードMdgでは、目標通電量Imtは負の値(<0)に演算され、電気モータMTRは正転方向Fwdとは異なる逆転方向Rvsに駆動される。従って、減少モードMdgでは、調整力Fmtは、ばね部材DSBのばね力(制動操作部材BPを初期位置に戻そうとする弾性力)Fdsとは逆向きに発生される。即ち、減少モードMdgでは、運転者が制動操作部材BPを相対的に小さな踏力で操作できるようになる。このため、制動操作部材BP操作の軽快感が向上される。
増加モードMdzの場合と同様に、操作変位Bpaが当接操作変位bp1に達すると、これ以上、操作力Fbpを増加する必要がなくなるため、目標通電量Imtが、一旦、保持される。さらに、操作変位Bpaが増加されると、操作力Fbpは、ゴム部材SG2aの弾性力Fgmによって発生されるため、操作変位Bpaが所定値bp2(>bp1)になった時点で、目標通電量Imtはゼロに向けて増加され始める。操作変位Bpaが増加されるにつれて、ゴム部材SG2aの弾性力Fgmは、下に凸の非線形特性をもって増大されるため、その影響度合が順次増加される。即ち、操作力Fbpにおいて、弾性力Fgmの影響が支配的になっていく。目標通電量Imtのゼロに向けた増加にともなって、電気モータMTRの逆転方向Rvsの調整力Fmtが減少されるが、この力Fmtの変化は、ゴム部材SG2aの弾性力Fgmによって補償され得る。結果、操作力Fbpにおいて、目標通電量Imtの調整による不連続性が抑制され、運転者への違和感が回避され得る。制動変位Bpaが最大操作変位(所定値)bp3に達すると、目標通電量Imtは、概ねゼロとされる。このため、電気モータMTRの最大出力状態が継続されることが回避される。結果、電気モータMTRの発熱が抑制され得る。
以上で説明するように、1つの電気モータMTRの回転方向によって、制動操作部材BPの操作力Fbpを増大(MTRの正転に対応)、又は、減少(MTRの逆転に対応)するよう調整される。このため、操作変位Bpaと操作力Fbpとの関係において、その調整幅が拡大され得る。換言すれば、調整幅が同じである場合には、電気モータMTRが小型化され得る(サイズとして、概略1/2となる)。電気モータMTRの一方向駆動のみが利用される場合、電気モータMTRの最大出力は、特性CImaxから特性CIminまでの範囲に対応する必要があるが、電気モータMTRの双方向の駆動が利用されるため、Imt=0(無調整の特性(Z))から特性CImax(又は、特性CImin)までの範囲に限って対応すれば足りることに因る。
また、操作変位Bpaが当接操作変位bp1に達すると、これ以上、操作力Fbpを増加する必要がなくなるため、目標通電量Imtが、一旦、保持される。そして、操作変位Bpaが、制動操作部材BPと制限手段SG2とが当接を開始する所定値(当接操作変位)bp1よりも大きくなった場合に、目標通電量Imtをゼロに向けて変化(Mdzでは減少、Mdgでは増加)される。このため、電気モータMTRの最大出力状態が長時間に亘って継続されることが防止され、電気モータMTRの発熱が抑制され得る。
指示状態量Swaの場合と同様に、走行状態量Jvaに基づいて、増加モードMdz、又は、減少モードMdgが選択される。車両の走行状態量Jvaとして、車速Vxaが採用される場合、車速Vxaが相対的に高い条件で(即ち、車両が高速で走行しているとき)、増加モードMdzが決定される。逆に、車速Vxaが相対的に低い条件で(即ち、車両が低速で走行しているときであり、例えば、渋滞走行中)、減少モードMdgが決定される。このため、高速では制動操作部材BPの剛性感が増加される。一方、低速では制動操作部材BPの操作性が向上され、利便性が増大され得る。
車両の走行状態量Jvaとして、車両の旋回状態量(Saa、Yra、及び、Gyaのうちの少なくとも1つ)が採用される場合、旋回状態量が大のときに増加モードMdzが選択され、旋回状態量が小のときに減少モードMdgが選択される。上記同様の効果を奏する。
目標通電量Imtは、車両状態量Jpa(Swa、Vxa等)に基づいて、その程度に応じて段階的に決定される。例えば、指示状態量Swaが、第1段(重め)〜第5段(軽め)の5ステップで指示される場合、第1段が指示されるときに特性CImax(増加モードMdzの最大特性)、第3段が指示されるときにImt=0(ばね部材DSBのみの特性)、及び、第5段が指示されるときに特性CImin(減少モードMdgの最大特性)が用いられて、目標通電量Imtが演算される。そして、これらの中間の条件である第2段が指示される場合には、増加モードMdzにおいて、特性CImaxと特性(Z)との中間特性である特性(A)が、演算マップとして採用される。また、中間の条件である第4段が指示される場合には、減少モードMdgにおいて、特性CIminと特性(Z)との中間特性である特性(B)が、演算マップとして採用される。
車両状態量Jpaとして、連続的に変化する状態量(変数)が採用される場合には、「Imt=K(Jpa)×Bpa」の関数式に基づいて、目標通電量Imtが演算される。ここで、係数K(Jpa)は、Bpaに対するImtの傾きを決定する値であり、正負の符号を有して決定される。例えば、車両状態量Jpaが車速Vxaである場合、車速Vxaが大きいほど、係数K(Vxa)は正符号をもつ大きい値に決定され、車速Vxaが小さいほど、係数K(Vxa)は負符号をもつ小さい値に決定される。
表1に、車両状態量Jpaと各モード(増加モードMdz、又は、減少モードMdg)との関係をまとめる。表1では、例えば、指示状態Swaが、操作感の「重め」を指示している場合には増加モードMdzが採用され、操作感の「軽め」を指示している場合には減少モードMdgが選択されることを表現している。また、車速Vxaが相対的に高い場合(即ち、高速走行時)には増加モードMdzが採用され、車速Vxaが相対的に低い場合(即ち、低速走行時)には減少モードMdgが採用されることを表している。
電気モータMTRの駆動回路(駆動手段)DRVでは、目標通電量Imtに基づいて、電気モータMTRの回転動力(出力トルク)と、その方向(回転方向)が調整される。駆動手段DRVは、電気モータMTRを駆動するための複数のスイッチング素子にて構成されるブリッジ回路、パルス幅変調ブロックPWM、スイッチング制御ブロックSWT、及び、通電量取得手段IMAにて構成される。
電気モータMTRとして、ブラシレスモータが採用される場合には、ブリッジ回路は、6つのスイッチング素子(S1乃至S6)で構成される(所謂、3相ブリッジ回路)。3相ブリッジ回路では、回転角取得手段MKAの検出結果(回転角Mka)に基づいて、U相(端子Tu)、V相(端子Tv)、及び、W相(端子Tw)のコイル通電量の方向(即ち、励磁方向)が順次切り替えられて、電気モータMTRが駆動される。なお、ブラシレスモータの回転方向(Fwd方向、又は、Rvs方向)は、ロータと励磁する位置との関係によって決定される。
パルス幅変調ブロックPWMでは、目標通電量Imtに基づいて、各スイッチング素子S1〜S6についてパルス幅変調(PWM、Pulse Width Modulation)を行うための指示値(目標値)が演算される。例えば、目標通電量Imt、及び、予め設定される特性(演算マップ)に基づいて、パルス幅のデューティ比Dut(1周期に対するオン時間の割合)が決定される。併せて、目標通電量Imtの符号(正符号、或いは、負符号)に基づいて、電気モータMTRの回転方向が決定される。電気モータMTRの回転方向は、正転方向Fwdが正(プラス)の値、逆転方向Rvsが負(マイナス)の値として設定される。
スイッチング制御ブロックSWTでは、デューティ比(目標値)Dutに基づいて、ブリッジ回路を構成するスイッチング素子S1〜S6の駆動信号が演算される。これらの駆動信号に基づいて、各スイッチング素子S1〜S6の通電、又は、非通電の状態が制御される。具体的には、デューティ比Dutが大きいほど、スイッチング素子S1乃至S6において、単位時間当りの通電時間が長くされ、より大きな電流が電気モータMTRに流され、電気モータMTRの発生力(出力トルク)が大とされる。
駆動手段DRVには、図示しない通電量取得手段(例えば、電流センサ)IMAが備えられ、実際の通電量(例えば、実際の電流値)Imaが取得(検出)される。そして、スイッチング制御ブロックSWTにおいて、所謂、電流フィードバック制御が実行される。実際の通電量Imaと目標通電量Imtとの偏差ΔImに基づいて、デューティ比Dutが修正(微調整)される。この電流フィードバック制御によって、高精度なモータ制御が達成され得る。
反力調整手段ACTにおいて、ばね部材DSBが省略され得る。この構成では、操作力Fbpは、電気モータMTRのみによって発生される。従って、目標通電量Imtの演算において、減少モードMdgは省略される。即ち、ばね部材DSBが採用されない構成では、目標通電量Imtは、演算マップにおいて、電気モータMTRの増加モードMdzに限定して決定される。
具体的には、制動変位Bpaの増加に従って、目標通電量Imtはゼロから増加するように演算される。操作変位Bpaが当接操作変位(所定値)bp1に達すると、目標通電量Imtが一定値に維持される。さらに、操作変位Bpaが増加され、操作変位Bpaが所定値bp2になる時点で、目標通電量Imtは、ゼロに向けて減少される。そして、制動変位Bpaが最大操作変位(所定値)bp3になる時点で、目標通電量Imtはゼロとされる。これにより、上記と同様の効果を奏する。
<作用・効果(制動操作部材BPにおける、操作変位Bpaと操作力Fbpとの関係)>
図5の特性図を参照しながら、本発明の作用・効果についてまとめる。図5の特性図は、図4に示した目標通電量演算ブロックIMTにおける演算特性(演算マップ)に対応して、制動操作部材BPの操作変位Bpaに対する操作力Fbpの関係(操作特性)を表している。図5(a)が、図4の増加モードMdzに対応し、図5(b)が、図4の減少モードMdgに対応している。
図5(a)に示すように、操作力Fbpが増加モードMdzにて制御されている場合、先ず、操作変位Bpaの増加に従って、目標通電量Imtがゼロから増加され、電気モータMTRは正転方向Fwdに駆動される。電気モータMTRによる調整力Fmtは、ばね部材DSBによるばね力Fdsと同じ方向に作用するため、ばね力Fdsが、調整力Fmtによって増加されて、操作力Fbpが調整される。即ち、操作変位Bpaが増すにつれて、ばね力Fdsの特性CHdsが、調整力Fmt分だけ増加されて、操作力Fbpは特性CHznにて変化する。
制動操作部材BPの操作変位Bpaが、当接操作変位(所定値)bp1に達すると、その時点での目標通電量Imtが維持される(値iz1に保持される)。ここで、所定値bp1は、制動操作部材BPと制限手段SG2(特に、ゴム部材SG2aの頭頂部Tpa)とが当接し始める位置に相当する。さらに、操作変位Bpaが増加されると、Bpaが所定値bp2に一致した時点で、維持されていた目標通電量Imtがゼロに向けて変化(減少)される。そして、操作変位Bpaが最大操作変位(所定値)bp3に到達した時点で、目標通電量Imtはゼロにされる(通電が停止される)。ここで、所定値bp3は、制動操作部材BPの動きが完全に拘束された位置に相当する。例えば、金属部材SG2cの端部Tpcが、制動操作部材BPと接触した位置に相当する。Bpa=bp3において、目標通電量Imtがゼロにされることに代えて、破線で示したように、僅かな通電量iz3にまで減少され得る。所定値bp1,bp2,bp3は、反力調整手段ACTの諸元に基づいて幾何学的に決定された、設定値である。
操作変位Bpaが当接変位bp1から最大変位bp3までの範囲では、目標通電量Imtが、先ず、保持され、その後、ゼロに向けて減少される。従って、電気モータMTRの最大定格駆動が継続されることが抑制され、電気モータMTRの発熱が抑制され得る。目標通電量Imtの保持・減少にともなって、調整力Fmtが保持され、正転方向Fwdにおいて、ゼロに向けて減少される。しかし、この操作変位Bpaの範囲では、ゴム部材SG2aが弾性力Fgmを発生する。そして、操作変位Bpaが増加されるにつれて、弾性力Fgmが増加され、操作力Fbpにおいて、その影響度合が徐々に増加される(特性CHze)。換言すれば、操作変位Bpaの増加にともない、操作力Fbpにおいて、弾性力Fgmが支配的になっていく。このため、電気モータMTRへの通電が低減されても、操作力Fbpは適切に調整されるため、運転者への違和感となることはない。制限手段SG2として、ゴム部材SG2aが採用されるため、好適に電気モータMTRの発熱が抑制され得る。
増加モードMdzの場合と同様に、減少モードMdzの場合においても、操作変位Bpaに基づいて、目標通電量Imtの調整が行われる。図5(b)に示すように、操作力Fbpが減少モードMdgにて制御されている場合、先ず、操作変位Bpaの増加に従って、目標通電量Imtがゼロから減少され、電気モータMTRは逆転方向Rvs(正転方向Fwdとは反対方向)に駆動される。電気モータMTRによる調整力Fmtは、ばね部材DSBによるばね力Fdsを打ち消す方向に作用するため、ばね力Fdsは、調整力Fmtによって減少されて、操作力Fbpが調整される。即ち、操作変位Bpaが増すにつれて、ばね力Fdsの特性CHdsが、調整力Fmt分だけ減少されて、操作力Fbpは特性CHgnで変化する。
制動操作部材BPの操作変位Bpaが、当接操作変位(所定値)bp1に達すると、その時点での目標通電量Imtが維持される(値ig1に保持される)。ここで、所定値bp1は、制動操作部材BPと制限手段SG2(特に、ゴム部材SG2aの端部Tpa)とが当接し始める位置に相当する。さらに、操作変位Bpaが増加されると、Bpaが所定値bp2に一致した時点で、維持されていた目標通電量Imtがゼロに向けて変化(増加)される。そして、操作変位Bpaが最大操作変位(所定値)bp3に到達した時点で、目標通電量Imtはゼロにされる(通電が停止される)。ここで、所定値bp3は、制動操作部材BPの動きが完全に拘束された位置に相当する。例えば、金属部材SG2cの端部Tpcが、制動操作部材BPと接触した位置に相当する。Bpa=bp3において、目標通電量Imtがゼロにされることに代えて、破線で示したように、僅かな通電量ig3にまで増加され得る。所定値bp1,bp2,bp3は、反力調整手段ACTの諸元に基づいて幾何学的に決定される、予め設定された値である。
Bpaがbp1からbp3までの範囲では、目標通電量Imtが、先ず、保持され、その後、ゼロに向けて増加される。従って、増加モードMdzの場合と同様に、減少モードMdgの場合においても、「電気モータMTRの最大出力状態の継続回避による発熱の抑制」、及び、「ゴム部材SG2aの採用で、操作力Fbpの連続性確保による違和感の低減」の効果を奏する。
反力調整手段ACTにおいて、ばね部材DSBが省略され得る。この構成では、Fds=0であるため、図5(a)に示した特性CHznと特性CHdsとの差分が操作力Fbpとして発生される。この構成でも、増加モードMdzの場合と同様に、目標通電量Imtが調整される。操作変位Bpaが当接操作変位(所定値)bp1に達すると、目標通電量Imtが一定値iz1に維持される。さらに、操作変位Bpaが増加され、操作変位Bpaが所定値bp2になる時点で、目標通電量Imtは、ゼロに向けて減少される。そして、制動変位Bpaが最大操作変位(所定値)bp3になる時点で、目標通電量Imtは、概ねゼロ(例えば、所定値iz3(>0))とされる。これにより、上記と同様の効果(発熱の抑制、違和感の低減)を奏する。