JP2013115988A - 車両の制動制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電気モータによって制動トルクを発生する車両の制動制御装置であって、電気モータの慣性を含む装置全体の慣性の影響を適正に補償し得るものを提供すること。
【解決手段】この装置では、制動操作部材の操作量Bpaに基づいて演算された目標通電量に基づいて電気モータが制御される。加速時の慣性補償制御が必要であると判定された場合(FLj←1)、「目標通電量を増加してブレーキアクチュエータの慣性の影響を補償する」ための第1の慣性補償通電量Ijtが演算される。減速時の慣性補償制御が必要であると判定された場合(FLk←1)、第1の慣性補償通電量Ijtに対応して取得された実際の通電量Imaに基づいて、「目標通電量を減少してブレーキアクチュエータの慣性の影響を補償する」ための第2の慣性補償通電量Iktが演算される。第1、第2の慣性補償通電量Ijt,Iktに基づいて前記目標通電量が演算される。
【選択図】図4

Description

本発明は、車両の制動制御装置に関する。
従来より、電気モータによって制動トルクを発生する車両の制動制御装置が知られている。この種の装置では、通常、運転者による車両の制動操作部材の操作量に基づいて指示電流(目標電流)が演算され、指示電流に基づいて電気モータが制御される。これにより、制動操作部材の操作に応じた制動トルクが車輪に付与される。
この種の装置では、電気モータの慣性を含む装置全体の慣性(慣性モーメント、慣性質量)の影響に起因して、特に急制動時(急激に制動トルクが増加するとき)等において、電気モータの回転速度が増加する加速時(例えば、電気モータが起動するとき)における制動トルクの応答遅れ(立上りの遅れ)、並びに、電気モータの回転速度が減少する減速時(例えば、電気モータが停止に向かうとき)における制動トルクのオーバシュートが発生し得る。従って、特に急制動時において、上記慣性の影響を補償すること、即ち、電気モータの加速時における制動トルクの応答性(立上り性能)の向上、並びに、電気モータの減速時における制動トルクのオーバシュートの抑制(収束性の向上)が望まれている。
この問題に対処するため、例えば、特許文献1には、以下のことが記載されている。即ち、指示電流と目標モータ回転角との関係を規定するマップに基づいて、演算された指示電流に対応する目標モータ回転角が求められ、この目標モータ回転角を2階微分することにより、目標モータ回転角加速度が求められる。この目標モータ回転角加速度に基づいて、装置全体の慣性の影響を補償するための慣性補償電流が演算される。この場合、慣性補償電流は、電気モータの加速時には正の値に演算され、電気モータの減速時には負の値に演算される。この慣性補償電流が指示電流に加算されて、補償後指示電流(目標電流)が決定される。これにより、電気モータが起動するときには補償後指示電流が指示電流より大きめに演算されて、制動トルクの応答性が向上し得る。電気モータが停止に向かうときには補償後指示電流が指示電流より小さめに演算されて、制動トルクのオーバシュートが抑制され得る。
また、特許文献1には、安定した制御を行うため、指示電流が電気モータの能力を超えた場合には、指示電流に「傾き制限」を設けることも記載されている。
特開2002−225690号公報
ところで、上記文献に記載のように、指示電流から演算される目標モータ回転角加速度に基づいて慣性補償電流が演算される場合において、指示電流に傾き制限が設けられると、指示電流に基づいて得られる目標モータ回転角を2階微分して得られる目標モータ回転角加速度が適正に演算され得なくなる。例えば、指示電流が一定の傾き制限値で制限されている場合、指示電流の2階微分値に相当する目標モータ回転角加速度は「ゼロ(0)」に維持される。この結果、上記慣性の影響の適切な(高精度な)補償が困難となる場合がある。
以下、このことについて図8を参照しながら説明する。図8に示す例では、時刻t0にて電気モータが起動し、「時刻t0の短期間後の時点」から「本来の指示電流(実線を参照)と傾き制限がなされた指示電流(一点鎖線を参照)とが交わる時刻t1」までの間、指示電流が一定の傾き制限値で制限されている。この場合、時刻t0からの前記短期間だけ電気モータの回転速度が増加し(従って、正の目標モータ回転角加速度が発生し)、時刻t1からの極短期間だけ電気モータの回転速度が減少し(従って、負の目標モータ回転角加速度が発生し)、その他の期間は電気モータの回転速度が一定に維持される(従って、目標モータ回転角加速度がゼロ(0)に維持される)。即ち、図8に示すように、時刻t0からの前記短期間だけ正の慣性補償電流が発生し、時刻t1からの極短期間だけ負の慣性補償電流が発生し、その他の期間は慣性補償電流がゼロ(0)に維持される。
このため、電気モータの加速時における制動トルクの応答性が十分に向上され得ず、また、電気モータの減速時における制動トルクのオーバシュートが十分に抑制され得なかった。上記慣性の影響の更なる適正な補償が望まれているところである。
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、電気モータによって制動トルクを発生する車両の制動制御装置であって、電気モータの慣性を含む装置全体の慣性の影響を適正に補償し得るものを提供することにある。
本発明に係る車両の制動制御装置は、運転者による車両の制動操作部材(BP)の操作量(Bpa)を取得する操作量取得手段(BPA)と、前記車両の車輪(WHL)に対する制動トルクを電気モータ(MTR)によって発生させる制動手段(BRK)と、前記操作量(Bpa)に基づいて目標通電量(Imt)を演算し、前記目標通電量(Imt)に基づいて前記電気モータ(MTR)を制御する制御手段(CTL)と、前記電気モータ(MTR)の実際の通電量(Ima)を取得する通電量取得手段(IMA)と、を備える。
本発明の特徴は、前記制御手段(CTL)が以下の構成を備える点にある。前記操作量(Bpa)に基づいて、前記電気モータの速度(例えば、回転速度)が増加する加速時における前記制動手段(BRK)の慣性の影響を補償する慣性補償制御が必要であるか否かが判定される。前記加速時の慣性補償制御が必要であると判定された場合(FLj←1)、前記目標通電量(Imt)を増加して前記制動手段(BRK)の慣性の影響を補償するための第1の慣性補償通電量(Ijt)が演算される。前記操作量(Bpa)に基づいて、前記電気モータの速度(例えば、回転速度)が減少する減速時における前記制動手段(BRK)の慣性の影響を補償する慣性補償制御が必要であるか否かが判定される。前記減速時の慣性補償制御が必要であると判定された場合(FLk←1)、前記第1の慣性補償通電量(Ijt)に対応して取得された前記実際の通電量(Ima)に基づいて、前記目標通電量(Imt)を減少して前記制動手段(BRK)の慣性の影響を補償するための第2の慣性補償通電量(Ikt)が演算される。前記第1、第2の慣性補償通電量(Ijt,Ikt)に基づいて前記目標通電量(Imt)が演算される。
ここにおいて、前記操作量(Bpa)に基づいて、加速度相当値、及び、速度相当値のうちの少なくとも何れか1つの状態相当値が演算され、前記状態相当値(ddBp,ddFb,ddMk,dBp,dFb,dMk)に基づいて、前記加速時の慣性補償制御が必要である否か、及び、前記減速時の慣性補償制御が必要であるか否か、のうちの少なくとも何れか1つが判定され得る。
電源電圧等の状態によっては電気モータの実際の通電量が目標通電量に一致するとは限らない。上記構成によれば、加速時の慣性補償制御が実行される際に、通電量取得手段(例えば、電流センサ)によって取得される実際の通電量(例えば、電流値)に基づいて、減速時の慣性補償通電量が演算され得る。従って、電源電圧等の状況にかかわらず、特に減速時の慣性補償制御が適切に実行され得る。この結果、電気モータの慣性を含む装置全体の慣性の影響が適正に補償され得る。
上記制動制御装置においては、前記制御手段(CTL)は、前記加速時の慣性補償制御が必要であると判定した場合(FLj←1)、前記第1の慣性補償通電量(Ijt)が、前記電気モータ(MTR)に対して前記目標通電量(Imt)のステップ入力がなされた場合における前記電気モータ(MTR)の実際の位置の変化(例えば、実際の回転角加速度)に基づいて予め設定された時系列のパターン(CHj)を用いて、前記第1の慣性補償通電量(Ijt)を演算するように構成されることが好適である。
この場合、前記制御手段(CTL)は、前記第1の慣性補償通電量(Ijt)に対応して取得された前記実際の通電量(Ima)に基づいて、前記時系列のパターン(CHj)に対応する時系列データ(Jdk)を取得し、前記減速時の慣性補償制御が必要であると判定した場合(FLk←1)、前記時系列データ(Jdk)に基づいて前記第2の慣性補償通電量(Ikt)を演算するように構成され得る。
電気モータの加速時(特に、起動時)の制動トルクの応答性を確保するためには、電気モータの軸受け等の静摩擦の影響を補償するとともに、装置全体の慣性の影響を補償して電気モータの動き出し(停止状態からの動き始め)を改善することが重要である。上記構成によれば、加速時の慣性補償制御が必要であるとの判定がなされた時点以降、制動手段BRKの最大応答に対応した予め設定された前記時系列のパターン(時間の経過に対応した波形)の慣性補償通電量が出力され得る。従って、電気モータを含む装置全体の慣性、及び、軸受け等の静摩擦の影響が補償され、電気モータの動き出しの制動トルクの応答性が効率的に向上され得る。
本発明の実施形態に係る制動制御装置を搭載した車両の概略構成図である。 図1に示した制動手段(ブレーキアクチュエータ)(Z部)の構成を説明するための図である。 図1に示した制御手段(ブレーキコントローラ)を説明するための機能ブロック図である。 図3に示した慣性補償制御ブロックの実施形態を説明するための機能ブロック図である。 図4に示した制御要否判定演算ブロック、及び加速時通電量演算ブロックの一例を説明するための機能ブロック図である。 制動手段(ブレーキアクチュエータ)の最大応答を説明するための図である。 図4に示した制御要否判定演算ブロック、及び加速時通電量演算ブロックの他の例を説明するための機能ブロック図である。 従来の制動制御装置によって指示電流に傾き制限が設けられる場合における、慣性補償電流の演算結果の一例を示したタイムチャートである。
以下、本発明に係る車両の制動制御装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
<本発明に係る車両の制動制御装置を搭載した車両全体の構成>
図1に示すように、この車両には、運転者が車両を減速するために操作する制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BP、各車輪の制動トルクを調整して各車輪に制動力を発生させる制動手段(ブレーキアクチュエータ)BRK、BRKを制御する電子制御ユニットECU、及び、BRK、ECU等に電力を供給する電源としての蓄電池BATが搭載されている。
また、この車両には、BPの操作量Bpaを検出する制動操作量取得手段(例えば、ストロークセンサ、踏力センサ)BPA、運転者によるステアリングホイールSWの操作角Saaを検出する操舵角検出手段SAA、車両のヨーレイトYraを検出するヨーレイト検出手段YRA、車両の前後加速度Gxaを検出する前後加速度検出手段GXA、車両の横加速度Gyaを検出する横加速度検出手段GYA、及び、各車輪WHLの回転速度(車輪速度)Vwaを検出する車輪速度検出手段VWAが備えられている。
制動手段BRKには、電気モータMTR(図示せず)が備えられ、MTRによって車輪WHLの制動トルクが制御される。また、BRKには、摩擦部材が回転部材を押す力Fbaを検出する押し力検出手段(例えば、軸力センサ)FBA、MTRの通電量(例えば、電流値)Imaを検出する通電量検出手段(例えば、電流センサ)IMA、MTRの位置(例えば、回転角)Mkaを検出する位置検出手段(例えば、回転角センサ)MKAが備えられている。
上述した種々の検出手段の検出信号(Bpa等)は、ノイズ除去(低減)フィルタ(例えば、ローパスフィルタ)の処理がなされて、ECUに供給される。ECUでは、本発明に係わる制動制御の演算処理が実行される。即ち、後述する制御手段CTLがECU内にプログラムされ、Bpa等に基づいて電気モータMTRを制御するための目標通電量(例えば、目標電流値、目標デューティ比)Imtが演算される。また、ECUでは、Vwa、Yra等に基づいて、公知のアンチスキッド制御(ABS)、トラクション制御(TCS)、車両安定化制御(ESC)等の演算処理が実行される。
<制動手段(ブレーキアクチュエータ)BRKの構成>
本発明に係る制動制御装置では、車輪WHLの制動トルクの発生、及び調整が、電気モータMTRによって行われる。
図1のZ部の拡大図である図2に示すように、制動手段BRKは、ブレーキキャリパCPR、回転部材KTB、摩擦部材MSB、電気モータMTR、駆動手段DRV、減速機GSK、回転・直動変換機構KTH、押し力取得手段FBA、位置検出手段MKA、及び、通電量取得手段IMAにて構成されている。
ブレーキアクチュエータBRKには、公知の制動装置と同様に、公知のブレーキキャリパCPR、及び、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)MSBが備えられる。MSBが公知の回転部材(例えば、ブレーキロータ)KTBに押し付けられることによって摩擦力が発生し、車輪WHLに制動トルクが生じる。
駆動手段(電気モータMTRの駆動回路)DRVにて、目標通電量(目標値)Imtに基づき電気モータMTRへの通電量(最終的には電流値)が制御される。具体的には、駆動手段DRVには、パワートランジスタ(例えば、MOS−FET)が用いられたブリッジ回路が構成され、目標通電量Imtに基づいてパワートランジスタが駆動され、電気モータMTRの出力が制御される。
電気モータMTRの出力(出力トルク)は、減速機(例えば、歯車)GSKを介して回転・直動変換機構KTHに伝達される。そして、KTHによって、回転運動が直線運動に変換されて摩擦部材(ブレーキパッド)MSBが回転部材(ブレーキディスク)KTBに押し付けられる。KTBは車輪WHLに固定されており、MSBとKTBとの摩擦によって、車輪WHLに制動トルクが発生し、調整される。回転・直動変換機構KTHとして、「滑り」によって動力伝達(滑り伝達)を行う滑りネジ(例えば、台形ネジ)、或いは、「転がり」によって動力伝達(転がり伝達)を行うボールネジが用いられ得る。
モータ駆動回路DRVには、実際の通電量(例えば、実際に電気モータに流れる電流)Imaを検出する通電量取得手段(例えば、電流センサ)IMAが備えられる。また、電気モータMTRには位置(例えば、回転角)Mkaを検出する位置検出手段(例えば、角度センサ)MKAが備えられる。さらに、摩擦部材MSBが回転部材KTBを実際に押す力(実押し力)Fbaを取得(検出)するために、押し力取得手段(例えば、力センサ)FBAが備えられる。
図2では、制動手段BRKとして、所謂、ディスク型制動装置(ディスクブレーキ)の構成が例示されているが、制動手段BRKは、ドラム型制動装置(ドラムブレーキ)であってもよい。ドラムブレーキの場合、摩擦部材MSBはブレーキシューであり、回転部材KTBはブレーキドラムである。同様に、電気モータMTRによってブレーキシューがブレーキドラムを押す力(押し力)が制御される。電気モータMTRとして回転運動にてトルクを発生させるものが示されるが、直線運動にて力を発生させるリニアモータでもあってもよい。
<制御手段CTLの全体構成>
図3に示すように、図1に示した制御手段CTLは、目標押し力演算ブロックFBT、指示通電量演算ブロックIST、押し力フィードバック制御ブロックIPT、慣性補償制御ブロックINR、及び、通電量調整演算ブロックIMTにて構成されている。制御手段CTLは、電子制御ユニットECU内にプログラムされている。
制動操作部材BP(例えば、ブレーキペダル)の操作量Bpaが制動操作量取得手段BPAによって取得される。制動操作部材の操作量(制動操作量)Bpaは、運転者による制動操作部材の操作力(例えば、ブレーキ踏力)、及び、変位量(例えば、ブレーキペダルストローク)のうちの少なくとも何れかに基づいて演算される。Bpaにはローパスフィルタ等の演算処理がなされ、ノイズ成分が除去(低減)されている。
目標押し力演算ブロックFBTにて、予め設定された目標押し力演算特性(演算マップ)CHfbを用いて、操作量Bpaに基づき目標押し力Fbtが演算される。「押し力」は、制動手段(ブレーキアクチュエータ)BRKにおいて、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)MSBが回転部材(例えば、ブレーキディスク)KTBを押し力である。目標押し力Fbtは、その押し力の目標値である。
指示通電量演算ブロックISTにて、予め設定された演算マップCHs1,CHs2を用いて、目標押し力Fbtに基づき指示通電量Istが演算される。指示通電量Istは、制動手段BRKの電気モータMTRを駆動し、目標押し力Fbtを達成するための、電気モータMTRへの通電量の目標値である。演算マップ(指示通電量の演算特性)は、ブレーキアクチュエータのヒステリシスを考慮して、2つの特性CHs1,CHs2で構成される。特性(第1の指示通電量演算特性)CHs1は押し力を増加する場合に対応し、特性(第2の指示通電量演算特性)CHs2は押し力を減少する場合に対応する。そのため、特性CHs2に比較して、特性CHs1は相対的に大きい指示通電量Istを出力するように設定されている。
ここで、通電量とは、電気モータMTRの出力トルクを制御するための状態量(変数)である。電気モータMTRは電流に概ね比例するトルクを出力するため、通電量の目標値として電気モータの電流目標値が用いられ得る。また、電気モータMTRへの供給電圧を増加すれば、結果として電流が増加されるため、目標通電量として供給電圧値が用いられ得る。さらに、パルス幅変調(PWM,pulse width modulation)におけるデューティ比によって供給電圧値が調整され得るため、このデューティ比が通電量として用いられ得る。
押し力フィードバック制御ブロックIPTにて、目標押し力(目標値)Fbt、及び、実押し力(実際値)Fbaに基づき押し力フィードバック通電量Iptが演算される。指示通電量Istは目標押し力Fbtに相当する値として演算されるが、ブレーキアクチュエータの効率変動により目標押し力Fbtと実際の押し力Fbaとの間に誤差(定常的な誤差)が生じる場合がある。押し力フィードバック通電量Iptは、目標押し力Fbtと実押し力Fbaとの偏差(押し力偏差)ΔFb、及び、演算特性(演算マップ)CHpに基づいて演算され、上記の誤差(定常的な誤差)を減少するように決定される。なお、Fbaは押し力取得手段FBAによって取得される。
慣性補償制御ブロックINRにて、BRK(特に、電気モータMTR)の慣性(イナーシャであり、回転運動における慣性モーメント、又は、直線運動における慣性質量)の影響が補償される。慣性補償制御ブロックINRでは、BRKの慣性(慣性モーメント、或いは、慣性質量)の影響を補償するための通電量の目標値Ijt,Iktが演算される。電気モータが停止、或いは、低速で運動している状態から運動(回転運動)が加速される場合に、押し力発生の応答性を向上させることが必要である。この場合に対応する加速時慣性補償通電量Ijtが演算される。Ijtは、慣性補償制御における加速時制御の通電量の目標値である。
また、電気モータが運動(回転運動)している状態から減速して停止していく場合に、押し力のオーバシュートを抑制し、収束性を向上することも必要である。この場合に対応する減速時慣性補償通電量Iktが演算される。Iktは、慣性補償制御における減速時制御の通電量の目標値である。ここで、Ijtは電気モータの通電量を増加させる値(Istに加算される正の値)であり、Iktは電気モータの通電量を減少させる値(Istに加算される負の値)である。
そして、通電量調整演算ブロックIMTにて、指示通電量Istが、押し力フィードバック通電量Ipt、及び慣性補償通電量Ijt(加速時)、Ikt(減速時)によって調整されて、目標通電量Imtが演算される。具体的には、指示通電量Istに対して、フィードバック通電量Ipt、及び、慣性補償通電量Ijt,Iktが加算されて、その総和が目標通電量Imtとして演算される。目標通電量Imtは、電気モータMTRの出力を制御するための最終的な通電量の目標値である。
<慣性補償制御ブロックの実施形態の構成>
図4を参照しながら、慣性補償制御ブロックINRの実施形態について説明する。図4に示すように、慣性補償制御ブロックINRは、慣性補償制御の要否を判定する制御要否判定演算ブロックFLG、慣性補償制御の目標通電量を演算する慣性補償通電量演算ブロックIJK、及び、選択演算ブロックSNTにて構成される。
制御要否判定演算ブロックFLGでは、慣性補償制御の実行が必要であるか、不要であるかが判定される。制御要否判定演算ブロックFLGは、加速時(例えば、電気モータが起動し、増速するとき)での要否判定を行う加速時判定演算ブロックFLJ、及び、減速時(例えば、電気モータが停止に向かうとき)での要否判定を行う減速時判定演算ブロックFLKで構成されている。制御要否判定演算ブロックFLGからは、判定結果として、要否判定フラグFLj(加速時),FLk(減速時)が出力される。要否判定フラグFLjは、加速時慣性補償制御の要否判定結果を表し、制御が不要の場合は「0」、必要の場合は「1」が出力される。要否判定フラグFLjは、減速時慣性補償制御の要否判定結果を表し、制御が不要の場合は「0」、必要の場合は「1」が出力される。慣性補償制御の要否判定(制御要否判定演算ブロックFLG)の詳細については後述する。
慣性補償通電量演算ブロックIJKでは、FLGにて慣性補償制御が必要であると判定された場合(FLj=1、又は、FLk=1の場合)における慣性補償通電量(目標値)が演算される。慣性補償通電量演算ブロックIJKは、加速時(例えば、電気モータが起動し、増速するとき)の慣性補償通電量(目標値)Ijtを演算する加速時通電量演算ブロックIJT、及び、減速時(例えば、電気モータが停止に向かうとき)の慣性補償通電量(目標値)Iktを演算する減速時通電量演算ブロックIKTにて構成されている。
そして、選択演算ブロックSNTでは、電気モータ加速時の慣性補償通電量Ijtの出力、電気モータ減速時の慣性補償通電量Iktの出力、及び、制御停止(値「0」の出力)のうちから、何れか1つが選択されて出力される。選択演算ブロックSNTでは、加速時慣性補償通電量Ijtが出力されている途中で減速時慣性補償通電量Iktが出力された場合には、Ijtに代えて、Iktが優先的に出力される。慣性補償制御は、「必要状態」の判定(要否判定フラグ)をトリガにして行われるが、運転者が急制動を中止した際には、直ちに加速時の慣性補償制御(Ijtの演算)が停止され、減速時の慣性補償制御(Iktの演算)に切り替えられる。そのため、押し力のオーバシュートが確実に抑制され得る。
電気モータMTRの応答性が考慮された値として加速時慣性補償通電量Ijtが出力されたとしても、電源電圧の状態によっては(例えば、電圧低下がある場合等)、電気モータMTRの実際の通電量が目標値と一致するとは限らない。例えば、電気モータMTRの起動時において実際の通電量が不足していた場合に、予め設定された減速時の慣性補償通電量Iktが出力されるとブレーキアクチュエータBRKにおいて押し力の不足が生じる場合があり得る。このような問題に対応するため、通電量取得手段(例えば、電流センサ)IMAが取得する実際の通電量(例えば、電流値)Imaに基づいて減速時慣性補償通電量Iktが演算される。なお、加速時の慣性補償通電量Ijtの演算の詳細については後述する。
加速時の慣性補償通電量Ijtに対応する実際の通電量Imaが、通電量取得手段(例えば、電流センサ)IMAによって取得される。減速時通電量演算ブロックIKTにはデータ記憶演算ブロックJDKが備えられ、Ijtが出力されている間に亘って、実通電量Imaに基づく時系列データJdkが記憶される。時系列データJdkは、時間経過Tに対する実際の通電量Ijaの特性として記憶される。特性Jdkに基づいて減速時慣性補償通電量Iktが演算される。
具体的には、減速時通電量演算ブロックIKTでは、実際の通電量Imaから、指示通電量Ist、及び、フィードバック通電量Iptが減算されて加速時の慣性補償に相当する(即ち、目標値Ijtに対する)実際の通電量Ijaが演算される。Istによる成分、及び、Iptによる成分がImaから除かれて、Ijtに対応する通電量Ijaが演算される。そして、対応通電量Ijaに「−1」が乗算され(符号が反転されて)、更に、係数k_ijが乗ぜられて、記憶される通電量Ikbが演算される。
データ記憶演算ブロックJDKでは、記憶通電量Ikbが、加速時制御の要否判定フラグFLjが「0(不要状態)」から「1(必要状態)」へ遷移した時点(T=0)からの経過時間(即ち、加速時の慣性補償制御の開始からの経過時間)Tと関連付けて、時系列データJdkとして記憶される。そして、記憶された時系列データJdkが、減速時の慣性補償通電量Iktを演算するための特性(演算マップ)とされる。減速時制御の要否判定フラグFLkが「0(不要状態)」から「1(必要状態)」へ切り替わった時点(T=0)からの経過時間T、及び、Imaに基づく時系列データJdkに基づいて減速時の慣性補償通電量Iktが演算される。
加速時(特に、起動する場合)は電気モータMTRの軸受け等の摩擦に打ち克つトルクを発生させる必要があるが、減速時(停止に向かう場合)はその摩擦がMTRを減速させるように作用するため、係数k_ijは「1」未満の値に設定され得る。また、前述の説明では、演算周期毎に記憶通電量Ikbが演算されるが、経過時間Tに対応したIma、Ist、及び、Iptの値が時系列データとして記憶されて、これらを用いて特性Jdkが演算され得る。即ち、時系列データJdk=(−1)×(k_ij)×{(Imaの時系列データ)−(Istの時系列データ)−(Iptの時系列データ)}の演算に基づいて特性(演算マップ)Jdkが決定され得る。
このINRの実施形態によれば、加速時の慣性補償制御が行われた際の実際の通電量Imaに基づいて減速時の慣性補償制御が実行されるため、電源等の影響によって目標値と実際値との間に誤差が発生したとしても、適切な慣性補償制御が実行され得る。
<制御要否判定演算ブロック、及び加速時通電量演算ブロックの一例>
図5を参照しながら、制御要否判定演算ブロックFLG、及び加速時通電量演算ブロックIJTの一例について説明する。図5に示すように、この慣性補償制御ブロックINRでは、MTR等の慣性に起因する押し力の応答性、及び、収束性を向上する慣性補償制御が実行される。慣性補償制御ブロックINRは、慣性補償制御の要否を判定する制御要否判定演算ブロックFLG、慣性補償制御の目標通電量を演算する慣性補償通電量演算ブロックIJK、及び、選択演算ブロックSNTにて構成される。
制御要否判定演算ブロックFLGでは、慣性補償制御の実行が必要であるか、不要であるかが判定される。制御要否判定演算ブロックFLGは、加速時(例えば、電気モータが起動し、増速するとき)での要否判定を行う加速時判定演算ブロックFLJ、及び、減速時(例えば、電気モータが停止に向かうとき)での要否判定を行う減速時判定演算ブロックFLKで構成されている。制御要否判定演算ブロックFLGからは、判定結果として、要否判定フラグFLj(加速時),FLk(減速時)が出力される。要否判定フラグFLj,FLkにおいて、「0」は慣性補償制御が不要である場合(不要状態)を表し、「1」は慣性補償制御が必要である場合(必要状態)を表す。
制御要否判定演算ブロックFLGは、操作速度演算ブロックDBP、加速時判定演算ブロックFLJ、及び、減速時判定演算ブロックFLKで構成される。
先ず、操作速度演算ブロックDBPにて、制動操作部材BPの操作量Bpaに基づき、その操作速度dBpが演算される。操作速度dBpは、Bpaを微分して演算される。
加速時判定演算ブロックFLJでは、操作速度dBpに基づいて電気モータが加速する場合(例えば、電気モータが回転速度を増加するとき)の慣性補償制御が「必要状態(制御を実行する必要がある状態)」、及び、「不要状態(制御を実行する必要がない状態)」のうちで何れの状態であるかが判定される。判定結果は、要否判定フラグ(制御フラグ)FLjとして出力される。要否判定フラグFLjとして、「0」が「不要状態」、「1」が「必要状態」に夫々対応している。加速時の慣性補償制御の要否判定は、演算マップCFLjに従って、dBpが所定操作速度(所定値)db1を超過した時点において、加速時の要否判定フラグFLjが「0(不要状態)」から「1(必要状態)」に切り替えられる(FLj←1)。その後、要否判定フラグFLjはdBpが所定操作速度(所定値)db2未満となる時点で、「1」から「0」に切り替えられる(FLj←0)。なお、FLjは、制動操作が行われていない場合には、初期値として「0」に設定されている。
更に、加速時慣性補償制御の要否判定には、操作速度dBpに加えて、制動操作部材の操作量Bpaが用いられ得る。この場合、Bpaが所定操作量(所定値)bp1を超過し、且つ、dBpが所定操作速度(所定値)db1を超過した時点において、要否判定フラグFLjが「0」から「1」に切り替えられる。Bpa>dp1の条件を判定基準に用いるため、dBpにおけるノイズ等の影響が補償され、確実な判定が行われ得る。
減速時判定演算ブロックFLKでは、dBpに基づいて電気モータが減速する場合(例えば、電気モータが回転速度を減少するとき)の慣性補償制御が「必要状態(制御を実行する必要がある状態)」、及び、「不要状態(制御を実行する必要がない状態)」のうちで何れの状態であるかが判定される。判定結果は、要否判定フラグ(制御フラグ)FLkとして出力される。要否判定フラグFLkは「0」が「不要状態」、「1」が「必要状態」に夫々対応している。減速時の慣性補償制御の要否判定は、演算マップCFLkに従って、dBpが所定操作速度(所定値)db3以上の状態から所定操作速度(所定値)db4(<db3)未満となる時点において、要否判定フラグFLkが「0(不要状態)」から「1(必要状態)」に切り替えられる(FLk←1)。その後、dBpが加速時制御と減速時制御とが頻繁に繰り返されるのを防止するため、減速時制御の所定操作速度db3は加速時制御の所定操作速度db1よりも小さい値に設定され得る。なお、FLkは、制動操作が行われていない場合には、初期値として「0」に設定されている。
慣性補償制御の要否判定フラグFLj,FLkは、制御要否判定演算ブロックFLGから慣性補償通電量演算ブロックIJKに送信される。
慣性補償通電量演算ブロックIJKでは、FLGにて慣性補償制御が必要であると判定された場合(FLj=1、又は、FLk=1の場合)における慣性補償通電量(目標値)が演算される。慣性補償通電量演算ブロックIJKは、加速時(例えば、電気モータが起動し、増速するとき)の慣性補償通電量Ijtを演算する加速時通電量演算ブロックIJT、及び、減速時(例えば、電気モータが停止に向かうとき)の慣性補償通電量Iktを演算する減速時通電量演算ブロックIKTにて構成されている。
加速時通電量演算ブロックIJTでは、要否判定フラグFLj、及び、加速時演算特性(演算マップであり、時系列のパターンに対応)CHjに基づき、加速時慣性補償通電量(第1の慣性補償通電量)Ijtが演算される。加速時演算特性CHjは、加速時慣性補償制御の必要状態が判定された時点からの経過時間Tに対するIjtの特性(演算マップ)としてECU内に予め記憶されている。演算特性CHjは、時間Tが「0」のときから時間の経過に従い、Ijtが「0」から所定通電量(所定値)ij1にまで急峻に増加され、その後、時間の経過に従いIjtが所定通電量(所定値)ij1から「0」にまで徐々に減少される。具体的には、CHjは、Ijtが「0」から所定通電量ij1にまで増加されるのに要する時間tupが、Ijtが所定通電量ij1から「0」にまで減少されるのに要する時間tdnよりも短く設定されている。
また、図5に破線で示すように、通電量が増加する場合には、Ijtは「上に凸」の特性で、初めに急増され、その後、緩やかに増加する特性として、CHjが設定され得る。また、通電量が減少する場合には、Ijtは「下に凸」の特性で、初めは急減され、その後、緩やかに減少する特性として、CHjが設定され得る。そして、要否判定フラグFLjが「0(不要状態)」から「1(必要状態)」に切り替えられた時点をCHjでの経過時間の原点(T=0)とし、切替時点からの経過時間Tと加速時演算特性CHjとに基づき、電気モータ加速時の慣性補償通電量(第1の慣性補償通電量)Ijtが決定される。Ijtの演算中に、要否判定フラグFLjが「1」から「0」に切り替えられても、演算特性CHjで予め設定されている継続時間に亘って加速時通電量Ijtは演算され続ける。なお、Ijtは正の値として演算され、Ijtによって電気モータMTRへの通電量が増加されるように調整される。
ここで、加速時慣性補償制御の演算特性CHjは、制動手段(ブレーキアクチュエータ)BRKの最大応答に基づいて決定される。BRKへの入力(目標通電量)の変化に対して出力(電気モータの変位)が遅れて現れる。BRKの最大応答(BRKが入力に対して応答し得る最大の状態)とは、電気モータMTRへステップ入力が与えられた場合のMTRの応答(入力の時間変化量に対応する出力の時間変化量の有様)である。即ち、MTRに所定量の目標通電量Imtが(ゼロから増加方向に)ステップ入力された場合におけるMTRの実際の変位(回転角)Mkaの変化である。図6に示すように、電気モータMTRに対して、(所定の)目標通電量のステップ入力(従って、回転角の目標値Mktが(所定量mks0の)ステップ入力)としてなされた場合、回転角の実際値(出力)Mkaが、目標値(入力)Mktに追い着くように(遅れを伴って目標値に追従するように)変化する。CHjは、このMkaの変化に基づいて決定される。
装置全体の慣性(特に、電気モータの慣性)を補償するトルクは、電気モータの回転角加速度に比例する。この点を考慮し、慣性補償を適切に行うためには、慣性補償通電量が電気モータの実際の加速度(回転角加速度)ddMkaに基づいて演算される。そのため、MTRの変位(回転角)の実際値Mkaが2階微分されて、加速度(回転角加速度)ddMkaが演算され、ddMkaに基づいてCHjが決定される。例えば、時系列のパターンCHjは、ddMkaに係数K(定数)が乗算されることによって設定され得る。
CHjにおいて、Ijtが急峻に増加する際の増加勾配(時間に対するIjtの傾き)は、前記ステップ入力の開始時点t1から回転角加速度ddMkaが最大値ddm1となる時点t2までの間におけるddMkaの増加勾配(時間に対して増加するddMkaの傾き)の最大値又は平均値に基づいて決定される。また、Ijtが緩やかに減少する際の減少勾配(時間に対するIjtの傾き)は、ddMkaが最大値ddm1となる時点t2から概ゼロとなる時点t3までの間におけるddMkaの減少勾配(時間に対して減少するddMkaの傾き)の最大値又は平均値に基づいて決定される。
また、最大応答(ステップ応答)におけるddMkaに基づいて(時点t1〜t2のddMkaの変化に基づいて)、通電量が増加される場合には、Ijtは「上に凸」の特性で、初めに急増され、その後、緩やかに増加する特性として、CHjが設定され得る。同様に、最大応答におけるddMkaに基づいて(時点t2〜t3のddMkaの変化に基づいて)、通電量が減少される場合には、Ijtは「下に凸」の特性で、初めは急減され、その後、緩やかに減少する特性として、CHjが設定され得る。
前述した減速時通電量演算ブロックIKT(図4を参照)にて、要否判定フラグFLk、及び、減速時の演算特性(演算マップ)Jdkに基づき減速時慣性補償通電量(第2の慣性補償通電量)Iktが演算される。減速時演算特性Jdkは、減速時慣性補償制御の必要状態が判定された時点からの経過時間Tに対するIktの特性(演算マップ)として、データ記憶演算ブロックJDKに記憶されている。そして、要否判定フラグFLkが「0」から「1」に切り替えられた時点をJdkにおける経過時間の原点(T=0)とし、切替時点からの経過時間Tと減速時演算特性Jdkとに基づき、電気モータ減速時の慣性補償通電量(第2の慣性補償通電量)Iktが決定される。Iktの演算中に、要否判定フラグFLkが「1」から「0」に切り替えられても、演算特性Jdkで予め設定されている継続時間に亘ってIktは演算され続ける。なお、Iktは負の値として演算され、Iktによって電気モータMTRへの通電量が減少されるように調整される。
選択演算ブロックSNTにて、電気モータ加速時の慣性補償通電量Ijtの出力、電気モータ減速時の慣性補償通電量Iktの出力、及び、制御停止(値「0」の出力)のうちから、何れか1つが選択されて出力される。選択演算ブロックSNTでは、加速時慣性補償通電量Ijtが出力されている途中で減速時慣性補償通電量Iktが出力された場合には、Ijtに代えて、Iktが優先的に出力される。慣性補償制御は、「必要状態」の判定(要否判定フラグ)をトリガにして行われるが、運転者が急制動を中止した際には、直ちに加速時の慣性補償制御(Ijtの演算)が停止され、減速時の慣性補償制御(Iktの演算)に切り替えられる。そのため、押し力のオーバシュートが確実に抑制され得る。
制御要否判定演算ブロックFLGでは、操作速度dBpに基づいて慣性補償制御の要否が判定されるが、dBpに代えて、目標押し力Fbtを微分した目標押し力速度dFbが用いられ得る。また、目標値として電気モータの変位(例えば、目標回転角)Mktが用いられる場合には、要否判定に目標回転角Mktを微分した目標回転速度dMkが利用され得る。即ち、制動操作量Bpaを微分して得られる操作速度に相当する値(速度相当値)dBp,dFb,dMkに基づいて慣性補償制御の要否が判定され得る。
<制御要否判定演算ブロック、及び加速時通電量演算ブロックの他の例>
図7を参照しながら、制御要否判定演算ブロックFLG、及び加速時通電量演算ブロックIJTの他の例について説明する。図7に示すように、この慣性補償制御ブロックINRは、制御要否判定演算ブロックFLG、慣性補償通電量演算ブロックIJK、及び、選択演算ブロックSNTにて構成される。IJK、及び、SNTの構成は、図5に示したものと同一であるため、制御要否判定演算ブロックFLGについてのみ説明する。
制御要否判定演算ブロックFLGは、操作加速度演算ブロックDDBP、加速時判定演算ブロックFLJ、及び、減速時判定演算ブロックFLKにて構成される。
操作加速度演算ブロックDDBPでは、制動操作部材の操作量Bpaに基づき、その操作加速度ddBpが演算される。操作加速度ddBpは、Bpaを2階微分して演算される。即ち、操作量Bpaを微分して操作速度dBpが演算され、さらに、操作速度dBpが微分されて操作加速度ddBpが演算される。
加速時判定演算ブロックFLJでは、操作加速度ddBpに基づいて電気モータMTRが加速する場合の慣性補償制御が「必要状態(制御を実行する必要がある状態)」、及び、「不要状態(制御を実行する必要がない状態)」のうちで何れの状態であるかが判定される。判定結果は、要否判定フラグ(制御フラグ)FLjとして出力される。要否判定フラグFLjは、「0」が「不要状態」、「1」が「必要状態」に夫々対応している。演算マップDFLjに従って、操作加速度ddBpが第1の所定加速度(所定値)ddb1(>0)を超過した時点で、加速時制御の要否判定フラグFLjは、「0(不要状態)」から「1(必要状態)」に変更される(FLj←1)。その後、操作加速度ddBpが所定加速度(所定値)ddb2(<ddb1)未満となるときに、FLjは「1」から「0」に変更される(FLj←0)。なお、FLjは、制動操作が行われていない場合には、初期値として「0」に設定されている。
減時判定演算ブロックFLKでは、操作加速度ddBpに基づいて電気モータMTRが加速する場合の慣性補償制御が「必要状態(制御を実行する必要がある状態)」、及び、「不要状態(制御を実行する必要がない状態)」のうちで何れの状態であるかが判定される。判定結果は、要否判定フラグ(制御フラグ)FLkとして出力される。要否判定フラグFLkは「0」が「不要状態」、「1」が「必要状態」に夫々対応している。演算マップDFLkに従って、操作加速度ddBpが第2の所定加速度(所定値)ddb3(<0)を下回った時点で、減速時制御の要否判定フラグFLkは、「0(不要状態)」から「1(必要状態)」に変更される(FLk←1)。その後、操作加速度ddBpが所定加速度(所定値)ddb4(>ddb3,<0)以上となるときに、FLkは「1」から「0」に変更される(FLk←0)。なお、FLkは、制動操作が行われていない場合には、初期値として「0」に設定されている。
要否判定フラグFLj,FLkは、図5に示した場合と同様に、慣性補償通電量演算ブロックIJK(IJT、及び、IKT)に送信され、時系列の予め設定されたパターン(演算マップ)CHj、及び、Imaに応じて記憶されたJdkに基づいて慣性補償通電量Ijt,Iktが演算される。
制御要否判定演算ブロックFLGにおいて遅れ要素演算ブロックDLYを設け、操作量Bpaに遅れ要素の演算処理(例えば、一次遅れ演算)を行い、処理後の操作量fBpに基づいて、ddfBpが演算され得る。遅れ要素演算ブロックDLYでは、ブレーキアクチュエータBRK(特に、電気モータMTR)の応答(入力変化に対する出力変化の有様)が、伝達関数によって考慮される。具体的には、ブレーキアクチュエータBRKの応答を表すため、遅れ要素の応答速さを表すパラメータとして時定数τmが用いられて、遅れ要素演算が行われる。ブレーキアクチュエータBRKの応答が考慮されるため、適切な慣性補償制御が行われ得る。
制御要否判定演算ブロックFLGでは、操作加速度ddBp(或いは、前記の遅れ演算処理されたddfBp)に基づいて慣性補償制御の要否が判定されるが、ddBp,ddfBpに代えて、目標押し力Fbt(或いは、前記の遅れ演算処理後のfFb)を2階微分した目標押し力加速度ddFb(前記の遅れ演算処理されたddfFb)が用いられ得る。また、目標値として電気モータの変位(例えば、目標回転角)Mktが用いられる場合には、要否判定に目標回転角Mkt(或いは、前記遅れ演算処理後のfMk)を2階微分した目標回転加速度ddMk(前記の遅れ演算処理されたddfMk)が利用され得る。即ち、制動操作量Bpaを2階微分して得られる制動操作の加速度に相当する値(加速度相当値)ddBp,ddFb,ddMk(或いは、遅れ要素の演算処理後のddfBp,ddfFb,ddfMk)に基づいて慣性補償制御の要否が判定され得る。
図5に示した例では、加速時の判定演算(FLjの演算)、及び、減速時の判定演算(FLkの演算)が共に操作速度(速度相当値)dBp等に基づいて行われ、図7に示した例では、加速時の判定演算(FLjの演算)、及び、減速時の判定演算(FLkの演算)が共に操作加速度(加速度相当値)ddBp等に基づいて行われる。しかし、「dBp等に基づくFLjの演算」と「ddBp等に基づくFLkの演算」とを組み合わせて制御要否判定演算ブロックFLGが構成され得る。また、「ddBp等に基づくFLjの演算」と「dBp等に基づくFLkの演算」とが組み合わされ得る。
以下、慣性補償制御ブロックINRにおける慣性補償制御の各実施形態に共通の作用・効果について述べる。慣性補償制御は、慣性をもつ装置の可動部(MTR等)が加速運動、或いは、減速運動を行うために必要な力(トルク)に相当する通電量(Ijt,Ikt)を、目標通電量Imtに対して調整する制御である。具体的には、電気モータが加速する場合には目標通電量を増加することによって補償(修正)し、電気モータが減速する場合には目標通電量を減少することによって補償(修正)する。電源電圧等の状態によっては電気モータMTRの実際の通電量が目標通電量Imtに一致するとは限らない。上記の各実施形態によれば、加速時の慣性補償制御が実行される際に、通電量取得手段IMA(例えば、電流センサ)によって取得される実際の通電量Ima(例えば、電流値)に基づいて、減速時の慣性補償通電量Iktが演算され得る。従って、電源電圧等の状況にかかわらず、特に減速時の慣性補償制御が適切に実行され得る。この結果、電気モータMTRの慣性を含む制動手段BRK全体の慣性の影響が適正に補償され得る。
BRK…ブレーキアクチュエータ、ECU…電子制御ユニット、MTR…電気モータ、BPA…制動操作量検出手段、SAA…操舵角検出手段、YRA…ヨーレイト検出手段、GXA…前後加速度検出手段、GYA…横加速度検出手段、VWA…車輪速度検出手段、FBA…押し力検出手段、IMA…通電量検出手段、位置検出手段…MKA

Claims (4)

  1. 運転者による車両の制動操作部材の操作量を取得する操作量取得手段と、
    前記車両の車輪に対する制動トルクを電気モータによって発生させる制動手段と、
    前記操作量に基づいて目標通電量を演算し、前記目標通電量に基づいて前記電気モータを制御する制御手段と、
    を備えた車両の制動制御装置であって、
    前記電気モータの実際の通電量を取得する通電量取得手段を備え、
    前記制御手段は、
    前記操作量に基づいて、前記電気モータの速度が増加する加速時における前記制動手段の慣性の影響を補償する慣性補償制御が必要であるか否かを判定し、
    前記加速時の慣性補償制御が必要であると判定した場合、前記目標通電量を増加して前記制動手段の慣性の影響を補償するための第1の慣性補償通電量を演算し、
    前記操作量に基づいて、前記電気モータの速度が減少する減速時における前記制動手段の慣性の影響を補償する慣性補償制御が必要であるか否かを判定し、
    前記減速時の慣性補償制御が必要であると判定した場合、前記第1の慣性補償通電量に対応して取得された前記実際の通電量に基づいて、前記目標通電量を減少して前記制動手段の慣性の影響を補償するための第2の慣性補償通電量を演算し、
    前記第1、第2の慣性補償通電量に基づいて前記目標通電量を演算するように構成された、車両の制動制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両の制動制御装置において、
    前記制御手段は、
    前記操作量に基づいて、加速度相当値、及び、速度相当値のうちの少なくとも何れか1つの状態相当値を演算し、
    前記状態相当値に基づいて、前記加速時の慣性補償制御が必要である否か、及び、前記減速時の慣性補償制御が必要であるか否か、のうちの少なくとも何れか1つを判定するように構成された、車両の制動制御装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の車両の制動制御装置において、
    前記制御手段は、
    前記加速時の慣性補償制御が必要であると判定した場合、前記第1の慣性補償通電量が、前記電気モータに対して前記目標通電量のステップ入力がなされた場合における前記電気モータの実際の位置の変化に基づいて予め設定された時系列のパターンを用いて、前記第1の慣性補償通電量を演算するように構成された、車両の制動制御装置。
  4. 請求項3に記載の車両の制動制御装置において、
    前記制御手段は、
    前記第1の慣性補償通電量に対応して取得された前記実際の通電量に基づいて、前記時系列のパターンに対応する時系列データを取得し、
    前記減速時の慣性補償制御が必要であると判定した場合、前記時系列データに基づいて前記第2の慣性補償通電量を演算するように構成された、車両の制動制御装置。
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