JP6361211B2 - 二次電池用セパレータの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、二次電池用セパレータの製造方法に関し、特には、セパレータ基材上に機能層を形成してなる二次電池用セパレータの製造方法に関するものである。
リチウムイオン二次電池などの二次電池は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そのため、従来、二次電池の更なる高性能化を目的として、セパレータなどの電池部材の改良がなされている。
そして、近年では、二次電池の高性能化を達成し得る高機能なセパレータとして、樹脂製の微多孔膜等よりなるセパレータ基材の両面に機能層(例えば、セパレータの耐熱性や強度を向上させるための保護層など)を形成してなるセパレータが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2009−26733号公報
ここで、セパレータ基材の両面に機能層を形成してなるセパレータは、例えば、機能層を形成する成分を含有する塗工剤をセパレータ基材に塗布し、塗布した塗工剤を乾燥させて機能層を形成することにより製造される。そして、セパレータ基材への塗工剤の塗布および塗布した塗工剤の乾燥は、通常、搬送ローラ等を使用してセパレータ基材を搬送しつつ、ロール・ツー・ロール方式で連続的に実施される。
しかし、強度が低いセパレータ基材、特にセパレータ製造時に搬送される方向の引張弾性率が4500MPa以下のセパレータ基材は、大きな張力を付与して搬送すると、破断したり、搬送方向に伸びてセパレータ基材の幅(搬送方向に直交する方向の寸法)が収縮したりする虞がある。そして、セパレータ基材の幅が大幅に収縮すると、セパレータ基材の搬送が困難になったり、製造したセパレータにシワが発生したりする。そのため、強度が低いセパレータ基材には、機能層を形成する際に大きな張力を付与して搬送することができないという問題があった。
一方で、セパレータ基材の破断や収縮を防止するために搬送時にセパレータ基材に付与する張力を低下させると、セパレータ基材が搬送中に蛇行し、セパレータ基材の搬送安定性が低下するという問題が生じる。そして、このような搬送安定性の低下は、高速(例えば、搬送速度20m/分以上)でセパレータ基材を搬送しつつ機能層を形成する場合等に特に大きな問題となる。
そのため、強度が低いセパレータ基材を使用したセパレータの製造においては、搬送時のセパレータ基材の破断または幅の収縮の抑制と、セパレータ基材の搬送安定性の低下の抑制とを両立することが求められていた。
そこで、本発明は、セパレータ基材を搬送しつつセパレータ基材の両面に機能層を形成してセパレータを製造する方法であって、強度が低いセパレータ基材を使用した場合であっても、セパレータ基材の破断または幅の収縮の発生を抑制しつつ、セパレータ基材を安定的に搬送することができるセパレータの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、搬送方向の引張弾性率が4500MPa以下である強度が低いセパレータ基材であっても、搬送方向の引張弾性率が所定値以上であれば、搬送時に付与する張力の大きさを所定の範囲内とすることで、セパレータ基材の破断または幅の収縮の発生を抑制しつつ、安定的に搬送することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の二次電池用セパレータの製造方法は、セパレータ基材を搬送しつつ当該セパレータ基材の両面に機能層を形成する機能層形成工程を含む二次電池用セパレータの製造方法であって、前記セパレータ基材は、搬送方向の引張弾性率が400MPa以上4500MPa以下であり、前記機能層形成工程では、前記セパレータ基材を搬送する際の当該セパレータ基材の張力を10N/m以上200N/m以下に制御することを特徴とする。このように、搬送方向の引張弾性率が400MPa以上のセパレータ基材を使用し、搬送時のセパレータ基材の張力を10N/m以上200N/m以下の範囲内に制御すれば、搬送方向の引張弾性率が4500MPa以下である強度が低いセパレータ基材を使用した場合であっても、セパレータ基材の破断または幅の収縮の発生を抑制しつつセパレータ基材を安定的に搬送して、セパレータ基材の両面に機能層を有するセパレータを製造することができる。
なお、本発明において、「セパレータ基材の搬送方向の引張弾性率」とは、JIS K7127に準じて測定した、温度23℃における引張弾性率を指す。
ここで、本発明の二次電池用セパレータの製造方法は、前記機能層形成工程が、前記セパレータ基材の一方の表面に塗工剤を塗布し、塗布した塗工剤を乾燥させて第一機能層を形成する第一機能層形成工程と、前記第一機能層の形成後に前記セパレータ基材の他方の表面に塗工剤を塗布し、塗布した塗工剤を乾燥させて第二機能層を形成する第二機能層形成工程とを含むことが好ましい。第一機能層が形成されたセパレータ基材は第一機能層の形成前よりも強度が高まるため、第一機能層を形成した後に第二機能層を形成すれば、第二機能層を良好な条件下で容易に形成することができるからである。
また、本発明の二次電池用セパレータの製造方法は、前記第一機能層形成工程後であって前記第二機能層形成工程前の前記セパレータ基材の張力を、前記第一機能層形成工程前の前記セパレータ基材の張力よりも大きくすることが好ましい。第一機能層を形成した後にセパレータ基材の張力を大きくすれば、セパレータ基材の破断または幅の収縮の発生を抑制しつつ、セパレータ基材を更に安定的に搬送することができるからである。
ここで、前記第一機能層形成工程後であって前記第二機能層形成工程前の前記セパレータ基材の張力の大きさは、前記第一機能層形成工程前の前記セパレータ基材の張力の大きさの4倍以下とすることが好ましい。第一機能層形成工程後であって第二機能層形成工程前のセパレータ基材の張力の大きさを第一機能層形成工程前のセパレータ基材の張力の大きさの4倍以下とすれば、セパレータ基材の破断または幅の収縮の発生を十分に抑制することができるからである。
更に、本発明の二次電池用セパレータの製造方法は、前記第二機能層形成工程後の前記セパレータ基材の張力を、前記第一機能層形成工程後であって前記第二機能層形成工程前の前記セパレータ基材の張力よりも大きくすることが好ましい。第二機能層を形成した後にセパレータ基材の張力を大きくすれば、セパレータ基材の破断または幅の収縮の発生を抑制しつつ、セパレータ基材を更に安定的に搬送することができるからである。
ここで、前記第二機能層形成工程後の前記セパレータ基材の張力の大きさは、前記第一機能層形成工程後であって前記第二機能層形成工程前の前記セパレータ基材の張力の大きさの4倍以下とすることが好ましい。第二機能層形成工程後のセパレータ基材の張力の大きさを第一機能層形成工程後であって第二機能層形成工程前のセパレータ基材の張力の大きさの4倍以下とすれば、セパレータ基材の破断または幅の収縮の発生を十分に抑制することができるからである。
そして、本発明の二次電池用セパレータの製造方法は、前記第二機能層形成工程において前記塗工剤を乾燥させる際の温度を、前記第一機能層形成工程において前記塗工剤を乾燥させる際の温度よりも10℃以上90℃以下高くすることが好ましい。第二機能層形成工程において塗工剤を乾燥させる際の温度を第一機能層形成工程において塗工剤を乾燥させる際の温度よりも10℃以上高くすれば、第二機能層形成工程において塗工剤の乾燥に要する時間を短縮して、セパレータの生産性を高めることができるからである。また、第二機能層形成工程において塗工剤を乾燥させる際の温度と、第一機能層形成工程において塗工剤を乾燥させる際の温度との差を90℃以下とすれば、セパレータの生産性を高めつつ、セパレータ基材の幅の収縮の発生を十分に抑制することができるからである。
本発明によれば、搬送方向の引張弾性率が4500MPa以下である強度が低いセパレータ基材を使用した場合であっても、セパレータ基材の破断または幅の収縮の発生を抑制しつつセパレータ基材を安定的に搬送して、セパレータ基材の両面に機能層を有するセパレータを製造することができる。
二次電池用セパレータの製造装置の一例の概略構成を示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の二次電池用セパレータの製造方法は、セパレータ基材と、当該セパレータ基材の両面(表面および裏面)に形成された機能層とを有するセパレータを製造する際に用いられる。そして、本発明の二次電池用セパレータの製造方法により製造されたセパレータは、例えばリチウムイオン二次電池などの二次電池において、正極と負極とを隔離して正極と負極との間の短絡を防ぐ部材として使用される。
(二次電池用セパレータの製造方法)
本発明の二次電池用セパレータの製造方法では、強度が低いセパレータ基材の両面に機能層を形成してセパレータを製造する。そして、本発明の二次電池用セパレータの製造方法は、セパレータ基材を搬送しつつ当該セパレータ基材の両面に機能層を形成する機能層形成工程を含む。また、本発明の二次電池用セパレータの製造方法は、搬送方向の引張弾性率が400MPa以上4500MPa以下のセパレータ基材を使用し、且つ、機能層形成工程においてセパレータ基材を搬送する際のセパレータ基材の張力を10N/m以上200N/m以下の範囲内に制御することを特徴とする。なお、本発明の二次電池用セパレータの製造方法は、機能層形成工程の後に、任意に、機能層の上に追加の層を形成する工程などの追加の工程を含んでいてもよい。
以下、二次電池用セパレータの製造に使用されるセパレータ基材、当該セパレータ基材の両面に形成される機能層、および、セパレータ基材の両面に機能層を形成する機能層形成工程について、順次説明する。
<セパレータ基材>
二次電池用セパレータの製造に使用するセパレータ基材は、長尺状の多孔質部材である。そして、セパレータ基材は、機能層形成工程においてセパレータ基材上に機能層を形成してセパレータを製造する際には、通常、長手方向に向かって搬送される。
ここで、本発明の二次電池用セパレータの製造方法で使用するセパレータ基材は、強度が低いセパレータ基材、具体的には、搬送方向(通常は長手方向)の引張弾性率が4500MPa以下、好ましくは3000MPa以下、より好ましくは2000MPa以下、更に好ましくは1500MPa以下のセパレータ基材である。通常、このような引張弾性率を有するセパレータ基材は、強度が低く、搬送時に搬送安定性を高めるために大きな張力を付与すると、破断したり、搬送方向に伸びてセパレータ基材の幅が収縮したりし易いという問題を有している。しかし、本発明の製造方法によれば、強度が低いセパレータ基材であっても、セパレータ基材の破断または幅の収縮の発生を抑制しつつ、セパレータ基材を安定的に搬送することが可能になる。そのため、本発明の二次電池用セパレータの製造方法は、上述したような引張弾性率を有するセパレータ基材を使用する場合を対象とする。
そして、セパレータ基材は、搬送方向の引張弾性率が400MPa以上である必要があり、セパレータ基材の搬送方向の引張弾性率は、好ましくは500MPa以上であり、より好ましくは600MPa以上であり、更に好ましくは800MPa以上である。セパレータ基材の搬送方向の引張弾性率が400MPa未満の場合には、本発明の製造方法を使用した場合であっても、セパレータ基材の破断または幅の収縮の発生を抑制しつつセパレータ基材を安定的に搬送することが困難だからである。
なお、上述したような引張弾性率を有するセパレータ基材としては、特に限定されることなく、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂や芳香族ポリアミド樹脂を含む微多孔膜または不織布などが挙げられる。具体的には、セパレータ基材としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなど)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂からなる微多孔膜や、ポリオレフィン系の繊維の織布または不織布などが挙げられる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くして二次電池の体積当たりの容量を向上させる観点からは、セパレータ基材としては、ポリオレフィン樹脂よりなる微多孔膜が好ましい。
そして、二次電池用セパレータの製造に使用するセパレータ基材の幅は、特に制限されないが、通常300mm以上500mm以下である。また、セパレータ基材の厚さは、通常、0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、通常、40μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。更に、セパレータ基材の搬送方向の長さは、特に制限されないが、通常、セパレータ基材の幅の10倍以上である。
<機能層>
機能層形成工程においてセパレータ基材上に形成される機能層は、セパレータに所望の機能性(例えば、耐熱性、強度、接着性など)を付与するためのものである。そして、機能層は、例えば、セパレータに機能性を付与する物質と、必要に応じて配合されるその他の物質とを含んでいる。なお、通常、セパレータ基材上に形成される機能層は、引張弾性率がセパレータ基材よりも高い。
[セパレータに機能性を付与する物質]
ここで、セパレータに耐熱性や強度を付与する物質としては、二次電池の使用環境下で安定に存在し、電気化学的に安定である非導電性の無機粒子および有機粒子が挙げられる。具体的には、無機粒子としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化カルシウム、酸化チタン(チタニア)、BaTiO、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の窒化物粒子;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイト等の粘土微粒子;などの無機粒子が挙げられる。また、有機粒子としては、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの架橋高分子粒子や、ポリスルフォン、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリアセタールなどの耐熱性高分子粒子が挙げられる。
また、セパレータに接着性を付与する物質としては、通常10℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、また、通常110℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下のガラス転移温度を有する粒子状重合体が挙げられる。
[その他の物質]
なお、機能層に含まれ得るその他の物質としては、特に限定されることなく、結着材、増粘剤および界面活性剤などの機能層の形成に使用される公知の物質(例えば、例えば国際公開第2012/115096号に記載のもの)を挙げることができる。
[機能層の形成]
そして、機能層は、上記セパレータに機能性を付与する物質と、必要に応じて配合されるその他の物質とを水や有機溶媒などの分散媒に分散または溶解させてなる塗工剤をセパレータ基材上に塗布し、塗布した塗工剤を乾燥させることにより形成することができる。なお、セパレータ基材上に形成する機能層の厚みは、所望の機能性に応じて適宜調整することができ、通常、0.1μm以上50μm以下であり、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは1μm以上であり、また、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。そして、セパレータ基材上に塗布する塗工剤の厚みは、所望の機能層の厚みに応じて適宜調整することができ、通常、0.1μm以上200μm以下である。
なお、塗工剤の塗工性の観点からは、塗工剤の粘度は、好ましくは2cP以上、より好ましくは5cP以上、更に好ましくは15cP以上であり、好ましくは80cP以下、より好ましくは50cP以下、特に好ましくは25cP以下である。ここで、塗工剤の粘度は、粘度・粘弾性測定装置(レオストレスHAAKE RS6000、英弘精機株式会社製)を使用して、温度23℃、せん断速度1000s−1の条件下で測定することができる。
<機能層形成工程>
そして、上述した特定のセパレータ基材を搬送しつつ上述した機能層をセパレータ基材の両面に形成する機能層形成工程では、搬送されるセパレータ基材に付与される張力を10N/m以上200N/m以下の範囲内に制御する必要がある。搬送されるセパレータ基材の張力を10N/m未満とすると、セパレータ基材の蛇行などが発生し、搬送安定性を確保することができないからである。また、搬送されるセパレータ基材の張力を200N/m超とすると、セパレータ基材の破断や収縮の発生を十分に抑制することができないからである。一方で、機能層形成工程においてセパレータ基材に付与される張力を上記範囲内にすれば、例えば高速(搬送速度20m/分以上)でセパレータ基材を搬送してセパレータを製造した場合であっても、セパレータ基材の搬送安定性を確保することができると共に、セパレータ基材の破断や収縮の発生を十分に抑制することができる。
なお、機能層形成工程において、セパレータ基材の搬送およびセパレータ基材の両面への機能層の形成は、特に限定されることなく、搬送ローラなどを利用した既知の搬送装置を使用し、例えばロール・ツー・ロール方式で連続的に実施することができる。また、セパレータ基材に付与する張力の大きさの制御も、ダンサローラやサクションローラやテンションピックアップローラの使用などの既知の手法を用いて実施することができる。
ここで、機能層形成工程においては、セパレータ基材の張力を上記範囲内に制御すれば、上述した塗工剤をセパレータ基材の両面に同時に塗布し、塗布した塗工剤を乾燥させることにより機能層をセパレータ基材の両面に形成してもよい。しかし、本発明の二次電池用セパレータの製造方法の機能層形成工程では、セパレータ基材の一方の表面に塗工剤を塗布し、塗布した塗工剤を乾燥させて第一機能層を形成する第一機能層形成工程を実施した後、セパレータ基材の他方の表面に塗工剤を塗布し、塗布した塗工剤を乾燥させて第二機能層を形成する第二機能層形成工程を実施することにより、セパレータ基材の両面に機能層を形成することが好ましい。
上述した通り、本発明の二次電池用セパレータの製造方法で使用するセパレータ基材は強度が低い基材であるが、機能層を形成した後のセパレータ基材は、機能層の形成前よりも強度が高くなり、搬送方向の引張弾性率も増加する。従って、第一機能層を形成した後に第二機能層を形成すれば、第一機能層の形成前よりも強度が高まったセパレータ基材(第一機能層が形成されたセパレータ基材)に対し、第二機能層を良好な条件下で容易に形成することができるからである。より具体的には、第一機能層を形成した後に第二機能層を形成すれば、付与する張力を高めて搬送安定性を高めた条件下や、塗工剤の乾燥を迅速に行なうことはできるがセパレータ基材(特に、樹脂製の微多孔膜よりなるセパレータ基材)が伸びやすくなる高乾燥温度条件下であっても、第二機能層を良好に形成することができるからである。
そこで、以下では、本発明の二次電池用セパレータの製造方法の機能層形成工程の一例として、セパレータ基材を基材ロールから巻き出す巻き出し工程と、第一機能層形成工程と、第二機能層形成工程と、第一機能層および第二機能層を形成したセパレータ基材を巻き取る巻き取り工程とを含み、ロール・ツー・ロール方式でセパレータ基材に第一機能層および第二機能層を形成する機能層形成工程について詳細に説明する。
[巻き出し工程]
巻き出し工程では、巻き出し軸などにセパレータ基材をロール状に巻き付けてなる基材ロールからセパレータ基材を巻き出し、セパレータ基材の搬送を開始する。
ここで、巻き出し工程においてセパレータ基材に付与する張力は、10N/m以上200N/m以下の範囲内であれば特に限定されないが、セパレータ基材の搬送安定性を高める観点からは、20N/m以上であることが好ましく、30N/m以上であることがより好ましく、また、セパレータ基材の破断や収縮の発生を十分に抑制する観点からは、150N/m以下であることが好ましく、100N/m以下であることがより好ましく、50N/m以下であることが更に好ましい。
[第一機能層形成工程]
第一機能層形成工程では、巻き出し工程において基材ロールから巻き出したセパレータ基材を搬送しつつ、セパレータ基材の一方の表面に対し、塗工剤を塗布し、塗布した塗工剤を乾燥させて第一機能層を形成する。
ここで、搬送中のセパレータ基材への塗工剤の塗布は、グラビアローラやダイコータなどの所望の厚みで塗工剤を塗布可能な既知の塗工装置を用いて行なうことができる。
また、塗布した塗工剤の乾燥は、搬送中のセパレータ基材を、乾燥炉などの既知の乾燥装置内を通過させることにより行なうことができる。なお、塗工剤の乾燥速度を高めてセパレータの生産性を向上する観点からは、第一機能層形成工程において塗工剤を乾燥させる際の温度は、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることが更に好ましく、50℃以上であることが特に好ましい。また、樹脂製の微多孔膜よりなるセパレータ基材などの高温下で伸びやすい基材を使用した場合であってもセパレータ基材の収縮の発生を十分に抑制する観点からは、塗工剤を乾燥させる際の温度は、120℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましく、70℃以下であることが更に好ましく、60℃以下であることが特に好ましい。
そして、第一機能層形成工程において、塗工剤の塗布前から塗工剤の乾燥が終了するまでの間(即ち、第一機能層形成工程が終了するまでの間)にセパレータ基材に付与する張力は、10N/m以上200N/m以下の範囲内であれば特に限定されないが、セパレータ基材の搬送安定性を高める観点からは、20N/m以上であることが好ましく、30N/m以上であることがより好ましく、また、セパレータ基材の破断や収縮の発生を十分に抑制する観点からは、150N/m以下であることが好ましく、100N/m以下であることがより好ましく、50N/m以下であることが更に好ましい。
[第二機能層形成工程]
第二機能層形成工程では、第一機能層形成工程において第一機能層を形成したセパレータ基材を搬送しつつ、セパレータ基材の他方の表面(第一機能層を形成した側とは反対側の表面)に対し、塗工剤を塗布し、塗布した塗工剤を乾燥させて第二機能層を形成する。なお、第二機能層の形成に使用する塗工剤の種類は、第一機能層の形成に使用する塗工剤と同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、形成する第二機能層の厚さも、第一機能層と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
ここで、搬送中のセパレータ基材への塗工剤の塗布は、第一機能層形成工程と同様に、グラビアローラやダイコータなどの既知の塗工装置を用いて行なうことができる。
また、塗布した塗工剤の乾燥も、第一機能層形成工程と同様に、搬送中のセパレータ基材を、乾燥炉などの既知の乾燥装置内を通過させることにより行なうことができる。ここで、塗工剤の乾燥速度を高めてセパレータの生産性を向上する観点からは、第二機能層形成工程において塗工剤を乾燥させる際の温度は、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることが更に好ましく、50℃以上であることが特に好ましい。また、樹脂製の微多孔膜よりなるセパレータ基材などの高温下で伸びやすい基材を使用した場合であってもセパレータ基材の収縮の発生を十分に抑制する観点からは、塗工剤を乾燥させる際の温度は、120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることが更に好ましく、70℃以下であることが特に好ましい。
なお、前述した通り、第一機能層が形成されたセパレータ基材は、第一機能層の形成前よりも強度が高いため、第二機能層形成工程では、塗工剤を乾燥させる際の温度を第一機能層形成工程より高めても、セパレータ基材が伸びにくい。そのため、塗工剤の乾燥速度を高めてセパレータの生産性を向上すると共に塗工剤の乾燥に使用する乾燥装置を小型化する観点からは、第二機能層形成工程では、塗工剤を乾燥させる際の温度を第一機能層形成工程よりも高くすることが好ましい。なお、第二機能層形成工程で塗工剤を乾燥させる際の温度t2と、第一機能層形成工程で塗工剤を乾燥させる際の温度t1との差(t2−t1)は、生産性の向上および乾燥装置の小型化の観点からは、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることが更に好ましい。一方、温度t2を高めすぎることによりセパレータ基材の幅の収縮が発生することを抑制する観点からは、温度t2と温度t1との差(t2−t1)は、90℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることが更に好ましく、25℃以下であることが特に好ましい。
そして、第一機能層形成工程の終了後、第二機能層形成工程が終了するまでの間にセパレータ基材に付与する張力は、10N/m以上200N/m以下の範囲内であれば特に限定されないが、セパレータ基材の搬送安定性を高める観点およびセパレータ基材の破断や収縮の発生を十分に抑制する観点からは、以下のようにすることが好ましい。
即ち、第一機能層形成工程の終了後、第二機能層形成工程において塗工剤を塗布する前(即ち、第二機能層形成工程を開始する前)までの間にセパレータ基材に付与する張力は、セパレータ基材の搬送安定性を高める観点からは、20N/m以上であることが好ましく、30N/m以上であることがより好ましく、また、セパレータ基材の破断や収縮の発生を十分に抑制する観点からは、180N/m以下であることが好ましく、140N/m以下であることがより好ましく、80N/m以下であることが更に好ましい。
また、第二機能層形成工程において、塗工剤の塗布開始から塗工剤の乾燥が終了するまでの間(即ち、第二機能層形成工程が終了するまでの間)にセパレータ基材に付与する張力は、第一機能層形成工程の終了後、第二機能層形成工程を開始する前までの間にセパレータ基材に付与する張力と同様にすることが好ましい。具体的には、張力は、セパレータ基材の搬送安定性を高める観点からは、20N/m以上であることが好ましく、30N/m以上であることがより好ましく、また、セパレータ基材の破断や収縮の発生を十分に抑制する観点からは、180N/m以下であることが好ましく、140N/m以下であることがより好ましく、80N/m以下であることが更に好ましい。
なお、前述した通り、第一機能層が形成されたセパレータ基材は、第一機能層の形成前よりも強度が高いため、第一機能層形成工程の終了後は、セパレータ基材に付与する張力を高めてもセパレータ基材が伸びにくい。そのため、セパレータ基材に付与する張力を高めてセパレータ基材の搬送安定性を高める観点からは、第一機能層形成工程の終了後、第二機能層形成工程を開始する前までの間、および/または、第二機能層形成工程の開始後、第二機能層形成工程が終了するまでの間にセパレータ基材に付与する張力は、第一機能層形成工程を開始する前のセパレータ基材の張力よりも高くすることが好ましい。
具体的には、第一機能層形成工程の終了後、第二機能層形成工程を開始する前までの間、および/または、第二機能層形成工程の開始後、第二機能層形成工程が終了するまでの間にセパレータ基材に付与する張力は、セパレータ基材の搬送安定性を高める観点からは、第一機能層形成工程を開始する前のセパレータ基材の張力の1.2倍以上とすることが好ましく、1.4倍以上とすることがより好ましい。また、張力を高めすぎることによりセパレータ基材の幅の収縮が発生することを抑制する観点からは、第一機能層形成工程の終了後、第二機能層形成工程を開始する前までの間、および/または、第二機能層形成工程の開始後、第二機能層形成工程が終了するまでの間にセパレータ基材に付与する張力は、第一機能層形成工程を開始する前のセパレータ基材の張力の4倍以下とすることが好ましく、2.5倍以下とすることがより好ましく、1.8倍以下とすることが更に好ましい。
また、同様の理由により、第一機能層形成工程の終了後、第二機能層形成工程を開始する前までの間、および/または、第二機能層形成工程の開始後、第二機能層形成工程が終了するまでの間にセパレータ基材に付与する張力T2と、第一機能層形成工程を開始する前のセパレータ基材の張力T1との差(T2−T1)は、5N/m以上であることが好ましく、10N/m以上であることがより好ましく、また、40N/m以下であることが好ましく、30N/m以下であることがより好ましい。
一般に、基材を搬送しつつ基材上に機能層等を形成する場合には、通常、一定の張力を付与しつつ基材を安定的に搬送するが、本発明で使用するセパレータ基材のように強度が低い基材を搬送して機能層を形成する際には、搬送開始時の張力を高めることができない。しかし、本発明では、このように第一機能層形成工程の終了後にセパレータ基材の張力を高めることで、可能な限り搬送安定性を高めてセパレータを製造することができる。
[巻き取り工程]
巻き取り工程では、第一機能層形成工程および第二機能層形成工程においてセパレータ基材に第一機能層および第二機能層を形成してなるセパレータを巻き取り軸などにロール状に巻き取り、セパレータロールとする。
ここで、第二機能層形成工程の終了後、巻き取り工程においてセパレータを巻き取り軸に巻き取るまでの間にセパレータ基材に付与する張力は、10N/m以上200N/m以下の範囲内であれば特に限定されないが、セパレータ基材の搬送安定性を高める観点からは、20N/m以上であることが好ましく、30N/m以上であることがより好ましく、また、セパレータ基材の破断や収縮の発生を十分に抑制する観点からは、195N/m以下であることが好ましく、160N/m以下であることがより好ましく、100N/m以下であることが更に好ましい。
なお、第二機能層が形成されたセパレータ基材は、第二機能層の形成前よりも強度が高いため、第二機能層形成工程の終了後は、第一機能層形成工程の終了後と比較し、セパレータ基材に付与する張力を更に高めてもセパレータ基材が伸びにくい。そのため、セパレータ基材に付与する張力を高めてセパレータ基材の搬送安定性を高める観点からは、第二機能層形成工程の終了後、巻き取り工程が終了するまでの間にセパレータ基材に付与する張力は、第一機能層形成工程の終了後、第二機能層形成工程を開始する前のセパレータ基材の張力よりも高くすることが好ましい。なお、巻き取り工程においてセパレータ基材の張力を高めると、セパレータの巻き取り作業も容易になる。
具体的には、第二機能層形成工程の終了後、巻き取り工程が終了するまでの間にセパレータ基材に付与する張力は、セパレータ基材の搬送安定性を高める観点からは、第一機能層形成工程の終了後、第二機能層形成工程を開始する前のセパレータ基材の張力の1.2倍以上とすることが好ましく、1.4倍以上とすることがより好ましい。また、張力を高めすぎることによりセパレータ基材の幅の収縮が発生することを抑制する観点からは、第二機能層形成工程の終了後、巻き取り工程が終了するまでの間にセパレータ基材に付与する張力は、第一機能層形成工程の終了後、第二機能層形成工程を開始する前のセパレータ基材の張力の4倍以下とすることが好ましく、2.5倍以下とすることがより好ましく、1.8倍以下とすることが更に好ましい。
また、同様の理由により、第二機能層形成工程の終了後、巻き取り工程が終了するまでの間にセパレータ基材に付与する張力T4と、第一機能層形成工程の終了後、第二機能層形成工程を開始する前のセパレータ基材の張力T3との差(T4−T3)は、5N/m以上であることが好ましく、15N/m以上であることがより好ましく、また、100N/m以下であることが好ましく、50N/m以下であることがより好ましい。
なお、セパレータの製造プロセス全体としてセパレータ基材の幅の収縮の発生を抑制しつつ可能な限り搬送安定性を高める観点からは、第一機能層形成工程の終了後にセパレータ基材の張力を高め、更に、第二機能層形成工程の終了後にもセパレータ基材の張力を更に高める(即ち、セパレータ基材の張力を段階的に高める)ことが好ましい。
(二次電池用セパレータの製造装置)
なお、上述した機能層形成工程の一例を含む二次電池用セパレータの製造方法は、特に限定されることなく、例えば図1に示すような製造装置100を用いて実施することができる。
ここで、図1に示す製造装置100は、巻き出し軸11にセパレータ基材2を巻き付けてなる基材ロール1と、セパレータ基材2に第一機能層および第二機能層を形成してなるセパレータを巻き取り軸51に巻き取って得られるセパレータロール5との間でセパレータ基材2を搬送し、ロール・ツー・ロール方式でセパレータを製造する装置である。
そして、製造装置100は、セパレータ基材2の搬送方向の上流側から下流側に向かって、セパレータ基材2に塗工剤を塗布する第一塗工装置3Aと、第一塗工装置3Aで塗布した塗工剤を乾燥させてセパレータ基材2上に第一機能層を形成する第一乾燥炉4Aと、第一機能層を形成したセパレータ基材2に塗工剤を塗布する第二塗工装置3Bと、第二塗工装置3Bで塗布した塗工剤を乾燥させてセパレータ基材2上に第二機能層を形成する第二乾燥炉4Bとを備えている。なお、第一塗工装置3Aおよび第二塗工装置3Bは、グラビアローラ31と、グラビアローラ31に塗工剤を供給する塗工チャンバー32とを備えている。また、第二乾燥炉4Bは第一乾燥炉4Aよりも長さが短く、小型である。
また、製造装置100は、セパレータ基材2に付与した張力を調整するためのサクションローラ6A〜6C、セパレータ基材2の張力検出用のテンションピックアップローラ7A〜7D、セパレータ基材2の搬送ライン(パスライン)を移動させてセパレータ基材2とグラビアローラ31との接触/離隔を可能にするパスローラ8A〜8D、および、搬送ローラ9A〜9Gを備えている。更に、製造装置100は、搬送されるセパレータ基材2の蛇行を防止してセパレータ基材2の搬送位置を適当な位置に修正する搬送位置修正機構(図示せず)を備えている。
なお、この製造装置100では、セパレータ基材2への張力の付与は、テンションピックアップローラ7A〜7Dで検出した張力を制御システム(図示せず)に伝え、所望の張力となるようにサクションローラ6A〜6Cおよび巻き取り軸51のトルクを調整することによって行なうことができる。そして、製造装置100では、セパレータ基材2に対し、基材ロール1とサクションローラ6Aとの間では第一の大きさの張力が付与され、サクションローラ6Aとサクションローラ6Bとの間では第二の大きさの張力が付与され、サクションローラ6Bとサクションローラ6Cとの間では第三の大きさの張力が付与され、サクションローラ6Cとセパレータロール5との間では第四の大きさの張力が付与される。即ち、製造装置100では、セパレータ基材2に対し、巻き出し工程では第一の大きさの張力が付与され、第一機能層形成工程の開始前から終了までの間は第二の大きさの張力が付与され、第一機能層形成工程の終了後から第二機能層形成工程の終了までの間は第三の大きさの張力が付与され、巻き取り工程では第四の大きさの張力が付与される。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、セパレータ基材の搬送方向の引張弾性率、セパレータ基材の張力、セパレータ基材の幅の収縮率、および、セパレータ基材の搬送性は、それぞれ以下の方法を使用して評価した。
<セパレータ基材の搬送方向の引張弾性率>
セパレータ基材からサンプルを切り出し、引張試験機(オートグラフ、AGS−5KNG、株式会社島津製作所製)を用い、温度23℃において、チャック間距離50mm、サンプル幅5mm、サンプル厚さ12μm、速度50mm/分の条件下で応力−歪み曲線を作成した、そして、得られた応力−歪み曲線の応力10〜25MPaでの傾きからセパレータ基材の引張弾性率を算出した。
<セパレータ基材の張力>
図1に示す製造装置100のテンションピックアップローラ7A〜7Dの位置において、張力検出器(LX−TD形微変位張力検出器、LX−015TD−909、三菱電機株式会社製)を用いてセパレータ基材の張力を測定した。
なお、テンションピックアップローラ7Aおよび7Bの位置で検出される張力は第一機能層形成工程前のセパレータ基材の張力であり、テンションピックアップローラ7Cの位置で検出される張力は第一機能層形成工程後であって第二機能層形成工程前のセパレータ基材の張力であり、テンションピックアップローラ7Dの位置で検出される張力は第二機能層形成工程後のセパレータ基材の張力である。
<セパレータ基材の幅の収縮率>
作製したセパレータから搬送方向の長さが50mmの試験片を切り出した。そして、試験片の幅を複数の位置で測定し、各位置について機能層形成前のセパレータ基材の幅との差(収縮長)を算出した。そして、算出した収縮長の最大値について、以下の基準で評価を行った。収縮長が小さいほど、セパレータ基材の幅の収縮率が小さく、セパレータ基材の搬送安定性が確保でき、巻き取り性にも優れ、且つ、シワも発生し難いので好ましい。
A:収縮長が5mm未満
B:収縮長が5mm以上10mm未満
C:収縮長が10mm以上15mm未満
D:収縮長が15mm以上
<セパレータ基材の搬送性>
非接触エッジ検出センサー(ラインセンサLS−9030、キーエンス株式会社製)を使用し、搬送中のセパレータ基材の幅方向の振動幅を測定した。具体的には、図1に示す製造装置100の第一乾燥炉4Aの出口から搬送方向下流側に50mmの位置において、セパレータ基材の幅方向端部の振動幅を測定し、以下の基準で評価を行った。振動幅が小さいほど、セパレータ基材の搬送安定性が高く、巻き取り性にも優れるので好ましい。
A:振動幅が1mm未満
B:振動幅が1mm以上5mm未満
C:振動幅が5mm以上10mm未満
D:振動幅が10mm以上
(実施例1)
<塗工剤の調製>
セパレータに耐熱性や強度を付与する物質としてのアルミナ粒子(体積平均粒子径D50:0.45μm)100部と、結着材としてのマレイミド−無水マレイン酸共重合体の水溶液を固形分換算で1.5部と、イオン交換水とを固形分濃度が40質量%になるように混合し、水分散液Aを得た。更に、水分散液Aを固形分換算で4部と、ポリエチレングリコール型界面活性剤0.2部とを混合し、塗工剤Aを製造した。なお、粘度・粘弾性測定装置(レオストレスHAAKE RS6000、英弘精機株式会社製)を使用して測定した塗工剤Aの粘度(温度:23℃、せん断速度:1000s−1)は、23cPであった。
<セパレータ基材の準備>
ポリエチレン製のセパレータ基材(厚さ:12μm、長手方向の引張弾性率:1130MPa)を準備した。
<セパレータの製造>
図1に示す製造装置100において、塗工剤Aを使用し、セパレータ基材の両面に厚さ3μmの機能層をそれぞれ形成した。具体的には、表1に示す張力をセパレータ基材に付与しつつ、セパレータ基材の搬送速度100m/分、第一乾燥炉4Aの温度50℃、第二乾燥炉4Bの温度70℃の条件下で、セパレータ基材の両面に機能層を形成してセパレータを得た。そして、セパレータ基材の幅の収縮率およびセパレータ基材の搬送性を評価した。結果を表1に示す。
なお、グラビアローラ31には、左右対称の格子連続模様の凹部をセルパターンとして有するものを用いた。
(実施例2〜6)
セパレータ基材に付与する張力を表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様にしてセパレータを製造した。そして、セパレータ基材の幅の収縮率およびセパレータ基材の搬送性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例7〜10)
表1に示す大きさの引張弾性率を有するセパレータ基材(厚さ:12μm)を使用した以外は実施例1と同様にしてセパレータを製造した。そして、セパレータ基材の幅の収縮率およびセパレータ基材の搬送性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例11)
第二乾燥炉4Bの温度を80℃に変更した以外は実施例1と同様にしてセパレータを製造した。そして、セパレータ基材の幅の収縮率およびセパレータ基材の搬送性を評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
セパレータ基材に付与する張力を表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様にしてセパレータを製造した。そして、セパレータ基材の幅の収縮率およびセパレータ基材の搬送性を評価した。結果を表1に示す。
(比較例2)
セパレータ基材に付与する張力を表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様にしてセパレータの製造を試みた。しかし、セパレータ基材の幅の収縮率が大きく、搬送位置修正機構を利用してもセパレータ基材の搬送位置を修正することが困難になったため、製造途中でセパレータ基材の搬送を中止した。そして、製造したセパレータについて、セパレータ基材の幅の収縮率を評価した。結果を表1に示す。
Figure 0006361211
表1より、実施例1〜11では、セパレータ基材の幅の収縮の発生を抑制しつつセパレータ基材を安定的に搬送することができることが分かる。また、表1より、セパレータ基材に付与する張力が低い比較例1では、搬送性が低下してしまい、セパレータ基材を安定的に搬送することができないことが分かる。更に、表1より、セパレータ基材に付与する張力が高い比較例2では、セパレータ基材の幅の収縮率が大きく、セパレータ基材の搬送自体が困難になることが分かる。
また、表1の実施例1〜6より、セパレータ基材に付与する張力の大きさを調整することで、セパレータ基材の幅の収縮の発生の抑制と、セパレータ基材の安定的な搬送とを更に高いレベルで両立し得ることが分かる。更に、表1の実施例1および実施例7〜10より、搬送方向の引張弾性率が低いセパレータ基材を使用すると、セパレータ基材の幅が収縮し易いことが分かる。また、表1の実施例1および実施例11より、乾燥炉の温度を調整することで、セパレータ基材の幅の収縮の発生の抑制と、セパレータ基材の安定的な搬送とを更に高いレベルで両立し得ることが分かる。
本発明によれば、搬送方向の引張弾性率が4500MPa以下である強度が低いセパレータ基材を使用した場合であっても、セパレータ基材の破断または幅の収縮の発生を抑制しつつセパレータ基材を安定的に搬送して、セパレータ基材の両面に機能層を有するセパレータを製造することができる。
1 基材ロール
2 セパレータ基材
3A 第一塗工装置
3B 第二塗工装置
4A 第一乾燥炉
4B 第二乾燥炉
5 セパレータロール
6A〜6C サクションローラ
7A〜7D テンションピックアップローラ
8A〜8D パスローラ
9A〜9G 搬送ローラ
11 巻き出し軸
31 グラビアローラ
32 塗工チャンバー
51 巻き取り軸
100 製造装置

Claims (3)

  1. セパレータ基材を搬送しつつ当該セパレータ基材の両面に機能層を形成する機能層形成工程を含む二次電池用セパレータの製造方法であって、
    前記セパレータ基材は、搬送方向の引張弾性率が400MPa以上4500MPa以下であり、
    前記機能層形成工程では、前記セパレータ基材を搬送する際の当該セパレータ基材の張力を10N/m以上200N/m以下に制御し、
    前記機能層形成工程が、前記セパレータ基材の一方の表面に塗工剤を塗布し、塗布した塗工剤を乾燥させて第一機能層を形成する第一機能層形成工程と、前記第一機能層の形成後に前記セパレータ基材の他方の表面に塗工剤を塗布し、塗布した塗工剤を乾燥させて第二機能層を形成する第二機能層形成工程とを含み、
    前記第一機能層形成工程後であって前記第二機能層形成工程前の前記セパレータ基材の張力の大きさを前記第一機能層形成工程前の前記セパレータ基材の張力の大きさの1.1倍以上4倍以下とし、
    前記第二機能層形成工程後の前記セパレータ基材の張力の大きさを、前記第一機能層形成工程後であって前記第二機能層形成工程前の前記セパレータ基材の張力の大きさの1.1倍以上4倍以下とすることを特徴とする、二次電池用セパレータの製造方法。
  2. 前記第二機能層形成工程において前記塗工剤を乾燥させる際の温度を、前記第一機能層形成工程において前記塗工剤を乾燥させる際の温度よりも10℃以上90℃以下高くすることを特徴とする、請求項に記載の二次電池用セパレータの製造方法。
  3. 前記第一機能層形成工程後であって前記第二機能層形成工程前の前記セパレータ基材の張力の大きさを、前記第一機能層形成工程前の前記セパレータ基材の張力の大きさの1.2倍以上2.5倍以下とすることを特徴とする、請求項1または2に記載の二次電池用セパレータの製造方法。
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