JP6359888B2 - ダウンホールツール用の拡径可能な環状の分解性シール部材、及び坑井掘削用プラグ、並びに坑井掘削方法 - Google Patents

ダウンホールツール用の拡径可能な環状の分解性シール部材、及び坑井掘削用プラグ、並びに坑井掘削方法 Download PDF

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Description

本発明は、石油または天然ガス等の炭化水素資源を産出するために行う坑井掘削において使用する坑井掘削用プラグ等のダウンホールツール用分解性シール部材、及び坑井掘削用プラグ、並びに坑井掘削方法に関する。
石油または天然ガス等の炭化水素資源は、多孔質で浸透性の地下層を有する井戸(油井またはガス井。総称して「坑井」ということがある。)を通じて採掘され生産されてきた。エネルギー消費の増大に伴い、坑井の高深度化が進み、世界では深度9000mを超える掘削の記録もあり、日本においても6000mを超える高深度坑井がある。採掘が続けられる坑井において、時間経過とともに浸透性が低下してきた地下層や、さらには元々浸透性が十分ではない地下層から、継続して炭化水素資源を効率よく採掘するために、生産層を刺激(stimulate)することが行われ、刺激方法としては、酸処理や破砕方法が知られている(特許文献1)。酸処理は、塩酸やフッ化水素等の強酸の混合物を生産層に注入し、岩盤の反応成分(炭酸塩、粘土鉱物、ケイ酸塩等)を溶解させることによって、生産層の浸透性を増加させる方法であるが、強酸の使用に伴う諸問題が指摘され、また種々の対策を含めてコストの増大が指摘されている。そこで、流体圧を利用して生産層に亀裂(フラクチャ、fracture)を形成させる方法(「フラクチャリング法」または「水圧破砕法」ともいう。)が注目されている。
水圧破砕法は、水圧等の流体圧(以下、単に「水圧」ということがある。)により生産層に亀裂を発生させる方法であり、一般に、垂直な孔を掘削し、続けて、垂直な孔を曲げて、地下数千mの地層内に水平な孔を掘削した後、それらの坑井孔(坑井を形成するために設ける孔を意味し、「ダウンホール」ということもある。)内にフラクチャリング流体を高圧で送り込み、高深度地下の生産層(石油または天然ガス等の炭化水素資源を産出する層)に水圧によって亀裂(フラクチャ)を生じさせ、該フラクチャを通して炭化水素資源を採取するための生産層の刺激方法である。水圧破砕法は、いわゆるシェールオイル(頁岩中で熟成した油)、シェールガス等の非在来型資源の開発においても、有効性が注目されている。
水圧等の流体圧によって形成された亀裂(フラクチャ)は、水圧がなくなれば直ちに地層圧により閉塞されてしまう。亀裂(フラクチャ)の閉塞を防ぐために、フラクチャリング流体(すなわち、フラクチャリングに使用する坑井処理流体)にプロパント(proppant)を含有させて、坑井孔内に送り込み、亀裂(フラクチャ)にプロパントを配置することが行われている。フラクチャリング流体に含有させるプロパントとしては、無機または有機材料が使用されるが、できるだけ長期間、高温高圧の高深度地下の環境内で、フラクチャの閉塞を防ぐことが可能であることから、従来、シリカ、アルミナその他の無機物粒子が使用され、砂粒、例えば20/40メッシュの砂などが汎用されている。
フラクチャリング流体等の坑井処理流体としては、水ベース、油ベース、エマルジョンの各種のタイプが用いられる。坑井処理流体には、プロパントを、坑井孔内のフラクチャを生じさせる場所まで運搬し得る機能が求められるので、通常は所定の粘度を有し、プロパントの分散性が良好であるとともに、後処理の容易性、環境負荷の小ささなどが求められる。また、フラクチャリング流体には、プロパントの間に、シェールオイル、シェールガス等が通過できる流路を形成することを目的として、チャネラント(channelant)を含有させることもある。したがって、坑井処理流体には、プロパントのほかに、チャネラント、ゲル化剤、スケール防止剤、岩石等を溶解するための酸、摩擦低減剤など、種々の添加剤が使用される。
フラクチャリング流体を使用して、高深度地下の生産層(シェールオイル等の石油またはシェールガス等の天然ガスなどの炭化水素資源を産出する層)に水圧によって亀裂(フラクチャ)を生じさせるためには、通常、以下の方法が採用されている。すなわち、地下数千mの地層内に掘削した坑井孔(ダウンホール)に対して、坑井孔の先端部から順次、目止めをしながら、所定区画を部分的に閉塞し、その閉塞した区画内にフラクチャリング流体を高圧で送入して、生産層に亀裂を生じさせるフラクチャリングを行う。次いで、次の所定区画(通常は、先行する区画より手前、すなわち地上側の区画)を閉塞してフラクチャリングを行う。以下、この工程を必要な目止めとフラクチャリングが完了するまで繰り返し実施する。
新たな坑井の掘削だけでなく、既に形成された坑井孔の所望の区画について、再度フラクチャリングによる生産層の刺激を行うこともある。その際も同様に、坑井孔の閉塞及びフラクチャリングなどを行う操作を繰り返すことがある。また、坑井の仕上げを行うために、坑井孔を閉塞して下部からの流体を遮断し、その上部の仕上げを行った後、閉塞の解除を行うこともある。
坑井孔の閉塞及びフラクチャリングなどを行う方法としては、種々の方法が知られており、例えば、特許文献2及び特許文献3には、坑井孔の閉塞や固定を行うことができるプラグ(「フラックプラグ」、「ブリッジプラグ」または「パッカー」等と称することもある。)が開示されている。
特許文献2には、坑井掘削用のダウンホールプラグ(以下、「坑井掘削用プラグ」、または単に「プラグ」ということがある。)が開示されており、具体的には、軸方向に中空部を有するマンドレル(本体)、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に、軸方向に沿って、リングまたは環状部材(annular member)、第1の円錐状部材(conical member)及びスリップ(slip)、エラストマーまたはゴム等から形成される可鍛性要素(malleable element)、第2の円錐状部材及びスリップ、並びに、回り止め機構(anti-rotation feature)を備えるプラグが開示されている。この坑井掘削用プラグによる坑井孔の閉塞は、以下のとおりである。すなわち、マンドレルの軸方向に移動することによりリングまたは環状部材と回り止め機構との間隙が縮小することに伴って、スリップが、円錐状部材の傾斜面に当接して円錐状部材に沿って進むことで、放射状に拡径するように移動し、次いで、スリップの先端が、坑井孔の内壁に当接して坑井孔に固定されること、及び、可鍛性要素が、マンドレルの軸方向の距離が縮小することに伴い拡径変形して、坑井孔の内壁に当接して坑井孔を閉塞することによる。プラグを形成する材料として、金属材料(アルミニウム、スチール、ステンレス鋼等)、繊維、木、複合材及びプラスチックなどが広く例示され、好ましくは、炭素繊維等の強化材を含有する複合材、特に、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の重合体複合材であること、マンドレルがアルミニウムまたは複合材料で形成されることが記載されている。
坑井掘削用プラグは、坑井が完成するまで順次坑井孔内に配置されるが、シェールオイル等の石油またはシェールガス等の天然ガス(以下、総称して「石油や天然ガス」ということがある。)などの生産が開始される段階では、坑井掘削用プラグの部材であるスリップ及び拡径可能な環状のシール部材による坑井孔の閉塞を解除し、該プラグを除去する必要がある。プラグは、通常、使用後に閉塞を解除して回収できるように設計されていないため、破砕、穿孔その他の方法で、破壊されたり、小片化されたりすることによって除去されるが、破砕や穿孔等には多くの経費と時間を費やす必要があった。また、使用後に回収できるように特殊に設計されたプラグ(retrievable plug)もあるが、プラグは高深度地下に置かれたものであるため、そのすべてを回収するには多くの経費と時間を要していた。
特許文献3には、坑井内の環境に曝されるときに分解する生分解性材料を含有する使い捨て型のダウンホールツール(ダウンホールプラグ等を意味する。)またはその部材が開示されており、生分解性材料として、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルなど分解性重合体が開示されている。さらに、特許文献3には、軸方向に流通孔(flow bore)を有する円筒状本体部品(tubular body element)と、該円筒状本体部品の軸方向と直交する外周面上に、軸方向に沿って、上部シーリング要素、中心シーリング要素及び下部シーリング要素から成るパッカー要素集合体(packer element assembly)と、スリップ及び機械的スリップ本体(mechanical slip body)との組み合わせが記載されている。また、円筒状本体部品の流通孔には、ボールをセットすることにより、流体の一方向のみの流れを許容するようにすることが開示されている。しかしながら、特許文献3には、ダウンホールツールまたはその部材のいずれについて、生分解性材料を含有する材料を使用するのかについての開示はみられない。
エネルギー資源の確保及び環境保護等の要求の高まりのもと、特に、非在来型資源の採掘が広がる中で、高深度化など採掘条件が過酷かつ多様となっていることから、坑井掘削用プラグ等のダウンホールツールとしては、フラクチャリング等の高圧流体加圧に抗する確実な坑井孔のシールを行うことができ、かつ、その除去や流路の確保を容易にすることにより坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができるダウンホールツール用シール部材、坑井掘削用プラグ、及び、坑井掘削方法が求められていた。
特表2003−533619号公報 米国特許出願公開第2011/0277989号明細書 米国特許出願公開第2005/0205266号明細書
本発明の課題の第1の側面は、高深度化など採掘条件が過酷かつ多様となっているもとで、フラクチャリング等の高圧流体加圧に抗する確実な坑井孔のシールなど、多くの用途で使用されるダウンホールにおけるシールを行うことができ、かつ、その除去や流路の確保を容易にすることにより坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができるダウンホールツール用分解性シール部材を提供することにある。さらに、本発明の課題の他の側面は、坑井掘削用プラグを提供することにある。また、本発明の課題の更に他の側面は、該シール部材を使用する坑井掘削方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、マンドレルと、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のシール部材とを備える坑井掘削用プラグにおいて、拡径可能な環状のシール部材を、特有の構造及び性質を有するものとすることにより課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、(1)拡径可能な環状のシール部材であるダウンホールツール用分解性シール部材であって、
拡径可能な環状のシール部材は、軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材を備え、かつ、
それぞれの環状部材は、硬度がA60〜D80の範囲である分解性を有する高分子材料から形成される
ことを特徴とする前記のダウンホールツール用分解性シール部材が提供される。
さらに、本発明の第1の側面によれば、発明の具体的な態様として、以下(2)〜(24)のダウンホールツール用分解性シール部材が提供される。
(2)2つ以上の環状部材を形成する高分子材料のそれぞれにおける、温度150℃の水に浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が5%以上となる時間の差が、2日以内である前記(1)のダウンホールツール用分解性シール部材。
(3)それぞれの環状部材を形成する高分子材料は、温度150℃の水に72時間浸漬後の質量の、浸漬前の質量に対する減少率が5〜100%の範囲にある前記(1)または(2)のダウンホールツール用分解性シール部材。
(4)それぞれの環状部材を形成する高分子材料は、ドライ環境下で安定かつ温度23℃の水に6時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の1時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が5%未満である前記(1)〜(3)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材。
(5)それぞれの環状部材は、温度66℃における引張破断ひずみが50%以上、70%ひずみ圧縮応力が10MPa以上かつ圧縮破断ひずみが50%以上である前記(1)〜(4)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材。
(6)それぞれの環状部材は、温度66℃において、圧縮ひずみ5%における圧縮応力に対する、圧縮ひずみ70%における圧縮応力の比率が5倍以上である前記(1)〜(5)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材。
(7)軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材が軸方向に沿って隣接する前記(1)〜(6)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材。
(8)軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材が軸方向に沿って離隔する前記(1)〜(6)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材。
(9)軸方向に沿って区分される3つ以上の環状部材を備える前記(1)〜(8)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材。
(10)拡径可能な環状のシール部材は、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれ、かつ、少なくとも1つの環状部材が、軸方向への圧縮により拡径して、ダウンホールの内壁と拡径可能な環状のシール部材との間の隙間を閉塞し、少なくとも1つの他の環状部材が、マンドレルと拡径可能な環状のシール部材との間の隙間を閉塞することによって、流体を遮断する機能を有する前記(1)〜(9)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材。
(11)軸方向への圧縮により拡径して、ダウンホールの内壁と拡径可能な環状のシール部材との間の隙間を閉塞する少なくとも1つの環状部材のマンドレルの軸方向の長さが、拡径可能な環状のシール部材のマンドレルの軸方向の長さに対して20〜80%である前記(10)のダウンホールツール用分解性シール部材。
(12)分解性を有する高分子材料は、ウレタンゴム、アクリルゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、脂肪族ポリエステルゴム、及びクロロプレンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴム材料を含有する前記(1)〜(11)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材。
(13)分解性を有する高分子材料は、加水分解性の官能基を有する高分子材料を含有する前記(1)〜(12)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材。
(14)分解性を有する高分子材料は、ウレタン結合、エステル結合またはアミド結合の少なくとも1つの結合を有する高分子材料を含有する前記(1)〜(13)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材。
(15)分解性を有する高分子材料は、ウレタンゴムを含有する前記(1)〜(14)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材。
(16)分解性を有する高分子材料は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含有する前記(1)〜(15)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材。
(17)分解性を有する高分子材料は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含有する前記(1)〜(16)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材。
(18)分解性を有する高分子材料は、該分解性を有する高分子材料100質量部に対して分解促進剤0.1〜20質量部を含有する前記(1)〜(17)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材。
(19)分解促進剤が酸性物質である前記(18)のダウンホールツール用分解性シール部材。
(20)酸性物質が酸生成物質である前記(19)のダウンホールツール用分解性シール部材。
(21)分解促進剤が可塑剤である前記(18)のダウンホールツール用分解性シール部材。
(22)分解促進剤が、有機酸、無機酸、有機酸エステル、無機酸エステル及び酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する前記(18)のダウンホールツール用分解性シール部材。
(23)分解促進剤が、ラウリン酸、グリコール酸、乳酸、リン酸、グリコリド、ラクチド、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、p−トルエンスルホン酸メチル及び3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する前記(18)のダウンホールツール用分解性シール部材。
(24)分解性を有する高分子材料は、強化材を含有する前記(1)〜(23)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材。
また、本発明の他の側面によれば、(25)マンドレルと、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれる少なくとも1つの前記(1)〜(24)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグが提供される。さらに、発明の具体的態様として、以下(26)〜(37)の前記のダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグが提供される。
(26)拡径可能な環状のシール部材のマンドレルの軸方向の長さが、マンドレルの長さに対して10〜90%である前記(25)の坑井掘削用プラグ。
(27)マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれる拡径可能な環状補助部材であって、ダウンホールの内壁と拡径可能な環状のシール部材との間の隙間を閉塞する少なくとも1つの環状部材のシール作用の際に受ける変形を、拡径して緩和することができる前記(25)または(26)の坑井掘削用プラグ。
(28)前記の少なくとも1つの環状部材の変形を、拡径して緩和することができる拡径可能な環状補助部材が、ウエッジである前記(27)の坑井掘削用プラグ。
(29)マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれる少なくとも1つのスリップを備える前記(25)〜(28)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(30)マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれる1対のリングを備え、少なくとも1つの前記(1)〜(24)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材が該1対のリングの間に備えられる前記(25)〜(29)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(31)マンドレルが、軸方向に沿う中空部を有する前記(25)〜(30)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(32)マンドレルが、分解性材料から形成される前記(25)〜(31)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(33)分解性材料は、脂肪族ポリエステルを含有する前記(32)の坑井掘削用プラグ。
(34)脂肪族ポリエステルは、ポリグリコール酸である前記(33)の坑井掘削用プラグ。
(35)ポリグリコール酸が、重量平均分子量が180000〜300000、かつ、温度270℃、せん断速度122sec-1で測定した溶融粘度が700〜2000Pa・sである前記(34)の坑井掘削用プラグ。
(36)分解性材料は、強化材を含有する前記(25)〜(35)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(37)マンドレルが、分解性材料を含有する複合材からなる前記(25)〜(36)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
さらにまた、本発明の更に他の側面によれば、発明の具体的な態様として、以下(38)〜(42)の坑井掘削方法が提供される。
(38)前記(1)〜(24)のいずれかのダウンホールツール用分解性シール部材を使用して、好ましくはマンドレルと該ダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグを使用して、坑井孔の目止め処理を行った後に、該ダウンホールツール用分解性シール部材が、好ましくはマンドレルと該ダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグの一部または全部が、分解されることを特徴とする坑井掘削方法。
(39)前記(5)のダウンホールツール用分解性シール部材を備えるダウンホールツールを使用して、坑井孔をシールした後に、坑井孔内で該ダウンホールツール用分解性シール部材が分解される坑井掘削方法。
(40)前記(5)のダウンホールツール用分解性シール部材を備え、さらに分解性材料を含有する他のダウンホールツール用部材を備えるダウンホールツールを使用して、坑井孔をシールした後に、坑井孔内で該ダウンホールツール用分解性シール部材が分解される坑井掘削方法。
(41)他のダウンホールツール用部材に含有される分解性材料がポリグリコール酸である前記(40)の坑井掘削方法。
(42)前記(5)のダウンホールツール用分解性シール部材を備え、該ダウンホールツール用分解性シール部材が、他のダウンホールツール用部材に接するダウンホールツールを使用して、坑井処理を行った後に、坑井孔内で該ダウンホールツール用分解性シール部材が分解される坑井掘削方法。
本発明の第1の側面によれば、拡径可能な環状のシール部材であるダウンホールツール用分解性シール部材であって、拡径可能な環状のシール部材は、軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材を備え、かつ、それぞれの環状部材は、硬度がA60〜D80の範囲である分解性を有する高分子材料から形成されることを特徴とする前記のダウンホールツール用分解性シール部材であることによって、高深度化など採掘条件が過酷かつ多様となっているもとで、フラクチャリング等の高圧流体加圧に抗する確実な坑井孔のシールなど、多くの用途で使用されるダウンホールツールにおけるシールを行うことができ、かつ、その除去や流路の確保を容易にすることにより坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができるという効果が奏される。
また、本発明の他の側面によれば、マンドレルと、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれる少なくとも1つの前記のダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグであることにより、並びに、本発明の更に他の側面によれば、前記のダウンホールツール用分解性シール部材を使用して、好ましくはマンドレルと該ダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグを使用して、坑井孔の目止め処理を行った後に、該ダウンホールツール用分解性シール部材が、好ましくはマンドレルと該ダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグの一部または全部が、分解されることを特徴とする坑井掘削方法であることにより、確実に坑井孔の閉塞及びフラクチャリングを行うことができ、かつ、その除去や流路の確保を容易にすることにより坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができる坑井掘削方法が提供されるという効果が奏される。
(a)は、本発明の拡径可能な環状のシール部材であるダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグの一具体例を示す模式図である。(b)は、(a)の坑井掘削用プラグの拡径可能な環状のシール部材が拡径した状態を示す模式的断面図である。
本発明の拡径可能な環状のシール部材であるダウンホールツール用分解性シール部材は、フラクチャリングを始めとする高圧力の流体を流入させて行う処理や操作を行う際に使用されるダウンホールツールなど、シールを必要とする他の多くの用途で使用されるダウンホールツールに、必要に応じて他の部材と組み合わせて、備えることができる環状のシール部材である。本発明の拡径可能な環状のシール部材(ダウンホールツール用分解性シール部材)を備えることができるダウンホールツールは、特に限定されないが、特に、マンドレルと、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれる前記のダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグに、好ましく適用することができる。以下、本発明のダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグを具体例に挙げ、図を参照しながら説明する。
I.坑井掘削用プラグ
本発明のダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグ(以下、「本発明の坑井掘削用プラグ」ということがある。)は、マンドレル1と、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれる少なくとも1つの拡径可能な環状のシール部材であるダウンホールツール用分解性シール部材2(以下、「拡径可能な環状のシール部材2」または「ダウンホールツール用分解性シール部材2」ということがある。)とを備える坑井掘削用プラグであって、拡径可能な環状のシール部材2は、軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材を備え、かつ、それぞれの環状部材は、硬度がA60〜D80の範囲である分解性を有する高分子材料から形成されることを特徴とする。以下に説明する坑井掘削用プラグの具体例においては、拡径可能な環状のシール部材に備えられる軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材が、中央環状部材と、マンドレルの軸方向に沿うその両端に隣接する両端環状部材との3つの環状部材からなるものとしている。本発明の拡径可能な環状のシール部材であるダウンホールツール用分解性シール部材、及び、本発明の坑井掘削用プラグは、この具体例に限定されるものではない。
1.マンドレル
本発明の坑井掘削用プラグは、マンドレル1を備える。本発明の坑井掘削用プラグが備えるマンドレル1とは、通常「芯金」と称されるものであって、断面が略円形状で、断面の直径に対して長さが十分大きく、本発明の坑井掘削用プラグの強度を基本的に担保する部材である。本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1は、断面の直径が、坑井孔の大きさに応じて適宜選択され(坑井孔の内径より小さいことにより、坑井孔内を移動可能であり、一方、後述するように、マンドレル1の外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のシール部材2の拡径、及び、所望により備えられるスリップ3の拡径等により坑井孔の閉塞と固定が可能となる程度の径を有する。)、マンドレル1の長さは、断面の直径に対して、例えば5〜20倍程度であるが、これに限定されるものではない。通常、マンドレル1の断面の直径は、5〜30cm程度の範囲である。
〔中空部〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1は、中実のものでもよいが、フラクチャリング初期の流路確保、マンドレル1の重量の軽減、マンドレル1の分解速度のコントロールなどの観点から、マンドレル1が、軸方向に沿う中空部を少なくとも一部に有する中空マンドレルであることが好ましい。中空部は、マンドレル1を軸方向に沿って貫通してもよいし、マンドレル1を軸方向に沿って貫通しないものでもよい。流体を用いて坑井掘削用プラグを坑井内に押し込み移送する場合には、マンドレル1が、軸方向に沿う中空部を有する必要がある。マンドレル1が軸方向に沿う中空部を有するものである場合、マンドレル1の断面形状は、マンドレル1の直径(外径)及び中空部の外径(マンドレル1の内径に相当する。)を画成する2つの同心円で形成される円環状である。2つの同心円の径の比率、すなわち、マンドレル1の直径に対する中空部の外径の比率が0.7以下であることが好ましい。この比率の大小は、マンドレル1の直径に対する中空マンドレルの肉厚の比率の大小と相反する関係にあるので、その比率の上限値を定めることは、中空マンドレルの肉厚の好ましい下限値を定めることに相当するということができる。中空マンドレルの肉厚が薄すぎると、坑井掘削用プラグを坑井孔内に配置したり、坑井孔の閉塞やフラクチャリングを行うときに、中空マンドレルの強度(特に引張強度)が不足して、極端な場合には坑井掘削用プラグが損傷することがある。したがって、マンドレル1の直径に対する中空部の外径の比率は、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下である。
マンドレル1の直径及び/または中空部の外径は、マンドレル1の軸方向に沿って均一でもよいが、軸方向に沿って変化するものでもよい。すなわち、マンドレル1は、その外径が軸方向に沿って変化することによって、マンドレル1の外周面に凸部、段部や凹部(溝部)などを有するものであってもよい。また、中空部の外径が軸方向に沿って変化することによって、マンドレル1の内周面に凸部、段部や凹部(溝部)などを有するものとしてもよい。マンドレル1の外周面及び/または内周面に有する凸部、段部や凹部(溝部)は、マンドレル1の外周面及び/または内周面に、別部材を取り付けたり固定したりするための部位として利用することができ、特に、後述するように、拡径可能な環状のシール部材2を固定するための固定部とすることができ、また、マンドレル1が中空部を有する場合、流体の流れを制御するために使用するボールを保持する座面とすることができる。
〔分解性材料〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1は、分解性材料から形成されるものであることが好ましい。分解性材料とは、例えば、フラクチャリング流体が使用される土壌中の微生物によって分解される生分解性、または、フラクチャリング流体中の溶媒、特に、水によって、更に所望により酸またはアルカリによって分解する加水分解性を有する分解性材料などがあるが、更に他の何らかの方法によって化学的に分解することができる分解性材料であってもよい。好ましくは、所定温度以上の水によって分解する加水分解性材料である。なお、従来坑井掘削用プラグに備えられるマンドレルとして汎用されているアルミニウム等の金属材料のように、大きな機械的な力を加えることによって、破壊、崩壊等物理的に形状を失う材料は、本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1を形成する分解性材料には該当しない。ただし、後述する分解性の樹脂にみられるように、重合度の低下等により本来の樹脂が有した強度が低下して脆くなる結果、極めて小さい機械的力を加えることによって簡単に崩壊し、当初の形状を失う(以下、「崩壊性」ということがある。)材料も、前記の分解性材料に該当する。
本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1を形成する分解性材料としては、高深度地下の高温高圧の環境において所期の強度を有すると同時に、分解性に優れることが求められ、その材料は特に限定されないが、分解性の樹脂が好ましい。分解性の樹脂とは、先に説明した生分解性、加水分解性、更にその他の方法によって化学的に分解することができる樹脂を意味する。分解性の樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトン等の脂肪族ポリエステルやポリビニルアルコール(ケン化度80〜95モル%程度の部分ケン化ポリビニルアルコールなど)などが挙げられるが、より好ましくは脂肪族ポリエステルである。すなわち、分解性材料は、脂肪族ポリエステルであることが好ましい。分解性の樹脂は、単独でまたは2種以上をブレンド等により組み合わせて使用することもできる。
〔脂肪族ポリエステル〕
脂肪族ポリエステルは、例えば、オキシカルボン酸及び/またはラクトンの単独重合または共重合、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのエステル化反応、脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族ジオールと、オキシカルボン酸及び/またはラクトンとの共重合により得られる脂肪族ポリエステルであり、温度20〜100℃程度の水に速やかに溶解するものが好ましい。
オキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等の炭素数2〜8の脂肪族ヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。ラクトンとしては、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の炭素数3〜10のラクトンなどが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の炭素数2〜8の脂肪族飽和ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等の炭素数4〜8の脂肪族不飽和ジカルボン酸などが挙げられる。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の炭素数2〜6のアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等の炭素数2〜4のポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
これらのポリエステルを形成する成分は、それぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。また、分解性の樹脂としての性質を失わない限り、テレフタル酸等の芳香族であるポリエステルを形成する成分を組み合わせて使用することもできる。
特に好ましい脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸(以下、「PLA」ということがある。)やポリグリコール酸(以下、「PGA」ということがある。)等のヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル;ポリ−ε−カプロラクトン等のラクトン系脂肪族ポリエステル;ポリエチレンサクシネートやポリブチレンサクシネート等のジオール・ジカルボン酸系脂肪族ポリエステル;これらの共重合体、例えば、グリコール酸・乳酸共重合体(以下、「PGLA」ということがある。);並びに、これらの混合物;などが挙げられる。また、ポリエチレンアジペート/テレフタレート等の芳香族成分を組み合わせて使用する脂肪族ポリエステルを挙げることもできる。
坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1に求められる強度や分解性の観点から、脂肪族ポリエステルが、PGA、PLA及びPGLAからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが最も好ましく、PGAが更に好ましい。なお、PGAとしては、グリコール酸の単独重合体のほかに、グリコール酸繰り返し単位を50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは99質量%以上であり、とりわけ好ましくは99.5質量%以上有する共重合体を包含する。また、PLAとしては、L−乳酸またはD−乳酸の単独重合体のほかに、L−乳酸またはD−乳酸の繰り返し単位を50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上有する共重合体や、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを混合することにより得られるステレオコンプレックス型ポリ乳酸を包含する。PGLAとしては、グリコール酸繰り返し単位と乳酸繰り返し単位の比率(質量比)が、99:1〜1:99、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは80:20〜20:80である共重合体を使用することができる。
(溶融粘度)
脂肪族ポリエステル、好ましくはPGA、PLAまたはPGLAとしては、溶融粘度が通常50〜5000Pa・s、好ましくは150〜3000Pa・s、より好ましくは300〜1500Pa・sであるものを使用することができる。溶融粘度は、温度270℃、せん断速度122sec−1において測定するものである。溶融粘度が小さすぎると、坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1に求められる強度が不足する場合がある。溶融粘度が大きすぎると、例えば、マンドレル1を製造するために高い溶融温度が必要となり、脂肪族ポリエステルが熱劣化するおそれがあったり、分解性が不十分となったりすることがある。前記の溶融粘度は、キャピラリー(直径1mmφ×長さ10mm)を装着したキャピログラフ(株式会社東洋精機製作所製の「キャピログラフ1−C」)を使用して、試料約20gを所定温度(270℃)にて5分間保持した後、せん断速度122sec-1の条件で測定を行うものである。
特に好ましい脂肪族ポリエステルであるPGAとしては、例えば固化押出成形により成形を行う際に割れが生じにくいなどの成形性等の観点から、重量平均分子量が180000〜300000、かつ、温度270℃、せん断速度122sec-1で測定した溶融粘度が700〜2000Pa・sであるPGAがより好適である。中でも好ましいPGAは、重量平均分子量が190000〜240000、かつ、温度270℃、せん断速度122sec-1で測定した溶融粘度が800〜1200Pa・sであるPGAである。溶融粘度は、先に説明した方法により測定する。前記の重量平均分子量は、10mgのPGAの試料を、トリフルオロ酢酸ナトリウムを5mMの濃度で溶解させたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に、溶解させて10mLとした後、メンブレンフィルタ―で濾過して得た試料溶液の10μlを使用して、下記条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定するものである。
<GPC測定条件>
装置:株式会社島津製作所製のShimazu LC−9A
カラム:昭和電工株式会社製のHFIP−806M 2本(直列接続)+プレカラム:HFIP−LG 1本
カラム温度:40℃
溶離液:トリフルオロ酢酸ナトリウムを5mMの濃度で溶解させたHFIP溶液
流速:1mL/分
検出器:示差屈折率計
分子量校正:分子量の異なる標準分子量のポリメタクリル酸メチル5種(POLYMER LABORATORIES Ltd.製)を用いて作成した分子量の検量線データを使用。
〔他の配合成分〕
分解性材料、好ましくは分解性の樹脂、より好ましくは脂肪族ポリエステル、更に好ましくはPGAには、本発明の目的を阻害しない範囲で、更に他の配合成分として、樹脂材料(分解性材料が分解性の樹脂である場合は、他の樹脂)や、安定剤、分解促進剤または分解抑制剤、強化材等の各種添加剤を含有させ、または配合してもよい。分解性材料が、強化材を含有することが好ましく、この場合、分解性材料は、複合材ということができる。分解性材料が、分解性の樹脂である場合は、いわゆる強化樹脂である。強化樹脂から形成されるマンドレル1は、好ましくは、強化材を含有する脂肪族ポリエステルから形成されるものである。なお、後に説明するように、拡径可能な環状のシール部材2を形成する分解性を有する高分子材料が、強化材を含有するものであってもよく、したがって、分解性を有する高分子材料及び/または分解性材料は、強化材を含有するものであることが好ましい。
〔強化材〕
強化材としては、従来、機械的強度や耐熱性の向上を目的として樹脂材料等の強化材として使用されている材料を使用することができ、繊維状強化材や、粒状または粉末状強化材を使用することができる。強化材は、分解性の樹脂等の分解性材料100質量部に対して、通常150質量部以下、好ましくは10〜100質量部の範囲で含有させることができる。
繊維状強化材としては、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維等の無機繊維状物;ステンレス、アルミニウム、チタン、鋼、真鍮等の金属繊維状物;アラミド繊維、ケナフ繊維、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機質繊維状物質;などが挙げられる。繊維状強化材としては、長さが10mm以下、より好ましくは1〜6mm、更に好ましくは1.5〜4mmである短繊維が好ましく、また、無機繊維状物が好ましく使用され、ガラス繊維が特に好ましい。
粒状または粉末状強化材としては、マイカ、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、フェライト、クレー、ガラス粉、ミルドファイバー、酸化亜鉛、炭酸ニッケル、酸化鉄、石英粉末、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等を用いることができる。強化材は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。強化材は、必要に応じて、集束剤または表面処理剤により処理されていてもよい。
〔分解性材料を含有する複合材〕
さらに、本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、分解性材料から形成されるマンドレル1としては、分解性材料に対して金属や無機物の部材を組み込んだもの、すなわち、分解性材料と金属や無機物等の材料とにより構成される分解性材料を含有する複合材からなるマンドレル1とすることもできる。分解性材料を含有する複合材からなるマンドレル1は、例えば、PGAを始めとする分解性の樹脂等の分解性材料からなる母材に、所定形状の窪みを設け、窪みの形状に合致する形状の金属(金属片等)または無機物をはめ込んで、これらを接着剤で固定したり、金属片や無機物と母材が固定状態を維持できるように針金、繊維等を巻きつけて固定して形成される複合材からなるマンドレル1が挙げられる。
〔引張強度〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1は、温度60℃における引張強度(以下、「60℃引張強度」ということがある。)が50MPa以上である分解性材料から形成されることが好ましい。本発明の坑井掘削用プラグは、マンドレル1の60℃引張強度が50MPa以上である分解性材料からなることにより、例えば、シェールガス層において一般的である温度60℃程度の環境下や、更には、地下3000mを超える高深度の地中など、温度100℃を超えるような高温度環境下において、マンドレル1にかかる引張応力に耐えられる十分な強度を有することができる。マンドレル1を形成する分解性材料の60℃引張強度は、JIS K7113に準拠して測定するものであり、試験温度を60℃とするために、試験片をオーブン内に静置して測定を行う(単位:MPa)。マンドレル1を形成する分解性材料の60℃引張強度は、好ましくは75MPa以上、より好ましくは100MPa以上である。マンドレル1を形成する分解性材料の60℃引張強度を50MPa以上であるものとするためには、分解性材料、例えば分解性の樹脂の種類や特性(溶融粘度や分子量等)、強化材等の添加剤の種類や特性、添加量などを調整したりする方法によることができる。60℃引張強度の上限は、特に制限されないが、通常1000MPaであり、多くの場合750MPaである。
〔固定部〕
マンドレル1は、外周面に、凸部、段部や凹部(溝部)などを有するものとすることができ、マンドレル1の外周面に、別部材を取り付けたり固定したりするための部位として利用することができ、特に、拡径可能な環状のシール部材2を固定するための固定部とすることができる。
後に詳述するように、本発明の坑井掘削用プラグは、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のシール部材2を備える。拡径可能な環状のシール部材2は、マンドレル1の軸方向に圧縮されて軸方向の距離が縮小(縮径)することに伴い、該軸方向と直交する方向に拡径して、ダウンホールの内壁H及びマンドレル1の外周面と当接し、プラグと坑井孔との間の空間を閉塞(シール)する。次いで、フラクチャリングが遂行されている間、プラグと坑井孔とのシールが維持されることが必要であるので、拡径可能な環状のシール部材2を、拡径した状態で、すなわちマンドレル1の軸方向に圧縮された状態で、何らかの手段により保持することが、多くの場合必要である。
マンドレル1は、外周面に、凸部、段部や凹部(溝部)などを有するものとすることができるので、本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1は、外周面に拡径可能な環状のシール部材2を圧縮状態のまま固定する固定部を有するものであることが好ましい。この固定部は、先に説明した凸部、段部や凹部(溝部)でもよいし、ねじ部その他の、マンドレル1の外周面に拡径可能な環状のシール部材2を圧縮状態のまま固定することができる手段を採用することができる。加工や成形の容易さや強度などの観点から、固定部は、溝、段部及びねじ山からなる群より選ばれる少なくとも1つであることがより好ましい。
2.拡径可能な環状のシール部材
先に説明したように、本発明の拡径可能な環状のシール部材であるダウンホールツール用分解性シール部材は、フラクチャリングを始めとする高圧力の流体を流入させて行う処理や操作を行う際に使用されるダウンホールツールなど、シールを必要とする他の多くの用途で使用されるダウンホールツールに、必要に応じて他の部材と組み合わせて、備えることができる環状のシール部材であって、本発明の拡径可能な環状のシール部材(ダウンホールツール用分解性シール部材)を備えることができるダウンホールツールは、特に限定されない。本発明のダウンホールツール用分解性シール部材を備えるダウンホールツールの好ましい適用例である坑井掘削用プラグを具体例に挙げて、拡径可能な環状のシール部材2について、以下更に説明する。本発明のダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグは、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のシール部材であるダウンホールツール用分解性シール部材2を備える。拡径可能な環状のシール部材2は、例えば、後述する1対のリング5、5’に直接または間接的に当接することにより、マンドレル1の外周面上においてマンドレル1の軸方向の力を伝達され、その結果、マンドレル1の軸方向に圧縮され、軸方向の距離が縮小(縮径)することに伴い、マンドレル1の軸方向に直交する方向に拡径する。該環状のシール部材2は、拡径して、軸方向に直交する方向の外方部が坑井孔の内壁Hと当接するとともに、軸方向に直交する方向の内方部がマンドレル1の外周面に当接することにより、プラグとダウンホールとの間の空間を閉塞(シール)するものである。拡径可能な環状のシール部材2は、次いでフラクチャリングが遂行されている間、坑井孔の内壁H及びマンドレル1の外周面と当接状態を維持することができ、プラグと坑井孔とのシールを維持する機能を有するものである。
拡径可能な環状のシール部材2は、拡径したときに坑井孔の内壁H及びマンドレル1の外周面に当接してプラグと坑井孔との間の空間を閉塞(シール)するとともに、拡径しないときにはプラグと坑井孔との間に空隙が存在し得ることが求められるものであることから、拡径可能な環状のシール部材2のマンドレル1の軸方向の長さが、マンドレル1の軸方向の長さに対して、好ましくは10〜90%、より好ましくは15〜80%である。拡径可能な環状のシール部材2は、上記のマンドレル1の軸方向の長さを有することにより、拡径可能な環状のシール部材2を備える坑井掘削用プラグに十分なシール機能を付与するとともに、シール後には坑井孔とプラグとの固定補助の機能を果たすことができる。
〔軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材であるダウンホールツール用分解性シール部材2は、軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材を備えることを特徴に有する。本発明の拡径可能な環状のシール部材に備えられる2つ以上の環状部材の配置は特に限定されず、軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材が軸方向に沿って隣接するものでもよいし、軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材が軸方向に沿って離隔するものでもよいし、軸方向に沿って区分される3つ以上の環状部材を備えるものでもよい。拡径可能な環状のシール部材2が、軸方向に沿って区分される3つ以上の環状部材を備えるものである場合、3つ以上の環状部材は、すべて隣接して配置してもよいし、一部または全部が離隔して配置してもよい。さらに、前記の2つ以上の環状部材の各々は、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上において、マンドレル1に直接接して配置されるものでもよいし、マンドレル1に刻設された段部等やマンドレル1に取り付けられた別部材、例えば後述するリング5または5’等を覆うように配置されるものでもよく、または、前記の別部材に内包されるように配置されるものでもよい。
〔中央環状部材及び両端環状部材〕
例えば、本発明の拡径可能な環状のシール部材2が、軸方向に沿って区分される3つの環状部材を備えるものとしては、マンドレル1の軸方向に沿う中央環状部材と、中央環状部材のマンドレル1の軸方向に沿う両端に隣接する両端環状部材とを備える拡径可能な環状のシール部材2とすることができる。なお、中央環状部材または両端環状部材の各々は、マンドレル1に直接接して配置されてもよいし、別部材を介して配置されるものでもよい。
〔環状部材の硬度〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2に備えられる軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材について、それぞれの環状部材は、硬度がA60〜D80の範囲である分解性を有する高分子材料から形成されることを特徴に有する。本発明において、環状部材を形成する分解性を有する高分子材料の硬度とは、ISO7619に準拠して測定されるデュロメータ硬度のタイプA(以下、「硬度A」ということがある。)またはタイプD(以下、「硬度D」ということがある。)で表される硬度を意味するものである。なお、デュロメータ硬度としては、一般ゴム等に適合する中硬さ用のタイプA、硬質ゴム等に適合する高硬さ用のタイプD、及びスポンジ等に適合する低硬さ用のタイプEがある(例えば、硬度A100は、概ね硬度D60程度に相当することが多い。)。本発明の拡径可能な環状のシール部材2は、それぞれの環状部材を上記の範囲の硬度を有するものとすることによって、それぞれの環状部材の構造等を併せて調整することにより、フラクチャリング等の高圧流体加圧に抗する確実な坑井孔のシールを行うよう構成することができる。それぞれの環状部材の硬度は、好ましくは硬度A65〜D78、より好ましくは硬度A70〜D75の範囲である。
〔分解性を有する高分子材料〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2に備えられる軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材は、分解性を有する高分子材料から形成される。分解性とは、先にマンドレル1について説明したと同様に、例えば、フラクチャリング流体が使用される土壌中の微生物によって分解される生分解性、または、フラクチャリング流体中の溶媒、特に、水によって、更に所望により酸またはアルカリによって分解する加水分解性などを意味し、更に他の何らかの方法によって化学的に分解することができる分解性であってもよく、好ましくは、所定温度以上の水によって分解する加水分解性である。また、重合度の低下等により高分子材料が本来有した強度が低下して脆くなる結果、極めて小さい機械的力を加えることによって簡単に崩壊し、当初の形状を失う崩壊性も、分解性に該当する。分解性を有する高分子材料としては、先にマンドレル1について説明した分解性の樹脂を挙げることができるほか、従来知られている分解性のゴム材料を挙げることができる。分解性のゴム材料としては、ウレタンゴム、アクリルゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、脂肪族ポリエステルゴム、及びクロロプレンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴム材料を含有するものを好ましく挙げることができる。また、所定温度以上の水によって分解する加水分解性が望まれることがあることから、分解性を有する高分子材料は、加水分解性の官能基(例えば、ウレタン基、エステル基、アミド基、カルボキシル基、水酸基、シリル基、酸無水物、酸ハロゲン化物等)を有する高分子材料を含有するものとすることもでき、また、分解性を有する高分子材料は、高分子の主鎖にウレタン結合、エステル結合またはアミド結合の少なくとも1つの結合を有する高分子材料を含有するものとすることもできる。分解性を有する高分子材料は、ウレタンゴムを含有するもの、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含有するもの、または、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含有するものが中でも好ましく挙げられる。軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材のそれぞれを形成する分解性を有する高分子材料、好ましくは分解性のゴム材料は、同一でもよいし、異なってもよく、単独でまたは2種以上をブレンド等により組み合わせて使用することもでき、それぞれの環状部材の構造等を併せて調整することにより、フラクチャリング等の高圧流体加圧に抗する確実な坑井孔のシールを行うよう構成することができる。
特に好ましい分解性を有する高分子材料、好ましくは分解性のゴム材料としては、ゴム材料の構造や硬度、架橋度等を調整したり、他の配合剤を選択したりすることによって、分解性や崩壊性の制御を容易に実施することができることから、ウレタンゴムが挙げられる。すなわち、特に好ましい分解性のゴム材料は、ウレタンゴムを含有する分解性のゴム材料である。なお、耐油性・耐熱性・耐水性等に優れていることから、従来、ダウンホールツール用に汎用されるゴム材料であるニトリルゴムや水添ニトリルゴムは、通常、本発明の坑井掘削用プラグに備えられる少なくとも1つの拡径可能な環状のシール部材2を形成する分解性のゴム材料としては適しない。
〔66℃引張破断ひずみ〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2であるダウンホールツール用分解性シール部材に備えられるそれぞれの環状部材は、所望により、温度66℃における引張破断ひずみ(以下、「66℃引張破断ひずみ」ということがある。)が50%以上であることにより、フラクチャリング等の坑井処理を行うのに要する期間、ダウンホールツール用分解性シール部材の強度が維持され、ダウンホールの閉塞をより確実に継続できるので好ましい。すなわち、ダウンホールツール用分解性シール部材を使用して坑井孔の閉塞(シール)を行う場合に、ダウンホールツール用分解性シール部材が、ダウンホールツールの形状及びダウンホールの形状(ケーシングの形状)に確実に係合するように変形しても、具体的には大きな引張力(及び圧縮力)を受けながら変形しても、破断するおそれがないので、ダウンホールツール用分解性シール部材とケーシングとの当接面積が大きくなり、閉塞が確実となる。さらに、例えばフラクチャリング等のシールが必要とされる処理を実施するために、流体による極めて高い圧力が負荷されることで、大きな引張力(及び圧縮力)を受けることがあっても、流体のシールが破壊されにくい効果がある。66℃引張破断ひずみは、ISO37(JIS K6251)に準拠して、温度66℃で測定するものである。66℃引張破断ひずみは、より好ましくは80%以上、更に好ましくは100%以上である。66℃引張破断ひずみは、上限値が特にないが、66℃引張破断ひずみが大きすぎると、所要の坑井処理後にダウンホールツール用分解性シール部材を分解させて強度が失われる際に小片となりにくくなる場合があることから、通常500%以下、多くの場合480%以下である。
〔66℃圧縮応力〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2であるダウンホールツール用分解性シール部材に備えられるそれぞれの環状部材は、所望により、温度66℃における70%ひずみ圧縮応力(以下、「66℃圧縮応力」ということがある。)が10MPa以上であることにより、フラクチャリング等の坑井処理を行うのに要する期間、ダウンホールツール用分解性シール部材の強度が維持され、ダウンホールの閉塞をより確実に継続できるので好ましい。すなわち、ダウンホールツール用分解性シール部材を使用して坑井孔の閉塞(シール)を行う場合に、ダウンホールツール用分解性シール部材が、ダウンホールツールの形状及びダウンホールの形状(ケーシングの形状)に確実に係合するように変形しても、具体的には大きな圧縮力(及び引張)を受けながら変形しても、破断するおそれがないので、ダウンホールツール用分解性シール部材とケーシングとの当接面積が大きくなり、閉塞が確実となる。さらに、例えばフラクチャリング等のシールが必要とされる処理を実施するために、流体による極めて高い圧力が負荷されることで、大きな圧縮力(及び引張力)を受けることがあっても、流体のシールが破壊されにくい効果がある。66℃圧縮応力は、ISO14126(JIS K7018)に準拠して、温度66℃で測定する、圧縮ひずみ70%における圧縮応力(単位:MPa)または圧縮ひずみ70%到達以前に破断する際には破断時までの最大応力値を表す。66℃圧縮応力は、より好ましくは20MPa以上、更に好ましくは30MPa以上である。66℃圧縮応力は、上限値が特にないが、通常200MPa以下、多くの場合150MPa以下である。
〔66℃圧縮破断ひずみ〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2であるダウンホールツール用分解性シール部材に備えられるそれぞれの環状部材は、所望により、温度66℃における圧縮破断ひずみ(以下、「66℃圧縮破断ひずみ」ということがある。)が50%以上であることにより、フラクチャリング等の坑井処理を行うのに要する期間、ダウンホールツール用分解性シール部材の強度が維持され、ダウンホールの閉塞をより確実に継続できるので好ましい。66℃圧縮破断ひずみは、ISO14126(JIS K7018)に準拠して、温度66℃で測定する圧縮破断時のひずみ(単位:%)である。66℃圧縮破断ひずみは、好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上である。66℃圧縮破断ひずみは、上限値が100%であるが、通常99%以下である。
〔66℃圧縮応力比率〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2であるダウンホールツール用分解性シール部材に備えられるそれぞれの環状部材は、更に所望により、温度66℃において、圧縮ひずみ5%における圧縮応力に対する、圧縮ひずみ70%における圧縮応力の比率(以下、「66℃圧縮応力比率」ということがある。)が5倍以上であることにより、フラクチャリング等の坑井処理を行うのに要する期間、ダウンホールツール用分解性シール部材の強度が維持され、ダウンホールの閉塞をより確実に継続できるので好ましい。すなわち、ダウンホールツール用分解性シール部材を使用して坑井孔の閉塞(シール)を行う場合に、ダウンホールツール用分解性シール部材の初期の圧縮ひずみが小さい(変形しやすい)ため、ダウンホールツールの形状及びダウンホールの形状(ケーシングの形状)に確実に係合するように変形可能であって、さらに、大きな圧縮力(及び引張力)を受けながら変形する際には、変形量が大きな領域でシール部材の応力が大きく立ち上がることで、例えばシール部材とケーシングの当接部分のシール部材が高い圧縮応力(及び引張力)を有する状態となるので、例えばフラクチャリング等のシールが必要とされる坑井処理を実施する際に、大きな圧力等がかかっても、十分なシール性能を有し、閉塞が確実となる。66℃圧縮応力比率は、ISO14126(JIS K7018)に準拠して、温度66℃で測定するものである。66℃圧縮応力比率は、より好ましくは8倍以上、更に好ましくは10倍以上である。66℃圧縮応力比率は、上限値が特にないが、通常200倍以下、多くの場合150倍以下である。なお、それぞれの環状部材の66℃圧縮応力比率が5倍以上である本発明のダウンホールツール用分解性シール部材は、多くの場合、他の温度、例えば室温〜149℃のような温度範囲においても、圧縮ひずみ5%における圧縮応力に対する、圧縮ひずみ70%における圧縮応力の比率が5倍以上であれば、広い温度範囲においてシール機能等を果たすことができるので、より望ましいものとなる。ただし、上記の温度範囲の一部、例えば温度149℃において、上記の圧縮応力の比率が5倍未満であるようなダウンホールツール用分解性シール部材でも、66℃圧縮応力比率が5倍以上であれば、実用性があるダウンホールツール用分解性シール部材である。
〔150℃圧縮応力5%低下時間、及び、150℃圧縮応力5%低下時間の差〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2に備えられる2つ以上の環状部材を形成する高分子材料(分解性を有する高分子材料である。)のそれぞれにおける、温度150℃の水に浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が5%以上となる時間(以下、「150℃圧縮応力5%低下時間」ということがある。)の差が、2日以内であることが好ましい。
すなわち、本発明の拡径可能な環状のシール部材2は、ダウンホール(坑井孔)の所要の箇所をシール(目止め処理)して、流体を遮断した後、フラクチャリング等の高圧の流体を使用する一連の操作が終了し、石油やガス等の生産を開始するときには、坑井孔をシールしている該拡径可能な環状のシール部材2を速やかに分解除去することが望まれる。2つ以上の環状部材を形成する高分子材料のそれぞれにおける、150℃圧縮応力5%低下時間の差が2日以内であることにより、2つ以上の環状部材がバランスよく短時間で分解し、坑井孔のシールが短時間でかつ十分に解除され、また、石油やガス等の炭化水素資源の流通が妨げられないので生産効率が向上する。したがって、150℃圧縮応力5%低下時間の差は、より好ましくは1.5日以内、更に好ましくは1日以内である。150℃圧縮応力5%低下時間の差の下限値は特になく、0日(時間)、すなわち150℃圧縮応力5%低下時間に実質的な差がないことが望ましい。
150℃圧縮応力5%低下時間の測定方法は、以下のとおりである。すなわち、拡径可能な環状のシール部材2に備えられる2つ以上の環状部材のそれぞれから、厚み、長さ及び幅各5mmに切り出した高分子材料の試料の所要数をそれぞれ、温度150℃の水(脱イオン水)400mL中に浸漬し、所定時間が経過する毎に(例えば、6時間経過する毎に、または、試料の形状変化等の進行が早い場合は、1時間経過する毎に、などと定める。)水中から試料を取り出して、JIS K7181(ISO604準拠)に従い、常温で圧縮応力を測定し、圧縮ひずみ50%における圧縮応力を求め、それぞれの試料の各経過時間毎の50%ひずみ圧縮応力とする。それぞれの試料の各経過時間毎の50%ひずみ圧縮応力の値を、予め温度150℃の水(脱イオン水)に浸漬する前に測定したそれぞれの試料の50%ひずみ圧縮応力(以下、「当初の50%ひずみ圧縮応力」ということがある。)の値と比較して、当初の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率(以下、「150℃圧縮応力低下率」ということがある。単位:%)を算出し、該150℃圧縮応力低下率が5%となるときまでの温度150℃の水への浸漬の経過時間を求める。通常は、所定時間が経過する毎に測定した各経過時間毎の50%ひずみ圧縮応力の値に基づいて得られる、150℃圧縮応力低下率の変化から演算することにより、150℃圧縮応力5%低下時間を求めることができる。
次いで、2つ以上の環状部材のそれぞれについての150℃圧縮応力5%低下時間を比較して、150℃圧縮応力5%低下時間の差を求める。本発明の拡径可能な環状のシール部材2は、2つ以上の環状部材を形成する高分子材料のそれぞれにおける150℃圧縮応力5%低下時間の差が2日以内であることによって、例えば、温度177℃(350°F)、163℃(325°F)、149℃(300°F)、121℃(250°F)、93℃(200°F)、80℃または66℃、更には25〜40℃などの種々のダウンホールの温度環境において、2つ以上の環状部材がバランスよく短時間で分解し、坑井孔のシールが短時間でかつ十分に解除され、また、石油やガス等の炭化水素資源の流通が妨げられないので生産効率が向上することが期待できる。したがって、ダウンホールの環境や工程に応じて、150℃圧縮応力5%低下時間の差が2日以内である材料を組み合わせることにより、本発明の前記拡径可能な環状のシール部材2における環状部材として最適のものを選択することができる。
〔150℃24時間圧縮応力低下率〕
150℃圧縮応力5%低下時間の差は、温度150℃の水に対する分解性の度合いに関連する特性であるから、本発明の拡径可能な環状のシール部材2は、それぞれの環状部材を形成する高分子材料は、温度150℃の水に24時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率(以下、「150℃24時間圧縮応力低下率」ということがある。)が5%以上であることが望ましい。いうまでもなく、それぞれの環状部材を形成する高分子材料の150℃24時間圧縮応力低下率が5%以上であれば、150℃圧縮応力5%低下時間の差は、2日以内である。
150℃24時間圧縮応力低下率の測定方法は、以下のとおりである。すなわち、150℃圧縮応力5%低下時間の差の測定方法と同様にして、それぞれの環状部材を形成する高分子材料の試料を温度150℃の水に浸漬し、24時間経過した後に、水中から取り出して測定した50%ひずみ圧縮応力の値と、当初の50%ひずみ圧縮応力の値とから、150℃24時間圧縮応力低下率を算出する。
本発明の拡径可能な環状のシール部材2は、それぞれの環状部材を形成する高分子材料の150℃24時間圧縮応力低下率が、望ましくは5%以上であることにより、ダウンホール環境において、数時間〜数週間以内で、拡径可能な環状のシール部材2が分解または崩壊して消失したり、強度を失うことで崩壊したり、該シール部材にかかる種々の力に対する耐荷重が低下したりすることにより閉塞機能を喪失する。したがって、プラグと坑井孔との間の空間の閉塞を解除することを目的として、拡径可能な環状のシール部材2を回収したり物理的に破壊するなどのために、多くの経費と時間を費やす必要がなく、炭化水素資源の回収のための経費軽減や工程短縮に寄与することができる。本発明の拡径可能な環状のシール部材2、及び、少なくとも1つの該拡径可能な環状のシール部材2を備える坑井掘削用プラグには、種々のダウンホールの温度等の環境や当該環境において実施する工程に応じて、多様な強度等の性能維持時間及び分解時間が求められるが、本発明の拡径可能な環状のシール部材2は、150℃24時間圧縮応力低下率が5%以上である分解性の高分子材料、好ましくは分解性のゴム材料から形成されることによって、例えば、温度177℃、163℃、149℃、121℃、93℃、80℃または66℃、更には25〜40℃などの種々のダウンホールの温度環境において、一定時間強度を維持し、その後分解する特性を有することができる。
本発明の拡径可能な環状のシール部材2の2つ以上の環状部材を形成する分解性を有する高分子材料、好ましくは分解性のゴム材料として、好ましく使用される150℃24時間圧縮応力低下率が5%以上である分解性を有する高分子材料は、分解性(または崩壊性)がより優れる(所望の短時間で分解するように設計可能である。)観点から、150℃24時間圧縮応力低下率が、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上である。後述する分解性を有する高分子材料の当初の50%ひずみ圧縮応力の値の大きさにも依存するが、150℃24時間圧縮応力低下率は、更に好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上であり、更には90%以上である。拡径可能な環状のシール部材2の2つ以上の環状部材を形成するそれぞれの高分子材料の150℃24時間圧縮応力低下率の上限は、100%(温度150℃の水に24時間浸漬後には、50%ひずみ圧縮応力が完全に失われることを意味し、具体的には、温度150℃の水に24時間浸漬中に、前記の2つ以上の環状部材から切り出した試料中の分解性を有する高分子材料が、分解したり溶出したりして形状を失ったり消失したりする場合、または、圧縮応力を測定しているときに50%ひずみ到達前に前記の試料が崩壊する場合などを意味する。)である。なお、分解性のゴム材料以外の分解性を有する高分子材料においては、150℃24時間圧縮応力低下率が100%であるものが多い。
〔当初の50%ひずみ圧縮応力〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2に備えられる2つ以上の環状部材を形成するそれぞれの高分子材料の当初の50%ひずみ圧縮応力としては、高深度地下にあるダウンホール内において、穿孔やフラクチャリングを行うのに要する期間(プラグの所定位置までの搬入・移送、坑井掘削用プラグによるダウンホールの閉塞、及び、穿孔またはフラクチャリングの準備及び実施等を含む時間であり、概ね1〜2日間程度であることが多いが、30分間〜数時間等、より短時間である場合もある。)、拡径可能な環状のシール部材2の強度が維持され、ダウンホールの閉塞を確実に継続できる限り、特に限定はないが、通常1MPa以上、多くの場合3MPa以上であり、5MPa以上であることが特に好ましい。同様に、環状部材を形成する高分子材料の当初の50%ひずみ圧縮応力は、上限が特にないが、取扱い性や分解性(または崩壊性)の観点から、通常200MPa以下、多くの場合150MPa以下のものが使用される。
〔分解時間、分解速度等の制御〕
本発明の前記拡径可能な環状のシール部材2において、それぞれの環状部材を形成する高分子材料の50%ひずみ圧縮応力の低下をもたらす分解時間や分解速度等は制御可能である。制御の因子や制御可能な度合いは、高分子材料の種類によっても異なるが、例えば、ゴム材料の場合には、加硫度の調整、すなわち分子鎖間の架橋度合を調整することによる分解速度の制御、加硫方式の変更や架橋剤の種類と比率の変更による分解速度の制御、硬度による分解速度の制御(一般には、硬度を上げると分解が抑制され、硬度を下げると分解が促進される。)、加水分解抑制剤等の配合剤や充填材の種類と量の調整による分解速度の制御、成形条件や効果条件の変更による分解速度の制御、さらには酸や可塑剤等の添加により分子鎖の切断を促進することでも調整可能である。また、加水分解または生分解性を有する分解性の樹脂においては、共重合度の調整、加水分解抑制剤の添加など複数の手法により調整可能である。
上記の拡径可能な環状のシール部材2において、それぞれの環状部材を形成する高分子材料は、150℃圧縮応力5%低下時間の差が2日以内である、更に、所望により150℃24時間圧縮応力低下率が5%以上であることにより、該拡径可能な環状のシール部材2は、例えば、フラクチャリング流体等が使用される土壌中の微生物によって分解される生分解性、または、フラクチャリング流体等の溶媒、特に、水によって、更に所望により酸またはアルカリによって分解する加水分解性を有することができ、または更に他の何らかの方法によって化学的に分解することができる分解性を有することができ、特に、所定温度以上の水によって分解する加水分解性を有することができる。なお、先に説明したように、重合度の低下等により、高分子材料が本来有する強度が低下して脆くなる結果、極めて小さい機械的力を加えることにより、拡径可能な環状のシール部材2が簡単に崩壊して形状を失う(崩壊性)ものでもよい。
〔150℃72時間質量減少率〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2であるダウンホールツール用分解性シール部材に備えられるそれぞれの環状部材を形成する高分子材料は、さらに、ダウンホール環境において、確実に分解性を発揮する観点から、温度150℃の水に72時間浸漬後の質量の、浸漬前の質量に対する減少率(以下、「150℃72時間質量減少率」ということがある。)が5〜100%の範囲にあることが好ましい。ダウンホールツール用分解性シール部材の150℃72時間質量減少率は、拡径可能な環状のシール部材2に備えられる2つ以上の環状部材から、厚み、長さ及び幅各20mmに切り出した高分子材料の試料を、温度150℃の水(脱イオン水等)400mL中に浸漬し、72時間経過後に取り出した後に測定した試料の質量と、予め温度150℃の水に浸漬する前に測定した試料の質量(以下、「当初質量」ということがある。)とを比較して、当初質量に対する減少率(単位:%)を算出するものである。なお、温度150℃の水に浸漬中に、環状部材の試料が、分解したり溶出したりして形状を失いまたは消失する場合は、前記の質量減少率を100%とする。それぞれの環状部材を形成する高分子材料は、150℃72時間質量減少率が5〜100%の範囲にあることにより、ダウンホール環境において、数時間〜数週間以内で、所定量の分解促進剤を含有するゴム材料から形成されるダウンホールツール用分解性シール部材が分解または崩壊することにより、シール機能が喪失されるので坑井掘削のための経費軽減や工程短縮に寄与することができる。ダウンホールツール用分解性シール部材には、種々のダウンホールの温度等の環境や当該環境において実施する工程に応じて、多様なシール機能の機能維持時間及び機能喪失時間が求められるが、本発明のダウンホールツール用分解性シール部材は、それぞれの環状部材を形成する高分子材料の150℃72時間質量減少率が、より好ましくは50〜100%、更に好ましくは70〜100%、特に好ましくは80〜100%、最も好ましくは90〜100%であることにより、例えば、温度177℃、163℃、149℃、121℃、93℃、80℃または66℃、更には25〜40℃などの種々のダウンホールの温度環境において、一定時間シール機能を発揮し、その後シール機能を喪失してシールを解除する特性を有するものとすることができる。ダウンホールツール用分解性シール部材の150℃72時間質量減少率を制御する因子や制御できる程度は、先に50%ひずみ圧縮応力について説明したと同様である。
〔23℃圧縮応力低下率〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2であるダウンホールツール用分解性シール部材に備えられるそれぞれの環状部材を形成する高分子材料は、更に所望により、ドライ環境下で安定であり、温度23℃の水に6時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の1時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力に対する減少率(以下、「23℃圧縮応力低下率」ということがある。)が5%未満であることにより、フラクチャリング等の坑井処理を行うのに要する期間、ダウンホールツール用分解性シール部材の強度が維持され、ダウンホールの閉塞をより確実に継続できるので好ましい。すなわち、坑井掘削のための採掘条件が多様なものとなっているもとで、予期しない短時間で、ダウンホールの閉塞が喪失されるようなことがない。特に、ダウンホールツール用分解性シール部材は、ドライ環境下で安定であることにより、本発明のダウンホールツール用分解性シール部材を備えるダウンホールツールを坑井孔内に配置し、フラクチャリング等の坑井処理を行うに至る前段階において、シール機能を喪失することがない。ダウンホールツール用分解性シール部材の23℃圧縮応力低下率の測定方法は、先に説明した150℃圧縮応力低下率の測定方法と同様であり、温度150℃の水に浸漬するのに代えて、温度23℃の水に、所要時間浸漬することにより測定することができる。23℃圧縮応力低下率は、より好ましくは4%未満、更に好ましくは3%未満である。23℃圧縮応力低下率は、下限値が0%であるが、0.5%程度でも使用上支障がない。なお、本発明のダウンホールツール用分解性シール部材について、「ドライ環境下で安定」であるとは、温度23℃相対湿度50%の環境下において168時間(7日間)以上、圧縮応力の低下が生じないことをいう。
〔特に好ましい分解性を有する高分子材料〕
以上の観点から、本発明の拡径可能な環状のシール部材2に備えられるそれぞれの環状部材を形成するために適する分解性を有する高分子材料としては、フラクチャリング流体等の流体によって、所定時間後に易崩壊になることが期待されることから、具体的な材質としてはウレタンゴム、アクリルゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、またはポリアミド系熱可塑性エラストマーなどの分解性のゴム材料、または、加水分解性若しくは生分解性の樹脂、具体的には例えば加水分解性の官能基を有する高分子材料が、特に好ましく使用され、単体でまたは他の高分子材料(樹脂材料やゴム材料等)と混合して使用することができる。軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材を形成する分解性を有する高分子材料のそれぞれの硬度は、同一でもよいし、異なるものでもよい。
〔ウレタンゴム〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2を形成する分解性の高分子材料として特に好ましく使用される分解性のゴム材料であるウレタンゴム(「ウレタンエラストマー」ということもある。)は、分子中にウレタン結合を有するゴム材料であり、通常、イソシアネート化合物と水酸基を有する化合物とを縮合して得られる。イソシアネート化合物としては、芳香族(複数の芳香族環を有してもよい。)、脂肪族、脂環族系のジ、トリ、テトラ系のポリイソシアネート類、またはこれらの混合物が用いられる。水酸基を有する化合物として、その主鎖にエステル結合を有するポリエステル型ウレタンゴム(以下、「エステル型ウレタンゴム」ということがある。)とその主鎖にエーテル結合を有するポリエーテル型ウレタンゴム(以下、「エーテル型ウレタンゴム」ということがある。)とに大別され、分解性や崩壊性の制御がより容易であることから、エステル型ウレタンゴムが好ましい場合が多い。ウレタンゴムは合成ゴムの弾性(柔らかさ)とプラスチックの剛性(固さ)を併せ持った弾性体であり、一般に、耐摩耗性、耐薬品、耐油性に優れ、機械的強度が大きく、耐荷重性が大きく、高弾性でエネルギー吸収性が高いことが知られている。ウレタンゴムとしては、成形方法の差異によって、i)混練(ミラブル)タイプ:一般のゴムと同じ加工方法で成形できる、ii)熱可塑性タイプ:熱可塑性樹脂と同じ加工方法で成形できる、及びiii)注型タイプ:液状の原料を使用して熱硬化する加工方法で成形できる、というタイプ区分がされるが、本発明の拡径可能な環状のシール部材2を形成するウレタンゴムとしては、いずれのタイプのものも使用することができる。
〔ウレタンゴムの具体例〕
特に好ましいウレタンゴムの具体例としては、デュロメータタイプ硬度(ISO7619に準拠)A80のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(未架橋タイプ)、硬度A80のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(架橋タイプ)、硬度A85のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(未架橋タイプ)、硬度A85のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(架橋タイプ)、硬度A90のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(未架橋タイプ)、硬度A90のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(架橋タイプ)、硬度A95のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(未架橋タイプ)、硬度A95のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(架橋タイプ)、硬度D74のラクトン系エステル型熱可塑性ウレタンゴム(架橋タイプ)、硬度D74のラクトン系エステル型熱可塑性ウレタンゴム(未架橋タイプ)等を挙げることができる。更に、硬度A70のエステル型熱硬化性ウレタンゴム(加水分解抑制剤としてスタバクゾール(登録商標)を添加)、硬度A82のエステル型熱硬化性ウレタンゴム(加水分解抑制剤未添加)、硬度A82のエステル型熱硬化性ウレタンゴム(加水分解抑制剤としてスタバクゾール(登録商標)を添加)、硬度A90のエステル型熱硬化性ウレタンゴム〔加水分解抑制剤としてスタバクゾール(登録商標)を添加〕、硬度A90のエステル型熱硬化性ウレタンゴム(加水分解抑制剤未添加)などを挙げることができる。
〔アクリルゴム〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2を形成する分解性の高分子材料として好ましく使用されるアクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とするゴム状重合体の総称であり、アクリル酸エステルとクロロエチルビニルエーテルとの共重合体であるACM、アクリル酸エステルとエチレンとの共重合体であるAEM、アクリル酸エステルとアクリロニトリルとの共重合体であるANM等がある。アクリルゴムは、主鎖に不飽和結合が含まれないため、化学的安定性に富み、耐熱性、耐油性、耐老化性などの特徴を有している。その一方、耐水性や耐水蒸気性に劣る特性があるため、経時で崩壊しやすく、本発明の拡径可能な環状のシール部材2を形成する分解性を有する高分子材料として適する。
〔ポリエステル系熱可塑性エラストマー〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2を形成する分解性の高分子材料として好ましく使用されるポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ポリエステル系ブロック共重合体を主成分としたエラストマーである。具体的には、例えばポリエステルからなるハードセグメントとポリエーテルからなるソフトセグメントとのブロック共重合体があり、ハードセグメントとして、芳香族ポリエステルや脂肪族ポリエステル、より具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヒドロキシアルカン酸等が挙げられ、ソフトセグメントとして、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルが挙げられる。またハードセグメント及びソフトセグメントがポリエステルからなるブロック共重合体があり、ハードセグメントとして、芳香族ポリエステル、より具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ソフトセグメントとしては、ハードセグメントより低弾性率の脂肪族ポリエステル、例えばアルキル鎖長が2以上のポリヒドロキシアルカン酸が挙げられる。これらのハードセグメント及びソフトセグメントは、所望のエラストマーの物性、特に所望の分解特性及び機械特性に適合するように、ハードセグメントとソフトセグメントの種類またはこれらの比率を調整することが可能であり、更に必要に応じて各種配合剤との組み合わせによって所望の物性を有するポリエステル系熱可塑性エラストマーを得ることができる。ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、プラスチックとゴムの両特性を備えており、射出成形、押出成形、ブロー成形等の各種成形加工が可能であり、また、エステル結合を有していることにより、所定時間で崩壊しやすい特性がある。市販品として挙げられる、例えば、東洋紡株式会社製ペルプレン(登録商標)PタイプのP30B(硬度A71)、P40B(硬度A82)、P40H(硬度A89)、P55B(硬度A94)、東レ・デュポン株式会社製ハイトレル(登録商標)3046(硬度A77)、G3548L(硬度A80)、4047N(硬度A90)などは、ゴムとしては比較的硬度が高い材料であるが、ダウンホールツール環境において想定される高温高圧条件に適する硬度であり、ダウンホールツール用シール部材に適する分解性シール部材である。また、ペルプレン(登録商標)SタイプのS1001(硬度A96)、S9001(硬度A99)やハイトレル(登録商標)6377(硬度D63)、7277(硬度D72)などは、薄肉のゴム製の部材としてシール用途などに適する硬度を有しており、ダウンホールツール用分解性シール部材に適するゴム材料である。これらのポリエステル系熱可塑性エラストマーは、単体での使用が可能であるが、更に他の熱可塑性エラストマー及び/または樹脂材料と混合して使用することもできる。
〔ポリアミド系熱可塑性エラストマー〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2を形成する分解性の高分子材料として好ましく使用されるポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ポリアミドからなるハードセグメントとポリエーテル及び/またはポリエステルからなるソフトセグメントとのブロック共重合体である。具体的には、ハードセグメントとしては、例えば、脂肪族ポリアミド、より具体的にはナイロン6、ナイロン11、ナイロン12が挙げられ、ソフトセグメントとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルが挙げられる。これらのハードセグメント及びソフトセグメントは、所望のエラストマーの物性、特に所望の分解特性及び機械特性に適合するように、ハードセグメントとソフトセグメントの種類またはこれらの比率を調整することが可能であり、更に必要に応じて各種配合剤との組み合わせによって所望の物性を有するポリアミド系熱可塑性エラストマーを得ることができる。ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ゴムとプラスチックの中間的な性質を有し、射出成形、押出成形、ブロー成形等の各種成形加工が可能であり、また、アミド結合を有していることにより、高温高圧下で加水分解を生じ、易崩壊となる特性がある。市販品としては、株式会社T&K TOKA製TPAE−12(JIS K7115による硬度D12)、TPAE−38(硬度D32)、TPAE−10(硬度D41)、TPAE−23(硬度D62)、PA−260(硬度D69)などが挙げられ、薄肉のゴム製の部材としてシール用途などに適する硬度を有するので、ダウンホールツール用分解性シール部材に適するゴム材料である。これらのポリアミド系熱可塑性エラストマーは、単体での使用が可能であるが、更に他の熱可塑性エラストマー及び/または樹脂材料と混合して使用することもできる。
〔拡径可能な環状のシール部材によるダウンホールのシール〕
ダウンホールツールのシールを確実なものとするために、本発明の拡径可能な環状のシール部材2は、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれ、かつ、少なくとも1つの環状部材が、軸方向への圧縮により拡径して、ダウンホールの内壁Hと拡径可能な環状のシール部材2との間の隙間を閉塞し、少なくとも1つの他の環状部材が、マンドレル1の外周面と拡径可能な環状のシール部材2との間の隙間を閉塞することによって、流体を遮断する機能を有するものであることが好ましい。上記した環状部材による閉塞は、環状部材自体のマンドレル1と接する部分が、直接マンドレル1の軸方向への圧縮を受けることにより生じるものでもよいし、他の部材、例えば後述するリング5または5’が、マンドレル1の軸方向に移動したり、拡がったりすることにより生じるものでもよい。
本発明の拡径可能な環状のシール部材2は、軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材を備え、好ましくは先に説明したように、ダウンホールの内壁Hと拡径可能な環状のシール部材2との間の隙間を閉塞し、次いで、マンドレル1の外周面と拡径可能な環状のシール部材2との間の隙間を閉塞するように構成され、これによって、流体を遮断する機能を有するものである。この機能は、軸方向に沿って区分される3つの環状部材である中央環状部材と両端環状部材が軸方向に沿って隣接する拡径可能な環状のシール部材2を例にとると、具体的には以下(i)〜(iii)の作用が推察される。
すなわち、(i)一方の環状部材、具体的には中央環状部材が、例えば後に説明する1対のリング5、5’等を介して、軸方向への圧縮を受けることにより、軸方向の距離が縮小(縮径)することに伴い、マンドレル1の軸方向に直交する方向に拡径する。中央環状部材の拡径が進んだ結果、中央環状部材の直径方向の外方先端部がダウンホールの内壁Hに当接し、ダウンホールの内壁Hと拡径可能な環状のシール部材2との間の隙間の閉塞が開始する。
(ii)次いで、更に中央環状部材の拡径が継続すると、ダウンホールの内壁Hに当接する中央環状部材の直径方向の外方先端部の面積(ダウンホールの内壁Hとの接触面積)が増大して、ダウンホールの内壁Hと拡径可能な環状のシール部材2との間の隙間を閉塞し、強固にシールする。
(iii)中央環状部材の変形が大きくなる結果、中央環状部材の強度が急激に増大し、中央環状部材と両端環状部材とが隣接し当接する部位を介して、両端環状部材に変形を引き起こす力、具体的には、両端環状部材の中央環状部材との当接部位を拡径しようとする力が作用する。この結果、両端環状部材の中央環状部材との当接部位の反対側に位置するマンドレル1の外周面との当接部位にマンドレル1の外周面を押圧する力が作用して、マンドレル1と拡径可能な環状のシール部材2との間の隙間を閉塞し、強固にシールする。なお、(iii)は(ii)と並行して作用することもあると推察される。
上記の作用の推察に基づけば、本発明の拡径可能な環状のシール部材2によるダウンホールの閉塞によって流体を遮断する機能を強固かつ確実なものとするためには、(i)の作用によるダウンホールの内壁Hと拡径可能な環状のシール部材2との間の隙間の閉塞が先行して起こることが好ましい。したがって、(i)の作用が先行して生じるように、上記の具体例においては、中央環状部材が、両端環状部材より先に拡径することができるように、中央環状部材と両端環状部材との組成(分解性を有する高分子材料の選択、配合剤や充填材の配合等)や、環状部材のデザイン(厚みの調整、体積の調整、アンダーの有無等)を調整することにより、中央環状部材を相対的に変形しやすいものとすることが好ましいことが分かる。例えば、中央環状部材の硬度を硬度A60〜A100の範囲とし、両端環状部材の硬度を硬度A60〜D80の範囲とし、かつ、中央環状部材の硬度が両端環状部材の硬度より小さいものとすることができるが、必須ではない。
〔環状部材の軸方向長さ、厚み、大きさ等〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2は、例えば、先の中央環状部材が先に拡径してダウンホールの内壁Hと拡径可能な環状のシール部材2との間の隙間を閉塞することによって、流体を遮断する機能を果たす観点から、軸方向への圧縮により拡径して、ダウンホールの内壁Hと拡径可能な環状のシール部材2との間の隙間を閉塞する少なくとも1つの環状部材(先の中央環状部材が相当する。)のマンドレルの軸方向の長さが、拡径可能な環状のシール部材2のマンドレル1の軸方向の長さに対して20〜80%であることが好ましく、より好ましくは25〜75%、更に好ましくは30〜70%である。また、拡径可能な環状のシール部材2に備えられる軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材の厚みや大きさは、先に説明したように、調整することができ、例えば、環状部材の厚みは通常0.5〜20mmの範囲、多くの場合1〜10mmの範囲である。
〔他の配合成分〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2としては、分解性を有する高分子材料、好ましくは分解性のゴム材料、特に好ましくはウレタンゴムに加えて、本発明の目的を阻害しない範囲で、更に他の配合成分として、他の種類のゴム材料や樹脂材料、強化材、安定剤、分解促進剤または分解抑制剤等の各種添加剤を含有させまたは配合してなる組成物から形成されるものであってもよい。また、所望により、顔料や染料を添加することにより、例えばブランドカラー等、種々の識別機能を有する着色された分解性を有する高分子材料の組成物から、拡径可能な環状のシール部材2を形成することもできる。特に、他の配合成分として、分解性を有する他の材料を含有させてなる分解性を有するゴム材料の組成物とすることにより、本発明の拡径可能な環状のシール部材2の分解性や崩壊性を増加させたり、所望に応じて調整したりすることができる。例えば、拡径可能な環状のシール部材2を形成する分解性のゴム材料に、他の配合成分として含有される他の分解性を有する材料が分解することにより、拡径可能な環状のシール部材2が、元の強度を失ったり、元の形状を失ったりして崩壊性のものとなるようにすることもできる。他の配合成分として含有させる分解性を有する材料としては、PGA、PLA、PGLA等の脂肪族ポリエステルなど公知の分解性の樹脂、またはそれらの混合物などが挙げられる。また、本発明の拡径可能な環状のシール部材2を形成する分解性のゴム材料としては、例えばウレタンゴム100質量部に対して、ニトリルゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム(スチレン・ブタジエンゴム等)、フッ素ゴム、シリコーンゴムなどの他のゴム材料を5〜150質量部、好ましくは10〜100質量部の範囲でブレンドして使用することができる。また、例えばニトリルゴムは、先に説明したように、通常、分解性のゴム材料には適しないゴム材料であるが、分解性のゴム材料、特に、150℃24時間圧縮応力低下率が大きい分解性のゴム材料であるウレタンゴムとブレンドして使用し拡径可能な環状のシール部材2を形成すると、ウレタンゴムが容易に分解または崩壊することによって、ニトリルゴムも形状を維持することが不可能となるので、比較的容易に拡径可能な環状のシール部材、及び坑井掘削用プラグを回収できるようになる場合がある。
〔分解促進剤〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2としては、該拡径可能な環状のシール部材2であるダウンホールツール用分解性シール部材を形成する前記の分解性を有する高分子材料は、分解性を有する高分子材料100質量部に対して分解促進剤0.1〜20質量部を含有するものであることが好ましい。なお、先に説明したように、分解性を有する高分子材料としては、好ましくは分解性のゴム材料、より好ましくはウレタンゴム、アクリルゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、脂肪族ポリエステルゴム、及びクロロプレンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴム材が挙げられる。
本発明の拡径可能な環状のシール部材2において、前記の分解性を有する高分子材料に含有される分解促進剤とは、ダウンホールツール用分解性シール部材が使用されるダウンホール環境下において、分解性を有する高分子材料の分解や崩壊を促進することができる配合剤であり、特に、分解性を有する高分子材料の分解、中でも加水分解を促進することができる分解性を有する高分子材料に含有される配合剤である。分解性を有する高分子材料の分解を確実に果たす効果が期待できることから、分解促進剤としては、分解性を有する高分子材料の分子主鎖の結合を切断する機能または分解性を有する高分子材料を可塑化する機能を有する配合剤であることが好ましく、したがって、分解促進剤として好ましくは、酸性物質及び可塑剤が挙げられる。また、分解促進剤が、有機酸、無機酸、有機酸エステル、無機酸エステル及び酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものであることが好ましい。
(酸性物質)
本発明の拡径可能な環状のシール部材2において、好ましい分解促進剤として酸性物質が挙げられる。酸性物質は、ダウンホールツール用分解性シール部材を形成する分解性を有する高分子材料の分子主鎖の結合を切断することによって、該シール部材の分解を促進し、その結果、拡径可能な環状のシール部材2の分解が促進される。すなわち、ダウンホールツール用分解性シール部材が、酸性物質を含有する分解性を有する高分子材料から形成される場合、分解性を有する高分子材料の内部に、通常は均質に分散して、酸性物質が存在することにより、酸性物質が分解性を有する高分子材料の分子の多くに接触することができるので、例えば、分解性を有する高分子材料から形成されるダウンホールツール用分解性シール部材を水(酸性物質を含有してもよい。)に浸漬する場合のように、該シール部材の表面から分解が進行する場合と比較して、より大きな速度で分解性を有する高分子材料の分解が進行するものと推察される。
酸性物質としては、酸などの狭義の酸性物質であってもよいし、何らかの条件下、例えば、水中に浸漬されるときに加水分解して酸を生成するような酸生成物質でもよい。酸生成物質としては、有機酸や無機酸などの酸のほか、例えばオキシカルボン酸の二量体、三量体、オリゴマーまたは重合体等の加水分解性を有する酸の誘導体や、反応性が高い有機酸の誘導体、例えばスルホン酸誘導体であるスルホン酸エステル(有機酸エステルに該当する。)やスルホンアミド、酸無水物など、それ自体酸前駆体として公知の酸生成物質、好ましくは有機酸エステル、無機酸エステル及び酸無水物が挙げられる。酸性物質としては、所定量の酸性物質を含有する分解性を有する高分子材料からダウンホールツール用分解性シール部材を形成するまでの間(分解性を有する高分子材料の重合中、溶融混練または溶融成形中など)に、分解したり揮散したりして消失しないものであることが求められる。具体的には、ラウリン酸等の炭素数8〜20程度の飽和脂肪酸、グリコール酸、乳酸、リン酸、グリコリド、グリコール酸オリゴマー、ポリグリコール酸(PGA)、ラクチド、乳酸オリゴマー、ポリ乳酸(PLA)等のオキシカルボン酸またはその誘導体、p-トルエンスルホン酸メチル(MPTS)、o/p−トルエンスルホンアミド、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等のスルホン酸誘導体、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)等の酸無水物などが挙げられる。特に好ましくは、分解促進剤が、ラウリン酸、グリコール酸、乳酸、リン酸、グリコリド、ラクチド、PGA、PLA、MPTS及びBTDAから選ばれる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものである。
酸性物質は、拡径可能な環状のシール部材2を形成する分解性を有する高分子材料中において、相溶状態になっている場合と、顆粒状(「粒状」といってもよい。)に分散している場合とがある。例えば、分解性を有する高分子材料として好ましく使用される分解性のゴムであるウレタンゴムに酸性物質を含有させる場合、グリコリドやMPTSは相溶状態となることが多く、PGAやBTDAは顆粒状に分散することが多い。また、ラウリン酸は温度条件等によって相溶状態と顆粒状に分散する場合があることが観察された。いずれの場合でも分解性のゴムの分解を促進する効果があるが、通常、相溶状態になっている場合の方が、分解促進効果が大きい。
(可塑剤)
また、本発明の拡径可能な環状のシール部材2において、好ましい分解促進剤として可塑剤が挙げられる。可塑剤は、拡径可能な環状のシール部材2を形成する分解性を有する高分子材料を可塑化する機能(トルク低下、軟化等)を有するものである結果、分解性を有する高分子材料を分解、例えば加水分解する水(酸性物質またはアルカリ性物質を含有してもよい。)の拡径可能な環状のシール部材2への浸入が促進されるので、先に酸性物質について説明したと同様に、拡径可能な環状のシール部材2の表面から分解が進行する場合と比較して、より大きな速度で分解性を有する高分子材料の分解が進行するものと推察される。可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジブチルセバケート等を挙げることができるが、分解性ゴムに対する可塑化効果の有無や大小が異なるので、好適な可塑剤の種類は、分解性ゴムとの組み合わせによって定まる。
(分解促進剤の使用)
分解促進剤としては、好ましく挙げた酸性物質及び可塑剤のほか、分解性を有する高分子材料の分解、特に加水分解を促進する効果を奏するものを使用することができる。分解促進剤は、1種の化合物単独でもよいし、2種以上の化合物を含有してもよく、また、例えば酸性物質と可塑剤とを含有してもよい。また、先に酸性物質について説明したように、分解促進剤の含有態様としては、相溶性でもよいし、顆粒状でもよいが、分解性を有する高分子材料から拡径可能な環状のシール部材2を形成するまでの間(分解性を有する高分子材料の重合中、溶融混練または溶融成形中など)に、分解したり揮散したりして消失しないことが必要である。分解促進剤の含有量は、分解促進剤と分解性を有する高分子材料との組み合わせによって最適範囲を選択することができるが、分解性を有する高分子材料100質量部に対して通常0.1〜20質量部であり、多くの場合0.3〜15質量部、ほとんどの場合0.5〜10質量部の範囲で分解性を有する高分子材料に対する分解促進効果を有する。分解促進剤の含有量が少なすぎると、分解性を有する高分子材料に対する分解促進効果が不足し、所望の期間内に拡径可能な環状のシール部材2を分解してシールを解除できなくなるおそれがあり、坑井掘削の経費軽減や工程短縮が損なわれることがある。分解促進剤の含有量が多すぎると、フラクチャリング等の坑井処理において、ダウンホールツール用分解性シール部材による流体シールが必要とされる期間が経過する前に、シールが解除されてしまうおそれがあり、坑井掘削に大きな支障を生じることがある。したがって、分解促進剤の種類または分解促進剤の含有量により分解速度を制御することが可能である。本発明の拡径可能な環状のシール部材2は、分解性を有する高分子材料100質量部に対して分解促進剤0.1〜20質量部を含有する分解性を有する高分子材料から形成されることにより、分解性を有する高分子材料の分解が促進されるので、坑井処理の終了後に行う、または坑井掘削の完了後に行う、拡径可能な環状のシール部材2であるダウンホールツール用分解性シール部材によるシールの解除を、より低温で、及び/またはより短時間で実施することができるので、採掘条件が多様となるもと、所望の期間でシールの解除を行うことができ、坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができる。さらに、ダウンホールツール用分解性シール部材を形成する分解性を有する高分子材料を、該シール部材の表面からでなく内部から分解することができるので、シール解除後のダウンホールツール用分解性シール部材を、従来より微粉化することができるので、坑井処理終了後や坑井掘削完了後の回収操作が容易かつ迅速に行えるようになる。
〔強化材〕
本発明の拡径可能な環状のシール部材2としては、分解性を有する高分子材料、例えば分解性のゴム材料、具体的な例示としてはウレタンゴムなどに加えて、特に、他の配合成分として強化材を含有することが好ましいことがある。強化材としては、先にマンドレル1について説明したと同様の、従来、機械的強度や耐熱性の向上を目的として樹脂材料等の強化材として使用されている材料を使用することができ、先にマンドレル1について説明した繊維状強化材や、粒状または粉末状強化材を使用することができる。強化材は、分解性を有する高分子材料、例えば分解性のゴム材料100質量部に対して、通常150質量部以下、好ましくは10〜100質量部の範囲で含有させることができる。
本発明の坑井掘削用プラグ、すなわち、マンドレル1と、前記の拡径可能な環状のシール部材2を備える坑井掘削用プラグは、分解性を有する高分子材料から形成される拡径可能な環状のシール部材2を複数備えることができ、これによりプラグと坑井孔との間の空間を複数の位置で閉塞(シール)することができ、また、坑井孔とプラグとの固定補助の機能をより確実に果たすことができる。なお、本発明の坑井掘削用プラグが、拡径可能な環状のシール部材2を複数備える場合、先に説明した拡径可能な環状のシール部材2のマンドレル1の軸方向の長さとは、複数の拡径可能な環状のシール部材2のマンドレル1の軸方向の長さの合計を意味する。本発明の坑井掘削用プラグは、拡径可能な環状のシール部材2を複数備える場合、複数の拡径可能な環状のシール部材2は、同一の材料、形状または構造を有するものでもよいし、それらが異なるものでもよい。また、複数の拡径可能な環状のシール部材2を、後に詳述する1対のリング5、5’の間の位置に、隣接してまたは離隔して置かれたものとしてもよいし、複数の1対のリング5、5’の各々の対の間の位置に置かれたものとしてもよい。
拡径可能な環状のシール部材2が、軸方向に沿う中央環状部材と両端環状部材とにより構成されるものである場合、例えば、中央環状部材と両端環状部材との一方または両方が、積層ゴムなど複数の高分子材料(ゴム等)から形成される構造の環状部材(ゴム製の部材)であってもよい。また、拡径したときにプラグとダウンホールとの間の空間の閉塞(シール)や坑井孔とプラグとの固定補助を一層確実なものとするために、拡径可能な環状のシール部材2の坑井孔の内壁Hとの当接部に、1以上の溝、凸部、粗面(ギザギザ)などを設けてもよい。
3.スリップ、及びウエッジ
本発明の坑井掘削用プラグ、すなわち、マンドレル1と拡径可能な環状のシール部材2を備える坑井掘削用プラグは、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つのスリップ(slip)3を備えるものであることが好ましい。スリップ3は、楔状のウエッジ(wedge)4と組み合わせて備えられるものでもよい。すなわち、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つのウエッジ4を備える坑井掘削用プラグが好ましい。スリップ3、及び、好ましくはスリップ3とウエッジ4との組み合わせは、プラグと坑井孔との固定を行う手段として、坑井掘削用プラグにおいてそれ自体周知のものである。すなわち、金属、無機物等の材料から形成されるスリップ3が、複合材等の材料から形成されるウエッジ4の斜面の上面に摺動可能に接触して置かれ、ウエッジ4に、既に説明した方法によりマンドレル1の軸方向の力が加えられることにより、スリップ3がマンドレル1の軸方向と直交する外方に移動し、坑井孔の内壁Hに当接して、プラグと坑井孔の内壁Hとの固定を行う。
スリップ3は、マンドレル1の軸方向と直交する外方に移動し、坑井孔の内壁Hに当接して、プラグと坑井孔の内壁Hとの固定を行う機能を果たすことができる限り、ウエッジ4と組み合わせて備えられることは必ずしも必要でない。
スリップ3には、プラグと坑井孔との間の空間の閉塞(シール)を一層確実なものとするために、坑井孔の内壁Hとの当接部に、1以上の溝、凸部、粗面(ギザギザ)などを設けてもよい。また、スリップ3は、予めマンドレル1の軸方向に直交する円周方向において所定の数に分割されているものでもよいし、図1に示すように、予め所定の数に分割されてはおらず、軸方向に沿う一端部から他端部に向かい途中で終了する切れ目を有するものでもよい(スリップ3がウエッジ4と組み合わせて備えられる場合は、ウエッジ4にマンドレル1の軸方向の力が加えられて、ウエッジ4がスリップ3の下面に進入することにより、スリップ3が、前記の切れ目及びその延長線に沿って割られて分割し、次いでスリップ3の各分割片がマンドレル1の軸方向と直交する外方に移動する。)。
本発明の坑井掘削用プラグ、すなわち、マンドレル1と拡径可能な環状のシール部材2を備える坑井掘削用プラグは、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれる拡径可能な環状補助部材であって、ダウンホールの内壁Hと拡径可能な環状のシール部材2との間の隙間を閉塞する少なくとも1つの環状部材のシール作用の際に受ける変形を、拡径して緩和することができる前記の拡径可能な環状補助部材を備える坑井掘削用プラグとすることができる。例えば、ウエッジ4を、前記の少なくとも1つの環状部材の変形を、拡径して緩和することができる拡径可能な環状補助部材とすることができる。これにより、フラクチャリング等において生じる高圧の流体圧力によって、拡径可能な環状のシール部材2に備えられる環状部材、具体的には、中央環状部材が流体圧力の方向に変形し、例えばウエッジ4の端部と点接触または線接触して屈曲させられるような場合に、ウエッジ4が拡径することにより、中央環状部材と面接触するようにして、流体圧力を緩和し、流体を遮断するシールを維持することができる。その結果、拡径可能な環状のシール部材2によるダウンホールの閉塞が確実に維持され、フラクチャリングを遂行することに支障が生じない。
本発明の坑井掘削用プラグとしては、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれた1対のリング5、5’を備え、少なくとも1つの分解性を有する高分子材料、好ましくは分解性のゴム材料から形成される拡径可能な環状のシール部材であるダウンホールツール用分解性シール部材2が該1対のリング5、5’の間に備えられる坑井掘削用プラグが好ましい。すなわち、前記の坑井掘削用プラグによれば、例えば、スリップ3、またはスリップ3とウエッジ4との組み合わせを、拡径可能な環状のシール部材2と隣接して置かれるものとすることにより、スリップ3、またはスリップ3とウエッジ4との組み合わせに対して、マンドレル1の軸方向の力を加えることが容易となる。
本発明の坑井掘削用プラグは、図1に示すように、スリップ3とウエッジ4との組み合わせを複数備えるものとすることができ(スリップ3、3’及びウエッジ4、4’との組み合わせ)、その場合、拡径可能な環状のシール部材2を挟むように隣接して置かれてもよいし、その他の配置で置かれてもよい。本発明の坑井掘削用プラグが、拡径可能な環状のシール部材2を複数備えるものである場合は、スリップ3、3’とウエッジ4、4’との組み合わせの、複数の拡径可能な環状のシール部材2に対する配置は、所望により適宜選択することができる。
〔分解性材料〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられるスリップ3、好ましくはスリップ3とウエッジ4との組み合わせ(スリップ3とウエッジ4との組み合わせを複数備える場合のスリップ3、3’とウエッジ4、4’との組み合わせを含む。)は、スリップ3によりプラグをダウンホールに固定することができる限り、所望により、スリップ3またはウエッジ4の一方または両方を、分解性材料から形成されるものとしてもよく、また、スリップ3またはウエッジ4の一方または両方を、強化材を含有する複合材(強化樹脂)としてもよい。さらに、分解性材料に対して金属や無機物の部材を組み込んだものでもよい。分解性材料または強化材としては、既に説明した材料を使用することができる。
したがって、スリップ3またはウエッジ4の一方または両方は、分解性材料から形成されたものでもよいし、従来と同様に、金属または無機物の少なくとも一方を含有する材料から形成されたものでもよい。さらに、スリップ3またはウエッジ4の一方または両方は、分解性材料に対して金属や無機物の部材を組み込んだもの、すなわち、分解性材料と、金属または無機物の少なくとも一方を含有する材料とから形成されたもの(分解性材料と金属または無機物の複合材)でもよい。
分解性材料と金属または無機物の複合材であるスリップ3またはウエッジ4の具体例としては、PGAを始めとする分解性の樹脂等の分解性材料からなる母材に、所定形状の窪みを設け、窪みの形状に合致する形状の金属(金属片等)または無機物をはめ込んで、これらを接着剤で固定したり、金属片や無機物と母材が固定状態を維持できるように針金、繊維等を巻きつけて固定したりしてなるスリップ3またはウエッジ4が挙げられる。このスリップ3とウエッジ4との組み合わせは、作動時において、スリップ3の母材が、ウェッジ4の上部に乗り上げることにより、金属片や無機物が坑井孔の内壁Hに接することで、坑井内に坑井掘削用プラグを固定する機能を有するものである。
4.リング
既に説明したように、本発明の坑井掘削用プラグとしては、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれた1対のリング5、5’を備え、少なくとも1つの分解性を有する高分子材料から形成される拡径可能な環状のシール部材2(例えば、軸方向に沿う中央環状部材と両端環状部材とにより構成される。)が、該1対のリング5、5’の間に備えられる坑井掘削用プラグが好ましい。本発明の坑井掘削用プラグは、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のシール部材2、及び、好ましくは、少なくとも1つのスリップ3及びウエッジ4を備えることにより、プラグとダウンホールとの間において、空間の閉塞と固定を行うことができるものである。本発明の坑井掘削用プラグは、更に前記の1対のリング5、5’を備えることにより、1対のリング5、5’が、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれた、拡径可能な環状のシール部材2、及び/または、スリップ3に対してウエッジ4を介して、マンドレル1の軸方向の力を効率的に加えることができる。すなわち、1対のリング5、5’を、マンドレル1の外周面上においてマンドレル1の軸方向に沿って摺動が可能で、相互の間隔(距離)を変更することができるように構成し、かつ、拡径可能な環状のシール部材2、及び/または、スリップ3、3’のマンドレル1の軸方向に沿う端部に、直接または間接的に、ウエッジ4、4’を介して(図1においては、スリップ3、3’とウエッジ4、4’との組み合わせとして)、当接するように構成することにより、これらにマンドレル1の軸方向の力を容易に加えることができる。
1対のリング5、5’の各々のリングの形状や大きさは、上記した機能を果たすことができる限り、特に制限されないが、拡径可能な環状のシール部材2に対して、及び/または、スリップ3、3’に対し、所望によってはウエッジ4、4’を介在して、マンドレル1の軸方向の力を有効に加えることができる観点から、リングのこれらに当接する側の端面を平面状とすることが好ましい。1対のリング5、5’の各々のリングは、マンドレル1の外周面を完全に取り囲む円環状のものが好ましいが、周方向に切れ目や変形箇所を有するものでもよく、例えばリング5または5’が拡径することにより、拡径可能な環状のシール部材2に備えられる前記の2つ以上の環状部材の移動を生じさせるものでもよい。また、円環を周方向に分離した形状のものとして、所望により円環を形成するようにしたものでもよい。1対のリング5、5’の各々のリングは、複数のリングを軸方向に隣接して置くことにより、幅広の(マンドレル1の軸方向の長さが大きい。)リングとすることもできる。さらに、拡径可能な環状のシール部材2に対して、及び/または、スリップ3、3’に対し、所望によってはウエッジ4、4’を介在して、マンドレル1の軸方向の力を有効に加えるのに寄与する部材を含めて、本発明の坑井掘削用プラグにおける1対のリング5、5’を形成するリングであるといってもよい。
1対のリング5、5’は、同じまたは類似の形状や構造を有するものでもよいし、形状や構造が異なるものでもよい。例えば、1対のリング5、5’の各々のリングは、マンドレル1の軸方向の長さや外径が異なるものでもよい。また例えば、1対のリング5、5’の一方のリングを、所望によりマンドレル1に対して摺動することができない状態に構成することができる。この場合、1対のリング5、5’の他方のリングがマンドレル1の外周面上を摺動して、拡径可能な環状のシール部材2、及び/または、所望により置かれるスリップ3、3’とウエッジ4、4’との組み合わせの軸方向に沿う端部に当接する。1対のリング5、5’の一方のリングを、所望によりマンドレル1に対して摺動することができない状態にする構成は、特に制限されないが、例えば、マンドレル1と、1対のリング5、5’の一方のリングとが一体に形成されているものとしたり(この場合は、当該リングは、マンドレル1に対して常時摺動することができない。)、ドッグクラッチ等のクラッチ構造やはめ合い構造を利用するものとしたり(この場合は、マンドレル1に対して摺動する状態と摺動することができない状態とを切り替えることができる。)することができる。マンドレル1と、1対のリング5、5’の一方のリングとが一体に形成されている坑井掘削用プラグとしては、一体成形により形成される坑井掘削用プラグ、または、機械加工により形成される坑井掘削用プラグが提供される。
更にまた、本発明の坑井掘削用プラグは、1対のリング5、5’を複数対備えるものでもよい。この場合、拡径可能な環状のシール部材2、及び/または、所望により置かれるスリップ3、3’とウエッジ4、4’との組み合わせの、それぞれの1つ以上を別々にまたは組み合わせて、複数対のリングの間の位置に置かれるようにすることもできる。
〔分解性材料〕
1対のリング5、5’は、前記の拡径可能な環状のシール部材2、及び/または、スリップ3に対して、所望によってはウエッジ4を介して、マンドレル1の軸方向の力を効率的に加えることができる限り、それを形成する材料は、特に限定されないが、少なくとも一方のリング(5または5’)を分解性材料から形成されるものとすることもできる。1対のリング5、5’の少なくとも一方のリングを形成する分解性材料としては、先にマンドレル1について説明したのと同様の分解性材料を使用することができる。したがって、1対のリング5、5’の少なくとも一方を形成する分解性材料は、好ましくは分解性の樹脂であり、より好ましくは脂肪族ポリエステル、更に好ましくはポリグリコール酸である。また、分解性材料は、強化材を含有するものであってもよく、特に、強化材を含有する脂肪族ポリエステルから形成されるものとすることもできる。
1対のリング5、5’の両方のリングが分解性材料から形成されるものである場合、分解性材料の樹脂の種類や組成は、同一でもよいし、異なるものでもよい。1対のリング5、5’が、一方が分解性材料から形成されるものである場合、他方のリングを形成する材料としては、アルミニウム、鉄等の金属や強化樹脂等の複合材を使用することができる。
5.坑井掘削用プラグ
本発明の坑井掘削用プラグは、マンドレルと、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のシール部材であるダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグであって、少なくとも1つの拡径可能な環状のシール部材は、軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材を備え、かつ、それぞれの環状部材は、硬度がA60〜D80の範囲である分解性を有する高分子材料から形成されることを特徴とする前記のダウンホールツール用分解性シール部材であるものである。
本発明の坑井掘削用プラグは、既に説明したように、スリップ、スリップと組み合わせ、また、ダウンホールの内壁と拡径可能な環状のシール部材との間の隙間を閉塞する少なくとも1つの環状部材の変形を、拡径して緩和することができる拡径可能な環状補助部材として作用させることが可能なウエッジや、1対のリング、更にその他の通常坑井掘削用プラグに備えられることがある部材を備えることができる。例えば、マンドレルが、軸方向に沿う中空部を有する場合、中空部に置かれ、流体の流れを制御するボール(金属、樹脂等の材料から形成され、分解性材料から形成されてもよい。)を備えることができる。また、坑井掘削用プラグ及び/またはその部材を、それぞれまたは他の部材に結合したり開放したりするための部材、例えば、回転止め部材などを備えることができる。本発明の坑井掘削用プラグは、そのすべてを分解性材料から形成されるものとすることもできる。
〔坑井孔の閉塞〕
本発明の坑井掘削用プラグは、拡径可能な環状のシール部材が、軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材を備え、かつ、それぞれの環状部材は、硬度がA60〜D80の範囲である分解性を有する高分子材料から形成される拡径可能な環状のシール部材であるダウンホールツール用分解性シール部材であることによって、例えば、1対のリングにマンドレルの軸方向の力を加えることにより、少なくとも1つの環状部材が、軸方向に圧縮されて縮径することに伴いマンドレルの軸方向に直交する方向に拡径する。該少なくとも1つの環状部材は、拡径して、ダウンホールの内壁と拡径可能な環状のシール部材との間の隙間を閉塞する。通常は次いで、少なくとも1つの他の環状部材が、例えば軸方向への圧縮により、マンドレルの外周面と拡径可能な環状のシール部材との間の隙間を閉塞することによって、流体を遮断することができる。なお、ダウンホールツール用分解性シール部材が短時間で分解してしまうような高温環境にあるダウンホール内において、上記した閉塞(シール)等を行う場合には、地上から流体を注入して(cooldown injection)、ダウンホールツール用分解性シール部材の周辺温度を低下させた状態にコントロールすることによって、所望の時間、シール性能(強度等)を維持するような処理方法を採用することができる。
〔坑井掘削用プラグの分解〕
本発明の坑井掘削用プラグは、所定の諸区画のフラクチャリングが終了した後、通常は、坑井の掘削が終了して坑井が完成し、石油や天然ガス等の生産を開始するときに、生分解、加水分解または更に他の何らかの方法による化学的な分解によって、拡径可能な環状のシール部材を、所望によっては、分解性を有するマンドレルやスリップ、更に1対のリング等を、容易に分解して除去することができ、従来行われていた坑井掘削用プラグを始めとするダウンホールツール用の部材を回収したり物理的に破壊する操作を完全に不要とすることも可能である。したがって、本発明の坑井掘削用プラグによれば、従来、坑井完成後に、坑井内に残置されていた多数の坑井掘削用プラグを除去、回収したり、破砕、穿孔その他の方法によって、破壊したり、小片化したりするために要していた多くの経費と時間が不要となるので、坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができる。なお、坑井処理が終了した後に残存するダウンホールツール用分解性シール部材は、生産を開始するまでに完全に消失していることが好ましいが、完全に消失していないとしても、強度が低下してダウンホール中の水流等の刺激により崩壊するような状態となれば、崩壊したダウンホールツール用分解性シール部材は、フローバックなどにより容易に回収することができ、ダウンホールやフラクチャに目詰まりを生じさせることがないので、石油や天然ガス等の生産障害となることがない。また通常、ダウンホールの温度が高い方が、短時間でダウンホールツール用分解性シール部材の分解や強度低下が進行する。なお、坑井によっては地層中の含水量が低いことがあり、その場合にはフラクチャリング時に使用した水ベースの流体を、フラクチャリング後に回収することなく坑井中に残留させることで、坑井掘削用プラグの分解を促進させることができる。
II.坑井掘削用プラグの製造方法
本発明の坑井掘削用プラグは、先に説明したマンドレルと、特有の構造及び組成を有する拡径可能な環状のシール部材を備えることを特徴とする坑井掘削用プラグを製造することができる限り、その製造方法は限定されない。例えば、射出成形、押出成形(固化押出成形を含む。)、遠心成形、圧縮成形その他の公知の成形方法により、坑井掘削用プラグに備えられる各部材を成形し、得られた各部材を、必要に応じて切削加工や穿孔等の機械加工した後に、それ自体公知の方法によって組み合わせて、坑井掘削用プラグを得ることができる。
III.坑井掘削方法
本発明のダウンホールツール用分解性シール部材を使用して、好ましくはマンドレルと該ダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグを使用して、坑井孔の目止め処理を行った後に、該ダウンホールツール用分解性シール部材が、好ましくはマンドレルと該ダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグの一部または全部が分解される坑井掘削方法によれば、所定の諸区画のフラクチャリングが終了し、または、坑井の掘削が終了して坑井が完成し、石油や天然ガス等の生産を開始するときには、生分解、加水分解または更に他の何らかの方法による化学的な分解により、坑井孔を閉塞している拡径可能な環状のシール部材を、所望によっては、分解性を有するマンドレルや坑井孔を閉塞しているスリップ等を、容易に分解して除去することができる。したがって、本発明のダウンホールツール用分解性シール部材を使用して坑井孔の目止め処理を行った後に、該ダウンホールツール用分解性シール部材が分解されることによって、(i)シール部が分解されるので、坑井内において流体の移動を妨げるためのシールが解除できる、(ii)生産を妨げる不要なダウンホールツールの除去が容易である、(iii)ダウンホールツールに備えられる他の部材を分解性を有する材料から形成することにより、生産開始前に破砕処理が全く不要なダウンホールツールを得ることができる、(iv)フラクチャリング工程に使用されるダウンホールツールに限られることなく、何らかのシールが必要とされる多様な工程において使用される種々のダウンホールツールに適用することができる、などの利点がある。この結果、本発明の坑井掘削方法によれば、従来、坑井完成後に、坑井内に残置されていた多数の坑井掘削用プラグまたはシール部材等のその部材を除去、回収したり、破砕、穿孔その他の方法によって、破壊したり、小片化したりするために要していた多くの経費と時間が不要となるので、坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができる。
本発明の具体的態様によれば、特に、それぞれの環状部材は、温度66℃における引張破断ひずみが50%以上、70%ひずみ圧縮応力が10MPa以上かつ圧縮破断ひずみが50%以上である、先に説明した拡径可能な環状のシール部材であるダウンホールツール用分解性シール部材を使用して、坑井孔をシールした後に、坑井孔内で該ダウンホールツール用分解性シール部材が分解される坑井掘削方法が提供され、さらに分解性材料を含有する他のダウンホールツール用部材を備えるダウンホールツールを使用する坑井掘削方法、及び、前記のダウンホールツール用分解性シール部材が、他のダウンホールツール用部材に接するダウンホールツールを使用する坑井掘削方法が提供される。
本発明は、第1の側面として、拡径可能な環状のシール部材であるダウンホールツール用分解性シール部材であって、拡径可能な環状のシール部材は、軸方向に沿って区分される2つ以上の環状部材を備え、かつ、それぞれの環状部材は、硬度がA60〜D80の範囲である分解性を有する高分子材料から形成されることを特徴とする前記のダウンホールツール用分解性シール部材であることによって、高深度化など採掘条件が過酷かつ多様となっているもとで、フラクチャリング等の高圧流体加圧に抗する確実な坑井孔のシールなど、多くの用途で使用されるダウンホールツールにおけるシールを行うことができ、かつ、その除去や流路の確保を容易にすることにより坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができるので、産業上の利用可能性が高い。
また、本発明は、他の側面として、マンドレルと、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれる少なくとも1つの前記のダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグ、並びに、更に他の側面として、前記のダウンホールツール用分解性シール部材を使用して、好ましくはマンドレルと該ダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグを使用して、坑井孔の目止め処理を行った後に、該ダウンホールツール用分解性シール部材が分解されることを特徴とする坑井掘削方法であることによって、高深度化など採掘条件が過酷かつ多様となっているもとで、フラクチャリング等の高圧流体加圧に抗する確実な坑井孔のシールを行うことができ、かつ、その除去や流路の確保を容易にすることにより坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができるので、産業上の利用可能性が高い。
1 : マンドレル
2 : 拡径可能な環状のシール部材(ダウンホールツール用分解性シール部材)
3、3’ : スリップ
4、4’ : ウエッジ
5、5’ : リング
H : ダウンホール(坑井孔)の内壁

Claims (37)

  1. 拡径可能な環状のシール部材であるダウンホールツール用分解性シール部材であって、
    拡径可能な環状のシール部材は、軸方向に沿って区分される3つの環状部材によって構成されており、かつ、
    それぞれの環状部材は、硬度がA60〜D80の範囲である分解性を有する高分子材料から形成され、かつ
    3つの環状部材は、中央環状部材と、該中央環状部材に軸方向に沿って隣接する2つの両端環状部材であり、
    中央環状部材の軸方向の長さが、拡径可能な環状のシール部材の軸方向の長さに対して30〜70%であって、
    分解性を有する高分子材料はウレタンゴムを含有する
    ことを特徴とする前記のダウンホールツール用分解性シール部材。
  2. 3つの環状部材を形成する高分子材料のそれぞれにおける、温度150℃の水に浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が5%以上となる時間の差が、2日以内である請求項1記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  3. それぞれの環状部材を形成する高分子材料は、温度150℃の水に72時間浸漬後の質量の、浸漬前の質量に対する減少率が5〜100%の範囲にある請求項1または2記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  4. それぞれの環状部材を形成する高分子材料は、ドライ環境下で安定かつ温度23℃の水に6時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の1時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が5%未満である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  5. それぞれの環状部材は、温度66℃における引張破断ひずみが50%以上、70%ひずみ圧縮応力が10MPa以上かつ圧縮破断ひずみが50%以上である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  6. それぞれの環状部材は、温度66℃において、圧縮ひずみ5%における圧縮応力に対する、圧縮ひずみ70%における圧縮応力の比率が5倍以上である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  7. 拡径可能な環状のシール部材は、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれ、かつ、中央環状部材が、軸方向への圧縮により拡径して、ダウンホールの内壁と拡径可能な環状のシール部材との間の隙間を閉塞し、少なくとも1つの両端環状部材が、マンドレルと拡径可能な環状のシール部材との間の隙間を閉塞することによって、流体を遮断する機能を有する請求項1乃至のいずれか1項に記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  8. 分解性を有する高分子材料は、アクリルゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、脂肪族ポリエステルゴム、及びクロロプレンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴム材料を含有する請求項1乃至のいずれか1項に記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  9. 分解性を有する高分子材料は、加水分解性の官能基を有する高分子材料を含有する請求項1乃至のいずれか1項に記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  10. 分解性を有する高分子材料は、ウレタン結合、エステル結合またはアミド結合の少なくとも1つの結合を有する高分子材料を含有する請求項1乃至のいずれか1項に記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  11. 分解性を有する高分子材料は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含有する請求項1乃至10のいずれか1項に記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  12. 分解性を有する高分子材料は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含有する請求項1乃至11のいずれか1項に記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  13. 分解性を有する高分子材料は、該分解性を有する高分子材料100質量部に対して分解促進剤0.1〜20質量部を含有する請求項1乃至12のいずれか1項に記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  14. 分解促進剤が酸性物質である請求項13記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  15. 酸性物質が酸生成物質である請求項14記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  16. 分解促進剤が可塑剤である請求項13記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  17. 分解促進剤が、有機酸、無機酸、有機酸エステル、無機酸エステル及び酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項13記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  18. 分解促進剤が、ラウリン酸、グリコール酸、乳酸、リン酸、グリコリド、ラクチド、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、p−トルエンスルホン酸メチル及び3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項13記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  19. 分解性を有する高分子材料は、強化材を含有する請求項1乃至18のいずれか1項に記載のダウンホールツール用分解性シール部材。
  20. マンドレルと、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれる少なくとも1つの請求項1乃至19のいずれか1項に記載のダウンホールツール用分解性シール部材を備える坑井掘削用プラグ。
  21. 拡径可能な環状のシール部材のマンドレルの軸方向の長さが、マンドレルの長さに対して10〜90%である請求項20記載の坑井掘削用プラグ。
  22. マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれる拡径可能な環状補助部材であって、ダウンホールの内壁と拡径可能な環状のシール部材との間の隙間を閉塞する少なくとも1つの環状部材のシール作用の際に受ける変形を、拡径して緩和することができる請求項20または21記載の坑井掘削用プラグ。
  23. 前記の少なくとも1つの環状部材の変形を、拡径して緩和することができる拡径可能な環状補助部材が、ウエッジである請求項22記載の坑井掘削用プラグ。
  24. マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれる少なくとも1つのスリップを備える請求項20乃至23のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  25. マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれる1対のリングを備え、少なくとも1つの請求項1乃至19のいずれか1項に記載のダウンホールツール用分解性シール部材が該1対のリングの間に備えられる請求項20乃至24のいずれか1項に記載の抗井掘削用プラグ。
  26. マンドレルが、軸方向に沿う中空部を有する請求項20乃至25のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  27. マンドレルが、分解性材料から形成される請求項20乃至26のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  28. 分解性材料は、脂肪族ポリエステルを含有する請求項27記載の坑井掘削用プラグ。
  29. 脂肪族ポリエステルは、ポリグリコール酸である請求項28記載の坑井掘削用プラグ。
  30. ポリグリコール酸が、重量平均分子量が180000〜300000、かつ、温度270℃、せん断速度122sec-1で測定した溶融粘度が700〜2000Pa・sである請求項29記載の坑井掘削用プラグ。
  31. 分解性材料は、強化材を含有する請求項20乃至30のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  32. マンドレルが、分解性材料を含有する複合材からなる請求項20乃至31のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  33. 請求項1乃至19のいずれか1項に記載のダウンホールツール用分解性シール部材を使用して、坑井孔の目止め処理を行った後に、ダウンホールツール用分解性シール部材が分解されることを特徴とする坑井掘削方法。
  34. 請求項5記載のダウンホールツール用分解性シール部材を備えるダウンホールツールを使用して、坑井孔をシールした後に、坑井孔内で該ダウンホールツール用分解性シール部材が分解される坑井掘削方法。
  35. 請求項5記載のダウンホールツール用分解性シール部材を備え、さらに分解性材料を含有する他のダウンホールツール用部材を備えるダウンホールツールを使用して、坑井孔をシールした後に、坑井孔内で該ダウンホールツール用分解性シール部材が分解される坑井掘削方法。
  36. 他のダウンホールツール用部材に含有される分解性材料がポリグリコール酸である請求項35記載の坑井掘削方法。
  37. 請求項5記載のダウンホールツール用分解性シール部材を備え、該ダウンホールツール用分解性シール部材が、他のダウンホールツール用部材に接するダウンホールツールを使用して、坑井処理を行った後に、坑井孔内で該ダウンホールツール用分解性シール部材が分解される坑井掘削方法。
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