JP6359355B2 - 分解性を有するゴム材料から形成される拡径可能な環状のゴム部材を備える坑井掘削用プラグ - Google Patents

分解性を有するゴム材料から形成される拡径可能な環状のゴム部材を備える坑井掘削用プラグ Download PDF

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Description

本発明は、石油または天然ガス等の炭化水素資源を産出するために行う坑井掘削において使用する坑井掘削用プラグ、及び坑井掘削方法に関する。
石油または天然ガス等の炭化水素資源は、多孔質で浸透性の地下層を有する井戸(油井またはガス井。総称して「坑井」ということがある。)を通じて採掘され生産されてきた。エネルギー消費の増大に伴い、坑井の高深度化が進み、世界では深度9000mを超える掘削の記録もあり、日本においても6000mを超える高深度坑井がある。採掘が続けられる坑井において、時間経過とともに浸透性が低下してきた地下層や、さらには元々浸透性が十分ではない地下層から、継続して炭化水素資源を効率よく採掘するために、生産層を刺激(stimulate)することが行われ、刺激方法としては、酸処理や破砕方法が知られている(特許文献1)。酸処理は、塩酸やフッ化水素等の強酸の混合物を生産層に注入し、岩盤の反応成分(炭酸塩、粘土鉱物、ケイ酸塩等)を溶解させることによって、生産層の浸透性を増加させる方法であるが、強酸の使用に伴う諸問題が指摘され、また種々の対策を含めてコストの増大が指摘されている。そこで、流体圧を利用して生産層に亀裂(フラクチャ、fracture)を形成させる方法(「フラクチャリング法」または「水圧破砕法」ともいう。)が注目されている。
水圧破砕法は、水圧等の流体圧(以下、単に「水圧」ということがある。)により生産層に亀裂を発生させる方法であり、一般に、垂直な孔を掘削し、続けて、垂直な孔を曲げて、地下数千mの地層内に水平な孔を掘削した後、それらの坑井孔(坑井を形成するために設ける孔を意味し、「ダウンホール」ということもある。)内にフラクチャリング流体を高圧で送り込み、高深度地下の生産層(石油または天然ガス等の炭化水素資源を産出する層)に水圧によって亀裂(フラクチャ)を生じさせ、該フラクチャを通して炭化水素資源を採取するための生産層の刺激方法である。水圧破砕法は、いわゆるシェールオイル(頁岩中で熟成した油)、シェールガス等の非在来型資源の開発においても、有効性が注目されている。
水圧等の流体圧によって形成された亀裂(フラクチャ)は、水圧がなくなれば直ちに地層圧により閉塞されてしまう。亀裂(フラクチャ)の閉塞を防ぐために、フラクチャリング流体(すなわち、フラクチャリングに使用する坑井処理流体)にプロパント(proppant)を含有させて、坑井孔内に送り込み、亀裂(フラクチャ)にプロパントを配置することが行われている。フラクチャリング流体に含有させるプロパントとしては、無機または有機材料が使用されるが、できるだけ長期間、高温高圧の高深度地下の環境内で、フラクチャの閉塞を防ぐことが可能であることから、従来、シリカ、アルミナその他の無機物粒子が使用され、砂粒、例えば20/40メッシュの砂などが汎用されている。
フラクチャリング流体等の坑井処理流体としては、水ベース、油ベース、エマルジョンの各種のタイプが用いられる。坑井処理流体には、プロパントを、坑井孔内のフラクチャを生じさせる場所まで運搬し得る機能が求められるので、通常は所定の粘度を有し、プロパントの分散性が良好であるとともに、後処理の容易性、環境負荷の小ささなどが求められる。また、フラクチャリング流体には、プロパントの間に、シェールオイル、シェールガス等が通過できる流路を形成することを目的として、チャネラント(channelant)を含有させることもある。したがって、坑井処理流体には、プロパントのほかに、チャネラント、ゲル化剤、スケール防止剤、岩石等を溶解するための酸、摩擦低減剤など、種々の添加剤が使用される。
フラクチャリング流体を使用して、高深度地下の生産層(シェールオイル等の石油またはシェールガス等の天然ガスなどの炭化水素資源を産出する層)に水圧によって亀裂(フラクチャ)を生じさせるためには、通常、以下の方法が採用されている。すなわち、地下数千mの地層内に掘削した坑井孔(ダウンホール)に対して、坑井孔の先端部から順次、目止めをしながら、所定区画を部分的に閉塞し、その閉塞した区画内にフラクチャリング流体を高圧で送入して、生産層に亀裂を生じさせるフラクチャリングを行う。次いで、次の所定区画(通常は、先行する区画より手前、すなわち地上側の区画)を閉塞してフラクチャリングを行う。以下、この工程を必要な目止めとフラクチャリングが完了するまで繰り返し実施する。
新たな坑井の掘削だけでなく、既に形成された坑井孔の所望の区画について、再度フラクチャリングによる生産層の刺激を行うこともある。その際も同様に、坑井孔の閉塞及びフラクチャリングなどを行う操作を繰り返すことがある。また、坑井の仕上げを行うために、坑井孔を閉塞して下部からの流体を遮断し、その上部の仕上げを行った後、閉塞の解除を行うこともある。
坑井孔の閉塞及びフラクチャリングなどを行う方法としては、種々の方法が知られており、例えば、特許文献2及び特許文献3には、坑井孔の閉塞や固定を行うことができるプラグ(「フラックプラグ」、「ブリッジプラグ」または「パッカー」等と称することもある。)が開示されている。
特許文献2には、坑井掘削用のダウンホールプラグ(以下、「坑井掘削用プラグ」、または単に「プラグ」ということがある。)が開示されており、具体的には、軸方向に中空部を有するマンドレル(本体)、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に、軸方向に沿って、リングまたは環状部材(annular member)、第1の円錐状部材(conical member)及びスリップ(slip)、エラストマーまたはゴム等から形成される可鍛性要素(malleable element)、第2の円錐状部材及びスリップ、並びに、回り止め機構(anti-rotation feature)を備えるプラグが開示されている。この坑井掘削用プラグによる坑井孔の閉塞は、以下のとおりである。すなわち、マンドレルの軸方向に移動することによりリングまたは環状部材と回り止め機構との間隙が縮小することに伴って、スリップが、円錐状部材の傾斜面に当接して円錐状部材に沿って進むことで、放射状に拡径するように移動し、次いで、スリップの先端が、坑井孔の内壁に当接して坑井孔に固定されること、及び、可鍛性要素が、マンドレルの軸方向の距離が縮小することに伴い拡径変形して、坑井孔の内壁に当接して坑井孔を閉塞することによる。プラグを形成する材料として、金属材料(アルミニウム、スチール、ステンレス鋼等)、繊維、木、複合材及びプラスチックなどが広く例示され、好ましくは、炭素繊維等の強化材を含有する複合材、特に、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の重合体複合材であること、マンドレルがアルミニウムまたは複合材料で形成されることが記載されている。
坑井掘削用プラグは、坑井が完成するまで順次坑井孔内に配置されるが、シェールオイル等の石油またはシェールガス等の天然ガス(以下、総称して「石油や天然ガス」ということがある。)などの生産が開始される段階では、坑井掘削用プラグの部材であるスリップ及び拡径可能な環状のゴム部材による坑井孔の閉塞を解除し、該プラグを除去する必要がある。プラグは、通常、使用後に閉塞を解除して回収できるように設計されていないため、破砕、穿孔その他の方法で、破壊されたり、小片化されたりすることによって除去されるが、破砕や穿孔等には多くの経費と時間を費やす必要があった。また、使用後に回収できるように特殊に設計されたプラグ(retrievable plug)もあるが、プラグは高深度地下に置かれたものであるため、そのすべてを回収するには多くの経費と時間を要していた。
特許文献3には、坑井内の環境に曝されるときに分解する生分解性材料を含有する使い捨て型のダウンホールツール(ダウンホールプラグ等を意味する。)またはその部材が開示されており、生分解性材料として、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルなど分解性重合体が開示されている。さらに、特許文献3には、軸方向に流通孔(flow bore)を有する円筒状本体部品(tubular body element)と、該円筒状本体部品の軸方向と直交する外周面上に、軸方向に沿って、上部シーリング要素、中心シーリング要素及び下部シーリング要素から成るパッカー要素集合体(packer element assembly)と、スリップ及び機械的スリップ本体(mechanical slip body)との組み合わせが記載されている。また、円筒状本体部品の流通孔には、ボールをセットすることにより、流体の一方向のみの流れを許容するようにすることが開示されている。しかしながら、特許文献3には、ダウンホールツールまたはその部材のいずれについて、生分解性材料を含有する材料を使用するのかについての開示はみられない。
エネルギー資源の確保及び環境保護等の要求の高まりのもと、特に、非在来型資源の採掘が広がる中で、高深度化など採掘条件がますます過酷なものとなっていることから、坑井掘削用プラグとしては、確実に坑井孔の閉塞及びフラクチャリングを行うことができ、かつ、その除去や流路の確保を容易にすることにより坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができる坑井掘削用プラグが求められていた。
特表2003−533619号公報(国際公開第01/088333号対応) 米国特許出願公開第2011/0277989号明細書 米国特許出願公開第2005/0205266号明細書
本発明の課題は、高深度化など採掘条件がますます過酷なものとなっているもとで、確実に坑井孔の閉塞及びフラクチャリングを行うことができ、かつ、その除去や流路の確保を容易にすることにより坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができる坑井掘削用プラグを提供することにある。さらに、本発明の課題は、該坑井掘削用プラグを使用する坑井掘削方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材及び少なくとも1つのスリップが置かれた坑井掘削用プラグについて、マンドレル及び少なくとも一つの拡径可能な環状のゴム部材を特有の材料から形成されるものとすることにより課題を解決できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の一つの側面によれば、(1)マンドレルと、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材及び少なくとも1つのスリップとを備える坑井掘削用プラグであって、
(i)マンドレルは、分解性材料から形成され、かつ、
(ii)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、温度150℃の水に24時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が5%以上である、分解性を有するゴム材料から形成される
ことを特徴とする坑井掘削用プラグが提供され、発明の具体的な態様として、(2)(ii’)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、温度150℃の水に72時間浸漬後の質量の、浸漬前の質量に対する減少率が5〜100%である、分解性を有するゴム材料から形成される前記(1)の坑井掘削用プラグが提供される。
本発明の他の側面によれば、(3)マンドレルと、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材及び少なくとも1つのスリップとを備える坑井掘削用プラグであって、
(i)マンドレルは、分解性材料から形成され、かつ、
(ii’)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、温度150℃の水に72時間浸漬後の質量の、浸漬前の質量に対する減少率が5〜100%である、分解性を有するゴム材料から形成される
ことを特徴とする坑井掘削用プラグが提供される。
また、本発明によれば、発明の具体的な態様として、以下(4)〜(28)の坑井掘削用プラグが提供される。
(4)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、温度66℃における引張破断ひずみが50%以上、70%ひずみ圧縮応力が10MPa以上かつ圧縮破断ひずみが50%以上である、分解性を有するゴム材料から形成される前記(1)〜(3)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(5)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、硬度がA60〜D80の範囲内である前記(4)の坑井掘削用プラグ。
(6)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、分解性を有するゴム材料から形成され、ドライ環境下で安定であり、温度23℃の水に6時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の1時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が5%未満である前記(1)〜(5)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(7)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、分解性を有するゴム材料から形成され、温度66℃において、圧縮ひずみ5%における圧縮応力に対する、圧縮ひずみ70%における圧縮応力の比率が5倍以上である前記(1)〜(6)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(8)マンドレルは、温度66℃におけるせん断応力が30MPa以上である分解性材料から形成される前記(1)〜(7)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(9)マンドレルは、温度66℃の水に1時間浸漬後の厚み減少が5mm未満であって、温度149℃の水に24時間浸漬後の厚み減少が10mm以上である前記(1)〜(8)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(10)マンドレルは、温度66℃における引張耐荷重が5kN以上である前記(1)〜(9)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(11)マンドレルが、分解性材料を含有する複合材からなる前記(1)〜(10)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(12)分解性を有するゴム材料は、ウレタンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、アクリルゴム、脂肪族ポリエステルゴム、クロロプレンゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及びポリアミド系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する前記(1)〜(11)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(13)分解性を有するゴム材料は、加水分解性の官能基を有するゴムを含有する前記(1)〜(12)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(14)分解性を有するゴム材料は、ウレタン結合、エステル結合またはアミド結合の少なくとも1つの結合を有するゴムを含有する前記(1)〜(13)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(15)分解性を有するゴム材料は、ウレタンゴムを含有する前記(1)〜(14)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(16)分解性を有するゴム材料は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含有する前記(1)〜(14)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(17)分解性を有するゴム材料は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含有する前記(1)〜(14)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(18)拡径可能な環状のゴム部材は、マンドレルの軸方向の長さが、マンドレルの長さに対して10〜90%である前記(1)〜(17)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(19)分解性材料は、脂肪族ポリエステルを含有する前記(1)〜(18)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(20)脂肪族ポリエステルは、ポリグリコール酸である前記(19)の坑井掘削用プラグ。
(21)ポリグリコール酸が、重量平均分子量が180000〜300000、かつ、温度270℃、せん断速度122sec-1で測定した溶融粘度が700〜2000Pa・sである前記(20)の坑井掘削用プラグ。
(22)分解性材料及び/または分解性を有するゴム材料は、強化材を含有する前記(1)〜(21)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(23)マンドレルが、軸方向に沿う中空部を少なくとも一部に有する前記(1)〜(22)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(24)マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つのウエッジを備える前記(1)〜(23)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(25)分解性を有するゴム材料から形成される拡径可能な環状のゴム部材を複数備える前記(1)〜(24)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(26)マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた1対のリングを備え、少なくとも1つの分解性を有するゴム材料から形成される拡径可能な環状のゴム部材が該1対のリングの間に備えられる前記(1)〜(25)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(27)坑井処理流体中において、分解性材料から形成される部材の厚みが0になる時間と、分解性を有するゴム材料から形成される拡径可能な環状のゴム部材の温度150℃の水に24時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が50%以上となる時間との差が、0時間以上2週間以内である前記(1)〜(26)のいずれかの坑井掘削用プラグ。
(28)分解性材料から形成される部材がマンドレルである前記(27)の坑井掘削用プラグ。
さらに、本発明の別の側面によれば、(29)前記(1)〜(28)のいずれかの坑井掘削用プラグを使用して、坑井孔の目止め処理を行った後に、坑井掘削用プラグの一部または全部が分解されることを特徴とする坑井掘削方法が提供される。
本発明によれば、マンドレルと、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材及び少なくとも1つのスリップとを備える坑井掘削用プラグであって、(i)マンドレルは、分解性材料から形成され、かつ、(ii)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、温度150℃の水に24時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が5%以上である、分解性を有するゴム材料から形成される、及び/または、(ii’)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、温度150℃の水に72時間浸漬後の質量の、浸漬前の質量に対する減少率が5〜100%である、分解性を有するゴム材料から形成されることを特徴とする坑井掘削用プラグであることによって、高深度化など採掘条件がますます過酷なものとなっているもとで、確実に坑井孔の閉塞及びフラクチャリングを行うことができ、かつ、その除去や流路の確保を容易にすることにより坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができるという効果が奏される。
また、本発明によれば、前記の坑井掘削用プラグを使用して、坑井孔の目止め処理を行った後に、坑井掘削用プラグの一部または全部が分解されることを特徴とする坑井掘削方法であることにより、確実に坑井孔の閉塞及びフラクチャリングを行うことができ、かつ、その除去や流路の確保を容易にすることにより坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができる坑井掘削方法が提供されるという効果が奏される。
(a)は、本発明の坑井掘削用プラグの一具体例を示す模式図である。(b)は、(a)の坑井掘削用プラグの拡径可能な環状のゴム部材が拡径した状態を示す模式図である。
I.坑井掘削用プラグ
本発明は、マンドレルと、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材及び少なくとも1つのスリップとを備える坑井掘削用プラグであって、(i)マンドレルは、分解性材料から形成され、かつ、(ii)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、温度150℃の水に24時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が5%以上である、分解性を有するゴム材料から形成される、及び/または、(ii’)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、温度150℃の水に72時間浸漬後の質量の、浸漬前の質量に対する減少率が5〜100%である、分解性を有するゴム材料から形成されることを特徴とする坑井掘削用プラグに関する。以下、図を参照しながら説明する。
1.マンドレル
本発明の坑井掘削用プラグは、分解性材料から形成されるマンドレル1を備えることを特徴とする。本発明の坑井掘削用プラグが備えるマンドレル1とは、通常「芯金」と称されるものであって、断面が略円形状で、断面の直径に対して長さが十分大きく、本発明の坑井掘削用プラグの強度を基本的に担保する部材である。本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1は、断面の直径が、坑井孔の大きさに応じて適宜選択され(坑井孔の内径より小さいことにより、坑井孔内を移動可能であり、一方、後述するように、マンドレル1の外周面に取り付けられる拡径可能な環状ゴム部材2の拡径及びスリップ3の拡径等により坑井孔の閉塞が可能となる程度の径を有する。)、マンドレル1の長さは、断面の直径に対して、例えば5〜20倍程度であるが、これに限定されるものではない。通常、マンドレル1の断面の直径は、5〜30cm程度の範囲である。
〔中空部〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1は、中実のものでもよいが、フラクチャリング初期の流路確保、マンドレル1の重量の軽減、マンドレル1の分解速度のコントロールなどの観点から、マンドレル1が、軸方向に沿う中空部を少なくとも一部に有する中空マンドレルであることが好ましい。中空部は、マンドレル1を軸方向に沿って貫通してもよいし、マンドレル1を軸方向に沿って貫通しないものでもよい。流体を用いて坑井掘削用プラグを坑井内に押し込み移送する場合には、マンドレル1が、軸方向に沿う中空部を有する必要がある。マンドレル1が軸方向に沿う中空部を有するものである場合、マンドレル1の断面形状は、マンドレル1の直径(外径)及び中空部の外径(マンドレル1の内径に相当する。)を画成する2つの同心円で形成される円環状である。2つの同心円の径の比率、すなわち、マンドレル1の直径に対する中空部の外径の比率が0.7以下であることが好ましい。この比率の大小は、マンドレル1の直径に対する中空マンドレルの肉厚の比率の大小と相反する関係にあるので、その比率の上限値を定めることは、中空マンドレルの肉厚の好ましい下限値を定めることに相当するということができる。中空マンドレルの肉厚が薄すぎると、坑井掘削用プラグを坑井孔内に配置したり、坑井孔の閉塞やフラクチャリングを行うときに、中空マンドレルの強度(特に引張強度)が不足して、極端な場合には坑井掘削用プラグが損傷することがある。したがって、マンドレル1の直径に対する中空部の外径の比率は、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下である。
マンドレル1の直径及び/または中空部の外径は、マンドレル1の軸方向に沿って均一でもよいが、軸方向に沿って変化するものでもよい。すなわち、マンドレル1は、その外径が軸方向に沿って変化することによって、マンドレル1の外周面に凸部、段部や凹部(溝部)などを有するものであってもよい。また、中空部の外径が軸方向に沿って変化することによって、マンドレル1の内周面に凸部、段部や凹部(溝部)などを有するものとしてもよい。マンドレル1の外周面及び/または内周面に有する凸部、段部や凹部(溝部)は、マンドレル1の外周面及び/または内周面に、別部材を取り付けたり固定したりするための部位として利用することができ、特に、後述するように、拡径可能な環状のゴム部材2を固定するための固定部とすることができ、また、マンドレル1が中空部を有する場合、流体の流れを制御するために使用するボールを保持する座面とすることができる。
〔分解性材料〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1は、分解性材料から形成されるものである。分解性材料とは、例えば、フラクチャリング流体が使用される土壌中の微生物によって分解される生分解性、または、フラクチャリング流体中の溶媒、特に、水によって、更に所望により酸またはアルカリによって分解する加水分解性を有する分解性材料などがあるが、更に他の何らかの方法によって化学的に分解することができる分解性材料であってもよい。好ましくは、所定温度以上の水によって分解する加水分解性材料である。なお、従来坑井掘削用プラグに備えられるマンドレルとして汎用されているアルミニウム等の金属材料のように、大きな機械的な力を加えることによって、破壊、崩壊等物理的に形状を失う材料は、本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1を形成する分解性材料には該当しない。ただし、後述する分解性樹脂にみられるように、重合度の低下等により本来の樹脂が有した強度が低下して脆くなる結果、極めて小さい機械的力を加えることによって簡単に崩壊し、当初の形状を失う(以下、「崩壊性」ということがある。)材料も、前記の分解性材料に該当する。
本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1を形成する分解性材料としては、高深度地下の高温高圧の環境において所期の強度を有すると同時に、分解性に優れることが求められ、分解性樹脂が好ましい。分解性樹脂とは、先に説明した生分解性、加水分解性、更にその他の方法によって化学的に分解することができる樹脂を意味する。分解性樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトン等の脂肪族ポリエステルやポリビニルアルコール(ケン化度80〜95モル%程度の部分ケン化ポリビニルアルコールなど)などが挙げられるが、より好ましくは脂肪族ポリエステルである。すなわち、分解性材料は、脂肪族ポリエステルであることが好ましい。分解性樹脂は、単独でまたは2種以上をブレンド等により組み合わせて使用することもできる。
〔脂肪族ポリエステル〕
脂肪族ポリエステルは、例えば、オキシカルボン酸及び/またはラクトンの単独重合または共重合、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのエステル化反応、脂肪族ジカルボン酸と、脂肪族ジオールと、オキシカルボン酸及び/またはラクトンとの共重合により得られる脂肪族ポリエステルであり、温度20〜100℃程度の水に速やかに溶解するものが好ましい。
オキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等の炭素数2〜8の脂肪族ヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。ラクトンとしては、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の炭素数3〜10のラクトンなどが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の炭素数2〜8の脂肪族飽和ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等の炭素数4〜8の脂肪族不飽和ジカルボン酸などが挙げられる。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の炭素数2〜6のアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等の炭素数2〜4のポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
これらのポリエステルを形成する成分は、それぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。また、分解性樹脂としての性質を失わない限り、テレフタル酸等の芳香族であるポリエステルを形成する成分を組み合わせて使用することもできる。
特に好ましい脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸(以下、「PLA」ということがある。)やポリグリコール酸(以下、「PGA」ということがある。)等のヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル;ポリ−ε−カプロラクトン等のラクトン系脂肪族ポリエステル;ポリエチレンサクシネートやポリブチレンサクシネート等のジオール・ジカルボン酸系脂肪族ポリエステル;これらの共重合体、例えば、グリコール酸・乳酸共重合体(以下、「PGLA」ということがある。);並びに、これらの混合物;などが挙げられる。また、ポリエチレンアジペート/テレフタレート等の芳香族成分を組み合わせて使用する脂肪族ポリエステルを挙げることもできる。
坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1に求められる強度や分解性の観点から、脂肪族ポリエステルが、PGA、PLA及びPGLAからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが最も好ましく、PGAが更に好ましい。なお、PGAとしては、グリコール酸の単独重合体のほかに、グリコール酸繰り返し単位を50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは99質量%以上であり、とりわけ好ましくは99.5質量%以上有する共重合体を包含する。また、PLAとしては、L−乳酸またはD−乳酸の単独重合体のほかに、L−乳酸またはD−乳酸の繰り返し単位を50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上有する共重合体や、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを混合することにより得られるステレオコンプレックス型ポリ乳酸を包含する。PGLAとしては、グリコール酸繰り返し単位と乳酸繰り返し単位の比率(質量比)が、99:1〜1:99、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは80:20〜20:80である共重合体を使用することができる。
(溶融粘度)
脂肪族ポリエステル、好ましくはPGA、PLAまたはPGLAとしては、溶融粘度が通常50〜5000Pa・s、好ましくは150〜3000Pa・s、より好ましくは300〜1500Pa・sであるものを使用することができる。溶融粘度は、温度270℃、せん断速度122sec−1において測定するものである。溶融粘度が小さすぎると、坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1に求められる強度が不足する場合がある。溶融粘度が大きすぎると、例えば、マンドレル1を製造するために高い溶融温度が必要となり、脂肪族ポリエステルが熱劣化するおそれがあったり、分解性が不十分となったりすることがある。前記の溶融粘度は、キャピラリー(直径1mmφ×長さ10mm)を装着したキャピログラフ(株式会社東洋精機製作所製の「キャピログラフ1−C」)を使用して、試料約20gを所定温度(270℃)にて5分間保持した後、せん断速度122sec-1の条件で測定を行うものである。
特に好ましい脂肪族ポリエステルであるPGAとしては、例えば固化押出成形により成形を行う際に割れが生じにくいなどの成形性等の観点から、重量平均分子量が180000〜300000、かつ、温度270℃、せん断速度122sec-1で測定した溶融粘度が700〜2000Pa・sであるPGAがより好適である。中でも好ましいPGAは、重量平均分子量が190000〜240000、かつ、温度270℃、せん断速度122sec-1で測定した溶融粘度が800〜1200Pa・sであるPGAである。溶融粘度は、先に説明した方法により測定する。前記の重量平均分子量は、10mgのPGAの試料を、トリフルオロ酢酸ナトリウムを5mMの濃度で溶解させたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に、溶解させて10mLとした後、メンブレンフィルタ―で濾過して得た試料溶液の10μlを使用して、下記条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定するものである。
<GPC測定条件>
装置:株式会社島津製作所製のShimazu LC−9A
カラム:昭和電工株式会社製のHFIP−806M 2本(直列接続)+プレカラム:HFIP−LG 1本
カラム温度:40℃
溶離液:トリフルオロ酢酸ナトリウムを5mMの濃度で溶解させたHFIP溶液
流速:1mL/分
検出器:示差屈折率計
分子量校正:分子量の異なる標準分子量のポリメタクリル酸メチル5種(POLYMER LABORATORIES Ltd.製)を用いて作成した分子量の検量線データを使用。
〔他の配合成分〕
分解性材料、好ましくは分解性樹脂、より好ましくは脂肪族ポリエステル、更に好ましくはPGAには、本発明の目的を阻害しない範囲で、更に他の配合成分として、樹脂材料(分解性材料が分解性樹脂である場合は、他の樹脂)や、安定剤、分解促進剤または分解抑制剤、強化材等の各種添加剤を含有させ、または配合してもよい。分解性材料が、強化材を含有することが好ましく、この場合、分解性材料は、複合材ということができる。分解性材料が、分解性樹脂である場合は、いわゆる強化樹脂である。強化樹脂から形成されるマンドレル1は、好ましくは、強化材を含有する脂肪族ポリエステルから形成されるものである。
〔強化材〕
強化材としては、従来、機械的強度や耐熱性の向上を目的として樹脂材料等の強化材として使用されている材料を使用することができ、繊維状強化材や、粒状または粉末状強化材を使用することができる。強化材は、分解性樹脂等の分解性材料100質量部に対して、通常150質量部以下、好ましくは10〜100質量部の範囲で含有させることができる。
繊維状強化材としては、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維等の無機繊維状物;ステンレス、アルミニウム、チタン、鋼、真鍮等の金属繊維状物;アラミド繊維、ケナフ繊維、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機質繊維状物質;などが挙げられる。繊維状強化材としては、長さが10mm以下、より好ましくは1〜6mm、更に好ましくは1.5〜4mmである短繊維が好ましく、また、無機繊維状物が好ましく使用され、ガラス繊維が特に好ましい。
粒状または粉末状強化材としては、マイカ、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、フェライト、クレー、ガラス粉(ミルドファイバー等)、酸化亜鉛、炭酸ニッケル、酸化鉄、石英粉末、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等を用いることができる。強化材は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。強化材は、必要に応じて、集束剤または表面処理剤により処理されていてもよい。
〔分解性材料を含有する複合材〕
さらに、本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、分解性材料から形成されるマンドレル1としては、分解性材料に対して金属や無機物の部材を組み込んだもの、すなわち、分解性材料と金属や無機物等の材料とにより構成される分解性材料を含有する複合材からなるマンドレル1とすることもできる。分解性材料を含有する複合材からなるマンドレル1は、例えば、PGAを始めとする分解性樹脂等の分解性材料からなる母材に、所定形状の窪みを設け、窪みの形状に合致する形状の金属(金属片等)または無機物をはめ込んで、これらを接着剤で固定したり、金属片や無機物と母材が固定状態を維持できるように針金、繊維等を巻きつけて固定して形成される複合材からなるマンドレル1が挙げられる。
〔60℃引張強度〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1は、温度60℃における引張強度(以下、「60℃引張強度」ということがある。)が50MPa以上である分解性材料から形成されることが好ましい。本発明の坑井掘削用プラグは、マンドレル1の60℃引張強度が50MPa以上である分解性材料からなることにより、例えば、シェールガス層において一般的である温度60℃程度の環境下や、更には、地下3000mを超える高深度の地中など、温度100℃を超えるような高温度環境下において、マンドレル1にかかる引張応力に耐えられる十分な強度を有することができる。マンドレル1を形成する分解性材料の60℃引張強度は、JIS K7113に準拠して測定するものであり、試験温度を60℃とするために、試験片をオーブン内に静置して測定を行う(単位:MPa)。マンドレル1を形成する分解性材料の60℃引張強度は、好ましくは75MPa以上、より好ましくは100MPa以上である。マンドレル1を形成する分解性材料を60℃引張強度が50MPa以上であるものとするためには、分解性材料、例えば分解性樹脂の種類や特性(溶融粘度や分子量等)、強化材等の添加剤の種類や特性、添加量などを調整したりする方法によることができる。マンドレル1を形成する分解性材料の60℃引張強度が50MPa以上であれば、マンドレル1の肉厚(断面積)や形状を調整したりすることにより、マンドレル1の耐荷重を適宜調整することができる。60℃引張強度の上限は、特に制限されないが、通常1000MPaであり、多くの場合750MPaである。
〔温度66℃におけるせん断応力〕
また、本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1は、温度66℃におけるせん断応力が30MPa以上の分解性材料から形成されるものであることが好ましい。すなわち、マンドレル1が、温度66℃におけるせん断応力が30MPa以上の分解性材料から形成されることによって、マンドレル1の引張及び/または圧縮を行うための治具との係合部(例えばマンドレルのねじ部や拡径部)や、フラクチャリング流体等によりマンドレルの軸方向に向かう大きな圧力を受けるときのマンドレル1の軸方向と直交する外周面に取り付けられる1対のリングその他の部材との係合部の係合が確実に維持されるようにすることができる。係合部の耐荷重は、該係合部を構成する材料のうち、該係合部が存在する温度環境におけるせん断応力が小さい材料のせん断応力の大きさと、係合部の面積に依存するが、マンドレル1が、温度66℃におけるせん断応力が30MPa以上の分解性材料から形成することにより、温度66℃における係合部の耐荷重を十分大きなものとすることができる。その結果、流体によりマンドレル1の軸方向に向かう大きな圧力を受けるフラクチャリング等の坑井処理を、例えば数時間〜数日間という所望の時間スケジュールに従って、確実に実施することができる。マンドレル1を形成する分解性材料の温度66℃におけるせん断応力は、好ましくは45MPa以上、より好ましくは60MPa以上である。分解性材料の温度66℃におけるせん断応力は、特に上限値がないが、通常600MPa以下、多くの場合450MPa以下である。
〔水に浸漬後の厚み減少〕
また、本発明の坑井掘削用プラグにおいて分解性材料から形成されるマンドレル1は、温度66℃の水に1時間浸漬後の厚み減少が5mm未満であって、温度149℃の水に24時間浸漬後の厚み減少が10mm以上であることが好ましい。すなわち、マンドレル1は、温度66℃の水に1時間浸漬後の厚み減少が5mm未満、より好ましくは4mm未満、更に好ましくは3mm未満であることにより、温度66℃程度のダウンホール環境下においては、マンドレル1を形成する分解性材料が分解(先に説明したように、崩壊や強度の低下であってもよい。)する蓋然性が小さいので、マンドレル1の形状及び大きさがほぼ完全に維持され、また、マンドレル1の軸方向と直交する外周面に取り付けられる1対のリングその他の部材との係合が確実に維持される。したがって、流体によりマンドレル1の軸方向に向かう大きな圧力を受けるフラクチャリング等の坑井処理を、例えば数時間〜数日間という所望の時間スケジュールに従って、確実に実施することができる。温度66℃の水に1時間浸漬後の厚み減少は、下限値が特にないが、0mmが望ましく、0.1mm程度でもよい。同時に、マンドレル1が、温度149℃の水に24時間浸漬後の厚み減少が10mm以上、より好ましくは12mm以上、更に好ましくは15mm以上であることにより、フラクチャリング等の坑井処理が終了した後には、例えば温度149℃のような流体にマンドレル1を接触するようにすれば、短時間、例えば数時間〜数日間〜数週間で、マンドレル1を形成する分解性材料が分解(先に説明したように、崩壊や強度の低下であってもよい。)して、坑井掘削用プラグの分解を促進することができる。温度149℃の水に24時間浸漬後の厚み減少の上限値は特にないが、マンドレル1の厚み(または直径)の100%が望ましく、その95%程度でもよい。温度149℃の水に24時間浸漬後の厚み減少が100%、すなわち、温度149℃の水に24時間浸漬後のマンドレル1の厚みが0mmになる場合は、温度149℃の水に浸漬を開始してから、マンドレル1の厚みが0mmになるときまでの時間も計測するものとする。なお、本発明の坑井掘削用プラグにおける分解性材料から形成されるマンドレル1を始めとして、分解性材料から形成される抗井掘削用プラグの部材としては、例えば所定温度以上の水への浸漬や接触等の分解性材料の分解が顕著に進行し得るダウンホール環境においては、部材の表面からの分解が主である、いわゆる表面分解が進行する場合がある。この場合、分解性材料から形成される抗井掘削用プラグの部材は、例示した所定温度以上の水等に接触する表面部位から、分解性材料の分解が順次生じる結果、経時的に部材の厚みが減じていくこととなる。例えば、PGAから形成される板状体を温度149℃の水に浸漬すると、経時的に線形に厚みが減少する事象が確認されることが多い。
〔温度66℃における引張耐荷重〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1は、温度66℃における引張耐荷重が5kN以上であることが好ましく、したがって、温度66℃における引張耐荷重が5kN以上となるように分解性材料が選択され、デザインされたものであることが好ましい。本発明の坑井掘削用プラグを稼働させる、すなわち、拡径可能な環状のゴム部材2とスリップ3、3’を拡径させて機能を発現させるためには、通常、マンドレル1に対して、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に取り付けられる部材を、リング5’側に押し込むように荷重を作用させるので、マンドレル1には約20〜1000kN、多くの場合、約25〜800kNの高い引張荷重がかかることもある。また、マンドレル1の両端部にはマンドレル1の引張及び/または圧縮を行うための治具を係合することができるようにねじ部や拡径部等を備えることがあるが、それらねじ部や拡径部等(治具との係合部)には、デザインの設計に応じて2〜5倍の応力集中が起こる場合もある。そこで、マンドレル1としては、こうした高荷重に耐えられる強度を有する材料(分解性材料である。)を選択し、かつ、デザインについても応力集中が小さくなるようにする必要がある。また、フラクチャリング流体等によりマンドレルの軸方向に向かう大きな圧力を受けるときには、マンドレル1の軸方向と直交する外周面に取り付けられる1対のリングその他の部材との係合部にも高荷重がかかるので、同様の材料選択とデザインが必要である。マンドレル1の温度66℃における引張耐荷重は、高荷重に十分耐える観点から、好ましくは20kN以上、より好ましくは30kN以上、更に好ましくは50kN以上である。マンドレル1の温度66℃における引張耐荷重は、上限値が特にないが、分解性材料の選択等の観点から、通常1500kN以下、多くの場合1200kN以下である。
〔固定部〕
先に説明したように、マンドレル1は、外周面に、凸部、段部や凹部(溝部)などを有するものとすることができ、マンドレル1の外周面に、別部材を取り付けたり固定したりするための部位として利用することができ、特に、拡径可能な環状のゴム部材2を固定するための固定部とすることができる。
後に詳述するように、本発明の坑井掘削用プラグは、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2を備える。拡径可能な環状のゴム部材2は、マンドレル1の軸方向の距離が縮小(縮径)することに伴い、該軸方向と直交する方向に拡径して、坑井孔の内壁H及びマンドレル1の外周面と当接し、プラグと坑井孔との間の空間を閉塞(シール)する。次いで、フラクチャリングが遂行されている間、プラグと坑井孔とのシールが維持されることが必要であるので、拡径可能な環状のゴム部材2を、拡径した状態で、すなわちマンドレル1の軸方向に圧縮された状態で、何らかの手段により保持することが、多くの場合必要である。
マンドレル1は、外周面に、凸部、段部や凹部(溝部)などを有するものとすることができるので、本発明の坑井掘削用プラグに備えられるマンドレル1は、外周面に拡径可能な環状のゴム部材2を圧縮状態のまま固定する固定部を有するものであることが好ましい。この固定部は、先に説明した凸部、段部や凹部(溝部)でもよいし、ねじ部その他の、マンドレル1の外周面に拡径可能な環状のゴム部材2を圧縮状態のまま固定することができる手段を採用することができる。加工や成形の容易さや強度などの観点から、固定部は、溝、段部及びねじ山からなる群より選ばれる少なくとも1つであることがより好ましい。
2.拡径可能な環状のゴム部材
本発明の坑井掘削用プラグは、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2を備える。拡径可能な環状のゴム部材2は、例えば、後述する1対のリング5、5’に直接または間接的に当接することにより、マンドレル1の外周面上においてマンドレル1の軸方向の力を伝達され、その結果、マンドレル1の軸方向に圧縮され、軸方向の距離が縮小(縮径)することに伴い、マンドレル1の軸方向に直交する方向に拡径する。該環状のゴム部材2は、拡径して、軸方向に直交する方向の外方部が坑井孔の内壁Hと当接するとともに、軸方向に直交する方向の内方部がマンドレル1の外周面に当接することにより、プラグと坑井孔との間の空間を閉塞(シール)するものである。拡径可能な環状のゴム部材2は、次いでフラクチャリングが遂行されている間、坑井孔の内壁H及びマンドレル1の外周面と当接状態を維持することができ、プラグと坑井孔とのシールを維持する機能を有するものである。
〔150℃24時間圧縮応力低下率〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、温度150℃の水に24時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率(以下、「150℃24時間圧縮応力低下率」ということがある。)が5%以上である、分解性を有するゴム材料から形成されることを特徴に有する。すなわち、本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、拡径可能な環状のゴム部材2の少なくとも1つは、150℃24時間圧縮応力低下率が5%以上であることを特徴とする分解性(先に述べたように、崩壊性を含む。)の拡径可能な環状のゴム部材である。本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、150℃24時間圧縮応力低下率が5%以上であることにより、ダウンホール内〔深度の多様化等に付随して、多くは60℃(140度F)〜204℃(400度F)程度の温度であり、近年は更に25〜40℃程度の低温のダウンホール環境もある。〕において、数時間〜数週間以内で、該ゴム部材が分解または崩壊して消失したり、強度を失うことで崩壊したり、該ゴム部材にかかる種々の力に対する耐荷重が低下したりすることにより閉塞機能を喪失する。したがって、プラグと坑井孔との間の空間の閉塞を解除することを目的として、該ゴム部材を回収したり物理的に破壊するなどのために、多くの経費と時間を費やす必要がなく、炭化水素資源の回収のための経費軽減や工程短縮に寄与することができる。本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2には、種々のダウンホールの温度等の環境や当該環境において実施する工程に応じて、多様な強度等の性能維持時間及び分解時間が求められるが、本発明の拡径可能な環状のゴム部材2は、150℃24時間圧縮応力低下率が5%以上であることによって、例えば、温度177℃(350°F)、163℃(325°F)、149℃(300°F)、121℃(250°F)、93℃(200°F)、80℃または66℃、更には25〜40℃などの種々のダウンホールの温度環境において、一定時間強度を維持し、その後分解する特性を有するものである。したがって、ダウンホールの環境や工程に応じて、150℃24時間圧縮応力低下率が5%以上である本発明の前記拡径可能な環状のゴム部材2から最適のものを選択することができる。なお、本発明の前記拡径可能な環状のゴム部材2において、分解時間や分解速度等を制御する因子や制御できる程度は、拡径可能な環状のゴム部材2を形成するゴム材料の種類によって異なるが、例えば、加硫度の調整つまり分子鎖間の架橋の度合いをコントロールすることによる分解速度の制御、加硫方式の変更や架橋剤の種類と比率の変更による分解速度の制御、硬度による分解速度の制御(一般には、硬度を上げると分解が抑制され、硬度を下げると分解が促進される。)、加水分解抑制剤等の配合剤や充填物の種類と量の調整による分解速度の制御、成形条件や硬化条件の変更による分解速度の制御ができる。
本発明の150℃24時間圧縮応力低下率が5%以上である、分解性を有するゴム材料から形成される、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、分解性(または崩壊性)がより優れる(所望の短時間で分解するように設計可能である。)観点から、150℃24時間圧縮応力低下率が、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上である。後述する分解性を有するゴム材料の当初の50%ひずみ圧縮応力(「温度150℃の水に浸漬する前に測定した50%ひずみ圧縮応力」をいう。)の値の大きさにも依存するが、150℃24時間圧縮応力低下率は、更に好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上であり、更には90%以上である。拡径可能な環状のゴム部材2の150℃24時間圧縮応力低下率の上限は、100%(温度150℃の水に24時間浸漬後には、完全に50%ひずみ圧縮応力が失われることを意味し、具体的には、温度150℃の水に24時間浸漬中に、後に説明するように前記の環状のゴム部材から切り出した試料中の分解性を有する高分子材料が、分解したり溶出したりして形状を失ったり消失したりする場合、または、圧縮応力を測定しているときに50%ひずみ到達前に前記の試料が崩壊する場合などを意味する。)である。
なお、150℃24時間圧縮応力低下率が、80%以上であれば、温度150℃の水に24時間浸漬後の拡径可能な環状のゴム部材は、当初の50%ひずみ圧縮応力の値の大きさにもよるが、手で軽く触れるだけで形状を失う状態となっている場合が多い。同じく95%以上であると、取り出しが困難なほど形状が維持されていない場合があり、更に同じく99%以上であると、形状が維持されていないことが目視で観察されるような状態である場合もある。なお、本発明の150℃24時間圧縮応力低下率が5%以上である、分解性を有するゴム材料から形成される拡径可能な環状のゴム部材を始めとして、分解性を有するゴム材料から形成される坑井掘削用プラグの部材は、例えば所定温度以上の水への浸漬等の分解性を有するゴム材料の分解が顕著に進行し得るダウンホール環境においては、部材の表面及び内部からの分解、いわゆるバルク分解が進行する。したがって、前記の拡径可能な環状のゴム部材等の坑井掘削用プラグの部材の50%ひずみ圧縮応力の値が、該坑井掘削用プラグの部材の当初の50%ひずみ圧縮応力の値に対して50%以下(50%ひずみ圧縮応力の低下率が50%以上ということもできる。)になると、該坑井掘削用プラグの部材が全体としては易崩壊性となり、比較的小さい力で当初の形状を失い、バラバラの形状となることがある。その結果、該坑井掘削用プラグの部材は、後に説明するように、流体のシール機能を有しないものとなったり、当初の形状が失われて実質的に厚み0の部材となったりすることがある。
拡径可能な環状のゴム部材の150℃24時間圧縮応力低下率の測定方法は以下のとおりである。すなわち、拡径可能な環状のゴム部材から、厚み、長さ及び幅各5mmに切り出した試料を、温度150℃の水(脱イオン水)400mL中に浸漬し、24時間経過後に取り出して、JIS K7181(ISO604準拠)に従って、常温で50%ひずみ圧縮応力を測定し、50%変位点での50%ひずみ圧縮応力を求め、試料の50%ひずみ圧縮応力とする。試料の温度150℃の水中への浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の値を、予め温度150℃の水(脱イオン水)に浸漬する前に測定した試料の50%ひずみ圧縮応力(「当初の50%ひずみ圧縮応力」)の値と比較して、当初の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率(単位:%)を算出し、150℃24時間圧縮応力低下率とする。なお、先に説明したように、温度150℃の水に浸漬するときに、拡径可能な環状のゴム部材を形成する分解性を有するゴム材料の分解が顕著に進行する場合は、試料が比較的小さい力で当初の形状を失ってしまうので、上記した試料のサイズにこだわらずに測定を行っても得られる結果に差異がない場合がある。
本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材の当初の50%ひずみ圧縮応力としては、高深度地下にあるダウンホール内において、穿孔やフラクチャリングを行うのに要する期間(プラグの所定位置までの搬入・移送、坑井掘削用プラグによるダウンホールの閉塞、及び、穿孔またはフラクチャリングの準備及び実施等を含む時間であり、概ね1〜2日間程度であることが多いが、30分間〜数時間等、より短時間である場合もある。)、拡径可能な環状のゴム部材2の強度が維持され、ダウンホールの閉塞を確実に継続できる限り、特に限定はないが、通常1MPa以上、多くの場合3MPa以上であり、5MPa以上であることが特に好ましい。同様に、拡径可能な環状のゴム部材の当初の50%ひずみ圧縮応力の上限は特にないが、取扱い性や分解性(または崩壊性)の観点から、当初の50%ひずみ圧縮応力が通常200MPa以下、多くの場合150MPa以下のものが使用される。
〔150℃72時間質量減少率〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、温度150℃の水に72時間浸漬後の質量の、浸漬前の質量に対する減少率(以下、「150℃72時間質量減少率」ということがある。)が5〜100%であることにより、ダウンホール内(深度の多様化等に付随し60℃〜200℃程度の温度であり、近年は更に25〜40℃程度の低温環境もある。)において、数時間〜数週間以内で、該ゴム部材が分解または崩壊、更に望ましくは消失(本発明においては、総称して「分解」ということがある。)してシール機能等が喪失されるため、その回収や物理的な破壊など多くの経費と時間を費やす必要がないので、炭化水素資源の回収のための経費軽減や工程短縮に寄与することができる。例えば、150℃72時間質量減少率が100%であれば、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2を温度150℃の水に72時間浸漬後には、質量が0となり、完全に消失していることを意味するので、望ましい。本発明の少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、150℃72時間質量減少率が5〜100%であることによって、例えば、温度177℃、163℃、149℃、121℃、93℃、80℃または66℃、更には25〜40℃などの種々のダウンホールの温度環境において、一定時間強度を維持し、その後分解する特性を有するものである。したがって、ダウンホールの環境や工程に応じて、150℃72時間質量減少率が5〜100%である本発明の少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2から最適のものを選択することができる。
本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、当初の質量(「温度150℃の水に浸漬する前に測定した質量」をいう。)の値の大きさにもよるが、分解性(または崩壊性)がより優れる(所望の短時間で分解する。)観点から、150℃72時間質量減少率が、好ましくは10〜100%、より好ましくは20〜100%、更に好ましくは50〜100%、特に好ましくは80〜100%、最も好ましくは90〜100%である。本発明の少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、必要に応じて、150℃72時間質量減少率が100%であって、温度93℃または66℃などの種々の温度の水に72時間浸漬後の質量の当初の質量に対する減少率が、例えば20%以下、10%以下、更には5%未満であるように設計・調製することもできる。
少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2の150℃72時間質量減少率の測定方法は以下のとおりである。すなわち、厚み、長さ及び幅各20mmに切り出した少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2の試料を、温度150℃の水(脱イオン水等)400mL中に浸漬し、72時間経過後に取り出した後に測定した試料の質量と、予め温度150℃の水に浸漬する前に測定した試料の質量(「当初の質量」)とを比較して、当初の質量に対する減少率(単位:%)を算出する。
〔66℃引張破断ひずみ〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、温度66℃における引張破断ひずみ(以下、「66℃引張破断ひずみ」ということがある。)が50%以上であることにより、フラクチャリング等の坑井処理を行うのに要する期間、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2の強度が維持され、ダウンホールの閉塞をより確実に継続できるので好ましい。すなわち、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2を使用して坑井孔の閉塞(シール)を行う場合に、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2が、ダウンホールツールの形状及びダウンホールの形状(ケーシングの形状)に確実に係合するように変形しても、具体的には大きな引張力(及び圧縮力)を受けながら変形しても、破断するおそれがないので、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2とケーシングとの当接面積が大きくなり、閉塞が確実となる。さらに、例えばフラクチャリング等のシールが必要とされる処理を実施するために、流体による極めて高い圧力が負荷されることで、大きな引張力(及び圧縮力)を受けることがあっても、流体のシールが破壊されにくい効果がある。66℃引張破断ひずみは、ISO37(JIS K6251)に準拠して、温度66℃で測定する引張破断時のひずみ(単位:%)である。66℃引張破断ひずみは、より好ましくは80%以上、更に好ましくは100%以上である。66℃引張破断ひずみは、上限値が特にないが、66℃引張破断ひずみが大きすぎると、所要の坑井処理後に少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2を分解させて強度が失われる際に小片となりにくくなる場合があることから、通常500%以下、多くの場合480%以下である。
〔66℃圧縮応力〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、温度66℃における70%ひずみ圧縮応力(以下、「66℃圧縮応力」ということがある。)が10MPa以上であることにより、フラクチャリング等の坑井処理を行うのに要する期間、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2の強度が維持され、ダウンホールの閉塞をより確実に継続できるので好ましい。すなわち、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2を使用して坑井孔の閉塞(シール)を行う場合に、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2が、ダウンホールツールの形状及びダウンホールの形状(ケーシングの形状)に確実に係合するように変形しても、具体的には大きな圧縮力(及び引張)を受けながら変形しても、破断するおそれがないので、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2とケーシングとの当接面積が大きくなり、閉塞が確実となる。さらに、例えばフラクチャリング等のシールが必要とされる処理を実施するために、流体による極めて高い圧力が負荷されることで、大きな圧縮力(及び引張力)を受けることがあっても、流体のシールが破壊されにくい効果がある。66℃圧縮応力(すなわち、温度66℃における70%ひずみ圧縮応力)は、ISO14126(JIS K7018)に準拠して、温度66℃で測定する、圧縮ひずみ70%における圧縮応力(単位:MPa)または圧縮ひずみ70%到達以前に破断する際には破断時までの最大応力値を表す。66℃圧縮応力は、好ましくは12MPa以上、更に好ましくは15MPa以上である。66℃圧縮応力は、上限値が特にないが、通常200MPa以下、多くの場合150MPa以下である。
〔66℃圧縮破断ひずみ〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、温度66℃における圧縮破断ひずみ(以下、「66℃圧縮破断ひずみ」ということがある。)が50%以上であることにより、フラクチャリング等の坑井処理を行うのに要する期間、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2の強度が維持され、ダウンホールの閉塞をより確実に継続できるので好ましい。66℃圧縮破断ひずみは、ISO14126(JIS K7018)に準拠して、温度66℃で測定する圧縮破断時のひずみ(単位:%)である。66℃圧縮破断ひずみは、好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上である。66℃圧縮破断ひずみは、上限値が100%であるが、通常99%以下である。
〔表面硬度〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、先に説明した66℃引張破断ひずみ、66℃圧縮応力及び66℃圧縮破断ひずみの所望の特性に加えてさらに、シール機能の観点から表面硬度A60〜D80の範囲であることが好ましい。少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2の表面硬度とは、ISO7619に準拠して測定されるデュロメータ硬度のタイプA(以下、「表面硬度A」または単に「硬度A」ということがある。)またはタイプD(以下、「表面硬度D」または単に「硬度D」ということがある。)で表される表面硬度を意味するものである。デュロメータ硬度としては、一般ゴム等に適合する中硬さ用のタイプA、硬質ゴム等に適合する高硬さ用のタイプD、及びスポンジ等に適合する低硬さ用のタイプEがある(例えば、硬度A100は、概ね硬度D60程度に相当することが多い。)。本発明の少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、硬度A60〜D80の範囲であることによって、更に所望によりゴム部材の構造等を併せて調整することにより、フラクチャリング等の高圧流体加圧に抗して坑井孔のシールを行うことができるよう構成することができる。少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2の表面硬度は、より好ましくは表面硬度A65〜D78、更に好ましくは表面硬度A70〜D75の範囲である。
〔23℃圧縮応力低下率〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、ドライ環境下で安定であり、温度23℃の水に6時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の1時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率(以下、「23℃圧縮応力低下率」ということがある。)が5%未満であることにより、フラクチャリング等の坑井処理を行うのに要する期間、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2の強度が維持され、ダウンホールの閉塞をより確実に継続できるので好ましい。すなわち、炭化水素資源回収のための採掘条件が多様なものとなっているもとで、予期しない短時間で、ダウンホールの閉塞(保護部材において、センサー等の保護機能)が喪失されるようなことがない。特に、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、ドライ環境下で安定であることにより、本発明の坑井掘削用プラグを坑井孔内に配置し、フラクチャリング等の坑井処理を行うに至る前段階において、シール機能(保護部材においては、保護機能)を喪失することがない。少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2の23℃圧縮応力低下率の測定方法は、先に説明した150℃24時間圧縮応力低下率の測定方法と同様であり、温度150℃の水に浸漬するのに代えて、温度23℃の水に、所要時間浸漬することにより測定することができる。23℃圧縮応力低下率は、より好ましくは4%未満、更に好ましくは3%未満である。23℃圧縮応力低下率は、下限値が0%である。なお、本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2について、「ドライ環境下で安定」であるとは、温度23℃相対湿度50%の環境下において168時間(7日間)以上、50%ひずみ圧縮応力の低下が生じないことをいう。
〔66℃圧縮応力比率〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、温度66℃において、圧縮ひずみ5%における圧縮応力(以下、「5%ひずみ圧縮応力」ということがある。)に対する、圧縮ひずみ70%における圧縮応力の比率(以下、「66℃圧縮応力比率」ということがある。)が5倍以上であることにより、フラクチャリング等の坑井処理を行うのに要する期間、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2の強度が維持され、ダウンホールの閉塞をより確実に継続できるので好ましい。すなわち、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2を使用して坑井孔の閉塞(シール)を行う場合に、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2の初期の圧縮ひずみが小さい(変形しやすい)ためダウンホールツールの形状及びダウンホールの形状(ケーシングの形状)に確実に係合するように変形可能であって、さらに、大きな圧縮力(及び引張力)を受けながら変形する際には、変形量が大きな領域でゴム部材の応力が大きく立ち上がることで、例えばゴム部材とケーシングの当接部分のゴム部材が高い圧縮応力(及び引張力)を有する状態となるので、例えばフラクチャリング等のシールが必要とされる坑井処理を実施する際に、大きな圧力等がかかっても、十分なシール性能を有し、閉塞が確実となる。66℃圧縮応力比率は、ISO14126(JIS K7018)に準拠して、温度66℃で測定するものである。66℃圧縮応力比率は、好ましくは8倍以上、更に好ましくは10倍以上である。66℃圧縮応力比率は、上限値が特にないが、通常200倍以下、多くの場合150倍以下である。なお、66℃圧縮応力比率が5倍以上である本発明の少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2は、多くの場合、他の温度、例えば室温〜177℃のような温度範囲においても、圧縮ひずみ5%における圧縮応力に対する、圧縮ひずみ70%における圧縮応力の比率が5倍以上であれば、上記の広い温度範囲においてシール機能等を果たすことができるので、より望ましいものとなる。ただし、上記の温度範囲の一部、例えば温度149℃において、上記の圧縮応力の比率が5倍未満であるような少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2でも、66℃圧縮応力比率が5倍以上であれば、実用上支障がない少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2である。
〔分解性を有するゴム材料〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられる、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材を形成する分解性を有するゴム材料としては、150℃24時間圧縮応力低下率が5%以上であるものとすることができる分解性を有するゴム材料である限り、特に限定されず、生分解性、加水分解性または更に他の何らかの方法によって化学的に分解することができる分解性のゴムとして、従来知られているゴム材料から選択して使用することができる。例えば、ウレタンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム(スチレン・ブタジエンゴム等)、アクリルゴム、脂肪族ポリエステルゴム、クロロプレンゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及びポリアミド系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する分解性を有するゴム材料が好ましく挙げられる。
また、分解性や崩壊性の観点から、加水分解性の官能基(例えば、ウレタン基、エステル基、アミド基、カルボキシル基、水酸基、シリル基、酸無水物、酸ハロゲン化物等)を有するゴムを含有する、分解性を有するゴム材料も好ましく挙げられ、さらに、ウレタン結合、エステル結合またはアミド結合の少なくとも1つの結合を有するゴムを含有する、分解性を有するゴム材料も好ましく挙げられる。特に好ましいゴム材料としては、ゴム材料の構造や硬度、架橋度等を調整したり、他の配合剤を選択したりすることによって、分解性や崩壊性の制御を容易に実施することができることから、ウレタンゴムが挙げられる。すなわち、特に好ましい分解性を有するゴム材料は、ウレタンゴムを含有するものである。また、分解性を有するゴム材料は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーまたはポリアミド系熱可塑性エラストマーを含有するものも好ましい。
なお、耐油性・耐熱性・耐水性等に優れていることから、従来、ダウンホールツール用に汎用されるゴム材料であるニトリルゴムや水添ニトリルゴムは、通常、150℃24時間圧縮応力低下率を所定の範囲内のものとすることが困難であることから、通常、本発明の拡径可能な環状のゴム部材を形成する分解性を有するゴム材料としては適しない。
上記の分解性を有するゴム材料から形成される拡径可能な環状のゴム部材は、150℃24時間圧縮応力低下率が5%以上、好ましくは20%以上、特に好ましくは70%以上であることにより、該拡径可能な環状のゴム部材は、例えば、フラクチャリング流体等が使用される土壌中の微生物によって分解される生分解性、または、フラクチャリング流体等の溶媒、特に、水によって、更に所望により酸またはアルカリによって分解する加水分解性を有することができ、または更に他の何らかの方法によって化学的に分解することができる分解性を有することができ、特に、所定温度以上の水によって分解する加水分解性を有することができる。なお、先に説明したように、重合度の低下等により本来のゴム材料が有した強度が低下して脆くなる結果、極めて小さい機械的力を加えることにより、拡径可能な環状のゴム部材が簡単に崩壊して形状を失う(崩壊性)ものでもよい。拡径可能な環状のゴム部材に特に適する特性として、フラクチャリング流体等の流体によって、所定時間後に崩壊性になること(易崩壊性)が求められることから、ウレタンゴム、アクリルゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーが好ましく使用され、単体でまたは他のゴム材料や樹脂材料と混合して使用することができる。
〔ウレタンゴム〕
本発明の拡径可能な環状のゴム部材を形成する分解性を有するゴム材料として特に好ましく使用されるウレタンゴム(「ウレタンエラストマー」ということもある。)は、分子中にウレタン結合(−NH−CO−O−)を有するゴム材料であり、通常、イソシアネート化合物と水酸基を有する化合物とを縮合して得られる。イソシアネート化合物としては、芳香族(複数の芳香族環を有してもよい。)、脂肪族、脂環族系のジ、トリ、テトラ系のポリイソシアネート類、またはこれらの混合物が用いられる。 水酸基を有する化合物として、その主鎖にエステル結合を有するポリエステル型ウレタンゴム(以下、「エステル型ウレタンゴム」ということがある。)とその主鎖にエーテル結合を有するポリエーテル型ウレタンゴム(以下、「エーテル型ウレタンゴム」ということがある。)とに大別され、分解性や崩壊性の制御がより容易であることから、エステル型ウレタンゴムが好ましい場合が多い。ウレタンゴムは合成ゴムの弾性(柔らかさ)とプラスチックの剛性(固さ)を併せ持った弾性体であり、一般に、耐摩耗性、耐薬品、耐油性に優れ、機械的強度が大きく、耐荷重性が大きく、高弾性でエネルギー吸収性が高いことが知られている。ウレタンゴムとしては、成形方法の差異によって、i)混練(ミラブル)タイプ:一般のゴムと同じ加工方法で成形できる、ii)熱可塑性タイプ:熱可塑性樹脂と同じ加工方法で成形できる、及びiii)注型タイプ:液状の原料を使用して熱硬化する加工方法で成形できる、というタイプ区分がされるが、本発明の拡径可能な環状のゴム部材を形成するウレタンゴムとしては、いずれのタイプのものも使用することができる。
〔アクリルゴム〕
本発明の拡径可能な環状のゴム部材を形成する分解性を有するゴム材料として好ましく使用されるアクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とするゴム状重合体の総称であり、アクリル酸エステルと架橋可能なモノマーとの共重合体であるACM、アクリル酸エステルとエチレンとの共重合体であるAEM、アクリル酸エステルとアクリロニトリルとの共重合体であるANM等がある。アクリルゴムは、主鎖に不飽和結合が含まれないため、化学的安定性に富み、耐熱性、耐油性、耐老化性などの特徴を有している。その一方、耐水性や耐水蒸気性に劣る特性があるため、経時で崩壊しやすく、本発明の拡径可能な環状のゴム部材を形成するゴム材料として適する。
〔ポリエステル系熱可塑性エラストマー〕
本発明の拡径可能な環状のゴム部材を形成する分解性を有するゴム材料として好ましく使用されるポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ポリエステル系ブロック共重合体を主成分としたエラストマーである。具体的には、例えばポリエステルからなるハードセグメントとポリエーテルからなるソフトセグメントとのブロック共重合体があり、ハードセグメントとして、芳香族ポリエステルや脂肪族ポリエステル、より具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヒドロキシアルカン酸等が挙げられ、ソフトセグメントとして、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルが挙げられる。またハードセグメント及びソフトセグメントがポリエステルからなるブロック共重合体があり、ハードセグメントとして、芳香族ポリエステル、より具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ソフトセグメントとしては、ハードセグメントより低弾性率の脂肪族ポリエステル、例えばアルキル鎖長が2以上のポリヒドロキシアルカン酸が挙げられる。これらのハードセグメント及びソフトセグメントは、所望のエラストマーの物性、特に所望の分解特性及び機械特性に適合するように、ハードセグメントとソフトセグメントの種類またはこれらの比率を調整することが可能であり、更に必要に応じて各種配合剤との組み合わせによって所望の物性を有するポリエステル系熱可塑性エラストマーを得ることができる。 ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、プラスチックとゴムの両特性を備えており、射出成形、押出成形、ブロー成形等の各種成形加工が可能であり、また、エステル結合を有していることにより、所定時間で崩壊しやすい特性がある。市販品として挙げられる、例えば、東洋紡株式会社製ペルプレン(登録商標)PタイプのP30B〔硬度A71。「硬度」は、ISO7619に準拠するデュロメータタイプ硬度をいう(以下、単に「硬度」ということがある。)〕、P40B(硬度A82)、P40H(硬度A89)、P55B(硬度A94)、東レ・デュポン株式会社製ハイトレル(登録商標)3046(硬度A77)、G3548L(硬度A80)、4047N(硬度A90)などは、ゴムとしては比較的硬度が高い材料であるが、ダウンホール環境において想定される高温高圧条件に適する硬度であり、拡径可能な環状のゴム部材に適するゴム部材である。また、ペルプレン(登録商標)SタイプのS1001(硬度A96)、S9001(硬度A99)やハイトレル(登録商標)6377(硬度D63)、7277(硬度D72)などは、薄肉のゴム部材としてシール用途などに適する硬度を有しており、拡径可能な環状のゴム部材に適するゴム材料である。これらのポリエステル系熱可塑性エラストマーは、単体での使用が可能であるが、更に他の熱可塑性エラストマー及び/または樹脂材料と混合して使用することもできる。
〔ポリアミド系熱可塑性エラストマー〕
本発明の拡径可能な環状のゴム部材を形成する分解性を有するゴム材料として好ましく使用されるポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ポリアミドからなるハードセグメントとポリエーテル及び/またはポリエステルからなるソフトセグメントとのブロック共重合体である。具体的には、ハードセグメントとしては、例えば、脂肪族ポリアミド、より具体的にはナイロン6、ナイロン11、ナイロン12が挙げられ、ソフトセグメントとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルが挙げられる。これらのハードセグメント及びソフトセグメントは、所望のエラストマーの物性、特に所望の分解特性及び機械特性に適合するように、ハードセグメントとソフトセグメントの種類またはこれらの比率を調整することが可能であり、更に必要に応じて各種配合剤との組み合わせによって所望の物性を有するポリアミド系熱可塑性エラストマーを得ることができる。ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ゴムとプラスチックの中間的な性質を有し、射出成形、押出成形、ブロー成形等の各種成形加工が可能であり、また、アミド結合を有していることにより、高温高圧下で加水分解を生じ、易崩壊となる特性がある。市販品としては、株式会社T&K TOKA製TPAE−12(硬度D12)、TPAE−38(硬度D32)、TPAE−10(硬度D41)、TPAE−23(硬度D62)、PA−260(硬度D69)などが挙げられ、薄肉のゴム部材としてシール用途などに適する硬度を有するので、拡径可能な環状のゴム部材に適するゴム材料である。これらのポリアミド系熱可塑性エラストマーは、単体での使用が可能であるが、更に他の熱可塑性エラストマー及び/または樹脂材料と混合して使用することもできる。
〔ウレタンゴムの具体例〕
特に好ましいウレタンゴムの具体例としては、硬度A80のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(未架橋タイプ)、硬度A80のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(架橋タイプ)、硬度A85のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(未架橋タイプ)、硬度A85のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(架橋タイプ)、硬度A90のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(未架橋タイプ)、硬度A90のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(架橋タイプ)、硬度A95のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(未架橋タイプ)、硬度A95のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(架橋タイプ)、硬度D74のラクトン系エステル型熱可塑性ウレタンゴム(架橋タイプ)などを挙げることができ、更に、硬度A70のエステル型熱硬化性ウレタンゴム〔加水分解抑制剤としてスタバクゾール(登録商標)を添加〕、硬度A82のエステル型熱硬化性ウレタンゴム(加水分解抑制剤未添加)、硬度A82のエステル型熱硬化性ウレタンゴム(上記加水分解抑制剤を添加)、硬度A90のエステル型熱硬化性ウレタンゴム(上記加水分解抑制剤を添加)、硬度A90のエステル型熱硬化性ウレタンゴム(加水分解抑制剤未添加)などを挙げることができる。
上記のウレタンゴムのいくつかの具体例について、更に詳述する。
1)硬度A85のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(未架橋タイプ)を使用して、150℃24時間圧縮応力低下率が100%である拡径可能な環状のゴム部材を調製することができる。このゴム部材について、温度121℃の水に所定時間浸漬した後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率(以下、「121℃における圧縮応力低下率」ということがある。)を測定したところ、24時間浸漬後21%、48時間及び72時間浸漬後は100%であり、48時間及び72時間浸漬後の試験片は、50%ひずみ圧縮応力試験後に試験片の割れが発生し、形状も戻らないものであることが分かった。
2)硬度A85のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(架橋タイプ)を使用して、150℃24時間圧縮応力低下率が41%である拡径可能な環状のゴム部材を調製することができる。このゴム部材について、121℃における圧縮応力低下率を測定したところ、24時間浸漬後1%、48時間浸漬後1%、72時間浸漬後100%であり、72時間浸漬後の試験片は、50%ひずみ圧縮応力試験後に試験片の割れが発生し、形状も戻らないものであることが分かった。さらにこのゴム部材の66℃引張破断ひずみは414%、66℃圧縮応力は41MPa、66℃圧縮破断ひずみは95%以上であり、さらにドライ環境下で安定であり、23℃圧縮応力低下率が0%、66℃圧縮応力比率が20倍、150℃72時間質量減少率が72%であった。
3)硬度A95のエステル型熱可塑性ウレタンゴム(架橋タイプ)を使用して、150℃24時間圧縮応力低下率が100%である拡径可能な環状のゴム部材を調製することができる。
4)硬度A82のエステル型熱硬化性ウレタンゴム(加水分解抑制剤未添加)を使用して、150℃24時間圧縮応力低下率が100%である拡径可能な環状ゴム部材を調製することができる。このゴム部材について、温度93℃の水に所定時間浸漬した後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率(以下、「93℃における圧縮応力低下率」ということがある。)を測定したところ、24時間浸漬後8%、72時間浸漬後27%、168時間浸漬後100%、336時間浸漬後100%であり、168時間及び336時間浸漬後の試験片は、50%ひずみ圧縮応力試験中に試験片の割れ及び潰れが発生した。なお、このゴム部材について、温度66℃の水に所定時間浸漬した後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率(以下、「66℃における圧縮応力低下率」ということがある。)を測定したところ、24時間浸漬後に5%以下であった。
5)硬度A90のエステル型熱硬化性ウレタンゴム(上記の加水分解抑制剤を添加)を使用して、150℃24時間圧縮応力低下率が100%である拡径可能な環状のゴム部材を調製することができる。このゴム部材の93℃における圧縮応力低下率は、24時間浸漬後28%、72時間浸漬後44%、168時間浸漬後50%、336時間浸漬後100%であり、336時間浸漬後の試験片は、50%ひずみ圧縮応力試験後に試験片の割れが発生し、形状も戻らないものであることが分かった。
6)硬度A90のエステル型熱硬化性ウレタンゴム(加水分解抑制剤未添加)を使用して、150℃24時間圧縮応力低下率が100%である拡径可能な環状のゴム部材を調製することができる。このゴム部材の93℃における圧縮応力低下率は、24時間浸漬後20%、72時間浸漬後40%、168時間浸漬後100%、336時間浸漬後100%であり、168時間及び336時間浸漬後の試験片は、50%ひずみ圧縮応力試験中に試験片の割れ及び潰れが発生した。さらに、このゴム部材について、温度80℃の水に所定時間浸漬した後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率(以下、「80℃における圧縮応力低下率」ということがある。)は、24時間浸漬後9%、72時間浸漬後11%、168時間浸漬後23%、336時間浸漬後49%であった。また、このゴム部材の66℃における圧縮応力低下率は、24時間浸漬後に5%以下であった。
〔他の配合成分〕
本発明の拡径可能な環状のゴム部材としては、分解性を有するゴム材料、特に好ましくはウレタンゴムに加えて、本発明の目的を阻害しない範囲で、更に他の配合成分として、他の種類のゴム材料や樹脂材料、強化材、安定剤、分解促進剤または分解抑制剤等の各種添加剤を含有させ、または配合するゴム材料組成物としてもよい。また、所望により、顔料や染料を添加することにより、例えばブランドカラー等、種々の識別機能を有する着色された拡径可能な環状のゴム部材とすることもできる。特に、他の配合成分として、分解性材料を含有させることにより、本発明の拡径可能な環状のゴム部材の分解性や崩壊性を増加させたり、所望に応じて調整したりすることができる。例えば、拡径可能な環状のゴム部材に他の配合成分として含有される分解性材料が分解することにより、拡径可能な環状のゴム部材自体が、元の強度を失ったり、元の形状を失ったりして崩壊性のものとなるようにすることができる。他の配合成分として含有させる分解性材料としては、PGA、PLA、PGLA等の脂肪族ポリエステルなど公知の分解性樹脂、またはそれらの混合物などが挙げられる。また、本発明の拡径可能な環状のゴム部材としては、例えばウレタンゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマーまたはポリアミド系熱可塑性エラストマー等(以下、「ウレタンゴム等」ということがある。)100質量部に対して、ニトリルゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム(スチレン・ブタジエンゴム等)、フッ素ゴム、シリコーンゴムなどの他のゴム材料を5〜150質量部、好ましくは10〜100質量部の範囲でブレンドして使用することができる。例えば、ニトリルゴムは、先に説明したように、通常、150℃24時間圧縮応力低下率を所定の範囲内のものとすることが困難なゴム材料であるが、150℃24時間圧縮応力低下率が大きい分解性を有するゴム材料であるウレタンゴムとブレンドして使用し拡径可能な環状のゴム部材を得ると、ウレタンゴムが容易に分解または崩壊することによって、ニトリルゴムも形状を維持することが不可能となるので、比較的容易に拡径可能な環状のゴム部材、及び坑井掘削用プラグを回収できるようになる場合がある。
〔強化材〕
本発明の拡径可能な環状のゴム部材としては、分解性を有するゴム材料、好ましくはウレタンゴム等に加えて、特に、他の配合成分として強化材を含有することが好ましいことがある。強化材としては、先にマンドレル1について説明したと同様の、従来、機械的強度や耐熱性の向上を目的として樹脂材料等の強化材として使用されている材料を使用することができ、先にマンドレル1について説明した繊維状強化材や、粒状または粉末状強化材を使用することができる。強化材は、分解性を有するゴム材料、好ましくはウレタンゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマーまたはポリアミド系熱可塑性エラストマー等100質量部に対して、通常150質量部以下、好ましくは10〜100質量部の範囲で含有させることができる。
拡径可能な環状のゴム部材2は、上記した機能を有するものである限り、その形状及び構造に制限はない。例えば、マンドレル1の軸方向に直交する周方向の断面が逆U字形の形状を有する拡径可能な環状のゴム部材2とすることにより、U字の先端部分がマンドレル1の軸方向に圧縮されるのに伴って逆U字形の頂点部に向かうように拡径することができる。
拡径可能な環状のゴム部材2は、拡径したときに坑井孔の内壁H及びマンドレル1の外周面に当接してプラグと坑井孔との間の空間を閉塞(シール)するとともに、拡径しないときにはプラグと坑井孔との間に空隙が存在するものであることから、拡径可能な環状のゴム部材2は、マンドレル1の軸方向の長さが、マンドレル1の長さに対して、好ましくは10〜90%、より好ましくは15〜80%である。拡径可能な環状のゴム部材2は、上記のマンドレル1の軸方向の長さを有することにより、拡径可能な環状のゴム部材2を備える坑井掘削用プラグに十分なシール機能を付与するとともに、シール後には坑井孔とプラグとの固定補助の機能を果たすことができる。
本発明の坑井掘削用プラグは、分解性を有するゴム材料から形成される拡径可能な環状のゴム部材2を複数備えることができ、これによりプラグと坑井孔との間の空間を複数の位置で閉塞(シール)することができ、また、坑井孔とプラグとの固定補助の機能をより確実に果たすことができる。なお、本発明の坑井掘削用プラグが、拡径可能な環状のゴム部材2を複数備える場合、先に説明した拡径可能な環状のゴム部材2のマンドレル1の軸方向の長さとは、複数の拡径可能な環状のゴム部材2のマンドレル1の軸方向の長さの合計を意味する。本発明の坑井掘削用プラグは、拡径可能な環状のゴム部材2を複数備える場合、複数の拡径可能な環状のゴム部材2は、同一の材料、形状または構造を有するものでもよいし、それらが異なるものでもよい。また、複数の拡径可能な環状のゴム部材2を、後に詳述する1対のリング5、5’の間の位置に、隣接してまたは離隔して置かれたものとしてもよいし、複数の1対のリング5、5’の各々の対の間の位置に置かれたものとしてもよい。
拡径可能な環状のゴム部材2は、例えば、積層ゴムなど複数のゴム部材から形成される構造のゴム部材であってもよいし、軸方向に組成または硬度等の機械的物性などが異なるゴム部材等を配置して形成される構造のゴム部材であってもよい。また、拡径したときにプラグとダウンホールとの間の空間の閉塞(シール)や坑井孔とプラグとの固定補助を一層確実なものとするために、拡径可能な環状のゴム部材2の坑井孔の内壁Hとの当接部に、1以上の溝、凸部、粗面(ギザギザ)などを設けてもよい。
3.スリップ、及びウエッジ
本発明の坑井掘削用プラグは、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つのスリップ(slip)3を備えるものである。スリップ3は、楔状のウエッジ(wedge)4と組み合わせて備えられるものでもよい。すなわち、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つのウエッジ4を備える坑井掘削用プラグが好ましい。スリップ3、及び、好ましくはスリップ3とウエッジ4との組み合わせは、プラグと坑井孔との固定を行う手段として、坑井掘削用プラグにおいてそれ自体周知のものである。すなわち、金属、無機物等の材料から形成されるスリップ3が、複合材等の材料から形成されるウエッジ4の斜面の上面に摺動可能に接触して置かれ、ウエッジ4に、既に説明した方法によりマンドレル1の軸方向の力が加えられることにより、スリップ3がマンドレルの軸方向と直交する外方に移動し、坑井孔の内壁Hに当接して、プラグと坑井孔の内壁Hとの固定を行う。
スリップ3は、マンドレルの軸方向と直交する外方に移動し、坑井孔の内壁Hに当接して、プラグと坑井孔の内壁Hとの固定を行う機能を果たすことができる限り、ウエッジ4と組み合わせて備えられることは必ずしも必要でない。
スリップ3には、プラグと坑井孔との間の空間の閉塞(シール)を一層確実なものとするために、坑井孔の内壁Hとの当接部に、1以上の溝、凸部、粗面(ギザギザ)などを設けてもよい。また、スリップ3は、予めマンドレル1の軸方向に直交する円周方向において所定の数に分割されているものでもよいし、図1に示すように、予め所定の数に分割されてはおらず、軸方向に沿う一端部から他端部に向かい途中で終了する切れ目を有するものでもよい(スリップ3がウエッジ4と組み合わせて備えられる場合は、ウエッジ4にマンドレル1の軸方向の力が加えられて、ウエッジ4がスリップ3の下面に進入することにより、スリップ3が、前記の切れ目及びその延長線に沿って割られて分割し、次いでスリップ3の各分割片がマンドレル1の軸方向と直交する外方に移動する。)。
本発明の坑井掘削用プラグとしては、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた1対のリング5、5’を備え、少なくとも1つの分解性を有するゴム材料から形成される拡径可能な環状のゴム部材2が該1対のリング5、5’の間に備えられる坑井掘削用プラグが好ましい。すなわち、前記の坑井掘削用プラグによれば、例えば、スリップ3、またはスリップ3とウエッジ4との組み合わせを、拡径可能な環状のゴム部材2と隣接して置かれるものとすることにより、スリップ3、またはスリップ3とウエッジ4との組み合わせに対して、マンドレル1の軸方向の力を加えることが容易となる。
本発明の坑井掘削用プラグは、図1に示すように、スリップ3とウエッジ4との組み合わせを複数備えるものとすることができ(スリップ3、3’及びウエッジ4、4’との組み合わせ)、その場合、拡径可能な環状のゴム部材2を挟むように隣接して置かれてもよいし、その他の配置で置かれてもよい。本発明の坑井掘削用プラグが、拡径可能な環状のゴム部材2を複数備えるものである場合は、スリップ3、3’とウエッジ4、4’との組み合わせの、複数の拡径可能な環状のゴム部材2に対する配置は、所望により適宜選択することができる。
〔分解性材料〕
本発明の坑井掘削用プラグに備えられるスリップ3、好ましくはスリップ3とウエッジ4との組み合わせ(スリップ3とウエッジ4との組み合わせを複数備える場合のスリップ3、3’とウエッジ4、4’との組み合わせを含む。)は、スリップ3によりプラグをダウンホールに固定することができる限り、所望により、スリップ3またはウエッジ4の一方または両方を、分解性材料から形成されるものとしてもよく、また、スリップ3またはウエッジ4の一方または両方を、強化材を含有する複合材(強化樹脂)としてもよい。さらに、分解性材料に対して金属や無機物の部材を組み込んだものでもよい。分解性材料または強化材としては、既に説明した材料を使用することができる。
したがって、スリップ3またはウエッジ4の一方または両方は、分解性材料から形成されたものでもよいし、従来と同様に、金属または無機物の少なくとも一方を含有する材料から形成されたものでもよい。さらに、スリップ3またはウエッジ4の一方または両方は、分解性材料に対して金属や無機物の部材を組み込んだもの、すなわち、分解性材料と、金属または無機物の少なくとも一方を含有する材料とから形成されたもの(分解性材料と金属または無機物の複合材)でもよい。
分解性材料と金属または無機物の複合材であるスリップ3またはウエッジ4の具体例としては、PGAを始めとする分解性樹脂等の分解性材料からなる母材に、所定形状の窪みを設け、窪みの形状に合致する形状の金属(金属片等)または無機物をはめ込んで、これらを接着剤で固定したり、金属片や無機物と母材が固定状態を維持できるように針金、繊維等を巻きつけて固定したりしてなるスリップ3またはウエッジ4が挙げられる。このスリップ3とウエッジ4との組み合わせは、作動時において、スリップ3の母材が、ウェッジ4の上部に乗り上げることにより、金属片や無機物が坑井孔の内壁Hに接することで、坑井内に坑井掘削用プラグを固定する機能を有するものである。
4.リング
既に説明したように、本発明の坑井掘削用プラグとしては、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた1対のリング5、5’を備え、少なくとも1つの分解性を有するゴム材料から形成される拡径可能な環状のゴム部材2が該1対のリング5、5’の間に備えられる坑井掘削用プラグが好ましい。本発明の坑井掘削用プラグは、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材2及び少なくとも1つのスリップ3とを備えることにより、プラグとダウンホールとの間において、空間の閉塞と固定を行うことができるものである。本発明の坑井掘削用プラグは、更に前記の1対のリング5、5’を備えることにより、1対のリング5、5’が、マンドレル1の軸方向と直交する外周面上に置かれた、拡径可能な環状のゴム部材2、及び/または、スリップ3に対して、所望によってはウエッジ4を介して、マンドレル1の軸方向の力を効率的に加えることができる。すなわち、1対のリング5、5’を、マンドレル1の外周面上においてマンドレル1の軸方向に沿って摺動が可能で、相互の間隔(距離)を変更することができるように構成し、かつ、拡径可能な環状のゴム部材2、及び/または、スリップ3、3’のマンドレル1の軸方向に沿う端部に、直接または間接的に、例えば、所望により備えられるウエッジ4、4’を介して(図1においては、スリップ3、3’とウエッジ4、4’との組み合わせとして)、当接するように構成することにより、これらにマンドレル1の軸方向の力を容易に加えることができる。
1対のリング5、5’の各々のリングの形状や大きさは、上記した機能を果たすことができる限り、特に制限されないが、拡径可能な環状のゴム部材2に対して、及び/または、スリップ3、3’に対し、所望によってはウエッジ4、4’を介在して、マンドレル1の軸方向の力を有効に加えることができる観点から、リングのこれらに当接する側の端面を平面状とすることが好ましい。1対のリング5、5’の各々のリングは、マンドレル1の外周面を完全に取り囲む円環状のものが好ましいが、周方向に切れ目や変形箇所を有するものでもよい。また、円環を周方向に分離した形状のものとして、所望により円環を形成するようにしたものでもよい。1対のリング5、5’の各々のリングは、複数のリングを軸方向に隣接して置くことにより、幅広の(マンドレル1の軸方向の長さが大きい。)リングとすることもできる。さらに、拡径可能な環状のゴム部材2に対して、及び/または、スリップ3、3’に対し、所望によってはウエッジ4、4’を介在して、マンドレル1の軸方向の力を有効に加えるのに寄与する部材を含めて、本発明の坑井掘削用プラグにおける1対のリング5、5’を形成するリングであるといってもよい。
1対のリング5、5’は、同じまたは類似の形状や構造を有するものでもよいし、形状や構造が異なるものでもよい。例えば、1対のリング5、5’の各々のリングは、マンドレル1の軸方向の長さや外径が異なるものでもよい。また例えば、1対のリング5、5’の一方のリングを、所望によりマンドレル1に対して摺動することができない状態に構成することができる。この場合、1対のリング5、5’の他方のリングがマンドレル1の外周面上を摺動して、拡径可能な環状のゴム部材2、及び/または、スリップ3、3’と所望により置かれるウエッジ4、4’との組み合わせの軸方向に沿う端部に当接する。1対のリング5、5’の一方のリングを、所望によりマンドレル1に対して摺動することができない状態にする構成は、特に制限されないが、例えば、マンドレル1と、1対のリング5、5’の一方のリングとが一体に形成されているものとしたり(この場合は、当該リングは、マンドレル1に対して常時摺動することができない。)、ドッグクラッチ等のクラッチ構造やはめ合い構造を利用するものとしたり(この場合は、マンドレル1に対して摺動する状態と摺動することができない状態とを切り替えることができる。)することができる。マンドレル1と、1対のリング5、5’の一方のリングとが一体に形成されている坑井掘削用プラグとしては、一体成形により形成される坑井掘削用プラグ、または、機械加工により形成される坑井掘削用プラグが提供される。
更にまた、本発明の坑井掘削用プラグは、1対のリング5、5’を複数対備えるものでもよい。この場合、拡径可能な環状のゴム部材2、及び/または、所望により置かれるスリップ3、3’ と所望により置かれるウエッジ4、4’との組み合わせの、それぞれの1つ以上を別々にまたは組み合わせて、複数対のリングの間の位置に置かれるようにすることもできる。
〔分解性材料〕
1対のリング5、5’は、前記の拡径可能な環状のゴム部材2、及び/または、スリップ3に対して、所望によってはウエッジ4を介して、マンドレル1の軸方向の力を効率的に加えることができる限り、それを形成する材料は、特に限定されないが、少なくとも一方のリング(5または5’)を分解性材料から形成されるものとすることもできる。1対のリング5、5’の少なくとも一方のリングを形成する分解性材料としては、先にマンドレル1について説明したのと同様の分解性材料を使用することができる。したがって、1対のリング5、5’の少なくとも一方を形成する分解性材料は、好ましくは分解性樹脂であり、より好ましくは脂肪族ポリエステル、更に好ましくはポリグリコール酸である。また、分解性材料は、強化材を含有するものであってもよく、特に、強化材を含有する脂肪族ポリエステルから形成されるものとすることもできる。
1対のリング5、5’の両方のリングが分解性材料から形成されるものである場合、分解性材料の樹脂の種類や組成は、同一でもよいし、異なるものでもよい。1対のリング5、5’が、一方が分解性材料から形成されるものである場合、他方のリングを形成する材料としては、アルミニウム、鉄等の金属や強化樹脂等の複合材を使用することができる。
5.坑井掘削用プラグ
本発明の坑井掘削用プラグは、マンドレルと、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材及び少なくとも1つのスリップとを備える坑井掘削用プラグであって、(i)マンドレルは、分解性材料から形成され、かつ、(ii)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、温度150℃の水に24時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が5%以上である、分解性を有するゴム材料から形成されることを特徴とする坑井掘削用プラグである。本発明の坑井掘削用プラグは、既に説明したように、スリップ3と組み合わせるウエッジ4や、1対のリング5、5’、更にその他の通常坑井掘削用プラグに備えられることがある部材を備えることができる。例えば、マンドレル1が、軸方向に沿う中空部を有する場合、中空部に置かれ、流体の流れを制御するボール(金属、樹脂等の材料から形成され、分解性材料から形成されてもよい。)を備えることができる。また、坑井掘削用プラグ及び/またはその部材を、それぞれまたは他の部材に結合したり開放したりするための部材、例えば、回転止め部材などを備えることができる。本発明の坑井掘削用プラグは、そのすべてを分解性材料から形成されるものとすることもできる。
〔坑井孔の閉塞〕
本発明の坑井掘削用プラグは、例えば、1対のリング5、5’にマンドレル1の軸方向の力を加えることにより、拡径可能な環状のゴム部材2にマンドレル1の軸方向の力を伝達し、その結果、拡径可能な環状のゴム部材2がマンドレル1の軸方向に圧縮されて、軸方向の距離が縮小(縮径)することに伴い、拡径可能な環状のゴム部材2が、マンドレル1の軸方向と直交する方向に拡径する。該環状のゴム部材2は、拡径して、軸方向に直交する方向の外方部がダウンホールの内壁Hと当接するとともに、軸方向に直交する方向の内方部がマンドレル1の外周面に当接することにより、プラグと坑井孔との間の空間を閉塞(シール)することができる(坑井孔の閉塞)。次いで、プラグと坑井孔との間の空間を閉塞(シール)した状態で、フラクチャリングを行うことができる。フラクチャリングが終了した後は、拡径可能な環状のゴム部材2は、拡径した状態のまま坑井孔内に残置され、スリップ3、3’及び所望により備えられるウエッジ4、4’との組み合わせと共同することにより、坑井掘削用プラグを坑井孔の所定位置に固定することができる。なお、坑井掘削用プラグの部材が短時間で分解してしまうような高温環境にあるダウンホール内において、上記した閉塞(シール)等を行う場合には、地上から流体を注入して(cooldown injection)、坑井掘削用プラグの周辺温度を低下させた状態にコントロールすることによって、所望の時間、シール性能(強度等)を維持するような処理方法を採用することができる。
〔坑井掘削用プラグの分解〕
本発明の坑井掘削用プラグは、所定の諸区画のフラクチャリングが終了した後、通常は、坑井の掘削が終了して坑井が完成し、石油や天然ガス等の生産を開始するときに、生分解、加水分解または更に他の何らかの方法による化学的な分解により、少なくともマンドレル1及び拡径可能な環状のゴム部材2を、所望によっては更に1対のリング5、5’等を、容易に分解して除去することができる。したがって、本発明の坑井掘削用プラグによれば、従来、坑井完成後に、坑井内に残置されていた多数の坑井掘削用プラグを除去、回収したり、破砕、穿孔その他の方法によって、破壊したり、小片化したりするために要していた多くの経費と時間が不要となるので、坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができる。なお、坑井処理が終了した後に残存する坑井掘削用プラグの部材は、生産を開始するまでに完全に消失していることが好ましいが、完全に消失していないとしても、強度が低下してダウンホール中の水流等の刺激により崩壊するような状態となれば、崩壊した坑井掘削用プラグの部材は、フローバックなどにより容易に回収することができ、ダウンホールやフラクチャに目詰まりを生じさせることがないので、石油や天然ガス等の生産障害となることがない。また通常、ダウンホールの温度が高い方が、短時間で坑井掘削用プラグの部材の分解や強度低下が進行する。なお、坑井によっては地層中の含水量が低いことがあり、その場合にはフラクチャリング時に使用した水ベースの流体を、フラクチャリング後に回収することなく坑井中に残留させることで、坑井掘削用プラグの分解を促進させることができる。
また、坑井掘削用プラグが、坑井処理流体中において、分解性材料から形成される部材の厚みが0になる時間と、分解性を有するゴム材料から形成される拡径可能な環状のゴム部材2の温度150℃の水に24時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が50%以上となる時間との差(以下、「分解時間差」ということがある。)が、0時間以上2週間以内であるものであると、閉塞(シール)の解除とともに、坑井掘削用プラグの除去や消失が、坑井掘削用プラグを形成する部材の多くについてほぼ同時に進行するので好ましい。分解時間差は、その値が小さくなることで工程の時間短縮を図ることができ有利となることがあり、より好ましくは7日以内、更に好ましくは3日以内、最も好ましくは1日以内である。分解時間差を小さくするためには、例えば、分解性材料から形成される部材においては、部材厚みの調整、最適な分解性材料の選定、分解速度の調整などにより対応可能であり、拡径可能な環状のゴム部材2においては、最適なゴム部材の選定、分解速度の調整などにより対応可能である。また特に、分解性材料から形成される部材がマンドレル1であることにより、マンドレル1と拡径可能な環状のゴム部材2とを、ほぼ同時に消失させることができるので望ましい。さらに、坑井掘削用プラグにおいて、マンドレル1やその他の主要な部材を、分解性材料から形成される部材として、上記の分解時間差を0時間以上2週間以内であるものとすることにより、所定時間経過後にほぼ全ての部材が消失・崩壊するので、一層望ましい。なお、分解性材料から形成される部材の厚みが0になる時間、及び、拡径可能な環状のゴム部材2の温度150℃の水に24時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が50%以上となる時間の測定方法は、先に、マンドレル1及び拡径可能な環状のゴム部材2について説明した方法に準じて行うことができる。
II.坑井掘削用プラグの製造方法
本発明の坑井掘削用プラグは、先に説明したマンドレル、拡径可能な環状のゴム部材、及びスリップを備えることを特徴とする坑井掘削用プラグを製造することができる限り、その製造方法は限定されない。例えば、射出成形、押出成形(固化押出成形を含む。)、遠心成形、圧縮成形その他の公知の成形方法により、坑井掘削用プラグに備えられる各部材を成形し、得られた各部材を、必要に応じて切削加工や穿孔等の機械加工した後に、それ自体公知の方法によって組み合わせて、坑井掘削用プラグを得ることができる。
III.坑井掘削方法
本発明の坑井掘削用プラグを使用して、坑井孔の目止め処理を行った後に、坑井掘削用プラグの一部または全部を分解する坑井掘削方法によれば、所定の諸区画のフラクチャリングが終了し、または、坑井の掘削が終了して坑井が完成し、石油や天然ガス等の生産を開始するときには、生分解、加水分解または更に他の何らかの方法による化学的な分解により、少なくともマンドレル、及び、坑井孔を閉塞している拡径可能な環状のゴム部材を、所望によっては更に、坑井孔を閉塞しているスリップを、容易に分解して除去することができる。この結果、本発明の坑井掘削方法によれば、従来、坑井完成後に、坑井内に残置されていた多数の坑井掘削用プラグまたはその部材を除去、回収したり、破砕、穿孔その他の方法によって、破壊したり、小片化したりするために要していた多くの経費と時間が不要となるので、坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができる。
本発明は、マンドレルと、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材及び少なくとも1つのスリップとを備える坑井掘削用プラグであって、(i)マンドレルは、分解性材料から形成され、かつ、(ii)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、温度150℃の水に24時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が5%以上である、分解性を有するゴム材料から形成されることを特徴とする坑井掘削用プラグであることによって、高深度化など採掘条件がますます過酷なものとなっているもとで、確実に坑井孔の閉塞及びフラクチャリングを行うことができ、かつ、その除去や流路の確保を容易にすることにより坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができるので、産業上の利用可能性が高い。
また、本発明によれば、前記の坑井掘削用プラグを使用して、坑井孔の目止め処理を行った後に、坑井掘削用プラグの一部または全部が分解されることを特徴とする坑井掘削方法であることにより、確実に坑井孔の閉塞及びフラクチャリングを行うことができ、かつ、その除去や流路の確保を容易にすることにより坑井掘削の経費軽減や工程短縮ができる坑井掘削方法が提供されるので、産業上の利用可能性が高い。
1 : マンドレル
2 : 拡径可能な環状のゴム部材
3、3’ : スリップ
4、4’ : ウエッジ
5、5’ : リング
H : ダウンホール(坑井孔)の内壁

Claims (26)

  1. マンドレルと、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材及び少なくとも1つのスリップとを備える坑井掘削用プラグであって、
    (i)マンドレルは、重量平均分子量が180000〜300000、かつ、温度270℃、せん断速度122sec -1 で測定した溶融粘度が700〜2000Pa・sであるポリグリコール酸を含有する分解性材料から形成され、かつ、
    (ii)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、温度150℃の水に24時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が5%以上である、分解性を有するゴム材料から形成される
    ことを特徴とする坑井掘削用プラグ。
  2. (ii’)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、温度150℃の水に72時間浸漬後の質量の、浸漬前の質量に対する減少率が5〜100%である、分解性を有するゴム材料から形成される請求項1記載の坑井掘削用プラグ。
  3. マンドレルと、マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材及び少なくとも1つのスリップとを備える坑井掘削用プラグであって、
    (i)マンドレルは、重量平均分子量が180000〜300000、かつ、温度270℃、せん断速度122sec -1 で測定した溶融粘度が700〜2000Pa・sであるポリグリコール酸を含有する分解性材料から形成され、かつ、
    (ii’)少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、温度150℃の水に72時間浸漬後の質量の、浸漬前の質量に対する減少率が5〜100%である、分解性を有するゴム材料から形成される
    ことを特徴とする坑井掘削用プラグ。
  4. 少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、温度66℃における引張破断ひずみが50%以上、70%ひずみ圧縮応力が10MPa以上かつ圧縮破断ひずみが50%以上である、分解性を有するゴム材料から形成される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  5. 少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、硬度がA60〜D80の範囲内である請求項4記載の坑井掘削用プラグ。
  6. 少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、分解性を有するゴム材料から形成され、ドライ環境下で安定であり、温度23℃の水に6時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の1時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が5%未満である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  7. 少なくとも1つの拡径可能な環状のゴム部材は、分解性を有するゴム材料から形成され、温度66℃において、圧縮ひずみ5%における圧縮応力に対する、圧縮ひずみ70%における圧縮応力の比率が5倍以上である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  8. マンドレルは、温度66℃におけるせん断応力が30MPa以上である分解性材料から形成される請求項1乃至7のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  9. マンドレルは、温度66℃の水に1時間浸漬後の厚み減少が5mm未満であって、温度149℃の水に24時間浸漬後の厚み減少が10mm以上である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  10. マンドレルは、温度66℃における引張耐荷重が5kN以上である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  11. マンドレルが、分解性材料を含有する複合材からなる請求項1乃至10のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  12. 分解性を有するゴム材料は、ウレタンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、アクリルゴム、脂肪族ポリエステルゴム、クロロプレンゴム、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及びポリアミド系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1乃至11のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  13. 分解性を有するゴム材料は、加水分解性の官能基を有するゴムを含有する請求項1乃至12のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  14. 分解性を有するゴム材料は、ウレタン結合、エステル結合またはアミド結合の少なくとも1つの結合を有するゴムを含有する請求項1乃至13のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  15. 分解性を有するゴム材料は、ウレタンゴムを含有する請求項1乃至14のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  16. 分解性を有するゴム材料は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含有する請求項1乃至14のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  17. 分解性を有するゴム材料は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含有する請求項1乃至14のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  18. 拡径可能な環状のゴム部材は、マンドレルの軸方向の長さが、マンドレルの長さに対して10〜90%である請求項1乃至17のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  19. 分解性材料及び/または分解性を有するゴム材料は、強化材を含有する請求項1乃至18のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  20. マンドレルが、軸方向に沿う中空部を少なくとも一部に有する請求項1乃至19のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  21. マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた、少なくとも1つのウエッジを備える請求項1乃至20のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  22. 分解性を有するゴム材料から形成される拡径可能な環状のゴム部材を複数備える請求項1乃至21のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  23. マンドレルの軸方向と直交する外周面上に置かれた1対のリングを備え、少なくとも1つの分解性を有するゴム材料から形成される拡径可能な環状のゴム部材が該1対のリングの間に備えられる請求項1乃至22のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  24. 坑井処理流体中において、分解性材料から形成される部材の厚みが0になる時間と、分解性を有するゴム材料から形成される拡径可能な環状のゴム部材の温度150℃の水に24時間浸漬後の50%ひずみ圧縮応力の、浸漬前の50%ひずみ圧縮応力に対する低下率が50%以上となる時間との差が、0時間以上2週間以内である請求項1乃至23のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグ。
  25. 分解性材料から形成される部材がマンドレルである請求項24記載の坑井掘削用プラグ。
  26. 請求項1乃至25のいずれか1項に記載の坑井掘削用プラグを使用して、坑井孔の目止め処理を行った後に、坑井掘削用プラグの一部または全部が分解されることを特徴とする坑井掘削方法。
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