JP6358557B2 - リアクトル、磁性体、コンバータ、および電力変換装置 - Google Patents
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Description
最初に本発明に係る実施形態の内容を列記して説明する。
以下、実施形態に係る磁性体を説明し、次いでその磁性体を用いたリアクトルを説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるわけではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が含まれることを意図する。
本実施形態の磁性体は、Fe−Si合金の複数の軟磁性金属粒子が樹脂中に分散された磁性体である。その最も特徴とするところは、磁性体における軟磁性金属粒子の含有量、軟磁性金属粒子の平均粒径d50、および軟磁性金属粒子におけるSi含有量の三つのパラメーターが下記所定範囲に限定されていることである。その結果として、本実施形態の磁性体の磁歪量λp−pは、非常に低い値に抑えられる。三つのパラメーターのいずれか一つであっても下記所定範囲を外れると、磁性体の磁歪量λp−pは、高い値になる傾向にある。
本実施形態における磁性体では、軟磁性金属粒子の材質として、Fe−Si合金を利用する。そのFe−Si合金におけるSi含有量は、4.5質量%以上、8.0質量%未満とする。好ましいSi含有量は、6.0質量%以上、8.0質量%未満であり、より好ましいSi含有量は、6.0質量%以上、7.0質量%以下であり、さらに好ましいSi含有量は、6.0質量%以上、7.0質量%未満である。
軟磁性金属粒子が分散される樹脂としては、熱硬化性樹脂、光(紫外線)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが利用できる可能性がある。
磁性体における軟磁性金属粒子の含有量は、50体積%以上、85体積%以下とする。好ましい軟磁性金属粒子の含有量は、50体積%以上、75体積%以下であり、より好ましい軟磁性金属粒子の含有量は、55体積%以上、65体積%以下である。磁性体における軟磁性金属粒子以外の部分は、基本的に樹脂で構成されていると考えて良いが、微量であれば、フィラーなどの樹脂以外の物を含んでいても良い。
磁性体に係る三つのパラメーターは、上述した所定範囲内で適宜選択することができる。例えば、下記磁性体の磁歪量λp−pは、磁束密度=0.6T、周波数=500Hzの交番磁界下で0.9ppm以下となる。
・軟磁性金属粒子の含有量=50体積%以上、85体積%以下
・軟磁性金属粒子のSi含有量=4.5質量%以上、8.0質量%未満
・軟磁性金属粒子の平均粒径d50=20μm以上、100μm以下
・軟磁性金属粒子の含有量=50体積%以上、75体積%以下
・軟磁性金属粒子のSi含有量=6.0質量%以上、8.0質量%未満
・軟磁性金属粒子の平均粒径d50=20μm以上、100μm以下
・軟磁性金属粒子の含有量=55体積%以上、65体積%以下
・軟磁性金属粒子のSi含有量=6.0質量%以上、7.0質量%未満
・軟磁性金属粒子の平均粒径d50=55μm以上、90μm以下
・軟磁性金属粒子の含有量=60体積%以上、65体積%以下
・軟磁性金属粒子のSi含有量=6.0質量%以上、7.0質量%未満
・軟磁性金属粒子の平均粒径d50=80μm以上、90μm以下
上記磁性体を作製するには、例えば射出成形を利用することができる。例えば、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂を加熱し、軟化した熱可塑性樹脂と軟磁性金属粉末(軟磁性金属粒子の集合体)とを混合する。その混合物を金型内に射出することで上記磁性体を得ることができる。その他、上記磁性体は、混合物を金型内で圧縮する圧縮成形や、混合物をダイから押し出す押出成形によって得ることができる可能性がある。
次に、本実施形態の磁性体をリアクトルの磁性コアに適用した例を図1〜3に基づいて説明する。図1はリアクトル1の概略斜視図、図2はリアクトル1に備わる組合体10の概略分解斜視図、図3は磁性コア3の構成が図2とは異なる組合体10’の概略分解斜視図である。まず、図1,2を参照してリアクトル1を説明する。なお、図1〜3を用いて説明するリアクトル1,1’とその構成部材の形状はあくまで一例に過ぎず、このような形状に限定されるわけではない。
図1に示すリアクトル1は、コイル2と磁性コア3との組合体10である。リアクトル1は、組合体10を収納するケースを備える構成であっても良く、その場合にはケース内に配置される組合体10を封止する封止樹脂を設けても良い。このリアクトル1のコイル2は一対のコイル素子2A,2Bを有し、磁性コア3は一対の内側コア部31,31と一対の外側コア部32,32とを備える(特に図2を参照)。
組合体10(リアクトル1)に備わるコイル2は、図2に示すように、一対のコイル素子2A,2Bと、両コイル素子2A,2Bを連結するコイル素子連結部2rと、を備える。コイル2は、銅やアルミニウム、その合金といった導電性材料からなる平角線や丸線などの導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被膜を備える被覆線を好適に利用できる。
組合体10(リアクトル1)に備わる磁性コア3は、各コイル素子2A,2Bの内部に挿入される一対の内側コア部31,31と、コイル素子2A,2Bから露出し、内側コア部31,31をその両側から挟み込む一対の外側コア部32,32とを備える。本例では、内側コア部31,31は略直方体となっており、外側コア部32,32は上面と下面が略ドーム形状の柱状体となっている(もちろん、この形状に限定されるわけではない)。内側コア部31はさらに複数のコア片から構成されていても良く、その場合、各コア片の間にギャップ材を介在させても良い。ギャップ材を介在させることで磁性コア3のインダクタンスを調整することができる。
図2を用いて説明した組合体10とは磁性コアの分割形状とボビンの形状が異なる組合体10’を備えるリアクトル1’を図3に基づいて説明する。なお、図3のリアクトル1’に備わるコイル2は、図2のコイル2と全く同じ構成を備えるため、その説明は省略する。また、リアクトル1’の外観は、図1に示すリアクトル1とほぼ同じである。
図3に示すリアクトル1’の磁性コア3は、上方から見たときに概略U字状の二つの分割コア片35,35を組み合わせて構成される。各分割コア片35は、基部35Aと、基部35Aからコイル2に向かって延びる一対の張出部35B,35Bと、を備える。
図3のボビン5は、一対のボビン部材55,56で構成されている。両ボビン部材55,56は共に、枠状部560と一対の筒状部561,561とを備える。枠状部560は、図2の枠状ボビン52と同様の役割を果たし、筒状部561は、図2のボビン部材51と同様の役割を果たす。
以上説明したリアクトル1は、動作時の騒音が小さいリアクトル1となる(後述する試験例2を参照)。それは、磁歪量λp−pが小さい本実施形態の磁性体で内側コア31を構成しているからである。
上記構成を備えるリアクトル1は、通電条件が、例えば、最大電流(直流):100A〜1000A程度、平均電圧:100V〜1000V程度、使用周波数:5kHz〜100kHz程度である用途、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車載用電力変換装置の構成部品に好適に利用することができる。この用途では、直流通電が0Aのときのインダクタンスが、10μH以上2mH以下、最大電流通電時のインダクタンスが、0Aのときのインダクタンスの10%以上を満たすものが好適に利用できると期待される。
全体に占める軟磁性金属粒子の含有量、軟磁性金属粒子の平均粒径、および軟磁性金属粒子におけるSi含有量の少なくとも一つが異なる複数の磁性体(試料1〜10)を実際に作製し、それら磁性体の磁歪量λp−pを測定した。
軟磁性金属粒子の含有量、軟磁性金属粒子の平均粒径d50、および軟磁性金属粒子におけるSi含有量のいずれかが異なる複数のペレットを用意した。ペレットは、ポリアミド樹脂(株式会社クラレ製のポリアミド 9T)に、Fe−Si合金の軟磁性金属粒子を分散させたものである。軟磁性金属粒子の含有量、Si含有量、および平均粒径については、後述する表1に示す。なお、磁性体における軟磁性金属粒子の含有量、および軟磁性金属粒子におけるSi含有量は、ICP発光分析(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry)で測定した。また、軟磁性金属粒子の平均粒径d50は、光学的手法による画像をもとに、画像処理を行なうことで求めた。
・磁性体ペレットの温度…320℃
・金型の温度…150℃
・射出圧力…100MPa
レーザ・ドップラー計を用いて、磁束密度=0.6T、周波数=500Hzの交番磁界下における試料1〜10の磁歪量λp−p(ppm)を測定した。具体的には、まず図6の説明図に示すように、試料1〜10の磁性体で構成された測定サンプル6の側面にアルミ製の一対の反射板61,62を取り付けた試験部材を作製した。図6における紙面左右方向が磁性体(測定サンプル6)の長さ方向、奥行き方向が磁性体の幅方向、上下方向が磁性体の厚さ方向である。次に、その測定サンプル6を、一対のU字型のヨーク71,72で挟み込むと共に、測定サンプル6の外周を取り囲むように励磁コイル(図示せず)を配置した。つまり、励磁コイルによって生じる交番磁界の方向が磁性体の長さ方向に一致するようにした。そして、励磁コイルによって交番磁界を発生させつつ、測定サンプル6の各反射板61,62の変位をレーザ・ドップラー計(株式会社電子技研製V100−S)81,82で測定し、両反射板61,62の変位の測定結果に基づいて測定サンプル6の磁歪量λp−pを求めた。各試料の測定結果を表1に示す。
試験例2では、特に、磁歪量λp−pに及ぼすSi含有量の影響を調べた。具体的には、Si含有量が6.5質量%、7.0質量%、あるいは8.0質量%の軟磁性金属粒子を用いて三種類の磁性体を作製した。各磁性体における軟磁性金属粒子の含有量はいずれも67体積%、軟磁性金属粒子の平均粒径はいずれも60μmであった。それら磁性体を交番磁界中に配置して、磁性体の磁歪量λp−pをレーザ・ドップラー計で測定した(測定装置の構成は図6と同様である)。交番磁界の周波数は500Hzで固定し、交番磁界の磁束密度は0.3T〜0.8Tの間で変化させた。その結果を図7に示す。
試験例3では、特に、磁歪量λp−pに及ぼす軟磁性金属粒子の平均粒径d50の影響を調べた。具体的には、平均粒径d50が60μmでSi含有量が6.5質量%の軟磁性金属粒子の粉末を用意した。その粉末を二つに分け、一方の粉末を利用して磁性体を作製した。他方の粉末は、44μm以下の軟磁性金属粒子からなる粉末となるように分級し、その分級粉末を利用して磁性体を作製した。分級しなかった粉末の軟磁性金属粒子の最大粒径は約212μmである。一方、分級粉末の最大粒径は44μmであり、平均粒径d50は20μmであった。両磁性体における軟磁性金属粒子の含有量はいずれも67体積%であった。それら磁性体を交番磁界中に配置して、磁性体の磁歪量λp−pをレーザ・ドップラー計で測定した(測定装置の構成は図6と同様である)。交番磁界の周波数は500Hzで固定し、交番磁界の磁束密度は0.3T〜0.8Tの間で変化させた。その結果を図8に示す。
試験例1の試料2,7の磁性体を図1,2に示す内側コア部31に利用したリアクトル1を作製した。そして、作製したリアクトルを、磁束密度=0.1T、周波数=3kHz(3000Hz)の交番磁界中に載置し、リアクトルの騒音を測定した。暗騒音(バックグラウンドの騒音)は55dBであった。その結果、試料7の磁性体を備えるリアクトルでは76dBの騒音が生じた。これに対して、試料2の磁性体を備えるリアクトルの騒音は70dBであった。このように、軟磁性金属粒子の含有量、軟磁性金属粒子の平均粒径、および軟磁性金属粒子におけるSi含有量を所定量に調節した磁性体は、リアクトルの静粛性の向上に大きく貢献することが判った。
以上説明した本発明に係る実施形態に関連して、更に以下の付記を開示する。
コイルと、前記コイルの内部に挿通される部分を有する磁性コアと、を組み合わせた組合体を備えるリアクトルであって、
前記磁性コアの少なくとも一部が、Fe−Si合金の複数の軟磁性金属粒子が樹脂中に分散された磁性体であり、
前記磁性体に占める前記軟磁性金属粒子の含有量が、50体積%以上、85体積%以下、
前記軟磁性金属粒子の平均粒径d50が、20μm以上、100μm以下、
前記軟磁性金属粒子におけるSi含有量が、3.0質量%以上、8.0質量%以下であり、
磁束密度=0.6T、周波数=500Hzの交番磁界下における前記磁性体の磁歪量λp−pが2.0ppm以下であるリアクトル。
Fe−Si合金の複数の軟磁性金属粒子が樹脂中に分散された磁性体であって、
全体に占める前記軟磁性金属粒子の含有量が、50体積%以上、85体積%以下であり、
前記軟磁性金属粒子の平均粒径d50が、20μm以上、100μm以下で、
前記軟磁性金属粒子におけるSi含有量が、3.0質量%以上、8.0質量%以下であり、
磁束密度=0.6T、周波数=500Hzの交番磁界下における磁歪量λp−pが2.0ppm以下である磁性体。
10,10’ 組合体
2 コイル
2A,2B コイル素子 2r コイル素子連結部
2a,2b 端部
3 磁性コア
31 内側コア部 32 外側コア部
35 分割コア片 35A 基部 35B 張出部
5 ボビン
51 ボビン部材 52 枠状ボビン
55,56 ボビン部材 560 枠状体 561 筒状体
6 測定サンプル 61,62 反射板
71,72 ヨーク
81,82 レーザ・ドップラー計
1100 電力変換装置
1110 コンバータ 1111 スイッチング素子 1112 駆動回路
L リアクトル
1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ 1160 補機電源用コンバータ
1200 車両
1210 メインバッテリ
1220 モータ
1230 サブバッテリ
1240 補機類
1250 車輪
Claims (6)
- コイルと、前記コイルの内部に挿通される部分を有する磁性コアと、を組み合わせた組合体を備えるリアクトルであって、
前記磁性コアの少なくとも一部が、Fe−Si合金の複数の軟磁性金属粒子が樹脂中に分散された磁性体であり、
前記磁性体に占める前記軟磁性金属粒子の含有量が、50体積%以上、75体積%以下、
前記軟磁性金属粒子の平均粒径d50が、20μm以上、90μm以下、
前記軟磁性金属粒子におけるSi含有量が、6.0質量%以上、8.0質量%未満であり、
磁束密度=0.6T、周波数=500Hzの交番磁界下における前記磁性体の磁歪量λp−pが0.90ppm以下であるリアクトル。 - 前記磁性体における前記軟磁性金属粒子の含有量が、55体積%以上、65体積%以下、
前記軟磁性金属粒子の平均粒径d50が、55μm以上、90μm以下、
前記軟磁性金属粒子におけるSi含有量が、6.0質量%以上、7.0質量%未満であり、
磁束密度=0.6T、周波数=500Hzの交番磁界下における前記磁性体の磁歪量λp−pが0.5ppm以下である請求項1に記載のリアクトル。 - 前記磁性体における前記軟磁性金属粒子の含有量が、60体積%以上、65体積%以下、
前記軟磁性金属粒子の平均粒径d50が、80μm以上、90μm以下、
前記軟磁性金属粒子におけるSi含有量が、6.0質量%以上、7.0質量%未満であり、
磁束密度=0.6T、周波数=500Hzの交番磁界下における前記磁性体の磁歪量λp−pが0.35ppm以下である請求項1に記載のリアクトル。 - Fe−Si合金の複数の軟磁性金属粒子が樹脂中に分散された磁性体であって、
全体に占める前記軟磁性金属粒子の含有量が、50体積%以上、75体積%以下であり、
前記軟磁性金属粒子の平均粒径d50が、20μm以上、90μm以下で、
前記軟磁性金属粒子におけるSi含有量が、6.0質量%以上、8.0質量%未満であり、
磁束密度=0.6T、周波数=500Hzの交番磁界下における磁歪量λp−pが0.90ppm以下である磁性体。 - 請求項1に記載のリアクトルを備えるコンバータ。
- 請求項5に記載のコンバータを備える電力変換装置。
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