以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
製造業は、製品を生産し、出荷して売上を得る。製品は、各種の部門や工程において、部品や材料等の原材料を購入し、作業を経て生産される。このときにかかった費用が、製造原価となる。注文を受ける前に生産を完了してしまう見込み生産から、個別の注文で設計から開始して生産を行う受注生産まで、生産の形態は様々であるが、いずれにおいても売上の増加と製造原価の低減は、業績の向上において重要となる。
近年、CFは、設備や事業に対する投資の観点から、重要な業績の評価基準となっている。CFとは、期間における収入(入金)と支出(出金)の総金額、または収入と支出の差である。財務会計的には、会計期間における評価となる。原材料の購入や、工場での作業の増加は、製造原価の増加につながり、また、製造リードタイム(LT:Lead Time、期間)が長くなると、期間当りに出荷できる製品数量が少なくなる。CFを向上するためには、余剰な原材料、仕掛品、製品在庫を防止した上で、製造LTを短縮できるように、生産日程を計画する。つまり、工場や各部門の操業状態を判断した上で、製造原価を低減し、製造LTを短縮する日程を計画する。
一般的に、受注案件による製品生産は、量産品よりも売上高が大きくなる。また、受注案件による製品生産は、注文から売上までの製造LTが長く、収入までの期間も長い。また、受注案件による製品生産では、製造中に材料や部品といった、製品の原材料の購入が発生し、作業に対して賃金を払うため、支出を伴う。受注案件の生産品の例としては、例えば、建築物や工業設備、または、それらに組み込まれて、各種設備の制御をするための制御盤といった装置、機器などがある。工場では、各受注案件の製品を同時並行して生産しており、製造工程における設備、作業員の処理能力に制限があるため、各受注案件の日程計画を調整することとなる。
本発明の日程計画装置は、受注案件の製品の納期を満足するように、受注案件の日程計画をスケジューリングする。そして、日程計画装置は、スケジューリングした受注案件の日程計画に対する現金循環化日数(Cash Conversion Cycle、以下、CCCと呼ぶことがある)を算出する。CCCは、CFの効率性を評価する指標であり、CCCが小さいほど、CFの回転が速く、効率性がよいといえる。これにより、ユーザは、会社全体または事業部全体ではなく、受注案件ごとにおいて、お金の支出および収入を評価することができる。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る日程計画装置の機能ブロック構成例を示した図である。図1に示す日程計画装置1は、例えば、サーバやPC(Personal Computer)などの計算機によって実現される。
図1に示すように、日程計画装置1は、スケジューリング部11と、CCC算出部12と、判定部13と、出力部14と、入力部15と、記憶部20と、を有している。記憶部20は、生産情報DB21と、生産基準DB22と、製造原価累積モデルDB23と、製造原価情報DB24と、調達情報DB25と、販売情報DB26と、を有している。
なお、記憶部20は、例えば、日程計画装置1とネットワーク等で接続された記憶装置で実現してもよい。また、日程計画装置1は、ユーザがマニュアルで処理条件を設定するためのキーボードといった入力端末と、処理結果を示すためのディスプレイといった出力端末とを備える。これらの端末は、他の計算機に備わるものでも良く、ネットワーク等を介した入出力端末であってもよい。
スケジューリング部11は、記憶部20の生産情報DB21および生産基準DB22を参照し、受注案件の日程計画をスケジューリングする。生産情報DB21および生産基準DB22には、受注案件の製品の、生産に関する情報が記憶されている。
生産情報DB21には、日程計画の対象となる受注案件の生産情報が記憶されている。生産情報は、例えば、受注生産する製品の種類、構成といった受注条件と、納期とを含む。また、生産情報は、例えば、受注製品を生産するための工場の製造工程の情報も含む。
生産基準DB22には、日程計画の対象となる受注案件の原単位情報(生産基準情報)が記憶されている。生産基準情報は、例えば、受注製品を1つ生産するための工程のLTと、作業工数(ST:Standard Time)と、生産機械稼動時間(MT:Machine Time)と、必要となる人員や設備といった情報とを含む。
スケジューリング部11は、日程計画の対象となる受注案件の生産情報を生産情報DB21より取得する。また、スケジューリング部11は、日程計画の対象となる受注案件の生産基準情報を生産基準DB22より取得する。
スケジューリング部11は、生産情報DB21および生産基準DB22から取得した情報に基づいて、受注製品の納期以前に生産を完了するよう、製造工程の順に従って、各工程の着手時点と期間とを割り当てる。このとき、スケジューリング部11は、製造工程の1日当りの稼動時間等が、工場の処理能力を超えないように日程を計画する。すなわち、スケジューリング部11は、生産情報DB21および生産基準DB22に記憶されている制約条件を満足するように日程を計画する。その際、スケジューリング部11は、受注案件の製品を部分的な構成に分割し、各構成に対する作番に対して日程を計画してもよい。これにより、日程計画装置1を使用するユーザは、各製造工程の投入と完了の日付や、日時の一覧等を含む日程計画が得られる。
なお、スケジューリング部11は、案件を受注してから顧客に応じて製品設計し、生産するDTO(Design To Order)生産や、ETO(Engineer To Order)生産の場合には、製造工程の日程だけでなく、設計の各段階の着手、完了の日程も計画する。この場合、生産情報DB21には、設計工程の情報が含まれる。設計のことを開発と呼ぶならば、設計工程の情報は、開発工程の情報となる。
CCC算出部12は、スケジューリング部11によって算出された、受注案件の日程計画に対して、CFに関する各種の計算を行う。例えば、CCC算出部12は、受注案件のCCCや、1日当りの収益、利益、または複数の受注案件をまとめたCCCなどを算出する。CCC算出部12は、記憶部20の製造原価累積モデルDB23、製造原価情報DB24、調達情報DB25、および販売情報DB26を参照して、受注案件の日程計画に対するCCCを算出する。
製造原価累積モデルDB23には、製造原価累積モデルが記憶されている。製造原価累積モデルとは、後述するが、製造イベントと原価の勘定科目の要素とを対応付けた情報(会計イベント情報ともいう)である。
製造原価情報DB24には、受注案件の製品の製造原価に関する情報(製造原価情報)が記憶されている。例えば、製造原価情報には、受注案件の製品を製造する作業時間、労務費、および製造間接費などが含まれている。
調達情報DB25には、受注案件の製品の材料や部品といった原材料の調達に関する情報(調達情報)が記憶されている。例えば、調達情報には、購入額、納品日、および支出日などが含まれている。
販売情報DB26には、受注案件の製品の販売に関する情報(販売情報)が記憶されている。例えば、販売情報には、受注案件の製品の売上高、売上日、および収入日などが含まれている。
CCC算出部12は、製造原価に関するCFを算出するため、製造原価累積モデルDB23を参照して、製造原価累積モデルを取得する。また、CCC算出部12は、製造原価情報DB24を参照して、受注案件の製品の製造間接費を取得する。また、CCC算出部12は、調達情報DB25を参照して、受注案件の製品の原材料の購入額を取得する。
CCC算出部12は、取得した製造原価累積モデルより、日程計画における製造イベントに対応付けられた勘定科目の要素を特定する。そして、CCC算出部12は、受注案件の製品の製造間接費および原材料の購入額を、特定した勘定科目に従って積み上げ、製造LTにおける製造原価期間積分を算出する。CCC算出部12は、例えば、算出した製造原価期間積分を売上高で除算し、製造原価に関するCFを算出する。
CCC算出部12は、買入債務に関するCFを算出するため、調達情報DB25を参照して、購入した原材料の購入額、納品日、支出日等の調達情報を取得する。前払金があるならば、CCC算出部12は、その金額と支出日とを調達情報DB25より取得する。CCC算出部12は、支出日と納品日との間の買掛期間と、原材料の購入金額との積を、全原材料において加算し、買入債務期間積分を算出する。CCC算出部12は、例えば、算出した買入債務期間積分を売上高で除算し、買入債務に関するCFを算出する。
CCC算出部12は、売上債権に関するCFを算出するため、販売情報DB26を参照して、売上高、売上日、収入日等の販売情報を取得する。前受金があるならば、CCC算出部12は、その金額と収入日とを販売情報DB26より取得する。CCC算出部12は、収入日と売上日との間の売掛期間と、受注案件の製品の各売上における製品売上高との積をとって、売上債権期間積分を算出する。CCC算出部12は、例えば、算出した売上債権期間積分を売上高で除算し、売上債権に関するCFを算出する。なお、売上日は、製品の納期または顧客が製品の検収を行った日に相当する。
CCC算出部12は、算出した製造原価に関するCF、買入債務に関するCF、および売上債権に関するCFから、CCCを算出する。また、CCC算出部12は、複数の受注案件を組み合わせたCCC(売上高CCC比や寄与CCCなど)も算出する。
判定部13は、CCC算出部12によって算出されたCCCにより、受注案件の日程計画に対する良否を判定する。例えば、判定部13は、CCC算出部12によって算出されたCCCと、定量的に設定されている閾値との比較によって、日程計画の良否を判定する。または、判定部13は、CCC算出部12によって算出されたCCCと、過去や事前の計画に対するCCCとの比較によって、日程計画の良否を判定する。
出力部14は、日程計画装置1が算出した情報を、例えば、ディスプレイに出力する。例えば、出力部14は、スケジューリング部11が算出した受注案件の日程計画や、その日程計画の良否判定結果を、ディスプレイに出力する。
入力部15は、ユーザの操作により、情報を受付ける。入力部15は、ユーザから受付けた情報を、例えば、記憶部20の各DBに記憶する。
在庫回転日数、買入債務回転日数、売上債権回転日数、およびCCCについて説明する。以下では、在庫回転日数をDIO(Days Inventory Outstanding)と呼ぶことがある。買入債務回転日数をDPO(Days Payable Outstanding)と呼ぶことがある。売上債権回転日数をDSO(Days Sales Outstanding)と呼ぶことがある。
財務会計では、CFは、会計期間における収入と支出の金額のことである。受注案件におけるCFならば、収入または支出が始めて発生した時点から、最終の収入、支出が発生した時点までの期間における収入と支出の金額のこととなる。
売上に対するCFの回転の速さ、すなわち効率性を評価する指標がCCCである。CCCは、以下に示す式(1)で定義され、DIO、DSO、およびDPOから計算される。変数名は、そのままCCC、DIO、DSO、およびDPOとする。
一般的にCCCは、財務諸表を用いて計算される(これに対し、本願では、記憶部20に記憶された製造原価累積モデル、製造原価情報、調達情報、および販売情報を用いて、受注案件の日程計画に対するCCCを算出する)。在庫回転日数は、財務諸表の1つである貸借対照表における、流動資産の製品、仕掛品、原材料の和、すなわち在庫の、先期と当期の平均を、当期の損益計算書における売上高で割り、会計期間の365日を掛けることで求める。
売上債権回転日数は、貸借対照表における売上債権の先期、当期の平均を売上高で割り、会計期間を掛けて求める。売上債権は、流動資産の売掛金、受取手形に流動負債の前受金を差し引いて求める。売掛金、受取手形とも、収益が発生した後にある期間を経て収入となる項目であり、取引の手段が異なるだけであるため、以降では、簡単にするため売掛金だけを対象とする。
買入債務回転日数は、貸借対照表における買入債務の先期、当期の平均を売上高で割り、会計期間を掛けて求める。買入債務は、流動負債の買掛金、支払手形に流動資産の前払金を差し引いて求める。買掛金、支払手形とも、費用が発生した後にある期間を経て支出となる項目であり、取引の手段が異なるだけであるため、以降では、簡単にするため買掛金だけを対象とする。
なお、在庫回転日数、買入債務回転日数を求める際、売上高で割るのではなく、損益計算書にある売上原価(COGS:Cost Of Goods Sold)で割って求めても良い。売上原価は、製品の場合、期首製品棚卸高に当期製品製造原価を足し、期末製品棚卸高を差し引いた原価差異のことである。すなわち、期中に売り上げた製品の製造原価(COGM:Cost Of Goods Manufactured)である。
図2は、財務諸表における在庫回転日数の計算要素の例を示した図である。図2のグラフ31a,31bの横軸は日付を示している。グラフ31aの縦軸は、DIOの分子である在庫を示している。グラフ31bの縦軸は、DIOの分母である売上高を示している。DIO分子は、上記したように、期首と期末の在庫の平均である。DIOの分母は、上記したように、期中の売上高であるので、日々の売上高を期間積分したもの(グラフ31bの斜線部分)である。
受注案件についてのCCCは、受注案件の製品に対して、DIO、DSO、DPOを評価する必要がある。受注案件におけるDIOの分子(在庫)について説明する。
図3は、受注案件の在庫回転日数の分子の例を示した図である。図3のグラフは、製品の生産開始から売上(収益)発生となる顧客の製品検収までの期間で、在庫が線形的に増加すること、すなわち原材料や労務費といった製造原価が一律に加算されることを表している。現実的には、直線的に在庫が増えることは無いが、広義に単調に増加していくことは想定できる。
図2のグラフ31aに示したように、財務諸表からのDIO計算では、期首と期末との平均を用いる。財務諸表は、期毎に作成、公開されるため、期中の値をより正確に評価するため平均をとる、と解釈できる。そこで、受注案件の在庫については、生産期間における在庫の平均が、代表的な在庫の金額に相当すると考える。生産期間は、製造LTであり、受注案件における製造LTは、財務会計における会計期間に相当する。また、製品一つについて、売上高は1つに定まるので、売上高の期間積分などを求める必要はない。よって、受注案件に対するDIOは、式(2)によって求めることができる。
ここでDは在庫、LTは製造LT、Sは売上高である。式(2)最右辺は、受注案件の製造原価期間積分を、受注案件の売上高で割れば、受注案件のDIOとなることを意味する。
受注案件におけるDSOおよびDPOについても、式(2)と同様の計算となる。受注案件におけるDSOについては、売上(収益)発生から、収入までの売掛期間の売掛金の期間平均を、売上高で割り、売掛期間を掛ければよい。よって、DSOは、売上債権期間積分を売上高で割ることによって求まる。前受金については、前受金収入から売上発生までの期間も売掛期間として評価すればよい。
受注案件におけるDPOについても、購入品の検収(費用発生)から支出までの買掛期間の買掛金の期間積分を、売上高で割り、買掛期間を掛ければよい。よって、DPOは、買入債務期間積分を売上高で割ることによって求まる。前払金については、前払金支出から購入品の検収までの期間も買掛期間として評価すればよい。
受注案件のDSOおよびDPOは、式(3)、式(4)で示される。
ここで、式(3)の「R」は、売上債権(trade Receivable)を意味し、式(4)の「P」は、買入債務(trade Payable)を意味する。
受注案件におけるDIO、DSO、およびDPOを、受注案件DIO、受注案件DSO、受注案件DPOと呼ぶことがある。また、受注案件におけるCCCを、受注案件CCCと呼ぶことがある。受注案件CCCは、式(1)と同様に、受注案件DIO、受注案件DSO、および受注案件DPOより求まる。
なお、受注案件CCCの算出には、作番のCCCの算出も含まれるとする。例えば、生産の段階で作番が設定され、作番毎に調達や販売を割り当てることができるなら、作番を受注案件として、作番のCCCを評価することができる。
売上高CCC比、売上総利益CCC比、組合せCCC、および寄与CCCについて説明する。受注案件のCFは、収入発生と支出発生の期間における収入と支出の金額である。複数の受注案件のCFを比較する際には、単純に金額の大小を評価するだけでなく、期間も併せて評価する必要がある。
CCCは、現金が循環する日数を意味し、事業の効率性を表す指標である。金額の大小は、売上高や利益で評価する。金額を日数で割れば、一日当りの金額の大小を評価可能となり、期間、金額が異なる各受注案件を同一の指標として比較できる。
売上高をCCCで割れば、CCCの1日当りの売上高となる。これを売上高CCC比(SCCCR:Sales CCC Ratio、またはSC3R)と呼ぶ。SCCCRは、次の式(5)によって算出され、受注案件毎に算出できる。
また、利益としては、売上総利益(粗利)をCCCで割れば、CCCの1日当りの売上総利益となる。これを売上総利益CCC比(GCCCR:Gross-operating-income CCC Ratio、またはGC3R)と呼ぶ。粗利CCC比とも呼べる。受注案件の売上総利益は、受注案件の売上高から製造原価を差し引いて求めることができ、受注案件毎に算出できる。GCCCRは、次の式(6)によって算出できる。
式(6)の「Gross-operating-income」は、売上総利益である。
営業利益、経常利益、および純利益は、事業部門や会社の単位での計算となり、財務諸表によるCCCを用いて比率を評価することは可能であっても、各受注案件に対する比較、評価は難しくなる。
売上高および売上総利益のいずれの指標にしても、CCC比は、現金の流れの速度、すなわち流速を意味している。大きなCCC比であれば、1日当りの売上高、売上総利益の現金の量が大きく、事業効率が良い。
受注案件CCCは、受注案件DIO、受注案件DSO、および受注案件DPOの足し算および引き算で計算できる。複数の受注案件を組み合わせたCCCも、単純に複数の受注案件の受注案件DIO、受注案件DSO、および受注案件DPOから計算できることとなる。複数の受注案件の組合せのCCCに対して、その中に占めるCCCの大きな案件は、現金循環の効率の悪い案件であると分かる。例えば、製造原価期間積分が小さくても売上高が小さければ、製造原価期間積分が大きくて売上高が大きい案件のCCCと同じとなり得る。
しかし、売上高および製造原価が小さい受注案件は、製造LTが短く、現金の循環が早く、売上高の大きい案件は、製造LTが長く、現金の回収期間も長い。このために受注案件の売上高を合計して、各案件個別に製造原価、売上債権、買入債務の期間積分を割って評価する。
組合せのCCCは、次の式(7)より求めることができる。変数名は、combinedCCCとする。
式(7)の分母は、次の式(8)で示される。
式(7)および式(8)の「i#」は、受注案件についてのインデクスである。以下では、組合せのCCCを、組合せCCCと呼ぶ。組合せCCCは、組合せ中の全受注案件の受注案件CCCを、式(8)の売上高の総和で割ったものである。受注案件CCCを売上高の総和で割ることで、組合せ中の受注案件のCCCを求める。
以下に示す式(9)の左辺を、寄与CCCと呼ぶ。変数名はcontributedCCCとする。組合せCCCとは、式(10)の関係がある。
複数の受注案件を組み合わせて、各受注案件の寄与CCCを求めることで、例えば、組合せにおいて、大きな製造原価期間積分となってしまっている受注案件を求めることができる。そして、求めた受注案件が、対策すべき受注案件の候補と特定できる。
なお、売上高CCC比、売上総利益CCC比、組合せCCC、および寄与CCCについては、DIO、DSO、およびDPOの少なくとも1つを、CCCに置き換えて計算してもよい。特に、DIOで売上高比や組わせの寄与を評価するならば、それは、現金の収支フローの評価ではなく、費用発生と売上発生の損益フローで評価していることを意味する。
製造原価累積モデル、製造原価情報、調達情報、および販売情報から、製造原価期間積分、売上債権期間積分、および買入債務期間積分を求める方法について説明する。なお、受注案件DIO、受注案件DSO、受注案件DPOは、それぞれ製造原価期間積分、売上債権期間積分、買入債務期間積分を売上高で割って求まる。よって、製造原価期間積分、売上債権期間積分、および買入債務期間積分を求める方法が分れば、受注案件DIO、受注案件DSO、受注案件DPOを求めることができる。そして、受注案件CCCを求めることができる。
製造原価期間積分の計算方法を説明する。製造原価期間積分は、CCC算出部12によって算出される。
製造原価は、原材料費(直材費)、労務費(直接労務費)、製造間接費(経費など)といった勘定科目により構成される。受注案件別の受注生産品では、個別原価計算方式により原価計算される。この場合、全ての原材料費、労務費、製造間接費が直接に受注案件、作番に計上され、製造原価となる。
すでに製造が完了した製品の製造原価期間積分を計算する場合、勘定科目の要素の実績、すなわち計上された調達した部品個別のデータや労務費計算のための作業実績データを、計上日から売上日(顧客による製品の検収日)まで累積し、期間の積分を取れば、製造原価期間積分は求まる。
日程計画は、将来の日程を計画するものであり、また製造中の工程の進捗を製造イベント(業務イベントを含む)と対応させて、製造イベントの日付を計算するものである。ここで、製造イベントとは、例えば、複数の工程を経る製造であって、工程への投入や工程の完了といった、工程の処理前後のタイミングに対応する日付と関連付く出来事である。受注生産品であっても、日程計画の計算の際の制約によって、結果として得られる日程は異なる。そこで、製造イベントと勘定科目の要素の計上とを対応付けた製造原価累積モデルを導入する。
製造原価累積モデルは、製造イベントと勘定科目の要素との組のリストである。製造イベントの日付と勘定科目の要素の金額とが定まれば、横軸を日付、縦軸を製造原価として製造原価期間積分を計算できる。つまりグラフ化できる。
図4は、製造原価累積モデルの日程および金額設定後のグラフの例を示した図である。製造イベントは、図4のグラフの横軸に示すように、例えば、部品発注後に、部品納期、基板投入、ケース投入、外注品納期、検査、完成、そして売上発生の顧客検収となる。
各製造イベントにおいて、それぞれ部品費、基板加工費、ケース労務費、外注品費、検査費、輸送・据付費等の勘定科目が計上される。各製造イベントと勘定科目の要素との組は、製造原価累積モデルDB23から取得できる。
各製造イベントで積まれる製造原価の売上までの期間積分は、領域32a〜32fの領域となり、全ての領域が製造原価期間積分となる。製造原価累積モデルに基づき、製造原価期間積分は、式(11)で求まる。
ここで「di#」は、勘定科目の要素に対応するインデクスであり、「t」は、製造イベントから顧客検収に相当する売上までの期間である。よって、予め原材料費、労務費、製造間接費といった勘定科目の要素の値が設定されていれば、日程計画段階で製造原価期間積分を計算できる。なお、過去の生産の実績を参照して、勘定科目の要素の値を設定してもよいし、直接に過去生産の実績データを設定してもよい。
売上債権期間積分の計算方法を説明する。売上債権期間積分は、CCC算出部12によって算出される。
売上債権は、売掛金から前受金を差し引いた金額としており、受取手形などは売掛金と同等のものと扱う。売掛金は、売上で発生し、収入により消滅する。よって、売上日から収入日までの期間が売掛期間である。また、前受金は、収入があり、売上により消滅する。
図5は、売上債権期間積分の例を示した図である。図5の例では、売上35aは、1回であるが、3回に分割して前受金の収入34a〜34cがあり、2回に分割して売掛金に対する収入34d,34eがある。グラフの縦軸は、正味運転資金である。正味運転資金は、「在庫(製造原価)+売上債権−買入債務」であるので、前受金は負(マイナス)となる。
収入から売上までの期間の領域33a〜33cが前受金についての売上債権期間積分の領域である。売上35aが発生すると、売上高36aのうちまだ収入になっていない分が買掛金となる。売上35aから収入34d,34eまでの領域33d,33eが、売掛金についての売上債権期間積分の領域である。前受金、売掛金を合せて売上債権期間積分が求まる。売上債権期間積分は、次の式(12)で求まる。
ここで、「ri#」は、売掛金についてのインデクスであり、「ari#」は、前受金(Advance Received)についてのインデクスである。「t」は、売掛期間である。式(12)の右辺2項目の「R」および「t」の左上添え字の「ar」は、前受金を意味する。
売上債権期間積分は、収入および売上の時点と金額とが分れば求まる。将来の日程計画でDSOを求めるためには、受注時の契約条件でこれらの情報をまとめる。または、直接に過去の製品販売実績データを設定してもよい。
買入債務期間積分の計算方法を説明する。買入債務期間積分は、CCC算出部12によって算出される。
買入債務は、買掛金から前払金を差し引いた金額としており、支払手形などは買掛金と同等のものと扱う。買掛金は、購入した原材料の検収で発生し、支出により消滅する。よって、検収日から支出日までの期間が買掛期間である。また前払金は、支出し、検収により消滅する。
図6は、買入債務期間積分の例を示した図である。縦軸は、正身運転資金であり、前払金は、正(プラス)、買掛金は、負(マイナス)である。図6に示す部品1,2は、前払金での支払であり、部品3〜6は、買掛し、後に支出する。部品の金額が、縦軸に関わるが、検収および支出の関係を見やすくするために一つの部品に対して帯状の長方形で積分の領域を示している。
正味運転資金の領域は、網掛け領域である。部品1においては、支出38aから検収39dまでが買掛期間に相当する。部品2においては、支出38aから検収39cまでが買掛期間に相当する。部品3においては、検収39bから支出38dまでが買掛期間となる。部品4においては、検収39aから支出38cまでが買掛期間となる。部品5においては、検収39cから支出38dまでが買掛期間となる。部品6においては、検収39dから支出38dまでが買掛期間となる。原材料の調達は、検収日や支出日が様々となるが、個別に金額と期間を掛け合わせれば、買入債務期間積分を計算できる。
買入債務期間積分は、次の式(13)で求まる。
ここで、「Pi#」は、買掛金についてのインデクスであり、「api#」は、前払金(Advanced Payment)についてのインデクスである。「t」は、買掛期間である。右辺2項目の「P」、「t」の左上添え字「ap」は、前払金を意味する。
買入債務期間積分は、購入した原材料の検収および支払の期間と金額とがあれば計算できる。日程計画時に、必要な原材料が分かっており、支出日がサプライヤと取り決められていればよい。予め必要となる部品の金額や買掛期間を仮定して設定しておいても良く、または直接に過去の調達実績データを設定してもよい。
なお、式(11)と式(2)から、受注案件DIOが求まる。式(12)と式(3)から、受注案件DSOが求まる。式(13)と式(4)から、受注案件DPOが求まる。そして、式(1)から、受注案件CCCが求まる。式(2)〜(4)に含まれる売上高「S」は、販売情報に含まれている。
また、算出した受注案件CCCと、販売情報に含まれている売上高とから、式(5)に示す売上高CCC比も求まる。式(6)に示す売上総利益CCC比は、製造原価情報に製造原価が含まれているので、売上から製造原価を差し引けば計算できる。組合せCCCおよび寄与CCCは、受注案件CCCの計算に必要なデータがあれば計算できることは、式(7)〜式(10)より明らかである。
図7は、日程計画装置の動作例を示したフローチャートである。日程計画装置1は、例えば、ユーザから、受注案件の日程計画の良否判定要求があると、以下の処理を実行する。なお、記憶部20の各DBには、計算対象となる1件以上の受注案件の情報(作番の情報も含む)が記憶されているとする。
まず、CCC算出部12は、製造原価情報DB24を参照し、ユーザが良否判定要求を行った受注案件の製品の、生産の各工程の作業時間または労務費、製造間接費の製造原価情報を取得する(ステップS1)。
次に、CCC算出部12は、製造原価累積モデルDB23を参照して、製造原価累積モデルを取得する(ステップS2)。
次に、CCC算出部12は、調達情報DB25を参照して、原材料の購入における出金までの買掛期間と購入金額とを取得する(ステップS3)。なお、前払金も取得の対象に含む。買掛期間の取得としたが、原材料の検収日に対応して支出日を定めるサプライヤの契約条件の取得としても良い。これは生産スケジューリングで検収日が調整されるためである。
次に、CCC算出部12は、販売情報DB26を参照して、製品売上後の入金までの売掛期間と、製品の売上高と、製品の納期とを取得する(ステップS4)。前受金も取得の対象に含む。製品の納期は、売上日または顧客による製品の検収日に相当する。売掛期間の取得としたが、収入日を取得して売掛期間を計算してもよい。これらのデータは、受注時の販売契約に関する情報である。製品の納期は必ずしも案件DSOの計算のためでなく、生産スケジューリングで必要になるため、取得する。
次に、スケジューリング部11は、生産情報DB21および生産基準DB22を参照し、ユーザが指定した受注案件の別に、製品の納期や生産における設備、または人員といったリソース制約を満足するように、日程計画をスケジューリングする(ステップS5)。
なお、ステップS1〜S5の処理の順番は、上記に限られない。すなわち、ステップS1〜S5の処理の順番は、どのような順番であってもよい。例えば、日程計画のスケジューリングを行った後(ステップS5の後)に、受注案件CCCの算出に必要な情報を取得する(ステップS1〜S4)ようにしてもよい。
CCC算出部12は、以降の処理で、スケジューリング部11により得られた日程計画に対するCCCを算出する。
次に、CCC算出部12は、ステップS2にて取得した製造原価累積モデルに基づいて、ステップS5でスケジューリングされた日程計画と、原材料、労務費、および製造間接費の勘定科目とから、製造原価期間積分を算出する。そして、CCC算出部12は、算出した製造原価期間積分を、売上高または総製造原価で除算して、受注案件DIOを算出する(ステップS6)。売上高で割るかまたは総製造原価で割るかについては、受注案件DIOの定義に依存する。また、使用する原材料は、ステップS3にて取得された原材料により特定される。
次に、CCC算出部12は、原材料の購入における、各原材料の購入価格と買掛期間との積を全原材料にわたって和をとり、買入債務期間積分を算出する。そして、CCC算出部12は、算出した買入債務期間積分を、売上高または原材料の全購入価格で割ることで受注案件DPOを算出する(ステップS7)。売上高で割るかまたは全購入価格で割るかについては、受注案件DPOの定義に依存する。
次に、CCC算出部12は、製品の各売上における、製品売上高と売掛期間との積を取って、売上債権期間積分を算出する。そして、CCC算出部12は、算出した売上債権期間積分を売上高で割ることで受注案件DSOを算出する(ステップS8)。なお、各売上と記載したことは、売掛金の収入が分割されること、前受金の収入のことを意味する。
次に、CCC算出部12は、ステップS6〜S8で算出した受注案件DIO、受注案件DPO、および受注案件DSOより、受注案件CCCを算出する(ステップS9)。
次に、判定部13は、ステップS9で算出した受注案件CCCより、スケジューリング部11がスケジューリングした日程計画の良否を判定する(ステップS10)。例えば、判定部13は、例えば、ステップS9にて算出された受注案件CCCと、所定の閾値との比較によって、日程計画の良否を判定する。
なお、ステップS6〜S8の処理の順番は、上記に限られない。すなわち、ステップS6〜S8の処理の順番は、どのような順番であってもよい。
また、CCC算出部12は、複数の受注案件に対して、受注案件CCCを算出してもよい。そして、判定部13は、CCC算出部12で算出された複数の受注案件の受注案件CCCにより、複数の受注案件の日程計画の良否を判定してもよい。
また、CCC算出部12は、売上高CCC比、売上総利益CCC比、組合せCCC、寄与CCCについても、ステップS1からステップS4で取得したデータと、ステップS5で得られた日程計画とから算出できる。そして、判定部13は、算出された売上高CCC比、売上総利益CCC比、組合せCCC、寄与CCCの少なくとも1つを用いて、日程計画の良否を判定してもよい。例えば、判定部13は、売上高CCC比、売上総利益CCC比、組合せCCC、および寄与CCCの少なくとも1つと、所定の閾値とを比較して、日程計画の良否を判定してもよい。
受注案件CCCの特徴について説明する。
図8は、受注案件CCCを説明するための、時系列の正味運転資金の例を示した図である。図8のグラフ41,42の縦軸は正味運転資金を示し、横軸は日付を示す。正味運転資金は、網掛け領域で示される。日数は、売上の日を基準として記載される。グラフ41は、この受注案件の計画時の日程計画を示し、グラフ42は、生産上、営業上、または調達上の都合で計画がずれた場合の日程を示している。売上高は、12M¥である。
グラフ41において、製造原価期間積分は、領域41a〜41cで示され、「3M¥×190日+3M¥×120日+3M¥×70日=1140M¥日」である。
グラフ41において、売上債権期間積分は、領域41dで示され、「12M¥×80日=960M¥日」である。
グラフ41において、買入債務期間積分は、領域41eで示され、「3M¥×(120−40)=240M¥日」である。
よって、グラフ41の受注案件CCCは、「(1140+960−240)M¥日÷12M¥=155日」である。
グラフ42において、製造原価期間積分は、領域42a〜42cで示される。グラフ42では、早期に生産着手し、黒い部分に示すように、領域42aの工程において、20日分、生産滞留している(工程で完成していても次の工程への投入を待っている)。また、グラフ42では、領域42bにおいても、10日分の滞留がある。製造原価期間積分は、「3M¥×210日+3M¥×130日+3M¥×70日=1230M¥日」である。
売上債権期間積分は、領域42dに示され、黒い部分に示すのは、収入(入金)の遅れである。売上債権期間積分は、「12M¥×100日=1200M¥日」である。
買入債務期間積分は、領域42eに示され、「3M¥×(130−70)日=180M¥日」である。
グラフ42の買入債務期間積分は、グラフ41の買入債務期間積分に対し、「60M¥日」減少している。領域42eの黒い部分に示すように、10日分早期に原材料を検収しても、破線に示すように30日分早期に支出してしまったためである。
グラフ42の受注案件CCCは、「(1230+1200−180)M¥日÷12M¥=187.5日」となり、グラフ41の受注案件CCCより32.5日長くなって、21%程度の悪化となっている。
図8のグラフ41,42に示したように、生産における滞留、収入の遅延、支出の早期化などが発生すると、受注案件CCCは、悪化することが分かる。また、生産における破損などの失敗、作業のやり直しなどによる製造原価の増加も、受注案件CCCの悪化要因となる。また、売上高の増加、つまり製品の価格が大きくなるならば、計算式中の分母が大きくなるので、受注案件CCCは、小さくなる。従って、顧客との受注計画時に、売掛期間を短縮して契約し、また、サプライヤとの契約で買掛期間を長期化できるなら、受注案件CCCは小さくなり、受注案件の日程計画におけるCFは向上する。
生産としては、顧客との契約で決まる製品の納期に合せて、顧客の検収条件を満たすように製品完成または据付を完了できる、最短の製造LTとなる日程計画が、最も良い日程計画となる。調達としても、加工、組立で必要となったタイミングで、原材料を検収して、直に仕掛品としてしまえれば、原材料の在庫滞留を失くして、製造原価期間積分を最小にできる。
生産設備や人員といった生産リソースに制約があった場合の受注案件CCCの特徴について説明する。生産は、製造原価のみに関係するので、製造原価期間積分との関係において、受注案件CCCの特徴を説明する。
2つの受注案件の製品生産を対象とする。2つの受注案件の製品は、同一の単一工程で生産するとし、受注案件1の製品1は、製造原価5M¥とする。受注案件2の製品2は、10M¥とする。製品納期は、6日後であり、それまでの5日の間に製品を完成させるとする。
図9は、5日分の工程における生産リソースの割り当て例を示した図のその1である。図9の工程は、1日3単位分の作業を標準としている。1単位が1M¥である。5日間で毎日製品1に1単位、製品2に2単位の加工および組立を割り当てている。
図10は、図9の工程における製造原価期間積分の例を示した図である。図10のグラフ43aは、製品1の製造原価期間積分を示している。グラフ43bは、製品2の製造原価期間積分を示している。
製品1の製造原価期間積分は、「1+2+3+4+5=15M¥日」である。製品2の製造原価期間積分は、「2+4+6+8+10=30M¥日」である。製品1,2の製造原価期間積分の合計は、「45M¥日」である。
図11は、5日分の工程における生産リソースの割り当て例を示した図のその2である。図11に示すように、製品1,2に対し、生産リソースを割り当てた場合、製品1の製造原価期間積分は、「3+5+5+5+5=23M¥日」である。製品1は、3日目から5日目までは完成品の在庫が滞留していることを意味している。
製品2の製造原価期間積分は、2日目からの計算となり、「1+4+7+10=22M¥日」である。製品2の製造原価期間積分は、図9の工程に対して小さくできるので(図10より、図9の工程における製品2の製造原価期間積分は「30M¥日」)、製品の生産順序の入れ替えで、2つの受注案件の製造原価期間積分を調整できることが分かる。
図11における工程では、製品1,2の製造原価期間積分の合計は、「45M¥日」である。従って、図11における工程の製造原価期間積分の合計は、図9における工程の製造原価期間積分の合計(図10より「45M¥日」)と同じである。これは、6日目の納期に対し、製品1,2をまとめて工程の全生産リソースに割り当てているため、2つをまとめると、製造原価期間積分は、「3+6+9+12+15=45M¥日」となるためである。
図12は、5日分の工程における生産リソースの割り当て例を示した図のその3である。図12に示す生産リソースの割り当ては、1日4単位分の作業ができることに相当する。3日目から5日目までは、1単位分の残業を割り当てることに相当する。ただし、残業も標準の単位当り原価とする。
この場合の製品1の製造原価期間積分は、2日目から「3+5+5+5=18M¥日」である。製品2の製造原価期間積分は、3日目から「2+6+10=18M¥日」である。製品1,2の製造原価期間積分の合計は、「36M¥日」である。つまり、図12の工程では、図9、図11の工程に対し、製造原価期間積分を小さくできる。これは、納期に対して最短で生産したことの効果である。
このように、生産リソースに余裕がある場合には、複数の受注案件の受注案件CCCを向上することができる。また、複数の受注案件間で、受注案件CCCを向上するように、日程計画を調整できる。
寄与CCC、売上高CCC比、および売上総利益CCC比に対する評価について説明する。以下の説明では、CCCの元となるDIOを評価の対象とする。すなわち、寄与DIO、売上高DIO比、および売上総利益DIO比に対する評価について説明する。これは、CCCは、DIO、DSO、およびDPOの足し算および引き算で計算されるためであり、CCCの評価をDIO、DSO、およびDPOに分解して評価することに相当するからである。なお、DIO、DSO、およびDPOの違いは、DIOは費用発生と売上発生の関係であり、DSOは売上発生と収入の関係であり、DPOは費用発生と支出の関係にある点である。
図13は、複数の受注案件の組合せの寄与DIOの計算結果の例を示した図である。図13の表44aには、案件(受注案件)A〜Eにおける製造LTと、製造原価と、製造原価期間積分と、売上高と、売上高の構成比率と、案件(受注案件)DIOと、寄与DIOと、寄与DIOの構成比率と、が含まれている。グラフ44bは、表44aに含まれている製造原価期間積分を示している。なお、寄与DIOの合計は、式(10)に示すように、組合せDIOとなる。
案件A〜Eごとの案件DIOは、各案件A〜Eの製造原価期間積分を、各案件の売上高で除算すると求まる。寄与DIOは、各案件A〜Eの案件DIOを、案件DIOの合計値で除算すると求まる。寄与DIOの比率は、各案件A〜Eの寄与DIOを、寄与DIOの合計値で除算すると求まる。寄与DIOの比率は、グラフ44bに示す、各案件A〜Eの製造原価期間積分の面積(三角形の面積)の比率を示しているといえる。
案件DIOでも、案件Aから案件Eまでの製造LT、製造原価、売上高の大小関係を表現できているが、グラフ44bで示される製造原価期間積分の大小関係は、寄与DIOで表現されることが分かる。
寄与DIOが最も大きい案件の日程計画を改善すれば、複数の案件A〜Eの全体のCCCを、効率的に改善できる。例えば、グラフ44bに示す三角形の面積が最も大きい案件Eの日程計画を改善すれば、他の案件A〜DのCCCを改善するより、効率的に案件A〜Eの全体のCCCを改善できる。
従って、判定部13は、CCC算出部12が算出した複数の受注案件の寄与CCCから、複数の受注案件の全体のCCCを効率的に改善できる受注案件がどれであるか、判定することができる。例えば、上記例の場合、判定部13は、寄与DIOの最も大きい受注案件Eの日程計画を変更してCCCを改善すれば、複数の受注案件A〜Eの全体のCCCを効率的に改善できると判定できる。
図14は、複数の受注案件の売上高DIO比および売上総利益DIO比を計算した例を示した図である。図14に示す表45では、図13の表44aと同じデータに基づいて、売上高DIO比と、売上総利益DIO比とを計算している。
売上総利益は、売上高から製造原価を減算すると求まる。売上高DIO比は、売上高を案件DIOで除算すると求まる。売上総利益DIO比は、売上総利益を案件DIOで除算すると求まる。
案件Aと案件Eの売上高DIO比を比較すると、案件Eの方が、売上高の流れが速い。案件Aは、案件DIO「10日」に対して売上高「3M¥」、つまり一ヶ月当り「9M¥」であるのに比べ、案件Eは、案件DIO「120日」に対して売上高「50M¥」、つまり一ヶ月当り「12M¥」程度となっているからである。
ただし、売上総利益DIO比については、案件Eは悪いので、製造原価の低減も重要となる。案件Dは、売上高DIO比および売上総利益DIO比が共に小さく、収益性の悪い案件である。案件Cは、売上高DIO比および売上総利益DIO比が共に大きく、収益性のよい案件である。従って、案件Cに類似する製品の受注案件を増やせば、事業の収益性をよくすることができる。
なお、図13のグラフ44bより、案件Eの売上高は大きい(三角形の高さは高い)が、製造LTが長い(三角形の底辺が長い)。また、案件Aの製造LTは短い(三角形の底辺が短い)が、売上高が小さい(三角形の高さは低い)。一方、収益性のよい案件Cは、売上高も高く、製造LTも短い。
従って、判定部13は、CCC算出部12が算出した複数の受注案件の売上高DIO比または売上総利益DIO比を比較することによって、各受注案件の良否を判定することができる。これにより、ユーザは、例えば、受注案件が良と判定された製品に類似する製品の受注案件を増やせば、事業の収益性をよくすることができる。上記例の場合、ユーザは、案件Cに類似する製品の受注案件を増やせば、事業の収益性をよくすることができる。
また、上記では、DIOを評価対象としたので、生産方法や製造原価といった設計、製造における対策や、生産の日程計画における対策の判断に役に立つ。日程計画方法としては、DIOで評価することは有用である。一方、DSOで評価するならば、営業における受注獲得や回避の判断、受注契約内容や現金収集の対策の判断に役立つ。また、DPOで評価するならば、調達におけるサプライヤとの購買契約内容の対策の判断に役立つ。もちろん、CCCで比較評価して、案件の対策要否を判断することが、設計、製造、調達、営業といった部門間の対策のバラツキ、不整合をなくすために重要である。
複数の受注案件の日程計画方法と、複数の日程計画に対する受注案件CCCの評価とについて説明する。以下では、受注案件は3つとし、各受注案件の製品とも同じ3つの工程を同じ順序で経て、生産されるとする。
図15は、3製品を3工程へ投入する日程計画方法の例を説明するための図である。図15の表46aには、製品1,2,3の工程A,B,Cにおける原価、作業日数、および売上高が示してある。製品は、工程A,B,Cの順に投入される。一つの工程では、1つの製品しか作業できないとし、また製品1,2,3の納期は、3製品で同時であるとする。
図15のグラフ46bは、製品の工程への投入例を示している。横軸は、日付を示し、グラフ46bに示す領域47a〜47c,48a〜48c,49a〜49cの幅は、製造原価の金額の大きさを示している。グラフ46bにおいて、製品1,2,3は、工程A,B,Cの順に投入される。
グラフ46bは、製造原価期間積分も示している。黒い部分は作業中、網掛け部分は滞留(次工程への投入待ち)、白い部分はそれ以外の期間積分を示している。製品1の製造原価累積積分は、領域47a,48a,49aで示され、製品2の製造原価期間積分は、領域47b,48b,49bで示され、製品3の製造原価期間積分は、領域47c,48c,49cで示される。
製品の工程への投入を、製品1,2,3の順とし、まず、製品1が工程Aに投入され、作業が終了したら工程Bに投入される。製品1の完了により工程Aでは、製品2の作業が開始される。製品2の作業が終了したら、工程Bへの投入となるが、工程Bでは製品1が作業中であるため、製品2は待ちの状態である滞留となる。一方、工程Aでは、製品3の作業を開始する。この作業を工程Cまで進めて、工程Cにおいて製品1,2,3の全てが完了する日が納期となるように日程計画する。このような日程計画法を、フォーワード法と呼ぶ。工程Aからの投入の順に日程を計画する方法である。
一方、工程Cでの完成の順に日程計画する方法を、バックワード法と呼ぶ。バックワード法は、完成順が製品1,2,3とするならば、まず、製品3の作業開始時点を求め、開始時点に作業が終了するように、製品2の作業開始時点を求める。製品2の作業開始時点が製品1の作業終了時点となるように、製品1の作業開始時点を求める。工程Bにおいては、製品3の工程Cでの作業開始時点に、工程Bの製品3の作業終了時点となるように、作業開始時点を求める。製品2についても工程Cの作業開始時点が工程Bの作業終了時点となるように作業開始時点を求めるが、もしも、工程Bで製品3が作業中の場合には、製品3の作業開始時点を製品2の作業終了時点とする。この場合、工程Bにおいて製品2は滞留することとなる。以上を工程Aまで繰り返す。バックワード法では、最後に完成する製品の製造LTは最短となる。
なお、スケジューリング部11が、フォーワード法またはバックワード法による、複数の受注案件の製品の日程計画を、スケジューリングする。例えば、スケジューリング部11は、各工程に対する製品の全投入順または全完成順における日程計画を、スケジューリングする。または、スケジューリング部11は、ユーザから指定された、各工程に対する製品の投入順または完成順における日程計画を、スケジューリングする。全ての工程において、製品の投入順および完成順は保たれることとする。
図16は、フォーワード法による3製品の全投入順に対する日程計画結果の製造原価期間積分の例を示した図である。図17は、バックワード法による3製品の全投入順に対する日程計画結果の製造原価期間積分の例を示した図である。図16および図17に示す目盛り一枡について、横方向は1日、縦方向は1M¥である。
図16中の各日程計画の領域において、左上部に製品1〜3の投入順を記載している。また、図17中の各日程計画の領域において、左上部に製品1〜3の完成順を記載している。図16と図17を比較すると、バックワード法は、フォーワード法よりも製造原価期間積分が小さくなっているように観察される。バックワード法は、納期に対して最短で生産していることを意図した日程計画法であると考えられる。
図18は、図16のフォーワード法による日程計画の案件DIOおよび売上高DIO比の計算結果を示した図である。図19は、図17のバックワード法による日程計画の案件DIOおよび売上高DIO比の計算結果を示した図である。
図19に示すように、バックワード法の完成順序「213」において、案件DIOは、「6.7日」と最小となり、売上高DIO比は、「2.68M¥/日」と最大となっている。つまり、バックワード法の完成順序「213」が、CFの観点で最良の日程計画であることが分る。
同じ順序ならば、バックワード法が、案件DIOおよび売上高DIO比について優れるが、順序が異なると、必ずしもバックワード法が優れた結果となるわけではない。例えば、図18に示すフォーワード法の投入順序「213」は、図19に示すバックワード法の完成順序「312」よりも優れている。このように、単純にバックワード法ならば最良の結果が得られることにはならない点に注意が必要である。
実際には、3つの受注案件よりも多くの受注案件を対象に日程を計画する。また、工程数も、実際は3工程より多い。全ての工程への投入順序を評価することは、実現できない可能性もある。図15の表46aに示した、製造原価、作業日数といった製造LT、売上高といった条件も併せて評価して、投入順を変更し、また、特定の製品の日程を固定する、などして生産スケジューリングにより日程計画を繰り返すことが、より良い日程計画を見出すための、対処方法となる。
このように、スケジューリング部11は、フォーワード法またはバックワード法によって、複数の受注案件の製品の工程への投入順または完成順を変えた、複数の日程計画をスケジューリングする。そして、CCC算出部12は、スケジューリング部11によってスケジューリングされた複数の日程計画に対する案件CCC(案件DIO)または売上高DIO比を算出する。これにより、判定部13は、CCC算出部12によって算出された案件CCCまたは売上高DIO比によって、複数の受注案件の製品の工程への投入順または完成順を変えた、複数の日程計画の中から、CFの良い日程計画を判定することができる。例えば、上記例の場合、判定部13は、完成順序が「213」の日程計画のCFがよいと判定できる。
以上説明したように、日程計画装置1のスケジューリング部11は、受注案件の製品の生産に関する情報を記憶した生産情報DB21および生産基準DB22を参照し、受注案件の日程計画をスケジューリングする。そして、CCC算出部12は、受注案件の製品を構成する原材料の会計イベント情報、製造原価情報、調達情報、および販売情報を記憶した生産原価累積モデルDB23、製造原価情報DB24、調達情報DB25、および販売情報DB26を参照し、スケジューリング部11がスケジューリングした受注案件の日程計画における受注案件CCCを算出する。これにより、日程計画装置1は、受注案件の日程計画に対するCCCを算出することができる。
また、日程計画装置1は、受注案件の日程計画に対するCCCを算出するので、ユーザは、会社全体または事業部全体ではなく、受注案件ごとにおいて、お金の支出および収入を評価することができる。
また、判定部13は、CCC算出部13によって算出されたCCCによって、受注案件の日程計画の良否を判定する。例えば、判定部13は、算出された受注案件CCCと所定の閾値とを比較することにより、日程計画の良否を判定する。これにより、ユーザは、CFのよい日程計画を得ることができる。
また、CCC算出部12は、受注案件の製品の売上高または売上総利益を、受注案件CCCで除算して、売上高CCC比または売上総利益CCC比を算出する。これにより、ユーザは、例えば、売上高CCC比または売上総利益CCC比のよい製品に類似する製品の受注案件を増やせば、事業の収益性をよくすることができる。
また、CCC算出部12は、複数の受注案件の日程計画におけるCCCを算出し、各受注案件の日程計画における受注案件CCCを、全体の受注案件CCCで除算して、寄与CCCを算出する。これにより、ユーザは、例えば、寄与CCCの大きい受注案件の日程計画を改善することによって、複数の受注案件の全体のCCCを、効率的に改善することができる。
また、スケジューリング部11は、複数の受注案件の製品の、工程への投入順または完成順を変えた複数の日程計画をスケジューリングし、CCC算出部12は、スケジューリングされた複数の日程計画のCCCまたは売上高CCC比を算出する。これにより、ユーザは、CFのよい日程計画を得ることができる。
なお、出力部14は、スケジューリング部11またはCCC算出部12の計算結果をディスプレイに出力してもよい。例えば、出力部14は、図4〜図6、図8、図13〜図19の結果をディスプレイに出力してもよい。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、会計期間の締切りの前後に費用発生日、収益発生日、支出日、収入日を調整することについて説明する。
図20は、本発明の第2の実施の形態に係る日程計画装置の機能ブロック構成例を示した図である。図20では、図1と異なる部分について説明する。
図20に示すように、日程計画装置50は、調整部51を有している。調整部51は、会計期間の締切りの前後の費用発生日、収益発生日、支出日、収入日を調整する。会計期間の締切日は、入力部15がユーザから受付ける。
図21は、費用発生日および支出日の調整を説明する図である。図21には、4つの受注案件における製造原価期間積分と買入債務期間積分との例が示してある。グラフ61aは、当初計画の製造原価を示し、グラフ61bは、当初計画の買入債務を示している。また、グラフ62aは、当期の支出を減らすように計画変更された製造原価を示し、グラフ62bは、当期の支出を減らすように計画変更された買入債務を示している。
図21に示す三角形は、期間積分を示している。生産の開始からしばらくの間、原材料は、購入および検収されるため費用が発生する。買入債務は、支出により無くなる。
グラフ61aに示すように、当初計画では、2つの受注案件A,Bの製造原価期間積分61aa,61abは、当期生産着手、来期売上の計画である。ただし、グラフ61bに示すように、買入債務期間積分61baは、来期の支出、買入債務期間積分61bbは、当期の支出となっている。
会社の業績目標の観点で、期末に現金のストックが多いことが望まれている状況である場合、調整部51は、今期中の支出をできるだけ防止するよう日程計画を調整する。
グラフ61bの買入債務期間積分61baと、買入債務期間積分61bbとを比較すると、買入債務期間積分61bbの方が買入債務の金額が大きい。そこで、調整部51は、期末に近い買入債務期間積分61ba,61bbのうち、買入債務の金額が大きい買入債務期間積分61bbの支出を、期末以降として日程計画を調整する。調整部51は、受注案件Bの生産着手を遅らせることで、原材料の納期を遅らせ、支出日を来期とする。また、調整部51は、生産リソースを有効活用するために、受注案件Aの生産着手を早期化するように調整する。
変更後の日程計画をグラフ62a,62bに示す。グラフ62bの買入債務期間積分62ba,62bbに示すように、当期の支出は削減される。グラフ62aの製造原価期間積分62aa,62abに示すように、受注案件Aの生産着手は早められ、受注案件Bは遅らされる。調整部51は、工場のリソースの制約を満足する生産スケジューリングを活用することで、実現可能な日程計画を調整する。
図22は、収益発生日および収入日の調整を説明する図である。図22には、4つの受注案件における製造原価期間積分と売上債権期間積分との例が示してある。グラフ71aは、当初計画の製造原価を示し、グラフ71bは、当初計画の売上債権を示している。また、グラフ72aは、当期の収入を向上するように計画変更された製造原価を示し、グラフ72bは、当期の収入を向上するように計画変更された売上債権を示している。図22に示す三角形は、期間積分を示している。
収益の発生と収入は、製品の納期と顧客の支出時期の契約で決まることとなる。よって営業部門の受注交渉の段階で、スケジューリング部11は、日程計画をスケジューリングし、調整部51は、収入を向上するように日程計画を調整する。
グラフ71aの製造原価期間積分71aa,71ab,71acに対応する受注案件A,B,Cは、受注交渉中であるが、売上の額や製品の規模などは、交渉においておよそ見積もられており、過去に類似の規模の案件を生産しているとする。また、交渉において、顧客の支出までの期間も会話されているとする。
現在の交渉の段階における受注案件A,B、Cの売上債権期間積分は、グラフ71bの売上債権期間積分71ba,71bb,71bcとなっている。売上債権期間積分71bcは、期末のすぐ後に支出され、売上債権期間積分71bbは、売掛期間が短い。また、売上債権期間積分71baは、売掛期間が長い。そこで、調整部51は、今期の収入を増やすために、受注案件B,Cの収入日を期末よりも前となるように日程計画を調整する。例えば、調整部51は、工場のリソースの制約を満足する生産スケジューリングの結果として、グラフ72a,72bに示す日程計画を得る。グラフ72aに示すように、受注案件B,Cの生産を早め、その代わりに、受注案件Aの生産を遅らす内容である。これにより、受注案件B,Cについては、グラフ72bに示すように、今期に収入を得られる。一方、受注案件DSOの大きい受注案件Aは、来期に回される。
生産の実現可能な日程計画であるため、工場との議論が必要となる、特別な生産の調整をすることなく、営業は、顧客と交渉を進めることができる。または、現在の工場のリソースでは生産できないことも、生産スケジューリングの結果で判断できるので、顧客の納期などの要望に対し検討を進めていくことができる。また、調整部51は、図5に示したように、前受金によるCF向上も評価して、受注案件を調整することも可能である。
このように、調整部51は、原材料の要求納期が、入力部15で指定された日(例えば、期首または期末)の前または後となるように、受注案件の日程計画を調整する。また、調整部51は、買入債務の支払日が、入力部15で指定された日の前または後となるように、受注案件の日程計画を調整する。また、調整部51は、受注案件の製品の納期が、入力部15で指定された日の前または後となるように受注案件の日程計画を調整する。また、調整部51は、売上債権の収入日が、入力部15で指定された日の前または後となるように受注案件の日程計画を調整する。これにより、ユーザは、CFのよい日程計画を得られる。
なお、支出日、収入日を会計期間締切りの前後とするように日程を調整する例を示したが、これは財務会計的にCFを向上することを意味する。費用発生日、収益発生日の日程の調整も可能であり、この場合、財務会計的には損益フローを向上することを意味する。損益フローを優先する日程計画も有り得る。
また、当期の現金が増加するような計画調整について示したが、これを方法として限定するものではない。当期の現金が減少するような計画調整もあり得る。調達品の価格や生産した製品の価格など、他にもCFに影響する項目があるため、それらも含めて評価することは重要である。
また、会計期間締切りの前後に日程を調整する説明を行ったが、特に現金については必ずしも会計期間に対応して調整が必要とされるものではない。現金の用途目的に応じる。実際には任意の指定した日に対して日程計画を調整することが想定される。
以下、本発明の日程計画装置1,50の機能を実現するコンピュータについて説明する。
図23は、コンピュータのハードウェア構成例を示した図である。機器配置装置1,50は、例えば、図18に示すようなコンピュータ100によって、その機能が実現される。コンピュータ100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置111と、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置112と、HDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置113と、有線又は無線により通信ネットワークと接続するための通信インターフェイス(I/F)114と、マウス、キーボード、タッチセンサーやタッチパネルなどの入力装置115と、液晶ディスプレイなどの表示装置116と、DVD(Digital Versatile Disk)などの持ち運び可能な記憶媒体に対する情報の読み書きを行う読み書き装置117と、を備える。
例えば、図1および図20に示した各部の機能は、補助記憶装置113などから主記憶装置112にロードされた所定のプログラムを演算装置111が実行することで実現される。入力部15は、例えば、演算装置111が入力装置115を利用することで実現される。出力部14は、例えば、演算装置111が表示装置116を利用することで実現される。また、図1および図20の記憶部20は、例えば、演算装置111が主記憶装置112または補助記憶装置113を利用することで実現される。
なお、上記の所定のプログラムは、例えば、読み書き装置117により読み取られた記憶媒体からインストールされてもよいし、通信I/F114を介してネットワークからインストールされてもよい。
本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、主に受注生産品のCFの評価方法と日程計画方法に関するものとしたが、量産品であっても製品種別に、製造原価、原材料の調達、販売についての情報が得られるならば、本方法を適用可能である。製品種別でなくても、例えば、ロットといった生産、調達、販売のまとまりの単位でも、組合せCCCに関して示したように、本方法を適用可能である。また、対象は製品や生産ではなく、商品や商売であっても良い。個別の商品に対して受注案件CCCの計算方法は本発明記載と同様である。また、商売において、1つの商品の販売に1つの仕入が対応するとは限らない。複数の仕入をまとめて組合せ(セット)販売する場合には、製造原価累積モデルで表現されるような在庫の期間積分でDIOを計算することとなる。
また、上記した実施例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に置くことができる。また、本発明は、日程計画装置の日程計画方法、日程計画方法を実現するプログラム、および当該プログラムを記憶した記憶媒体として提供することもできる。