JP6351781B1 - フェライト系ステンレス鋼、スペーサ、およびスペーサの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一般に、上記プラッタ11は、その基板として、アルミニウム基板(アルミ基板)またはガラス基板が用いられる。また、プラッタ11の基板を形成する材料と、スペーサ12を形成する材料とは、互いの熱膨張率の差を小さくすることが要求される。そのため、アルミ基板を用いて形成されたプラッタ(アルミプラッタ)とアルミニウム製のスペーサ(アルミ製スペーサ)との組合せ、およびガラス基板を用いて形成されたプラッタ(ガラスプラッタ)とフェライト系ステンレス鋼製のスペーサ(ステンレス製スペーサ)との組合せが用いられている。
本発明の実施の形態におけるフェライト系ステンレス鋼について、図2を参照しながら説明する。図2は、フェライト系ステンレス鋼について、精密打抜き加工を行った後の打抜き端面50を模式的に示す断面図である。なお、本明細書において、フェライト系ステンレス鋼は、長い薄板としてのストリップであってもよいし、例えばストリップが細長く切断された形状の鋼材であってもよい。
Crはステンレス鋼に必須の元素であり、耐食性を確保するためにCr濃度は10質量%以上とする。ただし、Crを多量に含有すると、ステンレス鋼が過度に硬質化し、打抜き性が損なわれる。そのため、Cr濃度は25質量%以下とする。
フェライト系ステンレス鋼は、S含有量が多いと、該鋼中に存在する、MnSを主体とするA系の介在物が多くなる。このA系の介在物は、打抜き端面において亀裂起点として作用する。そのため、A系の介在物が多いと、打抜き端面における破断面の割合が増える。
本実施の形態のフェライト系ステンレス鋼は、以下のようにしてスキンパス(調質圧延)を施されている。すなわち、先ず、熱延材(鋼帯)が、各種の圧延工程、酸洗工程、および焼鈍工程を経た後、さらに、仕上げの焼鈍工程を経て冷延焼鈍鋼板が製造される。この冷延焼鈍鋼板に対してスキンパスを施し、本実施の形態のフェライト系ステンレス鋼を製造する。なお、スキンパスを施す前の工程における各種の圧延工程等は、特に限定されるものではない。
TiNを主体とする介在物が鋼中に存在する場合、精密打抜き加工におけるせん断面率が向上する。この理由については、以下のように推定される。すなわち、TiNは、非常に硬質な介在物であって、数μm〜10μmの非定型塊状形態にて鋼中に分散している。精密打抜き加工において、せん断変形が進行中に、分離先端がTiNに会合したとき、TiNが硬質であるため、これを避ける形で分離が進行する。そのため、局部的な応力集中を招くことがない。また、TiNは、形態が塊状であることから、分離を枝分かれさせることなくせん断変形が進行する。よって、破断面の生成が抑制される。
フェライト系ステンレス鋼の表面が過度に硬質になると、せん断変形の破面における塑性流動が円滑に進まず、早期に破断面を生成することになる。また、精密打抜き加工を行う金型の寿命が顕著に低下することを防止することが好ましい。これらの観点から、ステンレス鋼板の表面硬さをビッカース硬度で180HV以下に制限することが好ましい。
本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼は、上記以外の元素として、Al、Nb、V、Zr、およびREM(希土類金属)のうちの一種又は二種以上をさらに含んでいてもよい。
本発明において対象とするフェライト系ステンレス鋼は、上記以外の元素として、C、Si、Mn、Ni、P、Mo、Cu等の元素を必要に応じて含んでいてよい。また、フェライト系ステンレス鋼の各成分の含有率として、以下のようなものが好ましい。
本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼を打ち抜くことにより、ハードディスクドライブ用のスペーサを製造する方法の一例について説明する。
先ず、精密打抜き加工工程では、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼に対して、金型を用いて精密打ち抜き加工を行う。上記フェライト系ステンレス鋼に対して、外径打抜き加工を行い、次に内径打抜き加工を行うことにより、リング形状の鋼材(研磨前スペーサ)を得る。
次に、打ち抜き加工により得られたリング形状の鋼材に対して、例えば砥粒としてラップ剤(ダイヤモンドスラリー)を用いて、ラッピング加工を行い、リング形状の鋼材の表面を研磨する。そして、ラッピング加工後の上記鋼材を、粒子状の研磨剤および媒材(コンパウンド)とともにバレル容器に入れ、バレル研磨を行い、バリ取りをする。ここで、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼によれば、研磨前スペーサの打抜き端面性状が改善されている、すなわち打抜き端面におけるダレの発生が抑制されている。そのため、ラッピング研磨およびバレル研磨における研磨時間を低減し、削り代を少なくすることができる。そして、スペーサに与える研磨負荷を低減することができ、スペーサに反りが発生することを抑制することができる。したがって、生産効率を向上させることができるとともに、材料歩留りを向上させることができる。
以上のように、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼は、Crを10〜20質量%含有することにより、耐食性を得ることができる。また、Sの含有量を0.005質量%以下にすることにより、精密打抜き加工におけるせん断面率を高めることができる。Sが多量に含有されると、MnSを主体とするA系の介在物が多くなる。A系の介在物は、打抜き端面において亀裂起点として作用するため、破断面の割合を増加させる。
表1に示す成分・組成を有するフェライト系ステンレス鋼を、電気溶解炉によりそれぞれ40kg溶解し、鋳造した。10mm厚、200mm幅に切り出したインゴットを1230℃で2時間溶体化処理後、熱延により板厚3mmの鋼帯とした。この鋼帯を800℃で10秒の焼鈍後、酸洗し、種々の厚みに冷延した後、温度860℃、均熱時間0秒の連続焼鈍・酸洗を行い、冷延焼鈍鋼板を製造した。この冷延焼鈍鋼板に対してスキンパスを施すことにより板厚2mmのストリップを得た。当該ストリップに対して精密打抜き加工を複数回行い、直径20mmのリングを複数作製した。
表2に示す成分・組成を有するフェライト系ステンレス鋼のストリップ(板厚2mm)を実施例1と同様の方法で製造した。スキンパスについては、伸び率が0.2%以上となるように施しており、ストリップの表面硬さは180HV以下になっている。これらのストリップに対して精密打抜き加工を複数回行い、直径20mmのリングを複数作製した。そして、当該精密抜き加工を行うことで形成された打ち抜き端面を観察し、そのせん断面率を測定した。
各供試材から切り出した50mm角のサンプルについて、以下の手順で洗浄操作を施し、表面洗浄性測定用試料を得た。洗浄操作のアセトン脱脂以降ならびに表面洗浄性の測定の全工程は、JISB9920で規定されるクラス5のクリーン環境で実施した。
上記サンプルに対して、アセトンを用いた超音波洗浄による脱脂を行った後、フッ素系洗浄液を用いた超音波洗浄を行った。その後、蒸気洗浄および真空乾燥を行い、弱アルカリ系洗剤を用いた超音波洗浄の後、超純水に浸漬するリンシングを行った。そして、サンプルを低速で引き上げ、温風乾燥した。
表面洗浄性の測定は、LPC(リキッド・パーティクル・カウンター)装置を用いて以下の要領で行った。まず、洗浄性測定用試料を浸漬するための超純水をビーカーに入れた。この状態の超純水をLPC装置にセットして超純水中に存在するパーティクルの個数およびサイズ分布を測定し、そのデータから粒子径0.3μm以上の粒子の個数を算出した。算出した値を試料浸漬前のパーティクル数(ブランク測定値)とした。
12 スペーサ
50 打抜き端面
51 ダレ
52 せん断面
Claims (8)
- ハードディスクドライブが備えるスペーサ用のステンレス鋼であって、
Crを10〜20質量%含有し、
Cの含有量が0.12質量%以下、
Siの含有量が1.0質量%以下、
Mnの含有量が1.0質量%以下、
Niの含有量が1.0質量%以下、
Pの含有量が0.05質量%以下、
Cuの含有量が3.0質量%以下、
Moの含有量が1.5質量%以下、
Tiの含有量が0.01質量%以上0.5質量%以下、
Nの含有量が0.001質量%以上0.1質量%以下、
Sの含有量が0.005質量%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
0.2%以上の伸びを実現するスキンパスが施されているフェライト系ステンレス鋼。 - JIS G0555で規定される清浄度の算出方法で算出した清浄度が0.004〜0.02%となるTiNを含有している請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- 表面硬さがビッカース硬度で180HV以下である請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- 0.5〜2%の伸びを実現するスキンパスが施されている請求項1から3のいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- Al、Nb、V、Zr、およびREMのうちの一種または二種以上の元素を、合計で0.50質量%以下含有する請求項1から4のいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
- ハードディスクドライブ用のスペーサであって、
請求項1から5のいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼を打ち抜くことにより製造されているスペーサ。 - 打ち抜き端面のせん断面率が97%以上である請求項6に記載のスペーサ。
- ハードディスクドライブ用のスペーサの製造方法であって、
Crを10〜20質量%含有し、
Cの含有量が0.12質量%以下、
Siの含有量が1.0質量%以下、
Mnの含有量が1.0質量%以下、
Niの含有量が1.0質量%以下、
Pの含有量が0.05質量%以下、
Cuの含有量が3.0質量%以下、
Moの含有量が1.5質量%以下、
Tiの含有量が0.01質量%以上0.5質量%以下、
Nの含有量が0.001質量%以上0.1質量%以下、
Sの含有量が0.005質量%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼に対して、0.2%以上の伸びを実現するスキンパスを施す工
程と、
前記スキンパスを施した鋼板に対して精密打抜き加工を行う工程とを含む製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN110578101A (zh) * | 2019-10-14 | 2019-12-17 | 王平 | 一种海洋用回火索氏体高强韧不锈结构钢及其制备方法 |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2004068118A (ja) * | 2002-08-08 | 2004-03-04 | Nisshin Steel Co Ltd | 精密打抜き加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼 |
JP2013222487A (ja) * | 2012-04-17 | 2013-10-28 | Ordeal Enterprise (Es) Private Ltd | 磁気ディスク装置に用いるスペーサーおよび磁気ディスク装置 |
-
2017
- 2017-03-17 JP JP2017053171A patent/JP6351781B1/ja active Active
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