JP6351781B1 - フェライト系ステンレス鋼、スペーサ、およびスペーサの製造方法 - Google Patents

フェライト系ステンレス鋼、スペーサ、およびスペーサの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】精密打抜き加工を行ったときのダレの発生を抑制する。【解決手段】スペーサ(12)用のステンレス鋼は、Crを10〜20質量%含有し、Sの含有量が0.005質量%以下であり、0.2%以上の伸びを実現するスキンパスが施されている。【選択図】図3

Description

本発明は、ハードディスクドライブが備えるスペーサの成形に用いられるフェライト系ステンレス鋼等に関する。
従来、磁気ディスク装置(例えばハードディスクドライブ)は、小型化および大容量化がますます進展している。記憶容量が大容量な磁気ディスク装置は、複数の磁気ディスクを備え、それらの磁気ディスクの間にリング状のスペーサが挿入されており、スペーサと磁気ディスクとは一緒に回転する。
磁気ディスクの面上における、データ領域の拡大および記録密度の増加に伴って、回転する磁気ディスクのうねり、および歪み等の変形を抑制することに対する要求は、非常に高くなっている。そのため、スペーサの特性として、寸法精度が非常に高いこと、および歪みが少ないことが要求される。
一般に、スペーサは、寸法精度を高くするために、ステンレス鋼を切削加工して製造されていることが多い。この場合、切削性を向上させるため、快削成分であるSまたはPbを多く含むステンレス鋼が用いられる。また、一般的に、被切削材をチャック(固定器具)に固定してリング状に切削する工程が行われており、材料歩留りが低い。そのため、上記ステンレス鋼を切削加工して製造されるスペーサの製造コストは高い。
特許文献1には、上記快削成分の含有量が少なく比較的安価なフェライト系ステンレス鋼板を打抜き加工して、スペーサを製造する技術が記載されている。具体的には、先ず、表面硬度のバラツキが平均値を中心として上下4%以内、結晶粒度番号が5.0〜9.0、並びに、残留圧縮応力が80MPa以下であるフェライト系ステンレス鋼の圧延板材を製造する。そして、この圧延板材を打抜き加工することによりリング状に加工して、スペーサを製造する。これにより、スペーサにおける表面硬度等のバラつきを小さくし、スペーサに生じる歪みを低減させている。
特許文献2には、G0555で規定される清浄度で0.004%以上のTiNを含む、打ち抜き端面性状に優れたステンレス鋼が記載されている。
特開2013−222487号公報(2013年10月28日公開) 特開2004−68118号公報(2004年3月4日公開)
しかしながら、打抜き加工においては、一般に、打抜き端面(抜き切り口面)が以下のような状態となる。すなわち、図6に示すように、打抜き端面100には、ダレ(抜きだれ)101、せん断面102、破断面103、およびバリ104が形成されることが多い。これらは、ダイ上に置かれた被加工材料にパンチを押し付けて、該材料を打ち抜く過程における、該材料の変形および割れにより形成される。
精密打抜き加工(例えばファインブランキング)を行う場合には、打抜き端面100におけるせん断面102の割合を増大させることができるが、この場合であっても、ダレ101を低減することは容易ではない。ダレ101が形成されることにより、精密打抜き加工の後工程として、打抜き端面を平坦にする、および寸法精度を高めるための研磨加工が必要となる。この研磨加工に時間を要すると、生産性が低下し、スペーサの製造コストが増大する。また、打抜き加工後の材料には、前段階の種々の加工工程(圧延、焼鈍等)において発生した残留応力が存在している。そのため、上記研磨加工をすることによって、スペーサに反りが生じてしまうことがある。
このような後工程において生じる問題を回避するために、精密打抜き加工後の工程における、研磨量および研磨時間等の研磨負荷を少なくすることが重要である。そのためには、精密打抜き加工後の打抜き端面を、より一層好ましいものとする(特に、ダレ101の発生を抑制する)こと、換言すれば、後工程の研磨による削り代を少なくすることが要望される。
本発明の一態様は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、精密打抜き加工を行ったときのダレの発生を抑制することができるフェライト系ステンレス鋼(特に、ハードディスクドライブが備えるスペーサ用のフェライト系ステンレス鋼)を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を行い、Cr含有量およびS含有量を適切な量に規定し、適切な伸び率を実現するスキンパスを施したフェライト系ステンレス鋼に対して精密打抜き加工を行ったとき、ダレの発生を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼は、ハードディスクドライブが備えるスペーサ用のステンレス鋼であって、Crを10〜20質量%含有し、Sの含有量が0.005質量%以下であり、0.2%以上の伸びを実現するスキンパスが施されている。
本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼は、JIS G0555で規定される清浄度の算出方法で算出した清浄度が0.004〜0.02%となるTiNを含有していることが好ましい。
また、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼は、表面硬さがビッカース硬度で180HV以下であることが好ましい。
また、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼は、0.5〜2%の伸びを実現するスキンパスが施されていることが好ましい。
本発明の一態様におけるスペーサは、ハードディスクドライブ用のスペーサであって、前記フェライト系ステンレス鋼を打ち抜くことにより製造されている。
また、本発明の一態様におけるスペーサは、打ち抜き端面のせん断面率が97%以上である。
本発明の一態様におけるスペーサの製造方法は、ハードディスクドライブ用のスペーサの製造方法であって、Crを10〜20質量%含有し、Sの含有量が0.005質量%以下であるフェライト系ステンレス鋼に対して、0.2%以上の伸びを実現するスキンパスを施す工程と、前記スキンパスを施した鋼板に対して精密打抜き加工を行う工程とを含む。
本発明の一態様によれば、ハードディスクドライブが備えるスペーサを製造するために精密打抜き加工を行ったときのダレの発生を抑制することができるフェライト系ステンレス鋼を提供できる。
本発明の一実施形態におけるスペーサを備えるハードディスクドライブの概要を示す断面図である。 フェライト系ステンレス鋼を精密打抜き加工した場合の、打抜き端面を模式的に示す断面図である。 スキンパスによる冷延焼鈍鋼板の伸び率を変化させた各サンプルについて、精密打抜き加工した打抜き端面に生じるダレ量と上記伸び率との関係を示すグラフである。 スキンパスによる冷延焼鈍鋼板の伸び率を変化させた各サンプルについて、精密打抜き加工した打抜き端面に生じるダレ量、および金型の交換回数が所定の条件を満たしているかどうかを示すグラフである。 C系介在物(TiN)に関する清浄度およびS含有量を変化させた各サンプルが、せん断面率および洗浄性に関する所定の条件をクリアしているかどうかを示すグラフである。 一般的な精密打抜き加工後の打抜き端面を模式的に示す斜視図である。
以下、本発明の実施の形態について、図1および図2に基づいて説明する。なお、以下の記載は発明の趣旨をより良く理解させるためのものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、本出願において、「A〜B」とは、A以上B以下であることを示している。
以下の説明においては、本発明の実施の形態におけるフェライト系ステンレス鋼、およびスペーサについての理解を容易にするために、先ず、複数の磁気ディスク(プラッタ)および複数のスペーサを備える、一般的な仕様のハードディスクドライブの概要を、図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態におけるスペーサを備えるハードディスクドライブ1の概要を示す断面図である。
図1に示すように、ハードディスクドライブ1は、装置内を密閉する密閉ケース状のシュラウド2内に、3枚のプラッタ11を備えている。プラッタ11は、スピンドルモータ20により回転し、プラッタ11の表面から僅かに浮いた磁気ヘッド30が、プラッタ11の書き込みおよび読み取りを行う。
隣り合う2枚のプラッタ11の間にはそれぞれ、スペーサ12が設けられている。このスペーサ12は、リング形状であって、スピンドルモータ20の回転ハブ21の周りを囲んで配置されている。回転ハブ21の上端部に円盤状のクランパ22をネジ23にて締結している。クランパ22の弾性変形によりプラッタ11の内周部を押圧して、複数のプラッタ11と複数のスペーサ12とを、回転ハブ21の底部の大径部分とクランパ22との間に保持している。なお、ネジ23以外の部材により、クランパ22が固定されていてもよい。
上記スペーサ12は、本実施の形態のフェライト系ステンレス鋼を精密打抜き加工して製造することができる。本明細書において、以下では、ハードディスクドライブ1が備えるスペーサ12のことを単に「スペーサ」と称することがある。
次に、上記のようなハードディスクドライブ1が備えるスペーサ12、およびその製造に用いられるフェライト系ステンレス鋼について、本発明の知見の概略的な説明をする。
(発明の知見の概略的な説明)
一般に、上記プラッタ11は、その基板として、アルミニウム基板(アルミ基板)またはガラス基板が用いられる。また、プラッタ11の基板を形成する材料と、スペーサ12を形成する材料とは、互いの熱膨張率の差を小さくすることが要求される。そのため、アルミ基板を用いて形成されたプラッタ(アルミプラッタ)とアルミニウム製のスペーサ(アルミ製スペーサ)との組合せ、およびガラス基板を用いて形成されたプラッタ(ガラスプラッタ)とフェライト系ステンレス鋼製のスペーサ(ステンレス製スペーサ)との組合せが用いられている。
ガラスプラッタは、アルミプラッタよりも硬度が高く、かつ表面の平滑度を高くすることができ、プラッタとしての性能が高い。そのため、近年、ガラスプラッタとステンレス製スペーサとの組合せが積極的に用いられるようになっている。ガラスプラッタとステンレス製スペーサとの組合せを用いたハードディスクドライブは、耐衝撃性(耐久性)に優れるという特徴がある。
前述したように、ステンレス製スペーサは、切削加工にて製造されていることが多い。切削加工においては、チャックに固定した被切削物を切削する際に、種々の力が加えられる。この力と、被切削物の残留応力とから、スペーサには、反りが発生することがある。
ところで、ハードディスクドライブ1には、通常、2.5インチの規格および3.5インチの規格がある。このサイズは、プラッタ11の直径を表している。
2.5インチの規格のハードディスクドライブ1では、ガラスプラッタとステンレス製スペーサとの組合せが用いられている。一方、3.5インチの規格のハードディスクドライブ1は、ガラスプラッタとステンレス製スペーサとの組合せを用いることが難しい。この理由は、以下の(i)および(ii)である。
(i)3.5インチの規格では、スペーサ12の厚みはあまり変わらないまま、2.5インチの規格よりも径が大きくなるため、切削加工および研磨加工におけるスペーサ12の反りが、より一層発生しやすい。
(ii)プラッタ11の直径が比較的大きいため、回転するプラッタ11の変形に及ぼす、スペーサ12の寸法精度および歪みの影響が大きい。
そのため、3.5インチの規格のハードディスクドライブ1では、反りを抑えることが比較的容易なアルミ製スペーサと、アルミプラッタとの組合せが依然として用いられている。
ここで、ハードディスクドライブ1は、大量のデータを保存する用途(ニアライン用途等)に需要があることから、今後ますます3.5インチの規格のハードディスクドライブ1が主流になってくることが想定される。或いは、3.5インチよりも大きな規格のハードディスクドライブ1が用いられる可能性もある。3.5インチ以上の規格のハードディスクドライブ1においても、性能のよいガラスプラッタを用いることが要望される。
このような3.5インチの規格に対応したステンレス製スペーサを、切削加工にて作製することは不可能ではない。しかし、前述のように、切削加工では、製造コストが高くなる、材料歩留りが悪い、および、スペーサに反りが生じやすいといった短所が有る。
3.5インチの規格に対応したステンレス製スペーサを、精密打抜き加工にて製造することができれば、製造コストを低く抑えることができ、材料歩留りを良くすることができる。本発明者らは、経済性を高め、環境負荷を低減するために、3.5インチの規格に対応したステンレス製スペーサを精密打抜き加工を用いて製造することを目指し、鋭意検討を行い、下記のような新たな知見を得て、本発明を想到するに至った。
3.5インチの規格に対応したステンレス製スペーサを精密打抜き加工を用いて製造するためには、精密打抜き加工の後の研磨負荷をなるべく軽減すること、すなわち精密打抜き加工の直後であって研磨前のスペーサ(以下、研磨前スペーサと称することがある)の形状を良くすることが重要である。打抜き端面に発生した僅かなダレは、プラッタの回転の安定性に影響し、ハードディスクドライブの性能に影響する。本発明者らは、研磨前スペーサの打抜き端面性状を良くする方法を種々検討した。
例えば、特許文献2には、精密打抜き加工性に優れたステンレス鋼を製造する技術が知られている。この方法では、フェライト系ステンレス鋼は、ビッカース硬さが160HV以下に軟質化されているとともに、C系介在物であるTiNを所定量以上含むことにより、打抜き端面のせん断面率を向上させている。
しかしながら、材料が軟質になりすぎると、ダレの発生量が多くなり研磨負荷が増える。また、TiNの含有量が高すぎると、後工程における部品洗浄性が悪くなる。ハードディスクドライブは、その内部に汚染物質が有ると動作不良を起こすため、このような部品洗浄性が悪化するフェライト系ステンレス鋼を、スペーサの製造に用いることは難しい。
このような状況の中、本発明者らは、スペーサ製造用の、板厚が薄い(例えば、板厚が6mm未満)のフェライト系ステンレス鋼について、精密打抜き加工を用いてスペーサを製造する方法を種々検討した。その結果、Cr含有量およびS含有量を適切な量に規定したフェライト系ステンレス鋼に、適切なスキンパスを施すことにより、打抜き端面におけるダレの発生を抑制できることを見出した。
Cr含有量は、耐食性の観点から規定されるものであり、S含有量は、フェライト系ステンレス鋼中に含まれるA系介在物であるMnSの濃度を規定する。このMnSは、打抜き端面において亀裂起点として作用し、端面性状を悪化させ得るため、S含有量は0.005質量%以下とする。また、フェライト系ステンレス鋼は、その他の元素を含んでいてもよい。
このようなフェライト系ステンレス鋼に、0.2%以上の伸びを実現するスキンパスを施すことにより、打抜き端面におけるダレの発生を抑制することができる。
スキンパスを施すことによって、ダレの発生が抑制される機構は明らかではないが、(i)転位密度、(ii)介在物の形状および密度、並びに(iii)フェライト系ステンレス鋼の表面硬度、等の変化が影響していると考えられる。
さらには、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼は、JIS G0555で規定される清浄度の算出方法で算出した清浄度が0.004〜0.02%となるTiNを含有していることが好ましい。C系介在物であるTiNは、打抜き端面におけるせん断変形を進行させる。この場合、後工程における部品洗浄性が悪化しない範囲で、打抜き端面におけるダレの発生をより一層抑制することができる。
このような本発明の知見は、従来に無い新しいものであり、以下の点で優れている。本発明によれば、組成を調整し、適切な伸び率にてスキンパスを施したフェライト系ステンレス鋼に対して精密打抜き加工を行うことにより、打抜き端面におけるダレの発生を抑制することができる。これにより、精密打抜き加工の後の研磨前スペーサの形状を、より精度高いものとすることができ、ラッピング研磨等における研磨時間を低減し、削り代を少なくすることができる。
そのため、スペーサに与える研磨負荷を低減することができ、スペーサに反りが発生することを抑制することができる。その結果、例えば3.5インチの規格のハードディスクドライブに用いられるステンレス製スペーサを、精密打ち抜き加工を用いて製造することができる。したがって、生産効率を向上させることができるとともに、材料歩留りを向上させることができる。
また、部品洗浄性の低下を抑制して、スペーサを製造することができる。そのため、スペーサを使用中に、スペーサに付着した揮発性物質により周りの雰囲気が汚染されることが防止され、ハードディスクドライブの用途に適している。
また、上記のようなスキンパス加工の工程を含むことは、工業的に容易に行うことができる。そのため、製造コストを抑制することができる。
ここまで、本発明の知見の概略的な説明をしてきた。次に、本発明の実施の形態におけるフェライト系ステンレス鋼について説明する。
〔フェライト系ステンレス鋼〕
本発明の実施の形態におけるフェライト系ステンレス鋼について、図2を参照しながら説明する。図2は、フェライト系ステンレス鋼について、精密打抜き加工を行った後の打抜き端面50を模式的に示す断面図である。なお、本明細書において、フェライト系ステンレス鋼は、長い薄板としてのストリップであってもよいし、例えばストリップが細長く切断された形状の鋼材であってもよい。
本実施の形態のフェライト系ステンレス鋼では、精密打抜き加工によって形成されたスペーサ用リング40の打抜き端面50におけるダレ51の発生が抑制される。図2において、符号52が付された面はせん断面である。L1は、スペーサ用リング40の厚さを示し、L2は、打抜き端面50の高さ方向における、ダレ51が形成されている領域の長さを示している。本明細書では、L1に対するL1の百分率(L2/L1×100)をダレ量(%)と称し、ダレが形成されている程度を示す数値として利用する。また、打抜き端面50の高さ方向における、L1に対する、せん断面52の形成されている領域の長さの百分率を、せん断面率(%)と称する。
本実施の形態のフェライト系ステンレス鋼は、以下のように規定されている。このように規定されたフェライト系ステンレス鋼を使用することにより、打抜き端面におけるダレ量を低減することができる。具体的には、本実施の形態のフェライト系ステンレス鋼は、精密打抜き加工によって形成されたスペーサ用リング40の打抜き端面50におけるダレ量を3%以下に低減することができる。換言すれば、打ち抜き端面50におけるせん断面率を97%以上とすることができる。
(Cr濃度)
Crはステンレス鋼に必須の元素であり、耐食性を確保するためにCr濃度は10質量%以上とする。ただし、Crを多量に含有すると、ステンレス鋼が過度に硬質化し、打抜き性が損なわれる。そのため、Cr濃度は25質量%以下とする。
Cr含有量の調整方法は特に限定されず、例えば、Cr酸化物の還元反応を制御することによってCr含有量を調整することができる。
(S含有量)
フェライト系ステンレス鋼は、S含有量が多いと、該鋼中に存在する、MnSを主体とするA系の介在物が多くなる。このA系の介在物は、打抜き端面において亀裂起点として作用する。そのため、A系の介在物が多いと、打抜き端面における破断面の割合が増える。
S含有量が0.005質量%を超えると、フェライト系ステンレス鋼は、精密打抜き加工を行った場合においても破断面が生じ、せん断面率が低下する。そこで、本実施の形態のフェライト系ステンレス鋼は、S含有量が0.005質量%以下となっている。
S含有量の調整方法としては、還元・仕上げ製錬期において、Cr酸化物の還元および脱酸を行うときに、脱酸とともに造滓を行うことにより脱硫が生じるため、この脱硫反応を促進することにより、S含有量を低下させることができる。S含有量の調整方法として公知の方法を使用すればよく、当該調整方法は、特に限定されない。
(スキンパス)
本実施の形態のフェライト系ステンレス鋼は、以下のようにしてスキンパス(調質圧延)を施されている。すなわち、先ず、熱延材(鋼帯)が、各種の圧延工程、酸洗工程、および焼鈍工程を経た後、さらに、仕上げの焼鈍工程を経て冷延焼鈍鋼板が製造される。この冷延焼鈍鋼板に対してスキンパスを施し、本実施の形態のフェライト系ステンレス鋼を製造する。なお、スキンパスを施す前の工程における各種の圧延工程等は、特に限定されるものではない。
本実施の形態のフェライト系ステンレス鋼は、伸び率が0.2%以上となるようにスキンパスを施されている。このスキンパス処理により、打抜き端面におけるダレの発生を抑制することができる。具体的には、スキンパスによる伸び率が0.2%以上のとき、打抜き端面におけるダレ量を3%以下に低減することができる。
これに対して、スキンパスによる伸び率が0.2%未満のとき、打抜き端面におけるダレの発生が増大し、ダレ量が3%よりも大きくなる。この場合、後工程における研磨負担が大きくなり得る。
一側面では、打抜き端面におけるダレ量の許容上限を例えば400μmとすると、スキンパスによる冷延焼鈍鋼板の伸び率が0.2%以上とすることにより、上記許容上限よりもダレ量を小さくすることができる。
スキンパスによる冷延焼鈍鋼板の伸び率の制御は、既知の方法を用いて行うことができる。例えば、stoneの論理式を用いて、上記伸び率を予測することができる。そして、実際のスキンパス工程においては、スキンパス装置にてフィードバック制御を行うことにより、適切な伸び率に制御することができる。
また、スキンパスを施すことによって、フェライト系ステンレス鋼の表面が、スキンパスを施す前よりも固くなる。
スキンパスによる冷延焼鈍鋼板の伸び率は、好ましくは、0.5%以上2.0%以下である。この場合、スキンパスによる効果を適度なものとすることができる。すなわち、打抜き端面におけるダレをより効果的に抑制できるとともに、精密打抜き加工を行う金型の寿命が顕著に低下することを防止できる。これに対して、伸び率が2.0%より大きい場合、フェライト系ステンレス鋼の表面が過度に硬くなり、精密打抜き加工を行う金型の寿命が低下し得る。
(TiNの清浄度)
TiNを主体とする介在物が鋼中に存在する場合、精密打抜き加工におけるせん断面率が向上する。この理由については、以下のように推定される。すなわち、TiNは、非常に硬質な介在物であって、数μm〜10μmの非定型塊状形態にて鋼中に分散している。精密打抜き加工において、せん断変形が進行中に、分離先端がTiNに会合したとき、TiNが硬質であるため、これを避ける形で分離が進行する。そのため、局部的な応力集中を招くことがない。また、TiNは、形態が塊状であることから、分離を枝分かれさせることなくせん断変形が進行する。よって、破断面の生成が抑制される。
本実施の形態のフェライト系ステンレス鋼は、JIS G0555に規定される清浄度測定に準じた方法において、TiNが0.004%以上0.02%以下となっている。非常に硬質な介在物であるTiNを、鋼板の清浄度が0.004%以上となる量含んでいることにより、精密打抜き加工におけるせん断面率を向上させることができる。また、鋼板の清浄度が0.02%以下となるようにTiNの濃度の上限が規定されているため、スペーサ用のステンレス鋼として好ましい洗浄性を維持できる。
TiNの清浄度を0.004%以上にするには、0.01質量%以上のTiおよび0.001質量%以上のNを含有することで、通常のステンレス鋼の製造方法で達成することができる。
なお、TiN含有量が多くなるとその効果は飽和するので、Ti量では0.5質量%以下とすることが好ましい。また、Nを過剰に多くすると他の元素と窒化物を形成して硬質化を招くので、N含有量は0.1質量%以下にすることが好ましい。
さらに、Tiは、鋼中の固溶強化元素であるCやNを炭化物や窒化物の形で捕捉して固溶量を低減させるため、素材硬さを低減し、せん断面率を向上させることにも寄与しているものと考えられる。
さらに、TiNが存在する場合、引張試験程度の速度では素材強度を低下させることはないが、精密打抜き加工のような高速変形では、せん断変形抵抗を低減する効果を発揮する。
また、通常、せん断変形抵抗は素材の引張破断強度に比例する。せん断変形抵抗が小さければ、精密打抜き加工時の負荷が少なくなるため、金型がより長寿命化し、より経済的な生産が可能になる。
(ビッカース硬さ)
フェライト系ステンレス鋼の表面が過度に硬質になると、せん断変形の破面における塑性流動が円滑に進まず、早期に破断面を生成することになる。また、精密打抜き加工を行う金型の寿命が顕著に低下することを防止することが好ましい。これらの観点から、ステンレス鋼板の表面硬さをビッカース硬度で180HV以下に制限することが好ましい。
ビッカース硬さを180HV以下にする手法としては、例えば、製造方法としては、加熱温度を高める、または箱型焼鈍のように長時間加熱保持することで結晶粒径を粗大化させる方法などが挙げられる。さらに、成分的には、後述するように、固溶強化元素であるCやNを固定するAl、Nb、V、Zr等の元素を添加することによっても、軟質化が図れる。
(Al、Nb、V、Zr、およびREMのうちの一種又は二種以上)
本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼は、上記以外の元素として、Al、Nb、V、Zr、およびREM(希土類金属)のうちの一種又は二種以上をさらに含んでいてもよい。
ここで、Al、Nb、V、Zr、およびREMは、固溶強化元素であるCやNと炭化物あるいは窒化物を形成して、母相を軟質化する効果を有する。したがって、これらの元素を含有することで母相の硬さが低減し、せん断面率向上に寄与する。ただし、フェライト系ステンレス鋼中に、これらの元素を、CおよびNの含有量以上に過度に含有させると、これらの元素が母相に固溶して硬質化を招く。したがって、これら元素の上限は0.50質量%以下とする。
(その他の元素)
本発明において対象とするフェライト系ステンレス鋼は、上記以外の元素として、C、Si、Mn、Ni、P、Mo、Cu等の元素を必要に応じて含んでいてよい。また、フェライト系ステンレス鋼の各成分の含有率として、以下のようなものが好ましい。
Cは、α−γ変態点温度を上昇させる。よって高温域までの再結晶温度を確保するためには必要な元素である。ただし、過度に含有すると炭化物量が増加し、耐食性が劣化するため、その上限を0.12質量%とすることが好ましい。
Siは、製鋼時の脱酸剤として有効な元素である。ただし、Siを多量に含有すると固溶強化によりステンレス鋼が過度に硬質化し、打抜き加工性を低下させる。したがって、その上限を1質量%とすることが好ましい。
Mnは、高温域におけるオーステナイト相の割合を増加させるため、熱間圧延時の加工性向上に有効である。しかし、Mnは過度に含有するとMnSとして鋼中に存在し、せん断破面性状を劣化させる。そのため、上限を1質量%にすることが好ましい。
Niは、Mnと同様に、高温域におけるオーステナイト相の割合を増加させるため、熱間圧延時の加工性向上に有効である。しかし、過度に含有するとα−γ変態点温度が低下し、十分な再結晶温度を確保できなくなる。また、高価な元素でもある。したがってNi含有量の上限は1質量%とすることが好ましい。
Pは、その含有量に応じて熱間加工性を低下させるので、その含有量上限は0.05質量%にすることが好ましい。
Moは、耐食性向上に有効な元素である。しかし過度に含有すると硬質化する。したがって、Moを含有させる場合、その上限は、1.5質量%にとどめることが好ましい。
Cuは、高温域におけるオーステナイト相の割合を増加させるため、熱間圧延時の加工性向上に有効である。しかし、熱延温度域における固溶限以上を超えて含有すると、かえって熱間加工性が低下する。したがって、Cuを含有させる場合、その上限を3質量%とすることが好ましい。
〔製造方法〕
本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼を打ち抜くことにより、ハードディスクドライブ用のスペーサを製造する方法の一例について説明する。
(精密打抜き加工工程)
先ず、精密打抜き加工工程では、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼に対して、金型を用いて精密打ち抜き加工を行う。上記フェライト系ステンレス鋼に対して、外径打抜き加工を行い、次に内径打抜き加工を行うことにより、リング形状の鋼材(研磨前スペーサ)を得る。
上記金型としては、例えば、外径30mm、内径25mm、板厚4mmのものが挙げられる。また、打ち抜き最大荷重は、例えば約3.2トンである。
(後工程)
次に、打ち抜き加工により得られたリング形状の鋼材に対して、例えば砥粒としてラップ剤(ダイヤモンドスラリー)を用いて、ラッピング加工を行い、リング形状の鋼材の表面を研磨する。そして、ラッピング加工後の上記鋼材を、粒子状の研磨剤および媒材(コンパウンド)とともにバレル容器に入れ、バレル研磨を行い、バリ取りをする。ここで、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼によれば、研磨前スペーサの打抜き端面性状が改善されている、すなわち打抜き端面におけるダレの発生が抑制されている。そのため、ラッピング研磨およびバレル研磨における研磨時間を低減し、削り代を少なくすることができる。そして、スペーサに与える研磨負荷を低減することができ、スペーサに反りが発生することを抑制することができる。したがって、生産効率を向上させることができるとともに、材料歩留りを向上させることができる。
その後、バレル研磨後の上記鋼材を洗浄する。ここで、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼は、JIS G0555で規定される清浄度の算出方法で算出した清浄度が0.004〜0.02%となるTiNを含有していることが好ましい。この場合、打抜き端面におけるダレの発生をより一層抑制することができるとともに、部品洗浄性が悪化しない。
以上のように、本発明の一態様におけるハードディスクドライブ用のスペーサの製造方法により、比較的低コストにて、高性能な加工面および高度な寸法精度を有するハードディスクドライブ用のスペーサを得ることができる。
(まとめ)
以上のように、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼は、Crを10〜20質量%含有することにより、耐食性を得ることができる。また、Sの含有量を0.005質量%以下にすることにより、精密打抜き加工におけるせん断面率を高めることができる。Sが多量に含有されると、MnSを主体とするA系の介在物が多くなる。A系の介在物は、打抜き端面において亀裂起点として作用するため、破断面の割合を増加させる。
さらに、0.2%以上の伸びを実現するスキンパスを施すことにより、鋼板が硬質になり、打抜き端面におけるダレを抑制できる。そのため、ハードディスクドライブ用のスペーサを精密打抜き加工により製造するためのステンレス鋼板として好ましい鋼板を実現できる。
(実施例1)
表1に示す成分・組成を有するフェライト系ステンレス鋼を、電気溶解炉によりそれぞれ40kg溶解し、鋳造した。10mm厚、200mm幅に切り出したインゴットを1230℃で2時間溶体化処理後、熱延により板厚3mmの鋼帯とした。この鋼帯を800℃で10秒の焼鈍後、酸洗し、種々の厚みに冷延した後、温度860℃、均熱時間0秒の連続焼鈍・酸洗を行い、冷延焼鈍鋼板を製造した。この冷延焼鈍鋼板に対してスキンパスを施すことにより板厚2mmのストリップを得た。当該ストリップに対して精密打抜き加工を複数回行い、直径20mmのリングを複数作製した。
Figure 0006351781
図3は、スキンパスによる冷延焼鈍鋼板の伸び率を変化させた各サンプルについて、精密打抜き加工した打抜き端面に生じるダレ量と、上記伸び率との関係を示すグラフである。ここで、ダレ量の許容上限を400μmとしている。
図3に示すように、スキンパスによる伸び率が0.2%未満の場合には、ダレ量が許容上限である400μmより大きく、不適であった。一方、スキンパスによる伸び率を0.2%以上とすると、ダレ量が低減し、許容上限を下回った。
図4は、スキンパスによる冷延焼鈍鋼板の伸び率を変化させた各サンプルについて、精密打抜き加工した打抜き端面に生じるダレ量、および金型の交換回数が所定の条件を満たしているかどうかを示すグラフである。図4のグラフでは、精密打抜き加工により形成されたリングの打抜き端面のダレ量が3%以内であり、かつ打ち抜きポンチ(金型)の交換回数が、リング5000個/回以上(つまり、1個のポンチでリングを5000個以上打ち抜ける)である場合に、白抜きのシンボルを使用した。逆に、精密打抜き加工により形成されたリングの打抜き端面のダレ量が3%を超えているか、打ち抜きポンチ(金型)の交換回数がリング5000個/回未満である場合に黒のシンボルを使用した。
図4に示すように、スキンパスによる伸び率が0.2%未満の場合には、ダレ量が3%を超えていた。また、ここに図示しない他の比較例において、ストリップの表面硬さが180HVを超えている場合には、打ち抜きポンチの交換回数がリング5000個/回未満であった。
この結果から、スキンパスによる冷延焼鈍鋼板の伸び率は、0.2%であることが好ましく、ストリップの表面硬さは、180HV以下であることが好ましいことが明らかになった。
(実施例2)
表2に示す成分・組成を有するフェライト系ステンレス鋼のストリップ(板厚2mm)を実施例1と同様の方法で製造した。スキンパスについては、伸び率が0.2%以上となるように施しており、ストリップの表面硬さは180HV以下になっている。これらのストリップに対して精密打抜き加工を複数回行い、直径20mmのリングを複数作製した。そして、当該精密抜き加工を行うことで形成された打ち抜き端面を観察し、そのせん断面率を測定した。
せん断面率が97%以上のものを○と評価し、97%未満のものを×と評価した。
Figure 0006351781
その結果、表2に示すように、No.7〜14、16、19、20のサンプルについて、せん断面率が97%よりも大きくなった。それ以外のサンプルでは打ち抜き端面に微小の破断面が見られ、不適であった。これは、S含有量が0.005質量%を超えていることから、MnSを主体とするA系の介在物が多くなったことが一因と考えられる。
また、上記ストリップに対して次に説明する方法により洗浄性の評価を行った。
〔洗浄性の評価〕
各供試材から切り出した50mm角のサンプルについて、以下の手順で洗浄操作を施し、表面洗浄性測定用試料を得た。洗浄操作のアセトン脱脂以降ならびに表面洗浄性の測定の全工程は、JISB9920で規定されるクラス5のクリーン環境で実施した。
<洗浄操作>
上記サンプルに対して、アセトンを用いた超音波洗浄による脱脂を行った後、フッ素系洗浄液を用いた超音波洗浄を行った。その後、蒸気洗浄および真空乾燥を行い、弱アルカリ系洗剤を用いた超音波洗浄の後、超純水に浸漬するリンシングを行った。そして、サンプルを低速で引き上げ、温風乾燥した。
<パーティクル数の評価>
表面洗浄性の測定は、LPC(リキッド・パーティクル・カウンター)装置を用いて以下の要領で行った。まず、洗浄性測定用試料を浸漬するための超純水をビーカーに入れた。この状態の超純水をLPC装置にセットして超純水中に存在するパーティクルの個数およびサイズ分布を測定し、そのデータから粒子径0.3μm以上の粒子の個数を算出した。算出した値を試料浸漬前のパーティクル数(ブランク測定値)とした。
次に、前記の超純水の入ったビーカーに洗浄性測定用試料を浸漬して一定時間の超音波洗浄を施し、試料表面に付着していたパーティクルを超純水中に抽出した。その後、この超純水中に存在するパーティクルの個数およびサイズ分布をLPC装置にて測定し、粒子径0.3μm以上の粒子の個数を算出した。そして、算出した値と前記ブランク測定値との差を、試料から抽出されたパーティクル数とした。このとき、同一液についてLPC装置で3回以上の測定を行い、その平均値を採用した。同種の試料について3サンプルを用いて、試験数n=3で上記の測定を行い、その平均値を当該溝浄度測定用試料に付着して残存していたパーティクル数とした。この値から、鋼板表面の単位面積当たりにおける「洗浄試料のパーティクル付着数」を算出した。
その結果、表2に示すように、No.7〜14、17、21のサンプルについて、単位面積当たりにおけるパーティクル付着数が10以下になった。
これら2つの実験の結果をまとめて図5に示す。図5は、C系介在物(TiN)に関する清浄度(以下、介在物清浄度)およびS含有量を変化させた各サンプルが、せん断面率および洗浄性に関する所定の条件をクリアしているかどうかを示すグラフである。図5では、せん断面率が97%よりも大きく、かつ単位面積当たりにおけるパーティクル付着数が10以下になった場合に白抜きのシンボルを使用し、そうでないサンプルを黒のシンボルを使用した。
図5に示すように、介在物清浄度が0.004%より大きくなるとせん断面率が上昇するが、0.02%を超えるとせん断面率が低下する傾向にある。また、Sの含有量が0.005%よりも高いと洗浄性が低下する傾向にある。これら2つのファクターを考慮すると、介在物清浄度が0.004%より大きく0.02%以下であり、かつSの含有量が0.005%以下である場合に、せん断面率が97%よりも大きくなることが明らかとなった。
また、洗浄性については、介在物清浄度が0.02%を超えると洗浄性が所望の基準よりも低下することが明らかになった。
これらの結果を総合すると、介在物清浄度が0.004%より大きく0.02%以下であり、かつSの含有量が0.005%以下である場合に、せん断面率が97%よりも大きくなり、かつ洗浄性が所望の基準を満たすことが明らかとなった。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組合せて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
1 ハードディスクドライブ
12 スペーサ
50 打抜き端面
51 ダレ
52 せん断面

Claims (8)

  1. ハードディスクドライブが備えるスペーサ用のステンレス鋼であって、
    Crを10〜20質量%含有し、
    Cの含有量が0.12質量%以下、
    Siの含有量が1.0質量%以下、
    Mnの含有量が1.0質量%以下、
    Niの含有量が1.0質量%以下、
    Pの含有量が0.05質量%以下、
    Cuの含有量が3.0質量%以下、
    Moの含有量が1.5質量%以下、
    Tiの含有量が0.01質量%以上0.5質量%以下、
    Nの含有量が0.001質量%以上0.1質量%以下、
    Sの含有量が0.005質量%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    0.2%以上の伸びを実現するスキンパスが施されているフェライト系ステンレス鋼。
  2. JIS G0555で規定される清浄度の算出方法で算出した清浄度が0.004〜0.02%となるTiNを含有している請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  3. 表面硬さがビッカース硬度で180HV以下である請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  4. 0.5〜2%の伸びを実現するスキンパスが施されている請求項1から3のいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  5. Al、Nb、V、Zr、およびREMのうちの一種または二種以上の元素を、合計で0.50質量%以下含有する請求項1から4のいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  6. ハードディスクドライブ用のスペーサであって、
    請求項1からのいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼を打ち抜くことにより製造されているスペーサ。
  7. 打ち抜き端面のせん断面率が97%以上である請求項に記載のスペーサ。
  8. ハードディスクドライブ用のスペーサの製造方法であって、
    Crを10〜20質量%含有し、
    Cの含有量が0.12質量%以下、
    Siの含有量が1.0質量%以下、
    Mnの含有量が1.0質量%以下、
    Niの含有量が1.0質量%以下、
    Pの含有量が0.05質量%以下、
    Cuの含有量が3.0質量%以下、
    Moの含有量が1.5質量%以下、
    Tiの含有量が0.01質量%以上0.5質量%以下、
    Nの含有量が0.001質量%以上0.1質量%以下、
    Sの含有量が0.005質量%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼に対して、0.2%以上の伸びを実現するスキンパスを施す工
    程と、
    前記スキンパスを施した鋼板に対して精密打抜き加工を行う工程とを含む製造方法。
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