JP6351780B1 - フェライト系ステンレス鋼およびスペーサ - Google Patents

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Abstract

【課題】熱間鍛造時における変形抵抗を従来よりも低減できるフェライト系ステンレス鋼を実現する【解決手段】フェライト系ステンレス鋼は、熱間鍛造して成形品を製造するために使用されるフェライト系ステンレス鋼であって、Crの含有量が10〜20質量%であり、Nbの含有量が0.05質量%未満である。【選択図】なし

Description

本発明は、熱間鍛造による成形品の製造に好適なフェライト系ステンレス鋼、および当該ステンレス鋼を用いて製造されるスペーサに関する。
従来、磁気ディスク装置(例えばハードディスクドライブ)は、小型化および大容量化がますます進展している。記憶容量が大容量な磁気ディスク装置は、複数の磁気ディスクを備え、それらの磁気ディスクの間にリング状のスペーサが挿入されており、スペーサと磁気ディスクとは一緒に回転する。
磁気ディスクの面上における、データ領域の拡大および記録密度の増加に伴って、回転する磁気ディスクのうねり、および歪みなどの変形を抑制することに対する要求は、非常に高くなっている。そのため、スペーサの特性として、寸法精度が非常に高いこと、および歪みが少ないことが要求される。
一般に、スペーサは、寸法精度を高くするために、ステンレス鋼を切削加工して製造されていることが多い。この場合、切削性を向上させるため、快削成分であるSまたはPbを多く含むステンレス鋼が用いられる。また、一般的に、被切削材をチャック(固定器具)に固定してリング状に切削する工程が行われており、材料歩留りが低い。そのため、上記ステンレス鋼を切削加工して製造されるスペーサの製造コストは高い。
また、特許文献1には、上記快削成分の含有量が少なく比較的安価なフェライト系ステンレス鋼板を打抜き加工して、スペーサを製造する技術が記載されている。具体的には、まず、表面硬度のバラツキが平均値を中心として上下4%以内、結晶粒度番号が5.0〜9.0、並びに、残留応力が80MPa以下であるフェライト系ステンレス鋼の圧延板材を製造する。そして、この圧延板材を打抜き加工することによりリング状に加工して、スペーサを製造する。これにより、スペーサにおける表面硬度などのバラつきを小さくし、スペーサに生じる歪みを低減させている。
ところで、ハードディスクドライブには、通常、2.5インチの規格および3.5インチの規格があり、大量のデータを保存する用途(例えば、ニアライン用途など)に需要があることから、今後ますます3.5インチの規格のハードディスクドライブが主流になってくることが想定される。また、ガラスプラッタとステンレス製スペーサとの組合せを用いたハードディスクドライブは、アルミプラッタとアルミ製スペーサとの組合せを用いたハードディスクドライブよりも耐衝撃性(耐久性)に優れるという特徴がある。3.5インチの規格のハードディスクドライブにおいて、ガラスプラッタとステンレス製スペーサとの組合せを用いるためには、ステンレス製スペーサの寸法精度がより要求される。
特許文献1の技術では、2.5インチの規格のハードディスクドライブに用いられるスペーサを製造するには適しているが、3.5インチの規格のハードディスクドライブに用いられるスペーサを製造するには、打抜き加工後のスペーサの残留応力が十分には低くなく、要求される寸法精度を達成することは困難であるという問題がある。
この問題を解決するために、特許文献2に記載されているような熱間鍛造によりスペーサを製造することが考えられる。
特開2013−222487号公報(2013年10月28日公開) 特開2004−9080号公報(2004年1月15日公開)
しかしながら、ハードディスクドライブに用いられるスペーサのように比較的小さい成形品を熱間鍛造により製造する場合、当該成形品の温度が下がりやすい。そのため、従来のステンレス鋼を用いて成形品を製造する場合、熱間鍛造において当該成形品が硬くなり(すなわち、変形抵抗が大きくなり)、製造されたスペーサに残留応力が残りやすいという問題がある。残留応力は、スペーサが変形する要因となり、商品の品質の低下につながる可能性がある。
本発明の一態様は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、熱間鍛造時における変形抵抗を従来よりも低減できるフェライト系ステンレス鋼を実現することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るフェライト系ステンレス鋼は、熱間鍛造して成形品を製造するために使用されるフェライト系ステンレス鋼であって、Crの含有量が10〜20質量%であり、Nbの含有量が0.05質量%未満である。
上記の構成によれば、高温における強度を向上させるNbの含有量が0.05質量%未満と小さいので、熱間鍛造時におけるフェライト系ステンレス鋼の変形抵抗を小さくすることができる。
本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼は、Mnの含有量が0.60質量%以下であることが好ましい。
上記の構成によれば、フェライト系ステンレス鋼を熱間鍛造して製造した熱間鍛造成形品に形成されるスケールを容易に除去することができる。
本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼は、0.05〜0.50質量%のTiを含有することが好ましい。
上記の構成によれば、TiがCまたはNと反応することにより、フェライト系ステンレス鋼を900〜1000℃においてフェライト系単相とすることができる。
本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼は、0.0002〜0.01質量%のBを含有することが好ましい。
上記の構成によれば、フェライト系ステンレス鋼を使用して製造された成形品の二次加工性を向上させることができる。
本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼は、熱間鍛造してリング形状を有する熱間鍛造成形品を製造するために使用されてもよい。
本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼において、前記熱間鍛造成形品は、ハードディスクドライブが備えるスペーサであってもよい。
本発明の一態様に係るスペーサは、ハードディスクドライブが備えるスペーサであって、上記のフェライト系ステンレス鋼を熱間鍛造して成形されたスペーサである。
本発明の一態様に係るスペーサは、前記スペーサはリング形状を有しており、前記スペーサの径方向に対して垂直な軸方向における残留応力の絶対値が75MPa以下であることが好ましい。
本発明の一態様によれば、熱間鍛造時における変形抵抗を従来よりも低減できるフェライト系ステンレス鋼を実現できるという効果を奏する。
ハードディスクドライブの構造を示す断面図である。 本発明の実施例における圧縮変形抵抗測定試験を説明するものであり、(a)は、本発明の実施例、または比較例のフェライト系ステンレス鋼を用いて作製した試験片の形状を示す斜視図であり、(b)は圧縮変形抵抗測定試験の様子を示す側面図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の記載は発明の趣旨をより良く理解させるためのものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、本出願において、「A〜B」とは、A以上B以下であることを示している。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、熱間鍛造による成形品(熱間鍛造成形品)の製造に好適なステンレス鋼であり、特に、比較的小さく(例えば、直径50mm以下、または高さ20mm以下)、かつ、高い寸法精度を求められる成形品を製造するのに好適なステンレス鋼である。
(フェライト系ステンレス鋼の成分組成)
本発明の一実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼が含有する成分の組成は、以下のとおりである。なお、以下に示す各成分以外は、鉄(Fe)、または不可避的に混入する少量の不純物である。
(クロム:Cr)
Crはフェライト系ステンレス鋼に必須の元素であり、耐食性を確保するためにCr濃度は10質量%以上とする。ただし、Crを多量に含有すると、ステンレス鋼が過度に硬質化するため、Cr濃度は20質量%以下とする。
Crの含有量の調整方法は特に限定されず、例えば、Cr酸化物の還元反応を制御することによってCrの含有量を調整することができる。
(ニオブ:Nb)
Nbは、高温領域において、固溶または析出強化によりフェライト系ステンレス鋼の強度を向上させる元素である。したがって、熱間鍛造時におけるフェライト系ステンレス鋼の変形抵抗を小さくするためには、Nbの含有量はできるだけ少ないほうがよく、本実施形態では、0.05質量%未満である。
(マンガン:Mn)
Mnは、フェライト系ステンレス鋼におけるスケールの密着性を向上させる元素である。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、Mnの含有量ができるだけ少ないほうがよく、0.60質量%以下であることが好ましい。
(チタン:Ti)
Tiは、CまたはNと反応することにより、フェライト系ステンレス鋼を900〜1000℃においてフェライト系単相にすることができる元素である。また、Tiは、Nbと異なり高温でのフェライト系ステンレス鋼の強度向上にはほとんど寄与しない。一方で過剰なTiの添加は、ステンレス鋼の表面性状に悪影響を及ぼし、製造性を損なう。本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、0.05〜0.50質量%のTiを含有することが好ましい。
なお、従来のフェライト系ステンレス鋼では、NbをCまたはNと反応させることにより、フェライト系ステンレス鋼を900〜1000℃においてフェライト系単相としていた。しかし、本発明のフェライト系ステンレス鋼は、上述したように、Nbの含有量が0.05質量%未満と非常に少ない。そのため、0.05〜0.50質量%のTiを含有させることが有効となる。
(ホウ素:B)
Bは、フェライト系ステンレス鋼を使用して製造された成形品の二次加工性を向上させる元素である。そのため、フェライト系ステンレス鋼がBを0.0002質量%以上含有することが好ましい。ただし、Bを過剰に含有させると、Bの化合物が介在物(不純物)となってしまうため、Bの含有量は、0.01質量%以下であることが好ましい。
(炭素:C)
Cは、α−γ変態点温度を上昇させる。よって高温域までの再結晶温度を確保するためには必要な元素である。ただし、過度に含有すると炭化物量が増加し、耐食性が劣化するため、Cの含有量は、0.08質量%以下であることが好ましい。
(ケイ素:Si)
Siは、製鋼時の脱酸剤として有効な元素である。ただし、Siを多量に含有すると固溶強化によりステンレス鋼が過度に硬質化する。したがって、Siの含有量は、0.8質量%以下であることが好ましい。
(リン:P)
Pは、その含有量に応じて熱間加工性を低下させる。そのため、Pの含有量、0.04質量%以下であることが好ましい。
(硫黄:S)
フェライト系ステンレス鋼においてSの含有量が多いと、該鋼中に存在する、MnSを主体とするA系の介在物が多くなる。そのため、Sの含有量は、0.03質量%以下であることが好ましい。
Sの含有量の調整方法としては、還元・仕上げ製錬期において、Cr酸化物の還元および脱酸を行うときに、脱酸とともに造滓を行うことにより脱硫が生じるため、この脱硫反応を促進することにより、Sの含有量を低下させることができる。Sの含有量の調整方法として公知の方法を使用すればよく、当該調整方法は、特に限定されない。
(ニッケル:Ni)
Niは、高温域におけるオーステナイト相の割合を増加させるため、熱間圧延時の加工性向上に有効である。しかし、過度に含有するとα−γ変態点温度が低下し、十分な再結晶温度を確保できなくなる。また、Niは、高価な元素でもある。そのため、Niの含有量は、0.5質量%以下であることが好ましい。
(窒素:N)
Nを過剰に添加すると他の元素と窒化物を形成して硬質化を招く。そのため、Nの含有量は、0.05質量%以下であることが好ましい。
(Al、Zr、およびREMのうちの一種または二種以上)
本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼は、上記以外の元素として、バナジウム(V)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、およびREM(希土類金属)のうちの一種または二種以上をさらに含んでいてもよい。
ここで、V、Al、Zr、およびREMは、固溶強化元素であるCと炭化物を形成し、固溶強化元素であるNと窒化物を形成して、母相を軟質化する効果を有する。ただし、フェライト系ステンレス鋼中に、これらの元素を、CおよびNの含有量以上に過度に含有させると、これらの元素が母相に固溶して硬質化を招く。したがって、これら元素の含有量は、0.50質量%以下とすることが好ましい。
(その他の元素)
本発明において対象とするフェライト系ステンレス鋼は、上記以外の元素として、モリブデン(Mo)、銅(Cu)などの元素を必要に応じて含んでいてよい。また、フェライト系ステンレス鋼におけるMoおよびCuの含有量として、以下のようなものが好ましい。
Moは、耐食性向上に有効な元素である。しかし過度に含有すると硬質化する。したがって、Moを含有させる場合、その含有量の上限は、1.5質量%にとどめることが好ましい。
Cuは、高温域におけるオーステナイト相の割合を増加させるため、熱間圧延時の加工性向上に有効である。しかし、熱延温度域における固溶限以上を超えて含有すると、かえって熱間加工性が低下する。したがって、Cuを含有させる場合、その含有量の上限を3質量%とすることが好ましい。
(本実施形態のフェライト系ステンレス鋼の主たる特徴)
次に、本発明の一態様のフェライト系ステンレス鋼の主たる特徴について、ハードディスクドライブが備えるスペーサを製造する例を用いて説明する。なお、本発明のフェライト系ステンレス鋼を用いて、ハードディスクドライブが備えるスペーサ以外の成形品を製造することもできる。特に、本発明のフェライト系ステンレス鋼は、比較的小さく(例えば、直径50mm以下、または高さ20mm以下)、かつ、高い寸法精度を求められる成形品を製造するための鋼板として好適である。
まず、一般的なハードディスクドライブ1の構造について図1を参照しながら説明する。図1は、ハードディスクドライブ1の構造を示す断面図である。
図1に示すように、ハードディスクドライブ1は、装置内を密閉する密閉ケース状のシュラウド2内に、3枚のプラッタ11を備えている。プラッタ11は、スピンドルモータ20により回転し、プラッタ11の表面から僅かに浮いた磁気ヘッド30が、プラッタ11の書き込みおよび読み取りを行う。
隣り合う2枚のプラッタ11の間にはそれぞれ、スペーサ12が設けられている。このスペーサ12は、リング形状であって、スピンドルモータ20の回転ハブ21の周りを囲んで配置されている。回転ハブ21の上端部に円盤状のクランパ22をネジ23にて締結している。クランパ22の弾性変形によりプラッタ11の内周部を押圧して、複数のプラッタ11と複数のスペーサ12とを、回転ハブ21の底部の大径部分とクランパ22との間に保持している。なお、ネジ23以外の部材により、クランパ22が固定されていてもよい。
ハードディスクドライブには、通常、2.5インチの規格および3.5インチの規格がある。3.5インチの規格のハードディスクドライブにおいて、ガラスプラッタとステンレス製スペーサとの組合せを用いるためには、ステンレス製スペーサの寸法精度がより要求される。
ここで、本発明の一態様に係るスペーサ12の製造方法について説明する。スペーサ12の製造では、まず、平板状に作製されたフェライト系ステンレス鋼を打抜くことにより、リング状の部材を作製する。次に、リング状のフェライト系ステンレス鋼に対して、板厚方向に沿って熱間鍛造により圧力を加える。これにより、リング状のフェライト系ステンレス鋼を圧縮しスペーサ12を製造する。なお、フェライト系ステンレス鋼をリング状にする方法は、上記のように打抜く方法に限られず、例えば、筒状に作製されたフェライト系ステンレスを切断して切り出すことによって行ってもよい。
本発明の一態様のフェライト系ステンレス鋼は、上述したように、Nbの含有量が0.05質量%未満である。そのため、熱間鍛造時における変形抵抗が小さい。それゆえ、本発明の一態様のフェライト系ステンレス鋼を熱間鍛造してスペーサ12を成形する場合、熱間鍛造を行う金型への負荷を低減できる。また、本発明のフェライト系ステンレス鋼は、高温における、回復温度および再結晶温度を上昇させる(換言すれば、回復速度および再結晶速度を低下させる)Nbの含有量が小さいため、熱間鍛造時における圧縮応力の除去が容易となる。そのため、本発明の一態様のフェライト系ステンレス鋼を熱間鍛造して成形されたスペーサ12は、残留応力が小さくなる。したがって、本発明の一態様のフェライト系ステンレス鋼を熱間鍛造して成形されたスペーサ12は、残留応力による変形が生じにくくなり、3.5インチの規格のハードディスクドライブに用いられるスペーサに要求される寸法精度を満たすことが容易になる。好ましくは、スペーサ12の板厚方向(図1に示す上下方向、スペーサ12の径方向に対して垂直な軸方向)における残留応力の絶対値は、75Mpa以下である。
また、本発明の一態様のフェライト系ステンレス鋼は、上述したように、Mnの含有量が0.60質量%以下である。これにより、本発明の一態様のフェライト系ステンレス鋼を熱間鍛造して成形されたスペーサ12は、熱間鍛造時に形成されるスケールの密着性が低くなる。その結果、熱間鍛造後のスケール除去工程において、スケールを容易に除去することができ、作業性が向上する。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の実施例について基づいて説明すれば以下のとおりである。
本実施例では、実施例1〜10、および比較例1のフェライト系ステンレス鋼を作製した。それぞれのフェライト系ステンレス鋼が有する成分・組成を下記の表1に示す。なお、表1に示す組成は、すべて質量%を示している。
Figure 0006351780
実施例1〜10、および比較例1のフェライト系ステンレス鋼は、以下のように作製した。まず、電気溶解炉によりそれぞれ30kg溶解し、鋳造した。鋳造したインゴットから厚さ35mm、幅100mmのサンプルを切り出し、1230℃で2時間の溶体化処理を施した後、熱間圧延により板厚8mmの鋼板とした。次に、熱間圧延した鋼板に対して、850℃で均熱時間30秒の焼鈍、および酸洗を施し、熱延焼鈍酸洗板を作製した。
実施例1〜10のフェライト系ステンレス鋼は、それぞれ、Nbの含有量が0.05質量%未満である。それに対して、比較例1のフェライト系ステンレス鋼は、Nbの含有量が0.254質量%である。
<圧縮変形抵抗測定試験>
実施例1〜10、および比較例1のフェライト系ステンレス鋼を用いて作製した試験片に対して、圧縮変形抵抗試験を行った。図2は、本実施例における圧縮変形抵抗測定試験を説明するものであり、(a)は、実施例1〜10、または比較例1のフェライト系ステンレス鋼を用いて作製した試験片の形状を示す斜視図であり、(b)は圧縮変形抵抗測定試験の様子を示す側面図である。まず、図2の(a)に示すように、それぞれのフェライト系ステンレス鋼から内径5mm、外径10mm、および高さ7.5mmのリング形状の試験片を切削により作製した。
次に、作製したそれぞれの試験片について、圧縮変形抵抗としての流動応力を測定した。具体的には、図2の(b)に示すように、試験片を金型に設置した後、上部から金型を押圧することにより試験片を圧縮し、圧縮時の試験片の圧縮変形抵抗(流動応力)を測定した。圧縮変形抵抗測定試験の詳細な条件は、下記表2に示すとおりである。
Figure 0006351780
実施例1〜10、または比較例1のフェライト系ステンレス鋼を用いて作製した試験片を用いて測定した流動応力を下記の表3に示す。
Figure 0006351780
表3に示すように、実施例1〜10のフェライト系ステンレス鋼を用いて作製した試験片では、800℃における流動応力が300N/mm未満であり、一方、比較例1のフェライト系ステンレス鋼を用いて作製した試験片では、800℃における流動応力が340N/mmであった。これは、実施例1〜10のフェライト系ステンレス鋼では、Nbの含有量が0.05質量%未満であることにより、それぞれの試験片の変形抵抗が小さいためである。
<スケール除去性試験>
実施例1〜10、および比較例1のフェライト系ステンレス鋼に対して、スケール除去性試験を行った。スケール除去性試験では、まず、実施例1〜10、および比較例1のフェライト系ステンレス鋼から5cm角の試験片を作製した。次に、作製したそれぞれの試験片を、大気雰囲気、900℃で1時間加熱した。これにより、それぞれの試験片の表面にスケールを形成させた。次に、スケールを形成させたそれぞれの試験片にたいして、5秒間ショットブラスト処理を行い、スケールの除去を行った。スケール除去性試験では、ショットブラスト処理後のそれぞれの試験片の表面を目視で確認することにより、それぞれの試験片にスケールが残存しているか否かについて確認した。
その結果、実施例1〜4、6〜10および比較例1のフェライト系ステンレス鋼を用いて作製した試験片ではスケールが残存していなかったのに対して、実施例5のフェライト系ステンレス鋼を用いて作製した試験片ではスケールが残存していた。これは、実施例1〜4、6〜10および比較例1のフェライト系ステンレス鋼では、Mnの含有量が0.60質量%以下と小さいため、試験片へのスケールの密着性が低いためである。
<残留応力測定試験>
実施例2、6および比較例1のフェライト系ステンレス鋼を用いて作製した試験片に対して、残留応力測定試験を行った。それぞれの試験片は、上記圧縮変形抵抗測定試験において作製した試験片と同様に作製した。ただし、それぞれの試験片の内径を25mm、外径を30mmとした。
残留応力測定試験では、まず。それぞれの試験片を大気炉で900℃に加熱した後、50mm/分のストローク速度で、圧縮率30%の熱間鍛造を行った。次に、X線回折装置(XRD)を用いて、熱間鍛造したそれぞれの試験片の板厚方向(熱間鍛造において圧力が加えられる方向、試験片の径方向に対して垂直な軸方向)における残留応力の測定を行なった。
その結果、比較例1のフェライト系ステンレス鋼を用いて作製した試験片では残留応力が90MPaの圧縮応力であったのに対し、実施例2、6のフェライト系ステンレス鋼を用いて作製した試験片では残留応力がそれぞれ68MPa、75MPaと小さい値を示した。これは、回復温度および再結晶温度を上昇させるNbの含有量が小さいため、熱間鍛造時における圧縮応力が低減したためである。
ハードディスクドライブが備えるスペーサとしては、残留応力が80MPa以下であることが好ましく、実施例2のフェライト系ステンレス鋼は、この条件を満たしている。
1 ハードディスクドライブ
12 スペーサ

Claims (11)

  1. 熱間鍛造して成形品を製造するために使用されるフェライト系ステンレス鋼であって、
    Crの含有量が10〜20質量%
    Cの含有量が0.08質量%以下、
    Siの含有量が0.8質量%以下、
    Mnの含有量が0.89質量%以下、
    Pの含有量が0.04質量%以下、
    Sの含有量が0.03質量%以下、
    Niの含有量が0.5質量%以下、
    Nの含有量が0.05質量%以下、
    Nbの含有量が0.05質量%未満であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼。
  2. 熱間鍛造して成形品を製造するために使用されるフェライト系ステンレス鋼であって、
    Crの含有量が10〜20質量%であり、
    0.08質量%以下のCと、
    0.11質量%以上0.7質量%以下のSiと、
    0.12質量%以上0.89質量%以下のMnと、
    0.04質量%以下のPと、
    0.03質量%以下のSと、
    0.5質量%以下のNiと、
    0.05質量%以下のNと、を含有し、かつ
    Nbの含有量が0.05質量%未満であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼。
  3. Mnの含有量が0.60質量%以下である請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  4. 0.05〜0.50質量%のTiを含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  5. 0.0002〜0.01質量%のBを含有する請求項1〜のいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  6. V、Al、Zr、およびREMのうちの一種または二種以上の元素を、合計で0.50質量%以下含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  7. 1.5質量%以下のMo、および3質量%以下のCuのいずれか1つ以上を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  8. 熱間鍛造してリング形状を有する熱間鍛造成形品を製造するために使用される請求項1〜のいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  9. 前記熱間鍛造成形品は、ハードディスクドライブが備えるスペーサである請求項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  10. ハードディスクドライブが備えるスペーサであって、
    請求項に記載のフェライト系ステンレス鋼を熱間鍛造して成形されたスペーサ。
  11. 前記スペーサはリング形状を有しており、
    前記スペーサの径方向に対して垂直な軸方向における残留応力の絶対値が75MPa以下である請求項10に記載のスペーサ。
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