(第1実施形態)
図1−図16を参照して、本発明によるデジタルカメラ(撮影装置、レンズ交換式の撮影システム)10の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、デジタルカメラ10は、ボディ本体20と、このボディ本体20に着脱可能(レンズ交換可能)な撮影レンズ30とを備えている。撮影レンズ30は、被写体側(図1中の左側)から像面側(図1中の右側)に向かって順に、撮影レンズ群(撮影光学系)31と、絞り(撮影光学系)32とを備えている。ボディ本体20は、被写体側(図1中の左側)から像面側(図1中の右側)に向かって順に、シャッタ(撮影光学系)21と、イメージセンサ22とを備えている。ボディ本体20は、撮影レンズ30への装着状態で絞り32とシャッタ21を駆動制御する絞り/シャッタ駆動回路23を備えている。撮影レンズ群31から入射し、絞り32とシャッタ21を通った被写体光束による被写体像が、イメージセンサ22の受光面上に形成される。イメージセンサ22の受光面上に形成された被写体像は、マトリックス状に配置された多数の画素によって、電気的な画素信号に変換され、画像データとしてDSP40に出力される。DSP40は、イメージセンサ22から入力した画像データに所定の画像処理を施して、これをLCD24に表示し、画像メモリ25に記憶する。ボディ本体20には、電源スイッチやレリーズスイッチなどの各種スイッチからなる撮影操作スイッチ26が設けられている。
イメージセンサ22は、イメージセンサ保持ユニット50によって保持されている。図示は省略しているが、イメージセンサ22は、パッケージと、このパッケージに収納される固定撮像素子チップと、この固体撮像素子チップを密封保護するようにパッケージに固定される蓋部材とを含む複数の構成要素を有している。
撮影レンズ群31は、その光学要素として、被写体側(図1中の左側)から像面側(図1中の右側)に向かって順に、第1レンズ31Aと、第2レンズ31Bと、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cとを有している。撮影レンズ群31は、第1レンズ31A〜第3レンズ31Cの少なくとも一部をズームレンズ群とし、焦点距離に応じてこのズームレンズ群を光軸方向に移動させるズーミング機能を有している。撮影レンズ群31は、第1レンズ31A〜第3レンズ31Cの少なくとも一部をフォーカスレンズ群とし、被写体距離に応じてこのフォーカスレンズ群を光軸方向に移動させるフォーカシング機能を有している。
第3レンズ31Cは、像振れ補正ユニット(駆動機構)31Dによって、撮影レンズ群31の光軸Zと直交するX軸方向とY軸方向を含む平面内(以下では「光軸直交平面内」と呼ぶ)に移動可能に支持されている。
図2に示すように、像振れ補正ユニット31Dは、被写体側から像面側に向かって順に、いずれも光軸Zを囲む全環状または不完全環状をなす、ベースプレート110と、第1ヨーク120と、像振れ補正レンズ保持枠(第3レンズ保持枠)130と、第2ヨーク140と、固定枠150と、ロック環160とを有している。ベースプレート110、第1ヨーク120、第2ヨーク140及び固定枠150は、撮影レンズ30の鏡筒内に固定的に支持されている。像振れ補正レンズ保持枠130は、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを保持しており、撮影レンズ30の鏡筒内で、ベースプレート110、第1ヨーク120、第2ヨーク140及び固定枠150に対して光軸直交平面内で移動可能に支持されている。ロック環160は、撮影レンズ30の鏡筒内で、ベースプレート110、第1ヨーク120、第2ヨーク140及び固定枠150に対して回動自在に支持されている。
固定枠150は、光軸Zを中心とする円周壁の一部が切り欠かれて中央部が開口された短円筒容器状に形成されている。固定枠150には、該固定枠150を被写体側から見たときの筒内底面の周方向の3箇所に位置する3個のボールリテーナ151が設けられている。固定枠150には、ロック環160を回動駆動するためのロック環駆動モータ152が搭載されている。固定枠150には、Y方向(垂直方向)に延びるYガイド部153が一体に形成されている。
像振れ補正レンズ保持枠130は、ともに光軸Zを中心とする略円環状をなす、樹脂製の枠部131と、金属製の支持板部132とを有している。枠部131は、その中央の円形開口内に第3レンズ31Cが嵌着支持されている。支持板部132は、枠部131の前面の円周に沿って取り付けられている。像振れ補正レンズ保持枠130の支持板部132には、その円周に沿って、Y方向(垂直方向)に延びるX駆動コイル133Xと、X方向(水平方向)に延びるY駆動コイル133Yとが設けられている。X駆動コイル133XとY駆動コイル133Yは、それぞれ、円周接線方向に長軸を有する長円型となるように細導線を巻回してなり、像振れ補正レンズ保持枠130を板厚方向に貫通して光軸方向の両側に露呈された状態に形成されている。像振れ補正レンズ保持枠130の枠部131には、X位置検出用マグネット134XとY位置検出用マグネット134Yが設けられている。像振れ補正レンズ保持枠130には、周方向に対向させて、それぞれ矩形をなす微小開口寸法の一対の挿通孔135が板厚方向に貫通形成されている。像振れ補正レンズ保持枠130の像面側には、X方向(水平方向)に延びるXガイド部(図示せず)が一体に形成されている。
第2ヨーク140は、光軸Zを中心とする略半円弧状をなす透磁性のある金属板から形成されている。第2ヨーク140の被写体側の面には、Y方向(垂直方向)に延びるXマグネット141Xと、X方向(水平方向)に延びるYマグネット141Yとが設けられている。第2ヨーク140には、その略半円弧状の両端部に位置させて、光軸方向に沿って被写体側に突出した所要の長さの一対のポスト142が立設されている。一対のポスト142は、それぞれ、長さ方向の両端部と中間部の3箇所に細径部142aが形成されたダンベル形状をなしており、その後端部(細径部142a)が第2ヨーク140にかしめ固定されている。
第1ヨーク120は、第2ヨーク140と同様に、光軸Zを中心とする略半円弧状をなす透磁性のある金属板から形成されている。第1ヨーク120の像側の面には、Y方向(垂直方向)に延びるXマグネット121Xと、X方向(水平方向)に延びるYマグネット121Yとが設けられている。第1ヨーク120には、その略半円弧状の両端部に位置させて、第2ヨーク140に立設された一対のポスト142がそれぞれ嵌合可能な一対の支持孔122が穿設されている。
第1ヨーク120と第2ヨーク140によれば、Xマグネット121XとXマグネット141XがX駆動コイル133Xを挟んで対向し、Yマグネット121YとYマグネット141YがY駆動コイル133Yを挟んで対向するので、各マグネット121X、121Y、141X、141Yの磁束密度を増大させることができる。
ベースプレート110は、光軸Zを中心とする略円環板状に形成されている。ベースプレート110には、その径方向に対向させて、周方向に離間した一対の支持孔111が形成されている。この一対の支持孔111は、像振れ補正レンズ保持枠130の一対の挿通孔135及び第1ヨーク120の一対の支持孔122に対応する位置に形成されており、像振れ補正レンズ保持枠130の一対の挿通孔135及び第1ヨーク120の一対の支持孔122を通った一対のポスト142の前端部(細径部142a)が嵌合固定されるようになっている。ベースプレート110には、固定枠150の3個のボールリテーナ151に対応させて、周方向の3箇所に位置する3個のボールリテーナ112が設けられている。またベースプレート110には、ホール素子台113X、113Yがそれぞれ支持されている。これらのホール素子台113X、113Yは、それぞれ、支持腕113によってベースプレート110に取り付けられており、支持腕113の取付位置を調整することで、ベースプレート110上における各ホール素子台113X、113Yの取付位置を微調整することができる。さらに、ベースプレート110の後面には、フレキシブル基板170が取り付けられる。このフレキシブル基板170は、後面にホール素子171X、171Yを搭載する素子基板172X、172Yを有しており、ベースプレート110への取付状態において、ホール素子171X、171Yは、それぞれ、ホール素子台113X、113Yに対向するように支持される。フレキシブル基板170は、その両側に伸びる2つの電極173を有しており、この2つの電極173がそれぞれ、像振れ補正レンズ保持枠130に搭載されているX駆動コイル133XとY駆動コイル133Yの電極に接続される。
ベースプレート110、第1ヨーク120、像振れ補正レンズ保持枠130及び第2ヨーク140は、この順序で光軸方向に重ねられた状態で、固定枠150の前面に組み立てられる。図3は、像振れ補正ユニット31Dを組み立てた状態におけるポスト142の長手方向に沿った拡大断面図である。第2ヨーク140は固定枠150の前面に沿って配設されるが、第2ヨーク140の後面から突出しているポスト142の後端部(細径部142a)が固定枠150に設けた固定孔154に内挿されることによって固定枠150に対する連結と位置決めが行なわれる。次いで、前面側から像振れ補正レンズ保持枠130が配設され、像振れ補正レンズ保持枠130の挿通穴135が第2ヨーク140のポスト142の細径部142aに挿通されることによって、像振れ補正レンズ保持枠130が第2ヨーク140と固定枠150に対して位置決めされる。ここで、挿通穴135の開口寸法がポスト142の細径部142aの径寸法よりも大きいので、像振れ補正レンズ保持枠130は第2ヨーク140と固定枠150に対して光軸直交平面内での相対移動が可能である。さらに、像振れ補正レンズ保持枠130の前面側に第1ヨーク120が配設される。第1ヨーク120の支持孔122がポスト142の前端部(細径部142a)に嵌合されることにより、第1ヨーク120が第2ヨーク140と固定枠150に対して位置決めされるとともに第2ヨーク140に一体化されることになる。同様にして、ベースプレート110を第1ヨーク120の前面側に配設すると、ベースプレート110の支持孔111がポスト142の前端部(細径部142a)に嵌合されることにより、ベースプレート110が第1ヨーク120に対して位置決めされるとともに第1ヨーク120に一体化されることになる。
このようにベースプレート110、第1ヨーク120、像振れ補正レンズ保持枠130、第2ヨーク140及び固定枠150を組み立てると、像振れ補正レンズ保持枠130が、ベースプレート110のボールリテーナ112と固定枠150のボールリテーナ151によって、円周方向に離間した3箇所において光軸方向に挟持され、像振れ補正レンズ保持枠130の光軸方向の位置決めが行われる。この状態では、像振れ補正レンズ保持枠130は、光軸方向に対して垂直に向けられた姿勢が維持されるとともに、ベースプレート110のボールリテーナ112と固定枠150のボールリテーナ151の間において光軸直交平面内で円滑に移動することが可能とされている。
また、このようにベースプレート110、第1ヨーク120、像振れ補正レンズ保持枠130、第2ヨーク140及び固定枠150を組み立てると、Xマグネット121XとXマグネット141XがX駆動コイル133Xを挟んで対向することによりX磁気アクチュエータが構成され、Yマグネット121YとYマグネット141YがY駆動コイル133Yを挟んで対向することによりY磁気アクチュエータが構成される。Xマグネット121XとXマグネット141Xは、それぞれの対向面にS極とN極が中立域(着磁されていない領域)を設けずに隣接して着磁された端面2極マグネットで構成されており、それぞれのS極とN極を対向させている。したがって、Xマグネット121XとXマグネット141Xの間には対向する方向に沿った磁気回路が構成され、この磁気回路内に配置されたX駆動コイル133Xに駆動信号(駆動電流)を流すことにより、X駆動コイル133XにはX方向の駆動力が発生することになり、像振れ補正レンズ保持枠130はX方向に移動されることになる。同様に、Yマグネット121YとYマグネット141Yは、それぞれの対向面にS極とN極が中立域(着磁されていない領域)を設けずに隣接して着磁された端面2極マグネットで構成されており、それぞれのS極とN極を対向させている。したがって、Yマグネット121YとYマグネット141Yの間には対向する方向に沿った磁気回路が構成され、この磁気回路内に配置されたY駆動コイル133Yに駆動信号(駆動電流)を流すことにより、Y駆動コイル133YにはY方向の駆動力が発生することになり、像振れ補正レンズ保持枠130はY方向に移動されることになる。
像振れ補正レンズ保持枠130は、固定枠150に設けたYガイド部153と、像振れ補正レンズ保持枠130に設けたXガイド部(図示せず)によって、光軸直交平面内の移動(X軸方向とY軸方向の移動)が規制されている。図2に示すように、像振れ補正レンズ保持枠130と固定枠150の間には、細いロッド状のガイド部材180が配設されている。このガイド部材180は、X方向(水平方向)に延びるX辺部180Xと、このX辺部180Xの一端部からY方向(垂直方向)に延びるY辺部180Yとを有する略L字型に形成されている。固定枠150に設けたYガイド部153は、ガイド部材180のY辺部180Yをガイドし、像振れ補正レンズ保持枠130に設けたXガイド部(図示せず)は、ガイド部材180のX辺部180Xをガイドする。
像振れ補正レンズ保持枠130の光軸直交平面内の位置(X軸方向とY軸方向の位置)を検出するために、像振れ補正レンズ保持枠130には、X位置検出用マグネット134XとY位置検出用マグネット134Yが支持されており、ベースプレート110には、ホール素子171X、171Yがフレキシブル基板170によってホール素子台113X、113Yに搭載されている。X位置検出用マグネット134Xとホール素子171XによってX位置センサが構成され、Y位置検出用マグネット134Yとホール素子171YによってY位置センサが構成される。
X位置センサでは、像振れ補正レンズ保持枠130がX方向に移動することにより、X位置検出用マグネット134Xで形成される磁界も同時に移動され、ホール素子171Xに対する磁束密度が変化する。X位置センサでは、この磁束密度の変化に伴うホール素子171Xの出力電流の変化を検出することによってX位置検出用マグネット134Xの移動位置、すなわち像振れ補正レンズ保持枠130のX方向の位置を検出することができる。同様に、Y位置センサでは、像振れ補正レンズ保持枠130がY方向に移動することにより、Y位置検出用マグネット134Yで形成される磁界も同時に移動され、ホール素子171Yに対する磁束密度が変化する。Y位置センサでは、この磁束密度の変化に伴うホール素子171Yの出力電流の変化を検出することによってY位置検出用マグネット134Yの移動位置、すなわち像振れ補正レンズ保持枠130のY方向の位置を検出することができる。
像振れ補正ユニット31Dは、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを光軸直交平面内で相対的に大きな移動量で駆動することによりイメージセンサ22上への被写体像の結像位置を変位させて像振れを補正する「像振れ補正駆動」が可能である。デジタルカメラ10は、ボディ本体20の光軸直交平面内の振れを示す振れ検出信号を検出するジャイロセンサ29を有している。DSP40は、ジャイロセンサ29が検出した振れ検出信号、及び、X位置センサ(ホール素子171X)とY位置センサ(ホール素子171Y)による位置検出信号に基づいて所定の演算を行い、演算された駆動信号(駆動電流)を、フレキシブル基板170を介してX駆動コイル133XとY駆動コイル133Yに流す。これにより、像振れ補正レンズ保持枠130(第3レンズ31C)が光軸直交平面内で相対的に大きな移動量で駆動されることになり、イメージセンサ22上への被写体像の結像位置を変位させて、手振れに起因する像振れを補正することができる。X駆動コイル133XとY駆動コイル133Yに流す駆動信号は、DSP40による制御の下、後述する像振れ補正レンズ駆動回路(駆動機構、低周波駆動信号生成部、高周波駆動信号生成部)60によって生成される。像振れ補正レンズ駆動回路60の構成及び該像振れ補正レンズ駆動回路60が生成する駆動信号については後に詳細に説明する。デジタルカメラ10のボディ本体20には、像振れ補正ユニット31Dによる「像振れ補正駆動」のオンオフを切り替える像振れ補正操作スイッチ27が設けられている。
像振れ補正ユニット31Dは、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを光軸直交平面内で相対的に小さな移動量で駆動(微小振動)することにより被写体光束をイメージセンサ22の複数の画素に入射させて光学的なローパスフィルタ効果を得る「LPF駆動」が可能である。デジタルカメラ10のボディ本体20には、像振れ補正ユニット31Dによる「LPF駆動」のオンオフやその強弱を切り替えるローパスフィルタ操作スイッチ28が設けられている。DSP40は、ローパスフィルタ操作スイッチ28によって像振れ補正ユニット31Dによる「LPF駆動」がオンに設定されているとき、LPF駆動用の駆動信号を、フレキシブル基板170を介してX駆動コイル133XとY駆動コイル133Yに流す。これにより、例えば、図4に示すように、像振れ補正レンズ保持枠130(第3レンズ31C)が光軸直交平面内で円形軌跡を描くように駆動される。すると、イメージセンサ22の4個のカラーフィルタR、G、B、G(画素22a)の中央に入射した被写体光線(光束)が、4個のカラーフィルタR、G、B、Gに均等に入射するので、光学的なローパスフィルタと同等の効果が得られる。つまり、どのカラーフィルタR、G、B、G(画素22a)に入射した光線も、必ずその周辺のカラーフィルタR、G、B、G(画素22a)に入射するので、恰も光学的なローパスフィルタを光線が通過したのと同等の効果が得られるのである。
表1に示すように、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの駆動態様は、像振れ補正駆動とLPF駆動をこれらの合成駆動として行う「態様1」、像振れ補正駆動のみを単独で行う「態様2」、LPF駆動のみを単独で行う「態様3」、像振れ補正駆動とLPF駆動のいずれの駆動も行わない「態様4」が可能である。
図5に示すように、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動範囲とLPF駆動範囲を比較すると、像振れ補正駆動範囲がLPF駆動範囲よりも圧倒的に大きくなっている。同図に示すように、像振れ補正ユニット31Dは、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動とLPF駆動のいずれの駆動も行わない「態様4」において、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを、その像振れ補正駆動範囲とLPF駆動範囲の中央位置で保持させる。
像振れ補正ユニット31Dは、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動とLPF駆動の双方を許容する「第1の状態(アンロック状態)」と、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動を禁止し且つLPF駆動を許容する「第2の状態(ハーフロック状態)」と、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動とLPF駆動の双方を禁止する「第3の状態(フルロック状態)」との間で切り替え可能な『ロック機構』を有している。この『ロック機構』は、像振れ補正レンズ保持枠130とロック環160とが協働することにより構成される。
光軸Zを中心とする円環板状をなすロック環160は、固定枠150の後面側に配設支持されている。ロック環160は、像振れ補正レンズ保持枠130の後面に形成された円環リブ136(図6)の周囲に配設され、かつ光軸回りに回動できるように支持されている。ロック環160の円周一部にはギヤ161が形成されており、このギヤ161は、固定枠150に支持されたロック環駆動モータ152のピニオン152a(図6)に噛み合っている。ロック環駆動モータ152を回転駆動することにより、ロック環160が固定枠150に対して回動駆動される。固定枠150の円周一部には、ロック環160の回動位置を検出するためのフォトインタラプタ155が設けられている。デジタルカメラ10のボディ本体20には、ロック環駆動モータ152に駆動電流を供給することによりロック環160を回動駆動するロック環駆動回路23Xが設けられている。
図6(A)〜図6(C)に示すように、像振れ補正レンズ保持枠130は、円環リブ136から外径方向に突出する4つの突起部137を有している。ロック環160は、その内周面を外径方向に相対的に深く凹設した4つの第1カム凹部162と、その内周面を外径方向に相対的に浅く凹設した4つの第2カム凹部163とを有している。各4つの突起部137、第1カム凹部162及び第2カム凹部163は、それぞれ、周方向に90°間隔で配置されている。
図6(A)に示すように、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの駆動態様が上記表1の「態様1」または「態様2」であるときは、ロック環駆動回路23Xがロック環駆動モータ152を介してロック環160を回動駆動することで、像振れ補正レンズ保持枠130の4つの突起部137がロック環160の4つの第1カム凹部162内に位置する。これにより『ロック機構』が、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動とLPF駆動の双方を許容する「第1の状態(アンロック状態)」となる。つまり、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cが、図5に示す像振れ補正駆動範囲内を自由に移動することができる。
図6(B)に示すように、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの駆動態様が上記表1の「態様3」であるときは、ロック環駆動回路23Xがロック環駆動モータ152を介してロック環160を回動駆動することで、像振れ補正レンズ保持枠130の4つの突起部137がロック環160の4つの第2カム凹部163内に位置する。これにより『ロック機構』が、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動を禁止し且つLPF駆動を許容する「第2の状態(ハーフロック状態)」となる。つまり、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cが、図5に示すLPF駆動範囲内だけを自由に移動することができる(像振れ補正駆動範囲内を自由に移動することはできない)。
図6(C)に示すように、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの駆動態様が上記表1の「態様4」であるときは、ロック環駆動回路23Xがロック環駆動モータ152を介してロック環160を回動駆動することで、像振れ補正レンズ保持枠130の4つの突起部137がロック環160の内周面に当接(係合)する。これにより『ロック機構』が、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動とLPF駆動の双方を禁止する「第3の状態(フルロック状態)」となる。つまり、図5に示すように、像振れ補正ユニット31Dが、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを、その像振れ補正駆動範囲とLPF駆動範囲の中央位置で保持させる。
撮影レンズ30は、撮影レンズ群31の解像力(MTF)情報や絞り32の開口径(絞り値)情報などの各種情報を記憶した通信用メモリ33を搭載している。撮影レンズ30をボディ本体20に装着した状態では、通信用メモリ33が記憶した各種情報がDSP40に読み込まれる。
本実施形態では、通信用メモリ33とDSP40の間のレンズ通信によって、ボディ本体20の撮影操作スイッチ26のレリーズスイッチの全押し情報、像振れ補正操作スイッチ27により設定された「像振れ補正駆動」のオンオフ情報、ローパスフィルタ操作スイッチ28により設定された「LPF駆動」のオンオフやその強弱に関する情報、露光時間に関する情報(先幕走行情報と後幕走行情報を含む)、イメージセンサ22の画素ピッチ情報、ミラーアップ情報やミラーダウン情報がやりとりされる。
さらに本実施形態では、通信用メモリ33とDSP40の間のレンズ通信によって、撮影レンズ群31に関する光学パラメータであってLPF駆動によるローパスフィルタ効果に影響を与えるLPF関連光学パラメータが伝送される。本実施形態では、このLPF関連光学パラメータとして、係数パラメータK1と係数パラメータK2が使用される。
係数パラメータK1は、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動量を算出するために用いられるものであり、振れ角度を1°補正するために必要な第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの駆動量により規定される。通信用メモリ33とDSP40の間のレンズ通信では、撮影レンズ群31のズーミング機能による焦点距離毎に、且つ、撮影レンズ群31のフォーカシング機能による被写体距離毎に、これに対応する係数パラメータK1が伝送される。表2は、通信用メモリ33とDSP40の間のレンズ通信で伝送され得る係数パラメータK1の一例を示している。
係数パラメータK2は、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF駆動量を算出するために用いられるものであり、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの光軸直交平面内での単位駆動量と、該単位駆動量によってイメージセンサ22上で生じる被写体像の結像位置の変位量との比により規定される。通信用メモリ33とDSP40の間のレンズ通信では、撮影レンズ群31のズーミング機能による焦点距離毎に、且つ、撮影レンズ群31のフォーカシング機能による被写体距離毎に、これに対応する係数パラメータK2が伝送される。表3は、通信用メモリ33とDSP40の間のレンズ通信で伝送され得る係数パラメータK2の一例を示している。
図1、図7、図8、図10に示すように、デジタルカメラ10は、X駆動コイル133XとY駆動コイル133Yに駆動信号を流すことで、像振れ補正ユニット(駆動機構)31Dを介して第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを光軸直交平面内で駆動する像振れ補正レンズ駆動回路60を備えている。この像振れ補正レンズ駆動回路60の動作全般は、DSP40によって制御される。
像振れ補正レンズ駆動回路60は、X駆動コイル133XとY駆動コイル133Yに流す駆動信号として、所定の臨界周波数より低い駆動周波数の低周波駆動信号を生成する「低周波駆動信号生成部」と、所定の臨界周波数より高い駆動周波数の高周波駆動信号を生成する「高周波駆動信号生成部」のいずれか一方として機能する。より具体的に像振れ補正レンズ駆動回路60は、一方がオン状態のときは他方がオフ状態となる第1スイッチSW1と第2スイッチSW2を備えており、表4に示すように、第1スイッチSW1がオン状態で第2スイッチSW2がオフ状態のときは「低周波駆動信号生成部」として機能し、第1スイッチSW1がオフ状態で第2スイッチSW2がオン状態のときは「高周波駆動信号生成部」として機能する。
ここで「所定の臨界周波数」は、予め定めた可聴周波数域の下限に設定されている。可聴周波数域は、年齢や性別などの個人差によってばらつくことが知られているが、本実施形態の重要事項の1つは、所定の臨界周波数より低い駆動周波数の低周波駆動信号と、所定の臨界周波数より高い駆動周波数の高周波駆動信号とを使い分けることであり、可聴周波数域(の下限)の具体的な範囲(値)をどのように定めるかには自由度がある。本実施形態では、一般的な可聴周波数域が20Hz〜20kHzの範囲内とされていることに鑑みて、「所定の臨界周波数」を20Hzとした場合を例示して説明する。
図8は、像振れ補正レンズ駆動回路60が「低周波駆動信号生成部」として機能している状態を示している。像振れ補正レンズ駆動回路(低周波駆動信号生成部)60は、加算部61と、ゲイン部62と、低周波微小信号生成部63と、コントローラ64とを備えている。コントロールの方式としてはPID制御などが考えられる。加算部61は、ジャイロセンサ29が検出したボディ本体20の光軸直交平面内の振れを示す振れ検出信号に加算処理を施す。ゲイン部62は、加算部61が加算処理を施した振れ検出信号を増幅する。低周波微小信号生成部63は、所定の臨界周波数(20Hz)より低い周波数(本実施形態では10Hz)の低周波微小信号を生成する。ゲイン部62が増幅した振れ検出信号と、低周波微小信号生成部63が生成した低周波微小信号とを重畳合成(Target重畳)し、コントローラ64を通過することで、低周波駆動信号が生成される。Target重畳に用いる低周波微小信号の振幅(ゲイン)は、撮影毎に変わることはなく、所定の振幅(ゲイン)が使用される。コントローラ64は、このようにして生成された低周波駆動信号をX駆動コイル133XとY駆動コイル133Yに流すことで、像振れ補正ユニット(駆動機構)31Dを介して第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを光軸直交平面内で駆動する。
図9は、低周波駆動信号(本実施形態では10Hz)をX駆動コイル133XとY駆動コイル133Yに流すことで、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを光軸直交平面内で円軌跡を描くように駆動したときの波形を示している。
図10は、像振れ補正レンズ駆動回路60が「高周波駆動信号生成部」として機能している状態を示している。像振れ補正レンズ駆動回路(高周波駆動信号生成部)60は、加算部61と、ゲイン部62と、高周波微小信号生成部65とを備えている。加算部61は、ジャイロセンサ29が検出したボディ本体20の光軸直交平面内の振れを示す振れ検出信号に加算処理を施す。ゲイン部62は、加算部61が加算処理を施した振れ検出信号を増幅する。高周波微小信号生成部65は、所定の臨界周波数(20Hz)より高い周波数(本実施形態では300Hz)の高周波微小信号を生成する。
像振れ補正レンズ駆動回路(高周波駆動信号生成部)60は、コントローラ64が算出した駆動力信号に、高周波微小信号生成部65が生成した高周波微小信号を用いた信号処理を施すことで、高周波駆動信号を生成する。
より具体的に像振れ補正レンズ駆動回路(高周波駆動信号生成部)60は、ハイパスフィルタ部66と、ゲイン決定部67と、ゲイン部(増幅部)68と、重畳合成部69とからなるフィードバックループを有している。ハイパスフィルタ部66は、高周波駆動信号のうち、所定の遮断周波数より高い周波数成分のみを通した減衰信号を出力する。ゲイン決定部67は、X位置センサ(ホール素子171X)とY位置センサ(ホール素子171Y)が検出した第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの位置検出信号をモニタしながら、ハイパスフィルタ部66が出力した減衰信号により、高周波微小信号の信号振幅(増幅率、デューティ比)を決定する。ゲイン部68は、ゲイン決定部67が決定した信号振幅に従って、高周波微小信号生成部65が生成した高周波微小信号を増幅する。重畳合成部69は、ゲイン部68が増幅した高周波微小信号と、コントローラ64が算出した駆動力信号とを重畳合成(Duty重畳)することで、高周波駆動信号を生成する。このようにして生成された高周波駆動信号をX駆動コイル133XとY駆動コイル133Yに流すことで、像振れ補正ユニット(駆動機構)31Dを介して第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを光軸直交平面内で駆動することができる。
図11は、重畳合成部69の手前での高周波微小信号(本実施形態では300Hz)の重畳波形を示している。第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを所定の振幅で動かすための高周波微小信号の振幅は、X、YL、YRでそれぞれ異なっている。
図12は、撮影毎のキャリブレーション処理において、ゲイン決定部67がDuty重畳の振幅(ゲイン)、すなわち高周波微小信号の信号振幅(増幅率、デューティ比)を決定する様子を示している。第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの中心駆動中に、Duty重畳の振幅(ゲイン)を少しずつ上げていくと、これに連れてX位置センサ(ホール素子171X)とY位置センサ(ホール素子171Y)のホールAD値も上がっていく。そして、X位置センサ(ホール素子171X)とY位置センサ(ホール素子171Y)の出力信号にハイパスフィルタを掛けることで、Duty重畳の振幅(ゲイン)のみを抜き出して、X位置センサ(ホール素子171X)とY位置センサ(ホール素子171Y)のホールAD値(振幅)が所望の値になったところで、Duty重畳の振幅(ゲイン)を固定する。なお、ピッチ間距離(p−p)で1画素相当が所望のDuty重畳の振幅(ゲイン)であるが、例えばユーザの設定により、LPF効果の小、中、大に応じて、ピッチ間距離(p−p)で1/3画素、2/3画素、1画素相当をDuty重畳の振幅(ゲイン)として選択的に設定することも可能である。
続いて、像振れ補正レンズ駆動回路60の動作を制御するためのDSP40の構成について説明する。図1に示すように、DSP40は、露光時間設定部41と、露光時間判定部42と、下限時間判定部43と、光学パラメータ取得部44と、駆動制御部45とを備えている。
露光時間設定部41は、例えば、絞り32のF値、シャッタ21のシャッタ速度、ISO感度、EV値などの各種パラメータにより、露光時間Tを設定する。
露光時間判定部42は、露光時間設定部41が設定した露光時間Tが所定の臨界時間TLIMITより長いか短いかを判定する。臨界時間TLIMITは、例えば1/10秒などに設定することができるが、その値自体には自由度がある。臨界時間TLIMITは、可聴周波数域の下限である「所定の臨界周波数」の逆数を基準にして設定することが好ましい。本実施形態では「所定の臨界周波数」を20Hzに設定しているので、その逆数である1/20秒を基準にしてその近傍の時間を臨界時間TLIMITに設定している。また、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを高周波で駆動したときには騒音が出るので、この観点では臨界時間TLIMITはなるべく小さいほうが好ましい。人間の聴覚特性上、ミラーショックなどの大きな音の直後0.1秒程度は細かい音が聞き取れないため、臨界時間TLIMITを1/10秒より小さな値にすると、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを高周波で駆動しても品位が落ちない。
下限時間判定部43は、露光時間設定部41が設定した露光時間Tが所定の下限時間TLOWを下回っているか否かを判定する。下限時間TLOWは、例えば1/500秒に設定することができるが、その値自体には自由度がある。下限時間TLOWは、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの駆動周期に基づいて設定されており、例えば、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの高周波駆動周期の1/2以上に設定されている。ここで、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの駆動周期とは、光軸直交平面内で所定軌跡(円形、四角形等)を1回描くように第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを駆動するために要する時間を意味する。これにより露光期間中に第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの半周以上の駆動が確保される。
光学パラメータ取得部44は、撮影レンズ30の通信用メモリ33との間のレンズ通信によって、撮影レンズ群31に関する光学パラメータであってLPF駆動によるローパスフィルタ効果に影響を与えるLPF関連光学パラメータを取得する。より具体的に、光学パラメータ取得部44は、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動量を算出するための係数パラメータK1(表2)、及び、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF駆動量を算出するための係数パラメータK2(表3)を取得する。すなわち、光学パラメータ取得部44は、撮影レンズ群31のズーミング機能による焦点距離毎に、且つ、撮影レンズ群31のフォーカシング機能による被写体距離毎に、これに対応する係数パラメータK1と係数パラメータK2を取得する。
駆動制御部45は、露光時間判定部42が、露光時間設定部41が設定した露光時間Tが臨界時間TLIMITより長い(T>TLIMIT)と判定したとき、第1スイッチSW1をオン状態に第2スイッチSW2をオフ状態にすることで、像振れ補正レンズ駆動回路60を「低周波駆動信号生成部」として機能させる。そして駆動制御部45は、像振れ補正レンズ駆動回路(低周波駆動信号生成部)60が生成した低周波駆動信号をX駆動コイル133XとY駆動コイル133Yに流すことで、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを光軸直交平面内で駆動する。このように、臨界時間TLIMITより長い露光時間Tのときに、人間の可聴周波数域の下限(20Hz)より低い駆動周波数(本実施形態では10Hz)の低周波駆動信号で第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを駆動することで、高周波騒音が発生してユーザに不快感を与えるのを防止することができる。
駆動制御部45は、露光時間判定部42が、露光時間設定部41が設定した露光時間Tが臨界時間TLIMITより短い(T<TLIMIT)と判定したとき、第1スイッチSW1をオフ状態に第2スイッチSW2をオン状態にすることで、像振れ補正レンズ駆動回路60を「高周波駆動信号生成部」として機能させる。そして駆動制御部45は、像振れ補正レンズ駆動回路(高周波駆動信号生成部)60が生成した高周波駆動信号をX駆動コイル133XとY駆動コイル133Yに流すことで、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを光軸直交平面内で駆動する。このように、臨界時間TLIMITより短い露光時間Tのときに、高い駆動周波数(例えば300Hz)の高周波駆動信号で第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを駆動することで、極めて短秒時の露光であっても第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを高精度に駆動制御することができ、異なるカラーフィルタに均等に露光させることができる(好適なLPF効果が得られる)。また、極めて短秒時の露光であるため、順行マスキングの効果により、たとえ高周波騒音が発生してもミラーやシャッタの音に掻き消されて、人間の聴覚特性上これを聞き取ることはできず、ユーザに不快感を与えることはない(経時マスキング)。
駆動制御部45は、下限時間判定部43が、露光時間設定部41が設定した露光時間Tが下限時間TLOWを下回っていない(T≧TLOW)と判定したとき、像振れ補正レンズ駆動回路60を介して第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF駆動と像振れ補正駆動の合成駆動を実行する。一方、駆動制御部45は、下限時間判定部43が、露光時間設定部41が設定した露光時間Tが下限時間TLOWを下回っている(T<TLOW)と判定したとき、像振れ補正レンズ駆動回路60を介して第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動のみを実行する(LPF駆動は実行しない)。露光時間Tが下限時間TLOWを下回っていると、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cが所定軌跡の半分すら描けずLPF効果が得られないことから、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF駆動を停止する。これに対し、露光時間Tが下限時間TLOWを下回っていなければ、たとえ第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cが所定軌跡を1回も描けなくても(例えば所定軌跡の3/4周や4/5周しか描けなくても)、LPF効果を得ることができるので、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF動作を実行する。
図13は、駆動制御部45が、露光時間判定部42と下限時間判定部43の判定結果に基づいて、像振れ補正レンズ駆動回路60を介して第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF駆動を制御する内容を示している。同図に示すように、露光時間Tが下限時間TLOWを下回っているときは、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF動作を実行せず、露光時間Tが下限時間TLOWを下回っておらず且つ臨界時間TLIMITより短いときは、高周波駆動信号を用いて第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF動作を実行し、露光時間Tが臨界時間TLIMITより長いときは、低周波駆動信号を用いて第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF動作を実行する。
駆動制御部45は、光学パラメータ取得部44が取得したLPF関連光学パラメータに基づいて、像振れ補正ユニット(駆動機構)31Dによる第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF駆動あるいはLPF駆動と像振れ補正駆動の合成駆動を制御する。
より具体的に、駆動制御部45は、像振れ補正レンズ駆動回路60が「低周波駆動信号生成部」として機能しているとき、撮影レンズ30の通信用メモリ33との間のレンズ通信で取得した係数パラメータK1と係数パラメータK2を以下の駆動量計算式に代入して、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの駆動量を算出する。
[駆動量計算式]
像振れ補正レンズ駆動量=K1×振れ角度+(1/K2)×像面LPF駆動量
「K1×振れ角度」の項は、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動量に対応している。「(1/K2)×像面LPF駆動量」の項は、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF駆動量に対応している。本実施形態において、「像面LPF駆動量」は、イメージセンサ22の画素ピッチである。
駆動制御部45は、像振れ補正レンズ駆動回路60が「高周波駆動信号生成部」として機能しているとき、係数パラメータK1を「K1×振れ角度」に代入することにより、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動量を算出し、係数パラメータK2を「(1/K2)×DP」に代入することにより、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF駆動のための振幅ゲインを算出する。本実施形態において、「DP」は、係数パラメータK2を1としたとき(K2=1)の1画素分ピッチ駆動量に相当するDuty重畳の振幅ゲインである。
続いて、図14〜図16のフローチャートを参照して、本実施形態のデジタルカメラ10の撮影処理について説明する。
撮影操作スイッチ26のレリーズスイッチが全押しされると(ステップS1:YES)、光学パラメータ取得部44が、撮影レンズ30の通信用メモリ33との間のレンズ通信によって、LPF関連光学パラメータとして、係数パラメータK1と係数パラメータK2を取得する(ステップS2)。
次いでDSP40は、ローパスフィルタ操作スイッチ28によって第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF動作がオン状態に設定されているか否かを判定する(ステップS3)。
第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF動作がオン状態に設定されているとき(ステップS3:YES)、DSP40の下限時間判定部43は、露光時間設定部41が設定した露光時間Tが下限時間TLOWを下回っているか否かを判定する(ステップS4)。
露光時間Tが下限時間TLOWを下回っていないとき(ステップS4:NO)、DSP40の露光時間判定部42は、露光時間設定部41が設定した露光時間Tが臨界時間TLIMITより長いか短いか(長いか否か)を判定する(ステップS5)。
露光時間Tが臨界時間TLIMITより長いとき(ステップS5:YES)、DSP40の駆動制御部45は、第1スイッチSW1をオン状態に第2スイッチSW2をオフ状態にすることで、像振れ補正レンズ駆動回路60を「低周波駆動信号生成部」として機能させる。そして像振れ補正レンズ駆動回路(低周波駆動信号生成部)60において、ゲイン部62が増幅した振れ検出信号と、低周波微小信号生成部63が生成した低周波微小信号とを重畳合成(Target重畳)した信号を制御目標とすることで、低周波駆動信号が生成される(ステップS6)。Target重畳の振幅(ゲイン)は、撮影毎に変わることはなく、所定の振幅(ゲイン)が使用される。
図15は、図14のステップS6の処理のサブルーチンを示している。駆動制御部45は、像振れ補正操作スイッチ27がオン状態であるか否かを判定する(ステップS6−1)。駆動制御部45は、像振れ補正操作スイッチ27がオン状態であるとき(ステップS6−1:YES)、光学パラメータ取得部44が取得した係数パラメータK1と係数パラメータK2を使用して、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの駆動量を「像振れ補正レンズ駆動量=K1×振れ角度+(1/K2)×像面LPF駆動量(1画素分ピッチ)」により算出する(ステップS6−2)。駆動制御部45は、像振れ補正操作スイッチ27がオフ状態であるとき(ステップS6−1:NO)、光学パラメータ取得部44が取得した係数パラメータK2を使用して、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの駆動量を「像振れ補正レンズ駆動量=(1/K2)×像面LPF駆動量(1画素分ピッチ)」により算出する(ステップS6−3)。
露光時間Tが臨界時間TLIMITより短い(長くない)とき(ステップS5:NO)、DSP40の駆動制御部45は、第1スイッチSW1をオフ状態に第2スイッチSW2をオン状態にすることで、像振れ補正レンズ駆動回路60を「高周波駆動信号生成部」として機能させる。そして像振れ補正レンズ駆動回路(高周波駆動信号生成部)60において、重畳合成部69が、ゲイン部68が増幅した高周波微小信号と、コントローラ64が算出した駆動力信号とを重畳合成(Duty重畳)することで、高周波駆動信号を生成する(ステップS7)。このとき、ゲイン決定部67が、撮影毎のキャリブレーション処理において、Duty重畳の振幅(ゲイン)、すなわち高周波微小信号の信号振幅(増幅率、デューティ比)を決定する(ステップS8)。
図16は、図14のステップS8の処理のサブルーチンを示している。駆動制御部45は、像振れ補正操作スイッチ27がオン状態であるか否かを判定する(ステップS8−1)。駆動制御部45は、像振れ補正操作スイッチ27がオン状態であるとき(ステップS8−1:YES)、光学パラメータ取得部44が取得した係数パラメータK1を使用して、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの駆動量を「像振れ補正レンズ駆動量=K1×振れ角度」により算出する(ステップS8−2)。駆動制御部45は、像振れ補正操作スイッチ27がオフ状態であるとき(ステップS8−1:NO)、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの駆動量をゼロに設定する(ステップS8−3)。そして駆動制御部45は、光学パラメータ取得部44が取得した係数パラメータK2を使用して、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF駆動のための振幅ゲインを「振幅ゲイン=(1/K2)×DP」により算出する(ステップS8−4)。
このように駆動制御部44は、像振れ補正レンズ駆動回路60を「低周波駆動信号生成部」として機能させるときと「高周波駆動信号生成部」として機能させるときとで、LPF関連光学パラメータ(係数パラメータK1と係数パラメータK2)を使用した異なるパラメータ演算(重畳)処理を実行することにより、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF駆動を異なる態様で制御する。
なお、DSP40は、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF動作がオフ状態に設定されているとき(ステップS3:NO)、または露光時間Tが下限時間TLOWを下回っているとき(ステップS4:YES)、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CのLPF動作を実行しない旨の設定を行う。
DSP40は、像振れ補正操作スイッチ27がオン状態であるとき(ステップS9:YES、ステップS10)、像振れ補正ユニット31Dを駆動制御して、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを中心位置に保持するとともに(ステップS11)、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動とLPF駆動の双方を許容する「第1の状態(アンロック状態)」を設定する(ステップS12)。
DSP40は、像振れ補正操作スイッチ27がオフ状態であるとき(ステップS9:NO、ステップS13)、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動を禁止し且つLPF駆動を許容する「第2の状態(ハーフロック状態)」を設定する(ステップS14)。
DSP40は、像振れ補正レンズ駆動回路60が低周波駆動信号または高周波駆動信号を生成するのと並行して(生成している間に)、ミラーアップを実行する(ステップS15)。
ミラーアップの完了後に、DSP40は、像振れ補正操作スイッチ27がオン状態であるか否かを再判定する(ステップS16)。再判定の結果、像振れ補正操作スイッチ27がオン状態であるとき(ステップS16:YES)、像振れ補正レンズ駆動回路60が生成した駆動信号(低周波駆動信号または高周波駆動信号)をX駆動コイル133XとY駆動コイル133Yに流すことで、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを光軸直交平面内で駆動して、像振れ補正動作とLPF動作を開始させる(ステップS17)。再判定の結果、像振れ補正操作スイッチ27がオフ状態であるとき(ステップS16:NO)、像振れ補正レンズ駆動回路60が生成した駆動信号をX駆動コイル133XとY駆動コイル133Yに流すことで、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを光軸直交平面内で駆動して、LPF動作を開始させる(ステップS18)。
DSP40は、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CにLPF駆動あるいはLPF駆動と像振れ補正駆動の合成駆動を行わせながら、シャッタ21の先幕と後幕を順に走行させて露光する(ステップS19、ステップS20)。
露光が終了したら、DSP40は、像振れ補正操作スイッチ27がオン状態であるか否かを再判定する(ステップS21)。再判定の結果、像振れ補正操作スイッチ27がオン状態であるとき(ステップS21:YES)、X駆動コイル133XとY駆動コイル133Yへの駆動信号(低周波駆動信号または高周波駆動信号)の供給を停止して、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cによる像振れ補正動作とLPF動作を終了させる(ステップS22)。再判定の結果、像振れ補正操作スイッチ27がオフ状態であるとき(ステップS21:NO)、X駆動コイル133XとY駆動コイル133Yへの駆動信号の供給を停止して、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31CによるLPF動作を終了させる(ステップS23)。
以上の処理が完了したら、DSP40は、像振れ補正ユニット31Dを駆動制御して、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを中心位置に保持するとともに(ステップS24)、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの像振れ補正駆動とLPF駆動の双方を禁止する「第3の状態(フルロック状態)」を設定し(ステップS25)、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cの駆動を完全に停止させる(ステップS26)。
(第2実施形態)
図17を参照して、本発明によるデジタルカメラ(撮影装置、レンズ交換式の撮影システム)10の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、撮影レンズ群31の第2レンズ31Bが「移動部材、像振れ補正レンズ」であり、この第2レンズ31B(移動部材、像振れ補正レンズ)が像振れ補正ユニット31Dによって光軸直交平面内で移動可能に支持されている。
この第2実施形態のデジタルカメラ10では、第1実施形態でボディ本体20に搭載されていた像振れ補正レンズ駆動回路60、ロック環駆動回路23X、像振れ補正操作スイッチ27、ジャイロセンサ29及びホール素子171X、171Yが、撮影レンズ30に搭載されている。また、撮影レンズ30は、第1実施形態で通信用メモリ33がレンズ通信する各種データ(LPF関連光学パラメータを含む)を保持するレンズデータ保持部33Xを有している。さらに、第1実施形態でボディ本体20のDSP40に搭載されていた露光時間判定部42、下限時間判定部43、光学パラメータ取得部44及び駆動制御部45が、撮影レンズ30のレンズCPU33Yに搭載されている。なお、第1実施形態と同様に、光学パラメータ取得部44と駆動制御部45は、ボディ本体20のDSP40に搭載されていてもよい。
像振れ補正ユニット31D、像振れ補正レンズ駆動回路60及び駆動制御部45は、その全てが撮影レンズ30に搭載され、その全てがボディ本体20に搭載され、または、その一部分が撮影レンズ30に残りの部分がボディ本体20にそれぞれ搭載される態様が可能である。
このように、本実施形態のデジタルカメラ10では、光学パラメータ取得部44が、撮影レンズ群31(撮影光学系)に関する光学パラメータであって、LPF駆動によるローパスフィルタ効果に影響を与えるLPF関連光学パラメータを取得し、駆動制御部45が、光学パラメータ取得部44が取得したLPF関連光学パラメータに基づいて、像振れ補正ユニット31D及び像振れ補正レンズ駆動回路60(駆動機構)による第2レンズ31Bまたは第3レンズ31C(移動部材)のLPF駆動を制御する。これにより、移動部材を高精度に駆動制御して所望のローパスフィルタ効果を得ることができる。
以上の実施形態では、撮影レンズ群31がその光学要素として第1レンズ31A〜第3レンズ31Cを有している場合を例示して説明した。しかし、撮影レンズ群31の構成は、像振れ補正ユニットによって光軸直交平面内で移動可能に支持される「移動部材、像振れ補正レンズ」としての光学要素(レンズ)を有する限りにおいて、自由に設計変更することができる。
以上の実施形態では、Target重畳に用いる低周波微小信号の振幅(ゲイン)は、撮影毎に変えることなく所定の振幅(ゲイン)を使用し、Duty重畳の振幅(ゲイン)は、撮影毎のキャリブレーション処理において決定している。しかし、Target重畳に用いる低周波微小信号の振幅(ゲイン)を撮影毎のキャリブレーション処理において決定する態様も可能である。
以上の実施形態では、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cが描く所定軌跡を、撮影光学系の光軸Zを中心とする回転対称な円形軌跡とした場合を例示して説明したが、これに限定されず、例えば、撮影光学系の光軸Zと直交する平面内における正方形軌跡や直線往復移動軌跡としてもよい。
以上の実施形態では、ボディ本体20と撮影レンズ30を着脱可能(レンズ交換可能)とする態様を例示して説明したが、ボディ本体20と撮影レンズ30を着脱不能(レンズ交換不能)とする態様も可能である。
以上の実施形態では、低周波微小信号生成部63が生成する低周波微小信号の周波数を10Hzとした場合を例示して説明したが、これに限定されるわけではなく、例えば、8Hz、16Hzなどに切り替える態様も可能である。
以上の実施形態では、高周波微小信号生成部65が生成する高周波微小信号の周波数を300Hzとした場合を例示して説明したが、これに限定されるわけではなく、例えば、5kHz、20kHzなどに切り替える態様も可能である。
以上の実施形態では、像ぶれ補正動作とLPF動作を実行するために、像振れ補正ユニット(駆動機構)31Dを介して第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを光軸直交平面内で駆動する場合を例示して説明したが、第3レンズ(移動部材、像振れ補正レンズ)31Cを駆動する方向はこれに限定されず、撮影光学系の光軸と異なる方向であればよい。