JP6350008B2 - 少なくともインジウム、ガリウム、亜鉛およびシリコンを含む酸化物のエッチング液およびエッチング方法 - Google Patents
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Description
(1)酸化物がエッチング液に溶解した時に析出物が発生しないこと。
(2)酸化物がエッチング液に溶解した際、エッチングレートの低下が小さいこと。
(3)好適なエッチングレートを有すること。
(4)エッチング残渣が少ないこと。
(5)配線材料等の部材を腐食しないこと。
特許文献3では、インジウムがエッチング液に溶解した時のエッチングレートについては開示がなく、この組成ではエッチングレートの低下が懸念される。
特許文献4では、エッチング液による酸化インジウム等の溶解能およびインジウムがエッチング液に溶解した時のエッチング性能についての記載はなく、薬液寿命についても言及していない。
特許文献5のエッチング液では、バッファーは硝酸の揮発を抑制するために配合されており、特許文献5では、エッチング液による酸化インジウム等の溶解能およびインジウムがエッチング液に溶解した時のエッチング性能については記載されておらず、薬液寿命についても明記されていない。
また、特許文献1乃至5はいずれもITO膜またはIZO膜などの酸化インジウム系透明導電膜に用いるエッチング液に関するものであり、IGO膜、IGZO膜またはIGZSO膜などのインジウムおよびガリウムを含む酸化物に対するエッチング性能については全く検討されていない。
特許文献6は、ITO層と、IZOまたはIGZOなどの酸化物層を含む構造体のエッチング方法に関するものであるが、酢酸またはクエン酸単独では実用上十分なエッチングレートは得られていない。さらに、酸化物の溶解能およびインジウムなどがエッチング液に溶解した時のエッチングレートについて記載されておらず、薬液寿命についても言及していない。
特許文献7は、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜にエッチング液を用いることができると記載しているが、実施例において具体的に検討されているのはガリウム亜鉛酸化物(GZO)のみであり、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜がインジウムを含む場合、このエッチング液では実用上十分なエッチングレートは得られない。
このような状況下、インジウムおよびガリウムを含む酸化物、特にインジウム、ガリウム、亜鉛およびシリコンを含む酸化物のエッチングにおいて好適なエッチングレートを有し、析出物の発生がなく、配線材料への腐食性が小さく、酸化物の溶解に対してエッチングレートの変化が小さく、さらに薬液寿命の長いエッチング液の提供が望まれている。
1.少なくともインジウム、ガリウム、亜鉛およびシリコンを含む酸化物をエッチングするためのエッチング液であって、硫酸またはその塩、およびカルボン酸(ただしシュウ酸を除く)またはその塩を含むエッチング液。
2.カルボン酸(ただしシュウ酸を除く)またはその塩が、酢酸、グリコール酸、乳酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸からなる群より選ばれる1種以上である第1項に記載のエッチング液。
3.硫酸またはその塩の濃度が0.5〜20質量%、カルボン酸またはその塩の濃度が0.1〜15質量%である第1項に記載のエッチング液。
4.さらにpH調整剤を含む第1項〜第3項のいずれか1項に記載のエッチング液。
5.pH調整剤が、メタンスルホン酸およびアミド硫酸からなる群より選ばれる1種以上である第4項に記載のエッチング液。
6.pH値が1以下である第1項〜第5項のいずれか1項に記載のエッチング液。
7.さらにポリスルホン酸化合物を含む第1項〜第6項のいずれか1項に記載のエッチング液。
8.ポリスルホン酸化合物が、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩からなる群より選ばれる1種以上である第7項に記載のエッチング液。
9.酸化物が、膜厚1〜1000nm(10〜10000Å)の薄膜である第1項〜第8項のいずれか1項に記載のエッチング液。
10.第1項〜第8項のいずれか1項に記載のエッチング液を用いることを特徴とする少なくともインジウム、ガリウム、亜鉛およびシリコンを含む酸化物のエッチング方法。
11.酸化物が、膜厚1〜1000nm(10〜10000Å)の薄膜である第10項に記載のエッチング方法。
本発明のエッチング液に含まれる硫酸またはその塩としては、硫酸イオンを供給できるものであれば特に制限はない。例えば、硫酸、発煙硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウムなどが好ましいが、より好ましくは硫酸が良い。また、硫酸またはその塩の濃度が硫酸(H2SO4の分子量;98.08)換算濃度で、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。また、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは9質量%以下である。中でも、0.5〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは3〜9質量%である。0.5〜20質量%である時、良好なエッチングレートが得られる。
炭素数1〜18の脂肪族カルボン酸またはその塩としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、グリコール酸、ジグリコール酸、ピルビン酸、マロン酸、酪酸、ヒドロキシ酪酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、吉草酸、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、カプロン酸、アジピン酸、クエン酸、プロパントリカルボン酸、trans−アコニット酸、エナント酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸またはその塩などが好ましい。
炭素数6〜10の芳香族カルボン酸およびその塩としては、安息香酸、サリチル酸、マンデル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはその塩などが好ましい。
また、炭素数1〜10のアミノ酸としては、カルバミン酸、アラニン、グリシン、アスパラギン、アスパラギン酸、サルコシン、セリン、グルタミン、グルタミン酸、4−アミノ酪酸、イミノジ酪酸、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、ニトリロ三酢酸またはその塩などが好ましい。
さらに好ましいカルボン酸またはその塩としては、酢酸、グリコール酸、乳酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸またはその塩であり、特に好ましくは酢酸、リンゴ酸、クエン酸である。これらを単独でまたは複数を組み合わせて用いることができる。
カルボン酸(ただしシュウ酸を除く)またはその塩の濃度はカルボン酸換算濃度で、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。また、15質量%以下が好ましく、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。中でも、0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜12質量%、さらに好ましくは1.0〜12.0質量%、さらに好ましくは3〜10質量%、さらに好ましくは3.0〜10.0質量%である。0.1〜15質量%である時、酸化物が溶解した際のエッチングレートの低下を小さく抑えることができる。
本発明のエッチング液のpH値は、好ましくは1以下、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0〜0.5である。pH値が1を上回る領域では、実用上十分なエッチングレートが得られないおそれがある。
溶媒としては、蒸留、イオン交換処理、フイルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオン、有機不純物およびパーティクル粒子などが除去された水が好ましく、特に純水、超純水が好ましい。
本発明のエッチング方法によってエッチングすることができるエッチング対象物は、その形状に制限は無いが、フラットパネルディスプレイの半導体材料として用いる場合には、薄膜であることが好ましい。例えば酸化ケイ素等の絶縁膜上に、インジウムとガリウムと亜鉛とシリコンおよび酸素からなる酸化物の薄膜を形成し、その上にレジストを塗布し、所望のパターンマスクを露光転写し、現像して所望のレジストパターンを形成したものをエッチング対象物とする。エッチング対象物が薄膜である場合、その膜厚は1〜1000nm(10〜10000Å)の範囲にあることが好ましい。より好ましくは5〜500nm(50〜5000Å)であり、特に好ましくは10〜300nm(100〜3000Å)である。またエッチング対象物は、組成の異なる二つ以上の酸化物の薄膜からなる積層構造物であっても良い。その場合、組成の異なる二つ以上の酸化物の薄膜からなる積層構造物を一括でエッチングすることができる。
ガラス基板上にインジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)および酸素(O)の元素比(原子比)が1:1:1:4であるIGZO膜を膜厚50nm(500Å)でスパッタ法により形成し、その後、表1および表2に示したエッチング液を用いてエッチングした。エッチングは、上記基板を35℃に保ったエッチング液に静置浸漬する方法で行った。エッチング前後の膜厚を光学式薄膜特性測定装置n&k Analyzer 1280(n&k Technology Inc.製)により測定し、その膜厚差をエッチング時間で除することによりエッチングレートを算出した。評価結果を以下の基準で表記した。
A:エッチングレート50nm/min〜100nm/min
B:エッチングレート20〜49nm/minまたは101〜200nm/min
C:エッチングレート10〜19nm/minまたは201〜1000nm/min
D:エッチングレート9nm/min以下または1001nm/min以上
なお、ここでの合格はA、BおよびCである。
表1および表2に示したエッチング液に豊島製作所製のIGZO粉末(原子比としてIn:Ga:Zn:O=1:1:1:4)を0.5%(5000ppm)溶解し、析出物の有無を目視にて確認した。評価結果を以下の基準で示した。合格はAである。
A:析出物なし
B:析出物あり
ガラス基板上にインジウム、ガリウム、亜鉛および酸素の元素比(原子比)が1:1:1:4であるIGZO膜を膜厚50nm(500Å)でスパッタ法により形成し、表1および表2に示したエッチング液にIGZO粉末を所定量溶解した液を用いて、上記と同様の方法でエッチングレートを測定し、エッチングレートの変化量を算出した。評価結果を以下の基準で表記した。
A:エッチングレート変化量5nm/min以下
B:エッチングレート変化量5nm/min超〜10nm/min以下
C:エッチングレート変化量10nm/min超
なお、ここでの合格はAおよびBである。
ガラス基板上にインジウム、ガリウム、亜鉛および酸素の元素比(原子比)が1:1:1:4であるIGZO膜を膜厚50nm(500Å)でスパッタ法により形成し、さらにフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成した基板を、表1および表2に示したエッチング液を用いてエッチングした。エッチングは、35℃においてシャワー方式で実施した。エッチング時間はエッチングに要する時間(ジャストエッチング時間)の2.0倍の時間(100%オーバーエッチング条件)とした。なお、ジャストエッチング時間はIGZO膜の膜厚を「1.エッチングレートの測定」で測定したエッチングレートで除することにより算出した(後述する参考例1の場合、ジャストエッチング時間=IGZOの膜厚50[nm]/エッチングレート81[nm/min]=0.617[min]=37秒となり、したがって100%オーバーエッチング条件での処理時間は37秒×2.0=74秒となる)。エッチング後の基板は、水で洗浄し、窒素ガスを吹き付け乾燥させた後、走査型電子顕微鏡(「S5000H型(型番)」;日立製)で残渣の観察を行い、結果を以下の基準で表記した。
A:残渣なし
B:ごくわずかに残渣あり
C:多数の残渣あり
なお、ここでの合格はAおよびBである。
ガラス基板上にスパッタ法により成膜したCu/Ti積層膜、Al/Ti積層膜、Mo単層膜およびTi単層膜を用いて、表1および表2に示したエッチング液によるCu、Al、Mo、Tiのエッチングレートの測定を実施した。エッチングは、上記基板を35℃に保ったエッチング液に浸漬する方法で行った。エッチング前後の膜厚は蛍光X線分析装置SEA1200VX(Seiko Instruments Inc.製)を用いて測定し、その膜厚差をエッチング時間で除することによりエッチングレートを算出した。評価結果を以下の基準で表記した。
A:エッチングレート1nm/min未満
B:エッチングレート1nm/min〜2nm/min未満
C:エッチングレート2nm/min〜3nm/min未満
D:エッチングレート3nm/min以上
なお、ここでの合格はA、BおよびCである。
容量100mlのポリプロピレン容器に46%硫酸(和光純薬工業株式会社製)を10.87gおよび純水73gを投入した。さらに31%クエン酸水溶液(扶桑化学工業株式会社製)16.13gを加えた。これを攪拌して各成分をよく混合し、エッチング液を調製した。得られたエッチング液の硫酸の配合量は5質量%であり、クエン酸の配合量は5質量%であった。また、pHは0.3であった。
得られたエッチング液を用いて上記の評価を実施し、得られた結果を表1に示す。
参考例1において、エッチング液の組成を表1に示される組成とした以外は、参考例1と同様にしてエッチング液を調製し、該エッチング液を用いて上記の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
参考例1において、カルボン酸の種類と配合量を表1に示される通りとした以外は、参考例1と同様にしてエッチング液を調製し、該エッチング液を用いて上記の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
参考例1において、ポリスルホン酸化合物としてラベリンFP(第一工業製薬株式会社製)を表1に示される配合量として添加した以外は、参考例1と同様にしてエッチング液を調製し、該エッチング液を用いて上記の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
参考例1において、pH調整剤としてメタンスルホン酸(和光純薬工業株式会社製)またはアミド硫酸(和光純薬工業株式会社製)を表1に示される配合量として添加した以外は、参考例1と同様にしてエッチング液を調製し、該エッチング液を用いて上記の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
参考例1において、評価に用いる基板を、ガラス基板上にインジウム(In)およびガリウム(Ga)の元素比(原子比)が95:5であるIGO膜を膜厚50nm(500Å)でスパッタ法により形成することで作製した以外は、参考例1と同様にしてエッチング液を調製し、該エッチング液を用いて上記の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
参考例1において、評価に用いる基板を、ガラス基板上にインジウム、ガリウム、亜鉛、シリコンの元素比(原子比)が38:38:19:5であるインジウム・ガリウム・亜鉛・シリコン酸化物(IGZSO)膜を膜厚50nm(500Å)でスパッタ法により形成することで作製した以外は、参考例1と同様にしてエッチング液を調製し、該エッチング液を用いて上記の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
参考例1において、エッチング液の組成を表2に示される組成とした以外は、参考例1と同様にしてエッチング液を調製し、該エッチング液を用いて上記の評価を実施した。得られた結果を表2に示す。
一方、硫酸またはその塩を含有しない比較例2,6,8,9,12〜15ではIGZO溶解能が低く(酸化物を0.5%(5000ppm)まで溶解することができず)、エッチングレートの変化量を評価できなかった。さらに、比較例2,8,13,15では初期のエッチングレートも遅かった。また、比較例1,3,4,5,10,11ではIGZO粉末を溶解した後のエッチングレート変化量が大きかった。また、硫酸またはその塩の代わりに硝酸または塩酸を含有する比較例4,7ではエッチングレート変化量は比較的小さかったが、配線材料への腐食性が大きくなる傾向が認められた。また、カルボン酸またはその塩を含有しない比較例1およびシュウ酸を含有する比較例16ではエッチング後に多数の残渣が確認された。また、シュウ酸を含有する比較例16〜18では、酸化物を0.03%(300ppm)または0.15%(1500ppm)溶解した後に白色の析出物が発生した。これらの比較例の結果から、硫酸またはその塩を含有しないエッチング液では、インジウム、ガリウム、亜鉛およびシリコンを含む酸化物に対しても、好適なエッチングレートおよびその変化量、残渣除去性ならびに配線材料の腐食性の点で所望の性能を得ることは難しいと考えられる。
Claims (10)
- 少なくともインジウム、ガリウム、亜鉛およびシリコンを含む酸化物をエッチングするためのエッチング液であって、硫酸またはその塩、およびカルボン酸(ただしシュウ酸を除く)またはその塩を含み、pH値が1以下であるエッチング液。
- カルボン酸(ただしシュウ酸を除く)またはその塩が、酢酸、グリコール酸、乳酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸からなる群より選ばれる1種以上である請求項1に記載のエッチング液。
- 硫酸またはその塩の濃度が0.5〜20質量%、カルボン酸またはその塩の濃度が0.1〜15質量%であることを特徴とする請求項1に記載のエッチング液。
- さらにpH調整剤を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のエッチング液。
- pH調整剤が、メタンスルホン酸およびアミド硫酸からなる群より選ばれる1種以上である請求項4に記載のエッチング液。
- さらにポリスルホン酸化合物を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のエッチング液。
- ポリスルホン酸化合物が、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項6に記載のエッチング液。
- 酸化物が、膜厚1〜1000nmの薄膜である請求項1〜7のいずれか1項に記載のエッチング液。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のエッチング液を用いることを特徴とする少なくともインジウム、ガリウム、亜鉛およびシリコンを含む酸化物のエッチング方法。
- 酸化物が、膜厚1〜1000nmの薄膜である請求項9に記載のエッチング方法。
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