JP6347311B2 - 耐遅れ破壊特性に優れた鋼線 - Google Patents

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Description

本発明は、耐遅れ破壊特性に優れた鋼線に関する。
パーライト組織を伸線加工した鋼線は、PC(プレストレストコンクリート)鋼線、ワイヤロープ、橋梁用PWS(パラレルワイヤストランド)などに用いられている。近年、それらが使用される土木・建築構造物の大型化が進み、また、その施工時の低コスト化への要望も高まっている。こうした要望の実現のために、鋼線の高強度化が必要とされている。
従来、PC鋼線等の高炭素鋼線は、焼戻しマルテンサイト組織の材料に比べて耐遅れ破壊特性が優れていることが知られている。しかしながら、特に2000MPa以上の高強度域になると、高炭素鋼線でも耐遅れ破壊特性が低下し、遅れ破壊が発生する危険性が増加する。
そこで、従来から、遅れ破壊を考慮した高強度の伸線加工パーライト鋼線が検討されている。例えば、特許文献1には、表層部に付与する圧縮残留応力量を限定した耐遅れ破壊特性に優れたPC鋼線、特許文献2には、セメンタイトを微細に分断させたミクロ組織を有するスチールコード用の高強度の鋼線材、特許文献3には、<110>集合組織を有するベイナイトPC鋼棒、が開示されている。
特開2004−131797号公報 特開平11−269607号公報 特開平7−268545号公報
特許文献1で開示されたPC鋼線は、確かに耐遅れ破壊特性に優れている。しかし、局部腐食が発生して表面の圧縮残留を有する表面層より内側が応力集中部になる場合には、十分な耐遅れ破壊特性が得られないことも想定される。
特許文献2で開示された高強度鋼線材は、最終伸線加工後の強度が高く、かつ捻回試験で縦割れを生じないので、極細径のスチールコード用として好適である。しかし、大型の土木・建築構造物には用い難い。
特許文献3で開示されたPC鋼棒は、含有炭素量が、0.1〜0.4質量%と少ないため、引張強さで2000MPa以上という高強度が得られない。
本発明は、耐遅れ破壊特性に優れた鋼線(特に、局部腐食が生じるような環境においても、耐遅れ破壊特性に優れた鋼線)を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、下記に示す耐遅れ破壊特性に優れた鋼線を要旨とする。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.60〜1.1%、
Si:0.05〜1.5%、
Mn:0.30〜1.5%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Al:0.005〜0.05%、
N:0.001〜0.006%、
Cr:0〜1.5%、
Ti:0〜0.02%、
B:0〜0.005%、
残部:Feおよび不純物からなり、
金属組織が、パーライトからなりかつ、長手方向に垂直な断面において、bcc相の{110}結晶面の配向度が0.95以上であり、
線径が、2.9mm以上である、
耐遅れ破壊特性に優れた鋼線。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Cr:0.10〜1.5%を含有する、
上記(1)に記載の耐遅れ破壊特性に優れた鋼線。
(3)前記化学組成が、質量%で、
Ti:0.003〜0.02%、および、
B:0.0005〜0.005%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)または(2)に記載の耐遅れ破壊特性に優れた鋼線。
本発明によれば、引張強さが2000MPa以上の耐遅れ破壊特性に優れた鋼線を得ることができる。
実施例の試験結果を、縦軸と横軸にそれぞれ、遅れ破壊強度比と引張強さをとって整理した図である。
本発明者らは、前記の課題を解決するために、伸線加工ひずみ量と耐遅れ破壊特性について詳細に検討した。その結果、下記の重要な知見を得た。
(a)金属組織がパーライトからなる鋼線は、その長手方向に垂直な断面において、bcc相の{110}結晶面の配向度(以下、単に「{110}結晶面の配向度」ということがある。)が0.95以上の場合に、耐遅れ破壊特性が著しく向上する。
(b)金属組織がパーライトからなる鋼線に対し、2.3以上の冷間伸線加工での総真ひずみを加えると、bcc相の{110}結晶面の配向度を0.95以上とすることができる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
(A)化学組成:
本発明に係る鋼線の化学組成の限定理由は次の通りである。以下の説明において各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
C:0.60〜1.1%
Cは、伸線加工パーライト鋼線の強度を確保する上で必須の元素である。Cの含有量が0.60%未満では、たとえ後述の650〜550℃という好適な温度範囲に保持した場合でも初析フェライト量が増大するため、所要の強度(引張強さで2000MPa以上)が得られない。一方、Cの含有量が1.1%を超えると、初析セメンタイト量が増加して伸線加工特性が著しく劣化し、後述の総真ひずみ2.3以上という好適な冷間伸線加工を施すことができない。そのため、Cの含有量は0.60〜1.1%とする。C含有量の好ましい下限は0.80%であり、また、好ましい上限は1.0%である。
Si:0.05〜1.5%
Siは、固溶強化によって強度を高める効果があり、強度を得るために有効な元素である。Siの含有量が0.05%未満では前記効果が発揮できない。一方、Siの含有量が多すぎると、初析フェライトの析出を促進するとともに、伸線加工での限界加工度が低下し、後述の総真ひずみ2.3以上という好適な冷間伸線加工を施すことができない。このため、Siの含有量は0.05〜1.5%とする。Si含有量の好ましい下限は0.10%であり、また、好ましい上限は1.0%である。
Mn:0.30〜1.5%
Mnは、脱酸、脱硫のために必要であるばかりでなく、パーライト変態処理において安定的にラメラを形成し、2000MPa以上の引張強さを得るために必要な元素である。Mnの含有量が0.30%未満では上記の効果が得られず、一方、1.5%を超えて含有させてもその量に見合う効果が得られない。このため、Mnの含有量は0.30〜1.5%とする。Mn含有量の好ましい下限は0.40%であり、また、好ましい上限は0.90%である。
P:0.030%以下
Pは、不純物として含有され、結晶粒界に偏析して耐遅れ破壊特性を劣化させる。このため、Pの含有量は0.030%以下とする。Pの含有量は極力低いことが好ましい。
S:0.030%以下
Sは、不純物として含有され、結晶粒界に偏析して耐遅れ破壊特性を劣化させる。このため、Sの含有量は0.030%以下とする。Sの含有量は極力低いことが好ましい。
Al:0.005〜0.05%
Alは、脱酸剤として有効な元素であり、また、窒化物を生成することにより、オーステナイト粒を細粒化させる効果がある。しかし、Alの含有量が0.005%未満では、これらの効果が不十分であり、0.05%を超えて含有させても効果が飽和する。このため、Alの含有量は0.005〜0.05%とする。Al含有量の好ましい下限は0.02%であり、また、好ましい上限は0.04%である。なお、本発明のAl含有量とはトータルAlでの含有量を指す。
N:0.001〜0.006%
Nは、Alの窒化物を生成することにより、オーステナイト粒を細粒化させる効果がある。Nの含有量が0.001%未満であるとこの効果が不十分であり、一方、0.006%を超えると冷間伸線加工性が低下する。このため、N含有量は0.001〜0.006%とする。N含有量の好ましい下限は0.002%であり、また、好ましい上限は0.005%である。
Cr:0〜1.5%
Crは、パーライトのラメラ間隔を微細化し、強度を向上させるのに有効な元素である。このため、必要に応じてCrを含有させてもよい。しかしながら、Crの含有量が多過ぎると、変態終了時間が長くなり、たとえ後述の650〜550℃という好適な温度範囲に保持した場合でもパーライト変態が完了せず、マルテンサイトが生じる恐れがある。したがって、含有させる場合のCr含有量の上限を1.5%とする。Cr含有量の上限は、0.60%であることが好ましい。なお、前記の効果を安定して得るためには、Cr含有量の下限は、0.10%であることが好ましい。
Ti:0〜0.02%
Tiは、脱酸元素であり、固溶Nを固定して伸線加工性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じてTiを含有させてもよい。しかしながら、Tiの含有量が0.02%を超えると、効果が飽和するとともに粗大な酸化物を形成して冷間伸線加工性を劣化させることがある。したがって、含有させる場合のTi含有量の上限を0.02%とする。なお、前記の効果を安定して得るためには、Ti含有量の下限は、0.003%であることが好ましい。
B:0〜0.005%
Bは、初析フェライトの生成を抑制し、パーライト変態後の引張強さを高める効果を有する。このため、必要に応じてBを含有させてもよい。しかしながら、Bを0.005%を超えて含有させても、上記効果が飽和する。したがって、含有させる場合のB含有量の上限を0.005%とする。なお、前記の効果を安定して得るためには、B含有量の下限は、0.0005%であることが好ましい。
本発明に係る鋼線において、残部はFeおよび不純物である。
ここで「不純物」とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップなどの原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
(B)金属組織:
本発明に係る鋼線の金属組織は、パーライトからなり、かつ、長手方向に垂直な断面において、bcc相の{110}結晶面の配向度が0.95以上である。このため、後述の実施例に示すように、引張強さで2000MPa以上の高強度と優れた耐遅れ破壊特性との両立が達成できる。上記配向度の好ましい下限は0.97である。一方、最終線径が2.9mm以上の鋼線の場合は、0.99程度が上記配向度の上限になる。なお、パーライトからなる本発明に係る鋼線の金属組織には面積率で、初析フェライトもしくは初析セメンタイトを単独で5%以下、または初析フェライトと初析セメンタイトの双方を合計で5%以下、の範囲であれば含んでもよい。
bcc相の{110}結晶面の配向度は、鋼線の長手方向に垂直な断面(伸線加工方向に垂直な横断面)においてX線回折を行い、各結晶面の積分強度を求め、下記の式にて算出する。
F=(P−P0)/(1−P0
P=ΣI(110)/ΣI(hkl)
なお、上記の2式において、「F」はbcc相の{110}結晶面の配向度、「I(110)」および「I(hkl)」は、伸線加工方向に垂直な横断面におけるbcc相の(110)面および(hkl)面の積分強度、「P0」は無配向試料における値である。後述の実施例では、結晶面は(110)、(200)および(211)を採用し、また、無配向試料のデータは粉末X線回折のデータベース(PDF(Powder Diffraction File))に記載されている強度の数値を使用した。
なお、本発明の鋼線の組織はパーライトである。パーライトとは、フェライト相とセメンタイト相が、層状組織を形成したものである。したがって、bcc相の{110}結晶面の配向度とは、実質的にはパーライトを構成するフェライトの{110}結晶面の配向度である。しかしながら、上記のように5%以下の微量の初析フェライトを含む場合がある。この場合、パーライトを構成するフェライトの{110}結晶面の配向度と、初析フェライトの{110}結晶面の配向度を分離して求めることはできない。よって、パーライトを構成するフェライトの{110}結晶面の配向度で規定せず、bcc相の{110}結晶面の配向度で規定することとした。
(C)線径:
本発明に係る鋼線の線径(鋼線の最終線径)は2.9mm以上である。これは、PC鋼線等ではコンクリートのき裂発生によりPC鋼線が腐食して、特に、線径が2.9mm未満の細径の場合には、遅れ破壊ではなく、腐食による破断を原因として寿命が短くなることがあるからである。該線径は、3.0mm以上であることが好ましい。線径には特に制限はないものの、工業的な上限は7mmが妥当である。
(D)製造方法:
本発明の鋼線は、例えば、以下に示す方法によって、好適に製造することができる。なお、この方法に限られるものでない。
前記(A)項で述べた化学組成を有する低合金鋼を溶製した後、鋳造によりインゴットまたは鋳片とする。次いで、鋳造されたインゴットまたは鋳片に、熱間圧延、熱間鍛造等の熱間加工を施して鋼片を作製し、さらに、該鋼片を圧延して、断面が円形状の棒鋼または線材に仕上げる。その後、該棒鋼または該線材を、必要に応じ適宜の方法で伸線加工して鋼線としてもよい。断面が円形状の、該棒鋼、該線材および該鋼線(以下、まとめて「丸鋼材」ともいう。)に対して、以下に述べる工程(i)から工程(iv)までの工程を順に施して、本発明の耐遅れ破壊特性に優れた鋼線が製造される。なお、工程(iv)の後で工程(v)の時効処理を行ってもよい。
工程(i):850〜1050℃に5〜30分加熱してオーステナイト化する工程
オーステナイト化温度が850℃未満では、オーステナイト化が不十分なことがある。一方、オーステナイト化温度が1050℃を超えると、オーステナイト粒の粗大化が起きて伸線加工性が低下し、工程(iv)の総真ひずみ2.3以上という冷間伸線加工を施すことができない場合がある。このため、オーステナイト化温度を850〜1050℃とする。オーステナイト化温度の下限は、900℃とすることが好ましい。オーステナイト粒の細粒化の観点から、オーステナイト化温度の好ましい上限は1000℃であり、より好ましい上限は950℃である。なお、上記のオーステナイト化温度は、丸鋼材の表面における温度を指す。
上記の温度域であっても、オーステナイト化時間が5分未満では、オーステナイト化が不十分な場合があり、30分を超えると、加熱コストが増加するだけである。このため、オーステナイト化時間を5〜30分とする。オーステナイト化時間の好ましい下限は10分であり、また、好ましい上限は20分である。
工程(ii):1℃/秒以上の冷却速度で650〜550℃の温度範囲まで冷却し、該温度範囲で1〜30分保持する工程
工程(i)でオーステナイト化した丸鋼材を、冷却速度を1℃/秒以上として、650〜550℃の温度範囲まで急冷し、該温度範囲で1〜30分保持して、金属組織を微細なパーライトにする。オーステナイト化後の冷却速度が1℃/秒未満の場合には、上記の保持温度範囲に達する前にパーライト変態が開始して、粗大なパーライト組織となるため、冷間伸線加工時にクラックが発生する場合がある。さらに、上記温度範囲での保持によるパーライト変態の開始前に初析フェライトが析出したり初析セメンタイトが析出したりして、引張強さで2000MPa以上の高強度と優れた耐遅れ破壊特性との両立が達成できない場合もある。なお、オーステナイト化後の冷却速度の上限は工業的には200℃/秒程度である。
上記の1℃/秒以上の冷却速度であっても、冷却する温度が650℃を超える場合は、パーライトブロックサイズが大きくなり、工程(iv)の総真ひずみ2.3以上という冷間伸線加工を施すことができない場合がある。一方、冷却する温度が550℃未満では、パーライト変態の完了時間が長時間となったり、マルテンサイトを生じてしまう場合がある。
また、上記650〜550℃の温度範囲での保持時間が1分未満では、丸鋼材のサイズおよび/または含有元素の影響から、パーライト変態が完了しない場合があり、一方、30分を超える長時間の保持では、製造コストが嵩んでしまう。保持時間の好ましい下限は3分であり、また、好ましい上限は10分である。
工程(ii)での冷却速度は、丸鋼材の表面における平均の冷却速度を指す。また、冷却および保持する温度範囲は、例えば、塩浴、鉛浴等の熱伝導の良好な等温変態処理設備の設定温度を指す。
工程(iii):室温まで冷却する工程
上記工程(ii)の処理を終了させた後、丸鋼材は室温まで冷却される。この際の冷却速度については、特に制限がない。
工程(iv):総真ひずみで2.3以上の冷間伸線加工を施し、最終線径を2.9mm以上の鋼線とする工程
前記(A)項で述べた化学組成を有し、上記工程(i)から工程(iii)までの工程を順に施した丸鋼材は、冷間伸線加工する。特に、冷間伸線加工による総真ひずみを2.3以上とすることにより、引張強さで2000MPa以上の高強度を具えることができ、bcc相の{110}結晶面の配向度を0.95以上とすることができる。このため、冷間伸線加工による総真ひずみを2.3以上とする。冷間伸線加工の総真ひずみの好ましい下限は2.5であり、また、好ましい上限は3.0である。総真ひずみが2.3以上であれば、冷間伸線加工の回数は特に限定されず、1回でも複数回でもよい。ただし、工程(iv)における冷間伸線加工は、工程(iii)で室温まで冷却した丸鋼材に対して軟化処理することなく施す必要がある。なお、総真ひずみεは、下記の式を用いて求めた値である。
ε=ln(A0/Af
ただし、「A0」および「Af」はそれぞれ、冷間伸線加工前の丸鋼材の断面積および最終冷間伸線加工後の鋼線の断面積を指す。
なお、室温まで冷却した丸鋼材には、必要に応じて、冷間伸線加工する前に酸洗等による脱スケール処理を行ってもよい。なお、上記丸鋼材の冷間伸線加工の際には、適宜の方法で潤滑処理を行うことが好ましい。
工程(v):200〜450℃に10秒〜30分加熱して時効処理する工程
上記の冷間伸線加工の後、残留ひずみ除去のために鋼線に対して、200〜450℃に10秒〜30分加熱して時効処理を施してもよい。時効処理の加熱温度が200℃未満ではその効果が十分得られず、450℃を超えると引張強さが大幅に低下するためである。さらに、上記200〜450℃の温度域での保持時間が10秒未満では、その効果が十分得られないし、30分を超えて保持してもその効果が飽和して製造コストの上昇を招くだけである。上記の時効処理温度は鋼線における表面の温度を指す。なお、時効処理での冷却は、大気中での放冷が好ましい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する鋼A〜Rを溶製し、鋳型に鋳込んで得たインゴットを1250℃に加熱し、熱間鍛造によって直径20mmの丸鋼材(線材)とした。
表1中の鋼A〜Lおよび鋼N〜Rは、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、鋼Mは、化学組成が本発明で規定する条件から外れた鋼である。
Figure 0006347311
上記のようにして得た直径20mmの線材(丸鋼材)を室温の塩酸で酸洗し、リン酸塩被膜処理をした後、予備伸線加工して表2に示す直径の鋼線(丸鋼材)とした。
次いで、予備伸線加工して得た上記の各鋼線を表2に示す温度に10分加熱してオーステナイト化してから、表2に示す温度の鉛浴で1分保持して変態処理を行った。その際、鋼線に熱電対を取り付け冷却速度を測定した。鋼線の加熱温度から変態温度(鉛浴温度)への冷却速度は、7〜60℃/秒であった。なお、変態処理後は、水冷した。
冷却後の鋼線はその後、室温の塩酸で酸洗し、リン酸塩被膜処理をした後、途中で軟化処理を施すことなく、表2に示す条件で、最終線径まで冷間伸線加工を行った。一部の鋼線については、伸線加工後さらに表2に示す温度にて大気中で5分加熱して放冷する「時効処理」を行った。
Figure 0006347311
上記最終線径の各鋼線を用いて、以下に示す各種の調査を行った。
〈1〉パーライトの面積率:
最終線径の各鋼線について、長手方向に垂直な断面を鏡面研磨した後、ピクラール液でエッチングを行い、走査型顕微鏡にて断面の(1/4)D(但し、「D」は鋼線の直径を表す。)の位置において任意の8視野を5000倍で観察して写真を撮影し、目視にてパーライト部分を決定し、それを画像解析して金属組織におけるパーライトの面積率を求めた。
〈2〉引張特性:
最終線径の各鋼線から、JIS Z 2241(2011)に準拠して9B号の引張試験片を採取して、室温の大気中で引張試験して、引張強さを求めた。
〈3〉耐遅れ破壊特性:
上記〈2〉の調査で1700MPa以上の引張強さが得られた試験番号について、最終線径の各鋼線に深さ0.5mm、角度60°、切欠き底半径0.1mmの切欠きを設けた試験片を用いて、下記の方法で耐遅れ破壊特性を調査した。
室温にて、3質量%食塩水中でAg/AgCl電極に対して−1.2Vの分極した環境で上記の試験片に定荷重応力を負荷後、直ちに水素チャージを開始し、最大200時間の試験を実施した。なお、上記環境中での定荷重負荷応力を種々変化させて、破断しない最大負荷応力(T1)を求めた。同様に、室温の大気中にて、上記の切欠きを設けた試験片を用いて引張試験を行い、大気中での破断応力(T2)を求め、T1をT2で除した値を遅れ破壊強度比とした。なお、遅れ破壊強度比が1に近いほど耐遅れ破壊特性が良好である。
〈4〉bcc相の{110}結晶面の配向度:
上記〈2〉の調査で1700MPa以上の引張強さが得られた試験番号について、最終線径の各鋼線について、前記(B)項で述べた方法によって、金属組織におけるbcc相の{110}結晶面の配向度(F)を算出した。
表2に、上記の各調査結果を併せて示す。さらに、図1に、縦軸と横軸にそれぞれ、遅れ破壊強度比と引張強さをとって各鋼線の耐遅れ破壊特性を比較して示す。
表2および図1から、本発明例の試験番号1〜25は、比較例の試験番号26〜29に比べて、引張強さと耐遅れ破壊特性の双方に優れていることが明らかである。
比較例の試験番号26〜28の場合は、用いた鋼Aおよび鋼Bの化学組成はともに本発明で規定する範囲内にあるが、bcc相の{110}結晶面の配向度が0.76〜0.92と小さく本発明で規定する条件から外れるので、本発明例に比べて、引張強さと耐遅れ破壊特性の双方で劣っている。
比較例の試験番号29は、用いた鋼MのC含有量が0.38%と少なく、本発明で規定する条件から外れるので、引張強さが1458MPaしかなく、本発明例に比べて極めて劣っている。
本発明の耐遅れ破壊特性に優れた鋼線は、引張強さが2000MPa以上であって、局部腐食が生じるような環境においても耐遅れ破壊特性に優れるので、土木・建築構造物の大型化にも対応できる。このため、本発明は、産業上の貢献が極めて顕著である。

Claims (3)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.60〜1.1%、
    Si:0.05〜1.5%、
    Mn:0.30〜1.5%、
    P:0.030%以下、
    S:0.030%以下、
    Al:0.005〜0.05%、
    N:0.001〜0.006%、
    Cr:0〜1.5%、
    Ti:0〜0.02%、
    B:0〜0.005%、
    残部:Feおよび不純物からなり、
    金属組織が、パーライトからなりかつ、長手方向に垂直な断面において、bcc相の{110}結晶面の配向度が0.95以上であり、
    線径が、2.9mm以上である、
    耐遅れ破壊特性に優れた鋼線。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Cr:0.10〜1.5%を含有する、
    請求項1に記載の耐遅れ破壊特性に優れた鋼線。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    Ti:0.003〜0.02%、および、
    B:0.0005〜0.005%、
    から選択される1種以上を含有する、
    請求項1または2に記載の耐遅れ破壊特性に優れた鋼線。
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